(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】壁掛け式の空調室内機、および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0011 20190101AFI20230315BHJP
F24F 1/0063 20190101ALI20230315BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
F24F1/0011
F24F1/0063
F24F1/0007 401A
F24F13/20
(21)【出願番号】P 2021008521
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 智哉
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】多田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 海
(72)【発明者】
【氏名】木村 恭彰
(72)【発明者】
【氏名】角間 一輝
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/155664(WO,A1)
【文献】特開2015-124985(JP,A)
【文献】特開平11-148708(JP,A)
【文献】特開2015-124986(JP,A)
【文献】特開2006-010257(JP,A)
【文献】特開2017-227423(JP,A)
【文献】特開2012-073024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007
F24F 1/0011
F24F 1/0063
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成し、吹出開口(37)を有するケーシング(31)と、
前記ケーシング(31)に収容されるクロスフローファン(50)と、
前記クロスフローファン(50)と吹出開口(37)との間にスクロール形状の吹出流路(61)を形成する流路形成部(60)とを備え、
前記ケーシング(31)の上下方向の最大高さHが260mm以下であり、
前記ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1が290mm以下であり、
前記吹出流路(61)のスクロール角度θaが15°以上であり
、
前記クロスフローファン(50)の前側に配置される前側熱交換部(41)と、
前記クロスフローファン(50)の後側に配置される後側熱交換部(42)とを備え、
前記前側熱交換部(41)は、前記クロスフローファン(50)の上方に位置するとともに該クロスフローファン(50)に向かって傾斜した前側傾斜部(H1)を含み、
前記後側熱交換部(42)は、前記クロスフローファン(50)の上方に位置するとともに前記クロスフローファン(50)に向かって傾斜した後側傾斜部(42)を含み、
前記前側傾斜部(H1)および前記後側傾斜部(42)は、互いに分離している
壁掛け式の空調室内機。
【請求項2】
前記スクロール角度θaが35°以下である
請求項1に記載の壁掛け式の空調室内機。
【請求項3】
前記流路形成部(60)は、前記吹出流路(61)の前側に位置する第1面(73)を形成する第1部(70)を有し、
前記第1面(73)と水平面とのなす角度θbが15°以上である
請求項1または2に記載の壁掛け式の空調室内機。
【請求項4】
前記ケーシング(31)の後面(33)と前記吹出開口(37)の後端との前後方向の距離L2が125mm以下である
請求項1~3のいずれか1つに記載の壁掛け式の空調室内機。
【請求項5】
前記前側熱交換部(41)および前記後側熱交換部(42)は、フィン(F)と、該フィン(F)の長手方向に配列される複数の冷媒流路(P)とを有し、
前記前側熱交換部(41)の複数の冷媒流路(P)の数が、前記後側熱交換部(42)の複数の冷媒流路(P)の数の2倍以上である
請求項1~4のいずれか1つに記載の壁掛け式の空調室内機。
【請求項6】
前記前側傾斜部(H1)と前記後側傾斜部(42)の最短距離L3が20mm以上であり、
前記前側傾斜部(H1)における鉛直面に対する傾斜角θcが、45°以下であり、
前記後側傾斜部(42)における鉛直面に対する傾斜角θdが、45°以下である
請求項1~5のいずれか1つに記載の壁掛け式の空調室内機。
【請求項7】
前記前側熱交換部(41)の前側に配置される前側補助熱交換部(43)とを備え、
前記前側補助熱交換部(43)は、前記前側熱交換部(41)の上部のみと重なる
請求項1~6のいずれか1つに記載の壁掛け式の空調室内機。
【請求項8】
前記吹出開口(37)から吹き出される空気の風向を変更する風向調節板(91,92)と、
コアンダ効果を利用して前記吹出開口(37)から水平方向の空気を吹き出すように、前記風向調節板(91,92)の姿勢を制御する制御装置(100)とを備える
請求項1~7のいずれか1つに記載の空調室内機。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の空調室内機(30)を備えた空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、壁掛け式の空調室内機、および空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
壁掛け式の空調室内機を備えた空気調和装置が知られている。特許文献1に開示された壁掛け式の空調室内機には、吹出開口を有するケーシングの内部にスクロール形状の吹出流路が形成される。クロスフローファンによってケーシング内に吹込まれた空気は、熱交換器を通過する。熱交換器で冷却または加熱された空気は、吹出流路を流れた後、吹出開口から室内空間へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁掛け式の空調室内機は、ケーシングの高さを小さくすることが望まれる。ケーシングの高さが小さくなると、例えば窓と天井の間の壁面に空調室内機を設置できる。一方、従来例の空調室内機は、吹出流路を前後に延ばす構成とするのが一般的であった。これにより、吹出開口から水平方向の気流を確保できる。
【0005】
しかしながら、このような従来例の構成では、吹出流路を前後の長さが大きくなってしまうため、ケーシングの前後方向の長さも大きくなってしまう。この結果、ケーシングの高さ、およびケーシングの前後方向の長さの双方を小さくすることが困難であった。
