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特許7244821骨代謝阻害活性を有する新規化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】骨代謝阻害活性を有する新規化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/62 20060101AFI20230315BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20230315BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20230315BHJP
   C12P 7/24 20060101ALI20230315BHJP
   C12P 7/02 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C07D307/62 CSP
A61K31/341
A61P19/08
C12N1/14 A
C12P7/24
C12P7/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018231377
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020093987
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】供田 洋
(72)【発明者】
【氏名】小山 信裕
(72)【発明者】
【氏名】大手 聡
(72)【発明者】
【氏名】片桐 岳信
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104356730(CN,A)
【文献】特開2017-119691(JP,A)
【文献】特開2012-105555(JP,A)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2009年,Vol. 52,pp. 2454-2464
【文献】Applied Microbiology,1972年,Vol. 24,pp. 114-119
【文献】Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1,1981年,Vol. 4,pp. 1173-1179
【文献】Journal of the Chemical Society,1948年,pp. 1508-1512
【文献】Phytochemistry,2017年,Vol. 137,pp. 165-173
【文献】Chemistry & Biodiversity,2017年,Vol. 14,pp. e1600327 (P1-8)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
C12N
C12P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
R1は、エトキシルであり、
R2 は、水素であり、
R3は、メチルであり、
R4は、メチルである。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の製造方法であって、
式(I)で表される化合物を産生する能力を有するペニシリウム属菌BF-0343株(受託番号NITE P-02833)である微生物を培地中で培養して、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程;
化合物蓄積工程で得られた式(I)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程;
を含む、前記方法。
【請求項3】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を産生する能力を有するペニシリウム属菌BF-0343株(受託番号NITE P-02833)である微生物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、骨代謝阻害剤。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬。
【請求項6】
骨代謝異常に起因する1種以上の症状、疾患若しくは障害の予防又は治療に使用するための、請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
骨代謝異常に起因する1種以上の症状、疾患若しくは障害が、進行性骨化性線維異形成症(FOP)又は外傷性異所性骨化である、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項9】
骨代謝異常に起因する1種以上の症状、疾患若しくは障害の予防又は治療に使用するための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
骨代謝異常に起因する1種以上の症状、疾患若しくは障害が、進行性骨化性線維異形成症(FOP)又は外傷性異所性骨化である、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨代謝阻害活性を有する新規化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収とが絶えず繰り返されることによって骨代謝の平衡状態を維持している動的組織である。骨芽細胞及び破骨細胞の機能バランスに異常が生じると、骨代謝の動的な平衡状態が破綻し、骨代謝異常に起因する様々な疾患が引き起こされることが知られている。
【0003】
骨形成を制御する因子として、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein, BMP)を挙げることができる。BMPは、骨を誘導するサイトカインである。BMPのシグナルは、I型及びII型のセリン・スレオニンキナーゼ型受容体によって細胞内に伝達され、さらにI型受容体による転写調節因子Smadのリン酸化によって核内に伝達される。BMPシグナルの不足は、短指症又は軟骨形成不全症を引き起こし、一方、BMPシグナルの過剰は、進行性骨化性線維異形成症等を引き起こすことが明らかとなってきた(非特許文献1)。さらに、BMPは、骨格形成及び骨折治癒等の様々な生理的骨形成に必須の役割を担う。それ故、BMPの臨床における応用範囲は、骨再形成、顎変形症治療及び骨形成性疾患の診断等と幅広く且つ有用性に富むことから、近年注目を集めている。
【0004】
進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、筋肉、腱又は靭帯等の組織が骨に変わる疾患である。出生児から外反母趾であることが患者に共通しているが、生まれたときにはそれ以外の顕著な異常は認められない。FOPの骨組織を構成するに至る最初の症状は、10歳までに起こることが多い。その症状は、皮膚の下の腫れ又は硬化、時に熱又は痛みを伴うフレア・アップと呼ばれる現象を繰り返しながら異所性骨化を生じ、手足の関節の動きの悪化又は背中の変形を生じる。また、怪我又は手術等がきっかけとなってフレア・アップが起きることから、生じた骨組織を外科的に除くことは不可能である。一般に、患者は、30歳までに身体を動かすことができなくなり、40歳以上まで生存することは稀である。患者数は、人口200万人に対して1人の割合と言われているが、正確な数は把握されていない。患者数があまり多くないことから、発症メカニズムはほとんど解明されておらず、治療法も確立されていない(非特許文献2)。
【0005】
近年、FOPの患者において、BMPのI型受容体であるアクチビン受容体様キナーゼ(activin receptor-like kinase-2, ALK2)の206番目のアルギニンがヒスチジンに点変異し、恒常的に活性化していることが発見された。これにより、ALK2受容体を介したBMPシグナル伝達経路が、FOPの主な原因であることが示された(非特許文献1)。
【0006】
このような知見に鑑み、BMPシグナル伝達を阻害することで骨分化を阻害する低分子化合物が探索され、目的の活性を有する化合物としてドルソモルフィンが見いだされた(非特許文献3)。さらに、ドルソモルフィンを基に様々な誘導体が合成され、より優れた化合物群が見いだされた(非特許文献4)。ドルソモルフィンの合成誘導体の一種であるLDN-193189をFOPの病態モデルマウスに経口投与したところ、FOPの発症を有意に抑制し得ることが示された(非特許文献5)。
【0007】
FOPの患者由来の細胞から作成されたiPS細胞を用いたスクリーニングにより、ラパマイシンが異所性骨化を阻害し得ることが示された(非特許文献6)。
【0008】
また、骨分化を阻害する化合物として、トリコデルマ属の真菌培養液からFKI-5513物質が見出された(特許文献1)。
【0009】
ALK2受容体を介したBMPシグナル伝達阻害作用を有する新規化合物として、特許文献2は、式(P-I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5725469号公報
【文献】特開2017-119691号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】Kaplanら, J. Bone Miner Metab. 2008年, 第26巻, p. 521-530
【文献】Shoreら, Nat. Genet. 2006年, 第38巻, p. 525-527
【文献】Yuら, Nat. Chem. Biol. 2008年, 第4巻, p. 33-41
【文献】Cunyら, Bioorg. Med. Chem. Lett. 2008年, 第18巻, pp. 4388-4392
【文献】Yuら, Nat. Med. 2008年, 第14巻, p. 1363-1369
【文献】Hinoら, J. Clin. Invest. 2017年, 第127(9)巻, p. 3339-3352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ALK2受容体を介したBMPシグナル伝達経路は、FOPの主な原因であるだけでなく、他の骨代謝異常に起因する疾患にも関連性があると考えられている。このため、BMPシグナル伝達を阻害する化合物は、FOPを含む骨代謝異常に起因する多数の疾患の予防又は治療に有用であると考えられている。BMPシグナル伝達の阻害活性を介して骨代謝を阻害し得る化合物が知られているが、薬理活性及び/又は安全性等の観点からさらに有用な化合物が必要とされている。
【0013】
