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特許7244976医薬液体を放出するためのディスペンサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】医薬液体を放出するためのディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20230315BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61J1/05 313C
A61M11/00 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021558748
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020059618
(87)【国際公開番号】W WO2020216599
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】19171383.3
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512245713
【氏名又は名称】アプタル ラドルフツエル ゲーエムベーハ
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツ, アンディ
(72)【発明者】
【氏名】グライナー-ペルト, ユルゲン
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532445(JP,A)
【文献】特表2015-519924(JP,A)
【文献】特開2002-128122(JP,A)
【文献】特表2008-514310(JP,A)
【文献】特表2006-516101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0134798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
A61M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別の液滴の形の医薬液体の放出のための液滴ディスペンサー(10)であって、
(a)液滴ディスペンサー(10)が、液体リザーバー(14)、容量変動可能なポンプ室(20)を有するポンプ装置(16)、及び液体の送出のための送出開口(28)を有し、
(b)液滴ディスペンサー(10)が、送出開口(28)を包囲する液滴形成面(120)を有し、
(c)液滴ディスペンサー(10)が、主要範囲方向(2)に配置された細長ハウジングを有し、送出開口(28)が、液滴ディスペンサー(10)の遠位端に与えられ、
(d)液滴ディスペンサー(10)が、作動ボタン(70)を有し、作動ボタン(70)が、液滴ディスペンサー(10)の側面のハウジングの外部面(54)の領域に与えられ、非作動開始位置と作動終了位置の間で押し下げ可能であり、
(e)容量変動可能なポンプ室(20)が、接続領域(70A)における作動ボタン(70)に接続された変位可能及び/又は変形可能なポンプ室壁(64)によって一つの側を画定され、それが、作動ボタン(70)の押し下げによってポンプ室のサイズを減少させ、
(f)液滴ディスペンサー(10)が、力入力領域(70B)において作動ボタン(70)に作用するばね装置(72)を有し、それによって作動ボタン(70)が、その非作動開始位置の方向に力を受け、
(g)作動ボタン(70)が、ロッカー軸(6)のまわりで揺動することによってハウジングに対して揺動可能であるように設計されたロッカーボタン(70)の形をとり、
(h)力入力領域(70B)及び接続領域(70A)が、ロッカー軸(6)から異なる距離でロッカーボタン(70)の上に与えられる
ことを特徴とするディスペンサー(10)。
【請求項2】
以下のさらなる特徴を有する、請求項1に記載の液滴ディスペンサー(10):
(a)ロッカー軸(6)が、主要範囲方向(2)に基づいて送出開口(28)に対してロッカーボタン(70)の反対側の端に与えられる。
【請求項3】
以下のさらなる特徴を有する、請求項1又は2に記載の液滴ディスペンサー(10):
(a)戻り止め(37)が、ロッカー軸(6)から遠い方のロッカーボタン(70)の側に与えられ、ロッカーボタン(70)を押し下げることを難しくし、好ましくはロッカーボタン(70)を押し下げるためにロッカー軸(6)から遠い方のロッカーボタン(70)の側に少なくとも10ニュートンの作動力が要求される。
【請求項4】
以下のさらなる特徴を有する、請求項1~3のいずれかに記載の液滴ディスペンサー(10)
力入力領域(70B)が、接続領域(70A)よりロッカー軸(6)からさらに遠くに与えられる。
【請求項5】
以下のさらなる特徴の少なくとも一つを有する、請求項1~4のいずれかに記載の液滴ディスペンサー(10):
(a)ロッカーボタン(70)と変位可能及び/又は変形可能なポンプ室壁(64)の間に弾性変形可能な補償区域(66)が与えられ、及び/又は
