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特許7244973もやし含有食品の製造方法、肉様食品、加熱された食品及び非乾燥食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】もやし含有食品の製造方法、肉様食品、加熱された食品及び非乾燥食品
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20230315BHJP
   A23L 11/70 20210101ALI20230315BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20230315BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20230315BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20230315BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23L11/70
A23L3/00 101C
A23J3/00 504
A23J3/00 506
A23L29/244
A23L19/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022506958
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2021037661
(87)【国際公開番号】W WO2022080345
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598008592
【氏名又は名称】日乃食工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】牧野 一志
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-049079(JP,A)
【文献】特開2014-168390(JP,A)
【文献】特開2010-041994(JP,A)
【文献】特開2011-142881(JP,A)
【文献】特開2014-082964(JP,A)
【文献】特開平08-266248(JP,A)
【文献】簡単スープ。もやしでかさましの肉団子 by ナチュラルクローバ♪,Cookpad,2018年,p.1-2,https://cookpad.com/recipe/4918599, [検索日:2020年12月14日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 3/00
A23L 11/70
A23L 3/00
A23L 29/244
A23L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
もやしを加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後のもやしをほぐして繊維状にすると共に脱水する繊維化・脱水工程と、
ベース食材と、前記繊維化・脱水工程後のもやしと、を混合する混合工程と、
を含むもやし含有食品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程において、もやしを包装材に封入し、当該包装材の内部を真空にして、レトルト釜で加圧しつつ加熱する、
ことを特徴とする請求項1に記載のもやし含有食品の製造方法。
【請求項3】
前記繊維化・脱水工程において、回転式の撹拌部材を設けた撹拌装置を使用してもやしをほぐす、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のもやし含有食品の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程前に、もやしから胚軸を取り出す取出工程をさらに含み、
前記取出工程で取り出された胚軸が前記加熱工程以降の工程におけるもやしとして用いられ、
前記繊維化・脱水工程において、前記取出工程前のもやしの30~55%の重量となるようにもやしを脱水する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のもやし含有食品の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程において、凝固剤を混合して、前記繊維化・脱水工程後のもやしと、前記ベース食材と、を凝固させる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のもやし含有食品の製造方法。
【請求項6】
前記凝固後の混合物を包装材に封入し、当該包装材の内部を真空にする真空工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項5に記載のもやし含有食品の製造方法。
【請求項7】
前記真空工程後の混合物を冷凍する冷凍工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のもやし含有食品の製造方法。
【請求項8】
もやしを加熱した後にほぐして繊維状にすると共に脱水した繊維状のもやしと、おからと、こんにゃく粉と、を含み、かつ凝固により一体化されている、肉様食品。
【請求項9】
前記繊維状のもやしは、前記おから及び前記こんにゃく粉に絡みついている、
