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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20230315BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20230315BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/62 Z
A47C7/74 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018133857
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2020011557
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】星 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 和樹
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036744(JP,A)
【文献】特開2009-019645(JP,A)
【文献】特開2007-333108(JP,A)
【文献】特開2015-172415(JP,A)
【文献】特開平07-317982(JP,A)
【文献】国際公開第2004/020231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
A47C 7/00- 7/74
F16L 37/00-39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風装置と、
内部に通気路を有するパッドと、
前記送風装置と前記通気路を接続するダクトと、
一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームを連結する連結部材と、を有するシートフレームと、を備え、
前記ダクトは、第1ダクトと、前記第1ダクトと嵌合した第2ダクトと、を有し、
前記第1ダクトは、外周面の全周に亘って延びる畝または溝形状の第1環状係合部を有し、
前記第2ダクトは、
前記第1環状係合部と係合し、内周面の全周に亘って延びる溝または畝形状の第2環状係合部と、
前記第1環状係合部と前記第2環状係合部が係合したことを確認するための係合確認部であって、目視で確認可能な係合確認部と、を有し、
前記第1ダクトと前記第2ダクトの嵌合部は、前記連結部材の前側に位置し、かつ、前記連結部材と対面し、
前記係合確認部は、前記嵌合部の前記連結部材と対面しない面に形成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第1環状係合部は、前記外周面が突出する畝形状を有し、
前記第2環状係合部は、前記内周面が凹む溝形状を有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記係合確認部は、前記第2ダクトに形成された開口を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第1ダクトは、前記第1環状係合部と前記第2環状係合部が係合したときに前記開口に入り込む突起を有し、
前記係合確認部は、前記突起を含むことを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第2ダクトは、断面が第1方向よりも前記第1方向に直交する第2方向に大きい形状を有し、
前記開口は、前記第2方向に沿った側面に形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記開口は、前記第2環状係合部よりも前記第2ダクトの先端の近くに位置することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記開口は、前記第2環状係合部の一部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第2ダクトは、伸縮可能な蛇腹部を有していることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記係合確認部は、前記第1ダクトに形成された目印であり、
前記目印は、
前記第1環状係合部よりも前記第1ダクトの先端から離れて配置され、
前記第1ダクトと前記第2ダクトが嵌合したときに、前記第2ダクトに覆われることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記第1環状係合部と前記第2環状係合部が係合したときに、前記目印から前記第2ダクトの先端までの距離は、前記目印から前記第1環状係合部までの距離より小さいことを特徴とする請求項9に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記係合確認部は、第2ダクトに形成された窓と、前記第1ダクトに設けられた目印とを含んでなり、
