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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20230315BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J131/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019111837
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020203977
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村本 禎
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046354(WO,A1)
【文献】特開2016-204665(JP,A)
【文献】特開2015-091917(JP,A)
【文献】特開2011-195711(JP,A)
【文献】特開2015-063588(JP,A)
【文献】特開2014-234399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系熱可塑性エラストマーA、粘着付与樹脂B、可塑剤C、及びエチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dを含有し、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーAは、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)共重合体、及びスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)共重合体からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーAの含有量が15~45質量%であり、
前記可塑剤Cの質量部をC、及び前記エチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dの質量部をDとした場合にD/Cで示される比率が0.22~0.80である、
ことを特徴とするホットメルト接着剤(但し、酸変性石油樹脂を含有するホットメルト接着剤を除く。)
【請求項2】
前記エチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dは、その構造中に酸基を有する場合でも酸価が5以下である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂Bは、水添石油樹脂である、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記可塑剤Cは、液状可塑剤である、請求項1~のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
吸収性物品を衣類に固定する位置決め用途に用いる、請求項1~4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関し、特に生理用ナプキン、尿取りライナー等の吸収性物品を下着、肌着等の衣類に固定する用途(いわゆる位置決めの用途)に適したホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品とは、例えば、経血、おりもの、尿、汗等の体から発生する体液を吸収させるために、例えば、下着、肌着等の衣類に固定して用いる物品であって、体液が衣類に付着することによって生じる不快感や非衛生性を防止するために使用される。
【0003】
吸収性物品としては、例えば、生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン、手術用白衣等が知られている。そして、そのような吸収性物品には、それらを衣類に固定するとともに使用時にずれないようにするための位置決め用の接着剤が付与されている。
【0004】
多くの吸収性物品は、一般に肌に当接する透湿性トップシートと下着、肌着等の衣類に当接する不透液性バックシート(一般に通気性ポリエチレンシート)と、それらに挟まれた吸収体とを有する。吸収性物品の位置決め用の接着剤は、一般に剥離基材に塗工された後に不透液性バックシートに転写され、転写された位置決め用の接着剤を衣類に接触させることで吸収性物品が衣類の所望位置に貼着され、その位置に保持されることになる。
【0005】
位置決め用の接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)が不十分であると、使用中に吸収性物品が貼着された位置から移動し、体液が衣類に付着することがある。他方、位置決め用の接着剤の剥離性が不十分であると、使用後の吸収性物品を除去する際に接着剤の一部が衣類に残ること(いわゆる「糊残り」)が生じる場合がある。従って、吸収性物品の位置決め用の接着剤には、使用中に衣類に貼着した位置がずれないこと、及び使用後は衣類に糊残りすることなく剥離できることが求められている。
【0006】
