(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】穿刺ロボット及び穿刺制御用プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20230315BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2019068038
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平木 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】小牧 稔幸
(72)【発明者】
【氏名】亀川 哲志
(72)【発明者】
【氏名】松野 隆幸
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
A61B 17/34
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の穿刺標的を穿刺する穿刺針と、
この穿刺針の基端を着脱自在に支持する針支持部を先端に備えたアームと、
このアームを介して前記穿刺針の位置及び傾きを調整する調整機構を備えた本体部と、
X線を用いて前記穿刺針の位置と前記穿刺標的の位置を検出するX線CT装置と
を有する穿刺ロボットにおいて、
前記X線CT装置で検出した患者体内に刺入された前記穿刺針の位置から、前記穿刺針の先端位置と、前記穿刺針の針刺入点位置とを特定して、この先端位置と針刺入点位置の中点の位置を特定し、この中点を患者体内の組織中での回転中心と定義して前記穿刺針を回転操作させることで前記中点と前記穿刺標的と
を結ぶ目的の仮想線上に前記穿刺針を位置させる穿刺ロボット。
【請求項2】
アームの先端に基端が着脱自在に支持された穿刺針の位置及び傾きを制御するとともに、前記穿刺針をこの穿刺針の延伸方向に直動させることで患者の体内の穿刺標的を穿刺する穿刺ロボットの穿刺制御用プログラムにおいて、
前記穿刺針と前記穿刺標的の位置情報を取得するステップと、
前記穿刺針の先端位置と、前記穿刺針の針刺入点位置との中点の位置を特定するステップと、
前記中点を患者体内の組織中での回転中心と定義して前記穿刺針を回転操作させることで前記中点と前記穿刺標的と
を結ぶ目的の仮想線上に前記穿刺針を位置させるステップとを有する穿刺制御用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺ロボット及び穿刺制御用プログラムに関し、より詳しくは、穿刺針等を患者に遠隔操作で穿刺する穿刺ロボットであって、穿刺針等を人体に穿刺した際に、穿刺された部分の生体組織の変形あるいは変位に起因した穿刺標的の変位の影響を解消して、より精度よく標的を穿刺可能とする穿刺ロボット及び穿刺制御用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、X線CT(Computed Tomography)装置によるX線透視下において患者の腫瘍等の病変部に穿刺針等を穿刺する際に使用する穿刺ロボットを開発している。
【0003】
この穿刺ロボットでは、X線のアーチファクトの発生を抑制するために、穿刺針を比較的長尺のアームの先端に装着している。穿刺ロボットは、アームに対して適宜の平行移動操作あるいは回転操作を行うことで穿刺針の延伸方向に穿刺の標的である腫瘍等の病変部の中心を位置させ、この延伸方向に沿って穿刺針を直動させることで、標的の病変部を穿刺している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この穿刺ロボットにおいて、穿刺針を直動させて皮膚を刺し貫く際に、皮膚に撓みが生じることで穿刺針の針先の方向が穿刺の標的からずれることがあった。このように、針先の方向が標的からずれた際には、穿刺針の直動方向と異なる方向に針先が向いていることから、そのまま穿刺針を直動させると穿刺針は撓みながら体内に押し込まれ、標的を正確に穿刺できないおそれがあった。