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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
B43K24/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018243507
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104339
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】安永 雅博
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012194(JP,A)
【文献】特開2001-270286(JP,A)
【文献】特開2018-047612(JP,A)
【文献】実開昭54-138743(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、筆記体と、付勢部材を備えた筆記具において、
前記付勢部材の変形を規制し、前記筆記体と前記付勢部材の接触を規制する補助部材を有し、
前記付勢部材の内側に前記補助部材が配され、前記補助部材の内側に前記筆記体の一部が配され
前記軸筒の軸線方向に移動するスライダー部材を有し、
前記スライダー部材に前記筆記体と前記補助部材が取り付けられていることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
軸筒と、筆記体と、付勢部材を備えた筆記具において、
前記付勢部材の変形を規制し、前記筆記体と前記付勢部材の接触を規制する補助部材を有し、
前記付勢部材の内側に前記補助部材が配され、前記補助部材の内側に前記筆記体の一部が配され、
前記軸筒の内部にガイド部材を有し、
前記ガイド部材は、前記軸筒内の先端側の空間と後尾側の空間を連通する連通部を有し、前記連通部に前記筆記体が挿通され、
前記補助部材は、前記筆記体と共に前記軸筒の軸線方向に移動するものであり、
前記補助部材が最も後尾側に位置するとき、前記補助部材の先端側端部が前記連通部の内部に位置していることを特徴とする筆記具。
【請求項3】
前記筆記体の後尾側部分に、後尾側に向かうにつれて窄まっていく先細り部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボールペンレフィルや、芯送り機構付きユニット(所謂シャープペンユニット)等の筆記体を軸筒内に配し、筆記体の先端部分を軸筒先端から出没させる出没式筆記具が広く知られている。この種の出没式筆記具は、筆記時に筆記体の先端部分を軸筒外に配する一方で、不使用時には、筆記体の先端部分を軸筒内に収納できる。
【0003】
このような出没式筆記具として、複数の筆記体を備えた多芯型筆記具がある。この多芯型筆記具は、所謂多色ボールペンのように、複数の筆記体から一つの筆記体を選択し、選択した筆記体の先端部分を軸筒外に配して使用する。つまり、軸筒先端に設けられた一つの開口から、複数の筆記体の先端部分を選択的に出没させる構造となっている。
【0004】
この種の多芯型筆記具としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1に開示された筆記具は、軸筒内に配された有孔部材と、色が異なる3種類のレフィル(筆記体)を備えた構造となっている。
【0005】
詳細に説明すると、この筆記具の軸筒内では、軸方向における中途部分に有孔部材が配されている。この有孔部材は、複数の貫通孔を備えており、それぞれの貫通孔が有孔部材を軸方向に貫通している。すなわち、軸筒内の先端側(ペン先側)の空間と、後尾側の空間とが有孔部材によって区画され、有孔部材の貫通孔が2つの空間を連通している。そして、各レフィルがそれぞれ異なる貫通孔に挿通された状態となっている。
【0006】
さらに、レフィルの後端部分が操作手段(スライダー)に取り付けられており、この操作手段を操作することで、レフィルが軸方向に移動する構造となっている。
なお、先端側に位置する有孔部材と、後尾側に位置する操作手段の間には、付勢手段が設けられており、付勢手段が操作手段及びレフィルを後尾側に向かって常時付勢した状態となっている。
【0007】
したがって、操作手段を付勢手段の付勢力に逆らってペン先側へ移動させた後、操作手段を他部材と係合させることで、操作手段を移動後の位置に留めた状態とする。このことにより、操作手段と連なるレフィルの先端側が軸筒先端から外部に突出した状態となる。
対して、レフィルの先端側を軸筒内に収容する際には、操作手段と他部材の係合を解除する。このことにより、付勢手段の付勢力によって操作手段及びレフィルが後尾側へ移動し、レフィルの先端側が軸筒内に退入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5395637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、多芯型筆記具では、いずれかのレフィルのインキを使い切った場合、そのレフィルを新たなレフィルと交換して使用する場合がある。しかしながら、従来の多芯型筆記具には、このレフィルの交換作業を容易化するという点において改善の余地があった。
【0010】
具体的に説明すると、多色ボールペン(多芯型筆記具)のレフィル202を交換する交換作業を実施する際には、図15で示されるように、軸筒を前側筒部(図示しない)と後側筒部203に分離した状態とする。このことで、後側筒部203の前側開口部203aから複数のレフィル202が外部に突出した状態となる。そして、この状態から交換対象となるレフィル202aをペン先側(前側)へ引き抜き、レフィル202aを取り外す。
【0011】
つまり、レフィル202aを取り外す際には、図16(a)で示されるように、対象となるレフィル202aを前側(図16では左側)へ移動させる。このとき、それぞれのレフィル202がスライダー204(操作手段)の前側部分と一体に取り付けられていることから、所定のレフィル202aを前側に移動させると、このレフィル202aと連なるスライダー204aが前側へ移動する。
【0012】
そして、スライダー204aが移動範囲内で最も前端側に移動した状態で、さらにレフィル202aを前方へ引っ張ることにより、図16(b)で示されるように、レフィル202aがスライダー204aの前端部分から取り外された状態となる。その後、スライダー204aを移動前の位置に戻し(図16(c)参照)、レフィル202aの取り外しが完了する。
【0013】