吸収性物品の位置決め用の接着剤に関し、特許文献1には、ラジアル型スチレンブロック共重合体を含有する吸収性物品の位置決め用のホットメルト接着剤が開示されている。特許文献2には、スチレン-ブタジエン-スチレンポリマー(SBS)又はスチレン-イソプレン-スチレンポリマー(SIS)を含有する吸収性物品の位置決め用のホットメルト接着剤が開示されている。また、特許文献3には、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体を含有する吸収性物品の位置決め用のホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-65121号公報
【文献】特表2017-503069号公報
【文献】特開2016-153448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、製品化された吸収性物品は一旦倉庫等で保管された後、計画的に出荷される場合が多いが、保管期間が長い場合に位置決め用の接着剤に含まれている可塑剤が通気性ポリエチレンシートに浸透して接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)が低下するという問題がある。また、位置決め用の接着剤は、剥離基材に塗工される前に180℃前後の温度でタンク内で一時保管されるが、その際に粘度上昇や沈殿物の生成が生じる場合があることが指摘されている。これらの観点において、上記従来技術の位置決め用のホットメルト接着剤は、具備性能が十分ではなく更なる改良の余地がある。
【0009】
よって、本発明は、吸収性物品の位置決め用に適したホットメルト接着剤であって、塗工前の熱安定性に優れており、且つ吸収性物品の製品化から使用迄の期間が長い場合でも接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)の低下が抑制されており、使用中に吸収性物品が衣類に貼着した位置からずれることなく、更に使用後に衣類から剥がす際に衣類への糊残りがないホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【0010】
なお、以下では、吸収性物品の位置決め用のホットメルト接着剤が貼着される下着、肌着等の衣類を「被着衣類」ともいう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定組成のホットメルト接着剤によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
1.スチレン系熱可塑性エラストマーA、粘着付与樹脂B、可塑剤C、及びエチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dを含有し、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーAは、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)共重合体、及びスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)共重合体からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーAの含有量が15~45質量%であり、
前記可塑剤Cの質量部をC、及び前記エチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dの質量部をDとした場合にD/Cで示される比率が0.22~0.80である、
ことを特徴とするホットメルト接着剤(但し、酸変性石油樹脂を含有するホットメルト接着剤を除く。)
2.前記エチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dは、その構造中に酸基を有する場合でも酸価が5以下である、上記項1に記載のホットメルト接着剤。
.前記粘着付与樹脂Bは、水添石油樹脂である、上記項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
.前記可塑剤Cは、液状可塑剤である、上記項1~のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
5. 吸収性物品を衣類に固定する位置決め用途に用いる、上記項1~4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明のホットメルト接着剤は、吸収性物品の位置決め用途に適しており、塗工前の熱安定性に優れており、且つ吸収性物品の製品化から使用迄の期間が長い場合でも接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)の低下が抑制されており、使用中に吸収性物品が被着衣類に貼着した位置からずれることなく、更に使用後に被着衣類から剥がす際に被着衣類への糊残りがない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のホットメルト接着剤は、スチレン系熱可塑性エラストマーA、粘着付与樹脂B、可塑剤C、及びエチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dを含有し、
前記可塑剤Cの質量部をC、及び前記エチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dの質量部をDとした場合にD/Cで示される比率が0.10~0.80である、
ことを特徴とする。
【0015】
