(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】電線皮剥工具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20230315BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20230315BHJP
B26B 27/00 20060101ALI20230315BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H02G1/12 026
H02G1/02
B26B27/00 G
B26D3/00 603Z
(21)【出願番号】P 2019172249
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000207311
【氏名又は名称】大東電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】柳原 正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】小畑 昇一
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147907(JP,A)
【文献】特開2011-223875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
H02G 1/02
B26B 27/00
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉機構と、
前記開閉機構に対して回転する回転機構と、
前記回転機構に取り付けられて共に回転する皮剥機構とを備える電線皮剥工具において、
前記回転機構は、前記開閉機構に近接して配置されるガイド部材と、開閉ロック機構とを有しており、
前記ガイド部材は、互いに近接離間自在に構成された第1ガイド部材および第2ガイド部材を有しており、
前記開閉ロック機構は、
前記第1ガイド部材に対して回動可能に取り付けられたロック本体と、
前記第2ガイド部材に取り付けられており、前記ロック本体と係脱可能なロック本体係合部材とを有しており、
前記開閉機構には、前記回転機構を前記開閉機構に対して回転させたとき、前記ロック本体を前記ロック本体係合部材に向けて回動するように押圧するロック本体押圧部材が設けられている
電線皮剥工具。
【請求項2】
開閉機構と、
前記開閉機構に対して回転する回転機構と、
前記回転機構に取り付けられて共に回転する皮剥機構とを備える電線皮剥工具において、
前記皮剥機構は、前記回転機構に取り付けられる際に使用される挿入孔挿通突部を有しており、
前記挿入孔挿通突部の先端部には、周溝が形成されており、
前記回転機構は、前記皮剥機構が取り付けられる皮剥機構取付部材を有しており、
前記皮剥機構取付部材は、皮剥機構取付部材本体と、皮剥機構固定部材とを有しており、
前記皮剥機構取付部材本体は、前記挿入孔挿通突部を受け入れる挿入孔を有しており、
前記皮剥機構固定部材は、前記皮剥機構取付部材本体に対して回動可能に取り付けられており、前記挿入孔に挿入された前記挿入孔挿通突部における前記周溝に係脱可能となっている
電線皮剥工具。
【請求項3】
前記回転機構は、前記皮剥機構固定部材を前記挿入孔挿通突部における前記周溝に係合する方向に回動するように付勢する回動付勢弾性部材をさらに有しており、
前記挿入孔挿通突部の先端は、テーパー状に面取りされている
請求項2に記載の電線皮剥工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の中間部における一定長の絶縁被覆を剥離除去するために用いられる電線皮剥工具に関する。
【背景技術】
【0002】
配電設備の工事を行うにあたり、部分的な停電を行うためにバイパス工事や接地工事が行われることがある。その際、バイパスや接地の経路を形成するために電線の中間部における絶縁被覆を剥ぎ取り、導体である芯線を露出させて、そこにバイパス器具や接地器具を接続する作業を活線状態のままで実施することが求められる。
【0003】
このような求めに応じるため、作業者が電線等に直接触れることなく、電線の中間部で絶縁被覆を螺旋状に切削して剥ぎ取ることのできる電線皮剥工具が開発されている(例えば、特許文献1から3)。そして、所定の工事が終了した後は、芯線が露出した箇所にプラスチック製の絶縁カバーを装着することで復旧が図られる。
【0004】
特許文献1から3に開示された電線皮剥工具は、ともに電線の中間部の絶縁被覆を螺旋状に剥ぐための切削刃を電線の長手方向に対して回転移動させることで絶縁被覆を剥ぎ取るようになっている。
【0005】
また、これら電線皮剥工具を工事の対象となる電線に着脱する際には、開口させた電線皮剥工具で電線を挟み込むようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公平6-2414号公報
【文献】特開平11-98639号公報
【文献】特開2013-192430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の電線皮剥工具では、当該電線皮剥工具で電線を挟み込んだとき、電線皮剥工具を完全に閉じきることができず、不完全に閉じた状態で絶縁被覆を剥ぎ取っていくことから、絶縁被覆の剥ぎ取り残しが生じる等の問題が発生するおそれがあった。
【0008】
この理由としては、電線皮剥工具を構成する各部材に設計上の公差があることから、電線皮剥工具自体にいわゆる「遊び」があり、電線皮剥工具の回転機構を完全に閉じきることができない点が考えられる。
【0009】