【0006】
本開示の目的は、ケーシングの高さを小さくでき、かつケーシングの前後方向の長さを小さくできる壁掛け式の空調室内機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、外殻を形成し、吹出開口(37)を有するケーシング(31)と、前記ケーシング(31)に収容されるクロスフローファン(50)と、前記クロスフローファン(50)と吹出開口(37)との間にスクロール形状の吹出流路(61)を形成する流路形成部(60)とを備え、前記ケーシング(31)の上下方向の最大高さHが260mm以下であり、前記ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1が290mm以下であり、前記吹出流路(61)のスクロール角度θaが15°以上である壁掛け式の空調室内機である。
【0008】
第1の態様では、ケーシング(31)の上下方向の最大高さHが260mm以下となるため、ケーシング(31)の高さを小さくできる。吹出流路(61)のスクロール角度θaが15°以上であるため、例えばスクロール角度θaが15°よりも小さい構成と比較して、吹出流路(61)全体の前後方向の長さを小さくできる。これにより、ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1を290mm以下としても、ケーシング(31)の内部に十分なスペースを確保できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記スクロール角度θaが35°以下である。
【0010】
スクロール角度θaが35°より大きいと、吹出流路(61)全体の高さが大きくなり過ぎる。加えて、吹出開口(37)から吹き出される空気の水平方向の速度成分が小さくなり過ぎる。第2の態様では、スクロール角度θaを35°以下とすることで、吹出流路(61)全体の高さを抑えることができる。この結果、ケーシング(31)の最大高さHを260mm以下にできる。加えて、吹出開口(37)から吹き出される空気の水平方向の速度成分が小さくなり過ぎるのを抑制できる。
【0011】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記流路形成部(60)は、前記吹出流路(61)の前側に位置する第1面(73)を形成する第1部(70)を有し、前記第1面(73)と水平面とのなす角度θbが15°以上である。
【0012】
第3の態様では、吹出流路(61)の第1面(73)と水平面とのなす角度θbが15°以上であるため、吹出流路(61)全体の前後方向の長さを小さくできる。
【0013】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記ケーシング(31)の後面(33)と前記吹出開口(37)の後端との前後方向の距離L2が125mm以下である。
【0014】
第4の態様では、ケーシング(31)の後面(33)から吹出開口(37)の後端までの前後方向の距離L2を125mm以下とすることで、ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1を小さくできる。
【0015】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記クロスフローファン(50)の前側に配置される前側熱交換部(41)と、前記クロスフローファン(50)の後側に配置される後側熱交換部(42)とを備え、前記前側熱交換部(41)および前記後側熱交換部(42)は、フィン(F)と、該フィン(F)の長手方向に配列される複数の冷媒流路(P)とを有し、前記前側熱交換部(41)の複数の冷媒流路(P)の数が、前記後側熱交換部(42)の複数の冷媒流路(P)の数の2倍以上である。
【0016】
第5の態様では、前側熱交換部(41)の複数の冷媒流路(P)の数が、後側熱交換部(42)の複数の冷媒流路(P)の数の2倍以上であるため、前側熱交換部(41)を通過する空気の流路抵抗を低減できる。この結果、吹出流路(61)の前側寄りを流れる空気の流速を確保できる。
【0017】
吹出流路(61)の前側寄りを流れる空気の流速が小さくなると、ケーシング(31)の外部の空気が吹出開口(37)の前側部分を介して吹出流路(61)に逆流してしまう、いわゆるサージング現象が発生する可能性がある。これに対し、第5の態様では、吹出流路(61)の前側寄りを流れる空気の流速を確保できるので、サージング現象の発生を抑制できる。
【0018】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記クロスフローファン(50)の前側に配置される前側熱交換部(41)と、前記クロスフローファン(50)の後側に配置される後側熱交換部(42)とを備え、前記前側熱交換部(41)は、前記クロスフローファン(50)の上方に位置するとともに該クロスフローファン(50)に向かって傾斜した前側傾斜部(H1)を含み、前記後側熱交換部(42)は、前記クロスフローファン(50)の上方に位置するとともに前記クロスフローファン(50)に向かって傾斜した後側傾斜部(42)を含み、前記前側傾斜部(H1)および前記後側傾斜部(42)は、互いに分離しており、前記前側傾斜部(H1)と前記後側傾斜部(42)の最短距離L3が20mm以上であり、前記前側傾斜部(H1)における鉛直面に対する傾斜角θcが、45°以下であり、前記後側傾斜部(42)における鉛直面に対する傾斜角θdが、45°以下である。
【0019】
第6の態様では、前側熱交換部(41)の前側傾斜部(H1)と、後側熱交換部(42)の後側傾斜部(42)とが互いに分離しており、且つこれらの最短距離が20mm以上である。これにより、前側傾斜部(H1)および後側傾斜部(42)が、クロスフローファン(50)と干渉することを抑制でき、ケーシング(31)の高さHを小さくできる。
【0020】
第6の態様では、前側傾斜部(H1)における鉛直面に対する傾斜角θcが45°以下であるため、前側傾斜部(H1)の表面の凝縮水が下方へ落ちてしまうことを抑制できる。後側傾斜部(42)における鉛直面に対する傾斜角θdが45°以下であるため、後側傾斜部(42)の表面の凝縮水が下方へ落ちてしまうことを抑制できる。
【0021】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記クロスフローファン(50)の前側に配置される前側熱交換部(41)と、前記クロスフローファン(50)の後側に配置される後側熱交換部(42)と、前記前側熱交換部(41)の前側に配置される前側補助熱交換部(43)とを備え、前記前側補助熱交換部(43)は、前記前側熱交換部(41)の上部のみと重なる。
