(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
H02M3/28 F
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2019037480
(22)【出願日】2019-03-01
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】加戸 稔
(72)【発明者】
【氏名】日向寺 拓未
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0192575(US,A1)
【文献】特開2016-123185(JP,A)
【文献】特開2009-273329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧変換用のトランスと、該トランスの一次側コイルと直列形態に接続された主スイッチング素子と、該主スイッチング素子をオン、オフ制御する一次側制御回路と、前記トランスの二次側コイルと直列形態に接続された同期整流用MOSトランジスタと、該同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する二次側制御回路と、を有するスイッチング電源装置であって、
前記二次側制御回路は、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧と所定のしきい値電圧とを比較して該同期整流用MOSトランジスタをオフさせるタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記しきい値電圧を設定するしきい値電圧設定回路と、
を備え、前記しきい値電圧設定回路は、前記二次側コイルの導通期間、または一次側コイルの導通期間に前記二次側コイルの導通期間を加算した期間を基に、前記しきい値電圧を設定するように構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
電圧変換用のトランスと、該トランスの一次側コイルと直列形態に接続された主スイッチング素子と、該主スイッチング素子をオン、オフ制御する一次側制御回路と、前記トランスの二次側コイルと直列形態に接続された同期整流用MOSトランジスタと、該同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する二次側制御回路と、を有するスイッチング電源装置であって、
前記二次側制御回路は、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧と所定のしきい値電圧とを比較して該同期整流用MOSトランジスタをオフさせるタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記しきい値電圧を設定するしきい値電圧設定回路と、を備え、
前記しきい値電圧設定回路は、前記ドレイン電圧が立ち上がる直前に設定された判定タイ ミングに所定の判定タイミング信号を生成する判定タイミング検出回路と、前記判定タイミング信号と前記オフタイミング検出回路より出力されるオフタイミング検出信号とを比較してタイミングの早い方の信号を判定するタイミング判定回路とを備え、前記タイミング判定回路の判定結果に応じて前記しきい値電圧を調整するように構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記しきい値電圧設定回路は、
前記ドレイン電圧が立ち上がる直前に設定された判定タイミングに所定の判定タイミング信号を生成する判定タイミング検出回路と、
前記判定タイミング信号と前記オフタイミング検出回路より出力されるオフタイミング検出信号とを比較してタイミングの早い方の信号を判定するタイミング判定回路と、
前記タイミング判定回路の判定結果に応じて設定する前記しきい値電圧を調整する電圧調整回路と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記しきい値電圧設定回路は、
前記タイミング判定回路が、前記判定タイミング信号の方が前記オフタイミング検出信号よりも前であると判定した場合に、前記電圧調整回路により、オフタイミングが早くなるように前記しきい値電圧を調整するように構成されていることを特徴とする
請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記しきい値電圧設定回路は、
前記タイミング判定回路が、前記判定タイミング信号の方が前記オフタイミング検出信号よりも後であると判定した場合に、前記電圧調整回路により、オフタイミングが遅くなるように前記しきい値電圧を調整するように構成されていることを特徴とする請求項
3または4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記ドレイン電圧と所定の第1電圧とを比較して、前記同期整流用MOSトランジスタがオフされたのち前記ドレイン電圧が立ち上がる際の第1タイミングを検出する第1ドレイン検出回路と、
前記ドレイン電圧と前記第1電圧よりも低い第2電圧とを比較して、前記ドレイン電圧が立ち上がる際の第2タイミングを検出する第2ドレイン検出回路と、
前記第1ドレイン検出回路の検出信号と前記第2ドレイン検出回路の検出信号の時間差が、予め設定された所定値を超えた場合に電流不連続モードであると判定するモード判定回路と、を備え、
前記モード判定回路は、前記電流不連続モードであることを示す信号を前記電圧調整回路へ出力するように構成されていることを特徴とする請求項
3~5のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記電圧調整回路は、前記電流不連続モードであることを示す信号が入力されていない場合に、オフタイミングを遅くするような前記しきい値電圧の調整を行わないように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記二次側制御回路は、前記判定タイミング信号の方が前記オフタイミング検出信号よりも前であると判定した場合に、前記判定タイミングで前記同期整流用MOSトランジスタをオフするように構成されていることを特徴とする請求項
3~7のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
