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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/25 20060101AFI20230315BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20230315BHJP
   B26D 1/06 20060101ALI20230315BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20230315BHJP
   B26D 7/04 20060101ALI20230315BHJP
   B26D 7/08 20060101ALI20230315BHJP
   B26D 7/20 20060101ALI20230315BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G02B6/25
B26D3/00 601A
B26D1/06 Z
B26D7/02 E
B26D7/04
B26D7/08 E
B26D7/20
B26D7/26
B26D7/08 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019063006
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020160409
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000243342
【氏名又は名称】本多通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 茂弘
(72)【発明者】
【氏名】吉村 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】大久保 靖明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直英
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176371(JP,A)
【文献】特開2014-089223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0008032(US,A1)
【文献】中国実用新案第207327113(CN,U)
【文献】特開2014-139649(JP,A)
【文献】特開昭58-111903(JP,A)
【文献】特開2010-160207(JP,A)
【文献】特開2003-039379(JP,A)
【文献】特開2000-056140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/02
G02B 6/245-6/25
G02B 6/43-6/46
B26D 1/00-1/24
B26D 7/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック光ファイバを所定の荷重で把持する把持部と、
前記把持部に把持された前記プラスチック光ファイバを切断する刃を有する切断部と、
前記プラスチック光ファイバが前記切断部によって切断される位置に対して前記把持部とは反対側で前記プラスチック光ファイバを所定の荷重で把持する第二の把持部と
を備え、
前記把持部及び前記第二の把持部は、前記プラスチック光ファイバが軸方向に移動可能な荷重で前記プラスチック光ファイバを把持し、これにより、前記プラスチック光ファイバが前記刃によって切断されるとき、前記プラスチック光ファイバが前記刃の刃先の側面に押されて軸方向に移動する、
切断装置。
【請求項2】
請求項1の切断装置において、前記把持部は、
前記プラスチック光ファイバに対して前記刃が進入する側とは反対側から前記プラスチック光ファイバを支持する受け部を有し、
前記受け部は、前記刃の刃先が前記受け部に当らないように逃げる溝を有し、
前記溝の幅は、前記プラスチック光ファイバの径以下である、
切断装置。
【請求項3】
請求項2の切断装置において、前記把持部は、更に、
前記プラスチック光ファイバに対して前記刃が進入する側に位置し、前記受け部へ向けて付勢され、これにより、前記受け部との間に前記プラスチック光ファイバを把持する押さえ部を有し、
前記押さえ部と前記刃との間の隙間は、前記刃の厚さ以下である、
切断装置。
【請求項4】
請求項1乃至いずれかの切断装置において、前記切断部は、更に、
前記刃を挟持して前記刃の撓みを防ぐ挟持部を有し、
前記挟持部は、前記刃前記プラスチック光ファイバを切断する位置で前記刃の刃先露出させる窓を有し、