それ故、本発明は、薬理活性及び安全性の高い、骨代謝阻害活性を有する新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、新規微生物が、BMPシグナル伝達の阻害活性を有する化合物をその培養液中に産生することを見出した。本発明者らは、前記培養液中の化合物が、公知の骨代謝阻害剤とは異なる骨格構造を有する新規化合物であることを見出した。また、本発明者らは、当該微生物を用いる培養的手段によって前記化合物を製造できることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(1) 式(I):
【化1】
[式中、
R1は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R2及びR3は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R4は、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアシルである。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(2) R1が、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシである、前記実施形態(1)に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(3) R2が、水素であり、且つR3が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルである、前記実施形態(1)又は(2)に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(4) R4が、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルである、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(5) R1が、エトキシルであり、
R2が水素であり、
R3が、メチルであり、
R4が、メチルである、
前記実施形態(1)~(4)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(6) 前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の製造方法であって、
式(I)で表される化合物を産生する能力を有するペニシリウム属菌BF-0343株(受託番号NITE P-02833)又はその変異株である微生物を培地中で培養して、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程;
化合物蓄積工程で得られた式(I)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程;
を含む、前記方法。
(7) 前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を産生する能力を有するペニシリウム属菌BF-0343株(受託番号NITE P-02833)又はその変異株である微生物。
(8) 前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、骨代謝阻害剤。
(9) 前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬。
(10) 骨代謝異常に起因する1種以上の症状、疾患若しくは障害の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(9)に記載の医薬。
(11) 骨代謝異常に起因する1種以上の症状、疾患若しくは障害が、進行性骨化性線維異形成症(FOP)又は外傷性異所性骨化である、前記実施形態(10)に記載の医薬。
(12) 前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
(13) 骨代謝異常に起因する1種以上の症状、疾患若しくは障害の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(12)に記載の医薬組成物。
(14) 骨代謝異常に起因する1種以上の症状、疾患若しくは障害が、進行性骨化性線維異形成症(FOP)又は外傷性異所性骨化である、前記実施形態(13)に記載の医薬。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様により、薬理活性及び安全性の高い、骨代謝阻害活性を有する新規化合物を提供することが可能となる。
前記以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<1. 新規化合物>
本明細書において、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C1~C6アルキル」は、少なくとも1個且つ多くても6個の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。好適なアルキルは、限定するものではないが、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシル等の直鎖又は分枝鎖のC1~C6アルキルを挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「アルケニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なアルケニルは、限定するものではないが、例えばビニル、1-プロペニル、アリル、1-メチルエテニル(イソプロペニル)、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ペンテニル及び1-ヘキセニル等の直鎖又は分枝鎖のC2~C6アルケニルを挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「アルキニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なアルキニルは、限定するものではないが、例えばエチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、1-ペンチニル及び1-ヘキシニル等の直鎖又は分枝鎖のC2~C6アルキニルを挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「シクロアルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、脂環式アルキルを意味する。例えば、「C3~C6シクロアルキル」は、少なくとも3個且つ多くても6個の炭素原子を含む、環式の炭化水素基を意味する。好適なシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のC3~C6シクロアルキルを挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「シクロアルケニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルケニルは、限定するものではないが、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニル等のC4~C6シクロアルケニルを挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「シクロアルキニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルキニルは、限定するものではないが、例えばシクロブチニル、シクロペンチニル及びシクロヘキシニル等のC4~C6シクロアルキニルを挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキル」は、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して窒素(N)、硫黄(S)及び酸素(O)から選択される1個以上のヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニル等の3~6員のヘテロシクロアルキルを挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「シクロアルキルアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルに置換された基を意味する。好適なシクロアルキルアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロヘキシルメチル及びシクロヘキセニルメチル等のC7~C11シクロアルキルアルキルを挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記ヘテロシクロアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロシクロアルキルアルキルは、限定するものではないが、例えば3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキルを挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「アルコキシ」及び「アルコキシル」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルに置換された基を意味する。好適なアルコキシ及びアルコキシルは、限定するものではないが、例えばメトキシ又はメトキシル、エトキシ又はエトキシル、プロポキシ又はプロポキシル、ブトキシ又はブトキシル、ペントキシ又はペントキシル、及びヘキソキシ又はヘキソキシル等のC1~C6アルコキシ又はC1~C6アルコキシルを挙げることができる。
【0028】
本明細書において、「シクロアルコキシ」及び「シクロアルコキシル」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルに置換された基を意味する。好適なシクロアルコキシ及びシクロアルコキシルは、限定するものではないが、例えばシクロプロポキシ又はシクロプロポキシル、シクロブトキシ又はシクロブトキシル、シクロペントキシ又はシクロペントキシル、及びシクロヘキソキシ又はシクロヘキソキシル等のC3~C6シクロアルコキシ又はC3~C6シクロアルコキシルを挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「ヘテロシクロアルコキシ」及び「ヘテロシクロアルコキシル」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロシクロアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロシクロアルコキシ及びヘテロシクロアルコキシルは、限定するものではないが、例えば3~6員のヘテロシクロアルコキシ又は3~6員のヘテロシクロアルコキシルを挙げることができる。