上記特徴を有する本発明のホットメルト接着剤は、吸収性物品の位置決め用途に適しており、塗工前の熱安定性に優れており、且つ吸収性物品の製品化から使用迄の期間が長い場合でも接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)の低下が抑制されており、使用中に吸収性物品が被着衣類に貼着した位置からずれることなく、更に使用後に被着衣類から剥がす際に被着衣類への糊残りがない。
【0016】
以下、本発明のホットメルト接着剤の各成分(A~D等)について説明する。
【0017】
スチレン系熱可塑性エラストマーA
本発明のホットメルト接着剤は、スチレン系熱可塑性エラストマーAを含有する。
【0018】
スチレン系熱可塑性エラストマーAとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS*1;Styrene-Isobutylene-Styrene)共重合体、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS*2;Styrene-Isoprene/Butadiene-Styrene)共重合体等、並びに、これらの水素添加物が挙げられる。
【0019】
水素添加物の種類は完全水素添加(完全水添)又は部分水素添加(部分水添)のいずれであってもよく、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)共重合体、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)共重合体、スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン(SBBS)共重合体等が挙げられる。ここで、SEBSは、SBSの完全水添物である。SEPSは、SISの完全水添物である。SEEPSは、SIBS*2の完全水添物である。また、SBBSは、SBSの部分水添物である。
【0020】
これらのスチレン系熱可塑性エラストマーAの中でも、SIS、SBS、SEBS及びSBBSから選択される少なくとも一種が好ましく、特に未水添物であるSIS及びSBSの少なくとも一種が好ましい。
【0021】
スチレン系熱可塑性エラストマーAは、スチレン含有量が10~50質量%であるものが好ましく、15~45質量%であるものがより好ましい。スチレン含有量が15質量%以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して糊残りが発生し難くなる。また、スチレン含有量が45質量%以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり低温でも接着性を発揮し易くなる。
【0022】
スチレン系熱可塑性エラストマーAは、ジブロック比率が50~90質量%であるものが好ましく、65~80質量%であるものがより好ましい。ジブロック比率が50質量%以上であると、ホットメルト接着剤の粘着力が向上して低温でも接着性を発揮し易くなる。また、ジブロック比率が90質量%以下であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して糊残りが発生し難くなる。
【0023】
スチレン系熱可塑性エラストマーAの重量平均分子量(Mw)は限定的ではないが、トリブロック共重合体及びジブロック共重合体ともに30,000~400,000であることが好ましく、40,000~350,000であることがより好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーAの重量平均分子量が30,000以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して糊残りが発生し難くなる。また、重量平均分子量が400,000以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり低温でも接着性を発揮し易くなる。なお、本明細書におけるコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて、標準ポリスチレンで換算することにより得られる測定値である。
【0024】
本発明における重量平均分子量(Mw)は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置:Waters社製 商品名「ACQUITY APC」
測定条件:カラム
・ACQUITY APC XT45 1.7μm×1本
・ACQUITY APC XT125 2.5μm×1本
・ACQUITY APC XT450 2.5μm×1本
移動相:テトラヒドロフラン 0.8mL/分
サンプル濃度:0.2質量%
検出器:示差屈折率(RI)検出器
標準物質:ポリスチレン(Waters社製 分子量:266~1,800,000)
カラム温度:40℃
RI検出器温度:40℃
【0025】
上記SBSは、市販されている製品を用いることができる。例えば、旭化成社製の商品名「アサプレンT-438」、「アサプレンT-439」、「アサプレンT-413」等が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
【0026】
上記SISは、市販されている製品を用いることができる。例えば、日本ゼオン社製の商品名「クインタック3520」、「クインタックSL-186」、「クインタック3433N」、Kraton社製の商品名「D1161」等が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
【0027】