前記刃先が延びる方向における前記窓の幅は、前記プラスチック光ファイバの径の5倍以上10倍以下である、
切断装置。
【請求項5】
請求項1乃至いずれかの切断装置において、前記刃は、
厚さが、前記プラスチック光ファイバの径の0.1倍以上5倍以下であり、
表面に、フッ素コーティング及び酸化防止油のうち少なくともいずれかを有する、
切断装置。
【請求項6】
請求項1乃至いずれかの切断装置において、
前記切断部は、使用者による操作によって、前記プラスチック光ファイバを切断する切断方向へ向けて移動し、
前記切断装置は、更に、
前記使用者による操作により前記切断部が前記切断方向へ向けて移動するとき、前記切断部の移動速度を所定の速度以下に抑える速度制限部を備える、
切断装置。
【請求項7】
請求項1乃至いずれかの切断装置において、更に、
前記切断部が所定の荷重で前記プラスチック光ファイバを切断するよう、前記プラスチック光ファイバを切断する切断方向へ向けて前記切断部を付勢する切断付勢部を備え、
前記切断部は、使用者による操作によって、前記切断方向とは反対の方向へ向けて移動する、
切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光ファイバ(以下「POF」という。)を切断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
POFを施工する際、POFを現場で切断する必要がある。POFを切断した切断面が粗いと、POFを接続した際の挿入損失が大きくなる。切断面を平滑化するために切断面を研磨するには、手間がかかる。このため、研磨を容易にし、又は、研磨の必要をなくす切断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-071967号公報
【文献】特開2004-117794号公報
【文献】特開2014-089223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、グレーデッドインデックス・プラスチック光ファイバ(以下「GI-POF」という。)など、高速かつ大容量の伝送が可能なプラスチック光ファイバが実用化されてきている。しかし、GI-POFは、コア径が小さく、挿入損失を抑えるには、切断面に従来よりも高い平滑性が必要となる。
本発明は、切断面の平滑性を高め、研磨せずとも挿入損失を抑えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
切断装置は、POFを所定の荷重で把持する把持部と、前記把持部に把持された前記POFを切断する刃を有する切断部とを備える。前記把持部は、前記POFが軸方向に移動可能な荷重で前記POFを把持し、これにより、前記POFが前記刃によって切断されるとき、前記POFが前記刃の刃先の側面に押されて軸方向に移動する。
前記把持部は、前記POFに対して前記刃が進入する側とは反対側から前記光ファイバを支持する受け部を有してもよい。前記受け部は、前記刃の刃先が前記受け部に当らないように逃げる溝を有してもよい。前記溝の幅は、前記POFの径以下であってもよい。
前記把持部は、更に、前記POFに対して前記刃が進入する側に位置し、前記受け部へ向けて付勢され、これにより、前記受け部との間に前記POFを把持する押さえ部を有してもよい。前記押さえ部と前記刃との間の隙間は、前記刃の厚さ以下であってもよい。
前記切断装置は、更に、前記POFが前記切断部によって切断される位置に対して前記把持部とは反対側で前記POFを把持する第二の把持部を備えてもよい。
前記切断部は、更に、前記刃が前記POFを切断する位置の両側で前記刃を挟持して前記刃の撓みを防ぐ挟持部を有してもよい。前記挟持部が前記刃を挟持する位置の間の間隔は、前記POFの径の5倍以上10倍以下であってもよい。
前記刃は、厚さが、前記POFの径の0.1倍以上5倍以下であってもよく、表面に、フッ素コーティング及び酸化防止油のうち少なくともいずれかを有してもよい。
前記切断部は、使用者による操作によって、前記POFを切断する切断方向へ向けて移動してもよい。前記切断装置は、更に、前記使用者による操作により前記切断部が前記切断方向へ向けて移動するとき、前記切断部の移動速度を所定の速度以下に抑える速度制限部を備えてもよい。
前記切断装置は、更に、前記切断部が所定の荷重で前記POFを切断するよう、前記POFを切断する切断方向へ向けて前記切断部を付勢する切断付勢部を備えてもよい。前記切断部は、使用者による操作によって、前記切断方向とは反対の方向へ向けて移動してもよい。
前記把持部が前記POFを把持する荷重は、5N以上60N以下であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