【0030】
本明細書において、「アリール」は、芳香環基を意味する。好適なアリールは、限定するものではないが、例えばフェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル及びアントラセニル等のC6~C18アリールを挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「アリールアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、ビフェニルメチル、テルフェニルメチル及びスチリル等のC7~C20アリールアルキルを挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「ヘテロアリール」は、前記アリールの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立してN、S及びOから選択される1個以上のヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロアリールは、限定するものではないが、例えばフラニル、チエニル(チオフェンイル)、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル及びインドリル等の5~15員のヘテロアリールを挙げることができる。
【0033】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばピリジルメチル等の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルを挙げることができる。
【0034】
本明細書において、「アリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフチルオキシ及びアントリルオキシ(アントラセニルオキシ)等のC6~C18アリールオキシを挙げることができる。
【0035】
本明細書において、「アリールアルキルオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールアルキルに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルオキシは、限定するものではないが、例えばベンジルオキシ、1-フェネチルオキシ、2-フェネチルオキシ及びスチリルオキシ等のC7~C20アリールアルキルオキシを挙げることができる。
【0036】
本明細書において、「ヘテロアリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフラニルオキシ、チエニルオキシ(チオフェンイルオキシ)、ピロリルオキシ、イミダゾリルオキシ、ピラゾリルオキシ、トリアゾリルオキシ、テトラゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、オキサゾリルオキシ、イソオキサゾリルオキシ、オキサジアゾリルオキシ、チアジアゾリルオキシ、イソチアゾリルオキシ、ピリジルオキシ、ピリダジニルオキシ、ピラジニルオキシ、ピリミジニルオキシ、キノリニルオキシ、イソキノリニルオキシ及びインドリルオキシ等の5~15員のヘテロアリールオキシを挙げることができる。
【0037】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキルオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロアリールアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルオキシは、限定するものではないが、例えば5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシを挙げることができる。
【0038】
本明細書において、「アシル」は、前記で説明した基から選択される一価基とカルボニルとが連結した基を意味する。好適なアシルは、限定するものではないが、例えばホルミル、アセチル及びプロピオニル等のC1~C5脂肪族アシル、並びにベンゾイル等のC7~C20芳香族アシルを包含するC1~C20アシルを挙げることができる。
【0039】
前記で説明した基は、それぞれ独立して、非置換であるか、或いは1個若しくは複数個の前記で説明した一価基によってさらに置換することもできる。
【0040】
本明細書において、「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)を意味する。
【0041】
本発明の一態様は、式(I):
【化2】
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に関する。
【0042】
本発明者らは、新規ペニシリウム属菌が、BMPシグナル伝達の阻害活性を有する化合物をその培養液中に産生することを見出した。本発明者らは、前記培養液中から、骨代謝阻害活性を有する新規化合物BF-0343を見出した。化合物BF-0343は、骨代謝に関与する骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達阻害のモデル試験系であるC2C12細胞由来骨芽細胞におけるアルカリホスファターゼ阻害活性試験において、特許文献1(特許第5725469号公報)に記載の化合物を大きく上回る高い骨代謝阻害活性を有する。本態様の式(I)で表される化合物は、天然有機化合物BF-0343及びその類縁化合物を包含する。それ故、本態様の式(I)で表される化合物は、高い骨代謝阻害活性を発現することができる。また、本発明の式(I)で表される化合物は、前記で例示した従来技術の化合物と異なる構造を有することから、これらの薬剤で十分な治療効果が得られない患者に対して有意な治療効果を発現し得る可能性がある。
【0043】
式(I)において、R1は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノである。R1は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであることが好ましく;ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであることがより好ましく;置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシであることがさらに好ましく;置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシであることがさらにより好ましく;メトキシル、エトキシル、プロポキシル、ブトキシル、ペントキシル又はヘキソキシルであることが特に好ましく;エトキシルであることがとりわけ好ましい。R1が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、低細胞毒性で且つ高い骨代謝阻害活性を発現することができる。
【0044】
式(I)において、R2及びR3は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノである。R2及びR3は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであることが好ましく;R2が、水素であり、且つR3が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルであることがより好ましく;R2が、水素であり、且つR3が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルであることがさらに好ましく;R2が、水素であり、且つR3が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキルであることがさらにより好ましく;R2が、水素であり、且つR3が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであることが特に好ましく;R2が、水素であり、且つR3が、メチルであることであることがとりわけ好ましい。R2及びR3が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、低細胞毒性で且つ高い骨代謝阻害活性を発現することができる。
【0045】
式(I)において、R4は、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアシルである。R4は、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであることが好ましく;水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであることがより好ましく;置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルであることがさらに好ましく;置換若しくは非置換のC1~C6アルキルであることがさらにより好ましく;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであることが特に好ましく;メチルであることがとりわけ好ましい。R4が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、低細胞毒性で且つ高い骨代謝阻害活性を発現することができる。
【0046】
式(I)において、前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基であることがより好ましく、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、及び置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシからなる群より選択される少なくとも1個の一価基であることがさらに好ましく、ヒドロキシルであることが特に好ましい。前記一価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0047】
式(I)で表される化合物は、前記で例示されるR1、R2、R3及びR4の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0048】