また、電線皮剥工具は、高所に配設された電線に対して作業者が手動操作して使用されるものであることから、切削刃を電線に対して回転させる回転力しかこの電線皮剥工具に加えることができず、回転機構を完全に閉じる力を直接的に当該回転機構に作用させることができていない点が考えられる。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の電線皮剥工具と同じく切削刃を電線に対して回転させる回転力を加えることにより、回転機構を完全に閉じることのできる電線皮剥工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面によれば、
開閉機構と、
前記開閉機構に対して回転する回転機構と、
前記回転機構に取り付けられて共に回転する皮剥機構とを備える電線皮剥工具において、
前記回転機構は、前記開閉機構に近接して配置されるガイド部材と、開閉ロック機構とを有しており、
前記ガイド部材は、互いに近接離間自在に構成された第1ガイド部材および第2ガイド部材を有しており、
前記開閉ロック機構は、
前記第1ガイド部材に対して回動可能に取り付けられたロック本体と、
前記第2ガイド部材に取り付けられており、前記ロック本体と係脱可能なロック本体係合部材とを有しており、
前記開閉機構には、前記回転機構を前記開閉機構に対して回転させたとき、前記ロック本体を前記ロック本体係合部材に向けて回動するように押圧するロック本体押圧部材が設けられている
電線皮剥工具が提供される。
【0012】
また、本発明の他の局面によれば、
開閉機構と、
前記開閉機構に対して回転する回転機構と、
前記回転機構に取り付けられて共に回転する皮剥機構とを備える電線皮剥工具において、
前記皮剥機構は、前記回転機構に取り付けられる際に使用される挿入孔挿通突部を有しており、
前記挿入孔挿通突部の先端部には、周溝が形成されており、
前記回転機構は、前記皮剥機構が取り付けられる皮剥機構取付部材を有しており、
前記皮剥機構取付部材は、皮剥機構取付部材本体と、皮剥機構固定部材とを有しており、
前記皮剥機構取付部材本体は、前記挿入孔挿通突部を受け入れる挿入孔を有しており、
前記皮剥機構固定部材は、前記皮剥機構取付部材本体に対して回動可能に取り付けられており、前記挿入孔に挿入された前記挿入孔挿通突部における前記周溝に係脱可能となっている
電線皮剥工具が提供される。
【0013】
好適には、
前記回転機構は、前記皮剥機構固定部材を前記挿入孔挿通突部における前記周溝に係合する方向に回動するように付勢する回動付勢弾性部材をさらに有しており、
前記挿入孔挿通突部の先端は、テーパー状に面取りされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転機構を構成する第1ガイド部材に取り付けられたロック本体が、開閉機構に設けられたロック本体押圧部材によって押圧されることにより、第2ガイド部材に取り付けられたロック本体係合部材に向けて回動するように押圧されるので、従来の電線皮剥工具と同じく切削刃を電線に対して回転させる回転力を加えることにより、回転機構を完全に閉じることのできる電線皮剥工具を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明が適用された電線皮剥工具100を示す斜視図である。
【
図2】本発明が適用された電線皮剥工具100を構成する皮剥機構300の背面側から見た斜視図である。
【
図4】正面側から見た回転機構200の分解斜視図である。
【
図5】背面側から見た回転機構200の分解斜視図である。
【
図6】皮剥機構300の正面側から見た斜視図である。
【
図7】皮剥機構300の別の正面側から見た斜視図である。
【
図8】自然状態における皮剥機構固定部材241を示す回転機構200の正面図である。
【
図9】皮剥機構固定部材241の他端部を押し込んだ状態を示す回転機構200の正面図である。
【
図10】閉じた状態における回転機構200の背面図である。
【
図11】開いた状態における回転機構200の背面図である。
【
図12】基準状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図13】基準状態から開方向に少し回転させた状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図14】基準状態から開方向にさらに回転させた状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図15】基準状態から閉方向に少し回転させた状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図16】基準状態から閉方向にさらに回転させた状態にある電線皮剥工具100を示す背面図である。なお、開閉ロック機構208等の動きを見やすくするため、図中手前にある保持部材118(点線)を透視した状態を示している。
【
図18】皮剥機構300の切削機構304における被覆屑保持部356についての他の実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(電線皮剥工具100の構成)
図1は、本発明が適用された実施形態に係る電線皮剥工具100を示す。本実施形態に係る電線皮剥工具100は、大略、開閉機構110と、回転機構200と、皮剥機構300とで構成されている。なお、
図1は、電線皮剥工具100から皮剥機構300が取り外された状態を示す斜視図であり、
図2は、皮剥機構300を示す斜視図である。
【0017】
なお、本明細書全体を通して、電線の内部にある通電部材を芯線Sといい、当該芯線Sの外側を覆う絶縁部材を絶縁被覆Hという。さらに、絶縁被覆Hによって覆われた芯線Sの全体を被覆電線Lあるいは単に電線Lという。
