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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】被覆銅ナノ粒子含有組成物、及び物品
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/102 20220101AFI20230315BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230315BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20230315BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20230315BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230315BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B22F1/102
B22F1/00 L
B22F1/054
H01B1/00 E
H01B1/00 K
H01B1/22 A
H01B5/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019154351
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021031738
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】成清 善孝
(72)【発明者】
【氏名】北村 晃良
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227476(JP,A)
【文献】特開2010-283105(JP,A)
【文献】特開2017-095780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/102
B22F 1/00
H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆銅ナノ粒子と、銅粉と、溶媒とを含有し、
前記被覆銅ナノ粒子が、
銅ナノ粒子表面に被覆層を有する被覆銅ナノ粒子であって、
前記被覆層が、下記(A1)、(A2)及び(A3)より選択される1種以上を含み、
前記被覆銅ナノ粒子の少なくとも一部が、前記銅粉の少なくとも一部に固着している、被覆銅ナノ粒子含有組成物。
(A1)脂肪酸アルカノールアミド
(A2)脂肪酸アミノアルキルエステル
(A3)脂肪酸とアミノアルコール
【請求項2】
前記脂肪酸アルカノールアミドが下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の被覆銅ナノ粒子含有組成物。
【化1】
式(1)中、Rは炭素数5~17の炭化水素基であり、Rは炭素数1~6の炭化水素基である。
【請求項3】
前記脂肪酸アミノアルキルエステルが下記式(2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の被覆銅ナノ粒子含有組成物。
【化2】
式(2)中、Rは炭素数5~17の炭化水素基であり、Rは炭素数1~6の炭化水素基である。
【請求項4】
前記被覆層中の脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミノアルキルエステル、脂肪酸、及び、アミノアルコールのうち、少なくとも一部が銅ナノ粒子表面に吸着している、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の被覆銅ナノ粒子含有組成物。
【請求項5】
前記被覆層が、前記(A1)、前記(A2)又は前記(A3)のいずれかが配位した酸化銅(CuO)を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の被覆銅ナノ粒子含有組成物。
【請求項6】
前記酸化銅が、前記銅ナノ粒子表面に吸着している、請求項5に記載の被覆銅ナノ粒子含有組成物。
【請求項7】
前記銅ナノ粒子の平均一次粒子径が0.02~0.5μmである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の被覆銅ナノ粒子含有組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の被覆銅ナノ粒子含有組成物の焼結体を有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆銅ナノ粒子、被覆銅ナノ粒子含有組成物、及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子を含有する組成物を、インクジェットなど各種の印刷法により、配線パターン状に直接印刷することで、光露光によるパターニングを必要としない、プリンタブルエレクトロニクスが注目されている。また、金属粒子を含有する組成物を被接合部材間に配置して焼結することにより、被接合部材を接合する手法が知られている。