ことを特徴とする請求項に記載の肉様食品。
【請求項10】
前記繊維状のもやしは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水されたものである、
ことを特徴とする請求項又はに記載の肉様食品。
【請求項11】
原料合計1000質量部に対し、繊維状のもやし75~200質量部、おから120~250質量部、こんにゃく粉15~25質量部を含む、
ことを特徴とする請求項乃至10のいずれか1項に記載の肉様食品。
【請求項12】
もやしを加熱した後にほぐして繊維状にすると共に脱水した繊維状のもやしと、穀物粉と、を含み、該繊維状のもやしが該穀物粉に絡みつくことで食品全体に分布している、
ことを特徴とする加熱された食品。
【請求項13】
前記繊維状のもやしは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水されたものである、
ことを特徴とする請求項12に記載の加熱された食品。
【請求項14】
もやしを加熱した後にほぐして繊維状にすると共に脱水した繊維状のもやしと、半固形状食材と、を含み、該繊維状のもやしが該半固形状食材に絡みつくことで食品全体に分布している、
ことを特徴とする非乾燥食品。
【請求項15】
前記繊維状のもやしは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水されたものである、
ことを特徴とする請求項14に記載の非乾燥食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もやし含有食品の製造方法、肉様食品、加熱された食品及び非乾燥食品に関する。
【背景技術】
【0002】
おからは満腹感を生じやすかったり、低カロリーであったりして、肥満防止につながり、成人病予防等の観点からも注目されている食材である。そのおからとこんにゃく粉を利用して、特許文献1に記載されている加工品のような肉様食品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-49079公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる肉様食品を冷凍し解凍すると、肉様食品が離水してしまい、ぱさぱさとした食感の肉様食品となってしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、冷凍後解凍しても、まとまりを持ちつつ離水が発生しにくいもやし含有食品の製造方法、肉らしい食感を持つ肉様食品、並びにまとまりを持ちつつ離水が発生しにくい加熱された食品及び非乾燥食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るもやし含有食品の製造方法は、
もやしを加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後のもやしをほぐして繊維状にすると共に脱水する繊維化・脱水工程と、
ベース食材と、前記繊維化・脱水工程後のもやしと、を混合する混合工程と、
を含む。
【0007】
例えば、前記加熱工程において、もやしを包装材に封入し、当該包装材の内部を真空にして、レトルト釜で加圧しつつ加熱する。
【0008】
例えば、前記繊維化・脱水工程において、回転式の撹拌部材を設けた撹拌装置を使用してもやしをほぐす。
【0009】
例えば、前記加熱工程前に、もやしから胚軸を取り出す取出工程をさらに含み、
前記取出工程で取り出された胚軸が前記加熱工程以降の工程におけるもやしとして用いられ、
前記繊維化・脱水工程において、前記取出工程前のもやしの30~55%の重量となるようにもやしを脱水する。
【0010】
例えば、前記混合工程において、凝固剤を混合して、前記繊維化・脱水工程後のもやしと、前記ベース食材と、を凝固させる。
【0011】
例えば、前記凝固後の混合物を包装材に封入し、当該包装材の内部を真空にする真空工程をさらに含む。
【0012】
例えば、前記真空工程後の混合物を冷凍する冷凍工程をさらに含む。
【0013】
例えば、前記ベース食材は、おからと、こんにゃく粉と、であり、
前記もやし含有食品は、肉様食品である。
【0014】
本発明の第2の観点に係る肉様食品は、
繊維状のもやしと、おからと、こんにゃく粉と、を含み、かつ凝固により一体化されている。
【0015】
例えば、前記繊維状のもやしは、前記おから及び前記こんにゃく粉に絡みついている。
【0016】
例えば、前記繊維状のもやしは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水されたものである。
【0017】
例えば、原料合計1000質量部に対し、繊維状のもやし75~200質量部、おから120~250質量部、こんにゃく粉15~25質量部を含む。
【0018】
本発明の第3の観点に係る加熱された食品は、
繊維状のもやしと、穀物粉と、を含み、該繊維状のもやしが該穀物粉に絡みつくことで食品全体に分布している。
【0019】
例えば、前記繊維状のもやしは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水されたものである。
【0020】
本発明の第4の観点に係る非乾燥食品は、
繊維状のもやしと、半固形状食材と、を含み、該繊維状のもやしが該半固形状食材に絡みつくことで食品全体に分布している。
【0021】
