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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】切替装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20230315BHJP
   B60N 2/20 20060101ALI20230315BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20230315BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/20
B60R13/02 B
B60R16/02 630Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021128210
(22)【出願日】2021-08-04
(62)【分割の表示】P 2017199413の分割
【原出願日】2017-10-13
(65)【公開番号】P2021183488
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼塚 招次
(72)【発明者】
【氏名】松本 直也
(72)【発明者】
【氏名】草野 惇至
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-212819(JP,A)
【文献】特開平05-330368(JP,A)
【文献】特開2012-224172(JP,A)
【文献】特開2015-000612(JP,A)
【文献】特開2017-097963(JP,A)
【文献】特開2010-143347(JP,A)
【文献】国際公開第2013/081070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 7/00 - A47C 7/74
B60R 13/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートを背もたれ面が略前方を向く標準位置と、前記背もたれ面が前記標準位置に比べて上方を向くリラックス位置との間で変位させるモータの駆動を切り替える切替装置であって、
前記モータを、前記標準位置から前記リラックス位置に前記乗物用シートを変位させるべく駆動させるリラックススイッチと、
前記モータを、前記リラックス位置から前記標準位置に前記乗物用シートを変位させるべく駆動させる復帰スイッチと
前記乗物用シートが載置される車室の内壁の一部を表面側において構成する加飾部材と、を有し、
前記リラックススイッチ及び前記復帰スイッチはそれぞれ、発光素子と、静電容量センサと、前記静電容量センサの信号に応じて、振動する振動モータと、を備え
前記加飾部材は前記発光素子それぞれの発光を透過させ、
前記発光素子はそれぞれ、前記加飾部材の裏面側に配置され、
前記静電容量センサは、前記発光素子と前記加飾部材との間に配置されていることを特徴とする切替装置。
【請求項2】
前記乗物用シートに乗員が着座したときにオンとなる着座センサを有し、
前記着座センサがオフであるときには前記発光素子は共に消灯し、
前記着座センサがオンであり、且つ、前記乗物用シートが前記標準位置にあるときには、前記リラックススイッチの前記発光素子が点灯すると共に、前記復帰スイッチの前記発光素子は消灯し、
前記着座センサがオンであり、且つ、前記乗物用シートが前記リラックス位置にあるときには、前記リラックススイッチの前記発光素子が消灯すると共に、前記復帰スイッチの前記発光素子が点灯することを特徴とする請求項1に記載の切替装置。
【請求項3】
前記着座センサは前記乗物用シートに乗員が着座したときにオフとなり、
前記着座センサがオフであるときには、前記乗物用シートを変位させる前記モータの駆動を禁止することを特徴とする請求項2に記載の切替装置。
【請求項4】
前記リラックススイッチ及び前記復帰スイッチはそれぞれ、前記発光素子と前記加飾部材との間に配置される遮光部材を有し、
前記遮光部材は、表面に所定の図柄が設けられた透過性のシート状部材であって、
前記リラックススイッチの前記遮光部材には、前記リラックス位置にある前記乗物用シートの形状を示す図柄が設けられ、
前記復帰スイッチの前記遮光部材には、前記標準位置にある前記乗物用シートの形状を示す図柄が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の切替装置。
【請求項5】
前記遮光部材の車外側の面には、拡散材が結合され、
前記拡散材は前記発光素子と前記加飾部材の車外側壁面との間に位置していることを特徴とする請求項4に記載の切替装置。
【請求項6】
乗物用シートを背もたれ面が略前方を向く標準位置と、前記背もたれ面が前記標準位置に比べて上方を向くリラックス位置との間で変位させるモータの駆動を切り替える切替装置であって、
前記モータを、前記標準位置から前記リラックス位置に前記乗物用シートを変位させるべく駆動させるリラックススイッチと、
前記モータを、前記リラックス位置から前記標準位置に前記乗物用シートを変位させるべく駆動させる復帰スイッチと、
前記乗物用シートが載置される車室の内壁の一部を表面側において構成する加飾部材と、を有し、
前記リラックススイッチ及び前記復帰スイッチはそれぞれ、発光素子が実装された基板と、静電容量センサと、前記静電容量センサの信号に応じて、振動する振動モータと、前記基板、前記静電容量センサ、及び、前記振動モータを支持するホルダと、を備え、
前記加飾部材は前記発光素子それぞれの発光を透過させ、
前記ホルダは筒状をなす本体部を備え、
前記本体部の一方の開口縁は前記加飾部材裏面に、他方の開口縁は前記基板の前記発光素子が実装された面にそれぞれ結合し、
前記発光素子は前記本体部の内部に位置していることを特徴とする切替装置。
【請求項7】
前記ホルダは前記振動モータを支持する支持部を備え、
前記支持部は前記本体部の外周面に結合し、
前記振動モータは前記加飾部材の前記裏面に当接していることを特徴とする請求項6に記載の切替装置。
【請求項8】