数十nm以下の金属ナノ粒子は、粒子径が小さくなるにつれて、バルクの金属とは異なる種々の物理的、化学的特性を示すことが知られている。例えば、金属粒子の融点は、粒子径が小さくなると、バルクの金属の融点よりも低くなることが知られている。そのため、焼結時の温度を低温化する点から、粒子径の小さい金属ナノ粒子を用いることが検討されている。
【0003】
本発明者らは特許文献1において、銅粒子と、当該銅粒子の表面に1nm当り2.5~5.2分子の密度で配置される脂肪酸を含む被覆層と、を含む被覆銅粒子を開示している。当該特許文献1の被覆銅粒子は、優れた耐酸化性と焼結性を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-69716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より多様な材質の基材等に適用するため、より低温で焼結可能な金属ナノ粒子が求められている。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するものであり、低温焼結でも接合強度や導電性に優れる焼結体が得られる、被覆銅ナノ粒子及び被覆銅ナノ粒子含有組成物、並びに、接合強度や導電性に優れた焼結体を備える物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る被覆銅ナノ粒子は、銅ナノ粒子表面に被覆層を有する被覆銅ナノ粒子であって、
前記被覆層が、下記(A1)、(A2)及び(A3)より選択される1種以上を含む。
(A1)脂肪酸アルカノールアミド
(A2)脂肪酸アミノアルキルエステル
(A3)脂肪酸とアミノアルコール
【0008】
上記被覆銅ナノ粒子の一実施形態は、前記脂肪酸アルカノールアミドが下記式(1)で表される化合物である。
【0009】
【化1】
式(1)中、Rは炭素数5~17の炭化水素基であり、Rは炭素数1~6の炭化水素基である。
【0010】
上記被覆銅ナノ粒子の一実施形態は、前記脂肪酸アミノアルキルエステルが下記式(2)で表される化合物である。
【0011】
【化2】
式(2)中、Rは炭素数5~17の炭化水素基であり、Rは炭素数1~6の炭化水素基である。
【0012】
上記被覆銅ナノ粒子の一実施形態は、前記被覆層中の脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミノアルキルエステル、脂肪酸、及び、アミノアルコールのうち、少なくとも一部が銅ナノ粒子表面に吸着している。
【0013】
上記被覆銅ナノ粒子の一実施形態は、前記被覆層が、前記(A1)、前記(A2)又は前記(A3)のいずれかが配位した酸化銅(CuO)を有する。
【0014】
上記被覆銅ナノ粒子の一実施形態は、前記酸化銅が、前記銅ナノ粒子表面に吸着している。
【0015】
上記被覆銅ナノ粒子の一実施形態は、平均一次粒子径が0.02~0.5μmである。
【0016】
本発明に係る被覆銅ナノ粒子含有組成物は、前記本発明に係る被覆銅ナノ粒子と、溶媒とを含有する。
【0017】
本発明に係る被覆銅ナノ粒子含有組成物の一実施形態は、更に銅粉を含む。
【0018】
本発明に係る被覆銅ナノ粒子含有組成物の一実施形態は、前記被覆銅ナノ粒子の少なくとも一部が、前記銅粉の少なくとも一部に固着している。
【0019】
本発明に係る物品は、前記本発明に係る被覆銅ナノ粒子、又は、前記本発明に係る被覆銅ナノ粒子含有組成物の焼結体を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低温焼結でも接合強度や導電性に優れる焼結体が得られる、被覆銅ナノ粒子及び被覆銅ナノ粒子含有組成物、並びに、接合強度や導電性に優れた焼結体を備える物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る物品の一例を示す概略的な断面図である。
図2】本発明に係る物品の別の一例を示す概略的な断面図である。
図3】実施例1の被覆銅ナノ粒子のTof-SIMS測定結果を示すMSスペクトルである。
図4】実施例3の被覆銅ナノ粒子のTof-SIMS測定結果を示すMSスペクトルである。
図5】比較例1の被覆銅ナノ粒子のTof-SIMS測定結果を示すMSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る被覆銅ナノ粒子、被覆銅ナノ粒子含有組成物、及び物品について順に説明する。
【0023】
[被覆銅ナノ粒子]
本発明に係る被覆銅ナノ粒子(以下、本被覆銅ナノ粒子ともいう)は、銅ナノ粒子表面に被覆層を有する被覆銅ナノ粒子であって、
前記被覆層が、下記(A1)、(A2)及び(A3)より選択される1種以上を含む。
(A1)脂肪酸アルカノールアミド
(A2)脂肪酸アミノアルキルエステル
