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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】重量物の固定・解除方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/06 20060101AFI20230315BHJP
   B66F 3/24 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
E01D21/06
B66F3/24 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019108011
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020200147
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(73)【特許権者】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】森脇 幸次
(72)【発明者】
【氏名】細渕 誠二
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104565(JP,A)
【文献】特開2000-351599(JP,A)
【文献】実開昭60-100411(JP,U)
【文献】特開2006-283323(JP,A)
【文献】米国特許第4228114(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
B66F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を固定基盤に沿って駆動ユニットで移送する方法において、
前記重量物に設けた設置梁に、前記重量物の一方向の移動をロックする第1のロック装置と前記重量物の逆方向の移動をロックする第2のロック装置を1対として複数対を複数本のPC鋼より線に装着する工程と、
前記複数本のPC鋼より線を、前記重量物の移送方向の前方の前記固定基盤に設けた前方アンカー部と後方の前記固定基盤に設けた後方アンカー部との間に、前記第1のロック装置と前記第2のロック装置を貫通して張り渡し固定する工程と、
前記第1のロック装置と前記第2のロック装置のロックを解除して前記駆動ユニットにより前記PC鋼より線に沿って前記設置梁とともに前記重量物を移送する工程と、
前記重量物の移動固定信号の入力で前記第1のロック装置と第2のロック装置を構成するチャック定着装置のロック押し込み装置に蓄圧された圧油を送り、前記ロック用PC鋼より線をチャック定着装置で咬着してロックする工程と、
前記それぞれのチャック定着装置に結合された均一化用センターホールジャッキを含むイコライズ手段により、前記複数本のロック用PC鋼より線に負荷がかかったときの張力を均一にする工程と、
前記重量物の移動固定を解除する信号の入力で前記第1のロック装置と第2のロック装置を構成するチャック定着装置のロック解除装置に圧油を送り、それぞれのロック用PC鋼より線の咬着を解いてロックを解除する工程と
からなることを特徴とする重量物の固定・解除方法。
【請求項2】
前記ロックする工程は、前記重量物の固定信号が地震波の受信信号を包含することを特徴とする請求項1記載の重量物の固定・解除方法。
【請求項3】
前記ロックする工程とロックを解除する工程は、ロック装置本体の中央に設けられロック用PC鋼より線を咬着自在に貫通した円錐形ウエッジと、この円錐形ウエッジの大径端に臨設したロック押し込み装置と、前記円錐形ウエッジの小径端に臨設したロック解除装置とを用いて行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の重量物の固定・解除方法。
【請求項4】
前記張力を均一にする工程は、すべての均一化用センターホールジャッキを連通する連通ボックスと、この均一化用センターホールジャッキの油の出入りを制御するイコライズ用ポンプユニットを用いて行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の重量物の固定・解除方法。
【請求項5】
重量物を固定基盤に沿って駆動ユニットで移送する装置において、
前記重量物に設けた設置梁に、前記重量物の一方向の移動のロックとロックの解除をする第1のロック装置と前記重量物の逆方向の移動のロックとロックの解除をする第2のロック装置を1対として設けた複数対のロック手段と、
前記重量物の移送方向の前方の前記固定基盤に設けた前方アンカー部と後方の前記固定基盤に設けた後方アンカー部との間に、前記第1のロック装置と前記第2のロック装置を貫通して張り渡した複数本のロック用PC鋼より線と、
前記第1のロック装置を構成するチャック定着装置と前記第2のロック装置を構成するチャック定着装置に結合された前記複数本のロック用PC鋼より線に負荷がかかったときの張力を均一にする均一化用センターホールジャッキを含むイコライズ手段と
からなることを特徴とする重量物の固定・解除装置。
【請求項6】
前記第1のロック装置と第2のロック装置は、地震動信号に対応する緊急地震対応回路に結合してなることを特徴とする請求項5記載の重量物の固定・解除装置。
【請求項7】
前記第1のロック装置と第2のロック装置は、チャック定着装置からなり、このチャック定着装置は、ロック装置本体の中央に設けられロック用PC鋼より線を咬着自在に貫通した円錐形ウエッジと、この円錐形ウエッジの大径端に臨設したロック押し込み装置と、前記円錐形ウエッジの小径端に臨設したロック解除装置とからなることを特徴とする請求項5記載の重量物の固定・解除装置。
【請求項8】
前記ロック押し込み装置は、前記円錐形ウエッジをロック方向に進退する押し込みロッドと、この押し込みロッドの進退動のための2つの圧油口とを具備し、前記ロック解除装置は、前記円錐形ウエッジをロック解除方向に進退する解除ロッドと、この解除ロッドの進退動のための2つの圧油口とを具備してなることを特徴とする請求項7記載の重量物の固定・解除装置。
【請求項9】
前記ロック押し込み装置における2つの圧油口のいずれか一方と、前記ロック解除装置における2つの圧油口のいずれか一方は、蓄圧された圧油を供給するアキュムレーターに結合したことを特徴とする請求項8記載の重量物の固定・解除装置。
【請求項10】
駆動ユニットは、重量物の移送方向の前方の固定基盤に設けた前方アンカー部と前記重量物に設けた設置梁に設置した推進ジャッキとの間に推進用PC鋼より線を張り渡したものからなることを特徴とする請求項5記載の重量物の固定・解除装置。
【請求項11】
重量物の移送方向と直交する方向の前記重量物の両側部に臨ませて前記重量物の横振動を抑制する耐震設備を設けたことを特徴とする請求項5記載の重量物の固定・解除装置。
【請求項12】
