(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】搬送管理システム及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20230315BHJP
B65G 47/24 20060101ALI20230315BHJP
B65G 27/32 20060101ALI20230315BHJP
G01N 21/89 20060101ALI20230315BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B65G47/14 101C
B65G47/24 F
B65G27/32
G01N21/89 T
G01B11/26 H
(21)【出願番号】P 2019004669
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】599069507
【氏名又は名称】株式会社ダイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】518405429
【氏名又は名称】株式会社ハイシンク創研
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】吉田 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 栄
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534600(JP,A)
【文献】実開平06-072962(JP,U)
【文献】特開2006-335487(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069540(WO,A1)
【文献】特開2017-081722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/24
B65G 47/14
B65G 27/32
G01N 21/89
G01B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送体に設けられた搬送路上で
搬送方向に搬送されていく搬送物の搬送態様を管理するためのシステムであって、
前記搬送路上で前記搬送物を繰り返し撮影する撮像手段と、
前記撮像手段により撮影された撮影画像のうちの検出エリア内に配置された前記搬送物の画像データに基づいて、前記搬送路から離間し若しくは前記搬送路上から前記搬送路の幅方向に沿って移動した前記搬送物における前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の挙動を検出する搬送挙動検出手段と、
前記搬送挙動検出手段により検出された前記挙動に応じて前記搬送物の搬送態様を調整する搬送態様調整手段と、
を具備
し、
前記搬送挙動検出手段は、前記搬送物の前記搬送方向以外の方向の前記挙動を示す指標を前記画像データから求め、
前記搬送態様調整手段は、複数の前記画像データから求めた複数の前記指標に基づいて前記挙動の移動態様を示す統計値若しくは検出値を導出し、前記統計値若しくは検出値に基づいて前記搬送態様を調整する、
搬送管理システム。
【請求項2】
前記搬送体は、前記搬送路上において、前記搬送物に処理力を与えることにより前記搬送物を処理する処理領域を有し、
前記搬送挙動検出手段は、前記処理領域において前記搬送物が前記処理力を受けたときの前記搬送方向以外の方向の前記挙動を検出し、
前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記搬送物に対する処理態様を制御する、
請求項1に記載の搬送管理システム。
【請求項3】
前記搬送体は、加振機構により生ずる振動により前記搬送物を前記搬送路上に沿って移動させるものであり、
前記搬送挙動検出手段は、前記振動により前記搬送物が前記搬送路上で搬送されていくときの前記搬送方向以外の方向の前記挙動を検出し、
前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記加振機構の加振態様を制御する、
請求項1に記載の搬送管理システム。
【請求項4】
前記挙動を示す指標は、前記搬送物の搬送方向以外の方向の挙動を示す指標である、前記搬送物の前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の位置、又は、当該搬送物の前記搬送路の搬送面に対する角度姿勢である、
請求項1-3のいずれか一項に記載の搬送管理システム。
【請求項5】
前記搬送路上の第1の計測エリア内の前記搬送物の画像に基づいて、前記搬送物を判別する搬送物判別手段と、
前記第1の計測エリアに対応する位置に設けられた前記搬送路上の
前記処理領域において前記搬送物判別手段による判別結果に応じて前記搬送物を処理する搬送物処理手段と、
をさらに具備し、
前記検出エリアは、前記処理領域を含む、
請求項
2に記載の搬送管理システム。
【請求項6】
前記搬送路上の第1の計測エリア内の前記搬送物の画像に基づいて、前記搬送物を判別する搬送物判別手段と、
前記第1の計測エリアに対応する位置に設けられた前記搬送路上の処理領域において前記搬送物判別手段による判別結果に応じて前記搬送物を処理する搬送物処理手段と、
をさらに具備し、
前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記搬送物処理手段の前記搬送物に対する処理態様を制御する、
請求項
1に記載の搬送管理システム。
【請求項7】
前記処理態様は、前記搬送物に対する処理時において前記搬送物に与える処理力の大きさと、当該処理力を与えるタイミングとのいずれか少なくとも一方である、
請求項
2、5又は6に記載の搬送管理システム。
【請求項8】
前記搬送体は、加振機構により生ずる振動により前記搬送物を前記搬送路上に沿って移動させるものであり、
前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記加振機構の加振態様を制御する、
請求項
1に記載の搬送管理システム。
【請求項9】
前記加振態様は、前記加振機構の加振周波数、振幅、加振方向、或いは、加振パワーの少なくとも一つである、
請求項
3又は8に記載の搬送管理システム。
【請求項10】
前記搬送態様調整手段は、前記搬送挙動検出手段により検出された複数の前記挙動
を示す指標に基づいて統計値を導出し、当該統計値に応じて前記搬送体の搬送態様を調整
し、
前記統計値は、複数の前記挙動
を示す指標のばらつきの程度を示す値である、
請求項
1-9のいずれか一項に記載の搬送管理システム。
【請求項11】
前記搬送態様調整手段は、前記搬送挙動検出手段により検出された複数の前記挙動
を示す指標に基づいて統計値を導出し、当該統計値に応じて前記搬送体の搬送態様を調整
し、
前記統計値は、複数の前記挙動
を示す指標の全体傾向を示す代表値である、
請求項
1-9のいずれか一項に記載の搬送管理システム。
【請求項12】
前記撮像手段は、前記搬送物を所定の撮影間隔で連続して撮影するように構成される、
請求項1-11のいずれか一項に記載の搬送管理システム。
【請求項13】
前記検出エリアは、前記撮影間隔で撮影された複数の撮影画像により、前記搬送路上の前記搬送物の搬送速度と前記撮影間隔との関係に基づいて、前記搬送路を通過する全ての前記搬送物が常に含まれるように設定される、
請求項12に記載の搬送管理システム。
【請求項14】
前記検出エリアは、前記搬送路を通過する全ての前記搬送物がそれぞれ複数の前記撮影画像に含まれるように設定される、
請求項13に記載の搬送管理システム。
【請求項15】
前記搬送態様調整手段は、前記搬送路上の接地位置から前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向に所定距離以上離れた前記搬送物の前記挙動
を示す指標に基づいて前記搬送態様を調整する、
請求項
1-14のいずれか一項に記載の搬送管理システム。
【請求項16】
前記搬送態様調整手段は、前記搬送物処理手段により処理されない前記搬送物を除いた、前記搬送物処理手段により処理された前記搬送物の前記挙動
を示す指標に基づいて前記搬送態様を調整する、
請求項
5又は6に記載の搬送管理システム。
【請求項17】
前記搬送物処理手段は、前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向に向けた気流を前記搬送物に対して選択的に吹き付ける構造を備え、
前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記搬送挙動検出手段により検出された前記挙動
を示す指標に応じて前記気流の強さを制御する、
請求項
5、6又は16に記載の搬送管理システム。
【請求項18】
前記搬送物処理手段は、前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向に向けた気流を前記搬送物に対して選択的に吹き付ける構造を備え、
前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記搬送挙動検出手段により検出された前記挙動
を示す指標に応じて前記気流の吹付タイミングを制御する、
請求項
5、6、16又は17に記載の搬送管理システム。
【請求項19】
請求項1-18のいずれかに記載の搬送管理システムと、
前記搬送路を備えた前記搬送体と、を具備する搬送装置。
【請求項20】
前記搬送体を加振する加振機構をさらに具備する振動式搬送装置である、
請求項19に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送管理システム及び搬送装置に係り、特に、振動式搬送装置において用いられる場合に好適な、搬送体に設けられた搬送路上を移動する搬送物の搬送態様を好適化するための調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、搬送装置では、搬送途中の搬送物の外観を検査することによってその搬送姿勢や良否を判定し、この判定結果に応じて、機械的手段や空圧手段などにより、搬送物の選別(排除)、姿勢変更(反転)、進路変更(分配)などといった各種の処理を搬送物に対して実行する場合がある。また、搬送装置の中でもパーツフィーダなどの振動式搬送装置においては、無秩序に供給された搬送物を、搬送体を振動させることによって搬送路に沿った搬送方向に搬送するため、搬送路上で搬送物が上下動しながら搬送方向に移動する。このため、上下動を伴う不安定な搬送物に対して上記の各種の処理を実行しなければならない。
【0003】
上記の搬送装置においては、以下の特許文献1及び2に開示されるように、短時間に繰り返し撮影される複数のカメラ画像を画像処理することにより上述の判定処理を実施し、その判定結果に応じて各種の処理を実行するようにした搬送物判別制御システムを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-130674号公報
【文献】特開2017-121995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された搬送物判別制御システムにおいては、上記各種の処理により搬送物が搬送路上から離れる方向に動作するときの挙動が安定しないため、或いは、振動式搬送装置における上記振動により上記搬送路上の搬送物が搬送路上で上下動するために搬送物の挙動が安定しないため、搬送物の選別・姿勢変更・進路変更が適切に行われなかったり、搬送速度や搬送密度が変動したりする場合があった。
【0006】
特に、搬送物として電子部品を扱う場合においては、近年、表面実装型電子部品が急激に小型化しているとともに、高速かつ高密度の供給が要求されるようになってきているため、搬送物に対する最適な搬送条件を設定することや搬送物に対する精密な処理動作の制御が必要とされるようになってきている。そして、このことから、搬送物を変更する度に搬送装置に対して煩雑な調整作業を行うことが必要となり、また、調整作業を行う者が熟練者でないときには、搬送装置の能力を十分に引き出すことができなくなるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、搬送物に対する各種の処理などの搬送態様を容易に好適化可能な搬送管理システムを構成することにより、搬送物の搬送態様の調整作業を容易化するとともに、高い性能を発揮できる搬送装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる実情に鑑み、本発明に係る搬送管理システムは、搬送体に設けられた搬送路上で搬送されていく搬送物の搬送態様を管理するためのシステムである。このシステムは、前記搬送路上で前記搬送物を繰り返し撮影する撮像手段と、前記撮像手段により撮影された撮影画像のうちの検出エリア内に配置された前記搬送物の画像データに基づいて、前記搬送路から離間し若しくは前記搬送路上から前記搬送路の幅方向に沿って移動した前記搬送物における前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の挙動を検出する搬送挙動検出手段と、前記搬送挙動検出手段により検出された前記挙動に応じて、前記搬送物の搬送態様を調整する搬送態様調整手段と、を具備することを特徴とする。この場合において、前記搬送挙動検出手段は、前記搬送物の前記搬送方向以外の方向の前記挙動を示す指標を前記画像データから求める。また、前記搬送態様調整手段は、複数の前記画像データから求めた複数の前記指標に基づいて前記挙動の移動態様を示す統計値若しくは検出値を導出し、前記統計値若しくは検出値に基づいて前記搬送態様を調整する。ここで、前記挙動を示す指標は、前記搬送物の搬送方向以外の方向の挙動を示す指標である、前記搬送物の前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の位置、又は、当該搬送物の前記搬送路の搬送面に対する角度姿勢であることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記搬送路上の第1の計測エリア内の前記搬送物の画像に基づいて、前記搬送物を判別(例えば、搬送物の良否若しくは姿勢などを判定)する搬送物判別手段と、前記第1の計測エリアに対応する位置に設けられた前記搬送路上の処理領域において前記搬送物判別手段による判別結果に応じて前記搬送物を処理する搬送物処理手段と、をさらに具備し、前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記搬送物処理手段の前記搬送物に対する処理態様を制御することが好ましい。この場合において、前記処理態様とは、前記搬送物に対する処理時において前記搬送物に与える処理力の大きさ(例えば、空圧)と当該処理力を与えるタイミング(例えば、空圧の付与タイミング)などの処理要素の少なくとも一部をいう。ここで、前記判別結果に応じて、前記搬送物処理手段における、前記搬送路上の処理領域の通過時に前記搬送物を処理しない非処理状態と、前記搬送路上の前記処理領域の通過時に前記搬送物を処理する処理状態と、を切り替え可能に構成される搬送処理制御手段をさらに具備することが好ましい。
