(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】反転ラッチ錠
(51)【国際特許分類】
E05B 15/10 20060101AFI20230315BHJP
E05B 63/08 20060101ALI20230315BHJP
E05B 55/00 20060101ALI20230315BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20230315BHJP
E05B 47/06 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
E05B15/10 B
E05B63/08 C
E05B55/00
E05B47/00 R
E05B47/06 B
(21)【出願番号】P 2020162369
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000130433
【氏名又は名称】株式会社ゴール
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100221718
【氏名又は名称】藤原 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】武居 竜夫
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-148015(JP,A)
【文献】特開2002-054330(JP,A)
【文献】特開平11-148259(JP,A)
【文献】実開昭60-068164(JP,U)
【文献】特開2008-179997(JP,A)
【文献】特開平06-323047(JP,A)
【文献】特開2005-324669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠ケース内において、前記錠ケースの前端壁に設けられた開口から出没可能に設けられた反転ラッチと、
前記反転ラッチに係合して係止状態とすることで前記反転ラッチの反転動作を阻止するロッキングピースと、
前記ロッキングピースを構成する上側片と下側片とを前記反転ラッチの後側において枢着する連結ピンと、
前記連結ピンの後端に当接可能に配置されてなるラッチ解放板と、
前記ラッチ解放板の一端に接続されてなり、電気信号をうけて伸縮ロッドを伸縮動作させると共に前記ラッチ解放板を前方へ移動可能とする電気ソレノイドと、
前記電気ソレノイドの伸縮動作の初動によって前方に移動した前記ラッチ解放板は、前記連結ピンを前方へ押し出して前記ロッキングピースを前記反転ラッチから脱離させて前記係止状態を解放すると共に、前方に対する付勢機構に掛け止めされて後退が規制される
ことを特徴とする反転ラッチ錠。
【請求項2】
前記錠ケースが開扉状態にあることを感知して、前記ラッチ解放板を掛け止めた前記付勢機構を、前記ラッチ解放板から解放するトリガーを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の反転ラッチ錠。
【請求項3】
前記ロッキングピースが前記反転ラッチと係止状態にある状態において、前記ロッキングピースと一端が枢支されてなるテコ板が設けられ、
前記テコ板の他端部が前記錠ケースの外部から手動により操作可能な手動操作部に形成されてなり、
前記手動操作部の操作が前記テコ板を回動させると共に、前記ロッキングピースを拡開させて前記係止状態を解放させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の反転ラッチ錠。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに係る反転ラッチ錠を備えてなる扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉錠に使用される反転ラッチの回動動作を係止状態を解除する機構を備えた反転ラッチ錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反転ラッチはプッシュプルハンドルなどの操作によりロック状態が解放され、ロック状態の解放と共にハンドルを押し引きすることで、扉を開扉することができる扉錠を構成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、健常者にとっては負担なく行うことができるプッシュプルハンドルの操作であっても、車椅子に乗った状態の人など、障害を持っているがためにハンドルの押し引き動作が困難な場合、従来の反転ラッチの解放操作ができず、目的とする扉の開扉できないという問題が生じる。