推進用とロック用として共通の推進・ロック兼用PC鋼より線を前方アンカー部と後方アンカー部の間に取り付け、前記重量物の設置梁に推進ジャッキを取り付け、この設置梁と異なる取り付け梁に第1のロック装置と第2のロック装置を互いに逆向きに取り付け、前記推進ジャッキと第1のロック装置と第2のロック装置に前記推進・ロック兼用PC鋼より線を貫通して取り付けたことを特徴とする請求項5記載の重量物の固定・解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路を跨いで橋桁を架設する場合などに、橋桁等の重量物の移送停止信号で固定基盤への一時的な固定操作とその後の解除操作を安全に、かつ、速やかに行い、作業時間の確保、効率的なタイムスケジュールを組み立てることができるようにした重量物の固定・解除方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、橋桁(重量物)の移送を停止している間、その橋桁が勝手に動き出さないようにするため、送り出しヤード、橋脚などの固定基盤に一時的に固定するが、その固定には、固定基盤と橋桁との間に、橋軸方向にワイヤーやチェーンブロック等を使用してラッシング固定している。このラッシング固定による橋桁の固定基盤への固定作業及び解除作業には、それぞれ概ね1時間かそれ以上の時間を要していた。そのため、時間制約を伴う架設条件下では、作業時間の確保や効率的なタイムスケジュールを組み立てる上で大きなネックとなっていた。
【0003】
本出願人は、図7に示すチャックの定着装置を提案し(特許文献1)、また、このチャックの定着装置を利用した図6(a)(b)に示す重量物の固定方法及びその装置をすでに出願している。
前記図7に示すチャックの定着装置は、円錐形ウエッジ64の小径端64aに臨ませて、チャック解除装置52を臨設し、また円錐形ウエッジ64の大径端64bに臨ませて、チャック押し込み装置53を臨設し、チャック解除装置52は、進退自在の解除ロッド56からなり、この解除ロッド56に、円錐形ウエッジ64の小径端64aから離反する方向への受圧面65と、円錐形ウエッジ64の小径端64aを押し込む方向への受圧面61とを形成し、また、前記チャック押し込み装置53は、進退自在の押し込みロッド57からなり、この押し込みロッド57に、円錐形ウエッジ64の大径端64bを押し込む方向への受圧面66と、円錐形ウエッジ64の大径端64bから離反する方向への受圧面60とを形成したものである。
【0004】
このチャックの定着装置を利用した重量物の固定方法及びその装置を図6(a)(b)に基づき説明する。
特に大型の重量物39を固定基盤33に沿って駆動ユニットで移送する装置において、前記重量物39に設けた設置梁41に、前記重量物39の一方向の移動をロックする第1のロック装置43と前記重量物39の逆方向の移動をロックする第2のロック装置44を1対として複数対設け、前記重量物39の移送方向の前方の前記固定基盤33に設けた前方アンカー部35と後方の前記固定基盤33に設けた後方アンカー部36との間に、前記第1のロック装置43と前記第2のロック装置44を貫通した複数本のロック用PC鋼より線37bを張り渡し、前記複数本のロック用PC鋼より線37bのそれぞれのアンカー部に、前記すべてのロック用PC鋼より線37bの移送前の弛みを除くなどの無負荷時に均等な初期張力を付与するためのセンターホールジャッキ70を取り付け、前記重量物39の一方向の移動に対しロックするすべての前記第1のロック装置43内に、圧搾空気で押し込まれ、前記ロック用PC鋼より線37bに同時に咬み着き前記重量物39の移動をロックする円錐形ウエッジ64を設け、前記重量物39の逆方向の移動に対しロックする前記すべての第2のロック装置44内に、圧搾空気で押し込まれ、前記ロック用PC鋼より線37bに同時に咬み着き前記重量物39の移動をロックする円錐形ウエッジ64を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3587504号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6(a)(b)に示す重量物の固定方法及びその装置において、時間制約を伴う架設条件下では、作業時間の確保や効率的なタイムスケジュールを組み立てる上で以下のような若干の問題点があった。
【0007】
一般的な時間制約は、道路(高速道路及び一般道路)での架設工事の場合、夜間の道路規制作業となるため、架設等の実作業時間は、6時間程度である。
鉄道上の架設工事の場合は、道路とは異なる厳しい条件が付加され、終電車・始発電車間で線路閉鎖等の手続きを行い、実作業時間は道路での架設と比較し大幅に短くなる。また、貨物列車の運行がある路線については、6か月から12か月前に運行調整して拡大間合いを取り、作業時間を確保している。
【0008】
貨物列車運行線区などで拡大間合いの確保が難しい場合、列車通過時の安全運行基準(弾性加速度応答スペクトル800galを考慮した耐震性能の確保)などを継続して確保しなければならず、これまでは列車運行時間帯での施工ができなかった。
鉄道の場合は、特に次の点が求められている。
(1)固定・解除操作時間の短縮
(2)弾性加速度応答スペクトル800galを考慮した耐震性能の確保
(3)地震動の方向が一定でないため、それに対応できる耐震設備
【0009】
本発明は、橋桁等の重量物の固定基盤への一時的な固定操作とその後の解除操作を安全に、かつ、速やかに行い、実作業時間の確保、効率的なタイムスケジュールを組み立てることのできる方法と装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の重量物の固定・解除方法は、
重量物39を固定基盤33に沿って駆動ユニット42で移送する方法において、
前記重量物39に設けた設置梁41に、前記重量物39の一方向の移動をロックする第1のロック装置43と前記重量物39の逆方向の移動をロックする第2のロック装置44を1対として複数対を複数本のPC鋼より線37bに装着する工程と、
前記複数本のPC鋼より線37bを、前記重量物39の移送方向の前方の前記固定基盤33に設けた前方アンカー部35と後方の前記固定基盤33に設けた後方アンカー部36との間に、前記第1のロック装置43と前記第2のロック装置44を貫通して張り渡し固定する工程と、
前記第1のロック装置43と前記第2のロック装置44のロックを解除して前記駆動ユニット42により前記PC鋼より線37bに沿って前記設置梁41とともに前記重量物39を移送する工程と、
前記重量物39の移動固定信号の入力で前記第1のロック装置43と第2のロック装置44を構成するチャック定着装置のロック押し込み装置53に蓄圧された圧油を送り、前記ロック用PC鋼より線37bをチャック定着装置で咬着してロックする工程と、
前記それぞれのチャック定着装置に結合された均一化用センターホールジャッキ71を含むイコライズ手段により、前記複数本のロック用PC鋼より線37bに負荷がかかったときの張力を均一にする工程と、