前記加飾部材はドアトリムに設けられ、
前記ドアトリムは、ドアパネルの車内側に位置し、車内側を向く面を有するドアトリム本体と、前記ドアトリム本体の周縁から車外側に突出し、前記ドアパネルの縁部に当接するトリム縁壁部とを有し、
前記ドアトリム本体には、車幅方向に貫通する開口部が形成され、
前記開口部に前記加飾部材が設けられ、
前記リラックススイッチは前記加飾部材の前記標準位置にある前記乗物用シートの前記背もたれ面の前方に位置する部分に設けられ、
前記復帰スイッチは前記加飾部材の、前記リラックス位置にある前記乗物用シートの前記背もたれ面の前方であって、且つ、前記リラックススイッチの後上方に位置する部分に設けられている請求項1~請求項7のいずれか1つの項に記載の切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートの位置を切り替えるための切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートの車外側に位置するドアのドアトリムに、乗物用シートのスライド移動、リクライニング移動等を制御する3つのスイッチが設けられたものがある(例えば特許文献1)。特許文献1に記載のスイッチはドアトリムにおいて2つのスイッチは前後に並んで配置され、残りの1つのスイッチは他の2つのスイッチの後方、且つ、下方に配置されている。乗物用シートの背もたれ面が後傾したときには、乗員は最も後方に位置するスイッチを操作するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなスイッチは、操作性の観点から乗物用シートに着座した乗員が腕を前方に伸ばしたときの手の位置にあることが好ましい。乗物用シートの背もたれ面が後傾すると、着座した乗員の上半身は前上方を向き、乗員が腕を前方に伸ばしたときの手の位置は上方に移動する。そのため、特許文献1のスイッチは、背もたれ面が後傾した乗物用シートに着座する乗員にとって、操作しにくい。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、乗物用シートの位置を切り替えるために乗員が操作する切替装置を、乗物用シートの背もたれ面が後傾したときに、着座した乗員の操作しやすい位置に配置することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、乗物用シート(1)を背もたれ面(10)が略前方を向く標準位置と、前記背もたれ面が前記標準位置に比べて上方を向くリラックス位置との間で変位させるモータ(11)の駆動を切り替える切替装置(16)であって、前記モータを、前記標準位置から前記リラックス位置に前記乗物用シートを変位させるべく駆動させるリラックススイッチ(22)と、前記モータを、前記リラックス位置から前記標準位置に前記乗物用シートを変位させるべく駆動させる復帰スイッチ(23)とを有し、前記リラックススイッチは前記乗物用シートの車外側に位置する車室(2)の内壁(21)において、前記標準位置にある前記乗物用シートの前記背もたれ面の前方に設けられ、前記復帰スイッチは前記乗物用シートの車外側に位置する車室の内壁において、前記リラックス位置にある前記乗物用シートの前記背もたれ面の前方であって、且つ、前記リラックススイッチの後上方に配置されていることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、乗物用シートがリラックス位置にあるときに乗員が操作する復帰スイッチは、標準位置にあるときに乗員が操作するリラックススイッチよりも後上方に位置している。一方、リラックス位置にあるとき、乗員の上半身は、標準位置にあるときに比べて上方に向いている。そのため、復帰スイッチをリラックススイッチよりも上方に配置することによって、復帰スイッチが乗員の上半身に対してより前方の位置となり、操作し易くなる。
【0008】
上記の態様において、前記乗物用シートに乗員が着座したときにオンとなる着座センサ(20)を有し、前記リラックススイッチ及び前記復帰スイッチはそれぞれ発光素子(50)を備え、前記着座センサがオフであるときには前記発光素子は共に消灯し、前記着座センサがオンであり、且つ、前記乗物用シートが前記標準位置にあるときには、前記リラックススイッチの前記発光素子が点灯すると共に、前記復帰スイッチの前記発光素子は消灯し、前記着座センサがオンであり、且つ、前記乗物用シートが前記リラックス位置にあるときには、前記リラックススイッチの前記発光素子が消灯すると共に、前記復帰スイッチの前記発光素子が点灯するとよい。
【0009】
この態様によれば、着座した乗員が乗物用シートの位置を変更するためのスイッチを視認し易くなる。また、乗物用シートに乗員が着座していないときには、両発光素子が消灯するため、エネルギーの消費を抑えることができる。
【0010】
上記の態様において、前記乗物用シートの側方の車両用ドア(4)の車内側壁面に設けられた加飾部材(25)を含み、前記加飾部材は前記発光素子それぞれの発光を透過させ、前記発光素子はそれぞれ、前記加飾部材の車外側に配置され、前記リラックススイッチ及び前記復帰スイッチはそれぞれ、前記発光素子と前記加飾部材との間に配置され、前記発光を透過させる静電容量センサ(54)を備えているとよい。
【0011】
この態様によれば、発光素子の発光が加飾部材を透過するため、車室内の乗員が発光素子の発光を視認することができる。また、静電容量センサによって、加飾部材の車外側にセンサを配置した場合であっても、乗員の加飾部材へのタッチ(接触)を検出することができる。両スイッチを加飾部材の車外側に配置することによって、車両用ドアの意匠性を高めることができる。
【0012】
上記の態様において、前記リラックススイッチ及び前記復帰スイッチはそれぞれ、前記発光素子と前記加飾部材との間に配置される遮光部材(52)を有し、前記遮光部材は、表面に所定の図柄が設けられた透過性のシート状部材であって、前記リラックススイッチの前記遮光部材には、前記リラックス位置にある前記乗物用シートの形状を示す図柄(60)が設けられ、前記復帰スイッチの前記遮光部材には、前記標準位置にある前記乗物用シートの形状を示す図柄(61)が設けられているとよい。