【0010】
本発明において、前記搬送体は、加振機構により生ずる振動により前記搬送物を前記搬送路上に沿って移動させるものであり、前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記加振機構の加振態様を制御することが好ましい。この場合において、前記加振態様とは、前記搬送体を加振する前記加振機構の加振周波数や振幅、加振方向、或いは、加振パワーなどの加振要素の少なくとも一部をいう。また、前記搬送体に対する複数の加振箇所を備える場合には、上記加振態様には、複数の加振箇所の間における上記加振要素の異同や大小その他の比率などの相対的な条件が含まれるときがある。
【0011】
本発明において、前記搬送態様調整手段は、前記搬送挙動検出手段により検出された複数の前記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である前記位置若しくは前記角度姿勢)に基づいて統計値を導出し、当該統計値に応じて前記搬送体の搬送態様を調整することが好ましい。この場合において、上記統計値は、複数の前記挙動のばらつきの程度を示す値であることが好ましい。例えば、前記位置若しくは前記角度姿勢の標準偏差σ若しくは分散σ2、あるいは、これらとばらつきの程度に関し実質的に同等の相関を示す値であることが望ましい。また、前記統計値は、複数の前記挙動の全体傾向を示す代表値であることが好ましい。例えば、平均値、中央値などである。
【0012】
本発明において、前記撮像手段は、前記搬送物を所定の撮影間隔で連続して撮影するように構成されることが好ましい。この場合において、前記検出エリアは、前記撮影間隔で撮影された複数の撮影画像により、前記搬送路上の前記搬送物の搬送速度と前記撮影間隔との関係に基づいて、前記搬送路を通過する全ての前記搬送物が常に含まれるように設定されることが望ましい。このときにはさらに、前記検出エリアは、前記搬送路を通過する全ての前記搬送物がそれぞれ複数の前記撮影画像に含まれるように設定されることがさらに望ましい。前記検出エリアの範囲は、当該検出エリア内に一つの搬送物の全体が含まれ得ることが好ましい。特に、前記検出エリアの搬送方向の範囲は、搬送物の搬送方向の寸法を越える範囲であることが好ましく、搬送物の搬送方向の寸法の1.5倍以上2.5倍以下の範囲内であることがさらに望ましい。また、前記検出エリアの前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の範囲は、搬送物の前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の寸法の2倍以上5倍以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記搬送物判別手段と搬送物処理手段をさらに具備する場合には、前記第1の計測エリアは、前記撮影間隔で撮影された複数の撮影画像により、前記搬送路上の前記搬送物の搬送速度と前記撮影間隔との関係に基づいて、前記搬送路を通過する全ての前記搬送物が常に含まれるように予め設定されることが望ましい。このときにはさらに、前記第1の計測エリアは、前記搬送路を通過する全ての前記搬送物がそれぞれ複数の前記撮影画像に含まれるように設定されることがさらに望ましい。
【0014】
本発明において、前記検出エリアの前記搬送路に沿った搬送方向の範囲をLD、前記搬送物の1個分の前記搬送方向の長さをLDS、前記撮影周期をTs、前記搬送速度をVsとすれば、n=1~10の自然数としたとき、
LD≧LDS+n×α=LDS+n×Ts×Vs
が成立する値を有することが好ましい。これによれば、全ての搬送物がいずれかの画像データにおいて常に検出エリア内に配置された状態で搬送挙動検出手段により上記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である上記位置若しくは上記角度姿勢)が検出され、これらに基づいて搬送態様調整手段により搬送態様が調整されるため、搬送物に応じた搬送状態の制御を確実に実行することができる。ここで、nは3~7の範囲内であることがさらに望ましい。
【0015】
本発明において、前記搬送態様調整手段は、前記搬送路上の接地位置(前記搬送路上に接地しているときの前記搬送物の上記位置)から前記方向に所定距離以上離れた前記搬送物の前記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である上記位置若しくは上記角度姿勢)に基づいて、前記搬送態様を調整することが好ましい。この場合において、前記搬送挙動検出手段は、前記搬送路上の接地位置から所定距離以上離れた前記搬送物に対して前記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である前記位置若しくは前記角度姿勢)を検出することが望ましい。特に、前記接地位置から前記所定距離以上離れた前記搬送物のみが検出対象となるように、前記検出エリアの範囲(後述する境界線の位置)を設定することがさらに望ましい。
【0016】
本発明において、前記搬送物判別手段と前記搬送物処理手段をさらに具備する場合には、前記搬送態様調整手段は、前記搬送路上の処理領域を通過する際に処理されない前記搬送物を除いた、前記搬送路上の前記処理領域を通過する際に処理された前記搬送物の前記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である上記位置若しくは上記角度姿勢)に基づいて前記搬送態様を調整することが好ましい。この場合において、前記搬送挙動検出手段は、前記処理領域を通過する際に処理された前記搬送物のみを対象として前記位置若しくは前記角度姿勢を検出することが望ましい。特に、前記処理領域を通過する際に処理された前記搬送物のみが検出対象となるように、前記検出エリアを設定することがさらに望ましい。
【0017】
本発明において、前記搬送物処理手段は、前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向に向けた気流を前記搬送物に対して選択的に吹き付ける構造を備え、前記搬送挙動検出手段は前記搬送物の前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の位置を検出し、前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記搬送挙動検出手段により検出された前記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である上記位置若しくは上記角度姿勢)に応じて前記気流の強さを制御することが好ましい。この場合において、前記検出エリアが、前記搬送路を通過する全ての前記搬送物がそれぞれ複数の前記撮影画像に含まれるように設定されるときには、前記搬送物ごとの複数の前記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である上記位置若しくは上記角度姿勢)の間の差異に応じて前記気流の強さを制御することが望ましい。特に、前記挙動は前記位置であることが望ましい。この場合において、前記搬送態様調整手段は、前記搬送挙動検出手段により検出された前記搬送物の前記位置と前記接地位置との距離が所定値以下のときには、前記搬送物処理手段の処理態様を調整しないことがさらに望ましい。さらに、複数の前記位置の統計値が用いられる場合には、前記距離が所定値以下の前記搬送物の前記位置は上記統計値に参入しないことが望ましい。
【0018】
本発明において、前記搬送物処理手段は、前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向に向けた気流を前記搬送物に対して選択的に吹き付ける構造を備え、前記搬送態様調整手段は、前記搬送態様を調整するために、前記搬送挙動検出手段により検出された前記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である上記位置若しくは上記角度姿勢)に応じて前記気流の吹付タイミングを制御することが好ましい。特に、前記吹付タイミングは、前記気流の吹付開始タイミングであることが望ましい。また、前記挙動は前記角度姿勢であることが望ましい。この場合において、前記搬送態様調整手段は、前記角度姿勢の向きが前記搬送物の搬送方向前側が搬送方向後側よりも前記搬送路から離れる傾斜姿勢に対応するときには、前記気流の吹付開始タイミングを遅らせ、前記角度姿勢の向きが前記搬送物の搬送方向後側が搬送方向前側よりも前記搬送路から離れる傾斜姿勢に対応するときには、前記気流の吹付開始タイミングを早めるように、前記搬送物処理手段を制御することが望ましい。また、前記搬送態様調整手段は、前記角度姿勢の搬送方向に対する交差角が所定値以下のときには、前記搬送物処理手段の処理態様を調整しないことがさらに望ましい。さらに、複数の前記角度姿勢の統計値が用いられる場合には、前記角度姿勢の搬送方向に対する交差角が所定値以下の前記搬送物の前記角度姿勢は上記統計値に参入しないことが望ましい。
【0019】
また、別の本発明に係る搬送管理システムは、搬送路上で搬送物を既定の撮影間隔で連続して撮影する撮像手段と、前記搬送物が前記搬送路上の処理領域を処理を受けずに通過する非処理状態と前記搬送物が前記搬送路上の前記処理領域で処理される処理状態とが切り替え可能に構成された搬送物処理手段と、前記撮像手段により前記撮影間隔で撮影された複数の撮影画像のいずれかにおいて、前記搬送路の前記搬送物の搬送速度と前記撮影間隔との関係により、前記搬送路を通過する全ての前記搬送物が常に含まれるように予め設定された範囲を有するとともに前記処理領域の上流側に隣接して配置される第1の計測エリア内の画像データに対して画像計測処理を施すことによって、前記搬送物が前記第1の計測エリア内に配置されていることを検出する搬送物特定段階、及び、前記搬送物特定段階により前記搬送物が前記第1の計測エリア内に配置されていることが検出されたときに、前記搬送物の少なくとも判定対象部分の画像に基づいて前記搬送物を判定する搬送物判定段階を含む搬送物判別処理を実施する搬送物判別手段と、前記搬送物判別手段による前記搬送物の判別結果に基づいて、前記搬送物処理手段の前記非処理状態と前記処理状態とを切り替える搬送処理制御手段と、前記撮像手段により撮影された撮影画像のうちの前記処理領域を含む検出エリア内に配置された前記搬送物の画像データに基づいて、前記搬送路から離間し若しくは前記搬送路上から前記搬送路の幅方向に沿って移動した前記搬送物における前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の挙動を検出する搬送挙動検出手段と、を具備する。ここで、前記搬送挙動検出手段により検出された前記挙動に応じて前記搬送物処理手段の処理態様を調整する搬送態様調整手段をさらに具備することが好ましい。
【0020】
本発明において、前記撮像手段により前記撮影間隔で撮影された複数の撮影画像のいずれかにおいて、第2の計測エリア内の前記搬送物の画像データに基づいて画像計測処理を施すことによって、前記搬送物が前記処理領域を通過して下流側へ脱出したことを検出する搬送物通過検出手をさらに具備し、前記第2の計測エリアは、前記搬送路の前記搬送物の搬送速度と前記撮影間隔との関係により、前記搬送路上を通過する全ての前記搬送物の少なくとも一部の画像が常に含まれるように予め設定された範囲を有するとともに前記処理領域の下流側に隣接して配置され、前記搬送処理制御手段は、先の前記搬送物の前記判別結果が前記非処理状態に対応し、次の前記搬送物の前記判別結果が前記処理状態に対応するものであれば、前記搬送物通過検出手段により前記先の搬送物が前記処理領域を通過して下流側へ脱出したことが検出されたときに、前記搬送物処理手段の前記非処理状態から前記処理状態への切り替えを行うことが好ましい。
【0021】
この場合において、前記搬送処理制御手段は、前記搬送物判別手段の前記判別結果が所定の判別態様であるときに前記搬送物処理手段を前記非処理状態として前記搬送物を通過させ、前記搬送物通過検出手段により前記判別結果として前記所定の判別態様が得られた先の前記搬送物が前記処理領域を通過して下流側へ脱出したことが検出されるとともに前記搬送物判別手段により次の前記搬送物について前記所定の判別態様であるという前記判別結果が得られていないときに前記搬送物処理手段を前記処理状態に戻し、その他のときには前記搬送物処理手段を前記処理状態に維持することが望ましい。