電圧変換用のトランスと、該トランスの一次側コイルと直列形態に接続された主スイッチング素子と、該主スイッチング素子をオン、オフ制御する一次側制御回路と、前記トランスの二次側コイルと直列形態に接続された同期整流用MOSトランジスタと、該同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する二次側制御回路と、を有するスイッチング電源装置であって、
前記二次側制御回路は、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧と所定のしきい値電圧とを比較して該同期整流用MOSトランジスタをオフさせるタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記しきい値電圧を設定するしきい値電圧設定回路と、
前記ドレイン電圧が立ち上がる直前に設定された判定タイミングに所定の判定タイミング信号を生成する判定タイミング検出回路と、を備え、
前記しきい値電圧設定回路は、前記ドレイン電圧が前記所定のしきい値電圧を超えるタイミングが前記判定タイミングよりも前のタイミングとなる場合に、前記しきい値電圧を高く設定するように構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項10】
電圧変換用のトランスと、該トランスの一次側コイルと直列形態に接続された主スイッチング素子と、該主スイッチング素子をオン、オフ制御する一次側制御回路と、前記トランスの二次側コイルと直列形態に接続された同期整流用MOSトランジスタと、該同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する二次側制御回路と、を有するスイッチング電源装置であって、
前記二次側制御回路は、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧と所定のしきい値電圧とを比較して該同期整流用MOSトランジスタをオフさせるタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記しきい値電圧を設定するしきい値電圧設定回路と、
前記ドレイン電圧が立ち上がる直前に設定された判定タイミングに所定の判定タイミング信号を生成する判定タイミング検出回路と、を備え、
前記しきい値電圧設定回路は、前記ドレイン電圧が前記所定のしきい値電圧を超えるタイミングが前記判定タイミングよりも後のタイミングとなる場合に、前記しきい値電圧を低く設定するように構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換用のトランスを備えたスイッチング制御方式の直流電源装置に関し、例えばトランスの二次側に同期整流スイッチを設けた絶縁型DC-DCコンバータに利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源装置の1つとして、トランスの一次側コイルに間欠的に電流を流すためのスイッチング素子としてのMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)および該素子をオン、オフ制御する制御回路(IC)を備え、一次側コイルに電流を流すことで二次側コイルに誘起された電流をダイオードにより整流し、コンデンサで平滑して出力するスイッチング電源装置(絶縁型DC-DCコンバータ)がある。かかるDC-DCコンバータは、入力のAC電圧を整流して生成したDC電圧をトランスの一次側に入力するようにしたAC-DCコンバータでも使用される。
【0003】
ところで、二次側回路に整流用ダイオードを用いた絶縁型DC-DCコンバータにおいては、整流用ダイオードにおける損失が大きく効率を低下させる原因となる。そこで、例えば特許文献1や2に記載されているように、二次側回路の整流用ダイオードの代わりに同期整流用のスイッチング素子(MOSトランジスタ)を設けるとともに、二次側制御回路によって二次側スイッチング素子の端子電圧(ソース・ドレイン間電圧)を検出し、一次側回路のスイッチング素子のオフタイミングに同期して二次側スイッチング素子をターンオン制御することによって、整流素子における損失を減らし高効率化を図るようにした技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4862432号公報
【文献】米国特許第10027235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次側同期整流方式の絶縁型DC-DCコンバータにおいては、二次側の同期整流用MOSトランジスタのオン、オフ制御を、当該MOSトランジスタのソース・ドレイン間電圧を検出して行うのが一般的である。しかし、MOSトランジスタのオン抵抗(通常数mΩ)による電圧降下は非常に小さいため、ソース・ドレイン間電圧を検出するには高精度でばらつきの少ない安定した検出回路(コンパレータ)が必要になるという課題がある。特許文献1の発明は、そのような課題を解決する手段を提案している。同期整流用MOSトランジスタのソース端子は、一般に二次側の接地点に接続されるので、以下の説明では、ソース・ドレイン間電圧を単にドレイン電圧と称する。
【0006】
特許文献1に記載されている発明においては、同期整流用のスイッチング素子のボディダイオードに順方向電流が流れるタイミングを検出する第1タイミング検出回路と、スイッチング素子のオン、オフ制御信号の変化タイミングを検出する第2タイミング検出回路と、ボディダイオードがオフした瞬間に発生する逆起電圧の変化タイミングを検出する第3タイミング検出回路とを備え、前記第1タイミングで前記スイッチング素子をオンさせ、前記第3タイミングよりも前にスイッチング素子をオフさせるとともに、このスイッチング素子のオフタイミングを前記第3タイミングに近づけるようにスイッチング素子のオン、オフ制御信号を生成する。そして、第2タイミング検出回路の検出信号により起動され一定の速度で変化する電圧を出力するタイマの機能を有する回路と、このタイマ回路の出力電圧としきい値電圧(以下、しきい値と称する)とを比較するコンパレータとを設け、前記第2タイミングと第3タイミングとの時間差に応じて前記しきい値を変化させるようにしている。
【0007】
