(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】リハビリテーション用の自転車を漕ぐような運動を行うための運動機器
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20230315BHJP
A63B 23/04 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61H1/02 Q
A63B23/04 Z
(21)【出願番号】P 2020194269
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2021-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019211278
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月28日に、「2019ライフサイエンス 新技術説明会~医療系大学~」にて発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 優子
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】宮部 愛子
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-54598(JP,A)
【文献】特開平10-155933(JP,A)
【文献】特開2006-345904(JP,A)
【文献】特開2018-94397(JP,A)
【文献】特開2010-158506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H1/02
A63B23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者のつまさきから踵までを乗せる領域を有している足置き板と、
足の載置を検知して信号を発するセンサー部と、
前記センサー部から発せられる信号を視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換して出力する出力装置を有し、
前記センサー部は
、前記使用者が前記足置き板に足を置いたときの前記足置き板の前後方向の長さのうち、前記足置き板のつまさき側1/2
未満の長さを有する部分の少なくとも一部に配置されており、
前記足置き板はアーム部と接続されており、
前記アーム部の一端は、
前記長さのうち、前記足置き板のつまさき側1/2
未満の長さを有する部分の一部に対して回転可能に接続されており、
前記アーム部の他端は、支持部材に対して回転可能に接続されていることを特徴とするリハビリテーション用の
自転車を漕ぐような運動を行うための運動機器。
【請求項2】
前記センサー部は、感圧式センサーである請求項1に記載のリハビリテーション用の
自転車を漕ぐような運動を行うための運動機器。
【請求項3】
前記出力装置は、
前記長さのうち、前記足置き板のつまさき側1/2
未満の長さを有する部分の少なくとも一部に配置されている表示装置である請求項1または2に記載のリハビリテーション用の
自転車を漕ぐような運動を行うための運動機器。
【請求項4】
起立性調節障害者のリハビリテーション用である請求項1から3のいずれか一項に記載の
自転車を漕ぐような運動を行うための運動機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仰臥位の状態でも足の運動を効果的に行うことができるようにするための機能を有するリハビリテーション用の運動機器に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行が困難である場合や筋力が低下してしまった場合に、一般的なリハビリテーションの方法として、平行棒内歩行訓練や運動機器を用いた筋肉トレーニングなどが行われている。
【0003】
しかし、上記のような一般的に用いられるトレーニング方法は立位や座位を保つことを必要とするため、起き上がること自体が困難な人にとっては取り入れることが困難なものであった。
【0004】
