(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭、その製造方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
C01B 32/318 20170101AFI20230315BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230315BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230315BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20230315BHJP
B01J 20/20 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
C01B32/318
B01J20/30
B01J20/28 Z
H01G11/42
B01J20/20 A
(21)【出願番号】P 2022524115
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2021094792
(87)【国際公開番号】W WO2022134444
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】202011533868.X
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 樹栄
(72)【発明者】
【氏名】丁 岩
(72)【発明者】
【氏名】李 允超
(72)【発明者】
【氏名】邱 坤賛
(72)【発明者】
【氏名】朱 玲君
(72)【発明者】
【氏名】周 勁松
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/016395(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0232160(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106276888(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106698418(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106587055(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109081342(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
B01J 20/20
B01J 20/28
B01J 20/30
H01G 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、
熱分解バイオ油を分子蒸留して、液相状態の軽質留分を得て、軽質留分を炭素前駆体原料として、水溶性活性化剤である活性化剤と軽質留分を混合し、混合溶液を形成し、混合溶液を炭化及び活性化し、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭を得る炭化-活性化の工程を含み、
前記軽質留分は、構成成分として、水分15~50質量%、酸類20~30質量%、ケトン類5~15質量%、アルデヒド類5~10質量%、及びモノフェノール類10~20質量%を含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記炭化-活性化は、多段加熱を行うことで、混合溶液に対して1段炭化-活性化を施すことである、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項3】
前記炭化-活性化は、2段加熱を行うことで、混合溶液に対して1段炭化-活性化を施すことである、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項4】
前記混合溶液は、磁気撹拌機により均一に撹拌された混合溶液である、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項5】
バイオマスを急速熱分解したバイオ油を製造し、熱分解バイオ油を分子蒸留して軽質留分を得て、次に、活性化剤と軽質留分を所定の質量比で混合した後所定時間撹拌し、軽質留分と活性化剤との均質な混合液体を得て、前記均質な液体に対して、不活性ガス保護下、2段加熱による1段炭化-活性化を行い、室温に冷却して、不純物を含有するバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭を得るステップS1と、
ステップS1で得られた生成物を粉砕して1回目の篩いかけを行い、次に塩酸溶液で洗浄しながら撹拌し、次に、ろ液が中性となるまで脱イオン水で繰り返して洗浄して吸引ろ過することで、固体生成物中の活性化剤の反応生成物及び不純物を除去し、乾燥後、さらに粉砕して2回目の篩いかけを行い、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭を得るステップS2とを含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項6】
前記軽質留分は、セルロース系バイオマスを急速熱分解して得た熱分解バイオ油を分子蒸留して得られるものである、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項7】
前記セルロース系バイオマスは、果物殻、鋸屑、藁、竹、クルミの殻、ポプラ鋸屑、トウモロコシの茎葉のうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項6に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項8】
前記分子蒸留には、10~3000Paの分子蒸留圧、0.001~1mbarの短経路蒸留器の作動圧力が使用される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項9】
前記活性化剤は、固体水溶性活性金属アルカリ又は固体水溶性活性金属塩である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項10】
前記活性化剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項9に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項11】
前記活性化剤と軽質留分との質量比は、1:22~1:3である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項12】
ステップS1では、前記軽質留分と活性化剤の均質な混合液体は、所定の質量比の活性化剤を軽質留分に加えて、直ちに容器を密閉し、磁気撹拌機で0.5~2時間撹拌することにより得られる均一な混合物である、ことを特徴とする請求項5に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項13】
ステップS1では、前記不活性ガスは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項5に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項14】
ステップS1では、前記2段加熱による1段炭化-活性化の具体的なステップは、
第1段階において、最終加熱温度が300~500℃、昇温速度が2~10℃/min、加熱時間が0.5~3hであり、第2段階において、最終加熱温度が700~900℃、昇温速度が2~10℃/min、加熱時間が1~3hである、ことを特徴とする請求項5に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項15】
ステップS2では、1回目の篩いかけを行った後、0.5~2mol/Lの塩酸溶液を用いて洗浄し、3~6時間磁気撹拌し、次に、脱イオン水で繰り返して洗浄して吸引ろ過する、ことを特徴とする請求項5に記載のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法。
【請求項16】
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の使用であって、
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭はスーパーキャパシタ電極活物質、電池電極材料の製造に用いられる、ことを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスの熱分解バイオ油の分子蒸留による軽質留分を高価値化して利用する分野に関し、特に、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭、その製造方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭(AC)は、比表面積が大きく、イオンサイズに非常に適合した細孔率を有することから、電気二重層スーパーキャパシタ(EDLC)によく使用されている電極材料として有用である。バイオマスを炭素源として製造した活性炭は高い導電性、水系及び有機電解液中の化学的安定性、低コスト及び豊富な供給源などの利点を併せ持つため、現在の好ましい炭素材料の1つとなっており、スーパーキャパシタなどの分野で非常に高い応用価値がある。
【0003】
