IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小山田 松男の特許一覧

<>
  • 特許-獣害防止システム 図1
  • 特許-獣害防止システム 図2
  • 特許-獣害防止システム 図3
  • 特許-獣害防止システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】獣害防止システム
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/12 20110101AFI20230315BHJP
【FI】
A01M29/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022130307
(22)【出願日】2022-08-17
【審査請求日】2022-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196153
【氏名又は名称】小山田 松男
(74)【代理人】
【識別番号】100130823
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小山田 松男
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3154756(JP,U)
【文献】登録実用新案第3215346(JP,U)
【文献】特開2017-147971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嗅覚を持つ害獣が侵入する農作地に、嗅覚を持つ害獣が忌避する動物の原臭を保存する原臭保存容器と、害獣が農作地に侵入した時に原臭保存容器内の原臭を開放する原臭開放手段とを備え、原臭開放手段は、農作地の地面上に張られる紐状の部材であり、その一端を原臭保存容器の開閉部に取付け、他端を農作地内外域に配置する紐固定部材に取り付けて設けることを特徴とする獣害防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害獣による農作物被害を防止する獣害防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クマやサルなどの動物(害獣)による農作物被害が後を絶たない。そのため、獣害防止対策として種々の対策が検討されている。
【0003】
上記獣害防止対策として、農地に設置し、野生動物の侵入を防止する獣類用柵が提供されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2001―245546
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の獣類用柵は、間隔をおいて設けられた支柱と、この支柱に張られた柵本体とを備え、上記柵本体は、地中に埋め込まれ且つ該地中を柵側方へ向かって延びた部分を有するものである。これにより、獣類は柵本体の地上にある部分の手前から地面を真下に掘り進んでいっても途中で掘り進むことができなくなり、獣類に柵の下をくぐること、すなわち農作地への侵入を諦めさせることで、獣害を防止する。
【0006】
しかし、特許文献1の獣類用柵の場合、柵が雑草に埋もれてしまうと防護柵として使用できなくなる。また、柵が電気柵の場合、雑草が茂るのを放置するとその機能を失う。雑草を除去する作業(柵のメンテナンス)には多くの労力が必要となる。
【0007】
上述の欠点を解決するために、防護柵を設けることなく、農作地における獣害を防止する獣害防止システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の獣害防止システムは、嗅覚を持つ害獣が侵入する農作地に、嗅覚を持つ害獣が忌避する動物の原臭を保存する原臭保存容器と、害獣が農作地に侵入した時に原臭保存容器内の原臭を開放する原臭開放手段とを備え、原臭開放手段は、農作地の地面上に張られる紐状の部材であり、その一端を原臭保存容器の開閉部に取付け、他端を農作地内外域に配置する紐固定部材に取り付けて設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の獣害防止システムは、農作地に侵入しようとする害獣に忌避したい動物の原臭を記憶させ、農作地に害獣が侵入した時に、害獣が忌避したい動物の原臭を発生させるものである。これにより、農作地へ侵入する害獣は警戒しながら農作地14を避ける(農作地から出ていく)ことから、害獣による農作物被害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の獣害防止システムの実施形態の一例を示す図である。
図2図1の原臭保存容器の内部構造を示す図である。
図3図1の原臭開放手段の例を示す図である。
図4図1の原臭開放手段の他の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、害獣が忌避する動物の原臭を利用して、獣害を防止することを実現するものである。
【実施例
【0013】
本発明の獣害防止システムを図に基づいて説明する。図1は、本発明の獣害防止システムの実施形態の一例を示す図であり、獣害防止システムを設置した農作地の上方から俯瞰した図である。図2は、図1の原臭保存容器の内部構造を示す図である。図3は、図1の原臭開放手段の例を示す図である。図4は、図1の原臭開放手段の他の例を示す図である。
本発明の獣害防止システム10は、嗅覚を持つ害獣12が侵入する農作地14に、嗅覚を持つ害獣12が忌避する動物16の原臭16aを保存する原臭保存容器18と、害獣12が農作地14に侵入した時に原臭保存容器18内の原臭16aを開放する原臭開放手段20とを備え、農作地14に害獣12が忌避する動物16を所定の時間配置するものである(図1)。本発明における嗅覚を持つ害獣12とは、農作物被害(食害)を起こす動物であり、例えばクマ、サルなどのように嗅覚を持つものである。
【0014】
原臭保存容器18は、農作物被害を起こす害獣12が忌避する動物16(たとえば、イヌ)の原臭16aを保存するものである(図2)。図2に示す原臭保存容器18は、蓋部18aが開閉部となっている。蓋部18aが開くと、原臭保存容器18内に保存された、害獣12が忌避する動物16の原臭16aが農作地14に開放される。
原臭保存容器18の内部には、害獣12が忌避する動物16の原臭16aを移行した布18bが置かれている。原臭保存容器18の内部空間は、動物16の原臭16aで満たされている(図2)。