ところで、スライダー204aの前端側には、レフィル202aと共にコイルバネ206(付勢部材)が取り付けられている。このコイルバネ206は、大部分がスライダー204aと有孔部材205との間に位置しており、常時縮められた状態となっている。そして、レフィル202aを取り外す際には、一端大きく縮んだ後(図16(b)参照)、縮み量が少ない状態へ移行する(図16(c)参照)。
このことにより、上記したレフィル202aの取り外し作業を実施すると、図16(c)、図17で示されるように、コイルバネ206が本来の姿勢と比べて蛇行してしまう場合がある。
【0014】
すなわち、コイルバネ206は、本来であれば、多色ボールペン201の軸線方向に沿って延びた姿勢で配される(図16(a)等参照)。
しかしながら、蛇行してしまった場合、図17で示されるように、各巻回部分の中心を繋いだ仮想線L1が、多色ボールペン201の軸線方向(図17の左右方向)に対して蛇行して延びた状態となる。すなわち、本来であれば直線状(又は略直線状に延びる)仮想線L1が、径方向の一方側(図17の下側)に延びた後、径方向の反対側(図17の上側)に延びるといった具合に、蛇行して延びてしまう。
【0015】
そして、このようにコイルバネ206が蛇行してしまった場合、新たなレフィル202bの取り付け作業が困難化してしまう。
【0016】
すなわち、新たなレフィル202bを取り付ける際には、図18で示されるように、レフィル202bの後端側部分を前側開口部203aから挿入し、その後、奥まった位置で有孔部材205の貫通孔205aに挿入する。そして、図19で示されるように、レフィル202bの後端側部分(図19では右端側部分)を有孔部材205の貫通孔205aの内部から、コイルバネ206の内側に移動させる。
【0017】
ここで、上記したようにコイルバネ206が蛇行した場合、レフィル202bの後端側部分をコイルバネ206の内側に移動させていくと、レフィル202bの後端側部分がコイルバネ206の線材に引っ掛かってしまう場合がある。
すなわち、図19(b)で示されるように、レフィル202bの後端角部分がコイルバネ206の線材に当接してしまい、レフィル202bを円滑に後尾側へ移動させることができない場合がある。
【0018】
また、このような場合において、レフィル202bを無理に押し込むと、コイルバネ206の蛇行がより大きくなって、蛇行したコイルバネ206が近接する他のコイルバネ206(図16(c)等参照)と絡んでしまうという問題が生じてしまう。
この問題は、軸筒の径が細い細軸の筆記具で特に顕著に発生する。すなわち、細軸の筆記具は、軸筒内の空間が狭く、この狭い空間に複数のコイルバネ206が配される。このため、必然的にコイルバネ206同士が近接し、このような問題が顕著に生じる。
さらに言えば、細軸の筆記具では、蛇行が小さくてもこのような問題が生じることがあり、新たなレフィル202bの挿入前にスライダー204aを移動前の位置に戻した段階(図16(c)参照)で、このような問題が生じてしまう場合がある。
【0019】
つまり、新たなレフィル202bを取り付ける際には、レフィル202bをコイルバネ206の内側に挿通した状態でさらに押し込み、レフィル202bの後端側部分をスライダー204aの前端側部分に押し当てる必要がある。しかしながら、上記のようにコイルバネ206が蛇行してしまった場合、レフィル202bをコイルバネ206の内側に通す作業が非常に困難となる。
【0020】
そこで本発明は、筆記体の交換作業が容易な筆記具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、軸筒と、筆記体と、付勢部材を備えた筆記具において、前記付勢部材の変形を規制し、前記筆記体と前記付勢部材の接触を規制する補助部材を有し、前記付勢部材の内側に前記補助部材が配され、前記補助部材の内側に前記筆記体の一部が配され、前記軸筒の軸線方向に移動するスライダー部材を有し、前記スライダー部材に前記筆記体と前記補助部材が取り付けられていることを特徴とする筆記具である。
【0022】
本発明の筆記具は、所定部材を付勢する付勢部材を備えており、補助部材によって付勢部材の意図しない変形を防止できる。すなわち、上記した蛇行して延びる変形等の発生を防止できる。また、筆記体の交換時において、筆記体と付勢部材が接触することで生じる問題の発生を防止できる。このことにより、筆記体の交換作業が容易である。
【0023】
発明は、前記軸筒の軸線方向に移動するスライダー部材を有し、前記スライダー部材に前記筆記体と前記補助部材が取り付けられている
【0024】
かかる構成によると、軸筒内に補助部材を配置する上で、大がかりな加工等をすることなく補助部材の配置が可能となる。
【0025】
請求項に記載の発明は、軸筒と、筆記体と、付勢部材を備えた筆記具において、前記付勢部材の変形を規制し、前記筆記体と前記付勢部材の接触を規制する補助部材を有し、前記付勢部材の内側に前記補助部材が配され、前記補助部材の内側に前記筆記体の一部が配され、前記軸筒の内部にガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記軸筒内の先端側の空間と後尾側の空間を連通する連通部を有し、前記連通部に前記筆記体が挿通され、前記補助部材は、前記筆記体と共に前記軸筒の軸線方向に移動するものであり、前記補助部材が最も後尾側に位置するとき、前記補助部材の先端側端部が前記連通部の内部に位置していることを特徴とする筆記具である。
【0026】
かかる構成によると、筆記体の交換時に補助部材が破損し難いので、好ましい。また、補助部材の内側に筆記体を挿入し易く、筆記体の交換作業をより容易化できる。
【0027】
請求項に記載の発明は、前記筆記体の後尾側部分に、後尾側に向かうにつれて窄まっていく先細り部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具である。
【0028】
かかる構成によると、補助部材の内側に筆記体を挿入し易く、筆記体の交換作業をより容易化できる。
【0029】
上記した筆記具は、前記補助部材は、前記筆記体と共に前記軸筒の軸線方向に移動するものであることが好ましい。
【0030】
上記した筆記具は、前記軸筒の軸線方向に移動するスライダー部材を有し、前記スライダー部材は、一部が前記軸筒の外部に露出しており、前記スライダー部材を操作することで、前記筆記体を移動させる動作が可能であることが好ましい。
【0031】
上記した筆記具は、前記軸筒の内部にガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記軸筒内の先端側の空間と後尾側の空間を連通する連通部を有し、前記連通部に前記筆記体が挿通され、前記補助部材は、前記筆記体と共に前記軸筒の軸線方向に移動するものであり、前記補助部材が前記後尾側に位置するとき、前記補助部材の先端側端部と、前記連通部の先端側開口のそれぞれは、略同一平面上に位置することが好ましい。
