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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】位置測定方法及び部品
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021190918
(22)【出願日】2021-11-25
(62)【分割の表示】P 2017239493の分割
【原出願日】2017-12-14
(65)【公開番号】P2022016614
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/017867
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】堀切 宏則
(72)【発明者】
【氏名】池田 賢元
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-256372(JP,A)
【文献】特開2004-319555(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G02B 6/36 - 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品と撮像光学系を備えた測定装置との組合わせであって、
該部品は、一つの平面または互いに平行な複数の平面上に設置された、少なくとも一つの光学素子と該少なくとも一つの光学素子の位置合わせ用の少なくとも二つの位置基準部とを備え、それぞれの位置基準部は、少なくとも根元の部分が柱状であり、柱の根元を取り囲む傾斜面を備え、該傾斜面は、それぞれの位置基準部が設置された平面と該柱の側面とをつなぐように形成され、該傾斜面の、それぞれの位置基準部が設置された平面に対する角度θは20度から70度の範囲であり、
該撮像光学系の開口角をφとして、
【数1】
を満たすように構成された部品と撮像光学系を備えた測定装置との組合わせ。
【請求項2】
該柱の中心軸を含む断面における、該傾斜面の該中心軸と垂直方向の長さをX、該柱の該中心軸方向の長さをLとして
【数2】
を満たす請求項1に記載の部品と撮像光学系を備えた測定装置との組合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸落射照明を使用する撮像光学系を備えた測定装置の画像による位置測定方法、及び上記の測定方法に適した部品に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、一つの面に複数のレンズが配列された部品と、複数の光ファイバを備えたコネクタと、を結合する際に、レンズと光ファイバとの位置合わせを行うために、部品の当該面に設けた柱状の凸部である位置基準部を、コネクタに設けた凹部に勘合させる場合がある。このような場合に、個々のレンズと個々の光ファイバとの位置合わせを行うには、部品の面上の位置基準部と個々のレンズとの間の距離を高い精度で保証する必要がある。そのため、部品の位置基準部と個々のレンズとの間の距離の高精度の測定が必要となる。このような測定は、CNC(Computer Numerical Control)画像測定機などの測定装置を使用して実施される(たとえば、特許文献1)。
【0003】
部品の面上の位置基準部と個々のレンズとの間の距離の測定においては、測定装置の画像において、当該面における柱状の位置基準部の位置を正確に定める必要がある。従来、測定装置の画像において、位置基準部の柱の根元の部分を識別するのは困難であったので、位置基準部の柱の先端の部分を識別し、先端部分の位置から位置基準部の位置を定め、当該位置を基準としてレンズの位置を定めていた。
【0004】
しかし、たとえば、位置基準部の柱が当該面の法線に対して傾斜していると、当該法線の方向から取得した測定装置の画像において、位置基準部の柱の根元の位置と先端の位置とのあいだに間隔が生じる。したがって、先端部分の位置から位置基準部の位置を定め、当該位置を基準としてレンズの位置を定めると、上記の間隔に対応する距離の誤差が生じる。
【0005】