前記重量物39の移動固定を解除する信号の入力で前記第1のロック装置43と第2のロック装置44を構成するチャック定着装置のロック解除装置52に圧油を送り、それぞれのロック用PC鋼より線37bの咬着を解いてロックを解除する工程と
からなることを特徴とする。
【0011】
前記ロックする工程は、前記重量物39の固定信号が地震動信号の受信信号を包含することを特徴とする。
【0012】
前記ロックする工程とロックを解除する工程は、ロック装置本体91の中央に設けられロック用PC鋼より線37bを咬着自在に貫通した円錐形ウエッジ64と、この円錐形ウエッジ64の大径端64bに臨設したロック押し込み装置53と、前記円錐形ウエッジ64の小径端64aに臨設したロック解除装置52とを用いて行うようにしたことを特徴とする。
【0013】
前記張力を均一にする工程は、すべての均一化用センターホールジャッキ71を連通する連通ボックス85と、この均一化用センターホールジャッキ71の油の出入りを制御するイコライズ用ポンプユニット79を用いて行うようにしたことを特徴とする。
【0014】
本発明の重量物の固定・解除装置は、
重量物39を固定基盤33に沿って駆動ユニットで移送する装置において、
前記重量物39に設けた設置梁41に、前記重量物39の一方向の移動のロックとロックの解除をする第1のロック装置43と前記重量物39の逆方向の移動のロックとロックの解除をする第2のロック装置44を1対として設けた複数対のロック手段と、
前記重量物39の移送方向の前方の前記固定基盤33に設けた前方アンカー部35と後方の前記固定基盤33に設けた後方アンカー部36との間に、前記第1のロック装置43と前記第2のロック装置44を貫通して張り渡した複数本のロック用PC鋼より線37bと、
前記第1のロック装置43を構成するチャック定着装置と前記第2のロック装置44を構成するチャック定着装置に結合された前記複数本のロック用PC鋼より線37bに負荷がかかったときの張力を均一にする均一化用センターホールジャッキ71を含むイコライズ手段と
からなることを特徴とする。
【0015】
前記第1のロック装置43と第2のロック装置44は、地震動信号に対応する緊急地震対応回路86に結合してなることを特徴とする。
【0016】
前記第1のロック装置43と第2のロック装置44は、チャック定着装置からなり、このチャック定着装置は、ロック装置本体91の中央に設けられロック用PC鋼より線37bを咬着自在に貫通した円錐形ウエッジ64と、この円錐形ウエッジ64の大径端64bに臨設したロック押し込み装置53と、前記円錐形ウエッジ64の小径端64aに臨設したロック解除装置52とからなることを特徴とする。
【0017】
前記ロック押し込み装置53は、前記円錐形ウエッジ64をロック方向に進退する押し込みロッド57と、この押し込みロッド57の進退動のための2つの圧油口55と58とを具備し、前記ロック解除装置52は、前記円錐形ウエッジ64をロック解除方向に進退する解除ロッド56と、この解除ロッド56の進退動のための2つの圧油口54と59とを具備してなることを特徴とする。
【0018】
前記ロック押し込み装置53における2つの圧油口55と58のいずれか一方と、前記ロック解除装置52における2つの圧油口54と59のいずれか一方は、蓄圧された圧油を供給するアキュムレーター81に結合したことを特徴とする。
【0019】
駆動ユニットは、重量物39の移送方向の前方の固定基盤33に設けた前方アンカー部35と前記重量物39に設けた設置梁41に設置した推進ジャッキ42との間に推進用PC鋼より線37aを張り渡したものからなることを特徴とする。
【0020】
重量物39の移送方向と直交する方向の前記重量物39の両側部に臨ませて前記重量物39の横振動を抑制する耐震設備45を設けたことを特徴とする。
【0021】
推進用とロック用として共通の推進・ロック兼用PC鋼より線37を前方アンカー部35と後方アンカー部36の間に取り付け、前記重量物39の設置梁41に推進ジャッキ42を取り付け、この設置梁41と異なる取り付け梁に第1のロック装置43と第2のロック装置44を互いに逆向きに取り付け、前記推進ジャッキ42と第1のロック装置43と第2のロック装置44に前記推進・ロック兼用PC鋼より線37を貫通して取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明によれば、
重量物を固定基盤に沿って駆動ユニットで移送する方法において、
前記重量物に設けた設置梁に、前記重量物の一方向の移動をロックする第1のロック装置と前記重量物の逆方向の移動をロックする第2のロック装置を1対として複数対を複数本のPC鋼より線に装着する工程と、
前記複数本のPC鋼より線を、前記重量物の移送方向の前方の前記固定基盤に設けた前方アンカー部と後方の前記固定基盤に設けた後方アンカー部との間に、前記第1のロック装置と前記第2のロック装置を貫通して張り渡し固定する工程と、
前記第1のロック装置と前記第2のロック装置のロックを解除して前記駆動ユニットにより前記PC鋼より線に沿って前記設置梁とともに前記重量物を移送する工程と、
前記重量物の移動固定信号の入力で前記第1のロック装置と第2のロック装置を構成するチャック定着装置のロック押し込み装置に蓄圧された圧油を送り、前記ロック用PC鋼より線をチャック定着装置で咬着してロックする工程と、
前記それぞれのチャック定着装置に結合された均一化用センターホールジャッキを含むイコライズ手段により、前記複数本のロック用PC鋼より線に負荷がかかったときの張力を均一にする工程と、
前記重量物の移動固定を解除する信号の入力で前記第1のロック装置と第2のロック装置を構成するチャック定着装置のロック解除装置に圧油を送り、それぞれのロック用PC鋼より線の咬着を解いてロックを解除する工程と
からなるので、以下の効果を有する。
(1)従来の橋軸方向にワイヤーやチェーンブロック等を使用して固定する、いわゆるラッシング固定方法に比較して、短時間で固定操作、解除操作を可能にすることができる。そのため、例えば、鉄道線路をまたいで橋桁等の重量物の移送中に一時的に重量物の移送を停止するとき、重量物を所定位置に移送した後に他の作業に移行するとき、重量物の移送中に緊急事態が発生して重量物の移送を停止するときなどに、迅速、かつ、安全に重量物を送り出しヤード、橋脚などの固定基盤に一時的に固定でき、また、時間制約を伴う架設条件下での作業時間の確保や効率的なタイムスケジュールを組み立てることができる。ちなみに、実測値によれば、固定操作は、1秒未満、解除操作は、1分以内であった。
(2)揺れ方向が一定ではない地震動発生などの緊急事態の発生時には、複数本のPC鋼より線に異なる大きさの負荷がかかったときの張力を均一化できる。また、橋桁の架設現場においては、橋桁の送り出し方向のみならず、送り出し方向と逆方向の揺れに伴う逸走にも対処できる。
(3)固定動作は、蓄圧され高圧化された圧油により固定動作の応答性、確実性を向上することができる。
