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特許7244945牛樟芝の酒酔い解消及び/又はアルコール代謝増加に用いる用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】牛樟芝の酒酔い解消及び/又はアルコール代謝増加に用いる用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20230315BHJP
   A61P 39/00 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230315BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61K36/07
A61P39/00
A61K9/19
A61K47/02
A61K47/26
A61P43/00 111
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021039102
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2021147394
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】109108997
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520274714
【氏名又は名称】緑茵生技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Greenyn Biotechnology Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】5F., No.43, Keya Rd., Daya Dist., Taichung City
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】徐榜奎
(72)【発明者】
【氏名】呉嘉峰
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103893221(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0281573(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257768(US,A1)
【文献】特開2008-142588(JP,A)
【文献】特開2016-210770(JP,A)
【文献】MODERN FOOD SCIENCE & TECHNOLOGY 2018,34(7):56-60. DOI:10.13982/j.mfst.1673-9078.2018.7.009
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒酔い解消用牛樟芝水溶性粉末の製造方法であって、
a.牛樟芝菌糸体粉を準備する工程と、
b.前記牛樟芝菌糸体粉を超臨界二酸化炭素により抽出して濃縮したペースト状牛樟芝菌糸体超臨界抽出物と油脂を混合して牛樟芝油相溶液にする工程と、
c.水と溶質を含む水相溶液を調製し、前記溶質は水溶性塩、糖及び糖エステルで組成されたグループから選択される工程と、
d.前記牛樟芝油相溶液と前記水相溶液のマイクロエマルション化工程を行い、牛樟芝マイクロエマルション化生成物を得る工程と、
e.前記牛樟芝マイクロエマルション化生成物を凍結乾燥し、牛樟芝水溶性粉末を得る工程と、
を含む製造方法
【請求項2】
前記牛樟芝水溶性粉末は血液中のアルコール又は/及びアセトアルデヒド含有量を低減させるのに用いられる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
急性アルコール中毒を治療するための牛樟芝水溶性粉末の製造方法であって、
a.牛樟芝菌糸体粉を準備する工程と、
b.前記牛樟芝菌糸体粉を超臨界二酸化炭素により抽出して濃縮したペースト状牛樟芝菌糸体超臨界抽出物と油脂を混合して牛樟芝油相溶液にする工程と、
c.水と溶質を含む水相溶液を調製し、前記溶質は水溶性塩、糖及び糖エステルで組成されたグループから選択される工程と、
d.前記牛樟芝油相溶液と前記水相溶液のマイクロエマルション化工程を行い、牛樟芝マイクロエマルション化生成物を得る工程と、
e.前記牛樟芝マイクロエマルション化生成物を凍結乾燥し、牛樟芝水溶性粉末を得る工程
を含む製造方法。
【請求項4】
前記牛樟芝水溶性粉末は血液中のアルコール又は/及びアセトアルデヒド含有量を低減させるのに用いられる、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
