(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】新規な組換えクロトータンパク質ならびにそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20230315BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230315BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230315BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230315BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230315BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230315BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230315BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230315BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230315BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230315BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230315BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230315BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230315BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230315BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230315BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230315BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230315BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20230315BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230315BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230315BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230315BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20230315BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20230315BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230315BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230315BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230315BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230315BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20230315BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230315BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230315BHJP
C07K 14/36 20060101ALI20230315BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K47/64
A61P13/12
A61K9/48
A61P19/10
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/28
A61P3/10
A61P9/04
A61P9/12
A61P35/00
A61P11/00
A61P1/16
A61P9/10 101
A61P17/00
A61P7/06
A61P15/08
A61P25/16
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P27/06
A61P27/12
A61P27/02
A61P3/04
A61P3/02 102
A61P19/08
A61P1/08
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C07K14/36
C07K14/705
(21)【出願番号】P 2019527284
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(86)【国際出願番号】 US2017063149
(87)【国際公開番号】W WO2018098375
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518426446
【氏名又は名称】クロトー セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KLOTHO THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】タルシオ、ジョセフ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ラトゥリ、ディネシュ
(72)【発明者】
【氏名】プランテ、ジェームズ アール.
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088059(WO,A1)
【文献】国際公開第2000/027885(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/165480(WO,A1)
【文献】特開2005-006647(JP,A)
【文献】European Journal of Pharmacology,2013年,Vol. 698,pp. 67-73
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2004年,Vol. 279, No. 11,pp. 9777-9784
【文献】Nephrol Dial Transplant,2010年,Vol. 25,pp. 60-68
【文献】Kidney International,2013年12月04日,(2014) Vol. 85,pp. 855-870
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物対象における腎障害の治療および/または予防に使用するための薬学的組成物であって、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換えタンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列、ならびに、
タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列
の一部
であって、配列番号106の配列からなる前記一部からな
る合成タンパク質配列、を含む、組換えタンパク質と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記腎障害が、
(i)外科手術もしくは他の医療処置に起因する腎臓損傷、
(ii)腎虚血、
(iii)外科手術もしくは他の医療処置に起因する腎虚血、
(iv)腎臓外科手術に起因する腎虚血、
(v)腎臓移植に起因する腎虚血、
(vi)心血管外科手術に起因する腎虚血、
(vii)敗血症による腎臓損傷、
(viii)腎毒性、
(ix)薬剤性腎毒性、
(x)抗菌剤に起因する腎毒性、および
(xi)アミノグリコシドに起因する腎毒性からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記薬学的組成物は、哺乳動物対象への投与に適したものであり、前記投与が
任意選択で静脈内、皮内、腹腔内、筋肉内、皮内、および皮下注射から選択される、ボーラスまたは漸進的注射、
任意選択で経口摂取投与、頬投与、および舌下投与から選択される、経口または経口関連投与、
局所投与、
経皮投与、
直腸投与、
膣内投与、
吸入、のうちの1つ以上によるものである、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的組成物は、哺乳動物対象における腎障害の治療および/または予防に適したものであり、
腎臓外科手術、腎臓移植、心血管外科手術、心臓バイパス外科手術、冠状動脈バイパス(移植)外科手術、心肺バイパス外科手術、および腎毒素の投与のうちの1つ以上の前に、予防的に、ならびに/または
腎臓外科手術、腎臓移植、心血管外科手術、心臓バイパス外科手術、冠状動脈バイパス(移植)外科手術、心肺バイパス外科手術、および腎毒素の投与のうちの1つ以上の後に、投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記腎毒素が、
任意選択でパロモマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、およびネオマイシンからなる群から選択される、1つ以上のアミノグリコシドと、
任意選択でアスピリン(アセチルサリチル酸)、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、およびトルメチンからなる群から選択される、1つ以上の非ステロイド抗炎症薬(NSAID)と、
任意選択でペニシリン、アンピシリン、セファロスポリン、スルホンアミド、シプロフロキサシン、バンコマイシン、マクロライド、テトラサイクリン、およびリファンピンからなる群から選択される、1つ以上の抗菌剤と、
任意選択でアンホテリシンBおよびフルシトシンからなる群から選択される、1つ以上の抗真菌剤と、
任意選択でヨウ素化放射造影剤、約1.5:1のヨウ素対分子比を有する高浸透圧造影剤(HOCM)、約3:1のヨウ素対分子比を有する低浸透圧の非イオン性造影剤(LOCM)、および約6:1のヨウ素対分子比を有する等張性(等浸透圧性)造影剤(IOCM)からなる群から選択される、1つ以上の造影剤と、
任意選択でアデホビル、シドホビル、テノホビル、およびホスカルネットからなる群から選択される、1つ以上の抗レトロウイルス剤と、
任意選択でシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アルキル化剤、ベンダムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、テモゾロミド、メルファラン、抗腫瘍抗生物質、マイトマイシンC、ブレオマイシン、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、カペシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、ゲムシタビン、シタラビン、ビンカアルカロイド、トポテカン、エトポシド、タキサン、イリノテカン、レナリドミド、エリブリン、三酸化ヒ素、もしくはイキサゾミブからなる群から選択される、1つ以上の癌(または化学)治療薬と、
任意選択でゾレドロネート/ゾレドロン酸、イバンドロネート、アレンドロネート、アレンドロネート/コレカルシフェロール、エチドロネート、リセドロネート、炭酸カルシウムリセドロネート、パミドロネート、およびチルドロネートからなる群から選択される、1つ以上のビスホスホネート、もしくはこれらの誘導体と、
任意選択でバルデコキシブ、ロフェコキシブ、およびセレコキシブからなる群から選択される、1つ以上のシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤と、
任意選択でオメプラゾールおよびランソプラゾールからなる群から選択される、1つ以上のプロトンポンプ阻害剤と、
任意選択でフェニトインおよびバルプロ酸からなる群から選択される、1つ以上の抗痙攣薬と、
任意選択でニザチジン、ラニチジン、ファモチジン、およびシメチジンからなる群から選択される、1つ以上のヒスタミンH2受容体拮抗薬と、
任意選択でパマブロム、マンニトール、炭酸脱水酵素阻害剤、ループ利尿薬
、カリウム保持性利尿
薬、または、チアジド系利尿
薬からなる群から選択される、1つ以上の利尿薬と、
任意選択でコカインおよびヘロインからなる群から選択される、1つ以上の麻酔薬またはオピオイドと、
任意選択でリチウム、金、銅、および水銀からなる群から選択される、1つ以上の元素または元素金属と、
1つ以上の直接作用型平滑筋弛緩薬、任意選択でヒドララジンと、
任意選択でカリソプロドール、シクロベンザプリン、メタキサロン、メトカルバモール、ジアゼパム、クロニジン、チザニジン、バクロフェン、ダントロレン、イミダゾリン化合物、ベンゾジアゼピン、およびヒダントイン誘導体からなる群から選択される、1つ以上の鎮痙剤と、
1つ以上の重金属毒性薬、免疫抑制薬、またはキレート
薬と、を含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記クロトータンパク質配列が、配列番号1に対して、F45、V45、C370、S370、F352、V352以外のもの、H193、およびR193以外のもののうちの1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記クロトータンパク質配列が、配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記組換えタンパク質が、配列番号63~70のうちの1つに対して、少なくとも99%のアミノ酸配列同一性または100%のアミノ酸配列同一性を有す
る、請求項1~7のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記組換えタンパク質の少なくともいくつかが、コーティングされた製剤、カプセル化された製剤、制御放出性製剤、延長放出性製剤、遅延放出性製剤、または持続放出性製剤中にあること、および
前記組成物が、凝集防止剤、緩衝剤、等張化剤、および追加の賦形剤からなる群から選択される1つ以上の成分をさらに含むこと、のうちの1つ以上である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
哺乳動物対象において、加齢に関連する病態、疾患、もしくは障害の治療および/または予防に使用するための薬学的組成物であって、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換えタンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列、ならびに、
タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列
の一部
であって、配列番号106の配列からなる前記一部からな
る合成タンパク質配列、を含む、組換えタンパク質と、を含む薬学的組成物。
【請求項11】
前記病態、疾患、または障害が、虚弱、骨密度低下、骨ミネラル密度低下、体重低下、筋肉萎縮、筋肉退化、筋量低下、筋力低下、握力低下、脚力低下、体力の低下、動作低下、動作自由の低下、生活の質評価低下、駆出率低下、運動能力の低下、学習力低下、学習能力低下、記憶力低下、知能指数低下、認知力劣化、健忘症、認知能力低下、認知機能低下、シナプス可塑性低下、シナプス機能低下、細胞老化、慢性腎臓病(CKD)、慢性腎疾患-ミネラルおよび骨障害(CKD-MBD)、多嚢胞腎臓疾患(PKD)、常染色体優性多嚢胞腎臓(ADPKD)、急性腎障害(AKI)、急性尿細管壊死(ATN)、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、糸球体腎炎、腎臓疾患、腎不全、アルポート症候群、非乏尿性腎不全、アルコール依存症、高リン酸血症、筋ジストロフィー(MS)、1型糖尿病、2型糖尿病、心血管疾患(CVD)、心血管石灰化、脳血管不全、血管石灰化、冠動脈疾患、心不全、左心室肥大、尿毒症性心筋症、血圧異常、食塩感受性高血圧、組織石灰化、石灰化アテローム硬化性プラーク負荷、石灰化症、家族性腫瘍性石灰化症、癌、1つ以上の腫瘍、ミエリンに関係する疾患、脱髄疾患、神経変性疾患、神経血管疾患、進行性核上麻痺(PSP)、ポンペ病、ニーマンピック病、微小膠症、ファーバー病(FD)、骨量疾患、骨粗鬆症、骨減少症、骨減少症(特に皮質骨のBMDの喪失)、肺気腫、肺線維症、嚢胞性繊維症、特発性(すなわち、原因不明)肺線維症、放射線障害性肺障害、肝硬変、胆道閉鎖、心房性線維症、心内膜心筋線維症、(陳旧性)心筋梗塞、神経膠瘢痕、動脈硬化、関節線維症、クローン病、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、縦隔線維症、骨髄線維症、ペーロニー病、腎性全身性線維症、進行性塊状線維症、後腹膜線維化症、強皮症/全身性硬化症、癒着性関節包炎、皮膚萎縮、胸腺萎縮、腎間質マトリックスの蓄積、糸球体硬化、貧血、アルブミン尿症、タンパク尿症、不妊症、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患(MND)、心房細動、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、線維筋痛症、成人発症糖尿病、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、緑内障、白内障、黄斑変性、多発性硬化症(MS)、狼瘡、潰瘍性大腸炎、悪液質、肥満、ビタミンDに関係する病態、骨疾患、骨再形成を通じた骨疾患、幹細胞枯渇、船酔い、宇宙不適応症候群(SAS)、吐き気、めまい、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝硬変、およびアルコール脂肪肝炎からなる群から選択される、請求項
10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
哺乳動物対象において健康の改善および/または若さの維持に使用するための薬学的組成物であって、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換えタンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列、ならびに、
タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列
の一部
であって、配列番号106の配列からなる前記一部からな
る合成タンパク質配列、を含む、組換えタンパク質と、を含む薬学的組成物。
【請求項13】
薬学的組成物であって、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換えタンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列ならびに、
タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列
の一部
であって、配列番号106の配列からなる前記一部からな
る合成タンパク質配列、を含む、組換えタンパク質と、を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
組換えタンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列と、
タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列
の一部
であって、配列番号106の配列からなる前記一部からな
る合成タンパク質配列と、を含む、組換えタンパク質。
【請求項15】
組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む核酸構築物であって、前記組換えタンパク質が、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列と、
タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列
の一部
であって、配列番号106の配列からなる前記一部、
および
少なくとも1つのストレプトアビジン配列を含み、
任意選択で2つ以上のストレプトアビジン配列を含
むとともに、
任意選択でそれらの間に配置されたスペーサーを有する、親和性タグ配
列、からな
る合成タンパク質配列と、を含む、核酸構築物。
【請求項16】
プロモーターをさらに含み、前記組換えタンパク質をコードする前記核酸配列が、前記プロモーターの制御下にある、請求項
15に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記組換えタンパク質が
、配列番号6
6に対して、少なくとも99%
のアミノ酸配列同一性または100%のアミノ酸配列同一性を含む、請求項
10~
13に記載のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治療薬としての組換えヒトクロトータンパク質組成物の産生および投与に関する。具体的には、本開示は、CGMPグレードのヒト組換え可溶性アルファ-クロトータンパク質またはその多様体を含む組成物、ならびにその製造方法およびヒト対象または非ヒト対象へのその投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロトー(またはアルファ-クロトー、α-クロトーなど)は、ヒト染色体13に位置するKL(またはクロトー)遺伝子によってコードされる近年特徴付けられたタンパク質である。選択的RNAスプライシングを通して、単一のクロトー遺伝子から生じる2つの転写物が同定されている。
図1および2を参照されたい。第1の転写産物は、短い細胞質尾部(ヒト残基1003~1012)と、膜貫通(TM)ドメイン(ヒト残基982~1002)と、各々β-グルコシダーゼと20%~40%のアミノ酸配列相同性を有するが、同様のレベルのグルコシダーゼ触媒活性を欠き得る)、2つの相同な(内部反復)ドメイン(KL1(450残基長であるヒト残基56~506)、およびKL2(438残基長であるヒト残基515~953と称されるもの)を含む、細胞外領域またはドメイン(ヒト残基1~981)と、シグナル配列(SS)ドメイン(ヒト残基1~33)と、を含む、全長1,012個のアミノ酸の1回膜貫通膜タンパク質であるクロトーアイソフォーム1をコードすると予測される。SS、KL1およびKL2ドメイン含有細胞外領域(ヒト残基1~981)は、α/β-セクレターゼによって酵素的に切断され、可溶性クロトー(またはsクロトー、s-クロトー、アルファ可溶性クロトーなど)と称される130kDaの循環タンパク質として循環流に放出され得る。細胞外領域はまた、別個の68kDaタンパク質(KL1+SS)および64kDaタンパク質(KL2)に切断され得る。
【0003】
アルファ-クロトーmRNAのスプライシング多様体である第2の転写物は、主にKL1ドメインに対応するクロトータンパク質の第2のアイソフォームをコードする。内部スプライスドナー部位は、クロトー遺伝子のエクソン3に位置すると考えられている。得られる選択的にスプライシングされた転写物は、エクソン3の後に、その末端にインフレーム翻訳終止コドンを有する、50bpの挿入を含有する(
図1;灰色)。発現されたタンパク質産物は循環中に分泌され、分泌クロトー(またはクロトーアイソフォーム2)と呼ばれ、アミノ酸残基535~549でアイソフォーム1の標準配列と異なり、DTTLSQFTDLNVYLW→SQLTKPISSLTKPYH、アミノ酸残基550~1012を欠く。
【0004】
したがって、遺伝子発現、RNAスプライシング、および酵素的切断に依存して、任意の所与の時間で、循環中に多くの異なるクロトータンパク質が存在し得る。アルファ-クロトータンパク質の様々な形態の存在にもかかわらず、全長の膜結合アイソフォーム1のみが線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体と複合体を形成し、尿中へのリン酸排泄を誘導し、PiおよびビタミンD代謝に調節的役割を有する、骨由来ホルモンである、FGF23の必須共受容体として機能することが知られている。
【0005】
クロトーは、腎臓、脳で高く発現し、他の器官では程度が低く、哺乳動物の脳脊髄液や尿中にも見出され得る。哺乳動物における可溶性クロトータンパク質の循環レベルは、年齢とともに減少すると考えられている。加えて、クロトー欠損マウスは、加速した加齢表現型を示すことに対し、マウスにおけるクロトーの過剰発現は、寿命を延長することを呈する。加えて、クロトーは、加齢に関係する多くの細胞プロセスに関与している。前述の見地から、可溶性クロトーは、人体において抗加齢化合物として機能し得るという仮説が立てられている。
【0006】
加齢は不可避であり、進行性の生物学的プロセスであり、ほとんど全ての組織および器官の機能障害および破滅をもたらし、最終的には死に至る。例えば、人体の加齢は、種々の疾患の発症につながり得る細胞機能の低下と関連している。加齢は、遺伝的因子と後天的因子との間の厳密に制御された複雑な相互作用によって引き起こされると考えられ、老化の増大、幹細胞の量的および質的減少、ならびに組織レベルでの異常な構造が典型的な特徴である。
【0007】
いわゆる「ベビーブーマー」の世代が年齢を重ねるにつれて、高齢者(例えば60~65歳)の人口は急速に世界的に増加している。この高齢人口に対する医療需要の増加は、あらゆる医療制度の顕著な経済的負担となっている。組換えクロトータンパク質は、年齢に関係する健康状態に対抗する有望な治療薬を提供し得る。可溶性クロトーの産生および(例えば、実質的に均質なものへの)精製に基づく方策および保険介入方法の構築、ならびに増加する高齢人口内の被験体へのこのタンパク質の投与は、この状況およびそれに関連する問題を改善するのに役立ち得る。
【0008】
現在、組換え可溶性ヒトアルファ-クロトータンパク質またはタンパク質多様体、特に米国食品医薬品局(FDA)によって決定および施行される、医薬品適正製造基準(Current Good Manufacturing Practice)(cGMP)規則に準拠するタンパク質などの、ヒトクロトータンパク質の外因性形態を提供するための生成物または方法は、単独でも、または1つ以上の追加の活性成分と組み合わせても、存在しない。これまでに、クロトーに関連する全ての関連治療データは、動物モデルにおける前臨床研究試験である。特にヒトおよび/または増加する高齢人口内の対象に、組換えS-クロトーの投与に基づく方策および保険介入方法を構築することは、この状況を改善するのに役立ち得る。
【発明の概要】
【0009】
本開示の実施形態は、組換えヒトクロトータンパク質、タンパク質断片、および/またはタンパク質多様体、発現核酸構築物および/またはベクター、細胞株および/または細胞懸濁培養物、ならびにその製造、精製方法、および(ヒトまたは非ヒト動物)被験体への投与方法を用いて、当該技術分野における前述のまたは他の問題のうちの1つ以上を解決する。
【0010】
例えば、本開示のいくつかの実施形態は、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質、タンパク質フラグメント、および/もしくはタンパク質変異体、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を含む組成物(例えば、治療用組成物、薬学的組成物、医薬、製剤)など、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質および(薬学的に許容される)ビヒクル(例えば、担体もしくは賦形剤)を含む組成物、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質および少なくとも1つの追加の(活性)成分を含む組成物、ヒト組換えアルファ可溶性クロトータンパク質をコードする核酸構築物もしくはベクター、(i)組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質をコードする核酸構築物もしくはベクター、および/もしくは(ii)組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を発現する細胞株、(i)組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質をコードする核酸構築物またはベクター、および/もしくは(ii)組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を発現する細胞の細胞懸濁培養物、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を製造し、任意に精製する方法、組換え型ヒトアルファ可溶性クロトータンパク質の医薬(もしくは治療用組成物、すなわち製剤)の製造方法、(ヒトもしくは非ヒト動物)対象に組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を投与する方法、対象におけるクロトータンパク質欠乏症を判定するための診断方法、対象におけるクロトータンパク質欠乏症を診断する方法、投与により組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を投与する必要があると対象を診断する方法、それを必要とする対象に対するタンパク質の有効性を評価および/もしくは有効用量を判定する方法、ヒトもしくは非ヒト動物(例えば、ヒト以外の哺乳動物)における特定の医学的病態もしくは他の病態を治療するのに使用するための組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質、ヒトもしくは非ヒト動物における特定の医学的病態もしくは他の病態の治療のための組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質の使用、ヒトもしくは非ヒト動物における特定の医学的病態もしくは他の病態の治療のための、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を含む組成物の使用、ならびに/またはヒトもしくは非ヒト動物における特定の医学的病態もしくは他の病態の治療のための医薬の製造における組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質の使用、のうちの1つ以上を含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態は、組換えクロトータンパク質を製造する例示的な方法であって、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中、好ましくはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞中、より好ましくはCHO-S細胞中、または好ましくはグルタミン合成酵素(GS)欠損CHO細胞中、より好ましくはGS-/-CHO細胞中で、組換えクロトータンパク質を産生することを含み、当該タンパク質が、好ましくは配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、方法を含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態は、好ましくはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞中、より好ましくはCHO-S細胞中、または好ましくはグルタミン合成酵素(GS)欠損細胞中、より好ましくはGS-/-CHO細胞中の複数のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞であって、外因性核酸を含有するCHO細胞が、プロモーター、好ましくは強力なプロモーターを含む、複数のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含み、ポリペプチドであって、ポリペプチドの少なくとも一部が配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、ポリペプチドと、任意選択的に、機能性ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)酵素、または機能性グルタミン合成(GS)酵素と、をコードする、細胞株を含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態は、液体培地、好ましくは無血清および/または動物タンパク質成分を含まない液体培地であって、好ましくは炭素源、窒素源、および1つ以上のビタミン、ミネラル、塩、アミノ酸、補充剤、または添加剤を含み、より好ましくは、液体培地が、ヒポキサンチン、チミジン、および/またはグルタミンを欠く、液体培地と、CHO細胞が核酸によってコードされたポリペプチドを発現するような液体培地中で増殖する請求項14~17のいずれか1項に記載の細胞株と、を含み、ポリペプチドが、組換えクロトータンパク質を含む。
【0014】
いくつかの実施形態は、組換えクロトータンパク質を含むことができ、タンパク質の少なくとも一部が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態は、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つ、好ましくは配列番号52、配列番号54、および配列番号66のうちの1つの少なくとも一部、ならびに任意選択的に、その間の任意のリンカー配列の有無にかかわらず、免疫グロブリンFcドメイン配列またはTwin-Strepタグ配列の少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、クロトータンパク質配列を含む、組換えタンパク質を含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態は、薬学的有効量の本明細書に記載の組換えクロトータンパク質および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を含み得る。いくつかの実施形態は、薬学的有効量の組換え可溶性クロトータンパク質であって、タンパク質の少なくとも一部がヒトアルファクロトーアイソフォーム1もしくはアイソフォーム2の1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、もしくは131~549のアミノ酸残基の少なくともサブセット、または配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、組換え可溶性クロトータンパク質、および薬学的に許容可能な担体、を含む、薬学的組成物を含むことができる。いくつかの実施形態は、薬学的に許容される担体または賦形剤、および配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つ、好ましくは配列番号52、配列番号54、および配列番号66のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列を含む有効量の組換えタンパク質、および任意選択でその間の任意のリンカー配列の有無にかかわらず、免疫グロブリンFcドメイン配列またはTwin-Strepタグ配列の少なくとも一部、を含む薬学的組成物を、含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態は、加齢に関係するまたは他の病態、疾患、または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的有効量の本明細書に記載の組換えクロトータンパク質を投与することを含む、方法を含むことができる。いくつかの実施形態は、加齢に関係するもしくは他の病態、疾患、または障害を治療する方法であって、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1のアミノ酸残基1~981またはヒトアルファクロトーアイソフォーム2のアミノ酸残基1~549の少なくともサブセットに対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、薬学的有効量の可溶性組換えクロトータンパク質を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を含むことができる。いくつかの実施形態は、加齢に関係するもしくは他の病態、疾患、または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する可溶性組換えクロトータンパク質の薬学的有効量を投与することを含む方法を含むことができる。いくつかの実施形態は、哺乳動物対象における病態、疾患または障害、好ましくは加齢に関連する病態、疾患もしくは障害を治療および/または予防する方法であって、薬学的に許容される担体または賦形剤、および配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つ、好ましくは配列番号52、配列番号54、および配列番号66のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列を含む有効量の組換えタンパク質、および、任意選択でその間の任意のリンカー配列の有無にかかわらず、免疫グロブリンFcドメイン配列またはTwin-Strepタグ配列の少なくとも一部、を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法を含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態は、急性腎障害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、または他の病態を治療または予防する方法であって、薬学的有効量の組換えクロトータンパク質をそれ必要とする対象に投与することを含み、タンパク質の少なくとも一部が、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1もしくはアイソフォーム2の1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、もしくは131~549のアミノ酸残基の少なくともサブセット、または配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部分に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、方法を含むことができる。くつかの実施形態は、哺乳動物対象における腎損傷を治療および/または予防する方法であって、薬学的に許容される担体または賦形剤、ならびに配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つ、好ましくは配列番号52、配列番号54、および配列番号66のうちの1つ、および任意選択でそれらの間の任意のリンカー配列の有無にかかわらず、免疫グロブリンFcドメイン配列またはTwin-Strepタグ配列の少なくとも一部の少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列を含む、有効量の組換えタンパク質、を含む薬学的組成物を、医療処置または腎毒素の投与の前および/または医療処置または腎毒素の投与後に、任意選択で予防的に対象に投与することを含む、方法を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態は、治療用クロトータンパク質、例えばcGMPグレードのヒト組換え可溶性アルファ-クロトータンパク質、および薬剤、抗体、ホルモン、ホルモン、ヒト細胞、組織、細胞または組織系の生成物(HCT/Ps)などの少なくとも1つの他の活性成分を含む組成物、ならびに/またはそれらをヒトもしくは非ヒト対象に投与する方法を含む。コンビナトリアル組成物および方法は、年齢に関係する障害または病態、代謝障害、慢性疾患、急性傷害などに罹患している被験体を治療するために有用であり得る。明白な病態または障害のない被験体への併用療法の予防的投与はまた、本明細書に記載のある特定の病態または障害を遅延または防止するのに有用であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態は、核酸または核酸構築物を含み得る。例えば、実施形態は、発現ベクターまたは核酸を含み得る。核酸は、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質、タンパク質断片、またはタンパク質多様体をコードし得る。核酸は、天然または非天然のシグナリング配列をコードし得る。例えば、核酸は、コードされたクロトータンパク質配列の上流(またはN末端)に非天然シグナリング配列をコードし得る。いくつかの実施形態は、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む核酸構築物、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つ、好ましくは配列番号52、配列番号54、および配列番号66のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列を含む組換えタンパク質、および任意選択でその間の任意のリンカー配列の有無にかかわらず、免疫グロブリンFcドメイン配列またはTwin-Strepタグ配列の少なくとも一部、を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態は、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を製造する方法を含み得る。製造方法は、液体培地中でチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を増殖させることと、CHO細胞中で組換え可溶性クロトータンパク質を産生することと、および/またはCHO細胞、液体培地もしくは両方からの組換え可溶性クロトータンパク質含有抽出物を精製することと、を含み得る。抽出物は、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の乾燥重量の組換え可溶性クロトータンパク質および/または約1~100ppm未満のCHO宿主細胞タンパク質(HCP)を含み得る。CHO細胞は、CHO-S細胞などのジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞、またはGS-/-CHO細胞などのグルタミン合成酵素(GS)欠損CHO細胞であり得る。産生された(発現された)タンパク質は、CHO細胞から液体培地に放出(例えば、分泌)され得、かつ/またはそれに結合した1つ以上のグリカンを有し得る。