【0022】
第7の態様では、前側補助熱交換部(43)が、前側熱交換部(41)の上部のみと重なり、前側熱交換部(41)の下部とは重ならない。これにより、吹出流路(61)の前側寄りを流れる空気の流速を確保できる。この結果、上述したサージング現象の発生を抑制できる。
【0023】
第8の態様は、第1~第7のいずれか1つの態様において、前記吹出開口(37)から吹き出される空気の風向を変更する風向調節板(91,92)と、コアンダ効果を利用して前記吹出開口(37)から水平方向の空気を吹き出すように、前記風向調節板(91,92)の姿勢を制御する制御装置(100)とを備える。
【0024】
スクロール角度θaを15°以上とすると、スクロール角度θaが15°より小さい構成と比較して、吹き出し空気の水平方向の速度成分が小さくなってしまう。
【0025】
第8の態様では、制御装置(100)が風向調節板(91,92)を所定の姿勢に制御することで、コアンダ効果を利用して水平方向の気流を吹き出すことができる。これにより、スクロール角度θaを15°以上としても、吹き出し空気の水平方向の速度成分を確保できる。
【0026】
第9の態様は、第1~第8のいずれか1つの態様の空調室内機(30)を備えた空気調和装置である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気調和装置の概略の配管系統図である。
【
図2】
図2は、室内機を前側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、室内機の内部構造を示す縦断面図である。
図3は、クロスフローファンの軸心に直角な断面を表している。
【
図4】
図4は、空気調和装置の基本要素を含むブロック図である。
【
図5】
図5は、水平吹きモード時の室内機における
図3に相当する図である。
【
図6】
図6は、下吹きモード時の室内機における
図3に相当する図である。
【
図7】
図7は、
図3において、所定の寸法、および所定の角度を表している。
図7は、
図3の一部の機器の図視を省略している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0029】
《実施形態》
実施形態に係る空気調和装置(10)について説明する。
【0030】
(1)空気調和装置の全体構成
図1は、空気調和装置(10)の概略の配管系統図を示す。空気調和装置(10)は、対象空間の空気の温度を調節する。対象空間は室内空間(I)である。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とを行う。冷房運転では、空気調和装置(10)が室内空間(I)の空気を冷却する。暖房運転では、空気調和装置(10)が室内空間(I)の空気を加熱する。
【0031】
空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備える。冷媒回路(11)には、冷媒が充填される。冷媒回路(11)は、冷媒を循環させることにより冷凍サイクルを行う。
【0032】
空気調和装置(10)は、室外機(20)、室内機(30)、第1連絡配管(12)、第2連絡配管(13)を備える。空気調和装置(10)は、1つの室外機(20)と1つの室内機(30)とを有するペア式である。室外機(20)は、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、膨張弁(23)、四方切換弁(24)、および室外ファン(25)を備える。室内機(30)は、室内熱交換器(40)およびクロスフローファン(50)を備える。
【0033】
(1-1)室外機
室外機(20)は、室外空間に設置される。
【0034】
圧縮機(21)は、冷媒を圧縮する。圧縮機(21)は回転式の圧縮機である。回転式の圧縮機(21)は、揺動式、ローリングピストン式、スクロール式などで構成される。
【0035】
室外熱交換器(22)は、冷媒と室外空気とを熱交換させる。室外熱交換器(22)はフィンアンドチューブ式である。
【0036】
室外ファン(25)は、室外空気を搬送する。室外ファン(25)により搬送される空気は、室外熱交換器(22)を通過する。室外ファン(25)はプロペラファンである。
【0037】
膨張弁(23)は、冷媒を減圧する。膨張弁(23)は、電子式あるいは感温式の膨張弁である。
【0038】
四方切換弁(24)は、冷媒回路(11)の冷媒の流れを正逆反転させる。四方切換弁(24)は、
図1の実線で示す第1状態と、
図1の破線で示す第2状態とに切り換わる。第1状態の四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出側と室外熱交換器(22)のガス側とを連通させると同時に、圧縮機(21)の吸入側と室内熱交換器(40)のガス側とを連通させる。第2状態の四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出側と室内熱交換器(40)のガス側とを連通させると同時に、圧縮機(21)の吸入側と室外熱交換器(22)のガス側とを連通させる。
【0039】
(1-2)室内機
室内機(30)は、室内空間(I)に設置される。
【0040】
室内熱交換器(40)は、冷媒と室内空気とを熱交換させる。室内熱交換器(40)はフィンアンドチューブ式である。
【0041】
クロスフローファン(50)は、室内空気を搬送する室内ファンである。クロスフローファン(50)により搬送される空気は、室内熱交換器(40)を通過する。
【0042】
(1-3)第1連絡配管および第2連絡配管
第1連絡配管(12)と第2連絡配管(13)は、室内機(30)および室外機(20)を互いに接続する。第1連絡配管(12)はガス管であり、第2連絡配管(13)は、液管である。第1連絡配管(12)は、室内熱交換器(40)のガス端に接続する。第2連絡配管(13)は、室内熱交換器(40)の液端に接続する。
【0043】
(2)室内機の詳細
図2は、室内機(30)を前側から見た斜視図である。
図3は、室内機(30)の縦断面図である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」に関する語句は、
図3の矢印で示す方向を基準とする。
【0044】