【0005】
また、高齢者などウイルスや細菌への感染リスクの高い人にとって、不特定多数の人間が触れる扉のハンドルに触れることは、感染リスクを高める原因ともなり、ハンドルを手で操作することなく開扉操作を可能とする扉錠の実現も求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決する手段として本発明に係る反転ラッチ錠は、錠ケース内において、前記錠ケースの前端壁に設けられた開口から出没可能に設けられた反転ラッチと、前記反転ラッチに係合して係止状態とすることで前記反転ラッチの反転動作を阻止するロッキングピースと、前記ロッキングピースを構成する上側片と下側片とを前記反転ラッチの後側において枢着する連結ピンと、前記連結ピンの後端に当接可能に配置されてなるラッチ解放板と、前記ラッチ解放板の一端に接続されてなり、電気信号をうけて伸縮ロッドを伸縮動作させると共に前記ラッチ解放板を前方へ移動可能とする電気ソレノイドと、前記電気ソレノイドの伸縮動作の初動によって前方に移動した前記ラッチ解放板は、前記連結ピンを前方へ押し出して前記ロッキングピースを前記反転ラッチから脱離させて前記係止状態を解放すると共に、前方に対する付勢機構に掛け止めされて後退が規制されることを特徴とする反転ラッチ錠。反転ラッチは、水平方向に回動することにより反転動作することができるが、ロッキングピースによって係止されて係止状態となることで、回動が規制される。電気ソレノイドは、電気信号を受けることによって、電気信号をうける前の初期位置から、初動で伸縮ロッドを延伸若しくは短縮させる。そして、電気信号を受けて伸縮ロッドの初動を実行したあとは、通電が遮断される瞬時通電型の電気ソレノイドであることが好ましい。瞬時通電型の電気ソレノイドであることにより、電気信号を受けて初動を完了した後には電力を維持する必要がなく、省電力化を図ることができる。
【0007】
また、前記錠ケースが開扉状態にあることを感知して、前記ラッチ解放板を掛け止めた前記付勢機構を、前記ラッチ解放板から解放するトリガーを有することとしても好ましい。トリガーは、扉の開扉を感知して、付勢機構とラッチ解放板との掛け止め状態を解除し、これにより反転ラッチから脱離した状態のロッキングピースを反転ラッチに係合可能とすることを目的とする機構である。
【0008】
さらに、前記ロッキングピースが前記反転ラッチと係止状態にある状態において、前記ロッキングピースと一端が枢支されてなるテコ板が設けられ、前記テコ板の他端部が前記錠ケースの外部から手動により操作可能な手動操作部に形成されてなり、前記手動操作部の操作が前記テコ板を回動させると共に、前記ロッキングピースを拡開させて前記係止状態を解放させることとしても好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る反転ラッチ錠によれば、閉扉された扉に電気信号を与えて電気ソレノイドを動作させると反転ラッチの係止状態が解放されるので、反転ラッチの係止状態を解放させるためのハンドル操作などを行うことなくラッチを解放させることができる。すなわち、前記電気信号を与えるだけで、例えば障害を持っているがためにハンドルの押し引き動作が困難な人であっても、目的とする扉を押すだけで開扉することができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、不特定多数の人間が触れる扉のハンドル操作をすることなく開扉することができるため、高齢者などウイルスや細菌への感染リスクの高い人にとっても感染リスクを低減できる反転ラッチ錠及び扉を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一の実施形態に係るラッチ錠1の閉扉状態における(a)平面図、及び、(b)正面方向から見た内部構造であって、反転ラッチ3を施錠状態とした様子を示す図である。