【0013】
この態様によれば、乗物用シートが標準位置にあるときには、リラックススイッチの発光素子が点灯し、加飾部材にリラックス位置にある乗物用シートの形状を示す図柄が表示される。また、乗物用シートがリラックス位置にあるときには、復帰スイッチの発光素子が点灯し、加飾部材に標準位置にある乗物用シートの形状を示す図柄が表示される。そのため、リラックススイッチ又は復帰スイッチの機能が分かり易くなる。
【0014】
上記の態様において、前記加飾部材は、車内側の壁面に車内側に突出する突起部(40、41)を少なくとも2つ有し、一方の前記突起部(41)は、他方の前記突起部(40)の他方の後上方に位置し、前記リラックススイッチは前方の前記突起部(40)の車外側に配置され、前記復帰スイッチは後方の前記突起部の車外側(41)に配置されているとよい。
【0015】
この態様によれば、突起部が設けられることによって、リラックススイッチ及び復帰スイッチの場所が理解し易くなる。
【0016】
上記の態様において、前記リラックススイッチ及び前記復帰スイッチはそれぞれ、前記静電容量センサの信号に応じて、振動する振動モータ(53)を備えるとよい。
【0017】
この態様によれば、静電容量センサによって加飾部材へのタッチが検出されると振動モータが振動する。そのため、乗員が静電容量センサによってタッチが検出されたことを認識することができる。
【0018】
上記の態様において、前記発光素子が実装された基板(51)と、前記基板を支持するホルダ(55)とを有し、前記ホルダは筒状をなす本体部(65)を備え、前記本体部の一方の開口縁(70)は前記加飾部材の車外側壁面に、他方の開口縁(71)は前記基板の前記発光素子が実装された面にそれぞれ結合し、前記発光素子は前記本体部の内部に位置しているとよい。
【0019】
この態様によれば、本体部の開口に対向する加飾部材の車外側壁面に発光素子の光が照射されて、加飾部材の車内側壁面の本体部の開口の車内側に位置する領域が発光する。本体部を筒状にすることによって、加飾部材の車内側壁面の発光する領域と発光しない領域とを明瞭に区分することができる。また、発光素子と加飾部材の車外側壁面とが離間しているため、発光素子の光が照射される領域内の光の強度をより均一にすることができる。
【0020】
上記の態様において、前記静電容量センサ及び前記遮光部材は、前記本体部の前記一方の開口と対向する位置おいて、前記加飾部材の車外側壁面に結合しているとよい。
【0021】
この態様によれば、加飾部材において、車内側壁面の発光する領域の車外側壁面に静電容量センサが結合されるため、乗員の発光する領域へのタッチを静電容量センサが検知し易くなる。また、飾部材において、車内側壁面の発光する領域の車外側壁面に遮光部材が配置されることによって、遮光部材の図柄を加飾部材の車内側壁面により明瞭に表示することができる。
【0022】
上記の態様において、前記発光素子と前記加飾部材の車外側壁面との間に、前記発光素子からの発光を拡散させる拡散材(80)が設けられているとよい。
【0023】
この態様によれば、加飾部材の車内側壁面の発光する領域内の発光強度をより均一にすることができる。
【0024】
上記の態様において、前記ホルダは前記振動モータを支持する支持部(66)を備え、前記支持部は前記本体部の外周面に結合し、前記振動モータは前記加飾部材の車外側壁面に当接しているとよい。
【0025】
この態様によれば、加飾部材の車内側壁面の発光する領域内に振動モータの振動が伝わり易くなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の態様によれば、標準位置と、標準位置よりも背もたれ面が後傾したリラックス位置との間で変位する乗物用シートの位置を切り替えるモータの駆動を制御する切替装置であって、乗物用シートを標準位置からリラックス位置に変位させるためのリラックススイッチと、リラックス位置から標準位置に変位させるための復帰スイッチとを備え、復帰スイッチがリラックススイッチの後上方に位置する態様によれば、乗物用シートがリラックス位置にある場合であっても、復帰スイッチを着座した乗員の操作しやすい位置に配置することができる。
【0027】
上記の態様において、着座センサを有し、両スイッチがそれぞれ発光素子を備え、着座センサがオフであるときには発光素子は共に消灯し、着座センサがオンであり、且つ、乗物用シートが標準位置にあるときには、リラックススイッチの発光素子が点灯すると共に、復帰スイッチの発光素子は消灯し、着座センサがオンであり、且つ、乗物用シートがリラックス位置にあるときには、リラックススイッチの前記発光素子が消灯すると共に、復帰スイッチの前記発光素子が点灯する態様によれば、着座した乗員が乗物用シートの位置を変更するためのスイッチを視認し易くなる。また、乗物用シートに乗員が着座していないときには、両発光素子が消灯するため、エネルギーの消費を抑えることができる。
【0028】
上記の態様において、前記乗物用シートの側方の車両用ドアの車内側壁面に設けられた加飾部材を含み、発光素子はそれぞれ、加飾部材の車外側に配置され、リラックススイッチ及び復帰スイッチはそれぞれ、発光素子と加飾部材との間に配置され、発光を透過させる静電容量センサを備えている態様によれば、車室内の乗員が発光素子の発光を視認することができる。また、静電容量センサによって、加飾部材の車外側にセンサを配置した場合であっても、乗員の加飾部材へのタッチ(接触)を検出することができ、車両用ドアの意匠性を高めることができる。
【0029】
上記の態様において、両スイッチがそれぞれ遮光部材を有し、リラックススイッチの遮光部材には、リラックス位置にある乗物用シートの形状を示す図柄が設けられ、復帰スイッチの遮光部材には、標準位置にある乗物用シートの形状を示す図柄が設けられている態様によれば、乗物用シートが標準位置にあるときには、加飾部材にリラックス位置にある乗物用シートの形状を示す図柄が表示させることができ、リラックス位置にあるときには、加飾部材に標準位置にある乗物用シートの形状を示す図柄が表示させることができるため、リラックススイッチ又は復帰スイッチの機能が分かり易くなる。