室内機(30)は、壁面に設けられる。室内機(30)は、壁掛け式の空調室内機である。室内機(30)は、ケーシング(31)、フィルタ(38)、室内熱交換器(40)、クロスフローファン(50)、流路形成部(60)、第1フラップ(91)、および第2フラップ(92)を備える。
【0045】
(2-1)ケーシング
ケーシング(31)は、室内機(30)の外郭を形成している。ケーシング(31)の内部には、フィルタ(38)、室内熱交換器(40)、およびクロスフローファン(50)を収容する内部空間(S1)が形成される。
【0046】
図2に示すように、ケーシング(31)は、左右に横長の箱状に形成される。ケーシング(31)は、前板(32)、後板(33)、上板(34)、および下板(35)を有する。
【0047】
前板(32)は、ケーシング(31)の前端に形成される。前板(32)は、ケーシング(31)の前面を構成している。後板(33)は、ケーシング(31)の後端に形成される。後板(33)は、ケーシング(31)の後面を構成している。
【0048】
上板(34)は、ケーシング(31)の上部に形成される。上板(34)は、第1上板部(34a)と第2上板部(34b)とを含む。第1上板部(34a)は、上板(34)の前側に形成され、第2上板部(34b)は、上板(34)の後側に形成される。第1上板部(34a)の前端は前板(32)の上端に接続する。第2上板部(34b)の後端は後板(33)の上端に接続する。第2上板部(34b)は、ケーシング(31)の略水平な上面を形成している。第1上板部(34a)は前板(32)から第2上板部(34b)に向かって斜め上方に延びている。
【0049】
下板(35)は、ケーシング(31)の下部に形成される。下板(35)は、第1下板部(35a)と第2下板部(35b)とを含む。第1下板部(35a)は、下板(35)の前側に形成され、第2下板部(35b)は、下板(35)の後側に形成される。第1下板部(35a)の前端は前板(32)の下端に接続する。第2下板部(35b)の後端は後板(33)の下端に接続する。第2下板部(35b)は、ケーシング(31)の略水平な下面を形成している。第1下板部(35a)は前板(32)から第2下板部(35b)に向かって斜め下方に延びている。
【0050】
ケーシング(31)の上部には、吸込開口(36)が形成される。吸込開口(36)は上板(34)に形成される。より厳密には、吸込開口(36)は第1上板部(34a)および第2上板部(34b)に形成される。吸込開口(36)は、ケーシング(31)の長手方向(左右方向)に延びている。吸込開口(36)は、室内空間(I)の空気をケーシング(31)の内部空間(S1)に取り込む。吸込開口(36)は、クロスフローファン(50)の回転中心(軸心0)よりも高い位置にある。
【0051】
ケーシング(31)の下部には、吹出開口(37)が形成される。吹出開口(37)は下板(35)に形成される。より厳密には、吹出開口(37)は第1下板部(35a)に形成される。吹出開口(37)は、ケーシング(31)の長手方向に延びている。吹出開口(37)は、斜め下方を向いている。吹出開口(37)は、吹出流路(61)を流れた空気を室内空間(I)へ吹き出す。吹出開口(37)は、クロスフローファン(50)の軸心0よりも低い位置にある。吹出開口(37)の後端は、クロスフローファン(50)の軸心0よりも僅かに前側に位置する。
【0052】
(2-2)フィルタ
フィルタ(38)は、内部空間(S1)における室内熱交換器(40)の上流側に配置される。フィルタ(38)は、吸込開口(36)から室内熱交換器(40)へ送られる空気中の塵埃などを捕集する。本実施形態の室内機(30)は、塵埃除去機構(39)を有する。塵埃除去機構(39)は、フィルタ(38)に捕集された塵埃を取り除く。
【0053】
(2-3)室内熱交換器
室内熱交換器(40)は、クロスフローファン(50)の軸心0の方向に配列される複数のフィン(F)と、フィン(F)を貫通する複数の伝熱管を有する。フィン(F)は、縦長の矩形状に形成される。フィン(F)の幅方向が前後方向に対応する。複数の伝熱管の内部には、それぞれ冷媒流路(P)が形成される。冷媒流路(P)は、冷媒回路(11)の一部を構成する。
【0054】
室内熱交換器(40)は、前側熱交換部(41)および後側熱交換部(42)を含む。室内熱交換器(40)は、前側補助熱交換部(43)および後側補助熱交換部(44)をさらに含む。前側熱交換部(41)、後側熱交換部(42)、前側補助熱交換部(43)、および後側補助熱交換部(44)は、互いに別体に構成される。
【0055】
前側熱交換部(41)は、クロスフローファン(50)の前側に配置される。前側熱交換部(41)は、上から下に向かって順に、第1熱交換部(H1)、第2熱交換部(H2)、および第3熱交換部(H3)を含む。第1熱交換部(H1)、第2熱交換部(H2)、および第3熱交換部(H3)の各フィン(F)は一体に形成される。
【0056】
第1熱交換部(H1)は、本開示の前側傾斜部である。第1熱交換部(H1)は、クロスフローファン(50)の前側上方に位置するとともにクロスフローファン(50)に向かって傾斜している。第1熱交換部(H1)のフィン(F)は、鉛直面よりも後側下方に傾いている。
【0057】
第2熱交換部(H2)は、クロスフローファン(50)の前方に鉛直な姿勢で配置される。第2熱交換部(H2)のフィン(F)は、鉛直面と略一致している。
【0058】
第3熱交換部(H3)は、クロスフローファン(50)の前側下方に位置するとともにクロスフローファン(50)に向かって傾斜している。第3熱交換部(H3)のフィン(F)は、鉛直面よりも後側後方に傾いている。
【0059】
後側熱交換部(42)は、クロスフローファン(50)の後側に配置される。後側熱交換部(42)は、本開示の後側傾斜部を構成している。後側熱交換部(42)は、クロスフローファン(50)の後側上方に位置するとともにクロスフローファン(50)に向かって傾斜している。後側熱交換部(42)のフィン(F)は、鉛直面よりも前側下方に向かって傾斜している。
【0060】
第1熱交換部(H1)と後側熱交換部(42)とは、互いに分離している。第1熱交換部(H1)と後側熱交換部(42)との間には、前後方向に間隔がある。
【0061】
第1熱交換部(H1)と後側熱交換部(42)の間には閉塞部(45)が設けられる。閉塞部(45)は、板状の金属を折り返して構成される。閉塞部(45)の前端は、第1熱交換部(H1)に接続する。閉塞部(45)の後端は、後側熱交換部(42)に接続する。閉塞部(45)は、第1熱交換部(H1)と後側熱交換部(42)との間を塞いでいる。閉塞部(45)は、吸込開口(36)に取り込まれた空気が、前側熱交換部(41)と後側熱交換部(42)の間を通過してしまうのを阻止している。