前記第1環状係合部と前記第2環状係合部が係合したときに、前記目印は、前記窓から目視可能に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションおよびシートバックを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調空気をシートクッションやシートバックに送るように構成された車両用シートが知られている(特許文献1)。この車両用シートには、シートクッションおよびシートバックのパッドに通気路と吹出口が形成されており、空調空気はシートクッションの底面に取り付けられた送風装置からダクトを介してパッドの通気路に送られる。この車両用シートでは、第1ダクトの内周側に環状の嵌合凹所が形成され、第1連結ダクトの外周側に環状の嵌合突起が形成されている。そして、嵌合凹所が嵌合突起に嵌合することで第1ダクトと第1連結ダクトが気密的に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-052747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような環状の凹凸の嵌合(以下、「全周嵌合」という。)により、ダクトを連結させた場合には、凹部と凸部が正しく嵌合しないと、ダクト同士に隙間ができやすく、気密性を確保できないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、ダクトの気密性を確保した乗物用シートを提供することを目的とする。
また、ダクト内部の通気を阻害することを抑制することを目的とする。
また、ダクトの強度の低下を抑制することを目的とする。
また、ダクトの接続を確認しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明に係る乗物用シートは、送風装置と、内部に通気路を有するパッドと、送風装置と通気路を接続するダクトと、を備える。ダクトは、第1ダクトと、第1ダクトと嵌合した第2ダクトと、を有する。第1ダクトは、外周面の全周に亘って延びる畝または溝形状の第1環状係合部を有する。第2ダクトは、第1環状係合部と係合し内周面の全周に亘って延びる溝または畝形状の第2環状係合部と、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認するための係合確認部であって目視で確認可能な係合確認部と、を有する。
【0007】
このような構成によれば、第1ダクトと第2ダクトが全周嵌合したときに、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを目視で確認できるので、第1ダクトと第2ダクトを正しく接続しやすく、ダクトの気密性を確保することができる。
【0008】
前記した乗物用シートにおいて、第1環状係合部は、外周面が突出する畝形状を有し、第2環状係合部は、内周面が凹む溝形状を有する構成としてもよい。
【0009】
これによれば、第1環状係合部および第2環状係合部がダクト内部の通気を阻害することを抑制できる。
【0010】
前記した乗物用シートにおいて、係合確認部は、第2ダクトに形成された開口を含む構成としてもよい。
【0011】
これによれば、開口から第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0012】
前記した乗物用シートにおいて、第1ダクトは、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したときに開口に入り込む突起を有し、係合確認部は、突起を含む構成としてもよい。
【0013】
これによれば、突起が開口に入り込んだことを目視することにより、第1環状係合部と第2環状係合部が正しく係合したことを確認できる。
【0014】
前記した乗物用シートにおいて、第2ダクトは、断面が第1方向よりも第1方向に直交する第2方向に大きい形状を有し、開口は、第2方向に沿った側面に形成されている構成とすることができる。
【0015】
これによれば、開口が第2ダクトの広い面に形成されるので、狭い面に形成される場合に比べて、ダクトの強度の低下を抑制できる。
【0016】
前記した乗物用シートにおいて、開口は、第2環状係合部よりも第2ダクトの先端の近くに位置する構成とすることができる。
【0017】
これによれば、ダクトの接続部から空気が漏れることを抑制できる。
【0018】
前記した乗物用シートにおいて、開口は、第2環状係合部の一部に形成されている構成としてもよい。
【0019】
これによれば、開口から第1環状係合部を目視して、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0020】
前記した乗物用シートにおいて、第2ダクトは、伸縮可能な蛇腹部を有している構成としてもよい。
【0021】
これによれば、第2ダクトが曲がりやすく柔軟になり、パッドの柔軟性に影響を与えることを抑制できる。