このような理由から、起き上がることが困難な人が仰臥位の状態でも足の運動を行うことができるよう、例えば、特許文献1に記載の使用者の下体に受動的な作動を入力する弛緩支援駆動体と、主に使用者の上体を支持する上体支承架台とを具えて成る健康器具であって、前記弛緩支援駆動体は、使用者の下体を保持する下体保持部を具えるとともに、この下体保持部を繰り返し往復回動させる作動機構を具えて成るものであり、使用者は、前記上体支承架台に支持された状態で、前記下体保持部から受動的な回動作動が繰り返し入力されるものであり、これにより使用者の身体をほぐすようにし、また柔軟性、弾力性を回復するようにしたことを特徴とする受動式健康器具が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている受動式健康器具においては、使用者が適切な筋肉を強化するための機能面において未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、起き上がることが困難な人が仰臥位の状態でも足の筋力強化のための運動を効果的に行うことができるようにするための機能を有するリハビリテーション用の運動機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決できた本発明のリハビリテーション用の運動機器とは、使用者のつまさきから踵までを乗せる領域を有している足置き板と、足の載置を検知して信号を発するセンサー部と、センサー部から発せられる信号を視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換して出力する出力装置を有し、センサー部は足置き板のつまさき側1/2の少なくとも一部に配置されていることを特徴とするリハビリテーション用の運動機器である。センサー部が足置き板のつまさき側1/2に配置されていることで、母指球部分や指の腹部分がセンサー部に接触したり、近づいたりした時にセンサー部が信号を発することになる。発せられた信号が視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換されて出力されることで、使用者は母指球部分や指の腹部分がセンサー部に配置されていることを確認することができる。これにより、適切な位置に足を配置することができていることを使用者自身が確認しながら運動をすることができる。そのため、使用者は効果的な運動を行うことができる。
【0009】
センサー部は、感圧式センサーであることが好ましい。
【0010】
出力装置は、足置き板のつまさき側1/2の少なくとも一部に配置されている表示装置であることが好ましい。
【0011】
足置き板はアーム部と接続されており、アーム部は、足置き板のつまさき側1/2の少なくとも一部に接続されていることが好ましい。
【0012】
本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器は、起立性調節障害者のリハビリテーション用に使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
センサー部が足置き板のつまさき側1/2に配置されることで、母指球部分や指の腹部分がセンサー部に接触したり、近づいたりした時にセンサー部が信号を発することになる。発せられた信号が視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換されて出力されることで、使用者は母指球部分や指の腹部分がセンサー部に配置されていることを確認することができる。これにより、適切な位置に足を配置できていることを使用者自身が確認しながら運動をすることができる。そのため、使用者は効果的な運動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器の斜視図である。矢印xは横方向、矢印yは縦方向、矢印zは高さ方向を示す。
【
図2】
図1に示す本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器を使用している態様を表す横面図である。矢印xは横方向、矢印yは縦方向、矢印zは高さ方向を示す。
【
図3】本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器の斜視図である。矢印xは横方向、矢印yは縦方向、矢印zは高さ方向を示す。
【
図4】
図3に示す本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器を使用している態様を表す横面図である。矢印xは横方向、矢印yは縦方向、矢印zは高さ方向を示す。
【
図5】本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器を使用している態様を表す横面図である。矢印xは横方向、矢印yは縦方向、矢印zは高さ方向を示す。
【
図6】本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器に使用者が足を置いた状態を表す上面図である。矢印pは前後方向を示す。
【
図7】本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器に使用者が足を置いた状態を表す上面図である。矢印pは前後方向を示す。
【
図8】本発明の実施例に係るリハビリテーション用の運動機器を模したペダルに被験者が母指球部(足前側)を置いた状態を表す上面図である。矢印pは前後方向を示す。
【
図9】本発明の実施例に係るリハビリテーション用の運動機器を模したペダルに被験者が土踏まず部(足中央)を置いた状態を表す上面図である。矢印pは前後方向を示す。