例えば、前記繊維状のもやしは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水されたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、冷凍後解凍しても、まとまりを持ちつつ離水が発生しにくいもやし含有食品の製造方法、肉らしい食感を持つ肉様食品、並びにまとまりを持ちつつ離水が発生しにくい加熱された食品及び非乾燥食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る肉様食品の製造方法における一連の工程を示すフロー図である。
図2図1の工程の一部である、もやしの加工部分における一連の工程を示すフロー図である。
図3】(a)は、本実施例による肉様食品をブロック状に成形し揚げ物(唐揚げ風)にしたものの写真図であり、(b)は、本実施例による肉様食品を板状に成形し揚げ物(ハムカツ風)にしたものの断面の写真図であり、(c)は、本実施例による肉様食品を平板状に成形しビーフジャーキーにしたものの写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1.もやし含有食品の製造方法)
本発明のもやし含有食品の製造方法は、もやしを加熱する加熱工程と、前記加熱工程後のもやしをほぐして繊維状にすると共に脱水する繊維化・脱水工程と、ベース食材と、前記繊維化・脱水工程後のもやしと、を混合する混合工程と、を含む。
【0025】
本発明において用いられるもやしの種類は限定されず、緑豆もやし、大豆もやし、ブラックマッペもやし等、いずれの種類のもやしも適用することができる。もやしの使用部位として、胚軸、根及び葉を含むもやし全体を用いてもよく、胚軸を取り出して胚軸のみを用いてもよい。好ましくは、胚軸以外の部分を取り除いて胚軸のみを使用する。
【0026】
もやしを加熱する加熱工程において、もやしを加熱する方法については、本発明の効果を奏する限り制限されず、例えば、レトルト釜で加熱する方法、ボイルすることで加熱する方法等が採用され得る。また、もやしを加圧しつつ加熱してもよい。加熱温度は、例えば、100℃前後又は100℃以上が好ましい。
【0027】
繊維化・脱水工程では、加熱工程後のもやしをほぐして繊維状にすると共に脱水する。もやしをほぐして繊維状にする方法については、本発明の効果を奏する限り制限されず、例えば、カッターを備えた撹拌装置を用いる方法等が採用され得る。この際、食品の最終形態に鑑み、もやしの繊維の太さ又は長さを調整してもよい。また、脱水方法についても、本発明の効果を奏する限り制限されず、例えば、回転式脱水装置を用いる方法等が採用され得るが、乾燥により脱水を行ってもよい。乾燥の具体的方法は、例えば、自然乾燥による方法;減圧乾燥による方法;天日干しによる方法;熱風乾燥による方法等である。
【0028】
混合工程で用いられるベース食材は、食品のベース(基材)として使用される食材であれば特に制限なく用いることができるが、例えば、おから、こんにゃく粉、穀物粉、半固形状食材等を挙げることができる。これらのベース食材を単独で用いてよく、又は2以上のベース食材を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
穀物粉の原料は、穀物をはじめ豆類をも含み、例えば、小麦、米、えんどう豆、カカオ豆、玄米、大麦、オーツ麦、ライ麦、ハト麦、粟、稗、とうもろこし、蕎麦、大豆等を挙げることができる。
【0030】
半固形状食材として、例えば、クリーム、チョコレートペースト、ゼリー、ドレッシング、クリームチーズ、ソース等を挙げることができる。
【0031】
本発明のもやし含有食品の製造方法によると、加熱することでもやしを軟化させることができる。その後、ほぐして繊維状にしたもやしに、ベース食材が絡まり、もやし含有食品からベース食材が漏れにくくなる。また、ベース食材と繊維状にしたもやしが各原料から出た水分を吸収し、水分を保つ。よって、ベース食材に絡みついた繊維状のもやしがもやし含有食品としてのまとまりを持たせつつ離水が発生しにくくなる。本発明者は、もやしの繊維が高温下(100℃以上)でも壊れることなく、機械的強度が高いことを新たに見出し、鋭意研究した結果、本発明のもやし含有食品の製造方法に想到した。もやしの繊維が高温下でも丈夫であるのは、特定の理論に縛られることを望むものではないが、ほぐして繊維状にしたもやしの断面の形状が、丸みを帯びたものではなく、角張った形状をなすことに起因するものと考えられる。
【0032】
また、本発明においては、前記加熱工程において、もやしを包装材に封入し、当該包装材の内部を真空にして、レトルト釜で加圧しつつ加熱することが好ましい。これによると、もやしを封入した包装材の内部を真空にして、加圧しつつ加熱することで、もやしをむらなく加熱してもやしの水分の分離を促すことができる。
【0033】
また、本発明においては、前記繊維化・脱水工程において、回転式の撹拌部材を設けた撹拌装置を使用してもやしをほぐすことが好ましい。これによると、撹拌装置を用いて適切にもやしを繊維状にほぐすことができる。
【0034】
また、本発明においては、前記加熱工程前に、もやしから胚軸を取り出す取出工程をさらに含み、前記取出工程で取り出された胚軸が前記加熱工程以降の工程におけるもやしとして用いられ、前記繊維化・脱水工程において、前記取出工程前のもやしの30~55%の重量となるようにもやしを脱水することが好ましい。これによると、もやしを繊維状に加工してもやし含有食品の製造に使用することができる。また、繊維化・脱水工程において、取出工程前のもやしの30~55%の重量となるようにもやしを脱水することで、もやし含有食品の離水防止に対してより効果的な網目構造の繊維を取得することができる。さらに、もやし由来の水分が抑えられるので、離水が発生しにくい。