上記SEBSは、市販されている製品を用いることができる。例えば、Kraton社製の商品名「G1726」、「G1645」等が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
【0028】
上記SBBSは、市販されている製品を用いることができる。例えば、旭化成社製の商品名「タフテックP1500」、「タフテックP1083」、「タフテックP5051」等が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
【0029】
上記SIBSは、市販されている製品を用いることができる。例えば、カネカ社製の商品名「SIBSTAR073T」、「SIBSTAR102T」、「SIBSTAR103T」等が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
【0030】
上記SEPSは、市販されている製品を用いることができる。例えば、クラレ社製の商品名「SEPTON2063」、「SEPTON2005」等が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
【0031】
上記SEEPSは、市販されている製品を用いることができる。例えば、クラレ社製の商品名「SEPTON4033」、「SEPTON4055」等が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
【0032】
本発明のホットメルト接着剤におけるスチレン系熱可塑性エラストマーAの含有量は限定的ではないが、ホットメルト接着剤100質量%中、15~45質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0033】
本発明のホットメルト接着剤のスチレン系熱可塑性エラストマーAの含有量が15質量%以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して糊残りが発生し難くなる。また、スチレン系熱可塑性エラストマーAの含有量が45質量%以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり低温でも接着性を発揮し易くなる。
【0034】
粘着付与樹脂B
本発明のホットメルト接着剤は、粘着付与樹脂Bを含有する。粘着付与樹脂Bとしては特に限定されず、ロジン系化合物、テルペン系化合物、石油樹脂等が挙げられる。この中でもテルペン系化合物、石油樹脂が好ましく、特に石油樹脂(とりわけ水添石油樹脂)が好ましい。
【0035】
上記ロジン系化合物としては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0036】
上記テルペン系化合物としては、例えば、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの三次元ポリマー、天然テルペンのコポリマーの水素化誘導体、テルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体等が挙げられる。
【0037】
上記石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂が挙げられる。また、これらの石油樹脂が水素添加された水添石油樹脂(部分水添石油樹脂、完全水添石油樹脂)も挙げられる。水添石油樹脂の中では、部分水添石油樹脂の方が、前記スチレン系熱可塑性エラストマーAとの相溶性が高く、且つ加熱安定性に優れる点でより好ましい。なお、C5系石油樹脂は石油のC5留分を原料とした石油樹脂であり、C9系石油樹脂は石油のC9留分を原料とした石油樹脂であり、C5C9系石油樹脂は石油のC5留分とC9留分とを原料とした石油樹脂である。C5留分としては、シクロペンタジエン、イソプレン、ペンタン等が挙げられる。C9留分としては、スチレン、ビニルトルエン、インデン等が挙げられる。C5系石油樹脂、C5C9系石油樹脂としては、C5留分の一種であるシクロペンタジエンに由来するジシクロペンタジエン(DCPD)を骨格中に含むものが好ましい。
【0038】
粘着付与樹脂Bとしては、ホットメルト接着剤の臭気、熱安定性に優れている点で、石油樹脂(部分水添石油樹脂及び完全水添石油樹脂を含む)が好ましく、部分水添石油樹脂及び完全水添石油樹脂がより好ましい。
【0039】
粘着付与樹脂Bは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
粘着付与樹脂Bの軟化点温度は限定的ではないが、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。軟化点温度の上限は限定的ではないが、130℃程度である。粘着付与樹脂Bの軟化点が90℃以上であると、本発明のホットメルト接着剤が粘着性(タック)の効果を発揮し易くなる。
【0041】
本発明のホットメルト接着剤における粘着付与樹脂Bの含有量は限定的ではないが、ホットメルト接着剤100質量%中、30~65質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。
【0042】
本発明のホットメルト接着剤の粘着付与樹脂Bの含有量が30質量%以上であると、ホットメルト接着剤の粘着性が向上して被着体への密着性が向上する。また、粘着付与樹脂Bの含有量が65質量%以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり低温でも保持力を発揮し易くなる。