(b)ポンプ室壁(64)が、変形可能な膜部分(60)によって形成される。
【請求項6】
以下のさらなる特徴を有する、請求項1~5のいずれかに記載の液滴ディスペンサー(10):
(a)ハウジング側の軸受(40)に収容された少なくとも一つの軸区域(74)が、ロッカーボタン(70)に与えられる。
【請求項7】
以下のさらなる特徴を有する、請求項1~のいずれかに記載のディスペンサー(10):
(a)ディスペンサー(10)が、液滴ディスペンサー(10)として設計され、かつ送出開口(28)の下流に液滴形成の手段を有し、好ましくは
(b)液滴形成の手段が、液滴形成面を含み、液滴形成面が、送出開口を包囲し、好ましくは平坦又は凹状形態であり、かつ/又は液滴形成面が、好ましくは鋭利な破壊縁によって包囲され、及び/又は
(c)ディスペンサーが、作動ボタンの完全な作動が正確に一つの落下する液滴を生成するようにポンプ装置(16)と液滴形成の手段の間で共同作用を有する
ことを特徴とするディスペンサー(10)。
【請求項8】
以下のさらなる特徴を有する、請求項1~のいずれかに記載のディスペンサー(10):
(a)ディスペンサー(10)が、ハウジングの上に配置されることができかつ所定位置で送出開口(28)を保護するディスペンサーキャップ(100)を有し、好ましくは
(b)ディスペンサーキャップ(100)が、通気キャップとして構成され、かつ通気開口(102)を有し、通気開口(102)を通して送出開口(28)が、ディスペンサーキャップ(100)を所定位置に有する場合であっても、好ましくは通気開口(102)に割り当てられた滅菌フィルター(104)を有する場合であっても周囲大気に接続されているか又は接続されることができ、及び/又は
(c)ディスペンサーキャップ(100)が、パッド(106)を有し、パッド(106)が、ディスペンサーキャップ(100)を所定位置に有する場合に、送出開口(28)の下流に残るいかなる液体も吸収され、かつ/又は汚染除去されるように送出開口(28)の上方に又は送出開口(28)の上に位置される
ことを特徴とするディスペンサー(10)。
【請求項9】
以下の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1~のいずれかに記載のディスペンサー(10):
(a)最大ポンプ室容積と最小ポンプ室容積の間の差が、20μl~50μl、好ましくは30μl~40μlであり、
(b)最小ポンプ室容積と最大ポンプ室容積の間の比率が、1:2以下、好ましくは1:3以下であり、
(c)ディスペンサー(10)が、送出開口(28)の上流に送出弁(26)を有し、送出弁が、好ましくは0.3barの正圧を超えると開放するように設計され、
(d)ディスペンサーの液体リザーバー(14)が、ポンプ装置(16)を包囲するハウジングとともにワンピース形態で外部面(15)を有し、別個部分の形態のベース(12)が、好ましくは送出開口(28)に対して反対側の端の外部面(15)に固定され、
(e)液体リザーバーが、通気通路によって周囲大気に接続されるか、又は液体リザーバーが、変動可能な内部容積を有し、かつ可撓可能もしくは変位可能な壁によって目的のために画定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬液体の放出のため、特に個別の液滴の形の医薬液体の滴下放出のためのディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なタイプのディスペンサーは、液体リザーバー、容量変動可能なポンプ室を有するポンプ装置、及び液体の送出のための送出開口を有する。ポンプ装置によって、液体は、送出開口に運ばれることができる。ディスペンサーは、側面作動(side-actuation)ディスペンサーとして設計される。これが意味することは、ディスペンサーが主要範囲方向に(in a main direction of extension)配置された細長ハウジングを有し、送出開口がディスペンサーの遠位端に与えられ、作動ボタンがディスペンサーの側面のハウジングの外部面の領域におけるポンプ装置の作動のために与えられるということである。かかる側面作動ディスペンサーの取り扱いは、一般的にハウジングの外部面が把持され、作動ボタンが親指によって作動されるように実施される。
【0003】
DE102006012898A1は、液滴ディスペンサーとして設計された、一般的なタイプの側面作動ディスペンサーを既に開示する。しかしながら、そこに記載されたディスペンサーの幾つかの態様は、不利である。例えば、親指による作動の場合において、使用者は、ディスペンサー中の作動取手の変位の制御された押し下げを達成することが難しいことがある。最初の使用はまた、ディスペンサーの供給時にポンプ室及び放出通路に存在する空気が多すぎることで難しくなっており、従って送出弁は、空気が最初の使用によって追い出されることを可能とするために極めて低い正圧で開放しなければならない。さらに、全ての液体を案内する構成要素の極めて正確な整合を、かかる液滴ディスペンサーは必要とし、それは、かかるディスペンサーを顧客の望み、特に色及び形状に関する医薬液体の製造者のための市場で一般的な設計に適応させることを難しくする。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上記の不利が克服又は少なくとも減少される、上記の一般的なタイプの側面作動ディスペンサーを開発することである。
