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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】検査対象物の状態評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
G01N29/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019061385
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159950
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598105732
【氏名又は名称】株式会社シスミック
(73)【特許権者】
【識別番号】591280197
【氏名又は名称】株式会社構造計画研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】592053114
【氏名又は名称】フジタビルメンテナンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】千葉 拓史
(72)【発明者】
【氏名】組田 良則
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴正
(72)【発明者】
【氏名】岸村 雄平
(72)【発明者】
【氏名】相川 梓
(72)【発明者】
【氏名】永易 修
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179921(JP,A)
【文献】特開昭60-211360(JP,A)
【文献】登録実用新案第3029124(JP,U)
【文献】特開2011-123006(JP,A)
【文献】特開2018-054380(JP,A)
【文献】特開2018-200217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01N 3/00 - G01N 3/62
G01M 7/00 - G01M 7/08
G01H 1/00 - G01H 17/00
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の状態を検出しその検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、
前記検査対象物の状態を検出する検出部と、
対象エリアに向けて測定光を走査すると共に前記測定光に対する反射光を検知し、前記反射光に基づいて前記対象エリア内の前記検出部の位置を含む第1走査情報を生成する第1レーザースキャナと、
前記第1走査情報に基づいて前記検出部の位置を特定すると共に前記検出部の位置を、前記第1レーザースキャナの箇所を第1基準点としこの第1基準点を原点とする座標系における第1ローカル位置情報として生成する第1ローカル位置情報生成部と、
前記個別情報と前記第1ローカル位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部と
対象エリアに向けて測定光を走査すると共に前記測定光に対する反射光を検知し、前記反射光に基づいて前記対象エリア内の前記第1レーザースキャナの位置を含む第2走査情報を生成する第2レーザースキャナと、
前記第2走査情報に基づいて前記第1レーザースキャナの位置を特定すると共に前記第1基準点を、前記第2レーザースキャナの箇所を第2基準点としこの第2基準点を原点とする座標系における第2ローカル位置情報として生成する第2ローカル位置情報生成部と、
前記第1ローカル位置情報と前記第2ローカル位置情報とに基づいて、前記第1ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換する位置情報変換部とを備え、
前記検査対象物評価情報生成部による前記検査対象物評価情報の生成は、前記個別情報と前記グローバル位置情報とを関連付けることでなされる、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
【請求項2】
検査対象物の状態を検出しその検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、
前記検査対象物の状態を検出する検出部と、
対象エリアに向けて測定光を走査すると共に前記測定光に対する反射光を検知し、前記反射光に基づいて前記対象エリア内の前記検出部の位置を含む第1走査情報を生成する第1レーザースキャナと、
前記第1走査情報に基づいて前記検出部の位置を特定すると共に前記検出部の位置を、前記第1レーザースキャナの箇所を第1基準点としこの第1基準点を原点とする座標系における第1ローカル位置情報として生成する第1ローカル位置情報生成部と、
前記個別情報と前記第1ローカル位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部と
前記第1基準点を、前記検査対象物上に予め定められた点を第2基準点としこの第2基準点を原点とする座標系における第2ローカル位置情報として検出すると共に、前記第1レーザースキャナとは切り離され、かつ、前記検査対象物から離間した箇所に設置されたトータルステーションで構成された第2ローカル位置情報検出部と、
前記第1ローカル位置情報と前記第2ローカル位置情報とに基づいて、前記第1ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換する位置情報変換部とを備え、
前記検査対象物評価情報生成部による前記検査対象物評価情報の生成は、前記個別情報と前記グローバル位置情報とを関連付けることでなされる、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
【請求項3】
前記第1レーザースキャナの姿勢を調整する第1姿勢調整機構が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項4】
前記第2レーザースキャナの姿勢を調整する第2姿勢調整機構が設けられている、
ことを特徴とする請求項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項5】
前記第1ローカル位置情報生成部による前記第1ローカル位置情報の生成は、
前記検査対象物の状態の検出がなされることに対応して前記検出部の位置情報を前記第1ローカル位置情報として生成することでなされる、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項6】
目視で検出した前記検査対象物の状態を前記個別情報として入力する状態入力部を設け、
前記第1ローカル位置情報生成部は、前記目視で検出した前記検査対象物の箇所に前記検出部が位置した状態でなされる前記状態入力部による前記個別情報の入力に対応して前記検出部の位置情報を第1ローカル位置情報として生成する、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記検査対象物を打撃した際に生じる物理量を検出する、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項8】
前記検出部によって検出された前記検査対象物の状態を示す個別測定情報に基づいて前記検査対象物の状態を評価して個別評価情報を生成する評価部を備え、
前記個別情報は、前記個別評価情報を含む、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項9】
前記検査対象物は、建物躯体に接着された検査対象物であり、
前記評価部は、前記検査対象物の浮きの有無を評価する、
ことを特徴とする請求項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項10】
前記評価部は、前記浮きの深さを評価する、
ことを特徴とする請求項記載の検査対象物の状態評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の状態の検出結果またはその評価結果と検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の状態を示す情報をその検査対象物の検出箇所の位置情報と関連付けて評価する方法が種々提案されている。
特許文献1には、建物の壁面のひび割れ情報を生成すると共に、トータルステーションを用いてひび割れの箇所の位置情報を取得し、ひび割れ情報と位置情報とを関連付けてデータベースとして記憶する技術が提案されている。
しかしながら、トータルステーションを使用するため、検査対象物の状態を評価する装置の構成が複雑なものとなり、また、トータルステーションの操作にも多大な手間がかかるものとなっていた。