(A3)脂肪酸とアミノアルコール
【0024】
上記本被覆銅ナノ粒子は、上記(A1)、(A2)又は(A3)に示す化合物(以下、各々、被覆材(A1)、被覆材(A2)、被覆材(A3)ということがある)が被覆することで銅ナノ粒子間の凝集が抑制され、溶媒中での分散性に優れている。被覆材(A1)~(A3)は、銅ナノ粒子表面の銅又は酸化銅(CuO)に配位して化学吸着しているものと推定される。当該被覆銅ナノ粒子を加熱すると、被覆材(A1)~(A3)は、比較的低温で、銅ナノ粒子表面から解離し、又は分解するものと推定される。その結果、低温焼結でも接合強度や導電性に優れる焼結体が得られるものと推定される。
以下、被覆銅ナノ粒子の各構成について説明する。
【0025】
<銅ナノ粒子>
銅ナノ粒子は、本被覆銅ナノ粒子の核となる粒子であり、低温焼結性を有する。銅ナノ粒子の平均一次粒子径は、焼結温度等の観点から適宜選択すればよい。具体的には、低温焼結性の点から、銅ナノ粒子の平均一次粒子径は0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましい。また、銅ナノ粒子の平均一次粒子径は、通常1nm以上であり、体積収縮を抑制する点から、5nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。銅ナノ粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された任意の20個の粒子の一次粒子径の算術平均値である。粒子形状は、真球を含む略球状、板状、棒状などの形状が挙げられ、中でも略球状が好ましい。なお、後述する被覆銅ナノ粒子の製造方法によれば、おおよそ球状に近似可能な略球状の銅ナノ粒子が得られる。
【0026】
銅ナノ粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化銅を含んでいてもよく、また、他の金属等を含んでいてもよい。銅ナノ粒子中の酸素の割合は、得られる焼結体の導電性などの点から、銅ナノ粒子中、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。また、銅ナノ粒子中の銅の純度は、銅ナノ粒子中、95質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更により好ましい。
【0027】
<被覆層>
本被覆銅ナノ粒子は、前記銅ナノ粒子表面に被覆層を備える。当該被覆層は被覆材として、少なくとも被覆材(A1)~(A3)より選択される1種以上を含み、更に他の被覆材を含んでいてもよいものである。本被覆銅ナノ粒子は被覆材(A1)~(A3)を有する被覆層を備えるため、低温焼結でも接合強度や導電性に優れる焼結体が得られる。
【0028】
(被覆材(A1))
脂肪酸アルカノールアミドは、アミド結合(-C(=O)-NH-)と、水酸基とを有する化合物である。脂肪酸アルカノールアミドは主に水酸基が前記銅ナノ粒子表面に化学吸着しているものと推定される。
上記脂肪酸アルカノールアミドは、例えば、脂肪酸のカルボキシ基と、アミノアルコールのアミノ基とがアミド結合した構造をもつ化合物が挙げられる。被覆銅ナノ粒子の分散性や低温焼結性の点から、脂肪酸アルカノールアミドは、中でも下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化3】
式(1)中、Rは炭素数5~17の炭化水素基であり、Rは炭素数1~6の炭化水素基である。
【0030】
は炭素数が5~17の1価の炭化水素基であり、不飽和結合を有していてもよい。炭素数が5以上であることにより本被覆銅ナノ粒子の耐酸化性及び分散性に優れている。また、炭素数が17以下であることにより、本被覆銅ナノ粒子の低温焼結性に優れている。Rの炭素数は、中でも6~16が好ましい。また、Rの炭化水素基は、分散性の点から、直鎖の炭化水素基が好ましい。
の具体例としては、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、9-ヘキサデセニル基などが挙げられる。
【0031】
は炭素数が1~6の2価の炭化水素基である。炭素数が1~6であることにより低温焼結性に優れている。Rの炭化水素基は、分散性の点から、直鎖の炭化水素基が好ましい。
の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基などが挙げられる。
【0032】
脂肪酸アルカノールアミドの具体例としては、カプロン酸エタノールアミド、カプリル酸プロパノールアミド、ラウリン酸エタノールアミド、トリデシル酸プロパノールアミド、パルミチン酸プロパノールアミドなどが挙げられる。
脂肪酸アルカノールアミドは市販品を用いてもよく、また、例えば脂肪酸のカルボキシ基とアミノアルコールのアミノ基とを反応させて合成してもよい。
【0033】
(被覆材(A2))
脂肪酸アミノアルキルエステルは、エステル結合(-C(=O)-O-)と、アミノ基とを有する化合物である。脂肪酸アミノアルキルエステルは、主にアミノ基が前記銅ナノ粒子表面に化学吸着しているものと推定される。