【0022】
本発明において、前記搬送物判別手段は、前記搬送物特定段階により前記搬送物が前記第1の計測エリア内に配置されていることが検出されないときには、前記搬送物の前記判定対象部分に対して行う前記搬送物判定段階を実施しないことが好ましい。
【0023】
本発明において、前記第1の計測エリアの前記搬送路に沿った搬送方向の長さLD1は、前記搬送物の1個分の前記搬送方向の長さをLDS、前記撮影周期をTs、前記搬送速度をVsとすれば、n=1~10の自然数としたとき、
LD1≧LDS+n×α=LDS+n×Ts×Vs
が成立する値を有することが好ましい。
【0024】
これらの場合において、前記第2の計測エリアの前記搬送路に沿った搬送方向の長さLD2は、前記搬送物の1個分の前記搬送方向の長さLDS以上の値であることが望ましい。
【0025】
本発明において、前記複数の撮影画像のうち少なくとも前記検出エリア内の画像データを保存するデータ保存手段と、該データ保存手段により保存された過去の前記画像データを読みだして表示するデータ表示手段とをさらに有し、前記搬送挙動検出手段は、前記データ保存手段によって保存された過去の前記画像データに対しても、前記画像計測処理を施して前記検出エリア内の画像データに基づいて前記搬送物の上記挙動を検出することができるように構成されることが好ましい。
【0026】
本発明において、前記複数の撮影画像のうち少なくとも前記第1の計測エリア内の画像データを保存するデータ保存手段と、該データ保存手段により保存された過去の前記画像データを読みだして表示するデータ表示手段とをさらに有し、前記搬送物判別手段は、前記データ保存手段によって保存された過去の前記画像データに対しても、前記画像計測処理を施して前記第1の計測エリア内の少なくとも前記判定対象部分の画像に基づいて前記搬送物を判定することができるように構成されることが好ましい。
【0027】
本発明において、前記搬送路は前記搬送物の搬送方向に沿った方向に往復する態様で振動することによって前記搬送物を搬送するものであり、前記撮像手段が静止している場合には、撮影時における前記搬送路の振動による前記撮影画像内の前記搬送路に対する位置変動をなくすように前記撮影画像内の前記第1の計測エリア(若しくは、前記第1の計測エリア及び前記第2の計測エリア)、或いは、前記検出エリアの位置を補正することが好ましい。
【0028】
次に、本発明に係る搬送装置は、上記いずれかの搬送管理システムと、前記搬送路を備えた前記搬送体とを具備することが好ましい。特に、前記搬送体を加振する加振機構をさらに具備する振動式搬送装置であることが望ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、搬送物の撮影画像を処理することにより、搬送路上から離間し若しくは前記搬送路上から前記搬送路の幅方向に沿って移動した前記搬送物の前記搬送路から離れる方向若しくは前記搬送路の幅方向に沿った方向の挙動を検出するので、当該挙動に基づいて搬送物の搬送方向の移動態様とは異なる別の観点で搬送物の不安定性等を勘案しながら搬送態様を調整することが可能になることから、搬送物の搬送態様の調整作業が容易化されるとともに、搬送装置の高い性能を発揮させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る搬送管理システム及び搬送装置の各実施形態に共通な全体構成を示す概略構成図である。
【
図2】搬送路上の搬送物の外観と搬送物の配列態様の例を示す外観説明図である。
【
図3】画像処理による搬送物の判別方法を説明するための説明図(a)-(c)である。
【
図4】第1実施形態における検出エリア内の画像データの例を示す説明図(a)-(g)である。
【
図5】第1実施形態におけるブロー圧力(処理力)の大小による搬送物の位置の相違を示す説明図(a)-(g)である。
【
図6】第2実施形態における検出エリア内の画像データの例を示す説明図(a)-(g)である。
【
図7】第3実施形態における検出エリア内の画像データの例における搬送物の位置の間の距離の算出例を示す説明図(a)-(g)である。
【
図8】第4実施形態における検出エリア内の画像データの例と処理開始タイミングとの関係を示す説明図(a)-(c)、第4実施形態において検出される搬送物の角度姿勢を示す主軸角の説明図(d)、処理開始タイミングの調整例を示すタイミングチャート(e)-(g)である。
【
図9】第5実施形態における検出エリア内の画像データの例と統計値への参入の有無を示す説明図(a)-(e)である。
【
図10】第6実施形態における検出エリア内の画像データの例と処理開始タイミングとの関係を示す説明図(a)と(b)及び(c)と(d)である。
【
図11】第7実施形態における検出エリア内の画像データの例を示す説明図(a)-(g)である。
【
図12】各実施形態に用いられる動作プログラムの構成例を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<共通構成>
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、
図1乃至
図3を参照して、本発明に係る各実施形態に共通の全体構成について説明する。
図1は、搬送装置10の駆動制御系と、搬送装置10の搬送管理システムの構成とを示す概略構成図である。
【0032】
搬送装置10は、螺旋状の搬送路111を有するボウル型の搬送体110を備えたパーツフィーダ11と、このパーツフィーダ11の上記搬送路111の出口から搬送物を受け取るように構成された入口を備えた直線状の搬送路121を有する搬送体120を備えたリニアフィーダ12とを具備する振動式搬送装置である。各実施形態の搬送管理システムでは、リニアフィーダ12の搬送体120の搬送路121上の搬送物CAを撮影画像GPXに基づいて検査、判定する。なお、本発明において、振動式搬送装置に限られない構成については、搬送物CAが搬送路に沿って搬送される各種の搬送装置に用いることができる。また、振動式搬送装置であっても、上記パーツフィーダ11とリニアフィーダ12の組み合せに限定されるものではなく、循環式パーツフィーダなどの他の形式の搬送装置に用いることが可能である。さらに、上記の組み合せにあっても、リニアフィーダ12の搬送路121上の搬送物CAを検査するものに限らず、パーツフィーダ11の搬送路111上の搬送物CAを検査するものであっても構わない。
【0033】
パーツフィーダ11はコントローラCL11によって駆動、制御される。また、リニアフィーダ12はコントローラCL12によって駆動、制御される。これらのコントローラCL11、CL12はパーツフィーダ11やリニアフィーダ12の加振機構(電磁駆動体や圧電駆動体などを含む。)を交流駆動し、搬送体110,120を搬送路111,121上の搬送物CAが所定の搬送方向Fに移動する態様となるように振動させる。また、コントローラCL11、CL12は、搬送管理システムの主体となる画像処理機能を有する検査処理ユニットDTUに入出力回路(I/O)を介して接続されている。
【0034】
また、コントローラCL11,CL12は、下記の動作プログラムを実行する後述する演算処理装置MPUに対して、マウスなどの後述する操作入力装置SP1,SP2などを介して所定の操作入力(デバッグ操作)が行われると、上記の動作プログラムに従って搬送装置10の駆動を停止する。このとき、上記の動作プログラムに従って、例えば、検査処理ユニットDTUにおける画像計測処理も停止される。このデバッグ操作及び当該操作に応じた各所の動作については後に詳述する。
【0035】
検査処理ユニットDTUは、パーソナルコンピュータ等の演算処理装置MPU(マイクロプロセシングユニット)を中核構成とし、図示例では、上記演算処理装置MPUは、中央処理ユニットCPU1,CPU2、キャッシュメモリCCM、メモリコントローラMCL、チップセットCHSなどから構成される。また、この検査処理ユニットDTUには、撮像手段であるカメラCM1,CM2にそれぞれ接続された画像処理を行うための画像処理回路GP1,GP2が設けられている。これらの画像処理回路GP1,GP2はそれぞれ画像処理メモリGM1,GM2に接続されている。画像処理回路GP1,GP2の出力は上記演算処理装置MPUにも接続され、カメラCM1,CM2から取り込んだ撮影画像GPXの画像データを処理し、適宜の処理画像(例えば後述する画像エリアGPY内の画像データ)を演算処理装置MPUに転送する。主記憶装置MMには予め搬送管理システムの動作プログラムが格納されている。検査処理ユニットDTUが起動されると、演算処理装置MPUにより上記動作プログラムが読み出されて実行される。また、この主記憶装置MMには、演算処理装置MPUにより、後述する画像計測処理を実行した対象となる撮影画像GPX若しくは画像エリアGPYの画像データが保存される。
【0036】
また、検査処理ユニットDTUは、入出力回路(I/O)を介して液晶モニタ等の表示装置DP1,DP2や操作入力装置SP1,SP2に接続される。表示装置DP1,DP2は、上記演算処理装置MPUによって処理された撮影画像GPX若しくは画像エリアGPYの画像データ、画像計測処理の結果、すなわち、搬送挙動検出処理や搬送物判別処理の結果などが、所定の表示態様で表示される。なお、この表示機能は、実際に搬送物が搬送されている場合に限らず、後述するように、過去のデータを読みだして再生している場合にも機能する。また、表示装置DP1,DP2の画面を見ながら操作入力装置SP1,SP2を操作することにより、各種の操作指令、設定値などの処理条件を上記演算処理装置MPUに入力することができる。
【0037】
次に、各実施形態における上述の搬送管理システムを用いた搬送装置10における搬送物CAの基本的な判別方法の例について説明する。
図2は、各実施例における搬送物CAの形状及び搬送路121上の搬送姿勢を示す説明図である。図示例において、搬送物CAは、略立方体形状(例えば、立方体の8つの角部を丸めた形状)を有する電子部品(例えば、チップ抵抗、チップインダクタ、チップコンデンサなど)である。この搬送物CAは、相互に直交する搬送面121a,121bを備えた搬送路121上において、長手方向軸(主軸)を搬送方向Fに向けた姿勢で搬送される。搬送物CAの前後両端には金属製の端子部CAaが露出し、その間の側面部分には絶縁材からなる白色面CAb及び方向識別マークである黒色面CAcが露出している。この搬送物CAの正規の搬送姿勢は、先端面CAt5を搬送先(下流側、図示左側)に向け、後端面CAt6を搬送元(上流側、図示右側)に向けた姿勢であって、四つの側面CAs1~CAs4のうち、搬送先の側に白色面CAb、搬送元の側に黒色面CAcが表れる側面CAs1が上方を向く姿勢であり、全体が白色面CAbである側面CAs2が搬送路121の開放された側の側方を向く姿勢となる。
【0038】
なお、
図2及び
図3では、搬送路121の搬送面121aが相対的に急峻な面であり、搬送面121bが相対的になだらかな面であって、カメラCM1,CM2が図示下方の手前側(すなわち搬送面121bの手前上方側)から斜めに撮像したときの画像を示している。このため、搬送物CAにおいて、搬送路121上における図示上側に配置された側面(搬送面121a側に配置される側面)が上方を向く面(以下、単に「上方側面」という。)であり、図示下側に配置された側面(搬送面121b側に配置される側面)が側方を向く面(以下、単に「側方側面」という。)である。
図2中の左端にある搬送物CAについて言えば、上方側面が側面CAs1であり、側方側面が側面CAs2である。
【0039】
図3は、
図2に示す搬送物CAの搬送姿勢が正規のものであるか否かを判定するための計測エリアの設定例を説明するための説明図(a)~(c)である。カメラCM1,CM2によって撮影された撮影画像GPXは、上記画像処理回路GP1,GP2によって適宜に処理され、
図3(a)に示すように、搬送路121上の搬送方向Fと直交する方向について必要な範囲である画像幅GPWに含まれる画像データのみが取り込まれる。また、撮影画像GPXのうちの搬送方向Fに沿った範囲についても、図示のように画像長GPLに限定した範囲で画像データを取り込むようにしてもよい。このように撮影画像GPXから、実際に取り込まれ、演算処理装置MPUに転送される画像エリアGPYを限定することによって、取込速度及び転送速度を向上させることができる。各実施形態の画像エリアGPYは、
図3(a)に示すように搬送方向Fに長い矩形領域となる。
【0040】
各実施形態では、上記動作プログラムに組み込まれて実行される判別処理コンポーネントに従って行われる画像計測処理によって、搬送物CAに対して検出及び判定が行われる。この画像計測処理は、
図3(a)に示す上記画像エリアGPYの全体にわたり行われるのではなく、この画像エリアGPYの一部の限定された領域のみに対して行われる。各実施形態では、画像エリアGPYの中にサーチエリアSAE,SARが設定されている。このサーチエリアSAE,SARには、搬送物CAを選別するための処理領域MES,MRSが含まれる。処理領域MES,MRSは、図示例の場合には搬送物CAの選別処理のための領域であり、搬送路121上を通過させるか、或いは、搬送路121上から排除するかによって、搬送物CAを選別し、所望の搬送物CAのみを下流側へ送り出すための領域である。搬送物CAの選別処理については、上記のサーチエリアSAE,SAR内の画像データのみが上記画像計測処理の対象となる。
【0041】
サーチエリアSAE,SARには、
