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特許7244727表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20230315BHJP
   C23C 2/02 20060101ALI20230315BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C23C2/06
C23C2/02
C23C2/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021530079
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 KR2019016526
(87)【国際公開番号】W WO2020111798
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0151371
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ファン、 ヒョン-ソク
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-246957(JP,A)
【文献】特開2003-138364(JP,A)
【文献】特開2006-193776(JP,A)
【文献】特表2008-525641(JP,A)
【文献】特開2009-052080(JP,A)
【文献】特表2014-506626(JP,A)
【文献】特開2015-036426(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111449(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0026131(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1677390(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/06 - 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板、及び前記素地鋼板上に形成された溶融亜鉛メッキ層を含み、
前記素地鋼板の表面は、中心線平均粗さRaが0.3μm以上であり、粗さスキューネスRskが-1以下、粗さクルトシスRkuが6以上である、表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板。
【請求項2】
前記溶融亜鉛メッキ層の亜鉛結晶粒(スパングル)の大きさは、150μm以下である、請求項1に記載の表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板。
【請求項3】
素地鋼板を準備する段階と、
前記素地鋼板の表面の中心線平均粗さRaが0.3μm以上であり、粗さスキューネスRskが-1以下、粗さクルトシスRkuが6以上の凹凸を形成する段階と、
前記凹凸が形成された素地鋼板を溶融亜鉛メッキ浴に浸漬して溶融亜鉛メッキ層を製造する段階と、
を含む、表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記凹凸を形成する段階は、素地鋼板を凹凸が形成されたロール(roll)の間に通過させて形成する、請求項3に記載の表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記ロール(roll)に形成された凹凸は、SBT(Shot Blasting Texturing)、LBT(Laser Beam Texturing)、EDT(Electrical Discharging Texturing)及びEBT(Electron Beam Texturing)のいずれか一つの方法で形成する、請求項4に記載の表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記溶融亜鉛メッキ浴に浸漬する前に、素地鋼板を水素が5~40体積%含有された窒素雰囲気で750~950℃で30~180秒間焼きなまし熱処理する段階をさらに含む、請求項3に記載の表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電製品、自動車などに使用される溶融亜鉛メッキ鋼板に関するものであって、さらに詳しくは、表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などに使用される鋼板は、外部の腐食環境に対する抵抗性に優れ、かつ、鋼材表面が美麗でなければならない。かかる需要のために溶融亜鉛メッキ鋼板が登場するようになった。上記溶融亜鉛メッキ鋼板は、鋼板に金属亜鉛をメッキした製品として、亜鉛の犠牲方式による耐食性が向上した鋼板であり、家電製品、自動車などに広く使用されている。
