(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20230315BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 Z
(21)【出願番号】P 2018133856
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】星 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 和樹
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051152(JP,A)
【文献】特開2005-287536(JP,A)
【文献】特開2018-020714(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02829728(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/00-7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風装置と、
内部に形成された通気路と、前記通気路に連通した穴と、を有するパッドと、
前記穴に接続されて、前記送風装置と前記通気路を接続するダクトと、
前記ダクトに接続された保持部材と、を備え、
前記ダクトは、前記穴に入り込んだ第1筒状部と、前記第1筒状部から拡径した第1フランジを有し、
前記保持部材は、前記第1筒状部と接続された第2筒状部と、前記第2筒状部から拡径した第2フランジと、を有し、
前記第1フランジと前記第2フランジは、前記パッドを挟持し
、
前記第1筒状部は、前記穴の内面に接触していることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
送風装置と、
内部に形成された通気路と、前記通気路に連通した穴と、を有するパッドと、
前記穴に接続されて、前記送風装置と前記通気路を接続するダクトと、
前記ダクトに接続された保持部材と、を備え、
前記ダクトは、前記穴に入り込んだ第1筒状部と、前記第1筒状部から拡径した第1フランジを有し、
前記保持部材は、前記第1筒状部と接続された第2筒状部と、前記第2筒状部から拡径した第2フランジと、を有し、
前記第1フランジと前記第2フランジは、前記パッドを挟持し
、
前記第1フランジは、前記ダクト内に向けて開口した空洞を有し、
前記保持部材は、前記第2フランジとは異なる位置に、前記第2筒状部から拡径した第3フランジをさらに有し、
前記第3フランジは、前記空洞に入り込んでいることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
送風装置と、
内部に形成された通気路と、前記通気路に連通した穴と、を有するパッドと、
前記穴に接続されて、前記送風装置と前記通気路を接続するダクトと、
前記ダクトに接続された保持部材と、を備え、
前記ダクトは、前記穴に入り込んだ第1筒状部と、前記第1筒状部から拡径した第1フランジを有し、
前記保持部材は、前記第1筒状部と接続された第2筒状部と、前記第2筒状部から拡径した第2フランジと、を有し、
前記第1フランジと前記第2フランジは、前記パッドを挟持し
、
前記パッドの一部は、前記第1フランジと前記第2フランジが押し付けられて、前記穴の貫通方向に潰れていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項4】
前記第1フランジは、前記第1筒状部に対して傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1筒状部と前記第2筒状部は、前記第1フランジと前記第2フランジの間で重なっていることを特徴とする
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第1筒状部は、一定の断面形状を有することを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記ダクトは、伸縮可能な蛇腹部を有し、
前記蛇腹部は、前記第1フランジを含むことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションおよびシートバックを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調空気をシートクッションやシートバックに送るように構成された車両シートが知られている(特許文献1)。この車両シートには、シートクッションおよびシートバックのパッドに通気路と吹出口が形成されており、空調空気はシートクッションの底面に取り付けられた送風装置からダクトを介してパッドの通気路に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、リクライニングなどで乗員がシートを動かしたときに、ダクトの接続部分がパッドに対してずれてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、ダクトがパッドからずれてしまうことを抑制できる乗物用シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、ダクトをパッドに取り付けやすくすることを目的とする。
