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特許7244879金属調加飾フィルム、金属調車両内外装部材、金属調成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】金属調加飾フィルム、金属調車両内外装部材、金属調成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230315BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230315BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230315BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20230315BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 A
B32B27/30 D
B32B27/00 M
B32B15/08 Q
B60R13/04 Z
B60R13/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020020241
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021123082
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000235783
【氏名又は名称】尾池工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 定子
(72)【発明者】
【氏名】永岡 洪太
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/059369(WO,A1)
【文献】特開2017-185829(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221643(WO,A1)
【文献】特開2001-315255(JP,A)
【文献】特開2000-070846(JP,A)
【文献】国際公開第2012/053190(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0224941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B60R 13/01 - 13/04
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、アンカー層と、金属蒸着層と、接着層とを備え、
前記金属蒸着層は、インジウムを含み、
前記保護層は、第1の混合樹脂層と、第2の混合樹脂層とを含み、
前記第2の混合樹脂層は、前記アンカー層側に設けられており、
前記第1の混合樹脂層は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含み、
前記第2の混合樹脂層は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含み、
前記第1の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、75:25~60:40であり、
前記第2の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、15:85~60:40であ
前記アンカー層は、アクリルポリオール系樹脂を主剤とし、イソシアネート系樹脂を硬化剤として硬化させたものであり、
前記第2の混合樹脂層と前記アンカー層との界面において、前記第2の混合樹脂層の樹脂と前記アンカー層を構成する樹脂とが相溶しており、
前記第2の混合樹脂層と前記アンカー層との間の密着力は、180度剥離試験において、2.6N/15mm以上である、金属調加飾フィルム。
【請求項2】
前記第2の混合樹脂層は、紫外線吸収剤を含む、請求項記載の金属調加飾フィルム。
【請求項3】
前記第2の混合樹脂層は、架橋アクリル系微粒子を含む、請求項1または2記載の金属調加飾フィルム。
【請求項4】
前記フッ化ビニリデン系樹脂は、ポリフッ化ビニリデンであり、前記アクリル酸エステル系樹脂は、ポリメタクリル酸メチルである、請求項1~のいずれか1項に記載の金属調加飾フィルム。
【請求項5】
前記接着層に、被着体が設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の金属調加飾フィルム。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の金属調加飾フィルムを用いた、金属調車両内外装部材。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の金属調加飾フィルムを用いた、金属調成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属調加飾フィルム、金属調車両内外装部材、金属調成形体に関する。より詳細には、本発明は、密着性、耐薬品性が優れ、製造過程において白濁等を生じにくい金属調加飾フィルム、金属調車両内外装部材、金属調成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、意匠性が優れ、曲面を有する種々の成形体に適用可能な金属調加飾フィルムが開発されている。特許文献1には、塩化ビニル樹脂またはアクリル樹脂を含む表面保護フィルムを有する金属調加飾フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-159587号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の金属調加飾フィルムは、耐薬品性が劣る。そのため、優れた耐薬品性の求められる用途(たとえば自動車の内外装部材など)において、このような金属調加飾フィルムは不向きである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、耐薬品性を高めるために、フッ素樹脂層を設けることが考えられる。しかしながら、フッ素樹脂層は、金属調加飾フィルムのアンカー層との密着性が劣る。そのため、アンカー層を成膜できない。また、フッ素樹脂層は、フィルムの製造工程中や、フィルムを用いた成形体の成形工程において加えられる熱により結晶化が進行し、白濁を生じる。
【0006】
