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  • 特許-流量制御システム及び流量測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】流量制御システム及び流量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
G05D7/06 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020533395
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027880
(87)【国際公開番号】W WO2020026784
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2018143005
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲
(72)【発明者】
【氏名】河嶋 将慈
(72)【発明者】
【氏名】滝本 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-32983(JP,A)
【文献】特開2012-141254(JP,A)
【文献】特開2006-337346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御器の下流側に設けられた第1バルブと、前記第1バルブの下流側に設けられた圧センサ、温度センサ及び両センサの下流側に設けられた第2バルブを有する流量測定装置と、第1バルブ及び第2バルブの開閉動作を制御する制御部とを備える流量制御システムであって、
前記制御部は、前記圧センサ及び温度センサの計測値を記録する記録部と、
前記圧力センサの計測値に応じた第1バルブから第2バルブまでの容積値を記憶する記憶部と、
第1バルブと第2バルブとを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第1バルブと第2バルブとを同時に閉鎖し、その後に計測した第1圧力値P1及び第1温度値T1
第1バルブと第2バルブとを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第2バルブを閉鎖し、その後、所定時間Δtが経過後、第1バルブを閉鎖した後に計測した第2圧力値P2及び第2温度値T2、並びに、
前記記憶部から得られる前記第2圧力値P2に応じた第1バルブから第2バルブまでの容積値、に基づいて
流量、Q=22.4×V×(P2/T2-P1/T1)/(760×R・Δt)、(ただしRは気体定数)から演算する演算部と、
を備えた流量制御システム。
【請求項2】
前記第1バルブと前記第2バルブとの間に配置された第3バルブをさらに備え、
前記演算部は、
前記第2圧力値P2及び第2温度値T2を計測後、第1バルブを閉鎖した状態で第2バルブを前記所定時間Δtよりも短時間開放すると共に、第2バルブの開放と同時又は開放の直前に前記第3バルブを閉鎖し、前記第2バルブと前記第3バルブとを閉鎖した状態で計測した第3圧力値P3及び第3温度値T3、および、
前記第3圧力値P3及び第3温度値T3を計測した後、前記第1バルブと前記第2バルブとを閉鎖したまま第3バルブを開放して計測した第4圧力値P4及び第4温度値T4に基づいて、
流量、Q=22.4×((P2-P1)/(760×R×Δt))×(Vb/Tb×(P2-P3)/(P2-P4)+Vst/Tst)から演算し、ただし、Vbは、前記第2バルブと前記第3バルブとの間の容積値であって前記記憶部から得られる前記第2圧力値P2に応じた容積値、TbおよびTstは、前記第3温度値T3または第4温度値T4に対応する温度、Vstは、前記流量制御器から前記第1バルブまでの容積である、請求項1に記載の流量制御システム。
【請求項3】
流量制御器の下流側に設けられた第1バルブと、前記第1バルブの下流側に設けられた圧センサ、温度センサ及び両センサの下流側に設けられた第2バルブを有する流量測定装置と、第1バルブ及び第2バルブの開閉動作を制御する制御部とを備える流量制御システムにおいて行われる流量測定方法であって、