なお、ここでいう「略同一平面上」の「略」とは、プラスマイナス2.0mm程度の段差を許容するものとする。
【0032】
上記した筆記具は、前記補助部材は、先端側部分に開口が形成された筒状体であり、前記補助部材の先端側部分に、先端側に向かうにつれて広がっていく先太り部が形成されていることが好ましい。
【0033】
上記した筆記具は、前記軸筒の内部にガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記軸筒内の先端側の空間と後尾側の空間を連通する連通部を有し、前記補助部材は、前記筆記体と共に前記軸筒の軸線方向に移動するものであり、少なくとも一部が前記連通部の内側に常時位置することが好ましい。
【0034】
上記した筆記具は、前記補助部材は、前記筆記体と共に前記軸筒の軸線方向に移動するものであり、前記付勢部材はバネであって、前記補助部材の移動と共に前記付勢部材が伸縮することが好ましい。
【0035】
上記した筆記具は、前記筆記体は、先端側に引き抜いて取り外し可能であり、後尾側に押し入れて取り付け可能であることが好ましい。
【0036】
上記した筆記具は、前記付勢部材はコイルバネであり、圧縮方向が前記軸筒の軸線方向と同方向であって、最大伸長したときの長さが前記補助部材よりも短いことが好ましい。
【0037】
上記した筆記具は、前記付勢部材は、前記筆記体を直接又は間接的に付勢する付勢力を発生させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、筆記体の交換作業が容易な筆記具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態にかかる多芯型筆記具を示す斜視図である。
図2図1の多芯型筆記具を示す斜視図であり、前側筒部と後側筒部を分離した様子を示す。
図3図2の後側筒部及びその内部を示す説明図であり、後側筒部を透過し、複数の連結構造体の一つのみを示す。
図4図3の連結構造体を示す斜視図である。
図5図4の連結構造体を示す分解斜視図である。
図6図5のスライダー部材を示す斜視図である。
図7図1の多芯型筆記具を示す断面図であり、一つのボールペンチップを外部に突出させた状態を示す。
図8図2の後側筒部及びその内部を示す説明図であり、後側筒部及び連結構造体の一部を破断し、内部を模式的に示す。
図9】(a)は図8のA部分の要部を示す説明図であり、(b)は図8のB部分の要部を示す説明図である。
図10】芯部材をスライダー部材に取り付ける様子を示す説明図であり、後側筒部の内部における要部を示す図であって、(a)~(c)の順に芯部材を移動させる様子を示す。
図11】上記した実施形態とは異なる実施形態にかかる多芯型筆記具の内部構造の要部を示す説明図であり、(a)、(b)はそれぞれ異なる実施形態を示す。
図12】上記した各実施形態とは異なる実施形態にかかる多芯型筆記具の内部構造の要部を示す説明図である。
図13】上記した各実施形態とは異なる実施形態にかかる連結構造体を示す分解斜視図である。
図14図13の連結構造体を採用した多芯型筆記具の内部構造の要部を示す説明図である。
図15】従来の多色ボールペンのレフィルを交換する様子を示す図であり、前側筒部を取り外してレフィルを取り外す様子を示す説明図であって、後側筒部の内部の一部を透過して示す。
図16図15に続いてレフィルを取り外す様子を示す図であり、後側筒部及び有孔部材を破断して示す説明図であって、(a)~(c)の順に取り外す。
図17図16(c)で示されるコイルバネを示す図であり、(a)は側面図、(b)は、(a)のコイルバネを切断して示す端面図である。
図18図16(c)に続いて新たなレフィルを取り付ける様子を示す説明図である。
図19図18に続いて新たなレフィルを取り付ける様子を示す説明図であり、(a)、(b)の順にレフィルをコイルバネに挿入していく。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態に係る多芯型筆記具1(筆記具)について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
また、以下の説明において、特に断りのない限り、ペン先側を先端側又は前側、ペン先側と対となる長手方向の逆側を後尾側又は後側として説明する。
【0041】
本実施形態の多芯型筆記具1は、図1図2で示されるように、本体となる軸筒2と、複数の芯部材3(筆記体、図2参照)と、複数のスライダー部材4(所定部材)を備えた構造となっている。
そして、多芯型筆記具1は、いずれか一つのスライダー部材4をペン先側に移動させることで、芯部材3の先端側部分が軸筒2の先端開口部2aから外部に突出する構造となっている(詳しくは後述する)。
【0042】
つまり、多芯型筆記具1の内部には、図3で示されるように、芯部材3と、コイルバネ6(付勢部材)と、挿入補助部材7(補助部材)と、スライダー部材4が一体となった連結構造体8が複数配されている(本実施形態では4つ、図3では一つのみ図示)。したがって、いずれか一つのスライダー部材4をペン先側へ移動させると、スライダー部材4と連なる一つの芯部材3がペン先側へ移動する構造となっている。
【0043】
軸筒2は、図1図2で示されるように、前側筒部10と後側筒部11により構成されている。
なお、本実施形態の多芯型筆記具1は、軸筒2が細く形成された細軸の筆記具(所謂細軸タイプの筆記具)となっている。すなわち、軸筒2の軸径(軸径の最大径であり、横断面と平行な方向の最大長さ)が、13.7mm以下となる筆記具である。本実施形態では、軸筒2の軸径が12mm以下となるように形成している。
ここで、軸筒2の内径(内径の最大径であり、横断面と平行な方向の最大長さ)は、軸径よりも2mm程度小さくなるように形成している。すなわち、本実施形態では、軸筒2の内径が10mm以下となるように形成している。なお、ここでいう「程度」とは、数パーセントの誤差を含むものとする。
【0044】
前側筒部10は、図2で示されるように、先端側部分に筒先端部13が形成されており、後尾側部分の外周面に雄ネジ部14が形成されている。
この前側筒部10は、中空の部材であり、先端開口部2aと後尾側の後側開口部(図示しない)を介して内外が連通している。なお、後側開口部は、先端開口部2aよりも大径の開口部分である。
【0045】
筒先端部13は、その外側面及び内側面(図7参照)が先端に向かうにつれて狭径となるテーパ状の部分であり、その先端面に前側筒部10の内外を連通する先端開口部2aが形成されている。