【0021】
CHO細胞は、タンパク質、および任意選択的にジヒドロ葉酸還元酵素、グルタミン合成(GS)酵素などの機能性酵素をコードする1つ以上の外因性核酸を含有し得る。外因性核酸は、CHO細胞における外因性タンパク質の発現に慣習的または典型的に使用されるためのプロモーターなどの、プロモーター(例えば、強力なプロモーター、弱いプロモーターなど)を含み得る。外因性核酸は、好ましくは、配列番号76~配列番号106または配列番号121~配列番号124のうちの1つ、または本明細書に記載のクロトータンパク質をコードする任意の他の好適な核酸酸性配列(例えば、S-クロトー多様体)に対して、少なくとも80%の核酸配列同一性を有する導入遺伝子またはcDNA(例えば、プロモーターの制御下にある)を含み得る。
【0022】
方法は、トランスフェクションなどによって外因性核酸をCHO細胞に導入することを含み得る。方法は、(ヒト、ウシ、ウシ胎児、または他の)無血清および/または動物(または動物由来)タンパク質(成分)を含まない培地などの液体培地中でCHO細胞を増殖させることを含み得る。培地は、好ましくは、炭素源、窒素源、および/または1つ以上のビタミン、ミネラル、塩、アミノ酸、補充剤、もしくは添加剤を、好ましくはバイオリアクター内に含む。特定のCHO細胞株に応じて、方法は、有効量のメトトレキサート(MTX)、メチオニンスルホキシミン(MSX)、または他の薬剤を液体培地に導入することと、および/または(例えば、CHO細胞サブクローニング、限界希釈法、蛍光活性化細胞選別(FACS)などによって)、液体培地中で増殖する生存CHO細胞の懸濁培養物を選択することと、を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、選択および/または遺伝子増幅は、トランスフェトされた細胞を、ヒポキサンチンおよび/またはチミジン(例えば、-HT培地)、グルタミンなどを欠く培地などの選択培地中で培養することによって実施され得る。少なくとも1つの実施形態では、低濃度(複数可)のMTXを添加または使用して、トランスフェクトされた核酸(またはその遺伝子(複数可))を増幅し、それによって(例えば、DHFR導入遺伝子を用いてトランスフェクトされたDHFR欠損CHO細胞中で)タンパク質発現を増加するために選択する。あるいは(または加えて)、選択および/または遺伝子増幅は、少なくとも1つの(外因性)グルタミン合成酵素(GS)導入遺伝子を有するCHO細胞の懸濁培養物にMSX((内因性)グルタミン合成酵素(GS)の阻害剤)を添加することによって実施され得る。
【0024】
方法は、生存細胞または培養物(例えば、MTX耐性および/またはMSX耐性細胞または培養物)を継代培養することを含み得る。選択された懸濁培養物および/または選択されたCHO細胞は、タンパク質の産生増加(例えば、CHO細胞による)、タンパク質の濃度の増加(例えば、液体培地中への)、および/または、外因性核酸の(例えば、細胞当たりの)コピー数の増加(例えば、選択されなかった懸濁培養物またはCHO細胞と比較して)を有し得るか、または呈し得る。
【0025】
ある特定の実施形態は、複数のCHO細胞を含む細胞株を含み得る。例えば、CHO細胞は、CHO-S細胞などのDHFR欠損CHO細胞であり得る。CHO細胞は、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする(導入遺伝子またはcDNAを含む)(コピーの)外因性核酸を1つ以上含有することができる。ポリペプチドは、ヒト組換えアルファ可溶性クロトータンパク質を含み得る。外因性核酸は、好ましくは配列番号76~配列番号106または配列番号121~配列番号124のうちの1つと少なくとも80%の核酸配列同一性を有する導入遺伝子またはcDNAを含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は(また)、プロモーター(導入遺伝子に関連する)、および/または(機能性)ジヒドロ葉酸還元(DHFR)酵素、グルタミン合成(GS)酵素などの任意選択的な(外因性)酵素を含み得るか、またはコードし得る。
【0026】
少なくとも1つの実施形態は、好ましくは炭素源、窒素源、および/または1つ以上のビタミン、ミネラル、塩、アミノ酸、補充剤もしくは添加剤を含み、CHO細胞が核酸によってコードされたポリペプチドを発現するような液体培地中で増殖する細胞株を含む、懸濁細胞培養物を含む。液体培地は、(ヒト、ウシ、ウシ胎児、または他の)無血清および/または動物(または動物由来)タンパク質(成分)を含まないものであり得る。例えば、液体培地は、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミンなどを含まないものであり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、液体培地はまた、有効量のMTXおよび/またはMSXを含み得る。懸濁培養物(またはそのCHO細胞)は、(例えばCHO細胞による)タンパク質の産生増加を呈し、(例えば、液体培地中で)タンパク質の濃度の増加を呈し、タンパク質を(例えば液体培地中へ)分泌し、および/または好ましくは選択されなかった懸濁培養物と比較して、外因性核酸のコピー数の増加(例えば、細胞当たり)を有し得る(ように選択される)。タンパク質は、それに結合した1つ以上のグリカンを有し得る。
【0028】
いくつかの実施形態は、CHO細胞、液体培地、または両方の懸濁細胞培養物の抽出物、またはそれらからの抽出物を含み、この抽出物は、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する組換えタンパク質を含有する。ある特定の実施形態は、CHO細胞、液体培地、または両方(例えば、懸濁細胞培養物)の、またはそれらからの、ヒト組換えアルファ可溶性クロトータンパク質含有抽出物を含む。少なくとも一実施形態は、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する単離組換えタンパク質を含む。
【0029】
いくつかの実施形態は、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質を、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物被験体に投与する方法を含み得る。クロトータンパク質が投与される被験体は、種々の病態(例えば、障害、疾患、傷害、病気など)に苦しんでいるか、またはそのリスクがあり得る。例えば、いくつかの実施形態は、(ヒト)加齢に関連する身体的、知能的、神経学的、または他の病態など、1つ以上の慢性疾患および/または加齢に関係する病態を治療する方法を含む。いくつかの実施形態は、1つ以上の機構または作用を通して治癒、回復、長寿化および/または他の有益な結果を促進し得る。実施形態は、例えば、薬学的有効量の組換え可溶性クロトータンパク質またはタンパク質多様体を、それを必要とする対象(例えば、病態を有するか、または病態を発症するリスクにある対象)に投与することを含むことができる。かかるタンパク質またはタンパク質多様体の投与は、ヒト被験体における慢性および/または年齢に関係する疾患ならびに長寿化を含む、病態の経過および結果にポジティブな治療効果、ならびにその特徴を有し得る。
【0030】
薬学的有効量は、被験体の血清可溶性クロトータンパク質濃度を、血清1ミリリットル当たり、約50~3000ピコグラムを上回る、これらと同等、またはこれらの間の可溶性クロトータンパク質などの所定レベルまで上昇させるのに十分であり得る。その量はまた、またはあるいは、所定の期間の間、所定の閾値以上で被験体の血清可溶性クロトータンパク質濃度を維持するのに十分であり得る。実施形態はまた、所定の期間にわたって対象の血清可溶性クロトータンパク質濃度を所定の閾値以上で維持するように、タンパク質をそれを必要とする対象に投与することを含むことができる。
【0031】
実施形態はまた、被験体の血清可溶性クロトータンパク質濃度を測定することと、薬学的有効量を計算することと、被験体の血清中の可溶性クロトータンパク質の低下速度を測定することと、被験体の血清可溶性クロトータンパク質濃度が、測定された速度に基づいて第2の所定のレベル以下になるであろう次の投薬時間を計算することと、被験体の血清可溶性クロトータンパク質濃度を第2の所定のレベルから第1の所定のレベルまで上昇させるのに十分なタンパク質の次の投与量を計算することと、および/または、タンパク質の次の投薬量を被験体に投与することと、を含み得る。
【0032】
タンパク質は、IGF-1および/もしくはWntシグナリング経路を調節し得る(調節するために有効であり得)、β-グルクロニダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ活性を呈し得る、p53/p21シグナリング経路を抑制し得る、ならびに/または好ましくは、p53/p21シグナリング経路の抑制を介して、H2O2によって誘発される細胞老化およびアポトーシスを低減し得る。タンパク質は、好ましくは多面発現活性を呈し、ならびに/または好ましくは酸化ストレス、増殖因子シグナリング、イオン恒常性の調節、および/もしくは1つ以上のイオンチャネルタンパク質および/もしくはインスリン/インスリン様増殖因子-1受容体などの増殖因子受容体などの細胞表面上での糖タンパク質の活性の調節において、体液性因子として機能し得るか、または機能的であり得る。
【0033】
タンパク質はまた、虚弱、骨密度喪失または骨ミネラル密度低下、体重低下、筋肉萎縮または退化、筋量低下、筋力、握力、脚力または体力の低下、動作、動作自由、生活の質評価、駆出率、運動能力の低下、学習力、学習能力、記憶力、または知能指数の低下、認知力劣化または健忘症、認知能力または機能の低下、シナプス可塑性またはシナプス機能の低下、および細胞老化などの、1つ以上の加齢に関係する病態(または(ヒトの)加齢に関連する病態)を治療するために有効であり得る。
【0034】
タンパク質はまた、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症または血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または運動ニューロン疾患(MND)、心房細動、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、線維筋痛症、成人発症糖尿病、関節炎または関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、緑内障、白内障、黄斑変性および他の眼疾患/障害、多発性硬化症(MS)、狼瘡、および/または潰瘍性大腸炎などの、1つ以上の加齢に関係する病態(または(ヒトの)加齢に関連する病態)を治療するために有効であり得る。
【0035】
したがって、実施形態はまた、1つ以上の加齢に関係する病態または他の病態の治療に使用するための組成物も含み得る。組成物は、組換え可溶性クロトータンパク質(例えば、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する)、および薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態は、治療用クロトータンパク質、例えばcGMPグレードのヒト組換え可溶性アルファ-クロトータンパク質、および薬剤、抗体、ホルモン、ホルモン、ヒト細胞、組織、細胞または組織系の生成物(HCT/Ps)などの少なくとも1つの他の活性成分を含む組成物、ならびにそれらをヒトもしくは非ヒト対象に投与する方法を含む。コンビナトリアル組成物および方法は、年齢に関係する障害または病態、代謝障害、慢性疾患、急性傷害などに罹患している被験体を治療するために有用であり得る。明白な病態または障害のない被験体への併用療法の予防的投与はまた、本明細書に記載のある特定の病態または障害を遅延または防止するのに有用であり得る。
【0037】
本開示の様々な実施形態では、生成物またはプロセスにかかわらず、組換えクロトータンパク質は、配列番号1~配列番号38のうちの1つと80%~100%の配列同一性を有し、好ましくは、配列番号74の配列のうちの少なくとも一部に対して80%~100%の配列同一性を有するC末端タグを有し、任意選択的にその間に配置される配列番号73と80%~100%の配列同一性を有するリンカー配列を有する、配列、または、配列番号75、配列番号102、配列番号103、もしくは配列番号104の配列のうちの1つと80%~100%の配列同一性を有し、任意選択的にリンカーまたはプロテアーゼ認識配列を有し、好ましくは、その間に配置される配列番号105もしくは配列番号106と80%~100%の配列同一性を有する、C末端タグ、を有するクロトータンパク質のうちの1つを含むことができる。タンパク質は、任意選択的に、配列番号71または配列番号72と、80%~100%の配列同一性を有するシグナリング配列を含み得るか、またはそれを用いて発現され得る。好ましくは、(製造、産生、発現または投与される)タンパク質は、配列番号39~配列番号70のうちの1つ、より好ましくは配列番号52のうちの1つ、配列番号54のうちの1つ、または配列番号66のうちの1つに対して、80%~100%の配列同一性を有する。
【0038】
組換えクロトータンパク質を製造する例示的な方法は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中、好ましくはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞中、より好ましくはCHO-S細胞中、または好ましくはグルタミン合成酵素(GS)欠損CHO細胞中、より好ましくはGS-/-CHO細胞中で、組換えクロトータンパク質を産生することを含み、タンパク質が、好ましくは配列番号2~配列番号70、または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0039】
例示的な細胞株は、好ましくはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞中、より好ましくはCHO-S細胞中、または好ましくはグルタミン合成酵素(GS)欠損(CHO)細胞中、より好ましくはGS-/-CHO細胞中の複数のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞であって、外因性核酸を含有するCHO細胞が、プロモーター、好ましくは強力なプロモーターを含む、複数のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含み、ポリペプチドであって、ポリペプチドの少なくとも一部が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、ポリペプチドと、任意選択的に、機能性ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)酵素、または機能性グルタミン合成(GS)酵素と、をコードする。
【0040】
例示的な懸濁細胞培養物は、液体培地、好ましくは無血清および/または動物タンパク質成分を含まない液体培地であって、好ましくは炭素源、窒素源、および1つ以上のビタミン、ミネラル、塩、アミノ酸、補充剤、または添加剤を含み、より好ましくは、液体培地が、ヒポキサンチン、チミジン、および/またはグルタミンを欠く、液体培地と、CHO細胞が核酸によってコードされたポリペプチドを発現するような液体培地中で増殖する、請求項14~17のいずれか1項に記載の細胞株と、を含み、ポリペプチドが、組換えクロトータンパク質を含む。
【0041】
例示的な組換えクロトータンパク質は、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を含む。
【0042】
加齢に関係するまたは他の病態、疾患、または障害を治療する例示的な方法であって、それを必要とする被験体に、薬学的有効量の、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1のアミノ酸残基1~981の少なくともサブセットと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、可溶性組換えクロトータンパク質を投与することを含む、方法。
【0043】
加齢に関係するもしくは他の病態、疾患、または障害を治療する例示的な方法であって、それを必要とする対象に、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する可溶性組換えクロトータンパク質の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【0044】
例示的な医薬組成物は、薬学的有効量の組換え可溶性クロトータンパク質と、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1もしくは2の1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、もしくは131~549のアミノ酸残基の少なくともサブセット、または配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質の少なくとも一部と、薬学的に許容可能な担体と、を含む。
【0045】
急性腎障害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、または他の病態を治療または防止する例示的な方法は、それを必要とする対象に、薬学的有効量の組換え可溶性クロトータンパク質を投与することを含み、タンパク質の少なくとも一部が、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1もしくは2の1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、もしくは131~549のアミノ酸残基の少なくともサブセット、または配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0046】
高齢な個体を治療する例示的な方法であって、高齢な個体が、クロトータンパク質または非(有害)変異をコードする遺伝子において(有害)ホモ接合またはヘテロ接合変異を有する、方法。方法は、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する治療濃度のポリペプチドを投与することを含む。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態は、癌を治療すること、患者の血清リン酸レベルを低下させること、治療を必要とする対象の糖尿病または糖尿病関連病態(例えば、1型糖尿病など)を治療すること、対象の心臓の病態(例えば、心血管疾患、左心室肥大(LVH)、病理学的LVHおよび/または鬱血性心不全など)を治療すること、対象の急性肺損傷を治療すること(例えば、ナノ粒子を用いること)、酸化的損傷から患者の肺を保護すること、重症患者の早期急性腎損傷を検出すること、対象の血管石灰化を軽減すること、認知を改善させること、腎虚血および/または肝虚血を治療すること、(ヒト)老化内皮細胞のストレス反応を調節すること、急性および/もしくは慢性の腎障害、疾患、もしくは疾患の進行、および/もしくは尿毒症性心筋症を予防的および/もしくは治療的に治療、予防、軽減、阻止および/または逆転させること、加齢関連治療抵抗性メラノーマを逆転または軽減させること、老化細胞のアポトーシスを標的とし、好ましくはそれにより組織恒常性を回復させること、および他の様々な適応のうちの1つ以上において有用であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態は、本開示の他の態様または実施形態を含む、本開示の他の場所に記載された特性、選択肢、および/または可能性のいずれかを含み得る。本明細書に記載の前述の、以下の、および/または他の特性の各々はまた、本開示の別個の実施形態を表すことにも留意されたい。さらに、かかる特性のうちの任意の2つ以上の組み合わせは、本開示の別個の実施形態を表す。かかる特性または実施形態はまた、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の好適な組み合わせおよび/または順序で組み合わされ得る。したがって、本明細書に記載の特性の各々は、任意の好適な組み合わせおよび/または順序で、本明細書に記載の任意の1つ以上の他の特性と組み合わされ得る。したがって、本開示は、本明細書に詳細に記載される例示的な実施形態の特定の組み合わせに限定されない。
【0049】
本開示の例示的な実施形態の追加の特性および利点は、以下の説明に記載され、その一部は説明から明らかになるか、またはかかる例示的な実施形態の実施によって習得され得る。かかる実施形態の特性および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される機器および組み合わせによって実現および取得され得る。これらの特性および他の特性は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、または以下に記載のようなかかる例示的な実施形態の実施によって習得され得る。
【0050】
本開示の上に列挙され、かつ他の利点および特性が得られ得る方式を説明するために、上で簡潔に説明された実施形態のより具体的な説明は、添付図面に示されているその特定の実施形態を参照することによって提供されるであろう。より良好な理解のために、同様の要素は、図(複数可)全体を通して同様の参照番号によって表記されている。これらの図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものではないとみなされることを理解することによって、本開示は、添付の図面(複数可)の使用を通して追加の特異性および詳細とともに記載および説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本開示の一実施形態による、様々なクロトータンパク質の細胞産生を示す模式図である。
【
図2A】ヒトα-クロトーのアイソフォーム1およびアイソフォーム2の概略構造、およびC~D(残基800~900)の生成に使用される抗体結合のためのエピトープの位置を示す。
【
図2B】それぞれ赤色および緑色で示されたKL1およびKL2、ならびに強調表示された(黒色)TMを含む、1012アミノ酸の全長α-クロトータンパク質配列を示す。
【
図2C】ヒト細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す。
【
図2D】ヒト組織のウェスタンブロット分析を示す。
【
図3A】2010年に、ある特定のアミノグリコシドを投与された成人患者の数を示す。
【
図3B】
図3Aに示されたアミノグリコシドを投与された成人患者の年齢分布を示す。
【
図4A】配列番号52の全長細胞外ドメイン-Fc融合タンパク質の還元、変性ウェスタンブロット分析である。
【
図4B】配列番号52の全長細胞外ドメイン-Fc融合タンパク質の非還元、変性ウェスタンブロット分析である。
【
図5A】配列番号66の全長細胞外ドメイン-Twin-Strep付加後に切断されたタンパク質の還元、変性ウェスタンブロットである。
【
図5B】配列番号66の全長細胞外ドメイン-Twin-Strep付加タンパク質の非還元、変性ウェスタンブロットである。
【
図6】種々の表示された組換えクロトータンパク質構築物のゲルである。
【
図7-1】各表示された組換えクロトータンパク質構築物についての一連のゲルである。
【
図7-2】各表示された組換えクロトータンパク質構築物についての一連のゲルである。
【
図7-3】各表示された組換えクロトータンパク質構築物についての一連のゲルである。
【
図7-4】各表示された組換えクロトータンパク質構築物についての一連のゲルである。
【
図7-5】各表示された組換えクロトータンパク質構築物についての一連のゲルである。
【
図8A】各表示された組換えクロトータンパク質構造物のHPLCクロマトグラフである。
【
図8B】各表示された組換えクロトータンパク質構造物のHPLCクロマトグラフである。
【
図8C】各表示された組換えクロトータンパク質構造物のHPLCクロマトグラフである。
【
図8D】各表示された組換えクロトータンパク質構造物のHPLCクロマトグラフである。
【
図8E】各表示された組換えクロトータンパク質構造物のHPLCクロマトグラフである。
【
図8F】各表示された組換えクロトータンパク質構造物のHPLCクロマトグラフである。
【
図8G】各表示された組換えクロトータンパク質構造物のHPLCクロマトグラフである。
【
図9】12日間の試験の過程で示された群それぞれのラットの(+/-平均値の標準誤差、SEMバー)、平均体重(毎日の)変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示の様々な実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、それぞれの実施形態で変動し得る特定のパラメータ、言い回し、ならびに特定の例示されたシステム、方法、および/または生成物の説明のみに限定されないことが理解されるものである。したがって、特定の特性(例えば、構成、パラメータ、特性、ステップ、構成要素、成分、部材、要素、部品、および/または部分など)を参照して、本開示のある特定の実施形態は、詳細に説明されるが、説明は例示的なものであり、本開示および/または特許請求される発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。加えて、本明細書で使用される用語は、実施形態を説明する目的のためであり、必ずしも本開示および/または特許請求される発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0053】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
システム、方法、および/または生成物を含む本開示の様々な態様は、本質的に例示的な1つ以上の実施形態を参照して例示され得る。本明細書で使用される場合、用語「実施形態」は、「例、事例、または例示としての役割を果たす」ことを意味し、本明細書に開示の他の態様よりも好ましいまたは有利であると必ずしも解釈されるべきではない。加えて、本開示または本発明の「実施形態」への言及は、添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を限定することなく、例示的な例を提供することを意図している。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、別段の明確な指示がない限り、単数および複数の指示対象の両方であると各々考慮され、含み、かつ具体的に開示する。例えば、「タンパク質」への言及は、1つ、ならびに複数の(例えば、2つ以上、3つ以上など)タンパク質を考慮し、かつ具体的に開示する。同様に、複数の指示対象の使用は、必ずしもかかる指示対象の複数を必要としないが、別段の明確な指示がない限り、かかる指示対象の単数ならびに複数の支持を考慮し、含み、具体的に開示し、かつ/または提供する。
【0055】
本開示全体を通して使用されるように、「し得る(can)」および「してもよい(may)」という言葉は、強制的な意味(すなわち、しなければならない(must)、を意味する)ではなく、許容的な意味(すなわち、可能性を有することを意味する)で使用される。さらに、「含む(including)」、「有する(having)」、「含む(involving)」、「含有する(containing)」、「特徴とする(characterized by)」という用語、その変形(例えば、「含む(includes)」、「有する(has」」および「含む(involves)」、「含有する(contains)」など)、ならびに特許請求の範囲を含む本明細書で使用される同様の用語は、包括的でありかつ/または変更可能であるものとし、例示的に、言葉「含む(comprising)」およびその変形(例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」が同じ意味を有するものとし、かつ追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。
【0056】
簡潔にするために、本開示は、数値のリストまたは範囲を列挙してもよい。しかしながら、数値のかかるリストまたは数値の範囲(例えば、より大きい、より小さい、最大で、少なくとも、および/または約ある特定の値、および/または2つの列挙された値の間)が開示または列挙されている場合、開示の値またはリスト、または値の範囲内にある任意の特定の値または値の範囲は、同様に、本明細書に具体的に開および考慮されることが理解されるであろう。例示的な例として、「少なくとも80%のアミノ酸配列同一性」または「80%~100%のアミノ酸配列同一性」の開示は、(i)81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%を含む、80%から100%の間の任意の全パーセンテージ値、ならびにその間のパーセント値の小数部分、ならびに/または(ii)非限定的な例として、81%~100%、82%~100%、83%~100%、84%~100%、85%~100%、86%~100%、87%~100%、88%~100%、89%~100%、90%~100%、91%~100%、92%~100%、93%~100%、94%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、および99%~100%を含む、80%から100%の間のパーセンテージ値の任意の範囲の具体的な開示を含む。
【0057】
理解を容易にするために、可能な場合は、本開示の異なる実施形態に共通の同様の要素を表記するために、同様の参照(すなわち、構成要素および/または要素の同様の名称)が使用されている。同様に、同様の構成要素、または同様の機能を有する構成要素には、可能な場合は、同様の参照表記で提供されるであろう。本明細書では、例示的な実施形態を説明するために特定の言語が使用されるであろう。それでもなお、それによって本開示の範囲を限定することを意図しないことが理解されるであろう。むしろ、例示的な実施形態を説明するために使用される言語は、(かかる言語が不可欠であると明らかに本明細書に記載されない限り)例示に過ぎず、開示の範囲を限定するものと解釈されるものではないことが理解されるものである。
【0058】
詳細な説明は段落に分かれているが、各段落内の段落見出しおよび内容は、構成的な目的のみのためであり、独立した説明および実施形態であること、または説明もしくは特許請求の範囲を限定することを意図しない。むしろ、詳細な説明の中の各段落の内容は、1つの段落の要素が他の段落に関係し、かつ/または他の段落の特徴をなし得る集合的な全体として読み取られ、理解されることを意図する。したがって、1つの段落内に具体的に開示される実施形態はまた、同じおよび/または同様の生成物、方法、および/または用語を有する別の段落において、追加のおよび/または代替的な実施形態に関係し得、かつ/または機能し得る。
【0059】
本開示の実施形態は、(医薬品適正製造基準(Current Good Manufacturing Practice)(cGMPグレードの)ヒト組換え可溶性アルファ-クロトータンパク質、タンパク質断片、および/またはタンパク質多様体などの組換えヒトクロトータンパク質を、製造および/または使用する生成物、組成物および/または方法を含む。
【0060】
遺伝子治療は、動物実験において有効であり得る。しかしながら、遺伝子治療の安全性、特にヒト治療の安全性は依然として疑わしい。動物(細胞)へのクロトー遺伝子のウイルス送達と比較して、ヒトにおける外因性および/または組換えクロトータンパク質の投与は、(内分泌で)クロトーレベルを回復するための、より安全、より簡単、かつより直接的な様式であり得る。したがって、CKD患者の貧血を治すためのエリスロポエチンまたは赤血球生成刺激剤の投与、および/またはI型糖尿病の正常なグルコース代謝を維持するためのインスリンの投与と同様に、近い将来、外因性(ヒト組換えアルファ可溶性)クロトータンパク質の投与は、高齢者および/または加齢に関係する障害を治療するための現実的かつ有効な選択肢となり得る。例えば、ヒトへの外因性(ヒト組換えアルファ可溶性)クロトータンパク質の投与は、幹細胞の枯渇を逆転もしくは遅延させ、かつ/または年齢に関連する虚弱もしくは他の病理学的プロセスを軽減する、有効な方策であり得る。
【0061】
前臨床データは、年齢に関係する疾患およびクロトー欠損に関連する疾患に対する、可溶性クロトータンパク質の治療の潜在性を立証している。疫学的データは、可溶性クロトーが若年成人よりも高齢者で低く、可溶性クロトーのレベルが年齢と逆相関することを示しており、加齢は可溶性クロトーの低下と関連していることを示し得る。
【0062】
定義された用語の概略リスト
前述の範囲および内容ならびに以下に記載の説明および特許請求の範囲の理解を助けるために、選択されたいくつかの用語を以下に定義する。
【0063】
用語「病態」とは、当業者によって理解されるように、患者に現れるかまたは予期される任意の障害、疾患、傷害または病気を指す。かかる病態の現れは、病態前の症状、予兆、または現れを含む、当該技術分野で既知の早期、中期または後期段階の現れであり得る。かかる病態の予測は、科学的もしくは医学的根拠、リスク評価、または単なる不安もしくは恐怖のいずれに見出されるかにかかわらず、病態の予測、想定、期待、想像、想定、および/または憶測される発生であり得るか、またはそれらを含み得る。
【0064】
本明細書で使用される「患者」という用語は、「対象」という用語と同義であり、本明細書で定義されるように、特に(i)ヒト(医師、看護師、医療助手または医療ボランティアの保護下の)および(ii)非ヒト哺乳動物などの非ヒト動物(獣医師または他の獣医学専門家、助手、またはボランティアの保護下の)に関して、一般に、医療専門家の保護下の任意の動物を指す。
【0065】
本明細書で使用される「医療専門家」という用語は、一般に、ヒト、および非ヒト哺乳動物などの非ヒト動物を含む動物に保健医療を提供する責任を負う個人または組織を指し、助手、技術者、および/またはボランティアなど、有資格保健医療提供者または無資格提供者、特に(包括的な)免許または医療提供者の保険の対象となる者に重点を置いている。この用語は、文脈上適切な場合、腫瘍医、外科医、または医師助手、看護師、採血技師(phlebotomist)、獣医師などを含んでもよい。
【0066】
用語「癌」とは、異常な、典型的には制御されていない細胞増殖を指す。本明細書で使用される場合、「癌細胞」は、異常な、典型的には制御されない増殖を有する悪性細胞を含む。このように、癌という用語は、典型的には制御されない方式で増殖する悪性細胞を特徴とする、複数の異なる別個の疾患を包含する包括的な用語である。
【0067】
用語「共投与」および同様の用語は、2つ以上の成分の並行、連続および/または併用投与を意味する。例えば、2つの成分は、各成分を別々の投薬量で並行、同時、または連続投与(例えば、ある期間によって隔てられた別個の投与)することによって、共投与され得る。期間は、非常に短いか(例えば、実質的に第1の投与の直後に)、またはそれより長く(例えば、1~60秒、1~60分、1~24時間、1~7日、1~4週間、1~12ヶ月など、またはそれらの間の任意の値もしくは値の範囲)てもよい。並行または同時投与には、2つ以上の成分の投与時間枠の重複、または2つ以上の成分の混合物を含む組み合わせ生成物の投与が含まれ得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「核酸」および同様の用語は、DNAまたはRNAまたはDNA-RNAハイブリッド、一本鎖または二本鎖、センスまたはアンチセンスのいずれかの、天然型または合成のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。特に、核酸としては、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNAまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。本開示の核酸としてはまた、当該技術分野で既知のヌクレオチドまたは核酸類似体(例えば、BrdU)、および非ホスホジエステル(ヌクレオシド間)結合または主鎖(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはチオジエステル結合)が挙げられ得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「標準アミノ酸」としては、アラニン-ala-A;アルギニン-Arg-R;アスパラギン-asn-N;アスパラギン酸-asp-D;システイン-cys-C;グルタミン-gln-Q;グルタミン酸-glu-E;グリシン-gly-G;ヒスチジン-his-H;イソロイシン-ile-I;ロイシン-leu-L;リジン-lys-K;メチオニン-met-M;フェニルアラニン-phe-F;プロリン-pro-P;セリン-ser-S;スレオニン-thr-T;トリプトファン-trp-W;チロシン-tyr-Y;およびバリン-val-Vが挙げられる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「コドン最適化(codon optimized)」または「コドン最適化(codon optimization)」は、ヌクレオチド配列中のコドンを、その分子の発現のために使用される生物におけるコドン使用パターンに好ましくまたはより近似するコドンに修飾するかまたは変化させるプロセスを指す。したがって、核酸の発現の有効性を向上するために、例えば、より速い翻訳速度および高精度を達成するために、生物における既知のコドン使用に基づいて発現が望まれる特定の生物への使用のために、コドンを最適化し得る。特定の生物におけるコドン使用は、既知である。
【0071】
コード核酸分子は、修飾野生型、またはコドンが特定の宿主細胞中、例えばCHO細胞もしくは293細胞などの哺乳動物細胞、または酵母中、もしくは植物細胞、真核細胞などの中で発現するために最適化された、コドン最適化配列であり得る。
【0072】
特定の例では、核酸配列は、例えば、コードされた配列の発現レベルを増加させるために、コドン最適化され得る。特定のコドン使用は、修飾ポリペプチドが発現される宿主生物に依存する。当業者は、哺乳動物またはヒト細胞、例えば大腸菌もしくはサッカロマイセスセレヴィシエを含む細菌または酵母中での発現のために最適なコドンに精通している。例えば、コドン使用情報は、kazusa.or.jp.codonで入手可能なCodon Usage Databaseから入手可能である(データベースの説明については、例えば、Richmond(2000)Genome Biology,1:241を参照されたい。また、Forsburg(2004)Yeast,10:1045-1047、Brownら(1991)Nucleic Acids Research,19:4298、Sharpら(1988)Nucleic Acids Res.,12:8207-8211、Sharpら(1991)Yeast,657-78も参照されたい)。
【0073】
治療用タンパク質
本開示の実施形態は、1つ以上の治療用および/または組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質、タンパク質断片、および/またはタンパク質変異体を含み得る。
【0074】