【0030】
上記の態様において、加飾部材は、車内側の壁面に車内側に突出する突起部を少なくとも2つ有し、一方の突起部は、他方の突起部の他方の後上方に位置し、リラックススイッチは前方の突起部の車外側に配置され、復帰スイッチは後方の突起部の車外側に配置されている態様によれば、リラックススイッチ及び復帰スイッチの場所が分かり易くなる。
【0031】
上記の態様において、両スイッチはそれぞれ、静電容量センサの信号に応じて、振動する振動モータを備える態様によれば、静電容量センサによって加飾部材へのタッチが検出されると振動モータが振動し、乗員が静電容量センサによってタッチが検出されたことを認識することができる。
【0032】
上記の態様において、発光素子が実装された基板と、基板を支持するホルダとを有し、ホルダは筒状をなす本体部を備え、本体部の一方の開口縁は加飾部材の車外側壁面に、他方の開口縁は基板の発光素子が実装された面にそれぞれ結合し、発光素子は本体部の内部に位置している態様によれば、本体部の開口に対向する加飾部材の車外側壁面に発光素子の光が照射されて、加飾部材の車内側壁面の本体部の開口の車内側に位置する領域が発光する。本体部を筒状にすることによって、加飾部材の車内側壁面の発光する領域と発光しない領域とを明瞭に区分することができる。また、発光素子と加飾部材の車外側壁面とが離間しているため、発光素子の光が照射される領域内の光の強度をより均一にすることができる。
【0033】
上記の態様において、静電容量センサ及び遮光部材は、本体部の一方の開口と対向する位置おいて、加飾部材の車外側壁面に結合している態様によれば、加飾部材において、車内側壁面の発光する領域の車外側壁面に静電容量センサが結合されるため、乗員の発光する領域へのタッチを静電容量センサが検知し易くなる。また、飾部材において、車内側壁面の発光する領域の車外側壁面に遮光部材が配置されることによって、遮光部材の図柄を加飾部材の車内側壁面により明瞭に表示することができる。
【0034】
上記の態様において、発光素子と加飾部材の車外側壁面との間に、発光素子からの発光を拡散させる拡散材が設けられている態様によれば、加飾部材の車内側壁面の発光する領域内の発光強度をより均一にすることができる。
【0035】
上記の態様において、ホルダは振動モータを支持する支持部を備え、支持部は本体部の外周面に結合し、振動モータは加飾部材の車外側壁面に当接している態様によれば、加飾部材の車内側壁面の発光する領域内に振動モータの振動が伝わり易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施形態に係る切替装置が車両において、標準位置にある乗物用シートに乗員が着座したときの側面図、及び、突起部の拡大図
図2】リラックス位置にある乗物用シートに乗員が着座したときの側面図、及び、突起部の拡大図
図3】乗物用シートが標準位置にあり、乗員が着座していないときの側面図
図4】ドアトリム上部の車外側の側面図
図5図4のIV-IV断面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明を、自動走行可能な自動車の右前席の乗物用シートの位置を切り替える切替装置に適用した実施形態を説明する。
【0038】
乗物用シート1は、図1に示すように、車室2のフロア3に載置されている。乗物用シート1の車外側の側方には、右前席用のドア4が設けられている。乗物用シート1は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション5と、シートクッション5の後端側に設けられた背もたれとして機能するシートバック6と、シートバック6の上端側に設けられたヘッドレスト7と、シートクッション5の前端に設けられたオットマン8とを備えている。シートクッション5の上面には乗員が着座する着座面9が形成され、シートバックの前面には乗員が上半身を支持する背もたれ面10が形成されている。乗物用シート1は複数の電動モータ11を備え、電動モータ11の駆動によって、乗物用シート1は標準位置(図1)と、標準位置からシートバック6及びオットマン8がシートクッション5に対して傾動したリラックス位置(図2)との間で変位する。
【0039】
図1に示すように、乗物用シート1が標準位置にあるとき、着座面9は概ね水平をなしている。シートバック6は鉛直方向に対して5~20度程度後傾し、背もたれ面10は略前方を向いている。オットマン8は大部分がシートクッション5の下方に配置され、略鉛直に垂下している。
【0040】
図2に示すように、乗物用シート1はリラックス位置にあるとき、標準位置にあるときに比べてフロア3に対して後方に移動している。シートバック6は乗物用シート1が標準位置にあるときに比べて約40度後傾し、背もたれ面10は前上方を向いている。また、オットマン8はシートクッション5に対して前方に突出し、着座面9に連続する支持面12を形成している。着座した乗員の足は支持面12に支持される。更に、シートクッション5の前端は、後端に比べて上方にあり、着座面9は後方に向かうにつれて下方に傾斜している。
【0041】
車体15には、乗員からの乗物用シート1の位置の切替を指示する入力を受け付け、その切替を実行する切替装置16と、電動モータ11の駆動を制御するモータ制御装置17とが設けられている。モータ制御装置17は、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成されている。モータ制御装置17は、切替装置16からの信号を受信して、その信号に応じて、電動モータ11を駆動し、乗物用シート1の位置を標準位置とリラックス位置との間で変位させる。また、切替装置16からの信号に応じて、電動モータ11の変位を読み取り、乗物用シート1の位置(リラックス位置、又は、標準位置)を切替装置16に出力する。
【0042】