本発明は、このような従来の発明に鑑みてなされたものであり、密着性、耐薬品性が優れ、製造過程において白濁等を生じにくい金属調加飾フィルム、金属調車両内外装部材、金属調成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含む複数の混合樹脂層からなる保護層を設けることにより、上記課題を好適に解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題を解決する本発明の金属調加飾フィルム、金属調車両内外装部材、金属調成形体には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)保護層と、アンカー層と、金属蒸着層と、接着層とを備え、前記金属蒸着層は、インジウムを含み、前記保護層は、第1の混合樹脂層と、第2の混合樹脂層とを含み、前記第2の混合樹脂層は、前記アンカー層側に設けられており、前記第1の混合樹脂層は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含み、前記第2の混合樹脂層は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含み、前記第1の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、75:25~60:40であり、前記第2の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、15:85~60:40である、金属調加飾フィルム。
【0009】
このような構成によれば、保護層は、フッ化ビニリデン系樹脂を多く含む第1の混合樹脂層が表層に設けられている。これにより、金属調加飾フィルムは、耐薬品性が優れる。また、第1の混合樹脂層および第2の混合樹脂層は、アクリル酸エステル系樹脂が混合されている。これにより、第1の混合樹脂層および第2の混合樹脂層にフッ素樹脂(フッ化ビニリデン系樹脂)が含まれているにもかかわらず、これらの混合樹脂層は、製造過程において白濁等を生じにくい。さらに、アンカー層側に設けられている第2の混合樹脂層は、アクリル酸エステル系樹脂を含む。これにより、保護層に対してアンカー層を設けることができ、かつ、密着性が優れる。
【0010】
(2)前記アンカー層は、アクリル系樹脂を含む、(1)記載の金属調加飾フィルム。
【0011】
このような構成によれば、金属調加飾フィルムは、より優れた密着性を示し得る。
【0012】
(3)前記第2の混合樹脂層は、紫外線吸収剤を含む、(1)または(2)記載の金属調加飾フィルム。
【0013】
このような構成によれば、第2の混合樹脂層に含まれる紫外線吸収剤によって、外部から照射される紫外線を吸収しやすく、アンカー層を劣化させにくい。そのため、金属調加飾フィルムは、耐候性が優れる。
【0014】
(4)前記第2の混合樹脂層は、架橋アクリル系微粒子を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の金属調加飾フィルム。
【0015】
このような構成によれば、金属調加飾フィルムは、サテン調の外観を呈する場合においても、白濁を充分に抑制し得る。
【0016】
(5)前記フッ化ビニリデン系樹脂は、ポリフッ化ビニリデンであり、前記アクリル酸エステル系樹脂は、ポリメタクリル酸メチルである、(1)~(4)のいずれかに記載の金属調加飾フィルム。
【0017】
このような構成によれば、金属調加飾フィルムは、耐薬品性および密着性がより優れる。また、金属調加飾フィルムは、製造過程において、白濁等をより生じにくい。
【0018】
(6)前記接着層に、被着体が設けられている、(1)~(5)のいずれかに記載の金属調加飾フィルム。
【0019】
このような構成によれば、金属調加飾フィルムは、種々の被着体に対して、金属調の意匠を形成することができる。
【0020】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の金属調加飾フィルムを用いた、金属調車両内外装部材。
【0021】
このような構成によれば、金属調車両内外装部材は、上記金属調加飾フィルムが用いられている。そのため、金属調車両内外装部材は、耐薬品性および密着性が優れる。また、金属調車両内外装部材は、種々の三次元形状に加工される際に、白濁を生じにくい。
【0022】
(8)(1)~(6)のいずれかに記載の金属調加飾フィルムを用いた、金属調成形体。
【0023】
このような構成によれば、金属調成形体は、成形加工によって製造されやすい。成形加工された金属調成形体は、上記金属調加飾フィルムが用いられている。そのため、金属調成形体は、耐薬品性および密着性が優れる。また、金属調成形体は、成形加工される際に、白濁を生じにくい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、密着性、耐薬品性が優れ、製造過程において白濁等を生じにくい金属調加飾フィルム、金属調車両内外装部材、金属調成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<金属調加飾フィルム>
本発明の一実施形態に金属調加飾フィルム(以下、フィルムともいう)は、保護層と、アンカー層と、金属蒸着層と、接着層とを備える。金属蒸着層は、インジウムを含む。保護層は、第1の混合樹脂層と、第2の混合樹脂層とを含む。第2の混合樹脂層は、アンカー層側に設けられている。第1の混合樹脂層は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含む。第2の混合樹脂層は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含む。第1の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、75:25~60:40である。第2の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、15:85~60:40である。このようなフィルムによれば、保護層は、フッ化ビニリデン系樹脂を多く含む第1の混合樹脂層が表層に設けられている。これにより、金属調加飾フィルムは、耐薬品性が優れる。また、第1の混合樹脂層および第2の混合樹脂層は、アクリル酸エステル系樹脂が混合されている。これにより、第1の混合樹脂層および第2の混合樹脂層にフッ素樹脂(フッ化ビニリデン系樹脂)が含まれているにもかかわらず、これらの混合樹脂層は、製造過程において白濁等を生じにくい。さらに、アンカー層側に設けられている第2の混合樹脂層は、アクリル酸エステル系樹脂を含む。これにより、保護層に対してアンカー層を設けることができ、かつ、密着性が優れる。以下、それぞれについて説明する。