アルコール代謝を促進するための牛樟芝水溶性粉末の製造方法であって、
a.牛樟芝菌糸体粉を準備する工程と、
b.前記牛樟芝菌糸体粉を超臨界二酸化炭素により抽出して濃縮したペースト状牛樟芝菌糸体超臨界抽出物と油脂を混合して牛樟芝油相溶液にする工程と、
c.水と溶質を含む水相溶液を調製し、前記溶質は水溶性塩、糖及び糖エステルで組成されたグループから選択される工程と、
d.前記牛樟芝油相溶液と前記水相溶液のマイクロエマルション化工程を行い、牛樟芝マイクロエマルション化生成物を得る工程と、
e.前記牛樟芝マイクロエマルション化生成物を凍結乾燥し、牛樟芝水溶性粉末を得る工程と、
を含む製造方法。
【請求項6】
前記牛樟芝水溶性粉末はアルコールデヒドロゲナーゼ及び/又はアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を向上させるのに用いられる、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
SOD酵素活性を促進するための牛樟芝水溶性粉末の製造方法であって
a.牛樟芝菌糸体粉を準備する工程と、
b.前記牛樟芝菌糸体粉を超臨界二酸化炭素により抽出して濃縮したペースト状牛樟芝菌糸体超臨界抽出物と油脂を混合して牛樟芝油相溶液にする工程と、
c.水と溶質を含む水相溶液を調製し、前記溶質は水溶性塩、糖及び糖エステルで組成されたグループから選択される工程と、
d.前記牛樟芝油相溶液と前記水相溶液のマイクロエマルション化工程を行い、牛樟芝マイクロエマルション化生成物を得る工程と、
e.前記牛樟芝マイクロエマルション化生成物を凍結乾燥し、牛樟芝水溶性粉末を得る工程と、
を含む製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は牛樟芝の第2の用途に関し、特に牛樟芝の酒酔い解消及び/又はアルコール代謝増加に用いる用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
牛樟芝(Taiwanofungus camphoratus)は、通称ベニクスノキタケと呼ばれ、別名牛樟菰、樟菰、窟内菰、神明菰と呼ばれる薬用真菌で、ツガサルノコシカケ科(Fomitopsidaceae)シカタケ属(Antrodia)の真菌であり、台湾だけに自生している。牛樟芝の薬用生理活性は非常に広範且つ顕著であり、現在少なくとも78種類が分離・同定されており、そのうちトリテルペン類は39種存在し、31種の化学構造が既に確定されている。牛樟芝が含有する化合物は多糖体(polysaccharides)、トリテルペン類及びステロール類(triterpenes and sterols)、ベンゼン類(benzenoids)、ベンゾキノン誘導体(benzoquinone derivates)、マレイン酸(Maleic acid)及びコハク酸(Succinic acid)の誘導体などにおおよそ分類され得る。牛樟芝は抗菌、抗ウイルス、抗腫瘍、人体の免疫力向上など、個体の健康促進に様々な効果を有することが研究によって示されている。
【0003】
飲酒は現代人にとってストレス解消の方法であるだけでなく、社交生活において一種の文化ともなっている。一般的に、アルコールを適量摂取すると精神をリラックスさせることができると言われているが、アルコールを過剰に摂取した場合には、目眩、嘔吐、認知機能低下、吐き気、行動能力低下などの不快感が生じるだけでなく、次の日の生活に支障をきたすこともあり、長期にわたると健康に悪影響を及ぼす可能性がある。現在市場では、果糖を摂取することでアルコール代謝を増加させるものなど、酒酔い解消効果を訴求する製品が多く存在するが、アルコール代謝率の向上に果糖を用いると尿酸及び乳酸含有量を上昇させてしまう上に、メタボリック症候群の罹患リスクを高めてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、血液中のアルコール及び/又はアセトアルデヒド含有量を低下させる機能を有し、且つアルコール代謝を促進し得ると同時に、酒酔いの予防的及び治療的解消効果を達成し得る、牛樟芝の酒酔い解消及び/又はアルコール代謝増加に用いる用途を提供することを主な目的としている。
【0005】
本発明の別の目的は、肝毒性がなく、アルコールデヒドロゲナーゼ、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ及びSOD酵素の機能を向上させることでアルコール代謝の増加及び急性アルコール中毒の治療効果を達成し得る、牛樟芝の酒酔い解消及び/又はアルコール代謝増加に用いる用途を提供することである。