(4)固定操作は、1秒未満、解除操作は、1分以内を可能にしたことにより、特に、鉄道線路における厳しい間合いでも安全に架設等の作業のスケジュールを管理できる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、
前記ロックする工程は、前記重量物の固定信号が地震動信号の受信信号を包含するので、大規模地震が発生したことによる橋桁の崩壊、落下、転倒、逸走を防止するため、所定の弾性加速度応答スペクトル800galを考慮した耐震性能を確保することができる。複数本のロック用PC鋼より線を張り渡し、重量物の一方向の移動のロックとこのロックの解除をする第1のロック装置と重量物の逆方向の移動のロックとこのロックの解除をする第2のロック装置を1対として複数対設けることで、確実に弾性加速度応答スペクトル800galを考慮した耐震性能を確保することができる。また、地震動は、最も早いP波(縦波)が到達してからしばらくしてS波による強い横揺れが来るので、P波を検知して大きな揺れが来る前の余裕時間内に自動的に緊急停止することができる。特に、大型の地震動の発生時に有効である。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、
前記ロックする工程とロックを解除する工程は、ロック装置本体の中央に設けられロック用PC鋼より線を咬着自在に貫通した円錐形ウエッジと、この円錐形ウエッジの大径端に臨設したロック押し込み装置と、前記円錐形ウエッジの小径端に臨設したロック解除装置とを用いて行うようにしたので、従来のワイヤーやチェーンブロックを用いたラッシング固定方法に比較して簡単な構造により短時間で、確実に定着することができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、
前記張力を均一にする工程は、すべての均一化用センターホールジャッキを連通する連通ボックスと、この均一化用センターホールジャッキの油の出入りを制御するイコライズ用ポンプユニットを用いて行うようにしたので、地震動の方向に拘わらず、複数本のロック用PC鋼より線に均一な引張力を付与でき、より一層の安全性の向上が期待できる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、
重量物を固定基盤に沿って駆動ユニットで移送する装置において、
前記重量物に設けた設置梁に、前記重量物の一方向の移動のロックとロックの解除をする第1のロック装置と前記重量物の逆方向の移動のロックとロックの解除をする第2のロック装置を1対として設けた複数対のロック手段と、
前記重量物の移送方向の前方の前記固定基盤に設けた前方アンカー部と後方の前記固定基盤に設けた後方アンカー部との間に、前記第1のロック装置と前記第2のロック装置を貫通して張り渡した複数本のロック用PC鋼より線と、
前記第1のロック装置を構成するチャック定着装置と前記第2のロック装置を構成するチャック定着装置に結合された前記複数本のロック用PC鋼より線に負荷がかかったときの張力を均一にする均一化用センターホールジャッキを含むイコライズ手段と
からなるので、以下の効果を有する。
(1)従来の橋軸方向にワイヤーやチェーンブロック等を使用して固定する、いわゆるラッシング固定方法に比較して、短時間で固定操作、解除操作を可能にすることができる。そのため、例えば、鉄道線路をまたいで橋桁等の重量物の移送中に一時的に重量物の移送を停止するとき、重量物を所定位置に移送した後に他の作業に移行するとき、重量物の移送中に緊急事態が発生して重量物の移送を停止するときなどに、迅速、かつ、安全に重量物を送り出しヤード、橋脚などの固定基盤に一時的に固定でき、また、時間制約を伴う架設条件下での作業時間の確保や効率的なタイムスケジュールを組み立てることができる。ちなみに、実測値によれば、固定操作は、1秒未満、解除操作は、1分以内であった。
(2)揺れ方向が一定ではない地震動発生などの緊急事態の発生時には、複数本のPC鋼より線に異なる大きさの負荷がかかったときの張力を均一化できる。また、橋桁の架設現場においては、橋桁の送り出し方向のみならず、送り出し方向と逆方向の揺れに伴う逸走にも対処できる。
(3)固定動作は、蓄圧され高圧化された圧油により固定動作の応答性、確実性を向上することができる。
(4)固定操作は、1秒未満、解除操作は、1分以内を可能にしたことにより、特に、鉄道線路における厳しい間合いでも安全に架設等の作業のスケジュールを管理できる。
(5)従来のラッシング固定が人手による操作であるのに比較して、本発明は、小型化と自動化ができる。
【0027】
請求項6記載の発明によれば、
前記第1のロック装置と第2のロック装置は、地震動信号に対応する緊急地震対応回路に結合したので、確実に弾性加速度応答スペクトル800galを考慮した耐震性能を確保することができる。また、地震動のP波を検知して大きな揺れが来る前の余裕時間内に自動的に緊急停止することができる。特に、大型の地震動の発生時に有効である。
【0028】
請求項7記載の発明によれば、
前記第1のロック装置と第2のロック装置は、チャック定着装置からなり、このチャック定着装置は、ロック装置本体の中央に設けられたロック用PC鋼より線を咬着自在に貫通した円錐形ウエッジと、この円錐形ウエッジの大径端に臨設したロック押し込み装置と、前記円錐形ウエッジの小径端に臨設したロック解除装置とからなるので、従来のワイヤーやチェーンブロックを用いたラッシング固定方法に比較して簡便な装置で、短時間で確実にロックとその解除ができる。
【0029】
請求項8記載の発明によれば、
前記ロック押し込み装置は、前記円錐形ウエッジをロック方向に進退する押し込みロッドと、この押し込みロッドの進退動のための2つの圧油口とを具備し、前記ロック解除装置は、前記円錐形ウエッジをロック解除方向に進退する解除ロッドと、この解除ロッドの進退動のための2つの圧油口とを具備してなるので、ロックとその解除の確実性と応答性に優れている。
【0030】
請求項9記載の発明によれば、
前記ロック押し込み装置における2つの圧油口のいずれか一方と、前記ロック解除装置における2つの圧油口のいずれか一方は、蓄圧された圧油を供給するアキュムレーターに結合したので、ロックとその解除のより一層の確実性と応答性に優れている。
【0031】
請求項10記載の発明によれば、
駆動ユニットは、重量物の移送方向の前方の固定基盤に設けた前方アンカー部と前記重量物に設けた設置梁に設置した推進ジャッキとの間に推進用PC鋼より線を張り渡したものからなるので、PC鋼より線にジャッキを用いてロック装置と同様の構成で駆動ユニットを構成することができる。
【0032】
請求項11記載の発明によれば、
重量物の移送方向と直交する方向の前記重量物の両側部に臨ませて前記重量物の横振動を抑制する耐震設備を設けたので、重量物の移送方向と異なる方向の地震動などにも確実に、かつ、安全に重量物を固定できる。
【0033】
請求項12記載の発明によれば、
