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  • 特許-収納庫および電場発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】収納庫および電場発生装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20230315BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
F25D11/00 101A
F25D11/00 101D
F25D11/00 101F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019059680
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159631
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大平 剛
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159896(JP,A)
【文献】特開平06-074646(JP,A)
【文献】特開2003-343961(JP,A)
【文献】特開2007-212046(JP,A)
【文献】特開2007-190041(JP,A)
【文献】国際公開第2006/054348(WO,A1)
【文献】特開2012-241970(JP,A)
【文献】特開2011-244696(JP,A)
【文献】特開平09-138055(JP,A)
【文献】特開昭62-297677(JP,A)
【文献】特開2008-106994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を収納可能な収納室内に静電場を形成する静電場形成装置を有し、
前記静電場形成装置は、
前記収納室に配置された第1電極と、
前記収納室に、前記第1電極と離間して配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とに逆位相の交番電圧を印加する電圧印加部と、を有し、
前記第1電極は、前記収納室の中央部に配置され、
前記第2電極は、前記第1電極を間に挟むようにして前記収納室の両端部に配置されていることを特徴とする収納庫。
【請求項2】
前記交番電圧の振幅は、0.1kV~20kVである請求項1に記載の収納庫。
【請求項3】
前記第1電極および前記第2電極は、それぞれ、前記収納室の内壁と絶縁された電極本体を有し、
前記電極本体は、棒状である請求項1または2に記載の収納庫。
【請求項4】
前記第1電極および前記第2電極は、それぞれ、前記電極本体と前記収納室との間に位置する絶縁体を有する請求項3に記載の収納庫。
【請求項5】
前記収納室内を冷却する冷却装置を有する請求項1からのいずれか一項に記載の収納庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納庫および電場発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、冷蔵庫内において静電場を形成し、この雰囲気内で生鮮食品を保存することにより、静電場を形成しない場合と比べて生鮮食品の鮮度を長く保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第98/41115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、静電場を形成するための電極を冷蔵庫内に配置し、冷蔵庫の筐体を接地しているため、電極と筐体との間に静電場が形成され、電極の配置によっては静電場が庫内の生鮮食品に十分に作用しないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、庫内の対象物に効率的に静電場を作用させることのできる収納庫および電場発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 対象物を収納可能な収納室内に静電場を形成する静電場形成装置を有し、
前記静電場形成装置は、
前記収納室に配置された第1電極と、
前記収納室に、前記第1電極と離間して配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とに逆位相の交番電圧を印加する電圧印加部と、を有することを特徴とする収納庫。
【0008】
(2) 前記交番電圧の振幅は、0.1kV~20kVである上記(1)に記載の収納庫。
【0009】
(3) 前記第1電極および前記第2電極は、それぞれ、前記収納室の内壁と絶縁された電極本体を有し、
前記電極本体は、棒状である上記(1)または(2)に記載の収納庫。