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明が開示する牛樟芝の酒酔い解消及び/又はアルコール代謝増加に用いる用途は、即ち、本発明が開示する牛樟芝粉末を個体に有効量投与することであり、個体体内のアルコール及び/又はアセトアルデヒドの代謝を加速させて、血液中のアルコール及び/又はアセトアルデヒド含有量を低下せしめるものである。また、個体が酩酊反応を生じる時間を短縮することで、酒酔い解消の効果を達成する。
【0007】
そのうち、牛樟芝粉末は牛樟芝菌糸体から調製してなるものであり、例えば、牛樟芝粉末は牛樟芝菌糸体の破砕・粉砕工程を行って製造したものである。又は、牛樟芝粉末は下記工程に従って製造したものである。
【0008】
a.牛樟芝菌糸体粉を準備する。
【0009】
b.牛樟芝菌糸体粉と油脂を所定の重量比で混合して牛樟芝油相溶液にする。
【0010】
c.水と溶質を含む水相溶液を調製し、溶質は水溶性塩、糖、糖エステル及びコロイドで組成されたグループから選択され、例えば水相溶液は水、ショ糖脂肪酸エステル、セロデキストリンで組成される。
【0011】
d.牛樟芝油相溶液と水相溶液のマイクロエマルション化工程を行い、牛樟芝マイクロエマルション化生成物を得る。
【0012】
e.牛樟芝マイクロエマルション化生成物を凍結乾燥し、牛樟芝水溶性粉末を得る。
【0013】
さらに、本発明が開示する酒酔い解消用組成物は、酒酔いの予防的及び治療的な解消という2重の効果を同時に有しており、即ち、個体が飲酒前に酒酔い解消用組成物を服用した場合、酒酔い解消用組成物は酒酔い解消の予防的効果を有し、個体が飲酒後に酒酔い解消用組成物を服用した場合、酒酔い解消用組成物は酒酔い解消の治療的効果を発揮する。
【0014】
本発明の別の実施例中、牛樟芝粉末は、急性アルコール中毒を治療する医薬組成物の調製に用いることができ、即ち、個体がアルコールを過剰摂取して急性アルコール中毒の症状がでた場合に、本発明が開示する牛樟芝粉末を有効量投与することで、個体体内のアルコールを短時間のうちに代謝することができる。
【0015】
本発明のさらに別の実施例中、牛樟芝粉末はアルコール代謝促進剤の調製に用いることができ、それは体内におけるアルコールデヒドロゲナーゼ及び/又はアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を向上させることによって体内のアルコール代謝を促進し、蓄積を防止することができるというものである。
【0016】
本発明のさらに別の実施例中、牛樟芝粉末はSOD酵素活性促進剤の調製に用いることができ、個体が酩酊後に牛樟芝粉末を有効量服用すると、体内のSOD酵素活性が高められ、アルコール分解機能の促進が達成できるだけでなく、同時に酸化ストレスを低減して細胞を保護する効果も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】酒酔い解消試験(1)における各マウス群の平均酩酊時間である。
図2】酒酔い解消試験(2)における各マウス群の平均酩酊時間である。
図3】酒酔い解消試験(2)における各マウス群の血液中アルコール含有量である。
図4】酒酔い解消試験(2)における各マウス群の血液中アセトアルデヒド含有量である。
図5】アルコール代謝試験における各マウス群の肝臓組織切片の染色図である。
図6】異なる処理を経たマウスの肝臓内におけるSOD酵素活性の検出結果である。
図7】各被験者群の呼気中アルコール濃度の検出結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の技術的特徴及び効果について説明するため、幾つかの実施例を図表とともに挙げてさらに説明する。
【0019】
以下の実施例中、マウスの酩酊率は、マウスの正向反射が消失したか否かを基準とした。テスト工程は以下の通りである。マウスに酒を流し込んだ後、背位にしてマウスケージに置き、マウスが背位の姿勢を30秒以上保持した場合に、正向反射消失、即ち酩酊と判断した。
【実施例1】
【0020】
実施例1:試料調製
【0021】
試料1:牛樟芝水溶性粉末。牛樟芝水溶性粉末は、牛樟芝菌糸体粉を超臨界二酸化炭素により抽出した後、乳化、乾燥して得た粉状抽出物であり、且つそのうちに野生牛樟芝と同じ含有量のトリテルペン化合物を含むことが検査で確認されたものである。
【0022】
例を挙げると、牛樟芝菌糸体粉を超臨界二酸化炭素により抽出した後、濃縮し、ペースト状牛樟芝菌糸体超臨界抽出物を得て、ペースト状牛樟芝菌糸体超臨界抽出物と油脂類物質を約1:6~7の重量比、70℃の温度下で混合し、牛樟芝油相溶液を得た。水相溶液を調製した。それには水、セロデキストリン、ショ糖脂肪酸エステルが含まれており、約357~358:72:1の重量比で混合した。牛樟芝油相溶液と水相溶液のマイクロエマルション化工程を行った後、凍結乾燥、篩過を行い、牛樟芝水溶性粉末を得た。