図3(b)に示すように、上記処理領域MES,MRSの上流側に隣接する第1の計測エリアME1,MR1と、上記処理領域MES,MRSの下流側に隣接する第2の計測エリアME2,MR2と、がさらに含まれる。ここで、処理領域MESは、搬送物CAが中心位置CLNに形成された排除用噴気口OPSによって排除され得る搬送路121上の領域である。また、第1の計測エリアME1は、上記サーチエリアSAEの内部であって、上流側から搬送されてきた搬送物CAが排除用噴気口OPSによって排除されない領域である。さらに、第2の計測エリアME2は、上記サーチエリアSAEの内部であって、処理領域MESを通過して下流側へ脱出したときの、搬送物CAが排除用噴気口OPSによって排除されない領域である。排除用噴気口OPSは搬送路121の一方(例えば、図示下側)の搬送面121bに開口している。排除用噴気口OPSの搬送面121b上の開口位置は、搬送路121上を通過する搬送物CAの側面で覆われる範囲内に設定されることが好ましい。これらと同様に、処理領域MRSは、搬送物CAが中心位置CLNに形成された反転用噴気口OPRによって反転され得る搬送路121上の領域である。また、第1の計測エリアMR1は、上記サーチエリアSARの内部であって、上流側から搬送されてきた搬送物CAが反転用噴気口OPRによって反転されない領域である。さらに、第2の計測エリアMR2は、上記サーチエリアSARの内部であって、処理領域MRSを通過して下流側へ脱出したときの、搬送物CAが反転用噴気口OPRによって反転されない領域である。反転用噴気口OPRは搬送路121の一方(例えば、図示下側)の搬送面121bに開口している。反転用噴気口OPRの搬送面121b上の開口範囲は、その少なくとも一部が搬送路121上を通過する搬送物CAの側面上部に対向する位置に設定されることが好ましい。例えば、反転用噴気口OPRの搬送面121b上の開口位置は、搬送路121上を通過する搬送物CAの側面で開口範囲の下部が覆われるとともに開口範囲の上部が当該側面で覆われない範囲に設定されることが好ましい。
【0042】
サーチエリアSAE,SAR内では、上記画像計測処理において、予め登録された搬送物CAの画像(以下、単に「基準画像」という。)と対応する外縁形状を備えた画像(以下、単に「検出画像」という。)が存在するか否かが検索される。検出画像が存在する場合には、検出画像が占める領域の位置を搬送物特定領域WDSとして特定する。これが搬送物判別処理における搬送物特定段階である。搬送物特定段階では、搬送物CAの姿勢や欠陥を判別する必要はなく、搬送物CAの存在及び位置を特定するだけでよいので、搬送物CAの外形などのパターン形状や外形の内側の平均明度などの一致度を求め、これを所定の閾値と比較して検出の有無を決定する。また、この特定時においては、サーチエリアSAE,SAR内におけるパターン形状の位置を算出し、上述のように搬送物特定領域WDSを特定する。なお、搬送物特定段階では、上述の外形などのパターン形状の一致度を判定要素とするだけでもよいが、上述のように外形の内側の平均明度などの一致度をも判別要素とすることにより、搬送物CAの判別精度を高めることができる。例えば、照明方向と部品姿勢との関係により、搬送物CAの明度が全体として暗くなってしまうと、画像の背景との区別が付きにくくなるために搬送物の検出漏れが生じやすくなるが、平均明度の閾値を低く設定することによって検出漏れを低減できる。
【0043】
上記の搬送物特定段階において、搬送物特定領域WDSが第1の計測エリアME1,MR1内にある場合には、以下に説明する搬送物判定段階が引き続いて行われる。また、搬送物特定領域WDSが処理領域MES,MRS及び第2の計測エリアME2,MR2内にあるときには、そのまま計測を実施し、処理領域MES,MRS及び第2の計測エリアME2,MR2内の搬送物特定領域WDSがなくなった時点で、搬送物通過検出信号を出力する搬送物通過検出処理を実施する。なお、後述するように、或る一つの搬送物CAが第1の計測エリアME1,MR1内に配置されている様子が複数の撮影画像GPXに撮影されている場合には、その都度、搬送物特定段階を実施して搬送物特定領域WDSを導出するが、以下の搬送物判定段階は1回(例えば、初回)のみ実施するようにしてもよい。
【0044】
サーチエリアSAEにおいては、搬送物判定段階は以下のように実施される。まず、上記のように特定された搬送物特定領域WDSを基準として、
図3(c)に示すように、第1の判定エリアGWAと、第2の判定エリアGWBの位置決めを行い、その明度により側面CAs1~CAs4に対応するか否かを検出する。例えば、第1の判定エリアGWAが搬送物CAの上方側面上に配置され、第2の判定エリアGWBが搬送物CAの側方側面上に配置される。各実施形態では、上方側面が側面CAs1であり、側方側面が側面CAs2である場合に搬送物CAが正規の姿勢で搬送されている状態であると設定されている。このとき、第1の判定エリアGWAは、側面CAs1を検出するために、搬送方向Fに伸びる細長い判定補助エリアGWA1と、上流側に配置された判定補助エリアGWA2と、下流側に配置された判定補助エリアGWA3とを有する。判定補助エリアGWA1は、側面CAs1の白色面CAbと黒色面CAcの境界を搬送方向Fのエッジ検出処理によって検出し、この検出されたエッジを境界位置として判定補助エリアGWA2及びGWA3の位置を補正する。その後、位置補正された判定補助エリアGWA2及びGWA3の明度を所定の閾値と比較することなどにより、それぞれの明度が正規の姿勢にある搬送物CAと一致するか否かを判定する。図示例では、判定補助エリアGWA2が白色面CAbを検出し、判定補助エリアGWA3が黒色面CAcを検出すると、搬送物CAが正規の姿勢にある良品と判定される。なお、搬送物CAの判別態様(良否の判定)は、姿勢に限らず、形状や寸法等の良不良などであってもよい。
【0045】
第2の判定エリアGWBは、側方側面が側面CAs2(全て白色面CAbである側面)であるか否かを判定する。この場合にも、第2の判定エリアGWBの明度が所定の閾値よりも高いことなどによって判定を行うことができる。なお、第1の判定エリアGWAと第2の判定エリアGWBの双方を判定することによって判定対象の画像データから得られた取得情報に冗長性を持たせることができるので、画像の明るさなどのばらつきによる誤判定を回避できるなど、判別精度を高めることができる。
【0046】
一方、上記画像エリアGPYには、上記サーチエリアSAEとは別の位置(図示例では、サーチエリアSAEよりも上流側の位置)に、搬送物CAを反転させるための反転処理を行うか否かを決定するための別のサーチエリアSAR及び別の第1の計測エリアMR1が設けられ、この第1の計測エリアMR1内において上記と同様の搬送物特定段階により特定された搬送物特定領域WDSに対応する搬送物判定段階を行うための判定エリアGV1、GV2が設けられる。第1の判定エリアGV1及び第2の判定エリアGV2は、搬送物CAの上方側面が通過する位置に配置されている。第1の判定エリアGV1は、搬送物CAの上方側面が、上記黒色面CAcを含む上記側面CAs1でない場合、すなわち、全体が白色面CAbである側面CAs2~CAs4である場合(例えば、所定の閾値よりも明るい場合)に判定結果NGを出力し、端子部CAaが含まれていたり、側面CAs1などであったりする場合(例えば、所定の閾値より暗い場合)に判定結果PASSを出力する。また、第2の判定エリアGV2は、第1の判定エリアGV1よりも搬送方向Fに狭い領域である。この第2の判定エリアGV2内において搬送方向Fの走査によりエッジが検出されると、密着して搬送されてきた前後の搬送物CAの境界が配置されているとし、やはり判定結果をPASSとする。そして、判定結果がNGであるときにのみ、処理領域MRSに設けられた反転用噴気口OPRから気流を噴出させ、搬送物CAの上方側面が他の側面となるように反転させる。このようにすることで、第1の判定エリアGV1内に上方側面が配置され、かつ、この上方側面が側面CAs2~CAs4であるときにのみ、搬送物CAの姿勢を変更することができる。反転用噴気口OPRは搬送路121の一方(例えば、図示下側)の搬送面121bに開口している。
【0047】
<共通構成の一例1>
各実施形態では、カメラCM1,CM2は、予め設定された既定の撮影周期で連続して撮影を実行し、当該撮影周期ごとに撮影画像GPX若しくは上記画像エリアGPY内の画像データが画像処理装置GP1,GP2を介して上記演算処理装置MPUに転送される。演算処理装置MPUでは、転送された上記画像データのうち、演算処理用メモリRAMを用いて、サーチエリアSAE,SAR内の画像データを上述のように処理し、検出及び判定を行う。ただし、各実施形態では、別途トリガセンサを設けたり、搬送物CAの画像データ中から搬送物CAの所定の形状パターンを所定の領域内でサーチし、当該形状パターンが検出されたときに内部トリガを発生させたりするのではなく、既定の撮影周期を示す外部トリガを導入したり、演算処理装置MPUから一定周期のトリガ信号をカメラCM1,CM2に出力したりするなどの方法で、既定の撮影周期で連続して撮影を実行している。このため、搬送路121上を搬送されてくる全ての搬送物CAの少なくとも判定対象部分(各実施形態では端子部CAaを除く側面CAs1~CAs4の表面部分に相当するが、搬送物CAの外観全体であってもよい。)を検出し、漏れなく判定しようとすれば、全ての搬送物CAの上記検出対象部分が、いずれかの撮影画像GPX又は画像エリアGPYにおいて、第1の計測エリアME1、MR1内に含まれるようにする必要がある。
【0048】
また、各実施形態では、搬送物判別処理の一部として、サーチエリアSAE,SAR内において、搬送物特定領域WDSを特定するために搬送物特定段階を行うが、この搬送物特定段階では、第1の計測エリアME1,MR1内においては、当該エリア内に搬送物CAの全体が含まれているときに検出したものとしている。したがって、第1の計測エリアME1,MR1内で搬送物CAの位置を検出するためには、いずれかの画像データにおいて全ての搬送物CAの全体が第1の計測エリアME1,MR1内に含まれた状態となるように設定する必要がある。
【0049】
そこで、撮影周期をTs[sec]、搬送物CAの搬送方向Fの長さをLDS[mm]、搬送物CAの搬送速度をVs[mm/sec]とした場合、全ての搬送物CAの画像が必ずいずれかの画像データの上記第1の計測エリアME1,MR1内に含まれるようにするためには、第1の計測エリアME1,MR1の搬送方向Fの範囲LD1を以下の式(1)のように設定する。
LD1≧LDS+α=LDS+Ts×Vs…(1)
例えば、搬送物CAの搬送方向Fの長さLDSが0.6[mm]、搬送速度Vsが50[mm/sec]、撮影周期Tsが1[msec]であるとすれば、LDS=0.6[mm]、α=0.05[mm]であり、LD1≧0.65[mm]となる。また、撮影周期Tsを0.5[msec]とすれば、LDS=0.6[mm]、α=0.025とすることで、LD1≧0.625[mm]となる。
なお、図示例の場合には、第1の計測エリアMR1の搬送方向Fの範囲LD1については、判定対象部分を勘案して、以下の式(2)のように設定してもよい。
LD1≧LDR+α=LDR+Ts×Vs…(2)
【0050】
実際には、搬送物CAの搬送速度には、個体ごとに、場所により、或いは、経時的に、ばらつきが存在するため、搬送物CAの全体若しくは一部が2回以上、好ましくは3回以上の画像データに撮影されるように設定することが望ましい。一般的には、n(nは自然数)回以上の画像データに撮影されるようにするには、
LD1≧LDS+n×α=LDS+n×Ts×Vs…(3)
LD1≧LDR+n×α=LDR+n×Ts×Vs…(4)
が成立するようにLD1を設定する。各実施形態の場合には、nを3~7の範囲になるように設定している。これは、nが小さくなると搬送速度のばらつきによる搬送物CAの撮影漏れが生ずる虞が高くなり、逆にnが大きくなると画像処理の負荷が増大するからである。一般的には、自然数nは1~10の範囲内であることが好ましい。なお、各実施形態では画像処理時間は一般的に150~300μsec程度である。また、撮影間隔Tsは500~840[μsec]程度である。通常、撮像手段による撮影回数は、1000~2000回/秒とすることが好ましい。
【0051】
また、各実施形態の場合には、上述のように搬送物CAが第1の計測エリアME1,MR1に到達することを検知するトリガ信号を用いないので、或る撮影画像GPX又は画像エリアGPYの第1の計測エリアME1,MR1内に搬送物CAやその判定対象部分CAs1~CAs4がそもそも全く配置されていない場合も生じ得る。そこで、搬送物判別処理を行うための第1の計測エリアME1,MR1内の画像計測処理に際しては、搬送物CAの少なくとも判定対象部分CAs1~CAs4の画像が第1の計測エリアME1,MR1内に含まれているか否かを検出する、上述の搬送物特定段階を実施する。そして、この搬送物特定段階で所定の条件で搬送物が検出され、特定されたとき、すなわち、上述の例では、搬送物CAの全体が第1の計測エリアME1,MR1内に含まれているときに、上記搬送物判定段階を実施し、そうでなければ、搬送物判定段階は実施しない。なお、第1の計測エリアME1,MR1内において複数回同じ搬送物CAが検出される場合には、1回(例えば、初回)のみ搬送物判定段階を実施し、他の回では搬送物判定段階を省略してもよい。
【0052】
一方、第2の計測エリアME2,MR2において実施される上記の搬送物通過検出処理では、上記搬送物判別処理と同様の搬送物特定段階を実施し、上記の搬送物判定段階を実施しない。そして、搬送物特定段階において搬送物特定領域WDSが特定されると、搬送物通過検出段階が実施され、第2の計測エリアME2,MR2内において搬送物CAが検出された後に、その搬送物CAが検出されなくなった時点で、当該搬送物CAが処理領域MES,MRSを通過して下流側へ脱出したことが検出されたとして、上記の搬送物通過検出信号を出力する。なお、第2の計測エリアME2,MR2の搬送方向の長さは搬送物CAの長さLDSと同じでもよいが、それ以上、例えば、LDS+n×α(n=1)を越える長さに設定している場合には、搬送物CAの全体が第2の計測エリアME2,MR2内で検出された時点で、搬送物通過検出信号を出力するようにしてもよい。なお、搬送物CAの少なくとも一部が第2の計測エリアME2,MR2から脱したときに搬送物通過検出が行われるとした場合には、第2の計測エリアME2,MR2の搬送方向Fの範囲LD2を、搬送物CAが第2の計測エリアME2,MR2を脱する前に処理領域MES,MRSを脱する値となるように予め設定しておくことが必要となる。