【0018】
開閉機構110は、作業者が操作棒を用いて操作することにより、電線Lを挟んで回転機構200および皮剥機構300を開閉するとともに、当該回転機構200および皮剥機構300を回転させて電線Lから絶縁被覆Hを剥離除去するための機構である。
【0019】
図3を用いてこの開閉機構110について説明する。本実施形態に係る開閉機構110は、大略、回転ベース部材112と、保持部材118と、開閉部材122とを備えている。
【0020】
回転ベース部材112は、ベース本体123と、傘歯車124と、操作棒接続部材125とを有している。作業者が操作棒を操作棒接続部材125に取り付けた後、当該操作棒を回して操作棒接続部材125に回転力を付与することにより、傘歯車124が回転するようになっている。
【0021】
保持部材118は、回転機構200を所定の位置で保持するための略「C」字状の部材であり、下端部が回転ベース部材112の側面に4つの保持部材固定ネジ133で固定されている(
図12等を参照)。また、保持部材118における略「C」字状の内縁から少し離れた位置には、同じく略「C」字状の段部126が形成されており、この段部126は回転機構200が回転する際のガイドとなっている。つまり、
図3において、段部126よりも外側は、段部126よりも内側の部分よりも厚く形成されている。さらに、段部126は、図中における略1時付近から12時付近にかけて「C」字の中心から急激に遠ざかっていくように形成されている。
【0022】
また、段部126よりも外側の表面における図中3時付近からは、ロック本体押圧部材128が突設されている。本実施形態ではロック本体押圧部材128としてピン状のものが使用されているが、ロック本体押圧部材128の形状はこれに限定されるものではなく、ブロック状のものやその他の形状のものを使用してもよい。
【0023】
また、保持部材118の図中11時付近(この部分は段部126よりも内側の厚さと同じ厚さに形成されている)には、開閉部材122が回動自在に取り付けられている。
【0024】
開閉部材122は、湾曲したレバー状に形成されており、その一端部が軸支部材130によって保持部材118に対して回動自在に取り付けられている。また、開閉部材122の他端部にはフック部132が形成されている。
【0025】
さらに、開閉部材122の一端からは、軸支部材130と平行に回動規制ピン134が保持部材118に向けて突設されている。保持部材118における、回動規制ピン134の先端に対応する位置には、回動規制ピン嵌挿孔136が形成されており、回動規制ピン134の先端部がこの回動規制ピン嵌挿孔136に挿設されている。回動規制ピン嵌挿孔136は、回動規制ピン134の先端部の断面よりも大きく形成されており、この回動規制ピン嵌挿孔136の内側で回動規制ピン134が動くことができる範囲において、開閉部材122の他端部(つまり、フック部132)が回動できるようになっている。
【0026】
なお、軸支部材130には開閉部材付勢部材138が被せられており、この開閉部材付勢部材138の一端は保持部材118に取り付けられており、他端は開閉部材122に取り付けられている。この開閉部材付勢部材138の弾性により、開閉部材122は、当該開閉部材122の他端部(フック部132)が開閉部材122の「C」字状部分の中心に向けて付勢されている。なお、本実施形態では、開閉部材付勢部材138としてねじりバネが使用されているが、開閉部材122を上述した方向に付勢できるものであれば、他の形態であってもよい。
【0027】
次に、
図4および
図5を用いて回転機構200について説明する。本実施形態に係る回転機構200は、大略、回転力受け部材202と、ガイド部材204と、皮剥機構取付部材206と、開閉ロック機構208とを備えている。
【0028】
回転力受け部材202は円形ドーナツ状の部材であり、一対の半円弧状部材である第1受け部材210と第2受け部材212とで構成されている。これら第1受け部材210および第2受け部材212を組み合わせることによって円形の回転力受け部材202が形成される。
【0029】
第1受け部材210および第2受け部材212の外周縁部には、回転ベース部材112に設けられた傘歯車124に噛み合う歯車214が形成されており、操作棒を回転させることによって傘歯車124が回転することにより、回転力受け部材202も回転するようになっている。
【0030】
また、第1受け部材210および第2受け部材212の表面には複数の第1貫通孔216が形成されている。
【0031】
ガイド部材204は、回転力受け部材202の背面側に取り付けられる、回転力受け部材202よりも小径の円形ドーナツ状の部材であり、一対の半円弧状部材である第1ガイド部材218と第2ガイド部材220とで構成されている。これら第1ガイド部材218および第2ガイド部材220を組み合わせることによって円形のガイド部材204が形成される。
【0032】
また、第1ガイド部材218および第2ガイド部材220の表面には、回転力受け部材202の表面に形成された第1貫通孔216に対応する位置に、複数の第2貫通孔222が形成されている。そして、複数の背面側ボルト224を第2貫通孔222および第1貫通孔216に挿通することにより、第1ガイド部材218が回転力受け部材202における第1受け部材210の背面側に取り付けられ、また、第2ガイド部材220が回転力受け部材202における第2受け部材212の背面側に取り付けられる。
【0033】
さらに、ガイド部材204の背面(より正確には、第1ガイド部材218の背面)には、上述した開閉機構110における保持部材118に形成された段部126に当接移動するカムフォロワ226が取り付けられている。
【0034】