【0046】
後側筒部11は、図2で示されるように、先端側に前側開口部11aを有する略有底筒状の部材であり、内部に空間が形成される中空の部材である。
この後側筒部11は、先端側部分の内周面に、雌ネジ部17が形成されており、後尾側部分の外周面にスライダー溝20が形成されている。雌ネジ部17は、前側筒部10の雄ネジ部14と螺合可能な部分である。つまり、雄ネジ部14と雌ネジ部17は、対となる係合部を形成し、雌ネジ部17はその一方となる。
【0047】
スライダー溝20は、後側筒部11(軸筒2)の軸方向(長手方向)に沿って細長く延びる溝であり、後側筒部11の側壁部分を貫通して内部空間と外部を連通する。このスライダー溝20は、複数形成されており、後側筒部11の周方向で間隔を空けて並列配置されている。
【0048】
以上のように、軸筒2は、雄ネジ部14と雌ネジ部17を螺合(係合)させ、前側筒部10と後側筒部11を連結させて形成される部材である。前側筒部10と後側筒部11が連結した状態では、前側筒部10の内部空間と後側筒部11の内部空間とが一連の空間を形成し、先端開口部2aを介して外部と連通する。
【0049】
ここで、軸筒2(後側筒部11)の内部には、図3で示されるように、多芯ガイド部材25(ガイド部材)が配されている。
【0050】
多芯ガイド部材25は、概形が略円柱状となる部材である。すなわち、幅を持って所定方向に延びる形状であって、軸筒2の横断面の広がり方向を幅方向とし、軸筒2の軸線方向(前後方向)を延び方向とする。
この多芯ガイド部材25には、複数のガイド貫通孔25a(連通部)が設けられている。各ガイド貫通孔25aは、多芯ガイド部材25を軸筒2の軸線方向で貫通する。
【0051】
以上のことから、多芯ガイド部材25は、後側筒部11(軸筒2)の内部空間を区画する部材であり、詳細には、内部空間を先端側空間と後尾側空間に区画する。そして、区画した2つの空間はガイド貫通孔25aを介して連続する。
【0052】
ガイド貫通孔25aは、連結構造体8(芯部材3)と同数形成されており、本実施形態では4つ形成されている。そして、複数のガイド貫通孔25aには、それぞれ異なる連結構造体8の一部分が挿通されている(図3では一つの連結構造体8のみ図示)。
詳細には、本実施形態のガイド貫通孔25aには、芯部材3及び挿入補助部材7が挿通されている。つまり、ガイド貫通孔25aは、少なくとも芯部材3を含む連結構造体8の一部分が挿通されている。
【0053】
この多芯ガイド部材25は、連結構造体8が移動する(詳しくは後述する)ときに移動方向を規制するガイド部材として機能し、且つ、複数の連結構造体8(芯部材3)同士が近接しすぎないように配置位置を規制するスペーサ部材としても機能する。
【0054】
芯部材3は、本実施形態ではボールペンレフィルであり、図4で示されるように、ボールペンチップ3aと、インキ収容筒3bを備えた構造となっている。
【0055】
ボールペンチップ3aは、内蔵された金属製のボールを回転自在に保持する構造となっており、このボールの回転によってインキ収容筒3bから供給されるインキを外部の筆記対象物(紙等)に塗布する。つまり、ボールペンチップ3aは、芯部材3の先端側に位置して筆記対象物に筆記を行うペン先部分(筆記部)を形成する。
【0056】
インキ収容筒3bは、概形が略円筒状となる筒状部材である。すなわち、幅を持って所定方向に延びる形状であって、軸筒2から先端が突出しない状態では、軸筒2の横断面の広がり方向が幅方向となり、軸筒2の軸線方向が延び方向となる。そして、内部空間に所定の色のインキが収容されている。ここで、インキ収容筒3bの内部空間には、後尾側端部よりもやや先端側に離れた位置に開口栓(図示しない)が設けられている。すなわち、内部空間は、この開口栓によって2つの空間に分断されており、先端側の空間にインキが収容されている。
また、後端側の空間は、インキ収容筒3bの後端側(後端面)に位置する開口部分(図示しない)を介して内外が連通しており、インキ収容筒3bの長手方向(前後方向)に延びる空間である。つまり、インキ収容筒3b全体の後端から開口栓の後端までの間に、略有底孔状の部分が形成される。
【0057】
本実施形態のインキ収容筒3bは、特徴的な部分として、図5で示されるように、外周面の後尾側部分にテーパ部30(先細り部)が形成されている。テーパ部30は、後尾側に向かうにつれて狭径となるように窄まる(最大幅方向長さが短くなるように窄まる)部分であり、概形が略円錐台状となる部分である。
つまり、このテーパ部30は、円筒の後尾側角部分を周方向に亘って削除したような形状となっている。そして、後尾側端部よりもやや先端側となる部分から、後尾側端部までの間に形成されている。
【0058】
スライダー部材4は、図6で示されるように、長尺状に延びる部材であり、スライダー本体部35と、操作突起部36と、移動規制部37と、係合突起部38と、部材取付部39とが一体となって形成されている。
【0059】
スライダー本体部35は、概形が略直方体状で前後方向に延びる部材である。このスライダー本体部35の前端部分には、幅方向長さが他よりも長い先端側拡幅部35aが形成されている。
【0060】
操作突起部36は、スライダー本体部35の外側面(図6では上面)から外側(図6では上方)に突出する部分であり、外側面の後端よりの一部分から突出している。そして、突出端部分が丸みを帯びた形状となっている。
【0061】
移動規制部37は、スライダー本体部35の幅方向両側に位置する側面部分から外側へ突出する突出部分であり、2つの側面部分のそれぞれに一つずつ形成されている(一方については図示しない)。この移動規制部37は、概形が略直方体状であり、スライダー本体部35の側面部分のうち、後端より且つ下側よりの一部分から外側へ突出する。
本実施形態では、幅方向で離れた位置に同形の移動規制部37がそれぞれ形成されており(一方については図示しない)、2つの移動規制部37の前端部分及び後端部分の前後方向の位置が同一の位置(略同一の位置)となっている。
【0062】
係合突起部38は、スライダー本体部35の内側面(図6では下面)から内側(図6では下方)に突出する部分であり、前後方向に延びる部分である。この係合突起部38は、前後方向の各部で突出量が異なり、比較的大きく突出する大突出部38aと、比較的小さく突出する小突出部38bとが一体となって形成されている。
【0063】
部材取付部39は、スライダー本体部35の前端部分に形成された部分であり、後尾側の基端突起部45と、先端側の先端突起部46とが一体となって形成される部分である。
【0064】