【0035】
また、本発明においては、前記混合工程において、凝固剤を混合して、前記繊維化・脱水工程後のもやしと、ベース食材と、を凝固させてもよい。本発明において「凝固剤」として、例えば、消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等、食品分野で通常用いられる凝固剤を用いることができる。
【0036】
また、ベース食材として、おからと、こんにゃく粉と、を用いて、前記混合工程において、凝固剤を混合して、前記繊維化・脱水工程後のもやしと、おからと、こんにゃく粉と、を凝固させることで、肉様食品を製造してもよい。本発明により得られる肉様食品においては、おから及びこんにゃく粉に絡みついた繊維状のもやしが肉様食品としてのまとまりを持たせつつ離水が発生しにくくなり、肉様食品のぱさつきが軽減されて弾力も確保される。また、繊維状のもやしは、肉の筋原線維のような食感を生じさせ、肉様食品に「肉らしい噛み応え」を与える。本発明による肉様食品の詳細については、後述する。
【0037】
また、本発明においては、前記凝固工程後の混合物を包装材に封入し、当該包装材の内部を真空にする真空工程を備えていることが好ましい。これによると、内部を真空にすることで圧力がかかり、原料同士の隙間がなくなって、原料から滲出した水分がベース食材に吸収される。また、肉様食品の場合、繊維状のもやしにおからが押し付けられ、よりおからが原料に絡まりやすくなることにより、より弾力のある肉様の食感を有する肉様食品を製造することができる。
【0038】
また、本発明においては、前記真空工程後の混合物を冷凍する冷凍工程を含むことが好ましい。これによると、肉様食品の場合、混合物を冷凍することで、繊維状のもやしにおからが押し付けられ、よりおからが原料に絡まりやすくなることにより、より弾力のある肉様の食感を生じ、離水も抑制するという上記効果がさらに促進される。
【0039】
また、本発明においては、前記凝固工程後の混合物をブロック状、ミンチ状、又は板状にする切断工程を含むことが好ましい。例えば、肉様食品の場合、ブロック状にすることで唐揚げ、シチュー、煮物等に、ミンチ状にすることでハンバーグ、餃子、メンチカツ、ソーセージ、野菜炒め、カレー、ミートボール、パテ、コンビーフ等のミンチ肉と同様の料理に、板状にすることで好みの厚さにスライスして、ビーフジャーキー、焼肉、スライス肉、ステーキ、とんかつ風やハムカツの揚げ物等に利用することができる。また、ブロック状又は板状にした肉様食品をプレス加工することで、食感に変化をもたせることができ、例えば、弾力を低下させることで噛み応えを低減させたり、筋原線維のような食感を所望の程度まで軽減することができる。
【0040】
以下、本発明の肉様食品の製造の実施形態について、図1を参照しつつ説明する。まず、粉砕工程S1において、おからを砕く。使用するおからは低水分のものが好ましい。
【0041】
次に、こんにゃく粉混合工程S2において、粉砕工程S1後のおからと、水、つなぎ材、及びこんにゃく粉を合わせたものとを高速撹拌により混合する。つなぎ材は、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉、米澱粉、豆類の澱粉、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉等が使用される。また、複数のつなぎ材が使用されていてもよい。なお、おから及びこんにゃく粉を水に漬け込んだ後に高速撹拌により混合してもよい。
【0042】
次に、調味工程S3において、こんにゃく粉混合工程S2後の混合物と、香辛料、野菜のペースト液、及び調味料、並びに、必要に応じて色素を合わせたものとを混ぜ合わせる。香辛料としては、クミン、ごま、ホワイトペッパー、ピンクペッパー、ブラックペッパー、ターメリック、ナツメッグ、バジル、パセリ、パプリカパウダー、マスタード、チリパウダー、ローリエ等が使用される。野菜のペースト液としては、人参、たまねぎ、にんにく等が使用される。調味料としては、塩、味噌、糖類、酵母エキス等が使用される。色素は、ベニコウジ色素、カラメル色素等が使用される。香辛料、野菜のペースト液、調味料、食用油脂、色素、及び添加物は、肉様食品の用途、例えば、給食用、病院食用、レストラン用、家庭用等に応じて、適宜選択し使用する。
【0043】
次に、もやし混合工程S4において、調味工程S3後の混合物と、後述する図2の加工方法によって加工が施されたもやしとを高速撹拌により混ぜ合わせる。この際、味噌等の一部の調味料も併せて混合してもよい。
【0044】
油脂混合工程S5において、もやし混合工程S4後の混合物に食用油脂を加えて、高速撹拌により混ぜ合わせる。食用油脂としては、サラダ油、オリーブオイル、ごま油、グレープシードオイル、菜種油、固形油脂等が適宜使用される。
【0045】
次に、凝固工程S6において、油脂混合工程S5後の混合物と、消石灰(凝固剤)及び水を合わせたものとを高速撹拌により混合させて、混合物を凝固させる。
【0046】