【0003】
家電製品、自動車製品の特性上、表面に異物が存在せず、外観上で美麗でなければならず、塗装後も表面に他の染みや色相差が表れてはならない。かかる特性は、上記溶融亜鉛メッキ鋼板のメッキ工程中に亜鉛の凝固過程で発生する結晶粒によって決まる。上記亜鉛の結晶粒は、他の金属の結晶粒と違って凝固時に樹枝状が発達し、幾何学的な模様を示す傾向がある。かかる亜鉛の結晶粒は別途スパングル(spangle)とも呼ばれ、上記スパングルが大きいほど結晶粒と結晶粒の間の境界が明確になり、各結晶粒内のデンドライト構造が強く発生して、表面外観が劣化する。
【0004】
したがって、メッキ製品の表面外観を向上させるためには上記スパングルの大きさを小さくする必要がある。亜鉛結晶粒の大きさを小さくするための方法としては、メッキ直後にストリップの冷却速度を速くして表面の亜鉛結晶粒を小さくするという方法が一般的である。
【0005】
上記冷却速度を速くするために、メッキ直後にエアナイフの上段に位置するクーラー(cooler)の流量と流速を調節する方法がある。しかし、このような方法はスパングルの大きさを小さくすることはできるものの、未凝固状態の液体亜鉛に強い外力を作用させるため、メッキ層の厚さが不均一になり、流れ模様のような欠陥を引き起こすおそれがある。
【0006】
一方、上記冷却速度を調節するための方法として、リン酸塩のような吸熱反応を引き起こす成分を含有した液滴を噴射して冷却する方法(特許文献1)がある。これは、液体の気化熱とリン酸塩の吸熱反応を利用してメッキ層を急速に冷却してメッキ層結晶粒を微細化する方法である。該方法は、スパングルの微細化には効果的であるものの、液体を噴射する装置の運用が複雑であり、液滴が不均一に噴射される場合、表面欠陥が発生するという短所がある。また、メッキ層の凝固速度を人為的に速くしてメッキ層のスパングルを減らす方法は、亜鉛の(0001)面が鋼板に均一に配列されて低温接合脆性が低下するという短所を有する。即ち、亜鉛はHCP(Hexagonal closet packing)構造であり、スリップ(slip)システムが制限的であり、C軸に引張するときはツイン(twin)変形さえ起こらず引張に対して脆弱である。さらに、温度によって亜鉛金属の破壊機構の活性度が異なり、常温以上では脆性、粒界及び延性破壊の混合であるが、低温では、脆性(劈開)破壊のみが主に作用して外部衝撃による破壊が起こりやすい。上記亜鉛が(0001)面に均一に配列されて基板と平行である場合、低温接合脆性テスト上、引張応力はメッキ層のC軸に作用するようになり、亜鉛のツイン(twin)作動が難しくてメッキ層の延性が減少しながら脆性破壊が激しく発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許第10-0742832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の素地鋼板の表面改質を通じて、溶融亜鉛メッキ後に亜鉛結晶粒を微細化して、表面が美麗で、かつ、優れた低温接合脆性を有する溶融亜鉛メッキ鋼板及びこれを製造する方法を提供しようとするものである。
【0009】
本発明の課題は、上述した事項に限定されない。本発明の更なる課題は、明細書の全体的な内容に記述されており、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の明細書に記載されている内容から、本発明の更なる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、素地鋼板、及び上記素地鋼板上に形成された溶融亜鉛メッキ層を含み、
上記素地鋼板の表面は、中心線平均粗さRaが0.3以上であり、粗さスキューネスRskが-1以下、粗さクルトシスRkuが6以上である、表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板に関するものである。
【0011】
本発明の他の一態様は、素地鋼板を準備する段階と、
上記素地鋼板の表面の中心線平均粗さRaが0.3以上であり、粗さスキューネスRskが-1以下、粗さクルトシスRkuが6以上である凹凸を形成する段階と、