タンパク質は、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1または2のアミノ酸残基1~1012、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549もしくは131~549の全てまたはサブセットを含み得る。タンパク質は、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1もしくは2のアミノ酸残基1~1012、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549もしくは131~549の全てまたはサブセットに対して、少なくともおよび/または約80%アミノ酸配列を有し得る。例えば、タンパク質の少なくとも一部は、配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部、またはそれらの2つ以上の組み合わせに対して、少なくとも80%などのアミノ酸配列同一性を有し得る。本出願に記載のタンパク質配列の他の部分または断片もまた、本明細書で考慮される。例えば、いくつかの実施形態は、配列番号1~75のうちの1つの任意の好適な一部、またはそれらの2つ以上の組み合わせと、少なくとも80%などのアミノ酸配列同一性を有する少なくとも一部を有するタンパク質を含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態は、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1と比較して1つ以上のアミノ酸変異体を有するタンパク質を含み得る。例示的には、タンパク質は、ヒトC370多様体を含み得る。例えば、タンパク質は、C370S変質を含むことができ、それによってS370を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、ヒトF352、またはF352V以外のものを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、タンパク質はC370S変化を含み得、それによってF352V多様体を含まず好ましくはF352を含む、S370を含む。タンパク質は、H193、またはH193R多様体以外のものを含み得る。ヒトアルファクロトーアイソフォーム1のアミノ酸残基(または位置)193、352、および/または370において、全ての他の標準アミノ酸置換が考慮され、本明細書に明示的に開示される。
【0076】
いくつかの実施形態は、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1のアミノ酸残基45における変異を含み得る。45位では、残基はバリン(Val;V)、フェニルアラニン(Phe;F)、または別のアミノ酸であり得る。
【0077】
タンパク質はまた、1つ以上の(それに結合した)グリカンを含み得る。例えば、天然ヒトアルファクロトーアイソフォーム1は、アミノ酸106、159、283、344、604、612および/または694で(グリコシル化を介して)結合したグリカンを有し得る。したがって、本開示のタンパク質またはそのクロトータンパク質配列は、(例えば、同じアミノ酸位置(複数可)で)(グリコシル化を介して)そこへ結合した同じ(または同様の)グリカンのうちの1つ以上を有し得る。好ましい実施形態では、タンパク質は、同じアミノ酸位置(複数可)でそこへ結合した同じまたは同様の(天然型)グリカンのうちの全てを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、シグナルペプチドまたはシグナリング配列を含み得る。例えば、タンパク質は、天然クロトーシグナリング配列を含み得る。タンパク質は、非天然または合成シグナリング配列を含み得る。いくつかの実施形態では、シグナリング配列は、N末端シグナリング配列および/またはクロトータンパク質配列の上流(またはN末端)であり得る。他の実施形態では、シグナリング配列はC末端であり得るか、または別の方法で配置され得る。好ましくは、シグナル伝達配列は、天然ヒトアルファクロトーアイソフォーム1シグナル伝達配列、天然ヒトアルファクロトーアイソフォーム2シグナル伝達配列、配列番号71または配列番号72と、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性であるか、それを含むか、または有することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、タンパク質はアミノ酸タグを含み得る。タグは、C末端タグおよび/またはクロトータンパク質配列の下流(またはC末端)であり得る。他の実施形態では、タグはN末端であり得るか、または別の方法で配置され得る。タグは、Fcペプチド(またはFc融合タグ、Fcドメインなど)であり得るか、またはそれを含み得る。例えば、タグは、IgG1-Fcタンパク質配列であり得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、タグは、配列番号74と、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性であるか、それを含むか、または有することができる。
【0080】
タグはまた、あるいは代替として、Twin-Strepタグまたはタンパク質配列などのTwin-Strepタンパク質配列を含むペプチドであるか、またはそれを含むことができる(例えば、当技術分野で既知のとおり)。好ましくは、シグナル伝達配列は、配列番号75、配列番号102、配列番号103、配列番号104に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性であるか、それを含むか、または有することができる。
【0081】
タグはまた、あるいは代替として、ポリシアル酸(PSA)であり得るか、それを含み得る。少なくとも一実施形態では、PSAタグは、コンジュゲート(クロトー)タンパク質を1つ以上のプロテアーゼに対して抵抗性にすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲート中にある量(例えば、比較的少量でさえ)のシアル酸を維持することは、プロテアーゼ攻撃、ならびにその後の分子の標的化、分解、およびクリアランス(例えば、肝臓を通して)を防ぐことができる。
【0082】
少なくとも1つの実施形態では、タグはタンパク質から切断され得る。他の実施形態では、タグはタンパク質の一部として保持され得る。いくつかの実施形態では、タグは、タンパク質の溶解度および/または(血清)半減期を向上することができる。いくつかの実施形態では、タグは、タンパク質精製の間に(例えば、精製機構の一部として)利用され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、クロトータンパク質配列とアミノ酸タグとの間に配置されたリンカー(例えば、アミノ酸リンカー)を含み得る。例示的に、リンカーは、1~40個のアミノ酸、好ましくは5~20個のアミノ酸、より好ましくは6~12個のアミノ酸、最も好ましくは約8~10個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、GSリンカー(例えば、(G4S)2リンカー)または他のリンカー(例えば、GGENLYFQリンカー)であり得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、リンカーは、配列番号73または配列番号105と、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性であるか、それを含むか、または有することができる。
【0084】
少なくとも一実施形態では、タンパク質は、米国食品医薬品局(FDA)によって決定および施行されるcGMP規則に準拠し得る。例えば、クロトータンパク質は、乾燥重量で少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、または99%純粋であり得る。いくつかの実施形態では、クロトータンパク質サンプルは、100万分率(ppm)約1~100未満、10億分率(ppb)約100~1000未満、または約1~100ppb未満、またはそれらの間に置かれる任意の値または値の範囲のCHO宿主細胞タンパク質(HCP)、核酸、および/または他の細胞成分を含み得る。
【0085】
核酸および発現ベクター
いくつかの実施形態は、核酸または核酸構築物を含み得る。例えば、実施形態は、発現ベクターまたは核酸構築物を含み得る。核酸は、本明細書に記載のように、組換えヒトアルファ可溶性クロトータンパク質、タンパク質断片、またはタンパク質多様体をコードし得る。少なくとも一実施形態では、核酸は、本明細書に記載のように、クロトータンパク質配列、任意選択的な(天然または非天然の)シグナル伝達配列(例えば、クロトータンパク質配列の複数のN末端もしくは単数のN末端の)、任意選択的なリンカー配列(例えば、GSリンカー)、および/またはアミノ酸タグ(例えば、IgG1-FcもしくはTEV-Twin-Strep)をコードすることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、核酸は、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1もしくは2のアミノ酸残基1~1012、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549もしくは131~549の全てまたはサブセットを含むタンパク質を発現し得る。タンパク質の少なくとも一部は、ヒトアルファクロトー(アイソフォーム1もしくは2)のアミノ酸残基1~1012、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、もしくは131~549の全てまたはサブセットと、少なくともまたは約80%のアミノ酸配列同一性を有することができる。例えば、タンパク質の少なくとも一部は、配列番号1~配列番号75のうちの1つの全てもしくは一部、またはその2つ以上の組み合わせに対して、少なくともおよび/または約80%のアミノ酸配列同一性を有することができる。好ましい実施形態では、タンパク質は、配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つの全部または一部に対して、少なくともおよび/または約80%のアミノ酸配列同一性を有することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、核酸の少なくとも一部は、配列番号76~配列番号106もしくは配列番号121~配列番号124のうちの1つ、またはその2つ以上の組み合わせに対して、少なくともおよび/または約80%(例えば、少なくとも約82%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、または100%のヌクレオチド配列同一性を有し得る核酸の少なくとも一部を有し得る核酸の少なくとも一部を有し得る。好ましい実施形態では、核酸は、配列番号76~配列番号106もしくは配列番号121~配列番号124のうちの1つと少なくともおよび/または約80%のヌクレオチド配列同一性を有することができる。
【0088】
本開示の核酸配列はまた、当該技術分野で既知の停止コドン(例えば、TGA、TAG、TAA)を含み得る。
細胞株および製造方法
本開示の一実施形態は、細胞株を含み得る。細胞系は、CHO細胞、HEK細胞、HL-60細胞、または当該技術分野で既知の他の細胞株などの任意の好適な細胞型を含み得る。例示的に、細胞株は、CHO細胞(例えば、複数のCHO細胞)を含み得る。いくつかの実施形態では、CHO細胞は、(1コピー以上の)外因性核酸を(各々)含有し得る。核酸は、配列番号1~配列番号75のうちの1つ、またはその2つ以上の組み合わせ、好ましくは配列番号2~配列番号70のうちの1つと、少なくともおよび/または約80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0089】
核酸は、少なくとも1つの導入遺伝子またはcDNAを含み得る。いくつかの実施形態では、核酸の少なくとも一部は、配列番号76~106もしくは配列番号121~124のうちの1つ、またはそれらの2つ以上の組み合わせ、好ましくは配列番号76~配列番号106もしくは配列番号121~配列番号124のうちの1つと、少なくともおよび/または約80%の核酸配列同一性を有することができる。核酸は、プラスミドまたは他の(構造的な)形態の核酸であり得るか、またはそれを含み得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、外因性核酸は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)および/またはグルタミン合成酵素(GS)などの機能性酵素をコードし得る。少なくとも1つの実施形態では、CHO細胞は、CHO-S細胞などのジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞であり得るか、またはそれを含み得る。核酸は、プロモーター(例えば、当業者によって理解されるように、弱いプロモーターから強いプロモーター)を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つと、少なくとも80%などの核酸配列同一性を有する導入遺伝子に関連する(強力な)プロモーターを含むことができる。したがって、導入遺伝子は、プロモーターの制御下にあり得る。
【0091】
便宜上、本開示全体を通して、CHO細胞および/または細胞株について言及されている。しかしながら、他の細胞、細胞株および/または宿主細胞(CHO細胞に加えて)もまた、本開示の範囲内で考慮されることに留意されたい。したがって、CHO細胞および/または細胞株への言及はまた、他の既知の細胞、細胞株および/または宿主細胞への言及および/または使用も考慮する。
【0092】
トランスフェクション
CHO細胞株を製造する方法は、好ましくはトランスフェクションまたは当該技術分野で既知の他の技術を介して、外因性核酸をCHO細胞に導入することを含み得る。少なくとも一実施形態では、CHO細胞株の無血清増殖最適化細胞懸濁液を、プロモーター、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードするヒトアルファS-クロトー導入遺伝子、および選択可能な(酵素)マーカーを含有する核酸(プラスミド)の挿入のための宿主細胞株として使用した。導入遺伝子はそれぞれ、ヒトアルファ可溶性クロトーのアミノ酸1~981、29~981、または34~981をコードする。特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番号76~配列番号106もしくは配列番号121~配列番号124のうちの1つ以上に対応する配列部分(複数可)を有する(または、配列番号76~配列番号106もしくは配列番号121~配列番号124のうちの1つと、少なくとも80%の核酸配列同一性を有する)。DHFR欠損CHO細胞株(CHO-S細胞株など)では、選択可能な(酵素)マーカーは外因性DHFRであった。他のCHO細胞株では、選択可能な(酵素)マーカーは外因性GSであった。
【0093】
増殖、選択および/または遺伝子増幅
いくつかの実施形態は、固体培地で、および/または液体培地中(例えば、懸濁細胞培養物中)、好ましくは無血清および/または動物(または動物由来の)タンパク質(成分)を含まない培地中で、細胞(例えば、トランスフェクトされた細胞および/またはCHO細胞)を増殖させることを含み得る。例えば、細胞は、ある期間の間、固体増殖培地上にプレートされ得る。細胞はまた、またはあるいは、懸濁培養物中で、および/または液体培地中で増殖され得る。液体培地は、好ましくは、炭素源、窒素源、および1つ以上のビタミン、ミネラル、塩、アミノ酸、補充剤、もしくは添加剤を含む。いくつかの実施形態では、培地はまた、ヒポキサンチンおよびチミジン(HT)、グルタミンなどを欠き得る。
【0094】
少なくとも1つの実施形態では、ある特定の期間後(例えば、トランスフェクション後48時間)に、細胞を集め(例えば、切り離し)、任意選択的に遠心分離し(例えば、5分間100×g)、および/または96ウェル付着培養プレート(例えば、血清補充された-HTおよび/または-グルタミン培地を含有する)などに(例えば、およそ2000細胞/ウェルで)播種し得る。ある特定の実施形態では、培地はまた、MTXおよび/またはMSXを含み得る。非トランスフェクト細胞は、選択後(例えば、-HTおよび/または-グルタミン培地中のMTXおよび/またはMSXへの曝露後、7~14日以内に死滅し得る。
【0095】
ある特定の実施形態では、CHO細胞は、(例えば、細胞当たり)少なくとも約2~10コピー、少なくとも約10~20コピー、少なくとも約20~30コピー、または少なくとも約30~50コピーの外因性核酸を含有し得る(含有するように選択され得る)。したがって、方法は、(例えば、細胞当たり)少なくとも約2~10コピー、少なくとも約10~20コピー、少なくとも約20~30コピー、または少なくとも約30~50コピーの外因性核酸を含有するCHO細胞を選択することを含み得る。例えば、(連続的にレベルを増加しながら)MTXおよび/またはMSXを、細胞に(例えば、約1nM~1μM、約10~100nMなどの濃度で)投与し得る。
【0096】
外因性DHFRでトランスフェクトされたDHFR欠損CHO細胞(CHO-S細胞株など)におけるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子増幅は、増殖培地中のメトトレキサート(MTX)のレベルを連続的に増加させることによって達成された。プラスミドはDHFRを含有するため、MTX(10~100nM)への曝露時に宿主細胞内のS-クロトー遺伝子(断片)の増幅が可能になる。GS遺伝子発現系もまた使用して、外因性GSでトランスフェクトされたCHO細胞を増幅した(例えば、MSXへの曝露時)。あるいは、GS-/-宿主細胞株もまた使用して、MSXの必要性が排除された。これらのステップは、S-クロトー遺伝子の多数のコピー(例えば、細胞当たり10~30コピーの遺伝子)の産生、およびトランスジェニック細胞株において得られるS-クロトータンパク質の高レベルの発現を生じた。
【0097】
いくつかの実施形態では、懸濁培養物中で、タンパク質は、CHO細胞から液体培地に分泌され得る。例えば、本開示のある特定のCHO細胞および/または細胞株は、(タンパク質を濃縮することなく)1リットルの液体培地当たり200~500mgのタンパク質、1リットルの液体培地当たり500~2000mgのタンパク質、1リットルの液体培地当たり2000~5000mgのタンパク質、またはそれらの間の任意の値または値の範囲の濃度で分泌し得る(または分泌するように選択され得る)。少なくとも1つの実施形態では、(選択された懸濁培養物または選択された細胞株の懸濁培養物の)培地中のヒト組換えアルファ可溶性クロトータンパク質の濃度が、タンパク質を濃縮することなく、少なくとも200mg/L、好ましくは少なくとも500mg/L、より好ましくは少なくとも1000mg/L、さらにより好ましくは少なくとも2000mg/L、なおより好ましくは少なくとも5000mg/Lであるように、高産生細胞株(または懸濁培養物)が選択され得る。
【0098】
制限された細胞希釈によって得られた高S-クロトー産生導入遺伝子含有コロニーのサブクローニングを行って、細胞条件培地へS-クロトーを500~2000mg/Lの範囲で分泌するS-クロトー分泌CHO細胞株をさらに産生した。全ての細胞構築物を制限消化し、配列を確認した。
【0099】
いくつかの実施形態では、CHO細胞は、少なくとも10リットル、好ましくは少なくとも25リットル、より好ましくは少なくとも50リットル、さらにより好ましくは少なくとも100リットル、なおより好ましくは少なくとも250リットル、なおより好ましくは少なくとも500リットル、なおより好ましくは少なくとも1,000リットル、なおより好ましくは少なくとも2,000リットル、なおより好ましくは少なくとも2,500リットル、なおより好ましくは少なくとも5,000リットル、なおより好ましくは少なくとも10,000リットルの容積または作業容積を有するバイオリアクター内で、増殖され得る。
【0100】
細胞株の維持
任意選択的な細胞サブクローニング前に増幅された高産生S-クロトー細胞株(例えば、DHFR/MTXまたはGS/MSX系によって産生された)については、スケールアップ中および最終的なバイオリアクターの運転まで、細胞株産生に投与される濃縮培地原料を慎重に使用して、無血清および動物性タンパク質成分を含まない基礎培地中で行った。
【0101】
高産出性細胞株のスケールアップは、振盪フラスコ内またはウェーブバッグシステム(Wave Bag systems)内の細胞懸濁液中で細胞接種材料の増殖、続いて100Lおよび次いで500L容積のバイオリアクターで産生された細胞の連続接種によって行った。細胞生存率は、振盪フラスコ、ウェーブバッグ、またはバイオリアクター内での増殖サイクル全体を通して、85%を超える生存細胞で、次いでCHO細胞増殖のプラトー期の間にバイオリアクター中の生存細胞数を80%以上で維持され、産生されるS-クロトーが最大1~3g/Lで付随して産生される(「高産生性」と表記する)。
【0102】
タンパク質産生
ある特定の実施形態は、哺乳動物(例えば、CHO)細胞におけるクロトータンパク質の治療量の産生のために、強力なプロモーター配列および/または高コピー数のプラスミドを利用する組換えDNA方策を採用し得る。少なくとも1つの実施形態では、例えば、DHFR欠損CHO細胞におけるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子増幅は、メトトレキサート(MTX)を提供すること、および/または(連続的にレベルを増加しながらの)MTXの使用を含み得る。同様に、外因性グルタミン合成酵素(GS)遺伝子含有CHO細胞は、メチオニンスルホキシミン(MSX)で処理され得る。
【0103】
クロトータンパク質はまた、(それに結合した)1つ以上のグリカンを含み得る。例えば、天然ヒトアルファクロトーアイソフォーム1(配列番号1)は、アミノ酸106、159、283、344、604、612および/または694で(グリコシル化を介して)結合したグリカンを有し得る。本開示のクロトータンパク質は、(例えば、同じアミノ酸(複数可)に)(グリコシル化を介して)そこへ結合した同じ(または同様の)グリカンのうちの1つ以上を有し得る。
【0104】
少なくとも一実施形態では、タンパク質は、米国食品医薬品局(FDA)によって決定および施行されるcGMP規則に準拠し得る。例えば、クロトータンパク質は、乾燥重量で少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、または99%純粋であり得る。いくつかの実施形態では、クロトータンパク質サンプルは、100万分率(ppm)約1~100未満、10億分率(ppb)約100~1000未満、または約1~100ppb未満、またはそれらの間に置かれる任意の値または値の範囲のCHO宿主細胞タンパク質(HCP)、核酸、および/または他の細胞成分を含み得る。
【0105】
産生されたS-クロトータンパク質の存在するグリカン構造は、ヒトの体液(すなわち、血液、血清、尿、脳脊髄液)から単離された天然S-クロトー構造体の構造と比較して、同様または同一であり得る。少なくとも1つの実施形態では、天然様グリカンの確認は、正しい天然の翻訳後修飾(PTM)が生成され、S CHO細胞産生S-クロトータンパク質において安定に維持されることを確実にし得る。
【0106】
クロトータンパク質の溶解度および/または半減期延長
ヒトS-クロトータンパク質の半減期を延長し、溶解度を増加させるための方法および組成物が開示される。また、これらの結果を達成するためにそのように産生されたタンパク質構築物の精製および特徴評価も、本開示の主題である。クロトー遺伝子または核酸構築物の配列(配列番号76~96を参照されたい)においてなされた核酸変化、および/またはクロトータンパク質のアミノ酸配列(配列番号1~70を参照されたい)における変化または化学的変質、および/またはクロトータンパク質のアミノ酸配列に対する化学基、ペプチド、またはタンパク質の付加または除去に関する関連情報は、天然クロトー分子のものよりも増加した生物学的半減期または生物学的マトリックス(血液、脳脊髄液、尿、または様々なヒト組織など)への増大した溶解度を有する、得られるヒトクロトー多様体タンパク質(新規組成物)を得るために本開示に教示されている。これらの新規組成物は、S-クロトータンパク質の修飾のために本明細書に記載の方法を通して作製され得る。
【0107】
例示的には、融合タンパク質構築物は、S-クロトータンパク質を、抗体(IgG)、ヒト血清アルブミン(HSA)などのアルブミン、ヒトトランスフェリン(TF)などのトランスフェリン、および/またはXTEN(登録商標)などの独自の組換えポリペプチドのFcドメインと組み合わせることによって作製することができる。新規タンパク質は、S-クロトータンパク質を、ポリシアル酸(PSA)またはペグ化などの翻訳後修飾と共役(または修飾)することによっても産生することができる。さらに、新規S-クロトータンパク質は、ペグ化を介して産生することができる。上記および他の(半減期延長)方法論は、S-クロトー投与間隔を増加させること、優れた患者利便性およびコンプライアンス可能性を提供すること、投与頻度の要件を減らし、その結果、総計での薬物使用量が減少すること、薬のコストを下げること、親タンパク質と同じ投与間隔でより少ない薬物量、投与製剤を単純化し、皮下製剤を可能にすること、親タンパク質と同じ用量および投与間隔を用いてより高い薬物レベルを提供することにより、より長い薬物曝露および潜在的により良好な有効性がもたらされること、およびS-クロトーの免疫原性を減らすこと、のうちの1つ以上によってS-クロトータンパク質の性能を改善することができる。
【0108】
S-クロトーのFcドメイン融合タンパク質構築物の産生
抗体Fcドメイン、ヒト血清アルブミン(HSA)、およびポリシアル酸(PSA)における半減期を延長し、ヒトS-クロトータンパク質の溶解度を増加させる有効性について試験した。Fc融合物は、ペプチド、タンパク質または受容体エキソドメインの抗体のFc部分への融合を含む。Fc融合体とアルブミンの両方は、ペプチド薬剤のサイズの増大によって半減期の延長を達成するのみならず、両者はまた、新生児Fc受容体であるFcRnへの伸長タンパク質の結合を通して、身体の自然循環機構も利用する。FcRn受容体への伸長タンパク質の結合後、細胞のエンドソームにおける融合タンパク質の分解が防止される。Fcまたはアルブミンの添加に基づく融合は、典型的なPEG化または脂質化ペプチドについて報告されているものよりもはるかに長く、3~16日の範囲の生物学的半減期を生じ得る。Fc融合タンパク質、ヒト血清アルブミンへの融合、カルボキシ末端ペプチドへの融合、およびより望ましい薬物動態学的プロファイルを有するバイオベター薬剤を作製するための他のポリペプチド融合アプローチなどのタンパク質融合技術の使用について記載している論評については、その全体が特定の参照により本明細書に援用される、Strohl WRFusion Proteins for Half-Life Extension of Biologics as a Strategy to Make Biobetters.Biodrugs.2015;29(4):215-239を参照されたい。
【0109】
Fcドメインを、したがって、親タンパク質(S-クロトー)に添加して、Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性を増加した。FcRnは、血管を覆う内皮細胞のリソソーム内に存在し、ほとんどのタンパク質を循環中に短命にする分解から抗体を救済するように機能する。FcRnとの相互作用の結果として、タンパク質は、数日から数週間の範囲の半減期を有し、伸長された形態のタンパク質薬剤が、この新たに産生された組成物を有さない生物製剤よりも少ない投薬頻度を可能にする。
【0110】
Fcの二量体性質対HSAの単量体構造は、HSAとは対照的に、二量体または単量体としてのFc融合ペプチドの存在をもたらし得る。ペプチドFc融合物の二量体性は、S-クロトーの標的受容体が十分に近接して離間しているか、またはそれら自体が特にヒト標的器官で二量体である場合、結合活性効果を生じ得る。これは、標的に応じて、望ましい場合もあれば、そうでない場合もある。抗体Fcに対するS-クロトータンパク質の融合もまた、S-クロトーの溶解度および安定性を改善するために本開示で教示される。S-クロトーへのFcドメインの付加はまた、ヒト被験体への投与の際に融合タンパク質の免疫原性の低下を可能にする。
【0111】
S-クロトータンパク質のヒト血清アルブミン(HSA)との接合
ヒトIgGと同様の66.5kDaのタンパク質HSAは、19日の範囲で長い平均半減期を有する。約50mg/mL(約600μM)の濃度で、HSAはヒト血漿中で最も豊富に存在するタンパク質であり、血漿pH、代謝産物および脂肪酸輸送の維持、ならびに血圧維持の役割を含むいくつかの機能を有する。タンパク質の腎臓による糸球体濾過のためのサイズの上限であるHSAもまた、強いアニオン性であり、腎臓を介した濾過をさらに遅らせるのに役立つ。IgGと同様に、HSAもまた、IgG結合とは異なる部位で、かつIgG結合のものとは別個の機構を介したとしても、pH依存的方式でFcRnに結合し、IgGと同様にリサイクルされ、その半減期の延長が生じる。HSAはまた、腫瘍および炎症を起こした組織にも蓄積する傾向があり、アルブミンへの融合または結合は、タンパク質またはペプチドをそれらの部位に標的化するのに役立値ウル可能性があることを示唆している。
【0112】
これらの分子の血清半減期の延長のため、本質的に短い半減期特性を有するペプチドまたはタンパク質のHSAへの融合は、1990年代初期から広く研究されている。それ以来、革新的および潜在的なバイオベター分子の両方として、数十の異なるペプチドおよび小さなタンパク質がHSAに融合されている。市販承認された最初のHSA-ペプチドまたはタンパク質融合生成物は、Human Genome Sciences社で発見され、GlaxoSmithKlineによって開発および市販されている、Tanzeum(登録商標)(欧州連合においてEperzan(登録商標)として市販されている)DPP-4耐性GLP-1-HSA融合タンパク質であった。Tanzeum(登録商標)(アルビグルチド)は、2014年3月および4月にそれぞれ欧州医薬品局(EMA)およびFDAによって承認された。したがって、HSAは、薬理的に活性なGLP-1の半減期を、天然GLP-1については1~2分から4~7日に改善し、これにより毎週1回の投薬が可能になる。7つの他の既知のHSA融合タンパク質生成物候補が現在開発中であるか、または近年開発中である。また、Novozyme社はさらに、より長い半減期特性を有し得る「次世代」HSAタンパク質融合体の構築のために改良されたFcRn結合を有する組換えHSAの修飾型を開発している。これは、マウスおよびカニクイザルの両方における野生型分子よりもより長い半減期をHSAに与える、12倍高いFcRnへの親和性を有することが見出された、HSAのK573P変異体の使用に基づいていた。これらのより長い半減期のHSAの変異体は、融合タンパク質の半減期を改善するための融合タンパク質としてさらに使用され得ることが期待されている。
【0113】
したがって、本発明者らは、患者に優れた利便性および有望な服薬コンプライアンスなどの方策的な治療上の利点をもたらすために、本発明者らのクロトータンパク質を野生型HSAまたはHSAの変異体形態に融合させて、ヒト血液、脳脊髄液、および他のヒト生物学的マトリックスに、顕著に延長された半減期を有するクロトー融合分子(複数可)を産生し得ることを本明細書に開示し、低減された投薬頻度により、より少ない薬剤総使用量および/または商品費用の低減が生じる。また、親タンパク質と同じ投薬間隔で薬剤量を少なくすることにより、投薬処方を簡素化し、皮下処方を可能にし得るか、またはS-クロトーの免疫原性の減少を可能にし得る。
【0114】
S-クロトータンパク質のヒトトランスフェリン(TF)との接合
トランスフェリンは、非常に豊富な血清糖タンパク質であり、血清中に3~4mg/mLで見出され、これは強く可逆的に鉄を結合し、鉄を組織に運ぶように機能する。トランスフェリンは、679個のアミノ酸残基を有し、約80kDaの大きさであり、2つの高親和性Fe3+結合部位を有し、一方はN末端ドメインに、他方はC末端ドメインにある。ヒトトランスフェリンは、7~10日、または10~12日であると報告されている半減期を有する。総トランスフェリンプールの約2~8%を占めるヒトトランスフェリンのアグリコシル化形態は、14~17日間とわずかにより長い半減期を有する。ヒト血清中のトランスフェリンの長期持続性は、(受容体結合トランスフェリンを循環中に戻して再利用する)クラスリン依存性トランスフェリン受容体が介在する機構によるものである。
【0115】
ペプチドおよびタンパク質の融合物は、ヒトトランスフェリンのN末端およびC末端に、ならびにトランスフェリンの2つの主な突起部をともに連結する、中央に位置するヒンジ領域に作製されている。トランスフェリンのN末端は空いており、直接融合され得る。C末端は、より埋もれており、近くのジスルフィド結合によって拘束されているので、タンパク質がC末端に融合されているとき、典型的には可撓性リンカーが使用される。この能力は、特定の標的に対するペプチドのライブラリーを作製し、次いでそれらのライブラリーからのバインダーをアグリコ-トランスフェリン(N末端、C末端、ループまたはリンカー領域)へと融合することによって拡大されて、延長された半減期を有する治療用融合タンパク質へと構築された。
【0116】
バイオテクノロジー企業BioRexis Technologies, Inc.,は2002年に創設されて、トランスフェリン融合タンパク質プラットフォームを開発し、これを治療用プラットフォームとして、「Trans Body」プラットフォームと称した。それらのリード分子、BRX-0585は、2型真性糖尿病(T2DM)の治療のためのトランスフェリン-GLP-1融合タンパク質であった。トランスフェリンへのGLP-1の融合は、GLP-1の半減期を顕著に向上することが実証された。BioRexis社は、2007年3月にファイザー社によって買収された。確認され得る限りでは、BioRexis由来の融合タンパク質は現在のところ病院にはない。クロトータンパク質は、半減期、またはインビボでのヒト生物学的マトリックス中での安定性を顕著に延長するために、ヒトトランスフェリンに融合されてクロトー融合分子を産生することができ、かつ病院で投与されることができる。
【0117】
S-クロトータンパク質のAmunix社のXTENとの接合
XTEN(登録商標)は、治療用ペイロードのインビボ半減期を延長する、独占所有権下にある組換えポリペプチドである。XTENは、天然の親水性アミノ酸からなり、生分解性である。タンパク質、ペプチド、および合成化合物などの医薬品は、化学的接合または遺伝子融合を介してXTEN化され得る。XTENタンパク質は、二次および三次構造を欠き、その溶液挙動は、非常に大きな流体力学的半径を有する化学的に調製されたポリマーに似ている。サイズ排除クロマトグラフィーによって、XTENタンパク質ポリマーは、同様の分子量の典型的な球状タンパク質よりもはるかに大きく見える。XTENのバルキング効果は、結合した分子の腎クリアランスを大幅に低減し、したがってインビボ半減期を大幅に増大する。本発明では、クロトータンパク質に結合されるXTENポリマーの長さは、薬剤動態、ならびに結合されるクロトータンパク質ペイロードの体内分布を最適化するように仕様されるであろう。
【0118】
したがって、XTENは、分子のインビボ半減期を増加するために、発明者らのS-クロトータンパク質に組換え融合され得る。1つの利点は、遺伝子的S-クロトー-XTEN融合構築物により、治療部分とバルキング部分の両方を含む単一分子の発現、精製および特徴付けの利便性を有する分子が産生されることである。XTEN化成長ホルモン(Somavaratan、Versartis社)およびFVIII-XTEN(Biogen社)によって例示されるような、クラス最高の薬剤動態を生じる治療薬剤製造業者による組換え融合は、精密に限定された位置にタンパク質ごとに複数のXTEN鎖を付着させることを可能にし、うまく使用されている。例えば、異なる投薬量のXTEN化成長ホルモン(Somavaratan、Versartis社)を投与された小児において行われた薬剤動態は、腎臓クリアランスに加えて受容体介在性排出を低減する、Somavaratan分子の最適化を示しており、クラス最高の半減期を生じる。
【0119】
XTENタンパク質ポリマーは、ペプチド、ペプチド模倣体、および他の合成分子への化学接合のための遊離中間体として産生され得る。反応基(チオール、アミン)は、XTENをコードする遺伝子にシステインまたはリシン残基を導入することを介して、精密に限定された位置に挿入される。Amunix社は、様々な間隔で1~9個のチオール基を含有するXTENを開発し、これは提携先に提供され得る。したがって、本発明では、XTEN中のアミノ基およびチオール基への直交接合は、本発明者らのクロトー-XTEN分子の産生を容易にするであろう。
【0120】
タンパク質の精製
クロトータンパク質は、CHO細胞の(例えば、CHO細胞株の)細胞懸濁培養物から抽出され得る。CHO細胞は、クロトータンパク質を産生し、任意選択的に(例えば、液体培地中に)分泌し得る。細胞が消費した培地へのS-クロトーの分泌も観察された。
【0121】
本開示の組換えタンパク質の精製は、当該分野で既知の、または本明細書に記載の任意の好適な方法、例えば抽出、沈殿、クロマトグラフィーおよび/または電気泳動を含む任意の従来の手順によって実行され得る。タンパク質を精製するために使用され得るさらなる精製手順は、標的タンパク質を結合するモノクローナル抗体を使用する親和クロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態は、親和性クロマトグラフィーによって精製され得るIgGタグ付加タンパク質を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態は、IgG1などのIgGのFcドメインの少なくとも一部を含み得る。一般に、組換えタンパク質を含有する粗調製物は、好適なモノクローナル抗体が固定化されたカラムに通される。タンパク質は通常、不純物が通過する間に特異的な抗体を介してカラムに結合する。カラムを洗浄後、pHまたはイオン強度を変えることによって、タンパク質はゲルから溶出される。例えば、CHO-S高産出性細胞株からの消費培地を、接線流濾過を介して濃縮し、親和クロマトグラフィー、続いてイオン交換カートリッジまたはカラムクロマトグラフィーによってS-クロトータンパク質を精製した。サイズ排除クロマトグラフィーはまた、タンパク質の精製に使用され得る。
【0122】
代替的プロトコルでは、1つ以上の親和性精製の前または後のステップが実施された。かかるステップとしては、例えば、(超)遠心分離、透析、膜および/もしくは接線流濾過、イオン交換などのクロマトグラフィー分離、(水性)二相抽出法などの液-液抽出法、または他の既知の精製ステップが挙げられ得る。ある特定の実施形態では、1つ以上の精製後処理ステップが実施された。かかる精製後処理ステップとしては、例えば、タンデムアニオン/カチオンフロースルークロマトグラフィー(結合および溶出クロマトグラフィーと対照的に)、膜濾過(例えば、0.2ミクロン、0.1ミクロンなど)による、または当業者に既知の他の手段によるウイルスおよび/または細菌の除去が挙げられ得る。
【0123】
クロトータンパク質の分析
タンパク質純度は、SDS-PAGEまたは他のアッセイまたは当該技術分野で既知の手段によって実証され得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、クロトータンパク質サンプル(50μg)をプレキャストSDS-PAGEゲル(4~15%、10ウェル;カタログ番号456-1083;BioRad社)で分画し、クマシーブルー色素で染色した。サンプル間の混入を避けるために、全てのサンプルを、空のレーンを間に置くか、または別々のゲル上に置いた。クマシーブルー色素およびデンシトメトリーの透写によって、または銀染色の視覚化によって、またはHPLCもしくはRP-HPLCによって測定されたように、98%を超えるS-クロトーがCHO S条件培地から単離されたことが示された。配列情報を得るために、タンパク質化学の既知の方法に従って、タンパク質(還元およびS-カルボキシメチル化後)を臭化シアン、トリプシン、および/またはプロテイナーゼKで切断し、HPLCによってペプチドを分離し得る。次いで、このように調整されたサンプルを、コンセントに接続した、オンライン自動HPLC PTHアミノ酸分析器(Applied Biosystems社モデル120、ABI、上記を参照されたい)を含む自動気相ミクロ配列決定装置(Applied Biosystems社モデル470A、ABI、米国カリフォルニア州フォスターシティ)で、配列決定した。
【0124】
タンパク質はまた、質量分析法を通して分析された。質量分析のためのサンプル調製に関しては、分析を正しいS-クロトータンパク質に限定するために、分析のために75~150kDaのゲルバンドのみを切り抜いた。ゲル画分を、滅菌ブレードで軟化し、ゲル内消化に供した。ゲル画分を、80μLの50%アセトニトリル(ACN)/50mm炭酸水素アンモニウムで3回洗浄することによって脱色し、100%ACNで洗浄した。アルキル化ステップは、標的α-クロトーペプチド由来のシステイン残基が存在しないと考慮して省略した。60μLのトリプシン(配列決定グレード改変、カタログ番号V511A;Promega社)を用いて、50mm炭酸水素アンモニウム(0.005μg/μL)中で、トリプシン消化を37℃で一晩実行した。このプロセスで25μLが得られ、そのうち5μL(S-クロトーでは1μL)を、nanoLC (Dionex Ultimate 3000 UHPLC)に取り付けられた、Orbitrap nano-ESIQ-Exactive質量分析計(Thermo Scientific社)で、液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(MS/MS)およびPRM分析に供した。MS/MS分析では、本開示の実施形態によって産生されたヒト組換えアルファ-S-クロトーが、ヒト血液、血清、尿または脳脊髄液に見出されるものと実質的に同様である(例えば、対応するアミノ酸配列において同一である)ことが確認された。