活性炭を製造する従来の過程において、活性化剤と前駆体は通常「固固」、「固液」、「固気」の状態で混合され、そのうち、「固固」混合とは、固体状前駆体又は未活性化の粗炭と固体状活性化剤とを機械力によって直接混合することを意味し、例えば、特許CN202010095842.5において、グレープフルーツコア粉を炭化して粗炭材料を得、粗炭材料とアルカリ類活性化剤(質量比1~2:1~2)とを粉砕しながら混合し、さらに活性化して、スーパーキャパシタ電極用の炭素材料の製造に用い、機械力による撹拌の作用下で固体状前駆体と固体状活性化剤は巨視的に均一に混合した状態を示しているが、微視的な分子レベルでの均一な混合を実現できないため、活性化剤の使用量を大幅に増加させる必要があり、しかも、最終的な生成物である活性炭では、細孔は微視的な分布が不均一であり、メソ細孔(2~50nm)、マクロ細孔(>50nm)の形で存在するものが多く、スーパーキャパシタの電極活物質として使用するのに適していない。
【0004】
「固液」混合とは、固体状前駆体又は未活性化の粗炭と活性化剤溶液とを混合することを意味し、例えば、特許CN201610300981.0において、固体状バイオマス材料、例えば、デンプン、リグニン、トウモロコシの穂軸、籾殻、麦の穂などをKOH(濃度0.01~5mol/L)の溶液と混合した後、超音波振動と撹拌によって改質前駆体を得て、さらに加熱乾燥又は凍結乾燥をして、活性化剤と前駆体の混合物を得た後、混合物を活性化し、スーパーキャパシタ電極用の炭素材料を得、このように混合された前駆体と活性化剤とが乾燥する過程で、活性化剤は水溶液から飽和析出して前駆体の表面に固体として現れ、このため、微視的な分子レベルでの均一な混合が不可能となり、活性化剤の使用量が増加する。
【0005】
「固気」混合とは、固体状前駆体又は未活性化の粗炭を活性化炉に投入した後、水蒸気、二酸化炭素、空気、アンモニアガスなどの活性ガスを導入し、例えば特許CN201810885112.8において、針葉材や広葉材などのバイオマスを一次材料として、第1ガス、第2ガスで活性化させて、スーパーキャパシタ電極用の炭素材料が得られ、このような方法では、活性化過程において活性ガスは前駆体の表面のみと活性化するので、活性化過程では800℃以上の高温環境下で大量の活性ガスを長時間にわたって導入する必要があり、結果として大量のエネルギー消費量と活性化ガスの浪費を招き、しかも得られた活性炭は細孔分布が不均一であり、比表面積が一般的に1000m2/g未満であるため、スーパーキャパシタの電極活物質としては適さない。
【0006】
前駆体と活性化剤を「固固」、「固液」、「固気」の形で混合してから活性化すると、以下の欠点がある。(1)活性化剤と前駆体とは十分に接触できず、混合の不均一性が生じる。(2)活性化剤と前駆体は均一な混合物を形成できないため、活性炭生成物中の細孔の分布が不均一になり、細孔の大きさの分布も不均一で、ほとんどメソ細孔、マクロ細孔の範囲内にある。(3)通常、活性化剤の質量が前駆体の質量よりも数倍高いほど多量の活性化剤が使用され、例えば、特許CN201910824987.1において、タケノコ殻に基づく炭化物に対する質量比が1:3~5以上の活性化剤が使用される。そのため、活性化剤の使用量を減少させるとともに、細孔分布が均一な活性炭材料を製造することができる、活性化剤と前駆体を均一に混合し得る方法を発明することが期待される。
【0007】
「液液」方式による活性炭の製造については報告している文献があるが、例えば、定期刊行物の論文「バイオマスタールによる多段細孔炭素の製造及び二酸化炭素吸着性能の研究」では、バイオマスタールを前駆体とし、ZnCl2を活性化剤とし、簡易な1段活性化により、発達した細孔構造を持つ多孔質炭素を製造することを報告した。この方法は、大量の塩類活性化剤(バイオマスタールとZnCl2の質量比1:4)を使用するため、環境と経済性に悪影響を与える。同様に、バイオマスタール中には、大量の熱分解リグニン、芳香族ポリマー、アントラセン、フェノール系ポリマー、糖類など、炭素鎖が長く分子量の大きい高分子化合物が含まれており、この特性により、撹拌や加熱の過程でバイオマスタールが重縮合反応を起こして沈降し、重縮合物が活性化剤と凝集しやすく、その結果、炭生成物の細孔分布が不均一になり、活性化剤の使用量が増加し、活性化剤の無駄が生じ、生産コストが増加する。
【0008】
また、上記の方法で製造した活性炭は、すべて、一定量の灰分を含んでおり、活性炭中の灰分はほぼすべて原料由来のものであり、活性炭の製造、細孔構造及び電気化学的性能への灰分の影響は主に以下のいくつかの点である。(1)灰分は活性炭の製造過程に使用される活性化剤の量と熱エネルギーの消費量を増加する。(3)灰分の存在により、活性炭材料の比表面積と細孔容積が減少する。(4)灰分含有量の高い活性炭をスーパーキャパシタの電極材料に用いると、キャパシタのリーク電流、電解液イオンの拡散抵抗や電子伝達抵抗が上昇し、キャパシタの自己放電が強くあり、キャパシタの電気化学的安定性が損なわれる。そのため、原料と製造プロセス上、適切な脱灰方法を選択する必要がある。例えば、特許CN109467085Aでは、灰分含有量の高いバイオマスを原料とし、水熱炭化プロセスを採用することによって原料中の灰分を低減するが、活性炭中の灰分を完全に除去することができない。特許CN109467085A、CN108069424A、CN105271220Bなどは、様々な方法で農作物のような植物類の活性炭中の灰分を低減しているが、その含有量はいずれも1~5%程度である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭、その製造方法、及び使用を提案することであり、該方法は、活性化剤の使用量を減少させ、設備に対する腐食を低減させ、環境に優しく、比表面積が大きく、細孔分布が均一であり、灰分を含まないスポンジ状多孔質活性炭を製造できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成させるために、本発明は、熱分解バイオ油を分子蒸留して、液相状態の軽質留分を得て、軽質留分を炭素前駆体の原料として、水溶性活性化剤である活性化剤と軽質留分を混合し、混合溶液を形成し、混合溶液を炭化、活性化し、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭を得る、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法を提案する。
【0011】
バイオマスを高温で急速熱分解するとバイオ油が得られるが、バイオ油は、成分が複雑で、熱安定性が悪く、重合やコークス化反応が発生しやすく、常圧蒸留、減圧蒸留などの通常の技術では分離が困難である。例えば、よく使われる常圧水抽出で得られたバイオ油水相(軽質)には、重縮合を起こしやすく、活性化剤との混合に不利な糖類などの高分子化合物が維持されている。非極性抽出剤を使用して抽出してから常圧蒸留すると、得られた生成物は水分含有量が低く、水溶性活性化剤と混合することができない。高温蒸留はバイオ油のコークス化を引き起こすため、同様に重合を起こしやすい高分子化合物を分離することができない。減圧蒸留も、留出生成物中の水含有量を大幅に減少させる。
【0012】
本発明では、熱分解バイオ油の処理に分子蒸留技術を用いる。分子蒸留は主に様々な化合物の平均自由行程に依存し、平均自由行程は温度、有効分子直径、及び蒸発面と凝縮面間の圧力に関係しており、様々な分子の平均自由行程の違いに基づいて、分子サイズが小さく、分子量が小さい軽質分子は、分子サイズが大きく、分子量が大きい重質分子よりも蒸発面と凝縮面の間隔を通って蒸発されやすく、それによって軽質留分が得られ、凝縮面に達していない重質分子(バイオ油重質成分)は残渣留分として収集され、このように、バイオ油の分画利用が実現される。バイオ油を分子蒸留することにより軽質、重質の2種類の留分が得られ、重質留分は主にフラン類、ベンゼン、トルエンなどのプラットフォーム化合物の製造に用いられ、軽質留分は主に酸類、ケトン類、アルデヒド類、モノフェノール類などの小分子化合物を含み、含水率が最高50%に達し、発熱量が低く、pH値が低く、酸素含有量が高く、設備の腐食を引き起こしやすく、通常、後続の触媒エステル化、触媒改質、接触分解や触媒水素添加などのプロセスによりエステル類燃料、水素やバイオガソリンなどの製品を製造する。
【0013】
本発明では、「液-液」混合により、水分、酸類、ケトン類、アルデヒド類、モノフェノール類などの小分子化合物を多量に含む軽質留分の特性を活かし、軽質留分を水溶性活性化剤と混合して活性炭を製造する。水溶性の活性化剤、例えば活性金属アルカリ、塩は軽質留分の水に溶解することができ、このように十分な磁気撹拌の条件では、炭素前駆体、水分子、活性化剤が相互に可溶化した均質な混合物が形成されるとともに、これらの小分子化合物の多くが極性分子であること、酸素原子を含んでいて水分子(極性分子)と水素結合を形成し、相互に可溶化した状態になるなどの特性によって、炭原料と活性化剤が十分に混合され得る。また、これらの小分子化合物は重縮合反応を起こさないので、活性化剤の使用量を大幅に減少させることができる。さらに、バイオマスを急速熱分解してバイオ油を得、さらに分子蒸留して得た軽質留分には灰分を一切含まず、バイオマス中の灰分はすべてバイオマスの熱分解後に生成された炭素に残留し、分子蒸留した重質留分には微量残留する。従って、バイオ油の分子蒸留による軽質留分を活性炭製造のための前駆体として用いることにより、原料に着目して灰分を完全に除去するという問題を解決することができる。
【0014】
好ましくは、前記炭化-活性化は、多段加熱を行うことで、混合溶液に対して1段炭化-活性化を施すことである。
【0015】