次に、レトルト工程S7において、凝固工程S6後の混合物を真空下で加圧しつつ加熱する。凝固工程S6後の混合物をプラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材(本発明でいう、包装材)に封入して、プラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材の内部を真空にする。そのプラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材をレトルト釜で加圧しつつ加熱して、雑菌を滅菌する。プラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材の内部を真空にすることで混合物に含まれる原料同士の隙間がなくなり、各原料から滲出した水分がおから及びもやしの繊維に吸収される。また、もやしの繊維におからが押し付けられ、よりおからが絡まりやすくなることにより、より弾力のある肉食感を有する肉様食品を製造することができる。なお、レトルト工程S7における凝固工程S6後の混合物をプラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材に封入して真空にする処理が、本発明の真空工程に対応する。
【0047】
次に、冷凍工程S8において、レトルト工程S7後の混合物を冷凍庫で冷凍することで、混合物が肉様食品となる。冷凍することで、肉のような弾力が得られ、離水もほとんどなくすことができる。
【0048】
次に、保存工程S9において、冷凍工程S8後の肉様食品を、冷凍、チルド、又は直射日光を避けた常温において保存する。この場合も、離水もほとんどなく保存できる。
【0049】
次に、切断工程S10において、肉様食品をブロック状、ミンチ状、又は板状にする。肉様食品を通常の肉の塊同様に切断することで、前述のとおり様々な料理に活用することができる。
【0050】
以下、図1に示すもやし混合工程S4において用いられるもやしの加工方法について図2を参照しつつ説明する。まず、取出工程T1において、流水でもやしを繰り返し洗浄し、雑菌を除去する。その際に、レオニーダーと、もやしの目にあったざると、を使用して、遠心分離により、ざるの内側にもやしの胚軸を収集するとともに、もやしの胚軸以外の部分がざるの外側に行くようにして当該部分を取り除く。こうすることで、以後の工程において、胚軸以外の部分を取り除いたもやしを繊維状に加工して肉様食品の製造に使用することができる。なお、ハサミや包丁等で、もやしの胚軸以外の部分を取り除いてもよい。
【0051】
次に、レトルト釜工程T2において、取出工程T1後のもやしを真空になるよう封入して、加圧しつつ加熱する。もやしをプラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材(本発明でいう、包装材)に封入する。そのプラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材の内部を真空にしたものをレトルト釜で所定時間、加圧しつつ加熱処理し、その後、少し温度・圧力を上げ、より長い時間、加圧しつつ加熱処理する。これにより、もやしの殺菌も行なわれる。最後に、加圧しつつ冷却する。加熱は100℃前後又は100℃以上で行う。加圧は、レトルト釜内を大気圧より高い圧力にすることでなされる。もやしを封入したプラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材の内部を真空にして、加圧しつつ加熱処理することで、むらなく加熱して水分の分離を促すことができる。なお、レトルト釜工程T2における取出工程T1後のもやしを加熱する処理が、本発明における加熱工程に対応する。
【0052】
次に、潰し工程T3において、もやしを粗い繊維状にする。もやしが封入されたプラスチックパウチ又はアルミパウチ包装材をたたいたり、その包装材にローラーをかけたりすることでもやしを潰して、粗い繊維状にほぐされたもやしを取得する。
【0053】
次に、撹拌工程T4において、ナイロン包装袋から取り出したもやしをさらにほぐす。本工程では、回転式の特殊カッター(本発明でいう、撹拌部材)が設けられた撹拌装置が用いられる。特殊カッターは、サイレントカッターのような一般の切断装置に用いられるものと比べて刃がもやしを切断しにくいように特殊な加工が施されている。この装置を用いて、カッターを回転させる時間と速さを調整しつつもやしを撹拌することにより、もやしを適切に繊維状にすることができる。また、上記のような特殊カッターを用いることで、もやしの繊維が必要以上に短くなりにくい。撹拌装置による撹拌後、もやしを脱水する。具体的には、撹拌装置による撹拌後のもやしを脱水用の袋体に入れ、袋体を食品用の脱水装置に設置する。そして、脱水装置を作動させ、袋体内のもやしを脱水する。本工程において、取出工程T1前のもやしの30~55%程度の重量となるようにもやしを脱水する。なお、潰し工程T3及び撹拌工程T4におけるもやしをほぐして繊維状にする処理が、本発明の繊維化・脱水工程における繊維化工程に対応する。また、撹拌工程T4におけるもやしを脱水する処理が、本発明の繊維化・脱水工程における脱水処理に対応する。
【0054】
取出工程T1前のもやしの30~55%の重量となるようにもやしを脱水することで、肉様食品の離水防止に対してより効果的な網目構造の繊維状のもやしを取得することができる。つまり、細かくなったもやしの繊維が、おからともやしを混合した際に、和紙のように均一におからに絡まり、繊維からおからが漏れにくくなる。さらに、もやし由来の水分が抑えられるので、離水が発生しにくい。
【0055】
本実施形態に係る以上の工程においては、原料合計1000質量部に対し、おから120~250質量部、こんにゃく粉15~25質量部、図2の加工を施したもやし75~200質量部、水420~540質量部、糖類25~50質量部、食用油脂20~70質量部を使用することが好ましい。その他、つなぎ材として澱粉を用いる場合は38~65質量部、野菜のペースト液として人参を用いる場合は15~37質量部をそれぞれ使用することが好ましい。