【0125】
上記の精製方法を使用して、混入されたCHO宿主細胞タンパク質(HCP)のレベルは、精製されたS-クロトータンパク質において許容可能であると判定された。最終的なS-クロトー生成物では、HCPを<1~100ppmまで除去した。少なくとも90%、最大98%純度のS-クロトータンパク質生成物を、使用されたCHO S産出細胞株(細胞および/または液体培地)から単離した。具体的には、ヒト対象での臨床投与に好適な分析プロファイルを有するcGMPグレードのヒトアルファ-S-クロトーを産生し、精製した。例えば、ヒト組換えアルファS-クロトーの分析プロファイルは、http://proteomecentral.proteomexchange.org/cgi/GetDataset?ID=PXD002775で見出され得る、ProteomeXchangeDatabaseの参照番号PXD002775に表記されている。NIHの完全S-クロトータンパク質データセットは、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/Q9UEF7にある。
【0126】
臨床投与に好適なS-クロトーの分析プロファイル、および本開示の一実施形態で得られた分析プロファイルは、S-クロトー1μg当たり0.1ng(1EU/μg)未満のエンドトキシンレベルを含んでいた。加えて、精製されたヒト組換えS-クロトーはまた、SDS PAGEによって>または=98%の純度を有することも示された。
【0127】
CHO S細胞で産生されたS-クロトーに存在するグリカン構造は、ヒトの体液(すなわち、血液、血清、尿、および脳脊髄液)から単離された天然S-クロトーの構造と比較して同一であった。これにより、S CHO細胞中で産生されたS-クロトータンパク質において、同じ天然の翻訳後修飾(PTM)が生成され、安定に維持されたことが確実になった。したがって、本明細書に記載の製造および精製方法を使用して、本発明者らは、ヒト被験体への臨床投与に好適な分析プロファイルを有するcGMPグレードのヒトS-クロトーの産生に成功している。
【0128】
治療用組成物
本開示のいくつかの実施形態は、治療用組成物などの医薬組成物を含み得る。本開示の薬学的組成物は、一般に、治療有効量の組換え可溶性アルファクロトータンパク質と、1つ以上の追加の成分で構成される(薬学的に許容される)ビヒクル、担体、または賦形剤との混和物を含み得る。成分は、1つ以上の凝集阻害剤、緩衝液、等張化剤、および追加の賦形剤を含み得る。担体中の主溶媒は、本質的に水性または非水性のいずれであってもよい。組成物は、本開示の精製クロトータンパク質を薬学的に許容可能な担体と組み合わせることによって調製され得る。
【0129】
当業者であれば、組成物中に含まれる様々な成分の組み合わせが、任意の適切な順序で行われ得ること、すなわち緩衝液が最初、中間または最後に添加され得、等張化剤もまた、最初、中間または最後に添加され得ることが理解されるであろう。これらの化学物質のいくつかは、ある種の組み合わせでは不適合であり得、したがって、同様の特性を有するが関連する混合物に適合する異なる化学物質で容易に置換されることもまた、当業者には理解されるものである。
【0130】
凝集阻害剤は、不適切なまたは望ましくない三成分または四成分の複合体に会合するポリペプチドの傾向を低減する。アミノ酸L-アルギニン、および/またはL-システインは、製剤中のFcドメイン含有ポリペプチドの凝集を長期間、例えば、2年以上、低減するように作用し得る。製剤中の凝集阻害剤の濃度は、好ましくは約1mM~1M、より好ましくは約10mM~約200mM、より好ましくは約10mM~約100mM、さらにより好ましくは約15mM~約75mMであり、またより好ましくは約25mMである。これらの化合物は、商業的供給元から入手可能である。
【0131】
本開示の組成物は、緩衝液を含み得る。緩衝液は、pHを所望の範囲に維持する。本開示の医薬組成物への使用に好適な様々な緩衝液としては、ヒスチジン、リン酸カリウム、アルカリ塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムまたはそれらの水素塩もしくは二水素塩、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、マレイン酸、酢酸アンモニウム、トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン(トリス)、様々な形態の酢酸塩およびジエタノールアミン、ならびに当該技術分野で既知の、所望の範囲内に溶液のpHを維持するための任意の他の薬学的に許容可能なpH緩衝液が挙げられる。これらの緩衝液の混合物もまた、使用され得る。
【0132】
組成物に有用な緩衝液の量は、使用される特定の緩衝液および溶液のpHに大きく依存する。例えば、酢酸塩はpH6よりもpH5でより効率的な緩衝液であるため、pH6よりもpH5では、より少ない酢酸塩が溶液に使用され得る。好ましい製剤の好ましいpHは4.0~5.0の範囲であり、所望のpHを得るために、塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウムまたはその塩などのpH調整剤もまた、含まれ得る。
【0133】
1つの好ましい緩衝液は、その緩衝能がpH6.2付近のリン酸ナトリウムである。しかしながら、任意の所望のpH緩衝を達成するために、他の緩衝液が選択され得ることが理解されるであろう。製剤中の緩衝液の濃度は、好ましくは約1mM~約1M、より好ましくは約10mM~約200mMである。緩衝液は当該技術分野で公知であり、既知の方法によって製造され、商業的供給者から入手可能である。
【0134】
医薬組成物のpHを生理学的レベル付近に設定すると、投与時の患者の快適性が最大化される。特に、pHは、pH約5.8~8.4の範囲内であることが好ましく、約6.2~7.4が好ましいが、しかしながら、pHは必要に応じて調整されて、特定の製剤などの中のポリペプチドの安定性および溶解度を最大化し得、生理学的範囲外のpHであっても患者にとって許容できるものが、本開示の範囲内であることが理解されるものである。
【0135】
本開示の製剤は、(例えば、注射のために溶液を患者の血液と等張にするために)1つ以上の等張化剤をさらに含み得る。等張化剤は、溶液の重量オスモル濃度に寄与する分子であると理解される。医薬組成物の重量オスモル濃度は、好ましくは、活性成分の安定性を最大化し、投与時の患者の不快感もまた、最小限にするために調節される。血清が1キログラム当たりおよそ300+/-50ミリオスモルである場合。医薬組成物が血清と等張性であること、すなわち等張化剤を添加することによって達成される同じまたは同様の重量オスモル濃度を有することが一般的には好ましく、したがって、重量オスモル濃度が約180~約420ミリオスモルであり得ると考慮されるが、重量オスモル濃度は、特定の条件で必要なように、より高いかまたはより低いかのいずれでもよいことが理解されるものである。
【0136】
典型的な等張化剤は、当該技術分野で公知であり、これらに限定されないが、様々な塩、アミノ酸、または多糖類が挙げられる。好適なアミノ酸の非限定的な例としては、グリシンが挙げられる。好適な多糖類の非限定的な例としては、スクロース、マンニトール、およびソルビトールが挙げられる。一度に2つ以上の等張化剤が使用され得、例えば、ソルビトールとグリシンとを組み合わせて使用して、製剤の張度を変更し得ることが理解される。
【0137】
重量オスモル濃度の変更のために好適な等張化剤の追加の例としては、これらに限定されないが、アミノ酸(例えば、アルギニン、システイン、ヒスチジン、およびグリシン)、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびクエン酸ナトリウム)、および/または糖類(例えば、スクロース、グルコース、およびマンニトール)が挙げられる。製剤中の等張化剤の濃度は、好ましくは約1mM~1M、より好ましくは約10mM~約200mMである。等張化剤は当該技術分野で公知であり、既知の方法によって製造され、商業的供給者から入手可能である。
【0138】
溶液中(乾燥または凍結形態でも)でポリペプチドを安定化させる化学的添加剤、共溶質または共溶媒とも称される、賦形剤もまた、医薬組成物に添加され得る。賦形剤は、所望の効果、例えば安定化、等張性を提供するために医薬組成物に添加される非治療薬として本明細書では定義される。望ましい賦形剤の共通の属性は、水溶性、非毒性、非反応性、体からの迅速なクリアランス、および免疫原性の欠如である。加えて、賦形剤は、加工、保存および患者への投与中の薬剤の有効性および安全性を維持するために、タンパク質の天然のコンフォメーションを安定化することが可能であるべきである。例としては、これらに限定されないが、スクロース、ラクトース、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルトース、イノシトール、トレハロース、グルコースなどの糖/ポリオール;血清アルブミン(ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒトSAまたは組換えHA)、デキストラン、PVA、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレンイミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)などのポリマー;多価アルコール(例えば、PEG、エチレングリコール、およびグリセロール)ジメチスルホキシド(dimethysulfoxide)(DMSO)、およびジメチルホルムアミド(DMF)などの非水性溶媒;プロリン、L-セリン、グルタミン酸ナトリウム、アラニン、グリシン、リジン塩酸塩、サルコシン、およびガンマ-アミノ酪酸などのアミノ酸;Tween-80(商標)(ポリソルベート80)、Tween-20(商標)(ポリソルベート20)、SDS、ポリソルベート、ポリオキシエチレンコポリマーなどの界面活性剤;ならびにリン酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、トリメチルアミンN-オキシド、ベタイン、金属イオン(例えば、亜鉛、銅、カルシウム、マンガン、およびマグネシウム)、CHAPS、モノラウレート、2-O-ベータ-マンノグリセラート(mannoglycerate)などの諸々の賦形剤、または上記の任意の組み合わせが挙げられる。
【0139】
本開示の製剤中の1つ以上の賦形剤の濃度は、好ましくは約0.001~5重量パーセント、より好ましくは約0.1~2重量パーセントである。賦形剤は当該技術分野で公知であり、既知の方法によって製造され、商業的供給者から入手可能である。
【0140】
1つの例示的な実施形態では、本開示の製剤は、HEPES、MES、またはTris-HCl、および任意選択的に、本明細書に記載の1つ以上の追加の成分でpH約7.3~7.4に緩衝された約150mMのNaClを含み得る。
【0141】
1つの例示的な実施形態では、本開示の製剤は、pH約6.0~pH約7.0で、約25~約50mgのTNFR:Fc(エタネルセプト)、約10mM~約100mMのL-アルギニン、約10mM~約50mMのリン酸ナトリウム、約0.75%~約1.25%のスクロース、約50mM~約150mMのNaClを含み得る。別の実施形態では、L-アルギニンは、製剤中でL-システイン(約1~約500マイクロモル)で置き換えられ得る。さらに別の実施形態では、pHは、pH約7.0であり得る。別の特定の実施形態では、本開示の製剤は、pH約6.2で、約25mg/mlのTNFR:Fc、約25mMのL-アルギニン、約25mMのリン酸ナトリウム、約98mMの塩化ナトリウム、および約1%のスクロースを含み得る。
【0142】
別の実施形態では、本開示の製剤は、pH約6~pH約7で、約10mM~約100mMのL-アルギニン、約10mM~約50mMのリン酸ナトリウム、約0.75%~1.25%のスクロース、約50mM~約150mMのNaCl中に、約10~約100mg/mLのRANK:Fcを含み得る。特定の実施形態では、本開示の製剤は、pH約6.2で、約25mMのL-アルギニン、約25mMのリン酸ナトリウム、約98mMの塩化ナトリウム、および約1%のスクロース中に、50mg/mlのRANK:Fcを含む。
【0143】
さらに別の実施形態では、本開示の製剤は、pH約6~7で、有効量のFcドメイン含有ポリペプチド、約10mM~約100mMのL-アルギニン、約10mM~約50mMのリン酸ナトリウム、約0~5%のマンニトール、および/または0~0.2%のTween-20(商標)(ポリソルベート20)を含み得る。別の実施形態では、本開示の製剤は、Emab(抗-CD22特異的抗体)などの有効量の抗体、約25mMのL-アルギニン、約25mMのリン酸ナトリウム、約4%のマンニトール、約0.02%のTween-20(商標)(ポリソルベート20)を含み得、および/または約pH6.0である。
【0144】
さらに別の実施形態では、本開示は、治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物を治療する方法であって、哺乳動物が、組成物中のFcドメイン含有ポリペプチドで有益に治療され得る疾患または障害を有する、方法を提供する。さらに別の実施形態では、Fcドメイン含有ポリペプチドは、組成物で治療されるであろう哺乳動物と同じ種に由来する。特定の実施形態では、哺乳動物は、治療を必要とするヒトの患者である。組成物のFcドメイン含有ポリペプチドがTNFR:Fcであるとき、治療され得る疾患または障害の例としては、これらに限定されないが、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、ウェゲナー病(肉芽腫症)、クローン病(または炎症性腸疾患)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、C型肝炎、子宮内膜症、喘息、悪液質、乾癬、およびアトピー性皮膚炎、または1つ以上のクロトー遺伝子に変異を有する遺伝性疾患を有する人が挙げられる。TNFR:Fcで治療され得る追加の疾患または障害としては、WO00/62790、WO01/62272、および米国特許出願第2001/0021380号に記載のものが挙げられ、その関連部分が参照により本明細書に援用される。
【0145】
さらに別の実施形態では、本開示は、本開示の医薬組成物中のFcドメイン含有ポリペプチド安定性の加速安定性を試験するための方法であって、保存前に本開示に従って配合されたポリペプチドの活性を試験するためのステップ、すなわち開始時、組成物を37℃で1ヶ月間保存し、ポリペプチドの安定性を測定するステップと、開始時形態1ヶ月時点までの安定性を比較するステップとを含む、方法を提供する。この情報は、最初は良好な安定性を有するように見えるが、長期間良好に保存されないバッチまたはロットを早期に除去するのに役立つ。
【0146】
さらに、医薬組成物は、活性成分、例えばFcドメイン含有ポリペプチドが、液体かまたは凍結状態のいずれかの保存段階にわたって安定であるように、長期保存を提供する。本明細書で使用される場合、語句「長期間」の保存とは、医薬組成物が、3ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、および好ましくは2年以上保存され得ることを意味すると理解される。長期保存はまた、医薬組成物が、2~8℃で液体として保存されるか、または例えば-20℃またはそれ以下(例えば-20℃または-80℃)で凍結されるかのいずれかを意味すると理解される。組成物はまた、2回以上凍結および解凍され得ることも考慮される。長期保存に関する用語「安定」は、医薬組成物の活性ポリペプチドが、保存開始時の組成物の活性と比較して、20%、より好ましくは15%、さらにより好ましくは10%、および最も好ましくは5%を超えてその活性を失わないことを意味すると理解される。
【0147】
1つ以上の抗酸化剤は、本開示の製剤に含められ得る。製剤の調製への使用を考慮される抗酸化剤としては、グリシンおよびリシンなどのアミノ酸、EDTAおよびDTPAなどのキレート剤、ならびにソルビトールおよびマンニトールなどのフリーラジカルスカベンジャーが挙げられる。
【0148】
経口または非経口放出製剤(例えば、コーティングされた、カプセル化された、徐放性、制御放出性、延長放出性、遅延放出性、持続放出性など)のような他の有効投与形態、吸入ミスト、経口活性製剤、または坐剤もまた想定される。このように、配合物はまた、バルク浸食性ポリマー(bulk erosion polymers)(例えば、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)コポリマー、PLGAポリマーブレンド、PEGのブロックコポリマー、および乳酸およびグリコール酸、ポリ(シアノアクリレート)などのポリマー化合物の微粒子調製物);表面侵食性ポリマー(例えば、ポリ(無水物)、およびポリ(オルトエステル));ヒドロゲルエステル(例えば、プルロニックポリオール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸-アルキルビニルエーテルコポリマー、セルロース、ヒアルロン酸誘導体、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、ならびにデンプンおよびデキストラン)、およびそれらの組成物系の微粒子調製物、またはリポソームもしくは微小球の調製物を含み得る。かかる製剤は、本タンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランスの速度に影響し得る。所望のタンパク質のための最適な医薬製剤は、投与経路および所望の投薬量に依存して、当業者によって判定され得る。例示的な医薬製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版(1990),Mack Publishing Co., Easton, Pa.18042、1435-1712ページに開示されおり、この開示は参照により本明細書に援用される。
【0149】
生物活性
(事前に)ヒト組換えアルファ可溶性クロトーの有効性を評価および/または有効投薬量(年齢に関係する障害または代謝障害を呈する患者、被験体、または個体に対する)を測定するための方法としては、(例えば、哺乳類(例えば、マウス、ラット、霊長類、または他の何らかの非ヒト)、または他の動物(例えば、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、またはハエ(例えばキイロショウジョウバエ)または線虫(例えば、カエノラブディティスエレガンス)などの)生物に基づいたアッセイを実施することが挙げられる。クロトータンパク質は、生物に1回、またはレジメン(規則的または不規則的)通りに投与され得る。例えば、タンパク質は、所与の期間(例えば、毎月、半月ごと、毎週、半週ごと、毎日など)に好適な回数(例えば、1回、2回など)投与され得る。次いで、生物パラメータ(例えば、年齢に関連するパラメータ)が評価され得る。対象のクロトータンパク質は、参照(例えば、対照生物のパラメータ)と比較して、パラメータの変更を実施するか、または生じる。他のパラメータ(例えば、毒性、クリアランス、および薬剤動態に関係する)もまた、評価され得る。
【0150】
本開示のクロトータンパク質は、年齢に関係するまたは年齢に関連する障害または病態、代謝障害または病態など、特定の障害または病態を有するかまたはそれを呈する動物(モデル)を使用して評価され得るかかる障害および病態はまた、タンパク質の生理学上の効果が観察され得る感作系を提供し得る。例示的な障害としては、例えば、除神経、廃用性萎縮、代謝障害(例えば、db/dbマウス、ob/obマウスなどの肥満および/または糖尿病動物の障害)、脳障害、肝虚血または他の肝障害、シスプラチン/タキソール/ビンクリスチンモデル、様々な組織(異種移植)移植、遺伝子導入骨モデル、疼痛症候群(例えば、炎症性および神経障害)、パラコート中毒、遺伝毒性、酸化ストレスモデル、および腫瘍(I)モデルが挙げられる。
【0151】
本開示のS-クロトータンパク質を評価するために、タンパク質を好適な動物に(好適な治療期間の間)投与してもよく、動物のパラメータを(例えば、10~60分、1~24時間、1~30日、1~12ヶ月、1~5年、またはそれらの間の任意の値もしくは値の範囲などの好適な期間の後で)評価する。動物には、随意にまたは通常通り栄養を与えてもよい(例えば、カロリー制限下ではないが、いくつかのパラメータは、かかる条件下で評価され得る)。典型的には、かかる動物のコホートが、アッセイに使用される。一般に、試験ポリペプチドが、カロリー制限を供される同様の動物の表現型の方向にパラメータを影響する場合、試験ポリペプチドは、動物の寿命調節を好都合に変化させて示され得る。かかる試験ポリペプチドは、生物にカロリー摂取させないのではなく、カロリー制限(例えば、かかる影響のサブセット)による寿命調節効果を少なくともいくらか引き起こし得る。
【0152】
試験されるパラメータ(複数可)は、年齢に関連するまたは疾患に関連するパラメータ(複数可)(例えば、動物モデルに関連する障害の症状)であり得る。好都合に示される試験タンパク質は、ポリペプチドで処理されていない同様の参照動物と比較して、症状の改善を引き起こし得る。障害または加齢に関連する他のパラメータとしては、抗酸化レベル(例えば、抗酸化酵素レベルまたは活性)、ストレス耐性(例えば、パラコート耐性)、深部体温、グルコースレベル、インスリンレベル、甲状腺刺激ホルモンレベル、プロラクチンレベル、および黄体形成ホルモンレベルが挙げられ得る。
【0153】
年齢に関係する障害を治療するための本開示のS-クロトータンパク質の有効性を測定するために、クロトー発現の低下した動物(例えば、変異体またはクロトー遺伝子欠損を有するマウス)が使用され得る。例えば、試験タンパク質は、変異マウスに投与されて、年齢に関係するパラメータをモニターしてもよい。好都合に示される試験タンパク質は、タンパク質で治療されていない同様の参照動物と比較して症状の改善を引き起こし得る。
【0154】
代謝障害または加齢に関連するパラメータは、体重の測定、生殖能力獲得の検査、血糖レベルの測定、寿命の観察、皮膚の観察、歩行などの運動機能の観察などによって評価され得る。評価はまた、胸腺重量の測定、胸腔の内面に形成された石灰化結節の大きさの観察などによっても行われ得る。さらに、クロトー遺伝子またはクロトータンパク質のmRNAの定量測定もまた、評価に有用であり得る。
【0155】
さらに他の(インビボ)モデルおよびバイオアッセイとしては、代謝パラメータ、例えばインスリン障害、II型糖尿病に関連するパラメータで動物を評価することが挙げられる。例示的な代謝パラメータとしては、グルコース濃度、インスリン濃度、およびインスリン感受性が挙げられる。
【0156】
試験タンパク質が寿命調節を変化可能か評価する際に、多くの年齢に関連するパラメータまたはバイオマーカーが監視または評価され得る。例示的な年齢に関連するパラメータとしては、(i)細胞または生物の寿命、(ii)生物学的な年齢に依存する発現パターンを有する細胞または生物における遺伝子転写または遺伝子産物の存在または存在量、(iii)ストレスに対する細胞または生物の耐性、(iv)細胞または生物の1つ以上の代謝パラメータ(例示的なパラメータとしては、循環インスリンレベル、血中グルコースレベル、脂肪含有量、深部体温などが挙げられる)、(v)生物に存在する細胞または細胞の組の増殖能力、(vi)細胞または生物の物理的外観または挙動、が挙げられる。
【0157】
用語「平均寿命」とは、生物コホートの平均死亡年齢を指す。場合によっては、「平均寿命」は、制御された環境条件下で遺伝的に同一の生物のコホートを使用して評価される。事故による死亡は、数に入れない。制御された環境条件下で平均寿命が測定できない場合(例えば、ヒトの場合)、十分に大きな母集団に対する信頼できる統計情報(例えば、数理表から)が、平均寿命として使用され得る。
【0158】
2つのかかる生物、例えば1つの参照生物とS-クロトータンパク質で治療された1つの生物との間の分子差の特徴付けにより、生物の生理学的状態の差異を明らかにすることができる。参照生物および治療された生物は、典型的には、同じ(または実質的に同じ)実年齢および/または性別である。本明細書で使用される場合、用語「実年齢」とは、受胎、定義された胎生期もしくは胎児期、またはより好ましくは出生などの、予め選択された事象から経過した時間を指す。生物が比較分析のために「同じ」実年齢のものであるかを判定するために、種々の基準が使用され得る。
【0159】
典型的には、必要とされる精度の程度は、野生型生物の平均寿命と相関している。例えば、実験室野生型株N2がいくつかの制御条件下で平均約16日間生存する線虫カエノラブディティスエレガンスの場合、同じ年齢の生物は同日数の間生存し得る。マウスの場合、同年齢の生物は同じ週数または月数の間、霊長類またはヒトの場合、同じ年数(すなわち2年、3年または5年以内)など、生存し得る。一般的に、同じ実年齢の生物は、その種の野生型生物の平均寿命の15、10、5、3、2または1%以内の時間量の間生存し得る。好ましくは、生物は、(例えば、平均的な野生型生物が、生殖能力のある年齢まで成熟する、少なくともある時間量の間生物が生存した)成体である。
【0160】
生物が加齢の明白な物理的特性を呈する前に、生物学的スクリーニングアッセイが実施され得る。例えば、生物は、同じ種の野生型生物の平均寿命の10、30、40、50、60、または70%のみ生存した成体であってもよい。代謝、免疫能力、および染色体構造の、年齢に関連した変化が報告されている。これらの変化のいずれかは、試験被験体(例えば、生物に基づくアッセイ)において、または(例えば、(ヒトまたは哺乳類)患者の)本明細書に記載の治療剤での治療前、治療中または治療後のいずれかで評価され得る。
【0161】
カロリー制限に関連するマーカーはまた、スクリーニングアッセイの被験体生物(または治療された被験体)において評価され得る。これらのマーカーは年齢に関連しない場合があるが、クロトーまたはクロトーに関係する経路が調節されると変化する生理学的状態を示し得る。マーカーは、カロリー制限された動物において大きく変化するmRNAまたはタンパク質であり得る。本明細書に記載の動物の細胞に由来する細胞モデル、または本明細書に記載の動物モデルの類似体は、細胞に基づくアッセイに使用され得る。
【0162】
筋肉萎縮に対する試験タンパク質の効果を評価するためのモデルとしては、1)例えば、大腿中央部で右坐骨神経を切断することによる、除神経から生じるラットの内側腓腹筋量低下、2)(例えば、90度の屈曲で右足首関節を固定することによる)固定化から生じるラットの内側腓腹筋量低下、3)後肢懸垂から生じるラットの内側腓腹筋量低下、4)悪液質サイトカインであるインターロイキン-1(IL-1)を用いた治療から生じる骨格筋萎縮、および5)グルココルチコイド、デキサメタゾンを用いた治療から生じる骨格筋萎縮、が挙げられる。
【0163】
外因性S-クロトーの投与
本開示は、(例えば、正常および/または(例えば、慢性的病態のない)若年(例えば、18~30歳)の範囲内のS-クロトーの血清濃度を増加および/または維持するためのS-クロトー製剤、臨床投薬量および投与に関する。
【0164】
本開示の態様または実施形態は、例えば、それを必要とする(ヒト)被験体に(cGMPおよび/または臨床グレードの)ヒト組換えアルファ可溶性クロトータンパク質または(アイソフォーム1の)タンパク質断片を投与することを含む。実施形態はまた、((ヒトの)被験体の)血清S-クロトーのレベルまたは濃度を(例えば、質量分析器(MS)またはELISAによって)測定することを含み得る。かかる測定は、S-クロトー投与の前後、および/またはその間に行うことができ、必要に応じて、血清S-クロトーレベル、および/または血清S-クロトーレベルの代謝、分解または低減の速度を測定するために反復され得る。MSは、当該技術分野で公知の技術である。MSは、被験体の血清中の1つ以上の(天然および/または組換え)クロトータンパク質のレベルを同定し、さらに定量化するために使用され得る。
【0165】
1つ以上の追加のタンパク質もまた、被験体の血清中で測定され得る。1つ以上のクロトーに関係するおよび/または加齢に関係するタンパク質(例えば、FGF21、GDF-11、TIMP2、NAD+、CCL11、ホルモンテストステロン、エストロゲンなど)、および/または腎臓機能タンパク質(例えば、KIM-1、シスタチン-C、クレアチニン、BUN、クレアチニン、NGALなど)は、血清中のクロトーの測定とは別に、またはそれと組み合わせて測定され得る。
【0166】
少なくとも1つの実施形態では、血液サンプルなどの血清サンプルが得られる。サンプルは、当該技術分野で既知のように、採血によって得られ得る。好ましい実施形態では、血液サンプルを得るための指先に針を刺す(finger prick)手段か、または他のより低侵襲性の手段が使用され得る。したがって、血液サンプルは、より頻繁に(例えば、1日中、および/または0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12時間ごとに)採取され得る。合計クロトータンパク質血清濃度、ならびに天然クロトー種(例えば、可溶性クロトー、切断されたクロトー、分泌されたクロトーなど)などの様々なアルファクロトータンパク質種の血清濃度、および/または本開示の1つ以上のクロトータンパク質を測定するために、MSが使用され得る。いくつかの実施形態では、クロトーレベルは、治療的組換えクロトータンパク質投与の前に、かつ投与後再度1日中、および/または0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12時間ごとに測定され得る。
【0167】
実施形態はまた、かかる速度を測定すること、および/またはかかる被験体の血清内のS-クロトータンパク質濃度を、正常な若年の人のS-クロトーの血清濃度の範囲内に維持するための、治療プロトコル(例えば、S-クロトーの投与頻度、投与量、および/または(次の)投与(複数可)継続時間を含む)を計算することを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、S-クロトーの濃度は、血清1ミリリットル当たりおよそ1000ピコグラム(pg/mL)の(S-クロトー)タンパク質で維持され得る。
【0168】
少なくとも1つの実施形態では、(ヒトにおける)S-クロトー投与方策は、S-クロトーの1つ以上の薬剤動態学的パラメータの測定を含み得る。例えば、S-クロトー投与に応答した血清、尿および脳脊髄液中のS-クロトーレベルに得られたインビボ変化が測定され得る。いくつかの実施形態は、1つ以上の臨床指標に対するS-クロトー投与の有効性を測定することを含み得る。様々な病態、疾患、および障害の臨床指標は、当該技術分野で既知であり、本明細書でさらに説明される。
【0169】
実施形態はまた、(例えば、開始時(いずれかの外因性S-クロトーの投与前)、ならびに/または治療プロトコルの前および/もしくは治療プロトコル全体を通して異なる時間に、(ヒト)被験体(複数可)における任意の概日リズム効果を説明するために、(例えば、S-クロトーの投与前後に))、(基準値)S-クロトーレベル測定(複数可)を行うことを含み得る。
【0170】
実施形態はまた、S-クロトー投与の好適な頻度、量、および/または継続時間を測定することを含み得る。例えば、(例えば、MSまたはELISAイムノアッセイ定量によって測定される)低S-クロトー血清レベルを有する対象は、対象の血清S-クロトーレベルを第1の所定レベル(例えば、約1000pg/mL)にするように構成および/または適合されたクロトーの第1の投与を(例えば、任意の適切な投与経路を介して)受けることができ、対象の血清S-クロトー濃度(で得られた変化)を(MSまたはELISAによって)測定し、(第1の投与後の)レベルおよび/または血清S-クロトーレベルの代謝、分解もしくは低減速度を測定し、投与されたS-クロトーの半減期を計算し、ならびに/または(例えば、血清S-クロトーレベルを第2の所定のレベルより上に維持するために)S-クロトーの第2の次の投与を受けるべき頻度および/もしくは時間枠を判定することができる。少なくとも1つの実施形態では、第2の所定レベルは、第1の所定のレベルの約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、および/もしくは、5%、ならびに/またはその間であり得る。
【0171】
さらなる投与は、正常な同性の若年の人の血清維持レベル(例えば、およそ1000pg/ml)と同等のS-クロトー血清レベルを、被験体中に(長期的に)産生するのに好適な時間枠にわたって与えられ得る。((ヒト)被験体への)S-クロトー投与の合計期間は、1日~5年以上の範囲であり得る。臨床虚弱スコア(clinical frailty score)の使用および他の測定値に基づく被験体の虚弱性の測定および/または判定もまた、時間枠にわたって行われ得る。
【0172】
本開示の実施形態は、正常範囲(例えば、例示的には少なくとも約500~1000pg/ml血清)を超えた、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%以上のS-クロトーレベルの上昇を維持するように、S-クロトー投薬量を増加することをさらに含む。
【0173】
特定の実施形態は、S-クロトータンパク質を投与することを含む。適切な投与経路の非限定的な例には、注射(例えばボーラス、漸進的、静脈内、皮内、腹腔内、筋肉内、皮内、および/または皮下注射)、経口または経口関連投与(例えば経口摂取、頬投与、および/または舌下投与)、局所投与、経皮投与、直腸投与、膣内投与、吸入などが挙げられる。
【0174】
例示的な実施形態は、単回ボーラス注射または長期(IV)注射(例えば、長期間にわたる点滴)でS-クロトータンパク質または組成物を投与することを含み得る。少なくとも一実施形態では、対象の体重1kg当たり0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20マイクログラム以上のS-クロトーを1回の治療につき投与することができる。好適な投与量は、当該分野で既知の1つ以上の方法を通して計算され得る。1つのかかる方法は、相対成長(allometric scaling)方法である。例えば、ラット実験では、1回の投与当たり0.01mgのS-クロトー/体重kgまたは10μg/kgが使用される。例示的には、ヒト相対成長率と等価である0.16を使用すると、ヒト等価用量(HED)=10μg/kgx0.16=1.6μg/kgである。したがって、例示的には、70kgのヒト個体は、70kgx1.6ug/kg=112ugが必要であり、および60kgのヒトは、60kgx1.6=96ugが必要であろう。以下の表Aは、体表面積に基づく、様々な動物用量のヒト等価用量(HED)への変換を示す。変換は60kgのヒトを想定する。
【0175】
HEDは、参照により本明細書に援用されるReagan-Shaw(2008)によって記載されているプロセスである、体表面積の標準化を使用して確立された。このプロセスは、相対成長率と称され、異なる種間の代謝速度の基礎的な差異を補正し、単純な投薬量外挿よりも好ましい場合がある。例示的には、HEDが0.4mg/kgの場合、相対成長率を使用すると、ヒト等価用量は、体重70kgの個体には0.4mg/kg、すなわち28mg、体重60kgの個体には24mgとなるであろう。HEDは、具体的には、式:HED=mg/kg単位の動物用量×(kg単位の動物体重/kg単位のヒト体重)で計算することができる。
【0176】
【0177】
(組換えタンパク質投与の前および/または後の)ヒトにおけるS-クロトーの量および/もしくは生物学的利用能、投与されるS-クロトーの合計量および/もしくは濃度、ならびに/または組換えタンパク質投与後の血清レベル応答(経時的)の判定、測定、および/または推定には、複数の要因が考慮され得るか、または配慮され得る。例えばかかる要因としては、希釈剤の組成、投与経路、投与部位、被験体の組織および器官への分配、被験体の代謝または他の速度、薬剤動態(PK)、薬力学(PD)、毒物学(Tox)などが挙げられ得る。
【0178】
少なくとも1つの実施形態では、(例えば健康な、若年(18~30歳の)ヒト成人における)S-クロトーの(正常な)濃度は、血清中でおよそ1000pg/mlであり得る。典型的な成人は、およそ5リットルの血液量を有し得、女性は一般に男性より少ない血液量を有する。ヒトの血液のおよそ55%は、血清で構成され得る。したがって、(5リットルの血液/成人)x(0.55血清/血液リットル)=2.75リットル(2750ml)の血清/成人となる。内因性血清S-クロトーがないと仮定する場合、合計血清中に1000pg/mlの最終濃度を達成するためには、成人被験体当たり2750mlX1000pg/ml=2,750,000pg(または2750ngまたは2.75μg)の外因性S-クロトーが投与した。
【0179】
可溶性クロトーを典型的な健康なレベル(例えば、1500pg/血清ml)よりも50%増加させるためには、4.125マイクログラム/被験体の投薬量が投与され得る。可溶性クロトーを典型的な健康なレベル(例えば、2000pg/血清ml)よりも100%増加させるためには、5.5マイクログラム/被験体の投薬量が投与され得る、などである。
【0180】
任意の好適なレベルまで被験体の血清可溶性クロトータンパク質濃度を上昇させるために、精製された組換えS-クロトータンパク質の薬学的に有効なおよび/または十分な量は、血清1ミリリットル当たり、約50、100、250、500、750、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000 20,000、25,000、30,000 40,000、50,000、75,000、100,000ピコグラム以上、もしくはその間などの可溶性クロトータンパク質、または、血清中の可溶性クロトータンパク質の典型的な健康レベルを、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1200%、1500%、2000%、2500%、3000%、4000%、5000%超える、もしくはその間で投与され得る。
【0181】
いくつかの実施形態では、被験体は、組換えヒトS-クロトータンパク質を、1つ以上の(ボーラス)静脈内、皮内(intradermal)、腹腔内、筋肉内、皮内(intracutaneous)、皮下および/または他の注射を、好適な量のクロトー緩衝液(例えば、150mMのNaClおよび10mMのHEPES pH7.4)または他の薬学的に許容可能な担体中に、約0.01mg/体重kg以上、またはその間の投薬量で投与され得る。したがって、160ポンド(すなわち72.57kgの体重)の被験体は、1回の投与当たり約0.73mgのS-クロトー(0.01mgのS-クロトー/kgX体重72.57kgの計算に基づいて)の(ボーラス)注射を投与され得る。同様に、170ポンドの人は、1回の投与当たり0.77mgのS-クロトーを受け得る。投与の合計数および頻度は、例えば1000pg/mlのS-クロトー(0.000001mg/血清mlと等しい)の濃度を血清中で達成および維持することに基づいて判定され得る。後者は、MSによって、またはヒトS-クロトーELISAアッセイによって測定されて確認され得る。
【0182】
他の実施形態では、投薬量は、約0.0001~10mg/体重kg、0.0001~10μg/体重kg、0.0001~10ng/体重kg、0.0001~10pg/体重kgを上回る、これらと同等、またはこれらの間の任意の値もしくは値の範囲であり得る。尿、および/または血液は、(例えば、血清S-クロトーレベル、ならびに投与応答および/または経時的応答における変化を測定、試験、および/または判定するために)組換えクロトータンパク質の医学的手順または第1の投与(投薬)後、約5分、10分、15分、20分、25分、30分、40分、45分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、2.5日、3日、5日、7日、10日、14日、21日、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月を上回る、これらを下回る、これらと同等の、これらの間の1つ以上の時点で収集され得る。
【0183】
1つ以上の実施形態は、S-クロトー活性薬剤生成物の独特な製剤および/または薬学的に許容可能な担体との組み合わせの、製造および/または(次の)投与を含む。担体は、IVおよび/またはボーラス注射に好適であり得る。実施形態はまた、(不活性S-クロトーが、動物またはヒト被験体において生物学的に有効なS-クロトーを放出するようにインビボで活性化され得るように、S-クロトーおよび/または薬学的に許容可能な担体と組み合わせの独特な不活性プロドラッグ製剤の製造および/または(次の)投与を含み得る。かかるプロドラッグ製剤は、コーティングまたは徐放性製剤を含み得る。
【0184】
ヒトの年齢に関係する虚弱を治療するための外因性S-クロトーの投与
本開示の例示的な実施形態は、(例えば、ヒトまたは非ヒト動物の)年齢に関係する虚弱を治療するための外因性クロトータンパク質の投与に関する。S-クロトーは、ヒト疾患の動物モデルにおいて、筋原性幹細胞を救済し、筋肉修復を改善し、および/または線維症を抑制し得る。したがって、S-クロトーは、虚弱の徴候を示している高齢なヒト被験体における、筋肉退化に対抗する有望な治療薬であり得る。
【0185】
例えば、本開示は、S-クロトー製剤、臨床投薬量、ならびに脆弱および/または高齢者(例えば、60~95歳)へ投与して、前者の被験体のS-クロトー血清濃度の維持を、正常および/または(例えば、慢性的な病態のない)若年(例えば、18~30歳)の人の範囲内に維持することに関する。
【0186】
長期間にわたるクロトー治療は、高齢者、虚弱者、またはその他の生理学的加齢における1つ以上の加齢に関係する指標または病態を回復および/または改善し得る。
ヒトにおける筋肉萎縮の治療(減少)のための外因性S-クロトーの投与