好ましくは、前記炭化-活性化は、2段加熱を行うことで、混合溶液に対して1段炭化-活性化を施すことである。低温段階では、軽質留分中の小分子化合物におけるカルボニル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などはゆっくり分解して二酸化炭素及び水を生成し、これらの生成物が前駆体の内部から発揮されて不活性ガスの流れに入ると、多孔質スポンジ状の構造の形成が促進される一方、活性炭の物理的な活性化が達成され、高温段階では、スポンジ状多孔質構造が固定され、前駆体中の活性化剤がこの段階で分解して炭素と反応し、化学的な活性化が達成される。
【0016】
好ましくは、前記混合溶液は、磁気撹拌機により撹拌して得られる均一な混合溶液である。
【0017】
好ましくは、具体的には、
バイオマスを急速熱分解したバイオ油を製造し、熱分解バイオ油を分子蒸留して軽質留分を得て、次に、活性化剤と軽質留分を所定の質量比で混合した後所定時間撹拌し、軽質留分と活性化剤との均質な混合液体を得て、前記均質な液体に対して、不活性ガス保護下、2段温度を有する1段炭化-活性化を行い、室温に冷却して、不純物を含有するバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭を得るステップS1と、
ステップS1で得られた生成物を粉砕して1回目の篩いかけを行い、次に塩酸溶液で洗浄しながら撹拌し、次に、ろ液が中性となるまで脱イオン水で繰り返して洗浄して吸引ろ過することで、固体生成物中の活性化剤の反応生成物及び不純物を除去し、乾燥後、さらに粉砕して2回目の篩いかけを行い、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭を得るステップS2とを含む。
【0018】
好ましくは、前記軽質留分は、セルロース系バイオマスを急速熱分解して得た熱分解バイオ油を分子蒸留して得られるものである。
【0019】
好ましくは、前記セルロース系バイオマスは、果物殻、鋸屑、藁、竹、クルミの殻、ポプラ鋸屑、トウモロコシの茎葉のうちの1種又は複数種である。
【0020】
好ましくは、前記分子蒸留には、10~3000Paの分子蒸留圧、0.001~1mbarの短経路蒸留器の作動圧力が使用され、分子蒸留の温度が常温~200℃であり、様々なバイオ油留分が得られ、軽質留分は活性炭製造のための前駆体とされる。バイオ油の分子蒸留は高真空度、低温の蒸留システムにおいて行われる。
【0021】
好ましくは、前記軽質留分は、構成成分として、水分15~50質量%、酸類20~30質量%、ケトン類5~15質量%、アルデヒド類5~10質量%、モノフェノール類10~20質量%などの小分子化合物を含み、熱解リグニン、芳香族ポリマー、アントラセン、フェノール系ポリマー、糖類など、炭素鎖が長く分子量が大きい高分子化合物を含まず、また灰分を含有していない。
【0022】
好ましくは、前記活性化剤は固体水溶性活性金属アルカリ又は固体水溶性活性金属塩である。
【0023】
好ましくは、前記活性化剤は水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムのうちの1種又は複数種である。
【0024】
好ましくは、前記活性化剤と軽質留分との質量比は1:22~1:3である。
【0025】
好ましくは、ステップS1では、前記軽質留分と活性化剤の均質な混合液体は、所定の質量比の活性化剤を軽質留分に加えて、直ちに容器を密閉し、磁気撹拌機で0.5~2時間撹拌することにより得られる均一な混合物である。
【0026】
好ましくは、ステップS1では、前記不活性ガスは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス1種又は複数種である。
【0027】
好ましくは、ステップS1では、前記2段加熱による活性化の具体的なステップは、第1段階において、最終加熱温度が300~500℃、昇温速度が2~10℃/min、加熱時間が0.5~3hであり、第2段階において、最終加熱温度が700~900℃、昇温速度が2~10℃/min、加熱時間が1~3hである。軽質留分中の小分子化合物におけるカルボニル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などが低温度段階(300~500℃)でゆっくり分解して二酸化炭素及び水を生成し、これらの生成物が前駆体の内部から揮発されて不活性ガスの流れに入ると、多孔質スポンジ状の構造形成が促進される一方、活性炭の物理的な活性化が達成され、高温段階(700~900℃)では、スポンジ状多孔質構造が固定され、前駆体中の活性化剤がこの段階で分解して炭素と反応し、化学的な活性化が達成される。
【0028】
好ましくは、ステップS2では、1回目の篩いかけを行った後、0.5~2mol/Lの塩酸溶液を用いて洗浄し、3~6時間磁気撹拌し、次に、脱イオン水で繰り返して洗浄して吸引ろ過し、ステップS2では、2回の粉砕にはボールミルが使用され、10~12hの乾燥には換気式乾燥オーブンが使用され、1回目の篩いかけに用いるスクリーンのメッシュが2回目の篩いかけに用いるスクリーンのメッシュよりも小さい。
【0029】
好ましくは、本発明は、上記の製造方法によって製造されたバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭をさらに提案しており、前記バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、三次元多孔質構造であり、密度0.01~0.03g/cm3、比表面積1000~3000m2/g、細孔容積0.5~1.5 cm3/g、平均孔径1.8~2.6nm、灰分不含である。3電極テストシステムにおいて6mol/L KOH及び1mol/L H2SO4を水系電解液中の材料としたところ、質量比容量は80~770F/gであり、型番CR2025のボタン型2電極スーパーキャパシタにおいて6mol/L KOHを電解液の材料としたところ、質量比容量は80~240F/gである。6mol/L KOH水系電解液体系では電流強度の増大に連れて質量比容量の減衰が低下し、2電極系では、1A/gでの比容量は192F/g、100A/gでの比容量は148F/gであり、電流密度が100倍向上すると、質量比容量の減衰率は25%未満になる。
【0030】
また、本発明は、上記の製造方法によって製造されたバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の使用を提案しており、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭はスーパーキャパシタ電極活物質の製造に用いられる。
【0031】
本発明は、製造プロセスが統一され、簡単である方法を提供し、すなわち、バイオマスに対して急速熱分解と分子蒸留の両方を行って製造された軽質留分に対して、2段温度を有する1段炭化-活性化処理を行い、軽質留分と水溶性活性化剤との分子レベルでの相互作用により、軽量留分の水分中に活性化剤を溶解させ、活性化剤の使用量を減少させ、設備に対する腐食を低減させ、環境に優しく、しかも、比表面積が大きく、細孔分布が均一で、灰分を含まないスポンジ状多孔質活性炭を得る。このスポンジ状多孔質活性炭は、電気化学的性能に優れ、水系電解液中での比容量が大きく、大きな電流密度でも比容量が高く維持され、サイクル安定性が良好であるなどの特徴から、スーパーキャパシタの電極活物質として使用することができる。
【0032】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0033】
一、本発明はバイオマスを急速熱分解して製造されたバイオ油に対して分子蒸留を行って得た軽質留分を原料とし、軽質留分は、
1)水分15~50%を含有し、
2)酸類(20~30%)、ケトン類(5~15%)、アルデヒド類(5~10%)、モノフェノール類(10~20%)などの小分子化合物を含有し、酸素元素の含有量が高く(30~60%)、水分子(極性分子)と水素結合を形成し、相互に可溶化した状態となり、活性金属アルカリ、塩などの水溶性活性化剤を軽質留分の水に溶解させることができ、このように、十分な磁気撹拌条件で、炭素前駆体、水分子、活性化剤が相互に可溶化した均質な混合物は形成され、しかもこれらの小分子化合物は重縮合反応を起こさない。活性化剤の使用量を大幅に減少させることができる。
3)熱分解リグニン、芳香族ポリマー、アントラセン、フェノール系ポリマー、糖類など、炭素鎖が長く分子量が大きい高分子化合物を含まず、活性化剤との凝集の可能性がない。
4)灰分を含まないことにより、活性炭の製造過程における活性化剤の使用量とエネルギー消費量を減少させ、活性炭材料の比表面積と細孔容積を向上させ、生成物である活性炭をスーパーキャパシタに用いるときのリーク電流、電解液イオンの拡散抵抗、及び電子伝達抵抗を減少させ、キャパシタの自己放電を減少させ、キャパシタの電気化学的安定性を向上させる。
5)一般に、バイオ油と類似した石油は、水分をほぼ含有しておらず、0.08~1.82wt%のOを含有し、水に溶けにくい炭素、水素化によって形成される炭化水素類を主成分とし、一方、バイオ油の重質留分には0.1wt%の水分、1wt%の酸素しか含有しておらず、その物質成分は主に熱分解リグニン、芳香族ポリマー、アントラセン、フェノール系ポリマー、糖類など、炭素鎖が長く分子量が大きく、重合を起こしやすい高分子化合物であり、しかも高い粘度(20~200cSt、40℃)を有し、半固体の粘性アスファルトのような外観をしている。一方、軽質留分中の物質は多くの含酸素官能基を含有しており、炭化及び活性化の過程で水分、CO2などの小分子を放出し、これにより、活性化剤の使用量を効果的に減少させる一方、スポンジ状多孔質のような独特な形態の形成を促進することができる。バイオ油の重質留分や石油やバイオマスの直接熱分解によるバイオ油のいずれにも、このような効果は得られなかった。