【0062】
前側補助熱交換部(43)は、クロスフローファン(50)の前側であって、さらに前側熱交換部(41)の前側に配置される。前側補助熱交換部(43)は、前側熱交換部(41)における空気流れの上流側に配置される。
【0063】
前側補助熱交換部(43)は、上から下に向かって順に、第4熱交換部(H4)および第5熱交換部(H5)を含む。第4熱交換部(H4)および第5熱交換部(H5)の各フィン(F)は一体に形成される。
【0064】
前側補助熱交換部(43)は、前側熱交換部(41)の上部のみと重なる。具体的には、前側補助熱交換部(43)は、第1熱交換部(H1)の全部と重なり、且つ第2熱交換部(H2)の上部と重なる。前側補助熱交換部(43)は、第2熱交換部(H2)の下部と重ならず、且つ第3熱交換部(H3)の全部と重ならない。
【0065】
第4熱交換部(H4)は第1熱交換部(H1)に沿うように傾斜している。第4熱交換部(H4)は、第1熱交換部(H1)の全部と重なる。第5熱交換部(H5)は第2熱交換部(H2)に沿うように、鉛直な姿勢で設けられる。第5熱交換部(H5)は第2熱交換部(H2)の上部のみと重なり、該第2熱交換部(H2)の下部と重ならない。
【0066】
後側補助熱交換部(44)は、クロスフローファン(50)の後側であって、さらに後側熱交換部(42)の後側に配置される。後側補助熱交換部(44)は、後側熱交換部(42)における空気流れの上流側に配置される。
【0067】
後側補助熱交換部(44)は、後側熱交換部(42)と重なる。具体的には、後側補助熱交換部(44)は、後側熱交換部(42)の中間部と重なり、その上端部および下端部と重ならない。
【0068】
前側熱交換部(41)には、複数の第1冷媒流路(P1)が形成される。具体的には、前側熱交換部(41)には、前後の2列において、それぞれ複数の第1冷媒流路(P1)が形成される。各列において、上下に並ぶ複数の第1冷媒流路(P1)の数は10である。具体的には、各列では、第1熱交換部(H1)に4つの第1冷媒流路(P1)が形成され、第2熱交換部(H2)に4つの第1冷媒流路(P1)が形成され、第3熱交換部(H3)に2つの第1冷媒流路(P1)が形成される。
【0069】
後側熱交換部(42)には、複数の第2冷媒流路(P2)が形成される。具体的には、後側補助熱交換部(44)には、前後の2列において、それぞれ複数の第2冷媒流路(P2)が形成される。各列において、上下に並ぶ複数の第2冷媒流路(P2)の数は4である。
【0070】
前側補助熱交換部(43)には、1つの列において、複数の第3冷媒流路(P3)が形成される。1つの列において、上下に並ぶ複数の第3冷媒流路(P3)の数は6つである。具体的には、第4熱交換部(H4)に4つの第3冷媒流路(P3)が形成され、第5熱交換部(H5)に2つの第3冷媒流路(P3)が形成される。
【0071】
後側補助熱交換部(44)には、1つ列において、複数の第4冷媒流路(P4)が形成される。1つの列において、上下に並ぶ複数の第4冷媒流路(P4)の数は2つである。
【0072】
(2-4)クロスフローファン
クロスフローファン(50)は、水平方向(左右方向)に延びるファンロータ(51)と、ファンロータ(51)を駆動するモータ(52)とを備えている。ファンロータ(51)は、その軸心の周りに周方向に配列される複数のファン翼(53)を有する。クロスフローファン(50)は、
図3の矢印Rの方向に回転する。回転するクロスフローファン(50)は、内部空間(S1)の空気を搬送する。
【0073】
(2-5)流路形成部
流路形成部(60)は、クロスフローファン(50)と吹出開口(37)との間にスクロール形状の吹出流路(61)を形成する。流路形成部(60)は、スタビライザ(70)およびリアガイダ(80)を含む。
【0074】
スタビライザ(70)は、クロスフローファン(50)の前側に配置される。厳密には、スタビライザ(70)は、クロスフローファン(50)と第1下板部(35a)との間に配置される。スタビライザ(70)は、本開示の第1部を構成する。スタビライザ(70)は、舌部(71)と、前側水受け部(72)と、前側面(73)とを形成している。
【0075】
舌部(71)は、スタビライザ(70)のうちクロスフローファン(50)に最も近い部分に湾曲面を形成している。
【0076】
前側水受け部(72)は、スタビライザ(70)の上部のうち前側熱交換部(41)および前側補助熱交換部(43)の下方に位置する部分に形成される。前側水受け部(72)は、凝縮水を受けるドレンパンである。
【0077】
前側面(73)は、本開示の第1面を構成する。前側面(73)は、吹出流路(61)の前側部分に面している。前側面(73)は、水平面fhに対して斜め下方に傾斜した平面により構成されている。
【0078】
スタビライザ(70)は、前側面(73)の前端から前側に連続する連続面(74)をさらに形成している。
【0079】
リアガイダ(80)は、クロスフローファン(50)の後側に配置される。厳密には、リアガイダ(80)は、クロスフローファン(50)と後板(33)の間、およびクロスフローファン(50)と第2下板部(35b)の間に配置される。リアガイダ(80)は、後側水受け部(81)と、後側面(82)とを構成している。
【0080】
後側水受け部(81)は、リアガイダ(80)の上部のうち後側熱交換部(42)および後側補助熱交換部(44)の下方に位置する部分に形成される。後側水受け部(81)は、凝縮水を受けるドレンパンである。
【0081】
後側面(82)は、吹出流路(61)の後側部分に面している。後側面(82)は、吹出流路(61)に沿って緩やかに湾曲している。後側面(82)は、クロスフローファン(50)の上側寄りの部分から吹出開口(37)に亘って形成される。
【0082】
ケーシング(31)の後板(33)の下部と、リアガイダ(80)との間には、配管スペース(S2)が形成される。配管スペース(S2)には、冷媒回路(11)の冷媒配管や、凝縮水の排出路(例えばホース)などが収容される。
【0083】
(2-6)第1フラップ、および第2フラップ
吹出開口(37)には、第1フラップ(91)および第2フラップ(92)が設けられる。第1フラップ(91)および第2フラップ(92)は、吹出開口(37)から吹き出される空気の風向を変更する風向調節板を構成する。
【0084】
第1フラップ(91)は、吹出開口(37)における後側寄りに設けられる。第1フラップ(91)は、吹出開口(37)に沿って左右方向に延びている。第1フラップ(91)は、図外のモータにより駆動されると、第1軸(91a)を中心にその傾きを変更する。