推進用とロック用として共通の推進・ロック兼用PC鋼より線を前方アンカー部と後方アンカー部の間に取り付け、前記重量物の設置梁に推進ジャッキを取り付け、この設置梁と異なる取り付け梁に第1のロック装置と第2のロック装置を互いに逆向きに取り付け、前記推進ジャッキと第1のロック装置と第2のロック装置に前記推進・ロック兼用PC鋼より線を貫通して取り付けたので、重量物が1,000kN以下などの軽量の場合に安価で簡便な装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による重量物の固定・解除方法及びその装置の実施例1を示すブロック図である。
図2図1の側面図である。
図3】(a)~(e)は、本発明による重量物の固定・解除方法及びその装置の手順の説明図である。
図4】(a)(b)は、油圧イコライズの説明図である。
図5】本発明の他の例の説明図である。
図6】(a)(b)は、先に提案した重量物の固定方法及びその装置の説明図である。
図7】先に提案したチャックの定着装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の重量物の固定・解除方法は、
重量物39を固定基盤33に沿って駆動ユニット42で移送する方法において、
前記重量物39に設けた設置梁41に、前記重量物39の一方向の移動をロックする第1のロック装置43と前記重量物39の逆方向の移動をロックする第2のロック装置44を1対として複数対を複数本のPC鋼より線37bに装着する工程と、
前記複数本のPC鋼より線37bを、前記重量物39の移送方向の前方の前記固定基盤33に設けた前方アンカー部35と後方の前記固定基盤33に設けた後方アンカー部36との間に、前記第1のロック装置43と前記第2のロック装置44を貫通して張り渡し固定する工程と、
前記第1のロック装置43と前記第2のロック装置44のロックを解除して前記駆動ユニット42により前記PC鋼より線37bに沿って前記設置梁41とともに前記重量物39を移送する工程と、
前記重量物39の移動固定信号の入力で前記第1のロック装置43と第2のロック装置44を構成するチャック定着装置のロック押し込み装置53に蓄圧された圧油を送り、前記ロック用PC鋼より線37bをチャック定着装置で咬着してロックする工程と、
前記それぞれのチャック定着装置に結合された均一化用センターホールジャッキ71を含むイコライズ手段により、前記複数本のロック用PC鋼より線37bに負荷がかかったときの張力を均一にする工程と、
前記重量物39の移動固定を解除する信号の入力で前記第1のロック装置43と第2のロック装置44を構成するチャック定着装置のロック解除装置52に圧油を送り、それぞれのロック用PC鋼より線37bの咬着を解いてロックを解除する工程と
からなる。
【0036】
前記ロックする工程は、前記重量物39の固定信号が地震動信号の受信信号を包含する。
【0037】
前記ロックする工程とロックを解除する工程は、ロック装置本体91の中央に設けられロック用PC鋼より線37bを咬着自在に貫通した円錐形ウエッジ64と、この円錐形ウエッジ64の大径端64bに臨設したロック押し込み装置53と、前記円錐形ウエッジ64の小径端64aに臨設したロック解除装置52とを用いて行う。
【0038】
前記張力を均一にする工程は、すべての均一化用センターホールジャッキ71を連通する連通ボックス85と、この均一化用センターホールジャッキ71の油の出入りを制御するイコライズ用ポンプユニット79を用いて行う。
【0039】
本発明の重量物の固定・解除装置は、
重量物39を固定基盤33に沿って駆動ユニットで移送する装置において、
前記重量物39に設けた設置梁41に、前記重量物39の一方向の移動のロックとロックの解除をする第1のロック装置43と前記重量物39の逆方向の移動のロックとロックの解除をする第2のロック装置44を1対として設けた複数対のロック手段と、
前記重量物39の移送方向の前方の前記固定基盤33に設けた前方アンカー部35と後方の前記固定基盤33に設けた後方アンカー部36との間に、前記第1のロック装置43と前記第2のロック装置44を貫通して張り渡した複数本のロック用PC鋼より線37bと、
前記第1のロック装置43を構成するチャック定着装置と前記第2のロック装置44を構成するチャック定着装置に結合された前記複数本のロック用PC鋼より線37bに負荷がかかったときの張力を均一にする均一化用センターホールジャッキ71を含むイコライズ手段と
からなる。
【0040】
前記第1のロック装置43と第2のロック装置44は、地震動信号に対応する緊急地震対応回路86に結合してなる。
【0041】
前記第1のロック装置43と第2のロック装置44は、チャック定着装置からなり、このチャック定着装置は、ロック装置本体91の中央に設けられロック用PC鋼より線37bを咬着自在に貫通した円錐形ウエッジ64と、この円錐形ウエッジ64の大径端64bに臨設したロック押し込み装置53と、前記円錐形ウエッジ64の小径端64aに臨設したロック解除装置52とからなる。
【0042】
前記ロック押し込み装置53は、前記円錐形ウエッジ64をロック方向に進退する押し込みロッド57と、この押し込みロッド57の進退動のための2つの圧油口55と58とを具備し、前記ロック解除装置52は、前記円錐形ウエッジ64をロック解除方向に進退する解除ロッド56と、この解除ロッド56の進退動のための2つの圧油口54と59とを具備してなる。
【0043】
前記ロック押し込み装置53における2つの圧油口55と58のいずれか一方と、前記ロック解除装置52における2つの圧油口54と59のいずれか一方は、蓄圧された圧油を供給するアキュムレーター81に結合する。
【0044】
駆動ユニットは、重量物39の移送方向の前方の固定基盤33に設けた前方アンカー部35と前記重量物39に設けた設置梁41に設置した推進ジャッキ42との間に推進用PC鋼より線37aを張り渡す。
【0045】
重量物39の移送方向と直交する方向の前記重量物39の両側部に臨ませて前記重量物39の横振動を抑制する耐震設備45を設ける。
【0046】
推進用とロック用として共通の推進・ロック兼用PC鋼より線37を前方アンカー部35と後方アンカー部36の間に取り付け、前記重量物39の設置梁41に推進ジャッキ42を取り付け、この設置梁41と異なる取り付け梁に第1のロック装置43と第2のロック装置44を互いに逆向きに取り付け、前記推進ジャッキ42と第1のロック装置43と第2のロック装置44に前記推進・ロック兼用PC鋼より線37を貫通して取り付ける。
【実施例1】
【0047】
本発明による重量物の固定・解除方法及びその装置の実施例1を図面に基づき説明する。
鉄道線路を跨いで橋桁(重量物)を架設するものとする。図1及び図2において、橋桁などの重量物39を架設しようとする鉄道線路72の近傍に、固定基盤としての橋脚31と鋼製ベント32によって送り出しヤード33が構築され、この送り出しヤード33の上にレール34を敷設し、このレール34に複数台の台車38を載せ、この台車38に移送しようとする重量物39が載せられている。この重量物39の先端には、手延べ機40が連結されている。