修士論文「分子蒸留によるバイオ油の分離、及び生成物特性の研究」では、バイオ油の分子蒸留及び残渣留分の利用について記載しており、残渣留分は炭化してスーパーキャパシタの電極材料を製造する。バイオ油の分子蒸留の残渣留分はバイオ油分子蒸留による重質留分であり、含水率が極端に低く、流動性が悪く、常温では半固体状(半固体状アスファルトと類似)で、少量の灰分(1%未満)を含有し、主にジフェノール類などのポリフェノール系ポリマー(2~10%)、長鎖カルボン酸メチル(20~30%)、糖類(15~25%)、熱分解リグニン(~20%)などの高分子化合物を含有しており、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)では、小分子の酸類、ケトン類、アルデヒド類及びモノフェノール系化合物は検出されず、本発明で使用した軽質留分とは成分に明らかな違いが認められた。また、この残渣留分は含水率が低く、流動性が悪いため、活性化剤と直接混合することが全くできず、活性化剤と軽質留分とが均一に混合するという本発明の効果が得られない。本発明における2段温度を有する活性化と異なり、この修士論文では、残渣留分を直接600~1000℃で炭化し、1時間保温する。この論文では、活性化の過程ではいかなる活性化剤も使用しておらず、炭化生成物は比表面積が極めて低く、ほとんど細孔がないので、活性炭ではなく、これは、本発明で得られたスポンジ状多孔質活性炭とは異なり、このため、本発明との進歩性に影響を与えることはなく、かつ、この炭素材料をスーパーキャパシタの電極用炭素として用いると、比容量は8.8~25.8F/gであり、本発明で用いられるバイオ油分子蒸留による軽質留分で製造されたスポンジ状多孔質活性炭をスーパーキャパシタに用いる場合の比容量よりも大幅に低い。また、この論文では、製造された炭化生成物の外観や形態などの各特性パラメータの範囲については説明されていない。
【0034】
二、本発明では、少量の水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの水溶性アルカリ又は塩を活性化剤として使用し、これらは軽質留分の水に十分に溶解でき、水分子(極性分子)と軽質留分中の大部分の小分子含酸素化合物(極性分子)との間に水素結合が形成され、このように、十分な磁気撹拌条件で、炭素前駆体、水分子、活性化剤が相互に可溶化した均一な混合物が形成される。この炭素前駆体の物理的性質(流動性、密度、粘度)及び化学的組成は、上記特許、定期刊行物、学位論文で使用されるバイオマス、バイオマスタール、バイオマス原油及び重質留分とは顕著に異なり、これらの物質は、本発明で使用されるバイオ油分子蒸留による軽質留分を前駆体として代替することができず、本発明では、極少量の活性化剤を添加することでスポンジ状多孔質活性炭を製造することが可能であり、また、これらの物質は、本発明の軽質留分が備える諸特性を有していない。
【0035】
三、本発明では、2段加熱による1段炭化-活性化を用いて活性炭を製造し、その利点は、軽質留分中の小分子化合物におけるカルボニル基、アルデヒド基、ヒドロキシル基などが低温段階(300~500℃)でゆっくり分解して二酸化炭素と水を生成し、これらの生成物が前駆体の内部から揮発されて不活性ガスの流れに入ると、スポンジ状多孔質構造の形成が促進される一方、活性炭のその場での物理的な活性化が達成され、高温段階(700~900℃)では、スポンジ状多孔質構造がさらに固定化され、前駆体中の活性化剤がこの段階で分解して炭素と反応し、化学的な活性化が達成され、比表面積が大きく、細孔分布が均一なスポンジ状多孔質活性炭が得られる。
【0036】
四、本発明で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、スポンジ状構造を有し、比表面積が大きく、細孔分布が均一で、灰分がないなどの特徴を有する。製造された活性炭は、スーパーキャパシタ電極用のエネルギー貯蔵活物質として使用されると、電気化学的性能に優れる。
【0037】
五、本発明は、ステップが簡単で、操作が容易で、効果が明らかで、活性化剤の使用量が少なく、環境に優しく、設備に対する腐食性が低く、応用の将来性が期待できる。
【0038】
本発明の特徴及び利点は実施例及び図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料の模式図である。
【
図2】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料の孔径分布図である。
【
図3】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料の比表面積の分布図である。
【
図4】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料のX線光電子分光スペクトルである。
【
図5】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料のラマンスペクトルである。
【
図6】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料の3電極系における0.1A/gの電流強度での定電流充放電をテストした図である。
【
図7】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料の3電極系における100A/gの電流強度での定電流充放電をテストした図である。
【
図8】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料のレート特性図である。
【
図9】本発明の実施例1で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料のCR2025ボタン型2電極系における0.01V/sの走査速度でのサイクリックボルタンメトリーのテスト図である。
【
図10】本発明の実施例2で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料の窒素吸着-脱着等温線図である。
【
図11】本発明の実施例2で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料の電界放出型走査電子顕微鏡写真である。
【
図12】本発明の実施例2で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図13】本発明の実施例2で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭材料について15A/gの電流密度で50000回サイクルしたときの比容量維持率である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の実施形態の詳細な説明はいずれも例示的であり、本願についてさらに説明することを目的とする。通常、本明細書で使用されるすべての技術的用語及び科学的用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0041】
なお、以下の特定の実施形態で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されるものであり、本願に係る例示的な実施形態を限定するためではない。以下の特定の実施形態で使用される全ての用語は、文脈によって特に明示されない限り、単数形と複数形とが同じである。なお、本明細書で使用される「含む」は、特徴、ステップ、操作、コンポーネント、デバイス、及び/又はそれらの組み合わせが存在することを示すものである。
【0042】
本発明の最も重要な構想は、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法を発明することである。少量の活性化剤をバイオ油分子蒸留による軽質留分と直接混合して均一な液状混合物を得て、2段温度を有する1段活性化法により、細孔分布が均一で、比表面積が大きく、灰分がないなどの特徴を有するスポンジ状多孔質活性炭を得て、これにより、活性化剤の使用量を減少させ、設備に対する腐食を低減させ、スーパーキャパシタ電極材料の電気化学的性能をさらに向上させる。
【0043】
背景技術に記載されているように、活性炭を製造するための従来の化学的な活性化方法では、主に主に1段活性化又は2段活性化が使用され、また、活性化剤と炭素前駆体は高質量比(活性化剤:バイオマス又は活性化剤:プレカーバイド)で混合される。よく使われる混合方法には粉砕混合、超音波混合などがあり、結果として、活性化剤と活性化前駆体が均一に混合できないため、生成した混合物の均一性が悪い。次に、大量の活性化剤を使用する必要があるため、コストが増加し、環境汚染を引き起こし、しかも得られた活性炭の細孔分布が不均一である。バイオマスの種類が異なるため、製造プロセスを統一するのが難しい。上記の欠陥を解決するために、本発明は、バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭、その製造方法、及び使用を提供する。
【0044】
本発明では、系統的な研究・検証により、液状バイオ油軽質留分を極少量の活性化剤と混合し、所定時間磁気撹拌すると、均一な液体混合物が得られ得ることが示された。この過程は活性化剤の使用量を明らかに減少させ、設備に対する腐食を低減させることができ、しかも2段温度を有する1段炭化-活性化を経ると、比表面積が大きく、細孔分布が均一な活性炭が得られ、しかも孔径は主にマイクロ細孔サイズの範囲内にあり、電解液イオンの付着のための空間を大量で提供する。また、活性炭生成物に灰分が含まれていないという特性は、スーパーキャパシタの電気化学的性能をさらに向上させることができる。
【0045】