このように、測定装置の画像において、部品の位置基準部の位置を使用して、レンズなどの位置を高い精度で求める位置測定方法、及び上記の測定方法に適した部品は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-4055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、測定装置の画像において、部品の位置基準部の位置を使用して、レンズなどの位置を高い精度で求める位置測定方法、及び上記の測定方法に適した部品に対するニーズがある。本発明の課題は、測定装置の画像において、部品の位置基準部の位置を使用して、レンズなどの位置を高い精度で求める位置測定方法、及び上記の測定方法に適した部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の位置測定方法は、同軸落射照明を使用する撮像光学系を備えた測定装置の画像において、平面上の位置基準部の位置及び任意の点の位置を観察し、該位置基準部の位置を基準として該任意の点の位置を定める位置測定方法である。該位置基準部は、少なくとも根元の部分が柱状であり、柱の根元を取り囲む傾斜面を備える。該位置測定方法は、該測定装置の画像において、該根元を取り囲む傾斜面及び該平面の境界の位置から該根元の外周の位置を定めるステップと、該根元の外周の位置から該位置基準部の位置を定めるステップと、該位置基準部の位置を基準として該任意の点の位置を定めるステップと、を含む。
【0009】
本発明の第1の態様の位置測定方法においては、測定装置の画像において、位置基準部の柱の根元を取り囲む傾斜面と平面との境界の位置から、柱の根元の外周の位置を定め、該柱の根元の外周の位置から位置基準部の位置を定めるので、柱の先端部の位置から位置基準部の位置を定める場合と比較して、位置測定の誤差を大幅に低減することができる。
【0010】
本発明の第1の態様の第1の実施形態の位置測定方法において、該撮像光学系の開口角をφ、該根元を取り囲む傾斜面と該平面とのなす鋭角をθとして、θが、
【数1】
を満たす。
【0011】
上記の関係が満たされると、傾斜面で反射された光線は、測定装置に到達しない。したがって、測定装置による画像において、傾斜面の領域が明るくなることはなく平面の領域と傾斜面の領域との境界が明確になる。
【0012】
本発明の第1の態様の第2の実施形態の位置測定方法において、該撮像光学系の開口角をφ、該根元を取り囲む傾斜面と該平面とのなす鋭角をθ、角度の単位を度として、θが、
【数2】
を満たす。
【0013】
上記の関係が満たされると、平面に反射された光線が傾斜面に反射された後、測定装置に到達することはない。したがって、測定装置による画像において、傾斜面の領域が明るくなることはなく平面の領域と傾斜面の領域との境界が明確になる。
【0014】
本発明の第1の態様の第3の実施形態の位置測定方法において、該根元を取り囲む傾斜面は、該平面と該柱の側面とをつなぐか該平面と該平面に平行な他の平面とをつなぐように形成されている。
【0015】
本発明の第1の態様の第4の実施形態の位置測定方法において、該根元を取り囲む傾斜面は、該平面と該柱の側面とをつなぐ場合に、該顕微鏡の開口角をφ、該柱の中心軸を含む断面における該傾斜面の該中心軸と垂直方向の幅をX、該柱の長さをLとして、
【数3】
を満たす。
【0016】
本実施形態によれば、該傾斜面と該平面との境界付近で、φ以下の角度で該平面に入射し反射された光線のうち相当な部分が、該柱の側面に反射された後測定装置に到達する。したがって、測定装置による画像において、平面の領域が十分に明るくなり、平面の領域と傾斜面の領域との境界が明確になる。
【0017】
本発明の第1の態様の第5の実施形態の位置測定方法において、該任意の点の位置が光学素子の位置である。
【0018】
本実施形態によれば、位置基準部の位置を基準として、光学素子の位置を高い精度で定めることができる。
【0019】
本発明の第2の態様の部品は、一つの平面または互いに平行な複数の平面上に設置された、少なくとも二つの位置基準部と光学素子とを備えた部品であって、それぞれの位置基準部は、少なくとも根元の部分が柱状であり、柱の根元を取り囲む傾斜面を備え、該傾斜面の、それぞれの位置基準部が設置された平面に対する角度θは20度から70度の範囲である。
【0020】
本態様による部品は、同軸落射照明を使用する撮像光学系を備えた測定装置の画像により、該位置基準部の位置を基準として、該光学素子の位置を高い精度で測定するのに適している。
【0021】
本発明の第2の態様の第1の実施形態の部品において、該根元を取り囲む傾斜面は、該平面と該柱の側面とをつなぐか該平面と該平面に平行な他の平面とをつなぐように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の、位置基準部を備えた部品を示す図である。