上記脂肪酸アミノアルキルエステルは、例えば、脂肪酸のカルボキシ基と、アミノアルコールの水酸基がエステル結合した構造をもつ化合物が挙げられる。被覆銅ナノ粒子の分散性や低温焼結性の点から、脂肪酸アミノアルキルエステルは、中でも下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化4】
式(2)中、Rは炭素数5~17の炭化水素基であり、Rは炭素数1~6の炭化水素基である。
【0035】
の炭素数5~17の炭化水素基は、前記Rと同様のものが挙げられる。
また、Rの炭素数1~6の炭化水素基は、前記Rと同様のものが挙げられる。
【0036】
脂肪酸アミノアルキルエステルの具体例としては、カプロン酸アミノエチルエステル、カプリル酸アミノプロピルエステル、ラウリン酸アミノエチルエステル、ラウリン酸アミノプロピルエステル、パルミチン酸アミノプロピルエステルなどが挙げられる。
脂肪酸アミノアルキルエステルは市販品を用いてもよく、また、例えば脂肪酸のカルボキシ基とアミノアルコールの水酸基とを反応させて合成してもよい。
【0037】
(被覆材(A3))
また、本被覆銅ナノ粒子は、被覆材として、脂肪酸とアミノアルコールを組み合わせて用いてもよい。脂肪酸はカルボキシ基が、アミノアルコールは水酸基又はアミノ基が前記銅ナノ粒子表面に化学吸着しているものと推定される。特に本被覆銅ナノ粒子においては、粒子表面に存在する1つの酸化銅に、脂肪酸とアミノアルコールとが配位した構造を有している。
【0038】
脂肪酸としては、耐酸化性、分散性、及び低温焼結性の点からカルボキシ基の炭素を除く炭素数が5~17の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。このような脂肪酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸などが挙げられる。
【0039】
また、アミノアルコールは、耐酸化性、分散性、及び低温焼結性の点から、炭素数が1~6の炭化水素基を有するものが好ましく、中でも直鎖の炭化水素基が好ましい。アミノアルコールの具体例としては、1-アミノ-2-プロパノール、1-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられ、中でも、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノールが好ましい。
【0040】
被覆材(A1)~(A3)は1種単独で用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。また、本被覆銅ナノ粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、被覆材(A1)~(A3)とは異なる他の被覆材を有していてもよい。被覆層中の被覆材(A1)~(A3)の合計の割合は、被覆層を構成する有機物に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
本被覆銅ナノ粒子の被覆層を構成する有機物は、飛行時間型二次イオン質量分析法(Tof-SIMS)により同定できる。
【0041】
本被覆銅ナノ粒子を構成する被覆層の割合は、耐酸化性、分散性、及び低温焼結性の点から、被覆銅ナノ粒子全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5.0質量%がより好ましい。なお、被覆銅ナノ粒子の被覆層の割合は、熱重量示差熱分析(TG-DTA)により有機成分を測定することで算出できる。
【0042】
本発明の被覆銅ナノ粒子は、例えば、200~400℃、好ましくは250~325℃で加熱することで、接合強度や導電性に優れる焼結体が得られる。
このため、本発明の被覆銅ナノ粒子は、回路パターンなどの導電性が求められる用途や、2つの部材を接合する接合用途などに好適に用いることができる。
また、本被覆銅ナノ粒子は、ニッケルメッキ基板に対する接合性も良好である。
【0043】
<被覆銅ナノ粒子の製造方法>
以下、本被覆銅ナノ粒子の製造方法について2例を挙げて説明する。なお本被覆銅ナノ粒子の製造方法は下記の2例に限られるものではない。
【0044】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は概説すると、溶媒中で、銅カルボン酸塩を錯化剤により錯体化し、ここに被覆材(A1)~(A3)などを添加し、前記錯体を熱分解することにより、銅ナノ粒子を形成するとともに銅ナノ粒子表面に前記被覆材を含む被覆層を形成して、被覆銅ナノ粒子を製造する方法である。
【0045】
上記第1の製造方法において、銅カルボン酸塩としては、例えば、ギ酸銅、シュウ酸銅、クエン酸銅などを用いることができる。また銅カルボン酸塩の代わりに炭酸銅を用いてもよい。中でもギ酸銅が好ましい。