【0056】
以上説明した実施形態によると、図2に示す加工を施したもやしを使用することで、以下の通り、まとまりをもたせつつ離水が発生しにくい、肉らしい噛み応えのある肉様食品が実現する。まず、レトルト釜工程T2において加熱することでもやしを軟化する。その後、潰し工程T3及び撹拌工程T4でほぐして繊維状にしたもやしを、図1のもやし混合工程S4において他の原料と混合する。これにより、おから等の原料が繊維状にしたもやしに絡まり、肉様食品からおから等が漏れにくくなる。また、繊維状にしたもやしとおからが各原料から出た水分を吸収し、繊維状にしたもやしとおからが水分を保つ。よって、おから等にからみついた繊維状のもやしが肉様食品としてのまとまりを持たせつつ離水が発生しにくくなり、肉様食品のぱさつきが軽減されて弾力も確保される。また、繊維状にしたもやしは、肉の筋原線維のような食感を生じさせ、肉様食品に「肉らしい噛み応え」を与える。
【0057】
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。以下、上述の実施形態に係る変形例について説明する。
【0058】
上述の実施形態では、油脂混合工程S5において、もやし混合工程S4後の混合物に食用油脂をいれて高速で混ぜ合わせる。しかし、油脂は使用しなくてもよいし、調味工程S3等の他の工程で、油脂と他の原料とを混合してもよい。
【0059】
上述の実施形態では、保存工程S9後、切断工程S10を行っている。しかし、必要な形状に切断後、保存してもよい。
【0060】
上述の実施形態では、レトルト釜工程T2において、レトルト釜でもやしを加熱しているが、ボイルすることで加熱してもよい。
【0061】
上述の実施形態では、潰し工程T3及び撹拌工程T4において、もやしを繊維状にほぐしている。しかし、もやしをほぐす工程はどちらか一方のみでもよい。
【0062】
上述の実施形態では、撹拌工程T4において、もやしをほぐしつつ脱水する。しかし、もやしをほぐす工程と脱水工程を別に行ってもよい。例えば、潰し工程T3でもやしをほぐし、さらしを使ってもやしを絞ってもよい。また、もやしをほぐす工程と脱水工程のどちらを先に行ってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、撹拌工程T4において、取出工程T1前のもやしの30~55%程度の重量となるようにもやしを脱水する。しかし、もやしは、30%未満の重量に脱水してもよい。もやしの脱水の程度が高いほど硬質な肉様食品が実現する。
【0064】
(2.肉様食品)
本発明の肉様食品は、繊維状のもやしと、おからと、こんにゃく粉と、を含み、かつ凝固により一体化されている。
【0065】
もやしの詳細については、前述同様である。繊維状のもやしは、もやしをほぐして繊維状にしたものであり、例えば、回転式の特殊カッター(本発明でいう、撹拌部材)が設けられた撹拌装置を用いて、カッターを回転させる時間と速さを調整しつつもやしを撹拌することにより、もやしを適切に繊維状にしたものが挙げられる。本発明の効果を奏する限り、もやしを繊維状にする方法については制限がない。
【0066】
本発明において「おから」として、生おから、冷凍品のおから又は乾燥品のおからを使用することができるが、低水分の生おからを用いるのが好ましい。
【0067】
本発明の肉様食品は、凝固により一体化されている。凝固は、凝固剤によって行われ、凝固剤の詳細については、前述同様である。凝固の方法については、本発明の効果を奏する限り制限されないが、例えば、もやし、おから及びこんにゃく粉と、凝固剤と、水と、を高速撹拌により混合させて、混合物を凝固させる方法が挙げられる。
【0068】
本発明の肉様食品では、肉様食品としてのまとまり(一体性)を有しつつ、離水が発生しにくく、肉様食品のぱさつきが軽減されて弾力も確保される。また、繊維状のもやしは、肉の筋原線維のような食感を生じさせ、肉様食品に「肉らしい噛み応え」を与える。
【0069】
本発明の肉様食品は、通常の肉の塊同様に切断することで、様々な料理に活用することができる。例えば、ブロック状にすることで唐揚げ、シチュー、煮物等に、ミンチ状にすることでハンバーグ、餃子、メンチカツ、ソーセージ、野菜炒め、カレー、ミートボール、パテ、コンビーフ等のミンチ肉と同様の料理に、板状にすることで好みの厚さにスライスして、ビーフジャーキー、焼肉、スライス肉、ステーキ、とんかつ風やハムカツの揚げ物等に利用することができる。また、ブロック状又は板状にした肉様食品をプレス加工することで、食感に変化をもたせることができ、例えば、弾力を低下させることで噛み応えを低減させたり、筋原線維のような食感を所望の程度まで軽減することができる。このように、本発明の肉様食品は、ブロック状、厚切り肉状、薄切り肉状、ミンチ状等、目的の食品形態に応じた形状に加工することができ、また、食肉と同様に、焼く、煮る、炒める、揚げる、蒸す、炙り焼き、蒸し焼き、燻製処理する等、加熱調理することができる。
【0070】
本発明の肉様食品において、好ましくは、繊維状のもやしが、おから及びこんにゃく粉に絡みついており、それによって繊維状のもやしとおからとこんにゃく粉とが一体化されている。繊維状のもやしが、和紙のように均一に、おから及びこんにゃく粉に絡まりつき、該もやしが各原料から出た水分を吸収し、水分を保つ。これにより、該もやしとおからとこんにゃく粉とが一体化されることとなる。つまり、おから及びこんにゃく粉に絡みついた該もやしが、肉様食品としてのまとまり(一体性)を持たせ、かつ離水が発生しにくくなっており、肉様食品のぱさつきが軽減されて弾力も確保される。