【0043】
粘着付与樹脂Bは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
粘着付与樹脂Bとしては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、例えば、東燃ゼネラル石油社製「HA-085」、東燃ゼネラル石油社製「HA-103」、東燃ゼネラル石油社製「HB-103」、東燃ゼネラル石油社製「HB-125」、荒川化学社製「アルコンP-90」、荒川化学社製「アルコンM-100」、出光興産社製「アイマーブP100」、Kolon社製「スコレッツSU400」、ヤスハラケミカル社製「YSレジンTO-105」等が挙げられる。
【0045】
可塑剤C
本発明のホットメルト接着剤は、可塑剤Cを含有する。可塑剤Cは限定的ではないが、液状可塑剤であることが好ましい。なお、上記「液状」とは、25℃で流動性をもつ(すなわち、容器に入れた場合に容器に合わせて形状を変える)ことを意味する。
【0046】
可塑剤C(特に液状可塑剤)としては特に限定されず、例えば、ポリブテン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィン、炭化水素系合成油等が挙げられる。これらの可塑剤Cの中でも、ポリブテン及びプロセスオイルの少なくとも一種が好ましい。また、プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイルの少なくとも一種がより好ましく、高温での耐フロー性を高める点ではパラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。
【0047】
可塑剤Cは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
ポリブテンとしては特に限定されず、例えば、イソブテンのホモポリマー、イソブテンとn-ブテンとのコポリマー等が挙げられる。
【0049】
ポリブテンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本油脂社製「10N」、イネオス社製「インドポールH-100」、新日本石油化学製「日石ポリブテン」、新日本石油化学製「テトラックス」等が挙げられる。
【0050】
パラフィン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製「PW-32」、出光興産社製「ダイアナフレシアS32」、出光興産社製「PS-32」等が挙げられる。
【0051】
ナフテン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、PetroChina社製「KN4010」、出光興産社製「ダイアナフレシアN28」、出光興産社製「ダイアナフレシアN90」、出光興産社製「ダイアナフレシアU46」、出光興産社製「ダイアナプロセスオイルNR」等が挙げられる。
【0052】
芳香族系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、新日本石油社製「アロマックス」が挙げられる。
【0053】
これらのプロセスオイルの数平均分子量は限定的ではないが200~700が好ましく、300~600がより好ましい。
【0054】
流動パラフィンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、MORESCO社製「P-100」、Sonneborn社製「Kaydol」等が挙げられる。
【0055】
炭化水素系合成油としては、市販品を用いることができる。市販品としては、三井化学社製「ルーカントHC-10」、三井化学社製「ルーカントHC-20」等が挙げられる。
【0056】
本発明のホットメルト接着剤における可塑剤Cの含有量は限定的ではないが、ホットメルト接着剤100質量%中、10~40質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましい。なお、本発明のホットメルト接着剤は、可塑剤Cの質量部をC、及び後記するエチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dの質量部をDとした場合にD/Cで示される比率が0.10~0.80であることを要する。よって、上記観点からD/Cで示される比率が上記要件を満たすように可塑剤Cの含有量を規定する必要がある。本発明では、特にD/Cが0.10~0.80であること(好ましくは0.10~0.50)により、ホットメルト接着剤が塗工前の熱安定性に優れており、且つ吸収性物品の製品化から使用迄の期間が長い場合でも接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)の低下が抑制されており、使用中に吸収性物品が被着衣類に貼着した位置からずれることない。
【0057】
本発明のホットメルト接着剤の可塑剤Cの含有量が10質量%以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して糊残りが発生し難くなる。また、可塑剤Cの含有量が40質量%以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり低温でも保持力を発揮し易くなる。
【0058】
エチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体D