好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり;
R2及びR3が、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり;
R4が、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであり;
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。前記一価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0049】
より好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであり;
R2が、水素であり、且つR3が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルであり;
R4が、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであり;
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。前記一価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0050】
さらに好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシであり;
R2が、水素であり、且つR3が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルであり;
R4が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルであり;
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。前記一価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0051】
さらにより好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシであり;
R2が、水素であり、且つR3が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキルであり;
R4が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキルであり;
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。前記一価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0052】
特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、ブトキシル、ペントキシル又はヘキソキシルであり;
R2が、水素であり、且つR3が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであり;
R4が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである。
【0053】
とりわけ好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、エトキシルであり;
R2が、水素であり、
R3が、メチルであり;
R4が、メチルである。
【0054】
とりわけ特に好ましい式(I)で表される化合物は、以下:
5-(1-エトキシプロパン-2-イル)-5-ヒドロキシ-4-メトキシフラン-2(5H)-オン(BF-0343);
である。本態様の式(I)で表される化合物が前記化合物である場合、該化合物は、高い骨代謝阻害活性を発現することができる。
【0055】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。本発明の一態様の式(I)で表される化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオンとの塩、又は塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸若しくはリン酸のような無機酸、又はギ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、p-トルエンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸のような有機酸アニオンとの塩が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の塩の形態である場合であっても、高い骨代謝阻害活性を発現することができる。
【0056】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。前記化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、或いは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール)のような1~6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン又は酢酸エチルのような有機溶媒が好ましい。式(I)で表される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合であっても、高い骨代謝阻害活性を発現することができる。
【0057】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。本明細書において、「保護形態」は、1個又は複数個の官能基(例えばアミノ基、ヒドロキシル基又はカルボン酸基)に保護基が導入された形態を意味する。本明細書において、前記各式で表される化合物の保護形態を、前記各式で表される化合物の保護誘導体と記載する場合がある。また、本明細書において、「保護基」は、望ましくない反応の進行を防止するために、特定の官能基に導入される基であって、特定の反応条件において定量的に除去され、且つそれ以外の反応条件においては実質的に安定、即ち反応不活性である基を意味する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、アミノ基の保護基の場合、t-ブトキシカルボニル(Boc)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ)、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が、ヒドロキシル基の保護基の場合、シリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)若しくはtert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、又はアルコキシ(例えば、メトキシメトキシ(MOM)若しくはメトキシ(Me))が、カルボン酸基の保護基の場合、アルキルエステル(例えばメチル、エチル若しくはイソプロピルエステル)、アリールアルキルエステル(例えばベンジルエステル)、又はアミド(例えばオキサゾリジノン類とのアミド)が、それぞれ好ましい。前記保護基による保護化及び脱保護化は、公知の反応条件に基づき、当業者が適宜実施することができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合であっても、高い骨代謝阻害活性を発現することができる場合がある。
【0058】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物が1個又は複数個の互変異性体を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々の互変異性体の形態も包含する。
【0059】
また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物が1個又は複数個の立体中心(キラル中心)を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物も包含する。
【0060】
前記特徴を有することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、高い骨代謝阻害活性を発現することができる。
【0061】
<2. 培養的手段による新規化合物の製造方法>
本発明者らは、新規ペニシリウム属菌が、本発明の一態様の式(I)で表される化合物に包含される化合物BF-0343をその培養液中に産生することを見出した。それ故、本発明の別の一態様は、新規ペニシリウム属菌を用いる本発明の一態様の式(I)で表される化合物を製造する方法に関する。
【0062】
本態様において、本発明の方法は、化合物蓄積工程及び化合物精製工程を含む。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0063】
[2-1. 化合物蓄積工程]
本態様において、本発明の方法は、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するペニシリウム(Penicillium)属菌BF-0343株(受託番号NITE P-02833)又はその変異株である微生物を培地中で培養して、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程を含む。
【0064】
ペニシリウム属菌BF-0343株は、日本国静岡県の土壌より分離されたペニシリウム属に属する新規糸状菌である。本菌株は、BF-0343として、2018年11月28日付にて、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託されている(受託番号NITE P-02833)。
【0065】
本工程において、培養に使用される微生物は、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するペニシリウム属菌BF-0343株又はその変異株であることが好ましく、ペニシリウム属菌BF-0343株であることがより好ましい。本発明において、ペニシリウム属菌BF-0343株の変異株は、ペニシリウム属菌BF-0343株の自然変異株又は人工変異株を意味する。ペニシリウム属菌BF-0343株の人工変異株は、当該技術分野で通常使用される任意の人工変異株の作出手段によって得ることができる。ペニシリウム属菌BF-0343株自体だけでなく、ペニシリウム属菌BF-0343株の変異株であっても、式(I)で表される化合物を産生する能力を有する微生物であれば、本工程において式(I)で表される化合物を培地中に蓄積することができる。それ故、前記微生物を使用することにより、式(I)で表される化合物を培地中に大量に蓄積させることができる。