【
図10】本発明の実施例に係るリハビリテーション用の運動機器を模したペダルに被験者が踵部(足後側)を置いた状態を表す上面図である。矢印pは前後方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器の斜視図である。この図では、縦方向を示す矢印yのうち、図面に向かって手前がつまさき側であり、奥が踵側である。
図2は、
図1に示す本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器を仰臥位の状態で使用している態様を表す横面図である。
図1、
図2で示す本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器は、エルゴメーター様の機器であり、矢印Bの方向に足を動かして自転車を漕ぐような運動を行うものである。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器の斜視図である。高さ方向を示す矢印zのうち、図面に向かって上がつまさき側であり、下が踵側である。
図4は、
図3に示す本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器を仰臥位の状態で使用している態様を表す横面図である。
図3、
図4で示す本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器は、レッグプレスマシン様の機器であり、矢印Cの方向に力を入れてスクワットのような運動を行うものである。
【0018】
図5は、本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器を使用している態様を表す横面図である。
図5で示す本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器は、エルゴメーター様の機器であり、矢印Bの方向に足を動かして自転車を漕ぐような運動を行うものである。
【0019】
図6及び
図7は、本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器に使用者が足を置いた状態を表す上面図である。図面に向かって上側がつまさき側であり、図面に向かって下側が踵側である。
【0020】
本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器とは、
図1~
図5に示すように、使用者のつまさきから踵までを乗せる領域を有している足置き板10と、足の載置を検知して信号を発するセンサー部11と、センサー部11から発せられる信号を視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換して出力する出力装置12を有し、センサー部11は足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に配置されていることを特徴とするリハビリテーション用の運動機器1である。
【0021】
足置き板10は、使用者のつまさきから踵までを乗せる領域を有している板である。使用者のつまさきから踵までを乗せることができれば、足置き板10の形状は特に限定されることはなく、例えば、平面視で楕円形や長方形などにすることができる。また、使用者のつまさきから踵までを乗せる足置き板10の形状は、使用者の足裏に沿う形状にしても構わない。足置き板10が使用者のつまさきから踵までを乗せる領域を有していることで、使用者は適切な位置に足を置いて運動を行うことができる。
【0022】
また、足置き板10は、足の甲を覆うことでつまさきの位置を固定するベルトを有していてもよいし、アキレス腱を覆うことで足の踵の位置を固定するベルトをさらに有するものであってもよい。上記構成により、足置き板10における足の位置がずれることがなく、使用者は適切な位置に足を置いた状態を保ったまま運動を行うことができる。
【0023】
センサー部11は、物理現象や対象の物理状態の変化などを捉え、信号やデータに変換して出力する機器のことである。足の載置を検知するためのセンサー部11としては、足の温度を利用して足の位置を検知する感温式センサー、力が加わったことを検知したり加わった力の大きさを測定したりする感圧式センサー、電極と人の皮膚との間に発生する静電容量の変化から足の位置を検知する静電容量センサー、赤外線を使用して足の位置を検知する赤外線センサーなどから適宜選択すればよい。
【0024】
足置き板10のつまさき側1/2Aとは、
図6及び
図7で示すように、使用者が足置き板10に足を置いたときの前後方向(矢印p方向)の長さのうち、つまさき側で1/2の長さを有する部分のことをいう(以下、「つまさき側1/2A」と記載する)。センサー部11は、