【0026】
(保護層)
保護層は、フィルムの表面を保護し、フィルムに耐候性や耐薬品性を付与するための層である。保護層は、第1の混合樹脂層と、第2の混合樹脂層とを含む。
【0027】
・第1の混合樹脂層
第1の混合樹脂層は、フィルムの最表面に設けられる層である。第1の混合樹脂層は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含む。
【0028】
フッ化ビニリデン系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、フッ化ビニリデン系樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン-4フッ化エチレン共重合体等である。これらの中でも、フッ化ビニリデン系樹脂は、得られるフィルムの耐薬品性や密着性がより優れる点から、ポリフッ化ビニリデンであることが好ましい。
【0029】
アクリル酸エステル系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル酸エステル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を主成分として有する重合体である。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、1種のメタクリル酸エステル単量体の単独重合体であってもよく、2種以上のメタクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよく、または、1種または2種以上のメタクリル酸エステル単量体とメタクリル酸エステル単量体以外のビニル化合物との共重合体であってもよい。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、特に限定されない。一例を挙げると、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、および(メタ)アクリル酸ヘキシル等である。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体におけるプロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などのアルキル基は、直鎖であってもよく、枝分かれしていてもよい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル化合物は、特に限定されない。一例を挙げると、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル化合物は、スチレン、エチレン、ブタジエン、イソプレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、およびプロピレン等である。本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルから選ばれる1つ、2つ、または3つであることが好ましく、メタクリル酸メチルであることがより好ましい。本実施形態の第1の混合樹脂層に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、得られるフィルムの耐薬品性や密着性がより優れる点から、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることがさらに好ましい。
【0032】
第1の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、75:25~60:40であればよく、73:27~65:35であることが好ましく、71:29~69:31であることがより好ましい。第1の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)が上記範囲内であることにより、得られるフィルムは、優れた耐薬品性、耐候性を示し得る。また、上記濃度比率にてフッ化ビニリデン系樹脂が含まれているにもかかわらず、第1の混合樹脂層は、フィルムの製造過程において熱が加わる際に結晶化しにくく、白濁等を生じにくい。なお、本実施形態において、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、1HNMR測定(Bruker社製NMR分光計「AVANCE III HD NanoBay 400MHz」、溶媒:Dimethyl sulfoxide(DMSO)、測定温度:70℃、積算回数:64回)により測定され得る。
【0033】
第1の混合樹脂層の厚みは、特に限定されない。一例を挙げると、第1の混合樹脂層の厚みは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。また、第1の混合樹脂層の厚みは、200μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。第1の混合樹脂層の厚みが上記範囲内であることにより、熱ラミネート等により後述する第2の混合樹脂層を設ける場合において、第2の混合樹脂層に熱が適切に伝わりやすい。その結果、フィルムは、生産性が優れる。
【0034】
なお、本実施形態の第1の混合樹脂層は、上記したフッ化ビニリデン系樹脂およびアクリル酸エステル系樹脂のみから構成されてもよく、フッ化ビニリデン系樹脂およびアクリル酸エステル系樹脂のほかに、他の成分を含んでもよい。他の成分は特に限定されない。一例を挙げると、他の成分は、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、流滴剤、親水剤、撥液剤等である。これらの他の成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、他の成分の含有量は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との合計100質量部に対し、0.001質量部~20質量部である。
【0035】
・第2の混合樹脂層
第2の混合樹脂層は、保護層において、アンカー層側に設けられる層である。第2の混合樹脂層は、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂とを含む。
【0036】
フッ化ビニリデン系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、フッ化ビニリデン系樹脂は、第1の混合樹脂層に関連して上記したフッ化ビニリデン系樹脂を採用し得る。フッ化ビニリデン系樹脂は、得られるフィルムの耐薬品性や密着性がより優れる点から、ポリフッ化ビニリデンであることが好ましい。