第1バルブと第2バルブとを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第1及び第2バルブを同時に閉鎖し、その後第1圧力P1及び第1温度T1を測定する第1ステップと、
第1バルブと第2バルブとを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第2バルブを閉鎖し、その後、所定時間Δtが経過後に第1バルブを閉鎖した後の第2圧力P2及び第2温度T2を測定する第2ステップと、
第1ステップで測定した第1圧力P1及び第1温度T1、第2ステップで測定した第2圧力P2及び第2温度T2、並びに、第2ステップで測定した第2圧力P2に応じて変動するビルドアップ容積に基づいて流量、Q=22.4×V×(P2/T2-P1/T1)/(760×R・Δt)、(ただしRは気体定数)から演算する第3ステップとを含む流量測定方法。
【請求項4】
前記流量制御システムが、流量制御器及び第1バルブの下流側で、かつ、圧力センサ及び温度センサの上流側に配置された第3バルブを備え、前記第3バルブは、前記第1ステップおよび前記第2ステップを行う間は開かれており、
前記第2ステップの圧力測定及び温度測定の後、前記第3バルブを閉鎖するとともに、第2バルブを短時間で開閉させた後に測定した第3圧力P3および第3温度T3と、その後さらに第2バルブを閉鎖した状態で第3バルブを開放した後に計測した第4圧力P4および第4温度T4を第3ステップの流量演算に用いるようにし、流量Qを、Q=22.4×((P2-P1)/(760×R×Δt))×(Vb/Tb×(P2-P3)/(P2-P4)+Vst/Tst)から演算し、ただし、Vbは、前記第2バルブと前記第3バルブとの間の容積値であって前記第2圧力P2に応じた容積値、TbおよびTstは、第3温度値T3または第4温度値T4に対応する温度、Vstは、前記流量制御器から前記第1バルブまでの容積である、請求項3に記載の流量測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造設備、薬品製造装置又は化学プラント等に用いるガス供給装置に使用される流量制御システム及び流量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造設備又は化学プラント等においては、ガスを精度よく供給することが要求される。ガス流量の制御装置として、マスフローコントローラ(熱式質量流量制御器)や圧力式流量制御システムが知られている。
【0003】
これらの流量制御システムにおいて、流量は高精度で管理する必要があり、随時、流量精度の確認や校正を行うことが好ましい。流量測定の方法として、一般的にビルドアップ法による流量測定が用いられている。ビルドアップ法は、既知容量内(ビルドアップ容量)に流れ込む単位時間当たりの圧力を検出することによって流量を測定する方法である。
【0004】
ビルドアップ法は、流量制御器の下流に設けられた一定容積(V)の配管内又はタンク内にガスを流し、そのときの圧力上昇率(ΔP/Δt)と温度(T)とを測定することで、気体定数をRとしたとき、例えば、Q=22.4×(ΔP/Δt)×V/RTから流量Qを求めるようにしている。
【0005】
特許文献1には、ビルドアップ法を用いた流量測定の一例が開示されたガス供給装置が記載され、特許文献2には、ビルドアップ法を用いた流量制御器の校正方法に関する流量計算方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-337346号公報
【文献】特開2012-32983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のビルドアップ法では、一定のビルドアップ容量の配管内やタンク内にガスを送って圧力を検出するもので、測定する流量の幅が小さい場合、ビルドアップ圧力は一定(例えば、100Torr)とすることでビルドアップ容量を変化させる必要はない。
【0008】
しかし、通常、流量制御器を複数並列に配設し、チャンバに対して異なる流量の流体を供給することが望まれている。このような場合、ビルドアップ法における流量測定において、測定する流量の幅が流量制御器によって、例えば、1sccm~2000sccm等の幅で流量計測を行う必要が生じる。2000sccmを計測する際、ビルドアップ圧力を100Torrとしたときに、ビルドアップ圧力まで圧力を上昇させるのに数秒で済むところ、1sccm等小流量の流量計測を行おうとした場合、ビルドアップ圧力を2000sccmと同じ100Torrとすると、圧力を上昇させるために必要な時間が数時間かかる場合がある。