前記POFが前記刃によって切断されるとき、前記POFが前記刃の刃先の側面に押されて軸方向に移動するので、前記刃の表面の傷や凹凸が前記POFの切断面に転写されるのを防ぐことができ、前記切断面の平滑性が向上する。
前記刃の刃先が前記受け部に当らないように逃げる溝の幅が、前記POFの径以下であれば、前記刃が前記POFに当接したとき、前記POFが撓むのを防ぐことができ、前記切断面の平滑性が向上する。
前記押さえ部と前記刃との間の隙間が前記刃の厚さ以下であれば、前記POFが前記刃によって切断される位置のすぐ近くで前記POFを把持できるので、前記切断面の平滑性が向上する。
前記POFが前記切断部によって切断される位置の両側で前記POFを把持すれば、前記POFを安定して把持することができ、前記切断面の平滑性が向上する。
前記挟持部が前記刃を挟持する位置の間の間隔が前記POFの径の5倍以上10倍以下であれば、前記刃の撓みを防ぐことができるので、前記切断面の平滑性が向上する。
前記刃の表面に、フッ素コーティング及び酸化防止油のうち少なくともいずれかを有していれば、前記刃の表面の凹凸が減るので、前記切断面の平滑性が向上する。
前記速度制限部が前記切断部の移動速度を所定の速度以下に抑えれば、前記刃が前記POFに当接したとき、前記POFが潰れたり撓んだりするのを防ぐことができ、前記切断面の平滑性が向上する。
前記切断付勢部が前記POFを切断する切断方向へ向けて前記切断部を付勢すれば、切断速度や切断荷重を一定にすることができ、前記切断面の平滑性が向上する。
前記把持部が前記POFを把持する荷重が5N以上60N以下であれば、上述した条件を満足することができるので、前記切断面の平滑性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】切断装置の一例を示す平面図、正面図、側面図、A-A断面図及びB-B断面図。
図2】刃及び挟持部の一例を示す平面図、正面図及び底面図。
図3】押さえ部の一例を示す平面図、正面図、側面図、背面図、底面図及びC-C断面図。
図4】受け部の一例を示す平面図、正面図、側面図、D-D断面図及びE-E断面図。
図5】前記切断装置を示す正面図、側面図、F-F断面図及びG-G断面図。
図6】前記切断装置が光ファイバを切断する様子を示す拡大断面図。
図7】把持力と挿入損失との関係を示すグラフ。
図8】切断面の顕微鏡写真。
図9】把持力と挿入損失との関係を示すグラフ。
図10】切断面の顕微鏡写真。
図11】切断面の顕微鏡写真。
図12】切断面の顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示す切断装置10は、GI-POFなどのPOFを切断するために使用される。前記切断装置10は、例えば、把持部11と、切断部15と、ダンパ19a~19dとを備える。
【0009】
前記把持部11は、前記POFを所定の荷重で把持する。前記把持部11は、例えば、受け部12と、二つの押さえ部13a,13bと、四つの付勢部14a~14dとを有する。前記受け部12は、前記POFがその上に載置され、前記POFを下から支持する。前記押さえ部13a,13bは、前記受け部12の上に載置された前記POFを上から押さえる。前記付勢部14a~14dは、例えば圧縮コイルばねであり、前記押さえ部13a,13bを下へ向けて付勢する。これにより、前記POFは、前記受け部12と、前記押さえ部13a,13bとの間に、所定の荷重で把持される。
【0010】
前記切断部15は、前記把持部11に把持された前記POFを切断する。前記切断部15は、例えば、刃16と、二つの挟持部17,18とを有する。前記刃16は、例えばステンレス製であり、前記POFを切断する。前記挟持部17,18は、前記刃16を挟持する。
前記切断部15は、前記把持部11に対して上下方向へ向けて移動可能である。使用者が前記切断部15を下へ向けて押すことにより、前記切断部15が下へ向けて移動し、前記刃16が前記POFを切断する。
【0011】
前記ダンパ19a~19dは、例えば液体式の減衰器である。前記切断装置10を人力で操作する場合、前記切断部15に印加される力は所定の値以下であるとみなすことができるので、前記ダンパ19a~19dは、前記切断部15の移動速度を所定の速度以下に制限する速度制限部として機能する。
前記切断部15の移動速度が速すぎると、前記刃16が前記POFに当ったとき、前記POFが押し潰されたり撓んだりして、切断面の平滑性が低くなる。
前記速度制限部が前記切断部15の移動速度を制限することにより、切断面の平滑性を高めることができる。
【0012】