溶媒としては、錯体の熱分解温度よりも沸点の高い高沸点溶媒が好ましく、例えば、エチルシクロへキサン、n-オクタン、グリコール系溶媒、石油系炭化水素(例えば、丸善石油製、商品名:スワクリーン#150)などが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
錯化剤としては、得られる錯体の熱分解温度を低くできる点からアミノアルコールが好ましい。当該アミノアルコールとしては、前記被覆材(A3)におけるものと同様のものを用いることができる。
【0046】
具体的な手順としては、例えば、少なくとも銅カルボン酸塩を含む溶媒に錯化剤を添加して、必要に応じて加熱することで、銅錯体を形成する。次いで、被覆材(A1)~(A3)などを含む溶液を添加して、銅錯体の熱分解温度以上に加熱すること等が挙げられる。錯体を熱分解温度以上に加熱することで、還元された金属銅が生成して成長し銅ナノ粒子が形成される。このとき銅ナノ粒子表面には被覆材(A1)~(A3)が吸着して被覆層が形成された被覆銅ナノ粒子が得られる。得られた被覆銅ナノ粒子は必要に応じて、溶媒等の除去、洗浄等を行って精製してもよい。
【0047】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は概説すると、脂肪酸とアミノアルコールを含む溶媒中で、銅カルボン酸塩を錯化剤により錯体化し、加熱することにより、脂肪酸アルカノールアミドを生成させながら、前記錯体を熱分解することにより、銅ナノ粒子を形成するとともに銅ナノ粒子表面に脂肪酸アルカノールアミドを含む被覆層を形成して、被覆銅ナノ粒子を製造する方法である。第2の製造方法によれば、少なくとも被覆材(A1)を含み、被覆材(A3)を含み得る被覆層が形成される。
なお、第2の製造方法に用いられる材料は、前記第1の製造方法や、前記本被覆銅粒子の構成において説明したものと同様である。
【0048】
具体的な手順としては、例えば、脂肪酸と、アミノアルコールと、銅錯体とを含む溶媒を、まず比較的低温で加熱して、脂肪酸アルカノールアミドを生成し、次いで銅錯体の熱分解温度以上に加熱することなどが挙げられる。
【0049】
上記第1及び第2の製造方法において、得られた被覆銅ナノ粒子は、必要に応じて、溶媒等の除去、洗浄等を行って精製してもよい。
上記第1及び第2の製造方法において、生成する被覆銅ナノ粒子の粒度分布を制御する因子としては、例えば、被覆材の種類や添加量、銅カルボン酸塩の濃度及び溶媒の比率等で決定される。被覆銅ナノ粒子の大きさを制御する因子は、金属核発生数を支配する昇温速度、すなわち反応系への投入熱量とミクロ反応場の大きさと関係する攪拌速度を適切に保つことで揃えることができる。
【0050】
[被覆銅ナノ粒子含有組成物]
本発明に係る被覆銅ナノ粒子含有組成物(以下、本被覆銅ナノ粒子含有組成物ともいう)は、前記本被覆銅ナノ粒子と、溶媒とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。本発明の被覆銅ナノ粒子含有組成物は、前記本被覆銅ナノ粒子含有組成物を含有することにより、低温焼結でも接合強度や導電性に優れる焼結体が得られる。
以下、被覆銅ナノ粒子含有組成物に含まれ得る各成分について説明するが、被覆銅ナノ粒子については前述の通りであるため、ここでの説明は省略する。
【0051】
<溶媒>
溶媒は、前記被覆銅ナノ粒子を分散可能な溶媒の中から、塗膜形成方法(印刷方法)などに応じて適宜選択できる。溶媒は1種単独であっても2種以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。溶媒としては、中でも、脂肪族アミン系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、脂肪族アミノアルコール系溶媒、テルピンアセテート系溶媒、脂肪族アルカン系溶媒、カルビトール系溶媒や、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(KHネオケム株式会社製、キョーワノールM)などが挙げられる。
【0052】
脂肪族アミン系溶媒としては、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。
脂肪族アミノアルコール系溶媒としては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、オクタノールアミン、デカノールアミン、ドデカノールアミン、オレイルアルコールアミン等が挙げられる。
脂肪族アルコール系溶媒としては、例えば、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
テルピンアセテート系溶媒としては、例えば、1,8-テルピン-1-アセテート、1,8-テルピン-8-アセテート、1,8-テルピン-1,8-ジアセテート等が挙げられる。
脂肪族アルカン系溶媒としては、例えば、オクタン、デカン、ドデカン、流動パラフィン等が挙げられる。