【0066】
微生物の培養に使用される培地は、該微生物の性質に基づき適宜選択することができる。培地は、通常は、1個以上の炭素源及び1個以上の窒素源、並びに場合により1個以上の無機塩及び1個以上のビタミンを含有する。炭素源としては、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、デキストリン及びデンプン等の糖類、並びに大豆油等の植物性油脂類を挙げることができる。窒素源としては、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、大豆粉、綿実粉、コーン・スティーブ・リカー、カゼイン、アミノ酸、尿素、アンモニウム塩及び硝酸塩を挙げることができる。無機塩としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、コバルトイオン又は亜鉛イオン等のカチオンと、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸又はリン酸のような無機酸アニオンとの塩を挙げることができる。本工程において使用される培地は、例えば、ポテト・デキストロース・寒天(PDA)培地(3.9%ポテト・デキストロース・アガー(DIFCO)、pH 6.0に調整)又はポテト・デキストロース・ブロス(PDB)培地(2.4%ポテト・デキストロース・ブロス(DIFCO)、0.1%寒天(SSKセールス)、pH 6.0に調整)が好ましい。前記培地中で、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するペニシリウム属菌BF-0343株又はその変異株である微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させることができる。
【0067】
微生物の培養は、固体培養又は液体培養のいずれであってもよい。大スケールで前記微生物を培養する場合には、液体培養であることが好ましい。この場合、培養容器の振盪若しくはプロペラ等による培地の攪拌、又はポンプ等による空気の吹き込みによって培地中に通気することが好ましい。培地中に導入される空気は、滅菌フィルター等の滅菌手段を用いて滅菌することが好ましい。前記条件で微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を効率的に培地中に蓄積させることができる。
【0068】
大スケールで前記微生物を培養する場合、予め少量の培地中で前記微生物を培養(以下、「種培養」とも記載する)し、その後、種培養で得られた培養物を大容量の培地に植菌して培養(以下、「生産培養」とも記載する)することが好ましい。この場合、種培養及び生産培養に使用される培地の成分は、同一であってもよく、異なっていてもよい。種培養及び生産培養を含む複数段階の培養によって本工程を実施することにより、微生物の生育の遅延を実質的に抑制することができる。
【0069】
本工程において、微生物を培養する条件は、該微生物の性質に基づき適宜設定することができる。培養温度は、通常は25~27℃の範囲であり、典型的には約25℃である。培地のpHは、通常はpH 3~9であり、典型的には約pH 5.6である。培養期間は、液体培地を振盪培養する場合、種培養及び生産培養の合計として、通常は3~12日間であり、典型的には5~10日間である。前記条件で微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を効率的に培地中に蓄積させることができる。
【0070】
[2-2. 化合物蓄積工程]
本態様において、本発明の方法は、化合物蓄積工程で得られた式(I)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程を含む。
【0071】
本工程において、式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製する手段としては、当該技術分野で通常使用される有機化合物の分離法を使用することができる。式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製する手段としては、例えば、抽出、濾過、遠心分離、吸着、再結晶、蒸留、及び各種クロマトグラフィー等を挙げることができる。好ましくは、本工程は、化合物蓄積工程で得られた微生物の培養物から濾過又は遠心分離等によって菌体を分離する工程、分離した菌体をエタノール又は酢酸エチル等の有機溶媒で抽出する工程、及び有機溶媒で抽出した菌体抽出物を溶媒抽出又は分取クロマトグラフィー等の手段でさらに分離して、式(I)で表される化合物を得る工程を含む。前記分取クロマトグラフィーとしては、吸着、順相若しくは逆相分配、又はゲル濾過等の各種クロマトグラフィーを適用することができる。最終工程において、分取クロマトグラフィーで得られた画分を、例えば再結晶又は蒸留等の手段でさらに精製してもよい。前記各工程は、所望により同一又は異なる条件下で複数回繰り返してもよい。前記手段を用いることにより、式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製し単離することができる。
【0072】
本態様の培養的手段による本発明の化合物の製造方法において、式(I)で表される化合物は、前記で例示した基R1、R2、R3及びR4を有することが好ましい。この場合、式(I)で表される化合物は、ペニシリウム属菌BF-0343株が産生する化合物BF-0343を包含する。本態様の方法を用いることにより、化合物BF-0343に対応する式(I)で表される化合物を効率的に製造することができる。
【0073】
以上の特徴を有する本態様の培養的手段による本発明の化合物の製造方法により、医薬の有効成分となり得る本発明の一態様の式(I)で表される化合物を、高純度且つ低コストで大量に提供することができる。
【0074】
本発明の別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物を産生する能力を有するペニシリウム属菌BF-0343株(受託番号NITE P-02833)又はその変異株である微生物に関する。本態様において、式(I)で表される化合物は、前記で例示した基R1、R2、R3及びR4を有することが好ましい。本態様の微生物を用いることにより、化合物BF-0343に対応する式(I)で表される化合物を効率的に製造することができる。
【0075】
<3. 医薬用途>
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、高いBMPシグナル伝達阻害活性を有する一方で、BMPシグナル伝達阻害活性を発現する濃度範囲において細胞毒性を実質的に示さない。それ故、本発明の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含むBMPシグナル伝達阻害剤に関する。また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物を対象に投与した場合、高いBMPシグナル伝達阻害活性を介して骨代謝阻害活性を発現して、骨代謝異常によって引き起こされる該対象の有する特定の症状、疾患若しくは障害を予防又は治療し得る。それ故、本発明の別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む骨代謝阻害剤、医薬又は医薬組成物に関する。
【0076】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物のBMPシグナル伝達阻害活性は、限定するものではないが、例えば、成長マウスの筋再生部より樹立された筋芽細胞株であるC2C12細胞をモデル実験系として、決定することができる(T. Katagiriら, J. Cell Biol., 1994年, 第127巻, p. 1755-1766)。BMPによって誘導されるC2C12細胞から骨芽細胞への分化誘導系に特定の化合物を添加すると、骨芽細胞への分化、すなわち骨代謝が阻害され、アルカリホスファターゼの発現量が減少する。このため、アルカリホスファターゼ活性を指標に、C2C12細胞から骨芽細胞への分化誘導系に対するBMPシグナル伝達阻害活性、すなわち骨代謝阻害活性を評価することができる(T. Fukudaら, J. Biol. Chem., 2009年, 第284巻, p. 7149-7156)。この場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のBMPシグナル伝達阻害活性は、例えば、以下の手順で決定することができる。ALK2の206番目のアルギニンをヒスチジンに点変異させた遺伝子を安定導入したマウス筋由来C2C12細胞(以下、「C2C12(R206H)細胞」とも記載する)を、所定の培地に懸濁して細胞懸濁液を調製する。この細胞懸濁液を、96穴マイクロプレートの各ウェルに所定量ずつ播種する。細胞播種後のマイクロプレートを炭酸ガスインキュベーターに移し、細胞を一定期間培養した後、各ウェルの培地を、所定量の組換えヒトBMP-4を含む培地に交換する。所定のウェルに、所定の終濃度の試験化合物を添加する。その後、細胞を一定期間培養する。培養終了後、培養上清を除去して細胞を洗浄する。固定溶液を用いて、細胞を固定する。細胞を洗浄した後、4-ニトロフェニルホスフェート(4-NPP)溶液を各ウェルに分注する。所定の条件下で酵素反応を行った後、各ウェルの溶液の吸光度(例えば、波長405 nmにおける吸光度)を、マイクロプレートリーダーを用いて測定する。各試験化合物のBMPシグナル伝達阻害率を、得られた吸光度の値に基づき算出することができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物のBMPシグナル伝達阻害活性は、前記手順により決定したBMPシグナル伝達阻害活性の阻害率に基づき、BMPシグナル伝達を50%阻害する本発明の一態様の式(I)で表される化合物の濃度(ALP-IC50)として表すことが好ましい。本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記手順により決定したBMPシグナル伝達阻害活性のALP-IC50値が、通常は50 μM以下、典型的には20 μM以下である。前記範囲のALP-IC50値を有する場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、高いBMPシグナル伝達阻害活性を発現することができる。また、この場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、高いBMPシグナル伝達阻害活性を介して骨代謝阻害活性を発現することができる。