【0009】
このように圧力上昇に長時間かかることは、実際の装置においては現実的ではないため、ビルドアップ圧力を下げ、圧力上昇時間が短時間となるように、例えば、流量1sccmを計測する場合は、ビルドアップ圧力を4Torrに低下させることで圧力上昇時間の問題を解消するようにしている。ビルドアップ圧力を変動させるとビルドアップ圧力を計測する圧力計が内部にダイヤフラムを備えた静電容量方式の場合にはダイヤフラムの変形量が異なることとなり、歪みゲージ方式の圧力計の場合にも内部でのたわみが発生し、係る部分での容積が微量ながら変動する。そして、ビルドアップ容積が配管を利用する等、小さい容積の場合、圧力計内の容積の変動はビルドアップ容積全体に対して無視することのできないものとなり、流量測定結果に影響を及ぼすという問題が生じることが分かった。
【0010】
本発明は、係る点に鑑み、計測流量の変更に伴うビルドアップ圧力を変更しても正確な流量測定が可能な流量制御システム及び流量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る流量制御システムは、
流量制御器の下流側に設けられた第1バルブと、第1バルブの下流側に設けられた圧センサ、温度センサ及び両センサの下流側に設けられた第2バルブを有する流量測定装置と、第1バルブ及び第2バルブの開閉動作を制御する制御部とを備え、
制御部は、圧センサ及び温度センサの計測値を記録する記録部と、
圧力センサの計測値に応じた第1バルブから第2バルブまでの容積値を記憶する記憶部と、
第1バルブと第2バルブとを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第1バルブと第2バルブとを同時に閉鎖し、その後に計測した第1圧力値及び第1温度値、第1バルブと第2バルブとを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第2バルブを閉鎖し、その後、所定時間が経過後、第1バルブを閉鎖した後に計測した第2圧力値及び第2温度値、並びに、記憶部から得られる第2圧力値に応じた第1バルブから第2バルブまでの容積値に基づいて流量を演算する演算部とを有している。
【0012】
上記の流量制御システムによれば、ビルドアップ圧力となる第2圧力値の変動によるビルドアップ容量の変化による流量計算の影響を防止することができる。
【0013】
また、同じ目的を達成するために、本発明の実施形態に係る流量測定方法は、流量制御器の下流側に設けられた第1バルブと、第1バルブの下流側に設けられた圧センサ、温度センサ及び両センサの下流側に設けられた第2バルブを有する流量測定装置と、第1バルブ及び第2バルブの開閉動作を制御する制御部とを備える流体制御システムにおいて行われ、
第1バルブと第2バルブとを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第1及び第2バルブを同時に閉鎖し、その後圧力及び温度を測定する第1ステップと、
第1バルブと第2バルブとを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第2バルブを閉鎖し、その後、所定時間が経過後に第1バルブを閉鎖した後の圧力及び温度を測定する第2ステップと、
第1ステップで測定した圧力及び温度、第2ステップで測定した圧力及び温度、並びに、第2ステップで測定した圧力に応じて変動するビルドアップ容積に基づいて流量を演算する第3ステップとを含む。
【0014】
本発明の実施形態に係る流量制御システムおよび流量測定方法によれば、ビルドアップ圧力となる第2ステップで測定した圧力を変動させても安定した流量計算をすることができる。
【0015】
また、この場合において、