【0037】
アクリル酸エステル系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル酸エステル系樹脂は、第1の混合樹脂層に関連して上記したアクリル酸エステル系樹脂を採用し得る。アクリル酸エステル系樹脂は、得られるフィルムの耐薬品性や密着性がより優れる点から、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることがさらに好ましい。
【0038】
第2の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)は、15:85~60:40であればよく、18:82~30:70であることが好ましく、19:81~21:79であることがより好ましい。第2の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との固形分濃度比率(質量%)が上記範囲内であることにより、得られるフィルムは、保護層とアンカー層との密着性が優れる。また、上記濃度比率にてフッ化ビニリデン系樹脂が含まれているにもかかわらず、第2の混合樹脂層は、フィルムの製造過程において熱が加わる際に結晶化しにくく、白濁等を生じにくい。一方、フッ化ビニリデン系樹脂の濃度比率が15質量%未満である場合、第2の混合樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が高くなる。その結果、後述するアンカー層を構成する樹脂を含む樹脂溶液を塗布、乾燥する工程において、第2の混合樹脂層の表面に溶媒が浸漬しにくく、アンカー層を構成する樹脂と第2の混合樹脂層を構成する樹脂とが相溶する効果が弱まる傾向がある。その結果、アンカー層と、第2の混合樹脂層との密着性が低下する傾向がある。フッ化ビニリデン系樹脂の濃度比率が15質量%以上である場合、第2の混合樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が低くなる。その結果、第2の混合樹脂層中の分子鎖がより動きやすくなり、アンカー層を構成する樹脂を含む樹脂溶液を塗布、乾燥する工程において、第2の混合樹脂層の表面に溶媒が浸漬しやすくなり、アンカー層を構成する樹脂と第2の混合樹脂層を構成する樹脂とが相溶する効果が高まる傾向がある。その結果、アンカー層と、第2の混合樹脂層との密着性が向上する傾向がある。また、フッ化ビニリデン系樹脂の濃度比率が60質量%を超える場合、アンカー層を構成する樹脂と第2の混合樹脂層を構成する樹脂との親和性が低下しやすく、アンカー層と第2の混合樹脂層との密着性が低下する傾向がある。
【0039】
第2の混合樹脂層の厚みは、特に限定されない。一例を挙げると、第2の混合樹脂層の厚みは、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましい。また、第1の混合樹脂層の厚みは、80μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。第2の混合樹脂層の厚みが上記範囲内であることにより、熱ラミネート等により第1の混合樹脂層と積層される場合において、第2の混合樹脂層に熱が適切に伝わりやすい。その結果、フィルムは、生産性が優れる。
【0040】
第2の混合樹脂層は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は特に限定されない。一例を挙げると、紫外線吸収剤は、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ハイドロキノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、オキザリックアシッド系化合物、ヒンダードアミン系化合物、サリチル酸誘導体等である。これらの中でも、紫外線吸収剤は、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物であることが好ましい。紫外線吸収剤を含むことにより、第2の混合樹脂層に含まれる紫外線吸収剤によって、外部から照射される紫外線が吸収されやすい。これにより、アンカー層は、劣化しにくい。その結果、フィルムは、耐候性がより優れる。
【0041】
トリアジン系化合物は、特に限定されない。一例を挙げると、トリアジン系化合物は、2-[4,6-ビス(1,1'-ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、および2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン、並びにこれらの変性物、重合物、および誘導体等である。これらの中でも、紫外線吸収剤は、2-[4,6-ビス(1,1'-ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノールを含むことが好ましい。
【0042】
ベンゾトリアゾール系化合物は、特に限定されない。一例を挙げると、ベンゾトリアゾール系化合物は、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(5’-メチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5’-t-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α、α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-t-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-t-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロ・フタルイミドメチル)-5’-メチル-2’-ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾール、および2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、並びにこれらの変性物、重合物、および誘導体等である。これらの中でも、紫外線吸収剤は、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノールを含むことが好ましい。
【0043】