【0077】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物の骨代謝阻害活性は、前記で説明したBMPシグナル伝達阻害活性に基づき決定することができる。或いは、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の骨代謝阻害活性は、限定するものではないが、例えば、骨化シグナルを伝達するALK2若しくはSMAD4に対する抗体を用いたウェスタンブロティング法又は免疫染色法による検出、培養上清中に放出されるオステオカルシン量の測定、又は副甲状腺ホルモンに対する応答性の測定を実施することにより決定することもできる(T. Katagiriら, J. Cell Biol., 1994年, 第127巻, p. 1755-1766)。
【0078】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物の安全性は、限定するものではないが、例えば、チアゾリルブルー臭化テトラゾリル(MTT)を用いるMTT評価法(Mosmannら, J Immunol Methods, 1983年, 第65巻, p. 55-63)により、該化合物の細胞毒性を評価することにより、決定することができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物の細胞毒性は、前記手順により決定した細胞の生存率に基づき、細胞の生存を50%阻害する本発明の一態様の式(I)で表される化合物の濃度(MTT-IC50)として表すことが好ましい。本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記手順により決定した細胞の生存率が、BMPシグナル伝達阻害活性及び/又は骨代謝阻害活性を実質的に発現する濃度範囲において、通常は50%以上、典型的には60%である。或いは、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記手順により決定した細胞毒性のMTT-IC50値が、通常は10 μM以上、典型的には20 μM以上、特に30 μM以上である。前記範囲の細胞の生存率及び/又はMTT-IC50値を有する場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、BMPシグナル伝達阻害活性及び/又は骨代謝阻害活性を実質的に発現する濃度範囲において、実質的に細胞毒性を発現することなく安全に使用することができる。
【0079】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。本発明の一態様の式(I)で表される化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示した塩又は溶媒和物が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の製薬上許容される塩又は製薬上許容される溶媒和物の形態である場合、骨代謝阻害活性を実質的に低下させることなく、且つ/又は細胞毒性を実質的に増大させることなく、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。
【0080】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物のプロドラッグ形態も包含する。本明細書において、「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される化合物を意味する。前記化合物のプロドラッグ形態としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基が存在する場合、該ヒドロキシル基と任意のカルボン酸とのエステル、及び該ヒドロキシル基と任意のアミンとのアミド等を、例えば、アミノ基が存在する場合、該アミノ基と任意のカルボン酸とのアミド等を、挙げることができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物が前記のプロドラッグ形態である場合、親薬物である式(I)で表される化合物の骨代謝阻害活性を実質的に低下させることなく、且つ/又は細胞毒性を実質的に増大させることなく、対象へのプロドラッグ形態の投与時の薬物動態を向上させることができる。
【0081】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物を単独で使用してもよく、1種以上の製薬上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本態様の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本態様の医薬はまた、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物の形態で提供されることもできる。本態様の医薬組成物は、前記成分に加えて、製薬上許容される1種以上の媒体(例えば、滅菌水のような溶媒又は生理食塩水のような溶液)、賦形剤、結合剤、ビヒクル、溶解補助剤、防腐剤、安定剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、乳化剤、油性液(例えば、植物油)、懸濁剤、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤、甘味剤及び香味剤等を含んでもよい。
【0082】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本態様の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の製薬上許容される媒体との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、D-マンノース若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)若しくはエステル(例えば安息香酸ベンジル)のような溶解補助剤、ポリソルベート80(商標)又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤、ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当なバイアル(例えばアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。
【0083】
経口投与に使用するための製剤としては、例えば、錠剤、丸薬、散剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、エリキシル剤、液剤、シロップ剤、スラリー剤及び懸濁液等を挙げることができる。錠剤は、所望により、糖衣又は溶解性被膜を施した糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠又はフィルムコーティング錠の剤形として製剤してもよく、或いは二重錠又は多層錠の剤形として製剤してもよい。
【0084】
錠剤又はカプセル剤等に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム又はアラビアゴムのような結合剤;結晶性セルロース、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン又はケイ酸のような賦形剤;乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉又は乳糖のような崩壊剤;白糖、ステアリンカカオバター又は水素添加油のような崩壊抑制剤;第四級アンモニウム塩又はラウリル硫酸ナトリウムのような吸収促進剤;グリセリン又はデンプンのような保湿剤;澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト又はコロイド状ケイ酸のような吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、ホウ酸末又はポリエチレングリコールのような潤滑剤;ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤;及びペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤等を挙げることができる。製剤がカプセル剤の場合、さらに油脂のような液状担体を含有してもよい。
【0085】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、デポー製剤として製剤化することもできる。この場合、デポー製剤の剤形の本態様の医薬を、例えば皮下若しくは筋肉に埋め込み、又は筋肉注射により投与することができる。本態様の医薬をデポー製剤に適用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の骨代謝阻害活性を、長期間に亘って持続的に発現することができる。
【0086】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。この場合、本態様の医薬は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを含む併用医薬の形態となる。前記併用医薬は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを組み合わせてなる医薬組成物の形態であってもよく、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を含む、1種以上の前記他の薬剤と併用される医薬組成物の形態であってもよい。本態様の医薬が前記のような併用医薬の形態である場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の他の薬剤とを含む、単一製剤の形態で提供されてもよく、1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。