皮剥機構取付部材206は、回転力受け部材202の正面側に取り付けられる、回転力受け部材202よりも小径の円筒状の部材であり、背面が回転力受け部材202に当接する側に配設される背面側取付部材230と、この背面側取付部材230の正面側に配設される正面側取付部材232とで構成されている。これら背面側取付部材230および正面側取付部材232で、皮剥機構取付部材本体233が構成されている。
【0035】
背面側取付部材230は、円形ドーナツ状の部材であり、一対の半円弧状部材である第1背面側部材234と第2背面側部材236とで構成されている。これら第1背面側部材234および第2背面側部材236を組み合わせることによって円形の背面側取付部材230が形成される。
【0036】
背面側取付部材230を構成する第1背面側部材234および第2背面側部材236の背面側には、背面側ボルト224の先端部に形成されたネジ部が螺合される複数のネジ穴242が形成されており、上述したように第1貫通孔216および第2貫通孔222に挿通されてきた背面側ボルト224の先端部をこのネジ穴242に螺合することにより、第1背面側部材234が回転力受け部材202における第1受け部材210の正面側に取り付けられ、また、第2背面側部材236が回転力受け部材202における第2受け部材212の正面側に取り付けられる。
【0037】
このように、複数の背面側ボルト224により、回転力受け部材202における第1受け部材210と、ガイド部材204における第1ガイド部材218と、皮剥機構取付部材206における第1背面側部材234とが互いに一体的に固定されている。同様に、複数の背面側ボルト224により、回転力受け部材202における第2受け部材212と、ガイド部材204における第2ガイド部材220と、皮剥機構取付部材206における第2背面側部材236とが互いに一体的に固定されている。
【0038】
また、第1背面側部材234における一方端部244はその背面側が削られて薄肉に形成されているとともにその正面側が第1背面側部材234における他の正面位置よりもさらに正面側に突出した位置に形成されている。逆に、第2背面側部材236における一方端部246はその正面側が削られて薄肉に形成されており、両一方端部244,246が互いに重ねられた状態になっている。そして、一方端部244における互いに重ねられた位置に第3貫通孔248が形成されており、さらに一方端部246における第3貫通孔248に対応する位置に第2ネジ穴250が形成されている。
【0039】
さらに、背面側取付部材230を構成する第1背面側部材234および第2背面側部材236の正面側には、正面側ボルト252の先端部に形成されたネジ部が螺合される複数の第3ネジ穴254が形成されている。
【0040】
正面側取付部材232は、背面側取付部材230と同径の円形ドーナツ状の部材であり、一対の半円弧状部材である第1正面側部材238と第2正面側部材240と皮剥機構固定部材241とで構成されている。これら第1正面側部材238および第2正面側部材240を組み合わせることによって円形の正面側取付部材232が形成される。
【0041】
正面側取付部材232を構成する第1正面側部材238および第2正面側部材240には、正面側ボルト252が挿通される複数の第4貫通孔256が形成されており、これら第4貫通孔256に挿通した正面側ボルト252の先端部に形成されたネジ部を、背面側取付部材230を構成する第1背面側部材234および第2背面側部材236の正面側に形成された第3ネジ穴254に螺合することにより、第1正面側部材238が背面側取付部材230における第1背面側部材234の正面側に取り付けられ、また、第2正面側部材240が背面側取付部材230における第2背面側部材236の正面側に取り付けられる。
【0042】
さらに、第1正面側部材238における一方端部258はその正面側が削られて薄肉に形成されているとともにその背面側が第1正面側部材238における他の背面位置よりもさらに背面側に突出した位置に形成されている。逆に、第2正面側部材240における一方端部260はその背面側が削られて薄肉に形成されており、両一方端部258,260が互いに重ねられた状態になっている。そして、一方端部258における互いに重ねられた位置に第4貫通孔262が形成されており、さらに一方端部260における第4貫通孔262に対応する位置に第5貫通孔264が形成されている。
【0043】
このように、複数の正面側ボルト252によって正面側取付部材232と背面側取付部材230とが互いに固定されている結果、正面側取付部材232は、回転力受け部材202やガイド部材204にも固定されている。
【0044】
また、第1背面側部材234における一方端部244の正面側が第1背面側部材234における他の正面位置よりもさらに正面側に突出した位置に形成されており、かつ、第1背面側部材234における一方端部244の正面側が第1背面側部材234における他の正面位置よりもさらに正面側に突出した位置に形成されていることにより、複数の正面側ボルト252によって正面側取付部材232と背面側取付部材230とを互いに組み合わせて固定したとき、正面側取付部材232と背面側取付部材230との間に所定の隙間270が形成されている。
【0045】
第2正面側部材240に形成された第5貫通孔264、第1正面側部材238に形成された第4貫通孔262、第1背面側部材234に形成された第3貫通孔248に軸ボルト266を挿通し、そして、第2背面側部材236に形成された第2ネジ穴250に軸ボルト266の先端部に形成されたネジ部を螺合する。これにより、軸ボルト266を中心軸として、背面側取付部材230の第1背面側部材234と正面側取付部材232の第1正面側部材238とのセットと、背面側取付部材230の第2背面側部材236と正面側取付部材232の第2正面側部材240とのセットとを互いに回動させることができる。もちろん、背面側ボルト224によって固定された回転力受け部材202およびガイド部材204も連動して回動させることができる。このように皮剥機構取付部材206、回転力受け部材202およびガイド部材204を互いに回動させることにより、回転機構200全体が開閉することになる。