【
図2】第一の実施形態に係るラッチ錠1の閉扉状態における正面方向から見た内部構造であって、反転ラッチ3を解錠状態とした様子を示す図である。
【
図3】第一の実施形態に係るラッチ錠1の開扉状態における正面方向から見た内部構造を示す図である。
【
図4】第二の実施形態に係るラッチ錠1の閉扉状態における(a)平面図、及び、(b)正面方向から見た正面方向から見た内部構造であって、反転ラッチ3を施錠状態とした様子を示す図である。
【
図5】第二の実施形態に係るラッチ錠1の閉扉状態における内部構造であって、反転ラッチ3を解錠状態とした様子を示す図である。
【
図6】第二の実施形態に係るラッチ錠1の開扉状態における内部構造を示す図である。
【
図7】第二の実施形態に係るラッチ錠1の閉扉状態における内部構造であって、非常用開放テコ54を操作して反転ラッチ3を解錠状態とした様子を示す図である。
【
図8】第二の実施形態におけるラッチ開放板21と、トリガーカム49の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態を、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
〔第一の実施形態〕
図1(b)は、第一の実施形態に係るラッチ錠1の閉扉状態における内部構造を示す図である。錠ケース2の中央部にはラッチケース4に収容された反転ラッチ3が設けられてなる。
図1(b)において、反転ラッチ3の先端部は錠ケース2の前端壁5に形成された開口6から突出してなり、反転ラッチ3は、開口6から前後方向に出没可能に設けられてなる。
【0014】
反転ラッチ3の後端はラッチケース4の後端内壁面との間に設けられてなるラッチバネ8によって前方に対して付勢されてなる。反転ラッチ3の上下面には、前後方向に沿って形成された溝であるロック溝9が設けられてなる。
【0015】
また、ラッチケース4の後側からロッキングピース10を構成する上側片11と下側片12とが、それぞれ湾曲した上下一対の板状体に形成されてラッチケース4の上面と下面とにかけて延在してなる。そして、上側片11及び下側片12の先端は、それぞれロック溝9に係合可能な板状の係合片13に形成されてなる。
【0016】
上側片11は、ラッチケース4の上端後方位置において錠ケース2に対して回動可能に支軸14によって軸支されてなる。また下側片12は、ラッチケース4の下端後方位置において錠ケース2に対して回動可能に支軸15によって軸支されてなる。
【0017】
さらに、上側片11及び下側片12はラッチケース4の後側において互いに重なり合ってなり、互いに重複する位置に連結孔が形成されてなる。連結孔には連結ピン16が挿通されてなり、連結ピン16によって上側片11と下側片12とが互いに回動可能に枢着されてなる。また連結ピン16は前後に移動可能であり、当該連結ピン16の移動によって上側片11及び下側片12を同時に回動させることでロッキングピース10の開閉状態を切り替えることができる。
【0018】
例えば
図1(b)に示すように、ラッチ錠1が閉扉状態にあって、連結ピン16が後方位置にあるときはロッキングピース10の係合片13が互いに狭まる位置となる。この場合、係合片13は、ラッチケース4の上下面に設けられた穴17を介して、ロック溝9に係合する。すなわち、ロッキングピース10が、
図1(b)に示すように反転ラッチ3を上下から挟持した係止状態となり、反転ラッチ3の水平方向に対する反転動作を阻止する。この場合、閉扉状態にあって受け7に挿入された反転ラッチ3に対して扉Dを開こうとしても、反転ラッチ3は受け7との衝突によっても反転が阻止されてラッチケース4の内部へ後退することができず、扉Dは開扉されない。
【0019】
錠ケース2の底面部の前方内側には、瞬時通電型の電気ソレノイド19が設置されてなる。電気ソレノイド19は、その本体の後端から、後方に向かって伸縮ロッド20が延出してなる。