基端突起部45は、径の異なる2つの円柱状部分が一体に形成され、段階状に延びる突起部分となっている。すなわち、後尾側の大突起部45aと、先端側の小突起部45bとが一体となって形成されている。
大突起部45aは、径の長さが比較的長い(太さが比較的太い)部分であり、スライダー本体部35の前端から前方(先端からペン先側)へ突出している。詳細には、断面形状が略円形で前後方向に延びる大径円柱状の部分である。
小突起部45bは、径の長さが比較的短い(太さが比較的細い)部分であり、大突起部45aの前端面からさらに前方に突出している。この小突起部45bは、断面形状が大突起部45aと略同形(略円形)で前後方向に延びる小径円柱状の部分である。
【0065】
ここで、大突起部45a、小突起部45bの中心軸は同一の中心軸となるように形成されている。つまり、大突起部45aの側面(外周面)全体と、小突起部45bの側面(外周面)全体とは、段差を介して連続している。
大突起部45aは、コイルバネ6を取り付けるとき、コイルバネ6の内側に挿通する部分(コイルバネ6を外嵌する)部分である(図4図5参照)。すなわち、コイルバネ6を取り付ける付勢部材取付部として機能する。
小突起部45bは、挿入補助部材7を取り付けるとき、挿入補助部材7の内側に挿通する(挿入補助部材7を外嵌する)部分である(図4図5参照)。すなわち、挿入補助部材7を取り付ける補助部材取付部として機能する。
【0066】
先端突起部46は、基端突起部45(小突起部45b)の前端面から前方へ突出する平板状の突起部分である。詳細には、後尾側で前後方向に延びる略長方形平板状の部分と、その先端側に位置する略三角形板状の部分とが一体に形成されている。
つまり、先端突起部46における先端側の部分は、後尾側から先端側に向かうにつれて幅方向の長さが短くなるっている。また、この略三角形板状の部分では、後尾側の角部分が丸みを帯びた形状となっている。
【0067】
コイルバネ6は、図5で示されるように、長手方向の両端部分にそれぞれ座巻部6aが形成されている。なお、一方の座巻部6aは、組み立て時にスライダー部材4の小突起部45bに外嵌する部分であり、他方の座巻部6aは、多芯ガイド部材25の後端側部分に当接する部分となる(図3等参照、詳しくは後述する)。
【0068】
挿入補助部材7は、概形が略円筒状となる樹脂製の筒状部材(パイプ状部材)である。すなわち、幅を持って所定方向に延びる形状であって、軸筒2の横断面の広がり方向を幅方向とし、軸筒2の軸線方向(前後方向)を延び方向とする。この挿入補助部材7は、可撓性を有し、長手方向の前端及び後端部分に開口を有する中空の部材であり、内部に長手方向(前後方向)に延びる空間が形成される。
【0069】
続いて、多芯型筆記具1の組み立て構造及び芯部材3の出退動作について説明する。
【0070】
まず、上記したように、連結構造体8が組み立てられ、軸筒2の内部に配されている。
連結構造体8は、図4図5で示されるように、スライダー部材4の大突起部45a(図5参照)に対してコイルバネ6の座巻部6aを外嵌し、小突起部45b(図5参照)に対して挿入補助部材7の長手方向端部を外嵌している。さらに、芯部材3をスライダー部材4の先端突起部46に外嵌した状態、言い換えると、先端突起部46(図5参照)が芯部材3の後端側部分に挿入された状態としている。
つまり、連結構造体8は、スライダー部材4に対してコイルバネ6、挿入補助部材7、芯部材3を取り付け、これらを一体化している。
【0071】
なお、挿入補助部材7がスライダー部材4に取り付けられた状態では、挿入補助部材7は、後端側の開口部分が基端突起部45によって閉塞された状態となる。また、芯部材3の後端側の開口部分が小突起部45bの前端面によって閉塞された状態となる。
【0072】
したがって、連結構造体8では、図4で示されるように、コイルバネ6の内側に挿入補助部材7の大部分が挿通され、挿入補助部材7の内部空間に芯部材3の後端側部分が挿通される。つまり、連結構造体8のうち、芯部材3の後端側が位置する部分では、芯部材3の外側を取り巻くように挿入補助部材7が配されている。
このように、芯部材3とコイルバネ6の間に挿入補助部材7が介在する構造とすることで、芯部材3とコイルバネ6の接触を防止している。
【0073】
ここで、コイルバネ6の内径(コイル内径)は、挿入補助部材7の外径と同一の長さ、又は、挿入補助部材7の外径よりも微細に大きい長さとなるように形成している。なお、ここでいう「微細に大きい」とは、径(直径)の差が1.0mm以下となる大きさであり、より好ましくは0.5mm以下となる大きさであり、さらに好ましくは、0.2mm以下となる大きさである。このことは、以下の記載においても同様とする。
このことから、挿入補助部材7の外周面は、コイルバネ6の内側部分と接触した状態、又は、コイルバネ6の内側部分との間に微細な隙間が形成された状態となる。
【0074】
本実施形態のコイルバネ6の内径(コイル内径)は、挿入補助部材7の外径よりも微細に大きい長さとしており、これらの径の差を0.2mm以下としている(詳細な図示を省略する)。したがって、スライダー部材4が最も後尾側に位置し、且つ、コイルバネ6が蛇行せずに軸筒2の軸線方向に延びた状態であるとき、コイルバネ6内側部分と挿入補助部材7の外周面との間に0.1mm以下の隙間が形成される。
このように、これらの間に隙間を設けて遊嵌させる構造によると、密嵌させる構造に比べて、スライダー部材4の移動に伴うコイルバネ6の伸縮動作(詳しくは後述する)を円滑化できる。
【0075】
また、挿入補助部材7の内径は、芯部材3の外径(インキ収容筒3bの最大径)と同一の長さ、又は、芯部材3の外径よりも微細に大きい長さとなるように形成している。
このことから、挿入補助部材7の内部では、芯部材3の大部分(テーパ部30を除いた部分)の外周面と挿入補助部材7の内周面とが接触した状態、又は、これらの間に微細な隙間が形成された状態となる。
【0076】
なお、本実施形態では、挿入補助部材7の内径を芯部材3の外径よりも微細に大きい長さとしており、これらの径の差を0.2mm以下としている(詳細な図示を省略する)。したがって、芯部材3のうち、挿入補助部材7に挿入された部分の大部分(テーパ部30を除いた部分)と、挿入補助部材7の内周面との間に0.1mm以下の隙間が形成される。
このように、これらの間に隙間を設けて遊嵌させる構造によると、密嵌させる構造に比べて、芯部材3の挿入補助部材7への抜き差し(芯部材3の交換時の抜き差しであり、詳しくは後述する)を円滑に行うことができる。
【0077】