本発明は、以下のステップを含むバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法を提供し、
ステップ1、原料の調製
果物殻、鋸屑、藁、竹などのリグノセルロース系バイオマスを、熱解最終温度350~800℃、加熱速度100℃/min以上で急速熱分解し、バイオマスを急速熱分解したバイオ油を得て、さらに、熱分解バイオ油に対して、通常分子蒸留圧が10~3000Paの範囲、分子蒸留温度が常温~200℃、短経路蒸留器の作動圧力が0.001~1mbarである分子蒸留を行い、様々なバイオ油留分を得て、このうちの軽質留分を活性炭製造用の前駆体とする。
ステップ2、活性化剤の準備
水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの固体水溶性活性金属アルカリ、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの固体水溶性活性金属塩を、所定の質量比(活性化剤:軽質留分=1:22~3)で準備する。
ステップ3、原料と活性化剤の混合
ステップ1における軽質留分にステップ2における活性化剤を加え、容器を素早く密閉し、磁気撹拌機で0.5~2時間撹拌し、水溶性の活性化剤を軽質留分の水分に十分に溶解させ、均一に混合して、均一な液体混合物を得る。
ステップ4、第1段階活性化
ステップ3における液体混合物を適切なサイズのニッケルボートに投入し、横型管状炉に入れ、管状炉に窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスを100~300mL/minのガス流速で導入し、昇温速度を2~10℃/min、最終加熱温度を300~500℃、時間を0.5~3時間とする。
ステップ5、第2段階活性化
ステップ4の加熱が終了すると、2~10℃/minの昇温速度で、最終温度が700~900℃となるまで、1~3時間かけてさらに加熱し、室温に冷却して、スポンジ状多孔質活性炭を得る。
ステップ6、粉砕、洗浄
得られたスポンジ状多孔質活性炭をボールミルで十分に粉砕した後、100~200メッシュの篩を用いて篩いかけし、篩いかけをした粉末を0.5~2mol/Lの塩酸溶液で洗浄し、3~6時間磁気撹拌した後、ろ液が中性となるまで脱イオン水で繰り返して洗浄して吸引ろ過し、活性炭中の活性化剤の反応物などの不純物を除去する。
ステップ7、乾燥、粉砕
ステップ6で得られた生成物を換気式乾燥オーブンにて10~12時間乾燥させた後、ボールミルで粉砕し、200~300メッシュの篩を用いて篩いかけし、スーパーキャパシタ電極のエネルギー貯蔵用活物質として有用な活性炭を得る。本発明で使用される軽質留分は、茶黒色であり、1)、15~50%の水分;2)、酸類(20~30%)、ケトン類(5~15%)、アルデヒド類(5~10%)、モノフェノール類(10~20%)などの小分子化合物を含有し、3)、熱解リグニン、芳香族ポリマー、アントラセン、フェノール系ポリマー、糖類など、炭素鎖が長く分子量が大きい高分子化合物を含有しない。4)、灰分を含まない。
【0046】
好ましくは、前記バイオ油分子蒸留による軽質留分はクルミの殻、ポプラ鋸屑、トウモロコシの茎葉や籾殻に由来する。
【0047】
好ましくは、前記バイオ油分子蒸留による軽質留分の含水率は20%~40%である。好ましくは、上記のバイオ油分子蒸留による軽質留分には、酸類(20~25%)、ケトン類(8~10%)、アルデヒド類(5~8%)、モノフェノール類(12~15%)などの小分子化合物が含有されていることにより、バイオ油分子蒸留による軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造により有利である。
【0048】
好ましくは、前記活性化剤は水酸化カリウム又は炭酸水素カリウムである。好ましくは、前記バイオ油分子蒸留による軽質留分と活性化剤との質量比は9~11:1である。好ましくは、前記不活性ガスは窒素ガスである。好ましくは、2段加熱による活性化の具体的なステップは、第1温度段階が400℃、保温時間が2h、昇温速度が2℃/minであり、第2温度段階が800℃、保温時間が2~3h、昇温速度が2℃/minである。
【0049】
本発明では、製造中に生成された洗浄液中の塩類、例えばナトリウム塩、カリウム塩は全てリサイクル可能である。
【0050】
本発明の1つの代表的な実施形態では、上記の方法のステップによってバイオ油分子蒸留による軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭が製造される。
【0051】
本発明の1つの代表的な実施形態では、前記バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭のスーパーキャパシタにおける使用が提供される。
【0052】
本発明の1つの代表的な実施形態では、前記バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭を用いて製造されるスーパーキャパシタの電極材料が提供される。
【0053】
本発明の実施形態では、前記バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、三次元多孔質構造であり、比表面積1000~3000m2/g、細孔容積0.5~1.5cm3/g、平均孔径1.8~2.6nmである。3電極テストシステムにおいて、6mol/L KOH及び1mol/L H2SO4を水系電解液材料とする場合、質量比容量は80~770F/gであり、型番CR2025ボタン型2電極スーパーキャパシタにおいて、6mol/L KOHを電解液の材料とする場合、質量比容量は80~240F/gである。3電極6mol/L KOH水系電解液系では、電流強度の増加に伴い質量比容量の減衰速度は低下し、1A/gでは比容量は192F/gであり、100A/gでは比容量は148F/gであり、電流密度が100倍増大すると、電極材料の比容量の減衰量は25%未満である。
【0054】
本発明は、バイオ油分子蒸留による軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭を提供し、この活性炭は、比表面積、孔径分布、細孔容積、平均孔径のいずれも活性化剤の割合、活性化温度、活性化時間を変えることにより調整することができ、また、スーパーキャパシタの電極活物質に用いられる。
【0055】
本発明の実施例では、スーパーキャパシタ用のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の電極材料の特徴付け及び性能のテスト方法は以下の通りである。
【0056】
特徴付けテスト1:比表面積、細孔容積、孔径分布、比表面積分布、及び平均孔径の測定
比表面積、平均孔径は、液体窒素条件での活性炭による窒素吸着脱着等温線を測定することにより、BETモデルに基づいて得られ、細孔容積は単点吸着細孔の総細孔容積から得られ、孔径分布及び比表面積分布はDFTモデルに基づいて得られる。
特徴付けテスト2:
走査電子顕微鏡による特徴付けテスト
日本HITACHI社の型番SU8010の冷電界放出走査型電子顕微鏡を用いて、金を蒸着してから処理することにより得られる。
特徴付けテスト3:
X線光電子分光スペクトルテスト
英国VG社の型番ESCALABのX線電子分光装置を用いて測定し、範囲は0~1100eVである。
特徴付けテスト4:
ラマンスペクトルテスト
フランスHoriba Jobin Yvon社の型番LabRAM HR Evolutionの532nmレーザー共焦点ラマン分光器を用いてテストし、範囲は400~2450cm-1である。
特徴付けテスト5:
比容量テスト
中国辰華社の型番CHI660Eの電気化学ワークステーションを用いて測定する。
【0057】
実施例1
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてクルミの殻を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
ステップ2、活性化剤の準備
K
2CO
3を活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:9)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、原料と活性化剤の混合
ステップ2における活性化剤をステップ1における軽質留分にゆっくり加えて、容器を密閉し、磁気撹拌機で1時間撹拌して活性化剤と軽質留分を十分に混合し、均一な液状混合物を得た。
ステップ4、第1段階活性化
ステップ3における液体状混合物をニッケルボートに投入し、横型管状炉に入れ、管状炉に窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを300mL/minのガス流速で導入し、昇温速度を2℃/min、最終加熱温度を400℃、保温時間を3時間とした。
ステップ5、第2段階活性化
ステップ4の加熱段階が終了すると、2℃/minの昇温速度で800℃にさらに加熱し、3時間保温し、室温に冷却して、スポンジ状多孔質活性炭を得た。
ステップ6、粉砕、洗浄
得られた活性炭をボールミルで十分に粉砕し、200メッシュの篩を用いて篩いかけした後、得られた粉末状固体を1mol/Lの塩酸溶液で洗浄し、6時間磁気撹拌し、次に、ろ液が中性となるまで脱イオン水で繰り返して洗浄して吸引ろ過し、活性炭中に残った活性化剤、及び生成された無機塩を除去した。
ステップ7、乾燥、粉砕
ステップ6で得られた生成物を換気式乾燥オーブンにて12時間乾燥させた後、ボールミルで粉砕し、220メッシュの篩を用いて篩いかけし、スーパーキャパシタ電極のエネルギー貯蔵活物質として有用な活性炭を得た。