【0020】
連結ピン16の後側には、ロッキングピース10の表面に沿って上下に長い長板状のラッチ開放板21が配置されてなる。ラッチ開放板21の上端部が支軸14によって錠ケース2に対して軸支されてなり、支軸14を軸中心として前後に回動可能である。また、ラッチ開放板21の下端部は伸縮ロッド20とピン18によって連結されてなり、伸縮ロッド20の伸縮運動によって、ラッチ開放板21を前後に回動させることができる。なお、ラッチ開放板21の下半部に設けられてなる長孔22には、支軸15が当該長孔22内において移動自在に挿通されてなり、ラッチ開放板21の回動は支軸15によっては阻害されない。
【0021】
さらに、ラッチ開放板21の上下中心部には連結ピン16を後端から当接して前方へ押し出すことができる押出し部23が形成されてなる。本実施の形態においては、押出し部23がラッチ開放板21を貫通する小孔に形成されてなり、当該小孔に連結ピン16の端部が挿通されてなる。なお、当該押出し部23を形成する小孔は、連結ピン16の外径よりもわずかに長く形成されてなり、ラッチ開放板21の回動による連結ピン16に対する相対的な上下の移動を阻害しない。
【0022】
電気ソレノイド19は、コードCから電気信号を受けることにより初動において伸縮ロッド20を前方へ短縮動作させる。当該短縮動作によってラッチ開放板21も前方に向かって回動すると共に、押出し部23が連結ピン16を後方位置から前方位置に向かって移動させる。連結ピン16が後方位置から前方位置へ移動すると、上側片11及び下側片12がそれぞれ支軸14,15を軸中心として回動し、係合片13が互いに開いてロッキングピース10が拡開する。ロッキングピース10が拡開すると、係合片13はそれぞれロック溝9から脱離するので反転ラッチ3が表裏方向に反転可能な状態となる。なお、電気ソレノイド19は、ラッチ開放板21よりも側に設置されていてもよい。この場合には、ロッキングピース10を拡開させるために、電気信号を受け取った電気ソレノイド19は伸縮ロッド20を伸長動作させればよい。
【0023】
また、本実施の形態においては、ロッキングピース10を構成する上側片11の後端が正面方向に屈曲したバネ受け部24を備えてなる。また、支軸14を巻回してラッチケース4の後端面とバネ受け部24との間を拡開する方向に付勢してなるバネ25が設けられてなることにより、ロッキングピース10はバネ25により連結ピン16を後方へ移動させる力を受けている。
【0024】
一方で、支軸14には、支軸14を回動中心として回動可能なトリガーカム26が取付けられてなる。トリガーカム26は、支軸14から上方に延出してなるトリガー受け片27と支軸14から斜め後方に延出してなる保持片28とを有する上端部が凹状の板体に形成されてなる。トリガーカム26は、支軸14を巻回して保持片28の下方において正面方向に突設されてなるピン28aと保持片28とに係止されてなるバネ29によって保持片28が下方に付勢されてなる。なお、トリガーカム26の保持片28の先端には回転自在のローラー30が設けられてなる。
【0025】
さらに、ロッキングピース10の後方には上下に長尺に形成されてなる解放保持板31が配置されてなる。解放保持板31は、下端部において支軸32によって錠ケース2に対して回動可能に軸支されてなる。ロッキングピース10を構成する下側片12と解放保持板31とは、支軸15と支軸32との間において、それぞれの下半部が互いに回動可能に連結ピン33によって連結されてなる。解放保持板31における支軸32から上方に延出してなる保持腕部35の前端は正面方向に屈曲したバネ受け部34に形成されてなる。支軸32を巻回して錠ケース2の後端内側面とバネ受け部34との間を拡開する方向に付勢してなるバネ36が設けられてなることにより、解放保持板31はバネ36により前方へ移動させる力を受けている。なお、本実施の形態においては、保持腕部35の先端部と錠ケースの後端内側面との間につる巻バネなどの伸縮バネ37が保持腕部35を前方に付勢するように設けられてなる。
【0026】
ロッキングピース10が解放する際には、下側片12の前端が下方に向かって回動することによって連結ピン33が上方に上がると共に保持腕部35がバネ36及び伸縮バネ37の付勢力に抗して後方に向かって回動する。