そこで、穿刺ロボットでは、穿刺針に生じた撓みを解消させることで穿刺針の直動方向上に穿刺の標的を位置させ、標的の穿刺精度を向上させる制御方法を導入している(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、他の同様の穿刺ロボットでは、生体組織の柔らかさ等の物理情報等に基づいたモデルをあらかじめ設定してから穿刺針による穿刺経路を決定し、この穿刺経路に沿って穿刺針を移動させることが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。さらに、この穿刺ロボットでは、穿刺中に超音波診断装置や磁気共鳴画像診断装置等の画像取得装置で穿刺針に生じた撓みを検出し、穿刺経路からのずれを補正することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/065016号明細書
【文献】国際公開第2018/207498号明細書
【文献】特開2006-271546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、穿刺ロボットの開発を進める中で、穿刺針に大きな撓みが生じないにもかかわらず、穿刺方向が穿刺の標的からずれる現象に遭遇することがあった。
【0008】
これは、生体組織が生体内で強固に固定されているわけではないことにより、直動させた穿刺針が生体内を侵入していく際に、生体組織が穿刺針から受ける力によって変形あるいは変位して、穿刺の標的の位置自体が変動していることが考えられた。穿刺標的の位置変動は、X線CT断面上のみの場合であればX線CTの視覚的情報に基づいて容易に補正可能であるが、X線CT断面と直行する断面上の補正をも要する場合において、視覚的情報に基づく補正は困難であった。
【0009】
本発明者らは、このようなX線CTの視覚的情報に基づく補正が困難な場合においても、穿刺標的の位置変動を補正して、確実に標的を穿刺可能とすべく研究開発を行い、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の穿刺ロボットでは、患者の体内の穿刺標的を穿刺する穿刺針と、この穿刺針の基端を着脱自在に支持する針支持部を先端に備えたアームと、このアームを介して穿刺針の位置及び傾きを調整する調整機構を備えた本体部と、X線を用いて穿刺針の位置と穿刺標的の位置を検出するX線CT装置とを有する穿刺ロボットにおいて、X線CT装置で検出した穿刺針の位置から、穿刺針の先端位置と、穿刺針の針刺入点位置とを特定して、この先端位置と針刺入点位置の中点の位置を特定し、この中点を患者体内の組織中での回転中心と定義して穿刺針を回転操作させることで中点と穿刺標的とを結ぶ目的の仮想線上に穿刺針を位置させることとした。
【0011】
また、本発明の穿刺制御用プログラムでは、アームの先端に基端が着脱自在に支持された穿刺針の位置及び傾きを制御するとともに、穿刺針をこの穿刺針の延伸方向に直動させることで患者の体内の穿刺標的を穿刺する穿刺ロボットの穿刺制御用プログラムにおいて、穿刺針と穿刺標的の位置情報を取得するステップと、穿刺針の先端位置と穿刺針の針刺入点位置との中点の位置を特定するステップと、この中点を患者体内の組織中での回転中心と定義して穿刺針を回転操作させることで中点と穿刺標的とを結ぶ目的の仮想線上に穿刺針を位置させるステップとを有することとした。
【発明の効果】
【0012】
生体穿刺した穿刺針の先端位置と針刺入点位置との中点を患者体内の組織中での回転中心と定義することで生体内の穿刺針の挙動が予測可能となり、中点と穿刺標的と結ぶ仮想線を目的の位置として針の軸回転運動を行うことで、穿刺針を生体に穿刺することによって穿刺標的の位置に変位が生じても補正することができ、正確に穿刺標的を穿刺することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明に係る穿刺ロボットの穿刺針操作部の図である。
【
図3】本発明に係る穿刺ロボットのアーム部分の説明図である。
【
図4】本発明に係る穿刺ロボットの針支持部の説明図である。
【
図5】本発明に係る穿刺制御プログラムのフローチャートである。
【
図6】本発明に係る穿刺制御プログラムによる制御の説明図である。
【