【0022】
前記した乗物用シートにおいて、係合確認部は、第1ダクトに形成された目印であり、
目印は、第1環状係合部よりも第1ダクトの先端から離れて配置され、第1ダクトと第2ダクトが嵌合したときに第2ダクトに覆われる構成としてもよい。
【0023】
これによれば、第1ダクトに形成された目印が第2ダクトに覆われていることを目視することにより、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0024】
前記した乗物用シートにおいて、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したときに、目印から第2ダクトの先端までの距離は、目印から第1環状係合部までの距離より小さい構成とすることが望ましい。
【0025】
このような構成によれば、目印が第2ダクトに覆われていれば第1環状係合部と第2環状係合部が正しく係合している可能性が高く、ダクトの気密性をより確実に確保することができる。
【0026】
前記した乗物用シートにおいて、係合確認部は、第2ダクトに形成された窓と、第1ダクトに設けられた目印を含んでなり、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したときに、目印は、窓から目視可能に位置する構成としてもよい。
【0027】
これによれば、第1ダクトに形成された目印を第2ダクトに形成された窓から目視することにより、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0028】
前記した乗物用シートにおいて、一対のサイドフレームと、一対のサイドフレームを連結する連結部材と、を有するシートフレームをさらに備え、第1ダクトと第2ダクトの嵌合部は連結部材と対面し、係合確認部は嵌合部の連結部材と対面しない面に形成されている構成としてもよい。
【0029】
これによれば、係合確認部が連結部材によって隠されることがないので、乗物用シートの組立時などに、係合確認部を目視しやすく、ダクトの気密性を確保することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ダクトの気密性を確保した乗物用シートを提供できる。
【0031】
また、第1環状係合部は、外周面が突出する畝形状を有し、第2環状係合部は、内周面が凹む溝形状を有するので、第1環状係合部および第2環状係合部がダクト内部の通気を阻害することを抑制できる。
【0032】
また、係合確認部が、第2ダクトに形成された開口を含むことで、開口から第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0033】
また、突起が開口に入り込んだことを目視することにより、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0034】
また、開口が第2ダクトの広い面に形成されることで、強度の低下を抑制できる。
【0035】
また、開口が第2環状係合部よりも第2ダクトの先端の近くに位置することで、ダクトの接続部から空気が漏れることを抑制できる。
【0036】
また、開口が第2環状係合部の一部に形成されていることで、開口から第1環状係合部を目視して、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0037】
また、第2ダクトは、伸縮可能な蛇腹部を有していることで、第2ダクトが曲がりやすく柔軟になり、パッドの柔軟性に影響を与えることを抑制できる。
【0038】
また、第1ダクトと第2ダクトが嵌合したときに第1ダクトの目印が第2ダクトに覆われる構成とすることで、第1ダクトに形成された目印が第2ダクトに覆われていることを目視することにより、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0039】
また、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したときに、目印から第2ダクトの先端までの距離は、目印から第1環状係合部までの距離より小さい構成とすることで、ダクトの気密性をより確実に確保することができる。
【0040】
また、第1ダクトに形成された目印を第2ダクトに形成された窓から目視することにより、第1環状係合部と第2環状係合部が係合したことを確認できる。
【0041】
また、係合確認部が嵌合部の連結部材と対面しない面に形成されていることで、係合確認部が連結部材によって隠されることがないので、乗物用シートの組立時などに、係合確認部を目視しやすく、ダクトの気密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
図2】乗物用シートの断面図である。
図3】シートフレームの斜視図である。
図4】第1ダクトから第4ダクトの接続を示す図である。
図5】接続前の第2ダクト付近を示す斜視図である。
図6】接続後の第2ダクト付近を示す斜視図である。