【0010】
(4) 前記第1電極および前記第2電極は、それぞれ、前記電極本体と前記収納室との間に位置する絶縁体を有する上記(3)に記載の収納庫。
【0011】
(5) 前記第1電極は、前記収納室の中央部に配置され、
前記第2電極は、前記第1電極を間に挟むようにして前記収納室の両端部に配置されている上記(1)から(4)のいずれかに記載の収納庫。
【0012】
(6) 前記収納室内を冷却する冷却装置を有する上記(1)から(5)のいずれかに記載の収納庫。
【0013】
(7) 対象物を収納可能な収納室内に静電場を形成する静電場形成装置であって、
前記収納室に配置された第1電極と、
前記収納室に、前記第1電極と離間して配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とに逆位相の交番電圧を印加する電圧印加部と、を有することを特徴とする静電場形成装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1電極と第2電極とに逆位相の交番電圧を印加するため、第1電極と第2電極との電位差が大きくなり、これらの間すなわち収納室内により確実に静電場を形成することができる。そのため、庫内の対象物に効率的に静電場を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】好適な実施形態の収納庫を示す斜視図である。
図2図1の収納庫の前面図である。
図3図1の収納庫を側面側から見た断面図である。
図4図1の収納庫に配置された電極を示す斜視図である。
図5図1の収納庫の変形例を示す断面図である。
図6】電極に印加する交番電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す収納庫1は、保存対象物である食品を冷蔵保存する冷蔵庫として用いられる。ただし、収納庫1は、これに限定されず、例えば、常温庫、加温庫、冷凍庫、凍結庫等として用いることもできる。また、前記食品としては、特に限定されず、例えば、魚、エビ、カニ、イカ、タコ、貝等の魚介類およびこれらの加工食品、イチゴ、リンゴ、バナナ、みかん、ぶどう、梨等の果物およびこれらの加工食品、キャベツ、レタス、キュウリ、トマト等の野菜およびこれらの加工食品、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉等の食肉等の生鮮食品や、牛乳、チーズ、ヨーグルト等の各種乳製品、小麦粉、米粉、蕎麦粉等の穀物およびこれら穀物から作られた麺類などを挙げることができる。また、収納庫1に収納する対象物としては、食品に限定されず、例えば、生花、薬品、臓器等の食品以外のものであってもよい。
【0017】
また、収納庫1の使用形態は、特に限定されず、例えば、家庭、店舗、倉庫等に配置される固定型の収納庫であってもよいし、トラックの荷台に設けられた移動型の収納庫であってもよいし、トラック、船舶、飛行機等に搭載されるコンテナ型の収納庫であってもよい。
【0018】
収納庫1は、内部に食品を収納する収納室10が設けられた本体11と、収納室10内に静電場を形成する静電場形成装置2とを有する。
【0019】
本体11は、図2に示すように、例えば、外壁111と、内壁112と、外壁111と内壁112との間に配置された断熱材113と、を有する。また、本体11の前面には収納室10と繋がる開口が形成されている。また、収納庫1は、本体11の開口を塞ぐ一対の扉12を有する。一対の扉12は、観音開き型であり、本体11に対して開閉自在に連結されている。扉12を開くことにより収納室10への食品の出し入れを行うことができ、扉12を閉じることにより冷気を収納室10内に閉じ込めることができ、収納室10内の食品を冷却することができる。これら本体11および扉12は、それぞれ、グランド(0V)に接続されている。
【0020】
なお、本体11や扉12の構成としては、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。例えば、本実施形態では本体11が1つの収納室10を有しているが、これに限定されず、本体11が複数の収納室10を有していてもよい。また、本実施形態では本体11の前面に開口が形成されているが、これに限定されず、例えば、本体11の上面や側面に開口が形成されていてもよい。また、本実施形態では、扉12が一対設けられているが、扉12の数は、これに限定されず、例えば、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0021】
また、図2に示すように、収納庫1は、収納室10内に配置された複数の棚13を有する。複数の棚13は、上下方向に並んで配置されており、これら各棚13に食品を載置することができる。
【0022】