流量制御システムが、流量制御器及び第1バルブの下流側で、かつ、圧センサ及び温度センサの上流側に常時開放状態の第3バルブを備え、第2ステップの圧力測定及び温度測定の後、第3バルブを閉鎖するとともに、第2バルブを短時間で開閉させた後に測定した圧力と、その後さらに第2バルブを閉鎖した状態で第3バルブを開放した後に計測した圧力を第3ステップの流量演算に用いるようにすることができる。これによって配管温度の影響を解消することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の流量制御システム及び流量測定方法によれば、広範囲の流量、例えば、1sccm~2000sccmの流量を短時間で、かつ、高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る流量制御システムの概略構成を示す模式図である。
図2】同流量制御システムに用いる流量制御器の一実施例を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態に係る流量制御システム及び流量測定方法の概要を示し、(a)は図1の模式図を1系統に簡略化した概略図、(b)は、測定方法に関するタイミングチャートである。
図4】ビルドアップ圧力とビルドアップ容積との関係を示すグラフであり、ビルドアップ圧力100Torrのときの容積を100%としたときの各ビルドアップ圧力における容積を比率で示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0019】
<実施形態1>
本実施形態1は、本発明に係る流量制御システムである。この流量制御システム1は、図1に示すように、流量制御器10の下流側に設けられた第1バルブV1と、この第1バルブV1の下流側に設けられた圧力センサP(図例、圧力センサは圧力センサPa及びPbの2基配設しているが総称して圧力センサPという)、温度センサT、及び、圧力センサP、温度センサTの下流側に設けられた第2バルブV2を有する流量測定装置2と、第1バルブV1及び第2バルブV2の開閉動作を制御する制御部3とを備える流量制御システム1であって、制御部3は、圧力センサP及び温度センサTの計測値を記録する記録部31と、圧力センサPの計測値に応じた第1バルブV1から第2バルブV2までの容積を記憶する記憶部32と、第1バルブV1と第2バルブV2とを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第1バルブV1と第2バルブV2とを同時に閉鎖し、その後に計測した第1圧力値P1及び第1温度値T1、第1バルブV1と第2バルブV2とを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第2バルブV2を閉鎖し、その後、所定時間Δtが経過後、第1バルブV1を閉鎖した後に計測した第2圧力値P2及び第2温度値T2、並びに第2圧力値P2に応じた第1バルブV1から第2バルブV2までの容積値Vとに基づいて流量を演算する演算部33とを備えている。なお、圧力センサPa及び圧力センサPbは、一方が高圧用、他方が低圧用として機能する他、同レンジの圧力計を取り付け、ダブルチェック用に使用するように構成しても構わない。また、圧力センサの数は2基以上、または1基であっても構わない。
【0020】
なお、本出願人による国際公開第2018/147354号には、上記のように第1バルブV1と第2バルブV2とを同時に閉鎖した後の第1圧力値P1と、第2バルブV2を閉鎖した後に所定時間Δt経過後に第1バルブを閉鎖した後の第2圧力値P2とに基づいて、流量を演算する方法が開示されている。この方法によれば、バルブを同時閉鎖したときの封止時におけるガスの物質量(モル数)を第1圧力値P1から求めることができ、これを従来のビルドアップ法における流れ込んだガスの物質量から差し引くことによって、計測流量のライン依存性の低減を図ることができる。
【0021】
流量制御器10の上流側にはガス供給源4が接続されている。図1に示すように、本実施形態の流量制御システム1は、複数のガス供給源4からのガスを、それぞれのガス供給源4に対して設けられた流量制御器10を介して制御された流量で半導体製造装置等のプロセスチャンバ5に供給するように構成されている。それぞれの流量制御器10が制御する流体の流量は同一流量であっても構わないが、本実施形態ではそれぞれの流量制御器10が、例えば、1sccm~2000sccmの範囲又はそれ以上の範囲の流量を制御するように構成する。
【0022】