図7】第1ダクトと第2ダクトの嵌合部付近を示す断面図である。
図8】第1変形例のダクトの嵌合部付近を前から見た図(a)と、右から見た図(b)である。
図9】第2変形例のダクトの嵌合部付近の嵌合前(a)と嵌合後(b)を示す断面図である。
図10】第3変形例のダクトの嵌合部付近の嵌合前(a)と嵌合後(b)を示す断面図である。
図11】第4変形例のダクトの嵌合部付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付の図面を参照しながら、発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態の乗物用シートSは、自動車に搭載されるシートとして構成されており、シートクッションS1およびシートバックS2を備えている。
【0044】
図2に示すように、乗物用シートSは、シートフレームFに、ウレタンフォームなどからなるパッドPと、布地や皮革などからなる表皮U1,U2を被せることで構成されている。
【0045】
パッドPは、シートクッションS1のパッドを構成するシートクッションパッドP1と、シートバックS2のパッドを構成するシートバックパッドP2を含む。
【0046】
シートクッションパッドP1は、通気路A1と、複数の通気穴H1と、穴B1と、を有している。通気路A1は、シートクッションパッドP1の内部に形成されている。複数の通気穴H1は、シートクッションパッドP1の上側の面に開口し、通気路A1に連通している。穴B1は、シートクッションパッドP1の下側の面に開口し、通気路A1に連通している。シートクッションパッドP1は、通気路A1の一部の表面を構成するパッド本体P11と、パッド本体P11に取り付けられたカバーパッドP12とを組み合わせてなる。パッド本体P11にカバーパッドP12を組み付ける前においては、パッド本体P11は、通気路A1の穴B1が繋がる部分が露出している。本実施形態においては、通気穴H1は、カバーパッドP12に形成されている。カバーパッドP12は、パッド本体P11に対して着脱可能であってもよい。
【0047】
シートバックパッドP2は、通気路A2と、複数の通気穴H2と、穴B2と、を有している。通気路A2は、シートバックパッドP2の内部に形成されている。複数の通気穴H2は、シートバックパッドP2の前側の面に開口し、通気路A2に連通している。穴B2は、シートバックパッドP2の後ろ側の面に開口し、通気路A2に連通している。シートバックパッドP2は、通気路A2の一部の表面を構成するパッド本体P21と、パッド本体P21に取り付けられたカバーパッドP22とを組み合わせてなる。パッド本体P21にカバーパッドP22を組み付ける前においては、パッド本体P21は、通気路A2の穴B2が繋がる部分が露出している。本実施形態においては、通気穴H2は、カバーパッドP22に形成されている。カバーパッドP22は、パッド本体P21に対して着脱可能であってもよい。
【0048】
通気路A1,A2は、ダクト100により送風装置70と接続されている。具体的には、ダクト100は、一端が送風装置70と接続され、他端がパッドPの穴B1,B2に接続されて、送風装置70とパッドPの通気路A1,A2を接続している。送風装置70は、シロッコファンであり、シートクッションS1の下側に配置されている。乗物用シートSは、送風装置70から送風された空気を、ダクト100と、穴B1,B2および通気路A1,A2を通して通気穴H1,H2からシートに座った乗員に向けて吹き出すように構成されている。
【0049】
図3に示すように、シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するシートクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するシートバックフレームF2とを含む。
【0050】
シートクッションフレームF1は、一対のサイドフレーム11と、パンフレーム12と、リヤパイプ13と、フロントパイプ14(図2参照)とを備えている。一対のサイドフレーム11は、シートクッションS1の左右のフレームを構成する部材であり、左右方向に対向した状態で離間して配置されている。サイドフレーム11は、板金からなり、前後に長い長尺状に形成されている。
【0051】
リヤパイプ13とフロントパイプ14は、一対のサイドフレーム11を連結している。具体的には、リヤパイプ13が一対のサイドフレーム11の後部同士を連結しており、フロントパイプ14が一対のサイドフレーム11の前部同士を連結している。リヤパイプ13およびフロントパイプ14は、一対のサイドフレームを連結する連結部材の一例である。
【0052】
シートバックフレームF2は、左右の板金フレーム22と、パイプフレーム23と、ロアフレーム24と、架橋フレーム25とを備えている。左右の板金フレーム22は、左右方向に対向した状態で離間して配置されている。板金フレーム22は、板金からなり、上下に長い長尺状に形成されている。
【0053】