前記切断装置10は、前記切断部15を上へ向けて付勢する復帰付勢部を更に備えてもよい。これにより、使用者が前記切断部15を押すのを止めたとき前記切断部15が自動的に復帰する。前記復帰付勢部は、例えば圧縮コイルばねであり、前記ダンパ19a~19dとともに、前記速度制限部として機能し得る。あるいは、前記ダンパ19a~19dを設けず、その代わりとして、前記復帰付勢部だけを設け、前記速度制限部として機能させてもよい。
【0013】
また、前記切断装置10は、使用者が操作することにより前記切断部15を下へ向けて移動させる操作部を更に備えてもよい。これにより、使用者が前記切断部15を直接押すのではなく、使用者が前記操作部を操作することにより、前記操作部を介して前記切断部15を移動させることができるので、操作性が向上する。
その場合、前記速度制限部は、前記切断部15の移動速度を直接制限するのではなく、前記操作部の移動速度を制限することにより、間接的に、前記切断部15の移動速度を制限してもよい。
【0014】
図2に示すとおり、前記刃16は、例えば長方形板状であり、厚さがTであって、下端に刃先61が設けられている。前記刃先61は、例えば、表側と裏側とが対称な両刃であるが、それに限らず、非対称な両刃であってもよいし、片刃であってもよい。
【0015】
前記挟持部17は、例えば、板部72と、上縁部73と、二つの側縁部74a,74bとを有する。
前記板部72は、例えば長方形板状であり、大きさが前記刃16とほぼ等しく、前記刃16の後面に沿って前記刃16を支持する。
前記上縁部73は、例えば左右方向に長い直方体状であり、前記板部72と一体に形成され、下面の後側が前記板部72の上面に連結している。後面は、前記板部72と面一である。
前記側縁部74a,74bは、例えば長方形板状であり、前記板部72及び前記上縁部73と一体に形成され、内側面の中央部分が前記板部72及び前記上縁部73の左右側面に連結している。上面は、前記上縁部73と面一であり、下面は、前記板部72と面一である。前記側縁部74a,4bには、前記ダンパ19a~19dを受けるダンパー受け部79a~79dが下面から上へ向けて凹設されている。
前記板部72は、窓71を有する。前記窓71は、前記板部72の下面に連結している。
【0016】
前記挟持部18は、例えば長方形板状であり、大きさが前記刃16とほぼ等しく、前記刃16の前側に沿って前記刃16を支持する。前記挟持部18は、窓81を有する。前記窓81は、幅Wが前記窓71の幅Wとほぼ等しく、前記板部72の前記窓71に対応する位置に設けられ、前記挟持部18の下面に連結している。
前記挟持部18は、ねじなどの固定部(不図示)により前記挟持部17にしっかりと固定される。これにより、前記刃16が前記挟持部17,18の間に挟まれてしっかりと保持される。
前記刃16のうちの一部は、前記窓71,81を通して露出している。前記POFは、この露出した部分によって切断される。
前記POFを切断するとき、前記POFからの反力を受けて前記刃16が撓むと、前記刃16の撓みに沿って前記POFが切断されるので、切断面の平滑性が低くなる。
前記POFを切断するために使用する部分を除いて、前記刃16を前記挟持部17,18がしっかりと挟持しているので、前記刃16が撓むのを防ぐことができ、切断面の平滑性を高めることができる。
【0017】
図3に示すとおり、前記押さえ部13aは、基部31と、突出部32とを有する。前記押さえ部13bも同様である。
前記基部31は、例えば左右方向に長い直方体状であり、左右両端の近くに貫通穴38a,38bを有する。前記貫通穴38a,38bは、例えば円柱状であり、前記基部31を上下方向に貫通している。
前記突出部32は、例えば前後方向に長い直方体状であり、前記基部31と一体に形成され、上面の前側が前記基部31の下面の中央部分に連結している。前面は、前記基部31と面一であり、後面は、前記基部31よりも後に出ている。前記突出部32は、前後方向に延びる係合溝33を下面に有する。前記係合溝33は、例えば円柱側面状の窪みであり、前記POFの外面に沿って前記POFと係合する。
【0018】
前記切断装置10を組み立てたとき、前記押さえ部13aの前記突出部32と、前記押さえ部13bの前記突出部32との間にできる隙間Gは、前記基部31の間にできる間隔Dよりも小さい。前記基部31の間の間隔Dは、前記刃16を挟持した前記挟持部17の前記板部72及び前記挟持部18全体の厚さT図5参照)よりも大きく、前記刃16を挟持した前記挟持部17の前記板部72及び前記挟持部18が、前記基部31の間を通過できる。前記突出部32の間の隙間Gは、前記刃16の厚さTより大きく、前記窓71,81から露出した前記刃16が前記突出部32の間を通過できる。前記突出部32の幅Wは、前記窓71,81の幅W,Wよりも小さい。これにより、前記板部72や前記挟持部18が前記突出部32に触れることなく、前記窓71,81から露出した前記刃16を前記突出部32の間に挿入することができる。
