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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/13 20060101AFI20230315BHJP
   B01D 24/48 20060101ALI20230315BHJP
   B01D 29/60 20060101ALI20230315BHJP
   B01D 24/44 20060101ALI20230315BHJP
   B01D 29/94 20060101ALI20230315BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B01D29/14 A
B01D29/36 A
B01D29/42 520
B23Q11/00 U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021130531
(22)【出願日】2021-08-10
(65)【公開番号】P2023025359
(43)【公開日】2023-02-22
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521351650
【氏名又は名称】株式会社きりしま
(74)【代理人】
【識別番号】100174780
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】宮本 治郎
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-331207(JP,A)
【文献】特開2010-058083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-37/04
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形異物が混入した流体である汚濁流体を濾過するフィルタ装置であって、
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記汚濁流体を濾過するフィルタ部と、を備え、
前記ケーシングは、
前記汚濁流体が流入する流入口と、
前記フィルタ部によって濾過された前記流体を流出させる流出口と、を備え、
前記フィルタ部は、
略筒状の支持体と、
前記支持体の内部に配置され、前記汚濁流体を濾過するフィルタ体と、
下方に開口し、前記流入口から流入した前記汚濁流体をその内部に導く導入口と、を備え、
前記フィルタ体は、
前記流体を通過させるとともに前記固形異物の通過を阻害する目を有し、
開口部を有する筒状または袋状に形成され、
前記開口部が下方を向き、前記支持体の内周面を覆うように前記支持体の内部に配置され、
前記支持体は、前記フィルタ体に対向する部分に、前記流体を通過させる複数の漏出孔が均一に形成され、
前記フィルタ部は、前記流体がその内側から外側に向けて流出するのを部分的に阻害する流出阻害部を備え、
前記流出阻害部は、面状であり、前記フィルタ体の複数の目を含む所定領域に重なるように前記支持体とは別体として取り付けられ、前記所定領域の近傍の前記漏出孔からの前記流体の流出を阻害するフィルタ装置。
【請求項2】
前記流出阻害部は、前記支持体の内側に設けられている請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記流出阻害部は、前記フィルタ部の上端近傍から下端近傍にわたって帯状または板状に形成された第1流出阻害部を備えている請求項1または2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記流出阻害部は、前記第1流出阻害部に交差する帯状または板状に形成された第2流出阻害部を備えている請求項記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁流体を濾過するフィルタ装置、特に、粒子状の固形異物が混入している汚濁流体を濾過するフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械では、切削油や研削油等と呼ばれるクーラント液が使用されている。クーラント液は冷却や潤滑の目的だけでなく洗浄の目的にも使用されているため、使用されたクーラント液には切削屑や研削屑等の粒子状の固形異物(以下、スラッジと称する)が混入している。一般的には、このクーラント液は循環流路を介して繰り返して使用されるが、スラッジが混入したクーラント液を使用すると切削等の加工に影響を及ぼすため、一度使用したクーラント液からスラッジを除去する必要がある。
【0003】