そこで、特許文献2には、検出部による検査対象物の状態の検出結果またはその検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と、検査対象物の状態の検出がなされた時刻に対応してカメラにより撮像した検査対象物の画像情報に基づいて、複数の基準点の位置に対する検出部の相対的な位置を示す位置情報を検査対象物の検出箇所の位置情報として生成し、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する技術が提案されている。
この技術によれば、カメラにより検査対象物の画像情報を生成することで位置情報を得ることができるため、トータルステーションが不要となることから、構成の簡素化、検出作業の効率化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5580029号公報
【文献】特開2016-205901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、後者の従来技術においては、カメラにより検査対象物の一定の範囲を撮像することからカメラと検査対象物の間に一定のワーキングディスタンス(作業距離)を確保する必要がある。
そのため、例えば、検査対象物がビルの高所に位置する壁面であり、作業者がゴンドラに乗った状態で作業する場合や作業者が足場上で作業する場合、カメラと検査対象物の間に一定のワーキングディスタンスを確保するためには、カメラを検査対象物から離れた箇所に固定する支持部材をゴンドラや足場に設ける必要があり、作業が煩雑化する場合がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、検査対象物の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利な検査対象物の状態評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、検査対象物の状態を検出しその検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、前記検査対象物の状態を検出する検出部と、対象エリアに向けて測定光を走査すると共に前記測定光に対する反射光を検知し、前記反射光に基づいて前記対象エリア内の前記検出部の位置を含む第1走査情報を生成する第1レーザースキャナと、前記第1走査情報に基づいて前記検出部の位置を特定すると共に前記検出部の位置を、前記第1レーザースキャナの箇所を第1基準点としこの第1基準点を原点とする座標系における第1ローカル位置情報として生成する第1ローカル位置情報生成部と、前記個別情報と前記第1ローカル位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、対象エリアに向けて測定光を走査すると共に前記測定光に対する反射光を検知し、前記反射光に基づいて前記対象エリア内の前記第1レーザースキャナの位置を含む第2走査情報を生成する第2レーザースキャナと、前記第2走査情報に基づいて前記第1レーザースキャナの位置を特定すると共に前記第1基準点を、前記第2レーザースキャナの箇所を第2基準点としこの第2基準点を原点とする座標系における第2ローカル位置情報として生成する第2ローカル位置情報生成部と、前記第1ローカル位置情報と前記第2ローカル位置情報とに基づいて、前記第1ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換する位置情報変換部とをさらに備え、前記検査対象物評価情報生成部による前記検査対象物評価情報の生成は、前記個別情報と前記グローバル位置情報とを関連付けることでなされることを特徴とする。
また、本発明は、前記第1基準点を、前記検査対象物上に予め定められた点を第2基準点としこの第2基準点を原点とする座標系における第2ローカル位置情報として検出する第2ローカル位置情報検出部と、前記第1ローカル位置情報と前記第2ローカル位置情報とに基づいて、前記第1ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換する位置情報変換部とをさらに備え、前記検査対象物評価情報生成部による前記検査対象物評価情報の生成は、前記個別情報と前記グローバル位置情報とを関連付けることでなされることを特徴とする。
また、本発明は、前記第1レーザースキャナの姿勢を調整する第1姿勢調整機構が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第2レーザースキャナの姿勢を調整する第2姿勢調整機構が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第1ローカル位置情報生成部による前記第1ローカル位置情報の生成は、前記検査対象物の状態の検出がなされることに対応して前記検出部の位置情報を前記第1ローカル位置情報として生成することでなされることを特徴とする。
また、本発明は、目視で検出した前記検査対象物の状態を前記個別情報として入力する状態入力部を設け、前記第1ローカル位置情報生成部は、前記目視で検出した前記検査対象物の箇所に前記検出部が位置した状態でなされる前記状態入力部による前記個別情報の入力に対応して前記検出部の位置情報を第1ローカル位置情報として生成することを特徴とする。
また、本発明は、前記検出部は、前記検査対象物を打撃した際に生じる物理量を検出することを特徴とする。
また、本発明は、前記検出部によって検出された前記検査対象物の状態を示す個別測定情報に基づいて前記検査対象物の状態を評価して個別評価情報を生成する評価部を備え前記個別情報は、前記個別評価情報を含むことを特徴とする。
また、本発明は、前記検査対象物は、建物躯体に接着された検査対象物であり、前記評価部は、前記検査対象物の浮きの有無を評価することを特徴とする。
また、本発明は、前記評価部は、前記浮きの深さを評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1レーザースキャナで生成される第1走査情報に基づいて、検査対象物の検出箇所の位置情報を、第1ローカル位置情報として検出し、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成するので、第1レーザースキャナを用いて検出部を走査するに足る最小限のスペースを確保すれば足りる。
したがって、検査対象物の周囲に確保するスペースを確保しにくい場合であっても検査対象物の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、検査対象物の検出箇所の位置情報を、検査対象物上に予め定められた点を第2基準点としこの第2基準点を原点とするグローバル位置情報として求めることができるため、面積が広大な検査対象物の検出箇所の位置情報を正確に特定する上で有利となる。
また、第2レーザースキャナを用いて第2ローカル位置情報を得ることができるため、状態評価装置の構成の簡素化、作業の効率化を図る上で有利となる。
また、障害物が存在する場合であっても、第1レーザースキャナと第2レーザースキャナを移動させることにより、検出部の位置情報、すなわち、検査対象物の位置情報を確実に検出することできるため、検査対象物の状態の評価を的確に行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、第2ローカル位置情報検出部により第2ローカル位置情報を検出するので、例えばトータルステーションのような既存の設備を第2ローカル位置情報検出部として用いることができ、面積が広大な検査対象物の検出箇所の位置情報を正確に特定する上で有利となる。
また、本発明によれば、第1レーザースキャナの姿勢を調整できるので、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報の精度を高める上で有利となる。
また、本発明によれば、第2レーザースキャナの姿勢を調整できるので、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報の精度を高める上で有利となる。
また、本発明によれば、検査対象物の状態の検出がなされることに同期して検出部の位置情報をローカル位置情報として生成するので、検査対象物の状態の検出がなされた時点での検出部の位置情報を正確に得る上で有利となる。
また、本発明によれば、検査対象物の個別情報として、目視で検出した検査対象物の状態を示す情報を付加することができ、検査作業をより効率的に行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、検査対象物を打撃した際に生じる物理量に基づいて検査対象物の状態を検出するので、建物躯体や建物躯体に接着された検査対象物の状態を検出する上で有利となる。