紫外線吸収剤が含まれる場合、紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部(特にフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との合計量100質量部)に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。また、紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部(特にフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との合計量100質量部)に対し、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であることにより、充分な紫外線吸収効果が得られやすく。フィルムの耐候性が向上しやすい。また、紫外線吸収剤がブリードアウトしにくく、保護層とアンカー層との密着性が低下しにくい。
【0044】
また、第2の混合樹脂層は、フィラーを含んでもよい。フィラーを含むことにより、フィルムは、サテン調の外観を表現し得る。フィラーは、特に限定されない。一例を挙げると、フィラーは、アクリル系微粒子、スチレン系微粒子、アクリロニトリル系微粒子、ウレタン系微粒子、ナイロン系微粒子、ポリイミド系微粒子、メラミン系微粒子、シリコン系微粒子、シリカ系微粒子、ジルコニア系微粒子等である。これらの中でも、第2の混合樹脂層は、架橋アクリル系微粒子を含むことが好ましい。架橋アクリル系微粒子は特に限定されない。一例を挙げると、架橋アクリル系微粒子は、架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子、架橋ポリメタクリル酸エチル微粒子、架橋ポリノルマルブチルメタクリレート微粒子等である。これらの中でも、架橋アクリル系微粒子は、第2の混合樹脂層との屈折率差が小さい点から、架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を含むことが好ましい。
【0045】
架橋アクリル系微粒子が含まれることにより、フィルムの白濁が抑制されやすい。より具体的には、フィルムがサテン調である場合において、フィラーでサテン調を実現しようとした際に、アクリル系微粒子以外の微粒子を使用すると、第2の混合樹脂層との屈折率差が大きくなるため、白濁を生じやすい。これに対し、架橋アクリル系微粒子が含まれることにより、フィルムは、白濁が生じにくく、優れたサテン調の外観を示し得る。
【0046】
なお、架橋アクリル系微粒子とは、分子内に架橋構造を有するアクリル系微粒子であり、具体的には、アクリル系モノマーとアクリル基を2個以上有するモノマーとを共重合することで生成する架橋構造を有するアクリル系微粒子である。このような架橋アクリル系微粒子は、フィルム製造時に熱が加わる場合であっても、架橋構造によって微粒子がフィルムと相溶することなく維持されやすい。このように最終的なフィルムに架橋アクリル系微粒子が残存することにより、サテン調の外観を呈するとともに、白濁も充分に抑制され得る。
【0047】
架橋アクリル系微粒子が含まれる場合、架橋アクリル系微粒子の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、架橋アクリル系微粒子の含有量は、樹脂成分100質量部(特にフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との合計量100質量部)に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、架橋アクリル系微粒子の含有量は、樹脂成分100質量部(特にフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル酸エステル系樹脂との合計量100質量部)に対し、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。架橋アクリル系微粒子の含有量が上記範囲内であることにより、得られるフィルムは、サテン調の外観を呈する場合においても、白濁を充分に抑制され得る。
【0048】
なお、本実施形態の第2の混合樹脂層は、上記したフッ化ビニリデン系樹脂およびアクリル酸エステル系樹脂のみから構成されてもよく、適宜、上記した紫外線吸収剤、架橋アクリル系微粒子を含んでもよく、その他の成分を含んでもよい。その他の成分は特に限定されない。一例を挙げると、その他の成分は、第1の混合樹脂層に関連して上記したその他の成分である。
【0049】
保護層を作製する方法は特に限定されない。一例を挙げると、保護層は、上記した第1の混合樹脂層と、第2の混合樹脂層とを、共押し出し法によって積層する方法により作製し得る。共押し出し法は、既知の手法が用いられてもよい。共押し出し法によれば、第1の混合樹脂層を形成する樹脂と、第2の混合樹脂層を形成する樹脂とが、それぞれ別の押し出し機にて溶融混錬され、金型内で合一した後、Tダイ内部で広幅化し、フィルム上に押し出すことで保護層が作製され得る。
【0050】
(アンカー層)
アンカー層は、保護層と金属蒸着層との密着性を向上させるために設けられる。
【0051】
アンカー層は特に限定されない。一例を挙げると、アンカー層は、保護層との密着性がよく、かつ、金属蒸着層を構成するインジウムの受理性がよい原料であればよく、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂(ポリオール樹脂を主剤とし、イソシアネート系樹脂を硬化剤として硬化させたものを含む)、アクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール樹脂を主剤とし、イソシアネート系樹脂を硬化剤として硬化させたものを含む)、ポリエステル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、塩素化PP系樹脂等である。これらの中でも、アンカー層は、得られるフィルムの密着性がより優れる点から、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
【0052】
アクリル系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル系樹脂は、アクリルポリオール樹脂を主剤とし、イソシアネート系樹脂を硬化剤として硬化させたものや、紫外線硬化型ウレタンアクリレート等である。
【0053】
アンカー層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、アンカー層の厚みは、0.1~3μmが好ましい。アンカー層の厚みが上記範囲内であることにより、フィルムは、保護層と金属蒸着層との密着性が優れる。