スラッジが混入したクーラント液からスラッジを除去するために、循環流路中に配置されたスラッジ除去装置が用いられている。このようなスラッジ除去装置として、例えば図14に示すフィルタ装置100が用いられている。このフィルタ装置100は、ケーシング101の上部および下部にそれぞれ液流入口102および液流出口103を設け、ケーシング101の内部には袋状のフィルタ体104が上方に開口するように配置されている。なお、フィルタ体104としてスラッジの粒径よりも小さい目のものを用いる。
【0004】
このフィルタ装置100では、液流入口102からスラッジが混入したクーラント液(以下、汚濁流体と称する)をケーシング100の内部に流入させる。ケーシング100の内部に流入した汚濁流体はフィルタ体104を通過して液流出口103からケーシング100の外部へと流出する。このとき、フィルタ体104の目がスラッジの粒径よりも細かいため、スラッジはフィルタ体104によって濾過され、液流出口103からはスラッジが除去されたクーラント液が流出する。
【0005】
このようなフィルタ装置100では、濾過されたスラッジがフィルタ体104の内面に層をなすように付着してゆくため、時間の経過とともにフィルタ体104の目詰まりを生じる。そのため、定期的またはフィルタ体104へのスラッジの付着状態によって、フィルタ体104からスラッジを除去する必要がある。しかしながら、ケーシング100からフィルタ体104を取り出す作業やフィルタ体104からスラッジを除去する作業は容易ではなく、作業効率を低下させていた。また、フィルタ体104からスラッジを除去するのではなく、フィルタ体104そのものを交換すれば手間を低減することはできるが、新たなフィルタ体104の費用や使用済みのフィルタ体104の廃棄費用が生じるため、ランニングコストを増加させる原因となり、好ましくない。
【0006】
このような問題を解決するために、フィルタ体の洗浄機能を有するフィルタ装置が提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1のフィルタ装置は、竪型円筒状のケーシングの下方および上方にそれぞれ汚濁液体の流入口および流出口を設け、ケーシングの内部に袋状のフィルタ体を下方に開口するように設置し、ケーシング内部に圧縮エアを吹き込むエア吹き込み口と、フィルタを支持する支持体に対して振動を与える振動付与手段を備えている。このフィルタ装置でも、フィルタ体の内面にスラッジが層状に付着するが、フィルタ体の外側から内側に対して圧縮エアを吹き付けることによりフィルタ体の内面に付着したスラッジを吹き飛ばすとともに、振動付与手段によって支持体を介してフィルタに振動を与えることによって、フィルタ体の内面に付着したスラッジを剥落しやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-058083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のフィルタ装置では、上述したように、圧縮エアの吹付けと振動の付与とを有することによって図14のフィルタ装置に比べて、フィルタ体の内面に付着したスラッジを剥落させやすくなっている。しかしながら、特許文献1のようなフィルタ装置では、スラッジがフィルタ体の内面に層状に付着して略筒状の塊となるため、スラッジの厚みがある程度になると圧縮エアや振動によってスラッジを剥落させることが困難となる。また、剥落したスラッジはケーシングの下部に設けられた排出口から排出されるが、振動によってスラッジが剥落する場合には、大きな塊となって脱落することが多く、当然ながら、排出口の径よりも大きな塊のスラッジは排出されない。その場合には、塊のスラッジを回収する手間が生じる。また、排出口の径を大きくすれば、大きな塊のスラッジも排出することができるが、排出口に設けられるバルブも同時に大きくする必要が生じるため、コストが増大し、好ましくない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、付着した固形異物の除去が容易な汚濁流体のフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る、固形異物が混入した流体である汚濁流体を濾過するフィルタ装置の好適な実施形態の一つでは、ケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、前記汚濁流体を濾過するフィルタ部と、を備え、前記ケーシングは、前記汚濁流体が流入する流入口と、前記フィルタ部によって濾過された前記流体を流出させる流出口と、を備え、前記フィルタ部は、略筒状の支持体と、前記支持体の内部に配置され、前記汚濁流体を濾過するフィルタ体と、下方