【0087】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、高いBMPシグナル伝達阻害活性を有する。ALK2受容体を介したBMPシグナル伝達経路は、FOPの主な原因であるだけでなく、他の骨代謝異常に起因する疾患等にも関連性があると考えられている。このため、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、FOPを含む骨代謝異常に起因する多数の症状、疾患及び/又は障害を、予防又は治療することができる。前記症状、疾患及び/又は障害としては、限定するものではないが、例えば、進行性骨化性線維異形成症(FOP)、悪性の高カルシウム血症、異骨症、異常に増大した骨代謝回転、異所性石灰化、Ehlers-Danlos症候群、オズグッドーシュラッター病、外傷性異所性骨化、外反母趾、顎骨顔面骨再建、関節軟骨石灰化症、関節リウマチ、偽悪性転位骨化症、Kienbock病、基節骨短縮症、筋拘縮症、クル病、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、脛骨開放性骨折、頸部脊椎症、限局性骨化性筋炎、原発性肺高血圧症、原発性副甲状腺機能亢進症、後縦靭帯骨化症、甲状腺機能亢進症、骨延長、骨幹端異形成症、骨形成不全症、骨原性腫瘤、骨硬化症、骨硬化型転移性骨腫瘍、後縦靭帯骨化症、骨折、骨線条症、骨粗鬆症、骨軟化症、骨軟骨異形成症、骨肉腫、骨Paget病、骨斑紋症、骨蝋流症、酸素供給不足による骨化、歯周病、歯喪失、若年性ポリポーシス、消化器癌、小耳症軟骨欠損、神経性骨化症、進行性化骨性筋炎、進行性骨化性線維異形成症、腎性骨異栄養症、脊柱管狭窄症、脊柱後彎症、脊柱前彎症、脊柱側彎症、脊椎骨幹端異形成症、脊椎骨端異形成症、脊椎分離症、脊椎分離辷り症、先天性筋性斜頸、先天性股関節脱臼、先天性多発性関節拘縮症、先天性内反足、側彎症、大腿骨頭壊死、大理石骨病、多発性骨癒合症、多発性骨髄腫、短指症、中手骨短縮症、中節骨短縮症、椎間板変性、転移性骨疾患、転移性骨腫瘍、特発性大腿骨頭壊死、内反足、軟骨外胚葉異形成症、軟骨形成不全症、軟骨無形成症、ハーラー症候群、閉経後骨粗鬆症、ペルテス病、変形性関節症、変形性脊椎症、変性辷り症、補綴具周囲の骨溶解、末節骨短縮症、マルファン症候群、慢性関節リウマチ、慢性腎障害、無耳症、メラーバロウ病、モルキオ病、腰椎椎間板ヘルニア、及び離断性骨軟骨炎を挙げることができる。前記症状、疾患及び/又は障害は、FOP又は外傷性異所性骨化であることが好ましくい。前記症状、疾患若しくは障害の予防又は治療を必要とする対象に本態様の医薬を投与することにより、前記症状、疾患若しくは障害を予防又は治療することができる。
【0088】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、BMPシグナル伝達が関与する骨代謝異常に起因する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の被験体又は患者であることが好ましい。前記対象に本態様の医薬を投与することにより、該対象における骨代謝異常に起因する種々の症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0089】
本明細書において、「予防」は、症状、疾患及び/又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、発生(発症又は発現)した症状、疾患及び/又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快、修復及び/又は治癒することを意味する。
【0090】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記で説明したBMPシグナル伝達が関与する骨代謝異常に起因する症状、疾患及び/又は障害(例えば、FOP若しくは外傷性異所性骨化)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本態様の医薬は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための医薬であることが好ましく、FOP若しくは外傷性異所性骨化の予防又は治療に使用するための医薬であることがより好ましい。本態様の医薬を、BMPシグナル伝達が関与する骨代謝異常に起因する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のBMPシグナル伝達阻害活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0091】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、FOP若しくは外傷性異所性骨化)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の本発明の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を投与することを含む、前記疾患若しくは症状の予防又は治療方法である。前記症状、疾患及び/又は障害は、FOP又は外傷性異所性骨化であることが好ましい。BMPシグナル伝達が関与する骨代謝異常に起因する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、本発明の一態様の式(I)で表される化合物を投与することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のBMPシグナル伝達阻害活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0092】
本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、FOP若しくは外傷性異所性骨化)の予防又は治療に使用するための、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である。本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、FOP若しくは外傷性異所性骨化)の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。前記症状、疾患及び/又は障害は、FOP又は外傷性異所性骨化であることが好ましい。本発明の一態様の式(I)で表される化合物を、BMPシグナル伝達が関与する骨代謝異常に起因する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のBMPシグナル伝達阻害活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0093】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な用量及び用法(例えば、投与量、投与回数及び/又は投与経路)は、対象の年齢、性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な投与量、投与回数及び投与経路等を考慮して、最終的に決定すべきである。それ故、本態様の医薬において、有効成分である式(I)で表される化合物は、治療上有効な量及び回数で、対象に投与される。例えば、本態様の医薬をヒト患者に投与する場合、有効成分である式(I)で表される化合物の投与量は、通常は、1回投与あたり、0.001~100 mg/kg体重の範囲であり、典型的には、1回投与あたり、0.01~10 mg/kg体重の範囲であり、特に、1回投与あたり、0.1~10 mg/kg体重の範囲である。また、本態様の医薬の投与回数は、例えば、1日に1回又は複数回、或いは数日に1回とすることができる。また、本態様の医薬の投与経路は、特に限定されず、経口的に投与されてもよく、非経口的(例えば、直腸内、径粘膜、腸内、筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内又は眼内)に単回若しくは複数回投与されてもよい。本態様の医薬を、前記の用量及び用法で使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のBMPシグナル伝達阻害活性を介して、BMPシグナル伝達が関与する骨代謝異常に起因する前記症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【実施例
【0094】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0095】
<I. 培養的手段による新規化合物の製造>
[BF-0343株の分離]
BF-0343株は、日本国静岡県の土壌より分離された糸状菌である。BF-0343株の形態的特徴、培養性状及び生理的性状に基づき、公知菌種との比較を行った。その結果、本菌株は、ペニシリウム(Penicillium)属に属する新規糸状菌株であることが明らかとなった。本菌株を、BF-0343株と命名した。本菌株は、BF-0343として、2018年11月28日付にて、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託されている(受託番号NITE P-02833)。BF-0343株の菌学的性質は、以下の通りである。
【0096】
1. 形態的特徴
BF-0343株は、PDA培地等の栄養寒天培地等の培地で良好に生育した。PDA培地上で、27℃、好気的条件下で1週間生育させたコロニーを顕微鏡で観察したところ、コロニーの表面は、ビロード状から粉状の性状であった。
【0097】
2. 培養性状
PDA培地上で、27℃、好気的条件下で1週間生育させたBF-0343株のコロニーの表面は、暗緑色(28F-4)から緑白色(28A-2)であり、裏面は灰黄色(3B-5)から白色(3A-1)であった。なお、括弧内の番号は、Kornerup Wanscher(Methuen handbook of colour, 第3版, London: Eyre Methuen, 1978年)で用いられる色のコード番号を示す。また、可溶性色素による培地の着色は認められなかった。
【0098】
3. 生理的性状
BF-0343株の最適生育条件は、好気性条件、pH 5.6±0.2、温度25℃であった。また、本菌株の生育可能条件は、好気性条件、静置培養、pH3~9の範囲、温度25~27℃の範囲、培養期間1~3週間の範囲であった。
【0099】
[製造例I-1:BF-0343株の培養]
PDA培地(3.9%ポテト・デキストロース・アガー(DIFCO)、pH 6.0に調整)で培養したBF-0343株の起菌寒天片1個を、500μLの滅菌精製水に懸濁させた。懸濁液の全量を、15 mLのPDB培地(2.4%ポテト・デキストロース・ブロス(DIFCO)、0.1%寒天(SSKセールス)、pH 6.0に調整)を加えた50 mL容試験管に植菌し、27℃で3日間、振盪培養機(140 rpm)を用いて培養した(種培養)。得られた培養液を、100 mLの同培地を分注した500 mL容三角フラスコに、1%の量で植菌し、27℃で7日間、ロータリーシェーカー(180 rpm)を用いて振盪培養した(生産培養)。