【0053】
<共通構成の一例2>
以上のような搬送物判別処理による各処理領域MES,MRSにおける処理動作は、各実施形態では図示しない空圧機構で構成される搬送物処理手段により行われる。ここで、当該空圧機構は、上記排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRに接続された空圧経路、この空圧経路に対して弁を介して接続される空圧源、当該弁を制御するコントローラにより構成される。搬送物判別処理においては、まず、最初の搬送物CA1がサーチエリアSAE,SAR(第1の計測エリアME1,MR1)内に進入し、その後に、搬送物CA1の全体がサーチエリアSAE,SAR(第1の計測エリアME1,MR1)に入ると、上記搬送物判別処理の搬送物特定段階により搬送物特定領域WDSの位置が特定される。その後に、特定された搬送物特定領域WDSの位置を基準として、上述の各判定エリアを用いた搬送物判定段階が実施される。この搬送物判定段階において搬送物CA1が良品であると判定されれば、先行する不良品が処理領域MES,MRS内に配置されていない限り、処理領域MES,MRSの排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRからの気流が停止される。
【0054】
なお、各実施形態では、処理領域MES,MRSにおける搬送物CAに対する処理動作を実施する状態(排除用噴気口OPS、反転用噴気口OPRから気流が吹き付けられる状態)を常態とし、上記搬送物判定段階において処理領域MES,MRSにおける処理動作を要しない判定結果(図示例では良品)が出たときには気流を停止するように、搬送物処理手段を制御している。ただし、上記搬送物判定段階において、処理領域MES,MRSにおける処理動作を要しない判定結果(図示例では良品)が出たときには気流を発生しないようにし、処理領域MES,MRSにおける処理動作を要する判定結果(図示例では不良品)が出たときに気流を流し始めるように搬送物処理手段を制御してもよい。
【0055】
各実施形態では、搬送物判定段階において搬送物CA1が不良品であると判定されば、排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRからの気流がそのまま継続されるか、或いは、気流が停止された状態にあれば、搬送物CA1が処理領域MES,MRSに入るときなどといった、所定のタイミングで気流が発生される。このとき、排除用噴気口OPSから吹き付けられる気流は搬送物CA1を搬送路121上から排除するように作用し、反転用噴気口OPRから吹き付けられる気流は搬送物CA1を搬送路121上から一時的に浮上させ、回転させた後に、再び搬送路121上に接地させるように作用する。いずれの気流でも、搬送物CA1は、搬送路121から離間する方向若しくは搬送路121の幅方向に沿った方向に移動し、画像データ上では、
図2及び
図3の検出エリアMED,MRD内の図示上方へ向けて移動する。
【0056】
その後、画像が撮影されるたびに搬送物CA1の搬送物特定領域WDSはサーチエリアSAE,SAR内を徐々に移動し、第1の計測エリアME1,MR1から処理領域MES,MRSへ移行する。このとき、搬送物CA1が良品である場合には、排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRから搬送物CA1へ向かう気流は、搬送物CA1(搬送物特定領域WDS)が第1の計測エリアME1,MR1から処理領域MES,MRSへ移行する前に停止される。その後、搬送物CA1は、良品であれば処理領域MES,MRSをそのまま通過し、不良品であれば上述のように気流を受けて搬送路121上から排除されたり、搬送路121の上方で反転されたりする。その後に、良品である搬送物CA1或いは反転後の搬送物CA1(搬送物特定領域WDS)は、処理領域MES,MRSから第2の計測エリアME2,MR2へ移行する。ここで、搬送物CA1(搬送物特定領域WDS)が処理領域MES,MRSから第2の計測エリアME2,MR2へ移行した後には、上記気流を自動的に復帰するようにしてもよく、或いは、次の搬送物CA2が不良品であると判別された際に再開されるようにしてもよい。
【0057】
上記の間に、次の搬送物CA2がサーチエリアSAE,SAR(第1の計測エリアME1,MR1)に入ってくると、上記搬送物CA1と同様に、搬送物CA2の全体がサーチエリアSAE,SAR(第1の計測エリアME1,MR1)に入ったときに搬送物特定段階により搬送物CA2が検出され、その搬送物特定領域WDAの位置が特定される。そして、この搬送物特定段階に引き続いて上記と同様に搬送物判定段階が行われる。この判定結果が不良品であれば、排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRから噴出される気流は停止されず、或いは、再開され、そのまま、搬送物CA2が処理領域MES,MRSに入ると、気流により搬送物CA2は搬送路121上から排除されるか、或いは、反転される。
【0058】
複数の搬送物CAが高密度の配列態様で(すなわち、互いに密着して、或いは、長さLDSの半分以下の小さな間隔で)搬送されてくる場合には、搬送物CA1がサーチエリアSAE,SAR(第1の計測エリアME1,MR1)内に進入し、その後に、搬送物CA1の全体がサーチエリアSAE,SAR(第1の計測エリアME1,MR1)に入ると、搬送物特定段階により搬送物特定領域WDSの位置が特定される。その後に、特定された搬送物特定領域WDSの位置を基準として、上述の各判定エリアを用いた搬送物判定段階が実施される。この搬送物判定段階において搬送物CA1が良品であると判定されれば、先行する不良品が処理領域MES、MRS内に配置されていない限り、排除用噴気口OPSや反転用噴気孔OPRからの気流が停止される。以上は前述の場合と同じである。
【0059】
この場合には、搬送物CA1が処理領域MES,MRSに入る前に次の搬送物CA2が第1の計測エリアME1,MR1に進入する。このとき、第1の計測エリアME1,MR1の範囲LD1を搬送物の長さLDSの2倍未満とすれば、搬送物CA1が処理領域MES,MRSに入った後でなければ、次の搬送物CA2の全体が第1の計測エリアME1,MR1に入って搬送物特定段階により搬送物特定領域WDSが検出され、その位置が特定されることはない。したがって、次の搬送物CA2が検出され、その判定結果が出るときには、先の搬送物CA1は既に処理領域MES,MRS内にあり、そのために排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRからの気流は停止された状態にある。次の搬送物CA2の判定結果が不良品であれば、先の搬送物CA1が処理領域MES,MRSを脱出していないため、まだ気流を復帰させることはできない。気流を復帰させるタイミングは、先の搬送物CA1が処理領域MES,MRSを脱出したとき以降の時点である。すなわち、搬送物通過検出手段により、先の搬送物CA1が処理領域MES,MRSを脱出したことが判明すると、その後、次の搬送物CA2の判定結果に対応して、処理領域MES,MRS内に配置される前に気流の吹付が開始される。このため、当該搬送物CA2は気流によって搬送路121上から排除されるか、或いは、反転される。
【0060】
さらに、その次の搬送物CA3が第1の計測エリアME1,MR1に進入し、上記と同様に搬送物特定領域WDAの位置が特定されると、上記と同様に搬送物判定段階が実施される。このとき、搬送物CA3が良品であれば、搬送物CA3が処理領域MES,MRSに入る前に気流が停止される。ここで、気流は、搬送物判定段階の判定結果が良品でないない限り継続して発生し続けるが、この気流が生じている状態では、気流の停止は対象となる搬送物、すなわち判定結果が良品である搬送物CAが処理領域MES,MRSに入る前に行われる。したがって、第1の計測エリアME1,MR1で搬送物判別処理により良品の搬送物CAが確認されたときに気流の停止を行えばよい。これに対し、気流が停止された状態からの気流の復帰は、気流が停止された原因となる搬送物、すなわち判定結果が良品である搬送物CAが処理領域MES,MRSから脱出した後に行われなければならない。この搬送物CAが処理領域MES,MRSから脱出する時点は上記の搬送物通過検出処理(搬送物通過検出信号)によって判明するので、当該検出若しくは信号によって気流が復帰されるように設定すればよい。
【0061】
<共通構成の一例3>
なお、
図1に示す画像表示装置DP1、DP2などにおいて、適宜に形成される画像表示欄では、上記画像エリアGPY内の画像データを表示するとともに、上記のサーチエリアSAE,SAR、又は、第1の計測エリアME1,MR1、第2の計測エリアME2,MR2、処理領域MES,MRSなどの各エリア若しくは領域を枠線等によって表示することができる。ここで、上記に加えて、或いは、上記とは別に、搬送物判別処理の搬送物特定段階による搬送物特定領域WDS、搬送物判定段階に用いる判定エリアGWA、GWB、反転用噴気口OPRを制御するための搬送物判定段階に用いる判定エリアGV1、GV2の少なくとも一つを、枠線等によって表示することができる。これらの場合には、各枠線等の表示の色や線種などの区別可能な表示態様で、判定結果が識別できるように構成してもよい。例えば、搬送物判定段階でOK判定(判別態様が良品)となった場合には、その枠線等を第1表示態様(例えば緑色表示)にする。また、搬送物判定段階でNG判定(判別態様が不良品)となった場合には、その枠線等を第2表示態様(例えば赤色表示)とする。なお、各表示態様は上記例の色彩に限らず、実線、点線、破線、一点鎖線などの線種、太さであってもよいなど、相互に区別できる態様であれば特に限定されない。
【0062】
各実施形態では、振動式の搬送装置10により、振動する搬送路121上を搬送されていく搬送物CAを検査対象とする一方で、カメラCM1,CM2は振動しない場所(基台100上)に設置されているため、撮影画像GPX又は画像エリアGPYの画像データにおいて、搬送方向Fの前後に往復する態様で所定の振幅で振動する搬送路121は、当該画像データの撮影時の振動位相の変化に応じて、変位した位置に配置される。したがって、搬送物CAの外観を、搬送路121を基準とする固定された位置で検出、判定しようとすると、画像内のサーチエリアSAE,SARや各計測エリアME1,MR1,ME2,MR2の位置を、撮影タイミングに合わせて搬送体120の振動と同期して同振幅で移動させる必要がある。例えば、搬送体120には、振幅が0.1mm、振動周波数が300Hzといった振動が与えられている。
【0063】
このため、各実施形態では、サーチエリアSAE,SARや各計測エリアME1,MR1,ME2,MR2の位置を、撮影画像GPX又は画像エリアGPYの撮影時点における搬送体120の振動位置に合わせるために、搬送体120に設定された位置補正用マーク122a,122bを基準として補正することができる。この位置補正用マーク122a,122bは位置検出が容易かつ確実なものであれば特に限定されないが、画像中で確実にブロブとして認識でき、かつ、その重心位置を安定して検出できる単色(同一グレースケール)のマークとすることで、その位置の検出精度を高めることができる。なお、位置補正用マークは、意図的に設けたものではなく、搬送装置に本来的に存在し、画像処理によって検出可能な部分、例えば、搬送体120に形成された稜線や角部、ボルトヘッド、噴気口などであってもよい。ただし、搬送物CAによって隠れない場所にあるものが好ましい。
【0064】
各実施形態においては、上記の位置補正のため、搬送路121に対するサーチエリアSAE,SARや各計測エリアME1,MR1,ME2,MR2の位置は、撮影時の振動の位相タイミングとは無関係に、常に搬送路121に対して同じ位置となる。したがって、例えば、不良姿勢の搬送物CAを排除するための排除エアを排除用噴気口OPSから吹き付ける位置、或いは、不良姿勢の搬送物CAの姿勢を修正するための反転エアを反転用噴気口OPRから吹き付ける位置に対して、各計測エリアME1,MR1,ME2,MR2が常に一定の位置関係となるように設定されるため、搬送物判定処理の結果に応じて搬送物CAに対する処理力である排除力や反転力を作用させる場合に、常に近似したタイミングで作用を生じさせることができる。
【0065】
<実施形態の共通構成>
各実施形態では、上記サーチエリアSAE,SARの内部に、上記処理領域MES,MRSを含む検出エリアMED,MRDが設定される。そして、上記動作プログラムにより実行される搬送挙動検出処理により、この検出エリアMED,MRDの画像データに基づいて、搬送物CAの搬送路121から離れる方向若しくは搬送路121の幅方向に沿った方向の位置、並びに、搬送物CAの角度姿勢を検出する。なお、各実施形態では、上記検出エリアは処理領域MES,MRSを含むように設定されるが、本発明においては、上記検出エリアは、搬送路121上の搬送物CAが通過する範囲であれば任意の場所に設定することができる。例えば、後述する第7実施形態の検出エリアは、処理領域MES,MRSを含まない場所に設定されている。ここで、検出エリアMED,MRDの範囲は、搬送物CAの上記方向の位置及び角度姿勢を検出可能な範囲であれば特に限定されない。しかし、一つの搬送物CAの上記方向の挙動を示す指標を精度よく高速に求めることができるようにするためには、一般的には、検出エリアの搬送方向Fの範囲LRD,LEDは、検出すべき一つの搬送物CAの全体を包含可能な範囲であることが好ましく、また、上記挙動を確実に捉えるためには、搬送物CAの搬送方向Fの長さの2倍程度、例えば、1.5-2.5倍の範囲内であることが望ましい。一方、検出エリアの搬送路から離れる方向若しくは搬送路の幅方向に沿った方向の範囲は、上記挙動を確実に捉えるためには、同方向の搬送物の寸法の2.0-5.0倍の範囲内であることが好ましく、3.0-4.0倍の範囲内であることが望ましい。