前記送り出しヤード33の前端部には、前記重量物39の自重にもよるが、例えば、左右2列にそれぞれ前方アンカー部35が取り付けられ、後端部には、前記前方アンカー部35に対応して左右2列にそれぞれ後方アンカー部36が取り付けられている。
【0048】
前記重量物39の後端部には、前記アンカー部の各列に設置梁41が設けられ、これらの設置梁41の下端部で前記重量物39の下側に位置し、かつ、後方アンカー部36側に臨ませて推進ジャッキ42が取り付けられている。
この推進ジャッキ42の両側に位置して、後述する同一構成の第1のロック装置43と第2のロック装置44を一対として互いに逆向きに取り付けられている。これらの第1のロック装置43と第2のロック装置44には、それぞれセンターホールジャッキ71が結合されている。
前記前方アンカー部35の中央に推進用PC鋼より線37aの先端部が固着され、この推進用PC鋼より線37aの後端部が前記設置梁41と前記推進ジャッキ42を貫通して保持されている。
【0049】
また、前記前方アンカー部35における推進用PC鋼より線37aの両側に2本の重量物固定のためのロック用PC鋼より線37bの先端部が固着されている。この2本のロック用PC鋼より線37bの他端部は、それぞれ前記第2のロック装置44と第1のロック装置43を順次貫通している。さらに前記後方アンカー部36を貫通し、この後方アンカー部36に固着された初期張力付加用のセンターホールジャッキ70を貫通している。
他の列に設けられた1本の推進用PC鋼より線37aと2本のロック用PC鋼より線37bについても前記同様に構成されている。
前記送り出しヤード33の上には、均等化した張力付加用の油圧ポンプ69が搭載される。
【0050】
(1)固定・解除操作時間の短縮の目的を達成するため、本発明特有の自動解除回路87が搭載されている。この自動解除回路87は、前記第1のロック装置43と第2のロック装置44の油圧を制御する電磁弁内蔵の固定用ポンプユニット84と解除用ポンプユニット83と、蓄圧された油圧を制御するポンプ82とアキュムレーター81と蓄圧油圧端子80と、4本のロック用PC鋼より線37bに負荷がかかったときに作用する水平力を均等化するためのイコライズポンプユニット79と、各種センサーの入力により固定・解除を制御する固定・解除コントローラー78とからなる。
【0051】
(2)弾性加速度応答スペクトル800galを考慮した耐震性能の確保する目的を達成するため、ロック用PC鋼より線37bは、複数本使用されている。本数は、以下のようにして設定される。
前記重量物固定のためのロック用PC鋼より線37bは、弾性加速度応答スペクトル800galを考慮した耐震性能を確保するため、線径φ=28.6mmを複数本使用する。
例えば、橋桁自重w=4,500kN
PC鋼より線耐力 Pa=948kN/本×4本
水平震度 Kh=0.8
水平力 H=Kh×w=0.8×4,500=3,600kN
耐水平力 Ha=948×4=3,792kN > H
このロック用PC鋼より線37bの本数は、重量物39の自重によって選択される。
【0052】
(3)地震動の方向が一定でないため、それに対応できる耐震設備として、本発明では、前記第1のロック装置43と第2のロック装置44にそれぞれセンターホールジャッキ71を結合し、負荷がかかったときに、それぞれのロック用PC鋼より線37bに作用する張力を均一化している。詳細は、図4に基づき後述する。
【0053】
本発明は、特有の緊急地震対応回路86を内蔵している。この緊急地震対応回路86は、P波検知地震計の信号を無線又は有線で受信する地震動信号受信ユニット73とこの受信信号を取り込むパソコン74と集中操作盤75を有する。地震動は、最も早いP波(縦波)が到達してからしばらくしてS波による強い横揺れが来るので、P波を検知して大きな揺れが来る前の余裕時間内に自動的に緊急停止することができるように構成されている。
本発明は、この緊急地震対応回路86にコントローラー76を結合し、さらに、前記推進ジャッキ42の推進を制御する推進ジャッキポンプユニット77が設けられている。
【0054】
前記油圧ポンプ69は、それぞれロック用PC鋼より線37bを貫通している4台の初期張力付加用のセンターホールジャッキ70に接続され、これらの4本の無負荷時のロック用PC鋼より線37bが下に垂れるのを防止するために均等な初期張力が付与される。
前記ロック用アキュムレーター81は、蓄圧油圧端子80を介して前記第1のロック装置43と第2のロック装置44の後述する圧油口55と圧油口54に連結されている。
前記固定用ポンプユニット84と解除用ポンプユニット83は、前記第1のロック装置43と第2のロック装置44の後述する圧油口58と圧油口59に連結されている。
前記コントロールボックス76は、推進ジャッキポンプユニット77を介して前記推進ジャッキ42に連結されている。
前記橋脚31の両側には、図2に示すように横振動抑制用の耐震設備45が前記重量物39の側面まで伸ばして取り付けられ、この耐震設備45の内側に重量物39との間にわずかに隙間をもって詰め物46が横振動を抑制するように設けられている。
【0055】
本発明は、本出願人が先に提案した特許第3587504号のチャックの定着装置を構成要素の一部として用いているので、図7に基づきより詳しく説明する。この定着装置が本発明の前記第1のロック装置43と第2のロック装置44として利用され、互いに逆向きに取り付けられる。この第1のロック装置43と第2のロック装置44は、全く同一構成であるから第1のロック装置43について説明する。
この図7において、前記第1のロック装置43は、円錐形ウエッジ64と、この円錐形ウエッジ64の小径端64a側のロック解除装置52と、大径端64b側のロック押し込み装置53を具備している。前記ロック解除装置52の圧気口54とロック押し込み装置53の圧気口55に、圧油が増圧機で調整されて、密封した状態で常時供給されている。この状態では、ロック解除装置52の解除ロッド56とロック押し込み装置53の押し込みロッド57が図7では共に下降しているが、ロック装置43を解除するために圧油供給端50から圧油口58と圧油口59に油圧が徐々に加えられると、ロック押し込み装置53における押し込みロッド57は、受圧面60で受けた油圧により上昇し、また、ロック解除装置52における解除ロッド56は、受圧面61で受けた油圧により上昇し、その先端部62でコイルばね63に抗して円錐形ウエッジ64を押し上げ、ロック装置43を解除する。このとき、圧気口54、圧気口55、圧気供給端51などの管路内の空気圧が圧縮される。
【0056】