パイプフレーム23は、金属製のパイプ材からなり、略上下に延びる左右のアッパーサイドフレーム23Aと、アッパーサイドフレーム23Aの上端同士を連結するアッパーフレーム23Bとを有している。左右のアッパーサイドフレーム23Aは、下部が板金フレーム22の上部に接続されていることで、左右の板金フレーム22とともに、シートバックS2の左右のフレームを構成する一対のサイドフレーム21を形成している。ロアフレーム24は、板金からなり、一対のサイドフレーム21の下部同士を連結している。架橋フレーム25は、板金からなり、一対のサイドフレーム21の上部同士を連結している。ロアフレーム24、架橋フレーム25およびアッパーフレーム23Bは、一対のサイドフレーム21を連結する連結部材の一例である。
【0054】
サイドフレーム11の後部とサイドフレーム21の下部とは、リクライニング機構RLを介して回動可能に連結されている。これにより、乗物用シートSは、シートバックS2がシートクッションS1に対して前後に回動可能となっている。
【0055】
図4に示すように、ダクト100は、複数の部品から構成されている。具体的に、ダクト100は、第1ダクト110と、第2ダクト120と、第3ダクト130と、第4ダクト140とを有している。
【0056】
第1ダクト110は、略前後に延びる本体部111と、本体部111の後端に配置された第1接続部112と、本体部111の前部に配置された第5接続部113とを有している。本体部111は、前端部が送風装置70に接続される。
【0057】
第2ダクト120は、上下に延びる蛇腹部122と、蛇腹部122の下に設けられた第2接続部121と、蛇腹部122の上に設けられた第3接続部123とを有している。蛇腹部122は、可撓性を有するとともに伸縮自在となっている。第2接続部121は、第1ダクト110の第1接続部112の外側に嵌るようなサイズに形成されている。第2ダクト120の第2接続部121は、第1ダクト110の第1接続部112に接続される。
【0058】
図2に示すように、第2ダクト120は、リヤパイプ13およびロアフレーム24の前側を通ってシートクッションS1からシートバックS2に向かうように配置されている。
【0059】
図4に示すように、第3ダクト130は、上下に延びる本体部132と、本体部132の下に設けられた第4接続部131と、本体部132の上に設けられた第1筒状部133とを有している。
本体部132の上部は、前方に向けて屈曲している。本体部132と、第1筒状部133の間には、第1フランジ134が設けられている。
【0060】
第4接続部131は、第2ダクト120の第3接続部123の内側に嵌るようなサイズに形成されている。第4接続部131は、第2ダクト120の第3接続部123に接続される。
第1筒状部133は、一定の断面形状を有している。第1筒状部133は、シートバックパッドP2に形成された穴B2に接続され、先端に保持部材150が接続されることで、シートバックパッドP2から外れないように保持される。
【0061】
第4ダクト140は、上下に延びる蛇腹部142と、蛇腹部142の下に設けられた第6接続部141と、蛇腹部142の上に設けられた第1筒状部143とを有している。蛇腹部142は、可撓性を有するとともに伸縮可能となっている。第6接続部141は、第1ダクト110の第5接続部113の外側に嵌るようなサイズに形成されている。第6接続部141は、第1ダクト110の第5接続部113に接続される。
第1筒状部143は、一定の断面形状を有している。第1筒状部143は、シートクッションパッドP1に形成された穴B1に接続される。そして、第3ダクト130の第1筒状部133と同様に、先端に保持部材150が接続されることで、シートクッションパッドP1から外れないように保持される。
【0062】
次に、第1ダクト110と第2ダクト120の嵌合による接続構造について説明する。
【0063】
図5に示すように、第1ダクト110の第1接続部112は、矩形の筒形状を有している。第1接続部112は、断面が第1方向(前後方向)よりも、第1方向に直交する第2方向(左右方向)に大きい矩形を有している。第1接続部112は、第1環状係合部112Aと、先端部112Bと、基端部112Cとを有している。
【0064】
先端部112Bは、第1環状係合部112Aよりも第1ダクト110の先端側の部分であり、先端には、ダクト開口112Gが形成されている。先端部112Bは、一定の断面形状を有している。
【0065】
第1環状係合部112Aは、第1接続部112の外周面の全周に亘って延びている。第1環状係合部112Aは、外周面が突出する畝形状を有している。第1環状係合部112Aは、傾斜部C1と拡径部C2と抜止部C3とを有している。
【0066】
傾斜部C1は、先端部112Bに対して傾斜している。傾斜部C1は、先端部112Bから離れるにつれてダクトの外側(内部流路の中心から離れる側)に広がるように延びている。
【0067】
拡径部C2は、先端部112Bから離れるように、傾斜部C1から延びている。拡径部C2の断面は、先端部112Bより大きな矩形であり、一定形状を有している。
【0068】
抜止部C3は、拡径部C2と基端部112Cを連結している。抜止部C3は、第1ダクト110の本体部111が延びる方向に対して直交している。