図7】本発明に係る穿刺制御プログラムによる制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の穿刺ロボットでは、患者の体内の穿刺標的を穿刺する穿刺針と、この穿刺針の基端を着脱自在に支持する針支持部を先端に備えたアームと、このアームを介して穿刺針の位置及び傾きを調整する調整機構を備えた本体部を有する穿刺ロボットであって、アームに取り付けられた穿刺針は、針の先端を中心とした軸回転運動を行うように設計されている。空中において穿刺針の姿勢制御を行う場合は、穿刺ロボットのこの動作特性によって、穿刺針を意図した方向に位置させることは容易である。
【0015】
しかし、患者に穿刺針の穿刺を行って、患者体内の組織中で穿刺針の軸回転運動を行う場合には、組織の抵抗のために、穿刺針の軸回転運動は針先端を中心とした軸回転とは異なり、針先端位置と針刺入点位置の中点の位置付近が穿刺針の軸回転運動の中心となることを発見した。
【0016】
そこで、患者体内の組織中で穿刺針の軸回転運動をする場合において、X線CT装置で検出した穿刺針の位置から、穿刺針の先端位置と、穿刺針の針刺入点位置とを特定して、この先端位置と針刺入点位置の中点の位置を特定し、この中点を組織中での回転中心と定義することで穿刺針の組織中での回転運動を予測し、組織中においても針を意図した方向に位置させることが可能となった。特に、中点と穿刺標的と結ぶ仮想線上に穿刺針を位置させて、穿刺針を延伸方向に直動させることで患者の体内の穿刺標的を正確に穿刺可能とすることができた。
【0017】
以下において、図面を用いながら本発明を詳説する。
【0018】
本発明の穿刺ロボットは、
図1に示すように、穿刺針11の基端を着脱自在に支持して患者に穿刺可能とした穿刺針操作部10と、後述するように穿刺針11及び患者の体内の穿刺標的の位置を検出するX線CT装置40とで構成している。穿刺針操作部10及びX線CT装置40は、図示しない制御部と接続しており、この制御部による制御を受けて、それぞれ稼働することとしている。
【0019】
X線CT装置40は、一般的なガントリ自走式X線CT装置であって、寝台41とガントリ42とを備え、患者は寝台41上に仰臥位、あるいは所定の姿勢で横たわり、ガントリ42でX線撮影を可能としている。
【0020】
X線撮影によって得られたX線撮影データは制御部に送られて、この制御部で後述する解析作業を行うこととしている。
【0021】
穿刺針操作部10は、
図2に示すように、穿刺針11の基端を着脱自在に支持する針支持部21を先端に備えたアーム20と、このアーム20を介して穿刺針11の位置及び傾きを調整する調整機構を備えた本体部30とを有している。
【0022】
本体部30では、矩形体状の基台31を有し、この基台31の上面には、第1の水平方向への平行移動を制御する第1平行移動機構32aを設けている。この第1平行移動機構32aの上面には、第1の水平方向と直行する第2の水平方向への平行移動を制御する第2平行移動機構32bを設けている。第2平行移動機構32bの先端部には、第1の水平方向と平行に延伸させた回動ロッド33を有する第1回動機構32cを設け、回動ロッド33の中心軸周りに回動ロッド33を回動制御している。回動ロッド33の先端には、回動ロッド33の延伸方向と直交する回転軸(図示せず)を介して進退機構32eが装着される第2回動機構32dを設け、この第2回動機構32dと第1回動機構32cとで穿刺針11の傾きを自在に制御可能としている。進退機構32eは、この進退機構32eに基端側が装着されたアーム20を穿刺針11の延伸方向に進退移動させることで、穿刺針11をその延伸方向に沿って進退制御している。さらに、図示していないが、基台31の内部には、第1平行移動機構32aを鉛直方向に昇降させる昇降機構を設けており、これらの6自由度の制御を行うことで、穿刺針11の位置と傾きとを自由自在に制御可能としている。特に、本実施形態の穿刺ロボットでは、針の先端を中心に穿刺針を回転させる機能を有し、穿刺針を容易に所望の姿勢とすることができる。
【0023】
図3に詳細に示すように、アーム20は、第1アーム20aと第2アーム20bとを有し、この第1アーム20aと第2アーム20bとで平行リンクを構成することで、進退機構32eの進退方向を穿刺針11の延伸方向と平行としている。したがって、進退機構32eを進退制御することで、穿刺針11を延伸方向に沿って直動させることができる。
【0024】