また、本発明は、パッドから空気が漏れることを抑制することを目的とする。
また、本発明は、ダクトの内部の通気を安定させることを目的とする。
また、本発明は、パッドの柔軟性に影響を与えることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明に係る乗物用シートは、送風装置と、内部に形成された通気路と通気路に連通した穴とを有するパッドと、穴に接続されて送風装置と通気路を接続するダクトと、ダクトに接続された保持部材と、を備える。
ダクトは、パッドの穴に入り込んだ第1筒状部と、第1筒状部から拡径した第1フランジを有している。保持部材は、第1筒状部と接続された第2筒状部と、第2筒状部から拡径した第2フランジと、を有している。第1フランジと第2フランジは、パッドを挟持している。
【0007】
このような構成によれば、第1フランジと第2フランジがパッドを挟持していることで、ダクトが安定してパッドに接続される。このため、ダクトの接続部分がパッドに対してずれてしまうことを抑制できる。また、ダクトと保持部材が別体であるため、ダクトをパッドに取り付けやすい。
【0008】
前記した乗物用シートにおいて、第1フランジは、第1筒状部に対して傾斜する傾斜面を有している構成としてもよい。
【0009】
これによれば、ダクトがパッドに取り付けられたときに、傾斜面がパッドに押し付けられる。これにより、パッドの一部が局所的に潰れてパッドとダクトの隙間が無くなり、空気漏れを抑制できる。
【0010】
前記した乗物用シートにおいて、第1筒状部と第2筒状部は、第1フランジと第2フランジの間で重なっている構成としてもよい。
【0011】
これによれば、重なっている部分の強度がアップするので、通気が安定する。
【0012】
前記した乗物用シートにおいて、第1筒状部は、一定の断面形状を有する構成としてもよい。
【0013】
これによれば、第1筒状部の内部の通気が安定する。
【0014】
前記した乗物用シートにおいて、第1筒状部は、パッドの穴の内面に接触している構成としてもよい。
【0015】
これによれば、パッドとダクトの接続部から空気が漏れるのを抑制できる。
【0016】
前記した乗物用シートにおいて、第1フランジは、ダクト内に向けて開口した空洞を有する構成としてもよい。
【0017】
これによれば、ダクトの空洞の周囲が撓みやすくなる。これにより、パッドの柔軟性に影響を与えることを抑制できる。
【0018】
前記した乗物用シートにおいて、保持部材は、第2フランジとは異なる位置に、第2筒状部から拡径した第3フランジをさらに有し、第3フランジは、第1フランジの空洞に入り込んでいる構成としてもよい。
【0019】
これによれば、保持部材がダクトから抜けてしまうことを抑制できる。
【0020】
前記した乗物用シートにおいて、ダクトは、伸縮可能な蛇腹部を有し、蛇腹部は、第1フランジを含む構成としてもよい。
【0021】
これによれば、ダクトが伸縮可能であることで、パッドの柔軟性に影響を与えることを抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、乗物用シートのダクトがパッドからずれてしまうことを抑制できる。また、ダクトと保持部材が別体であるため、ダクトをパッドに取り付けやすい。
【0023】
また、第1フランジが第1筒状部に対して傾斜する傾斜面を有することで、ダクトがパッドに取り付けられたときに、空気漏れを抑制できる。
【0024】
また、第1筒状部と第2筒状部が第1フランジと第2フランジの間で重なっていることで、重なっている部分の強度がアップするので、通気が安定する。
【0025】
また、第1筒状部が一定の断面形状を有することで、第1筒状部の内部の通気が安定する。
【0026】
また、第1筒状部がパッドの穴の内面に接触していることで、パッドとダクトの接続部から空気が漏れるのを抑制できる。
【0027】
また、第1フランジがダクト内に向けて開口した空洞を有することで、ダクトの空洞の周囲が撓みやすくなる。これにより、パッドの柔軟性に影響を与えることを抑制できる。
【0028】
また、保持部材が第2フランジとは異なる位置に、第2筒状部から拡径した第3フランジをさらに有し、第3フランジが第1フランジの空洞に入り込んでいることで、保持部材がダクトから抜けてしまうことを抑制できる。
【0029】
また、ダクトが伸縮可能な蛇腹部を有し、蛇腹部が第1フランジを含むことで、ダクトが伸縮可能となるので、パッドの柔軟性に影響を与えることを抑制でき、乗員が感じる不快感を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図4】第1ダクトから第4ダクトの接続を示す図である。