図2】従来の部品の位置基準部の中心軸を含む断面を示す図である。
図3】本発明の測定方法において使用される、同軸落射照明を使用する測定装置を示す図である。
図4】上記の測定装置の同軸落射照明の照明用の光、及び撮像用の反射光の経路を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態の部品の位置基準部の中心軸を含む断面を示す図である。
図6】照明用の光のうち平面に垂直に進行する光線の経路及びその光線による画像を示す図である。
図7】照明用の光のうち平面に対して所定の範囲の角度で進行する光線の経路及びその光線による画像を示す図である。
図8】照明用の光の光線の経路及びその光線による画像を示す図である。
図9A】傾斜面の、平面に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。
図9B】傾斜面の、平面に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。
図10A】傾斜面の、平面に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。
図10B】傾斜面の、平面に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。
図11】柱の中心軸を含む断面における傾斜面の中心軸と垂直方向の長さXと柱の長さLとの関係を説明するための図である。
図12】本発明の第2の実施形態の部品の位置基準部の中心軸を含む断面を示す図である。
図13】照明用の光のうち平面に垂直に進行する光線の経路及びその光線による画像を示す図である。
図14】照明用の光のうち平面に対して所定の範囲の角度で進行する光線の経路及びその光線による画像を示す図である
図15】照明用の光の光線の経路及びその光線による画像を示す図である。
図16A】傾斜面の平面に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。
図16B】傾斜面の平面に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。
図17A】傾斜面の平面に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。
図17B】傾斜面の平面に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。
図18】溝の幅Wと柱の長さLとの関係を説明するための図である。
図19】本発明の一実施形態の測定方法を説明するための流れ図である。
図20図19の流れ図に示した測定方法と境界E及びE’との関係を示す図である。
図21】従来の部品及び本発明の部品について、柱の傾斜角度に対する基準位置の偏差を示す図である。
図22】本発明の他の実施形態の、位置基準部を備えた部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態の、位置基準部110を備えた部品100を示す図である。部品100の一つの面101には、2個の位置基準部110及び複数のレンズ150が設置されている。2個の位置基準部110は、ほぼ円柱状である。複数のレンズ150を備えた部品100は、たとえば、複数の光ファイバを備えたコネクタに接続される。2個の位置基準部110は、部品100とコネクタとの接続に使用される。たとえば、コネクタが、2個の柱状の位置基準部110に対応する2個の凹部を備えており、2個の位置基準部がコネクタの2個の凹部に収納されるようにしてもよい。その際に、複数のレンズ150と複数の光ファイバとを、高い精度で位置合わせする必要がある。このため、高い精度での位置合わせを保証するために、複数のレンズ150の位置を、2個の位置基準部110を基準として正確に測定する必要がある。
【0024】
図2は、従来の部品の位置基準部110’の中心軸を含む断面を示す図である。
【0025】
ここで、複数のレンズ150の位置の測定は、CNC(Computer Numerical Control)画像測定機などの測定装置を使用して実施される。画像測定機などの測定装置で取得した画像において、従来の部品の位置基準部110’の柱の根元部分は、周囲の平面と区別するのが困難である。そこで、画像測定機などの測定装置で取得した画像において、図2において円で囲った、柱の先端部分を観察することにより位置基準部110’の位置を定めている。