【0027】
ロッキングピース10の解放が完了すると、
図2に示すように、保持腕部35の上端部から前方に突出してなる突端38の前端が、バネ29の付勢力によって下方に回動した支持片28のローラー30の後端によって前方への移動を阻害された状態で保持される。これにより、ロッキングピース10が解放されて、反転ラッチ3が反転動作可能な状態となる。反転ラッチ3が反転動作可能な状態で扉Dを押し引きすると、反転ラッチ3は受け7によって反転し、傾斜面を受け7と当接させながらラッチケース4内に押し込まれることにより扉Dが開く。
【0028】
特に、扉Dが押し開き型である場合には、デッドボルトを解錠して電気ソレノイド19に電気信号を与えれば、ハンドルを操作しなくても扉Dを体ごと押せば開扉できるため、ハンドル操作が不自由な人であっても容易に開扉することができる。
【0029】
ここで、
図1(b)、
図2に示すように、錠ケース2内において、ロッキングピース10よりも上部分にはトリガー39が設けられてなる。トリガー39は、錠ケース2の前端壁5から出没可能な頭部40と、頭部40の後方において、前後に移動可能な胴部41が設けられてなる。胴部41の後端からは、さらに後方に延出してなる鉤型の支持解除片42がトリガー受け片27の後方に回りこんだ形状に形成されてなり、支持解除片42の後端43がトリガー受け片27と係合可能に屈曲されてなる。ここで、胴部41は取付部材44によって錠ケース2に固定されてなると共に、取付部材44と頭部40との間に設けられてなる伸縮バネ45によって頭部40及び支持解除片42を前方に押し出すことができる。
【0030】
そして、扉Dが閉扉されている状態においては、トリガー39は戸枠46に押し込まれてなるため、解錠された状態で保持されたロッキングピース10は、その保持状態が維持される。しかし、扉Dが開扉されると、
図3に示すように、トリガー39は戸枠46によって頭部40を押し込んでいた力から解放されることにより、伸縮バネ46が支持解除片42を前方へ移動させるとともに後端43がトリガー受け片27に係合しながらトリガーカム26を回動させる。すると、保持腕部35を保持していたローラー30が突端38から脱離して解放保持板31がバネ36及び伸縮バネ37の押圧力によって前方へ回動すると共に、ロッキングピース10を係合片13が互いに狭まった位置に変化させて係合片13をロック溝9に係合させる。
【0031】
係合片13がロック溝9に係合された状態で扉Dが閉扉されようとすると、反転ラッチ3は受け7によって押込まれる。なお、この際、反転ラッチ3はロック溝9に沿って係合片13に対し摺動可能であるため、反転ラッチ3は反転動作が制限されながらラッチケース4の内部へ移動することができる。扉Dが閉扉されて反転ラッチ3が受け7の内側まで移動すると、
図1(b)に示すように、ラッチバネ8が反転ラッチ3を前方へ押し出して扉Dは施錠される。なお、このときトリガー39は戸枠46によって押込まれた状態となる。
【0032】
〔第二の実施形態〕
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。
図4(b)は、第二の実施形態に係るラッチ錠1の閉扉状態における内部構造を示す図である。
【0033】
錠ケース2の中央部においてラッチケース4に収容され、開口6から前後方向に出没可能に設けられてなる反転ラッチ3の構成、及び、反転ラッチ3の反転動作を、ロック溝に係合片13を係合させて制御するロッキングピース10の構成、並びに、ロッキングピース10の開閉状態の切り替え動作が連結ピン16の前後の移動によってなされる点は、第一の実施形態と同様である。
【0034】
錠ケース2の底面部の前方内側には、第一の実施形態と同様に、電気ソレノイド19が設置されてなる。電気ソレノイド19は、その本体の後端から、後方に向かって伸縮ロッド20が延出してなる。
【0035】