【0054】
アンカー層は、着色剤や金属顔料が付与されることにより、意匠性が付与されてもよい。たとえば、着色剤としてイエロー顔料が配合されることにより、フィルムは、金色の外観を表現し得る。着色剤の種類や含有量は、所望する金属調の外観に応じて適宜調整され得る。また、アンカー層は、帯電防止剤等が配合されることにより、帯電防止効果などの機能性が付与されてもよい。さらにアンカー層は、イソシアネート系樹脂を有する硬化剤が混合されてもよい。イソシアネート系樹脂を有する硬化剤が混合されることにより、得られるフィルムは、耐熱性、耐候性、耐水性がより向上し得る。
【0055】
イソシアネート系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、イソシアネート系樹脂は、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート等である。3価以上のポリイソシアネートは、特に限定されない。一例を挙げると、3価以上のポリイソシアネートは、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体等である。
【0056】
アンカー層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、アンカー層は、ロールコーター等を用いて、適宜溶剤(たとえばメチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等)に溶解したアンカー層を構成する樹脂溶液を、保護層上に塗布し、次いで80~100℃程度で30秒から1分乾燥することにより形成し得る。
【0057】
アンカー層の樹脂溶液は、保護層の第2の混合樹脂層に塗布され、次いで、乾燥される。これにより、第2の混合樹脂層の表面に樹脂溶液の溶媒が浸漬し、アンカー層を構成する樹脂と第2の混合樹脂層の樹脂とが相溶する。その結果、アンカー層と保護層(第2の混合樹脂層)とは、強固に密着し得る。
【0058】
(金属蒸着層)
金属蒸着層は、インジウムを含む。インジウムは、酸化物、窒化物として含まれてもよい。金属蒸着層がインジウムを含むことにより、得られるフィルムは、成形加工時に白化等の外観不良を生じにくく、成形加工性が優れる。その結果、フィルムは、種々の三次元形状に加工されやすい。
【0059】
また、金属蒸着層は、インジウムの他、各種非金属、金属、金属酸化物および金属窒化物を含んでもよい。非金属、金属等は特に限定されない。一例を挙げると、非金属は、アモルファスカーボン(DLC)およびその複合体、金属等は、金、銀、白金、スズ、クロム、ケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウム等の金属、その酸化物、その窒化物である。
【0060】
金属蒸着層におけるインジウムの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、インジウムの含有量は、金属蒸着層中、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。インジウムの含有量は、100質量%であってもよい。
【0061】
金属蒸着層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、金属蒸着層の厚みは、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。また、金属蒸着層の厚みは、80nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましい。金属蒸着層の厚みが上記範囲内であることにより、金属蒸着層は、金属光沢と成形性とを両立されやすい。また、得られるフィルムは、透過率が増加するだけでなく、透過ヘイズを下げることが可能となる。その結果、得られる透過光は、曇りが低減され、良好な色味を発現し得る。
【0062】
金属蒸着層の形成方法(蒸着方法)は、特に限定されない。一例を挙げると、蒸着方法は、従来公知の真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、または、化学蒸着法等を適宜採用し得る。これらの中でも、生産性が高いという理由により、真空蒸着法により金属蒸着層を設けることが好ましい。蒸着条件は、所望する金属蒸着層の厚みに基づいて、従来公知の条件が適宜採用され得る。なお、金属材料は、不純物が少なく、純度が99重量%以上であることが好ましく、99.5重量%以上であることがより好ましい。また、金属材料は、粒状、ロッド状、タブレット状、ワイヤー状あるいは使用するルツボ形状に加工したものであることが好ましい。金属材料を蒸発させるための加熱方法は、ルツボ中に金属材料を入れて抵抗加熱あるいは高周波加熱を行う方式や、電子ビーム加熱を行う方法、窒化硼素などのセラミック製のボードに金属材料を入れ直接抵抗加熱を行う方法など、周知の方法を用いることができる。真空蒸着に用いるルツボは、カーボン製であることが望ましく、アルミナやマグネシア、チタニア、ベリリア製のルツボであってもよい。
【0063】
(接着層)
接着層は、被着体に、フィルムを貼り合わせるために設けられる。
【0064】
接着層は特に限定されない。一例を挙げると、接着層は、各種接着剤、粘着剤、感圧粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)等からなる。接着剤は特に限定されない。一例を挙げると、接着剤は、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、ウレタン変性ポリエステル樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)系、ビニル樹脂系(塩ビ(特にポリ塩化ビニル(PVC))、酢ビ、塩ビ-酢ビ共重合樹脂系、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系、ポリアクリルアミド樹脂系、ポリアクリルアミド樹脂系、イソブチレンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、SBR、NBR、シリコーンゴム等の樹脂からなる。これらの樹脂は、適宜、溶剤に溶解されて使用されてもよく、無溶剤で使用されてもよい。
【0065】
接着層は、着色剤を含んでもよい。接着層に着色剤を配合することにより、光源からの光の透過光の色味が調整され得る。その結果、フィルムは、所望の色味(たとえば青色系の色味など)の透過光を透過できるよう調整され得る。