に開口し、前記流入口から流入した前記汚濁流体をその内部に導く導入口と、を備え、前記フィルタ体は、前記流体を通過させるとともに前記固形異物の通過を阻害する目を有し、開口部を有する筒状または袋状に形成され、前記開口部が下方を向き、前記支持体の内周面を覆うように前記支持体の内部に配置され、前記支持体は、前記フィルタ体に対向する部分に、前記流体を通過させる複数の漏出孔が均一に形成され、前記フィルタ部は、前記流体がその内側から外側に向けて流出するのを部分的に阻害する流出阻害部を備え、前記流出阻害部は、面状であり、前記フィルタ体の複数の目を含む所定領域に重なるように前記支持体とは別体として取り付けられ、前記所定領域の近傍の前記漏出孔からの前記流体の流出を阻害する。
【0011】
このようなフィルタ装置では、フィルタ体の内部から外部へと流体が流出する際に、固形異物がフィルタ体の内面に付着することにより濾過が行われる。そのため、フィルタ体の内面の任意の領域を考えた場合、その領域を通過する流体の量と、その領域に付着する固形異物の量と、は略比例関係にあると考えられる。本発明に係るフィルタ装置では、流出阻害部によって、部分的に流体の流出が阻害される。そのため、フィルタ体の内面のうち、流出阻害部に対向する領域では、流体の通過量が低減し、その領域に付着する固形異物の量も低減する。これにより、固形異物はフィルタ体の内面に不均一に付着する。このように不均一に付着した固形異物であれば、自重や小さな外力によって剥落しやすいため、フィルタ体からの除去が容易となる。
【0012】
本発明に係るフィルタ装置の好適な実施形態の一つでは、前記流出阻害部は、前記支持体の内側に設けられている。
【0013】
流体が内部から外部に流出する際には流出阻害部に対して同方向への力が作用する。しかしながら、この構成では、流出阻害部の外方には支持体が位置しているため、流出阻害部の変形を抑制することができる。
【0016】
様々な形状の流出阻害部が考えられるが、本発明に係るフィルタ装置の好適な実施形態の一つでは、前記流出阻害部は、前記フィルタ部の上端近傍から下端近傍にわたって帯状または板状に形成された第1流出阻害部を備えている。
【0017】
上述したように、本発明における流出阻害部は、固形異物がフィルタの内面に均一に付着するのを阻害するためのものである。そのため、この構成の第1流出阻害部を設ければ、固形異物は上端近傍から下端近傍にわたって切れ目が入ったような円筒状となる。そのため、円筒状に固まった固形異物よりも剥落しやすくなる。ここで、「上端近傍から下端近傍にわたって」とは、鉛直上下方向だけでなく、傾いていてもよく、また、直線状だけでなく、曲線状、螺旋状等の形状であっても構わない。
【0018】
さらに、本発明に係るフィルタ装置の好適な実施形態の一つでは、前記流出阻害部は、前記第1流出阻害部に交差する帯状または板状に形成された第2流出阻害部を備えている。
【0019】
この構成では、固形異物はさらに小さな塊となってフィルタ体の内面に付着するため、剥落しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】フィルタ装置の概略斜視図である。
図2図1におけるII―II断面図である。
図3】フィルタ部の斜視図である。
図4】上部ケーシングを外したフィルタ装置Aの分解斜視図である。
図5】上部ケーシングを外したフィルタ装置Aの変形例の分解斜視図である。
図6】支持ドラムの内面に取り付けた流出阻害部の例を示す図である。
図7】支持ドラム自体に流出阻害部を形成した例を示す図である。
図8】流出阻害部を設けないフィルタ部に残存したスラッジを示す図である。
図9】2本の鉛直方向の流出阻害部を設けたフィルタ部に残存したスラッジを示す図である。
図10】3本の鉛直方向の流出阻害部を設けたフィルタ部に残存したスラッジを示す図である。
図11】1本の螺旋状の流出阻害部を設けたフィルタ部に残存したスラッジを示す図である。
図12】2本の螺旋状の流出阻害部を設けたフィルタ部に残存したスラッジを示す図である。
図13】4本の鉛直方向の第1流出阻害部と1本の周方向の第2流出阻害部とを設けたフィルタ部に残存したスラッジを示す図である。
図14】従来のフィルタ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を用いて本発明に係るフィルタ装置の実施形態を説明する。本実施形態では、切削機械や研削機械等(以下、工作機械と総称する)の洗浄,冷却,潤滑等に用いられ、切削屑や研削屑等のスラッジ(本発明における固形異物の例)を含むクーラント液(本発明における汚濁流体の例)を濾過するフィルタ装置として用いている。
【0022】
〔フィルタ装置の全体構成〕