【0085】
第2フラップ(92)は、吹出開口(37)における前側寄りに設けられる。第2フラップ(92)は、第1フラップ(91)よりも前側に位置する。第2フラップ(92)は、吹出開口(37)に沿って左右方向に延びている。第2フラップ(92)は、図外のモータにより駆動されると、第2軸(92a)を中心にその傾きを変更する。第2軸(92a)の中心は、第1軸(91a)の中心よりも僅かに高い位置にある。
【0086】
(3)制御装置
図1および
図4に示すように、空気調和装置(10)は、制御装置(100)を有する。制御装置(100)は、リモコン(101)、室内コントローラ(102)、および室外コントローラ(103)を含む。
【0087】
リモコン(101)は、室内空間(I)に設けられる。リモコン(101)は、ユーザによって操作される操作部である。ユーザがリモコンを操作すると、運転モード、気流モード、および設定温度を変更できる。リモコン(101)は、その操作に応じた指令を、無線または有線を介して室内コントローラ(102)へ送信する。
【0088】
リモコン(101)の指令を受信した室内コントローラ(102)は、室内機(30)を制御する。リモコン(101)の指令を受信した室内コントローラ(102)は、リモコン(101)の操作に応じた指令を、無線または有線を介して室外コントローラ(103)へ送信する。
【0089】
室内コントローラ(102)は、受信した指令に応じて、クロスフローファン(50)、第1フラップ(91)、および第2フラップ(92)を制御する。
【0090】
室外コントローラ(103)は、受信した指令に応じて、圧縮機(21)、膨張弁(23)、四方切換弁(24)、および室外ファン(25)を制御する。
【0091】
(4)基本動作
空気調和装置(10)の基本的な運転動作について説明する。空気調和装置(10)は、冷房運転および暖房運転を実行する。
【0092】
(4-1)冷房運転の冷媒の流れ
冷房運転では、制御装置(100)が四方切換弁(24)を第1状態とする。制御装置(100)は、圧縮機(21)、室外ファン(25)、およびクロスフローファン(50)を運転する。制御装置(100)は、膨張弁(23)の開度を調節する。冷房運転中の冷媒回路(11)は、室外熱交換器(22)が放熱器として機能し、室内熱交換器(40)が蒸発器として機能する冷凍サイクル(冷房サイクル)を行う。
【0093】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(22)を流れる。室外熱交換器(22)は、冷媒と室外空気とを熱交換させる。室外熱交換器(22)で放熱、あるいは凝縮した冷媒は、膨張弁(23)で減圧された後、室内熱交換器(40)を流れる。室内熱交換器(40)は、冷媒と室内空気とを熱交換させる。室内熱交換器(40)で蒸発した冷媒は、圧縮機(21)で再び圧縮される。
【0094】
(4-2)暖房運転の冷媒の流れ
暖房運転では、制御装置(100)が四方切換弁(24)を第2状態とする。制御装置(100)は、圧縮機(21)、室外ファン(25)、およびクロスフローファン(50)を運転する。制御装置(100)は、膨張弁(23)の開度を調節する。暖房運転中の冷媒回路(11)は、室内熱交換器(40)が放熱器として機能し、室外熱交換器(22)が蒸発器として機能する冷凍サイクル(暖房サイクル)を行う。
【0095】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、室内熱交換器(40)を流れる。室内熱交換器(40)は、冷媒と室内空気とを熱交換させる。室内熱交換器(40)で放熱、あるいは凝縮した冷媒は、膨張弁(23)で減圧された後、室外熱交換器(22)を流れる。室外熱交換器(22)は、冷媒と室外空気とを熱交換させる。室外熱交換器(22)で蒸発した冷媒は、圧縮機(21)で再び圧縮される。
【0096】
(5)室内機の動作
冷房運転や暖房運転の室内機(30)の動作について説明する。室内機(30)の運転時には、リモコンの操作などに応じて、気流モードが変更される。冷房運転では、気流モードとして「水平吹きモード」(第1モード)が設定可能である。暖房運転では、気流モードとして「下吹きモード」(第2モード)が設定可能である。
【0097】
(5-1)冷房運転・水平吹きモード
冷房運転の水平吹きモードが実行されると、
図5に示すように、制御装置(100)は、第1フラップ(91)および第2フラップ(92)の角度を最も水平寄りにする。
【0098】
クロスフローファン(50)が運転されると、室内空間(I)の空気は、吸込開口(36)から内部空間(S1)に取り込まれる。吸込開口(36)から取り込まれた空気は、フィルタ(38)を通過する。フィルタ(38)は、空気中の塵埃などを捕集する。フィルタ(38)を通過した空気は、室内熱交換器(40)を流れる。室内熱交換器(40)は空気を冷やす。室内熱交換器(40)で冷やされた空気は、クロスフローファン(50)を通過し、吹出流路(61)を流れる。吹出流路(61)の空気は、前側下方へ案内され、吹出開口(37)から室内空間(I)へ吹き出される。
【0099】
第1フラップ(91)および第2フラップ(92)は、水平に近い角度であるため、吹出空気の水平方向の速度成分が大きくなる。このため、吹出空気がユーザに直接あたるのを回避できる。
【0100】
制御装置(100)は、送風運転およびドライ運転においても、水平吹きモードを実行できる。送風運転は、室内熱交換器(40)を実質的に停止し、室内空間(I)に空気を送風する運転である。ドライ運転は、室内熱交換器(40)の蒸発温度を低くし、冷却および除湿した空気を室内空間(I)に供給する運転である。
【0101】
(5-2)暖房運転・下吹きモード
暖房運転の下吹きモードが実行されると、
図6に示すように、制御装置(100)は、第1フラップ(91)および第2フラップ(92)の角度を最も鉛直寄りとする。
【0102】
クロスフローファン(50)が運転されると、室内空間(I)の空気は、吸込開口(36)から内部空間(S1)に取り込まれる。吸込開口(36)から取り込まれた空気は、フィルタ(38)を通過する。フィルタ(38)は、空気中の塵埃などを捕集する。フィルタ(38)を通過した空気は、室内熱交換器(40)を流れる。室内熱交換器(40)は空気を加熱する。室内熱交換器(40)で加熱された空気は、クロスフローファン(50)を通過し、吹出流路(61)を流れる。吹出流路(61)の空気は、前側下方へ案内され、吹出開口(37)から室内空間(I)へ吹き出される。
【0103】