【0066】
本発明に係る各実施形態において搬送挙動検出手段を構成する搬送挙動検出処理は、第1の計測エリアME1,MR1において搬送物CAが特定されてなる搬送物特定領域WDSが検出され、その検出された搬送物特定領域WDSが検出エリアMED,MRD内に移行したとき、搬送物特定領域WDSの搬送路121から離れる方向若しくは搬送路121の幅方向に沿った方向の位置、及び、搬送物特定領域WDSの角度姿勢を求める。この位置及び角度姿勢は、搬送物CAが搬送路121上から浮上することによって離間したり、搬送路121上から幅方向に移動したりしたときの、搬送物CAの搬送方向以外の方向の挙動を示す指標である。通常は、前述のように、搬送路121上において搬送物CAが搬送方向Fに沿って移動する際の挙動を検出し、この搬送方向Fの挙動に応じて搬送物判別処理や搬送物通過検出処理を実行する。しかし、各実施形態では、搬送方向F以外の方向の挙動を検出し、その検出結果に応じて搬送態様調整手段を構成する搬送態様調整処理により搬送態様を調整するようにしている。このように従来では検出されていなかった挙動に基づいて搬送態様を調整することにより、搬送物処理手段(空圧処理)による搬送物CAに対する処理精度を高めたり、搬送物CAの搬送態様を好適化して搬送速度や搬送密度の向上を図ったりすることができる。
【0067】
各実施形態では、搬送物CAの種類、寸法、良品姿勢、基準画像データ、搬送挙動検出処理の明度の閾値などの各種の設定値、搬送物判定処理の明度の閾値などの各種の設定値、などといった、搬送物CAの検出及び判定に用いられる各種のデータが主記憶装置MMなどに記憶され、各処理にあたっては適宜に読み出されて使用される。また、カメラCM1,CM2の撮影タイミングを定めるための設定値、撮影画像GPX又は画像エリアGPYを取り込む際の画像取込条件の設定値、搬送路121の振動による各設定エリアの位置補正の態様を定める設定値、各種の設定画面や表示画面の態様を定める設定値、反転位置や選別位置における制御の態様、例えば、気流の吹き付けタイミングや圧力値などの設定値、などについても同様に取り扱われる。
【0068】
各実施形態では、上記主記憶装置MM内に保存されている過去の撮影画像GPX又は画像エリアGPYを時系列にて連続して格納した画像ファイルを選択して読み出し、表示させることができる。そして、選択された画像ファイルに対する各種の操作処理を実行するための手段も用意される。なお、各実施形態においては、カメラ(撮像手段)CM1,CM2の撮影方向や撮影範囲は、上記挙動を検出可能となるように設定される。ただし、撮影角などはある程度自由度があり、この搬送挙動検出処理とともに、上記搬送物判別処理などにも好適に対応可能な態様に設定されることが望ましい。
【0069】
主記憶装置MM内に保存される画像ファイルは、運転モードにおいて取り込まれる複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYの画像データを、演算処理装置MPUにより自動的に記録したものである。この画像ファイルの保存は、主記憶装置MMに空き容量が存在する場合には全ての画像データについて実施することができるが、主記憶装置MMに空き容量が存在しない場合でも、最新の既定期間分(例えば1時間分など)、或いは、最新の既定枚数分(例えば1000枚分など)の画像ファイルについては常に保存されるようにしておくことが好ましい。
【0070】
上記のように過去に記録した撮影画像GPX又は画像エリアGPYを表示した状態で、この画像データに対して、適宜の操作により、上記搬送物判別処理及び上記搬送挙動検出処理からなる画像計測処理を再度実行することができる。表示態様の制御機能の一つとして、同一ファイル内に格納された複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYについては、適宜の操作により、前後に撮影された他の画像データに一つずつ切り替えることができる。また、同一画像ファイル内の複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYを連続して表示しつつ、並行して、表示された画像データに対する画像計測処理を実行させることもできる。
【0071】
<第1実施形態>
次に、本発明に係る第1実施形態の構成について説明する。
図4は、第1実施形態の搬送管理システム及びこれを備えた搬送装置10における搬送挙動検出処理及び搬送態様調整処理の状況を示す説明図(a)-(g)である。ここで、
図4では、搬送物CAの外観の詳細は省略している。なお、この実施形態では、
図3のサーチエリアSARに設定された検出エリアMRD内の画像データに基づいて行われる搬送態様調整処理の例を示す。
図4(a)は、搬送物CA1が第1の計測エリアMR1内に配置されたとき、搬送物特定領域WDSが特定された時点の様子を示す。その後、しばらくして、
図4(b)に示すように、搬送物CA1は検出エリアMRD内に進入し、さらに、しばらくすると、
図4(c)に示すように、搬送物CA1の全体が検出エリアMRD内に配置される。なお、本実施形態では、
図4(a)から(b)までの間、並びに、
図4(b)から(c)までの間において、それぞれ、複数の撮影画像GPX(画像エリアGPY)が取得されているが、それらを省略して表わしている。
【0072】
次に、
図4(c)から(g)までについては、それぞれ、取得された全ての撮影画像GPX(画像エリアGPY)に対応する画像データを示すようにしている。すなわち、
図4(c)では、搬送物CA1の全体が検出エリアMRS内に配置された状態の画像データが得られたことが示される。そして、この時点では既に搬送物CA1には搬送物処理手段の空圧により反転用噴出口OPRから気流が吹き付けられ、それにより、搬送物CA1は搬送路121から離間し始め、図示上方に僅かに浮上している。搬送物CA1はこの時点で既に僅かではあるものの搬送方向Fの軸線周りに回転し始めている。その次の画像データでは、
図4(d)に示すように、搬送物CA1はさらに図示上方へ浮上し、さらに回転している。その後、
図4(e)に進むと搬送物CA1はさらに回転しながら、その高さは最大となる。また、
図4(f)に進むと、搬送物CA1は回転続けるものの、その高さは低下する。さらに、
図4(g)では、搬送物CA1は、さらに回転しながらも、搬送路121上に再び接地する寸前まで高さは低下している。
【0073】
搬送挙動検出処理では、
図4に示す検出エリアMRD内の画像データから、搬送物特定領域WDSの重心、中心などの特定の位置情報を算出し、この位置情報の搬送路121上を基準とした画像上の高さ位置を上記指標となる搬送路121から離間する方向の位置PCAとして求める。より具体的に述べれば、例えば、検出エリアMRD内の画像データを二値化し、搬送物CA1の画像データ部分をブロブとして抽出することによって上記搬送物特定領域WDSを特定し、この搬送物特定領域WDSの重心や中心などの上記の位置情報を求める。そして、搬送路121の表面と、当該位置情報との間の上下方向の距離を搬送路121から離れる方向の上記位置PCAとして導出する。図示例では、
図4(c)-(g)のそれぞれにおいて上記位置PCAが算出される。なお、図示例では、搬送路121から離れる方向の位置を求めるが、搬送路121からの排除処理が行われる場所や搬送路121から他の搬送路へ分配される場所などでは、搬送路121の幅方向に沿った方向の位置を求めるようにすることが好ましい。
【0074】
図5(a)-(g)には、反転用噴気口OPRから吹き付けられる気流のブロー圧力を増減させたときの
図4(a)-(g)にそれぞれ示す撮影タイミングにおける検出エリアMRD内の画像データの例をそれぞれ示す。
図5を参照すると、ブロー圧力が小さい場合には上記位置PCAの最大値が小さく、搬送物CA1の回転速度も遅いが、ブロー圧力が大きくなるに従って上記位置PCAの最大値と回転速度が大きくなっていくことがわかる。このため、ブロー圧力が適正な範囲よりも小さい場合には、搬送物CA1の反転が不十分になり、反転不良となる虞があり、ブロー圧力が適正な範囲より大きい場合には、搬送物CA1が過剰に回転し、やはり反転不良になる虞がある。
【0075】
そこで、本発明の各実施形態では、搬送態様調整手段として、搬送物CAに対する処理力である、反転用噴気口OPRから搬送物CAに吹き付けられる気流の強さを、空圧機構のブロー圧力の制御によって調整できるように構成している。このブロー圧力の制御は、上記のように検出された搬送物CAの位置PCAの値に応じて、上記動作プログラムの実行により行われる前述の搬送態様調整処理により行われる。本実施形態では、搬送態様調整処理として、順次撮影されていく複数の撮影画像GPXの画像エリアGPYに含まれる検出エリアMED,MRD内の画像データに基づいて上記位置PCAの値をそれぞれ求め、各位置PCAの値から、当該値のばらつきの程度を示す統計値を算出する。この統計値は、ばらつきを示すものであれば特に限定されないが、例えば、標準偏差σや分散σ2、あるいは、これらとばらつきの程度に対して実質的に同等の相関を備えるものであることが好ましい。
【0076】
前述のように、上記位置PCAの値は、各搬送物CAごとに、複数の画像データにおいて上記方向の挙動に応じて増減するため、いずれの位置PCAの値を用いるかによって搬送態様の調整結果が異なるものとなってしまう。本実施形態では、各搬送物CAごとに検出エリアMED,MRD内の複数の画像データが与えられることを利用し、複数の画像データにより得られる複数の位置PCAの統計値を求めることによって、各搬送物CAごとの上記方向の挙動の大小を客観的に把握できるようにしている。特に、複数の搬送物CAにわたって上記位置PCAの統計値を求めることにより、統計に用いる上記位置PCAの数をさらに増大させることができるため、搬送物CAが基本的に相互に同等の物理的形態を備えていれば、搬送物処理手段により搬送物CAに与えられる処理力をさらに正確に把握できる。
【0077】
なお、以上の点は、処理領域MRSに対応する検出エリアMRDについて説明してきたが、処理領域MESに対する検出エリアMEDについても、搬送物CAの画像データの態様は異なるものの、搬送態様調整手段としてほぼ同様に構成し、処理することができる。ただし、検出エリアMEDでは、不良と判定された搬送物CAが処理領域MESにおいて搬送路121上から排除されるため、排除不良は処理力が不足している場合にのみ生ずる。しかし、処理力が過剰の場合には、搬送物CAの搬送路121上からの排除自体は可能であるものの、過剰な空圧によって排除された搬送物CAが損傷を受ける恐れがあるため、やはり、上記の統計値が増大したときには、当該統計値を小さくするように調整する必要がある。
【0078】
搬送態様調整処理において、上記統計値の算出期間や算出頻度は適宜に設定することができる。各実施形態では、後述する方法により、上記動作プログラムによって、定期的に、若しくは、自動的に、或いは、所定の操作に応じて、統計値の算出と、この統計値に応じた搬送態様の調整処理を行う。実際に
図2及び
図3に示す搬送物CAを搬送装置10において搬送速度1000個/分で搬送させ、2044回の撮影画像GPXにおいて検出エリアMRDで上記位置PCAをそれぞれ求めた。この場合において、ブロー圧力が低いときには、統計値(標準偏差σ)=3.834となり、搬送物CAの回転不足による反転不良がたびたび発生した。また、ブロー圧力が高いときには、統計値(標準偏差σ)=8.154となり、搬送物CAの回転過多による反転不良がたびたび発生した。このため、上記統計値が4.5以上6.0以下の範囲内となるようにブロー圧力を制御した結果、反転不良が発生しなくなるようにブロー圧力を調整することができた。このとき、調整後の測定により確認したところ、上記統計値=5.628であった。
【0079】
<第2実施形態>
次に、
図6を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、検出エリアMED,MRDの形状以外は、上記第1実施形態と同様であるので、同様の部分についての説明は省略する。
【0080】
第2実施形態の検出エリアMED,MRDは、搬送路121上に配置された搬送物CAの接触面(底面)の側(図示下側)の境界線MEDa,MRDaの位置が、上記搬送物CAの同側の縁部よりも、反対側(図示上方)にずれて配置されている点で、第1実施形態とは異なる。このようにすると、第1実施形態と同様に、検出エリアMED,MRD内に搬送物特定領域WDSの全体が包含されたときにのみ、当該搬送物特定領域WDSに対応する搬送物CAの上記方向の位置PCAを求めるようにすると、搬送路121上に接地されている状態の搬送物CAの位置PCAの値を、搬送挙動検出処理及び搬送態様調整処理から除外することができるので、搬送物処理手段によって処理される搬送物CAの挙動のみを検出し、これに応じて搬送態様(処理態様)を調整することができる。
【0081】