【0046】
また、正面側取付部材232を構成する第1正面側部材238および第2正面側部材240には、それぞれ1箇所ずつ、皮剥機構300を固定するための固定用溝268が形成されている。両固定用溝268ともに、円形ドーナツ状の正面側取付部材232の外面から内面に至る方向に形成されている。さらに、両固定用溝268の中央部には、皮剥機構300の一部を挿入する挿入孔269が形成されている。
【0047】
皮剥機構固定部材241は、挿入孔269に挿入された皮剥機構300の一部と互いに係合することにより、開閉機構110に対して皮剥機構300を固定するための部材である。上述のように挿入孔269は第1正面側部材238および第2正面側部材240にそれぞれ1箇所ずつ形成されているので、皮剥機構固定部材241も各挿入孔269に合わせて1個ずつ配置されている。
【0048】
皮剥機構固定部材241は、正面側取付部材232と背面側取付部材230との間に形成された隙間270に挿設される円弧状に湾曲した部材であり、外面は正面側取付部材232や背面側取付部材230の外面とほぼ同じ湾曲率の曲面で形成されている。また、皮剥機構固定部材241の中央部には、正面側ボルト252が挿通される正面側ボルト挿通孔272が形成されている。これにより、皮剥機構固定部材241は、正面側ボルト252を中心として回動可能になっている。
【0049】
正面側ボルト252を中心として回動させたとき、
図8に示すように、正面側から見て、皮剥機構固定部材241の一端部274は、正面側取付部材232に形成された挿入孔269の一部または全部を覆うようになっている。これにより、挿入孔269に挿入された皮剥機構300の一部と皮剥機構固定部材241の一端部274とが係合するようになっている。
【0050】
各皮剥機構固定部材241には、その一端部274が挿入孔269を覆う方向に当該皮剥機構固定部材241を回動付勢する回動付勢弾性部材275がそれぞれ取り付けられている。本実施形態においては、回動付勢弾性部材275としてねじりバネが使用されている。このため、自然状態では、
図8に示すように皮剥機構固定部材241の一端部274が正面側から見て挿入孔269に一部かかるようになっているが、回動付勢弾性部材275の弾性力に抗して皮剥機構固定部材241の他端部を押し込むことにより、
図9に示すように、皮剥機構固定部材241の一端部274を挿入孔269から離間させることができる。
【0051】
本実施形態に係る開閉ロック機構208は、
図10および
図11に示すように、大略、ロック本体276と、ロック本体軸支部材278と、ロック本体係合部材280と、ロック本体付勢部材282とで構成されている。
【0052】
ロック本体276は、ガイド部材204の背面(より正確に言うと、ガイド部材204を構成する第1ガイド部材218の背面)に取り付けられた部材であり、その中央部がロック本体軸支部材278によって第1ガイド部材218に対して軸支されている。これにより、ロック本体276は、ロック本体軸支部材278を中心として回動自在になっている。また、ロック本体276の一端部には、ロック本体係合部材280と係合可能なフック部284が形成されている。
【0053】
また、ロック本体276の他端部は、ロック本体付勢部材282によって常に図中時計回り、つまりフック部284がロック本体係合部材280と係合する方向に回動するように付勢されている。
【0054】
さらに、ロック本体276におけるフック部284が構成された内側とは反対の外側には、外向突設部286が形成されている。
【0055】
ロック本体係合部材280は、第2ガイド部材220の背面から突設された部材であり、第1ガイド部材218と第2ガイド部材220とが閉じて円形のガイド部材204を構成しているときにロック本体276のフック部284に係合される位置に配置されている。本実施形態ではロック本体係合部材280としてピン状のものが使用されているが、ロック本体係合部材280の形状はこれに限定されるものではなく、ブロック状のものやその他の形状のものを使用してもよい。
【0056】
次に、
図2、
図6、
図7、および
図17を用いて皮剥機構300について説明する。本実施形態に係る皮剥機構300は、大略、皮剥機構本体302と、切削機構304とを備えている。
【0057】
皮剥機構本体302は、略円筒状の部材であり、断面が円弧状に形成された第1本体部材310と第2本体部材312とを組み合わせることによって構成されている。
【0058】
第1本体部材310は、上述したように断面が円弧状に形成されており、一方端部の外径に比べて他方端部の外径が小さく設定されている。なお、このように外径が小さく設定された他方端部が、回転機構200の正面側中央部に挿入される「回転機構挿入端部314」である。
【0059】
また、第1本体部材310の外側表面における回転機構挿入端部314を臨む端縁には、一対の回転機構取付突部316が突設されている。さらに、これら一対の回転機構取付突部316からは、回転機構挿入端部314が延びる方向に沿って挿入孔挿通突部318がそれぞれ突設されている。
【0060】
第2本体部材312も基本的に第1本体部材310と同様の構成となっており、回転機構挿入端部314、回転機構取付突部316、および、挿入孔挿通突部318が形成されている。なお、第2本体部材312の回転機構取付突部316における挿入孔挿通突部318が突設されたのとは反対側の端面に切削機構304が取り付けられている。