第1アーム20aと第2アーム20bの先端側は矩形フレーム22に回動自在に装着している。矩形フレーム22は、底面壁22aと、この底面壁22aと対向した天井壁22bと、底面壁22aと天井壁22bとに架設した第1側壁22cと第2側壁(図示せず)とで構成しており、第1側壁22cと第2側壁に第1アーム20aと第2アーム20bの先端側を回転自在に装着している。
【0025】
底面壁22aの上面には第1力センサ23aと第2力センサ23bを重ねて載設している。第1力センサ23aと第2力センサ23bの2つの力センサを設けているのは、力センサの一方が故障した場合のフェイルセーフ用としてである。
【0026】
第2力センサ23bの上面には、第1アーム20a及び第2アーム20bの延伸方向に向けて延出させた支持片24を設け、この支持片24の下面にエアシリンダ25を装着している。このエアシリンダ25は、穿刺針11を延伸方向と平行に進退するロッド(図示せず)を有しており、進退機構32eの駆動速度よりも速い速度で穿刺針11を直動させることで、患者の皮膚を穿刺しやすくしている。
【0027】
エアシリンダ25のロッドには、針支持部21を固定装着するための連結体26を装着しており、針支持部21は、
図3及び
図4に示すように2つの固定ピン27を介して連結体26に固定装着することとしている。
【0028】
針支持部21の基体21aの先端側には、
図4に示すように、第1針把持アーム21bと第2針把持アーム21cを回動自在に設けており、この第1針把持アーム21bと第2針把持アーム21cとで、穿刺針11の基端を把持することとしている。特に、第1針把持アーム21bと第2針把持アーム21cとは、穿刺針11を把持した後にスナップ錠21dで一体的に連結して、穿刺針11を強固に支持可能としている。
【0029】
上述した穿刺針操作部10は、図示しないコントローラを用いて遠隔操作を可能としており、X線CT装置40の寝台41に寝た患者に対して、X線透過下で穿刺標的を確認しながらコントローラで穿刺針操作部10の調整機構を操作して、穿刺針11を穿刺経路上に位置させることとしている。ここで、穿刺経路とは、穿刺の標的である腫瘍等の患部の中心を通る仮想線であって、骨や主要な器官等を避けながら穿刺針11を刺し込んだ際の差し込みの長さができるだけ短くなる仮想線である。
【0030】
穿刺針11を穿刺経路上に位置させた後、進退機構32eを駆動させて、患者に対して穿刺針11の穿刺を行う。
【0031】
ここで、本発明の穿刺ロボットでは、進退機構32eを駆動させて患者に対して穿刺針11による穿刺を行いながら、穿刺ロボットの制御部は、
図5に示すサブルーチンを実行することとしている。
【0032】
すなわち、まず、穿刺ロボットの制御部は、進退機構32eを駆動させて穿刺針11を直動させ(ステップS1)、所定の距離だけ直動したかを判定する(ステップS2)。この所定の距離とは、初回は穿刺予定距離の半分を目安とするが、任意の穿刺距離を設定可能である。
【0033】
制御部は、進退機構32eが所定の距離まで直動していない場合(ステップS2:NO)には、穿刺針11の直動操作を続行(ステップS1)し、所定の距離だけ直動したと判定した場合(ステップS2:YES)には、穿刺針11の直動操作を停止する(ステップS3)。
【0034】
穿刺針11の直動操作を停止した後、制御部は、X線CT装置40を稼働させてX線撮影を行い(ステップS4)、得られたX線撮影データから穿刺針11と穿刺標的の位置情報を特定する(ステップS5)。
【0035】
さらに、制御部は、得られた穿刺針11と穿刺標的の位置情報から、穿刺針11の針先が穿刺標的に到達していると判定した場合(ステップS6:YES)には、穿刺を終了するが、穿刺針11の針先が穿刺標的に到達していないと判定した場合(ステップS6:NO)には、穿刺針11が穿刺標的を向いているか、すなわち、穿刺針11の延伸方向に穿刺標的が存在しているかを判定している(ステップS7)。
【0036】
制御部は、穿刺針11が穿刺標的を向いていると判定した場合(ステップS7:YES)には、ステップS1に戻って穿刺針11の直動操作を再開する。ここで、ステップS2の穿刺針11の直動操作の停止条件を再設定している。このとき、2回目の直動となる場合には、穿刺標的の1cm手前を停止条件の目安とするが、任意の穿刺距離を設定可能である。
【0037】