【0069】
基端部112Cは、先端部112Bから離れるように、第1環状係合部112Aから延びている。基端部112Cは、一定の矩形の断面形状を有している。基端部112Cの断面形状および大きさは、先端部112Bと同じである。基端部112Cは、第2方向に沿った側面すなわち長辺側の面に突起112Dを有している。突起112Dは、基端部112Cから外側に突出している。
【0070】
第2ダクト120の第2接続部121は、矩形の筒形状を有している。第2接続部121は、断面が第1方向(前後方向)よりも、第1方向に直交する第2方向(左右方向)に大きい矩形を有している。第2接続部121は、第2環状係合部121Aと、先端部121Bと、基端部121Cとを有している。第2接続部121は、第1接続部112の外側に嵌合するため、第2接続部121の各部分は、第1接続部112の各部分より一回り大きく形成されている。
【0071】
先端部121Bは、第2環状係合部121Aよりも第2ダクト120の先端側の部分であり、先端には、ダクト開口121Gが形成されている。先端部121Bは、一定の断面形状を有している。先端部121Bは、第2方向に沿った側面すなわち長辺側の面に開口121Dを有している。つまり、開口121Dは、第2方向に沿った側面に形成されている。開口121Dは、第2環状係合部121Aよりも第2ダクト120の先端の近くに位置する。第2環状係合部121Aは、第2接続部121の外周面の全周に亘って延びている。第2環状係合部121Aは、内周面が凹む、溝形状を有している。第2環状係合部121Aは、傾斜部D1と拡径部D2と抜止部D3とを有している。
【0072】
抜止部D3は、先端部121Bと直交する方向であって、ダクトの外側(内部流路の中心から離れる側)に広がるように、先端部121Bから延びている。
【0073】
拡径部D2は、先端部121Bから離れるように、抜止部D3から延びている。拡径部D2の断面は、先端部121Bより大きな矩形であり、一定形状を有している。
【0074】
傾斜部D1は、先端部121Bに対して傾斜している。傾斜部D1は、拡径部D2から離れるにつれてダクトの内側(内部流路の中心)に近づくように延びている。
【0075】
基端部121Cは、先端部121Bから離れるように、第2環状係合部121Aから延びている。基端部121Cは、一定の矩形の断面形状を有している。基端部121Cの断面形状および大きさは、先端部121Bと同じである。
【0076】
第1ダクト110と第2ダクト120を接続するときには、図5に示す状態から、第2ダクト120の先端部121Bの中に第1ダクト110の先端部112Bを差し込む。そして、第1接続部112を第2接続部121に押し込むと、第1ダクト110の傾斜部C1が第2ダクト120の先端部121Bに接触する。傾斜部C1は、先端部121Bを押し広げると同時に第1環状係合部112Aを縮めるように作用し、第1接続部112が第2接続部121の中に案内される。そして、第1環状係合部112Aが第2環状係合部121Aと係合し、図6および図7に示す状態となる。
【0077】
この状態で、傾斜部D1は傾斜部C1と重なり、拡径部D2は拡径部C2と重なり、抜止部D3は、抜止部C3と重なる。これにより、全周嵌合によって、第1ダクト110と第2ダクト120の接続の気密性が良くなる。また、抜止部D3が、抜止部C3と重なることで、第1ダクト110が第2ダクト120から容易には抜けないようになる。
【0078】
そして、第1ダクト110と第2ダクト120が接続され、第2環状係合部121Aと第1環状係合部112Aが係合したとき、第1接続部112の突起112Dは、第2接続部121の開口121Dに入り込む。
【0079】
第2環状係合部121Aは、第1環状係合部112Aを外側から覆っているので、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aの係合を直接目視で確認することはできない。しかし、本実施形態においては、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが係合すると、第1接続部112の突起112Dが第2接続部121の開口121Dに入り込むので、突起112Dが開口121Dに入り込んだことを目視で確認することで、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aの係合を確認することができる。本実施形態では、第1ダクト110の突起112Dと、第2ダクト120に形成された開口121Dは、係合を確認部する係合確認部J1として機能している。つまり、係合確認部J1は、突起112Dと、開口121Dを含む。係合確認部J1は、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが係合したこと確認するためのものであり、目視で確認可能である。
【0080】