図1は、本実施形態におけるフィルタ装置Aの概略斜視図である。また、図2図1におけるII-II断面図である。これらの図に示すように、フィルタ装置Aは、工作機械の洗浄等に用いられたクーラント液を流入させる流入パイプ81と、クーラント液が流入する中空のケーシング1と、濾過されたクーラント液を流出させる流出パイプ82と、濾過されたスラッジをケーシング外に排出する排出パイプ83と、を備えている。また、ケーシング1の内部にはクーラント液を濾過するフィルタ部4が備えられている。
【0023】
ケーシング1は、ドーム状の天井を有し、下方に開口する略筒状の上部ケーシング11と、上方に開口する略漏斗状の下部ケーシング12と、から構成されている。上部ケーシング11および下部ケーシング12の内部には空間が形成されており、それぞれ上部空間1a、下部空間1bと称する。上部ケーシング11の下端部には周外方向に突出する平板リング状の上部フランジ11aが形成されている。一方、下部ケーシング12の上端部には周外方向に突出する平板リング状の下部フランジ12aが形成されている。上部フランジ11aと下部フランジ12aとをネジ等を用いて水密に締結することにより、上部ケーシング11と下部ケーシング12とが連結固定され、ケーシング1を形成する。このとき、それぞれの開口が一致するように固定され、下部空間1bと上部空間1aとが連通している。
【0024】
流入パイプ81は下部ケーシング12に形成された流入口2に接続され、流出パイプ82は上部ケーシング11形成された流出口3に接続されている。また、排出パイプ83は下部ケーシング12の下端部に接続されており、接続部分近傍には排出パイプ83の流路を開閉するための排出バルブ84が備えられている。
【0025】
図3に示すように、フィルタ部4は略筒状であり、下方に開口する導入口4aが形成されている。フィルタ部4は、導入口4aが上部ケーシング11の開口と下部ケーシング12の開口と一致するように配置されている。そのため、この導入口4aを介して、クーラント液が下部空間1bから上部空間1a、より具体的には、フィルタ部4の内部へと流入する。また、図2に示すように、フィルタ部4の外周面と上部ケーシング11の内周面との間には間隙が形成されており、濾過されたクーラント液の流路となっている。なお、図2では後述するフィルタ体5は省略している。
【0026】
〔フィルタ部〕
図3はフィルタ部4の下方から見た斜視図であり、図4は上部ケーシング11を外した状態でのフィルタ装置Aの分解斜視図である。図に示すように、本実施形態におけるフィルタ部4は、フィルタ体5と、フィルタ体5を内包する支持体6と、を備えている。
【0027】
フィルタ体5は、スラッジを含むクーラント液を濾過し、クーラント液からスラッジを除去するためのものであり、濾過対象の粒径よりも細い目を有する濾布等である。フィルタ体5としては、合成繊維製の不織布やプラスチック繊維布等を単層または複層に形成したものを用いることができる。本実施形態におけるフィルタ体5は両端が開口する筒状であるが、一端が開口する袋状であっても構わない。
【0028】
支持体6は、両端が開口する筒状の支持ドラム61と、支持ドラム61の上方の開口を閉塞する天部支持板62と、下部フランジ12aから立設された支持軸63と、を備えている。支持軸63の先端には雄ねじ部63aが形成されている。一方、天部支持板62には支持軸63の雄ねじ部63aを挿通する挿通孔62aが形成されている。支持ドラム61の壁面には複数の漏出孔61aが略均一に形成されている。この漏出孔61aの径はスラッジの粒径と比べて大きいものではあるが、特に制限はない。なお、漏出孔61aの径が小さ過ぎるとクーラント液の流出を阻害するため、好ましくない。
【0029】
フィルタ部4を組み立てる際には、支持ドラム61の内部に、その内周面を覆うようにフィルタ体5を配置し、フィルタ体5の上端部と下端部とを外側に折り返す。そして、図4に示すように、支持ドラム61を下部フランジ12a上に載置する。その後、天部支持板62の雄ねじ部63aを天部支持板62の挿通孔62aに挿通するように天部支持板62を配置し、雄ねじ部63aに対してナット64を締め付ける。
【0030】
なお、図4の例では、フィルタ部4は下部ケーシング12に固定されているが、図5に示すように、下部ケーシング12とは別体とすることもできる。図5の例では、下部フランジ12aと同形状の底部支持板65を備えており、支持軸63は底部支持板65に立設されている。その他の構成は図4と同様である。なお、上部ケーシング11と下部ケーシング12とを連結固定する際には、底部支持板65は上部フランジ11aおよび下部フランジ12aとともに締結固定される。
【0031】
なお、本発明に係るフィルタ装置Aは、流出阻害部7(後述する)を備えているが、図2から図5には表していない。