本発明のホットメルト接着剤は、エチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体D(以下「ビニル共重合体D」ともいう)を含有する。
【0059】
ビニル共重合体Dとしては、エチレン-カルボニル結合を有するものであれば限定されないが、例えば、エチレン-酢酸ビニル(EVA)共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル(EMMA)共重合体、エチレン-アクリル酸エチル(EEA)共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル(EBA)共重合体、エチレン-アクリル酸メチル(EMA)共重合体等が挙げられる。
【0060】
本発明で用いるビニル共重合体は、その構造中に酸基を有する場合でも酸価が5以下であることが好ましい。酸基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基等が挙げられる。酸価は5以下であれば好ましく、3以下がより好ましい。
【0061】
本発明のホットメルト接着剤におけるビニル共重合体Dの含有量は限定的ではないが、ホットメルト接着剤100質量%中、2~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。なお、前述の通り、本発明ではD/Cで示される比率が0.10~0.80であることを要する。よって、上記観点からD/Cで示される比率が上記要件を満たすようにビニル共重合体Dの含有量を規定する必要がある。
【0062】
本発明のホットメルト接着剤のビニル共重合体Dの含有量が2質量%以上であると、ホットメルト接着剤の凝集力が向上して糊残りが発生し難くなる。また、ビニル共重合体Dの含有量が20質量%以下であると、ホットメルト接着剤が柔らかくなり低温でも接着性を発揮し易くなる。
【0063】
任意の添加剤
本発明のホットメルト接着剤は、必要に応じて、各種添加剤を含んでもよい。各種添加剤としては、例えば、安定化剤、微粒子充填剤等が挙げられる。
【0064】
安定化剤は、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等をより改善し、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために用いる。安定化剤の具体的種類は限定的ではないが、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤が挙げられる。
【0065】
酸化防止剤は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用する。また、紫外線吸収剤は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用する。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的に使い捨て製品に汎用されるものであって、本発明のホットメルト接着剤は後述するように一般的に使い捨ての吸収性物品の位置決め用の接着剤として適用されるものであるため、添加剤として好適に使用することができる。
【0066】
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルべンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等を例示できる。紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤;シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤を例示できる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0067】
安定化剤は、市販されている製品を用いることができる。例えば、住友化学工業社製の商品名「スミソーブスミライザーGM」、「スミソーブ200」、BASF社製の商品名「イルガノックス1010」、城北化学社製の商品名「JF-79」等が挙げられる。これらの市販品の安定化剤は、単独又は混合して使用することができる。
【0068】
微粒子充填剤としては限定的ではなく、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、雲母、スチレンビーズ等が挙げられる。これらの微粒子充填剤は、単独又は混合して使用することができる。
【0069】
ホットメルト接着剤の物性及び用途
本発明のホットメルト接着剤は、吸収性物品の位置決め用のホットメルト接着剤として有用であり、塗工前の熱安定性に優れており、且つ吸収性物品の製品化から使用迄の期間が長い場合でも接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)の低下が抑制されており、使用中に吸収性物品が被着衣類に貼着した位置からずれることなく、更に使用後に被着衣類から剥がす際に被着衣類への糊残りがない。
【0070】
塗工前の熱安定性に優れる観点では、本発明のホットメルト接着剤は、例えば、ガラス瓶に本発明のホットメルト接着剤20gを入れ、180℃環境下に96時間放置後、目視観察によりホットメルト接着剤表面に炭化物の析出が認められないことが要求される。
【0071】