しかしながら、上記のような絶縁型DC-DCコンバータにあっては、第2タイミングと第3タイミングとの時間差(同期整流用MOSトランジスタのボディダイオードの導通時間)に応じてタイマ機能のしきい値を調整することでターンオフタイミングを決定しているため、たとえば電源装置の入力または出力の条件が切替わって一次側や二次側の導通期間が変化した際などにおいて、ターンオフタイミングがフィードバックで安定点に到達するまでに時間を要してターンオフタイミングの調整が遅れ、それによってスイッチング素子に逆方向電流が流れて素子破壊に至るおそれがあるといった問題点がある(第1の問題点)。
【0008】
一方、特許文献2に記載されている発明は、同期整流器(MOSトランジスタ)のドレイン電圧がターンオフ判定しきい値を超えて上昇したことに応答して、同期整流器をターンオフするように構成し、同期整流器のターンオフと同期整流器のボディダイオードの導通の終了との間に検出された不感時間(デッドタイム)に基づいてターンオフ判定しきい値を調整するとともに、オン、オフ制御信号を生成する同期整流器ドライバには、検出された前記デッドタイムに基づいてオン、オフ制御信号を変調する電流を調整する機能を有するように構成されたデッドタイム自己同調ブロックを設けることを提案している。
【0009】
上記のような構成を備えた特許文献2の電源装置にあっては、負荷が大きな状況での電流連続モード(CCM)で、一次側ターンオフ以降の電流傾きが急峻になるため、逆流を防ぐにはしきい値によるオフ信号検出から同期整流用MOSトランジスタのターンオフまでの制御を、ドレイン電流Idsが0Aに到達するまでに完了しなければならない。しかし、一般的に、MOSトランジスタの電流傾きが大きくなる方向へ変化すると、寄生インダクタンス成分によりドレイン電圧が持ち上がるため、ターンオフ判定しきい値によるオフ信号検出ポイントが早まる傾向となる。
【0010】
しかるに、臨界付近のCCMでは、電流の傾きが変化してから0Aに到達するまでの時間が非常に短い。そのため、しきい値によるオフタイミングの検出からMOSトランジスタのターンオフまでの制御に高速な応答が必要であり、高性能の制御回路が要求される。また、DCMからCCMへ移行した直後、CCMのターンオフ判定しきい値に調整されるまでの間に、
(制御回路の遅延時間)>Idsが0Aに到達するまでの時間
という条件が成立すると、逆流が発生して素子破壊に至るおそれがある(第2の問題点)。
なお、上記不等式の「Idsが0Aに到達するまでの時間」の開始点は、ターンオフ判定しきい値によるオフタイミング(OFF_SIG信号)の検出時点である。
【0011】
また、特許文献2の同期整流器を備えた電源装置は、CCMにおいては一次側制御ICの周期が固定された状態で動作する。この状況下では、二次側コイルの蓄積エネルギがすべて吐き出される前に同期整流器がターンオフすることで残留したエネルギによる電流が、ターンオン後に加算されることで生じる重畳電流の大きさが電源装置の入出力条件の微小な変化でも変化する。また、外乱ノイズに対するフィードバック制御等の要因により、重畳電流が変化することもある。しかし、特許文献2の同期整流器では、重畳電流によってターンオフ判定しきい値が、DCMの場合よりもターンオフを早める側に調整される。そのため、入出力条件の微小変化や外乱ノイズでもターンオフポイントが最適値から乖離するので、ターンオフのタイミングがばたつく原因となり、効率の低下を招くという問題点がある(第3の問題点)。
【0012】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電圧変換用のトランスおよび二次側同期整流素子を備えたスイッチング電源装置において、一次側や二次側の導通期間が変化しても同期整流素子に逆流が発生するターンオフの遅れを回避できるようにすることにある。
本発明の他の目的は、二次側の同期整流素子の制御に求められる応答速度を緩和できるとともに、DCM(電流不連続モード)からCCM(電流連続モード)へ移行した直後、CCMのターンオフ判定しきい値に調整されるまでの間に、逆流が発生して素子破壊に至るような危険な状態が発生するのを回避できるようにすることにある。
本発明のさらに他の目的は、CCM(電流連続モード)で動作する状況下で、ターンオフ判定しきい値が過剰に補正されるのを防止して、ターンオフのタイミングがばたつくのを回避し効率の低下を防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、この発明は、
電圧変換用のトランスと、該トランスの一次側コイルと直列形態に接続された主スイッチング素子と、該主スイッチング素子をオン、オフ制御する一次側制御回路と、前記トランスの二次側コイルと直列形態に接続された同期整流用MOSトランジスタと、該同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する二次側制御回路と、を有するスイッチング電源装置であって、
前記二次側制御回路は、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧と所定のしきい値電圧とを比較して該同期整流用MOSトランジスタをオフさせるタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記しきい値電圧を設定するしきい値電圧設定回路と、
を備え、前記しきい値電圧設定回路は、前記二次側コイルの導通期間、または一次側コイルの導通期間に前記二次側コイルの導通期間を加算した期間を基に、前記しきい値電圧を設定するように構成したものである。
【0014】
上記構成を有するスイッチング電源装置によれば、同期整流用トランジスタのボディダイオードの導通期間に応じてタイマ機能のしきい値を調整するのではなく、二次側コイルの導通期間、または一次側コイルの導通期間に二次側コイルの導通期間を加算した期間を基に、ターンオフ判定のしきい値を設定するので、電源装置の入力または出力の条件が切替わって一次側や二次側の導通期間が変化した際など、しきい値の調整が安定点に到達するまでに時間を要する場合においても、ドレイン電流Idsが0Aに近づくことで、ドレイン電圧VDがVD電圧の式(VD=Ids×(Ron+R)+L×dIds/dt)に従って変化し、ターンオフ判定のしきい値を超えることで同期整流用トランジスタをオフでき、それによって同期整流用トランジスタに逆方向電流が流れるのを防止することができる。なお、VD電圧の式中のRonは同期整流用トランジスタのオン抵抗、Rは配線パターンの寄生抵抗、Lは配線パターンの寄生インダクタンスである。