【0032】
〔濾過処理〕
ここで、図2を用いて、本実施形態におけるフィルタ装置Aによってクーラント液を濾過する処理過程を説明する。なお、図中の矢印はクーラント液の流れを示している。
【0033】
工作機械の洗浄等に使用され、スラッジが混入したクーラント液は、流入パイプ81から下部ケーシング12の下部空間1b内に流入する。このとき、排出バルブ84は閉められており、クーラント液は排出パイプ83からは流出しない。そのため、クーラント液の流入が継続すると、下部空間1b内のクーラント液の水位が上昇する。そして、水位が下部空間1bの上端を越えると、クーラント液は導入口4aを介して上部空間1a、すなわち、フィルタ部4の内部へと流入する。フィルタ部4の内部に流入したクーラント液には、さらなるクーラント液の流入による下方からの圧力が加わっており、フィルタ部4の内部がクーラント液で満たされた状態では、この圧力はフィルタ部4の内部のクーラント液をフィルタ部4の外部に流出させる力として作用する。なお、本実施形態では、フィルタ部4の上部は板状の天部支持板62で閉塞されているため、フィルタ部4の内部のクーラント液はフィルタ部4の径外方向にのみ流出することができる。このとき、比較的比重の大きなスラッジは沈降するが、比重の小さなスラッジはフィルタ部4の内部に漂っている。このようなスラッジに対して径外方向への圧力が作用する。上述したように、フィルタ体5の目はスラッジの粒径よりも細かいため、この径外方向への圧力によってスラッジはフィルタ体5の内面に付着し、クーラント液のみがフィルタ体5の外方に流出する。
【0034】
このようにして、フィルタ体5によって濾過されたクーラント液は支持ドラム61の漏出孔61aからフィルタ部4の外部に流出する。フィルタ部4の外部に流出したクーラント液は、フィルタ部4と上部ケーシング11との間に形成された流路を通って、流出パイプ82へと流れる。そして、流出パイプ82から外部に流出したクーラント液は循環流路を通って還流し、再度工作機械の洗浄等に使用される。
【0035】
〔スラッジの排出処理〕
このようなフィルタ装置Aでは、上述したように、スラッジはフィルタ体5の内面に付着する。フィルタ体5の内面にスラッジが付着すると濾過性能が低下するため、所定のタイミングでフィルタ体5からスラッジを除去する必要がある。その場合には、図示しない流入パイプ81のバルブと流出パイプ82のバルブとを閉め、排出バルブ84を開く。そして、フィルタ部4の内部に溜まっていたクーラント液とともにフィルタ体5の内面に付着しているスラッジを排出パイプ83から排出する。
【0036】
しかしながら、濾過を一定時間継続すると、フィルタ体5の内面に付着したスラッジは略筒状の塊となる。このような略筒状に積層したスラッジは、自重や少しの外力だけでは崩落しにくく、単に排出バルブ84を開けただけでは、スラッジを排出することはできない。そのため、本発明に係るフィルタ装置では、フィルタ部4にクーラント液の流出を阻害する流出阻害部7を設けている。本発明に係る流出阻害部7とは、フィルタ部4の内部に流入したクーラント液(汚濁流体)が、外部に流出するのを部分的に阻害するものを指す。換言すると、流出阻害部7は、フィルタ体5の内面のうち、流出阻害部7に対向する領域を通過するクーラント液の量を低減させるためのものである。
【0037】
図6は、流出阻害部7を設けた支持ドラム61である。この例では、支持ドラム61の内周面に流出阻害部7として、帯状または板状の部材を取り付けている。なお、図6では漏出孔61aは省略している。
【0038】
図6(a)および(b)はいずれも、上下方向に延びる流出阻害部7を設けており、その本数と太さが異なっている。図6(c)は、図6(a)の流出阻害部7に対してさらに周方向の流出阻害部7を設けている。この場合、上下方向の流出阻害7が本発明における第1流出阻害部71に相当し、周方向の流出阻害部7が本発明における第2流出阻害部72に相当する。図6(d)は螺旋状の流出阻害部7を設けている。また、図6(e)は上端近傍から斜め下に延びる流出阻害部7(第1流出阻害部71)と、この第1流出阻害部72に交差するように上端近傍から斜め下に延びる流出阻害部7(第2流出阻害部72)と、を設けている。図6(f)は複数の円盤状の流出阻害部7を設けている。
【0039】
また、図7は支持ドラム61自体に流出阻害部7を設けた例である。図3等に示した支持ドラム61の周面には略均一に漏出孔61aを設けたが、図7の例では、一点鎖線で囲む領域に漏出孔61aを形成しておらず、この領域が流出阻害部7に相当する。なお、この場合も図6の例と同様に、様々な形状の流出阻害部7を形成することができる。
【0040】