また、本発明によれば、個別測定情報を評価した個別評価情報に基づいて検査対象物の状態を的確に評価する上で有利となる。
また、本発明によれば、評価部が建物躯体に接着された検査対象物の浮きの有無を評価するので、検査対象物の損傷の有無を効率的よく評価する上で有利となる。
また、本発明によれば、評価部が建物躯体に接着された検査対象物の浮きの深さを評価するので、検査対象物の浮きの深さに応じて適切な補修を行なうことができ有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
図2】ゴンドラを利用した検出作業の説明図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】ゴンドラを利用した検出作業をゴンドラ側方から見た説明図である。
図5】(A)は姿勢調整機構の平面図、(B)は(A)の正面図である。
図6】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の動作フローチャートである。
図7】検査対象物の浮き、浮き代、浮きの深さを説明する断面図である。
図8】第2の実施の形態において検査対象物にバルコニーが設けられている場合におけるゴンドラを利用した検出作業の説明図である。
図9】第3の実施の形態において足場を利用した検出作業の説明図である。
図10】第4の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置という)について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態の状態評価装置10の構成について説明する。
なお、本実施の形態では、状態評価装置10の検査対象物4は、建物躯体2の外装材であるタイルである。検査対象物4は、外装材でもよいし内装材でもよく、タイルでもよいしモルタル、コンクリート、レンガ、ブロック、パネル、ガラス、ALC(軽量気泡コンクリート)、木材などでもよい。
また、本実施の形態では、状態評価装置10が検出する検査対象物4の状態は、タイルの浮き(建物躯体2と検査対象物4との剥離)であるが、検査対象物4のひび割れ、汚損、剥落、空洞、温度、塗装の劣化、漏水など従来公知の様々な状態を検出の対象とすることができる。
【0009】
次に図1乃至図3を参照して、状態評価装置10とその使用方法の概要について説明する。
図1に示すように、状態評価装置10は、作業者が操作して検査対象物4の状態を検出する検出部12と、検出部12の位置を検出するための第1レーザースキャナ14Aと、第1レーザースキャナ14Aの位置を検出するための第2レーザースキャナ14Bと、検出部12および第1、第2レーザースキャナ14A、14Bに接続され情報の授受を行なうコンピュータ16とを有している。
コンピュータ16は、第1,第2レーザースキャナ14A、14Bで検出された走査情報に基づいて検出部12の位置情報を生成し、その位置情報と検出部12で検出された結果とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する。
【0010】
図2図3に示すように、作業者Mは鉛直方向および水平方向に移動するゴンドラ28に乗って検出部12を操作して検査対象物4の状態の検出作業を行なう。
この際、コンピュータ16は、第1レーザースキャナ14Aによって走査された検出部12の第1走査情報に基づいて検出部12の第1ローカル位置情報を生成する。ここで、第1ローカル位置情報は第1レーザースキャナ14Aの箇所を第1基準点PLとしこの第1基準点PLを原点とする座標系における位置情報である。
また、コンピュータ16は、第2レーザースキャナ14Bによって走査された第1レーザースキャナ14Bの第2走査情報に基づいて第1レーザースキャナ14Aの第2ローカル位置情報を生成する。ここで、第2ローカル位置情報は、検査対象物4上に予め定められた点を第2基準点PGとし、この第2基準点PGを原点とする座標系における位置情報である。
そして、第1ローカル位置情報と第2ローカル位置情報とに基づいて検出部12のグローバル位置情報、すなわち、建物躯体2における検査箇所のグローバル位置情報が生成される。
コンピュータ16は、グローバル位置情報と検出部12で検出された結果とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する。
検査対象物評価情報により検出箇所のグローバル位置情報と検出部12の検出結果とが関連付けられているので、建物躯体2の中でどこの場所で検査対象物4に損傷(浮き)が生じているかがわかる。
【0011】
ここで、実施の形態において状態評価装置10で取り扱う各種情報について説明する。
1)個別測定情報:
検査対象物4の状態を検出して得られた物理量である。
本実施の形態では、検査対象物4を打撃した際に生じる検査対象物4を打撃した際に発生する打撃力、打音および振動の一以上の物理量である。
また、個別測定情報は、検査対象物4を撮像装置で撮影することで得られる静止画あるいは動画の画像情報などでもよい。また、個別測定情報は、例えば、サーモグラフィカメラあるいは温度計で検査対象物4の温度を測定することで得られる温度でもよい。
2)個別評価情報:
個別測定情報に基づいて検査対象物4の状態を評価した情報である。
本実施の形態では、個別評価情報は、上記打撃力、打音、振動などの個別測定情報に基づいて得られた各検出箇所における浮きの状態を評価した情報である場合について説明する。
3)個別情報:
状態評価装置10によって検出された検査対象物4の状態の検出結果または検出結果に基づいて生成される評価結果を示す情報であり、上述した個別測定情報あるいは個別評価情報の一方または双方をいう。
本実施の形態では、個別情報は個別評価情報である場合について説明する。
4)検査対象物評価情報:
個別情報と位置情報とを関連付けた情報である。
本実施の形態では、検査対象物評価情報は個別評価情報と位置情報とを関連付けた情報である場合について説明する。
【0012】
状態評価装置10は、検査対象物4の状態を検出しその検出結果または検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と検査対象物4の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価するものである。
本実施の形態では、状態評価装置10は、検査対象物4の状態の評価結果と、建物躯体2に対する検査対象物4の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する形態について説明する。
【0013】
図1に示すように、状態評価装置10は、検出部12と、第1レーザースキャナ14Aと、第2レーザースキャナ14Bと、コンピュータ16を有する。
【0014】
検出部12は、検査対象物4周辺の物理量、すなわち検査対象物4の状態を検出するものであり、言い換えると、検査対象物4の状態を示す個別測定情報を生成するものである。なお、本実施の形態における「個別」とは、一測定箇所(または単位測定時)の、という意味である。
本実施の形態では、検出部12は、作業者が把持して状態を評価すべき検査対象物4の表面に当て付けて使用される。
なお、図4に示すように、検出部12の筐体1202に支持棒18の先端が取着されており、作業者Mは支持棒18を把持することにより検出部12を広い範囲にわたって容易に移動できるように図られている。
【0015】
本実施の形態では、検出部12は、打撃ハンマーにより検査対象物4を打撃した際に生じる物理量、特に検査対象物4を打撃した際に発生する打撃力、打音および振動の一以上の物理量を個別測定情報として検出する。
打撃力、打音、及び振動の一以上の物理量を測定する装置として、マイクロフォンを検出部12に設けることが好ましい。マイクフォンとしては、小型及び軽量なコンデンサマイクフォンを用いることができる。
なお、検出部12は、検査対象物4の状態を評価するために必要な情報である物理量を測定することができるものであればよい。状態評価装置10の検査対象物4の状態が評価する対象が検査対象物4のひび割れや汚損であれば、検出部12は、例えば検査対象物4を撮像してひび割れや汚損(検査対象物4の色の変化)を検出する撮像装置でもよい。また、状態評価装置10が評価する対象の検査対象物4の状態が検査対象物4の温度であれば、検出部12は、例えば検査対象物4の温度を検出する温度計、あるいは、サーモグラフィカメラでもよい。要するに、検出部12は状態評価装置10の検査対象物4の状態を評価する対象に対応したものが採用される。
【0016】
本実施の形態では、検出部12により、打撃力、打音および振動の一以上の物理量が検出される毎に、位置検出用のトリガ信号が検出部12から後述する第1ローカル位置情報生成部16Bに供給されるように構成されている。