【0015】
ここで、前記しきい値電圧設定回路は、
前記ドレイン電圧が立ち上がる直前に設定された判定タイミングに所定の判定タイミング信号を生成する判定タイミング検出回路と、
前記判定タイミング信号と前記オフタイミング検出回路より出力されるオフタイミング検出信号とを比較してタイミングの早い方の信号を判定するタイミング判定回路と、
前記タイミング判定回路の判定結果に応じて設定する前記しきい値電圧を調整する電圧調整回路と、を備えように構成することで、実現することができる。
【0016】
また、望ましくは、前記しきい値電圧設定回路は、
前記タイミング判定回路が、前記判定タイミング信号の方が前記オフタイミング検出信号よりも前であると判定した場合に、前記電圧調整回路により、オフタイミングが早くなるように前記しきい値電圧を調整するように構成する。
さらに、望ましくは、前記しきい値電圧設定回路は、
前記タイミング判定回路が、前記判定タイミング信号の方が前記オフタイミング検出信号よりも後であると判定した場合に、前記電圧調整回路により、オフタイミングが遅くなるように前記しきい値電圧を調整するように構成する。
【0017】
上記のように構成することにより、オフタイミング検出信号と判定タイミングとの前後関係に応じてターンオフ判定のしきい値電圧を調整し、オフタイミング検出信号を、二次側導通期間の終了点よりも少し手前に設定された判定タイミングに近づけることができ、同期整流用トランジスタのオンからオフへの切り替え直後にボディダイオードを通して電流が流れる時間を短縮することができる。
また、しきい値によるオフタイミングの検出よりも手前に、判定タイミングを設定することができ、二次側の同期整流素子の制御に求められる応答速度を緩和できる。
ここで、前記二次側制御回路は、前記判定タイミング信号の方が前記オフタイミング検出信号よりも前であると判定した場合に、前記判定タイミングで前記同期整流用MOSトランジスタをオフするように構成すると良い。
【0018】
さらに、望ましくは、前記ドレイン電圧と所定の第1電圧とを比較して、前記同期整流用MOSトランジスタがオフされたのち前記ドレイン電圧が立ち上がる際の第1タイミングを検出する第1ドレイン検出回路と、
前記ドレイン電圧と前記第1電圧よりも低い第2電圧とを比較して、前記ドレイン電圧が立ち上がる際の第2タイミングを検出する第2ドレイン検出回路と、
前記第1ドレイン検出回路の検出信号と前記第2ドレイン検出回路の検出信号の時間差が、予め設定された所定値を超えた場合に電流不連続モードであると判定するモード判定回路と、を備え、
前記モード判定回路は、前記電流不連続モードであることを示す信号を前記電圧調整回路へ出力するように構成する。
かかる構成によれば、電圧調整回路が、電流連続モードか電流不連続モードかに応じてターンオフ判定しきい値電圧の調整を実行可能にすることができる。
【0019】
さらに、望ましくは、前記電圧調整回路は、前記電流不連続モードであることを示す信号が入力されていない場合に、オフタイミングを遅くするような前記しきい値電圧の調整を行わないように構成する。
かかる構成によれば、DCMからCCMへ移行した直後、CCMのターンオフ判定しきい値に調整されるまでの間に、逆流が発生して素子破壊に至るような危険な状態が発生するのを回避することができる。
【0020】
さらに、望ましくは、前記二次側制御回路は、前記判定タイミング信号の方が前記オフタイミング検出信号よりも前であると判定した場合に、前記判定タイミングで前記同期整流用MOSトランジスタをオフするように構成する。
これにより、判定タイミングによるオフタイミングの検出が優先されるため、重畳電流が大きいCCMの条況下でターンオフのバタつきを低減することができ、効率の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、二次側に同期整流素子を備えたスイッチング電源装置において、DCMで動作する状況下で、同期整流用トランジスタのオンからオフへの切り替え直後にボディダイオードを通して電流が流れる時間を短縮しつつ、同期整流用トランジスタに逆方向電流が流れるのを防止することができる。また、DCM(電流不連続モード)からCCM(電流連続モード)への移行時など、一次側や二次側の導通期間が変化した直後、CCMのターンオフ判定しきい値に調整されるまでの間に、逆流が発生して素子破壊に至るような危険な状態が発生するのを回避できるとともに、二次側の同期整流素子の制御に求められる応答速度を緩和できる。さらに、CCM(電流連続モード)で動作する状況下で、ターンオフ判定しきい値が過剰に補正されるのを防止して、ターンオフのタイミングがばたつくのを回避し安定したターンオフを実現するとともに、効率の低下を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明を適用して有効な二次側同期整流方式のスイッチング電源装置の構成例を示す回路構成図である。
【
図2】実施形態のスイッチング電源装置を構成する二次側制御回路の構成例を示すブロック構成図である。
【
図3】実施形態の二次側制御回路を構成する判定タイミング検出回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図4】実施形態の二次側制御回路を構成するしきい値電圧調整回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図5】実施形態の二次側制御回路の動作中における同期整流用素子(MOSトランジスタ)のドレイン電圧とタイミング検出回路のタイマ出力とサンプリングパルスと判定タイミング信号および第2ドレイン検出回路の出力信号の変化の様子を示す波形図である。
【
図6】実施形態の二次側制御回路の動作中における同期整流用素子(MOSトランジスタ)のドレイン電圧とオンタイミング検出信号と判定タイミング信号とオンタイミング検出信号およびゲート駆動信号の変化の様子を示す波形図である。
【
図7】実施形態の二次側制御回路の通常動作中における同期整流用トランジスタのドレイン電圧と判定タイミング信号とオフタイミング検出信号とDCM検出信号とターンオフ判定のしきい値電圧と電圧調整回路内のワンショットパルスの変化の様子を示すもので、(A)は判定タイミング信号よりもオフタイミング検出信号の方が早い場合の波形図、(B)は、オフタイミング検出信号よりも判定タイミング信号の方が早い場合の波形図である。