本出願人が以前に採用していた態様におけるビルドアップ法での計算式である、Q=22.4×((P2-P1)/(760×R・Δt))×V/T(以下、ビルドアップ一般式という)においては、容積Vは一定で計算するようにしている。しかし、図4のグラフのように、ビルドアップ圧力となるP2(グラフにおける封止圧力)の値が、例えば、100Torrから4Torrに変わると、ビルドアップ容積によって異なるものの、低圧用高圧用2基の圧力計のダイヤフラムの変形による容積変化の影響は計算式において無視できない影響となる。なお、上記のビルドアップ一般式において、P2は、上述の第2圧力値P2であり、P1は上述の第1圧力値P1であり、Rは気体定数であり、Δtはビルドアップ工程において第2バルブV2を閉鎖して圧力上昇が開始したときから第1バルブV1を閉鎖するまでの時間である。また、上記式は、T1=T2=Tと仮定したときの一般式である。
【0023】
再び図1を参照して、流量制御システム1は、複数のガス供給源4が接続可能となっているガス供給ラインL1と、ガス供給ラインL1に介在する流量制御器10と、各流量制御器10の下流側に設置された第1バルブV1と、ガス供給ラインL1の下流側の共通ガス供給ラインL2とを備えている。図1に示す本実施形態の流量制御システム1に用いられる流量測定装置2は、プロセスチャンバ5へと通じる共通ガス供給ラインL2からは分岐して配置されているが、ガス供給源4からプロセスチャンバ5に通じるガス流路の途中に介在するように配置(図3(a)参照)しても構わない。そして、図1に示す流量制御システム1においてプロセスチャンバ5に流体を供給するときは、流量測定装置2に分岐する流路に設けられた開閉弁V4を閉鎖、プロセスチャンバ5に通じる流路に設けられた開閉弁V5を開放し、対象となる何れか1つの第1バルブV1を開放する。ただし、図1に示すように流量測定装置2が温度センサT及び圧力センサPの上流側に第3バルブV3を有している場合、第3バルブV3を開閉弁V4の代わりに用いて、開閉弁V4を省略することもできる。なお、プロセスチャンバ5に流体を供給するとき、プロセスチャンバ5に接続された真空ポンプ6を用いてチャンバ内および第1バルブV1の下流側の流路内を減圧することができる。
【0024】
流量制御器10は、特に限定するものではないが、本実施形態においては、図2に示す周知の圧力式流量制御装置を使用する。この圧力式流量制御装置(流量制御器10)は、微細開口(オリフィス)を有する絞り部11(例えばオリフィスプレート)と、絞り部11の上流側に設けられたコントロールバルブ14と、絞り部11とコントロールバルブ14との間に設けられた圧力センサ12及び温度センサ13とを備えている。絞り部11としては、オリフィス部材の他に臨界ノズルまたは音速ノズルを用いることもできる。オリフィスまたはノズルの口径は、例えば10μm~500μmに設定される。コントロールバルブ14は、バルブ14a及びバルブ14aの駆動部14b(例えばピエゾアクチュエータ)とから構成されている。
【0025】
圧力センサ12及び温度センサ13は、ADコンバータを介して制御回路15に接続されている。制御回路15は、コントロールバルブ14の駆動部14bにも接続されており、圧力センサ12及び温度センサ13の出力などに基づいて制御信号を生成し、この制御信号によってコントロールバルブ14の動作を制御する。本実施形態では、制御回路15は、1つの圧力式流量制御装置に設けられているが、他の態様において、複数の圧力式流量制御装置に対して共通の制御回路15を外部に設けるように構成しても構わない。
【0026】
圧力式流量制御装置では、臨界膨張条件PU/PD≧約2(ただし、PU:絞り部上流側のガス圧力(上流圧力)、PD:絞り部下流側のガス圧力(下流圧力)であり、約2は窒素ガスの場合)を満たすとき、絞り部11を通過するガスの流速は音速に固定され、流量は下流圧力PDによらず上流圧力PUによって決まるという原理を利用して流量制御が行われる。臨界膨張条件を満たすとき、絞り部下流側の流量Qは、Q=K1・PU(K1は流体の種類と流体温度に依存する定数)によって与えられ、流量Qは上流圧力PUに比例する。また、下流圧力センサを備える場合、上流圧力PUと下流圧力PDとの差が小さく、臨界膨張条件を満足しない場合であっても流量を算出することができ、各圧力センサによって測定された上流圧力PUおよび下流圧力PDに基づいて、所定の計算式Q=K2・PD m(PU-PDn(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、m、nは実際の流量を元に導出される指数)から流量Qを算出することができる。