【0026】
図3は、従来の測定方法及び本発明の測定方法において使用される、同軸落射照明を使用する測定装置を示す図である。測定装置は、CNC画像測定機であってもよい。測定装置は、光源301と、視野レンズ303と、ハーフミラー304と、コンデンサレンズ305と、結像レンズ307と、画像取得部309と、を含む。光源301、視野レンズ303、ハーフミラー304、及びコンデンサレンズ305は、測定装置の照明光学系を形成する。コンデンサレンズ305、ハーフミラー304、及び結像レンズ307は、測定装置の撮像光学系を形成する。位置基準部110を備えた部品100の面を101で表す。光源301からの光は、視野レンズ303及びハーフミラー304を介して、コンデンサレンズ305の瞳位置3051に光源の像を形成する。この光源の像を光源として、コンデンサレンズ305を介して、部品100の面101への照明が実施される。部品100の面101で反射された光は、コンデンサレンズ305を通過した後、ハーフミラー304及び結像レンズ307を通過して画像取得部309に到達する。
【0027】
図4は、上記の測定装置の同軸落射照明の照明用の光、及び撮像用の反射光の経路を示す図である。上記の経路は、上記の測定装置の撮像光学系の開口角、すなわちコンデンサレンズ305の開口角によって定まる。図4において、コンデンサレンズ305の瞳の中心位置から平面101に下した垂線と一致する主光線をL1で表し、主光線L1が平面101に到達する点から最も離れた点に到達する主光線をL2で表す。主光線L1及びL2はほぼ平行であるとみなすことができ、主光線L1に関する開口角及びL2に関する開口角はほぼ同じである。この開口角をφで表す。反射光のうち、平面101の法線となす角度が開口角φを超える光線は、測定装置に取り込まれない。
【0028】
図5は、本発明の第1の実施形態の部品100Aの位置基準部110Aの中心軸を含む断面を示す図である。位置基準部110Aの柱115は円柱であり、部品100Aの平面101上に、該円柱の中心軸が平面101と垂直になるように形成されている。本発明の一実施形態の部品100Aは、位置基準部110Aの柱115の根元の周囲に傾斜面103を備える点で従来の部品と異なる。傾斜面103は、平面101と位置基準部110Aの柱115の側面とをつなぐ。傾斜面103と平面101との境界線は円形であり、円の中心は上記の中心軸と平面101との交点である。図5の円で囲まれた図は、傾斜面103の上記の中心軸を含む断面を示す図である。平面101の粗さは、30nm以下に仕上げるのが好ましい。また、平面101は、レンズ150が配置される平面と同一の平面を形成するように形成するのが好ましい。
【0029】
図5において、軸AXは平面101と垂直であり、その方向は図4に示した主光線の方向である。
【0030】
図5において、Aで示される隅部は、断面が円弧上の部分、いわゆるRを有さないように形成されるのが好ましい。
【0031】
図6は、照明用の光のうち平面101に垂直に進行する光線の経路及びその光線による画像を示す図である。平面101に垂直に入射する光線の反射光は、平面101に垂直に進行するので画像取得部309に到達する。他方、平面101に垂直に進行する光線が、傾斜面103に反射されると画像取得部309に到達することはない。そこで、画像取得部309で取得された画像において、平面101の領域は明るくなり、傾斜面103の領域は暗くなる。この結果、上記の画像において、平面101の領域と傾斜面103の領域との境界Eが明確に示される。
【0032】
図7は、照明用の光のうち平面101に対して所定の範囲の角度で進行する光線の経路及びその光線による画像を示す図である。平面101に上記所定の範囲の角度入射する光線の反射光は、平面101及び柱115の側面で反射された後、画像取得部309に到達する。他方、平面101に対して上記所定の範囲の角度で進行する光線は、傾斜面103に反射され画像取得部309に到達することはない。そこで、画像取得部309で取得された、柱115の側面で反射された光線による反射像において、平面101の領域は明るくなり、傾斜面103の領域は暗くなる。この結果、上記の画像において、平面101の領域の反射像と傾斜面103の領域の反射像との境界E’が明確に示される。
【0033】