つぎに、ロック装置43を解除するために圧油供給端50から圧油口58と圧油口59に油圧が加えられ、かつ、ロック解除装置52の圧気口54とロック押し込み装置53の圧気口55に圧搾空気が常時供給されて、管路内の空気圧が圧縮されている状態において、ロック装置43を固定するため、圧油供給端50の油圧を、電磁弁又は手動弁等で解放すると、前記圧搾空気の存在により、ロック解除装置52における解除ロッド56は、受圧面65で受けている空気圧により急激に下降し、また、ロック押し込み装置53における押し込みロッド57は、受圧面66で受けている空気圧と、コイルばね63の弾性と相俟って、大径端64bを介して円錐形ウエッジ64を急激に押し込み、円錐形ウエッジ64がロック用PC鋼より線37bを即座に、かつ、確実に咬み着き第1のロック装置43がロックされた状態となる。
前記第2のロック装置44についても同様である。
【0057】
本発明では、上記図7に示すチャックの定着装置において、図3(a)に示すように、圧気口54と55を、圧油口54と55として用い、この圧油口54と55に、ロック時端子51を介して蓄圧された圧油を入力する前記アキュムレーター81を結合し、また、圧油口58と59には、別油圧系統の供給端子50aと50bを結合する。
以上のような構成による本発明の作用を説明する。
図3(a)ステップ0:ロック押し出し装置53を解放して重量物39の送り出し中
図1及び図2において、前方アンカー部35と後方アンカー部36の間に張り渡された4本の無負荷時のロック用PC鋼より線37bには、垂れ下がり防止のための張力付加用の1台の油圧ポンプ69からの4台の張力付加用のセンターホールジャッキ70への共通の油圧により垂れ下がりのない均等な初期張力が付与されている。
重量物39の送り出し中は、固定用ポンプユニット84及び解除用ポンプユニット83の供給端子50aと50bからそれぞれ圧油口58と圧油口59に圧油が送られているとともに、圧油口55と圧油口54にアキュムレーター81で蓄圧された圧油が送られているが、(圧油口58と圧油口59の油圧)>(圧油口55と圧油口54の油圧)に設定されているので、押し込みロッド57と解除ロッド56は、図中左側に付勢されており、第1のロック装置43の円錐形ウエッジ64のロックが解除され(同様に、第2のロック装置44の円錐形ウエッジ64も同様にロックが解除され)ており、第1のロック装置43と第2のロック装置44がロック用PC鋼より線37bに沿って自由に移動できる状態にある。この時、設置梁41に固着されているイコライズ用のセンターホールジャッキ71は、その圧油口88と89は閉じており、ピストンロッド90は図中左側に突出している。
この状態で、推進ジャッキ42を駆動すると、推進用PC鋼より線37aを前端側に引き込みながら設置梁41を押し出すので、台車38の上に載せられた重量物39は、手延べ機40とともに鉄道線路72の上を跨いで推進する。
【0058】
図3(b)ステップ1:重量物39の緊急停止作動
重量物39の送り出し作業の途中で、緊急停止しようとするとき、4本のロック用PC鋼より線37bにおけるすべての第1のロック装置43と第2のロック装置44について、圧油口58と圧油口59の油圧を抜くように電磁弁を切り替える。圧油口55と圧油口54には、ロック用アキュムレーター81から常時蓄圧された圧油が送られているため、(圧油口58と圧油口59の油圧)<(圧油口55と圧油口54の油圧)となり、押し込みロッド57と解除ロッド56は、図中右側に付勢され、コイルばね63の弾性力と相俟って円錐形ウエッジ64を急激に押し込み、すべての第1のロック装置43と第2のロック装置44の円錐形ウエッジ64がロック用PC鋼より線37bに咬み着き、重量物39の移送が緊急停止される。この時、イコライズ用のセンターホールジャッキ71の圧油口88と圧油口89は閉じており、ピストンロッド90は突出した状態を維持している。
【0059】
地震発生時は、緊急地震対応回路86の地震動信号受信ユニット73で地震波のP波を受信すると、パソコン74と集中操作盤75とコントローラー76を経て固定用ポンプユニット84及び解除用ポンプユニット83に制御信号が送られる。地震動は、最も早いP波(縦波)が到達してからしばらくしてS波による強い横揺れが来るので、P波を検知して大きな揺れが来る前の余裕時間内に、複数本のロック用PC鋼より線37bを円錐形ウエッジ64が咬着して自動的に緊急停止される。
ちなみに、緊急地震速報信号を受信してから第1のロック装置43と第2のロック装置44が固定されるまでの所要時間の計測結果は、次の通りであった。
ジャッキ荷重(kN) 定着時間(秒) 10回の平均(秒)
100 0.6~0.7 0.63
300 0.5~0.6 0.56
500 0.5~0.7 0.59
【0060】
地震発生時は、緊急地震対応回路86の地震動信号受信ユニット73で地震波のP波を受信すると、パソコン74と集中操作盤75とコントローラー76を経て固定用ポンプユニット84と解除用ポンプユニット83に制御信号が送られ、複数本のロック用PC鋼より線37bの第1のロック装置43と第2のロック装置44がP波の検知後1秒以内で緊急停止される。前述した所定の設計耐水平震度を確保するため、複数本のロック用PC鋼より線37bが用いられる。
地震動の方向により、複数本のロック用PC鋼より線37bに不均等な軸力が入ることが考えられる。図4(a)に示すように、センターホールジャッキ71-1と71-2と71-3と71-4にそれぞれ500kN、600kN、700kN、800kNの合計2,600kNの反力がかかり、それぞれのピストンロッド90の突出量が100mmであるものとする。前記センターホールジャッキ71-1と71-2と71-3と71-4は、連通ボックス85-1と85-2を介在して連通状態にあるので、水平力が加わると同時に、反力の大きいセンターホールジャッキ71の発生圧力は高くなり、反力の小さいセンターホールジャッキ71へ内部の作動油が流れて4台のセンターホールジャッキ71の圧力がすべて同一となる。この時、図4(b)に示すように、4台すべてに650kNの同一の水平力がかかり、ピストンロッド90のそれぞれ突出量は、150mm、125mm、75mm、50mmとなって平衡する。
【0061】
前記重量物39は、移送方向が進行する方向であっても、後退する逆方向であっても第1のロック装置43と第2のロック装置44で確実に緊急停止される。
同時に、コントローラー76からの指令で推進ジャッキポンプユニット77の圧油を停止し、すべての推進ジャッキ42の推進を停止する。
【0062】
また、地震動の揺れは、重量物39の移送方向と直交する方向などにも発生する恐れがあるが、このような揺れに対しては、橋軸方向のロックに加えて橋脚31に設けた横振動を抑制する耐震設備45の詰め物46に接触して揺れが抑制される。
【0063】
重量物39の緊急停止の解除手順は、次のステップ2とステップ3とステップ4により順次プログラミングされ自動的に行われる。
図3(c)ステップ2:円錐形ウエッジ64を定着して押し込みロッド57の解放
ロック押し込み装置53側において、圧油口58に圧油口55の蓄圧より大きな圧を加えるように電磁弁を切り替える。また、ロック解除装置52側において、圧油口54に畜圧を加えたままで圧油口59を閉じる。すると、押し込みロッド57が図中左に移動する。このとき、イコライズ用センターホールジャッキ71の圧油口88と圧油口89は閉じたままとする。このようにして押し込みロッド57が解放される。