第1フラップ(91)および第2フラップ(92)は、鉛直に近い角度であるため、吹出空気の垂直方向の速度成分が大きくなる。このため、暖かい空気を床面側に供給し易くなる。
【0104】
(6)実施形態の特徴
以下に本実施形態の特徴について説明する。
【0105】
(6-1)ケーシングの最大高さH
図7に示すように、ケーシング(31)の上下方向の最大高さHは250mmである。ケーシング(31)の最大高さHは260mm以下とするのがよい。これにより、室内機(30)の高さを小さくできる。室内空間(I)の壁のうち窓と天井の間の部分に室内機(30)を配置できる。ケーシング(31)の最大高さHは250mm以下とするのが好ましい。
【0106】
ケーシング(31)の最大高さHは240mm以上とするのがよい。これにより、室内熱交換器(40)と、クロスフローファン(50)との間の距離を確保でき、NZ音などの騒音の発生を抑制できる。加えて、室内熱交換器(40)における1列における上下方向の冷媒流路(P)の数(室内熱交換器(40)の段数)を多くできる。この結果、室内熱交換器(40)を通過する空気の流路抵抗が増大することを抑制できる。
【0107】
(6-2)ケーシングの前後方向の最大長さL1
ケーシング(31)の前後方向の最大長さLは267mmである。ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1は290mm以下とするのがよい。これにより、室内機(30)の前後方向のサイズを小さくでき、室内機(30)のコンパクト化を図ることができる。ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1は270mm以下とするのが好ましい。
【0108】
ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1は267mm以上とするのがよい。これにより、内部空間(S1)において、前側補助熱交換部(43)や後側補助熱交換部(44)を収容するスペースを確保できる。加えて、配管スペース(S2)の容積を確保でき、配管スペース(S2)に冷媒配管や排水路を収容できる。
【0109】
(6-3)吹出流路のスクロール角度θa
吹出流路(61)のスクロール角度θaは次のように定義される。吹出開口(37)の後端の位置をo1とする。
図7に示す縦断面視において、吹出開口の後端の位置o1を始点とし、吹出流路(61)の前側面(73)(第1面)までの最短経路を結ぶ。吹出流路(61)の前側面(73)において、この最短経路の終点の位置をo2とする。位置o1と位置o2を結ぶ平面(第1平面)をf1とする。第1平面f1に直交する平面(第2平面)をf2とする。スクロール角度θaは、水平面fhと第2平面f2のなす角度である。スクロール角度θaは、水平面fhに対する第2平面f2の下方への傾斜角である。
【0110】
本実施形態の室内機(30)において、吹出流路(61)のスクロール角度θaは約27.7°である。吹出流路(61)のスクロール角度θaは15°以上とするのがよい。スクロール角度θaを15°以上とすると、従来例よりも吹出流路(61)全体の前後方向の長さを短くできる。このため、ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1を短くでき、この最大長さL1を290mm以下、さらには270mm以下に抑えることができる。
【0111】
吹出流路(61)のスクロール角度θaは35°以下とするのがよい。スクロール角度θaを35°以下とすると、吹出流路(61)全体の上下の高さが大きくなりすぎるのを抑制できる。これにより、ケーシング(31)の最大高さHを短くでき、この最大高さHを260mm、さらには250mm以下に抑えることができる。
【0112】
加えて、スクロール角度θaを35°以下とすることで、吹出開口(37)から吹き出される空気の水平方向の速度成分が小さくなり過ぎるのを抑制できる。このため、上述した水平吹きモードにおいて、吹出空気がユーザ等に直接あたってしまうことを抑制できる。
【0113】
(6-4)前側面と水平面のなす角度θb
吹出流路(61)の前側面(73)(第1面)と水平面fhのなす角度θbは約23.5°である。この角度θbは15°以上とするのがよい。角度θbを15°以上とすると、従来例よりも吹出流路(61)全体の前後方向の長さを短くできる。このため、ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1を短くでき、この最大長さL1を290mm以下、さらには270mm以下に抑えることができる。
【0114】
角度θbは30°以下とするのがよい。角度θbを30°以下とすると、吹出流路(61)全体の上下の高さが大きくなりすぎるのを抑制できる。これにより、ケーシング(31)の最大高さHを短くでき、この最大高さHを260mm、さらには250mm以下に抑えることができる。
【0115】
加えて、角度θbを30°以下とすることで、吹出開口(37)から吹き出される空気の水平方向の速度成分が小さくなり過ぎるのを抑制できる。このため、上述した水平吹きモードにおいて、吹出空気がユーザ等に直接あたってしまうことを抑制できる。
【0116】
(6-5)ケーシングの後面と吹出開口の後端との間の前後方向の距離L2
ケーシング(31)の後面(後板(33))から吹出開口(37)の後端までの前後方向の距離をL2とする。距離L2は103mmである。距離L2は125mm以下とするのがよい。距離L2を125mm以下とすることで、ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1を短くできる。
【0117】
距離L2は95mm以上とするのがよい。距離L2を95mm以上とすることで、配管スペース(S2)の前後方向の長さを確保でき、配管スペース(S2)に冷媒配管や排出路を収容できる。
【0118】
(6-6)室内熱交換器の冷媒流路の数
図3に示すように、前側熱交換部(41)の1列の冷媒流路(P)(第1冷媒流路(P))の数は10であり、後側熱交換部(42)の1列の冷媒流路(P)(第2冷媒流路(P))の数は4である。前側熱交換部(41)の1列における複数の第1冷媒流路(P)の数n1は、後側熱交換部(42)の1列における複数の第2冷媒流路(P)の数n2の2倍以上とするのがよい。
【0119】
吹出流路(61)の前側寄りを流れる空気の流速が小さくなると、室内空間(I)の空気が吹出開口(37)の前側部分を介して吹出流路(61)に逆流してしまう、いわゆるサージング現象が発生する可能性がある。
【0120】