本開示の例示的な実施形態は、骨格筋組織質量および上記のタンパク質と分子指標との併用によって測定される、ヒトにおける筋肉萎縮を治療する(例えば、(速度を)低下させる)ための外因性クロトータンパク質の投与に関し、筋肉萎縮に対抗するクロトーの投与の効果についてのガイダンスを提供する。
【0187】
筋肉萎縮としては、多数の神経筋、代謝、免疫および神経障害および疾患、ならびに飢餓、栄養欠損、代謝ストレス、糖尿病、加齢、筋ジストロフィー、またはミオパチーが挙げられ得る。筋肉萎縮は、加齢プロセスの間に起こり得る。筋肉萎縮はまた、筋肉の使用の低減または廃用からも生じ得る。症状としては、骨格筋組織質量の低下が挙げられる。ヒトの男性では、50~80歳の間で筋量が3分の1に低下する。筋肉萎縮のいくつかの分子の特性としては、ユビキチンリガーゼのアップレギュレーション、および筋原線維性タンパク質の低下が挙げられ得る。これらのタンパク質の分解は、例えば、ある特定の筋肉のミオシンで(例えば、アクチンの特異的構成成分である3-メチル-ヒスチジン産生を測定することによって)、監視され得る。クレアチンキナーゼ(細胞損傷マーカー)の放出もまた、指標となり得る。
【0188】
老年および/またはヒトの寿命全体を通して知能的および/または認知力低下を治療するための外因性S-クロトーの投与
本開示の例示的な実施形態は、(加齢に関係する)認知機能(複数可)低下の改善および/または抑制するための外因性クロトータンパク質の投与に関する。本開示の時点で、外因性クロトータンパク質の投与が、ヒトの認知力低下を抑制し得るかは不明であった。しかしながら、クロトーの全身の過剰発現を有する遺伝子導入マウスは、学習力および記憶力の複数の試験において対照よりも良好な成績であった。マウスのクロトー上昇はまた、シナプス可塑性の形態で、長期的な増強を向上し、学習力と記憶力に重要な機能を有するN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)サブユニットであるシナプスGluN2Bを高めた。GluN2Bの遮断により、クロトーが介在する効果が失われた。
【0189】
クロトーを調節した経路は、アルツハイマー病および他の形態の認知症の進行を遅らせることに関連し得る。53歳以上の400人以上の健康な男女の脳スキャンでは、特定のクロトー遺伝子多様体の単一コピーを保有していた人々が、計画および意思決定を扱う脳領域を、より大きく有していたことが見出された。グループへのさらなる試験では、右背外側前頭前皮質(rDLPFC)が拡大している人々は、一連の知能的課題に対してより良好であったことが見出された。
【0190】
約5人に1人が、心臓および腎臓機能を改善するKL-VSとして知られる遺伝子多様体または対立遺伝子の単一コピーを継承し、平均して約3年ヒトの寿命を延ばす。しかしながら、脳機能に関しては、より大きなrDLPFCを有することで、人々の知能的試験スコアはわずか12%の改善を占めるが、一方、編集者が指摘するには、KL-VS対立遺伝子の1コピーを保持することで、rDLPFCの構造および機能の期待される低下に対して、10年分の回復力が得られるようである。したがって、KL-VSヘテロ接合性は、右背外側前頭前皮質(rDLPFC)のより大きな体積と関連しているようである。
【0191】
rDLPFCは実行機能に重要であるため、研究者らはまた、個体の作業メモリおよび処理速度も分析した。KL-VSヘテロ接合性は、試験された寿命にわたって向上された実行機能と関連し得る。要するに、クロトー遺伝子の多様性が、より大きな脳容積およびより良好な機能と関連し得ることを結果は示唆している。
【0192】
本開示の例示的な実施形態は、(例えば、認知力を向上し、ヒトの寿命全体を通して認知力欠損を抑制するための)インビボクロトーレベルおよび/または(細胞、分子、および/または下流)効果を補完するための外因性クロトータンパク質の投与に関する。臨床グレードのS-クロトーの外因性投与は、(例えば、ヒトにおける)認知機能を保持および/または改善する。
【0193】
ヒトの長寿および/または寿命を治療する(延長する)ための外因性S-クロトーの投与
本開示の例示的な実施形態は、実年齢(例えば、出生からの年齢が一致)および性別が一致するヒト被験体に外因性クロトータンパク質を投与して、平均寿命を改善することに関する。クロトー投与(ヒト被験体の実験グループ)で得られた平均寿命の結果は、クロトー外因性投与を受けていない個体(対照グループ)および/または十分に大きな人口に対する統計情報(例えば、数理表から)と確実に比較され得る。
【0194】
他の臨床指標を治療するための外因性S-クロトーの投与
本開示の例示的な実施形態は、任意の年齢に関連するか、または年齢に関連しない病態を治療するための外因性S-クロトーの投与に関し、病態としては、これらに限定されないが、ヒトの虚弱(の増加)、長寿(の減少)、細胞老化(の減少)、筋力(の低下)、骨量の喪失または密度(の減少)、認知力(の減少)、筋量(の低下)、体力(の低下)、握力(の低下)、脚力(の低下)などが挙げられる。本開示はまた、(例えば、男性ではなく女性の)骨ミネラル密度(BMD)の増加、閉経後に低減される(例えば、高齢女性の)BMDの増加、(退化した)骨格筋を再生するかまたはその退化の低減、歩行の改善、空間学習力および記憶、動作、動作自由、生活の質評価、駆出率の改善(または低下の低減)、運動の変化、運動の改善などのための、S-クロトーの投与に関する。本開示はさらに、認知力劣化または健忘症の減少、認知能力の増大、認知機能およびシナプス可塑性の改善、学習力、学習能力またはIQの低下の減少、学習力、学習能力、またはIQなどの改善のためのS-クロトーの投与に関する。
【0195】
遺伝的欠陥を治療するための外因性S-クロトーの投与
本開示の例示的な実施形態は、既知のヒトの遺伝的欠陥を治療(例えば、補正)するための外因性S-クロトーの投与に関する。例えば、家族性腫瘍性石灰化症およびクロトー変異体を有する13歳の少女が報告されている。家族性腫瘍性石灰化症は、FGF23またはGALNT3の不活性化変異による、異所性石灰化および高リン酸血症を特徴とする常染色体劣性代謝疾患である。FGF23は、リン酸の腎排泄に必要なホルモンであり、一方、GALNTは、FGF23の成熟および分泌に寄与する酵素である。クロトー(KLOTHO)遺伝子のホモ接合性変異が、13歳の少女に同定されている。クロトーは、FGF23がその受容体に向かって放出するシグナルの伝達に必要な分泌タンパク質をコードする。外因性ヒト組換えS-クロトーの投与は、家族性腫瘍性石灰化症に関連する機能不全および症状に対処するために高度に標的化された、有効な治療法を構成する。
【0196】
急性腎障害(AKI)を治療するための外因性S-クロトーの投与
以前は急性腎不全(ARF)と呼ばれていた急性腎障害(AKI)は、多くの場合、軽度の機能低下から機能不全までの範囲にわたる腎機能障害の突然の発症として定義される。AKIは、毎年入院患者のおよそ4%~7%に発生する一般的な臨床的合併症であり、予後は良好ではない場合がある。AKIに関連する死亡率は、5%~35%の範囲である。腎クロトーの発現は、AKIに続いて抑制されることが示されている。クロトーのアデノウイルス遺伝子導入は、AKIでは細胞保護的であり得る。
【0197】
急性腎障害(AKI)は、毎年およそ4.9%~7%の入院患者において報告されている。AKIの割合は、(入院した)高齢者では60%、高齢者または重病患者では20~30%と高くなり得る。AKIはまた、死亡率の増加、滞在期間(LOS)、30日再投与率、および病院費用にも関連している。
【0198】
AKIは、腎臓移植もしくは他の外科手術、急性尿細管壊死(ATN)、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、腎炎(例えば糸球体腎炎)、腎毒性(例えば、薬剤性腎毒性)、低血圧、敗血症もしくは敗血症性病態、または他の寄与因子(複数可)から少なくとも部分的に生じ得る。腎臓移植および他の外科手術は、腎臓に急性の損傷または傷害を引き起こし、腎疾患および/または腎不全を引き起こし得る。腎毒性は、AKI、ATN、AAIN、腎炎などに寄与し得る。薬剤(例えば、臨床的に投与された処方薬、違法薬剤、または他の薬剤)は、AKIの全症例の15%~25%に関連していることが報告されている。造影剤単独では、院内感染した急性腎不全(例えば、造影剤によって誘発される急性腎臓傷害CIAKI)の全原因の10%を占め、腎灌流の減少後の入院中の腎機能の劣化および術後腎不全(renal insufficiency)の第3の主要原因である。
【0199】
場合によっては、薬剤性AKIは、抗菌剤によって誘発される(抗菌処理から生じる)腎毒性であり得るか、またはそれを含み得る。例えば、ある特定の(グラム陰性)細菌感染症は、パロモマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシンなどの1つ以上のアミノグリコシドで治療され得る。アミノグリコシドは、腎毒性であることが示されている。表1は、アミノグリコシドを投与される成人患者に関して収集された治療データを示す。例えば、
図1に示されるように、一般的なアミノグリコシドであるアミカシンで治療された患者の23%近くが急性腎疾患を発症し、アミカシンで治療された患者の17%超が退院前に死亡している。ゲンタマイシンおよびトブラマイシンを含む他のアミノグリコシドはまた、腎臓疾患を誘発した(またはそれに関連していたか、または寄与していた)。
【0200】
【0201】
図3Aおよび3Bに示されるように、様々な年齢層の120万人を超える成人患者が、2010年にアミノグリコシドで治療された。他の抗菌剤としては、例えば、ペニシリン、アンピシリン、セファロスポリン、スルホンアミド、シプロフロキサシン、バンコマイシン、マクロライド、テトラサイクリン、リファンピンなどが挙げられる。
【0202】
薬剤性腎毒性はまた、アスピリン(アセチルサリチル酸)、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、トルメチンなどの1つ以上の非ステロイド抗炎症薬剤(NSAID)を用いた治療から生じ得る。
【0203】
薬剤性腎毒性はまた、1つ以上のシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤(例えば、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、セレコキシブなど)、プロトンポンプ阻害剤(例えば、オメプラゾール、ランソプラゾールなど)、抗痙攣薬(例えば、フェニトイン、バルプロ酸など)、ヒスタミンH2受容体拮抗剤(例えば、ニザチジン、ラニチジン、ファモチジン、シメチジンなど)、利尿薬(例えば、炭酸脱水酵素阻害薬、ループ利尿薬(例えば、ブメタニド、エタクリン酸、トラセミド、フロセミドなど)、カリウム保持性利尿薬(例えば、トリアムテレン、スピロノラクトン、アミロライドなど)、チアジド利尿薬(例えば、インダパミド、クロルタリドン、メトラゾン、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、ポリチアジド、ヒドロフルメチアジドなど)、またはパマブロム、マンニトールなど他の利尿剤などを用いた治療から生じ得る。
【0204】
薬剤性腎毒性はまた、体内の神経細胞および筋肉細胞を通ってナトリウムの流れに影響し得るリチウムを用いた治療からも生じ、多くの場合、多動、切迫談話、判断力(judgment)低下、睡眠欲求の低減、攻撃性、および怒りを特徴とする、双極性障害の躁病エピソードを治療するために使用され得る。リチウムはまた、躁病エピソードの防止または強度の軽減にも役立ち得る。薬剤性腎毒性はまた、金、水銀、銅、または他の元素物質を用いた治療またはそれらへの曝露から生じ得る。
【0205】
薬剤性腎毒性はまた、強皮症、ウィルソン病(尿を通して除去するための銅が蓄積されて結合することによる)、システイン尿症(システインと結合してシステインよりも可溶性の混合ジスルフィドを生じることによる)、の治療に使用され得る、キレート化剤部類の医薬品である(D-)ペニシラミン、平滑筋に直接作用する弛緩剤(例えば、ヒドララジン)、鎮痙剤(例えば、カリソプロドール、シクロベンザプリン、メタキサロン、メトカルバモール、ジアゼパム、クロニジンおよび他のイミダゾリン化合物などのベンゾジアゼピン、チザニジン、バクロフェン、ヒダントイン誘導体、ダントロレンなどを用いた治療から生じ得る。
【0206】
薬剤性腎毒性の他の形態としては、例えば、造影剤によって誘発される腎毒性(例えば、(ヨウ素化)造影剤への曝露に続いて、放射線造影剤によって誘発される腎症(CIN)としても知られている);麻薬(オピオイド)によって誘発される腎毒性(例えば、コカイン、ヘロインなどのある特定の麻薬(例えば、オピオイド)の使用または乱用後);化学療法によって誘発される腎毒性(例えば、シスプラチン;カルボプラチン;オキサリプラチン;ベンダムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、テモゾロミド、メルファランなどのアルキル化剤;マイトマイシンC、ブレオマイシン、アントラサイクリン、および関係する薬剤などの抗腫瘍抗生物質;カペシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、ゲムシタビン、シタラビンなどの代謝拮抗剤;ビンカアルカロイド;トポテカン;エトポシド;タキサン;イリノテカン;レナリドマイド;エリブリン;三酸化ヒ素;イキサゾミブ;などの癌治療薬を用いた治療後)などが挙げられ得る。事実、多種多様な腎毒性薬剤が腎毒性を誘発し、AKIにつながり得る。薬剤性腎毒性(および他の形態のAKI)は、治療しなければ生命を脅かし得、(患者、病院、および保険会社に)莫大な治療費用が発生し得る。
【0207】
本開示の実施形態は、急性腎障害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、または他の病態を(例えば、予防的にまたは少なくとも事象に応答して)治療または予防する方法を含み得る。方法は、組換え(可溶性)クロトータンパク質を、それを必要とする被験体に投与することを含み得る。例えば、方法は、配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、組換え可溶性クロトータンパク質の薬学的有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み得る(例えば、対象の血清可溶性クロトータンパク質濃度を所定の閾値以上で所定の期間にわたって上昇させるおよび/または維持するように)。この病態は、(i)急性尿細管壊死(ATN)、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、腎炎、糸球体腎炎、および/もしくは腎毒性、または(ii)敗血症、腎臓移植もしくは他の外科手術もしくは医療処置、急性尿細管壊死(ATN)、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、腎炎、糸球体腎炎、腎毒性、もしくは低血圧から少なくとも部分的に生じるAKIを含み得る。この病態は、薬剤性(例えば、アミノグリコシドによって誘発される)腎毒性を含み得る。タンパク質は、例えば、AKIを引き起こすかまたはAKIに寄与することが知られているかまたは予期される、腎臓移植、腎毒素投与、または他の活動、治療、または事象の前に、予防的に投与され得る。あるいは、または加えて、タンパク質は、AKIを引き起こすか、またはAKIに寄与すると知られているかまたは予期される、腎臓移植もしくは他の外科手術、アミノグリコシドもしくは他の腎毒素投与、または他の活動、治療、もしくは事象の後など、AKIに応答して投与され得る。
【0208】
いくつかの実施形態では、腎毒素または他の薬物は、例えば、1つ以上のアミノグリコシド(例えば、パロモマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシンなど)、1つ以上の抗真菌剤(例えば、アムホテリシンB、フルシトシンなど)、1つ以上の造影剤(例えば、(ヨウ素化)放射性造影剤、約1.5:1のヨウ素対分子比を有する高浸透圧の造影剤(HOCM)、約3:1のヨウ素対分子比を有する低浸透圧の非イオン性造影剤(LOCM)、約6:1のヨウ素対分子比を有する等浸透圧の(等浸透圧)造影剤(IOCM)など)、1つ以上の抗レトロウイルス薬(例えば、アデホビル、シドホビル、テノホビル、ホスカルネットなど)、1つ以上の癌(または化学療法)治療薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アルキル化剤(例えば、ベンダムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、テモゾロミド、メルファランなど)、抗腫瘍抗生物質(マイトマイシンC、ブレオマイシン、アントラサイクリン、および関連物質など)、代謝拮抗物質(カペシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキセート、ペメトレキセド、プララトレキセート、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、ゲムシタビン、シタラビンなど)、ビンカアルカロイド、トポテカン、エトポシド、タキサン、イリノテカン、レナリドマイド、エリブリン、三酸化ヒ素、イキサゾミブなど)、1つ以上のビスホスホネート、またはそれらの誘導体(例えば、ゾレドロネート/ゾレドロン酸、イバンドロナート、アレンドロネート、アレンドロネート/コレカルシフェロール、エチドロネート、リセドロネート(任意に、炭酸カルシウムと一緒に)、パミドロネート、チルドロネートなど)、および/またはコカイン、ヘロインなどの1つ以上の麻薬(たとえばオピオイド)、であるか、またはそれらを含むことができる。
【0209】
本開示の実施形態は、治療用組換え(アルファ可溶性)クロトータンパク質(例えば、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1のアミノ酸残基1~981またはそのサブセットと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する)を投与する方法を含み得る。方法は、AKIまたはAKIに関連する1つ以上の病態を(予防的に)治療または防止するために、ヒトまたは非ヒト被験体に治療用クロトータンパク質を投与することを含み得る。方法は、被験体における血清可溶性クロトーレベルのレベルを測定することと、被験体における血清可溶性クロトーレベルを所定のレベルもしくは正常レベルのパーセントまで上昇させるのに十分な第1の投薬量のタンパク質を計算することと、ボーラスまたは段階的投与などによって、被験体にタンパク質の第1の投薬量を投与することと、第1の投薬量の投与に続いてなど血清中の可溶性クロトー低下速度を測定することと、次の投薬時間および量を計算することと、および/または次のタンパク質の投与量を被験体に投与することと、を含み得る。
【0210】
慢性腎臓疾患(CKD)を治療するための外因性S-クロトーの投与
その全体が参照により本明細書に援用される、NeyraおよびHu、Potential application of klotho in human chronic kidney disease, Bone (2017)に記載のように、循環中の可溶性クロトーは、慢性腎臓疾患(CKD)ステージ2では早期に低下し始め、尿クロトーはおそらくCKDステージ1のさらに早期に低下し始める。したがって、可溶性クロトーは、腎臓機能低下の早期的および高感度のマーカーとして機能し得る。さらに、前臨床動物データは、クロトー欠損が、単にバイオマーカーであるだけではなく、CKD進行、および心血管疾患、および鉱質代謝妨害を含む腎外CKD合併症の病因であることを裏付けている。クロトー低下の防止、内因性クロトー生成の再活性化または外因性クロトーの補充は全て、動物モデルにおける、腎線維症の減弱、CKD進行の遅延、鉱質代謝の改善、心筋症の改善、およびCKDによる血管石灰化の緩和に関連する。
【0211】
CKDは、ESRDのリスクが高い腎機能の進行性の劣化を特徴とする。CKDリスクは年齢とともに増加し、70歳以上の対象ではCKDステージ≧3の症例の約半数に発生する。CKDは、加齢の加速した状態とみなされ得る。25~34歳の透析患者の心血管系死亡率の相対リスクは、75歳以上の非CKD患者に類似している。心血管疾患は、CKDおよびESRD患者の主な死因である。CKDおよびESRD患者は、腎クロトーの発現が低く、循環クロトーのレベルが低い。CKD早期ステージの腎クロトー欠損は、主に生存可能な腎尿細管の低下ではなく、むしろクロトー発現の抑制に起因し得る。さらに、透析患者の中には、未だ検出可能なクロトーの循環を有し、腎クロトー発現が完全に抑制されておらず、クロトーの起源は今日まで明らかではないが、腎外の源(複数可)に由来し得ることが示唆されている。クロトーの腎外の源を確立し、腎産生が失敗したときにクロトーがどのようにアップレギュレーションされ得るのかを特徴付けることは、最も重要である。
【0212】
本開示の外因性クロトータンパク質の投与は、CKDでの併存疾患の負担を防止し、遅延させ、減少させるのに役立ち得る。
他の成分(複数可)と組み合わせたS-クロトーを含む組成物および治療
クロトーはまた、ヒトの健康と福利の1つ以上の側面に影響する、他の化合物および/または成分との相加的または相乗的な物質中で作用し得る。例えば、治療用ヒト組換え可溶性アルファクロトー(S-クロトー)タンパク質を1つ以上の追加の活性成分と組み合わせておよび/または並行して用いることを含む治療は、ヒト患者に有益であり得る。かかる治療は、クロトータンパク質および/または他の成分(複数可)が治療効果を有し得る任意のヒトの病態に予防的または応答性であり得る。かかる病態としては、例えば、年齢に関係する病態、代謝的病態、慢性または急性の病態などが挙げられ得る。特定の条件の特定の非限定的な例が、本明細書に開示されている。
【0213】
S-クロトーは、増殖/分化因子11(GDF-11)などの他の血液によって運ばれる抗加齢化合物とともに人体に存在し得る。したがって、ある特定の実施形態では、治療用S-クロトーは、治療用GDF-11と(例えば、並行して、連続的に、および/または組み合わせて)共投与され得る。いくつかの実施形態では、かかる投与は、相加的または相乗的な抗加齢または他の効果を有し得る。同様に、CCL11に対する(中和)抗体、またはその抑制因子を用いる、ヒト被験体へのS-クロトー共投与は、加齢または他の病態に対抗するために同調して作用し得る(CCL11(エオタキシン-1としても知られる)は、幹細胞の若返りの負の調節因子であると理解されているため)。S-クロトーはまた、またはあるいは、エオタキシン-2(CCL24)および/またはエオタキシン-3(CCL26)などの他のエオタキシンと共投与され得る。
【0214】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、トランスフォーミング増殖因子β-1(TGF-β1)の抑制因子または抗体と共投与され得る。S-クロトー投与は、腎線維化および他の組織の線維化につながる内因性抗細胞上皮-間葉移行(抗EMT)に関与するTGF-β1シグナル経路の作用に対抗し得る。抗EMTはまた、癌細胞にも関連しており、EMTの阻害が癌細胞に転移能を付与し得、この後者のプロセスはクロトーによって対抗されると理解されている。したがって、S-クロトーとトランスフォーミング増殖因子β-1(TGF-β1)の抑制因子または抗体との共投与は、相乗的または相加的な効果を有し得る。
【0215】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、インスリン増殖因子-1(IGF-1)の抗体または抑制因子と共投与され得る。クロトーは、細胞内インスリン/IGF-1シグナリングカスケードを阻害するホルモンであり、この阻害は、哺乳類の細胞および生物レベルでの酸化ストレスに対する耐性を増加させ、寿命を延長するために進化的に保存されていると考えられる機構である、と理解されている。したがって、S-クロトーとインスリン増殖因子-1(IGF-1)の抑制因子または抗体との共投与は、相乗的または相加的な効果を有し得る。
【0216】
多数の研究により、クロトーアルファ-K1、FGF23、および1,25(OH)2Dの相互に調節された正/負のフィードバック作用、ならびに/または胆汁酸/コレステロール代謝を調節するクロトーβ-K1、FGF15/ヒトFGF19、および胆汁酸で構成される類似の調節ネットワークを含む鉱物ホメオスタシスの総合的な調節スキームが明らかになったため、いくつかの実施形態では、S-クロトーは、ビタミンD(例えば、ビタミンD3)、または1,25-ジヒドロキシビタミンD3[1,25(OH)2D3]、FGF-15、FGF-19、および/またはクロトーβと組み合わせて投与され得る。かかる共投与は、体内の多数の病態および/またはプロセスに対して相乗的または相加的な効果を有し得る。いくつかの実施形態では、S-クロトーは、FGF-21と組み合わせて投与され得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、アセタゾラミド、メタゾラミド、ジクロルフェナミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、および/またはトピラマートなどの炭酸脱水酵素阻害剤と共投与され得る。かかるコンビナトリアル投与は、強直性脊椎炎(AS)、関節リウマチ(RA)、および種々の他の病態の治療に有用であり得る。様々な調査により、骨吸収の増加は、ASおよびRAの特徴であること、ならびに炭酸脱水酵素阻害剤は骨吸収を阻害することによって抗関節炎の役割を果たすことが示されている。骨レベルでは、近年同定された破骨細胞機能調節因子であるTRPV5への作用による異なる機構を通じ、S-クロトーは、骨吸収およびリン酸放出を刺激する。S-クロトー投与によって引き起こされる1,25(OH)2D3のレベルの上昇はまた、破骨細胞分化および骨吸収を刺激し、それによりリン酸を放出する。したがって、S-クロトーと炭酸脱水酵素阻害剤との共投与は、特にASおよびRAにおける、特に骨の健康促進において、相加的または相乗的効果を有し得る。
【0218】
重度の活動性関節リウマチの治療のために、S-クロトーは、1つ以上の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と組み合わせて投与され得る。
シクロスポリンはクロトーmRNAおよびタンパク質を減少させ、シクロスポリンによって誘発される腎障害(CsA)につながる酸化ストレスを増加させるため、S-クロトーはシクロスポリンと組み合わせて投与され得る。関連するクロトーmRNAおよびタンパク質の減少および酸化ストレスの増加は、S-クロトーの外因性共投与によって対抗され得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、ロサルタン、および/またはシクロスポリンと共投与され得る。アンジオテンシンII1型(AT1)受容体ブロッカーであるロサルタンを用いた治療は、シクロスポリンを用いて見られるクロトー発現の減少を逆転させた。ロサルタンはまた、腎組織(シクロスポリンによって引き起こされる尿細管間質線維症を減少させるロサルタンを用いて)の並行した改善をもたらした。
【0220】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシンなどの1つ以上のアミノグリコシドと共投与され得る。感染症の治療へのアミノグリコシドの使用を大幅に拡大し得る(グラム陰性)病原体感染症を治療するためにアミノグリコシドが使用されるとき、かかる治療は、腎毒性および/または急性腎障害(AKI)を防止するために有用であり得る。AKIをブロックするために使用されてきたベラパミルおよび/またはジルチアゼムとともにS-クロトーを投与することは、AKIからの腎機能障害の治療および/または防止に治療的であり得る。
【0221】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、テストステロンまたはアンドロゲン受容体(AR)アップレギュレーション化合物と共投与され得る。近年の報告は、人格、心理的福利、または気分に関する男性へのテストステロン治療には有益な効果が観察されないことを示している。加えて、心血管の健康、性機能、身体機能、気分、または認知機能としての低Tに対するテストステロン補充の処方は、無作為化臨床試験による裏付けはないと考慮されていた。しかしながら、テストステロン補充は、筋力を増加することが一貫して見出されたが、身体機能に有益な効果は見出されなかった。テストステロンおよび/またはアンドロゲン受容体(AR)アップレギュレーション化合物と組み合わせたS-クロトー投与は、テストステロンまたはS-クロトーが単独でこれらの治療グループに対して有し得るいかなる効果をも超えて、高齢者、虚弱または低T男性の筋力および/または身体機能を顕著に増加し得る。
【0222】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、エストロゲンまたはエストロゲンホルモン(例えば、エストラジオール、エストリオール、エストロンなど)と共投与され得る。かかる共投与は、女性の健康指標(例えば、月経、閉経、または閉経に移行している女性)を改善し得、ならびに/または不妊症、多嚢胞性卵巣疾患もしくは障害、肥満、ホルモン不均衡および関係する病態、ならびに/または他の女性健康状態を治療し得る。
【0223】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、スマートドラッグまたは認知力向上剤とも呼ばれる、1つ以上のヌートロピックと共投与され得る。ヌートロピック薬剤、補充剤、および/または他の物質は、認知機能、特に実行能力、記憶力、創造性、動機づけ、作業サリエンシー(task saliency)(作業を実施する動機づけ)、パフォーマンス(特に高度な努力が必要な面倒な作業の)を改善し得、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病およびADHDなどの障害の原因となる認知機能障害または運動機能障害の治療に有用であり得る。認知力のいくつかの側面を改善することが知られている最も一般的に使用される薬剤の部類は、刺激物質、特に前頭前皮質のドーパミン受容体D1、アドレナリン受容体A2、またはそれらの両方の受容体の直接作用物質または間接作用物質として作用することによって、ヒトへの認知力向上効果を示す刺激物質の部類である。刺激物質としては、例えば、特にADHDを有する個体における認知機能(例えば、抑制制御、エピソード記憶、作業記憶、および注意力の面)の範囲に有益であり得るアンフェタミン(例えば、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、リスデキサンフェタミンなど)、身体能力、警戒性、反応時間などを改善し得る1,3-ジメチルアミルアミンなどのジメチルアミルアミン(DMAA)、メチルフェニデート-認知機能の範囲(例えば、作業記憶、エピソード記憶、および抑制制御、注意力の面、および計画にかかる速度(planning latency))を改善し得る置換フェネチルアミン、特に睡眠不足の個体の警戒性を高め、論理的思考および問題解決を容易にし、ナルコレプシー、交代制勤務による睡眠障害、および睡眠時無呼吸症の治療後にも残る日中の眠気などを治療し得る覚醒促進剤として機能し得るユーゲロイクス(eugeroics)(例えば、アルモダフィニル、モダフィニルなど)、警戒性、パフォーマンス、および/または記憶力を高め得るキサンチン(例えば、カフェインなど)、ニコチン、などが挙げられる。
【0224】
いくつかの実施形態では、S-クロトーは、当該技術分野で既知のとおり、1つ以上の骨粗しょう症薬剤および/または骨減少症薬剤と同時投与することができる。クロトーは骨ミネラル密度を調節する役割を果たし得、クロトーの欠如により動物の骨ミネラル密度低減につながり得る。例えば、クロトーノックアウトマウスは、経時的な骨ミネラル密度の低減を示す。クロトーノックアウトマウスが経時的に骨ミネラル密度の低減を示すなど、クロトー発現はクロトーノックアウト動物における骨の欠陥から救済し得る。疫学研究は、様々なクロトー遺伝子多様体と、骨ミネラル密度の変化および手の変形性関節症の広がりとの間の関連を示している。
【0225】
S-クロトーは、化学療法などの1つ以上の抗癌治療および/または防止と組み合わせて投与され得る。非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌では、例えば、S-クロトー投与は、肺癌細胞のシスプラチンおよび/または他の化学療法に対する耐性に影響し得る。加えて、S-クロトーは、肺癌、胃癌、膵臓癌(腺癌)、および他の形態の癌において潜在的な腫瘍抑制因子として機能し得る。S-クロトーは、肝細胞癌(HCC)の治療のためにソラフェニブ化学療法と組み合わせて投与され得る。クロトーの過剰発現ならびに可溶性クロトータンパク質を用いた治療は、インビトロおよびインビボでの肝癌細胞増殖を低減し得る。S-クロトー共投与で治療され得る他の癌のタイプとしては、肝細胞癌(HCC)、中枢神経系(CNS)癌(例えば脳(例えば、神経膠腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、および髄膜腫)、脊髄および他の腫瘍、リンパ腫など)、(転移性の)結腸癌などが挙げられる。
【0226】
S-クロトーはまた、癌患者の化学療法によって誘発される虚弱を治療するために、化学療法と組み合わせて投与され得る。S-クロトーはまた、他の既知の治療に続いて、癌患者における癌によって誘発される虚弱を治療するために投与され得る。
【0227】
S-クロトーは、腎臓透析または他の処置と組み合わせて投与され得る。虚弱は透析患者の予後不良と関連しているため、S-クロトーは、透析患者の虚弱を治療するために投与され得る。
【0228】
適切な量のBDNFが脳内の正常なニューロン回路を発達させ維持するのに役立ち得るため、S-クロトーは、1つ以上のアルツハイマー病治療もしくは防止と組み合わせて、または脳由来神経栄養因子(BDNF)と組み合わせて投与され得る。
【0229】
CNSに関係する病態を治療または防止するためにクロトーが中枢神経系(CNS)に入る能力を高めるために、S-クロトーは、クロトーが血液脳関門を通過する能力を高める1つ以上の分子と組み合わせて投与され得る。例えば、S-クロトーもBDNFも、血液脳関門を通過しないことが知られている。本開示の実施形態は、アルツハイマー病を治療するために、および/またはアルツハイマー病に罹患していない個体の認知力を改善するために、S-クロトーおよび/またはBDNFを含むS-クロトーをCNSに投与するための血液脳関門送達技術を利用することを含む。
【0230】
S-クロトーは、5’アデノシンモノリン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)、またはAMPK活性化薬剤、または脂肪酸酸化およびオートファジーを含む細胞のATP供給を補給するシグナリング経路を正に調節するか、または糖新生、脂質およびタンパク質合成を含むATP消費生合成プロセスを負に調節する成分と組み合わせて投与され得る。
【0231】
S-クロトーは、インスリン、フロリジン、または抗酸化剤タイロンなどの1つ以上の抗糖尿病薬剤と組み合わせて投与され得、これらの組み合わせ治療は、糖尿病性障害で生じる酸化的ストレスによる腎損傷の防止にメリットを有し得る。S-クロトーと1型糖尿病用の他の抗糖尿病薬剤との共投与は、インテグリンβ1-FAK/Akt経路の活性化を通してβ細胞のアポトーシスを阻害し、カスパーゼ3切断の阻害につながることによって、β-細胞を保護し得る。
【0232】
S-クロトーは、過体重および肥満糖尿病被験体の血糖制御および血管機能を改善するために、メトホルミンなどの1つ以上の2型抗糖尿病薬剤と組み合わせて投与され得る。
S-クロトーは、1つ以上の血圧医薬品、カルシウム調節剤、または慢性腎臓疾患(CKD)の治療もしくは防止と組み合わせて投与され得る。例えば、軟組織石灰化はCKDの顕著な特性であり、クロトーは、リン酸塩尿の向上、糸球体濾過量の維持、および血管平滑筋によるリン酸取り込みの直接阻害によって、血管石灰化を改善し得る。
【0233】
PAI-1阻害または欠損が老化の進行を遅延し、臓器の構造および機能を保護しながらクロトー欠損(kl/kl)マウスの寿命を延ばすと考えられているため、S-クロトーは、TM5441または他のPAI-1阻害剤(プラスミノーゲン活性化因子1)と組み合わせて投与され得る。
【0234】
S-クロトーは、サーチュイン1(SIRT1)またはレスベラトロールなどのSIRT1活性化化合物(STAC)と組み合わせて投与され得る。III型タンパク質デアセチラーゼであるSIRT1は、細胞老化/加齢および炎症の調節に関与する新規な抗加齢タンパク質であると考えられている。SIRT1レベルおよび活性は、酸化的ストレスによって引き起こされる肺の炎症中に減少する。炎症に対するSIRT1介在性の防御機構は、炎症、早期老化、テロメア短縮、老化に関連する分泌表現型、およびDNA損傷応答の調節に関連する。2型糖尿病、癌、心血管疾患、および炎症に関連する慢性閉塞性肺疾患の進行に介入するために、種々の食物ポリフェノールおよび薬理的活性化剤がSIRT1を調節することが示されている。したがって、SIRT-1の健康上の利点の一部または全部は、S-クロトーとともに投与されるSIRT1および/またはSIRTI活性化化合物の共投与によって補完され得る。
【0235】
S-クロトーは、FDAによって承認済みの、1つ以上のヒト細胞、組織、ならびに細胞および組織系生成物(HCT/Ps)と組み合わせて投与され得る。かかる生成物としては、例えば、保存された臍帯静脈、心膜、羊膜(眼の修復のために単独で使用されるとき(細胞を添加されていない))、硬膜、心臓弁同種移植片、末梢血もしくは臍帯血、精液、卵母細胞、または胚由来の造血幹細胞を除く、(脱灰骨、靭帯、腱、筋膜、軟骨、眼球組織(角膜および強膜)、皮膚、血管移植片(静脈および動脈)を含む)のうちの1つ以上の骨が挙げられ得る。少なくとも1つの実施形態では、HCT/Pは、1つ以上の幹細胞であり得るか、またはそれを含み得る。損傷した身体組織および器官の幹細胞治療は、一般的になってきている。幹細胞と組み合わせた治療用組換えクロトータンパク質の投与は、それを必要とする被験体にとって驚くべき、予想外の、さらには相乗的な結果を提供した。
【0236】
本開示の実施形態は、ヒト幹細胞と組み合わせた治療用組換えクロトータンパク質を含む組み合わせ生成物をさらに含む。組成物はまた、本明細書に記載の薬学的に許容可能な担体を含み得る。かかる組成物は、FDAによって承認済みの、重篤なまたは生命を脅かす疾患または病態を治療、改変、逆転、または治癒するための再生薬として含まれ得るか、または再生薬として分類され得る。暫定的な臨床的根拠は、組成物(薬剤)が、かかる疾患または病態に対して適合していない医学的必要性に対処する潜在性を有することを示す。
【0237】
例示的には、幹細胞は、ヒト臍帯または胎盤からなどの間葉系幹細胞(MSC)であり得るか、またはそれを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、本開示のhuMSCおよび治療用組換えクロトータンパク質を含む組成物は、AKIで生じる炎症性および酸化ストレス応答を減弱し、ならびに/または老化に関係するタンパク質およびマイクロRNAの発現を低下させた。
【0238】
S-クロトーは、1つ以上の老化阻害剤と組み合わせて投与され得る。例えば、クロトータンパク質は、Pin1-FOXM1および/または他の老化阻害剤と組み合わせて、かかる治療を受けている患者における結果を向上し得る。
【0239】
S-クロトーは、クロトー刺激剤(例えば、Vit.D、ロサルタン、テストステロン)、GDF-11、トリコスタチンA抗真菌剤(GDF-11刺激剤)、TIMP-2、CCL-11阻害剤/抗体、ダサチニブ、ニコチンアミドリボシド(例えば、NAD+)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)(例えば、NDA+)、AMPK刺激剤(例えば、レスベラトロール、アスピリン、サリチレート、ファイトケミカル、DR)、C60フラーレン、ラパマイシン、FGF阻害剤、FOXO4-p53干渉ペプチド(例えば、FOXO4-DRI)などのセノリティック薬剤/化合物、抗アポトーシスタンパク質BCL-2およびBCL-xLの阻害剤のうちの1つ以上と組み合わせて投与され得る。
【0240】
前述のまたは他の治療または共投与のいずれも、いずれかの治療単独のものよりも相加的または相乗的効果を有し得る。例えば、クロトータンパク質と前述のもののうちの1つ以上との共投与は、同様の濃度で単独成分を投与する個々の結果の合計よりも、大きな治療結果を生じ得る。加えて、相乗効果は、より低い濃度で、単独成分を投与する個々の結果のものと同様の治療結果を含み得る。相乗効果はまた、成分のうちの1つ以上の最大有効投薬量の増加、成分のうちの1つ以上の毒性の低減、または個々の治療結果の単なる相加的な効果以上の任意の他の有益な結果を含み得る。さらに、個々の治療成績の相加効果は、1つ以上の相乗効果を含み得る。そのような相加的/相乗的効果は、個々の成分の性質および理解を考慮すると予測または予想されない場合がある。
【0241】
本明細書で使用される場合、併用治療または共投与は、クロトータンパク質および1つ以上の追加の活性成分を含む組み合わせ生成物、組成物、または製剤の治療または投与を含み得る。1つ以上の追加の活性成分は、本明細書に記載の成分、薬剤、物質、治療組成物など、または当該技術分野で既知の他のものの中から選択され得る。例えば、クロトータンパク質および1つ以上の追加の活性成分は、注射可能な(例えば、筋肉内、静脈内など)、摂取可能な、経皮的な、吸入可能な、局所的な、または他の製剤に共配合され得る。
【0242】