切替装置16は、乗物用シート1に設けられ、乗員の着座を検知する着座センサ20と、それぞれ車室2の内壁21に設けられるリラックススイッチ22及び復帰スイッチ23と、両スイッチ22、23への入力及び着座センサ20からの信号に応じて、モータ制御装置17を駆動させる切替制御装置24と、リラックススイッチ22及び復帰スイッチ23を車内側から覆う加飾部材25とを備える。リラックススイッチ22は、乗物用シート1を標準位置からリクライニング位置に変位させるときに乗員が操作するスイッチであり、復帰スイッチ23は乗物用シート1をリクライニング位置から標準位置に変位させるときに乗員が操作するスイッチである。
【0043】
着座センサ20は乗員が着座している場合にはオンとなり、乗員が着座していない場合にはオフとなるスイッチに相当する。本実施形態では、着座センサ20はシート状をなす公知のメンブレンスイッチによって構成され、乗物用シート1のシートクッション5の着座面9に沿って配置されている。着座センサ20は、着座面9に加わる上方からの荷重が、乗員からの荷重に対応する所定の値以上になるとオンになるように構成されている。
【0044】
図1及び図2に示すように、リラックススイッチ22及び復帰スイッチ23は共に、右前席用のドア4のドアトリム26に設けられている。
【0045】
ドアトリム26は樹脂材料から形成された車両用内装材であり、車室2の内壁21を構成している。ドアトリム26は、ドアの骨格部材であるドアパネル27の車内側面を覆うように設けられている。ドアトリム26は、面が左右を向き、ドアパネル27の車内側に配置されたトリム本体部28と、トリム本体部28の周縁から車外側に突出し、ドアパネル27の車内側面における縁部に当接するトリム縁壁部(不図示)とを有する。トリム縁壁部は、トリム本体部28の周縁に沿って延びて、所定の位置でドアパネル27に締結されている。トリム本体部28の前下部には、スピーカ29が設けられている。トリム本体部28には車幅方向に貫通する開口部30が形成されている。開口部30は前後に延び、その後端において後上方に屈曲した態様をなしている。
【0046】
図4及び図5に示すように、加飾部材25はトリム本体部28の開口部30に設けられている。加飾部材25は無色透明な樹脂によって形成された基材36と、基材36を車内側から被覆するフィルム37とを備える。
【0047】
図3に示すように、基材36は、主面が車幅方向を向く板状をなす板部39と、板部39から突出する2つの突起部40、41とを備える。板部39は、前後に延び、その後端において後上方に屈曲し、概ね開口部30と同形をなしている。突起部40は略円柱状をなしている。一方の突起部40は板部39の前部前端から車内側に向けて突出し、他方の突起部41は板部39の後部上端の車内側壁面から車内側に向けて突出している。本実施形態では、突起部40、41と板部39とは一体に成形されている。
【0048】
図5に示すように、フィルム37は透過する有色材料層(本実施形態では、青色)を有する樹脂によって形成され、透過性を有し、十分薄い可撓性を有するシート状部材である。フィルム37は裏面に設けられ粘着剤を介して、基材36の車内側壁面に接着されている。フィルム37は概ね一定の厚さを有し、識別部42においてのみ他の部分に比べて肉厚が薄くなっている。識別部42は突起部40、41の突端の稜線部分43(山折れ部)、及び、突起部40、41の基端に位置する外縁44(谷折れ部)に沿って円環状に設けられている。
【0049】
フィルム37の色は肉厚に依存する。肉厚の薄い識別部42では、他の部分に比べて、その色が薄くなる。特に、フィルム37は透過する有色材料層を有する樹脂によって形成されているため、その色の違いがより明瞭となる。識別部42が稜線部分43に沿って設けられているため、突起部40、41の稜線部分43の色が他の部分に比べて薄くなる。また、識別部42が突起部40、41の外縁44に沿って設けられるため、突起部40、41の輪郭の色が他の部分に比べて薄くなる。そのため、乗員が突起部40、41の形状及びその位置を視認し易くなる。
【0050】
本実施形態では、フィルム37は真空圧空成形法によって、基材36に貼り付けられている。真空圧空成形法とは、フィルム37を基材36に対向するように真空チャンバにセットして、基材36を押し上げてフィルム37の裏面に押し当て、チャンバ内を真空とした後に、真空チャンバ内に大気を導入してフィルム37に基材36に密着させるように圧力を加える公知の方法である。真空圧空成形法を用いると、フィルム37は突起部40、41に結合するときに、その形状に合うように引き延ばされるため、突起部40、41の稜線部分43及び外縁44において薄肉となる。これによって、フィルム37に肉厚の薄い識別部42を形成することができ、且つ、その識別部42を突起部40、41の稜線部分43及び外縁44に沿って設けることができる。但し、本実施形態では、フィルム37は真空圧空成形法によって、基材36に貼り付けられていたが、この方法には限定されず、フィルム37が突起部40、41に形状に合うように引き延ばされて、稜線部分43及び外縁44において薄肉となる方法であれば、いかなる方法であってもよい。
【0051】
図4に示すように、加飾部材25は開口部30の全体を車外側から塞ぐように配置されている。加飾部材25は開口部30に嵌め込まれ、トリム本体部28に結合している。本実施形態では、加飾部材25とトリム本体部28とをより確実に結合させるため、加飾部材25の下縁には、トリム本体部28の車外側壁面に沿って下方に延びる複数の締結部45が設けられ、締結部45はそれぞれトリム本体部28の車外側壁面に締結されている。
【0052】
図4に示すように、リラックススイッチ22は、加飾部材25の車外側の壁面であって、前側に位置する突起部40の車外側に結合し、加飾部材25に車内側から覆われている。図1に示すように、リラックススイッチ22は、乗物用シート1の車外側に位置する車室2の内壁21において、標準位置にある乗物用シート1の背もたれ面10の前方に位置している。より詳細には、リラックススイッチ22は、標準位置にある乗物用シート1に、胸部が前方を向くように着座し、前腕を胴体の前方に移動させたときに、乗員の手が届く位置に配置されている。
【0053】