また、検出部12による検出動作、本実施の形態では、打撃ハンマーによる打撃動作は、例えば、検出部12に接続された図示しない操作部(操作ボタン)を操作することで、あるいは、後述するコンピュータ16の操作部16Hを操作することで実行される。
【0017】
第1レーザースキャナ14Aは、対象エリアに向けて測定光(レーザー光)を走査すると共に測定光が物体で反射された反射光を検知し、反射光に基づいて対象エリア内の検出部12の筐体1202の形状および位置を含む第1走査情報を生成する二次元走査型のレーザースキャナである。本実施の形態では、第1レーザースキャナ14Aは二次元走査型のレーザースキャナであるが、検出部12の位置を検出するものであればよく、三次元レーザースキャナでもよい。
なお、図中、測定光および反射光は二点鎖線で示している。
図5に示すように、第1レーザースキャナ14Aは、ケース1402と、ケース1402内部に収容され測定光を走査し反射光を検知する不図示の走査測定部とを備えている。
本実施の形態では、ケース1402は断面が均一外径の円筒状を呈しており、ケース1402のうち測定光および反射光が通過する部分は測定光および反射光が透過する材料で形成されている。
第1レーザースキャナ14Aによる測定光の走査は常時行われており、第1レーザースキャナ14Aによる測定光の走査時間は例えば25msecであり、この場合、1秒間に40回の走査が行われることになる。測定距離は例えば20mから30m程度である。
なお、第1レーザースキャナ14Aによる測定光の走査時間および測定距離は、適宜変更可能である。
【0018】
第1レーザースキャナ14Aは、取り付け部22を介して検査対象物4に着脱可能に取り付けられる。
本実施の形態では、取り付け部22は、吸着パッド2202と、不図示のエアポンプを有する。
吸着パッド2202は、第1レーザースキャナ14Aのケース1402の下部に設けられ、検査対象物4の表面に対して吸着可能に構成されている。ここで、検査対象物4の表面とは、検査対象物4が建物躯体2と反対側を向いた面をいう。
エアポンプは、吸着パッド2202と検査対象物4との間の空間を真空状態として吸着パッド2202を検査対象物4の表面に吸引固定させるものであり、エアポンプは電池によって駆動される。
このような吸着パッド2202およびエアポンプは壁面昇降ロボットなどで使用されている従来公知のものを使用可能である。
したがって、吸着パッド2202を検査対象物4に押し付けた状態でエアポンプを動作させることで第1レーザースキャナ14Aは取り付け部22を介して検査対象物4に取り付けられる。
また、エアポンプの動作を停止させて吸着パッド2202を検査対象物4から引き離すことで第1レーザースキャナ14Aは検査対象物4から取り外される。
本実施の形態では、取り付け部22は、吸着パッド2202と、不図示のエアポンプを有するが、なくてもよい。取り付け部22は、第1レーザースキャナ14Aを検査対象物4に取り付けることができるものであればよい。
【0019】
また、図5に示すように、第1レーザースキャナ14Aの測定光は、走査中心軸Lを中心として単一平面上を旋回する。
第1レーザースキャナ14Aの測定光が走査する単一平面と走査中心軸Lとの交点が走査中心点Oであり、第1レーザースキャナ14Aの走査中心点Oが後述する第1基準点PLとなる。
第1レーザースキャナ14Aによる第1走査情報を正確に得る上で第1レーザースキャナ14Aの測定光が走査する単一平面と検査対象物4の表面とが平行であることが重要であり、したがって、第1レーザースキャナ14Aの走査中心軸Lが検査対象物4の表面と直交することが好ましい。
本実施の形態では、第1レーザースキャナ14Aの走査中心軸Lが検査対象物4の表面に対して直交するように第1レーザースキャナ14Aの姿勢を調整する第1姿勢調整機構24Aが設けられている。
本実施の形態では、図5に示すように、第1姿勢調整機構24Aは、ケース1402の外周全周に取り付けられた環状の取り付け部2402と、取り付け部2402の周方向に90度の間隔をおいて取り付け部2402の半径方向外方に突設された4つの脚部2404と、各脚部2404の先端に設けられたねじ孔2406と、ねじ孔2406に螺合する調整ねじ2408とを備えている。
各調整ねじ2408は基端にねじ孔2406と螺合する雄ねじが形成され、先端が表面に当接する箇所となっており、調整ねじ2408を回転させることで調整ねじ2408の先端位置が調整されるようになっている。
第1姿勢調整機構24Aの使用方法は以下の通りである。
すなわち、吸着パッド2202およびエアポンプによって第1レーザースキャナ14Aを検査対象物4の表面に吸着させると共にケース1402に水準器を当て付ける。
水準器を視認しつつ各調整ねじ2408を回して調整ねじ2408の先端を表面に当接させたのち、第1レーザースキャナ14Aの走査中心軸Lが表面と直交するように各調整ねじ2408を回転して第1レーザースキャナ14Aの姿勢を調整する。
【0020】
第2レーザースキャナ14Bは、対象エリアに向けて測定光を走査すると共に測定光が物体で反射された反射光を検知し、反射光に基づいて対象エリア内の第1レーザースキャナ14Aの形状および位置を含む第2走査情報を生成する二次元走査型のレーザースキャナである。本実施の形態では、第2レーザースキャナ14Bは二次元走査型のレーザースキャナであるが、三次元レーザースキャナでもよい。
第2レーザースキャナ14Bは、第1レーザースキャナ14Aと同様に構成されている。
図5に示すように、第2レーザースキャナ14Bは、第1レーザースキャナ14Aと同様に、取り付け部22を介して検査対象物4の表面の箇所に着脱可能に取り付けられ、また、第1姿勢調整機構24Aと同様に構成された第2姿勢調整機構24Bによって姿勢が調整される。
また、第2レーザースキャナ14Bの測定光は、走査中心軸Lを中心として単一平面上を旋回し、第2レーザースキャナ14Bの測定光が走査する単一平面と走査中心軸Lとの交点が走査中心点Oであり、第2レーザースキャナ14Bの走査中心点Oが後述する第2基準点PGとなる。
なお、第1レーザースキャナ14Aおよび第2レーザースキャナ14Bにおける測定光の走査時間、測定距離は同一であってもよく異なっていてもよい。
第2レーザースキャナ14Bは、第1レーザースキャナ14Aから離れた検査対象物4の表面の箇所に取り付けられ、かつ、第1レーザースキャナ14Aおよび第2レーザースキャナ14Bは、第2レーザースキャナ14Bの測定光が障害物に遮られることなく第1レーザースキャナ14Aに到達する箇所に取り付けられる。
【0021】
図4に示すように、コンピュータ16は、例えば、ノートブック型コンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等で構成され、作業者Mが所持している。なお、コンピュータ16は、作業者Mが所持せず、作業者Mと離れた箇所にあってもよく、例えば、デスクトップ型コンピュータであってもよい。
図1に示すように、コンピュータ16は、検出部12、第1レーザースキャナ14A、第2レーザースキャナ14Bと、ケーブルまたは無線で接続されている。
コンピュータ16は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置(あるいはRAMディスク装置)、タッチパネル、キーボード、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは例えばフラッシュメモリなどで構成され、制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は種々の情報を記憶する記憶部16Gを構成するものである。
タッチパネル、キーボードは作業者Mによる操作を受け付ける操作部16Hを構成するものである。
ディスプレイ装置は各種情報を表示する表示部16Iを構成するものである。
CPUが制御プログラムを実行することで、評価部16A、第1ローカル位置情報生成部16B、第2ローカル位置情報生成部16C、位置情報変換部16D、検査対象物評価情報生成部16E、表示制御部16Fが作動する。
【0022】
評価部16Aは、検出部12によって検出された、検査対象物4の状態を示す個別測定情報に基づいて検査対象物4の状態を評価して、個別情報を生成するものである。
本実施の形態では、評価部16Aは、各検出箇所における浮き(建物躯体2と検査対象物4との剥離)の有無を評価する。外装材である検査対象物4が建物躯体2から剥離している状態、言い換えると、浮きが発生している状態を「損傷」という。
ここで、図7(A)を参照して具体的に説明する。
検査対象物4であるタイルは、モルタル5により建物躯体2に接着される。
浮き7は、モルタル5と建物躯体2との間に生じた空隙であり、この浮き7が生じることで検査対象物4が建物躯体2から剥離した状態となり接着が不完全な状態となっている。
ここで、浮き7の浮き代D1とは、検査対象物4の厚さ方向に沿った浮き7の厚さを言う。また、浮き7の深さD2とは、検査対象物4の厚さ方向に沿った浮き7と検査対象物4の表面との間の距離を言う。