【
図6】第3ダクトをパッドに接続する前の断面図(a)と接続後の断面図(b)である。
【
図7】第4ダクトをパッドに接続した後の断面図である。
【
図8】第1変形例におけるダクトの接続部の断面図である。
【
図9】第2変形例におけるダクトの接続部の断面図である。
【
図10】第3変形例におけるダクトの接続部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照しながら、発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態の乗物用シートSは、自動車に搭載されるシートとして構成されており、シートクッションS1およびシートバックS2を備えている。
【0032】
図2に示すように、乗物用シートSは、シートフレームFに、ウレタンフォームなどからなるパッドPと、布地や皮革などからなる表皮U1,U2を被せることで構成されている。
【0033】
パッドPは、シートクッションS1のパッドを構成するシートクッションパッドP1と、シートバックS2のパッドを構成するシートバックパッドP2を含む。
【0034】
シートクッションパッドP1は、通気路A1と、複数の通気穴H1と、穴B1と、を有している。通気路A1は、シートクッションパッドP1の内部に形成されている。複数の通気穴H1は、シートクッションパッドP1の上側の面に開口し、通気路A1に連通している。穴B1は、シートクッションパッドP1の下側の面に開口し、通気路A1に連通している。シートクッションパッドP1は、通気路A1の一部の表面を構成するパッド本体P11と、パッド本体P11に取り付けられたカバーパッドP12とを組み合わせてなる。パッド本体P11にカバーパッドP12を組み付ける前においては、パッド本体P11は、通気路A1の穴B1が繋がる部分が露出している。本実施形態においては、通気穴H1は、カバーパッドP12に形成されている。カバーパッドP12は、パッド本体P11に対して着脱可能であってもよい。
【0035】
シートバックパッドP2は、通気路A2と、複数の通気穴H2と、穴B2と、を有している。通気路A2は、シートバックパッドP2の内部に形成されている。複数の通気穴H2は、シートバックパッドP2の前側の面に開口し、通気路A2に連通している。穴B2は、シートバックパッドP2の後ろ側の面に開口し、通気路A2に連通している。シートバックパッドP2は、通気路A2の一部の表面を構成するパッド本体P21と、パッド本体P21に取り付けられたカバーパッドP22とを組み合わせてなる。パッド本体P21にカバーパッドP22を組み付ける前においては、パッド本体P21は、通気路A2の穴B2が繋がる部分が露出している。本実施形態においては、通気穴H2は、カバーパッドP22に形成されている。カバーパッドP22は、パッド本体P21に対して着脱可能であってもよい。
【0036】
通気路A1,A2は、ダクト100により送風装置70と接続されている。具体的には、ダクト100は、一端が送風装置70と接続され、他端がパッドPの穴B1,B2に接続されて、送風装置70とパッドPの通気路A1,A2を接続している。送風装置70は、シロッコファンであり、シートクッションS1の下側に配置されている。乗物用シートSは、送風装置70から送風された空気を、ダクト100と、穴B1,B2および通気路A1,A2を通して通気穴H1,H2からシートに座った乗員に向けて吹き出すように構成されている。
【0037】
図3に示すように、シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するシートクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するシートバックフレームF2とを含む。
【0038】
シートクッションフレームF1は、一対のサイドフレーム11と、パンフレーム12と、リヤパイプ13と、フロントパイプ14(
図2参照)とを備えている。一対のサイドフレーム11は、シートクッションS1の左右のフレームを構成する部材であり、左右方向に対向した状態で離間して配置されている。サイドフレーム11は、板金からなり、前後に長い長尺状に形成されている。
【0039】
リヤパイプ13とフロントパイプ14は、一対のサイドフレーム11を連結している。具体的には、リヤパイプ13が一対のサイドフレーム11の後部同士を連結しており、フロントパイプ14が一対のサイドフレーム11の前部同士を連結している。リヤパイプ13およびフロントパイプ14は、一対のサイドフレームを連結する連結部材の一例である。
【0040】
シートバックフレームF2は、左右の板金フレーム22と、パイプフレーム23と、ロアフレーム24と、架橋フレーム25とを備えている。左右の板金フレーム22は、左右方向に対向した状態で離間して配置されている。板金フレーム22は、板金からなり、上下に長い長尺状に形成されている。
【0041】