ここで、搬送路121上に接地している搬送物CAのみでなく、搬送物処理手段の処理力を受けていない全ての搬送物CA、すなわち、搬送装置10の振動に起因して僅かに搬送路121から浮上している搬送物CAをも搬送物調整処理の処理対象から除外するために、上記境界線MEDa,MRDaの位置を上記よりも図示上方へ適宜に設定することが好ましい。上記境界線MEDa,MRDaの位置は、上記複数の撮影画像GPXや画像エリアGPYを観察しながら手動で設定してもよく、或いは、上述の搬送物判別処理の搬送物判定段階において良品と判定された搬送物CAの検査エリアMED,MRDを通過する際の上記方向の位置の分布に基づいて、処理プログラムによって自動的に設定するように構成してもよい。ちなみに、本実施形態では、搬送路121上に接地する寸前の
図6(g)に示す検出エリアMRD内の搬送物CAが搬送態様調整処理の対象から除外される。このようにすると、良品と判定された搬送物CAの位置PCAを求めないようにすることができるので、上記統計値のブロー圧力との相関性を高めることができることから、搬送物処理手段により処理された搬送物CAの挙動のみを正確に把握する上で有効である。
【0082】
<第3実施形態>
次に、
図7を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、基本的に上記統計値を用いない点を除き、上記第1実施形態又は第2実施形態と同様に構成できるので、同様に構成できる部分についての説明は省略する。なお、
図7では、検出エリアMRDの範囲を第2実施形態と同様に図示している。
【0083】
第3実施形態では、検出エリアMED,MRD内の複数の画像データからそれぞれ位置PCAを求める点は上記第1実施形態又は第2実施形態と同様であるが、この位置PCAから上記統計値を求めるのではなく、個々の搬送物CAごとに特定の検出値を求める点で、上記第1実施形態又は第2実施形態とは異なる。すなわち、本実施形態では、上記検出値として、検出エリアMED,MRD内において最初に搬送物特定領域WDSが特定された画像データ(
図7(c))から求めた、或る搬送物CAの位置PCA(図示例では重心G1の位置)と、同じ搬送物CAの次の画像データ(
図7(d))から求めた搬送物CAの位置PCA(図示例では重心G2の位置)との差Δv1を算出する。この検出値Δv1を用いることで、当該搬送物CAの上記方向の挙動の概要を把握できるとともに、複数の搬送物CAの上記検出値Δv1に関し、別の統計値として、それらの平均値や中央値などの代表値を求めることによって、より正確な搬送物CAの上記方向の挙動を把握することができる。
【0084】
上記検出値としては、Δv1に限定されるものではなく、例えば、或る搬送物CAの位置PCAの最大値(
図7(e)に示す重心Gp)と、同じ搬送物CAの最初の画像データ(
図7(c))から求めた搬送物CAの位置PCA(図示例では重心G1の位置)との差Δv2を用いてもよい。このように、或る規則に従って搬送物CAごとに位置PCAの差分を検出値とすることにより、当該搬送物CAの上記方向の挙動により対応した結果を取得することができる。
【0085】
なお、
図7(g)に示すように、上記各実施形態とは異なり、搬送物CAごとに複数の位置PCAのうちの最大値(重心Gpの位置)に対応する値、図示例では、重心Gpの位置と検出エリアMRDの境界線MRDaの位置との差Δv3を検出値として用いるようにしてもよい。また、第1実施形態で示した統計値を搬送物CAごとに求め、この搬送物CAごとの当該統計値から、複数の搬送物CAについての複数の当該統計値の平均値や中央値などの代表値を求め、これを検出値としてもよい。
【0086】
<第4実施形態>
次に、
図8を参照して本発明に係る第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、
図8(a)-(c)に示すように、搬送物処理手段により処理されたときの搬送物CAの挙動が種々の状態を採ることがあることから、検出エリアMED,MRD内に検出された搬送物特定領域WDS(ブロブ)から、上記位置PCAに加えて、或いは、上記位置PCAの代わりに、搬送物CAの搬送面121a,121bに対する角度姿勢を求めるようにしている。この角度姿勢は、
図8(d)に示す搬送物特定領域WDSの主軸角θによって表わされる。ここで、主軸角θは、搬送物特定領域WDSに内接する楕円の長軸の方向により導出される。
【0087】
本実施形態では、第1-第3実施形態とは異なり、上記搬送物判定段階において、処理領域MES,MRSにおける処理動作を要しない判定結果(図示例では良品)が出たときには気流を発生しないようにし、処理領域MES,MRSにおける処理動作を要する判定結果(図示例では不良品)が出たときに気流を流し始めるように搬送物処理手段(空圧機構)を制御するようにしている。このとき、搬送物処理手段(空圧機構)による処理動作の開始は、搬送物判定段階の判定結果が出た時点を基準としてもよく、或いは、第1の計測エリアME1,MR1内で搬送物特定領域WDS(搬送物CA)が処理領域MES、MRSに入った時点(第1の計測エリアME1,MR1内から脱出した時点)を基準としてもよい。すなわち、搬送物処理手段(空圧機構)の処理動作が、判定結果が出た時点(処理動作の要否の判定時点)以降の、搬送物CAが処理領域MES,MRSに入った時点などを基準として開始される。なお、その他の構成については、本実施形態は、上記第1~第3実施形態と同様に構成できる。
【0088】
本実施形態において、搬送物CAの搬送路121の搬送面121a,121bに対する角度姿勢は、搬送物CAに対する排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRからの気流の吹付開始タイミングが早すぎると、
図8(a)に示すように搬送体CAの搬送方向前部が図示上方に配置され、搬送方向後部が図示下方に配置される態様で傾斜姿勢となる。このときの上記主軸角θは正の値を示す。逆に、搬送物CAに対する排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRからの気流の吹付開始タイミングが遅すぎると、
図8(c)に示すように搬送体CAの搬送方向前部が図示下方に配置され、搬送方向後部が図示上方に配置される態様で逆の傾斜姿勢となる。このときの上記主軸角θは負の値を示す。搬送物CAに対する排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRからの気流の吹付開始タイミングが適正であれば、
図8(b)に示すように搬送物CAは搬送路121上でほぼ水平に配置され、上記主軸角θも小さな値となる。上記傾斜姿勢が大きくなると、前後の搬送物に影響を与えたり、損傷を受けやすくなったり、反転不良が生じたりする。
【0089】
本実施形態においては、搬送態様調整処理により、搬送物CAの角度姿勢を示す上記主軸角θの大小に応じて、図示しない空圧機構の弁(例えば、電磁弁)に対する駆動信号DSを、
図8(e)-(g)のように調整する。例えば、
図8(a)に示すように気流の吹付開始タイミングが早すぎる場合には、
図8(e)に示すように、弁を開放するための駆動信号のタイミングを、二点鎖線で示す標準の駆動信号のタイミングよりも主軸角θの大きさに応じた所定時間Δtaだけ早める。また、
図8(c)に示すように気流の吹付開始タイミングが遅すぎる場合には、
図8(g)に示すように、弁を開放するための駆動信号DSのタイミングを、二点鎖線で示す標準の駆動信号のタイミングよりも主軸角θの大きさに応じた所定時間Δtbだけ遅らせる。さらに、
図8(b)に示すように気流の吹付開始タイミングが適正である場合には、
図8(g)に示すように、弁を開放するための駆動信号DSのタイミングをそのまま維持する。なお、
図8(e)に示すように駆動信号DSのタイミングを早めることができるようにするためには、予め、標準の搬送物処理手段の処理動作の開始時点を、搬送物処理手段の処理動作の要否の判定時点よりも所定時間Δtだけ遅らせておくとともに、この遅延時間Δtだけ処理動作を遅らせても支障が生じないように、第1の計測エリアME1,MR1と処理領域MES,MRSの位置関係を予め設定しておく必要がある。すなわち、本実施形態では、処理動作の要否の判定時点と処理動作の開始時点との間に上記遅延時間Δtを予め設定しておき、この遅延時間Δtを増減して上記開始時点を調整する。これにより、Δta≦Δtの範囲で、駆動信号DSのタイミングを早めることができる。
【0090】
本実施形態では、搬送物CAの角度姿勢は、搬送物CAごとに複数の画像データがあってもほとんど変化しにくいので、複数の主軸角θをそれぞれ検出値とし、統計値として、これらの検出値の平均値や中央値などの代表値を求めることによって、その値を所定の閾値、例えば、上記主軸角θであれば正の閾値と負の閾値と比較し、それぞれが各閾値よりも大きな絶対値を備える場合に処理開始タイミングを調整すればよい。ここで、角度姿勢の場合には、第1実施形態のようにばらつきの程度を示す統計値ではなく、角度姿勢の傾向を示す統計値である代表値を求めている。
【0091】
実際に、搬送装置10において2044回の搬送挙動検出処理を実施し、検出エリアMRDにおいて、吹付開始タイミングが早すぎる場合について主軸角θの平均値を求めたところ14.971度となった。また、吹付開始タイミングが遅すぎる場合について上記と同じ回数の処理で主軸角θの平均値は-7.381度となった。このため、主軸角θの平均値が7度以下で-4度以上となる範囲を適正とし、主軸角θの正の閾値を7度、負の閾値を-4度とし、正の閾値を越えたとき、負の閾値を下回ったときには、それぞれ、吹付開始タイミングを主軸角θの値と上記閾値との差に応じて調整するように設定した。これにより、搬送物の傾斜姿勢が抑制され、各種の問題も解消された。そして、このように吹付開始タイミングを適正に調整した後に、上記と同じ回数の処理で主軸角θの平均値を求めたところ4.193度となった。
【0092】
<第5実施形態>
次に、
図9を参照して本発明に係る第5実施形態について説明する。この第5実施形態は、上記第4実施形態と同様に、検出エリアMED,MRD内の画像データに基づいて搬送物CAの搬送面121a,121bに対する角度姿勢を検出する。ただし、第4実施形態と異なる点は、上記主軸角θを求めないケース、或いは、上記主軸角θの値を上記統計値に参入しないケースを定めたことにある。本実施形態では、角度姿勢の統計値として、上記主軸角θの代表値を求めるようにした点は第4実施形態と同様であるが、ここでは、上記統計値を、搬送物処理手段による処理を受けていない物を除外して算出している。このようにするためには、上記第2実施形態と同様に、検出エリアMED,MRDの境界線MEDa,MRDaを設定し、搬送路121上に接地した搬送物CAや搬送路121上から浮上した高さが所定値以下にとどまる搬送物CAが検出エリアMED,MRD内において搬送物特定領域WDSとして特定されないようにしている。
【0093】
<第6実施形態>
次に、
図10を参照して本発明に係る第6実施形態について説明する。この第6実施形態では、搬送態様調整手段による搬送態様調整処理の吹付タイミングの調整方法が第4実施形態及び第5実施形態と異なるが、他の構成は第4実施形態及び第5実施形態と同様に構成できるので、同様に構成できる部分の説明は省略する。
【0094】
本実施形態では、第1乃至第4実施形態とは異なり、上記搬送物判定段階において、処理領域MES,MRSにおける処理動作を要しない判定結果(図示例では良品)が出たときには気流を発生しないようにし、処理領域MES,MRSにおける処理動作を要する判定結果(図示例では不良品)が出たときに気流を流し始めるように搬送物処理手段(空圧機構)を制御するようにしている。このとき、搬送物処理手段(空圧機構)による処理動作の開始は、搬送物判定段階の判定結果が出た処理動作の要否の判定時点を基準としてもよく、或いは、上記判定時点以降の、第1の計測エリアME1,MR1内で搬送物特定領域WDS(搬送物CA)が処理領域MES、MRSに入った時点(第1の計測エリアME1,MR1内から脱出した時点)を基準としてもよい。すなわち、搬送物処理手段(空圧機構)の処理動作が、判定結果が出た時点、或いは、搬送物CAが処理領域MES,MRSに入った時点などを基準として開始される。
【0095】
本実施形態では、第5実施形態のように搬送物処理手段(空圧機構)による処理動作の開始時点を駆動信号の時間調整により変更するのではなく、搬送物判別処理の計測エリア自体を変更することによって結果的に上記開始時点を変更するようにしている。例えば、上記開始時点が上記判定時点と連動している場合には、その判定時点は、排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRに対して相対的に第1の計測エリアME1,MR1を搬送方向Fの前後に移動させることによって、相対的に変更することができる。したがって、第1の計測エリアME1,MR1の移動により上記判定時点が変更されれば、これと連動する上記開始時点も変更することができる。
【0096】
例えば、
図10(a)に示すように処理動作が早すぎる場合には、
図10(b)に示すように、第1の計測エリアME1,MR1を搬送方向Fの下流側へ移動させると、搬送物特定領域WDSが検出される画像データ上の位置が、検出エリアMED,MRDに対してΔLだけ搬送方向Fに移動するので、このΔLの分だけ、上記判定時点が時間的に遅れることとなる。したがって、処理動作の開始時点もその分遅れるので、吹付開始タイミングを適正に調整することができる。また、
図10(c)に示すように処理動作が遅すぎる場合には、
図10(d)に示すように、第1の計測エリアME1,MR1を搬送方向Fの上流側へ移動させると、搬送物特定領域WDSが検出される画像データ上の位置が、検出エリアMED,MRDに対してΔLだけ搬送方向Fとは逆側に移動するので、このΔLの分だけ、上記判定時点が時間的に早まることとなる。したがって、処理動作の開始時点もその分早まるので、吹付開始タイミングを適正に調整することができる。
【0097】