本実施の形態では、建物躯体2に接着された検査対象物4の浮き7の有無を評価しているが、外装材の剥離によって形成された外装材背面側の評価結果の大小に基づいて、浮き7の深さD2を評価するようにしてもよい。具体的には、浮き7の深さD2の個別測定情報に基づいて評価パラメータを算出し、評価パラメータを基に算出した値がしきい値a未満の場合には「浮き無し」、しきい値a以上b以下の場合には「深い浮き有」、しきい値bより大の場合には「浅い浮き有り」のように評価してもよい。
また、浮き7の深さD2を測定することによって、浅い浮き有りのところは建物改修時にアンカーピンを増やすなどの対策をとることができるので有利となる。
また、状態評価装置10が検出する検査対象物4の状態が検査対象物4のひび割れ、汚損、剥落、空洞、漏水である場合は、ひび割れ、汚損、剥落、空洞、漏水のうち少なくとも一つが発生している状態を「損傷」という。状態評価装置10が検出する検査対象物4の状態が検査対象物4の温度、塗装の劣化である場合は、予め設定された値の範囲内である状態を「損傷」という。
評価部16Aによる個別情報の生成は、検出部12で検出された打音および振動の一以上の検出信号の周波数、振幅、波長などの検出結果に基づいてなされる。個別情報の生成の手法は、従来公知の様々な手法が採用可能である。
【0023】
なお、本実施の形態ではモルタル5は単層であるが、図7(B)に示すように複層のモルタル5でもよい。
また、本実施の形態では、検査対象物4であるタイルはモルタル5により建物躯体2に接着されるが、図7(C)に示すように、接着剤6により接着されてもよい。また、図7(D)に示すように、モルタル5と接着剤6の複層でもよい。また、図7(E)に示すように、有機系の下地調整剤9と接着剤6との複層でもよい。
【0024】
第1ローカル位置情報生成部16Bは、第1レーザースキャナ14Aから供給される第1走査情報に基づいて検出部12の位置を特定すると共に、特定した検出部12の位置を、第1レーザースキャナ14Aの走査中心点Oを第1基準点PLとする局所座標系におけるx方向およびy方向に沿った2次元位置情報である第1ローカル位置情報として生成するものである。
具体的に説明すると、第1走査情報は、検出部12の筐体1202の外形形状を示す情報を含んでいる。
本実施の形態では、第1ローカル位置情報生成部16Bは、予め測定された筐体1202の外形形状、寸法に基づいて第1走査情報から検出部12(筐体1202)の位置を特定する。
したがって、第1ローカル位置情報とは、第1基準点PLを原点とし、当該基準点を通る互いに直交するx軸、y軸によって規定される局所座標系における2次元位置情報であり、第1ローカル位置情報は、図3に示すx軸、y軸の座標値(x,y)で示される。
本実施の形態では、局所座標系におけるx軸およびy軸は、x方向(水平方向)およびy方向(鉛直方向)と平行している。なお、局所座標系におけるx軸およびy軸は、直交せず、任意の角度で交差してもよい。
本実施の形態では、第1ローカル位置情報は2次元位置情報であるが、3次元位置情報でもよい。
【0025】
本実施の形態では、第1ローカル位置情報生成部16Bは、検査対象物4の状態の検出がなされたことに対応して、本実施の形態では検出部12により検査対象物4を打撃した際に発生する打音および振動の一以上が検出されたことに対応して検出部12から供給されるトリガ信号を受け付けた直後に、第1レーザースキャナ14Aから供給される第1走査情報に基づいて検出部12の位置を示す位置情報を第1ローカル位置情報として生成するものである。なお、上記トリガ信号は検出部12が作動したことに対応して検出部12から供給されるものであってもよい。
前述したように、第1レーザースキャナ14Aの走査時間が25msecであれば、トリガ信号を受け付けてから25msec毎に第1レーザースキャナ14Aで第1走査情報が生成されて第1ローカル位置情報生成部16Bに供給される。
そのため、第1ローカル位置情報生成部16Bは、検出部12により検査対象物4の状態の検出がなされたのとほぼ同時に検出部12の位置を示す位置情報を第1ローカル位置情報として生成する。
したがって、第1ローカル位置情報生成部16Bによる第1ローカル位置情報の生成は、検査対象物4の状態の検出がなされることに対応して検出部12の位置情報を第1ローカル位置情報として生成することでなされる。
なお、第1レーザースキャナ14Aがトリガ信号に基づいて測定光の走査および反射光の検出を開始する機能を有するものであれば、トリガ信号を検出部12から第1レーザースキャナ14Aに供給するようにしてもよい。
【0026】
したがって、本実施の形態では、第1ローカル位置情報生成部16Bは、検査対象物4の位置情報を、局所座標系における2次元位置情報である第1ローカル位置情報として生成する。
【0027】
第2ローカル位置情報生成部16Cは、第2レーザースキャナ14Bから供給される第2走査情報に基づいて第1レーザースキャナ14Aの位置を特定すると共に第1レーザースキャナ14Aの走査中心点O、すなわち、第1基準点PLを第2ローカル位置情報として生成するものである。
ここで、第2ローカル位置情報は、第2レーザースキャナ14Bの走査中心点O、言い換えると、検査対象物4上に予め定められた点を第2基準点PGとする全体座標系におけるX方向およびY方向に沿った2次元位置情報である。
第2レーザースキャナ14Bの走査中心点Oは、第2レーザースキャナ14Bの測定光が操作する単一平面と第2レーザースキャナ14Bの走査中心軸Lとの交点である。
具体的に説明すると、第2走査情報は、第1レーザースキャナ14Aのケース1402の外形形状を示す情報を含んでいる。
本実施の形態では、第2ローカル位置情報生成部16Cは、予め測定された第1レーザースキャナ14Aのケース1402の外形形状、寸法に基づいて第2走査情報から第1レーザースキャナ14Aの走査中心点Oの位置を特定する。
すなわち、第2ローカル位置情報(第1レーザースキャナ14Aの走査中心点Oの2次元位置情報、すなわち図2に示す第1基準点PLの位置情報)は、第2基準点PGを原点とし、第2基準点PGを通る互いに直交するX軸、Y軸によって規定される全体座標系における2次元位置情報であり、X軸、Y軸の座標値(X+x、Y+y)で示される。ただし、x、yは局所座標系における第1レーザースキャナ14Aの走査中心点Oのx軸、y軸の座標値を示しており、x=0、y=0である。
本実施の形態では、全体座標系におけるX軸およびY軸は、前述した局所座標系におけるx軸およびy軸とそれぞれ平行しており、したがって、全体座標系におけるX軸およびY軸は、x方向(水平方向)およびy方向(鉛直方向)と平行している。
したがって、本実施の形態では、第2ローカル位置情報生成部16Cは、第1基準点PLを、全体座標系におけるX方向およびY方向に沿った2次元位置情報である第2ローカル位置情報として生成する。
【0028】
なお、局所座標系におけるx軸およびy軸は、x方向およびy方向と平行していればよく、直交せず、任意の角度で交差すればよい。
また、本実施の形態では、第2ローカル位置情報は2次元位置情報であるが、3次元位置情報でもよい。
また、本実施の形態では、第1基準点PLを第1レーザースキャナ14Aの走査中心点Oとした場合について説明したが、第1基準点PLは第1レーザースキャナ14Aの任意の箇所としてもよく、要するに第1基準点PLは局所座標系の原点として設定される点であればよい。
また、本実施の形態では、第2基準点PGを第2レーザースキャナ14Bの走査中心点Oとした場合について説明したが、第2基準点PGは第2レーザースキャナ14Bの任意の箇所としてもよく、要するに第2基準点PGは全体座標系の原点として設定される点であればよい。
なお、第2基準点PG自体の位置情報は、別のレーザースキャナにより測定して得てもよいし、あるいは、定規によって測定して得てもよく、従来公知の様々な方法で測定することができる。
【0029】
位置情報変換部16Dは、第1ローカル位置情報と第2ローカル位置情報(第1基準点PLの位置情報)とに基づいて、検査対象物4の検出箇所の位置情報である第1ローカル位置情報を、全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報に変換するものである。
第2ローカル位置情報及びグローバル位置情報は、第2レーザースキャナ14Bの走査中心点O、言い換えると、検査対象物4上に予め定められた点を第2基準点PGとする全体座標系における2次元位置情報である。
したがって、検査対象物4の検出箇所の位置情報を、全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報として得ることができる。
ここで、第1ローカル位置情報、第2ローカル位置情報、グローバル位置情報について説明する。
局所座標系における第1ローカル位置情報は、x軸、y軸の座標値(x,y)で示される2次元位置情報である。