さらに、連結構造体8を軸筒2の内部に配した状態では、図3で示されるように、スライダー部材4の先端側拡幅部35aと、多芯ガイド部材25の後端部分の間にコイルバネ6が配された状態となる。言い換えると、コイルバネ6の先端側部分は、多芯ガイド部材25の後端部分に当接している。なお、多芯ガイド部材25のコイルバネ6が当接する部分は、ガイド貫通孔25aの後尾側の開口と隣接する部分である(詳細な図示を省略する)。
【0078】
また、コイルバネ6は、同じ連結構造体8に属するスライダー部材4が最も後尾側に位置する状態、すなわち、後端側部分と隣接する先端側拡幅部35aが最も後方側に位置する状態においても圧縮された状態となるように配置されている。
つまり、コイルバネ6は、後側筒部11(軸筒2)の内部に常時圧縮された状態で配される圧縮バネである。言い換えると、コイルバネ6は、スライダー部材4を後尾側に付勢する付勢力を常時発生させている。
【0079】
ここで、上記したように、スライダー部材4には、芯部材3、挿入補助部材7が一体に取り付けられている。すなわち、コイルバネ6は、スライダー部材4を介して芯部材3と挿入補助部材7とを後尾側に付勢している。言い換えると、コイルバネ6は、他部材を介して間接的に芯部材3を付勢している。
【0080】
また、連結構造体8を軸筒2の内部に配した状態では、スライダー部材4の操作突起部36がスライダー溝20に挿入されている。そして、移動規制部37が、軸筒2内部に形成された前後方向に延びる溝部分(図示しない)に嵌め込まれている。このことから、スライダー部材4は、軸筒2の径方向(軸線方向と交わる方向)にずれることなく、軸筒2の軸線方向(前後方向)に沿ってスライド移動可能な構造となっている。
【0081】
そして、スライダー部材4が移動可能範囲において最も後尾側に位置する状態(図3等で示される状態)から、スライダー部材4をコイルバネ6の付勢力に抗してペン先側へ移動させると、コイルバネ6が大きく縮んだ状態となる(図7の拡大部分等を参照)。同時に、スライダー部材4と共に芯部材3と挿入補助部材7とがペン先側へ移動する(図7等参照)。このことにより、芯部材3の先端側部分(ボールペンチップ3a)が先端開口部2aから外部に突出する。
【0082】
このとき、コイルバネ6の内径と挿入補助部材7の外径とが同一(略同一)であるため、コイルバネ6は、挿入補助部材7と接触しつつ圧縮されていく。また、挿入補助部材7の内径と芯部材3の外径とが同一(略同一)であるため、芯部材3は、後端側の部分が挿入補助部材7の内側面と接触した状態を維持しつつ、挿入補助部材7と共にペン先側(前方)へ移動する。
【0083】
そして、ペン先側に移動したスライダー部材4は、詳細な図示を省略するが、軸筒2内の一部分(図示しない)と係合し、後尾側への移動が阻止される。すなわち、スライダー部材4は、コイルバネ6によって常時後尾側へ付勢されているが、この付勢力による後尾側への移動が阻止される。
【0084】
そして、いずれか一つのスライダー部材4がペン先側に移動した状態で、他のスライダー部材4をペン先側へ移動させると、ペン先側のスライダー部材4と軸筒2内の一部分(図示しない)との係合が解除される。詳細には、他のスライダー部材4の係合突起部38が、ペン先側のスライダー部材4の係合突起部38を後尾側から押圧することで、ペン先側のスライダー部材4の姿勢が変更され、係合が解除される。
【0085】
つまり、本実施形態の多芯型筆記具1は、いずれか一つのスライダー部材4をペン先側に移動させる操作を行うことで、芯部材3の先端側部分(ボールペンチップ3a)が先端開口部2aから外部に突出する。
また、その状態で、他のスライダー部材4をペン先側に移動させる操作を行うことにより、外部に突出していた芯部材3の先端側部分が軸筒2の内部に退入する。
以上のように、本実施形態の多芯型筆記具1は、複数の芯部材3からいずれか一つを選択し、選択した芯部材3の先端側部分を軸筒2の内外に出没させる出退操作が可能となっている。
【0086】
次に、多芯型筆記具1において、芯部材3を交換する際の手順について説明する。
【0087】
芯部材3を交換する際には、図2で示されるように、前側筒部10と後側筒部11を分離した状態とする。そして、外部に露出した複数の芯部材3のうち、交換対象となる一つの芯部材3を前側へ引っ張っていく。
【0088】
このことにより、図8で示されるように、芯部材3の前方への移動に伴って、コイルバネ6が大きく縮んだ状態となり、挿入補助部材7、スライダー部材4が前方へ移動する。つまり、芯部材3を軸筒2の外部に突出させた際と同様に、コイルバネ6がより圧縮され、挿入補助部材7及びスライダー部材4が移動可能範囲の最も先端側に位置した状態となる。
そして、この状態で芯部材3をさらに前方へ引っ張ることで、スライダー部材4から芯部材3が取り外される。なお、芯部材3を取り外すとき、芯部材3は、後端側部分の外周面が挿入補助部材7の内周面と接触した状態を維持しつつ摺動し、挿入補助部材7に対して相対的に前方(ペン先側)へ移動する。そして、芯部材3の後端部分が挿入補助部材7の内部空間よりも前方へ移動し、芯部材3が取り外される。
【0089】
その後、芯部材3が取り付けられていたスライダー部材4を後尾側へ移動させ、芯部材3の取り外しが完了する。
【0090】
ここで、本実施形態では、上記したように、コイルバネ6の内側に挿入補助部材7が位置している。具体的には、スライダー部材4が移動可能範囲の最も先端側に位置した状態と、最も後尾側に位置した状態のそれぞれで、コイルバネ6の前側(図8では左側)の座巻部6aの内側、及び、2つの座巻部6aの間となる部分の内側に挿入補助部材7が位置する。
このことから、芯部材3の取り外し後、スライダー部材4を後尾側へ移動させるとき、コイルバネ6の蛇行しつつ延びた状態となるような変形を阻止できる。すなわち、仮にコイルバネ6が変形しようとしても、内側の挿入補助部材7と接触することで変形が阻止される。言い換えると、挿入補助部材7がコイルバネ6の姿勢変更を規制する規制部材として機能する。
【0091】
また、連結するスライダー部材4が移動可能範囲の最も後尾側に位置した状態であるとき、挿入補助部材7の前端部分は、ガイド貫通孔25aの内部(内部空間において前端開口から後端開口に至るまでの部分)に位置している。詳細には、挿入補助部材7の前端部分は、ガイド貫通孔25aの前端部分(前端開口)と、前後方向の位置が同一となる位置に配されている(図8図9(a)参照)。すなわち、挿入補助部材7の前端面は、ガイド貫通孔25aの前側開口と同一平面上(略同一平面上)に位置し、この前側開口の周辺部分である多芯ガイド部材25の前側部分と面一(略面一)となる。
【0092】
対して、連結するスライダー部材4が移動可能範囲の最もペン先側に位置した状態であるとき、挿入補助部材7の前端部分は、ガイド貫通孔25aの前端部分よりもペン先側に位置する(図8図9(b)参照)。すなわち、挿入補助部材7の前端側部分(ペン先側部分)は、ガイド貫通孔25aから前方へ突出した状態となる。
