(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】グラウンドアンカーの頭部構造
(51)【国際特許分類】
E02D 5/80 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
(21)【出願番号】P 2019086639
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000170646
【氏名又は名称】国土防災技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593112252
【氏名又は名称】サンスイ・ナビコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316000965
【氏名又は名称】合同会社北谷中村
(73)【特許権者】
【識別番号】316000954
【氏名又は名称】旭建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】翁長 淳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勉
(72)【発明者】
【氏名】東 康治
(72)【発明者】
【氏名】小町 理
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-234501(JP,A)
【文献】特開2017-141570(JP,A)
【文献】特開2009-185551(JP,A)
【文献】特開平06-248646(JP,A)
【文献】特開2002-004275(JP,A)
【文献】特開平10-266200(JP,A)
【文献】実開昭63-005037(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第03396069(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E02D 17/00-17/20
E21D 20/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカープレート(1)から
地表に突出したECFストランド(2)を
、筒形の内外に外径ねじ(4)・内径ねじ(5)を設けたステンレス製テンドングリップ(3)に嵌入し、そのテンドングリップに
、当該テンドングリップの状態を外部から目視できるすき間を有するコイル状の落石プロテクタ(6)を嵌合し、当該テンドングリップ(3)の先端の外径ねじ(4)にねじ蓋(8)を螺合し
、
前記テンドングリップの外径と前記落石プロテクタの内径とのすき間が確保されるように、前記ねじ蓋の細径部と、前記テンドングリップの前記アンカープレート側に螺合された定着ナットの細径部とに、前記落石プロテクタの両端を嵌合したことを特徴とする
グランドアンカーの頭部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンドアンカーの頭部構造に関し、アンカー頭部を保護する頭部キャップを被せないで設置してアンカー頭部全体を目視点検できると共に、その頭部を頭部キャップなしで保護できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、グラウンドアンカーの頭部は、保護するための保護キャップを被せた内部にはアンカー頭部のPC鋼より線や定着クサビ及びアンカーヘッドなど、頭部部材の腐食を防止するために防錆材を充填している。
【0003】
そのグラウンドアンカーにおける不具合が発生する個所の90%以上は頭部及び頭部背面であるといわれている。これらを日常的に又は定期的に又は異常発生時に目視で点検後、健全性調査を実施して、破損・劣化部材などを補修することで、現在のグラウンドアンカーと同等の防食性能まで向上させることが可能になる。
【0004】
上記の目視による点検は、アンカー頭部を保護するために被せられている頭部キャップを取り外して内部を目視点検することは通常であった。従来のキャップは分厚い板厚で重いものであったため、その脱着は面倒である共に、のり面などの足場の悪い場所や高所での作業には危険が伴っていた。また、補修時での劣化防錆材の除去及び新規防錆材の充填作業についても手間を要していた。
【0005】
そこで、従来においても保護キャップを外さず、被せたままの状態でアンカー頭部の点検に関する提案は行われている。
【0006】
特許文献1は、アンカー端部の健全性のチェックを頭部背面の分解を必要とせず、容易に目視チェックすることができる頭部背面の構造を提供する。
【0007】