【0027】
流量制御を行うために、設定流量が制御回路15に入力され、制御回路15は、圧力センサ12の出力(上流圧力PU)などに基づいて、上記のQ=K1・PU又はQ=K2・PD m(PU-PDnから流量を演算により求め、この流量が入力された設定流量に近づくようにコントロールバルブ14をフィードバック制御する。演算により求められた流量は、流量出力値として外部のモニタに表示するようにしてもよい。
【0028】
再び図1を参照して、本実施形態の流量制御システム1では、流量測定または流量制御器10の校正を行うとき、開閉弁V4を開放、開閉弁V5を閉鎖し、対象となる何れか1つの第1バルブV1を開放する。これによって、第1バルブV1と第2バルブV2との間の流路(図1において太線で示す部分)を基準容量(ビルドアップ容量)として用いて、ビルドアップ法によって流量測定を行う。そして、ビルドアップ法による流量測定結果に基づいて流量制御器10を校正するようにしている。なお、本実施形態では、流量測定装置2に設けられた第3バルブV3(圧力センサ上流側のバルブ)は、少なくともビルドアップ法による流量測定中は、開放状態に維持される。
【0029】
上記の第1バルブV1、第2バルブV2、第3バルブV3としては、開閉弁(遮断弁)が好適に用いられるが、開度調整可能な弁を用いてもよい。第1バルブV1、第2バルブV2、第3バルブV3、開閉弁V4、開閉弁V5としては、例えば、AOV(Air Operated Valve)などの流体動作弁や、電磁弁または電動弁などの電気的動作弁を用いることができる。第1バルブV1は、流量制御器10に内蔵された開閉弁であってもよい。
【0030】
流量制御器10は、流量制御システム1に組み込んだ後に、流量制御特性が変化したり、また、長年の使用によって絞り部の形状が変化して上流圧力と流量との関係性が変化する場合がある。これに対して、本実施形態の流量制御システム1では、流量測定装置2を用いてビルドアップ法により流量制御システム1に組み込んだ後にも任意のタイミングで流量を精度よく測定できるので、流量制御器10の精度を保証することができる。
【0031】
本実施形態の流量制御システム1による流量測定方法を詳細に説明する。上述したように、流量制御システム1は、流量制御器10の下流側に設けられた第1バルブV1と、この第1バルブV1の下流側に設けられた、圧力センサP、温度センサT及び圧力センサPと温度センサTの下流側に設けられた第2バルブV2を有する流量測定装置2と、第1バルブV1及び第2バルブV2の開閉を制御する制御部3とを含んでいる。そして、第1ステップとして、第1バルブV1と第2バルブV2とを開放してガスを流し、ガスが流れている状態で第1バルブV1及び第2バルブV2を時刻t1のタイミングで同時に閉鎖し、その後圧力及び温度を測定(圧力値P1、温度値T1)する。次に、第2ステップとして、時刻t2のタイミングで第1バルブV1と第2バルブV2とを開放してガスを流し、ガスが流れている状態から時刻t3のタイミングで第2バルブV2を閉鎖し、その後、所定時間Δtが経過後した時刻t4のタイミングで第1バルブV1を閉鎖し、その後の圧力及び温度を測定(圧力値P2、温度値T2)する。そして、第3ステップとして、第1ステップで測定した圧力値P1、温度値T1、第2ステップで測定した圧力値P2、温度値T2並びに第2ステップで測定した圧力値P2に応じて決定されるビルドアップ容積Vとに基づいて流量を演算するようにしている。つまり、制御部3の演算部33では、図3(b)に示すタイムチャートの封止1及び封止2の状態で計測される圧力値P1、P2、温度値T1、T2と、記憶部32に記憶されている圧力値P2に応じた第1バルブV1から第2バルブV2までの容積Vの値とに基づいて演算部33が流量Qを演算する。演算した流量Qは表示装置34に表示される。流量Qは、例えば、Q=22.4×V×(P2/T2-P1/T1)/(760×R・Δt)によって求められ、ここで、Vは圧力値P2に応じて決定されるビルドアップ容量、Rは気体定数、Δtは第2ステップにおいて第2バルブV2を閉じてから第1バルブV1を閉じるまでの所定時間(ビルドアップ時間)である。なお、上記式は、圧力値P1、P2が単位Torrで与えられたときの式に対応する。