ステップ8、ステップ7で得られたバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭0.08gに、テスト材料、導電性カーボンブラック、バインダをそれぞれ8:1:1の割合で加え、次にイソプロピルアルコールを加え、十分に粉砕して、フィルムとして圧延した。さらに、換気式乾燥オーブンにて110℃で12時間乾燥させ、1cm×1cmの正方形の炭素膜として切り出し、10MPaの圧力で、切り出された上記の炭素膜を1cm×2cmのニッケルフォーム(集電体)にラミネートした。
ステップ9、ステップ8において切り出された炭素膜を1cm×2cmの導電性カーボンペーパー(集電体)にラミネートした。
ステップ10、ステップ8で製造された炭素フィルムを直径1.5cmの円状炭素膜として裁断し、同じサイズのニッケルフォームにこの炭素膜をラミネートし、質量の近い2つの電極板を対称電極(2電極系)として、PTFEセパレータで離間させ、CR2025のボタンキャパシタに組み込み、電解液として6mol/LのKOHを用いた。
実施効果1:実施例1におけるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1326m
2/g、細孔容積0.623m
3/g、平均孔径1.88nmであり、孔径分布が
図2、比表面積分布が
図3、X線光電子分光スペクトルのテストスペクトルが
図4、ラマンスペクトルのテストスペクトルが
図5に示された。
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、
図6に示すように、0.1A/gの電流密度では、比容量は234F/gであり、
図7に示すように、1A/gの電流密度では、比容量は192F/gであり、100A/gの電流密度では、比容量は148F/gであり、別の電流密度での比容量は
図8に示される。集電体として導電性カーボンペーパーを用いた電極を1mol/LのH
2SO
4電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は769F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は462F/gであり、100A/gの電流密度では、比容量は146F/gであった。2電極系において、0.1A/gの電流密度では、比容量は175F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は157F/gであり、80A/gの電流密度では、比容量は151F/gであり、0.1 V/sのサイクリックボルタンメトリー曲線は
図9に示される。
【0058】
実施例2
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてクルミの殻を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
ステップ2、活性化剤の準備
K
2CO
3を活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:9)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、実施例1のステップ4と同様であった。
ステップ5、最終加熱温度を700℃に変更する以外、実施例1のステップ5と同様であった。
ステップ6~10、実施例1のステップ6~10と同様であった。
実施効果1:実施例2のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1730m
2/g、細孔容積0.830m
3/g、平均孔径1.92nmであり、孔径分布が
図2、比表面積分布が
図3、X線光電子分光スペクトルのテストスペクトルが
図4、ラマンスペクトルのテストスペクトルが
図5に示される。
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は193F/g、1A/gの電流密度では、比容量は170F/gであり、100A/gの電流密度では、比容量は122F/gであり、集電体として導電性カーボンペーパーを用いた電極を1mol/LのH
2SO
4電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は560F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は335F/gであり、100A/gの電流密度では、比容量は110F/gであった。2電極系において、0.1A/gの電流密度では、比容量は171F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は160F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は152F/gであった。
【0059】
実施例3
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0060】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてクルミの殻を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
【0061】
ステップ2、活性化剤の準備
K2CO3を活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:11)の質量比で活性化剤を準備した。
【0062】
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
【0063】
ステップ4、昇温速度を5℃/min、保温時間を2時間に変更する以外、実施例1のステップ4と同様であった。
【0064】
ステップ5、昇温速度を5℃/min、最終加熱温度を900℃、保温時間を2時間に変更する以外、実施例1のステップ5と同様であった。
【0065】
ステップ6、実施例1のステップ6と同様であった。
【0066】
ステップ7、実施例1のステップ7と同様であり、ただし、スクリーンのサイズとして300メッシュの篩を用いた。
【0067】
ステップ8、実施例1のステップ8と同様であった。
【0068】
実施効果1:実施例3のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1830m2/g、細孔容積1.12m3/g、平均孔径2.45nmであった。
【0069】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は160F/g、1A/gの電流密度では、比容量は154F/g、50A/gの電流密度では、比容量は129F/g、100A/gの電流密度では、比容量は124F/gであった。
【0070】
実施例4
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0071】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料として籾殻を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1800Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
【0072】
ステップ2、活性化剤の準備
K2CO3を活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:10)の質量比で活性化剤を準備した。
【0073】
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、昇温速度を10℃/min、最終加熱温度を300℃に変更する以外、実施例3のステップ4と同様であった。
ステップ5、昇温速度を10℃/min、最終加熱温度を800℃、保温時間を2時間に変更する以外、実施例3のステップ5と同様であった。
【0074】
ステップ6~9、実施例1のステップ6~9と同様であった。
実施効果1:実施例4のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積2044m
2/g、細孔容積1.088m
3/g、平均孔径2.13nmであり、窒素吸着脱着曲線は
図10、走査型電子顕微鏡写真は
図11に示される。
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は191F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は173F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は134F/gであり、集電体として導電性カーボンペーパーを用いた電極を1mol/LのH
2SO
4電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は644F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は394F/gであり、100A/gの電流密度では、比容量は118F/gであった。
【0075】
実施例5
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0076】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてトウモロコシの茎葉を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/50℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
ステップ2、活性化剤の準備