図8は、照明用の光の光線の経路及びその光線による画像を示す図である。図8は、図6及び図7を組み合わせたものである。図8において、境界E’は、平面101の領域と傾斜面103の領域との境界Eの、柱115の側面における反射による像である。そこで、境界Eの上の点とそれに対応する境界E’上の点とを結ぶ線分の中点は、平面101における柱115の外周上の点の位置に対応する。このようにして、図8に示す画像から、平面101における柱115の外周の位置を求めることができる。なお、平面101における柱115の外周の位置の求め方については後で詳細に説明する。
【0034】
以下において、傾斜面103の、平面101に対する角度について説明する。本明細書において角度の単位は度である。
【0035】
図9Aは、傾斜面103の平面101に対する角度(鋭角)θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。図9Aにおいて、
【数4】
の関係を満たす。この場合に、平面101に反射された光線が傾斜面103に反射された後、画像取得部309に到達することはない。したがって、測定装置による画像において、傾斜面103の領域が明るくなることはなく平面101の領域と傾斜面103の領域との境界E’が明確になる。
【0036】
図9Bは、傾斜面103の、平面101に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。図9Bにおいて、
【数5】
の関係を満たす。この場合に、平面101に反射された光線の一部が傾斜面103に反射された後、画像取得部309に到達する。したがって、測定装置による画像において、傾斜面103の領域が明るくなり平面101の領域と傾斜面103の領域との境界E’が明確でなくなる。
【0037】
図10Aは、傾斜面103の、平面101に対する角度(鋭角)θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。図10Aにおいて、
【数6】
の関係を満たす。この場合に、傾斜面103で反射された光線は、測定装置に到達しない。したがって、測定装置による画像において、傾斜面103の領域が明るくなることはなく平面101の領域と傾斜面103の領域との境界Eが明確になる。
【0038】
図10Bは、傾斜面103の、平面101に対する角度(鋭角)θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。図10Bにおいて、
【数7】
の関係を満たす。この場合に、傾斜面103で反射された光線は測定装置に到達する。この場合に、測定装置による画像において、傾斜面103の領域が明るくなり平面101の領域と傾斜面103の領域との境界Eが明確でなくなる。したがって、この状態は、画像による測定の観点から好ましくない。
【0039】
したがって、傾斜面103の、平面101に対する角度(鋭角)θと測定装置の撮像光学系の開口角φとは、以下の関係を満たすのが好ましい。
【数8】
なお、測定装置の撮像光学系の開口角φは、一般的に10度から20度の範囲である。したがって、平面101に対する傾斜面103の角度は、20度から70度であるのが好ましい。
【0040】
図11は、柱115の中心軸を含む断面における傾斜面103の中心軸と垂直方向の長さXと柱115の長さLとの関係を説明するための図である。平面101と傾斜面103との境界上の点で反射された光線のうち相当な部分が、柱115の側面で反射され、測定装置に到達するためには、測定装置の撮像光学系の開口角をφとして、以下の関係が満たされるのが望ましい。
【数9】
また、長さXは、鮮明な画像を得るには0.01mm以上であるのが望ましい。他方、測定装置の解像限界dは、測定光学系のエフナンバーをfn0として以下の式で表せる。
d = 2.44×λ×fn0
λ= 0.55μm、fn0=0.4 としてd = 0.537um である。図8に示すように、測定装置の画像において、直接観察される傾斜面の像と反射によって観察される傾斜面の像とが存在する。そこで、解像限界dのみから考察すると、長さXは、d/2より大きくなければならない。
【0041】
図12は、本発明の第2の実施形態の部品100Bの位置基準部110Bの中心軸を含む断面を示す図である。位置基準部110Bの柱115は円柱であり、部品100Bの平面101上に、該円柱の中心軸が平面101と垂直になるように形成されている。図12の円で囲まれた図は、円柱の根元付近の円柱の中心軸を含む断面を示す図である。平面101は、環状の傾斜面103に囲まれており、傾斜面103は平面101と、平面101に平行で平面101からの距離がDである平面105とをつなぐ。傾斜面103と平面101との境界線は円形であり、円の中心は上記の中心軸と平面101との交点である。本実施形態において、平面101と傾斜面103とは柱115の周囲の溝を形成している。該断面において、平面101の該中心軸と垂直方向の幅、すなわち溝の幅はWである。平面101は、レンズ150が配置される平面と同一の平面を形成するのが好ましい。