【0019】
図4に示すとおり、前記受け部12は、基部21と、載置部22と、四つの支持部27a~27dと、四つの柱部28a~28dとを有する。
前記基部21は、例えば上下方向に面した長方形板状である。
前記支持部27a~27dは、例えば直方体状であり、前記基部21と一体に形成され、下面が前記基部21の上面に連結している。
前記支持部27a,27bの間の間隔及び前記支持部27c,27dの間の間隔は、前記突出部32の幅Wよりもわずかに大きい。これにより、前記突出部32を前記支持部27a~27dの間に挿入することができる。
前記支持部27a,27dの間の間隔及び前記支持部27b,27cの間の間隔Dは、前記刃16を挟持した前記挟持部17の前記板部72及び前記挟持部18全体の厚さTよりも大きく、前記刃16を挟持した前記挟持部17の前記板部72及び前記挟持部18を前記支持部27a~27dの間に挿入することができる。
【0020】
前記載置部22は、例えば前後方向に長い直方体状であり、前記基部21及び前記支持部27a~27dと一体に形成され、下面が前記基部21の上面の中央部分に連結し、左右側面が前記支持部27a~27dの内側の側面に連結している。前記載置部22の幅Wは、前記支持部27a,27bの間の間隔及び前記支持部27c,27dの間の間隔と等しい。前記載置部22と前記支持部27a~27dとの間の高さの差は、前記突出部32の高さより小さい。これにより、前記POFを前記載置部22と前記突出部32とで把持することができる。
前記載置部22は、前後方向に延びる係合溝23と、前記係合溝23を横切って左右方向に延びる逃げ溝24とを、上面に有する。前記係合溝23は、例えば円柱側面状の窪みであり、前記POFの外面に沿って前記POFと係合する。
前記逃げ溝24は、前記POFを切断したとき、前記刃16が前記載置部22に当らないようにするためのものである。これにより、前記刃16の前記刃先61が欠けたり鈍ったりするのを防ぐ。前記逃げ溝24の断面形状は、例えば長方形状であるが、それに限らず、先細りの台形形状であってもよいし、三角形状であってもよい。前記逃げ溝24は、前記刃16が前記載置部22に当らなければよく、幅Gが、前記刃16の厚さTより狭くてもよい。また、前記刃先61を損傷しない柔軟な材料で前記逃げ溝24を充填してもよい。
【0021】
前記柱部28a~28dは、例えば円柱状であり、前記支持部27a~27dの上面から上へ向けて延び、外径が前記押さえ部13a,13bの前記貫通穴38a,38bの内径よりもわずかに小さい。前記柱部28a~28dは、上端に鍔部29a~29dを有する。前記鍔部29a~29dは、例えば円板状であり、外径が前記柱部28a~28dの外径よりも大きい。
前記柱部28a~28dは、前記押さえ部13a,13bの前記貫通穴38a,38bに挿通される。また、前記押さえ部13a,13bと前記鍔部29a~29dとの間には、前記付勢部14a~14dが配置される。前記押さえ部13a,13b及び前記付勢部14a~14dを前記支持部27a~27dと前記鍔部29a~29dとの間に配置するため、例えば、前記柱部28a~28dを、前記支持部27a~27dとは別部品で構成し、前記付勢部14a~14d及び前記押さえ部13a,13bに挿通したのち、前記支持部27a~27dに固定する。
【0022】
<切断手順>
まず、前記押さえ部13a,13bを持ち上げて前記受け部12から引き離し、前記受け部12と前記押さえ部13a,13bとの間に前記POFを挿入するための隙間を作る。この操作を容易にするため、前記切断装置10は、前記押さえ部13a,13bを持ち上げる開閉機構を有してもよい。
そして、前記受け部12と前記押さえ部13a,13bとの間にできた前記隙間に前記POFを挿入する。
その後、前記押さえ部13a,13bを解放すると、前記押さえ部13a,13bが前記付勢部14a~14dによって下へ向けて付勢されて移動する。前記POFは、前記受け部12の前記係合溝23と前記係合溝33との間に挟まれて把持される。
【0023】
次に、図5に示すように、前記切断部15を押し下げて、前記把持部11に把持された前記POF80を切断する。
前記切断部15は、前記ダンパ19a~19dによって速度が制限され、所定の速度以下で降下し、前記刃16の前記刃先61が前記POF80に当る。前記刃16が前記POF80から受ける反力により、前記切断部15の降下速度が更に小さくなり、それにしたがって、前記ダンパ19a~19dが発揮する抵抗力が小さくなる。したがって、使用者が前記切断部15を押し下げる力を強めなくても、前記ダンパ19a~19dによる抵抗力が減少した分の力が、前記刃16から前記POF80に印加され、前記POF80が切断される。
【0024】