K2CO3を活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:15)の質量比で活性化剤を準備した。
【0077】
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、最終加熱温度を500℃、保温時間を3時間に変更する以外、実施例4のステップ4と同様であった。
ステップ5、最終加熱温度を900℃、保温時間を3時間に変更する以外、実施例4のステップ5と同様であった。
【0078】
ステップ6~10、実施例1のステップ6~10と同様であった。
実施効果1:実施例5のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1761m2/g、細孔容積0.850m3/g、平均孔径1.93nmであった。
【0079】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は190F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は167F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は118F/gであり、集電体として導電性カーボンペーパーを用いた電極を1mol/LのH2SO4電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は552F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は327F/gであり、100A/gの電流密度では、比容量は109F/gであった。2電極系において、0.1A/gの電流密度では、比容量は168F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は157F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は140F/gであった。
【0080】
実施例6
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてポプラ鋸屑を用い、450℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1700Pa/70℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
【0081】
ステップ2、活性化剤の準備
KHCO3を活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:3)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、保温時間を0.5時間に変更する以外、実施例3のステップ4と同様であった。
【0082】
ステップ5、最終加熱温度を800℃、保温時間を3時間に変更する以外、実施例3のステップ5と同様であった。
ステップ6~10、実施例1のステップ6~10と同様であった。
実施効果1:実施例6のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1950m2/g、細孔容積1.126m3/g、平均孔径2.31nmであった。
【0083】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は210F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は190F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は163F/gであり、集電体として導電性カーボンペーパーを用いた電極を1mol/LのH2SO4電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は530F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は360F/gであり、100A/gの電流密度では、比容量は134F/gであった。2電極系において、0.1A/gの電流密度では、比容量は172F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は160F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は145F/gであった。
【0084】
実施例7
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0085】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてポプラ鋸屑を用い、450℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。3000Pa/70℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
【0086】
ステップ2、活性化剤の準備
KOHを活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:22)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、保温時間を1時間に変更する以外、実施例1のステップ4と同様であった。
ステップ5、保温時間を2時間に変更する以外、実施例1のステップ5と同様であった。
ステップ6~8、実施例1のステップ6~8と同様であった。
【0087】
実施効果1:実施例7のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1736m2/g、細孔容積1.085m3/g、平均孔径2.50nmであった。
【0088】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は191F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は164F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は117F/gであった。
【0089】
実施例8
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0090】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料として竹を用い、500℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1700Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
【0091】
ステップ2、活性化剤の準備
NaOHを活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:3)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、最終加熱温度を500℃、保温時間を2時間に変更する以外、実施例1のステップ4と同様であった。
【0092】
ステップ5、最終加熱温度を900℃に変更する以外、実施例1のステップ5と同様であった。
ステップ6、実施例1のステップ6と同様であった。
ステップ7、実施例1のステップ7と同様であり、たたし、スクリーンのサイズとして400メッシュの篩を用いた。
ステップ8、実施例1のステップ8と同様であった。
【0093】
実施効果1:実施例8のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1240m2/g、細孔容積0.769m3/g、平均孔径2.48nmであった。
【0094】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は156F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は124F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は101F/gであった。
【0095】
実施例9
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0096】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料として竹を用い、450℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
ステップ2、活性化剤の準備
K2CO3を活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:3)の質量比で活性化剤を準備した。
【0097】
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、実施例8のステップ4と同様であった。
ステップ5、最終加熱温度を800℃、保温時間を2時間に変更する以外、実施例8のステップ5と同様であった。
ステップ6、実施例1のステップ6と同様であった。
【0098】
ステップ7、実施例1のステップ7と同様であり、ただし、スクリーンのサイズとして500メッシュの篩を用いた。
ステップ8、実施例1のステップ8と同様であった。
【0099】
実施効果1:実施例9のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積2030m2/g、細孔容積1.03m3/g、平均孔径2.03nmであった。