【0064】
図3(d)ステップ3:円錐形ウエッジ64を元に戻してロック用PC鋼より線37bの張力解放
ロック押し込み装置53側の圧油口55には畜圧が加えられている状態で、圧油口58を閉じ、ロック解除装置52側の圧油口54に畜圧が加えられている状態で、圧油口59を閉じる。また、イコライズ用センターホールジャッキ71の圧油口88から圧を加え、圧油口89の圧を抜く。すると、ロック装置本体91が図中右側に移動するので、ロック用PC鋼より線37bは実質的に張力を解放状態となる。前記ロック装置本体91の右方向の移動に伴い、ワイヤー93が縮み、この変位を変位センサー92で検出して変位信号を固定・解除コントローラー78に出力するとともに、ピストンロッド90が縮む。
【0065】
図3(e)ステップ4:解除ロッド56を作動して、円錐形ウエッジ64を解放する
ロック押し込み装置53側の圧油口55に蓄圧が加えられている状態で、圧油口58を閉じ、また、ロック解除装置52側の圧油口54に蓄圧が加えられている状態で、圧油口59に蓄圧を超える圧を加える。すると、解除ロッド56が移動して、円錐形ウエッジ64の小径端64aに接する。この状態で、イコライズ用センターホールジャッキ71の圧油口89に圧を加え、圧油口88から圧を抜くことにより、ピストンロッド90が突出してロック装置本体91を押し出し、図3(a)ステップ0の位置に戻る。
ちなみに、定着完了後、固定・解除コントローラー78の自動解放ボタンを押してから、解放完了するまでの所要時間計測結果は、次の通りであった。
ジャッキ荷重(kN) 定着時間(秒) 10回の平均(秒)
100 30.9~31.5 31.3
300 39.9~42.7 41.0
500 47.2~50.3 49.0
以上の計測結果によれば、解放の時間は、1分以内であった。
ジャッキ荷重が高くなるにつれて解放時間が長くなるのは、ジャッキ荷重解放動作時にPC鋼より線の伸び量を解消しなければならないためである。
【0066】
図1の例では、1本のロック用PC鋼より線37bにおける設置梁41の両側に、第1のロック装置43と第2のロック装置44を互いに逆向きに取り付けたが、これに限られるものではなく、異なる2本のロック用PC鋼より線37bをかけ渡し固定し、1方のロック用PC鋼より線37bにおける設置梁41の一方の側に第1のロック装置43を取り付け、他方のロック用PC鋼より線37bにおける設置梁41の他方の側に第2のロック装置44を取り付けるようにしてもよい。
また、第1のロック装置43と第2のロック装置44は、同一構成のものを逆向きに使用する場合に限られるものではなく、互いに逆方向にロックするものであれば、全く同一構成でなくてもよい。
前記実施例では、1個の重量物39に対して4本のロック用PC鋼より線37bを用いた例を示したが、重量物39の重量とロック用PC鋼より線37bの耐力を勘案してロック用PC鋼より線37bの本数を決定することができる。また、重量物39の形状によって荷重が偏っているような場合には、ロック用PC鋼より線37bは、不等間隔に配置することもできる。
【実施例2】
【0067】
前記実施例では、重量物39の荷重が大きいため、推進用PC鋼より線37aとロック用PC鋼より線37bは、別体とし、かつ、ロック用PC鋼より線37bを複数本用いたが、重量物39が1,000kN程度の軽量の場合には、図5(a)(b)に示すように、推進用PC鋼より線37aとロック用PC鋼より線37bを共通の推進・ロック兼用PC鋼より線37とすることができる。この場合には、前方アンカー部35と後方アンカー部36に1本の推進・ロック兼用PC鋼より線37を取り付け、重量物39の設置梁41aに取り付けた推進ジャッキ42と,この設置梁41aとは別に重量物39に取り付けた取り付け梁41bに第1のロック装置43と第2のロック装置44を互いに逆向きに取り付け、前記推進ジャッキ42と第1のロック装置43と第2のロック装置44に同一の推進・ロック兼用PC鋼より線37を貫通して取り付けるようにする。
推進・ロック兼用PC鋼より線37は、複数本とすることが望ましい。
【0068】
この図5の例では、実施例1と異なり、推進ジャッキ42を貫通した推進・ロック兼用PC鋼より線37の端部が後方アンカー部36に固定される。また、実施例1と同様、前記橋脚31の両側には、耐震設備45が前記重量物39の側面まで伸ばして取り付けられ、この横振動抑制用耐震設備45の内側に重量物39との間にわずかに隙間をもって詰め物46が横振動を抑制するように設けられる。
この例における停止作用は、実施例1と同様である。
【0069】
前記実施例では、重量物39を移送するのに、前方アンカー部35に固定された推進用PC鋼より線37aと重量物39に取り付けられた設置梁41に推進ジャッキ42を用いて後方から推進するようにしたが、重量物39の推進方法は、これに限られるものではなく、前方から推進ジャッキ42を用い、PC鋼より線37で引き込む方法、レール34に取り付けた推進ジャッキの伸縮で移送する方法、台車38に駆動装置を取り付けて移送する方法、無限軌道帯で移送する方法など、他の駆動ユニットで移送するものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
30…道路、31…橋脚、32…鋼製ベント、33…送り出しヤードなどの固定基盤、34…レール、35…前方アンカー部、36…後方アンカー部、37a…推進用PC鋼より線、37b…ロック用PC鋼より線、37…推進・ロック兼用PC鋼より線、38…台車、39…重量物、40…手延べ機、41、41a、41b…設置梁、42…推進ジャッキ、43…第1のロック装置、44…第2のロック装置、45…耐震設備(横振れ防止用)、46…詰め物、50…ロック解除端子、51…ロック時端子、52…ロック解除装置、53…ロック押し込み装置、54…圧油口、55…圧油口、56…解除ロッド、57…押し込みロッド、58…圧油口、59…圧油口、60…受圧面、61…受圧面、62…先端部、63…コイルばね、64…円錐形ウエッジ、64a…小径端、64b…大径端、65…受圧面、66…受圧面、68…取り付け梁、69…油圧ポンプ、70…センターホールジャッキ、71…イコライズ用のセンターホールジャッキ、72…鉄道線路、73…地震動信号受信ユニット、74…パソコン、75…集中操作盤、76…コントローラー、77…推進ジャッキポンプユニット、78…固定・解除コントローラー、79…イコライズ用ポンプユニット、80…蓄圧油圧端子、81…アキュムレーター、82…ポンプ、83…解除用ポンプユニット、84…固定用ポンプユニット、85…連通ボックス、86…緊急地震対応回路、87…自動解除回路、88…圧油口、89…圧油口、90…ピストンロッド、91…ロック装置本体、92…変位センサー、93…変位センサーのワイヤー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7