一方、第1の計測エリアME1,MR1内で特定された搬送物特定領域WDSの一部が処理領域MES,MRSに進入した時点を上記開始時点とする場合には、第1の計測エリアME1,MR1と処理領域MES,MRSとの境界位置を排除用噴気口OPSや反転用噴気口OPRに対して相対的に搬送方向Fの前後に移動させればよい。ここで、当該境界位置の移動は、第1の計測エリアME1,MR1をそのままの範囲で搬送方向Fの前後に移動させることによっても生じさせることができる。このようにしても、上記境界位置の移動によって上記開始時点を相対的に早くしたり遅くしたりすることができる。
【0098】
<第7実施形態>
次に、
図11を参照して本発明に係る第7実施形態について説明する。本実施形態では、搬送物処理手段の噴気口OPS,OPRを備えた処理領域MES,MRSを含む検出エリアMED,MRDとは異なり、搬送物処理手段による処理動作が行われない領域(通常の搬送領域)において検出エリアMFDを設定している点で、前述の各実施形態とは異なる。この検出エリアMFDは、上記第2実施形態の検出エリアMED,MRDと同様に、搬送路121上に配置された搬送物CAの接触面(底面)の側(図示下側)の境界線MFDaの位置が、上記搬送物CAの同側の縁部よりも、反対側(図示上方)にずれて配置されている。そして、これにより、搬送路121上に接地している搬送路CAは、検出エリアMFD内では検出されず、加振機構により生ずる搬送体120の振動により搬送路121上から浮上している搬送物CAのみを検出することができるように構成される。
【0099】
ここで、上記境界線MFDaの上記位置(高さ)は、本実施形態において検出対象となる搬送体120の振動に起因する搬送物CAの搬送時の標準的な浮上量を勘案し、上記振動に起因する搬送物CAの搬送路121から離れる方向若しくは搬送路121の幅方向に沿った方向の挙動を把握する上で好適な値とすることが好ましい。例えば、上記標準的な浮上量との関係で、境界線MFDaの位置(高さ)、すなわち、境界線MFDaと搬送路121上に接地した搬送物CAの接触面との間の距離を、例えば、搬送物CAの搬送物CAの搬送路121から離れる方向若しくは搬送路121の幅方向に沿った方向の寸法の1/5から2/3の範囲とすることが好ましく、1/4から1/2の範囲とすることが望ましい。
【0100】
本実施形態では、搬送挙動検出手段は、その搬送挙動検出処理により、搬送路121から浮上することにより検出エリアMFD内に全体が配置されることで検出された搬送物CAについて、上述の搬送路121から離れる方向若しくは搬送路121の幅方向に沿った方向の位置PCA、並びに、搬送面121a,121bに対する角度姿勢(主軸角θ)を求める。上記位置PCA及び主軸角θを求めることにより、搬送物CAの搬送状態を把握することができる。上記位置PCAが大きすぎると、上下動が大きすぎ、搬送効率が低下していたり、搬送物CAが損傷しやすくなるなどの問題が生ずる。上記位置PCAが小さすぎると、搬送速度の低下の原因となっていることが考えられる。また、主軸角θが大きすぎると、搬送姿勢の乱れが大きいために搬送効率が悪かったり、姿勢変化による整列不良などが発生しやすくなる。また、これらのような搬送状態の傾向を掴むために、例えば、代表値などのような、数値の大小を把握するための統計値や、標準偏差や分散などのような、ばらつきの大小を把握するための統計値を求めることもできる。例えば、上記位置PCAや主軸角θのばらつきが大きいことは、搬送物CAの搬送方向以外の方向への挙動が大きいか、或いは、均等に搬送されていないことを意味することから、いずれにしても、効率的な搬送状態ではないことを示していると考えられる。
【0101】
上述のような搬送物CAの上記方向の挙動を把握することにより、搬送物CAの搬送路121上における搬送状態に応じた搬送態様の好適化を図ることができる。例えば、搬送物CAの上下動や傾きが大きすぎたり、ばらついていたりすれば、加振機構の駆動周波数や振幅の変更、加振方向(角度)、加振エネルギー(電圧)の変更などを行うことによって、搬送状態を好適化することができる。
【0102】
<動作プログラムの構成>
次に、
図12を参照して、本発明に係る各実施形態の全体の動作プログラムの流れについて説明する。
図12は、上記検査処理ユニットDTUの演算処理装置MPUにより、動作プログラムに従って実行される処理の概略フローチャートである。この動作プログラムを起動すると、まず、上記の画像撮影及び画像計測処理が開始されるとともに、コントローラCL11、CL12により搬送装置10(パーツフィーダ11及びリニアフィーダ12)の駆動が開始される。そして、前述のデバッグ操作に応じたデバッグ設定がOFFであれば、撮影画像GPX又は画像エリアGPYに対して画像計測処理が実行され、搬送物判別処理の最終の判定結果がOK判定であれば、デバッグ操作が行われない限り、そのまま次の撮影画像GPX又は画像エリアGPYの画像計測処理が実施される。例えば、選別位置では、常時は排除用噴気口OPSから気流が流れているが、判定結果がOK(良品)であれば、排除用噴気口OPSの気流を停止し、全ての良品が処理領域MESを通過した後に気流を復帰させる。これにより、不良の搬送物CAを搬送路121上から排除する。また、反転位置では、常時は反転用噴気口OPRからの気流は停止されているが、判定結果がNG(不良品)であれば、反転用噴気口OPRから気流を噴出させて搬送路121上で反転させる。なお、反転位置においても、
図7に示す構成を採用することにより、反転用噴気口OPRから気流が常時流れるようにし、良品が検出されたときにのみ気流を停止するようにしてもよい。
【0103】
このようにして、搬送路121上で搬送物CAが判別され、その判別結果に応じて処理されることにより、下流側へは良品のみが整列した状態で供給されていく。この場合にも、その後、デバッグ操作が行われない限り、そのまま次の撮影画像GPX又は画像エリアGPYの判定が実施される。また、上記の判別や処理と並行して、搬送物CAに対する搬送挙動検出処理が行われ、その検出結果により搬送態様の調整が必要となった場合、例えば、上記位置若しくは上記角度姿勢の値、或いは、複数の上記位置若しくは上記角度姿勢の統計値が所定の閾値を越えた場合等には、当該値や統計値に応じて、加振機構の加振要素の少なくとも一部や上記搬送物処理手段の処理要素の少なくとも一部を制御、変更し、最終的に搬送体による搬送物の搬送態様の調整を実施する。
【0104】
上記の途中でデバッグ操作が行われ、デバッグ設定がONになると、上記ルーティンから抜け出して、搬送装置10の駆動が停止され、画像計測処理も停止される。そして、この状態において適宜の操作を行うと、前述のように画像ファイルを選択可能な状態となる。このとき、選択表示される画像ファイルは、直前の運転モードにおいて記録していた複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYを含む画像ファイルである。これをそのまま選択して適宜の操作をすると、再実行モードに移行する。このモードでは、上述のようにすでに実行された判別、処理動作や上記挙動を記録した画像ファイルに基づいて、画像の表示や、上記の判別、挙動検出及び搬送態様の調整を再実行させることができる。すなわち、搬送装置10の搬送物CAの制御に不具合が生じた場合には、この不具合を解消するために、まず、過去の画像データに基づいて画像計測処理を再実行することによって、画像計測処理の問題箇所を探る。当該問題箇所が判明すれば、それに応じて判別処理、挙動検出処理、調整処理の設定内容(設定値)を変更、調整し、再び過去の画像データに対して画像計測処理を再実行することで調整、改善作業の結果を確認することができる。その後、適宜の復帰操作を行うと、デバッグ設定がOFFに戻され、画像計測処理が再開されるとともに、搬送装置10の駆動が再開される。また、表示装置の画面は運転モードの表示画面に戻る。
【0105】
なお、以上説明した各実施形態において、カメラCM1,CM2が既定の撮影間隔で連続して撮影するとともに、搬送物の搬送速度Vsと撮影間隔Tsとの関係により搬送路121を通過する全ての搬送物CAが常に含まれるように予め設定された範囲LD1を有する第1の計測エリアME1,MR1内の画像データに対して画像計測処理を施すようにすれば、いずれかの撮影画像において第1の計測エリアME1,MR1内に配置された搬送物CAを検出することができるため、従来技術のように個々の搬送物の位置を検知するためのトリガ信号を生成する必要がなくなる。また、この画像に含まれる上記判定対象部分CAs1~CAs4の画像データを処理することで当該判定対象部分に関する情報を確実に抽出することができる。したがって、搬送物CAが繋がって搬送されてくる場合などにおいて個々の搬送物CAの検知漏れを考慮する必要がないために事前に搬送物間に間隙を形成する必要がなくなるなどの理由により、搬送物の高速搬送や高密度搬送が容易になるとともに検出システムの全体構成を簡易に構成することができる。搬送挙動検出処理においては、検出エリアMED,MRD内の画像データのみを処理して搬送路121から離れる方向若しくは搬送路121の幅方向に沿った方向の位置若しくは角度姿勢を検出するだけで足りるので、搬送態様調整処理を高速かつ高精度に行うことができる。また、搬送物判別処理においては、連続して撮影される複数の撮影画像のうちの予め設定された第1の計測エリアME1,MR1内の画像データのみを処理すれば足りるので、前記搬送物CAを判定するための画像計測処理を高速かつ高精度に行うことができる。
【0106】
また、第1の計測エリアME1,MR1を前記処理領域MES,MRSの上流側に隣接して配置するとともに、搬送物通過検出手段により処理領域MES,MRSの下流側に隣接して配置された第2の計測エリアME2の画像データに対して画像計測処理を施すことにより、搬送物CAが処理領域MES,MRSを通過して下流側へ脱出したことを検出することができる。このため、搬送物判定手段により前記第1の計測エリアME1,MR1の搬送物CAの所定の判別態様(例えば、良品)に応じて搬送物制御手段を通過状態としたとき、搬送物判別手段により次の搬送物が同じ所定の判別態様(例えば、良品)であるという判定結果が得られていない場合には、搬送物通過検出手段により上記と同じ所定の判別態様(例えば、良品)の搬送物が前記処理領域を通過して下流側へ脱出したことが検出されたときに、搬送処理制御手段により、搬送物処理手段を非処理状態から処理状態に切り替えることができる。これにより、高速で高密度に搬送物が搬送されてくる場合においても、高速かつ確実に搬送物を処理(選別)することができる。
【0107】
さらに、搬送物判定手段により所定の判別態様(例えば、良品)であるという判定結果が得られた搬送物CAのみが処理領域MES,MRSを通過でき、それ以外の搬送物CAは処理領域MES,MRSにて処理(排除、反転、分配など)されるようにすれば、搬送物CAが上記と異なる判別態様(例えば、不良)と判定された場合に限らず、検出漏れや判定ミスなどが生じた場合でも、上記の所定の判別態様(例えば、良品)以外の搬送物CAは処理領域MES,MRSで処理されるから、上記と異なる判別態様(例えば、不良)の搬送物CAがそのまま供給されるといった事態を確実に回避できる。
【0108】
本実施形態では、前述のように、搬送物CAの上記挙動を示す指標(具体的には、前記挙動を示す指標である上記位置若しくは上記角度姿勢)を検出し、この検出値に応じて搬送態様を調整する手段を設けることで、搬送物CAの搬送態様を容易に好適化することができる。ここで、搬送態様の調整は、上述のように搬送途中で自動的に行うこともでき、少なくとも一部を手動で行うこともできる。また、搬送速度やその他の搬送態様を変化させるように加振手段の駆動力(電圧や電流など)、振幅、周波数、駆動方向、駆動パワーなどを制御するものであってもよい。いずれにしても、搬送装置の調整作業が容易化されるとともに、調整作業の巧拙による性能の不安定化を回避でき、搬送装置の高い性能を確実に引き出すことが可能になる。特に、搬送物CAに対する処理の高精度化を図ることができるとともに、振動式搬送装置の搬送原理に起因する搬送態様の不安定性を回避することもできる。また、搬送密度の低下や搬送物の良品率が一定の割合を下回ったときには、自動的にコントローラCL11及びCL12に指令を出し、搬送装置10の駆動を停止し、搬送態様を自動的に調整するように構成することもできる。
【0109】
なお、本発明の搬送管理システム及び搬送装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、選別位置における選別方法として気流の吹き付けによる搬送物CAの搬送路121上からの排除を行っているが、搬送物CAの選別のための手法をはじめとして、個々の処理内容や各計測エリアの範囲については特に限定されるものではなく、機械的な排除手段を用いるなど、検出や判定のための種々の公知技術を採用することができる。また、搬送物を処理する態様としては、排除だけでなく、反転、分配(搬送方向の変更)などの種々の態様とすることができる。
【符号の説明】
【0110】
10…搬送装置、11…パーツフィーダ、110…搬送体、111…搬送路、12…リニアフィーダ、120…搬送体、121…搬送路、OPS…排除用噴気口、OPR…反転用噴気口、CA、CA1~CA3…搬送物、CM1,CM2…カメラ、CL11,CL12…コントローラ、DTU…検査処理ユニット、DP1,DP2…表示装置、GP1,GP2…画像処理装置、GM1,GM2…画像処理メモリ、GPX…撮影画像、GPY…画像エリア、GWA~GWB…判定エリア、MPU…演算処理装置、MM…主記憶装置、ME1…第1の計測エリア、ME2…第2の計測エリア、MES、MER…処理領域、SAE、SAR…サーチエリア、CT1、CT2…係数位置、SP1,SP2…操作入力装置、RAM…演算処理用メモリ、MED,MRD,MFD…検出エリア、MEDa,MRDa,MFDa…境界線、PCA…位置、θ…主軸角(角度姿勢)