パイプフレーム23は、金属製のパイプ材からなり、略上下に延びる左右のアッパーサイドフレーム23Aと、アッパーサイドフレーム23Aの上端同士を連結するアッパーフレーム23Bとを有している。左右のアッパーサイドフレーム23Aは、下部が板金フレーム22の上部に接続されていることで、左右の板金フレーム22とともに、シートバックS2の左右のフレームを構成する一対のサイドフレーム21を形成している。ロアフレーム24は、板金からなり、一対のサイドフレーム21の下部同士を連結している。架橋フレーム25は、板金からなり、一対のサイドフレーム21の上部同士を連結している。ロアフレーム24、架橋フレーム25およびアッパーフレーム23Bは、一対のサイドフレーム21を連結する連結部材の一例である。
【0042】
サイドフレーム11の後部とサイドフレーム21の下部とは、リクライニング機構RLを介して回動可能に連結されている。これにより、乗物用シートSは、シートバックS2がシートクッションS1に対して前後に回動可能となっている。
【0043】
図4に示すように、ダクト100は、複数の部品から構成されている。具体的に、ダクト100は、第1ダクト110と、第2ダクト120と、第3ダクト130と、第4ダクト140とを有している。
【0044】
第1ダクト110は、略前後に延びる本体部111と、本体部111の後端に配置された第1接続部112と、本体部111の前部に配置された第5接続部113とを有している。本体部111は、前端部が送風装置70に接続される。
【0045】
第2ダクト120は、上下に延びる蛇腹部122と、蛇腹部122の下に設けられた第2接続部121と、蛇腹部122の上に設けられた第3接続部123とを有している。蛇腹部122は、可撓性を有するとともに伸縮自在となっている。第2接続部121は、第1ダクト110の第1接続部112の外側に嵌るようなサイズに形成されている。第2ダクト120の第2接続部121は、第1ダクト110の第1接続部112に接続される。
【0046】
図2に示すように、第2ダクト120は、リヤパイプ13およびロアフレーム24の前側を通ってシートクッションS1からシートバックS2に向かうように配置されている。
【0047】
図4に示すように、第3ダクト130は、上下に延びる本体部132と、本体部132の下に設けられた第4接続部131と、本体部132の上に設けられた第1筒状部133とを有している。
本体部132の上部は、前方に向けて屈曲している。本体部132と、第1筒状部133の間には、第1フランジ134が設けられている。
【0048】
図6(a)に示すように、第1フランジ134は、第1筒状部133および本体部132から拡径している。具体的には、第1フランジ134は、第1筒状部133の後端から径方向の外側に広がるように延びたあと、狭まりながら本体部132に繋がるように延びている。これにより、第1フランジ134は、内側に、ダクト100内に向けて開口した空洞134Aを有している。空洞134Aは、第3ダクト130の全周に亘って延びている。また、第1フランジ134は、第1筒状部133に対して傾斜する傾斜面134Bを有している。
【0049】
図4に示すように、第4接続部131は、第2ダクト120の第3接続部123の内側に嵌るようなサイズに形成されている。第4接続部131は、第2ダクト120の第3接続部123に接続される。
第1筒状部133は、
図5に示すように、一定の断面形状を有している。第1筒状部133は、シートバックパッドP2に形成された穴B2に接続され、後述するように、先端に保持部材150が接続されることで、シートバックパッドP2から外れないように保持される。
【0050】
図4に示すように、第4ダクト140は、上下に延びる蛇腹部142と、蛇腹部142の下に設けられた第6接続部141と、蛇腹部142の上に設けられた第1筒状部143とを有している。蛇腹部142は、可撓性を有するとともに伸縮可能となっている。第6接続部141は、第1ダクト110の第5接続部113の外側に嵌るようなサイズに形成されている。第6接続部141は、第1ダクト110の第5接続部113に接続される。
第1筒状部143は、一定の断面形状を有している。第1筒状部143は、シートクッションパッドP1に形成された穴B1に接続される。そして、第3ダクト130の第1筒状部133と同様に、先端に保持部材150が接続されることで、シートクッションパッドP1から外れないように保持される。
【0051】
図7に示すように、蛇腹部142の最上部のひだは、第1筒状部143から拡径している。すなわち、蛇腹部142の最上部のひだは、第3ダクト130における第1フランジ134と同等の第1フランジ144となっている。言い換えると、蛇腹部142は、第1フランジ144を含んでいる。第1フランジ144は、ダクト100内に向けて開口した空洞144Aと、第1筒状部143に対して傾斜する傾斜面144Bを有している。
【0052】
図6(a)に示すように、保持部材150は、第2筒状部151と、第2フランジ152と、第3フランジ153を有している。