【0023】
試料2:市販のケンポナシ種子機能性飲料。ケンポナシ種子抽出濃縮液を1.3%含む。
【0024】
試料3:市販の特許ケンポナシ種子抽出物(韓国、Lifetree Biotech Co.,Ltd.)。
【実施例2】
【0025】
実施例2:予備試験
【0026】
アルコール溶液(58度の金門高粱酒)をそれぞれ0.3mL/20g、0.35mL/20g、0.4mL/20gの用量で3つのマウス群に胃内投与し、各群8匹とし、各マウス群に正向反射消失(lost of righting reflex,LOR)を生じさせ、且つマウスを死亡させないために必要な酒量を観察するのに用いた。
【0027】
その結果、0.4mL/20gのアルコール溶液を投与した場合にはマウスに少数の死亡がみられた。0.35mL/20gのアルコール溶液を投与した場合にはマウスに死亡がみられず、酩酊率は100%であり、平均酩酊時間は794.0±38.02分間であった。0.3mL/20gのアルコール溶液を投与した場合にはマウスに死亡がみられず、酩酊率は25%であった。よって、後続の酒酔い解消試験ではいずれも0.35mL/20gのアルコール溶液をマウスに胃内投与した。
【実施例3】
【0028】
実施例3:酒酔い解消試験(1)
【0029】
マウスを無作為に群分けした。
【0030】
第1群はブランク群とし、等容量の生理食塩水を流し込んだ。
【0031】
第2群は牛樟芝水溶性粉末低用量群とし、投与用量は16.3mg/kgとした。
【0032】
第3群は牛樟芝水溶性粉末中用量群とし、投与用量は32.8mg/kgとした。
【0033】
第4群は牛樟芝水溶性粉末高用量群とし、投与用量は49.2mg/kgとした。
【0034】
第5群はケンポナシ種子機能性飲料群とし、投与用量は3.38g/kgとした。
【0035】
第6群は特許ケンポナシ種子抽出物群とし、投与用量は504.3mg/kgとした。
【0036】
第7群は混合群とし、ケンポナシ種子機能性飲料群(用量3.38g/kg)と牛樟芝水溶性粉末(用量16.3mg/kg)を同時に投与した。
【0037】
各マウス群を12時間絶食してから、上述の各群の条件に従ってそれぞれに処理を行い、30分後、第1群以外の各マウス群に58度の金門高粱酒を0.35mL/20g胃内投与して、各マウス群の酩酊時間(即ち覚醒状態から正向反射消失までの時間)を観察して記録し、24時間以内の酩酊率を計算して得た。そのうち、マウスが酩酊したか否かは正向反射が消失したか否かを基準とした。
【0038】
その結果、各マウス群の酩酊率は100%であり、マウスの死亡はみられなかった。図1の結果から、第1群マウスの平均酩酊時間は794.0±38.02分間であり、第2群~第4群マウスの平均酩酊時間はそれぞれ562.5±38.03分間、517±41.16分間及び437.5±49.27分間であり、第5群マウスの平均酩酊時間は546.38±53.42分間であり、第6群マウスの平均酩酊時間は382.5±29.58分間であり、第7群マウスの平均酩酊時間は338.37±64.18分間であったことが分かる。
【0039】
図1の結果は、特許ケンポナシ種子抽出物を投与した場合の酩酊時間が比較的短いことを示しているが、その投与用量は504.3mg/dayであり、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末は低用量の16.3mg/dayで既に酒酔い解消効果が生じている(第1群との比較)。また、第6群と第2群の投与用量を比べると、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末の投与用量は特許ケンポナシ種子抽出物の投与用量の30分の1だけで酒酔い解消効果を達成できている。即ち、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末は、従来技術より明らかに優れた酒酔い解消効果を達成することができ、人体に使用する場合、人とマウスの投与用量の換算基準に従って計算すると、60kgの成人に対して特許ケンポナシ種子抽出物を2460mg/day投与しなければ酒酔い解消の予防的効果を達成できないのに対し、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末は79.5mg/day投与するだけで酒酔い解消の予防的効果を達成できるということである。上述の結果から、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末の投与により酒酔い解消の予防的効果を効果的に達成し得ること、また酒酔い解消の予防的効果は用量が増加するにつれて向上することが分かる。また、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末と市販のケンポナシ種子機能性飲料を混合するなら、酒酔い解消の予防的効果を大幅に向上させ得ることが分かる。