【0005】
この目的は、放出前に液体を貯蔵するための液体リザーバー、容量変動可能なポンプ室を有する一体化されたポンプ装置を有するハウジング、及び液体の送出のための送出開口を有するディスペンサーを提案することによって達成される。ポンプ装置は、液体リザーバーから液体を吸引し、それをディスペンサーの作動により送出開口を通して送出する役割を行なう。
【0006】
ディスペンサーは、側面作動ディスペンサーとして構成され、従って主要範囲方向に配置された細長ハウジング、及びディスペンサーの遠位端の送出開口を有する。ハウジングは、本質的に丸い横断面を有してもよいが、そこから変化して幾分平坦な設計を有してもよい。液体リザーバーは、送出開口に対して反対側の端に与えられることが好ましい。ポンプ装置を作動するための作動ボタンは、ディスペンサーの側面のハウジングの外部面の領域に与えられ、非作動開始位置と中心軸の方に押し下げられた作動最終位置の間で変位可能である。作動ボタンは、一般的に親指によって作動される。
【0007】
ポンプ装置は、例えば内部変形可能な膜区域によって実現される、複数の区域で変形可能なポンプ室壁、又はピストンのように全体として変位可能なポンプ室を特に与えられることができる。作動ボタンの押し下げは、特にピストン又は膜区域が主要範囲方向を横断して変位されることで、ポンプ室のサイズの減少をもたらす。一般的に、ポンプ室は、二つの弁によって画定される:即ち、液体リザーバーに対してポンプ室内で負圧の場合に開放する入口側の入口弁と、送出開口に導く送出通路と比較してポンプ室内で正圧の場合に開放する出口側の出口弁とによって画定される。入口弁は、液体リザーバー中及びポンプ室中で同一圧力で閉じられ、好ましくはポンプ室中で約0.1~0.2の負圧を越えると開放する。出口弁は、ポンプ室中及び接続する送出通路中で同一圧力で閉じられ、好ましくはポンプ室中で約0.5barの正圧を越えると開放する。周囲圧力に対して送出通路中の液体が正圧の場合に開放するさらなる弁が、送出開口の上流にあることが好ましい。
【0008】
以下に記載される本発明の態様は、特に液滴ディスペンサー(即ち、単一液滴の形の医薬液体を送出するために意図されたディスペンサー)の実施の場合に有利である。この目的のため、液滴形成の手段は、送出開口(即ち、送出された液体が、その送出された容積が重力の結果として液滴形成の手段から離れるようになる液滴を形成するのに十分になるまで集合する領域)を越えて与えられることが好ましい。特に、液滴形成の手段は、送出開口のまわりの液滴形成面であることができ、それは、特に平坦又は凹状形状を有するか、及び/又は好ましくは0.5mm未満の曲率半径を持つ鋭い破壊縁によって外側に画定される。液滴ディスペンサーで述べられる送出弁は、一般的に、好ましくは少なくとも0.3bar、より好ましくは少なくとも0.5barの正圧で開放し、液体が低い圧力でのみ送出開口を通って流れ、それを越えて前述の液滴形成の手段に最初に集合するように設計されることが好ましい。弁を開放するための正圧は、保存剤が添加されていない医薬液体の場合には、圧力の外部変動が開放を起こすことをできるだけ防止するために低くしすぎないようにすべきである。保存剤が添加されている液体の場合には、この条件は、低くなる。ここでは、0.05barより下の送出弁の開放圧力が可能でありかつ有利でありうる。
【0009】
もし本発明のディスペンサーが液滴ディスペンサーとして構成されるなら、ポンプ室は、20μl~50μl、好ましくは30μl~40μlのポンプ室の最大容積と最小容積の間の容積差によって形成された利用可能容積を持つことが好ましい。かかる容積は、液滴形成の手段の一般的な構成における液体の容積にほぼ相当する。従って、使用者は、作動ボタンの一回の作動によって正確に一つの液滴を送出することができる。もし液滴形成の手段がより大きな液滴を形成するように設計されるなら、ポンプ室の利用可能な容積は、対応してより大きくすることが好ましい。液滴ディスペンサーとしてディスペンサーを構成する場合であっても、一回の作動で複数の液滴を送出することになるときには大きなポンプ室が適切でありうる。さらに、ポンプ室が一回の作動あたり正確に二つの液滴のために構成され、この目的のために好ましくは60μl~80μlのポンプ室の最大容積と最小容積の間の容積差を持つこと、又はポンプ室が一回の作動あたり正確に三つの液滴のために構成され、この目的のために好ましくは90μl~120μlのポンプ室の最大容積と最小容積の間の容積差を持つことが特に好ましい。
【0010】
最小ポンプ室容積と最大ポンプ室容積の間の比率は、好ましくは1:2以下、特に好ましくは1:3以下である。これは、液体リザーバーから外に液体を続いて吸引するために空気をポンプ室から追い出す初期動作を容易にする。