【
図8】DCM検出動作を説明するための波形図で、同期整流用MOSトランジスタがオンからオフに切り替わるポイントの前後の期間における各部の電圧や信号の変化を拡大して示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した同期整流方式のスイッチング電源装置の一実施形態を示す。
この実施形態におけるスイッチング電源装置は、一次側コイルLpと二次側コイルLsおよび補助巻線Laを有する電圧変換用のトランス10を備え、該トランス10の一次側にNチャネルMOSトランジスタからなるスイッチング素子SWおよびその制御回路(一次側制御回路)11を設け、二次側に同期整流素子としてのMOSトランジスタS0およびその制御回路(二次側制御回路)20を設けた絶縁型DC-DCコンバータとして構成されている。この実施形態では、トランス10に、二次側コイルLsの極性が一次側コイルLpと逆極性のものが使用されており、フライバックコンバータとして動作するように構成されている。
【0024】
一次側のスイッチング素子SWはトランス10の一次側コイルLpと直列に接続されている。一次側制御回路11および二次側制御回路20は、各々1個の半導体チップ上に半導体集積回路(IC)として、または1つのパッケージ内に実装された半導体装置として構成されている。二次側制御回路20を半導体集積回路(IC)として形成したものと、MOSトランジスタS0を形成したチップを1つのパッケージ内に実装して半導体装置として構成するようにしても良い。上記トランス10の補助巻線Laの端子間にはダイオードD1とコンデンサC1とが直列に接続され、補助巻線Laに誘起された電圧をダイオードD1で整流しコンデンサC1で平滑することで、一次側制御回路11の電源電圧Vcc1を生成して一次側制御回路11の電源端子に供給する。
また、この実施例のDC-DCコンバータは、一次側制御回路11に接続され二次側の回路からのフィードバック信号を受ける受光用のフォトトランジスタPTを備え、一次側制御回路11はフィードバック信号に応じてスイッチング素子SWのスイッチング周波数またはデューティ比を変化させて、負荷の変動および入力電圧の変動に対応するように構成されている。
【0025】
一方、トランス10の二次側には、二次側コイルLsの一方の端子と出力端子OUT2との間に接続された同期整流用MOSトランジスタS0と、二次側で生成された電圧を電源電圧とし同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン電圧を検出してトランジスタS0のオン、オフ制御信号を生成する二次側制御回路20と、出力端子OUT1-OUT2間に接続され出力電圧VOUTを安定化させる平滑コンデンサC2と、を備える。なお、出力端子OUT1-OUT2間に接続された可変抵抗LDは、負荷の一例もしくは負荷を等価的に記載したものを表わしている。
出力端子OUT1には二次側制御回路20の電源端子VDDが接続されており、出力電圧VOUTが二次側制御回路20に電源電圧Vcc2として供給される。二次側制御回路20の電源電圧は、トランス10の補助巻線に誘起された電圧を整流して供給するように構成しても良い。
また、トランス10の二次側には、出力端子OUT1-OUT2間に、フィードバック用のフォトダイオードPDおよびシャントレギュレータSRが直列に接続されている。
【0026】
出力端子OUT1-OUT2間には分圧用の抵抗R1,R2が接続されており、該抵抗R1,R2の抵抗比で出力電圧VOUTを分圧した電圧がシャントレギュレータSRに印加されることで、シャントレギュレータSRは出力電圧VOUTのレベルに比例した電流をフォトダイオードPDに流すように構成されている。
また、二次側のフォトダイオードPDと一次側のフォトトランジスタPTは、絶縁型信号伝達手段としてのフォトインタラプタを構成しており、二次側のフォトダイオードPDから発せられた光が一次側のフォトトランジスタPTにより受光用されて光の強度に応じたフィードバック信号が生成され、一次側制御回路11はこのフィードバック信号に応じてスイッチング素子SWを制御する。
【0027】
二次側制御回路20は、二次側スイッチング素子としての同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン端子に配線を介して接続される外部端子(ドレイン電圧検出端子)P1の電圧を監視し、所定のタイミングで同期整流用MOSトランジスタS0をオンまたはオフさせる制御信号(ゲート駆動電圧)VGを生成して、外部端子P2を介してトランジスタS0のゲート端子へ出力する。
【0028】
図2には、上記二次側制御回路20の主要部の構成例が示されている。
図2に示されているように、二次側制御回路20は、同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン端子が接続されるドレイン電圧検出端子P1の電圧と所定のしきい値電圧Vth_on(例えば-200mV)とを比較するコンパレータなどからなるオンタイミング検出回路21、ドレイン電圧検出端子P1の電圧と所定のしきい値電圧Vth_off(例えば+30mV~-150mV)とを比較するコンパレータなどからなるオフタイミング検出回路22、ドレイン電圧検出端子P1の電圧と所定のしきい値電圧V1(例えばピーク電圧×90%)とを比較するコンパレータなどからなる第1ドレイン電圧検出回路23、ドレイン電圧検出端子P1の電圧とV1よりも低い所定のしきい値電圧V2(例えば2V)とを比較するコンパレータなどからなる第2ドレイン電圧検出回路24を備える。
【0029】
ここで、オンタイミング検出回路21の判定しきい値Vth_onは、同期整流用MOSトランジスタS0のボディダイオードに電流が流れ始めたことを確実に検出できるように、ボディダイオードの順方向電圧を考慮した電圧に設定される。
ドレイン電圧検出用のしきい値電圧V1とV2は、V1>V2の関係が成立し、V2がしきい値Vth_offよりも高い電圧であればどのような電位でもよい。
【0030】