また、第2ローカル位置情報(第1レーザースキャナ14Aの走査中心点Oの2次元位置情報、すなわち第1基準点PLの位置情報)は、第2基準点PGを原点とし、第2基準点PGを通る互いに直交するX軸、Y軸によって規定される全体座標系における2次元位置情報であり、X軸、Y軸の座標値(X+x、Y+y)(ただしx=y=0)で示される。
座標系におけるグローバル位置情報は、ローカル位置情報(2次元位置情報(x,y))と、第2ローカル位置情報(2次元位置情報(X,Y))とに基づいて生成される2次元位置情報(X+x,Y+y)である。
【0030】
検査対象物評価情報生成部16Eは、評価部16Aから供給される個別情報と、位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成するものである。
本実施の形態では、検査対象物評価情報生成部16Eは、個別情報とグローバル位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する。
したがって、グローバル位置情報に基づいて検査対象物4全体の検出箇所の位置を特定して個別情報を確認できるため、検査対象物4が広い面積であり、検査対象物4の検出箇所が多数にわたって存在する場合であっても、検査対象物4の状態を的確に評価する上で有利となる。検査対象物4の浮きが検査対象物4全体の中のどこで発生しているのかを正確に特定することができる。
【0031】
記憶部16Gは、検査対象物4の画像情報と検査対象物評価情報とを関連付けて記憶するものである。
検査対象物4の画像情報は、予めカメラなどの撮像装置で撮像することで得た画像情報であってもよく、あるいは、CADデータから生成された検査対象物4の立面図を示す画像情報であってもよく、あるいは、検査対象物4を模式的に示した画像情報であってもよい。
表示部16Iは、画像を表示するものである。
表示制御部16Fは、表示部16Iに各種情報を表示させるものである。
表示制御部16Fは、記憶部16Gから読み出した画像情報に基づいて検査対象物4の画像を表示部16Iに表示させると共に、記憶部16Gから読み出した検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される検査対象物4の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別情報を表示させる。すなわち、表示部16Iに表示された検査対象物4の画像に重ね合わせて、個別情報を表示させる。
このような表示は、例えば記憶部16Gに記憶されている建物外面の画像情報上に、個別情報に対応するアイコンなどを直接描画することによって行う。表示後は、個別情報が書き込まれた画像を、記憶部16Gに保存してもよい。
表示部16Iによる個別情報の表示は、例えば個別情報をその評価内容に対応付けられた複数種類の色を呈するマークで表示することによって行う。より詳細には、例えば検査対象物4の浮きが有る箇所は赤色のマークで、検査対象物4の浮きが無い箇所は青色のマークで表示するなどである。
また、検査対象物4の浮きの度合いが大きいほど(背面の空洞が深いほど)赤色の濃度を濃くし、検査対象物4の浮きの度合いが小さいほど(背面の空洞が浅いほど)赤色の濃度を薄くしたマークで表示するようにしてもよい。
なお、評価結果の表示は色の濃淡や種類によって限定されるものではなく、検査対象物4の状態の検出結果を示す生データや評価パラメータ等の数値、検査対象物4の状態の検出結果を表す数値や、検査対象物4の状態の検出結果を表す情報など従来公知の様々な方法を選択してもよい。
操作部16Hは、コンピュータ16に対する操作を行なうものである。
【0032】
図2に示すように、評価対象となる建物躯体2の屋上には、ゴンドラ28をワイヤ32を介して吊り下げると共に、ゴンドラ28を検査対象物4に沿って水平方向および鉛直方向に移動させるゴンドラ搬送装置34が設けられている。
本実施の形態では、検査対象物4の状態の検出作業をゴンドラ28を動かしながら行なう。
例えば、検査対象物4の最上部でかつ水平方向の一方の端部にゴンドラ28を位置させ、図3に示すように、ゴンドラ28内で作業者Mが水平方向に移動しながら検出部12により検査対象物4の状態の検出作業を行なう。
ゴンドラ28の幅に応じた検査対象物4の領域の状態の検出作業が終了したならば、ゴンドラ28を所定距離下方に移動させ、上記と同様にゴンドラ28内で作業者Mが水平方向に移動しながら検出部12により検査対象物4の状態の検出作業を行なう。
このような作業を繰り返してゴンドラ28が検査対象物4の下端まで移動して検査対象物4の状態の検出作業が終了したならば、ゴンドラ28をゴンドラ28の幅に相当する分だけ水平に移動させると共に、ゴンドラ28を上部まで移動させる。
そして、上記と同様にゴンドラ28内で作業者Mが水平方向に移動しながら検出部12により検査対象物4の状態の検出作業を行ない、検出作業が終了したならば、ゴンドラ28を所定距離下方に移動させる。
このようなゴンドラ28の上部から下方への移動、水平方向の移動、下部から上方への移動を繰り返しながら、検査対象物4の全域にわたって状態の検出作業を行なう。
なお、ゴンドラ28の上下方向への移動は、上部から下方へ移動してもよく、下部から上方へ移動してもよい。ゴンドラ28の設置場所は、検査対象物4の状態の検出作業を行うことができる場所であればどこでもよい。
【0033】
次に、状態評価装置10を用いた具体的な作業について図2図3図4および図6のフローチャートを参照して説明する。
作業者Mは、評価対象となる検査対象物4の表面に第2レーザースキャナ14Bを取り付けることで、第2基準点PG(第2レーザースキャナ14Bの走査中心点O)を設置する(ステップS10)。
なお、本実施の形態では、検査対象物4の下部寄りの箇所に第2レーザースキャナ14Bを取り付け、ゴンドラ28が同一の水平方向の位置に位置している場合は、ゴンドラ28の鉛直方向の位置に拘わらず第2レーザースキャナ14Bの水平方向の位置を固定し、第1レーザースキャナ14Aを第2レーザースキャナ14Bの検出範囲内でゴンドラ28の鉛直方向の位置に合わせて移し替えて設置する場合について説明する。
また、ゴンドラ28が水平方向に移動する毎、ゴンドラ28の水平方向の位置に合わせて第2レーザースキャナ14Bを水平方向に移し替えて設置する場合について説明する。
しかしながら、第1レーザースキャナ14Aに第2レーザースキャナ14Bの測定光が届くのであれば、第2レーザースキャナ14Bを取り付ける箇所は限定されない。
また、第2レーザースキャナ14Bの設置にあたっては前述した第2姿勢調整機構24Bおよび水準器を用いて第2レーザースキャナ14Bの走査中心軸Lが検査対象物4の表面と直交するように第2レーザースキャナ14Bの姿勢を調整する。
また、図2の例では、第2レーザースキャナ14Bは検査対象物4の地表近傍の箇所に取り付けられているが、第2レーザースキャナ14Bを検査対象物4の上部に取り付けるなど任意である。
【0034】
次に作業者Mは、作業者Mは検出部12およびコンピュータ16を所持してゴンドラ28に乗り、状態の検出作業を開始する領域の近傍の検査対象物4の箇所に移動し、第1レーザースキャナ14Aを取り付けることで、第1基準点PL(第1レーザースキャナ14Aの走査中心点O)を設置する(ステップS12)。
また、第1レーザースキャナ14Aの設置にあたっては第2レーザースキャナ14Bの設置の場合と同様に、第1姿勢調整機構24Aおよび水準器を用いて第1レーザースキャナ14Aの走査中心軸Lが検査対象物4の表面と直交するように第1レーザースキャナ14Aの姿勢を調整する。
【0035】
第1レーザースキャナ14A、第2レーザースキャナ14Bが設置されることにより、第2ローカル位置情報生成部16Cは、第2走査情報から第2ローカル位置情報を生成する(ステップS14)。
【0036】
次に、図3図4に示すように、作業者Mは、検出部12を診断対象となる検査対象物4の表面に当接させ、検出部12を操作することにより検出部12による検出動作が行われる(ステップS16)。
検出部12の動作により、検査対象物4の表面が打撃され打音および振動の一以上が検出され、その検出結果(検出信号)が評価部16Aに供給される(ステップS18)。
評価部16Aは、検出結果に基づいて検査対象物4の損傷、例えば浮きの有無を判定すると共に、図9で説明したように、検査対象物4の背面に形成された浮き7の深さD2に基づいて浮きの程度を判定する。
すなわち、評価部16Aは、検査対象物4の損傷の有無および損傷の程度を示す個別情報を生成する(ステップS20)。
【0037】
また、検出部12からのトリガ信号が供給されることで第1ローカル位置情報生成部16Bにより第1走査情報に基づいて第1ローカル位置情報が生成される(ステップS22)。