【0011】
液滴形成の手段及び利用可能なポンプ室容積は、ポンプ室容積が重力下で脱離可能な少なくとも一つの液滴を形成するために十分であるように整合させる必要は必ずしもない。例えば、もし別種の脱離、特に圧力パルスの作用下での脱離が考えられるなら、20μlより小さいポンプ室容積を与えることも可能である。かかる圧力パルスは、例えば作動時に、最小限の力を付与することによって達成されることができる。これについては、以下で説明される。
【0012】
液滴ディスペンサーとしての本発明のディスペンサーの構成の場合には、それは、ポンプ装置が倒立位置(この位置では、液滴形成の手段が下方を向いている)で液体リザーバーから液体を信頼性高く吸引することができるようにポンプ装置に接続された液体リザーバーを持つことが好ましい。これは、特に、この倒立位置で、液体リザーバーがポンプ装置の上に配置されることで達成される。液体を吸引するための上昇管は不要である。
【0013】
本発明の第一態様は、もっぱら送出開口を包囲する液滴形成面を有する液滴ディスペンサーに関する。そこでは、容量的に変動可能なポンプ室は、主要範囲方向に対してほぼ直交する変位の方向に作動ボタンを押し下げることによってポンプ室壁がポンプ室の方向に変位可能であり、そうすることによってポンプ室壁が変位されるように接続領域で作動ボタンに接続される変位可能及び/又は変形可能なポンプ室壁によって一つの側を画定される。
【0014】
作動ボタン自体は、本発明の第一態様では、ロッカー軸のまわりでハウジングに対してロック(揺動)可能であるように装着されたロッカーボタンとして設計される。ロッカー軸は、主要範囲方向に直交して配置されることが好ましい。作動ボタンは、ポンプ装置の作動のために使用者によって押し下げられる。作動ボタンをその非作動開始位置にリセットする目的のため、ディスペンサーは、ばね装置を有する。このばね装置は、力入力領域で作動ボタンに作用し、それを開始位置の方向に押し戻す。ロッカーボタンは、それが少なくとも5°、特に好ましくは少なくとも10°でロック可能であるように装着されることが好ましい。
【0015】
ロッカーボタンの使用は、極めて正確な投与量を可能にし、それは、意図されるような液滴の生成及び放出のために極めて有利である。これは、ロッカーボタンがその旋回可能な結合のためにねじれる傾向を持たないこと、及びロッカー軸からの力の手での付与の距離のためにロッカーボタンが押し下げられるスピードの良好な制御性を使用者が持つことと特に関連する。これは、特に液滴の送出に有利である。なぜならそれは、液滴形成の手段からの液滴の脱離に対して強い影響を持ちうるからである。
【0016】
ロッカーボタンにリセット力を及ぼすばね装置は、原則として、ロッカーボタンとワンピース設計で及び/又はハウジングとワンピース設計で弾性変形可能なばね区域として設計されることができるか、又は内部変形可能なポンプ室壁もしくはその上に成形されたばね区域によって形成されることができる。しかしながら、特にプラスチック又は金属から作られた螺旋ばねの形の別個のばね装置が好ましい。ばね装置は、作動ボタンをその非作動開始位置に押し、それは、ポンプ室のサイズを再び増加させ、液体リザーバーから液体を吸引する。
【0017】
ロッカーボタンのロッカー軸は、主要範囲方向に基づいて送出開口に対してロッカーの反対側の端に与えられることが好ましい。ハウジングを把持し、ロッカーボタンの上に親指を置く一般的な方法では、これは、作動時にロッカーボタンの上に親指を平らに持続して置くことを可能にし、従ってロッキング運動の特に微細な制御性を可能にする。
【0018】
用途によっては、作動のための最小の力を確保することが望ましい。これは、ロッカーボタンによって特に簡単な形で実施されることができる。即ち、ロッカーボタンを押し下げることを難しくする戻り止めが、ロッカー軸から遠い方のロッカーボタンの側に与えられることで実施されることができる。この戻り止め及びロッカーボタンは、作動ボタンの遠位端での10ニュートンの作動力が戻り止めを克服するために要求されるように互いに整合されることが好ましく、その力は、ばね装置によって及ぼされる対抗力を含む。要求される作動力は、好ましくはさらに高く、特に少なくとも20ニュートンである。戻り止めの好適な幾何学形状は、戻り止めの克服を含む開始位置への戻りがそれでもなおばね装置の力によってのみ達成されることができるという効果を持ちうる。
【0019】
戻り止めの使用は、純粋に重力下で脱離しない液滴形成の手段からの小さい液滴の脱離を可能にする圧力パルスを生成するために特に適切である。圧力パルスは、戻り止めによって要求される最小の力によってもたらされることができる。
【0020】
もし主要範囲方向におけるディスペンサーの短い長さ及びロッカーボタンの結果的に短い構成が他の選択肢を可能としないか、又はそうする他の理由があるなら、それは、接続領域と力入力領域が本質的に一致することができる。これは、例えばロッカーボタンの上のピストン又は膜部分の装着の部位が、螺旋ばねとして構成されたばねによって包囲されるときに当てはまる。