図1に示されるように、足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に配置されているものであるが、足置き板10のつまさき側1/2Aの全体に配置されていても構わない。センサー部11は、足置き板10のつまさき側1/3の少なくとも一部に配置されていることがより好ましく、足置き板10のつまさき側1/3の全体に配置されていることがさらに好ましい。また、足裏の母指球または/及び指の腹部分が配置される領域全体にセンサー部11が配置されていることが特に好ましい。
【0025】
センサー部11は、足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に配置されているものであればよいが、使用者のつまさきが適切な位置に配置されていることや、使用者のつまさきに力が入っていることをセンサー部11が感知することができればよいため、つまさき側1/2A以外の部分、即ち、足置き板10の踵側1/2に相当する部分にはセンサー部11が配置されないものであってもよい。
【0026】
出力装置12は、センサー部11から受け取った信号を、視覚情報または聴覚情報または振動情報といった人間に認識できる形で外部に提示する装置のことである。視覚情報に変換する出力装置としてはディスプレイや電球などを代表とする表示装置を、聴覚情報に変換する出力装置としてはスピーカーやイヤホンなどを代表とする発音装置を、振動情報に変換する出力装置としてはバイブレータを代表とする振動発生装置を使用することができる。
【0027】
出力装置12が表示装置である場合は、ディスプレイや電球の点滅によって使用者の足が適切な位置に配置されて適切な運動を行うことができていることを伝えるものや、センサー部11に触れていた時間やセンサー部11に力が加わっていた時間をディスプレイに数字で表示するような方法で運動効果を使用者に伝えるものなどにすることができる。より具体的には、例えば、
図6に示すように、使用者が足を置いた位置が適切でなく、足の位置が足置き板10の前後方向(矢印p方向)に対して後側過ぎるような場合は表示装置(出力装置12)に「もう少し前に」などと表示し、足が適切な位置に配置された場合には
図7に示すように表示装置(出力装置12)に「適切な位置です」などと表示することができる。
【0028】
図1~
図4、
図6、
図7では、出力装置12が足置き板10に設けられている態様を示したが、出力装置12の実施形態はこれに限られることはなく、例えば、
図5で示すように出力装置12のみが独立して配線12aで繋げられているような構成であってもよい。
【0029】
センサー部11が足置き板10のつまさき側1/2Aに配置されることで、母指球部分や指の腹部分がセンサー部11に接触したり、近づいたりした時にセンサー部11が信号を発することになる。発せられた信号が視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換されて出力装置12に出力されることで、使用者は母指球部分や指の腹部分がセンサー部11に配置されていることを確認することができる。これにより、適切な位置に足を配置することができていることを使用者自身が確認しながら運動をすることができる。そのため、使用者は効果的な運動を行うことができる。
【0030】
上述したようにセンサー部11としては、感温式センサー、感圧式センサー、静電容量センサー、赤外線センサーなどを使用することができるが、センサー部11は、感圧式センサーであることが好ましい。感圧式センサーが足置き板10のつまさき側1/2Aに配置されることで、感圧式センサーが配置されている部分に力が入った時に信号が発せられる。発せられた信号が視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換されて出力装置12に出力される。このため、使用者は
図7に示すように、足のつまさきを感圧式センサー(センサー部11)に置いて運動することで足のつまさき側に力が入っていることを容易に確認することができる。また、足のつまさきに力を入れる運動を行うことで、下腿三頭筋を鍛えることができるため、上記構成とすることで下腿三頭筋の筋力強化のための運動を行うことができていることを使用者自身が容易に確認することができる。下腿三頭筋は第二の心臓とも言われ、収縮と弛緩を繰り返すことで静脈血を心臓に送り返す役割を担っており、心臓からの血液の拍出と同様に血液循環にとって重要な働きをしている筋肉である。上記のような構成のリハビリテーション用の運動機器1を使用することで、下腿三頭筋の筋力強化のための運動を行うことができていることが容易に確認できるため、使用者は下腿三頭筋の筋力を効果的に鍛えることができ、強化された下腿三頭筋が静脈血を心臓に送り返すポンプ機能をより強く発揮することによって血液循環をも円滑に行うことができるようになる。
【0031】