【実施例4】
【0040】
実施例4:酒酔い解消試験(2)
【0041】
実施例3に記載の各マウス群を12時間絶食し、いずれにも58度の金門高粱酒を0.35mL/20g胃内投与して、30分後、第1群に等容量の生理食塩水を流し込み、第2群~第7群マウスには一括投与方式を採用した。その後、各マウス群の酔いから覚める時間(即ち正向反射消失から覚醒までの時間)を観察し、且つアルコールを与えてから0、60、120、240、360分後に採血し、血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量を測定した。結果は図2図4、表1及び表2に示す通りである。
【0042】
本実験では、先にアルコール溶液(0.35mL/20g)を投与してから医薬品を投与しており、各群の酩酊率はいずれも100%であり、マウスの死亡はみられなかった。図2の結果から、第1群マウスの平均酩酊時間は740.5±30.59分間であり、第2群~第4群マウスの平均酩酊時間はそれぞれ541.37±40.63分間、494.25±46.29分間及び438±18.96分間であり、第5群マウスの平均酩酊時間は495.38±56.37分間であり、第6群マウスの平均酩酊時間は366.5±44.78分間であり、第7群の平均酩酊時間は322.63±53.51分間であったことが分かる。この結果は、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末は酒酔い解消の治療的効果を確かに有していること、また上述の実施例で説明した通り、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末は低用量の条件下で酒酔い解消効果を達成し得ることを示している。
【0043】
図2図4、表1、表2の結果から、アルコール溶液のみを内服したアルコール群ラットの120分時点におけるアルコール及びアセトアルデヒド含有量はそれぞれ1.48±0.02mg/dL及び8.09±0.98mU/mLであり、大幅な上昇現象がみてとれる。第2群~第4群の結果からは、アルコール内服後に本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末を服用した第2群~第4群をそれぞれ120分時点で測定して得られた血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量はみなそれぞれ下降傾向にあることが分かる。具体的には、第2群マウスの120分時点で測定して得られた血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量はそれぞれ1.07±0.05mg/dL及び6.59±0.57mU/mLであった。第3群マウスの120分時点で測定して得られた血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量はそれぞれ1.03±0.03mg/dL及び6.24±1.02mU/mLであった。第4群マウスの120分時点で測定して得られた血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量はそれぞれ0.80±0.03mg/dL及び5.73±1.01mU/mLであった。アルコールを与えてから120分後における第5群マウスを測定して得られた血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量はそれぞれ1.19±0.03mg/dL及び6.91±0.89mU/mLであり、第6群マウスを測定して得られた血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量はそれぞれ0.70±0.04mg/dL及び5.34±1.49mU/mLであり、第7群マウスを測定して得られた血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量はそれぞれ0.62±0.04mg/dL及び4.64±0.84mU/mLであった。
【0044】
上述の結果から、本実施例中のアルコールを与えた後のマウスは確かに急性アルコール中毒マウスであり、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末は酒酔い解消効率を効果的に高め、マウスが酔いから覚める時間を短縮させるとともに、投与用量を増やすにつれて酒酔い解消に要する時間を短縮し得ることが分かる。血液検査の結果は、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末が血液中のアルコール及びアセトアルデヒドを代謝させ、血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量を低下させ得ることをよりはっきりと証明している。