【0032】
記憶部32に記憶される第1バルブV1から第2バルブV2までの容積の値は、ガス供給ラインL1によって異なるが、例えば、図4に示すように容積内の圧力に対して強い線形関係を有している。記憶部32にはこの関係式(典型的には近似的な一次関数の式)が記憶され、計測した圧力値P2に応じて一意に容積の値が決定する。また、本発明者らの実験によると、この値は温度によっても多少の変化があることが分かった。圧力変化に比べて小さい影響ではあるが、より精度の高い流量計算が必要な場合には、圧力値P2のみならず温度値T2を加味した容積値Vを使用することができる。この場合、計測した温度値T2と最も近い温度のグラフを利用する他、例えば、基準温度(例えば、30℃)における容積値V(圧力値P2から求めた値)に対し、予め記憶部32に記憶させておいた基準温度と計測温度との差に基づく修正係数を用いて容積値Vを修正するように構成することもできる。また、上記には圧力値P2と容積値Vとの関係式を記憶しておく態様を説明したが、これに限られず、複数の圧力値P2と対応する容積値Vとの関係を記載したテーブルを記憶部32に記憶しておき、このテーブルを用いて容積値Vを決定するようにしてもよい。
【0033】
容積値Vがビルドアップ圧力(圧力値P2)に応じて異なる理由は、上述したように、ビルドアップ圧力に応じた大きさの加圧力によって圧力センサ内のダイヤフラムが変形したり、歪みゲージ方式の圧力センサでは内部たわみが発生したりすることで、流路に接続されている圧力センサの内部での空間容積が変動するからであると考えられる。この場合、上記のビルドアップ圧力と容積値Vとの関係式は、圧力センサの構成、サイズ、設置数などによって異なるものとなり得る。このため、実際の態様では、流量制御システムに備えられた圧力センサの態様に従って適切な関係式等を選択し、そのシステムにおける容積値Vを適切に求めることが好ましい。なお、本実施形態で用いられる圧力センサとしては、例えば、圧力検知面を形成するダイヤフラムを有しシリコン単結晶センサチップを内蔵するタイプのものなどが挙げられる。
【0034】
本発明の流量測定装置2を使った流量測定は、機器据え付けの際に行う他、定期検査、使用時間に応じた検査、その他、使用流体を変更するの際等に種々のタイミングで行われ、流量制御器10の精度を維持することができる。
【0035】
また、上記には、第1バルブV1と第2バルブV2とを同時に閉じた後の圧力値P1および温度値T1を測定する工程(第1ステップ)の後に、ビルドアップ後のガスの圧力値P2および温度値T2を測定する工程(第2ステップ)の行う態様を説明したが、これに限られない。第1ステップと第2ステップとを行う順番は逆であってもよい。ただし、第1ステップと第2ステップとで、開始時の設定流量に対応する圧力は、同じであることが好適である。順序を問わず第1ステップと第2ステップとを行った後であれば、圧力値P1、P2と、温度値T1、T2と、さらに、圧力値P2に基づいて決定される容積値Vとを用いて流量を算出する工程(第3ステップ)を行うことができる。
【0036】
<実施形態2>
本実施形態2は、本発明に係る流量制御システムであり、機器の構成は実施形態1と同様であり詳細な説明を省略する。本実施形態2においても、図1に示した流量制御システム1において流量計測を行う時は、開閉弁V4を開放し、開閉弁V5を閉鎖する。
【0037】
実施形態2の流量制御システムでは、図3(b)に示すタイムチャートの封止1~封止4までの封止工程を実施し、封止3及び封止4の状態で計測される圧力値P3、P4、温度値T3、T4を計測する。具体的には、第2圧力値P2及び第2温度値T2を計測後、第1バルブV1を閉鎖した状態で第2バルブV2を前記所定時間よりも短時間開放すると共に、第2バルブV2の開放と同時又は開放の直前に第3バルブV3を閉鎖して計測した第3圧力値P3及び第3温度値T3、その後、第3バルブV3を開放して計測した第4圧力値P4及び第4温度値T4を加味して流量を演算するようにしている。この封止3及び封止4での圧力及び温度を測定し、演算することで分圧法によるモル数補正を行うことができ、第1バルブV1から第3バルブV3までの配管温度等の影響を抑えることができる。なお、第3バルブV3は、図1および図3(a)に示すように、第1バルブV1と第2バルブV2との間の流路に介在するバルブであり、典型的には、流量測定装置2に内蔵されて圧力センサPおよび温度センサTの上流側に設けられるバルブである。第2バルブV2と第3バルブとの両方が流量測定装置2に内蔵されている場合、第2バルブV2と第3バルブとの間の流路容積を正確に求めやすいという利点が得られる。