位置情報変換部16Dは、第1ローカル位置情報生成部16Bから供給された第1ローカル位置情報と、第2ローカル位置情報生成部16Cから供給された第2ローカル位置情報とに基づいて、検査対象物4の検出箇所の位置情報であるローカル位置情報を、全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報に変換する(ステップS24)。
【0038】
次に、検査対象物評価情報生成部16Eは、個別情報と、検査対象物4の検出箇所の位置情報(グローバル位置情報)とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、(ステップS26)、生成された検査対象物評価情報は記憶部16Gに格納される(ステップS28)。
【0039】
作業者Mは次に検出すべき検査対象物4の箇所があるか否かを判断する(ステップS30)。
ステップS30が肯定ならば、ステップS16に戻る。
すなわち、作業者Mがゴンドラ28内を水平方向に移動することで、また、検出部12の高さを高い位置から低い位置に移動させて検出部12による検出動作を上記と同様の手順で行なう。
【0040】
次いで、次にゴンドラ28内で検出できる検査対象物4の箇所が無ければ(ステップS30で否定)、第2レーザースキャナ14Bを水平方向に移動するか否かを判断する(ステップS32)。すなわち、第1レーザースキャナ14Aが鉛直方向において第2レーザースキャナ14Bの検出範囲の全域にわたって移動したか否かを判断する。
ステップS32が否定ならば、ゴンドラ28を下方に移動させ(ステップS34)、第1レーザースキャナ14Aを下方に移し替えて設置し(ステップS12)、以下同様の作業を繰り返す。
また、ステップS32が肯定ならば、検査対象物4の全域にわたって検出動作が行われたか否かを判断する(ステップS36)。
ステップS36が否定ならば、ゴンドラ28を水平方向に移動させると共に、最上部へ移動させ(ステップS38)、第2レーザースキャナ14Bをゴンドラ28と同様に水平方向に移し替えて設置し(ステップS12)、以下同様の作業を繰り返す。
ステップS36が肯定ならば表示制御部16Fにより、検査対象物4の画像を表示部16Iに表示させると共に、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される検査対象物4の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別情報を表示させ、一連の作業を終了する(ステップS40)。
【0041】
なお、本実施の形態では、画像情報と位置情報と個別情報とを表示部16Iの表示画面上に表示する場合について説明したが、コンピュータ16にプリンタ装置を接続し、画像情報と位置情報と個別情報とを印刷媒体上に印刷により表示させるようにしてもよいことは無論である。この場合、表示部16Iはプリンタ装置によって構成されることになる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1レーザースキャナ14Aで生成される第1走査情報に基づいて、検査対象物4の検出箇所の位置情報を、局所座標系における2次元位置情報である第1ローカル位置情報として検出し、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成した。
したがって、カメラを用いて検査対象物4の検出箇所の位置情報を検出する場合に比較して、検査対象物4の検出箇所とカメラとの間のワーキングディスタンスを確保する必要がなく、第1レーザースキャナ14Aを用いて検出部12を走査するに足る最小限のスペースを確保すれば足りる。
したがって、検査対象物4の周囲に確保するスペースを確保しにくい場合であっても検査対象物4の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利となる。
【0043】
また、本実施の形態では、第2レーザースキャナ14Bで生成される第2走査情報に基づいて第1レーザースキャナ14Aの位置を特定すると共に第1基準点PLを、第2レーザースキャナ14Bの箇所を第2基準点PGとしこの第2基準点PGを原点とする座標系における第2ローカル位置情報として生成し、第1ローカル位置情報と第2ローカル位置情報とに基づいて、第1ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換し、個別情報とグローバル位置情報とを関連付けることで検査対象物評価情報を生成するようにした。
したがって、検査対象物4の検出箇所の位置情報を、検査対象物4上に予め定められた第2基準点PGとする全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報として求めることができるため、面積が広大な検査対象物4の検出箇所の位置情報を正確に特定する上で有利となる。
また、第2レーザースキャナ14Bを用いて第2ローカル位置情報を得ることができるため、状態評価装置10の構成の簡素化、作業の効率化を図る上で有利となる。
【0044】
また、本実施の形態では、第1レーザースキャナ14Aの姿勢を調整する第1姿勢調整機構24Aが設けられているので、第1走査情報を正確に得ることができるため、検査対象物4の検出箇所の位置情報をより正確に検出でき、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報の精度を高める上で有利となる。
また、本実施の形態では、第2レーザースキャナ14Bの姿勢を調整する第2姿勢調整機構24Bが設けられているので、第2走査情報を正確に得ることができため、第2ローカル位置情報をより正確に検出できる。その結果、検査対象物4の検出箇所の位置情報をより正確に検出できるので、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報の精度を高める上で有利となる。
【0045】
また、本実施の形態では、第1ローカル位置情報生成部16Bによる第1ローカル位置情報の検出は、検査対象物4の状態の検出がなされることに対応して検出部12の位置情報を第1ローカル位置情報として生成することでなされるので、検査対象物4の状態の検出がなされた時点での検出部12の位置情報を正確に得る上で有利となる。
【0046】
また、本実施の形態では、検出部12が検査対象物4を打撃した際に生じる物理量を検出するので、物理量として打撃力、打音および振動の一以上の物理量を検出するようにすれば、検査対象物4における浮き(建物躯体2と検査対象物4との剥離)やひびの状態を検出することができる。
【0047】
また、本実施の形態では、検出部12によって検出された検査対象物4の状態を示す個別測定情報に基づいて、評価部16Aが検査対象物4の状態を評価して個別情報を生成するようにしたので、個別測定情報を評価した個別情報に基づいて検査対象物4の状態を的確に評価する上で有利となる。
【0048】
また、本実施の形態では、評価部16Aが建物躯体2に接着された検査対象物4の浮きの有無を効率的よく評価する上で有利となる。
また、本実施の形態では、評価部16Aが浮きの深さを評価するので、浮きの深さに応じて適切な補修作業を行なう上で有利となる。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に、図8を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態では、検査対象物4にバルコニーなどのゴンドラ28の移動を遮り、また、レーザースキャナの測定光を遮る障害物が存在している場合について説明する。
図8に示すように、検査対象物4に鉛直方向に間隔をおいて複数のバルコニー6、すなわち、バルコニー6A、6Bが設けられているものとする。
この場合、ゴンドラ28がバルコニー6A、6Bと干渉しない範囲では、第1の実施の形態と同様にゴンドラ28の鉛直方向の位置に合わせて第1レーザースキャナ14Aを移し替えて設置することで検査対象物4に対する検出作業を行なうことができる。
しかしながら、ゴンドラ28がバルコニー6A、6Bと干渉する範囲では検査対象物4に対する検出作業を行なうことができない。
したがって、作業者Mはバルコニー6A、6Bに移動してバルコニー6A、6B内で検査対象物4に対する検出作業を行なうことになる。
この際、第1レーザースキャナ14Aからの測定光がバルコニー6A、6Bによって遮られることなく作業者Mが把持する検出部12に到達するように、あるいは、第2レーザースキャナ14Bからの測定光がバルコニー6A、6Bによって遮られることなく第1レーザースキャナ14Aに到達するように、第1レーザースキャナ14A、第2レーザースキャナ14Bを移し替えて設置すればよい。
このように障害物が存在する場合であっても、第1レーザースキャナ14Aと第2レーザースキャナ14Bを移動させることにより、検出部12の位置情報、すなわち、検査対象物4の位置情報を確実に検出することできるため、検査対象物4の状態の評価を的確に行なう上で有利となる。