【0071】
前記繊維状のもやしとして、好ましくは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水された繊維状のもやしが用いられる。このような繊維状のもやしを用いることで、肉様食品の離水防止に対してより効果的な網目構造の繊維を取得することができ、さらに、もやし由来の水分が抑えられるので、離水が発生しにくい。
【0072】
本発明の肉様食品の原料合計1000質量部に対し、好ましくは、もやし75~200質量部、おから120~250質量部、こんにゃく粉15~25質量部を含む。この範囲では、肉様食品としてのまとまりを持たせつつ離水が発生しにくくなり、肉様食品のぱさつきが軽減されて弾力も確保され、また、肉様食品に「肉らしい噛み応え」を与える。
【0073】
本発明の肉様食品は、繊維状のもやし、おから、こんにゃく粉及び凝固剤の他に、例えば、食品に通常添加されるつなぎ材、香辛料、野菜のペースト液、調味料、色素、食用油脂、水等を適宜加えてもよい。つなぎ材、香辛料、野菜のペースト液、調味料、色素、食用油脂及び水の添加に関して、それらの種類や添加量等については前述同様である。
【0074】
(3.加熱された食品)
本発明の加熱された食品は、繊維状のもやしと、穀物粉と、を含み、該繊維状のもやしが該穀物粉に絡みつくことで食品全体に分布していることを特徴とするものである。
【0075】
もやし及び穀物粉の詳細については、前述同様である。本発明の加熱された食品においては、繊維状のもやしに、穀物粉が絡まり、食品から穀物粉が漏れにくくなっている。また、穀物粉と繊維状にしたもやしが各原料から出た水分を吸収し、水分を保つ。よって、穀物粉に絡みついた繊維状のもやしが、食品全体に分布することで、食品としてのまとまりを持たせつつ離水が発生しにくくなる。
【0076】
本発明の加熱された食品において、前記繊維状のもやしは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水されたものであってもよい。この場合、食品の離水防止に対してより効果的な網目構造の繊維を取得することができる。さらに、もやし由来の水分が抑えられるので、離水が発生しにくい。
【0077】
本発明の加熱された食品の最終形態について、これらに限定されるものではないが、例えば、繊維状のもやし及び小麦粉を用いて、プレス加工により平板状に成型し、これを焼成させてせんべいとすることができ;繊維状のもやし及びカカオ豆粉を用いて、ブロック状に成型し、これを焼成させて菓子又はバータイプ若しくはブロックタイプの栄養補助食品とすることができる。
【0078】
本発明の加熱された食品は、繊維状のもやしと、穀物粉と、を混合し、加熱することで得られるものであるが、加熱には、焼成する、蒸す、蒸し煮する、煮る、ゆでる、揚げる、炒める、加熱乾燥、燻製処理する等の方法が含まれる。
【0079】
本発明の加熱された食品は、繊維状のもやし及び穀物粉の他に、例えば、食品に通常添加されるつなぎ材、香辛料、野菜のペースト液、調味料、色素、食用油脂、水等を適宜加えてもよい。
【0080】
(4.非乾燥食品)
本発明の非乾燥食品は、繊維状のもやしと、半固形状食材と、を含み、該繊維状のもやしが該半固形状食材に絡みつくことで食品全体に分布していることを特徴とするものである。
【0081】
もやし及び半固形状食材の詳細については、前述同様である。本発明の食品においては、繊維状のもやしに、半固形状食材が絡まり、食品から半固形状食材が漏れにくくなっている。また、半固形状食材と繊維状にしたもやしが各原料から出た水分を吸収し、水分を保つ。よって、半固形状食材に絡みついた繊維状のもやしが、食品全体に分布することで、食品としてのまとまりを持たせつつ離水が発生しにくくなる。
【0082】
本発明の非乾燥食品において、前記繊維状のもやしは、胚軸の部分のみであり、かつ、もやしから胚軸を取り出す前のもやしの30~55%の重量に脱水されたものであってもよい。この場合、もやし含有食品の離水防止に対してより効果的な網目構造の繊維を取得することができる。さらに、もやし由来の水分が抑えられるので、離水が発生しにくい。
【0083】
本発明の非乾燥食品の最終形態について、これらに限定されるものではないが、例えば、繊維状のもやし及びクリームを用いて、菓子やパンの内部に入れることができる。液だれせず、まとまりよいクリームとなるため、菓子やパンの内部に入れた場合、クリームが流れ出たり、菓子やパンにクリームの水分が滲出することを防止できる。また、繊維状のもやし及びゼリーを用いて、ゼリー菓子とすることができる。これにより、低カロリーかつ繊維質が豊富な健康志向の高いゼリー菓子が実現する。
【0084】
本発明の非乾燥食品は、例えば、繊維状のもやしと、半固形状食材と、を混合することで得られるものである。
【0085】
本発明の非乾燥食品は、繊維状のもやし及び半固形状食材の他に、例えば、食品に通常添加されるつなぎ材、香辛料、野菜のペースト液、調味料、色素、食用油脂、水等を適宜加えてもよい。
【0086】
(5.結語)
以上説明したように、本発明によれば、冷凍後解凍しても、まとまりを持ちつつ離水が発生しにくいもやし含有食品の製造方法、肉らしい食感を持つ肉様食品、並びにまとまりを持ちつつ離水が発生しにくい加熱された食品及び非乾燥食品を提供することができる。