【0045】
【0046】
【実施例5】
【0047】
実施例5:酒酔い解消試験(3)
【0048】
本実施例の試験方法は実施例3と概ね同じであり、異なる点として、マウスを無作為に群分けして4つの群とし、各群のマウスは10匹とした。
【0049】
第1群は正常群とし、等容量の生理食塩水を流し込んだ。
【0050】
第2群は牛樟芝菌糸体粉末低用量群とし、用量は82.5mg/kgとした。
【0051】
第3群は牛樟芝菌糸体粉末高用量群とし、用量は165mg/kgとした。
【0052】
第4群はシリマリン群とした。
【0053】
そのうち、牛樟芝菌糸体粉末は菌糸体を粉砕して得たものである。
【0054】
第1群以外の各マウス群のいずれにも58度の金門高粱酒を0.35mL/20g胃内投与して、各マウス群の酩酊時間(即ち覚醒状態から正向反射消失までの時間)を観察して記録し、24時間以内の酩酊率を計算して得た。
【0055】
結果から、各マウス群の酩酊率は100%であり、マウスの死亡はみられず、第1群マウスの平均酩酊時間は853.67±9.61分間であり、第2群及び第3群マウスの平均酩酊時間はそれぞれ638.38±37.42分間及び458.25±55.89分間であり、第4群マウスの平均酩酊時間は453.75±34.19分間であることが分かった。
【0056】
上述の結果は、本発明が開示する牛樟芝菌糸体が酒酔い解消の予防的効果を確かに有していること、また用量が2倍に達した場合、酒酔い解消の予防的効果が医薬品のシリマリンと似通っていることを示している。
【実施例6】
【0057】
実施例6:酒酔い解消試験(4)
【0058】
本実施例の試験方法は実施例4と概ね同じであり、マウスの群分けとその処理条件については実施例5に記載の通りである。先にアルコール溶液を投与してから30分後、それぞれに一括投与して、酔いから覚める時間を記録し、且つアルコールを与えてから0、60、120、240、360分後に採血し、血液中のアルコール及びアセトアルデヒド含有量を測定した。結果は表3及び表4に示す通りである。
【0059】
実験結果から、第1群マウスの平均酩酊時間は745.83±18.17分間であり、第2群及び第3群マウスの平均酩酊時間はそれぞれ547.13±32.35分間及び340.63±34.45分間であり、第4群マウスの平均酩酊時間は328.38±35.52分間であったことが分かる。
【0060】
これらから、アルコールを与えた後に本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末を投与するなら酩酊時間を低下させることができ、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末は酒酔い解消の治療的効果を確かに有していることが分かる。また、表3及び表4の結果から、血液中アルコール及びアセトアルデヒド含有量が低下していることがみてとれるが、そのうち、2倍の用量を投与した場合、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末が血液中アルコール及びアセトアルデヒドの含有量を低下させる効果は医薬品のシリマリンを投与した場合よりも優れていた。
【0061】
【0062】
実施例7:アルコール代謝試験
【0063】
マウスを無作為に群分けして4つの群とし、各群は12匹とした。
【0064】
牛樟芝低用量群:毎日1mlの水で1倍用量(82.5mg/kg)の牛樟芝菌糸体粉末を混合した。
【0065】
牛樟芝高用量群:毎日1mlの水で2倍用量(165mg/kg)の牛樟芝菌糸体粉末を混合した。
【0066】
シリマリン群:シリマリンの用量は40mg/kgとした。
【0067】
正常群及びアルコール群:それぞれ水1mlとした。
【0068】
各マウス群をそれぞれ上述の条件で4週間処理した後、正常群以外の各群それぞれに酒0.35ml/匹(人・マウスの体表面積に従って換算すると毎日10ml/kg +50%の酒量)を与え、アルコール群には酒を与えてから30分後に水0.35ml/匹を与え、牛樟芝高用量群及び牛樟芝低用量群にはそれぞれ酒を与えてから30分後に牛樟芝菌糸体粉末0.35ml/匹を与えた。表5及び図5に示す通り、試験終了後に各マウス群の肝臓状態、体重、肝指数を観察した。
【0069】