図4に示すように、復帰スイッチ23は、加飾部材25の車外側の壁面であって、後上側に位置する突起部41の車外側に結合し、加飾部材25に車内側から覆われている。図2に示すように、復帰スイッチ23はリラックススイッチ22の後方且つ上方に位置し、リラックス位置にある乗物用シート1の背もたれ面10の前方に位置している。より詳細には、復帰スイッチ23は、リラックス位置にある乗物用シート1に乗員が背もたれ面10に背中が接触するように着座し、前腕を胴体の前方に移動させたときに、手が届く位置に配置されている。よって、復帰スイッチ23は、リラックス位置にある乗物用シート1に着座した乗員が視認できる位置に配置されている。
【0054】
図4に示すように、リラックススイッチ22及び復帰スイッチ23はそれぞれ、発光素子50が実装された基板51と、遮光部材52(図5参照)と、振動モータ53と、静電容量センサ54(図5参照)と、それら全てを支持する樹脂製のホルダ55とを備える。復帰スイッチ23はリラックススイッチ22と同様の構成を備えるため、以下では、図5を参照して、リラックススイッチ22を説明し、復帰スイッチ23については、リラックススイッチ22についての説明を援用する。
【0055】
図5に示すように、基板51は配線がプリントされたプリント基板であり、円盤状をなしている。基板の略中央には、発光素子50となる白色・表面実装型のLED素子がはんだ付けされている。本実施形態では、発光素子50は白色・表面実装型のLED素子であるが、有色の砲弾型のLED素子であってもよい。また、基板51の背面には、発光素子50を冷却するためのヒートシンクが接着されていてもよい。
【0056】
遮光部材52は、無色透明な樹脂によって形成された透過性のシート部材の表面に、黒のインクが塗布されて所定の図柄60、61が描かれることによって形成されている。図1及び図2の拡大図にはそれぞれ、遮光部材52の表面の無色透明な領域が着色されて示されている。リラックススイッチ22の遮光部材52には、図1に示すように、リラックス位置にある乗物用シート1の形状、すなわち、オットマン8がシートクッション5に対して前方に突出し、背もたれ面10が後傾した乗物用シート1の形状を示す図柄60が描かれている。図2に示すように、復帰スイッチ23の遮光部材52には、標準位置にある乗物用シート1の形状、すなわち、オットマン8が垂下し、背もたれ面が前方を向く乗物用シート1の形状を示す図柄61が描かれている。
【0057】
振動モータ53は公知の円盤状のブラシレスDCモータである。振動モータは電圧の印加によって円盤に垂直な方向に振動する。図4に示すように、各スイッチ22、23はそれぞれ2個ずつの振動モータ53を備えている。
【0058】
静電容量センサ54は略円形をなし、無色透明なシート状をなしている。静電容量センサ54はその表面に電極を備え、乗員の手とその電極との間の静電容量の変化を検出することによって、乗員の手の近接を検知する公知の静電容量式のセンサである。
【0059】
ホルダ55は、図4及び図5に示すように、筒状をなす本体部65と、本体部65の外周面に結合した2つの支持部66と、本体部65の外周縁に接続し、本体部65の軸線方向に直交する方向に延びるフランジ部67とを備える。
【0060】
図4に示すように、本体部65は車幅方向に延びる略円筒状をなしている。本体部65の内径はそれぞれ、突起部40、41の外径と概ね等しい。本体部65は車内側の開口部分が加飾部材25の車外側壁面であって、突起部40、41の車外側に対向する位置、より詳細には、本体部65の開口部分と突起部40、41とが車幅方向に重なる位置に配置されている。本体部65の車内側の開口縁70はその縁に沿って、加飾部材25の車外側壁面に接着されている。本体部65の車外側の開口縁71は、基板51の発光素子50が実装された面に結合している。本実施形態では、本体部65の車外側の開口縁71には、貫通孔74を有する円環状の底壁75が設けられている。発光素子50はその底壁75の貫通孔74に収容され、基板51は底壁75に所定の螺子を用いて締結されている。
【0061】
静電容量センサ54及び遮光部材52は、加飾部材25の車外側壁面に沿って、本体部65の車内側の開口部分と対向する位置に配置され、加飾部材25の車外側壁面に結合されている。本実施形態では、本体部65の車内側の開口縁70には、その内周に車外側へ凹む段部77が形成されている。遮光部材52は縁部において段部77に収容され、本体部65と加飾部材25の車内側壁面とに挟持されている。静電容量センサ54は遮光部材52の車内側に位置している。静電容量センサ54の車内側の面は加飾部材25の車外側壁面に接着され、静電容量センサ54の車外側の面は遮光部材52の車内側の面に接着されている。
【0062】
本実施形態では、遮光部材52の車外側の面には、薄板状の拡散材80が結合されている。拡散材80は母材となる無色透明な樹脂に光を散乱する微粒子が添加されることによって形成されている。図5に示すように、拡散材80は発光素子50と加飾部材25の車外側壁面との間に位置しているため、発光素子50から拡散材80に入射した光は拡散材80の内部の微粒子によって散乱されて、拡散する。
【0063】
支持部66は平板状をなして本体部65の側面から2つ突出している。支持部66は車幅方向を向く主面を有している。支持部66の車内側の側面には、車外側に略円盤状に凹む収容凹部85が形成されている。それぞれの収容凹部85には振動モータ53が収容されている。振動モータ53は収容凹部85において、その円形をなす面が車幅方向を向くように配置されている。振動モータ53は、収容凹部85の底壁に締結されて支持部66に結合し、ホルダ55に支持されている。収容凹部85の形状は、振動モータ53が収容凹部85に収容されたときに、振動モータ53の車内側を向く面が本体部65の車内側の開口縁70と概ね面一となるように設定されている。本実施形態では、更に、支持部66には、振動モータ53の組付を容易にするため、その上下壁又は前後壁に、収容凹部85に接続する挿入孔86が形成されている。組付時には、振動モータ53は挿入孔86を介して収容凹部85に収容することができる。
【0064】