これに対し、n1≧n2×2の関係を成立させると、前側熱交換部(41)を通過する空気の流路抵抗を低減でき、吹出流路(61)の前側面(73)寄りの空気の流速を確保できる。これにより、サージング現象を回避できる。
【0121】
(6-7)第1熱交換部と後側熱交換部との関係
図7に示すように、第1熱交換部(H1)と後側熱交換部(42)とは互いに分離しており、前後方向に離れている。第1熱交換部(H1)と後側熱交換部(42)の最短距離L3は約37mmである。この最短距離L3は20mm以上とするのがよい。最短距離L3を20mm以上とすることで、第1熱交換部(H1)と後側熱交換部(42)との間にクロスフローファン(50)を配置するスペースを確保できるともに、ケーシング(31)の最大高さHを小さくできる。加えて、クロスフローファン(50)と室内熱交換器(40)とが近づき過ぎるのを抑制でき、NZ音などの騒音の発生を抑制できる。
【0122】
最短距離L3は40mm以下とするのがよい。これにより、ケーシング(31)の前後方向の最大長さL1を小さくできる。
【0123】
(6-8)第1熱交換部の傾斜角θc
第1熱交換部(H1)は、鉛直面fvに対しクロスフローファン(50)側(後側)に第1傾斜角θcだけ傾いている。第1熱交換部(H1)における鉛直面fvに対する第1傾斜角θcは41°である。第1傾斜角θcは45°以下とするのがよい。第1傾斜角θcが45°より大きくなると、第1熱交換部(H1)の表面の凝縮水が、その自重により下方へ落ちてしまう可能性がある。これに対し、第1傾斜角θcを45°以下とすることで、凝縮水が下方へ落ちてしまうことを抑制できる。加えて、前側熱交換部(41)とクロスフローファン(50)と近づき過ぎることに起因してNZ音などの騒音が発生することを抑制できる。
【0124】
第1傾斜角cは38°以上とするのがよい。第1傾斜角θcを38°以上とすると、前側熱交換部(41)の上下の高さを抑えることができる。これにより、ケーシング(31)の最大高さHを小さくできる。
【0125】
(6-9)第2熱交換部の傾斜角θd
第2熱交換部(H2)は、鉛直面fvに対しクロスフローファン(50)側(前側)に第2傾斜角θdだけ傾いている。第2熱交換部(H2)における鉛直面fvに対する第2傾斜角θdは43°である。第2傾斜角θdは45°以下とするのがよい。第2傾斜角θdが45°より大きくなると、第2熱交換部(H2)の表面の凝縮水が、その自重により下方へ落ちてしまう可能性がある。これに対し、第2傾斜角θdを45°以下とすることで、凝縮水が下方へ落ちてしまうことを抑制できる。加えて、後側熱交換部(42)とクロスフローファン(50)と近づき過ぎることに起因してNZ音などの騒音が発生することを抑制できる。
【0126】
第2傾斜角dは38°以上とするのがよい。第2傾斜角θdを38°以上とすると、後側熱交換部(42)の上下の高さを抑えることができる。これにより、ケーシング(31)の最大高さHを小さくできる。
【0127】
(6-10)前側補助熱交換部の配置
前側補助熱交換部(43)は、前側熱交換部(41)の上部のみと重なる。これにより、室内熱交換器(40)では、前側熱交換部(41)の下部における空気の流路抵抗を低減できる。この結果、吹出流路(61)では、前側面(73)寄りの空気の流速を確保できるため、上述したサージング現象の発生を抑制できる。
【0128】
(6-11)水平吹きモードのコアンダ効果
図5に示すように、上述した水平吹きモードでは、制御装置(100)が第1フラップ(91)および第2フラップ(92)を制御する。具体的には、制御装置(100)は、コアンダ効果を利用して吹出開口(37)から水平方向の空気を吹き出すように、第1フラップ(91)および第2フラップ(92)の姿勢を制御する。
【0129】
水平吹きモードでは、第1フラップ(91)の第1上面(91b)の角度が水平面寄りとなる。第2フラップ(92)の第2下面(92b)の角度が、第1フラップ(91)の第1上面(91b)よりもさらに水平面寄りとなる。第1フラップ(91)の第1上面(91b)の前端と、第2フラップ(92)の第2下面(92b)の後端とが鉛直方向においてオーバーラップする。このような構成により、第1フラップ(91)の第1上面(91b)を通過した空気は、コアンダ効果により、第2フラップ(92)の第2下面(92b)に沿うよう流れる。この結果、吹出開口(37)から吹き出される空気の水平方向の速度成分が大きくなる。
【0130】
加えて、第2フラップ(92)の第2上面(92c)の角度は水平面寄りとなる。第2フラップ(92)の第2上面(92c)の上方には、連続面(74)および第1下板部(35a)が形成される。連続面(74)および第1下板部(35a)が形成する面は、前側に向かうにつれて徐々に上方に傾いている。このような構成により、第2フラップ(92)の第2上面(92c)を通過した空気は、コアンダ効果により、上方へ誘引され易くなる。この結果、吹出開口(37)から吹き出される空気の水平方向の速度成分が大きくなる。
【0131】
《その他の実施形態》
上述した各実施形態、及び各変形例においては、適用可能な範囲において以下の構成としてもよい。
【0132】
空気調和装置(10)は、複数の室内機(30)を有するマルチ式であってもよい。
【0133】
空気調和装置(10)は、空気の湿度を調節する湿度調節部を有してもよい。
【0134】
室内機(30)は、換気装置を兼用してもよい。具体的には、室内機(30)は、室外空気をケーシング(31)内に取り込み、室内熱交換器(40)を通過した空気を吹出開口(37)から室内空間(I)へ供給してもよい。
【0135】
室内熱交換器(40)は、前側補助熱交換部(43)および後側補助熱交換部(44)を省略してもよい。前側補助熱交換部(43)は、前側熱交換部(41)の後側に配置されてもよい。
【0136】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0137】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本開示は、空調室内機および空気調和装置について有用である。
【符号の説明】
【0139】
10 空気調和装置
30 空調室内機
31 ケーシング
33 後板(後面)
37 吹出開口
41 前側熱交換部
42 後側熱交換部(後側傾斜部)
43 前側補助熱交換部
50 クロスフローファン
60 流路形成部
61 吹出流路
70 スタビライザ(第1部)
73 第1面
91 第1フラップ(風向調節板)
92 第2フラップ(風向調節版)
100 制御装置