【0021】
しかしながら、力入力領域及び接続領域がロッカー軸から有意に異なる距離で、特に好ましくはロッカー軸と力入力領域の間の距離より短いロッカー軸と接続領域の間の距離でロッカーボタンの上に与えられることが好ましい。ロッカー軸からの接続領域及び力入力領域の異なる距離は、様々な利点を有し、特に組み立てを簡単にする。なぜなら変位可能なポンプ室壁への接続と戻りばねは、互いに空間的に分離されているからである。
【0022】
ロッカーボタンのロッキング運動は、ポンプ室壁の少なくとも部分的な変位をもたらし、それは、ポンプ室内の圧力を高め、送出開口の方向に液体を押す。特にこのポンプ室を形成する本質的に剛いピストンが使用されるとき、ロッカーボタンの基本的な回転運動をピストンの直線運動に変換するために作動ボタンとピストンの間に少なくとも一つの中間要素を有する伝動装置又はスライド接続を与えることが必要であるかもしれない。しかし、ロッキング角度は一般的に5°~10°を越えないので、これは、あらゆる場合に要求されるわけではない。
【0023】
特に、伝動装置又はスライド接続に対するこの要求は、弾性的に変形可能な補償区域がロッカーボタンとポンプ室壁の間に与えられることで避けられることができる。即ち、ロッカーボタンとポンプ室壁の間に装着された容易に変形可能なプラスチックから作られた要素が与えられることで避けられることができる。この他に、ポンプ室壁が変形可能な膜部分によって形成される構成が挙げられる。かかる膜部分は、一つの側で、特に入口弁及び/又は出口弁に対して反対側でポンプ室を閉じることができる。膜部分は、少なくとも部分的に、特に少なくとも優先的に弾性的に変形可能な材料からなり、従って膜部分は、周囲に固定されることができ、それでもなおポンプ室にかみ合うことができる。膜部分は、ロッカーボタンに直接接続されることが好ましく、クランプ接続によってロッカーボタンに固定されることが特に好ましい。
【0024】
ロッカーボタンは、好ましくは主要範囲軸に直交して配置されたロッカー軸のまわりに旋回態様で移動可能である。原則として、かかる旋回運動は、簡単な一体成形ヒンジによって達成されることができる。しかしながら、対照的に、それぞれの他の側で軸受と係合し、従ってロッキング運動を可能にする軸区域がロッカーボタン又は周囲のハウジング区域に与えられることが好ましい。ここで軸受は、ロッカーボタン又はハウジングの上にワンピースで成形され、軸区域を収容するための開口を持つプラスチックアーク又は軸区域を収容するためのくぼみを有するプラスチックラグによって形成されることが好ましく、それは、軸区域においてロッカー軸に対して直交方向に押すために組み立て部品の面取りで形成されることが特に好ましい。かかる組み立て方法は、極めて良好なオートマタビリティを有する。
【0025】
成形されたプラスチックアーク又はプラスチックラグ及びそこに固定された区域を有する同様の構成はまた、開始位置を越える過剰な旋回運動が終了位置から来ることが信頼性高く防止される点でロッカーボタンの保護のために存在することが好ましい。しかしながら、開口又はくぼみは、ここではロッキング運動と関連するハウジングに対してロッカーボタンの相対的変位を可能にするために対応して大きく作られる。
【0026】
本発明の第二態様では、一般的なタイプのディスペンサーにおいて、ディスペンサーが、主要範囲方向に配置される通路区域を有し、それが、ポンプ室の下流及びポンプ装置の出口弁に与えられ、通路区域を通して液体が、送出開口及びそこに与えられた送出弁(26)の方向に運ばれることができる。ディスペンサーは、ここではその自由容積を減少するために、遠位端からこの通路区域中に挿入されたインサートを有する。
【0027】
技術的な点に関して、前述の通路区域は、前述の側面作動設計において、変位可能なポンプ室壁に対して反対側の端に配置された出口弁の使用により、出口弁から送出開口の上流の送出弁までの液体流路が極めて長いために作り出される。プラスチックから作られた内部ハウジング構成要素においてこの通路区域を作り、脱型できるためには、少なくとも約4mmの比較的大きい断面積が要求される。しかしながら、結果として、通路区域は、極めて大きい容積をとり、それは、ディスペンサーの最初の使用を複雑にする。なぜなら空気は、最初の使用でこの通路区域から外に追い出されなければならないからである。それゆえ、本発明によれば、通路区域の容積を減らすためにインサートが与えられる。好ましくは、通路区域において好ましくはランス形状のインサートによって置換される容積は、インサートが挿入されない場合通路区域の容積の少なくとも30%であり、特に好ましくは少なくとも50%である。特に好ましくは、通路区域及びインサートは、ハウジング構成要素の遠位端から上流方向に次第に短くなる細長断面を有する。
【0028】