【0066】
着色剤は特に限定されない。着色剤は、所望する透過光の色味を考慮して、適宜選択されればよい。一例を挙げると、着色剤は、青みがかった色味が所望される場合には、ブルー顔料またはマゼンタ顔料のうち、少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。これにより、着色剤によって、光源からの光の透過光は、青色系の色味に調整され得る。
【0067】
接着層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、接着層は、ロールコーター等を用いて、適宜溶剤に溶解した接着層を構成する樹脂溶液を、後述するセパレータに塗布し、その後、接着層の形成されたセパレータを、金属蒸着層に貼り合わせてもよく、金属蒸着層上に直接、上記樹脂溶液を塗布して接着層を形成してもよい。また、接着層は、セパレータに接着層が設けられた既製品が使用されてもよい。接着層の形成方法は、使用する接着剤や粘着剤の特性に応じて適宜選択され得る。
【0068】
接着層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、接着層の厚みは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。また、接着層の厚みは、60μm以下であることが好ましく、55μm以下であることがより好ましい。接着層の厚みが上記範囲内であることにより、得られるフィルムは、接着時の外観および接着性がさらに優れる。
【0069】
接着層は、上記着色剤のほか、金属顔料が付与されることにより、意匠性が付与されてもよい。また、接着層は、帯電防止剤等が配合されることにより、帯電防止効果などの機能性が付与されてもよい。これにより、接着層は、貼り合わせ適性が向上し得る。
【0070】
得られたフィルムは、セパレータが設けられてもよい。フィルムは、あらかじめ接着層が設けられたセパレータが用いられてもよく、セパレータに接着層を形成し、その接着層が金属蒸着層と接するように貼り合わせられてもよい。
【0071】
セパレータは特に限定されない。一例を挙げると、セパレータは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等である。
【0072】
セパレータが剥離されると、接着層が露出する。露出された接着層は、成形加工前の被着体(後述)に対して貼り付けられる。
【0073】
(被着体)
本実施形態のフィルムは、接着層に、被着体(バッキングシート、バッカー)が設けられてもよい。被着体は、後述する金属調成形体を製造する際に、フィルムインサート工法が採用される場合に、好適に設けられる。被着体は特に限定されない。一例を挙げると、被着体は、熱成形が可能な重合体シートであればよく、ABSシート、ポリアクリル系シート、ポリプロピレンシート、ポリエチレンシート、ポリカーボネート系シート、A-PETシート、PET-Gシート、塩化ビニル(PVC)系シート、ポリアミド系シート等であることが好ましい。
【0074】
被着体の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、被着体の厚みは、圧縮成形等における成形性の観点から0.05~5mmであることが好ましく、0.3~3mmであることがより好ましい。
【0075】
被着体は、所望の表面加工が施されたものが使用されてもよい。表面加工は特に限定されない。一例を挙げると、表面加工は、マット加工、サテン加工、エンボス加工、ヘアライン加工、各種パターン柄等である。
【0076】
被着体は、あらかじめ接着層が設けられた被着体が用いられてもよく、被着体に接着層を形成し、その接着層が金属蒸着層と接するように貼り合わせられてもよい。
【0077】
その後、本実施形態のフィルムが貼り付けられた被着体は、適宜三次元形状に加工され、成形品(金属調成形体)が作製される。金属調成形体の成形方法は特に限定されない。一例を挙げると、成形方法は、真空成形、TOM(Three dimension Overlay Method)成形等によって成形される。TOM成形では、フィルムは、あらかじめ準備された被着体に付与され、熱により軟化されることにより、被着体に追随するよう一体成形される。一方、真空成形では、フィルムは、ヒーターによって加熱され、軟化される。次いで、加熱されたフィルムは、所望の3次元形状の金型に対して、真空吸引しながら押し付けられ、三次元成形品の形状に追随するよう変形される。
【0078】
このように、金属調成形体は、成形加工によって製造されやすい。成形加工された金属調成形体は、上記フィルムが用いられている。そのため、金属調成形体は、耐薬品性および密着性が優れる。また、金属調成形体は、成形加工される際に、白濁を生じにくい。
【0079】
金属調成形体は特に限定されない。一例を挙げると、金属調成形体は、金属調看板、金属調車両用内外装部材、金属調家電、金属調アミューズメント用製品、金属調建材等である。これらの中でも、金属調成形体は、金属調車両用内外装部材として好適に用いられる。金属調車両用内外装部材は特に限定されない。一例を挙げると、金属調車両用内外装部材は、インストルメントパネルガーニッシュおよびオーナメント、オーディオパネル、オートエアコンパネル、ステアリングオーナメント、ドアトリムオーナメント、パワーウィンドウスイッチベゼル、操作系ノブ、スイッチおよびキャップもしくはカバー各種、ラジエーターグリル、ピラーガーニッシュ、バックドアオーナメント、サイドミラーカバー、アウターパネル、リアスポイラー、インサイドもしくはアウトサイドドアハンドル、サイドバイザー、ホイールカバー、二輪自動車用カウリング等である。これらの中でも、本実施形態の金属調車両用内外装部材は、ステアリングやハンドル等に適用される場合においてより好適である。すなわち、これらの金属調車両用内外装部材は、車両の乗員が頻繁に操作する。この際、乗員が日焼け止めクリームなどの薬品を使用している場合、そのような薬品中の成分が、金属調車両用内外装部材に付着する。本実施形態の金属調車両用内外装部材は、耐薬品性が優れるため、そのような薬品が付着した場合であっても、劣化しにくく、白濁やクラック等を生じにくい。
【実施例
【0080】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0081】
<実施例1>