また、二次側制御回路20は、上記第1ドレイン電圧検出回路23の出力VDPと第2ドレイン電圧検出回路24の出力VDLとに基づいてDCM(電流不連続モード)であるか否かを検出するDCM検出回路25、上記第2ドレイン電圧検出回路24の出力VDLに基づいてオフタイミング検出信号OFF_SIGとの前後関係を判定するためのタイミングを決定する判定タイミング検出回路26、オフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGと第1ドレイン電圧検出回路23の出力VDPとDCM検出回路25の出力DCM_SIGと判定タイミング検出回路26の出力Judge_SIGとに基づいてオンタイミング検出回路21のしきい値電圧Vthを調整する電圧調整回路27を備える。
【0031】
さらに、二次側制御回路20は、上記オフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGと判定タイミング検出回路26の出力Judge_SIGとの論理和をとるORゲートG1と、ORゲートG1の出力とオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGとに基づいて同期整流用MOSトランジスタS0のゲート端子に印加されてこれをオン、オフ制御する信号を生成するオン・オフ制御回路28と、生成されたオン、オフ制御信号を受けてゲート駆動信号VGを生成し外部端子P2より出力するゲートドライバ回路29を備えている。
オン・オフ制御回路28は、RSフリップフロップなどにより構成され、オンタイミング検出回路21の出力信号ON_SIGが立ち上がるとゲート駆動信号VGをハイレベルに変化させて同期整流用のMOSトランジスタS0をオンさせ、オフタイミング検出回路22の出力信号OFF_SIGまたは判定タイミング検出回路26の出力Judge_SIGが立ち上がるとゲート駆動信号VGをロウレベルに変化させてS0をオフさせる制御信号を生成する。
【0032】
図3および
図4には、上記二次側制御回路20を構成する判定タイミング検出回路26および電圧調整回路27の具体的な回路例が示されている。
図3に示されているように、判定タイミング検出回路26は、電源電圧端子REGと接地点との間に直列に接続された定電流源CC1およびオン・オフスイッチS1,S2と、スイッチS1とS2の接続ノードN1と接地点との間に接続されたコンデンサC1を備える。スイッチS1は第2ドレイン電圧検出回路24の出力VDLによりオン、オフされ、S2はVDL信号の立ち上がりに同期してパルスを生成するワンショットパルス生成回路OPG1の出力パルスによりオン、オフされるように構成されており、VDLがハイレベルの期間だけ定電流源CC1の電流によりコンデンサC1が充電され、VDLのパルス幅に応じた電圧Tjudgeを出力するタイマ回路として機能する。
【0033】
また、判定タイミング検出回路26は、コンデンサC1の充電電圧Tjudgeが非反転入力端子に入力されたオペアンプAMPと定電流CC2とフィードバック抵抗Rfとからなり、二次側導通期間から少し時間を減算したい場合、つまり判定タイミングが二次側導通期間の終了点(VDLの立ち下がり)よりも少し手前に来るようにしてホールドされる電圧を低めにするためのオフセットを付与するオフセット付与回路OSGと、該オフセットが付与された電圧を取り込んで保持するサンプルホールド回路S/Hと、サンプルホールド回路S/Hの保持電圧VshとコンデンサC1の充電電圧Tjudgeとを入力とするコンパレータCMPと、コンパレータCMPの出力を反転して判定タイミング信号Judge_SIGとして出力するインバータINVとを備えている。図示しないが、サンプルホールド回路S/Hを動作させるタイミング信号(パルス)φsは、例えば第2ドレイン電圧検出回路24の出力VDLの立ち下がりを検出するワンショットパルス生成回路を設けて生成することができる。
【0034】
電圧調整回路27は、
図4に示されているように、上記判定タイミング信号Judge_SIGをトリガ信号としてオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGをラッチするD型フリップフロップFFと、第1ドレイン電圧検出回路23の出力VDPの変化に同期してパルスを生成するワンショットパルス生成回路OPG2と、上記フリップフロップFFの出力Qとワンショットパルス生成回路OPG2により生成されたパルスを入力とするANDゲートG2と、フリップフロップFFの反転出力/QとDCM検出回路25の出力DCM_SIGとワンショットパルス生成回路OPG2の出力パルスを入力とするANDゲートG3を備える。
【0035】
また、電圧調整回路27は、電源電圧端子REGと接地点との間に直列に接続された定電流源CC3およびオン・オフスイッチS3,S4、定電流源CC4と、スイッチS3とS4の接続ノードN2と接地点との間に接続されたコンデンサC2を備える。スイッチS3はANDゲートG2の出力によりオン、オフされ、スイッチS4はANDゲートG3の出力によりオン、オフされるように構成されており、定電流源CC3の電流によりコンデンサC2が充電され、定電流源CC4の電流によりコンデンサC2が放電されることで、ANDゲートG2の出力とANDゲートG3の出力の差分つまりオン時間やオン回数に応じた電圧を生成して、オフタイミング判定しきい値Vth_offとして出力する。
【0036】
次に、二次側制御回路20の機能および動作について、
図5~
図7の波形図を用いて説明するが、先ず
図3に示す判定タイミング検出回路26による判定タイミング信号Judge_SIGの生成について、
図5を用いて説明する。
図5において、(a)は同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン電圧VD、(b)はコンデンサC1の充電電圧Tjudge、(c)はサンプルホールド回路S/Hのサンプリングパルスφs、(d)は判定タイミング検出回路26から出力される判定タイミング信号Judge_SIG、(e)は第2ドレイン電圧検出回路24の出力VDLの変化をそれぞれ示す。サンプリングパルスφsは、同期整流用MOSトランジスタS0の導通期間が終了したタイミングで、サンプルホールド回路S/Hへ供給される。
【0037】
図5に示されているように、第2ドレイン電圧検出回路24の出力VDL(e)が、(a)に示すドレイン電圧VDの立ち下がりのボトム近傍でハイレベルに立ち上がる(タイミングt1)。すると、
図3に示す判定タイミング検出回路26のワンショットパルス生成回路OPG1からパルスが出力され、スイッチS2が一時的にオンされてコンデンサC1の電荷が放電され、コンデンサC1の充電電圧Tjudgeが0VにリセットされてコンパレータCMPの出力が反転し、インバータINVから出力される判定タイミング信号Judge_SIGがロウレベルに変化する。