特許文献2は、グラウンドアンカー頭部構造に関し、その頭部及び頭部背面構造を分解することを必要とせずに、アンカーヘッド上方の領域におけるテンドンの状態を容易に視認(目視)することができるものである、としている。
【0008】
特許文献3は、施工現場で作業者がどの様な位置から見ても定着具、テンドン、防錆材(グリースなど)を視認或いは目視することが出来るアンカー頭部維持管理構造と、それを施工及び管理方法である。
【0009】
特許文献4は、頭部キャップを取り外すことなく内部の観察を可能にし、しかも内部に充填された防錆油の劣化を防止することができるアンカー用頭部キャップと、これを点検する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第4793952号公報
【文献】特開2014-125769号公報
【文献】特開2017-106188号公報
【文献】特開2018-135742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1~4は、いずれもキャップの一部に窓を設けて目視点検をする構造であるが、アンカー頭部に保護キャップを被せた状態であるから、内部をくまなく全体を目視することは困難である。そこで、アンカー頭部に被せる保護キャップをなくせばアンカー頭部全体を目視点検することができる。ただし、この場合は、アンカー頭部を設置場所における落石などから防がなければならない。そこで、本発明は、アンカー頭部にキャップそのものを被せないでもアンカー頭部を保護管理できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、グランドアンカーの頭部構造において、アンカープレートから地表に突出したECFストランドを、筒形の内外にねじを設けたステンレス製テンドングリップに嵌入し、そのテンドングリップに、当該テンドングリップの状態を外部から目視できるすき間を有するコイルばね状の落石プロテクタを嵌合し、当該テンドングリップの先端の外径ねじにねじ蓋を螺合し、前記テンドングリップの外径と前記落石プロテクタの内径とのすき間が確保されるように、前記ねじ蓋の細径部と、前記テンドングリップの前記アンカープレート側に螺合された定着ナットの細径部とに、前記落石プロテクタの両端を嵌合したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記の構成であるから、次のような効果がある。
第1に、アンカープレートから突出しているテンドングリップには保護キャップを被せていないので、日常的又は定期的又は異常発生時の点検において、テンドングリップの全方位を目視することができる。また、定着ナット、球面座金の状態も一目で点検できる。なお、点検時に目視できないが、テンドングリップに嵌入しているECFストランド(内部充填型エポキシ樹脂被覆PC鋼より線)は定着用膨張材で把持する構造としており、十分な耐食性を有していることから長期の年月を経過しても腐食する恐れがない。
第2に、テンドングリップはステンレス製であるから、従来被せていた防錆保護キャップを用いないで長期の年月を経過してもテンドングリップが腐食する恐れがなくなり、維持管理が容易確実である。
第3に、ステンレス製のテンドングリップの外径にねじ山が設けられており、そのまま露出した状態では、設置した後に、法面からの崩落による小石などがテンドングリップに当たってねじ山を潰す恐れがあるが、圧縮コイルばね状や線輪円筒状のプロテクタ又は圧縮コイルばね自体が当該テンドングリップの外径全長にわたって嵌合しているから外径ねじを潰す恐れがなくなる。
第4に、テンドングリップの頭部先端において、その内径ねじにプロテクタ受け座付きねじ栓又は外径ねじにプロテクタ受け座付きねじ蓋を螺合したから、当該テンドングリップの内径ねじを保護すると共に、テンドングリップに嵌合した圧縮コイルばねの脱落を防止することができる。
第5に、圧縮コイルばねは、テンドングリップと同様にステンレス製であるから、保護キャップを被せなくても、腐食することないことは勿論のこと、圧縮コイルばねのすき間を通じてテンドングリップの状態を目視できるから、栓ねじや蓋ねじを外さなくても点検観察を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1から圧縮コイルばねとねじ栓を除いたアンカー頭部の斜視図である。
【
図4】圧縮コイルばね状プロテクタの斜視図である。
【
図6】テンドングリップの内径ねじに螺合するねじ栓と座金の側面図である。
【
図7】圧縮コイルばねを嵌合し、ねじ蓋を螺合したテンドングリップの斜面図である。
【