あるいは、併用治療または共投与は、クロトータンパク質および1つ以上の追加の活性成分が、組み合わせ生成物、組成物、製剤に組み合わされていない、または配合されていない、クロトータンパク質および1つ以上の追加の活性成分の治療または投与を含み得る。例えば、クロトータンパク質および1つ以上の追加の活性成分は、別々に注射可能な(例えば、筋肉内、静脈内など)、摂取可能な、経皮的な、吸入可能な、局所的な、または他の製剤を各々含むか、またはそのような製剤であり得る。
【0243】
また、共投与は、2つ以上の成分の同時投与、または2つ以上の成分の別個の投与を含み得、別個の投与は、好ましくはある期間によって隔てられていることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、期間は非常に短くてもよい。例えば、クロトータンパク質および1つ以上の追加の活性成分の第1の成分の投与直後に、クロトータンパク質および1つ以上の追加の活性成分の第2の成分が、実質的に投与(例えば、注射)され得る。あるいは、第1および第2の投与は、1~60秒、1~60分、1~24時間、1~7日、1~4週間、1~12ヶ月など、または任意の値もしくはその間の値の範囲などの期間によって隔てられ得る。同様に、同時投与は、2つ以上の成分の投与時間枠の重複を含み得る。
【0244】
クロトータンパク質多様体
様々な長さの治療用S-クロトータンパク質(例えば、S-クロトー、アイソフォーム1または2、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、131~549など)は、様々な方法で修飾されて、種々の有益な効果および/または天然クロトータンパク質が呈さない結果を達成し得る。例示的には、QuickChangeXL部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を使用して、様々なS-クロトー構築物の核酸配列を変化させ得る。当該技術分野で既知の他の突然変異誘発方法およびキットもまた、使用され得る。例えば、様々なサブクローニング方法およびキットが当該技術分野で既知であり、市販されている。
【0245】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、タンパク質は、1つ以上のC末端タグおよび/またはN末端タグで修飾される。かかるタグは、血清および/またはタンパク質の可溶性半減期を(1つ以上の治療または他の環境において)延長するように機能し得る。タグはまた、タンパク質の存在または診断的な局在化、タンパク質の単離または除去、タンパク質の送達または輸送、タンパク質の1つ以上の標的(例えば、タンパク質、核酸、オルガネラ、細胞構造構成要素など)への結合、酵素的な処理または切断などのためのマーカーとして有用であり得る。少なくとも一実施形態では、タンパク質のC末端は、TEV-Twin-Strepタグもしくは配列、免疫グロブリン(IgG1)Fcドメインタグもしくは配列、または当技術分野において公知および/もしくは本明細書でさらに説明するとおり、他のタグもしくは配列でタグ付けすることができる。追加の説明は、各々の全体が特定の参照によって本明細書に援用される、文献「Fusion Proteins for Half-Life Extension of Biologics as a Strategy to Make Biobetters」、「What is the future of PEGylated therapies?」、および「Strategies for extended serum half-life of protein therapeutics」に見出され得る。ある特定の実施形態では、リンカーまたはリンカーペプチドは、(天然または多様体)クロトータンパク質配列とタグとの間に挿入および/または配置され得る。
【0246】
いくつかの実施形態では、修飾クロトータンパク質は、代替(例えば、天然、非天然および/または合成)シグナルペプチドを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、天然シグナルペプチド配列は、代替シグナルペプチドまたはシグナリング配列(SS)で置換および/または補充され得る。いくつかの実施形態では、クロトータンパク質の天然メチオニン残基は除去され得、SSのN末端にメチオニン残基が含まれ得る。追加の説明は、その全体が特定の参照によって援用される、論文「Generation of high expressing CHO cell lines for the production of recombinant antibodies using optimized signal peptides and a novel ER stress based selection system」に見出され得る。ある特定の実施形態では、リンカーまたはリンカーペプチドは、(天然または多様体)クロトータンパク質配列と代替SSとの間に挿入および/または配置され得る。
【0247】
いくつかの実施形態は、1つ以上のアミノ酸多様体を含み得る。本開示は、開示されたクロトータンパク質のいずれかの天然アミノ酸のうちの任意の1つ以上を、天然、合成、または他の構成にかかわらず任意の他のアミノ酸へ多様化させることを考慮することが理解されるであろう。
【0248】
S-クロトーC370Sタンパク質多様体
ヒトでは、クロトー遺伝子は染色体13q12上に位置する。KL-VSとして知られる多様体は、白人のおよそ15~25%に存在する。この多様体は、6つの一塩基多型(SNP)で構成され、そのうちの2つはアミノ酸置換を引き起こす(すなわち、F352VおよびC370S-フェニルアラニン352はバリンに変化し、システイン370はセリンに変化した)。インビトロトランスフェクションアッセイは、クロトーの分泌レベルがV352多様体では6倍低減され、一方でS370形態ではほぼ3倍増加されたことを示した。しかしながら、ヒトクロトー遺伝子におけるこれらの2つの多様体は、ともに分離し、クロトー分泌を1.6倍の範囲で増加させるKL-VSハプロタイプを形成する。例えば、地理的および/または民族的に別個のコホートから採取された300人を超える個体のスクリーニングでは、V352多様体またはS370多様体のうちの1つのみを保有する個体は1人も見出されていないことが報告されている。
【0249】
本開示の一実施形態は、C370Sホモ多様体を有する(すなわち、F352V多様体が存在しない(またはその欠失を伴う))組換えS-クロトータンパク質を含む。C370S多様体は、本明細書に記載の任意のタンパク質構築物との関係において、産生および/または発現され得る。例えば、C370S多様体は、タグ(例えば、(IgG)Fcタグ、TEV-Twin-Strepタグ、TEV配列など)の有無にかかわらず、S-クロトー、アイソフォーム1または2、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、131~549などとの関係において産生または発現され得る。したがって、タンパク質が発現される核酸構築物またはcDNAは、対応する長さであり得る。
【0250】
実施形態は、S370ヘテロ接合性またはホモ接合性多様体構築物を産生することと、S-クロトーC370Sタンパク質をコードする得られた構築物を(例えば、トランスフェクションを介して)適切な発現系(例えば、CHO細胞)に導入することと、および/またはS-クロトーS370タンパク質を一過性に発現することと、を含み得る。S370クロトータンパク質は、F352V/C370Sタンパク質および/または野生型F352/C370タンパク質よりもより高いレベルで発現され得る。実施形態は、治療的投与のために発現されたタンパク質を精製すること(および任意選択的に品質管理試験をすること)を含み得る。実施形態は、治療用、または治療有効量のS-クロトーC370Sタンパク質を、それを必要とする被験体に投与することを含み得る。被験体は、例えば、KL-VS多様体を保有または発現し得る。あるいは、被験体は、他の変異体または多様体の野生型のものであり得る。組換えS-クロトーC370Sタンパク質の投与は、血中S-クロトーレベルの有益な増加につながり得る。したがって、治療用組換えS-クロトーC370Sタンパク質を投与された被験体におけるS-クロトーの循環濃度は、F352V多様体が存在するときに観察される希釈効果を受けない可能性がある。
【0251】
高リン酸血症性家族性腫瘍性石灰化症(HFTC)の治療的処置
罹患しているヒト個体では、HFTCは、S-クロトー-rs121908423のアミノ酸(AA)193位でのヒスチジン(H)からアルギニン(R)への変異によって引き起こされる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、HFTC個体におけるH193R変異は、KL依存性FGF23シグナリングを損なわせるFGF23およびFGFR1cとの三成分複合体を形成するS-クロトーの能力を損なわせる、と考えられている。結果として、罹患している被験体は、皮膚および皮下組織に高リン酸血症および大量のカルシウム沈着が現れる重度の代謝障害を示す。一部の患者では、骨膜反応および皮質性骨増殖症および皮膚への浸潤の欠如の放射線学的所見に関連する、再発する一過性の長骨の痛みのある腫脹が現れる。
【0252】
本開示の一実施形態は、H193を有するS-クロトータンパク質を含む。H193タンパク質は、本明細書に記載の任意のタンパク質構築物との関係において、産生または発現され得る。例えば、H193多様体は、タグ(例えば、Fcタグ、TEV-Twin-Strepタグ、TEV配列など)の有無にかかわらず、S-クロトー、アイソフォーム1または2、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、131~549などとの関係において産生または発現され得る。したがって、タンパク質が発現される核酸構築物またはcDNAは、対応する立体配置であり得る。
【0253】
実施形態は、H193ヘテロ接合性またはホモ接合性多様体構築物を産生することと、S-クロトーH193タンパク質をコードする得られた構築物を(例えば、トランスフェクションを介して)適切な発現系(例えば、CHO細胞)に導入することと、および/またはS-クロトーH193タンパク質を一過性に発現することと、を含み得る。H193クロトータンパク質はまた、R193(またはH193R)タンパク質よりもより高いレベルで発現され得る。実施形態は、治療的投与のために発現されたタンパク質を精製すること(および任意選択的に品質管理試験をすること)を含み得る。実施形態は、それを必要とする被験体(例えば、HFTC個体、HFTCと診断された個体、またはH193R(rs121908423)もしくは他の変異体を保有する患者)に、治療用または治療有効量のS-クロトーH193タンパク質を投与することを含み得る。あるいは、被験体は、他の変異体または多様体の野生型のものであり得る。組換えS-クロトーH193タンパク質の投与は、血中S-クロトーレベルの有益な増加につながり得る。投与は、HFTCに罹患している個体のヒトクロトー遺伝子に見出されるH-~-R193点突然変異の結果として、HFTC個体において転写および循環されるR193変異体の悪影響を逆転または抑制し得る。したがって、S-クロトーH193の循環濃度は、H193RまたはHFTC個体において観察される影響に対抗するのに役立ち得る。
【0254】
末期腎疾患(ESRD)を有するCC遺伝子型患者における治療的処置
末期腎疾患(ESRD)を有するおよそ35万人の患者が、常習的な血液透析のその最初の年に非常に高い死亡率に苦しんでいる。ビタミンDおよび線維芽細胞増殖因子(FGF)-23レベルの両方は、これらの患者の生存と相関する。いかなる理論にも拘束されるものではないが、クロトーは、ビタミンD/FGF-23シグナリング経路中のタンパク質であり、動物モデルにおける加速した加齢および若年死亡と関連している。クロトー遺伝子の遺伝的変異は、ESRDを有する被験体の生存と関連し得るとの仮説が立てられている。研究者らは、血液透析の最初の1年間に、クロトー遺伝子の12の一塩基多型(SNP)とESRD患者コホート(n=1307人、白人およびアジア人)の死亡率との間の関連性を試験した。1つのタグSNP、rs577912のCC遺伝子型(イントロン1に位置するクロトー遺伝子配列内のマイナー対立遺伝子頻度[MAF]>0.05を有する一般的なHapMapの変異体)と、1年死亡率のリスク増加(RR、1.76;95%CI、1.19~2.59;p=0.003)との間の顕著な関連性が発見された。活性型ビタミンD補充剤(HR、2.51;95%CI、1.18~5.34;p=0.005)を用いて治療されなかった患者のうち、CC遺伝子型を有する個体におけるこの効果はさらにより顕著であった。HapMap被験体由来のリンパ芽球様細胞株では、CC遺伝子型は、AAまたはAC遺伝子型と比較して、16~21%低いクロトー発現と関連していた。しかしながら、上述のrs577912 SNPヌクレオチド変化のいずれも、クロトータンパク質のアミノ酸変化を生じない。したがって、この機能性SNP(rs577912)は、mRNAレベルでのクロトー遺伝子発現に定量的に影響し得る。
【0255】
本開示の一実施形態は、AAまたはAC遺伝子型から発現されるS-クロトータンパク質を含む。タンパク質は、本明細書に記載の任意のタンパク質構築物との関係において、産生または発現され得る。例えば、タンパク質は、S-クロトー、アイソフォーム1または2タグ付きまたはタグなしの1-981、29-981、34-981、36-981、131-981、1-549、29-549、34-549、36-549、131-549など(例えば、Fcタグ、TEV-Twin-Strepタグ、TEV配列など)との関係において産生または発現され得る。したがって、タンパク質が発現される核酸構築物またはcDNAは、対応する長さであり得る。
【0256】
実施形態は、AAまたはACヘテロ接合性またはホモ接合性構築物を産生することと、S-クロトータンパク質をコードする得られた構築物を(例えば、トランスフェクションを介して)適切な発現系(例えば、CHO細胞)に導入することと、および/またはS-クロトータンパク質を一過性に発現することと、を含み得る。AAまたはACヘテロ接合性またはホモ接合性細胞中で発現されるクロトータンパク質は、CC細胞におけるよりもより高いレベルで発現され得る。実施形態は、治療的投与のために発現されたタンパク質を精製すること(および任意選択的に品質管理試験をすることと)を含み得る。実施形態は、治療用または治療有効量のS-クロトータンパク質を、それを必要とする被験体(例えば、内在性S-クロトータンパク質発現が低い、1つのタグSNP、rs577912でCC変異を保有する、および/または末期腎疾患(ESRD)を有する、個体または患者)に投与することを含み得る。あるいは、被験体は、他の変異体または多様体の野生型のものであり得る。組換えS-クロトータンパク質の投与は、血中S-クロトーレベルの有益な増加につながり得る。投与は、罹患している個体のヒトクロトー遺伝子に見出される点突然変異(複数可)の結果として、個体において転写および循環されるCC変異体の悪影響を逆転または抑制し得る。したがって、S-クロトーの循環濃度は、CC個体、特に末期腎疾患(ESRD)を有する患者に観察される効果、すなわち常習的に血液透析を受けているESRD患者の最初の年の死亡率に対抗するのに役立ち得る。
【0257】
レントゲン写真による手の変形性関節症(OA)および骨棘の治療的処置
変形性関節症(OA)は、強い遺伝性の要素を有する一般的な複雑な疾患である。研究者らは、白人女性の大きな集団では、クロトー遺伝子の4つの推定上の機能性遺伝子多様体と、手の変形性関節症OAとの間の関連性を研究した。研究者らは、SNP G-395Aと、レントゲン写真による手のOAおよび骨棘形成の有無との間に顕著な関連性を見出した。対立遺伝子Gは、それぞれ、1.44(P=0.008、95%信頼区間(CI)1.09~1.91)および1.36(P=0.006、95%CI 1.09~1.70)のオッズ比(OR)を有するレントゲン写真による手のOAおよび骨棘のリスクを顕著に増加させた。ロジスティック回帰モデリングから、遺伝子型GGは、遺伝子型AAと比較したとき、レントゲン写真による手のOA(OR=3.10、95%CI 1.10~8.76)および骨棘(OR=3.10、95%CI 1.10~8.75)の両方のリスクが3倍を超えて増加したことを示した。年齢調整後、遺伝子型GGのORは、レントゲン写真による手のOAでは4.39(P=0.006、95%CI 1.51~12.74)、骨棘では4.47(P=0.005、95%CI 1.56~12.77)にさらに増加した。研究者らはまた、クロトー遺伝子の1つの多様体(SNP G-395A)が手のOAの感受性と関連し、軟骨損傷よりもむしろ骨棘形成を通して作用するようであることを示唆した。
【0258】
本開示の一実施形態は、SNP G395Aを有する構築物から発現されるS-クロトータンパク質を含む。得られたタンパク質は、本明細書に記載の任意のタンパク質構築物との関係において、産生または発現され得る。例えば、A395多様体は、タグ(例えば、Fcタグ、TEV-Twin-Strepタグ、TEV配列など)の有無にかかわらず、S-クロトー、アイソフォーム1もしくは2、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、131~549などとの関係において産生または発現され得る。したがって、タンパク質が発現される核酸構築物またはcDNAは、対応する長さであり得る。
【0259】
実施形態は、G395Aヘテロ接合性またはホモ接合性構築物を産生することと、S-クロトータンパク質をコードする得られた構築物を(例えば、トランスフェクションを介して)適切な発現系(例えば、CHO細胞)に導入することと、および/またはS-クロトータンパク質を一過性に発現することと、を含み得る。A395ヘテロ接合性またはホモ接合性細胞中で発現されるクロトータンパク質は、G396細胞におけるよりもより高いレベルで発現され得る。実施形態は、治療的投与のために発現されたタンパク質を精製すること(および任意選択的に品質管理試験をすること)を含み得る。実施形態は、それを必要とする被験体(例えば、G395 SNP、ならびに/またはレントゲン写真による手の変形性関節症(OA)および/もしくは骨棘を保有する(これらを発症するリスクがある)個体または患者)に、治療用または治療的有効量のS-クロトータンパク質を投与することを含み得る。あるいは、被験体は、他の変異体または多様体の野生型のものであり得る。組換えS-クロトータンパク質の投与は、血中S-クロトーレベルの有益な増加につながり得る。投与は、罹患している個体で転写および循環されるG395 SNPの悪影響を逆転または抑制し得る。したがって、S-クロトーの循環濃度は、G395個体、特にレントゲン写真による手の変形性関節症(OA)および/または骨棘を発症するリスクがある個体において観察される影響に対抗するのに役立ち得る。したがって、G-395A S-クロトータンパク質の投与は、患者(例えば、G395 SNPを保有する患者におけるレントゲン写真による手の変形性関節症(OA)および骨棘形成のリスクを減少し得る。
【0260】
メタボリック症候群の治療的処置
腹部肥満、高血糖、脂質異常、および高血圧を含む心血管代謝性危険因子の集団であるメタボリック症候群(MetS)のリスクおよび/または発生率は年齢とともに増加する。高齢の成人では、MetSは心血管疾患および2型糖尿病のリスクを高めるだけでなく、認知力低下および身体障害にも関連している。現在の根拠によると、MetSは、部分的に遺伝性であり、遺伝因子はMetSの発生率に対する環境因子よりもより大きな役割を果たすことが示唆されている。研究者は、中国の90歳代および100歳代の人口間で、G-395A多型とメタボリック症候群(MetS)との間の関連性を発見した。被験体は、都江堰市(PLAD)の長寿および加齢のプロジェクトからであった。クロトー遺伝子のプロモーター領域におけるG-395A(rs1207568)の遺伝子型決定を、TaqMan対立遺伝子識別アッセイを使用して実施した。MetSは、国際糖尿病連合の基準に従って診断された。93.5±3.2歳の695人の被験体が含まれた。GおよびAの対立遺伝子頻度は、それぞれ0.852および0.148であった。人口全体では、MetSの頻度は、GGおよびGA+AA遺伝子型群でそれぞれ、10.8%および5.9%であった(p=0.004)。-395A対立遺伝子キャリアは、人口全体では(奇数比[OR]0.50、95%信頼区間[CI]0.25~0.98)、および女性では(OR0.51、95%CI 0.24~0.97)の顕著に低いMetSのリスクを有したが、男性では(OR0.42、95%CI 0.05~3.85)であった。人口全体および女性では、クロトーG-395A SNPとMetSとの間の関係は、高血圧(それぞれOR0.48、95%CI 0.34~0.67;OR0.47、95%CI0.31~0.71)、および高トリグリセリド血症(それぞれOR0.66、95%CI 0.39~0.95;OR0.54、95%CI0.31~0.98)へのその影響による可能性があった。男性では、この関係は、高血圧(OR0.47、95%CI 0.25~0.90)および低HDL-C(OR0.69、95%CI 0.27~0.93)へのその影響による可能性があった。研究者らは、クロトー遺伝子の-395A対立遺伝子キャリアが、中国の特に女性の90歳代および100歳代の間のMetSの低いリスクと相関していると結論付けた。
【0261】
本開示の一実施形態は、-395A対立遺伝子を有する構築物から発現されるS-クロトータンパク質を含む。得られたタンパク質は、本明細書に記載の任意のタンパク質構築物との関係において、産生または発現され得る。例えば、A395対立遺伝子は、タグ(例えば、Fcタグ、TEV-Twin-Strepタグ、TEV配列など)の有無にかかわらず、S-クロトー、アイソフォーム1もしくは2、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、131~549などとの関係において産生または発現され得る。したがって、タンパク質が発現される核酸構築物またはcDNAは、対応する長さであり得る。
【0262】
実施形態は、-395Aヘテロ接合性またはホモ接合性構築物を産生することと、S-クロトータンパク質をコードする得られた構築物を(例えば、トランスフェクションを介して)適切な発現系(例えば、CHO細胞)に導入することと、および/またはS-クロトータンパク質を一過性に発現することと、を含み得る。A395ヘテロ接合性またはホモ接合性細胞中で発現されるクロトータンパク質は、G396細胞におけるよりもより高いレベルで発現され得る。実施形態は、治療的投与のために発現されたタンパク質を精製すること(および任意選択的に品質管理試験をすること)を含み得る。実施形態は、それを必要とする被験体(例えば、G395 SNP、および/またはメタボリック症候群(MetS)を保有する(これらを発症するリスクがある)個体もしくは患者に、治療用または治療的有効量のS-クロトータンパク質を投与することを含み得る。あるいは、被験体は、他の変異体または多様体の野生型のものであり得る。組換えS-クロトータンパク質の投与は、血中S-クロトーレベルの有益な増加につながり得る。投与は、罹患している個体で転写および循環されるG395 SNPの悪影響を逆転または抑制し得る。したがって、S-クロトーの循環濃度は、G395個体、特にメタボリック症候群(MetS)を発症するリスクのある個体において観察される影響に対抗するのに役立ち得る。したがって、G-395A S-クロトータンパク質の投与は、患者(例えば、G395 SNPを保有する高齢のヒトおよび/または女性の患者)におけるメタボリック症候群(MetS)のリスクを減少し得る。
【0263】
癌の治療的処置
S-クロトーは、基礎Wntシグナリング活性を阻害し、それによって結腸直腸癌(CRC)の腫瘍抑制因子として機能すると考えられている。加えて、寿命差に関連するクロトー遺伝子多様体は、酪酸塩が介在するWntの過剰活性化を抑制し、したがってCRCのリスクを増加させ得る。このような方式で、存在するクロトー多様体のタイプおよびその相対的発現は、食事に由来する酪酸塩のレベルと相互作用し、CRCリスクを改変し得るという仮説が立てられている。さらに、mTORシグナル伝達はまた、ヒトの加齢に関連しており、かつWntとmTORとのシグナル伝達間のクロストークは、結腸腫瘍形成に影響し得る。
【0264】
KL-VS多様体または他の構築物は、(例えば、KL-VS内の)どのSNPが、S-クロトーに影響して基礎Wntシグナリングの減少および/または酪酸塩が介在するWntの過剰活性化の抑制を生じる要因であるかを調べるためのビヒクルとして機能し得、後者は、S-クロトー腫瘍抑制に関連しているWntに関係する活性である。実施形態は、KL-VS多様体の腫瘍抑制作用に影響することが示されている適切なアミノ酸(例えば、S-クロトーのKL-VSストレッチ)を修飾することを含む。本開示の一実施形態は、6つのSNPのKL-VSストレッチにおいて1つ以上のアミノ酸変化を有する組換えS-クロトータンパク質を含む。タンパク質は、本明細書に記載の任意のタンパク質構築物との関係において、産生およびまたは発現され得る。例えば、タンパク質は、タグ(例えば、Fcタグ、TEV-Twin-Strepタグ、TEV配列など)の有無にかかわらず、S-クロトー、アイソフォーム1もしくは2、1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、131~549などとの関係において産生または発現され得る。したがって、タンパク質が発現される核酸構築物またはcDNAは、対応する長さであり得る。
【0265】
実施形態は、ヘテロ接合性またはホモ接合性多様体構築物を産生することと、S-クロトータンパク質をコードする得られた構築物を(例えば、トランスフェクションを介して)適切な発現系(例えば、CHO細胞)に導入することと、および/またはS-クロトータンパク質を一過性に発現することと、を含み得る。クロトータンパク質は、野生型を含む他のクロトータンパク質より、より高いレベルで発現され得る。実施形態は、治療的投与のために発現されたタンパク質を精製すること(および任意選択的に品質管理試験をすること)を含み得る。実施形態は、それを必要とする被験体(例えば、結腸直腸癌(CRC)または別の腫瘍を有するかまたは発症するリスクがある患者)に、治療用または治療有効量のS-クロトータンパク質を投与することを含み得る。被験体は、例えば、減少したWnt阻害活性を有するクロトー多様体を保有または発現し得る。あるいは、被験体は、他の変異体または多様体の野生型のものであり得る。組換えS-クロトータンパク質の投与は、血中S-クロトーレベルの有益な増加につながり得る。
【0266】
加齢に関係する病態の治療的処置
研究者らは、クロトーと、入院した高齢患者の臨床病態の指標として一般に受け入れられている生物学的パラメータとの間の関連性を発見した。研究者らは、入院した高齢患者(65~99歳)594人のKL遺伝子座で一塩基多型(SNPs)rs9536314、rs1207568、およびrs564481を遺伝子型決定し、連続して老人病棟に通い、共分散的かつ遺伝的リスクスコアモデルの分析を使用して、これらの生物学的量的形質を有するKL多様体との関連性を試験した。rs9536314と血清レベルのヘモグロビン、アルブミン、および高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)との顕著な関連性、ならびにrs564481と血清レベルのヘモグロビン、空腹時インスリンおよび空腹時グルコースとの顕著な関連性が観察された。性別分析により、これらの関連性が確認され、KL遺伝子型とHDL-C、空腹時グルコース、および空腹時インスリンレベルとの関連性が、女性の性別によって支配され得る一方で、血清レベルのヘモグロビンとの関連性は、男性の性別によって支配され得ることを示唆している。KL遺伝子型とクレアチンレベルとの関連性は女性に見出された一方で、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)とリンパ球数(LC)との関連性は男性に見出された。遺伝的リスクスコア(GRS)モデルにより、KL SNPとヘモグロビン、総コレステロール、およびHDL-Cとの間の顕著な関連性をさらに確認した。GRSタグ付きアプローチを用いた性別分析では、女性ではHDL-C、空腹時グルコースレベル、および空腹時インスリンレベルとの、男性ではヘモグロビンおよびLCとの関連性を確認した。この知見は、KL遺伝子座が、入院した高齢患者の血清レベルの脂質、空腹時グルコース、アルブミン、およびヘモグロビンなどの定量的形質に影響し得、クレアチン、IGF-1レベル、およびLCではいくらかの性差が示唆され、したがって遺伝的要因のうちの1つが年齢に関係する疾患および寿命に寄与する可能性があることを示唆している。
【0267】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のS-クロトータンパク質を含む。実施形態は、好適なクロトー構築物を産生することと、S-クロトータンパク質をコードする構築物を(例えば、トランスフェクションを介して)適切な発現系(例えば、CHO細胞)に導入することと、および/またはS-クロトータンパク質を一過性に発現することと、を含み得る。実施形態は、治療的投与のために発現されたタンパク質を精製すること(および任意選択的に品質管理試験をすること)を含み得る。実施形態は、治療用または治療有効量のS-クロトータンパク質を、それを必要とする被験体(例えば、個体もしくは患者、任意選択的に老人、ならびに/または加齢に関係する病態、低内在性S-クロトータンパク質発現、および/もしくは年齢に関係する病態、もしくは減少した寿命の症状に苦しむ個体または患者)に投与することを含み得る。組換えS-クロトータンパク質の投与は、血中S-クロトーレベルの有益な増加につながり得る。(例えば、入院患者および/または高齢患者の)血清レベルの総コレステロール、HDL-C、空腹時グルコース、空腹時インスリン、アルブミン、クレアチン、IGF-1、ヘモグロビン、およびリンパ球数などの定量的形質である積極的な治療方式で、投与は、加齢に関係する病態および/または悪影響を逆転または抑制し得る。
【0268】
本明細書に記載の1つ以上の治療方法では、治療される個体は、クロトー遺伝子に変異(例えば、ゲノム的にコードされたヘテロ接合性変異(複数可)またはホモ接合性変異)を有し得、治療レジメンは、例えば、個体によって発現される変異と同様の多様体を含む、野生型クロトーおよび/または本明細書に開示のクロトーのうちの任意の1つ以上の変異体を含むペプチドの治療的投薬量を投与することを含み得る。あるいは、治療される個体は、野生型クロトーをコード/発現し得、治療レジメンは、野生型クロトーおよび/または本明細書に開示のクロトーのうちの任意の1つ以上の多様体を含む治療的投薬量のペプチドを投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、個体によって発現されるクロトーの天然野生型または変異形態にかかわらず、治療方法は、循環および/または細胞に結合したクロトーのレベルの低さ(例えば、対照グループと比較して)を測定することと、循環および/または細胞に結合したクロトータンパク質の濃度を少なくとも恒常性レベルまで作用可能に回復させる治療投薬量を投与することと、を含み得る。いくつかの実施形態では、これは、治療用濃縮物の投与前に、クロトーのレベル(例えば、遺伝子発現レベル、タンパク質発現レベル、循環レベルなど)を測定することを含み得る。加えて、治療的投薬量は、個体で測定されたクロトーのレベルに依存し得る。いくつかの実施形態では、治療的投薬量は、例えば、恒常性レベルのスカラー倍(例えば、1.5倍多く、2倍多く、3倍多く、4倍多く、5倍多く、6倍多く、7倍多く、8倍多く、9倍多く、10倍多く、15倍多く、20倍多く25倍多く、30倍多く、40倍多く、50倍多く、75倍多く、100倍多く、500倍多く、1、000倍多く、10、000倍多くなど)など、恒常性レベルを超える。
【0269】
より具体的には、年齢に関係する病態の治療的処置は、治療濃度の1つ以上のクロトー多様体を投与することを含み得ることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、これは、例えば、配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちのいずれか1つ以上から選択されるペプチドなどの、本明細書に開示のクロトー多様体(またはクロトー多様体の組み合わせ)の治療濃度を用いて患者を治療することを含み得る。年齢に関係する病態は、年齢に関係する病態を有する個体によって発現および/またはコードされたクロトー多様体と同じかまたは異なるクロトー多様体で治療され得ることが理解されるべきである。例えば、年齢に関係する病態に苦しんでいる個体は、クロトーの1つ以上の野生型または変異体を遺伝的にコードしている場合があり、かつこの個体は、野生型および/または変異体クロトータンパク質を、(対照グループと比較して)恒常性レベルで、恒常性レベル未満で発現するか、または全く発現しない場合がある。個体の年齢に関係する病態を治療することを目的とする治療レジメンは、本明細書に開示の1つ以上のクロトー多様体を投与することを含み得る。
【0270】
予防的S-クロトー投与
前述に加えて、本開示の実施形態は、治療用または治療有効量のS-クロトータンパク質を、予防目的および/またはある特定の健康属性の維持のためにそれを必要とする個体または被験体に投与することを含み得る。例えば、ある特定のS-クロトータンパク質の投与は、診断された加齢に関係する病態に未だ苦しんでいない任意選択的な加齢患者の若さの維持に役立ち得る。したがって、本開示のある特定の実施形態は、患者の病態の治療に関係し得る、および/または治療を含み得るが、他の実施形態は、1つ以上の病態の防止、発症の阻害、および/または予防的対処に関係し得る、および/またはこれらを含み得る。例えば、S-クロトーは、1つ以上のクロトー遺伝子に変異を有する遺伝性障害を有する人に投与され得る。
【実施例】
【0271】
実施例1
表2は、HEKおよび/またはCHO細胞株における列挙されたクロトー多様体の一過性発現および精製の結果を示す。以下の表2に提供された結果では、以下の簡略化されたプロトコルに従った。
【0272】
Fc融合タンパク質については、標準的なATUM法を使用して、タンパク質発現ベクターをHEK293.susまたはCHOにトランスフェクトした。要約すると、細胞を7日間増殖させ、採取した。細胞数は、注釈の欄に記載されている。上清pHを、1M Hepes pH7.4で調整し、アジ化ナトリウムを添加した。KanCap A樹脂を使用してタンパク質を捕捉した。樹脂をPBSで洗浄した。樹脂をPBSプラス1MのNaClで洗浄した。樹脂をPBSで洗浄した。タンパク質を、50mMのクエン酸塩pH3.5、100mMのNaClで溶出した。タンパク質を、1MのトリスpH8、0.5Mのアルギニンで直ちに中和した。SDS PAGEゲルサンプルをこの段階で除去した。タンパク質をPBSに緩衝液交換した。OD280によってタンパク質を定量化し、計算された吸光係数を使用して、量および濃度を測定した。還元および非還元SDS-PAGE(Biorad基準トリス/グリシン/SDS、4~20%)を使用して、純度および分子量を判定した。Sepax Zenix-C SEC-300、3um、300Å、4.6×150mmサイズ排除カラムおよびPBSランニングバッファを使用して280nmでの検出で、HPLCによって凝集状態を測定した。フィルター滅菌、液体窒素で急速凍結後、タンパク質をアリコートとして出荷した。以前の精製ラウンドにおけるように、Fcタグ付きタンパク質については、精製の前後でSDS-PAGEを実行したサンプルから測定されたように、PBSへの脱塩中にタンパク質の損失が観察されたことに留意すべきである。これらのタンパク質はHPLCから発現されたが、脱塩中またはPBS中のシリカHPLCカラムでのアッセイ中に問題が生じた。したがって、バッファ選択を最適化し得る。
【0273】
Strepタグ付けタンパク質については、標準的なATUM法を使用して、タンパク質発現ベクターをHEK293.susまたはCHOにトランスフェクトした。要約すると、細胞を7日間増殖させ、採取した。上清pHを、1M Hepes pH7.4で調整し、アジ化ナトリウムを添加した。BioLockビオチン隔離試薬を添加した。StrepTactin superflow樹脂を使用してタンパク質を捕捉した。樹脂を100mMのトリスpH8、150mMのNaCl、1mMのEDTAで洗浄した。タンパク質を100mMのトリスpH8、150mMのNaCl、1mMのEDTAプラス2.5mMのデスチオビンで溶出した。OD280によってタンパク質を定量化し、計算された吸光係数を使用して、量および濃度を測定した。還元および非還元SDS-PAGE(Biorad基準トリス/グリシン/SDS、4~20%)を使用して、純度および分子量を判定した。Sepax Zenix-C SEC-300、3um、300Å、4.6×150mmサイズ排除カラムおよびPBSランニングバッファを使用して280nmでの検出で、HPLCによって凝集状態を測定した。フィルター滅菌、液体窒素で急速凍結後、タンパク質をアリコートとして出荷した。Strepタグ付きタンパク質については、サンプルを溶出緩衝液中でアッセイしたことに留意すべきである。この溶出緩衝液は、非常に「中性」であり、タンパク質に有害ではない。また、SECカラムのランニングバッファはPBSであったため、タンパク質はアッセイ中に緩衝液交換を受けた。7分を超える時間での吸光度は小分子である。
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
本明細書に開示されているが表2に示されていない1つ以上の他のクロトー多様体に加えて、表2および/または
図4A~5Bに開示のクロトー多様体の発現および/または精製が、いくつかの実施形態では、天然クロトーの発現および/または精製に優る利点をもたらすことが理解されるべきである。例えば、クロトー多様体を発現および/または精製すると、代替生成物の数および/またはタイプが減少され得る。加えて、またはあるいは、天然クロトーの発現レベルと比較して、所望のクロトー多様体の発現レベルが増加し得る。加えて、またはあるいは、所望のクロトー多様体は、同等な条件および方法(例えば、所望のクロトー多様体の濃度が、発現および/または精製された副生成物の付随的な減少とともに増加する)下で、より純粋な形態で発現および/または精製される。
【0278】
実施例2
配列番号52(N’-ヒトアルファクロトー34~981アイソフォーム1_(G4S)2リンカー_ヒトIgG1Fc-C’)、配列番号54(N’-ヒトアルファクロトー34~549アイソフォーム2_(G4S)2リンカー_ヒトIgG1 Fc-C’)、および配列番号66(N’-ヒトアルファクロトー34~981アイソフォーム1_Twin-Strep切断部位残基)で表される(ヒト)クロトー由来タンパク質の安定な発現をCHO細胞において実施した。3つのクロトータンパク質構築物のそれぞれをN末端ATUMシグナル配列で発現させ、次いでこれを安定な発現/精製プロセス中に切断してN末端(クロトータンパク質)アミノ酸を得た。配列番号52および54のクロトータンパク質配列のC末端はGSリンカー(GGGGSGGGGS)およびFc融合タグ(ヒトIgG1 Fcドメイン)であり、これらは発現されたタンパク質中に保持されている(または保持されているようである)。配列番号52のクロトータンパク質配列のC末端は、TEV-Twin-Strepタグ(GSリンカーを有する)(GGENLYFQ/SSAWSHPQFEK-GGGSGGGSGGS-SAWSHPQFEK)であり、それはTEV-Twin-Strepタグ(すなわち、GGENLYFQ)のグルタミン8(Q8)後に切断され、Twin-Strepタグ部分(SSAWSHPQFEK-GGGSGGGSGGS-SAWSHPQFEK)を解放し、TEV(プロテアーゼ認識または一致)配列(GGENLYFQ-C’)の少なくとも一部を保持する。
【0279】
コード配列を、DNA2.0(ATUM)独自のアルゴリズムを用いてコドン最適化した。遺伝子を合成し、Pd3600トランスポゾン骨格に基づく発現構築物を組み立てた。配列番号52のタンパク質を発現するように設計された、組み立てられた発現構築物291645の例を以下に提示する。
【0280】
LOCUS 11198bp DNA SYN
SOURCE Synthetic
ORGANISM Synthetic
COMMENT SS_humanalphaKlothoisoform134-981_G4Sx3_IgG1Fcdomain
FEATURES Location/Qualifiers
source 1..11198
/organism=“Synthetic”
misc_feature 1..1213
/product=“Insulator”
/label=“Insulator”
misc_feature 1214..1235
/product=“Element12”
/label=“Element12”
misc_feature complement(1236..1458)
/product=“pA_SV40(bidirectional)”
/label=“pA_SV40(bidirectional)”
misc_feature 1459..1467
/product=“Element13”
/label=“Element13”
CDS complement(1468..2589)
/gene=“Glutaminesynthetase”
/codon_start=1
/translation=“MATSASSHLNKNIKQMYLCLPQGEKVQAMYIWVDGTGEGLRCKTRTLDCEPKCVEELPEWNFDGSSTFQSEGSNSDMYLSPVAMFRDPFRRDPNKLVFCEVFKYNRKPAETNLRHSCKRIMDMVSNQHPWFGMEQEYTLMGTDGHPFGWPSNGFPGPQGPYYCGVGADKAYGRDIVEAHYRACLYAGVKITGTNAEVMPAQWEFQIGPCEGIRMGDHLWVARFILHRVCEDFGVIATFDPKPIPGNWNGAGCHTNFSTKAMREENGLKHIEEAIEKLSKRHRYHIRAYDPKGGLDNARRLTGFHETSNINDFSAGVANRSASIRIPRTVGQEKKGYFEDRRPSANCDPFAVTEAIVRTCLLNETGDEPFQYKN*”