上記凹凸が形成された素地鋼板を溶融亜鉛メッキ浴に浸漬して溶融亜鉛メッキ層を製造する段階と、を含む表面外観及び低温接合脆性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の溶融亜鉛メッキ鋼板は、メッキ層の亜鉛結晶粒(スパングル)が微細で、美麗な表面外観を確保することができるだけでなく、亜鉛結晶粒の(0001)面が無作為に配向されて優れた低温接合脆性を有する。
【0013】
また、本発明によると、別途の急冷工程や液滴噴射装置などが不必要であり、簡単、かつ、効率的に亜鉛メッキ鋼板の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に開示された比較例と発明例の素地鋼板の表面を観察したSEM写真である。
図2】上記図1の素地鋼板を溶融亜鉛メッキした後、メッキ層表面を観察したSEM写真である。
図3】本発明の実施形態に開示された比較例と発明例のEBSD(Electron Backscattered Diffraction)写真である。
図4】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施形態に開示された比較例1と発明例1のEBSD IPF map写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発明者らは、溶融亜鉛メッキ鋼板を製造する過程において、素地鋼板の表面形状に応じて亜鉛の核生成が変化することを発見した。そこで、溶融メッキ後、冷却過程に対する別途の制御なしに素地鋼板の表面改質を通じてメッキ層の亜鉛結晶粒(スパングル、spangle)が制御可能なことを認知して本発明に至るようになった。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の溶融亜鉛メッキ鋼板について詳細に説明する。
【0017】
本発明の溶融亜鉛メッキ鋼板は、素地鋼板、及び上記素地鋼板上に形成された溶融亜鉛メッキ層を含み、上記素地鋼板の表面は、中心線平均粗さRaが0.3以上であり、粗さスキューネスRskが-1以下、粗さクルトシスRkuが6以上であることが好ましい。
【0018】
粗さを測定する方法は、国際標準化機構(ISO)で規定した方法により測定され、上記中心線平均粗さRaは、表面高低に対する算術平均値で全体的な表面の粗さを描写することができる。一方、粗さスキューネスRskは、粗さ曲線の非対称度であり、粗さスキューネスRskが0を超えると、尖った山(peak)が多い場合を意味し、0未満の場合には、谷(valley)が多い形態を意味する。粗さクルトシスRkuは、粗さ曲線の鋭さを示す値であり、上記粗さクルトシスRkuが3を基準として高い場合には鋭く形成されることを意味し、3より低い場合には尖がっていない形態を意味する。
【0019】
上記素地鋼板の表面の中心線平均粗さRaが0.3未満の場合には、表面摩擦力が低くて、ロール駆動時に滑りなどが発生し蛇行が発生するなど、操業条件に悪影響を及ぼす。よって、本発明は、上記素地鋼板の表面の中心線平均粗さRaを0.3以上に制限することができ、好ましい中心線平均粗さRaは0.4以上であることができる。本発明は、上記素地鋼板の表面の中心線平均粗さRaの上限を特に限定しないが、操業実情によって2.7を超えないことが好ましい。
【0020】
上記素地鋼板の表面の粗さスキューネスRskが-1を超える場合には、表面にオイルポケット(oil pocket)として作用することができる領域が小さく、加工中に摩擦力が増大して加工性が低下するおそれがある。よって、本発明は、上記素地鋼板の表面の粗さスキューネスRskを-1以下に制限することができ、好ましい粗さスキューネスRskは-1.5以下であることができる。一方、本発明は、上記素地鋼板の表面の粗さスキューネスRskの下限を特に限定しないが、上記粗さスキューネスRsk値が-5未満の場合には、これ以上の効果を期待し難いため、上記粗さスキューネスRskは-5以上であることが好ましい。より好ましい粗さスキューネスRskの下限は-4であることができる。
【0021】
上記素地鋼板の表面の粗さクルトシスRkuが6未満の場合には、尖がっていない形態で表面が形成されて、スパングル微細化のための核生成サイトとしての効果が小さくなるため好ましくない。よって、本発明は、上記素地鋼板の表面の粗さクルトシスRkuを6以上に制限することができる。好ましい粗さクルトシスRkuは7以上であることができる。一方、本発明は、上記粗さクルトシスRkuの上限を特に限定しないが、上記粗さクルトシスRku値が50を超える場合にはこれ以上の効果を期待しにくいため、上記粗さクルトシスRkuは50以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の溶融亜鉛メッキ鋼板において、メッキ層亜鉛結晶粒(スパングル)の大きさは150μm以下であることが好ましい。