【0061】
本実施形態では、挿入孔挿通突部318は丸棒状に形成されており、その先端部に周溝320が形成されている。さらに、挿入孔挿通突部318の先端をテーパー状に面取りしておくのが好適である。
【0062】
切削機構304は、上述のように第2本体部材312の回転機構取付突部316における挿入孔挿通突部318が突設されたのとは反対側の端面に取り付けられている。皮剥機構300全体が電線Lを中心として回転することにより、切削機構304が電線Lの周囲を回りながら絶縁被覆Hを切削して剥ぎ取っていく役割を有している。
【0063】
本実施形態に係る切削機構304は、大略、切削刃330と、切削刃台部材332と、被覆屑誘導プレート334と、被覆屑落下防止部材336と、切削刃回動中心ボルト338と、カラー340と、付勢部材342と、留めボルト344とを備えている。
【0064】
切削刃330は、電線Lの絶縁被覆Hを切削して剥ぎ取っていく部材である。本実施形態に係る切削刃330の長手方向略中央部には、切削刃回動中心ボルト338が挿通されるボルト挿通孔346が形成されている。
【0065】
切削刃台部材332は、皮剥機構本体302に対して切削刃330を適正な位置に保持するための部材である。本実施形態に係る切削刃台部材332は、略短冊状に形成された切削刃台部材本体部348と、この切削刃台部材本体部348から直交する向きに突設された台部350とを有している。切削刃330は、その側面が切削刃台部材本体部348に接するとともに、その底面が台部350に接するようになっている。また、切削刃台部材本体部348における、切削刃330のボルト挿通孔346に対応する位置には、同じく切削刃回動中心ボルト338が挿通される第2ボルト挿通孔352が形成されている。
【0066】
被覆屑誘導プレート334は、台部350に対向する切削刃330の天面に取り付けられた板材である。また、この被覆屑誘導プレート334は、切削刃330によって剥ぎ取られてきた電線Lの被覆屑が作業の進捗とともに伸びてきたときに、当該被覆屑の先端部が被覆屑落下防止部材336に向けて進んでいくようにガイドする役割を有している。
【0067】
被覆屑落下防止部材336は、電線皮剥工具100による作業が進んで行くにつれて伸びてくる電線Lの被覆屑が不所望に飛び散ってしまったり落下したりするのを防止する役割を有する部材である。本実施形態に係る被覆屑落下防止部材336は、ベース部354と、被覆屑保持部356とを有している。
【0068】
ベース部354は、切削刃330を外側から覆う、断面がL字状に形成された略板状材であり、その略中央部には、切削刃回動中心ボルト338が挿通される第3ボルト挿通孔358が形成されている。
【0069】
また、ベース部354は、留めボルト344によって皮剥機構本体302の第2本体部材312に直接固定されている。
【0070】
被覆屑保持部356は、切削刃330によって剥ぎ取られた絶縁被覆Hを引っかけて保持するようにして、この絶縁被覆Hが電線皮剥工具100から不所望に落下しないようにする役割を有している。本実施形態に係る被覆屑保持部356は、切削刃330から離間する方向に伸びるほぼ一定幅短冊状の板状部360と、この板状部360における切削刃330から見て遠い側の端から略直交する方向に伸びるほぼ一定幅短冊状の被覆屑係止部362とを有している。また、板状部360の幅と、被覆屑係止部362の幅とは、ほぼ同じ寸法になっている。
【0071】
切削刃回動中心ボルト338は、切削機構304を皮剥機構本体302に取り付けるための部材である。切削刃回動中心ボルト338の先端部を被覆屑落下防止部材336における第3ボルト挿通孔358、カラー340、付勢部材342、切削刃330におけるボルト挿通孔346、および、切削刃台部材332における第2ボルト挿通孔352の順に挿通していき、最後に、皮剥機構本体302における第2本体部材312に形成された切削刃回動中心ボルト受け穴364に挿設・螺合することにより、切削機構304を皮剥機構本体302に取り付けられるようになっている。
【0072】
上述のように、被覆屑落下防止部材336は、そのベース部354が留めボルト344によって皮剥機構本体302に固定されている。このため、被覆屑落下防止部材336と皮剥機構本体302との間で、切削刃回動中心ボルト338を中心として、切削刃330が回動自在に保持されている。
【0073】
カラー340は、切削刃330と被覆屑落下防止部材336との間にクリアランスを設けて、当該間に配設される付勢部材342の配置スペースを確保するための円筒状部材である。
【0074】
付勢部材342は、被覆屑落下防止部材336と皮剥機構本体302との間において回動自在に保持されている切削刃330が所定の方向に回動するように付勢するための部材であり、本実施形態では巻きバネが使用されている。もちろん、切削刃330を所定の方向に付勢できれば、巻きバネに限定されることはない。
【0075】
付勢部材342が切削刃330を回動付勢する方向は、切削刃330における電線Lを切削する端が電線Lの中心に向かう方向である。このように付勢することで、切削刃330における電線Lを切削する端が切削を進めていくにつれて当該電線Lの中心に進んでいき、絶縁被覆Hを剥ぎ取っていけるようになっている。なお、切削刃330における電線Lを切削する端が芯線Sに到達するところまで進むと、切削刃台部材332における切削刃台部材本体部348の先端が芯線Sあるいは絶縁被覆Hに接触することにより、切削刃330がそれ以上進んで芯線Sに触れてしまうのを規制するようになっている。
【0076】