連結ピン16の後側には、ロッキングピース10の表面に沿って上下に長い長板状のラッチ開放板21が配置されてなる。ラッチ開放板21の上端部が支軸14によって錠ケース2に対して軸支されてなり、支軸14を軸中心として前後に回動可能である。また、ラッチ開放板21の下端部は伸縮ロッド20とピン18によって連結されてなり、伸縮ロッド20の伸縮運動によって、ラッチ開放板21を前後に回動させることができる。なお、ラッチ開放板21の下半部に設けられてなる長孔22には、支軸15が当該長孔22内において移動自在に挿通されてなり、ラッチ開放板21の回動は支軸15によっては阻害されない。また、ラッチ開放板21の中央後端には正面方向に向かって屈曲されて形成されたバネ受け部21aが形成されてなる。さらに、支軸14に巻回されたバネ21bがラッチケース4の後端面とバネ受け部21aとの間に取り付けられてラッチ開放板21を後方へ付勢してなる。
【0036】
さらに、ラッチ開放板21の上下中心部には連結ピン16を後端から当接して前方へ押し出すことができる押出し部23が形成されてなる。本実施の形態においては、押出し部23は、ラッチ開放板21の前端から後方に向かって形成されてなる切欠き凹部に形成されてなり、当該小孔に連結ピン16の端部が挿通されてなる。なお、当該押出し部23を形成する切欠き凹部の上下幅長さは、連結ピン16の外径よりもわずかに長く形成されてなり、ラッチ開放板21の回動による連結ピン16に対する相対的な上下の移動を阻害しない。
【0037】
電気ソレノイド19は、コードCから電気信号を受けることにより初動において伸縮ロッド20を前方へ短縮動作させる。当該短縮動作によってラッチ開放板21も前方に向かって回動すると共に、押出し部23が連結ピン16を後方位置から前方位置に向かって移動させる。連結ピン16が後方位置から前方位置へ移動すると、上側片11及び下側片12がそれぞれ支軸14,15を軸中心として回動し、係合片13が互いに開いてロッキングピース10が拡開する。ロッキングピース10が拡開すると、係合片13はそれぞれロック溝9から脱離するので反転ラッチ3が表裏方向に反転可能な状態となる。
【0038】
また、本実施の形態においては、ロッキングピース10を構成する上側片11の後端が正面方向に屈曲したバネ受け部24を備えてなる。また、支軸14を巻回してラッチケース4の後端面とバネ受け部24との間を拡開する方向に付勢してなるバネ25が設けられてなることにより、ロッキングピース10はバネ25により連結ピン16を後方へ移動させる力を受けている。
【0039】
ラッチ開放板21の上半部から後方に延出してなる腕47は、先端部が後斜め上方に向かって切欠き48が形成されてなる。さらに、腕47の後方には、腕47に対して後側から当接してなるトリガーカム49が設けられてなる。また、トリガーカム49を錠ケース2に対して軸支する支軸50には、バネ51が巻回されてなる。トリガーカム49は、
図8に示すように、バネ51を係止するために正面方向に屈曲されてなる爪52と腕47と当接すると共に、切欠き48と嵌合可能な嵌合板部53が背面方向に屈曲された板状に形成されてなる。また、トリガーカム49の上端部には上方に突出してなるトリガー受け片49aが形成されてなる。
【0040】
さらに、ロッキングピース10の後方には上下に長尺に形成されてなる非常用開放テコ54が配置されてなる。非常用開放テコ54は、下端部において支軸55によって錠ケース2に対して回動可能に軸支されてなる。ロッキングピース10を構成する下側片12と非常用開放テコ54とは、支軸15と支軸55との間において、それぞれの下半部が互いに回動可能に連結ピン56によって連結されてなる。非常用開放テコ54における支軸55から上方に延出してなるテコ腕57の前端は正面方向に屈曲したバネ受け部58に形成されてなる。支軸55を巻回して錠ケース2の後端内側面とバネ受け部58との間を拡開する方向に付勢してなるバネ59が設けられてなることにより、非常用開放テコ54はバネ59により前方へ移動させる力を受けている。
【0041】
また、非常用開放テコ54のテコ腕57からは錠ケース2の正面側の壁面から外部に突出してなる突出部60が形成されてなる。突出部60は、扉Dの外表面に取り付けられてなる図示しない非常用解錠装置に接続されてなり、非常用解錠装置を操作することで、突出部60を後方に向かって移動させることができる。