misc_feature complement(2590..2810)
/product=“GSpromoter”
/label=“GSpromoter”
misc_feature 2811..2829
/product=“Element15”
/label=“Element15”
misc_feature 2830..4240
/product=“EF1promoter(human)”
/label=“EF1promoter(human)”
misc_feature 4241..4321
/product=“UTR”
/label=“UTR”
CDS 4322..4378
/gene=“SS_IgVH-Mm”
/codon_start=1
/translation=“MAWVWTLLFLMAAAQSIQA”
CDS 4379..7222
/gene=“Klotho”
/codon_start=1
/translation=”EPGDGAQTWARVSRPPAPEAAGLFQGTFPDGFLWAVGSAAYQTEGGWQQHGKGASIWDTFTHHPLAPPGDSRNASLPLGAPSPLQPATGDVASDSYNNVFRDTEALRELGVTHYRFSISWARVLPNGSAGVPNREGLRYYRRLLERLRELGVQPVVTLYHWDLPQRLQDAYGGWANRALADHFRDYAELCFRHFGGQVKYWITIDNPYVVAWHGYATGRLAPGIRGSPRLGYLVAHNLLLAHAKVWHLYNTSFRPTQGGQVSIALSSHWINPRRMTDHSIKECQKSLDFVLGWFAKPVFIDGDYPESMKNNLSSILPDFTESEKKFIKGTADFFALCFGPTLSFQLLDPHMKFRQLESPNLRQLLSWIDLEFNHPQIFIVENGWFVSGTTKRDDAKYMYYLKKFIMETLKAIKLDGVDVIGYTAWSLMDGFEWHRGYSIRRGLFYVDFLSQDKMLLPKSSALFYQKLIEKNGFPPLPENQPLEGTFPCDFAWGVVDNYIQVDTTLSQFTDLNVYLWDVHHSKRLIKVDGVVTKKRKSYCVDFAAIQPQIALLQEMHVTHFRFSLDWALILPLGNQSQVNHTILQYYRCMASELVRVNITPVVALWQPMAPNQGLPRLLARQGAWENPYTALAFAEYARLCFQELGHHVKLWITMNEPYTRNMTYSAGHNLLKAHALAWHVYNEKFRHAQNGKISIALQADWIEPACPFSQKDKEVAERVLEFDIGWLAEPIFGSGDYPWVMRDWLNQRNNFLLPYFTEDEKKLIQGTFDFLALSHYTTILVDSEKEDPIKYNDYLEVQEMTDITWLNSPSQVAVVPWGLRKVLNWLKFKYGDLPMYIISNGIDDGLHAEDDQLRVYYMQNYINEALKAHILDGINLCGYFAYSFNDRTAPRFGLYRYAADQFEPKASMKHYRKIIDSNGFPGPETLERFCPEEFTVCTECSFFHTRKS”
CDS 7223..7252
/gene=“linker_(G4S)x2”
/codon_start=1
/translation=“GGGGSGGGGS”
CDS 7253..7936
/gene=“IgG1-noCH1-Hs”
/codon_start=1
/translation=“DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQ
KSLSLSPGK*”
misc_feature 7937..7951
/product=“Element2”
/label=“Element2”
misc_feature 7952..8761
/product=“EES”
/label=“EES”
misc_feature 8762..9487
/product=“HPRE+”
/label=“HPRE+”
misc_feature 9488..9874
/product=“pA_Globin-Oc”
/label=“pA_Globin-Oc”
misc_feature 9875..9902
/product=“Element3”
/label=“Element3”
misc_feature 9903..11198
/product=“Insulator”
/label=“Insulator”
ORIGIN
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
コドン最適化配列(太字):クロトータンパク質の発現を増加させる
シグナルペプチド:4322~4378
クロトー-成熟型:4379~7222
リンカー:7223~7252
IgG1-Fc:7253~7936
GSノックアウトCHOK1誘導体宿主細胞株を使用してヒトクロトー多様体を発現させた。細胞を、3つの異なるhクロトー設計およびLeap-Inトランスポーゼース(ATUM)をコードするLeap-Inトランスポゾンベースの発現プラスミド(ATUM)で、同時にトランスフェクトした。トランスフェクションは、Neon装置(Thermo)を用いてエレクトロポレーションにより行った。トランスフェクトした細胞を、グルタミンを含まない条件下で選択し、得られた安定なプールを凍結保存した。確立された安定なプールからの細胞を振盪フラスコに接種し、ATUMの小規模に確立された供給および細胞培養条件を用いて、流加生産試験を行った。清澄化した採取試料を収集し、抗Fc抗体-(配列番号52および54)またはStrep-タクチン-(配列番号66)HRPコンジュゲートに基づく検出を用いたウェスタンブロット分析にかけた。ウェスタンブロットの例を
図4A~5Bに示す。
【0289】
FL-ECD(34~981)-Fcクロトー誘導体(配列番号52)を発現する安定なプール291645は、主に予想される大きさでタンパク質を産生する(
図4Aを参照されたい)。全長細胞外ドメイン-Fc融合タンパク質単量体の推定サイズは139kDaである。優勢な抗Fc陽性バンドは予測された約140kDaサイズ(矢印)であり、これは発現構築物291645が正しいサイズの融合タンパク質を発現することを示している。予想通り、タンパク質は未変性条件下および非還元条件下で二量体化する(
図4Bを参照されたい)。非還元条件下では、全長細胞外ドメイン-Fc融合タンパク質はホモ二量体を形成するはずである。優勢なバンドのサイズは、予測されるホモ二量体の形成と一致する、非還元性ウエスタンブロット(矢印)で抗Fc抗体によって検出された。
【0290】
安定プール291647(配列番号66)によって発現されたFL-ECD(34-981)-TEV-Twin-Strep分子もまた、ウェスタンブロットで正しいサイズを示し、未変性条件下および非還元条件下でモノマーのままである(
図5A~
図5Bを参照されたい)。予想される大きさのアイソフォーム-2-Fc変異体は分泌ヒトクロトータンパク質を表す。成熟全長ECD(34~981)-twin-strepタグ付加クロトータンパク質(配列番号66)の推定分子量は、約109kDaである。非還元ウェスタンブロット分析は、発現構築物291647によってコードされるCHO細胞からの正しいサイズのタンパク質発現の成功を実証する(
図5Aを参照されたい)。非還元変性ウェスタンブロット分析は、CHO細胞から分泌された場合、hクロトーの全長細胞外ドメインが共有結合ホモ二量体を形成しないことを示す(
図5Bを参照されたい)。添付の配列表に表される他のタンパク質構築物も調製した。
【0291】
予備結果は、設計された組換え融合タンパク質が適切な力価範囲で発現および精製されており、許容される緩衝液、担体、および賦形剤に可溶であることを示した。
実施例3
雄スプラーグドーリーラットに静脈内投与した後のアルファヒト天然クロトーおよびアルファヒトFc融合クロトータンパク質の急性耐量(ATD)を判定するための試験を行った。急性耐容量試験では、試験物質のアルファヒト天然クロトータンパク質およびアルファヒトFc融合クロトータンパク質の安全性を雄スプラーグドーリーラットで評価した。用量投与の前に、21匹の動物にトランスポンダーを皮下移植した。試験1日目に、動物を体重に基づいて3匹ずつの7群に無作為に分けた。アルファヒト天然クロトータンパク質を、10μg/kg、30μg/kg、および100μg/kg(個々の体重に基づいて)の3つの用量濃度で試験し、試験日0日目にビヒクル(PBS、pH7.2)中1ml/kg(個々の体重に基づいて)の投与量で静脈内投与した。
【0292】
アルファヒトFc融合クロトータンパク質はまた、3μg/kg、10μg/kg、および30μg/kg(個々の体重に基づいて)の3つの用量濃度で試験し、試験日0日目にビヒクル(PBS、pH7.2)中1ml/kg(個々の体重に基づいて)の投与量で静脈内投与した。試験0日目に、ビヒクルのみ(PBS、pH7.2)群、10μg/kgのアルファヒト天然クロトータンパク質群、および3μg/kgのアルファヒトFc融合クロトータンパク質群で投与を開始し、各試験物質用量レベル群間で少なくとも24時間ずらした。全ての投与をそれぞれの開始日に一度行った。動物は、処置後最大14日間、何らかの有害作用について観察された。
【0293】
生涯測定には、罹患率および死亡率の1日2回のチェックが含まれ、臨床観察は毎日記録された。体重測定値を毎日記録した。観察段階の完了後、全ての動物を心臓の放血によって安楽死させた。最終測定には血液の血液学、血清生化学、および凝固が含まれた。肉眼的病理学的変化を剖検で全ての動物について記録し、10の臓器(副腎、脳、副睾丸、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、精巣、甲状腺/副甲状腺および胸腺)の重量がとられた。
【0294】
表3は試験動物の要約を示す。
【0295】
【0296】
表4は試験計画の要約を示す。
【0297】
【0298】
グループ割り当て:MatchedPairDistributionについては、個々の測定値を選択された全ての動物の平均と一致させるアルゴリズムを使用して最適化された分布方法を実行した。方法は、まず選択された全ての動物の平均に近いマッチングペアをとり、次にそれらを選択された全ての動物の平均の平均に(またはできるだけ近い)マッチングする群に分配する。各群の測定値の平均ができるだけ全ての選択された動物の平均に近くなるように動物を分布させる。
【0299】
統計分析のために、記述統計学は試験データから生成された。データを評価して、パラメトリック分析とノンパラメトリック分析のどちらが適切であるかを判定した。パラメトリックデータについては、分散分析(ANOVA)に続いて事後検定を行い、処置、時点、および/または群間の有意差を判定した。ノンパラメトリックデータについては、適切な統計分析を実施した(例えば、カプラン-マイヤー生存、クラスカル-ワリスの一元配置分散分析、マンホイットニーまたはウィルコクソン順位和など)。
【0300】
表5は試料採取手順を要約する。
【0301】
【0302】
表6は、試料採取タスクを要約する。
【0303】
【0304】
体重が初期体重の85%を下回った、または重篤で長期にわたる有害な臨床徴候を示した動物はいずれも安楽死させた。上記のように、血漿、血清、および全血の採取のために動物を心臓出血により安楽死させた。
【0305】
予備結果は、ラットがそれに投与された比較的高用量の組換えクロトータンパク質に耐性を示すことを示した。
実施例4
雄スプラーグドーリーラットへのIV投与後のアルファヒト天然クロトーおよびアルファヒトFc融合クロトータンパク質の薬物動態を判定するための試験を行った。試験0日目の前に、動物にトランスポンダーを皮下移植した。試験1日目に体重を得て、動物を体重に基づいて無作為化した。試験0日目に、群5、6、および7の動物(1群当たり10匹の動物)に、1ml/kgビヒクル(PBS、pH7.2)中に、それぞれ3、10、および30μg/kgで、尾静脈を介して単回用量のアルファヒトFc融合クロトータンパク質を静脈内投与した(以下の詳細な投与スケジュールを参照されたい)。試験1日目に、群2、3、および4の動物(1群当たり10匹の動物)に、1ml/kgビヒクル(PBS、pH7.2)中に、それぞれ10、30、および100μg/kgで、尾静脈を介して単回用量のアルファヒト天然クロトータンパク質を静脈内投与した(以下の詳細な投与スケジュールを参照されたい)。ビヒクル群1の動物(3匹の動物)にも、試験1日目に、タンパク質を含まないビヒクル(PBS、pH7.2)を1ml/kgで投与した。各動物に投与された投与溶液の容量は、試験日-1に得られた個々の体重測定値に基づいて計算され調整された。
【0306】
ラット1匹当たり3つの血液試料に相当する全ての時点について、3つの血液試料を各群(2~7)から得た(以下の詳細な血液採取スケジュールを参照されたい)。以下の表7に示すように、投与前、投与後3分、10分、20分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間の時点で、血液資料を採取した(群2、3および4)。
【0307】
【0308】
以下の表8に示すように、投与前、投与後3分、1時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間および7日の時点で、血液試料を採取した(群5、6、および7)。投与後14日目の追加の血液採取を、群5、6、および7で得た。
【0309】
【0310】
以下の表9に示されるように、ビヒクル群1の動物は、投与1時間後に、末期的に出血させた。
【0311】
【0312】
得られた血清試料をアルファクロトーヒト可溶性ELISAキットで分析した。
表10は試験動物の要約を示す。
【0313】
【0314】
表11は試験計画の要約を示す。
【0315】
【0316】
グループ割り当て:層別サンプリングについて、同様の大きさの測定値で動物の「ビニング」を使用する最適化されていないランダム化法を使用した。この方法によって、動物のプールは、目的の測定値で昇順にそれらを分類することによって階層化される。その後、測定値のサイズに応じて、動物を「ビン」または階層に分類する。階層の数は、群ごとに割り当てられる動物の数によって決定される。例えば、1群当たり3匹の動物がいる場合、小、中、大の3つのビンが作成されると思われる。各サイズビンから1匹の動物を各群に無作為に割り当てる。層別サンプリングは、各群が各サイズのビンから無作為に1匹の動物を受け取ることを確実にし、各群の平均は他の群と同様のままになるだろう。この方法は、群平均と標準偏差との差、およびプール注文の偏りに対する管理を調整する。
【0317】
統計分析のために、記述統計学は試験データから生成された。データを評価して、パラメトリック分析とノンパラメトリック分析のどちらが適切であるかを判定した。パラメトリックデータについては、分散分析(ANOVA)に続いて事後検定を行い、処置、時点、および/または群間の有意差を判定した。ノンパラメトリックデータについては、適切な統計分析を実施した(例えば、カプラン-マイヤー生存、クラスカル-ワリスの一元配置分散分析、マンホイットニーまたはウィルコクソン順位和など)。
【0318】
表12は試料採取手順を要約する。
【0319】
【0320】
表13は試料採取タスクを要約する。
【0321】
【0322】
体重が初期体重の85%を下回った、または重篤で長期にわたる有害な臨床徴候を示した動物はいずれも安楽死させた。上記のように、血漿、血清、および全血の採取のために動物を心臓出血により安楽死させた。
【0323】
実施例5
ウィスターラットにおけるI/R誘導性AKIおよび腎臓バイオマーカー(血漿腎損傷バイオマーカーでの腎臓I/R誘導性増加を測定することによる)における、アルファヒトFc-クロトーおよびアルファヒト天然クロトーの用量依存的効果を判定するための試験を行った。具体的には、この試験の目的は、ラットにおける血漿中腎障害バイオマーカーの腎臓I/R誘導性増加に対するアルファヒトFc-クロトーおよびアルファヒト天然クロトーの用量依存的効果を評価することであった。この試験は、両側性腎虚血再灌流(I/R)傷害(30分の虚血期間)手術(n=63)対偽手術(n=4)、化合物投与(1回の静脈内注射/ラット)、代謝ケージハウジングを介した連続採尿(3採取/ラット;D1、D2&D7)、クレアチニンとタンパク質の連続尿検体の臨床化学分析(D1、D2&D7)、連続採血(3採血/ラット;D1、D2&D7)、クレアチニンとBUNの連続血漿検体の臨床化学分析(D1、D2&D7)、エンドポイントまでの術後毎日の体重と健康状態の観察、ならびにエンドポイントでの組織採取および処理からのまたはそれらに関連するデータを表形式、グラフィカル、およびプレゼンテーション対応のPowerPoint形式でのデータ送付で、提供するよう設計された。
【0324】
さらに、種特異的ELISAによるKim-1の連続尿検体の分析(D1、D2およびD7)、種特異的ELISAによるNGALの連続尿検体の分析(D1、D2およびD7)、左右の腎臓mRNA発現分析(1~2腎臓/動物:n=67試料、10検体、3つの正規化遺伝子を含む、AffymetrixQuantigenePlex2.0プラットフォームを用いて実施)、MCP-1、TGF-β、α-SMA、Col1A1、Col3A1、Fn-1、CTGF)、ならびに左右の腎皮質免疫組織化学ならびに特異的染色およびED-1+マクロファージ染色によるマクロファージ浸潤の定量化、も任意に実行した。
【0325】
表14はその試験パラメータを示す。
【0326】
【0327】
表15は試験計画の要約を示す。
【0328】
【0329】
体重約151~175gの67匹の雄ウィスターラットを入手し、標準飼料(Harlan8640)を与え、標準条件下で集団飼育し、試験に登録する前に少なくとも7日間順応させた。試験開始前に、試験ラットを体重が一致した処置群に入れた。動物は、手術日ごとに1群当たりほぼ同数の動物が登録され、動物の年齢の差を最小限にするために最も重い動物が最初に登録されるように、バランスの取れた計画を用いて試験に登録された。代謝ケージ飼育場にいないときは、ラットを標準条件下で静的ケージ飼育に集団収容した。
【0330】
t-0.5時間で、試験ラットを、手術用に調製したノセコン上のイソフルラン麻酔で麻酔し、腎臓I/R術式の前に中核温度を平衡にさせた。体液量の変動を最小限に抑えるために、ラットに10ml/kgの温かい滅菌生理食塩水(皮下投与;手術前25%および手術後75%)を投与した。中核温度は虚血期間を通して標準的(37±0.2℃)に維持された。t-0.5時間で、群7および8の動物にも必要に応じて化合物の静脈内注射を施した。
【0331】
次いで開腹術を行った。t0で、ラットを、熱滅菌した器具、PBI独自の血管閉塞クランプ、および無菌外科的手法を使用して、偽(群1、n=4)または両側性腎動脈虚血(群2~8;n=9/grp)のいずれかに供した。30分の連続虚血時間(t+0.5)に続いて、閉塞クランプを取り除き、腎臓を再灌流し、そして腹部創傷を滅菌絹縫合糸で閉じた。ラットに術後鎮痛剤として0.01mg/kgのブプレノルフィンを投与し、清潔で加熱されたケージ内で短時間回復させた。t+1時間で、群1~6のラットを短時間拘束し、必要に応じてビヒクルまたはビヒクル中のクロトー化合物を静脈内注射した。群7および8のラットもまた、ストレス対応を管理するために短時間拘束した(しかし注射しなかった)。次にラットを直ちに代謝ケージに入れた。
【0332】
再灌流(D1)の24時間後、全ての動物は尿量を測定しサンプリングした。その後、全ての動物を意識下で直接尾静脈穿刺によりLi-ヘパリンに採血した(500μl)。出血直後に、ラットに500μlの温かい生理食塩水を与えた。D2(再灌流後48時間)およびD7(再灌流後168時間)に尿および採血を再度繰り返した。D2~D5において、全てのラットを標準条件下で静的ケージに収容して秤量し、毎日健康観察を行った。全血(500μl)を血漿の産生のために適切に処理し、記載のように処理した。
【0333】
投与開始後、臨床観察を1日1回行った。収集/計算されるべきデータ/組織に関して、動物の健康状態は外科的処置後に毎日観察され、腎臓の質量(左腎および右腎の重量)は脛骨の長さおよび体重に対して指数化された。尿をD1、D2およびD7に採取した(n=3試料/動物;500μl/試料を標的とする)。少なくとも1つの試料をPBIによる臨床化学分析(クレアチニン、タンパク質)にかけ、少なくとも1つの試料を任意にKim-1およびNGAL分析に使用した。血漿をD1、D2およびD7でLi-ヘパリンに採取した(n=2試料/動物、125μl/試料を標的とする)。少なくとも1つの試料をPBIによる臨床化学分析(クレアチニン、BUN)にかけた。
【0334】
D7について、出血直後にラットをイソフルランで麻酔し、組織を採取した。左右両方の腎臓を直ちに氷冷0.9%NaClに入れ、脱被包して秤量した。組織採取後(組織学的分析および他の分析用)、各偽および虚血性腎臓(各動物からの左腎および右腎;1チューブ/腎臓/動物)からの残りの全ての内側皮質/外側髄質(すなわちS3/THAL濃縮された)を適切に標識したチューブ内で急速凍結し、将来的に可能性のある生化学的分析のために-80℃で保存した。分析を実施する前に、皮質組織を任意に極低温粉末化し、混合して、生化学的アッセイにわたって組織サンプルのより良好な均一性を可能にし、ならびに皮質生検で起こり得るサンプリングバイアスの導入を制限した。各偽および虚血性腎臓(各動物から左右)の少なくとも1つの中央横断面切片を任意に収集し、組織学的分析のために10%中性緩衝ホルマリンに浸漬固定した。次いでラットを屠殺した。
【0335】
実施例6
試験ラットの体重を測定して、対象に対するクロトータンパク質投与の効果を試験した。表16は試験動物の要約を示す。
【0336】
【0337】
図9は、12日間の試験(毎日)の過程で各群のラットの平均(平均)体重(平均の±標準誤差;SEMバー)を図示する。以下の表17は、
図9に示す平均体重の対応するデータを示し、以下の表18は、
図9に示す対応するSEMを示し、以下の表19は、12日間の試験過程(毎日)の各群のラットの平均体重の変化率を示す。
【0338】
実施例7
腎虚血再灌流障害(IRI)後の急性腎障害(AKI)に対するクロトー投与の治療効果を試験するために、スプラーグドーリーラットをシャム群またはAKI群に無作為に分け、各群の動物を無作為にビヒクルまたはクロトー治療に割り当てた。ヒトにおいて、AKIは、虚血または腎毒素に主に起因する大きな臨床上の問題であり、その転帰は、完全回復から透析依存性の慢性腎疾患の発症、または死亡にまで及ぶ。クロトー群の動物には、再灌流の30分後または60分後に、組換えマウスクロトータンパク質(0.01mg/kg体重)を1回ボーナス腹腔内注射した。ビヒクル群のラットには同容量のクロトー緩衝液(150mMのNaClおよび10mMのHEPES pH7.4)を与えた。手術後1、2、および7日目に24時間尿および血液を採取した。この試験は、損傷後30分のマウスS-クロトーの単回ボーラス注射が、ヒト病態の動物モデルにおける弱毒化(AKI)に有効であることを示した。
【0339】
実施例8
クロトーが酸化的損傷に対して肺を保護するかどうかを判定するために、スプラーグドーリーラット(体重約300g)を、正常酸素(N:21%の吸気酸素)または高酸素(H:90%酸素)に3日間曝露し、その間、3つの調製物、すなわち、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、またはいずれかのクロトー(クロトーCM;約60pmol)を過剰発現するCHO細胞由来の条件培地(CM)、または空ベクター(対照CM)(それぞれn=6~8動物)のうちの1つを腹腔内に22回注射した。注射は12時間前に行い、曝露中24時間と48時間に繰り返した。
【0340】
また、3LL細胞を、無胸腺マウスの脇腹に皮下注射(マウス当たり2×106細胞)で移植し、クロトータンパク質(0.01mg/kg、腹腔内)またはビヒクルで一日おきに10日間処理した。移植の21日後に肺を採取し、転移性結節の数を数えた。
【0341】
【0342】
【0343】
【0344】
実施例9
この例は、本開示の範囲を定義する例示的な一連の特許請求の範囲を含む。しかしながら、本明細書で提供されるように、本発明の範囲は、以下の実施例または前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。
【0345】
1.組換えクロトータンパク質を製造する例示的な方法であって、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中、好ましくはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞中、より好ましくはCHO-S細胞中、または好ましくはグルタミン合成酵素(GS)欠損CHO細胞中、より好ましくはGS-/-CHO細胞中で、組換えクロトータンパク質を産生することを含み、当該タンパク質が、好ましくは配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、方法。
【0346】
2.当該タンパク質が、それに結合した1つ以上のグリカンを含む、請求項1に記載の方法。
3.当該CHO細胞が、プロモーター、好ましくは強力なプロモーターをコードする外因性核酸と、配列番号2~配列番号70、または、配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドと、任意選択的に、機能性ジヒドロ葉酸還元(DHFR)酵素、または機能性グルタミン合成(GS)酵素と、を含有し、当該組換えクロトータンパク質を産生することが、当該核酸によってコードされた当該ポリペプチドを発現することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【0347】
4.好ましくはトランスフェクションを介して当該外因性核酸を当該CHO細胞に導入するステップ、ならびに液体培地、好ましくは無血清および/または動物タンパク質成分を含まない培地中で当該CHO細胞を増殖させるステップであって、当該液体培地が、好ましくは炭素源、窒素源、および1つ以上のビタミン、ミネラル、塩、アミノ酸、補充剤、または添加剤を含み、より好ましくは、当該液体培地が、ヒポキサンチン、チミジン、および/またはグルタミンを欠く、増殖させるステップ、から選択される1つ以上のステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【0348】
5.当該タンパク質が、当該タンパク質を濃縮することなく、液体培地1リットル当たり、好ましくは200~500mgのタンパク質の濃度まで、より好ましくは500~2000mgのタンパク質の濃度まで、なおより好ましくは2000~5000mgのタンパク質の濃度まで、当該CHO細胞から当該液体培地に分泌される、請求項4に記載の方法。
【0349】
6.有効量のメトトレキサート(MTX)および/またはメチオニンスルホキシミン(MSX)を、好ましくは約1nM~1μMの濃度まで、より好ましくは約10~100nMの濃度まで当該液体培地に導入することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【0350】
7.当該液体培地中で増殖する生存CHO細胞の懸濁培養物を選択することをさらに含み、当該選択された懸濁培養物の当該培地中の当該タンパク質濃度が、当該タンパク質を濃縮することなく、少なくとも200mg/L、好ましくは少なくとも500mg/L、より好ましくは少なくとも1000mg/L、さらにより好ましくは少なくとも2000mg/L、なおより好ましくは少なくとも5000mg/Lである、請求項4に記載の方法。
【0351】
8.当該選択された懸濁培養物の当該生存CHO細胞が、細胞当たり、少なくとも約2~10コピー、好ましくは少なくとも約10~20コピー、より好ましくは少なくとも約20~30コピー、さらにより好ましくは少なくとも約30~50コピーの当該外因性核酸を含有する、請求項7に記載の方法。
【0352】
9.当該CHO細胞、液体培地、またはそれらの両方からの組換えクロトータンパク質含有抽出物を精製することをさらに含み、当該抽出物が、好ましくは、乾燥重量で少なくとも約98%のタンパク質、および/または約1~100ppm未満のCHO宿主細胞タンパク質(HCP)を含む、請求項4に記載の方法。
【0353】
10.当該抽出物を精製することが、当該タンパク質のグリコシル化を維持する、請求項9に記載の方法。
11.当該CHO細胞を増殖させることが、少なくとも10リットル、好ましくは少なくとも25リットル、より好ましくは少なくとも50リットル、さらにより好ましくは少なくとも100リットル、なおより好ましくは少なくとも250リットル、なおより好ましくは少なくとも500リットル、なおより好ましくは少なくとも1,000リットル、なおより好ましくは少なくとも2,000リットル、なおより好ましくは少なくとも2,500リットル、なおより好ましくは少なくとも5,000リットル、なおより好ましくは少なくとも10,000リットルの容積または作業容積を有するバイオリアクター内で、当該CHO細胞を培養することを含む、請求項4に記載の方法。
【0354】
12.当該核酸が、配列番号76~配列番号106または配列番号121~配列番号124の1つ以上の少なくとも一部に対して、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の核酸配列同一性を有する導入遺伝子またはcDNAを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【0355】
13.当該タンパク質が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0356】
14.細胞株は、好ましくはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞中、より好ましくはCHO-S細胞中、または好ましくはグルタミン合成酵素(GS)欠損CHO細胞中、より好ましくはGS-/-CHO細胞中の複数のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)であって、外因性核酸を含む当該CHO細胞が、プロモーター、好ましくは強力なプロモーターを含む、複数のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)を含み、ポリペプチドであって、ポリペプチドの少なくとも一部が配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、ポリペプチドと、任意選択的に、機能性ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)酵素、または機能性グルタミン合成(GS)酵素と、をコードする。
【0357】
15.当該CHO細胞が、細胞当たり、少なくとも約2~10コピー、好ましくは少なくとも約10~20コピー、より好ましくは少なくとも約20~30コピー、さらにより好ましくは少なくとも約30~50コピーの当該外因性核酸を含有するか、または含有するように選択される、請求項14に記載の細胞株。
【0358】
16.当該核酸が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする、請求項14に記載の細胞株。
【0359】
17.当該核酸が、配列番号76~配列番号106または配列番号121~配列番号124のうちの1つに対して、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の核酸配列同一性を有する導入遺伝子またはcDNAを含む、請求項14に記載の細胞株。
【0360】
18.液体培地、好ましくは無血清および/または動物タンパク質成分を含まない液体培地であって、好ましくは炭素源、窒素源、および1つ以上のビタミン、ミネラル、塩、アミノ酸、補充剤、または添加剤を含み、より好ましくは、当該液体培地が、ヒポキサンチン、チミジン、および/またはグルタミンを欠く、液体培地と、当該CHO細胞が当該核酸によってコードされた当該ポリペプチドを発現するような当該液体培地中で増殖する請求項14~17のいずれか1項に記載の細胞株と、を含み、当該ポリペプチドが、組換えクロトータンパク質を含む、懸濁細胞培養物。
【0361】
19.当該CHO細胞が、当該タンパク質を濃縮することなく、液体培地1リットル当たり、好ましくは200~500mgのタンパク質の濃度まで、より好ましくは500~2000mgのタンパク質の濃度まで、なおより好ましくは2000~5000mgのタンパク質の濃度まで当該タンパク質を当該液体培地中に分泌し、および/または当該タンパク質が、当該タンパク質を濃縮せずに、液体培地1リットル当たり、200~500mgのタンパク質の濃度で、より好ましくは500~2000mgのタンパク質の濃度まで、なおより好ましくは2000~5000mgのタンパク質の濃度まで、当該液体培地中に存在する、請求項18に記載の懸濁細胞培養物。
【0362】
20.当該タンパク質が、それに結合した1つ以上のグリカンを含む、請求項18または19に記載の懸濁細胞培養物。
21.当該液体培地が、有効量のメトトレキサート(MTX)および/またはメチオニンスルホキシミン(MSX)を、好ましくは約1nM~1μMの濃度で、より好ましくは約10nM~100nMの濃度でさらに含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の懸濁細胞培養物。
【0363】
22.当該タンパク質が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項18~21のいずれか1項に記載の懸濁細胞培養物。
【0364】
23.当該タンパク質の少なくとも一部が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、組換えクロトータンパク質。
【0365】
24.当該タンパク質が、IGF-1および/もしくはWntシグナリング経路を調節する、β-グルクロニダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ活性を呈する、p53/p21シグナリング経路を抑制する、ならびに/または好ましくは、当該p53/p21シグナリング経路の抑制を通して、H2O2によって誘発される細胞老化およびアポトーシスを低減する、請求項23に記載の組み換えタンパク質。
【0366】
25.当該タンパク質が、好ましくは酸化ストレス、増殖因子シグナリング、イオン恒常性の調節、ならびに/または当該細胞表面、好ましくは1つ以上のイオンチャネルタンパク質および/もしくは増殖因子受容体、好ましくはインスリン/インスリン様増殖因子-1受容体上で1つ以上の糖タンパク質の活性の調節において、好ましくは多面発現活性を呈する体液性因子として機能する、請求項23または24に記載の組換えクロトータンパク質。
【0367】
26.当該タンパク質の少なくとも一部が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項23~25のいずれか1項に記載の組換えクロトータンパク質。
【0368】
27.加齢に関係するもしくは他の病態、疾患、または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的有効量の請求項23~26のいずれか1項に記載の組換えクロトータンパク質を投与することを含む、方法。
【0369】
28.加齢に関係するもしくは他の病態、疾患、または障害を治療する方法であって、それを必要とする被験体に、薬学的有効量の、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1のアミノ酸残基1~981の少なくともサブセットと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、可溶性組換えクロトータンパク質を投与することを含む、方法。
【0370】
29.加齢に関係するもしくは他の病態、疾患、または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する可溶性組換えクロトータンパク質の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【0371】
30.当該タンパク質が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【0372】
31.当該薬学的有効量が、当該被験体の当該血清可溶性クロトータンパク質濃度を所定のレベルまで上昇させることと、好ましくは、所定の期間の間、所定の閾値以上で当該被験体の当該血清可溶性クロトータンパク質濃度を維持することと、に十分である、請求項30に記載の方法。
【0373】
32.当該所定のレベルが、血清1ミリリットル当たり、約1000ピコグラム以上の可溶性クロトータンパク質である、請求項31に記載の方法。
33.当該所定のレベルが、血清1ミリリットル当たり、約50、100、250、500、750、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、20,000、25,000、30,000、40,000、50,000、75,000、もしくは100,000ピコグラムを上回る、これらと同等、もしくはこれらの間の可溶性クロトータンパク質であり、および/または、血清中の可溶性クロトータンパク質の典型的な健康レベルより約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1200%、1500%、2000%、2500%、3000%、4000%、もしくは5000%を上回る、請求項31に記載の方法。
【0374】
34.当該被験体の血清可溶性クロトータンパク質濃度を測定することと、当該被験体の当該血清可溶性クロトータンパク質濃度を第1の所定レベルまで上昇させるのに十分なタンパク質の薬学的有効量を計算することであって、当該第1の所定のレベルが、好ましくは血清1ミリリットル当たり約1000ピコグラム以上の可溶性クロトータンパク質である、計算することと、当該被験体の当該血清中の可溶性クロトータンパク質の低下速度および/または代謝速度を測定することと、当該被験体の当該血清可溶性クロトータンパク質濃度が当該測定された速度に基づいて第2の所定のレベル以下になる次の投薬時間を計算することと、当該被験体の当該血清可溶性クロトータンパク質濃度を当該第2の所定のレベルから当該第1の所定のレベルまで上昇させるのに十分な当該タンパク質の次の投薬量を計算することと、のうちの1つ以上をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【0375】
35.当該タンパク質の当該次の投薬量を当該被験体に投与することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
36.好ましくはトランスフェクションを介して外因性核酸をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に導入することであって、当該核酸が好ましくは導入遺伝子またはcDNAを含み、当該核酸が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部について、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードし、当該核酸が、配列番号76~配列番号106または配列番号121~配列番号124のうちの1つに対して、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の核酸配列同一性を有する、導入することと、当該CHO細胞を液体培地中、好ましくは無血清および/または動物性タンパク質成分を含まない液体培地中で増殖させることであって、当該液体培地が、好ましくは炭素源、窒素源、および1つ以上のビタミン、ミネラル、塩、アミノ酸、補充剤、または添加剤を含み、より好ましくは、当該液体培地が、ヒポキサンチン、チミジン、および/またはグルタミンを欠き、当該CHO細胞が、好ましくは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞、より好ましくはCHO-S細胞中、またはグルタミン合成酵素(GS)欠損CHO細胞、より好ましくはGS-/-CHO細胞中にある、増殖させることと、有効量のメトトレキサート(MTX)および/またはメチオニンスルホキシミン(MSX)を、好ましくは約1nM~1μMの濃度まで、より好ましくは約10~100nMの濃度まで当該液体培地に導入することと、当該液体培地中で増殖する生存CHO細胞の懸濁培養物を細胞選択プロセスを通して選択することであって、当該選択された懸濁培養物の当該培地中の当該タンパク質の濃度が、当該タンパク質を濃縮することなく、少なくとも200mg/L、好ましくは少なくとも500mg/L、より好ましくは少なくとも1000mg/L、さらにより好ましくは少なくとも2000mg/L、なおより好ましくは少なくとも5000mg/Lである、選択することと、当該CHO細胞中で当該組換え可溶性クロトータンパク質を産生することであって、当該タンパク質が、好ましくは当該CHO細胞から当該液体培地中に、液体培地1リットル当たり、好ましくは200~500mgのタンパク質濃度まで、より好ましくは500~2000mgのタンパク質濃度まで、なおより好ましくは2000~5000mgのタンパク質濃度まで分泌される、産生することと、当該CHO細胞、液体培地、またはそれらの両方から組換え可溶性クロトータンパク質含有抽出物を精製することであって、当該抽出物が、好ましくは、乾燥重量で少なくとも約98%の当該組換え可溶性クロトータンパク質、および/または約1~100ppm未満のCHO宿主細胞タンパク質(HCP)を含み、当該抽出物を精製することが、好ましくは当該タンパク質のグリコシル化を維持し、当該タンパク質がそれに結合した1つ以上のグリカンを有する、精製することと、のうちの1つ以上をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【0376】