また、カルビトール系溶媒としては、例えば、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール、デシルカルビトール等が挙げられる。
【0053】
<他の成分>
本発明の被覆銅ナノ粒子含有組成物は、必要に応じて更に他の成分を含有してもよい、他の成分としては、金属粉、分散剤、バインダー樹脂、増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤等の各種添加剤などが挙げられる。
【0054】
金属粉は、加熱後に前記本銅ナノ粒子とともに焼結体を形成する。当該金属粉は低温焼結性を有していなくてもよい。金属粉の材質は、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、クロム、スズ、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウム、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、コバルト、パラジウム、ロジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ヒ素、ホウ素、ケイ素、及び、これらの合金などが挙げられる。中でも、導電性などの点から、銅粉を用いることが好ましい。
【0055】
金属粉の平均粒径は、0.3以上10μm以下が好ましく、0.4以上5μm以下がより好ましく、0.5以上1.0μm以下が更にこのましい。平均粒径が10μm以下の金属粉を用いることで、塗膜内で金属粉が密に充填され、得られる接合層のボイドが抑制される。また、粒径の異なる複数種の金属粉を組み合わせてもよい。粒径の異なる金属粉を用いることにより。大きな粒径の金属粉の間に粒径の小さな金属粉が入り込み、塗膜中の充填密度が向上する。
【0056】
金属粉を用いる場合、その含有割合は、組成物中の前記本被覆銅ナノ粒子全量に対し、10~200質量%が好ましく、20~150質量%がより好ましい。
【0057】
更に、被覆銅ナノ粒子含有組成物中で、前記被覆銅ナノ粒子の少なくとも一部が、前記銅粉の少なくとも一部に固着していることが好ましい。このような形態とすることで、組成物中で銅粉と被覆銅ナノ粒子とが一様に分布しやすく、得られる焼結体は、電気伝導性に優れ、接合強度が高くなる。
【0058】
本被覆銅ナノ粒子含有組成物は、本被覆銅ナノ粒子や、前記金属粉の分散性を向上するために分散剤を含有してもよい。分散剤は、ポリエステル系分散剤、ポリアクリル酸系分散剤等、公知の分散剤が挙げられる。導電性や接合強度の点から、分散剤の割合は、組成物中の固形分全量に対し、0.5質量%以下が好ましく、全量の0.3質量%以下がより好ましい。なお本発明において固形分とは、被覆銅ナノ粒子含有組成物を構成する溶媒以外の成分をいう。
【0059】
本被覆銅ナノ粒子含有組成物は、バインダー樹脂を含有してもよい。バインダー樹脂は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等公知のものの中から適宜選択できる。導電性や接合強度の点から、バインダー樹脂の割合は、組成物中の固形分全量に対し、0.5質量%以下が好ましく、全量の0.3質量%以下がより好ましい。
【0060】
本被覆銅ナノ粒子含有組成物は、例えば、本被覆銅ナノ粒子と、金属粉など必要に応じて用いられる各成分とを、溶媒に添加することで得られる。
また、少なくとも本被覆銅ナノ粒子と銅紛と溶媒を含む混合物に、機械的エネルギーを連続的に付与することで、本被覆銅ナノ粒子を銅紛に固着することができる。機械的エネルギーとしては、衝突(衝撃)、圧縮、摩擦ないしは摩砕、その他、剪断力やずり応力が生じ得るエネルギーが挙げられる。具体的には、公知の粉砕機を用いて衝突によるエネルギーを付与することが好ましい。
【0061】
本被覆銅ナノ粒子含有組成物は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布など、種々の印刷手段や塗布手段に好適に用いることができる。そのため、例えば、本被覆銅ナノ粒子含有組成物を印刷して焼結することにより、パターン上の導電回路を形成したり、2つの部材間に本被覆銅ナノ粒子含有組成物の塗膜を配置して、焼結することにより当該2つの部材を接合するなどの用途に好適に用いることができる。
【0062】
[物品]
本発明に係る物品(以下、本物品ともいう)は、前記本被覆銅ナノ粒子、又は、前記本被覆銅ナノ粒子含有組成物の焼結体を有することを特徴とする。本物品は前記本被覆銅ナノ粒子の焼結体を有するため、接合強度や導電性に優れている。以下本物品について具体例を挙げて説明する。
【0063】
図1は、本発明に係る物品の一例を示す概略的な断面図である。図1は、基材2上に所定のパターン状に形成された焼結体1を有する導電回路10の例を示し、当該焼結体1が回路パターンを形成している。