図6に示すように、第1ダクト110と第2ダクト120の嵌合部E1はリヤパイプ13と対面している(図2も参照)。係合確認部J1は、嵌合部E1のリヤパイプ13と対面しない面、ここでは、一例として前側の面に形成されている。
【0081】
第3接続部123と第4接続部131を接続するための構成、接続方法および接続後の作用については、第1接続部112と第2接続部121を接続する場合と同様であるので説明を省略する。
【0082】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
第1ダクト110と第2ダクト120が全周嵌合したときに、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが係合したことを目視で確認できるので、第1ダクト110と第2ダクト120を正しく接続しやすく、ダクトの気密性を確保することができる。
【0083】
また、第1環状係合部112Aは、外周面が突出する畝形状を有し、第2環状係合部121Aは、内周面が凹む溝形状を有するので、第1環状係合部112Aおよび第2環状係合部121Aがダクト内部の通気を阻害することを抑制できる。
【0084】
また、係合確認部J1は、第2ダクト120に形成された開口121Dと、第1ダクト110に配置された突起112Dを含んでいるので、突起112Dが開口121Dに入り込んだことを目視することにより、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが正しく係合したことを確認できる。
【0085】
また、開口121Dは、第2方向に沿った側面、すなわち第2ダクト120の広い面に形成されるので、狭い面に形成される場合に比べて、ダクト100の強度の低下を抑制できる。
【0086】
また、開口121Dは、第2環状係合部121Aの先端部D5に形成されている。つまり、第2環状係合部121Aよりも第2ダクト120の先端の近くに位置するので、ダクト100の接続部から空気が漏れることを抑制できる(図7参照)。
【0087】
また、第2ダクト120は、伸縮可能な蛇腹部122を有しているので、第2ダクト120が曲がりやすく柔軟になり、パッドPの柔軟性に影響を与えることを抑制できる。
【0088】
係合確認部J1は、第1ダクト110と第2ダクト120の嵌合部E1のリヤパイプ13と対面しない面に形成されている。このため、係合確認部J1がリヤパイプ13によって隠されることがないので、組み立て時などに、係合確認部J1を目視しやすい。
【0089】
以上、発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。なお、以下では、前記実施形態と同様の構成については同一符号を付して適宜説明を省略し、前記実施形態と異なる点について詳細に説明する。
【0090】
前記した実施形態では、係合確認部は第1ダクトに設けられた突起を目印として含んでいたが、突起のような目印がない構成とすることもできる。
例えば、図8(a),(b)に示す第1変形例では、開口221Bを設けることで、第1環状係合部112Aと第2環状係合部221Aの係合状態を直接目視で確認できるように構成されている。具体的に、第1ダクト210は、突起のような目印となる構成を有していない。一方、第2ダクト220には、第2環状係合部221Aの一部に係合確認部J2としての開口221Bが形成されている。より具体的には、開口221Bは、第2環状係合部221Aの周方向における一部に形成されている。また、開口221Bは、第2ダクト220の長手方向の一部に形成されている。これにより、第1ダクト210と第2ダクト220を接続すると、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが係合したときに、第1環状係合部112Aの一部が開口221Bから露出する。このため、開口221Bから第1環状係合部112Aを目視して、第1環状係合部112Aと第2環状係合部221Aが係合したことを確認することができる。この形態では、第1ダクト210に係合を確認するための突起等を設ける必要はないので、第1ダクト210の構成をシンプルにすることができる。
【0091】
係合確認部は、第1ダクトに形成された目印であってもよい。
例えば、図9に示す第2変形例の係合確認部J3は、第1ダクト310に目印として形成されたライン350である。図9(a)に示すように、第1ダクト310は、第1接続部312の基端部312Cが、本体部111よりも一回り太く形成されている。これにより、本体部111と基端部312Cとの段差により、ライン350が表示されている。
【0092】
ライン350は、第1環状係合部112Aよりも第1ダクト310の先端から離れて配置されている。また、第1環状係合部112Aからライン350までの距離L1は、第2環状係合部121Aから第2ダクト320の先端までの距離L2より小さい。