【0042】
図12において、Aで示される隅部は、断面が円弧上の部分、いわゆるRを有さないように形成されるのが好ましい。
【0043】
図13は、照明用の光のうち平面101に垂直に進行する光線の経路及びその光線による画像を示す図である。平面101に垂直に入射する光線の反射光は、平面101に垂直に進行するので画像取得部309に到達する。同様に、平面105に垂直に入射する反射光も画像取得部309に到達する。他方、平面101に垂直に進行する光線が、傾斜面103に反射されると、さらに、柱115の側面に反射され画像取得部309に到達することはない。そこで、画像取得部309で取得された画像において、平面101及び平面105の領域は明るくなり、傾斜面103の領域は暗くなる。この結果、上記の画像において、平面101の領域と傾斜面103の領域との境界Eが明確に示される。
【0044】
図14は、照明用の光のうち平面101に対して所定の範囲の角度で進行する光線の経路及びその光線による画像を示す図である。平面101に上記所定の範囲の角度入射する光線の反射光は、平面101及び柱115の側面で反射された後、画像取得部309に到達する。同様に、平面105に入射する反射光も画像取得部309に到達する。他方、平面101に対して上記所定の範囲の角度で進行する光線は、傾斜面103に反射されたとしても、さらに、柱115の側面に反射され画像取得部309に到達することはない。そこで、画像取得部309で取得された、柱115の側面で反射された光線による反射像において、平面101及び平面105の領域は明るくなり、傾斜面103の領域は暗くなる。この結果、上記の画像において、平面101の領域の反射像と傾斜面103の領域の反射像との境界E’が明確に示される。
【0045】
図15は、照明用の光の光線の経路及びその光線による画像を示す図である。図15は、図13及び図14を組み合わせたものである。図15において、境界E’は、平面101の領域と傾斜面103の領域との境界Eの、柱115の側面における反射による像である。そこで、境界Eの上の点とそれに対応する境界E’上の点とを結ぶ線分の中点は、平面101における柱115の外周上の点の位置に対応する。このようにして、図15に示す画像から、柱115の根元の外周の位置を求めることができる。なお、平面101における柱115の外周の位置の求め方については後で詳細に説明する。
【0046】
以下において、傾斜面103の平面101に対する角度について説明する。本明細書において角度の単位は度である。
【0047】
図16Aは、傾斜面103の、平面101に対する角度(鋭角)θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。図16Aにおいて、
【数10】
の関係を満たす。この場合に、照射される光線の大部分は、平面101に到達する。
【0048】
図16Bは、傾斜面103の、平面101に対する角度(鋭角)θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。図16Bにおいて、
【数11】
の関係を満たす。この場合に、照射される光線の一部は、平面105によるケラレによって平面101に到達することができない。したがって、この状態は照射の効率の観点から好ましくない。
【0049】
図17Aは、傾斜面103の、平面101に対する角度(鋭角)θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。図17Aにおいて、
【数12】
の関係を満たす。この場合に、傾斜面103で反射された光線は、測定装置に到達しない。したがって、測定装置による画像において、傾斜面103の領域が明るくなることはなく平面101の領域と傾斜面103の領域との境界Eが明確になる。
【0050】
図17Bは、傾斜面103の、平面101に対する角度(鋭角)θと測定装置の撮像光学系の開口角φとの関係を説明するための図である。図17Bにおいて、
【数13】