また、図2に示すように、静電場形成装置2は、収納室10に配置された複数の電極20と、これら複数の電極20に交番電圧を印加する電圧印加部29とを有する。また、複数の電極20には、電気的に接続された2つの第1電極20A、20Bと、電気的に接続された2つの第2電極20C、20Dとが含まれている。そして、電圧印加部29によって第1電極20A、20Bと第2電極20C、20Dとの間に交番電圧を印加することで、これらの間に静電場が形成される。このような静電場形成装置2は、どのような収納庫1にでも容易に設置(特に後付け)でき、どのような収納庫でも静電場形成機能を有する収納庫に改良することができる。そのため、静電場形成装置2は、優れた利便性および汎用性を有する。
【0023】
第1電極20A、20Bは、収納室10の上下方向の中央部に、前面側と背面側とに並んで配置されている。また、一方の第2電極20Cは、収納室10の下側の奥行き方向中央部に配置され、他方の第2電極20Dは、収納室10の上側の奥行き方向中央部に配置されている。つまり、第2電極20C、20Dは、第1電極20A、20Bを間に挟むようにして、収納室10の両端部に配置されている。また、図3に示すように、収納室10を側面側から見たとき、第1電極20A、20Bおよび第2電極20C、20Dは、菱形の各角に位置するように配置されている。このような配置とすることで、第1電極20A、20Bと第2電極20C、20Dとを収納室10内において、なるべく離間させて配置することができ、収納室10内のより広い範囲に静電場を形成することができる。
【0024】
各電極20(第1電極20A、20Bおよび第2電極20C、20D)は、同じ構成であり、図4に示すように、電圧印加部29と電気的に接続される棒状の電極本体21と、電極本体21をその両端部において支持する一対の支持部22と、を有する。また、各支持部22は、内壁112に取り付けられる絶縁体23と、絶縁体23に取り付けられ、電極本体21と接続される接続部24と、を有する。電極本体21を棒状とすることで、電極20の小型化を図ることができ、電極20を配置することによる収納室10の収納スペースの減少を抑制することができる。
【0025】
各絶縁体23は、電極本体21と内壁112とを絶縁する機能を有し、例えば、碍子で構成されている。そして、各絶縁体23は、例えば、接着剤、ねじ止め等の各種固定手段により内壁112に固定される。また、各接続部24は、電極本体21と同軸的に伸びる半円筒状の部材であり、電極本体21の端部が挿入されている。電極本体21は、接続部24に対して摺動可能となっており、摺動させることで電極20の全長を調整することができる。そのため、サイズの異なる種々の収納室10に対応でき、電極20の汎用性が向上する。
【0026】
各接続部24は、絶縁性であっても、導電性であってもよいが、導電性であることが好ましい。この場合、接続部24が電極本体21と接触して電極本体21と電気的に接続されることで、電極本体21と共に接続部24も電極として機能することとなり、電極として機能する部分の面積をより大きく確保することができる。そのため、収納室10内のより広い範囲に効率的に静電場を作用させることができる。
【0027】
ただし、電極20の構成としては、その機能を発揮することができれば、特に限定されない。例えば、接続部24を省略して、電極本体21と絶縁体23とを直接接続してもよい。また、接続部24は、筒状でその内部に電極本体21が挿入される構成であってもよい。また、例えば、電極本体21の表面が絶縁層で被覆されている場合には、絶縁体23および接続部24を省略して、電極本体21を直接、内壁112に取り付けてもよい。
【0028】
また、電極本体21の形状としては、特に限定されず、棒状ではなくて、例えば、板状、網状、ブロック状であってもよい。この場合、電極20を棚13として利用してもよい。つまり、いくつかの棚13を電極20に置き換えてもよい。また、例えば、電極本体21が外筒と、この外筒に挿入された内筒とを有する伸縮自在な構成となっていてもよい。このような構成によれば、電極20の全長を調整することができ、サイズの異なる種々の収納室10に対応でき、電極20の汎用性がさらに向上する。
【0029】
また、電極20は、少なくとも1つの第1電極と、少なくとも1つの第2電極とを有していればよい。そのため、例えば、第1電極20A、20Bのうちの一方を省略してもよいし、さらに1つ以上の第1電極を追加してもよい。同様に、第2電極20C、20Dのうちの一方を省略してもよいし、さらに1つ以上の第2電極を追加してもよい。また、図示の構成では、第1、第2電極20A~20Dが互いに同じ構成であるが、これらのうちの少なくとも1つの電極が他の電極と異なる構成であってもよい。また、第1電極20A、20Bおよび第2電極20C、20Dの配置は、特に限定されず、例えば、収納室10の下側に2つの第1電極20A、20Bを奥行き方向に並べて配置し、収納室10の上側に2つの第2電極20C、20Dを奥行き方向に並べて配置してもよい。また、図5に示すように、第1電極20A、20Bおよび第2電極20C、20Dをそれぞれ縦にして立てて配置してもよい。また、このように第1電極20A、20Bおよび第2電極20C、20Dを立てて配置する場合は、例えば、マグネットを用いて内壁112に貼り付けてもよい。