通路区域は、第一プラスチックハウジング構成要素に与えられることが好ましく、第一プラスチックハウジング構成要素はまた、液体リザーバーとポンプ室の間の送り及び/又はポンプ室の壁を形成する。インサートは、第二プラスチックハウジング構成要素の一部であることが好ましく、第二プラスチックハウジング構成要素は、第一ハウジング構成要素の遠位端に配置され、送出開口によって貫通される。この二つの部分からなる設計は、第一と第二ハウジング構成要素間の送出弁の変位可能又は変形可能な弁体のための収容空間を作るために特に適切である。インサートを有する第二ハウジング構成要素の構成は、簡略化された組み立てを達成する。なぜなら第二ハウジング構成要素は、送出開口及びインサートを有する出口構成要素を同時に構成するからである。
【0029】
好ましくは、第一ハウジング構成要素は、その遠位端に第一周囲ランドを有し、第二ハウジング構成要素は、第二周囲ランドを有し、第二周囲ランドの外側の封止面が第一周囲ランドの内面に隣接して周囲封止領域を形成する。送出弁のために述べられた弁体は、それによって分離される空間内に配置されることができる。通路区域中に突出するインサートは、前述の第二及び内部周囲ランドの上に与えられることが好ましい。
【0030】
第一及び第二態様から独立して実施されることができる本発明の第三態様では、ハウジングは、基本的機能に関して述べられた二つのハウジング構成要素に対応する二つのハウジング構成要素を持つことが提案される。第一ハウジング構成要素は、少なくとも複数の区域でポンプ室を画定する。第二の隣接するハウジング構成要素は、送出開口によって貫通される。さらに、第一及び第二のハウジング構成要素を少なくとも部分的に包囲する別個の外部ハウジング構成要素が与えられ、第二ハウジング構成要素は、外部ハウジング構成要素中の開口を通して外部ハウジング構成要素から突出し、作動ボタンの作動のためのさらなる開口が外部ハウジング構成要素に与えられる。この外部ハウジング構成要素は、液体リザーバーと送出開口の間の液体通路を画定する液体案内面を全く持たない。
【0031】
従って、外部ハウジング構成要素は、液体リザーバーから送出開口までの液体の案内に関して直接的な機能上の関連を有さない。そのため、その設計は、比較的簡単な方法で、特に美観な面に関して及び/又は医薬液体の製造者のための市場で一般的な構成に関して様々な要求に合わせることができる。本発明によるタイプのディスペンサーは、様々な目的又は様々な顧客に対して別々に構成されることができるが、最適な作動及び送出特性に関して最適化された第一及び第二ハウジング構成要素は、不変である。
【0032】
外部ハウジング構成要素は、ここでは完全に任意であることができ、従ってディスペンサーは、外部ハウジング構成要素を有さない場合であっても技術的な見地から制限されない態様で使用可能である。しかしながら、外部ハウジングが何らかの構造的機能をとることが有利である。特に、第二ハウジング構成要素は、一方で外部ハウジング構成要素の遠位端と第一ハウジング構成要素の遠位端の間で固定され、好ましくはクランプされることが有利である。この目的のため、外部ハウジング構成要素は、第一ハウジング構成要素に固定されることが好ましい。
【0033】
作動ボタンが二つのボタン構成要素を持ち、これらの二つのボタン構成要素の一つが主に技術的機能を満たすことも有利である。この第一ボタン構成要素は、特に第一ハウジング構成要素の上で移動可能であるように装着されることができる。さらに、それは、変位可能なポンプ室壁への接続のための接続領域を持つか、及び/又は戻りばねの力の導入のための力入力領域を持つことができる。
【0034】
第二ボタン構成要素は、第一ボタン構成要素の外側に装着され、力を手で直接付与するための圧力面を有する。この第二ボタン構成要素は、スナップ接続によって第一ボタン構成要素に固定されることができる。第二ボタン構成要素は、外部ハウジング構成要素と同様に、その美的構成に関して容易に調整可能であり、力の付与のための圧力面の構成及び配置に関しても容易に調整可能である。第一ボタン構成要素は、第二ボタン構成要素がまだ装着されていない場合に送出開口側から第一及び第二ハウジング構成要素の上に外部ハウジング構成要素を押すことを可能にするように構成されることが特に有利である。続いて装着される第二ボタン構成要素は、外部ハウジング構成要素の取りはずしに対するセーフガードを構成することができる。
【0035】
かかる別個の第二ボタン構成要素以外の別の可能性は、ボタン突出が外部ハウジング構成要素に与えられる設計であり、それは、包囲する外部ハウジング構成要素を優先的に邪魔しないが、それに対してワンピースで接続されるか又は一端で関節結合形態で接続される。第二ボタン構成要素よりむしろ第一ボタン構成要素に作用するのは、このボタン突出である。
【0036】
好ましくは、前述の本発明の三つの態様のいずれかによるディスペンサーは、除去可能なディスペンサーキャップを持ち、それは、ディスペンサーハウジングの上に置かれることができ、そしてディスペンサーの使用のためにそこから除去されることができる。このディスペンサーキャップは、それが置かれると送出開口を保護することができる。特に好ましくは、かかるディスペンサーキャップは、通気ディスペンサーキャップとして構成され、この目的のために少なくとも一つの通気開口を有し、それによって送出開口は、ディスペンサーキャップが適所にあるときであっても周囲大気に接続される。これは、その場に残る残留液滴の迅速な乾燥を促進する。ディスペンサーが供給されるとき、通気開口は、閉じられており、最初の利用のときに使用者によって開放されることが好ましい。ディスペンサーキャップは、微生物の進入を防止するために通気開口をカバーする滅菌フィルターを持つことが好ましい。さらに、ディスペンサーキャップは、一体化されたパッドを有することが好ましく、それは、ディスペンサーキャップを適所に有するとき、送出開口の下流に残る液体残留物が吸収及び/又は汚染除去されるように送出開口の上方又は上に位置される。