【0100】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は215F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は194F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は145F/gであった。
【0101】
実施例10
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料として竹を用い、450℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.01mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
【0102】
ステップ2、活性化剤の準備
KOHを活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:3.7)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、昇温速度を5℃/min、保温時間を2時間に変更する以外、実施例2のステップ4と同様であった。
【0103】
ステップ5、昇温速度を5℃/min、最終加熱温度を800℃に変更する以外、実施例2のステップ5と同様であった。
ステップ6~8、実施例1のステップ6~8と同様であった。
【0104】
実施効果1:実施例10のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積2103m2/g、細孔容積1.19m3/g、平均孔径2.27nmであった。
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は212F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は193F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は144F/gであった。
【0105】
実施例11
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料として竹を用い、450℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.01mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
ステップ2、活性化剤の準備
KOHを活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:3.7)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、昇温速度を8℃/minに変更する以外、実施例3のステップ4と同様であった。
ステップ5、昇温速度を8℃/minに変更する以外、実施例3のステップ5と同様であった。
ステップ6~8、実施例1のステップ6~8と同様であった。
【0106】
実施効果1:実施例11のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1706m2/g、細孔容積0.943m3/g、平均孔径2.21nmであった。
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は176F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は154F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は121F/gであった。
【0107】
実施例12
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0108】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてクルミの殻を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてクルミの殻を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
【0109】
ステップ2、活性化剤の準備
KOHを活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:5.5)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、保温時間を2時間に変更する以外、実施例1のステップ4と同様であった。
ステップ5、保温時間を2時間に変更する以外、実施例3のステップ5と同様であった。
ステップ6~8、実施例1のステップ6~8と同様であった。
【0110】
実施効果1:実施例12のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1905m2/g、細孔容積1.062m3/g、平均孔径2.23nmであった。
【0111】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は183F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は168F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は129F/gであった。
【0112】
実施例13
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0113】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてクルミの殻を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
【0114】
ステップ2、活性化剤の準備
KOHを活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:11)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
ステップ4、最終加熱温度を500℃に変更する以外、実施例1のステップ4と同様であった。
ステップ5、最終加熱温度を900℃に変更する以外、実施例3のステップ5と同様であった。
【0115】
ステップ6~8、実施例1のステップ6~8と同様であった。
実施効果1:実施例13のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1874m2/g、細孔容積0.900m3/g、平均孔径1.92nmであった。
【0116】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は169F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は141F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は107F/gであった。
【0117】
実施例14
バイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の製造方法であって、本実施例では、2段温度を有する1段炭化-活性化法で製造されるバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭の方がより優れた物理的・化学的特性を有することを比較により説明するために、、実施例1~13と異なる加熱方法、すなわち、1段温度を有する1段炭化-活性化法が使用された。
具体的には、以下のステップを含む。
【0118】
ステップ1、原料の調製
バイオマス原料としてクルミの殻を用い、550℃で急速熱分解して、バイオ油を得た。1500Pa/60℃、短経路蒸留器の作動圧力0.1mbarの分子蒸留条件下で、このバイオ油を分子蒸留して軽質留分を得、この軽質留分を炭素前駆体の原料とした。
ステップ2、活性化剤の準備
KOHを活性化剤とし、(活性化剤:軽質留分=1:11)の質量比で活性化剤を準備した。
ステップ3、実施例1のステップ3と同様であった。
【0119】
ステップ4、ステップ3における液体状混合物をニッケルボートに投入し、横型管状炉に入れ、管状炉に窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを、300mL/minのガス流速で導入し、昇温速度を2℃/min、最終加熱温度を直接800℃、保温時間を2時間とし、室温に自然冷却して、固体生成物を得た。
ステップ5、実施例1のステップ6と同様であった。
ステップ6、実施例1のステップ7と同様であり、ただし、スクリーンのサイズとして300メッシュの篩を用いた。
ステップ7、実施例1のステップ8と同様であった。
【0120】
実施効果1:実施例14のバイオ油軽質留分ベースのスポンジ状多孔質活性炭は、比表面積1330m2/g、細孔容積0.85m3/g、平均孔径2.56nmであった。
【0121】
実施効果2:集電体として矩形ニッケルフォームを用いた電極を6mol/LのKOH電解液に入れて3電極系を組み立て、0.1A/gの電流密度では、比容量は123F/gであり、1A/gの電流密度では、比容量は98F/gであり、50A/gの電流密度では、比容量は74F/gであった。
【0122】
上記の例は本発明の好適な実施形態であるが、本発明の実施形態は上記の実施例により限定されるものではなく、本発明の主旨や原理を逸脱することなく行われる他の変化、修飾、置換、組み合わせ、簡素化は、全て等価置換形態であり、本発明の特許範囲に含まれるものとする。