なお、動物16の原臭16aを移行した布18bは、定期的に交換されるものとする。また、原臭保存容器18の開閉部18aは、蓋部に限るものではなく、容器18の側面に設けてもよい。
【0015】
原臭開放手段20は、原臭保存容器18内の原臭16aを開放するものである。図1に示す原臭開放手段20は、農作地14の地面上に張られる紐状の部材20aであり、その一端を原臭保存容器18の開閉部18aに取付け、他端を農作地14内外域に配置する紐固定部材20bに取り付けて設ける。紐状の部材20aには、ワイヤー、釣り糸など切れ難いものを使用する。
なお、農作地14の地面上に張られる紐状の部材20aにおける、「張られる」とは、農作地14の地面上にピンと張っても(図3)、たるみを設けて張ってもよい。また、農作地14に生える雑草の上に置くようにしてもよい(図4)。
【0016】
農作地14に、害獣12が忌避する動物16を所定の時間(たとえば、原臭保存容器18と原臭開放手段20の設置に要する時間、およそ0.5~3時間程度であり、農作地14の面積によって異なる。)配置する。これにより、農作地14に侵入するおそれがある害獣12に、害獣12が忌避する動物16の原臭16aを記憶させることができる。
【0017】
農作地14に侵入する害獣12(たとえば、クマ)が、農作地14の地面上に張られた原臭開放手段20の紐状の部材20aに接触すると(図3)、原臭保存容器18の開閉部18aが開き(図2)、原臭保存容器18内の原臭16aが農作地14に開放される。このとき、農作地14に侵入した害獣12は、農作地14に開放された原臭16aに気づき、近くに忌避したい動物16(遭遇を避けたい動物)が現れたと錯覚し、動物16との遭遇を避けるため、警戒しながら農作地14を避ける(農作地14から出ていく)。このように、原臭開放手段20は、農作地14(害獣12が通る場所)に設置され、害獣12の侵入を検知する同時に原臭16aを開放するものである。
上記のとおり、本発明の獣害防止システム10は、農作地14に侵入しようとする害獣12に忌避したい動物16の原臭16aを記憶させ、害獣12の侵入時に、忌避したい動物16の原臭16aを農作地14に発生させるものである。これにより、発生した原臭16aすなわち動物16の分身に反応して、農作地14へ侵入する害獣12は警戒しながら農作地14を避ける(農作地14から出ていく)ことから、防護柵を設けることなく、害獣12による農作物被害(食害)を防止することができる。
なお、原臭開放手段20は、上例に示す紐状の部材20a及び紐固定部20bに限るものではない。害獣12の農作地14への侵入を検知し、その検知と同時に原臭保存容器18の原臭16aを開放する操作を行うものであればよい。
また、原臭保存容器18の開閉部18aは、害獣12が紐状の部材20aに触れるだけでが開くようになっているものとする。
【0018】
(実験1)
青森県むつ市のワイナリーが保有するブドウ園(およそ12ヘクタールの農作地14)に、本発明の獣害防止システム10を設置して、獣害の防止効果を確認した。ブドウ園14は、クマ(害獣12)による農作物被害(食害)を受けていた。
ブドウ園14に侵入するクマ12が忌避するイヌ(動物16)を選択した。ブドウ園14に選択したイヌ16をゲージ(籠)に入れたままブドウ園14に配置するとともに、本発明の獣害防止システム10の原臭保存容器18と原臭開放手段20を設置した(図1図3)。原臭保存容器18には、選択したイヌ16の原臭16aを移行した布18bを入れた。
ゲージ(籠)に入れたイヌ16は、原臭保存容器18と原臭開放手段20の設置完了まで(およそ1時間)ブドウ園14に配置した後、取り除いた。
本発明の獣害防止システム10の設置以降、ブドウ園14におけるクマ12による食害は発見されなかった。
【0019】
(実験2)
青森県むつ市「杉友(さんゆう)研修所」内のブルーベリーの栽培地(およそ2ヘクタールの農作地14)に、本発明の獣害防止システム10を設置して、獣害の防止効果を確認した。農作地14は、サル(害獣12)による農作物被害(食害)を受けていた。
農作地14に侵入するサル12が忌避するイヌ(動物16)を選択した。農作地14に選択したイヌ16をゲージ(籠)に入れたまま農作地14に配置するとともに、本発明の獣害防止システム10の原臭保存容器18と原臭開放手段20を設置した(図1図4)。原臭保存容器18には、選択したイヌ16の原臭16aを移行した布18bを入れた。
ゲージ(籠)に入れたイヌ16は、原臭保存容器18と原臭開放手段20の設置完了まで(およそ30分)農作地14に配置した後、取り除いた。
本発明の獣害防止システム10の設置以降、農作地14におけるサル12による食害は発見されなかった。
【0020】
上記実験1,2により、害獣12が忌避する動物16の原臭16aを利用して、獣害を防止できることが分かった。また、本発明の獣害防止システム10における原臭保存容器18内の原臭16aは、害獣12が忌避する動物16の分身として有効に働き、害獣12による農作物被害を防止することが分かった。
本発明の獣害防止システムは、農作物被害を起こす害獣に忌避したい動物の原臭を記憶させ、農作地に害獣が侵入した時に、害獣が忌避したい動物の原臭を発生させるものである。すなわち、害獣が忌避したい動物の原臭をその動物の分身として利用するものである。これにより、害獣による農作物被害を防止することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 獣害防止システム
12 害獣
14 農作地
16 害獣が忌避する動物
16a 原臭
18 原臭保存容器
18a 開閉部
20 原臭開放手段
20a 紐状の部材
20b 紐固定部材
【要約】      (修正有)
【課題】防護柵を設けることなく、農作地における獣害を防止する獣害防止システムを提供する。
【解決手段】獣害防止システム10は、嗅覚を持つ害獣12が侵入する農作地14に、嗅覚を持つ害獣12が忌避する動物16の原臭16aを保存する原臭保存容器18と、害獣12が農作地14に侵入した時に原臭保存容器18内の原臭16aを開放する原臭開放手段20とを備え、農作地14に害獣12が忌避する動物16を所定の時間配置するものである。これにより、農作地14へ侵入する害獣12は警戒しながら農作地14を避けることから、防護柵を設けることなく、農作物被害を防止することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4