【0050】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について図9を参照して説明する。
第3の実施の形態は、建物躯体2の近傍に足場8を構築し、作業者Mが足場8を利用して検査対象物4に対する検出作業を行なう場合について説明する。
この場合、第1、第2レーザースキャナ14A、14Bは、それらの測定光が足場8と検査対象物4との間の空間で走査される。
しかしながら、足場8と建物躯体2のとの間に落下防止用の板などが設置されている場合には、落下防止用の板が障害物となり測定光が遮られることが考えられる。
その場合は、第2の実施の形態と同様に、障害物で走査光が遮られないように第1、第2レーザースキャナ14A、14Bの一方または双方を移動させればよく、このように足場8を用いて検出作業を行なう場合であっても、検出部12の位置情報、すなわち、検査対象物4の位置情報を確実に検出することできるため、検査対象物4の状態の評価を的確に行なう上で有利となる。
なお、足場8を利用して検査対象物4に対する検出作業を行なう場合、第1、第2レーザースキャナ14A、14Bを支持部材を介して足場8に取り付けるようにしてもよい。
【0051】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について図10を参照して説明する。
第4の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例であり、目視によって検出した検査対象物4の状態を個別情報として入力できるようにした点が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、各実施の形態では、検査対象物4の状態が検出部12によって検出される物理量である場合について説明した。
しかしながら、例えば、検出部12を用いた作業中、検査対象物4のひび、汚れや変色といった作業者Mが目視によって検出できる検査対象物4の状態がある。
そのため、第4の実施の形態では、作業者Mが目視で検出した検査対象物4の状態を個別情報として入力する状態入力部16Jを設け、検査対象物評価情報生成部16Eによって個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成するようにした。
この場合、状態入力部16Jは、コンピュータ16で構成され、具体的には、ひび、汚れ、変色といった状態を入力するための操作ボタンをそれぞれ表示部16Iに表示させ、タッチパネルで操作ボタンをタッチすることでそれら状態を入力するようにする。なお、状態入力部16Jは、上記コンピュータ16とは別のコンピュータで構成してもよい。
第1ローカル位置情報生成部16Bは、目視で検出した検査対象物4の箇所に検出部12を位置させた状態で上記操作ボタンを操作することにより状態入力部16Jから供給されるトリガ信号に対応して検出部12の位置情報を第1ローカル位置情報として生成する。
言い換えると、第1ローカル位置情報生成部16Bは、目視で検出した検査対象物4の箇所に検出部12を位置させた状態でなされる状態入力部16Jによる個別情報の入力に対応して検出部12の位置情報を第1ローカル位置情報として生成する。
このようにすると、検査対象物4の個別情報として、目視で検出した検査対象物4の状態を示す情報を付加することができ、検査作業をより効率的に行なう上で有利となる。
【0052】
なお、実施の形態では、検査対象物4が建物の外装材であるタイルであり、検査対象物4の浮きの状態を評価する場合について説明したが、本発明は、建物の外装材の状態を評価する場合に限られず内装材の状態を評価する場合などに広く適用可能である。
さらに、本発明は、建物の室内の壁面、室内のコンクリート躯体、玄関、廊下、床、天井などを評価する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物4が建物に限定されず、橋梁、ダム、トンネル、道路、通路などの構造物などを評価する場合に広く適用可能である。
【0053】
また、実施の形態では、検査対象物4の状態の検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と、検査対象物4の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、また、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別情報を表示部16Iに表示させる場合について説明した。
しかしながら、評価結果を示す個別情報に代えて、検査対象物4の状態の検出結果を示す個別情報と、検査対象物4の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、また、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別情報を表示部16Iに表示させるようにしてもよい。
【0054】
例えば、検査対象物4の状態として温度を検出する場合、温度の測定値(生データ)を個別情報として扱い、温度の測定値(個別情報)と検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた温度の測定値を個別情報として表示部16Iに表示させるようにしてもよい。
このようにすると、検出部12によって検出された検査対象物4の状態を示す個別情報そのものを評価する上で有利となる。
【0055】
また、温度の測定値と検査対象物4の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成したのち、検査対象物評価情報に含まれる個別情報に基づいて評価を行い、その評価結果を個別情報として生成し、この個別情報を検査対象物評価情報に含まれる位置情報と関連付けるようにしてもよい。この場合、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、位置情報に関連付けられた個別情報を、表示部16Iに表示させるようにしてもよい。
このようにすると、個別情報に基づいて検査対象物4の状態を的確に評価する上で有利となる。
【0056】
また、本実施の形態では、第2レーザースキャナ14Bと第2ローカル位置情報生成部16Cを設けることで、第1基準点PLを、第2レーザースキャナの箇所(検査対象物4上に予め定められた点)を第2基準点PGとしこの第2基準点PGを原点とする座標系における第2ローカル位置情報として生成する場合について説明した。
しかしながら、全体座標系における第1基準点PLの第2ローカル位置情報を検出できればよいのであり、第2レーザースキャナ14Bと第2ローカル位置情報生成部16Cに代えて従来公知の様々なものが採用可能である。
例えば、検査対象物4から離間した地上に設置されたトータルステーションを用いて第2ローカル位置情報を生成してもよい。
この場合、予め第2基準点PGを示す指標(マーク)を検査対象物4に設けておく。
また、第1レーザースキャナ14Aのケース1402にも第1基準点PLを示す指標(マーク)を設けておく。
そして、トータルステーションは、第2基準点PGおよび第1基準点PLをターゲットとしてそれらの測距および測角を行い、第2基準点PGを通るX軸、Y軸によって規定される全体座標系における第1基準点PLの2次元位置情報を第2ローカル位置情報として検出する。
この場合、トータルステーションは、第1基準点を、検査対象物4上に予め定められた点を第2基準点としこの第2基準点を原点とする座標系における第2ローカル位置情報として検出する第2ローカル位置情報検出部を構成する。
したがって、トータルステーションのような既存の設備を第2ローカル位置情報検出部として用いることで、第1の実施の形態と同様に、面積が広大な検査対象物4の検出箇所の位置情報を正確に特定する上で有利となる。
しかしながら、実施の形態のように、第2レーザースキャナ14Bと第2ローカル位置情報生成部16Cにより第2ローカル位置情報を生成すると、トータルステーションのような高価な設備を使用する必要がなく、コストダウンを図る上で有利であり、また、トータルステーションを設置するスペースが確保できない場合でも検査対象物4の状態の検出作業を行なうことができ有利である。
【符号の説明】
【0057】
2 建物躯体
4 検査対象物
7 浮き
10 状態評価装置
12 検出部
14A 第1レーザースキャナ
14B 第2レーザースキャナ
1402 ケース
16 コンピュータ
16A 評価部
16B 第1ローカル位置情報生成部
16C 第2ローカル位置情報生成部
16D 位置情報変換部
16E 検査対象物評価情報生成部
16J 状態入力部
24 姿勢調整機構
L 走査中心軸
O 走査中心点
PL 第1基準点
PG 第2基準点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10