これとともに、定電流源CC1の電流によるコンデンサC1の充電が開始され、(b)に示すようにコンデンサC1の充電電圧Tjudgeが次第に高くなる。そして、Tjudgeがサンプルホールド回路S/Hの保持電圧Vshに達すると(タイミングt2)、コンパレータCMPの出力が反転してインバータINVから出力される判定タイミング信号Judge_SIGがハイレベルに変化する。また、コンデンサC1の充電電圧Tjudgeにオフセットを加えた電圧が、(c)のサンプリングパルスφsによってサンプルホールド回路S/Hに取り込まれ、保持される。上記動作を繰り返すことで、(d)に示すように変化する判定タイミング信号Judge_SIGが生成される。
【0038】
図6には、上記のように変化する判定タイミング信号Judge_SIGとオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGとの関係が示されている。なお、
図6において、(a)は同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン電圧VD、(b)はオンタイミング検出回路21の出力ON_ SIG、(c)は判定タイミング検出回路26より出力される判定タイミング信号Judge_SIG、(d)はオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIG、(e)はゲートドライバ回路29より出力されるゲート駆動信号VGの変化を示す。
図6において、期間T1,T2はドレイン電圧VDの立ち下がりから次のドレイン電圧VDの立ち下がりまでの期間とする。
【0039】
図6に示されているタイミングの例においては、期間T1では判定タイミング信号Judge_SIGの立ち上がりタイミングt12よりもオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGの立ち上がりタイミングt11の方が早い場合が、また、期間T2では判定タイミング信号Judge_SIGの立ち上がりタイミングt14の方がオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGの立ち上がりタイミングt15よりも早い場合が示されている。
本実施形態の二次側制御回路20においては、例えばORゲートG1を介してオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGと判定タイミング信号Judge_SIGがオン・オフ制御回路28へ入力されることにより、オン・オフ制御回路28は、OFF_SIG信号とJudge_SIG信号のうち立ち上がりの早い方のタイミング(t11,t14)で、同期整流用MOSトランジスタS0のゲート駆動信号VGを立ち下げてオフさせるように構成されている。
【0040】
また、本実施形態の二次側制御回路20においては、
図4に示されているように、電圧調整回路27がJudge_SIG信号の立ち上がりでOFF_SIG信号をフリップフロップFFにラッチし、フリップフロップFFの出力によってコンデンサC2を充電する側のスイッチS2またはコンデンサC2を放電する側のスイッチS3を、1パルス期間ずつオンさせるように構成されている。
そのため、
図7(A)に示すように、判定タイミング信号Judge_SIGよりもオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGの立ち上がりの方が早い状態が連続すると、コンデンサC2の充電電圧であるオフタイミング判定しきい値Vth_offが少しずつ段階的に高くなるようにされ、それによってオフタイミング検出信号OFF_SIの立ち上がりが遅くなり、判定タイミング信号Judge_SIGの立ち上がりタイミングと一致するように動作する。
【0041】
また、
図7(B)に示すように、判定タイミング信号Judge_SIGよりもオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGの立ち上がりの方が遅い状態が連続すると、コンデンサC2の充電電圧であるオフタイミング判定しきい値Vth_offが少しずつ段階的に低くなるようにされ、それによってオフタイミング検出信号OFF_SIの立ち上がりが早くなり、判定タイミング信号Judge_SIGの立ち上がりタイミングと一致するように動作する。
上記説明から分かるように、本実施形態の二次側制御回路20においては、二次側同期整流用MOSトランジスタS0の導通期間を元に判定タイミングを決めて、オフタイミング検出信号OFF_SIGと判定タイミング信号Judge_SIGの立ち上がりの前後関係を判断し、ターンオフ判定のしきい値を調整している。つまり、特許文献1の発明のように、同期整流用MOSトランジスタS0のボディダイオードの導通期間に応じて、ターンオフ判定のしきい値を調整することはしていない。
【0042】
そのため、ターンオフタイミングがフィードバックで安定点に到達するまでに時間を要してターンオフタイミングの調整が遅れ、それによってスイッチング素子に逆方向電流が流れて素子破壊に至るおそれがあるといった前述の第1の問題点を解決することができる。また、
図6を用いて説明したように、判定タイミング信号Judge_SIGよりもターンオフ判定しきい値によるターンオフの検出すなわちオフタイミング検出信号OFF_SIGの立ち上がりが遅れる場合は、MOSトランジスタS0をターンオフするようにしている。
これにより、CCMへ移行した直後、ターンオフ判定しきい値に調整されるまでの間に、
(制御回路の遅延時間)>Idsが0Aに到達するまでの時間
という条件が成立するのを回避することができ、二次側の同期整流素子の制御に求められる応答速度を緩和することができる。また、上記条件の成立により逆流が発生して素子破壊に至るのを防止することができる(第2の問題点の解決)。なお、上記不等式の「Idsが0Aに到達するまでの時間」の開始点は、ターンオフ判定しきい値によるオフタイミング(OFF_SIG信号)の検出時点である。
【0043】
次に、
図8を用いて、DCM検出回路25において行われるDCM検出動作について説明する。なお、
図8(a)~(g)は、ゲート駆動信号VG(
図8(f)参照)がハイレベルからロウレベルに立ち下がるポイントt21すなわち同期整流用のMOSトランジスタS0がオンからオフに切り替わるポイントの前後の期間における各部の電圧や信号の変化を拡大して示している。