【0023】
上記メッキ層亜鉛結晶粒の(0001)面配向度は、EBSD(Electron Backscattered diffraction)で測定した表面でIPF(Inverse Pole Figure)map分析を通して確認することができる。例えば、添付された図4の(a)及び(b)を通して説明することができる。上記図4の(a)及び(b)は、それぞれ後述する実施形態の中で比較例1と発明例1のEBSD IPF map写真である。図4の(a)に示すように、比較例1は(0001)面にスパングルが集中しているが、(b)に示した発明例1では、(0001)面ではなく他方に均一に分布することを確認することができる。
【0024】
低温でメッキ層の脆性破壊が起こるクラック位置をみると、メッキ層破壊がメッキ層の粒界または素地鉄とメッキ層の界面で発生することが知られている。粒界または界面で破壊が始まる理由は、亜鉛が凝固するときに凝固収縮が発生して体積差異が発生(約8.3%)し、これにより溶融メッキ後に粒界にボイド(void)が発生し得る。このとき、C軸(C-axis)方向への熱膨脹係数はA軸(A-axis)方向より5倍ほど大きいため、(0001)面に配列されるほど素地鉄とメッキ層の間のミスフィットが発生する確率が大きくなる。また、(0001)面で優先方位が集積されることにより体積弾性率(bulk modulus)とヤング率(young’s modulus)が増加し、(0001)面に集積されたメッキ層と素地鉄の界面または粒界に相対的に大きな応力が作用するため、破壊が起こりやすい。したがって、スパングルを小さくし、(0001)面の配向をランダム(random)にするほど低温接合脆性の抵抗性に優れ、表面が美麗に見える効果を有するようになる。
【0025】
一方、上記素地鋼板の種類は特に制限されず、本発明の属する技術分野で溶融亜鉛メッキが適用可能な鋼板であれば十分である。即ち、本発明の素地鋼板は、マイルド鋼、高強度鋼、熱延鋼板、冷延鋼板、線材などその種類や形態も特に限定しない。
【0026】
次に、本発明の溶融亜鉛メッキ鋼板を製造する一例について詳細に説明する。本発明の溶融亜鉛メッキ鋼板を製造するためには、素地鋼板を準備し、素地鋼板の表面に凹凸を形成する。以後、凹凸が形成された素地鋼板を溶融亜鉛メッキ浴に浸漬してメッキを行うことが好ましい。
【0027】
上記素地鋼板の表面に、中心線平均粗さRa0.3以上、粗さスキューネスRsk-1以下、粗さクルトシスRku6以上である凹凸を形成する。上記凹凸を形成する方法は特に制限されないが、素地鋼板の表面に直接凹凸を形成する方法、上記条件の凹凸が形成されたロール(roll)を準備して、上記素地鋼板をロールの間に通過させてロール表面に形成された粗さを鋼板の表面に転写させる方法などがある。上記凹凸が形成されたロールを製造する技術としては、ロール表面に凹凸が形成された別途素材を付着する方法があり、ロール表面に直接凸凹を形成する方法がある。ロール表面に直接凹凸を形成する方法としては、SBT(Shot Blasting Texturing)、LBT(Laser Beam Texturing)、EDT(Electrical Discharging Texturing)、EBT(Electron Beam Texturing)などの方式が使用されることができる。
【0028】
上記SBTは、ロール表面に微細なグリット(grit)などを噴射して物理的にロール表面に凹凸を形成する方法であり、LBTやEBTは、レーザービームや電子ビームを照射してロール表面に凹凸を形成する方法である。一方、EDTは放電加工と呼ばれ、ロールと外部電極の間に高圧の電位を形成してロール表面に電気スパークによる凹凸を形成する方法である。
【0029】
上記のように凹凸が形成された素地鋼板の表面に溶融亜鉛メッキ層を形成する。上記溶融亜鉛メッキ層を形成する方法は、溶融亜鉛メッキ浴に上記素地鋼板を浸漬した後、メッキ付着量を調節して凝固させる方法が好ましい。
【0030】
先ず、上記凹凸が形成された素地鋼板は、鋼板の材質を調節し表面の酸化物を除去するための焼きなまし熱処理工程を行うことができる。上記焼きなまし熱処理は、水素が5~40体積%含有された窒素雰囲気で750~950℃で30~180秒間維持した後、450~550℃まで冷却する。
【0031】