図8】テンドングリップの外径ねじに螺合するねじ蓋の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るグラウンドアンカー頭部の点検構造の形態は次のとおりである。すなわち、アンカープレートから突出して露呈したECFストランドを筒形の内外にねじを設けたステンレス製テンドングリップに嵌入し、そのテンドングリップに圧縮コイルばねからなる落石プロテクタを嵌合し、当該テンドングリップ先端の内径ねじにねじ栓を螺合し、又は当該テンドングリップ先端の外径ねじにねじ蓋を螺合してなるものである。
【実施例】
【0018】
次に本発明に係るグラウンドアンカー頭部の点検構造の実施例を図面に沿って説明する。図において、1は地盤の表面Nに設置したアンカープレート、2はアンカープレート1から突出して露呈している付着型ECFストランドである。ここにいうECFストランドとは、内部充填型エポキシ樹脂被覆PC鋼より線のことを意味し、エポキシ樹脂を防食被覆としてのPC鋼材のことである。3はECFストランド2に、その頭部側先端から嵌合するステンレス製の円筒形テンドングリップである。なお、当該テンドングリップ3は、工事施工現場の条件によって、
図1と
図3、
図7に示すようにその突出長さが異なるものである。
4はテンドングリップ3の外径に全長にわたって設けた外径ねじである。5はそのテンドングリップ3の頭部先端部外径に設けた外径ねじであり、テンドングリップ3の頭部先端からねじ栓の雄ねじ7
1が収まる長さに設けてある。
【0019】
6はPC鋼より線1に嵌合する圧縮コイルばね又は線輪の円筒状からなる落石プロテクタである。
図4に示すものは、単一本のコイルばねにしたものである。当該圧縮コイルばねの線径は7mm、各コイルばね線間の間隔は15mmに設定してある。また、線輪円筒状は複数のリングを等間隔に配置し、その複数のリングの外形に複数本の細棒体6
1を渡して溶接等で接合してある(
図5)。
【0020】
上記の落石プロテクタ6は、円筒形テンドングリップ3の長さに合わせて、その全長を覆う長さに設定し、形状は円筒状を成し、その内径はテンドングリップ3の外径より大径になっているため、これを嵌合すると両者3・6に適度の隙間gが形成されるから、これが外径ねじ4に接触して傷つけるような恐れがない。
【0021】
なお、
図8にあっては、ねじ蓋8の細径部と定着ナット10の細径部に落石プロテクタ6を構成する圧縮コイルばねの両端を嵌合することにより、テンドングリップ3の外径と圧縮コイルバネ6の内径との隙間gが均等に確保され、当該コイルばねが外径ねじ4に接触して傷付けることは全くなくなる。
【0022】
7はテンドングリップ3の先端の内径ねじ5に螺合する雄ねじ7
1を有しているねじ栓であり、その大径部7nで落石プロテクタ6を成形する圧縮コイルばね又は線輪円筒体の端部の受け座となっている(
図6)。8は当該テンドングリップ3の先端の外径ねじ4に螺合する雌ねじ8
1を有するねじ蓋であり、その大径部8nで落石プロテクタ6を成形する圧縮コイルばね又は線輪円筒体の端部の受け座となっている(
図7及び
図9)。9はアンカープレート1の穴9
1に嵌めたテンドングリップの保護管9n付きの球面型の座金、10はテンドングリップに螺合して球面座金を締め付ける定着ナット、11はテンドングリップ3内において充填したECFストランド2を把持するための定着用膨張材を示す。
【0023】
[具体的な設置例]
上記構成において、土中の掘削孔に予めテンドングリップ3に定着用膨張材11でECFストランド2を把持して組立てた、グラウンドアンカー体を装入し、アンカープレート1及びこれに重ねた球面座金9の孔91からのり面外方に突出し、そのテンドングリップ3の外径ねじ4に定着ナット10を螺合し、球面座金9を介してアンカープレート1を強固に締め付けてのり面Nに押圧定着する。
【0024】
この状態でテンドングリップ3に圧縮コイルばね又は線輪円筒状からなる落石プロテクタ6を嵌合し、テンドングリップ先端の内径ねじ5にねじ栓7を、又は外径ねじ4にねじ蓋8を螺合する。
【0025】
これによって、のり面Nに設置した後、日常点検、定期的点検、異常時発生時の点検において、在来のアンカー頭部の一部の設けた目視窓付きキャップの点検に比較して露出したコイルばね状の落石防止プロテクタ付きのテンドングリップ3、定着ナット10、球面座金9の全方位を目視点検することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…アンカープレート
2…ECFストランド
3…テンドングリップ
4…外径ねじ
5…内径ねじ
6…落石プロテクタ
61…細棒体
7…ねじ栓
71…ねじ栓の雄ねじ
7n…ねじ栓の大径部
8…ねじ蓋
81…ねじ蓋の雌ねじ
8n…ねじ蓋の大径部
9…球面座金(テンドングリップ保護管9n付き)
91…孔
10…定着ナット
11…定着用膨張材