【0038】
本実施形態の流量制御システム1においても、流量制御器10から送りだす流量の違いによって、ビルドアップ圧力となる封止2の状態における圧力値P2を変更することがある。この場合にも、容積値Vと圧力値P2との関係、例えば図4に示す線形関係で変動する値(関係式)を記憶部32に予め記録しておくことにより、圧力値P2に応じた適切な容積値Vを得ることができる。このため、ビルドアップ圧力となる圧力値P2を変動させても演算結果に影響が出ることはない。
【0039】
配管温度等の影響を抑えるために行う、封止3、封止4を行うことによる計算式を、第1バルブV1と第3バルブV3とを結ぶ配管内の容積Vaとし、第2バルブV2と第3バルブV3とを結ぶ配管内の容積Vbとして(図3(a)参照)、以下に説明する。
【0040】
封止2の後、第2バルブV2を短時間だけ開閉するとともに第3バルブV3を閉鎖することによって第2バルブV2と第3バルブV3との間の圧力はP2からP3に低下する。ただし、封止3において圧力値P2が圧力値P3となるのは第2バルブV2と第3バルブV3とを結ぶ配管内だけであって、第1バルブV1と第3バルブV3とを結ぶ配管内の圧力は圧力値P2のまま維持される。そして、封止4によって、第3バルブV3を開放することで、第1バルブV1と第2バルブV2とを結ぶ配管内の圧力が均一に圧力値P4となる。なお、封止3と封止4とにおいて、第1バルブV1と第2バルブV2とはいずれも閉鎖状態に維持されているので、第1バルブV1と第2バルブV2との間のガスの物質量は一定に維持されている。
【0041】
この関係をボイルシャルルの法則で表わせば、(P2・Va)/Ta+(P3・Vb)/T3=(P4・Va)/Ta+(P4・Vb)/T4で表わされる。Taは第1バルブV1と第3バルブV3とを結ぶ配管内の温度の値である。また、T3≒T4であり、次式でTb≒T3≒T4として計算する。
【0042】
ビルドアップ一般式と上式から、測定が困難であるVaおよびTaを消去するようにすると、Q=22.4×((P2-P1)/(760×R×Δt))×(Vb/Tb×(P2-P3)/(P2-P4)+Vst/Tst)となる。Vst及びTstは、流量制御器10から第1バルブV1の弁体までの容積及び温度であり、Tstは回路上温度計を備えないためTbで代用される。この計算式を用いて計算する時も従来ではVb及びVstとして一定の値を利用していたが、本実施形態2の流量制御システム1及び流量計測方法においては、ビルドアップ圧力となるP2に応じたVbの値を利用することで正確な流量を計算するようにしている。実施形態1と比べ、本実施形態においては計算式に関係する容積の値はVb、つまり第2バルブV2と第3バルブV3の間の容積だけであり、この容積は、流量測定装置2の内部配管内の容積であり本実施形態においては少量である。これに対し、本実施形態で使用する2つの圧力センサPa、Pbのダイヤフラム変形による容積変化の比率は、図4に示すように最大0.8%となり、大きな影響を及ぼすもので、実施形態1よりも計算上生じる誤差影響の修正率が大きいものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明の流量制御システム及び流量測定方法は、測定する流体の流量を変更する際にビルドアップ圧力を変更しても正確に流量を計算することができるから、圧力式流量制御装置の他、熱式質量流量制御装置の流量校正の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 流量制御システム
10 流量制御器
11 絞り部
12 圧力センサ
13 温度センサ
14 コントロール弁
15 制御回路
2 流量測定装置
3 制御部
31 記録部
32 記憶部
33 演算部
34 表示部
4 ガス供給源
5 チャンバ
6 真空ポンプ
P 圧センサ
T 温度センサ
V1 第1バルブ
V2 第2バルブ
P1 第1圧力値
T1 第1温度値
P2 第2圧力値
T2 第2温度値
Δt 所定時間
V 容積値

図1
図2
図3
図4