【0087】
本発明のもやし含有食品の製造方法では、ほぐして繊維状にしたもやしに、ベース食材が絡まり、もやし含有食品からベース食材が漏れにくくなる。また、ベース食材と繊維状にしたもやしが各原料から出た水分を吸収し、水分を保つ。よって、ベース食材に絡みついた繊維状のもやしが、もやし含有食品としてのまとまりを持たせつつ離水が発生しにくくなる。
【0088】
本発明の肉様食品は、動物性原料を使用せずに、もやし、おから及びこんにゃく粉といった植物性原料のみからなるため、食物繊維が豊富であるうえに低カロリーであり、かつ、既存の肉を用いた食品と比べて遜色ない味、食感、外観及び噛み応えが得られる。このため、本発明の肉様食品は、健康に留意しつつも美味しい肉製品を食したいという現代の消費者のニーズに合致するものである。
【0089】
本発明の加熱された食品及び非乾燥食品は、繊維状のもやしに、穀物粉又は半固形状食材が絡まり、食品から穀物粉又は半固形状食材が漏れにくくなっている。また、穀物粉又は半固形状食材と繊維状にしたもやしが各原料から出た水分を吸収し、水分を保つ。よって、穀物粉又は半固形状食材に絡みついた繊維状のもやしが、食品全体に分布することで、食品としてのまとまりを持たせつつ離水が発生しにくくなる。本発明によれば、もやしという安価な食材を使い、かつ、増粘剤といった化学物質を用いることなく、まとまりを持たせつつ離水を発生しにくくできるため、製造コストを抑えるとともに、添加物に配慮した食品を提供することができる。また、もやしは繊維質が豊富であるため、低カロリーかつ繊維質が豊富な健康志向の高い食品を提供することができる。
【実施例
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
本実施例では、以下の条件で上述の実施形態に係る製造方法を実施した。図1の粉砕工程S1においては、原料の総重量に対して、13.4%程度のおからを砕いた。こんにゃく粉混合工程S2においては、粉砕工程S1後のおからに、原料の総重量に対して、こんにゃく粉、馬鈴薯澱粉、及び水合計50.7%程度を加えて高速撹拌により1分間半程度混ぜ合わせた。調味工程S3においては、こんにゃく粉混合工程S2後の混合物に、原料の総重量に対して、香辛料、野菜のペースト液、及び色素合計12.6%程度を加えた。香辛料としては、チリパウダー、ローリエパウダー、ホワイトペッパー、酵母エキス、塩、及び糖類を使用した。野菜のペースト液としては、人参ペースト及びおろしにんにくを使用した。色素としては、ベニコウジ色素及びカラメル色素を使用した。
【0092】
もやし混合工程S4においては、調味工程S3後の混合物に、原料の総重量に対して、加工されたもやし及び味噌合計14.7%程度加えて、高速撹拌により2分間程度混ぜ合わせた。油脂混合工程S5おいては、もやし混合工程S4後の混合物に、原料の総重量に対して、食用油脂3%程度加えて、高速撹拌により2分間程度混ぜ合わせた。凝固工程S6においては、油脂混合工程S5後の混合物に、原料の総重量に対して、消石灰及び水合計3.4%程度を加えて、高速撹拌により2分間半程度混ぜ合わせた。冷凍工程S8後、保存工程S9において、冷凍、チルド、又は直射日光を避けた常温で保存した。
【0093】
また、もやしの脱水の程度を適正化するため、撹拌工程T4において脱水の程度を様々に変更しつつもやしを脱水し、それぞれのもやしについて上述の実施形態に基づき肉様食品を製造した。その結果、不要部を取り除く取出工程T1前のもやしの重量に対し、55%を超える重量のもやしを使用した場合には、冷凍後解凍した肉様食品において、保存状況等に応じ、離水が目立つ場合が発生した。また、取出工程T1前のもやしの重量に対し、30%未満の重量となるもやしを使用した場合には、肉様食品から弾力が失われ、硬質的な素材となりやすかった。したがって、もやしの脱水の程度は、取出工程T1前のもやしの重量に対し、30~55%の範囲内であることが好ましいことが判明した。
【0094】
さらに、前述のとおり得られた肉様食品により揚げ物を製造した。該肉様食品をブロック状に成形し、唐揚げ用の衣を付けてサラダ油で揚げて、唐揚げ風の揚げ物を得た(図3(a))。また、該肉様食品を板状に成形し、カツ用の衣を付けてサラダ油で揚げて、ハムカツ風の揚げ物を得た(図3(b))。これらの揚げ物を喫食したところ、しっとりとまとまりある食感と「肉らしい噛み応え」が感じられ、既存の唐揚げ又はハムカツと遜色ない味、食感、外観及び噛み応えが得られることがわかった。また、該肉様食品を平板状に成形し、炙り焼きにして、ビーフジャーキーを得た(図3(c))。このビーフジャーキーを喫食したところ、既存のビーフジャーキーと遜色ない味、食感、外観及び噛み応えが得られることがわかった。
【0095】
以上より、本実施例の肉様食品は、冷凍後解凍しても、離水が発生しにくくより肉らしい食感を持ち、既存の肉を用いた食品と比べても遜色ない味、食感、外観及び噛み応えが得られることが示された。
【0096】
なお、本発明は、本発明の広義の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0097】
本発明は、2020年10月14日に出願された日本国特許出願2020-173244号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2020-173244号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
図1
図2
図3