第1の混合樹脂層(濃度比率(%)がポリフッ化ビニリデン:ポリメタクリル酸メチル=75:25、厚み:13μm)と、第2の混合樹脂層(濃度比率(%)がポリフッ化ビニリデン:ポリメタクリル酸メチル=20:80、厚み:27μm)とからなる保護層を準備した。保護層に対して、グラビアコーターを用いて、乾燥後1.3μmとなるようにアクリルポリオール系塗材とイソシアネート系塗材とを混合したアンカーコート剤溶液を塗工し、ついでそれを100℃で1分間乾燥させ、アンカー層を形成した。次いで、アンカー層に対して、真空蒸着法により、インジウムによる金属蒸着層の厚みが40nmとなるように金属蒸着層を形成した。金属蒸着層に接着層(アクリル樹脂、厚み:25μm)をバーコートし、接着層上にセパレータを設けて、実施例1のフィルムを作製した。
【0082】
<実施例2~6、比較例1~6>
表1に示される処方にしたがって、保護層を構成するポリフッ化ビニリデンとポリメタクリル酸メチルとの濃度比率を調整した以外は、実施例1と同様の方法により、フィルムを作製した。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例1~6および比較例1~6において得られたフィルムについて、以下の方法に従って、外観評価、耐薬品性および密着力を評価した。結果を表1に示す。
【0085】
<外観評価>
それぞれのフィルムを、被着体(透明ABSシート、厚み300μm)に貼り付けた。これを、卓上真空試験機(V.former、(株)ラヤマパック製)を用いて、シート温度140℃まで加熱した後に、延伸倍率が120%となるよう成形加工した。成形後のフィルム(金属調成形体)に対して、屋外の太陽光下で金属光沢および白濁を目視で評価した。
(評価基準)
〇:フィルムは、金属光沢があり、白濁がなかった。
△:フィルムは、金属光沢があり、白濁が若干あったが、許容範囲内であった。
×:フィルムは、金属光沢がなく、白濁があった。
【0086】
<耐薬品性>
それぞれのフィルムを、被着体(三菱ケミカル(株)製アクリル板(乳半)、アクリライト EX432、厚み3mm)に貼り付けて、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製の日焼け止めクリーム:ニュートロジーナ(登録商標)Ultra Sheer SPF45を使用し、0.5gを10cm角の領域に塗布し、55℃に設定した乾燥機内に4時間、入れた。その後、ニュートロジーナを水洗して除去し、フィルム表面の外観を評価した。
(評価基準)
〇:フィルムは、日焼け止めクリームの塗布痕がなかった。
△:フィルムは、日焼け止めクリームの塗布痕があった。
【0087】
<密着力>
それぞれのフィルムの金属蒸着層上に塩化ビニルシートを125℃、2秒で熱圧着した後、15mm幅にカットし、各サンプルを作製した。その後、オートグラフ((株)島津製作所製AGX-50kNVD)にて180度剥離試験を行い、第2の混合樹脂層とアンカー層との間の密着力を測定した。
【0088】
表1に示されるように、実施例1~6のフィルムは、いずれも白濁等を生じていないか、あったとしても許容範囲内であり、優れた金属調の外観であった。また、実施例1~6のフィルムは、耐薬品性および密着力が優れていた。一方、第1の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂の濃度比率が大きかった比較例1~2のフィルムは、白濁を生じ、外観が不良であった。また、比較例1および比較例4~6のフィルムは、第2の混合樹脂層におけるアクリル酸エステル系樹脂の濃度比率が大きかったため、第2の混合樹脂層とアンカー層との間の密着力が劣った。また、第1の混合樹脂層におけるフッ化ビニリデン系樹脂の濃度比率が小さかった比較例3のフィルムは、耐薬品性が劣った。さらに、比較例5~6のフィルムは、第2の混合樹脂層におけるアクリル酸エステル系樹脂の濃度比率が小さかったため、第2の混合樹脂層とアンカー層との間の密着力が劣った。
【0089】
<サテン調の金属調成形体に関する外観評価>
(参考例1)
第1の混合樹脂層(濃度比率(%)がポリフッ化ビニリデン:ポリメタクリル酸メチル=90:10、微粒子フィラーとして、アイカ工業(株)製「ガンツパールGM-0105」(粒径:2μm)を3質量%含む、厚み:17μm)と、第2の混合樹脂層(濃度比率(%)がポリフッ化ビニリデン:ポリメタクリル酸メチル=0:100、厚み:33μm)とからなる保護層を準備した。保護層に対して、グラビアコーターを用いて、乾燥後1.3μmとなるようにアクリルポリオール系塗材とイソシアネート系塗材とを混合したアンカーコート剤溶液を塗工し、ついでそれを100℃で1分間乾燥させ、アンカー層を形成した。次いで、アンカー層に対して、真空蒸着法により、インジウムによる金属蒸着層の厚みが40nmとなるように金属蒸着層を形成した。金属蒸着層に接着層(アクリル樹脂、厚み:25μm)をバーコートし、接着層上にセパレータを設けて、参考例1のフィルムを作製した。なお、参考例では、サテン調の金属調成形体における外観評価の評価結果が顕著に表れるように、第2の混合樹脂層として、上記のとおり、ポリフッ化ビニリデンを含んでいないものを用いている。
【0090】
(参考例2~14)
表2に示される処方にしたがって、第1の混合樹脂層や第2の混合樹脂層に添加する微粒子の有無、種類、粒径および添加量を調整した以外は、参考例1と同様の方法により、フィルムを作製した。なお、表2において、微粒子の種類のうち、「A」は、アイカ工業(株)製の架橋アクリル微粒子、「B」は、アイカ工業(株)製のポリシロキサン微粒子である。粒径のうち、「小」は、2μm、「中」は、3μmである。添加量のうち、「少」は、3質量%、「多」は、5質量%である。
【0091】
【表2】
【0092】
参考例1~14において得られたフィルムについて、以下の方法に従って、外観評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
<外観評価>
それぞれのフィルムを、被着体(透明ABSシート、厚み300μm)に貼り付けた。これを、卓上真空試験機(V.former、(株)ラヤマパック製)を用いて、シート温度140℃まで加熱した後に、延伸倍率が120%となるよう成形加工した。成形後のフィルム(金属調成形体)に対して、屋外の太陽光下で金属光沢および白濁を目視で評価した。
(評価基準)
◎:フィルムは、めっきサテンと同等の外観であった。
〇:フィルムは、めっきサテンと比べ、若干、金属光沢が劣ったが、白濁はなかった。
△:フィルムは、めっきサテンと比べ、金属光沢が劣ったが、白濁はなかった。
×:フィルムは、めっきサテンと比べ、金属光沢が劣り、白濁があった。
××:フィルムは、めっきサテンと比べ、金属光沢が劣り、白濁が強かった。
【0094】
表2に示されるように、参考例5~6において得られたフィルムは、微粒子として架橋アクリル系微粒子を含んでいた結果、白濁等のないサテン調の外観を表現することができた。