【0030】
また、図1に示すように、収納庫1は、本体11の上方に位置する機械室19を有する。機械室19内には収納室10を冷却する冷却装置16と、第1、第2電極20A~20Dに交番電圧を印加する電圧印加部29とが設けられている。また、機械室19の前面にはタッチパネル式の表示画面191が設けられており、この表示画面191から各種設定を行うことができる。なお、機械室19の配置は、特に限定されず、本体11の下方に設けられていてもよいし、本体11の後方に設けられていてもよい。また、冷却装置16や電圧印加部29は、機械室19とは異なる場所に設けられていてもよい。
【0031】
冷却装置16は、圧縮機161、凝縮器162等を備えており、冷風を収納庫1内に供給することにより、収納室10を冷却する。収納室10内の温度としては、特に限定されないが、例えば、0℃~10℃程度とすることが好ましい。
【0032】
電圧印加部29は、高圧トランスを備え、電極20に交番電圧を印加する。具体的には、電圧印加部29は、図6に示すように、第1電極20A、20Bに第1交番電圧Vac1を印加すると共に、第2電極20C、20Dに第1交番電圧Vac1と逆位相の第2交番電圧Vac2を印加する。これにより、第1電極20A、20Bと第2電極20C、20Dとの間に電位差が生じ、これらの間すなわち収納室10内に静電場が形成される。静電場を形成することで、収納室10内に収納された食品の鮮度を保ったまま、熟成を促進させることができる。そのため、静電場を形成しない場合と比べて、食品をより長期間保存することができると共に、食品の旨味を増幅させることができる。
【0033】
第1交番電圧Vac1と第2交番電圧Vac2とを逆位相すなわち位相を180°ずらすことで、第1電極20A、20Bと第2電極20C、20Dとの電位差ΔV1が、第1電極20A、20Bと内壁112との電位差ΔV2および第2電極20C、20Dと内壁112との電位差ΔV3よりも大きくなる。すなわち、ΔV1>ΔV2、ΔV3の関係となる。そのため、第1電極20A、20Bと内壁112との間や、第2電極20C、20Dと内壁112との間よりも、第1電極20A、20Bと第2電極20C、20Dとの間に静電場が形成され易くなる。したがって、静電場を収納室10内のより広範囲、好ましくは全域にわたって形成することができ、収納室10内のどの位置に載置された食品にも効率的に静電場を作用させることができる。なお、前記「逆位相」とは、第1交番電圧Vac1と第2交番電圧Vac2との位相差が180°と一致している場合の他、技術上生じ得るわずかな誤差(例えば±10%)を有する場合も含む意味である。
【0034】
第1、第2交番電圧Vac1、Vas2の振幅としては、特に限定されないが、例えば、0.1kV~20kV程度とすることが好ましく、1kV~10kV程度とすることがより好ましい。このような振幅の第1、第2交番電圧Vac1、Vac2を電極20に印加することにより、収納室10内に十分な強度の静電場を形成することができ、上述した効果をより確実に発揮することができる。また、第1、第2交番電圧Vac1、Vac2の周波数としては、特に限定されないが、例えば、5Hz~50kHz程度とすることが好ましい。また、図6では、第1、第2交番電圧Vac1、Vas2がそれぞれ正弦波であるが、これに限定されず、例えば、矩形波であってもよい。
【0035】
また、電圧印加部29には、使用者の感電や火災等を防止するための図示しない安全装置が設けられている。安全装置は、例えば、本体11に設置された扉12に、その開閉を検知するセンサーを設け、扉12が開かれると電極20への電圧印加を停止するように構成されていてもよい。また、安全装置は、異常電圧を検知すると、電極20への電圧印加を停止するように構成されていてもよい。
【0036】
以上、本発明の収納庫および静電場形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1…収納庫
10…収納室
11…本体
111…外壁
112…内壁
113…断熱材
12…扉
13…棚
16…冷却装置
161…圧縮機
162…凝縮器
19…機械室
191…表示画面
2…静電場形成装置
20…電極
20A、20B…第1電極
20C、20D…第2電極
21…電極本体
22…支持部
23…絶縁体
24…接続部
29…電圧印加部
Vac1…第1交番電圧
Vac2…第2交番電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6