ここで、前記把持部11が前記POF80を把持する力が弱すぎると、前記刃先61が前記POF80に当ったとき、前記POF80が撓んで、切断面の平滑性が低くなる。このため、前記刃先61が前記POF80を切断するとき前記POF80に加わる力では前記POF80が動かない程度に強い力で前記POF80を把持する必要がある。
しかし、前記把持部11が前記POF80を把持する力が強すぎると、前記刃先61が前記POF80に切り込み始めても、前記POF80が動かないので、前記刃先61の傾斜した側面が前記POF80の切断面に押し付けられる。このとき、前記刃先61の側面に傷や凹凸があると、それが前記POF80の切断面に転写されて、切断面の平滑性が損なわれる。このため、前記POF80の切断が開始したのち、図6に示すように、切断された前記POF80が前記刃先61の側面に押されて動く程度に弱い力で前記POF80を把持する必要がある。
例えば、4N~4.5N程度の力で、前記把持部11に把持された前記POF80を引っ張ったとき、前記POF80を前記把持部11から引き抜くことができる程度に把持力を抑えることが好ましい。前記POF80を引っ張っても、前記POF80が伸びるだけで引き抜くことができないほど強く把持するのは好ましくない。
【0025】
前記逃げ溝24の幅Gは、前記幅Gが前記POF80の径以下であることが好ましい。前記幅Gが広すぎると、前記刃先61が前記POF80に当ったとき、前記POF80が前記逃げ溝24に押し込まれて撓み、切断面の平滑性が低くなる。前記幅Gは、前記刃16の厚さTより小さくてもよく、その場合は、前記切断部15の移動を制限する制限機構を設けて、前記刃先61が前記POF80を完全に切断するが、前記刃16が前記受け部12に当らない位置までしか、前記切断部15が降りてこられないようにすることが好ましい。
【0026】
前記POF80が切断される位置のなるべく近くで前記POF80を把持するため、前記押さえ部13a,13bの間の隙間Gも、小さいほうが好ましい。具体的には、前記刃16の厚さTの3倍以下であることが望ましい。すなわち、前記押さえ部13a,13bと前記刃16との間の間の隙間が、前記刃16の厚さT以下であることが望ましい。
【0027】
前記刃16の厚さTは、前記POF80の径の10分の1以上5倍以下であることが好ましい。前記刃16が薄すぎると、前記刃16が撓みやすくなり、切断面の平滑性が損なわれる。逆に、前記刃16が厚すぎると、前記POF80を切断するときに前記POF80が前記刃16に押されて移動する移動量が大きくなるので、切断面の平滑性が損なわれやすくなる。
【0028】
上述したように、前記刃16の表面に傷や凹凸があると、それが前記POF80の切断面に転写される場合があるので、前記刃16の表面は、なるべく平坦であることが好ましい。そのため、例えば、前記刃16の表面にフッ素コーティングを施したり、酸化防止油を塗布したりするなどの表面平滑化処理をすることが望ましい。
【0029】
また、前記窓71,81の幅W,Wは、前記POF80の径の5倍以上10倍以下であることが好ましい。前記窓71,81が広すぎると、前記刃16が撓みやすくなり、切断面の平滑性が損なわれる。逆に、前記窓71,81が狭すぎると、それに伴って、前記載置部22及び突出部32の幅W,Wが狭くなり、前記POF80を把持する力が弱くなる。
【0030】
<実施例>
以下の条件で実験をした。
(1)前記POF80として、径が0.49mm,0.75mmの2種類を用意した。
(2)前記刃16として、表面にフッ素コーティングを施したものと施していないものとの2種類、表面に防錆油(酸化防止油)を塗布したものと塗布していないものとの2種類、厚さTが0.10mm,0.15mmの2種類、計8種類を用意した。
(3)逃げ溝24の幅Gは、刃16の厚さTが0.10mmの場合について0.16mm,0.25mmの2種類、刃16の厚さTが0.15mmの場合について0.21mm,0.30mmの2種類、計4種類を用意した。
(4)前記柱部28a~28dを前記支持部27a~27dに螺合させて固定する構成とし、前記鍔部29a~29dと前記支持部27a~27dとの間の距離を変えることにより、前記把持部11が前記POF80を把持する把持力を調整できるようにした。それぞれの前記押さえ部13a,13bによる把持力は、1kgf(9.8N)から6kgf(58.8N)まで変化させた。すなわち、二つの前記押さえ部13a,13bによる把持力の合計は、その2倍になる。また、参考のため、前記押さえ部13a,13bを取り外して、前記POF80を把持しない(すなわち、把持力0N)場合についても実験した。
(5)前記窓71,81の幅W,Wは3.0mmとし、前記ダンパ19a~19dによる反力は、約2Nとした。
(6)前記切断装置10で前記POF80を切断したのち、切断した前記POF80の切断面をつき合わせて結合し、光信号を伝送させて挿入損失を測定した。