パターン状の焼結体は、例えば、基材上に、本被覆銅ナノ粒子含有組成物を、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンス法等、公知の印刷方法により、所望のパターン状に印刷し、必要に応じて溶媒を除去した後、加熱により被覆銅ナノ粒子を焼結することにより得ることができる。焼結体の厚みは特に限定されないが、回路に求められる導電性などに応じて、例えば、1~100μm程度となるように調整する。
【0064】
基材の材質は、用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリイミド等の樹脂;ガラス;シリカ、アルミナ等のセラミックス;ステンレス、銅、チタン等の金属;シリコン等の半導体などが挙げられる。基材の形状は、特に限定されず、フィルム状や板状のものに限られるものではない。板状の基材を用いる場合はその厚みは特に限定されないが、例えば、0.01~5mmとすることができる。また、基材として剥離性基材を用いてもよい。この場合、得られた導電体を剥離性基材から剥がして使用することができる。
【0065】
図1は、本発明に係る物品の別の一例を示す概略的な断面図である。図2は、基材2上に焼結体1を介して、部材3が設けられた接合体20の例を示し、基材2と部材3は焼結体1により接合している。
接合体の製造方法は、例えば、公知の印刷方法により、基材の接合面に本被覆銅ナノ粒子含有組成物を塗布し、当該銅ナノ粒子含有組成物の塗膜上に接合する部材を配置した後、必要に応じて加圧しながら焼結する方法などが挙げられる。
【0066】
基材2及び部材3は焼結温度に耐えうる材質であれば特に限定されず、物品の用途に応じて適宜選択できる。
【実施例
【0067】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0068】
[実施例1:被覆銅ナノ粒子の製造]
無水ギ酸銅1800質量部、ラウリン酸60質量部、プロピレングリコール360質量部、スワクリーン#150(丸善石油製、溶媒)1800質量部を混合した、次いで、当該混合液に3-アミノプロパノール2700質量部を添加した。
次いで、ラウリン酸60質量部、プロピレングリコール120質量部、スワクリーン#150 120質量部の混合液を加え、減圧化105℃以下で2時間加熱した。その後、窒素雰囲気下112℃以下で更に21時間加熱した。得られた反応液を濃縮後、メタノールで洗浄し、乾燥し、解砕して、実施例1の被覆銅ナノ粒子を得た。実施例1の被覆銅ナノ粒子の平均粒子径は82.7nmであり、被覆層の割合は、1.6質量%であった。また、実施例1の被覆銅ナノ粒子を、Tof-SIMSを用いて下記の条件で測定した。得られたMSスペクトルを図3に示す。図3に示される通り、実施例1の被覆銅ナノ粒子から、酸化銅にラウリン酸プロパノールアミドが配位した構造を示すm/z=335のピークと、酸化銅にラウリン酸と3-アミノプロパノールが配位したものに相当するm/z=349のピークが検出された。従って実施例1の被覆銅ナノ粒子の被覆層は被覆材としてラウリン酸プロパノールアミドと、ラウリン酸と、3-アミノプロパノールを含んでいる。
【0069】
<Tof-SIMS(飛行時間型2次イオン質量分析装置)の測定条件>
測定器;ULVAC-PHI製 PHI TRIFT IV型
測定条件:1次イオン種 Au、加速電圧 30KV
【0070】
[実施例2:被覆銅ナノ粒子の製造]
無水ギ酸銅307質量部、ラウリン酸10質量部、プロピレングリコール50質量部、スワクリーン#150(丸善石油製、溶媒)300質量部を混合した、次いで、当該混合液に3-アミノプロパノール450質量部を添加した。
次いで、ラウリン酸10質量部、プロピレングリコール30質量部、ラウリン酸プロパノールアミド5.2質量部、スワクリーン#150 20質量部の混合液を加え、減圧化122℃以下で2時間加熱し、次いで、窒素雰囲気下122℃以下で更に24時間加熱した。得られた反応液を濃縮後、メタノールで洗浄し、乾燥し、解砕して、実施例2の被覆銅ナノ粒子を得た。実施例2の被覆銅ナノ粒子の平均粒子径は80.4nmであり、被覆層の割合は、2.25質量%であった。また、実施例2の被覆銅ナノ粒子をTof-SIMSで測定した結果、実施例1と同様、m/z=335のピークと、m/z=349のピークが検出された。従って実施例2の被覆銅ナノ粒子の被覆層は被覆材としてラウリン酸プロパノールアミドと、ラウリン酸と、3-アミノプロパノールを含んでいる。
【0071】
[実施例3:被覆銅ナノ粒子の製造]
実施例1において、2か所のラウリン酸60質量部を各々トリデシル酸64質量部に変更した以外は実施例1と同様にし、実施例3の被覆銅ナノ粒子を得た。実施例3の被覆銅ナノ粒子の平均粒子径は85.6nmであり、被覆層の割合は、2.1質量%であった。また、実施例3の被覆銅ナノ粒子を、Tof-SIMSを用いて下記の条件で測定した。得られたMSスペクトルを図4に示す。図4に示される通り、実施例3の被覆銅ナノ粒子から、酸化銅にトリデシル酸プロパノールアミドが配位した構造を示すm/z=350のピークと、酸化銅にトリデシル酸と3-アミノプロパノールが配位したものに相当するm/z=365のピークが検出された。従って実施例3の被覆銅ナノ粒子の被覆層は被覆材としてトリデシル酸プロパノールアミドと、トリデシル酸と、3-アミノプロパノールを含んでいる。