【0100】
[製造例I-2: BF-0343株の培養液からの新規化合物の精製]
製造例I-1で得られた培養液(100 mL)に、エタノール(100 mL)を加え、24時間、4℃で静置した。その後、培養液を吸引濾過して菌体を除去し、エタノール抽出物を回収した。得られたエタノール抽出物を減圧濃縮して、エタノールを留去した。得られた水残渣を、酢酸エチル(200 mL)で抽出した。酢酸エチル層を回収して、Na2SO4で脱水した。その後、酢酸エチル層を、減圧下乾固して、酢酸エチル抽出物(61.1 mg)を得た。この抽出物を、少量のメタノールに溶解して、分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(カラム:PEGASIL ODS SP100、20 φ×250 mm、センシュー科学)を用いて最終精製した。HPLCを用いる精製では、20%アセトニトリル水溶液を移動相として用いて、6 mL/分の流速において、UV 210 nmの吸収をモニターした。保持時間22分に、活性を示すピークを観察した。このピークを分取して溶媒を留去後、分取液を凍結乾燥して、淡黄色油状の化合物BF-0343を収量 7.5 mgで単離した。化合物BF-0343(5-(1-エトキシプロパン-2-イル)-5-ヒドロキシ-4-メトキシフラン-2(5H)-オン)の化学構造を以下に示す。
【化3】
【0101】
[化合物BF-0343]
(1)性状:淡黄色油状
(2)分子式:C10H16O5
HREI-MS (m/z) [M]+ 計算値216.0998, 実測値216.0990
(3)分子量:216
EI-MS(m/z) [M]+216を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定:
λmax (MeOH,ε): 224 nm(7614)に吸収
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定:
νmax 3425, 2924, 1746, 1646, 1430, 1069, 919, 470 cm-1等に特徴的な吸収極大
(6)比旋光度:[α]D 25 -2.1°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール、クロロホルム及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、アジレント社製400 MHz核磁気共鳴スペクトロメーターで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:
δH : 0.71 (3H), 1.23 (3H), 2.50 (1H), 3.50-3.65 (3H), 3.82 (1H),
3.91 (3H), 5.06 (1H), 7.01 (1H) ppm
δC : 11.2, 14.9, 36.5, 59.5, 67.3, 72.9, 89.7, 105.7, 170.4, 177.8 ppm。
【0102】
<II. 新規化合物の薬理試験>
[試験II-1:C2C12細胞由来骨芽細胞におけるアルカリホスファターゼ阻害活性試験]
C2C12細胞は、成長マウスの筋再生部より樹立された筋芽細胞株である。C2C12細胞にBMPを作用させると、筋管細胞への分化が抑制され、骨芽細胞への分化、すなわち骨代謝が促進される。C2C12細胞から分化した骨芽細胞は、アルカリホスファターゼを発現する(T. Katagiriら, J. Cell Biol., 1994年, 第127巻, p. 1755-1766)。ここで、BMPによって誘導されるC2C12細胞から骨芽細胞への分化誘導系に特定の化合物を添加すると、骨芽細胞への分化、すなわち骨代謝が阻害され、アルカリホスファターゼの発現量が減少する。このため、アルカリホスファターゼ活性を指標に、BMPによって誘導されるC2C12細胞から骨芽細胞への分化誘導系に対するBMPシグナル伝達阻害活性、すなわち骨代謝阻害活性を評価することができる。前記の手順で製造された化合物について、下記の手順でアルカリホスファターゼ阻害活性を調査した(T. Fukudaら, J. Biol. Chem., 2009年, 第284巻, p. 7149-7156)。
【0103】
ALK2の206番目のアルギニンをヒスチジンに点変異させた遺伝子を安定導入したマウス筋由来C2C12細胞(C2C12(R206H)細胞、北里大学薬学部微生物薬品製造学教室の保管株)を、15%ウシ胎仔血清(FBS、Hyclone社)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、ナカライテスク社)に懸濁して、7.5×104 細胞/mLの細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を、96穴マイクロプレートの各ウェルに100 μLずつ播種した(0.75×104 細胞/100 μL/ウェル)。細胞播種後のマイクロプレートを炭酸ガスインキュベーターに移し、細胞を37℃、5.0% CO2の条件下で24時間培養した。各ウェルの培地を、10 ng/mLの組換えヒトBMP-4(R & D Systems社)を含む前記培地(100 μL)に交換した。所定のウェルに、所定の終濃度(462~4.62 μM)の試験化合物を1.0 μLメタノール溶液として添加した。その後、細胞を37℃、5.0% CO2の条件下で48時間培養した。培養終了後、培養上清を除去した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH 7.3)で細胞を1回洗浄した。各ウェルに、アセトン:エタノール=1:1の混合溶液を100 μLずつ分注し、1分間静置することで、細胞を固定した。PBS(pH 7.3)で細胞を3回洗浄した。4-ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム塩・六水和物(SIGMA社)1錠(5 mg)を、5 mLの反応緩衝液(0.1 M ジエタノールアミン-HCl、及び0.5 mM MgCl2、pH 10.0)に溶解して、1 mg/mL 4-ニトロフェニルホスフェート(4-NPP)溶液を調製した。各ウェルに、100 μLの1 mg/mL 4-NPP溶液を分注した。マイクロプレートを、プレートミキサー(MICROMIXER MX-5、三光純薬社)を用いて、室温で1時間振盪した。その後、各ウェルに、50 μLの3 M 水酸化ナトリウム水溶液を加えた。マイクロプレートを、室温で5分間振盪した。各ウェルの溶液の波長405 nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダー(Power Wave x340、Bio-Tek Instruments社)を用いて測定した。試験化合物に替えて同量のメタノールを添加した他は前記と同様の手順で試験を実施したウェルの吸光度を対照区の吸光度とした。また、細胞を播種しない他は前記と同様の手順で試験を実施したウェルの吸光度をバックグラウンドの値とした。各試験化合物のBMPシグナル伝達阻害率を、以下の式に基づき算出した。各試験化合物について、アルカリホスファターゼ(ALP)阻害率に関する用量応答曲線を作成して、各試験化合物の50%阻害率濃度(ALP-IC50値)を算出した。
【数1】
【0104】
[試験II-2:C2C12細胞由来骨芽細胞における細胞毒性試験]
チアゾリルブルー臭化テトラゾリル(MTT)を用いるMTT評価法(Mosmannら, J Immunol Methods, 1983年, 第65巻, p. 55-63)により、前記の手順で製造された化合物の細胞毒性を評価した。C2C12(R206H)細胞を、15% FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM培地に懸濁して、7.5×104 細胞/mLの細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を、96穴マイクロプレートの各ウェルに100 μLずつ播種した(0.75×104 細胞/100 μL/ウェル)。細胞播種後のマイクロプレートを炭酸ガスインキュベーターに移し、細胞を37℃、5.0% CO2の条件下で24時間培養した。各ウェルの培地を、10 ng/mLの組換えヒトBMP-4を含む前記培地(100 μL)に交換した。所定のウェルに、所定の終濃度の試験化合物を1.0 μLメタノール溶液として添加した。その後、細胞を37℃、5.0% CO2の条件下で2日間培養した。培養終了後、培養上清を除去した。PBSで細胞を1回洗浄した。各ウェルに、10 μLの5.5 mg/mL MTT反応液(5.5 mg/mL MTTを含むPBS、pH 7.3)を添加した。細胞を37℃、5.0% CO2の条件下で3時間培養した。各ウェルに、90 μLの溶解液(40% N,N,-ジメチルホルムアミド、2% 酢酸、20% ドデシル硫酸ナトリウム、及び0.03 N 塩酸)を添加した。マイクロプレートを、プレートミキサーを用いて、室温で3時間振盪した。各ウェルの溶液の波長570 nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。試験化合物に替えて同量のメタノールを添加した他は前記と同様の手順で試験を実施したウェルの吸光度を対照区の吸光度とした。また、細胞を播種しない他は前記と同様の手順で試験を実施したウェルの吸光度をバックグラウンドの値とした。各試験化合物存在下における細胞生存率を、以下の式に基づき算出した。各試験化合物について、MTT評価法における生存率に関する用量応答曲線を作成して、各試験化合物の50%生存率濃度(MTT-IC50値)を算出した。
【数2】
【0105】
[試験II-1及びII-2の結果]
化合物BF-0343のALP-IC50値は、19.8 μMであった。また、化合物BF-0343のMTT評価法における生存率は、462 μMの濃度において、69%であり、MTT-IC50値は、>462 μMであった。前記結果から、化合物BF-0343は、骨芽細胞の分化を十分に阻害する濃度において、実質的に細胞毒性を示さないことが明らかとなった。
【0106】
特許文献1(特許第5725469号公報)に記載の化合物FKI-5513-1及びFKI-5513-2は、試験II-1と同様の試験において、83及び187 μMのALP-IC50値を示すことが知られている。それ故、本発明の化合物BF-0343は、特許文献1に記載の化合物を大きく上回る高い骨代謝阻害活性を有することが明らかとなった。
【0107】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。