フィルタ部4にこのような流出阻害部7を設けることにより、フィルタ部4の内部のクーラント液は流出阻害部7の近傍の漏出孔61aからは流出しにくくなる。一般的に、フィルタ体5の内面の任意の領域に付着するスラッジの量は、その領域を通過するクーラント液の量に比例する。そのため、上述のような流出阻害部7によって、部分的にクーラント液の通過量が減らされた領域では、スラッジの付着量が少なくなる。すなわち、流出阻害部7を有するフィルタ部4を用いることにより、フィルタ体5の内面に付着したスラッジは、流出阻害部7の形状と同様の形状の溝(スラッジの付着が少ない部分)が形成された筒状となる。このような状態でスラッジであれば、自重や少しの外力だけで崩落しやすいため、フィルタ体5からのスラッジの除去が容易となる。
【0041】
〔実験〕
図8から図13は使用後のフィルタ部4を底面から見た図である。いずれも、研削機械の洗浄等のために使用し、鉄粉や砥石粉等が含まれたクーラント液の濾過に使用し、スラッジの排出処理を行ったものである。図中の黒く見える部分がフィルタ体5の内面に残存したスラッジである。
【0042】
図8は、流出阻害部7を設けないフィルタ部4である。このようなフィルタ部4では、一部のスラッジが剥落しているものの、比較的内面全体にわたってスラッジが付着しているのが分かる。このように、フィルタ体5の内面にスラッジが付着すると、濾過量が低下し、十分な量のクーラント液を研削機械に還流させることが困難となり、加工不良やクーラント液のあふれが発生するおそれがある。
【0043】
一方、図9および図10はそれぞれ、上下方向に2本および3本の流出阻害部7を設けたフィルタ部4である。また、図11および図12はそれぞれ、螺旋状の流出阻害部7を1本および2本設けたフィルタ部4である。これらはいずれも若干のスラッジは残っているが、大部分のスラッジは剥落し、排出されているのが分かる。図13は、図6(c)の形状の流出阻害部7を設けたフィルタ部4である。この場合、スラッジの残存量は図9から図11と比べると多いものの、図8と比べるとスラッジの残存量は少ないことが分かる。なお、図13の場合、フィルタ体5の内面が比較的小さな領域に分割され、その領域毎にスラッジの塊が形成されているため、領域毎のスラッジの塊の重量が小さく、自重だけでは十分に剥落していないと考えられる。そのため、図13の場合も、少しの外力の付加や、さらにスラッジが付着した際の自重によって、剥落すると考えられる。
【0044】
このように、本発明に係るフィルタ装置では、フィルタ部の内部から外部への流体の流出を部分的に阻害する流出阻害部を設けることにより、流体の流出が不均一となり、フィルタ体の内面に付着するスラッジの塊を小さくすることができる。そのため、フィルタ体の内面に付着したスラッジを、自重や小さな外力によって剥落させることができる。これにより、フィルタ体5の洗浄の手間を低減させるとともに、洗浄回数をも低減させることができる。さらには、フィルタ体5の耐用期間を伸ばすことができる。これらによって、従来のフィルタ装置と比べて作業効率を高め、コストを低減することが可能となる。
【0045】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、切削屑や研削屑等のスラッジを含むクーラント液を汚濁流体としたが、微粒子が混入する気体を汚濁流体としても構わない。すなわち、微粒子が混入する気体を濾過するフィルタ装置に用いても構わない。
【0046】
(2)上述の実施形態では、流出阻害部7を支持ドラム61の内周面に取り付けたが、支持ドラムの外周面やフィルタ体5の内面側に取り付けても構わない。
【0047】
(3)上述の実施形態では、フィルタ体5を筒状としたが袋状としても構わない。この場合、天部支持板62は平板上ではなく上に凸なドーム状とし、天部支持板62にも漏出孔62aを設けるのが好ましい。また、この場合、フィルタ部4の天井部分にも流出阻害部7を設けても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、粒子状の異物が混入した工作機械に用いられるクーラント液等の液体や、微粒子が混入した気体である汚濁流体を濾過するフィルタ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
A:フィルタ装置
1:ケーシング
2:流入口
3:流出口
4:フィルタ部
4a:導入口
5:フィルタ体(フィルタ部)
6:支持体(フィルタ部)
61a:漏出孔
7:流出阻害部(フィルタ部)
71:第1流出阻害部
72:第2流出阻害部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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図14