【0053】
第2フランジ152は、第2筒状部151の一端から拡径している。第2フランジ152は板形状を有している。
第3フランジ153は、第2筒状部151の他端、すなわち、第2フランジ152とは異なる位置から拡径している。第3フランジ153は、第2フランジ152から離れるにつれて徐々に径方向外側に広がるように第2筒状部151から斜めに拡径している。第3フランジ153の拡径量(第2筒状部151から径方向に広がった大きさ)K2は、第2フランジ152の拡径量K1より小さい。
【0054】
第2筒状部151は、第1筒状部133と接続される。第2筒状部151は、第1筒状部133の内側に入り込むように、第1筒状部133より一回り小さく形成され、一定の断面形状を有している(
図5参照)。第2筒状部151の長さL2は、第1筒状部133の長さL1より大きい。また、第2筒状部151の長さ(第2フランジ152と第3フランジ153との間隔)L2は、穴B2の長さ(シートバックパッドP2の厚み)L3より小さい。
【0055】
第3ダクト130をシートバックパッドP2に取り付けるときには、カバーパッドP22をパッド本体P21に取り付けていない状態にし、通気路A2の穴B2が繋がる部分を露出させる(
図2参照)。そして、第3ダクト130の第1筒状部133を穴B2に差し込んだ後、保持部材150の第2筒状部151を第1筒状部133の内側に差し込む。このとき、保持部材150の第3フランジ153を撓ませて、第3フランジ153および第2筒状部151を第1筒状部133の内側に入りこませ、第3フランジ153を空洞134Aに入り込ませる。このようにして、保持部材150は、第3ダクト130に固定される。最後に、カバーパッドP22をパッド本体P21に取り付ける。
【0056】
図6(b)に示すように、第3ダクト130をシートバックパッドP2に取り付けると、第1筒状部133は、穴B2に入り込み、穴B2の内面に接触する。また、第1筒状部133と第2筒状部151は、第1フランジ134と第2フランジ152の間で重なる。また、第3フランジ153は、空洞134Aに入り込み、第1フランジ134の内面と係合している。また、第3フランジ153の先端は、穴B2および第1筒状部133より径方向の外側に位置しているので、保持部材150が第3ダクト130から抜ける方向の力が、保持部材150または第3ダクト130に加わった場合であっても、第3フランジ153が第1フランジ134に引っ掛かることで、保持部材150が簡単には抜けないようになっている。
【0057】
このように第3ダクト130を保持部材150でシートバックパッドP2に保持させた状態において、第1フランジ134と第2フランジ152は、シートバックパッドP2の穴B2の外に位置し、シートバックパッドP2を挟持している。このとき、傾斜面134BがシートバックパッドP2の後側の面D2を押圧し、第2フランジ152がシートバックパッドP2の前側の面(通気路A2内の面)E2を押圧している。
【0058】
第4ダクト140をシートクッションパッドP1に取り付けるための構成、取り付け方法および取り付け後の作用については、第3ダクト130をシートバックパッドP2に取り付ける場合と同様であるので説明を省略する。
【0059】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
本実施形態の乗物用シートSによれば、第1フランジ134と第2フランジ152がパッドPを挟持していることで、ダクト100の第1筒状部133がずれてしまうことを抑制できる。
【0060】
また、仮に、保持部材150がダクト100と一体であった場合には、第2フランジ152を穴B2に通すのが困難であるが、保持部材150がダクト100と別体に構成されているので、保持部材150をシートバックパッドP2のダクト100とは反対側から取り付ければよく、第2フランジ152を穴B2に通す必要がない。このため、ダクト100をパッドPに取り付けやすい。
【0061】
また、第1フランジ134は、第1筒状部133に対して傾斜する傾斜面134Bを有しているので、ダクト100の第1筒状部133がパッドPに取り付けられたときに、傾斜面134BがパッドPに押し付けられる。これにより、パッドPの一部が局所的に潰れてパッドPとダクト100の隙間が無くなり、空気漏れを抑制できる。
【0062】
また、第1筒状部133と第2筒状部151は、第1フランジ134と第2フランジ152の間で重なっているので、重なっている部分の強度がアップする。このため、第1筒状部133と第2筒状部151がパッドPの穴B1内で変形することを抑制できるので、通気が安定する。
【0063】
また、第1筒状部133は,143、一定の断面形状を有するので、第1筒状部133,143内の空気の流れを阻害しない。このため、第1筒状部133,143の内部の通気が安定する。
【0064】
また、第1筒状部133,143は、パッドPの穴B1,B2の内面に接触しているので、パッドPとダクト130,140の接続部から空気が漏れるのを抑制できる。