図8のうち(a)には、DCM(電流不連続モード)時のドレイン電圧VDの変化が実線Aで、またCCM(電流連続モード)時のドレイン電圧VDの変化が破線Bで示されている。また、(g)には、DCM時の同期整流用のMOSトランジスタS0のドレイン電流Idsの変化が実線Aで、またCCM時のドレイン電流Idsの変化が破線Bで示されている。
【0044】
図8(a)に示す実線Aと破線Bの波形を比較すると分かるように、DCM(電流不連続モード)時にはドレイン電流Idsを流し終えた後に共振波形Wrが現れるのに対し、CCM(電流連続モード)時には破線Bのようにタイミングt22から波形が急峻に立ち上がる。本実施形態の二次側制御回路20におけるDCM検出回路25は、この波形の相違を利用してDCMかCCMかを検出する。
【0045】
具体的には、CCMの場合にドレイン電圧VDが第2ドレイン電圧検出回路24の判定しきい値V2を横切ってから第2ドレイン電圧検出回路24の判定しきい値V1に達するまでの時間T21を示す
図8(b)と、DCMの場合にドレイン電圧VDが第2ドレイン電圧検出回路24の判定しきい値V2を横切ってから第2ドレイン電圧検出回路24の判定しきい値V1に達するまでの時間T22を示す
図8(c)とを比較すると、(c)の方が大きい。
DCM検出回路25は、図示しないタイマ回路で(c)の時間幅を電圧に変換して所定のしきい値電圧Vtを超えた場合にDCMと判定して、出力信号DCM_SIGを、
図8(e)に示すようにロウレベルからハイレベルに立ち上げる。
【0046】
この信号DCM_SIGが
図4に示す電圧調整回路27へ供給されると、電圧調整回路27は、判定タイミング信号Judge_SIGの方がオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGの立ち上がりよりも早いと、コンデンサC2の充電電圧であるオフタイミング判定しきい値Vth_offを1段階的に低くする。これにより、次回のOFF_SIGの立ち上がりは前へずれることになる。また、電圧調整回路27は、判定タイミング信号Judge_SIGよりもオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGの立ち上がりの方が早いと、コンデンサC2の充電電圧であるオフタイミング判定しきい値Vth_offを1段階的に高くする。これにより、次回のOFF_SIGの立ち上がりは後ろへずれることになる。
【0047】
また、CCMの場合、DCM検出回路25の上記タイマ回路の出力はしきい値電圧Vtを超えることはなく、DCM検出回路25の出力信号DCM_SIGはハイレベルに変化せずロウレベルのままとなる。そして、この信号DCM_SIGは、
図4の電圧調整回路27を構成するANDゲートG2,G3のうち、G3にのみ入力されている。
そのため、この信号DCM_SIGを受ける電圧調整回路27は、CCMで判定タイミングの方がオフタイミングよりも前である場合には判定しきい値Vthを調整する動作をせず、前回の電圧を維持する。
【0048】
上記のように、CCMではオフタイミング判定しきい値Vth_offを下げてターンオフを早める調整機能を停止し、かつ判定タイミングよりもターンオフ判定しきい値(Vth_off)によるオフタイミング(OFF_SIG信号)の検出が遅れる場合は、判定タイミングで同期整流用MOSトランジスタS0をターンオフする。これにより、CCMにおいては、ターンオフ判定しきい値(Vth_off)によるオフタイミング(OFF_SIG信号)の検出よりも、判定タイミングによるオフタイミングの検出が優先されるため、重畳電流が大きいCCMの条況下でターンオフのバタつきを低減することができ、効率の低下を防止できる(第3の問題点の解決)。
【0049】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば判定タイミングの決め方は、上記実施形態で説明したような二次側導通期間に限定されず、一次側導通期間(S0のドレイン電圧VDのピーク期間)と二次側導通期間(S0のドレイン電圧VDのボトム期間)との和を元に判定タイミングを決めるようにしても良い。具体的には、判定タイミングを決定する
図3の判定タイミング検出回路26のタイマ回路(定電流源CC1,コンデンサC1)の計時動作を開始させるスイッチS1のオン、オフ信号として、第2ドレイン電圧検出回路24の出力VDLの代わりに、オンタイミング検出回路21の出力信号ON_SIGの立ち上がりまたはゲート駆動信号VGの立ち上がりに同期して立ち上がる信号を使用するようにしても良い。あるいは、第1ドレイン電圧検出回路23の出力VDPを、ドレイン電圧VDのピーク期間の開始点を示す信号として、判定タイミング検出回路26のタイマ回路の動作を開始させるようにしても良い。
【0050】
また、前記実施形態では、ターンオフ判定しきい値(Vth_off)の調整を第1ドレイン電圧検出回路23の出力VDPと同期して行うようにしているが、VDPの代わりに、第2ドレイン電圧検出回路24の出力VDLあるいはオンタイミング検出回路21の出力信号ON_SIGを使うようにしても良い。また、安定性を目的にVth_offの調整のタイミングを、ノイズを避けるように別途生成したタイミングとしても良い。さらに、VDP等を複数回検出した時点でVth_offの調整を行うように構成しても良い。
さらに、本発明に係る二次側同期整流制御回路は、
図1に示すようなフライバック方式のスイッチング電源装置(DC-DCコンバータ)に限定されるものではなく、例えばハーブブリッジ方式など他の方式のDC-DCコンバータにも適用可能である。また、一次側にインダクタとコンデンサからなる電流共振回路を設けたLLC共振コンバータにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10……トランス、11……一次側制御回路、20……二次側制御回路、21……オンタイミング検出回路、22……オフタイミング検出回路、23……第1ドレイン電圧検出回路、24……第2ドレイン電圧検出回路、25……DCM検出回路、26……判定タイミング検出回路、27……電圧調整回路(しきい値電圧設定回路)、28……オン・オフ制御回路、29……ゲートドライバ回路、S0……同期整流用MOSトランジスタ、FF……フリップフロップ(タイミング判定回路)