図7に示すように、突出部60が後方に移動するに伴い、非常用開放テコ54が後方に回動し、連結ピン56を介して下側片12を回動させてロックピース10を開き、反転ラッチ3を反転可能な状態とすることができる。このように非常用開放テコ54を回動動作せることで、停電や故障などにより、電気ソレノイド19を作動させることができない場合であっても扉Dを開扉することができる。
【0042】
電気ソレノイド19を作動させて伸縮ロッド20を前方方向に短縮動作させるとラッチ開放板21が前方に向かって回動してロッキングピース10を解放すると共に、腕47が下方に下がる。腕47が下がると、切欠き48がトリガーカム49の嵌合板部53の下端の下側まで下がったときにバネ51の力によってトリガーカム49が時計回りに回動して嵌合板部53と切欠き48とが係合する。
【0043】
切欠き48が嵌合板部53と係合すると、
図5に示すように、ラッチ開放板21が前方に向かって回動した状態で固定され、ロッキングピース10が拡開された状態が維持される。これにより、反転ラッチ3が反転動作可能な状態となる。反転ラッチ3が反転動作可能な状態で扉Dを押し引きすると、反転ラッチ3は受け7によって反転し、傾斜面を受け7と当接させながらラッチケース4内に押し込まれることにより扉Dが開く。
【0044】
特に、扉Dが押し開き型である場合には、デッドボルトを解錠して電気ソレノイド19に電気信号を与えれば、ハンドルを操作しなくても扉Dを体ごと押せば開扉できるため、ハンドル操作が不自由な人であっても容易に開扉することができる。
【0045】
ここで、
図4(b)、
図5に示すように、錠ケース2内において、ロッキングピース10よりも上部分にはトリガー61が設けられてなる。トリガー61は、錠ケース2の前端壁5から出没可能な頭部62と、頭部62の後方において、前後に移動可能な胴部63が設けられてなる。胴部63の後端からは、さらに後方に延出してなる鉤型の支持解除片64がトリガー受け片49aの後方に回りこんだ形状に形成されてなり、支持解除片64の後端65がトリガー受け片49aと係合可能に屈曲されてなる。ここで、胴部63は取付部材66によって錠ケース2に固定されてなると共に、取付部材66と頭部62との間に設けられてなる伸縮バネ67によって頭部62及び支持解除片64を前方に押し出すことができる。なお、本実施の形態においては支持解除片64の中央部に前後方向に長軸の長孔68が形成され、長孔68にはガイドピン69が挿通されてなる。ガイドピン69により、トリガー61の前後動の際の上下のブレを防止することができる。
【0046】
そして、扉Dが閉扉されている状態においては、トリガー61は戸枠70に押し込まれてなるため、解錠された状態で保持されたロッキングピース10は、その保持状態が維持される。しかし、扉Dが開扉されると、
図6に示すように、トリガー61は戸枠70によって頭部62を押し込んでいた力から解放されることにより、伸縮バネ67が支持解除片64を前方へ移動させるとともに後端65がトリガー受け片49aに係合しながらトリガーカム49を回動させる。すると、切欠き48と嵌合板部53との係合が解放されてラッチ開放板21が反時計回りに回動することにより連結ピン16が後方に移動可能となる。これにより、バネ25の力を受けたロッキングピース10を係合片13が互いに狭まった位置に変化させて係合片13をロック溝9に係合させる。
【0047】
係合片13がロック溝9に係合された状態で扉Dが閉扉されようとすると、反転ラッチ3は受け7によって押込まれる。なお、この際、反転ラッチ3はロック溝9に沿って係合片13に対し摺動可能であるため、反転ラッチ3は反転動作が制限されながらラッチケース4の内部へ移動することができる。扉Dが閉扉されて反転ラッチ3が受け7の内側まで移動すると、
図4(b)に示すように、ラッチバネ8が反転ラッチ3を前方へ押し出して扉Dは施錠される。なお、このときトリガー61は戸枠70によって押込まれた状態となる。
【符号の説明】
【0048】
1 ラッチ錠
2 錠ケース
3 反転ラッチ
9 ロック溝
10 ロッキングピース
16 連結ピン
19 電気ソレノイド
21 ラッチ開放板
26 トリガーカム
31 解放保持板
39 トリガー
54 非常開放テコ