【0037】
本発明のディスペンサーの液体リザーバーは、送出開口に対してディスペンサーの反対側の端に与えられることが好ましい。それは、ポンプ装置を包囲するハウジングに結合された、好ましくは螺合された別個のボトル体によって形成されてもよい。異なる構成では、液体リザーバーの外部壁は、好ましくは外部壁に固定された別個の部分によって形成されたボトル体のベースとワンピース形態でハウジングに接続される。もし液体リザーバーが変動可能でない容積を持つなら、ディスペンサーは、特に滅菌フィルターを持つ通気通路を持つことが好ましく、それによって液体リザーバーは、周囲大気に接続される。あるいは、液体リザーバーは、変動可能な内部容積を持ってもよく、特にそこにはパウチが与えられ、そこには液体が貯蔵され、それは、硬質ボトル体によって包囲される。吸引プランジャーシステムはまた、変動可能な内部容積の実現を可能にする。
【0038】
本発明のディスペンサーは、医薬液体の送出の使用のために意図されている。それゆえ、供給されるとき、液体リザーバーは、かかる医薬液体で充填されていることが好ましい。特に、医薬液体は、高い眼圧の処置(緑内障治療)のため、ドライアイのための処置、及びアレルギ及び炎症の処置のためのものである。特定の役割は、ここでは次の群の分子によって果たされる:アルファー2アゴニスト、例えばブリモニジン、プロスタグランジンアナログ(タフルプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト)、ベーターブロッカー、例えばチモロール、及びカルボアンハイドラーゼ阻害剤、例えばドルゾラミド、又はヒアルロン酸化合物、フィルム形成剤、例えばメチルセルロース化合物、及びシクロスポリン、又は抗ヒスタミン、例えばオロパタジン及びレボカバスチン、ステロイド、例えばロテプレドノール及びデキサメタゾン、及びNSAID、例えばケラロラク。
【0039】
さらに、本発明のディスペンサーは、次のタイプの一つ以上の分子を有する液体のために有利に使用可能である:トリクロロ酢酸、トリオキシサレン、ウレア、酸化亜鉛、タクロリムス、クロベタゾールプロピオネート、モメタゾンフロエート、ベタメタゾンジプロピオネート、フルオシノニド、デソキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルチカゾンプロピオネート、ヒドロコルチゾン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ウンデシレノン酸、テルビナフィン、シクロピロックス、トルナフテート、アクジクロビル(akziklovir)、イミキモド、ドコサノール、フィナステリド、ミノキシジル、デキサメタゾン、トラマゾリン、ナファゾリン、ノストリラ、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、テトリゾリン、トラマゾリンヒドロクロリド、ツアミノヘプタン、及びキシロメタゾリン。
【0040】
本発明のディスペンサーの構成要素は、プラスチックから作られることが好ましい。入口弁及び/又は出口弁に存在するばね及び記載したばねに対してのみ、金属構成要素が代替物を構成する。操作で変形可能であるように意図された部分、即ち膜構成要素、弁リップ及び送出弁体の主な部分は、200N/mm未満の弾性モジュラスを有する弾性プラスチックからなることが好ましい。有用な材料の例は、LDPE(低密度ポリエチレン)である。操作において動かない部分、特に全て又は一部のハウジング部分は、500N/mmを越える弾性モジュラスを有するプラスチックからなることが好ましい。これは、例えばHDPE(高密度ポリエチレン)又はPP(ポリプロピレン)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明のさらなる利点及び態様は、図面を参照して以下に説明される本発明の好ましい作用例の以下の記載及び請求項から明らかである。
【0042】
図1A-1B】図1A-1Bは、断面化していない図で主要ユニット及びディスペンサーキャップを含む、本発明のディスペンサーを示す。
【0043】
図2A-2B】図2A-2Bは、膜部分及び弁構成要素によって画定された内部ポンプ室とともに断面図でディスペンサーを示す。
【0044】
図3-4】図3-4は、透視断面図でディスペンサーを示す。
【0045】
図5-6】図5-6は、ディスペンサーを作動する操作を示す。
【0046】
図7図7は、ディスペンサーの個々の部分の組み立て順序を示す。
【0047】