図4に示すように、フランジ部67は本体部65の車内側の開口縁70から上下又は前後方向の所定の方向に延び、トリム本体部28の裏面に達し、トリム本体部28の裏面に締結されている。フランジ部67がトリム本体部28に締結されることによって、ホルダ55がトリム本体部28に結合している。このとき、振動モータ53は車内側の面において加飾部材25の車外側壁面に当接している。そのため、振動モータ53の振動が加飾部材25に伝わり易くなり、加飾部材25に触れた乗員に振動が伝わり易くなる。本実施形態では、更に、フランジ部67は本体部65の周縁において、加飾部材25の車外側の壁面に接着されている。図4に示すように、リラックススイッチ22のホルダ55のフランジ部67は前方及び下方に延び、前部及び下部においてそれぞれトリム本体部28の裏面に締結されている。復帰スイッチ23のホルダ55のフランジ部67は2本の帯状をなして後下方に延び、それぞれトリム本体部28の裏面に締結されている。
【0065】
切替制御装置24は、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成され、リラックススイッチ22及び復帰スイッチ23それぞれの発光素子50、振動モータ53、及び静電容量センサ54と、着座センサ20と、モータ制御装置17とに所定の配線を介して接続されている。
【0066】
次に、切替装置16の動作について説明する。乗物用シート1に乗員が着座していないときには、リラックススイッチ22の発光素子50及び復帰スイッチ23の発光素子50は共に消灯している。乗物用シート1に乗員が着座すると、着座センサ20はオンとなる。着座センサ20がオンとなり、且つ、車両が自動走行しているとき、切替制御装置24は、モータ制御装置17に乗物用シート1の位置を確認するための信号を送る。切替制御装置24はモータ制御装置17から乗物用シート1の位置が標準位置にある場合に対応する信号を受信すると、所定の時間経過後に、リラックススイッチ22の発光素子50を点灯させる。このとき、前側の突起部40には、図1の拡大図における着色された部分が発光し、リラックス位置にある乗物用シート1に対応する図柄60が表示される。このとき、乗員が後側の突起部41にタッチした場合でも、切替制御装置24は反応しない(復帰スイッチ23がオフ)。
【0067】
乗員が前側の突起部40にタッチすると、そのタッチがリラックススイッチ22の静電容量センサ54によって検知される(リラックススイッチ22がオン)。切替制御装置24は、リラックススイッチ22の静電容量センサ54からタッチに対応する信号を受信すると、リラックススイッチ22の振動モータ53を駆動させる。振動モータ53の駆動によって、乗員に振動が伝わり、乗員に擬似クリック感が与えられる。これによって、乗員は静電容量センサ54によってタッチが検知されたことを認識することができる。静電容量センサ54によって、乗員の手が前側の突起部40から離れたことが検知されると、リラックススイッチ22の発光素子50を消灯させ、切替制御装置24は、モータ制御装置17に信号を送り、電動モータ11を駆動させて、乗物用シート1をリラックス位置に変位させる。
【0068】
乗物用シート1が変位し、モータ制御装置17から乗物用シート1がリラックス位置にあることを示す信号を受信すると、切替制御装置24は、所定の時間経過後に、復帰スイッチ23の発光素子50を点灯させる。これによって、図2の拡大図における着色された部分が発光し、後側の突起部41には標準位置にある乗物用シート1に対応する図柄61が表示される。このとき、乗員が前側の突起部40にタッチした場合でも、切替制御装置24は反応しないように構成されている。
【0069】
その後、乗員が後側の突起部41にタッチすると、そのタッチが復帰スイッチ23の静電容量センサ54によって検知される(復帰スイッチ23がオン)。切替制御装置24は、復帰スイッチ23の静電容量センサ54からタッチに対応する信号を受信すると、復帰スイッチ23の振動モータ53を駆動させる。振動モータ53の駆動によって、乗員に振動が伝わり、乗員に擬似クリック感が与えられる。静電容量センサ54によって、乗員の手が後側の突起部41から離れたことが検知されると、切替制御装置24は、復帰スイッチ23の発光素子50を消灯させる。切替制御装置24は、更に、モータ制御装置17に信号を送り、電動モータ11を駆動させて、乗物用シート1を標準位置に変位させる。
【0070】
変位が完了すると、切替制御装置24は、リラックススイッチ22の発光素子50を点灯させる。リラックススイッチ22の発光素子50の点灯によって、前側の突起部40に、リラックス位置にある乗物用シート1に対応する図柄60が表示される。このとき、乗員が後側の突起部41にタッチした場合でも、切替制御装置24は反応しないように構成されている。
【0071】
乗員が退座すると着座センサ20はオフとなる。このとき、切替制御装置24は、リラックススイッチ22の発光素子50及び復帰スイッチ23の発光素子50を共に消灯させる(図3)。このように、乗物用シート1に乗員が着座していないときには、2つの発光素子50が消灯するため、エネルギーの消費を抑えることができる。着座センサ20がオフであるときには、切替制御装置24は前側の突起部40及び後側の突起部41にタッチがあった場合でも反応しない(リラックススイッチ22及び復帰スイッチ23が共にオフ)ように構成されている。
【0072】
次に、切替装置16の効果について説明する。乗物用シート1が標準位置にあり、乗員が着座しているときには、前側の突起部40のみ点灯し、その突起部40にリラックス位置にある乗物用シート1に対応する図柄60が表示されている。乗物用シート1がリラックス位置にあり、乗員が着座しているときには、後側の突起部41のみ点灯し、その突起部41に標準位置にある乗物用シート1に対応する図柄61が表示されている。そのため、乗員が操作すべきスイッチ、及びその位置を容易に認識することができ、操作後の乗物用シート1の形状と、各スイッチの機能を容易に理解することができる。
【0073】