吸収性物品の製品化から使用迄の期間が長い場合でも接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)の低下が抑制されており、使用中に吸収性物品が衣類に貼着した位置からずれることがないという観点では、本発明のホットメルト接着剤は、所定のせん断強度試験(特に接着強度の指標)及びプローブタック試験(特に粘着性の指標)において良好な性能が認められることが要求される。
【0072】
これらの試験用の測定用サンプル(初期、1,2,4週間保管後)は、例えば、本発明のホットメルト接着剤を離型PETフィルム上に厚み25μmとなるように塗工し、これを通気ポリエチレンフィルム上に転写し、50℃環境下にて1,2,4週間保管した後、通気ポリエチレンフィルムの裏面にポリプロピレンフィルムを貼り付けて補強することにより作製することができる。
【0073】
せん断強度試験は、上記測定用サンプルを35mm幅(接着面積35mm×10mm)に裁断し、JIS L 0803に準拠するJIS染色堅ろう試験用綿布(カナキン3号:模擬被着衣類)に2kgのローラーを一往復させて貼り合わせ、23℃環境下、300mm/分の速度でせん断強度の実測値を測定した場合に各保管期間で5N以上であることが要求される。
【0074】
プローブタック試験は、23℃環境下、例えば、ニチバン製プローブタックテスターにより測定することができる。上記各保管期間の測定用サンプルの接着剤に20gの荷重で直径5mmの円柱状SUS棒を接触時間1秒で押し当てた後、移動速度1cm/秒で引き上げた際の強度が各保管時間で500g以上であることが要求される。また、初期サンプルの粘着力を100%とした場合に各保管時間で60%以上の粘着力の保持率であることが要求される。
【0075】
使用後に被着衣類から剥がす際に被着衣類への糊残りがない観点では、上記初期サンプルを35mm幅(接着面積35mm×10mm)に裁断し、接着剤部分にJIS L 0803に準拠するJIS染色堅ろう試験用綿布(カナキン3号:模擬被着衣類)を載せ、60mm×100mm×2mm厚のアクリル板を被せてその上に2.1kgの荷重を2時間かけた後、23℃環境下、300mm/分の速度で剥離した場合にカナキンの貼り合わせ面に目視観察により糊残りが認められないことが要求される。
【0076】
上記吸収性物品としては、例えば、生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン、手術用白衣等を例示できるが、これらに限定されず、体液を吸収させる用途で主に使い捨てで使用される衛生用品全般に適用することができる。
【0077】
吸収性物品は、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙類、ポリオレフィンフィルム等の少なくとも一種の部材に本発明のホットメルト接着剤を塗工することにより構成される。なお、ポリオレフィンフィルムとしては、耐久性、コスト等の理由からポリエチレンフィルムが好ましく、一般に通気性ポリエチレンフィルムが使用されている。
【0078】
本発明のホットメルト接着剤は、上記吸収性物品の中でも生理用ナプキンに好適である。一般に生理用ナプキンは、例えば、透湿性トップシートと不透液性バックシートとの間に吸収体を有し、トップシートが肌に当接し、バックシートが下着に当接する。位置決め用の接着剤はバックシート(基材)に設けられて生理用ナプキンは下着の所望位置に固定される。本発明のホットメルト接着剤は、生理用ナプキンのバックシートがポリオレフィンフィルムである場合、特に優れた効果を発揮する。
【0079】
ホットメルト接着剤を吸収性物品の基材(接着剤を設ける部分)に塗工する方法や塗工する量は、吸収性物品の種類に応じて適宜選択でき、特に制限されるものではない。塗工方法としては、接触塗工又は非接触塗工に大別される。接触塗工とはホットメルト接着剤を塗工する際に噴出機を基材に接触させる塗工方法をいう。また、非接触塗工は、ホットメルト接着剤を塗工する際に噴出機を基材に接触させない塗工方法をいう。
【0080】
接触塗工方法としては、例えば、スロットコーター塗工、ロールコーター塗工等を例示できる。また、非接触塗工方法としては、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工又はコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工又はカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工等を例示できる。
【実施例
【0081】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。なお、実施例7は参考例である。
【0082】
実施例1~7及び比較例1~5
表1に示す各成分(A~D)を混合し、約150℃で約1時間かけて攪拌機を用いて溶融混練することにより実施例1~7及び比較例1~5の各ホットメルト接着剤を調製した。
【0083】
成分A~Dの詳細を下記に示す。
(A1-1)スチレン-ブタジエンブロックコポリマー
旭化成社製「アサプレンT-438(商品名)」(スチレン含有量35質量%、ジブロック比率70質量%、Mw:トリブロック共重合体120,000,ジブロック共重合体56,000)
(A1-2)スチレン-ブタジエンブロックコポリマー
旭化成社製「アサプレンT-439(商品名)」(スチレン含有量45質量%、ジブロック比率60質量%、Mw:トリブロック共重合体85,000,ジブロック共重合体44,000)
(A1-3)スチレン-ブタジエンブロックコポリマー