制御部は、穿刺針11が穿刺標的を向いていないと判定した場合(ステップS7:NO)には、穿刺針11の先端位置とともに、穿刺針11が生体に侵入している位置である針刺入点位置を特定し、さらに、この先端位置と針刺入点位置との中点の位置を特定する(ステップS8)。
【0038】
さらに、制御部は、特定した中点を組織中での回転中心と定義して穿刺針11を回転操作することで穿刺針11が穿刺標的を向く回転量を特定し、この回転量を生じさせる穿刺針操作部10での各操作条件を特定する(ステップS9)。
【0039】
図6及び
図7を用いて、この状態を説明すると、3次元データとして得られるX線撮影データから、
図6に示すように穿刺針11と穿刺標的Pとが同一平面上に現れる平面Xを特定し、この平面X上の穿刺針11の先端位置R1及び針刺入点位置R2の座標から中点R3の位置を特定する。この中点R3を組織中での回転中心と定義して、
図7に示すように平面X上で穿刺針11を回転操作することで穿刺針11が穿刺標的Pを向く回転量を特定する。
【0040】
穿刺針11は、上述したように基端をアーム20の針支持部21に装着しており、本実施形態の穿刺ロボットでは、穿刺針を針の先端を中心とした軸回転運動するように常に設定されていることから、穿刺針11を中点R3で回転操作する場合には、中点R3から基端をアーム20に装着された穿刺針11の基端及び先端までの距離も考慮しながら穿刺針操作部10での操作条件を特定する必要があり、所定の逆演算によって穿刺針操作部10の操作条件を特定している。
【0041】
制御部は、穿刺針操作部10での各操作条件の特定後、その条件に従って穿刺針11の軸回転操作を実行する(ステップS10)。このステップS10で穿刺針11の軸回転操作を行った後、制御部はステップS4に戻ってX線CT装置40を稼働させてX線撮影を行い、得られたX線撮影データから穿刺針11と穿刺標的の位置情報を特定して(ステップS5)、穿刺針11が穿刺標的Pを向いているか、すなわち、中点R3と穿刺標的R2と結ぶ目的の仮想線上に穿刺針11が位置しているかを判定する(ステップS7)。すなわち、制御部は、ステップS4からステップS10を繰り返して穿刺針11を穿刺標的Pの方向に向けて(ステップS7:YES)、ステップS1に戻って穿刺針11の直動操作を再開する。ここで、ステップS2の穿刺針11の直動操作の停止条件を再設定している。なお、ステップS4からステップS10を繰り返す際に、ステップS6では当然ながら穿刺針が標的に到達していないのでステップS7に進むこととなる。
【0042】
このように、中点を組織中での回転中心と定義して穿刺針11の回転操作を実行することで穿刺針11の穿刺方向を正確に調整することが可能となり、結果として穿刺標的を正確に穿刺することができる。
【実施例】
【0043】
ブタの腎と臀筋を人体組織の代用として用い、所定の位置に1.0mm径のタングステンカーバイト球を穿刺標的として埋入し、生検導入針でこの穿刺標的に対して穿刺した際の穿刺精度の確認を行った。なお、穿刺はX線CT断面上のみならず、X線CT断面に直行する断面も含めた2軸において針を傾けて穿刺を行っている。この2軸での傾きを有する穿刺は通常行われるX線CT断面上のみの1軸で針を傾ける穿刺と比して、組織中での針姿勢調整の難易度は高い。生検導入針は、17Gで14.8mmの長さを有している。
【0044】
穿刺中に穿刺針11の回転操作による調整を行った場合と、行わない場合の2群に分け、下表の穿刺条件・穿刺回数の穿刺を行った。
【表1】
【0045】
【0046】
上表に示すように、穿刺針11の上述の方法を用いた回転操作による調整を行うことで穿刺精度が向上していることがわかる。特に、通常、生検のための穿刺を行う場合には、穿刺標的の大きさが5mmを超えた程度で実施を検討することが多いが、穿刺針11の回転操作による調整を行わない場合では、穿刺標的を外すおそれがあるが、穿刺針11の回転操作による調整を行うことで穿刺標的をより確実に穿刺可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0047】
10 穿刺針操作部
11 穿刺針
20 アーム
30 本体部
40 X線CT装置
41 寝台
42 ガントリ
P 穿刺標的
R1 先端位置
R2 針刺入点位置
R3 中点