スイッチ22、23は乗員が前腕を胴体の前に移動させることによって、操作できる位置にあることが好ましい。乗物用シート1がリラックス位置にあるときは、標準位置にあるときに比べて、背もたれ面10は後傾し、乗員の上半身は前上方を向いている。また、図1及び図2に示すように、前腕を胴体の前に移動させた乗員の手の位置は、乗員の上半身が前方を向いている場合に比べて、前上方を向く場合の方が上方にある。乗員の上半身が前上方を向いた場合に操作される復帰スイッチ23が、上半身が前方を向いている場合に操作されるリラックススイッチ22の後方且つ上方に位置している。そのため、リラックススイッチ22の後方又は後下方に位置している場合に比べて、復帰スイッチ23の操作が容易である。
【0074】
加飾部材25が発光素子50の発光を透過させる部材によって形成されているため、乗員がその発光を加飾部材25の車内側から視認することができる。また、静電容量センサ54を用いることによって、センサを加飾部材25に露出させることなく、乗員の加飾部材25へのタッチ動作を検出することができる。このようにして、両スイッチ22、23が加飾部材25によって車内側から覆われているため、ドア4の意匠性が高められている。また、突起部40、41の車外側に設けられているため、乗員が両スイッチ22、23の位置を容易に理解することができる。
【0075】
発光素子50からの発光は、本体部65の開口に対向する加飾部材25の車外側壁面から車室2に入射する。したがって、加飾部材25の車内側壁面において、本体部65の開口の車内側に位置する領域が発光する。本体部65を筒状にすることによって、本体部65の開口に対向する部分のみを発光させることができ、発光する領域と発光しない領域とを明瞭に区分することができる。また、発光素子50と加飾部材25の車外側壁面とが離間しているため、発光素子50の光が照射される領域内の光の強度をより均一にすることができる。更に、発光素子50からの光が拡散材80によって光が散乱されるため、加飾部材25の車内側壁面において、本体部65の開口の車内側に位置する領域に到達する光の強度を均一にすることができる。そのため、加飾部材25の車内側壁面において、本体部65の開口の車内側に位置する領域を斑なく発光させることができる。
【0076】
加飾部材25の発光する領域の車外側壁面に静電容量センサ54が結合されるため、乗員の発光する領域へのタッチが静電容量センサ54によって検知され易くなる。また、加飾部材25の車外側壁面に沿って遮光部材52が配置されることによって、車外側壁面から離れて配置された場合よりも、光の回折が抑えられるため、加飾部材25の車内側壁面に遮光部材52の図柄60、61をより明瞭に表示することができる。また、振動モータ53を支持部66に設けることによって、振動モータ53を突起部40、41に近接させることができ、乗員の手に振動をより効果的に伝えることができる。
【0077】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本実施形態では、本発明が右前席の乗物用シート1の位置を切り替えるための切替装置16に適用されていたが、後部座席の乗物用シートの切替装置に適用されてもよい。また、リラックススイッチ22及び復帰スイッチ23は共にドアトリム26に設けられていたが、車室2の内壁を構成するトリムに設けられていればよく、例えば、復帰スイッチ23をボディサイドトリム、より具体的には、前席用ドア及び後席用ドアの間のセンターピラーガーニッシュに設けてもよい。
【0078】
上記実施形態では、両スイッチ22、23は乗員からの加飾部材25へのタッチを検出する静電容量センサ54によって構成されていたが、この態様には限定されず、例えば、加飾部材25に設けられたメンブレンスイッチ又はプッシュ式のスイッチであってもよい。
【0079】
上記実施形態では、突起部40、41と板部39とは一体に成形されていたが、突起部40、41は板部39とは別体として成形された後に、突起部40、41を板部39に貼り付けられることによって形成されていてもよい。但し、突起部40、41と板部39とが一体に成形されることによって、突起部40、41と板部39との結合が強固になり、突起部40、41と板部39との分離を防止することができる。
【0080】
上記実施形態では、フィルム37は透過する有色材料層を有する樹脂によって形成されていたが、発光素子50からの光を透過させる態様であればよく、表面に木目等が印刷されていてもよい。また、識別部42は他の部分に比べて薄肉となっていたが、他の部分に比べて厚肉となっていてもよい。この場合は、熱によって収縮する樹脂を用いてフィルム37を形成し、フィルム37と基材36とを接着した後に、基材36の表面に平行にヒータを設置して加熱することによって、ヒータからの熱が伝わり易い面、すなわち、フィルム37のヒータに対向する部分を収縮させるとよい。加熱によって突起部突端面及び板部39の車外側の面に接触する部分が収縮する。一方、突起部40、41の側面は熱が伝わり難く収縮しにくいため、フィルム37の突起部40、41の側面に結合した部分が他の部分に比べて厚肉となる。これによって、他の部分に比べて厚肉な識別部42を稜線部分43及び外縁44に形成することができる。
【0081】
上記実施形態では、リラックススイッチ22の発光素子50は乗物用シート1が標準位置にあるときに常に点灯するように構成していたが、乗物用シート1が標準位置となった後、所定の時間経過後に消灯し、静電容量センサ54によってタッチが検知されたときに再度点灯するように構成してもよい。また、復帰スイッチ23の発光素子50も同様に、乗物用シート1がリラックス位置になった後、所定の時間経過後に消灯し、静電容量センサ54によってタッチが検知されたときに再度点灯するように構成してもよい。このように構成することによって、電力の消費を抑えることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 :乗物用シート
2 :車室
4 :ドア(車両用ドア)
10 :背もたれ面
11 :電動モータ(モータ)
20 :着座センサ
21 :内壁
22 :リラックススイッチ
23 :復帰スイッチ
25 :加飾部材
30 :開口部
40 :突起部
41 :突起部
50 :発光素子
51 :基板
52 :遮光部材
53 :振動モータ
54 :静電容量センサ
55 :ホルダ
60 :図柄
61 :図柄
65 :本体部
66 :支持部
70 :開口縁
71 :開口縁
80 :拡散材
図1
図2
図3
図4
図5