以後、素地鋼板が亜鉛メッキ浴に浸漬されてシンクロールを経て亜鉛メッキ浴の外部に出るようになる。このとき、素地鋼板の表面に付いた液体亜鉛は、エアナイフで噴射された気体の流量と流速により決まった付着量で調節され、エアナイフ上段に設置されたクーラー(cooler)を通じて300℃以下に冷却される。上記メッキ過程を経て製造されたメッキ鋼板は、スパングルが微細化され、ランダムな配向性を確保することができる。
【実施例
【0032】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。下記の実施形態は、本発明の理解のためのものであるだけで、本発明の権利範囲を限定するためのものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項とこれから合理的に類推される事項により決められるからである。
【0033】
(実施例)
素地鋼板として、引張強度300MPa以下の低炭素マイルド(mild)鋼を準備し、表面状態を比較するために、表面に凹凸がないようにミラー(mirror)ポリッシングを行った。
【0034】
上記ポリッシングを行った後、鋼板の表面に下記の表1に記載されたRsk、Rku及びRaになるように表面凹凸を形成して、鋼板を準備した。鋼板の表面改質は、ロール(roll)の間にサンドペーパー(sandpaper)を付着し、鋼板を上記ロールの間に通過させる方法で行った。
【0035】
下記の図1は、上記表面改質を行った後、鋼板の表面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察したものである。図1の(h)は、下記の比較例5であり、上記ミラーポリッシングをする前の一般的な鋼板の表面を示したものである。図1の(a)、(b)、(c)及び(d)はそれぞれ、下記の表1で比較例1~4の条件で表面を改質したものであり、(e)、(f)及び(g)はそれぞれ、発明例1~3の条件で表面を改質したものである。
【0036】
【表1】
【0037】
上記表1の粗さを有する素地鋼板に対して溶融亜鉛メッキを実施した。このとき、溶融亜鉛メッキはメッキ浴温度440~480℃であり、0.1~0.3wt.%のAlを含むZnメッキ浴に浸漬した後、エアナイフを用いてメッキ付着量を160g/mに調節し、冷却速度7℃/sで冷却して溶融亜鉛メッキ鋼板を製造した。
【0038】
このように製造された溶融亜鉛メッキ鋼板のメッキ層特性を観察して、その結果を上記表1に共に示した。上記表1におけるスパングルの大きさは、光学顕微鏡SEMを用いて測定した。一方、(0001)面配向性はEBSD(Electro Backscattered Diffraction)を利用して分析した。
【0039】
下記の図2の(a)~(h)はそれぞれ、比較例1~4、発明例1~3及び比較例5のメッキ層表面を観察した光学顕微鏡写真である。
【0040】
図3の(a)~(f)はそれぞれ、比較例1~3、発明例1~3の配向性を確認するためにEBSDでメッキ層表面を測定した写真であり、写真上で明暗が異なる領域は面配向性が異なる領域を意味する。図3の(a)~(f)で相対的に暗い領域が(0001)面を意味し、これに基づいて上記(0001)面配向性を観察した後、表にその結果を共に示した。図4の(a)及び(b)はそれぞれ、上記比較例1と発明例1の(0001)面配向性を観察したEBSD IPF map結果を示したものである。
【0041】
上記表1において、低温接合脆性はインパクトピールテスト機構(Impact Peel Test)を用いて評価した。具体的に、2個の試片を接着剤で付けた後、-45℃の条件で鋼板衝撃により試片を強制的に引き離した後、接着剤内で剥離が起きた場合には「未剥離」、メッキ層と素地鉄の界面で剥離が起きた場合には「剥離」または「一部剥離」と評価した。
【0042】
上記表1と図2~4の結果から分かるように、本発明で提示した条件を満たす発明例1~3は、スパングルの大きさがいずれも150μm以下で形成されて表面が美麗であり、多様な配向性を示し、低温接合脆性に優れることが分かる。
【0043】
これに比べて、比較例1~5は、素地鋼板の表面の粗さが本発明の範囲から外れるようになり、亜鉛結晶粒の大きさが非常に粗大で、(0001)面の配向性が強いことを確認することができ、表面外観と低温接合脆性が低下したことが分かる。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図1(f)】
図1(g)】
図1(h)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図2(f)】
図2(g)】
図2(h)】
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】
図3(e)】
図3(f)】
図4(a)】
図4(b)】