【0093】
芯部材3の交換作業の説明に戻って、芯部材3を取り外した後、図10で示されるように、新たな芯部材3を後尾側部分からガイド貫通孔25a及び挿入補助部材7の内側へ挿入する。
ここで、芯部材3には、上記したように、後尾側部分にテーパ部30が形成されている。加えて、上記したように、芯部材3の挿入時には、挿入補助部材7の前端面と、ガイド貫通孔25aの前端開口とが同一平面上(略同一平面上)に位置する。これらのことから、芯部材3の挿入作業が容易となる。
【0094】
すなわち、芯部材3の挿入時には、芯部材3の後尾側部分と挿入補助部材7の内孔を位置合わせする必要がある。このとき、芯部材3が挿入補助部材7の内孔からやや軸筒2の径方向(例えば、図10の上下方向)にずれていても、テーパ部30が形成されていることから、そのまま押し込むだけで芯部材3の後端側部分が挿入補助部材7の内孔に挿入される。
また、挿入補助部材7の前端部分がガイド貫通孔25aから前方に飛び出ている状態では、芯部材3が軸筒2の径方向にずれた状態で挿入補助部材7に当接してしまった場合、挿入補助部材7が曲がったりする可能性がある。しかしながら、本実施形態では、上記したように、芯部材3の挿入時に挿入補助部材7がガイド貫通孔25aから突出していないので、このような挿入補助部材7の曲がりの発生を防止できる。さらに、芯部材3の後尾側部分が軸筒2の径方向にずれた状態で多芯ガイド部材25の前側部分に当接しても、そのまま微細に位置調整して位置合わせできるので、位置合わせ作業が容易である。
【0095】
そして、図10(a)乃至図10(c)で示されるように、芯部材3の後尾側部分を挿入補助部材7の内側(内孔)に挿入しつつ、さらに後尾側に押し込んでいく。
このとき、挿入補助部材7が芯部材3のガイドとして機能するので、芯部材3を真っすぐに挿入できる。また、芯部材3とコイルバネ6の間に挿入補助部材7が位置するため、芯部材3とコイルバネ6の接触を防止できる。
そして、芯部材3(インキ収容筒3b)の後端側部分をスライダー部材4の前端側部分に押し当て、芯部材3(インキ収容筒3b)の後側開口(図示しない)から内部に先端突起部46が挿入された状態とする。このことにより、芯部材3の交換が完了する。
【0096】
上記した実施形態では、図7で示されるように、挿入補助部材7が最も後方に位置するとき、挿入補助部材7の前端側部分がガイド貫通孔25aの前側開口と同一平面上(略同一平面上)に位置する例を示した(図9(a)参照)。つまり、挿入補助部材7の前端部分が、ガイド貫通孔25aの前側開口が形成される位置と、ガイド貫通孔25aよりも前方となる位置との間で移動する例を示した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
【0097】
例えば、図11(a)で示されるように、挿入補助部材107(補助部材)の前端部分(符号Pで示す部分)が、ガイド貫通孔25aの前側開口と後側開口の間となる位置と、ガイド貫通孔25aよりも前方となる位置との間で移動する構造としてもよい。
すなわち、ガイド貫通孔25aの内部の奥まった位置から、ガイド貫通孔25aよりも前方となる位置の間で移動する構造としてもよい。
【0098】
また、図11(b)で示されるように、挿入補助部材108(補助部材)の前端部分(符号Pで示す部分)が、ガイド貫通孔25aの前側開口と後側開口の間となる位置と、ガイド貫通孔25aの前側開口が形成される位置との間で移動する構造としてもよい。
すなわち、ガイド貫通孔25aの内部の奥まった位置から、ガイド貫通孔25aの前側開口と前後方向が同一となる位置まで移動する構造としてもよい。言い換えると、挿入補助部材108の前端部分がガイド貫通孔25aの内部に常時位置する構造としてもよい。
【0099】
なお、挿入補助部材7,107,108は、最も後尾側に位置するとき、ガイド貫通孔25aの後側開口よりも前側に前端部分が位置することが、挿入補助部材7,107,108を円滑に移動させる上で好ましい。すなわち、挿入補助部材7,107,108がガイド貫通孔25aから不意に外れてしまうことを防止可能であり、好ましい。
【0100】
この他、図12で示されるように、挿入補助部材109(補助部材)の前端部分(符号Pで示す部分)が、ガイド貫通孔25aよりも前方となる位置と、さらに前方となる位置との間で移動する構造としてもよい。言い換えると、挿入補助部材108の前端部分がガイド貫通孔25aよりも前方に常時位置する構造としてもよい。
しかしながら、上記した芯部材3の挿入をより容易とし、補助部材の破損を防止するという観点から、補助部材は、最も後尾側に位置するときの前端部分が、ガイド貫通孔25aの前側開口が形成される位置、又はその後方に位置することが好ましい。
【0101】
ここで、本実施形態では、図7で示されるように、芯部材3の先端側部分を先端開口部2aから外部に突出させる際、芯部材3が曲がって延びる姿勢となる。
すなわち、芯部材3の先端側部分は、軸筒2の軸線方向に沿って後尾側から前方側へ移動し、筒先端部13の内周面と接触すると、その後に筒先端部13の内周面に沿って先端開口部2aへ向かって移動する。この過程を経ることで、芯部材3は、一部が緩やかに曲がりつつ延びる姿勢となる。
【0102】
したがって、図12のような構造とする場合、挿入補助部材109のガイド貫通孔25aからの最大突出長さは、先端部分を軸筒2の外に位置させる場合の芯部材3の曲がりを阻害しない長さとする必要がある。つまり、挿入補助部材109が最も前方に位置する場合、ガイド貫通孔25aからの突出長さは、芯部材3の曲がりを阻害しない長さとする必要がある。
【0103】
上記した実施形態では、挿入補助部材7の内径が前端から後端までの間で一定である例を示した、しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
例えば、図13で示されるように、前側部分に拡径テーパ部130を設けた挿入補助部材110(補助部材)を採用してもよい。
【0104】
挿入補助部材110は、前端部分から前端よりもやや後方に離れた部分までの間に、拡径テーパ部130が形成されている。この拡径テーパ部130は、前端側に向かうにつれて径方向長さが長くなる部分であり、内周面及び外周面のそれぞれが、前端側に向かうにつれて拡径する部分となっている。すなわち、概形が略円錐状となる部分となっている。
【0105】