各マウス群の血清及び肝臓の生化学的値を検査した。結果は表6に示す通りである。表6の結果から、アルコール群マウスのトリグリセリド、GOT、GPTはいずれも上昇現象がみられるが、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末を投与することでトリグリセリド、GOT、GPTを低減し得るだけでなく、高用量の効果が比較的優れており、医薬品のシリマリンの効果よりも良好であることが分かる。また、アルコール群マウスのアルコールデヒドロゲナーゼ及びアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性には下降現象がみられるが、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末を投与することでアルコールデヒドロゲナーゼ及びアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を向上させることができており、その一方でシリマリンを投与してもアルコールデヒドロゲナーゼ及びアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を向上させる効果はみられなかった。
【0070】
また、表7及び表8の結果から、アルコール溶液を与えてから120分時点におけるアルコール群マウスのアルコール及びアセトアルデヒド含有量はそれぞれ1.15±0.01mg/dL及び6.80±0.37mU/mLであり、正常群マウスと比べていずれも上昇現象がみられるが、本発明が開示する牛樟芝粉末を30日間連続服用した後におけるアルコール及びアセトアルデヒド含有量にはいずれも下降現象がみられており、120分時点における牛樟芝菌糸体粉末低用量群及び牛樟芝菌糸体粉末高用量群のアルコール含有量はそれぞれ1.03±0.03及び0.81±0.04mg/dLであり、アセトアルデヒド含有量はそれぞれ4.45±0.6及び3.49±0.48mU/mLであり、360分時点における牛樟芝菌糸体粉末低用量群及び牛樟芝菌糸体粉末高用量群のアルコール含有量はそれぞれ0.58±0.03及び0.37±0.05mg/dLであり、アセトアルデヒド含有量はそれぞれ3.30±0.30及び2.30±0.83mU/mLであった。上述の結果から、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末はアルコール代謝を増強することができ、高用量におけるアルコール代謝効果が比較的優れており、シリマリンの効果よりも良好であることが示された。
【0071】
図6を参照して、SOD酵素活性においては、アルコールを与えただけのマウスの肝臓SOD酵素活性には下降現象がみられたが、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末を投与することでSOD酵素活性を向上させることができ、2倍の用量を投与した場合には、肝臓内のSOD酵素活性を34%向上させることができ、シリマリン群よりも12%高かった。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
実施例8:臨床試験
【0077】
アルコール飲料を経口摂取した被験者15名を3つに群分けし、第1群は酒酔い解消製品を何も服用せず、第2群及び第3群はそれぞれ本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末及びその水溶液を服用し、用量は400mgとした。服用してから0、15、30、60、120、180分後に各被験者群の呼気中アルコール濃度を検査した。結果は図7に示す通りである。
【0078】
図7の結果から、飲酒後に本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末を服用することでアルコール代謝及び分解が加速し、体内のアルコール濃度を低下させ得ること、また、本発明が開示する牛樟芝水溶性粉末を水に溶かしてから服用した場合、酒酔い解消効果を向上させ得ることが分かる。
【0079】
上述の実施例の結果から、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末はアルコール代謝の増強及び酒酔い解消の予防的効果を確かに有しており、肝臓内のSOD酵素活性を向上させ得ること、また、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉を超臨界抽出した後に得られる牛樟芝水溶性粉末は、同等かより優れたアルコール代謝及び酒酔い解消の予防的効果をより低用量で達成し得ることが分かる。従って、本発明が開示する牛樟芝菌糸体粉末及びその水溶性粉末は、酒酔い及びそれに関係する肝臓疾患を治療又は予防する医薬組成物の有効成分となり得ることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7