【0031】
図7は、前記刃16として、表面に防錆油を塗布したものを使用した場合において、前記把持部11による把持力(横軸[kgf])と、測定した挿入損失(縦軸[dB])との関係を示すものである。この実験結果より、把持力の下限は、0kgf(0N)と1kgf(9.8N)との間(例えば5N)であり、上限は、6kgf(58.8N)以上(例えば60N)であることがわかる。
図8に示すとおり、前記POF80を1kgfで把持した場合(左)は、切断面が平滑であるのに対し、前記POF80を把持しなかった場合(右)は、切断面の下のほうがえぐれたような形状になっている。これが、挿入損失増大の原因であると考えられる。
【0032】
図9は、前記刃16として、表面に防錆油を塗布した場合(三角印)と、塗布していない場合(丸印)とを比較したものである。この実験結果より、前記刃16に防錆油を塗布したほうが、挿入損失が小さくなることがわかる。また、前記刃16に防錆油を塗布していない場合は、把持力が大きすぎると、挿入損失が増大する傾向が見える。
図10に示すとおり、前記刃16に油を塗布した場合(左)は、切断面が平滑であるのに対し、前記刃16に油を塗布しなかった場合(右)は、切断面に多数の縦縞模様が入っている。これは、前記刃16の表面の傷や凹凸が転写されたものであり、挿入損失増大の原因であると考えられる。
前記刃16に防錆油を塗布した場合であっても、把持力が大きくなるにつれて、同様の縦縞模様が表れたので、把持力が大き過ぎると、同様に、挿入損失が増大すると考えられる。
【0033】
図11に示すとおり、前記刃16にフッ素コーティングを施した場合(左)は、切断面が平滑であるのに対し、前記刃16にフッ素コーティングを施さなかった場合(右)は、切断面に縦縞模様が入っている。したがって、挿入損失を小さくするには、前記刃16の表面に何らかの平滑化処理をすることが有効であることがわかる。
【0034】
図12に示すとおり、前記刃16の厚さTが0.10mmである場合(左)も、0.15mmである場合(右)も、切断面は、平滑であり、大きな違いはない。
【0035】
以上のように、POFを適切な把持力で把持して切断することにより、切断面を平滑化し、挿入損失を抑えることができる。
【0036】
なお、POFを切断する位置の両側でPOFを把持するのではなく、片側だけでPOFを把持してもよい。そうすれば、切断装置の構造を簡略化できるので、製造コストを抑えることができる。その場合、把持していない側では切断面の平滑性が低くなるが、POFの長さを調整するために先端部分を切断するなどの場合は、切断した先端部分は使用しない。したがって、一回の切断でできる二つの切断面のうち一方の平滑性さえ高ければ、挿入損失を抑えることができる。
【0037】
また、使用者が切断部又は操作部を押したときにPOFを切断するのではなく、使用者が切断部又は操作部を離したときにPOFを切断する構成としてもよい。例えば、刃先を上側へ向け、使用者が切断部又は操作部を押し込んだとき、POFが把持部に把持される位置よりも下になるよう、刃を配置する。前記ダンパに代えて、切断部を上へ向けて付勢する切断付勢部を設け、前記切断付勢部の付勢力により前記切断部を元の位置へ復帰させることにより、前記POFを切断する。これにより、前記切断付勢部の付勢力によって定まる所定の速度・所定の荷重で前記POFを切断することができるので、切断面の平滑性が向上する。前記受け部と前記押さえ部との間にPOFを挿入するのを容易にするため、前記押さえ部を持ち上げる開閉機構を設けてもよく、更に、前記開閉機構によって前記押さえ部が持ち上げられている間は、押し下げられた切断部が元の位置に復帰しないようにするストッパー機構を設けてもよい。前記ストッパー機構は、前記開閉機構が前記押さえ部を解放したのち、少し遅延して前記切断部を解放してもよい。そうすれば、前記POFが前記把持部に確実に把持された状態で切断されるので、切断面の平滑性が向上する。
【0038】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 切断装置、11 把持部、12 受け部、21,31 基部、22 載置部、23,33 係合溝、24 逃げ溝、27a~27d 支持部、28a~28d 柱部、29a~29d 鍔部、13a,13b 押さえ部、32 突出部、38a,38b 貫通穴、14a~14d 付勢部、15 切断部、16 刃、61 刃先、17,18 挟持部、71,81 窓、72 板部、73 上縁部、74a,74b 側縁部、79a~79d ダンパー受け部、19a~19d ダンパ、80 POF。
図1
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図12