【0065】
また、第1フランジ134,144は、ダクト100内に向けて開口した空洞134A,144Aを有するので、ダクト100の空洞134A,144Aの周囲が撓みやすくなる。これにより、パッドPの柔軟性に影響を与えることを抑制できる。。
【0066】
また、保持部材150の第3フランジ153が、空洞134A,144Aに入り込んでいるので、保持部材150がダクト100から抜けてしまうことを抑制できる。
【0067】
また、第4ダクト140では、蛇腹部142は、第1フランジ144を含むので、第1フランジ144の周囲が撓みやすくなる。これにより、パッドPの柔軟性に影響を与えることを抑制できる。
【0068】
以上、発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。なお、以下では、前記実施形態と同様の構成については同一符号を付して適宜説明を省略し、前記実施形態と異なる点について詳細に説明する。
【0069】
前記した実施形態では、第1フランジがダクト内に向けて開口した空洞を有していたが、第1フランジが空洞を有していなくともよい。また、保持部材が第3フランジを有していたが、第3フランジは省略することができる。
例えば、
図8に示す第1変形例の第3ダクト230は、第1筒状部233と、第1フランジ234とを有している。第1フランジ234は、板形状を有し、第1筒状部233から拡径している。保持部材250は、第2筒状部251と、第2フランジ252とを有している。第1筒状部233と第2筒状部251は、例えば、接着剤で接着されて固定されている。この形態においても、第1フランジ234と第2フランジ252がパッドPを挟持するように第1筒状部233と第2筒状部251とを固定するとよい。これにより、ダクト200が安定してパッドPに保持される。
【0070】
前記した実施形態では、保持部材がダクトの内側に嵌合していたが、保持部材がダクトの外側に嵌合してもよい。例えば、
図9に示す第2変形例では、保持部材350が第3ダクト330の外側に嵌合している。第3ダクト330は、第1筒状部333と、板形状の第1フランジ334と、第3フランジ335とを有している。第1筒状部333が保持部材350の第2筒状部351より一回り小さくなっており、保持部材350の内側に第3ダクト330が入り込むようになっている。第3フランジ335は、第1筒状部333の先端から拡径している。
この形態では、先に、保持部材350をシートバックパッドP2の穴B2に入り込ませた後で、第3ダクト330の第1筒状部333を保持部材350に内側に入り込ませて、第3ダクト330を取り付ける。そして、第3フランジ335が保持部材350の第2フランジ352と係合することで、第3ダクト330が安定して保持される。
【0071】
前記した実施形態では、保持部材の第3フランジが、第1フランジの空洞に入って第1フランジに係合していたが、保持部材のフランジ以外の部分がダクトの一部に係合してもよい。例えば、
図10に示す第3変形例では、保持部材550は、第2筒状部551と、第2フランジ552と、爪部553とを有している。爪部553は、第2筒状部551から外側に突出するように配置されている。爪部553は、第1筒状部533に形成された係合孔533Eに係合する。これにより、保持部材550がダクト500から外れないように接続(固定)される。
【0072】
また、前記実施形態では、送風装置70としてシロッコファンを例示したが、これに限定されず、例えば、プロペラファンやターボファンなどであってもよい。また、前記実施形態では、乗物用シートSが通気穴H1,H2から空気を吹き出すように構成されていたが、これに限定されず、例えば、通気穴から空気を吸い込むように構成されていてもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、ダクトにより送風装置と接続される通気路が、シートクッションおよびシートバックの両方に形成されていたが、これに限定されず、シートクッションおよびシートバックのいずれか一方だけに形成された構成であってもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、乗物用シートとして自動車に搭載される乗物用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載されるシートであってもよい。
【0075】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0076】
70 送風装置
100 ダクト
133 第1筒状部
134 第1フランジ
134A 空洞
134B 傾斜面
150 保持部材
151 第2筒状部
152 第2フランジ
153 第3フランジ
A1 通気路
A2 通気路
B1 穴
B2 穴
P パッド
P1 シートクッションパッド
P2 シートバックパッド
S 乗物用シート
S1 シートクッション
S2 シートバック