上述したように出力装置12としては、表示装置、発音装置、振動発生装置などを使用することができるが、出力装置12は、足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に配置されている表示装置であることが好ましい。センサー部11で発せられた信号が足置きの板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に配置されている表示装置において視覚情報として表示されると、適切な足の位置で運動を行うことができているかどうかを容易に確認することができる。そのうえ、表示装置が足置き板10に配置されていることで、使用者が出力装置を目視確認する際に姿勢を崩すことなく、また、その視野の中に自身の足も入る。このため、使用者は表示装置を見るために姿勢を崩すことなく運動することができ、運動中の自身の足の動かし方(運動フォーム)も同時に目視確認することができるため、より効果的な運動を行うことができる。
【0032】
図1~
図5で示すように、足置き板10はアーム部13と接続されており、アーム部13は、足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に接続されていることが好ましい。
【0033】
アーム部13とは、一端が足置き板10と接合された状態で足置き板10を保持している部材である。アーム部13の他端は、支持部材14に接続されていてもよい。支持部材14はアーム部13と接続され、アーム部13を保持するものである。
【0034】
図1に示す本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器1では、足置き板10は回転可能な状態でアーム部13に取付けられていることが好ましく、例えば、自転車に用いられるペダルのように、足置き板10が該足置き板10を横方向(x方向)に貫通する回転軸を有し、その回転軸の一端にアーム部13の一端が接合している構成にすることができる。アーム部13の他端は、
図1に示すように支持部材14に対して矢印B方向に回転可能に接続されていてもよい。
【0035】
図1、
図2に示す実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器1の場合は、例えば、アーム部13がアーム軸13aを有し、このアーム軸13aを中心に矢印B方向に回転することができるような構成にすることができる。
図2、
図5で示すように使用者は足置き板10に足をおいて力を入れることで、アーム軸13aを中心に足置き板10を矢印B方向に回転させて運動する。これにより、仰臥位の状態でも自転車をこぐ運動を行っているような効果を得ることができるため、特に下腿三頭筋の筋力を効果的に強化することができる。
【0036】
図3に示す実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器1の場合は、例えば、アーム部13が延び縮みする形態で支持部材14に接続されていてもよい。この場合は、使用者が足置き板10に加えた力がアーム部13に伝わり、それによってアーム部13が矢印Cの方向に縮み、使用者が力を抜くとアーム部13が元の長さに戻ることが好ましい。このような形態にすることで、このリハビリテーション用の運動機器1の使用者はスクワットのような運動を仰臥位でも行うことができる。
【0037】
アーム部13は、
図1及び
図3に示されるように、足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に配置されていることが好ましく、足置き板10のつまさき側1/3の少なくとも一部に配置されていることがより好ましい。
【0038】
図1に示すようなエルゴメーター様のリハビリテーション用の運動機器1では、足置き板10のうちアーム部13が配置されている領域に使用者が力をかけると、足置き板10は回転することがなく運動を行いやすくなる。アーム部13が足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に接続されていることで、使用者は必然的につまさき側、特に母指球や指の腹部分に力を入れて運動を行うことになり、効果的に下腿三頭筋の筋力を強化することができる。また、センサー部11も足置き板10のつまさき側1/2Aに設けられているため、アーム部13が足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に接続されていることで、使用者は必然的にセンサー部11において力を入れることにもなる。センサー部11に力が加われば、出力装置12から情報が出力されることになるため、下腿三頭筋の筋力強化のための運動を行うことができていることを使用者自身が容易に確認することができる。上記のような構成のリハビリテーション用の運動機器1を使用することで、下腿三頭筋の筋力強化のための運動を行うことができていることを容易に確認できるため、使用者は下腿三頭筋の筋力を効率的に鍛えることができ、強化された下腿三頭筋が静脈血を心臓に送り返すポンプ機能をより強く発揮することによって血液循環をも円滑に行うことができるようになる。