図9(b)に示すように、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが係合したときに、ライン350は、第2ダクト320の先端部321Bに覆われる。そして、ライン350から第2ダクト320の先端までの距離L3は、ライン350から第1環状係合部312Aまでの距離L4より小さい。すなわち、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが係合して、第1ダクト310と第2ダクト320の接続が完了するとすぐにライン350が第2ダクト320に覆われるようになっている。このため、ライン350が第2ダクト320に覆われていれば第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが正しく係合している可能性が高く、ダクト100の気密性をより確実に確保することができる。
この第2変形例によっても、第1ダクト310と第2ダクト320を全周嵌合により連結させたときに、ライン350が第2ダクト320に覆われていることを目視することにより、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが係合したことを確認できる。
【0093】
係合確認部は、第1ダクトに設けられた目印と第2ダクトに形成された窓を含む構成であってもよい。
例えば、図10(a),(b)に示すように、第3変形例の係合確認部J4は、第2ダクト420に形成された窓460と、第1ダクト410に設けられた目印の一例としての印刷された記号450を含んでなる。窓460は、開口(貫通孔)、透明な樹脂、薄いフィルムなどを適用することができる。記号450は、窓460から視認可能であれば、表示の方法や形などは特に限定されるものではない。この形態では、記号450は、第1接続部412のうち、基端部412Cに設けられている。また、窓460は、第2接続部421のうち、先端部421Bに設けられている。図10(b)に示すように、第1環状係合部412Aと第2環状係合部421Aが係合したときに、記号450は、窓460から目視可能に位置する。この形態においては、記号450の全体が窓460内に入っていれば、第1環状係合部112Aと第2環状係合部121Aが正しく係合したと判定できるように設定されているものとする。しかし、目印と開口の形状によっては、開口内に目印が一部でも見えれば、第1環状係合部と第2環状係合部が正しく係合したと判定できるように設定することもできる。
【0094】
前記実施形態では、第1環状係合部は、外周面が突出する畝形状を有し、第2環状係合部は、内周面が凹む溝形状を有していたが、図11に示す第4変形例のように、第1ダクト510の第1環状係合部512Aが、外周面に凹む溝形状を有し、第2ダクト520の第2環状係合部521Aが内周面に突出する畝形状を有していてもよい。
【0095】
前記実施形態では、各ダクト、各接続部の断面が矩形であったが、矩形に限定されず、円形、楕円、多角形などであってもよい
【0096】
前記実施形態では、第2接続部121の先端部D5に、開口121Dが配置されていたが、この開口が、第2ダクト120の縁(例えば、図5における下端)まで延びる切欠きであってもよい。
【0097】
また、前記実施形態では、送風装置70としてシロッコファンを例示したが、これに限定されず、例えば、プロペラファンやターボファンなどであってもよい。また、前記実施形態では、乗物用シートSが通気穴H1,H2から空気を吹き出すように構成されていたが、これに限定されず、例えば、通気穴から空気を吸い込むように構成されていてもよい。
【0098】
また、送風装置は、例えば、羽根車の回転方向を切り替えることで、送風と吸引を切り替えることができるものであってもよい。また、前記実施形態では、乗物用シートSが送風装置70を備えていたが、乗物用シート自体は送風装置を備えない構成であってもよい。言い換えると、送風装置は、乗物用シートが搭載される自動車の車体に設けられていてもよい。この場合、乗物用シートは、ダクトが、例えば、車体に設けられた空気の吹出口または吸引口に接続される構成とすることができる。
【0099】
また、前記実施形態では、ダクトにより送風装置と接続される通気路が、シートクッションおよびシートバックの両方に形成されていたが、これに限定されず、シートクッションおよびシートバックのいずれか一方だけに形成された構成であってもよい。
【0100】
また、前記実施形態では、乗物用シートとして自動車に搭載される乗物用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載されるシートであってもよい。
【0101】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0102】
100 ダクト
110 第1ダクト
112A 第1環状係合部
112B 先端部
112C 基端部
112D 突起
120 第2ダクト
121A 第2環状係合部
121B 先端部
121C 基端部
121D 開口
122 蛇腹部
C1 傾斜部
C2 拡径部
C3 抜止部
D1 傾斜部
D2 拡径部
D3 抜止部
J1 係合確認部
S 乗物用シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11