本実施形態に係る切削機構304によれば、電線Lの絶縁被覆Hを切削刃330で切削していくことによって螺旋状に伸びて発生していく被覆屑が、被覆屑誘導プレート334にガイドされて被覆屑保持部356に進み、被覆屑保持部356の板状部360に巻き付いていく。さらに絶縁被覆Hの切削を進めていくと、被覆屑は被覆屑保持部356の被覆屑係止部362に達し、さらに被覆屑保持部356を越えて伸びていく。
【0077】
このように被覆屑が被覆屑係止部362を越えて伸びていくと、当該被覆屑はその一部分で必ず被覆屑係止部362に係合している状態を保つことになる。このため、絶縁被覆Hの剥ぎ取り作業中や、作業終了時に被覆屑が電線Lから離れたとき、被覆屑が不所望に電線皮剥工具100から離れていくことがなくなる。
【0078】
ところで、被覆屑保持部356に似た役割を有する「被覆屑巻付棒」に関する技術が特許文献3に開示されているが、この「被覆屑巻付棒」は、その基端部の外径が剥離された被覆屑が螺旋状にカールして形成される円筒状の内径よりも小さく形成され、中間部が基端部の外径のまま一定の長さで延び、終端部の外径が基端部の外径よりも大きなテーパー状に形成されている。
【0079】
一般に、切削刃330で切削し剥ぎ取った被覆屑は、外気温が低い冬場では、被覆屑自体が硬くなりやすく、螺旋状になったときにおける当該螺旋の径が大きくなりやすい。つまり、外気温が低い場合、被覆屑は比較的大きな螺旋状になっていく。
【0080】
これに対し、外気温が高い夏場では、被覆屑自体が硬くなりにくいことから、螺旋状になったときにおける当該螺旋の径が小さくなりやすい。このとき、特許文献3における「被覆屑巻付棒」のように終端部をその外径が基端部の外径よりも大きなテーパー状に形成すると、螺旋状の被覆屑が当該終端部でつかえてしまい、被覆屑がダマになってしまうおそれがあった。
【0081】
この点、本実施形態に係る被覆屑落下防止部材336における被覆屑保持部356のように、切削刃330から離間する方向に伸びるほぼ一定幅短冊状の板状部360と、この板状部360における切削刃330から見て遠い側の端から略直交する方向に伸びるほぼ一定幅短冊状の被覆屑係止部362とで構成することにより、螺旋の径が小さい場合であっても被覆屑が被覆屑係止部362につかえてしまう可能性を低くして、被覆屑がダマになってしまうのを回避することができる。
【0082】
なお、本実施形態に係る被覆屑保持部356は、板状部360と被覆屑係止部362とで略「L」字状に形成されているが、板状部360を中心にして対称方向に別の(第2の)被覆屑係止部362を加えることによって略「T」字状に形成してもよい(
図18参照)。
【0083】
(実施形態に係る電線皮剥工具100の動作)
次に上述した電線皮剥工具100の動作について説明する。
図12は、基準状態にある当該電線皮剥工具100を示している。この状態から、操作棒を用いて開閉機構110の操作棒接続部材125を順方向に回すと回転機構200が反時計回りに回転する。開閉機構110の操作棒接続部材125を逆方向に回すと回転機構200が時計回りに回転する。
【0084】
最初に、操作棒接続部材125を逆方向に回していき、回転機構200を開いた状態にするまでの動作について説明する。
図12に示す状態から操作棒接続部材125を逆方向に回していくと、ロック本体276における外向突設部286が開閉部材122のフック部132に係合する。引き続き操作棒接続部材125を逆方向に回していくと、回転機構200が時計回りに回転し、
図13に示すように、このロック本体276が取り付けられたガイド部材204の第1ガイド部材218、およびこれに固定された回転力受け部材202の第1受け部材210、皮剥機構取付部材206の第1背面側部材234および第1正面側部材238、さらに、皮剥機構300における第1本体部材310における各一方端が、組み合わされる第2ガイド部材220、第2受け部材212、第2背面側部材236および第2正面側部材240、さらに、皮剥機構300における第2本体部材312から離間していき、回転機構200および皮剥機構300が開いた状態となる。さらに操作棒接続部材125を逆方向に回していくと、
図14に示すように、さらに離間の度合いが増して、回転機構200および皮剥機構300が完全に開いた状態となる。この状態で、電線Lを電線皮剥工具100の内側から出し入れすることができる。
【0085】
次に、操作棒接続部材125を順方向に回していき、回転機構200を閉じて電線Lから絶縁被覆Hを剥ぎ取る動作について説明する。
図12に示す基準状態から操作棒接続部材125を順方向に回していくと、ガイド部材204が図中反時計回りに回転していき、
図15に示すように、開閉ロック機構208を構成するロック本体276の外向突設部286の外面が開閉機構110の保持部材118に突設されたロック本体押圧部材128に当接する。操作棒接続部材125を順方向にさらに回していくと、ロック本体押圧部材128に押されたロック本体276のフック部284がさらに内側(中心側)に向けて回動することとなり、当該フック部284が確実にロック本体係合部材280と係合するようになる。
【0086】
さらに操作棒接続部材125を順方向に回していくと、
図16に示すように、フック部284が確実にロック本体係合部材280と係合した状態のままで回転機構200が回転し、当該回転機構200に取り付けられた皮剥機構300による電線Lの皮剥ぎ作業が進んでいく。
【0087】
(回転機構200に対する皮剥機構300の着脱動作)
回転機構200に対して皮剥機構300を取り付ける場合は、回転機構200の皮剥機構取付部材206における中央部の孔に皮剥機構300の回転機構挿入端部314を差し込んでいき、皮剥機構取付部材206における一対の固定用溝268に皮剥機構300の回転機構取付突部316を嵌め込むことによって完了する。
【0088】