この挿入補助部材110を採用する場合、図14で示されるように、多芯ガイド部材125(ガイド部材)のガイド貫通孔125a(連通部)にもまた、前端側の部分にガイド側テーパ部131を形成してもよい。このガイド側テーパ部131は、前端側に向かうにつれて内周面が拡径する部分であり、挿入補助部材110の拡径テーパ部130が略丁度嵌まり込む部分である。
そして、スライダー部材4が最も後尾側に位置するとき、ガイド側テーパ部131の内側に拡径テーパ部130が位置して嵌まり込み、且つ、挿入補助部材110の前端側部分がガイド貫通孔125aの前側開口と同一平面上に位置するように形成してもよい。
このような構成によると、芯部材3の挿入作業がさらに容易となる。
【0106】
上記した実施形態では、長手方向の前端及び後端部分で外部と連通する筒状の挿入補助部材7の例を示した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
例えば、補助部材は、筒の側壁部分に内部空間と外部とを連通する孔や溝部分が形成されてもよい。コイルバネ6の変形を規制し、芯部材3とコイルバネ6の接触を防止できればよい。
つまり、上記した実施形態では、コイルバネ6の内側に位置する芯部材3の一部が、その前端から後端に至るまでの部分で周方向全域に亘って挿入補助部材7に囲まれる構造としたが、必ずしもこのような構造としなくてもよい。しかしながら、芯部材3とコイルバネ6の接触をより確実に防止し、コイルバネ6の意図しない変形をより確実に防止するという観点から、上記のような構造が好ましい。
【0107】
上記した実施形態では、スライダー部材4の一部にコイルバネ6を外嵌し、一体に取り付けた例を示した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
本発明の付勢部材は、必ずしもスライダー部材4に一体に取り付けなくてもよく、多芯ガイド部材25と、押圧対象となるスライダー部材4の一部分(例えば、先端側拡幅部35a)の間に位置し、スライダー部材4を付勢する構造であればよい。
【0108】
上記した実施形態では、芯部材3としてボールペンレフィルを採用した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。
芯部材は、シャープペンシルユニットであってもよい。すなわち、先端側でペン先部分(筆記部)を形成するペン先ユニットと、後尾側でシャープペンシルの芯を収容する芯収納筒が一体に形成されたものでもよい。なお、ペン先ユニットは、シャープペンシルの芯を送り出す芯送り機構を備えたものであり、所定の操作用部材と連動する構造とする。例えば、スライダーを前方側へ複数回ノックする(軽くペン先側へ押す)ことでシャープペンシルの芯が送り出される構造としてもよい。
【0109】
上記した多芯ガイド部材25は、後側筒部11(軸筒2)と一体に形成してもよく、別途形成して後側筒部11(軸筒2)の内部に取り付けてもよい。別途形成する場合は、例えば、多芯ガイド部材の外周面に溝を設けると共に、後側筒部11の内周面に突起を設けてこれらを係合させてもよい。なお、溝と突起は対となる係合部であればよく、多芯ガイド部材、後側筒部11のそれぞれに対となる係合部の一方と他方が形成されていればよい。
また、上記した実施形態では、円柱状の多芯ガイド部材25にガイド貫通孔25aを形成する例を示したが、ガイド部材及び連通部はこれに限るものではない。例えば、ガイド部材の概形は板状のものでもよく、板状のものや円柱状のものを含んで形成されたものでもよい。また、連通部は貫通孔の他、切り欠き状の溝であってもよい。すなわち、連通部は前後端の他、側面部分でも外部と連続するものであってもよい。
【0110】
上記した実施形態では、細軸の多芯型筆記具1の例を示したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、本発明の筆記具は、細軸タイプに限らず、軸筒の軸径が13.7mmより大きい筆記具であってもよい。なお、このような多芯型筆記具においても、軸筒の内径は、軸径よりも2mm程度小さく形成することが好ましい。
また、本発明の筆記具は、複数の芯部材3を備えた多芯型筆記具1に限らず、1つの芯部材を備えた単芯型筆記具でもよい。なお、単芯型筆記具は、軸筒の軸径が10.9mm以下(好ましくは10mm以下)となる細軸の単芯型筆記具(所謂細軸タイプの筆記具)であってもよく、軸筒の軸径が10.9mmより大きい単芯型筆記具であってもよい。また、単芯型筆記具においても、軸筒の内径は、軸径よりも2mm程度小さく形成することが好ましい。
【0111】
上記した実施形態では、前後方向に摺動可能なスライダー部材4を設け、使用者がスライダー部材4をスライド操作することで、スライダー部材4と共にレフィル(芯部材)が摺動するスライド式(サイドスライド式)の筆記具(多色ボールペン)の例を示した。しかしながら、本発明の筆記具は、これに限るものではない。例えば、サイドノック式や後端側ノック式等のノック式の筆記具であってもよい。
【0112】
ここで、ノック式の筆記具とは、軸筒から外部に突出する操作部材(ノック棒等)をノック(押圧)することで、芯部材の出退動作を行う筆記具である。すなわち、サイドノック式では、操作部材が軸筒の側壁部分から突出しており、後端側ノック式では、操作部材が軸筒の後尾側端部から外部に突出する。そして、この種の筆記具では、押圧対象となる操作部材と、内部で前後方向に移動するスライダーとが連動し、芯部材をペン先側へ押圧する構造となっている。
すなわち、このような構造において、芯部材の外側に補助部材を配し、さらにその外側に付勢部材を配置して、スライダー又はそれに連なるカム等を付勢部材で付勢する構造としてもよい。
【0113】
また、本発明は、回転式の筆記具であってもよい。
ここで、回転式の筆記具とは、筆記具の一部を他部に対して相対的に回転させる(例えば、軸筒の一部を軸筒の他部に対して相対的に回転させる)ことで、芯部材の出退動作を行う筆記具である。そして、この種の筆記具では、内部で前後方向に移動するスライダーが回転操作に応じて前後に移動する構造となっている。すなわち、このような構造において、芯部材の外側に補助部材を配し、さらにその外側に付勢部材を配置して、スライダー、又はそれに連なるカム等を付勢部材で付勢する構造としてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 多芯型筆記具(筆記具)
2 軸筒
3 芯部材(筆記体)
4 スライダー部材
6 コイルバネ(付勢部材)
7,107,108,109,110 挿入補助部材(補助部材)
25,125 多芯ガイド部材(ガイド部材)
25,125a ガイド貫通孔(連通部)
30 テーパ部(先細り部)
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