【0072】
[比較例1]
特許文献1の実施例3を参考に、ラウリン酸が被覆した比較例1の被覆銅ナノ粒子を得た。実施例3の被覆銅ナノ粒子を、Tof-SIMSを用いて下記の条件で測定した。得られたMSスペクトルを図5に示す。図5に示される通り、m/zが250~400の領域ではピークが検出されず、前記被覆材(A1)~(A3)に相当する被覆材は含んでいなかった。
【0073】
[実施例11:被覆銅ナノ粒子含有組成物の調製]
実施例1の被覆銅ナノ粒子40.59質量部、平均粒子径が約3μmの銅紛(三井金属社製、1200YP)35.31質量部、平均粒子径が0.4μmの銅紛(三井金属社製、1020Y)15質量部、分散剤(日油株式会社製、マリアリムSC-0505K)0.16質量部、樹脂バインダー(共栄社化学株式会社製、オリコックスKC-1100)0.11質量部、溶媒(KHネオケム株式会社製、キョーワノールM)10質量部を混合し、実施例11の被覆銅ナノ粒子含有組成物を得た。
【0074】
[実施例12~13:被覆銅ナノ粒子含有組成物の調製]
実施例11において、配合する材料および分量を表1のように変更した以外は、実施例11と同様にして、実施例12~13の被覆銅ナノ粒子含有組成物を得た。
【0075】
[実施例14:被覆銅ナノ粒子含有組成物の調製]
実施例3の被覆銅ナノ粒子10.59質量部、平均粒子径が約2μmの銅紛(三井金属社製、1200Y)35.31質量部を遊星型ボールミル(フリッチュ社製、PL-7)によって機械的エネルギーを連続的に付与しながら混合することで、本被覆銅ナノ粒子が表面に固着した銅紛MA1200YPを得た。得られたMA1200YP45.9質量部、実施例3の被覆銅ナノ粒子30質量部、平均粒子径が0.4μmの銅紛(三井金属社製、1020Y)15質量部、分散剤(日油株式会社製、マリアリムSC-0505K)0.16質量部、樹脂バインダー(共栄社化学株式会社製、オリコックスKC-1100)0.11質量部、溶媒(KHネオケム株式会社製、キョーワノールM)10質量部を混合し、実施例14の被覆銅ナノ粒子含有組成物を得た。
【0076】
[比較例11]
実施例11において、実施例1の被覆銅ナノ粒子の代わりに、比較例1の被覆銅ナノ粒子を用いた以外は、実施例11と同様にして比較例11の被覆銅ナノ粒子含有組成物を得た。
【0077】
[ダイシェア強度用素子接合体の作製例]
上記実施例11~13及び比較例11の被覆銅ナノ粒子含有組成物を、それぞれ開口部が9mm×6.5mm×厚みが0.15mmのメタルマスクを用いてTO-247型銅フレーム上に塗工し、次いで、窒素条件下、200℃で30分間塗膜を加熱乾燥した。加熱終了後、乾燥塗膜の上に素子を置き、真空条件下、塗膜の厚み方向に20MPaの圧力をかけながら、250℃10分間加熱焼結し、素子と銅フレームを接合し素子接合体を得た。
<ダイシェア強度評価>
前記方法により得られた素子接合体について、下記の測定条件によりダイシェアテストを行い、接合強度を評価した。結果を表1及び表2に示す。
(測定条件)
測定装置:ボンドテスター Conder Sigma(XYZTEC社製)
測定条件:シェア高さ10μm、シェア移動速度25μm/s
【0078】
[比抵抗測定用焼結体の作製例]
上記実施例11~13及び比較例11の被覆銅ナノ粒子含有組成物を、それぞれ開口部が11.5mm四方×厚みが0.15mmのメタルマスクを用いて50mm四方のTi板上に塗工し、次いで、窒素条件下、200℃で30分間塗膜を加熱乾燥した。加熱終了後、乾燥塗膜を先ほど同じサイズのTi板で挟み込み、真空条件下、塗膜の厚み方向に20MPaの圧力をかけながら、250℃10分間加熱焼結し、Ti板上から塗膜を剥離し焼結体を得た。
[電気伝導性評価]
前記方法により得られた焼結体について、下記の測定条件により比抵抗測定を行った。結果を表1及び表2に示す。なお比較例11の被覆銅ナノ粒子含有組成物は、上記の条件では焼結が不十分であり、比抵抗測定を行うのに十分な強度が得られなかった。
(測定条件)
測定装置:共和理研製K-705RS
測定方法:四探針法
針間:1mm
針先R:150μR
針圧:200g
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
[結果のまとめ]
比較例11の被覆銅ナノ粒子含有組成物は、250℃10分間の加熱では十分な強度を有する焼結体を得ることができなかった。一方、本発明に係る被覆銅ナノ粒子を含む実施例1~14の被覆銅ナノ粒子含有組成物は、250℃10分間の加熱で優れた強度と導電性を有する焼結体が得られることが明らかとなった。また、本発明に係る被覆銅ナノ粒子が固着した銅粉を用いた実施例14の被覆銅ナノ粒子含有組成物の焼結体は、特にダイシェア強度に優れていることが明らかになった。
【符号の説明】
【0082】
1 焼結体
2 基材
3 部材
10 導電回路
20 接合体
図1
図2
図3
図4
図5