37.当該所定の期間が、少なくとも約6時間、好ましくは少なくとも約12時間、より好ましくは少なくとも約18時間、さらにより好ましくは少なくとも約24時間、なおより好ましくは少なくとも約30時間、なおより好ましくは少なくとも約36時間、なおより好ましくは少なくとも約42時間、なおより好ましくは少なくとも約48時間、なおより好ましくは少なくとも約54時間、なおより好ましくは少なくとも約60時間、なおより好ましくは少なくとも約66時間、なおより好ましくは少なくとも約72時間である、請求項31に記載の方法。
【0377】
38.当該所定の期間が、約1~120日以上である、請求項31に記載の方法。
39.当該所定の期間が、約6ヶ月、9ヶ月、または1年以上である、請求項31に記載の方法。
【0378】
40.当該被験体が、ヒト、非ヒト動物、または非ヒト哺乳動物である、請求項30~39のいずれか1項に記載の方法。
41.当該タンパク質が、薬学的に許容可能な担体中にまたは薬学的に許容可能な担体とともに投与される、請求項30~40のいずれか1項に記載の方法。
【0379】
42.当該加齢に関係する、または他の病態、疾患、または障害が、虚弱、骨密度低下、骨ミネラル密度低下、体重低下、筋肉萎縮、筋肉退化、筋量低下、筋力低下、握力低下、脚力低下、体力低下、動作低下、動作自由の低下、生活の質評価の低下、駆出率低下、運動能力低下、学習力低下、学習能力低下、記憶力低下、知能指数低下、認知力劣化、健忘症、認知能力低下、認知機能低下、シナプス可塑性低下、シナプス機能低下、および細胞老化のうちの1つ以上を含む、請求項30~41のいずれか1項に記載の方法。
【0380】
43.当該加齢に関係するまたは他の病態、疾患、または障害が、慢性腎臓病(CKD)、多嚢胞腎臓疾患(PKD)、常染色体優性多嚢胞腎臓(ADPKD)、急性腎臓傷害(AKI)、急性尿細管壊死(ATN)、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、糸球体腎炎、腎臓疾患、腎不全、非乏尿性腎不全、アルコール依存症、高リン酸血症、筋ジストロフィー(MS)、1型糖尿病、2型糖尿病、心血管疾患(CVD)、心血管石灰化、脳血管不全、血管石灰化、虚血性心疾患、血圧異常、食塩感受性高血圧、組織石灰化、石灰化アテローム硬化性プラーク負荷、石灰化症、家族性腫瘍性石灰化症、癌、1つ以上の腫瘍、ミエリンに関係する疾患、脱髄疾患、神経変性疾患、神経血管疾患、進行性核上麻痺PSP)、ポンペ病、ニーマンピック病、微小膠症、ファーバー病(FD)、骨量疾患、骨粗鬆症、骨減少症、骨減少症(特に皮質骨のBMDの低下)、肺気腫、肺線維症、皮膚萎縮、胸腺萎縮、腎間質マトリックスの蓄積、糸球体硬化、貧血、アルブミン尿症、タンパク尿症、不妊症、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患(MND)、心房細動、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、線維筋痛症、成人発症糖尿病、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、緑内障、白内障、黄斑変性、多発性硬化症(MS)、狼瘡、潰瘍性大腸炎、悪液質、肥満、ビタミンDに関係する病態、骨疾患、骨再形成を通じた骨疾患、幹細胞枯渇、船酔い、宇宙不適応症候群(SAS)、吐き気、およびめまい、のうちの1つ以上を含む、請求項30~41のいずれか1項に記載の方法。
【0381】
44.1つ以上の追加の活性成分を投与または共投与することをさらに含む、請求項30~43のいずれか1項に記載の方法。
45.当該1つ以上の追加の活性成分が、薬剤、抗体、ホルモン、造影剤、医薬、天然化合物、合成化合物、または医薬組成物からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【0382】
46.請求項23~25のいずれか1項に記載の組換えクロトータンパク質の薬学的有効量と、薬学的に許容可能な担体と、を含む、医薬組成物。
47.薬学的有効量の組換え可溶性クロトータンパク質であって、当該タンパク質の少なくとも一部がヒトアルファクロトーアイソフォーム1もしくは2の1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、もしくは131~549のアミノ酸残基の少なくともサブセット、または配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、組換え可溶性クロトータンパク質と、薬学的に許容可能な担体と、を含む、薬学的組成物。
【0383】
48.当該タンパク質の少なくとも一部が、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも92%、なおより好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項46または47に記載の薬学的組成物。
【0384】
49.1つ以上の追加の活性成分をさらに含む、請求項46~48のいずれか1項に記載の医薬組成物。
50.虚弱、骨密度低下、骨ミネラル密度低下、体重低下、筋肉萎縮、筋肉退化、筋量低下、筋力低下、握力低下、脚力低下、体力の低下、動作低下、動作自由の低下、生活の質評価低下、駆出率低下、運動能力の低下、学習力低下、学習能力低下、記憶力低下、知能指数低下、認知力劣化、健忘症、認知能力低下、認知機能低下、シナプス可塑性低下、シナプス機能低下、細胞老化、慢性腎臓病(CKD)、多嚢胞腎臓疾患(PKD)、常染色体優性多嚢胞腎臓(ADPKD)、急性腎臓傷害(AKI)、急性尿細管壊死(ATN)、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、糸球体腎炎、腎臓疾患、腎不全、非乏尿性腎不全、アルコール依存症、高リン酸血症、筋ジストロフィー(MS)、1型糖尿病、2型糖尿病、心血管疾患(CVD)、心血管石灰化、脳血管不全、血管石灰化、虚血性心疾患、血圧異常、食塩感受性高血圧、組織石灰化、石灰化アテローム硬化性プラーク負荷、石灰化症、家族性腫瘍性石灰化症、癌、1つ以上の腫瘍、ミエリンに関係する疾患、脱髄疾患、神経変性疾患、神経血管疾患、進行性核上麻痺(PSP)、ポンペ病、ニーマンピック病、微小膠症、ファーバー病(FD)、骨量疾患、骨粗鬆症、骨減少症、骨減少症(特に皮質骨のBMDの喪失)、肺気腫、肺線維症、皮膚萎縮、胸腺萎縮、腎間質マトリックスの蓄積、糸球体硬化、貧血、アルブミン尿症、タンパク尿症、不妊症、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患(MND)、心房細動、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、線維筋痛症、成人発症糖尿病、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、緑内障、白内障、黄斑変性、多発性硬化症(MS)、狼瘡、潰瘍性大腸炎、悪液質、肥満、ビタミンDに関係する病態、骨疾患、骨再形成を通じた骨疾患、幹細胞枯渇、船酔い、宇宙不適応症候群(SAS)、吐き気、およびめまい、のうちの1つ以上を含む、加齢に関係するもしくは他の病態、疾患、または障害の治療に使用されるための、請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0385】
51.急性腎臓傷害(AKI)の治療または防止に使用するための、請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
52.急性腎障害(AKI)または他の病態を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的有効量の組換えクロトータンパク質を投与することを含み、当該タンパク質の少なくとも一部が、ヒトアルファクロトーアイソフォーム1もしくは2の1~981、29~981、34~981、36~981、131~981、1~549、29~549、34~549、36~549、もしくは131~549のアミノ酸残基の少なくともサブセット、または配列番号2~配列番号70もしくは配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%、86%、88%、90%、92%、95%、98%、99%、もしくは好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、方法。
【0386】
53.当該薬学的有効量の組換え可溶性クロトータンパク質とともに、1つ以上の追加の活性成分を共投与することをさらに含む、請求項52に記載の方法。
54.当該タンパク質および1つ以上の追加の活性成分が、組み合わせ生成物または組成物に配合される、請求項53に記載の方法。
【0387】
55.当該タンパク質および1つ以上の追加の活性成分が、別個の組成物である、請求項53に記載の方法。
56.当該タンパク質および1つ以上の追加の活性成分が、混合される、請求項53に記載の方法。
【0388】
57.当該タンパク質および1つ以上の追加の活性成分が、共投与のために構成され、共投与が、同時投与、または好ましくはある期間によって隔てられた別個の投与を含む、請求項53に記載の方法。
【0389】
58.当該1つ以上の追加の活性成分が、薬剤、抗体、ホルモン、造影剤、医薬、または組成物からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
59.当該症状が、急性尿細管壊死(ATN)、腎炎、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、糸球体腎炎および/もしくは腎毒性、または腎臓移植もしくは他の外科手術、急性尿細管壊死(ATN)、腎炎、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、糸球体腎炎、腎毒性、もしくは低血圧から少なくとも部分的に生じるAKIを含む、請求項52または53に記載の方法。
【0390】
60.当該腎毒性が、薬剤性腎毒性を含む、請求項52または53に記載の方法。
61.当該薬剤性腎毒性が、抗菌剤によって誘発される腎毒性を含む、請求項60に記載の方法。
【0391】
62.当該薬剤性腎毒性が、アミノグリコシドによって誘発される腎毒性を含む、請求項60に記載の方法。
63.当該投与するステップが、当該被験体における血清可溶性クロトーレベルを測定するステップと、当該被験体における当該血清可溶性クロトーレベルを所定のレベルまたは正常レベルのパーセントまで上昇させるのに十分な第1の投薬量のタンパク質を計算するステップと、好ましくはボーラスまたは段階的投与によって、より好ましくは注射によって、当該被験体に当該タンパク質の第1の投与量を投与するステップと、好ましくは当該第1の投薬量の投与に続いて当該被験体の当該血清中の可溶性クロトー低下速度を測定するステップと、当該タンパク質の次の投薬量時間および/または量を計算するステップと、ならびに計算された時間および/または量に従って当該被験体に当該タンパク質の次の投薬量を投与するステップと、からなる群から選択される1つ以上のステップを含む、請求項52または53に記載の方法。
【0392】
64.当該投与するステップが、所定のレベルまたは閾値以上に、任意選択的に所定の期間の間、当該被験体の血清可溶性クロトータンパク質濃度を上昇させるおよび/または維持するのに十分である、請求項52または53に記載の方法。
【0393】
65.当該所定のレベルまたは閾値が、血清1ミリリットル当たり約50、100、250、500、750、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、20,000、25,000、30,000、40,000、50,000、75,000、もしくは100,000ピコグラムを上回る、これらと同等、および/もしくは、これらの間の可溶性クロトータンパク質、または、可溶性クロトータンパク質の典型的な健康レベルを約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1200%、1500%、2000%、2500%、3000%、4000%、もしくは5000%上回る、請求項64に記載の方法。
【0394】
66.当該所定の期間が、約6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、12日、14日、21日、30日、45日、60日、90日、120日、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年、または5年以上である、請求項64に記載の方法。
【0395】
67.当該タンパク質が、腎臓移植または腎毒素の投与前に予防的に、および/または腎臓移植または腎毒素の投与に続いて投与される、請求項52または53に記載の方法。
68.当該腎毒素が、好ましくは、パロモマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシンおよびネオマイシンからなる群から選択される1つ以上のアミノグリコシド;好ましくはアンホテリシンBおよびフルシトシンからなる群から選択される1つ以上の抗真菌剤;好ましくは、約1.5:1のヨウ素対分子比を有する高浸透圧調節媒体(HOCM)、約3:1のヨウ素対分子比を有する低浸透圧の非イオン性造影剤(LOCM)、および約6:1のヨウ素対分子比を有する等張性(等浸透圧性)造影剤(IOCM))からなる群から選択される、1つ以上の造影剤;好ましくは、アデホビル、シドホビル、テノホビル、およびホスカルネットからなる群から選択される1つ以上の抗レトロウイルス剤;好ましくは、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アルキル化剤、ベンダムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、テモゾロミド、メルファラン、抗腫瘍抗生物質、マイトマイシンC、ブレオマイシン、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、カペシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、ゲムシタビン、シタラビン、ビンカアルカロイド、トポテカン、エトポシド、タキサン、イリノテカン、レナリドミド、エリブリン、三酸化ヒ素、もしくはイキサゾミブからなる群から選択される1つ以上の癌(または化学)治療薬;好ましくは、ゾレドロネート/ゾレドロン酸、イバンドロネート、アレンドロネート、アレンドロネート/コレカルシフェロール、エチドロネート、リセドロネート、炭酸カルシウムリセドロネート、パミドロネート、およびチルドロネートからなる群から選択される1つ以上のビスホスホネートもしくはその誘導体;および/または好ましくはコカインおよびヘロインからなる群から選択される1つ以上の麻酔薬またはオピオイド)を含む、請求項67に記載の方法。
【0396】
69.当該タンパク質が、好ましくはF352Vを含まず、より好ましくはF352を含むC370S、および/またはH193またはH193R以外の多様体を含む、請求項52または53に記載の方法。
【0397】
70.高齢な個体を治療する方法であって、当該高齢な個体が、クロトータンパク質をコードする遺伝子においてホモ接合またはヘテロ接合変異を有し、配列番号2~配列番号70または配列番号107~配列番号120のうちの1つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、治療濃度のポリペプチドを投与することを含む、方法。
【0398】
71.当該遺伝子の発現レベルを測定することをさらに含む、請求項70に記載の方法。
72.前記治療薬濃縮物を投与する前記ステップが、前記遺伝子の前記発現レベルに依存する、請求項71に記載の方法。
【0399】
73.哺乳動物対象における急性腎障害または慢性腎臓病を治療および/または予防する方法であって、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列と、
免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部、および
プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部からなる群から選択される1つ以上の合成タンパク質配列と、を含む、有効量の組換え融合タンパク質と、を含む薬学的組成物を、当該対象に投与することを含む、方法。
【0400】
74.当該急性腎障害が、
(i)外科手術もしくは他の医療処置に起因する腎臓損傷、好ましくは腎臓外科手術に起因する腎臓損傷、より好ましくは腎臓移植に起因する腎臓損傷、
(ii)敗血症による腎臓損傷、
(iii)腎虚血、好ましくは外科手術もしくは他の医療処置に起因する腎虚血、より好ましくは、
腎臓外科手術に起因する腎虚血、好ましくは腎臓移植に起因する腎虚血、ならびに/または
心血管外科手術に起因する腎虚血、好ましくは大動脈修復外科手術、動脈瘤修復外科手術、もしくは心臓外科手術に起因する腎虚血、心臓バイパス外科手術に起因する腎虚血、冠状動脈バイパス(移植)外科手術に起因する腎虚血、および/もしくは心肺バイパス外科手術に起因する腎虚血、ならびに/または
(iv)腎毒性、好ましくは薬剤性腎毒性、より好ましくは抗微生物に起因する腎毒性、もしくはアミノグリコシドに起因する腎毒性、からなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【0401】
75.当該投与工程が、
好ましくは静脈内、皮内、腹腔内、筋肉内、皮内、および皮下注射から選択される、ボーラスまたは漸進的注射、
好ましくは経口摂取投与、頬投与、および舌下投与から選択される、経口または経口関連投与、
局所投与、
経皮投与、
直腸投与、
膣内投与、
吸入、のうちの1つ以上を含む、請求項73または74に記載の方法。
【0402】
76.当該対象の体液中の可溶性クロトータンパク質の濃度を測定することと、
可溶性クロトータンパク質の濃度を少なくとも所定のレベルまでおよび/または所定の期間にわたって上昇させるのに十分な当該組成物の第1の投与量を計算することと、をさらに含み、前記投与された組成物が、前記第1の投与量を含む、請求項73~75の1項に記載の方法。
【0403】
77.
当該投与工程後の当該対象の体液中の可溶性クロトータンパク質濃度の低下速度を測定することと、
当該組成物の次の投与の時間および/または量を計算することと、
当該計算された時間および/または量に従って、当該組成物の当該次の投与を当該対象に投与することと、をさらに含む、請求項76に記載の方法。
【0404】
78.各投与工程が、当該対象の体液中の可溶性クロトータンパク質の濃度を少なくとも所定のレベルにおよび/または所定の期間にわたって上昇させるおよび/または維持するのに十分である、請求項73~77の1項に記載の方法。
【0405】
79.当該所定のレベルが、
当該体液1ミリリットル当たり、約50、100、250、500、750、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、20,000、25,000、30,000、40,000、50,000、75,000、および/もしくは100,000ピコグラムを上回る、これらと同等、ならびに/または、これらの間の可溶性クロトータンパク質、
当該対象の体重1kg当たり約0.0001~10mg、当該対象の体重1kg当たり約0.0001~10μg、当該対象の体重1kg当たり約0.0001~10ng、当該対象の体重1kg当たり約0.0001~10pgを上回る、これらと同等、および/もしくはこれらの間、または、
当該対象の前記体液中において、既知の典型的な、健康的なレベルの可溶性クロトータンパク質を約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1200%、1500%、2000%、2500%、3000%、4000%、もしくは5000%上回る、請求項76~78の1項に記載の方法。
【0406】
80.当該所定の期間が、約6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、12日、14日、21日、または30日を上回る、これらと同等、またはこれらの間である、請求項76~79の1項に記載の方法。
【0407】
81.当該タンパク質が、
腎臓外科手術、腎臓移植、心血管外科手術、心臓バイパス外科手術、冠状動脈バイパス(移植)外科手術、心肺バイパス外科手術、および腎毒素の投与のうちの1つ以上の前に、予防的に、ならびに/または
腎臓外科手術、腎臓移植、心血管外科手術、心臓バイパス外科手術、冠状動脈バイパス(移植)外科手術、心肺バイパス外科手術、および腎毒素の投与のうちの1つ以上の後に、投与される、請求項73~80の1項に記載の方法。
【0408】
82.当該腎毒素が、
好ましくは、パロモマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、およびネオマイシンからなる群から選択される1つ以上のアミノグリコシドと、
好ましくは、アスピリン(アセチルサリチル酸)、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、およびトルメチンからなる群から選択される1つ以上の非ステロイド抗炎症薬(NSAID)と、
好ましくは、ペニシリン、アンピシリン、セファロスポリン、スルホンアミド、シプロフロキサシン、バンコマイシン、マクロライド、テトラサイクリン、およびリファンピンからなる群から選択される1つ以上の抗菌剤と、
好ましくは、アンホテリシンBおよびフルシトシンからなる群から選択される1つ以上の抗真菌剤と、
好ましくは、ヨウ素化放射造影剤、約1.5:1のヨウ素対分子比を有する高浸透圧造影剤(HOCM)、約3:1のヨウ素対分子比を有する低浸透圧の非イオン性造影剤(LOCM)、および約6:1のヨウ素対分子比を有する等張性(等浸透圧性)造影剤(IOCM))からなる群から選択される、1つ以上の造影剤と、
好ましくは、アデホビル、シドホビル、テノホビル、およびホスカルネットからなる群から選択される1つ以上の抗レトロウイルス剤と、
好ましくは、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アルキル化剤、ベンダムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、テモゾロミド、メルファラン、抗腫瘍抗生物質、マイトマイシンC、ブレオマイシン、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、カペシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、ゲムシタビン、シタラビン、ビンカアルカロイド、トポテカン、エトポシド、タキサン、イリノテカン、レナリドミド、エリブリン、三酸化ヒ素、もしくはイキサゾミブからなる群から選択される1つ以上の癌(または化学)治療薬と、
好ましくは、ゾレドロネート/ゾレドロン酸、イバンドロネート、アレンドロネート、アレンドロネート/コレカルシフェロール、エチドロネート、リセドロネート、炭酸カルシウムリセドロネート、パミドロネート、およびチルドロネートからなる群から選択される1つ以上のビスホスホネート、もしくはこれらの誘導体と、
好ましくは、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、およびセレコキシブからなる群から選択される1つ以上のシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤と、
好ましくは、オメプラゾールおよびランソプラゾールからなる群から選択される1つ以上のプロトンポンプ阻害剤と、
好ましくは、フェニトインおよびバルプロ酸からなる群から選択される1つ以上の抗痙攣薬と、
好ましくは、ニザチジン、ラニチジン、ファモチジン、およびシメチジンからなる群から選択される1つ以上のヒスタミンH2受容体拮抗薬と、
好ましくはパマブロム、マンニトール、炭酸脱水酵素阻害剤、ループ利尿薬、好ましくはブメタニド、エタクリン酸、またはトルセミド、フロセミド、カリウム保持性利尿薬、好ましくはトリアムテレン、スピロノラクトン、もしくはアミロリド、または、チアジド系利尿薬、好ましくはインダパミド、クロルタリドン、メトラゾン、メチルチアジド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、ポリチアジド、およびヒドロフルメチアジド、からなる群から選択される1つ以上の利尿薬と、
好ましくは、コカインおよびヘロインからなる群から選択される1つ以上の麻酔薬またはオピオイドと、
好ましくは、リチウム、金、銅、および水銀からなる群から選択される1つ以上の元素または元素金属と、
1つ以上の直接作用型平滑筋弛緩薬、好ましくはヒドララジンと、
好ましくは、カリソプロドール、シクロベンザプリン、メタキサロン、メトカルバモール、ジアゼパム、クロニジン、チザニジン、バクロフェン、ダントロレン、イミダゾリン化合物、ベンゾジアゼピン、およびヒダントイン誘導体からなる群から選択される1つ以上の鎮痙剤と、
1つ以上の重金属毒性薬、免疫抑制薬、またはキレート薬、好ましくは(D-)ペニシラミンと、を含む、請求項81に記載の方法。
【0409】
83.当該クロトータンパク質配列が、配列番号1に対して、F45、V45、C370、S370、F352、V352以外のもの、H193、およびR193以外のもののうちの1つ以上を含む、請求項73~82の1項に記載の方法。
【0410】
84.当該クロトータンパク質配列が、配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つに対して、少なくとも88%、90%、92%、95%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項73~83の1項に記載の方法。
【0411】
85.当該免疫グロブリンFcドメイン配列の少なくとも一部が、配列番号74の少なくとも一部に対して、少なくとも88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有すること、および
当該プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部が、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部を含み、配列番号106の少なくとも一部に対して、好ましくは少なくとも88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有すること、のうちの1つ以上である、請求項73~84の1項に記載の方法。
【0412】
86.当該組換えタンパク質が、好ましくはクロトータンパク質配列と1つ以上の合成タンパク質配列との間に配置されたリンカーをさらに含み、より好ましくは、前記リンカーが、配列番号73の少なくとも一部に対して、少なくとも88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項73~85の1項に記載の方法。
【0413】
87.当該組換えタンパク質の少なくともいくつかが、コーティングされた製剤、カプセル化された製剤、制御放出性製剤、延長放出性製剤、遅延放出性製剤、または持続放出性製剤中にあること、および
当該組成物が、凝集防止剤、緩衝剤、等張化剤、および追加の賦形剤からなる群から選択される1つ以上の成分をさらに含むこと、のうちの1つ以上である、請求項73~86の1項に記載の方法。
【0414】
88.哺乳動物対象における腎障害を治療および/または予防する方法であって、
医療処置もしくは腎毒素の投与の前および/または医療処置もしくは腎毒素の投与の後に、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換え融合タンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列、ならびに任意選択的に、
免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部、および
プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部からなる群から選択される1つ以上の合成タンパク質配列、を含む、有効量の組換えタンパク質と、を含む薬学的組成物を、予防的に当該対象に投与することを含む、方法。
【0415】
89.哺乳動物対象において、病態、疾患もしくは障害、好ましくは加齢に関連する病態、疾患もしくは障害を治療および/または予防する方法であって、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換え融合タンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列、ならびに任意選択的に、
免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部、および
プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部からなる群から選択される1つ以上の合成タンパク質配列、を含む、有効量の組換えタンパク質と、を含む薬学的組成物を、当該対象に投与することを含む、方法。
【0416】
90.当該病態、疾患、または障害が、虚弱、骨密度低下、骨ミネラル密度低下、体重低下、筋肉萎縮、筋肉退化、筋量低下、筋力低下、握力低下、脚力低下、体力の低下、動作低下、動作自由の低下、生活の質評価低下、駆出率低下、運動能力の低下、学習力低下、学習能力低下、記憶力低下、知能指数低下、認知力劣化、健忘症、認知能力低下、認知機能低下、シナプス可塑性低下、シナプス機能低下、細胞老化、慢性腎臓病(CKD)、慢性腎疾患-ミネラルおよび骨障害(CKD-MBD)、多嚢胞腎臓疾患(PKD)、常染色体優性多嚢胞腎臓(ADPKD)、急性腎障害(AKI)、急性尿細管壊死(ATN)、急性アレルギー性間質性腎炎(AAIN)、糸球体腎炎、腎臓疾患、腎不全、アルポート症候群、非乏尿性腎不全、アルコール依存症、高リン酸血症、筋ジストロフィー(MS)、1型糖尿病、2型糖尿病、心血管疾患(CVD)、心血管石灰化、脳血管不全、血管石灰化、冠動脈疾患、心不全、左心室肥大、尿毒症性心筋症、血圧異常、食塩感受性高血圧、組織石灰化、石灰化アテローム硬化性プラーク負荷、石灰化症、家族性腫瘍性石灰化症、癌、1つ以上の腫瘍、ミエリンに関係する疾患、脱髄疾患、神経変性疾患、神経血管疾患、進行性核上麻痺(PSP)、ポンペ病、ニーマンピック病、微小膠症、ファーバー病(FD)、骨量疾患、骨粗鬆症、骨減少症、骨減少症(特に皮質骨のBMDの喪失)、肺気腫、肺線維症、嚢胞性繊維症、特発性(すなわち、原因不明)肺線維症、放射線障害性肺障害、肝硬変、胆道閉鎖、心房性線維症、心内膜心筋線維症、(陳旧性)心筋梗塞、神経膠瘢痕、動脈硬化、関節線維症、クローン病、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、縦隔線維症、骨髄線維症、ペーロニー病、腎性全身性線維症、進行性塊状線維症、後腹膜線維化症、強皮症/全身性硬化症、癒着性関節包炎、皮膚萎縮、胸腺萎縮、腎間質マトリックスの蓄積、糸球体硬化、貧血、アルブミン尿症、タンパク尿症、不妊症、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患(MND)、心房細動、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、線維筋痛症、成人発症糖尿病、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、緑内障、白内障、黄斑変性、多発性硬化症(MS)、狼瘡、潰瘍性大腸炎、悪液質、肥満、ビタミンDに関係する病態、骨疾患、骨再形成を通じた骨疾患、幹細胞枯渇、船酔い、宇宙不適応症候群(SAS)、吐き気、めまい、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝硬変、およびアルコール脂肪肝炎からなる群から選択される、請求項89に記載の方法。
【0417】
91.哺乳動物対象において健康を改善し、かつ/または若さを維持する方法であって、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換え融合タンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列、ならびに任意選択的に、
免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部、および
プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部からなる群から選択される1つ以上の合成タンパク質配列、を含む、有効量の組換えタンパク質と、を含む薬学的組成物を、当該対象に投与することを含む、方法。
【0418】
92.1つ以上の追加の活性成分を事前投与、同時投与、および/または事後投与することをさらに含む、請求項73~91のいずれか1項に記載の方法。
93.当該1つ以上の追加の活性成分が、薬剤、抗体、ホルモン、造影剤、医薬、または組成物からなる群から選択される、請求項92に記載の方法。
【0419】
94.哺乳動物対象における腎障害の治療および/または予防に使用するための薬学的組成物であって、
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換え融合タンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列、ならびに任意選択的に、
免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部、および
プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部からなる群から選択される1つ以上の合成タンパク質配列、を含む、有効量の組換えタンパク質と、を含む、組成物。
【0420】
95.当該腎障害が、
(i)外科手術もしくは他の医療処置に起因する腎臓損傷、好ましくは腎臓外科手術に起因する腎臓損傷、より好ましくは腎臓移植に起因する腎臓損傷、
(ii)腎虚血、好ましくは外科手術もしくは他の医療処置に起因する腎虚血、より好ましくは
腎臓外科手術に起因する腎虚血、好ましくは腎臓移植に起因する腎虚血、ならびに/または
心血管外科手術に起因する腎虚血、好ましくは心臓バイパス外科手術に起因する腎虚血、より好ましくは冠状動脈バイパス(移植)外科手術に起因する腎虚血、最も好ましくは心肺バイパス外科手術に起因する腎虚血、ならびに
(iii)腎毒性、好ましくは薬剤性腎毒性、より好ましくは抗菌剤に起因する腎毒性もしくはアミノグリコシドに起因する腎毒性からなる群から選択される、請求項94に記載の医薬組成物。
【0421】
96.
薬学的に許容される担体または賦形剤と、
有効量の組換え融合タンパク質であって、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列、ならびに任意選択的に、
免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部、および
プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部からなる群から選択される1つ以上の合成タンパク質配列、を含む、有効量の組換えタンパク質と、を含む、薬学的組成物。
【0422】
97.
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列と、
免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部、および
プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部からなる群から選択される1つ以上の合成タンパク質配列と、を含む、組換えタンパク質。
【0423】
98.組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む核酸構築物であって、当該組換えタンパク質が、
配列番号4、配列番号9、および配列番号109のうちの1つと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するクロトータンパク質配列と、任意選択的に、
免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部、
プロテアーゼ認識配列の少なくとも一部、および
好ましくは少なくとも1つのストレプトアビジン配列を含み、より好ましくは2つ以上のストレプトアビジン配列を含み、好ましくはそれらの間に配置されたスペーサーを有する、親和性タグ配列の少なくとも一部、からなる群から選択される1つ以上の合成タンパク質配列と、を含む、核酸構築物。
【0424】
99.プロモーターをさらに含み、当該組換えタンパク質をコードする当該核酸配列が当該プロモーターの制御下にある、請求項98に記載の核酸構築物。
100.当該組換えタンパク質が、配列番号52、配列番号54、および配列番号66のうちの1つに対して、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、または100%のアミノ酸配列同一性を含む、請求項73~99に記載のいずれか1項。
【0425】
実施例10
上記に加えて、1つ以上の非ヒト哺乳動物クロトータンパク質またはタンパク質配列(またはその一部)は、本開示の特定の実施形態を実施するのに有用であり得る。配列番号121~124は、様々な非ヒト哺乳動物クロトータンパク質をコードするためのDNA配列を表す。配列番号111~120は、様々な非ヒト哺乳動物のアミノ酸配列を表す。これらのクロトータンパク質配列(またはその一部)は、上記と同様の方法で、発現され、精製され、組成物へ製剤され、および/または動物に投与され得る。組換えクロトー(融合)タンパク質の治療用投与は、本明細書に概説される非ヒト哺乳動物バージョンの医学的病態および他の病態を治療するのに有効であり得る。特に、本開示の実施形態は、当業者によって理解されるように、獣医学的治療方法、タンパク質、および組成物を含み得る。
【0426】
結論
前述の詳細な説明は、特定の例示的な実施形態を参照しているが、本開示は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得る。したがって、記載の実施形態は、全ての点において、例示的なものであって限定的なものではないとみなされるべきである。例えば、関連する当業者および本開示の所有者に考えられ得る、本明細書に記載および/または例示された本発明の特性の様々な置換、変化および/または改変、ならびに本明細書に記載および/または例示された原理の追加の適用は、添付の特許請求によって規定される本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載されたおよび/または例示された実施形態になされ得る。かかる置換、変化および/または改変は、本開示の範囲内であるとみなされるものである。
【0427】
したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲に列挙される制限は、特許請求の範囲で採用される言語に基づいて広く解釈されるものであり、前述の詳細な説明に記載の特定の例に限定されず、非排他的かつ非限定的であると解釈されるものである。特許請求に相当する範囲および意味に入る全ての変更は、その範囲内に含まれるものである。
【0428】
ある特定の実施形態の様々な特性はまた、本開示の他の実施形態と互換性があり、組み合わされ、含まれ、および/または組み込まれ得ることも理解されるであろう。例えば、本開示のある特定の実施形態に従ったシステム、方法、および/または生成物は、本明細書に開示および/または記載の他の実施形態に記載された特性を含み得るか、組み込み得るか、または含み得る。したがって、本開示の特定の実施形態に関連するある特定の特性の開示は、かかる特性の特定の実施形態への適用または包含を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0429】
加えて、特性が特定の実施形態で必要とされていると記載されていない限り、様々な実施形態に記載の特性は任意選択的であり、本開示の他の実施形態に含まれない場合がある。さらに、特性がそれと組み合わせて別の特性を必要とするものとして記載されていない限り、本明細書の任意の特性は、本明細書に開示の同じかまたは異なる実施形態の任意の他の特性と組み合わされ得る。ある特定の実施形態では、特性は任意選択的であり得るが、かかる実施形態に特性が含まれるとき、それらは本開示で記載のような特定の構成を有することが要求され得ることが理解されるであろう。
【0430】
同様に、本明細書に記載の、および/または特許請求の範囲に列挙される任意の方法またはプロセスに列挙されるステップは、任意の好適な順序で実行され得、特に(明示的または黙示的に)記載されない限り、記載および/または列挙される順序に必ずしも限定されない。しかしながら、かかるステップはまた、本開示のある特定の実施形態では、特定の順序または任意の好適な順序で実施されることも要求され得る。
【0431】
さらに、例示的なシステム、方法、生成物などの様々な周知の態様は、例示的な実施形態の態様を不明瞭にすることを避けるために、本明細書では詳細には記載しない。しかしながら、かかる態様もまた、本明細書において考慮される。
【配列表】