【0039】
図3及び
図4では、左右の足を一つの足置き板10に乗せてスクワット様の運動を行うレッグプレスマシン様の機器の実施の形態を示したが、本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器1は、左の足を乗せる足置き板10と右の足を乗せる足置き板10を別々に設けて左右の足それぞれで片足スクワット様の運動を行う、ツイストステッパー様の機器であってもよい。
【0040】
本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用の運動機器1は、起立性調節障害者のリハビリテーション用に使用することができる。
【0041】
従来、起立性調節障害は、思春期の著しい成長に伴う自律神経の不調であり、早晩に改善すると考えられていたが、起立性調節障害を発症した児童が不登校に陥るなどした場合、生活動作の改善・水分の摂取・塩分の摂取・生活リズムの改善といった非薬物療法及び昇圧薬などを服用する薬物療法を併用したとしても症状の改善が見られずに、長期化してしまう例が少なくない。
【0042】
近年の研究により、起立性調節障害者には、症状の改善のために適度な運動が必要であることがわかってきたが、起立性調節障害者は、全身の倦怠感や立ちくらみが酷いため、立位や座位で適切な運動を行うことが困難であるうえ、正しい運動方法を処方する専門の施設に通うことも困難であった。
【0043】
そこで、起立性調節障害者にこのリハビリテーション用の運動機器1を使用してもらうことで、使用者は立位や座位になることなく仰臥位の状態で運動を行うことができるため、自宅で無理なく運動を継続することができる。また、適切な運動を行うことができているかどうかについて出力装置12を通じて使用者自身が確認することができるため、運動時に指導者がいなくても適切な運動を行うことができる。その結果、起立性調節障害の症状を改善することができる。
【0044】
起立性調節障害者が使用するリハビリテーション用の運動機器1としては、起立性調節障害者のつまさきから踵までを乗せる領域を有している足置き板10と、足の載置を検知して信号を発するセンサー部11と、センサー部11から発せられる信号を視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換して出力する出力装置12を有し、センサー部11は足置き板10のつまさき側1/2Aの少なくとも一部に配置されているものであればよいが、センサー部11として感圧式センサーが採用され、足置き板10のつまさき側1/2Aに配置されているリハビリテーション用の運動機器1を使用することが好ましい。上記構成のリハビリテーション用の運動機器1を使用することで、感圧式センサーが配置されている部分に力が入った時に信号が発せられる。発せられた信号が視覚情報または聴覚情報または振動情報に変換されて出力装置12に出力される。このため、起立性調節障害者は
図7に示すように、足のつまさきを感圧式センサー(センサー部11)に置いて運動することで足のつまさき側に力が入っていることを容易に確認することができる。また、足のつまさきに力を入れる運動を行うことで、下腿三頭筋を鍛えることができるため、上記構成とすることで下腿三頭筋の筋力強化のための運動を行うことができていることを起立性調節障害者自身が容易に確認することができる。このため、起立性調節障害者は下腿三頭筋の筋力を効率的に鍛えることができ、強化された下腿三頭筋が静脈血を心臓に送り返すポンプ機能をより強く発揮することによって血液循環をも円滑に行うことができるようになる。このような効果を得られるため、起立性調節障害者が上記のようなリハビリテーション用の運動機器1を使用することで起立性調節障害の症状を改善することができる。
【0045】
以上の通り、本発明のリハビリテーション用の運動機器は、起き上がることが困難な人でも、仰臥位の状態で足の運動、特に下腿三頭筋の筋力強化を効果的に行うことができるものである。
【実施例】
【0046】
以下、下記実施例および比較例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0047】
小児科に入院する13~15歳の重症の起立性調節障害児(以下、「OD児」と記載する)を対象とする。重症OD児の定義は(1)日本小児心身医学会小児起立性調節障害診断治療ガイドラインの身体的重症度の判定で重症と判断され、(2)不登校期間が連続して1か月以上続いている者とする。
【0048】
1.トレーニング方法