旭化成社製「アサプレンT-413(商品名)」(スチレン含有量30質量%、ジブロック比率80質量%、Mw:トリブロック共重合体300,000、ジブロック共重合体70,000)
(A2-1)スチレン-イソプレンブロックコポリマー
日本ゼオン社製「クインタック3520(商品名)」(スチレン含有量15質量%、ジブロック比率78質量%、Mw:トリブロック共重合体350,000、ジブロック共重合体150,000)
(A2-2)スチレン-イソプレンブロックコポリマー
日本ゼオン社製「クインタックSL-186(商品名)」(スチレン含有量24質量%、ジブロック比率65質量%、Mw:トリブロック共重合体160,000,ジブロック共重合体100,000)
(A3)スチレン-エチレン-ブチレンブロックコポリマー
Kraton社製「G1726(商品名)」(スチレン含有量30質量%、ジブロック比率70質量%、Mw:トリブロック共重合体59,000,ジブロック共重合体31,000)
(A4)スチレン-ブチレン-ブタジエンブロックコポリマー
旭化成社製「タフテックP1500(商品名)」(スチレン含有量30質量%、ジブロック比率70質量%、Mw:トリブロック共重合体100,000,ジブロック共重合体50,000)
(B1)粘着付与樹脂
東燃社製水添石油樹脂「HB-103(商品名)」(環球式軟化点100℃)
(B2)粘着付与樹脂
東燃社製水添石油樹脂「HA-103(商品名)」(環球式軟化点100℃)
(C1)可塑剤
日本油脂社製ポリブテン「ポリブテン10N(商品名)」
(C2)可塑剤
出光興産社製パラフィンオイル「PS-90(商品名)」
(C3)可塑剤
PetroChina社製ナフテンオイル「KN-4010(商品名)」
(D1)エチレン-酢酸ビニル共重合体
Honeywell社製EVAワックス「ACP-400(商品名)、酢酸ビニル含量13%」
(D2)エチレン-酢酸ビニル共重合体
東ソー社製EVA「ウルトラセンU685(商品名)、酢酸ビニル含量14%」
(D3)比較品
住友化学社製LDPE「スミカセンCE3506(商品名)」
(D4)比較品
日本精蝋社製FTワックス「FT105(商品名)」
【0084】
試験例1
実施例及び比較例で得られた各ホットメルト接着剤について、塗工前の熱安定性、初期、1,2,4週間保管後の接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)、及び初期の接着剤における糊残りの有無について調べた。以下に各評価方法及び評価基準を示す。
【0085】
〔塗工前の熱安定性〕
ガラス瓶に各ホットメルト接着剤20gを入れ、180℃環境下に96時間放置後、目視観察によりホットメルト接着剤表面に炭化物の析出が認められるか否かを調べた。
○:炭化物の析出は認められない
×:炭化物の析出が認められる
【0086】
〔初期、1,2,4週間保管後の接着剤のせん断強度試験〕
試験用の測定用サンプル(初期、1,2,4週間保管後)は、各ホットメルト接着剤を離型PETフィルム上に厚み25μmとなるように塗工し、これを通気ポリエチレンフィルム上に転写し、50℃環境下にて1,2,4週間保管した後、通気ポリエチレンフィルムの裏面にポリプロピレンフィルムを貼り付けて補強することにより作製した。
【0087】
せん断強度試験は、上記測定用サンプルを35mm幅(接着面積35mm×10mm)に裁断し、JIS L 0803に準拠するJIS染色堅ろう試験用綿布(カナキン3号:模擬被着衣類)に2kgのローラーを一往復させて貼り合わせ、23℃環境下、300mm/分の速度でせん断強度の実測値を測定した。○以上が合格である。
◎:10N以上
○:5N以上10N未満
△:3N以上5N未満
×:3N未満
【0088】
〔初期、1,2,4週間保管後の接着剤のプローブタック試験〕
23℃環境下、ニチバン製プローブタックテスターにより測定した。上記各保管期間の測定用サンプルの接着剤に20gの荷重で直径5mmの円柱状SUS棒を接触時間1秒で押し当てた後、移動速度1cm/秒で引き上げた際の強度を測定した。○以上が合格である。
◎:1000g以上
○:500g以上1000g未満
△:300g以上500g未満
×:300g未満
【0089】
〔糊残りの有無〕
上記初期サンプルを35mm幅(接着面積35mm×10mm)に裁断し、接着剤部分にJIS L 0803に準拠するJIS染色堅ろう試験用綿布(カナキン3号:模擬被着衣類)を載せ、60mm×100mm×2mm厚のアクリル板を被せてその上に2.1kgの荷重を2時間かけた後、23℃環境下、300mm/分の速度で剥離した場合にカナキンの貼り合わせ面に目視観察により糊残りがあるか否かを調べた。
○:糊残りは認められない
△:糊残りが一部認められる(実用上問題なく許容範囲のレベル)
×:糊残りがかなり認められる
【0090】
各試験結果及び評価結果を表1及び表2に併せて示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1の結果から明らかな通り、実施例1~7の本発明のホットメルト接着剤は、塗工前の熱安定性に優れており、且つ吸収性物品の製品化から使用迄の期間が長い場合でも接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)の低下が抑制されており、使用中に吸収性物品が衣類に貼着した位置からずれることなく、更に使用後に衣類から剥がす際に衣類への糊残りがないことが分かる。これに対して、比較例1~5のホットメルト接着剤は、吸収性物品の製品化から使用迄の期間が長い場合には接着剤の保持力(接着強度及び粘着性)の低下が認められる。