固定用溝268に回転機構取付突部316を嵌め込む際、皮剥機構300の挿入孔挿通突部318を固定用溝268に設けられた挿入孔269に挿入していくが、このとき挿入孔挿通突部318の先端がテーパー状に面取りしてあれば、挿入孔挿通突部318を挿入していくにつれて当該挿入孔挿通突部318の先端に形成されたテーパー面が挿入孔269にかかるようになっている皮剥機構固定部材241の一端部274を回動付勢弾性部材275の弾性力に抗して外方に押しのけていく。そして、挿入孔挿通突部318を挿入孔269に対してさらに押し込んでいくと、皮剥機構固定部材241の一端部274が挿入孔挿通突部318の周溝320に嵌まることにより、回転機構200に対する皮剥機構300の取り付けが完了するとともに、皮剥機構300が回転機構200から不所望に外れてしまうことがなくなる。
【0089】
回転機構200から皮剥機構300を取り外す場合は、回動付勢弾性部材275の弾性力に抗して皮剥機構固定部材241の他端部を押し込んで、皮剥機構固定部材241の一端部274を挿入孔挿通突部318の周溝320(および挿入孔269)から離間させつつ、皮剥機構300を回転機構200から取り外すことになる。
【0090】
(実施形態に係る電線皮剥工具100の特徴)
上述した実施形態に係る電線皮剥工具100では、従来の電線皮剥工具と同じく切削機構304を電線Lに対して回転させる回転力を加えることにより、開閉ロック機構208を構成するロック本体276の外向突設部286の外面が開閉機構110の保持部材118に突設されたロック本体押圧部材128に当接する。さらに回転力を加えると、ロック本体押圧部材128に押圧されたロック本体276のフック部284がさらに内側(中心側)に向けて、つまり、ロック本体係合部材280に向けて回動することとなり、当該フック部284が確実にロック本体係合部材280と係合するようになる。
【0091】
このように、上述した実施形態に係る電線皮剥工具100によれば、回転力を加え続けるだけで回転機構200を完全に閉じることができる。
【0092】
また、上述した実施形態に係る電線皮剥工具100では、回転機構200に対して皮剥機構300を取り付ける際、皮剥機構取付部材206における一対の固定用溝268に皮剥機構300の回転機構取付突部316を嵌め込んでいき、皮剥機構300の挿入孔挿通突部318を固定用溝268に設けられた挿入孔269に挿入していく。これにより、皮剥機構固定部材241の一端部274が挿入孔挿通突部318の周溝320に嵌まるので、回転機構200に対する皮剥機構300の取り付けが簡単に完了するとともに、皮剥機構300が回転機構200から不所望に外れてしまうことがなくなる。
【0093】
さらに、挿入孔挿通突部318の先端をテーパー状に面取りしておくことにより、挿入孔挿通突部318を挿入していくにつれて当該挿入孔挿通突部318の先端に形成されたテーパー面が挿入孔269にかかるようになっている皮剥機構固定部材241の一端部274を回動付勢弾性部材275の弾性力に抗して外方に押しのけていく。そして、挿入孔挿通突部318を挿入孔269に対してさらに押し込んでいくと、皮剥機構固定部材241の一端部274が挿入孔挿通突部318の周溝320に嵌まることにより、回転機構200に対する皮剥機構300の取り付けをワンタッチで簡単に実施することができる。
【0094】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
100…電線皮剥工具
110…開閉機構、112…回転ベース部材、118…保持部材、122…開閉部材、123…ベース部材、124…傘歯車、125…操作棒接続部材、126…段部、128…ロック本体押圧部材、130…軸支部材、132…フック部、133…保持部材固定ネジ、134…回動規制ピン、136…回動規制ピン嵌挿孔、138…開閉部材付勢部材
200…回転機構、202…回転力受け部材、204…ガイド部材、206…皮剥機構取付部材、208…開閉ロック機構、210…第1受け部材、212…第2受け部材、214…歯車、216…第1貫通孔、218…第1ガイド部材、220…第2ガイド部材、222…第2貫通孔、224…背面側ボルト、226…カムフォロワ、230…背面側取付部材、232…正面側取付部材、233…皮剥機構取付部材本体、234…第1背面側部材、236…第2背面側部材、238…第1正面側部材、240…第2正面側部材、241…皮剥機構固定部材、242…ネジ穴、244…(第1背面側部材234の)一方端部、246…(第2背面側部材236の)一方端部、248…第3貫通孔、250…第2ネジ穴、252…正面側ボルト、254…第3ネジ穴、256…第4貫通孔、258…(第1正面側部材238の)一方端部、260…(第2正面側部材240の)一方端部、262…第4貫通孔、264…第5貫通孔、266…軸ボルト、268…固定用溝、269…挿入孔、270…隙間、272…正面側ボルト挿通孔、274…(皮剥機構固定部材241の)一端部、275…回動付勢弾性部材、276…ロック本体、278…ロック本体軸支部材、280…ロック本体係合部材、282…ロック本体付勢部材、284…フック部、286…外向突設部
300…皮剥機構、302…皮剥機構本体、304…切削機構、310…第1本体部材、312…第2本体部材、314…回転機構挿入端部、316…回転機構取付突部、318…挿入孔挿通突部、320…周溝
330…切削刃、332…切削刃台部材、334…被覆屑誘導プレート、336…被覆屑落下防止部材、338…切削刃回動中心ボルト、340…カラー、342…付勢部材、344…留めボルト、346…ボルト挿通孔、348…切削刃台部材本体部、350…台部、352…第2ボルト挿通孔、354…ベース部、356…被覆屑保持部、358…第3ボルト挿通孔、360…板状部、362…被覆屑係止部、364…切削刃回動中心ボルト受け穴
L…電線(被覆電線)、S…芯線、H…絶縁被覆