トレーニング:立位の運動が不可能な重症OD児でも可能なベッド上臥位のエルゴメーター運動を4週間実施する。トレーニング開始前に、心肺運動負荷試験検査を実施、最大酸素摂取量を測定し、心拍数を指標とした最大酸素摂取量70%程度の負荷をかけた運動を相対的自覚強度11から開始して2週間後には13を目標として、開始後2週間は臥位のまま、15日以降はベッドを徐々に起こして実施する。足底の前足部でペダルをこぐ運動が効果的であることを立証するため、研究では、前、中、後足部でペダルをこぐ群を設定し、トレーニング前後の起立試験、心循環系機能、運動耐容能、筋力を比較する。
評価方法:トレーニング開始前と開始4週間後に、各種の評価を行う。評価項目は、シェロング起立試験の最大心拍ならびに心拍変動、エスクロンミニによる心循環系機能、心血管系を反映する心電図、血圧、心機能(CP、SV、TPR)・心超音波検査、筋力の評価として徒手筋力テスト、握力テスト、筋肉量(Inbodyの筋肉量、体脂肪)の測定を行う。
【0049】
2.評価項目
(1)心拍出量(CO)
1分間に心臓から全身に送り出される血液量であり、心臓のポンプ機能を示す。心拍出量(mL/分)は、1回拍出量(mL)×心拍数(回/分)によって算出される。
(2)1回拍出量(SV)
心臓に戻ってくる循環血液量(前負荷)と心臓から血液を出す時の抵抗(後負荷)、心臓の収縮力で決定される。OD患者では下肢への血液貯留のために静脈還流が低下し、心臓に戻ってくる循環血液量が低下している。
【0050】
心拍出量(CO)は、心拍数(HR)、前負荷、後負荷、収縮力により規定される。OD患者では、起立時に血液が下肢へ貯留し(プーリング)心臓に還る血液量(前負荷)が減少するため、心臓のポンプ機能を保つために心拍数(HR)が著明に増加する。
【0051】
つまり、OD患者の起立時の循環反応は、i)起立による下肢へのプーリング発生、ii)心臓に還る血液(静脈還流)量の低下、iii)これに伴いSVが減少、iv)COを保つために代償的にHRの増加、と進行する。そしてHRの増加によってもCOが保てないために循環不全を呈する。
【0052】
以上のようにHRはSVの減少による代償的なものであるため、トレーニングの評価には運動耐容能と心循環系機能のSV、COとする。
【0053】
3.試験結果
開始前に実施した被験者の心肺運動負荷試験検査の結果を元に、週5日、夕刻にウォーミングアップ(負荷20ワットで5分)、有酸素運動(各人の心拍数を指標とし最大酸素摂取量70%程度の負荷を設定、15分)、クールダウン(負荷20ワットで5分)からなるトレーニングを実施した。
【0054】
トレーニングは、足底の母指球部(足前側)でペダルをこぐことが有効であることを立証するために、
図8に示すように母指球部(足前側)、
図9に示すように土踏まず部(足中央)、
図10に示すように踵部(足後側)でペダル(幅:9.5cm、長さ:8cm)をこいだケースの各評価項目の比較を試みた。踵部(足後側)でこぐのは被験者が実施困難と訴え、観察者も継続困難と評価したため、母指球部(足前側)、土踏まず部(足中央)の2ケースで比較した。下記表1は、母指球部(足前側)でペダル30をこいだ被験者、および、土踏まず部(足中央)でペダル30をこいだ被験者の心循環系機能(SV)を示すものであり、下記表2は、母指球部(足前側)でペダル30をこいだ被験者、および、土踏まず部(足中央)でペダル30をこいだ被験者の心拍出量(CO)を示すものである。
【0055】
【0056】
【0057】
母指球部(足前側)でペダルをこぐ場合と、土踏まず部(足中央)でペダルをこぐ場合とを比較すると、心拍出量(CO)、心循環系機能(SV)において母指球部(足前側)の結果が優れていた。心臓のポンプ機能を示すとされる心拍出量(CO)は、心拍数(HR)(表示せず)、前負荷、後負荷、収縮力により規定される。OD患者では、起立時に血液が下肢へ貯留し(プーリング)心臓に還る血液量(前負荷)が減少するため、心臓のポンプ機能を保つために心拍数(HR)(表示せず)は増加する。
【0058】
OD患者の起立時の循環反応は、起立による下肢へのプーリングが起こり、心臓に還る血液(静脈還流)量が低下し、SVが減少し、COを保つために代償的にHRが増加する機序で進行する。そしてHR増加によってもCOが保てないために循環不全を呈する。つまりHRはSVの減少による代償的に増加するので、トレーニングの効果は運動耐容能とSV、COの方がよりダイレクトに反映される。
【0059】
今回、前足部でこいだ場合に、CO、SVの増加が大きいことは、トレーニングに活動筋の機能が向上し、運動時の静脈還流量が増えたことを意味すると推察される。この結果から、母指球部(足前側)でペダルをこぐ臥位のエルゴメーター・トレーニングは、土踏まず部(足中央)、踵部(足後側)でペダルをこいで実施するよりもOD症状の改善における効果が高く、重症OD児の症状の改善に役立つことが示された。
【符号の説明】
【0060】
1: リハビリテーション用の運動機器
10: 足置き板
11: センサー部
12: 出力装置
12a:配線
13: アーム部
13a:アーム軸
14: 支持部材
20: ベッド
A: つまさき側1/2
30: ペダル