の関係を満たす。この場合に、傾斜面103で反射された光線の一部は、測定装置に到達する。この場合に、測定装置による画像において、傾斜面103の領域が明るくなり平面101の領域と傾斜面103の領域との境界Eが明確でなくなる。したがって、この状態は、画像による測定の観点から好ましくない。
【0051】
したがって、傾斜面103の、平面101に対する角度θと測定装置の撮像光学系の開口角φとは、以下の関係を満たすのが好ましい。
【数14】
なお、測定装置の撮像光学系の開口角φは、一般的に10度から20度の範囲である。したがって、平面101に対する傾斜面103の角度は、20度から70度であるのが好ましい。
【0052】
図18は、溝の幅Wと柱115の長さLとの関係を説明するための図である。平面101と傾斜面103との境界上の点で反射された光線のうち相当な部分が、柱115の側面で反射され、測定装置に到達するためには、測定装置の撮像光学系の開口角をφとして、以下の関係が満たされるのが望ましい。
【数15】
また、幅Wは、鮮明な画像を得るには0.01mm以上であるのが望ましい。
【0053】
図19は、本発明の一実施形態の測定方法を説明するための流れ図である。
【0054】
図20は、図19の流れ図に示した測定方法と境界E及びE’との関係を示す図である。
【0055】
図19のステップS1010において、測定装置の画像において、境界E上の3点から、境界Eを形成する円を定める。
【0056】
図19のステップS1020において、上記の円の中心を通る軸Aを定める。ここでは、軸Aを水平方向とする。
【0057】
図19のステップS1030において、上記の円の右側において、軸Aと境界E及び境界E’との交点をA1及びA1’とする。上述のように、境界E’は、境界Eの、柱115の側面における反射による像である。
【0058】
図19のステップS1040において、点A1及び点A1’を結ぶ線分の中点をAC1とする。
【0059】
図19のステップS1050において、上記の円の左側において、軸Aと境界E及び境界E’との交点をA2及びA2’とする。
【0060】
図19のステップS1060において、点A2及び点A2’を結ぶ線分の中点をAC2とする。
【0061】
図19のステップS1070において、点AC1及び点AC2を結ぶ線分の中点をACとする。
【0062】
図19のステップS1080において、軸Aと直交する軸Bを定める。
【0063】
図19のステップS1090において、軸Bについて、ステップS1030からステップS1070までの手順にしたがって、点BC1、点BC2及び点BCを求める。
【0064】
図19のステップS1100において、点AC及び点BCから位置基準部110の位置を定める。本実施形態においては、位置基準部110の主要部は円柱であるので、点ACの軸A方向の座標及び点BCの軸B方向の座標を有する点を、円柱の軸に垂直な断面の中心位置とすることによって、位置基準部110の位置を定めることができる。
【0065】
図2を使用して説明した通り、従来の部品においては、位置基準部110’の柱の先端部分の位置を基準として測定を実施していた。このため、柱の傾斜角度により基準位置の偏差が生じる。
【0066】
表1は、従来の部品及び本発明の部品について、柱の傾斜角度に対する基準位置の偏差を示す表である。柱の傾斜角度とは、柱の長手方向の軸の、平面101の法線に対する角度である。表1における長さの単位はミリメータである。柱の長さは、2.67ミリメータである。
【表1】
【0067】
図21は、従来の部品及び本発明の部品について、柱の傾斜角度に対する基準位置の偏差を示す図である。図21において、従来の部品の偏差を破線で示し、本発明の部品の偏差を実線で示す。従来の部品と比較して、本発明の部品においては、柱の傾斜角度による基準位置の偏差が大幅に低減される。本発明によれば、一例として、レンズ位置の公差±3マイクロメータを実現することができる。
【0068】
また、位置基準部110の柱の外周の位置と溝の外側の周縁の位置とが同心状に形成されていない場合であっても、図19及び図20に示した測定方法によれば、溝の周縁の位置に起因する誤差を低減することができる。
【0069】
図22は、本発明の他の実施形態の、位置基準部110Cを備えた部品100Cを示す図である。2個の位置基準部110Cは四角柱状である。一般的に、位置基準部の柱の長手方向に垂直な断面は、円形、または多角形でよい。位置基準部の柱の断面が多角形であっても、図19に示した測定方法と同様の測定方法で位置基準部の位置を定めることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22