図8図8は、ディスペンサーの作動ボタンと膜部分の間の結合を示す。
【0048】
図9-10】図9-10は、弁構成要素及び膜構成要素の詳細を示す。
【0049】
図11図11は、ディスペンサーの代替設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1A及び1Bは、本発明のディスペンサーの第一作用例をそのディスペンサーキャップとともに非断面図で示す。図1Aに示されたディスペンサーのこの構成の主要ユニットは、様々なハウジング構成要素30,12,52,44から構成されかつ主要範囲方向2に配置された細長いハウジングを有する。以下に記載されるように、ポンプ装置16は、ハウジング内に与えられ、それによって液体は、ディスペンサー10の近位端の液体リザーバー14からディスペンサー10の遠位端の送出開口28に運ばれることができる。ポンプ装置16の作動のため、作動ボタン70が与えられている。
【0051】
図1Bに示されたディスペンサーキャップ100は、ディスペンサー10のハウジング上へねじによって配置されることができる。
【0052】
図2A及び2Bは、ディスペンサー10の主要ユニット及びディスペンサーキャップ100を断面図で示す。
【0053】
主要要素は、まずこの図を参照して記載される。
【0054】
図2Aで明らかなように、ディスペンサー10の主要ユニットは、複数のハウジング部分からなり、その第一ハウジング構成要素30は、最も大きいハウジング構成要素であり、ディスペンサーのさらなる構成要素のための中央キャリアを構成する。このハウジング構成要素30は、その近位端に液体リザーバー14の外部壁を与える。それは、ポンプ装置の様々な構成要素、特にポンプ室20の両側に配置された膜部分60及び弁構成要素90のためのキャリアである。作動ボタン70は、第一ハウジング構成要素30においてロッカー軸6のまわりで旋回するようにヒンジ付けされる。作動ボタン70自体は、二つのボタン構成要素76,80からなり、内部ボタン構成要素80は、膜部分60が作動ボタン70によってポンプ室20へと押し下げられることができるように、以下に記載される態様で膜部分60に接続されている。戻りばね72が、ボタン構成要素80と第一ハウジング構成要素の間に与えられる。
【0055】
第二ハウジング構成要素44は、第一ハウジング構成要素30の遠位端の上に接合される。この第二ハウジング構成要素44は、第一ハウジング構成要素30において固定された位置に与えられ、それと一緒に内部を封止し、その中に変形可能な送出弁体96が配置され、それに次に送出弁ばね98が割り当てられる。さらなるハウジング構成要素である外部ハウジング構成要素52は、前述のハウジング構成要素30,44を包囲し、ハウジング構成要素44は、アプリケーターチップ46によって外部ハウジング構成要素52の開口58を通って突出し、外部ハウジング構成要素52は、外部面54に開口56を有し、それを通って作動ボタン70は、矢印8によって示されるように押し下げられることができ、それによって矢印4によって示される方向に膜部分60を変位することができる。
【0056】
ディスペンサーは、図8~10の詳細を参照して図3及び4の透視図によってさらに説明される。
【0057】
液体の放出前、液体は、液体リザーバー14に貯蔵され、液体リザーバー14は、図1A~10の作用例の場合では、外部面15によって画定され、外部面15は第一ハウジング構成要素30の一部であり、スナップインベース12によってディスペンサーの近位端で閉じられる。ディスペンサー10は、液体リザーバー14中の液体が作動ボタン70の作動中に弁構成要素90に直接隣接するように、即ち入口弁18の入口弁リップ92にあるように、送出開口28が下方に向く配置で使用されることが一般的である。隣接ポンプ室20が減圧状態にある場合には、液体は、ポンプ室20中に流れることができる。ポンプ室20自体は、前述の弁構成要素90、第一ハウジング構成要素30の環状ハウジング区域36、及び既に述べた内部変形可能な膜部分60によって画定される。
【0058】
もし膜部分が矢印4の方向にかつ弁構成要素90の方向に変位されるなら、高い圧力がポンプ室に確立され、ポンプ室は、その出口弁リップ94を偏向することによって出口弁22を開放する。かくして液体は、通路区域24中に流れることができる。通路区域24は、主要範囲方向2に配置されており、ハウジング構成要素30の遠位端まで導く。ハウジング構成要素30の遠位端では、二つの環状ランド32,34が与えられる。外部ランド32は、二つのハウジング構成要素30,44によって画定される内部空間が環境から絶縁されるように第二ハウジング構成要素44の環状ランド48に整合した内径を有する。第二ハウジング構成要素44の環状ランド48には、ランスの形の付属物が与えられ、それは、通路区域24中に突出しかつその容積を優位に満たすインサート50を形成する。最小化された容積の通路区域24を通って第二ハウジング構成要素44まで流れた液体は、送出開口28を通ってここでは直接逃げることはできない。なぜなら、送出開口28は、既に述べた送出弁体96を含む上流送出弁26を有し、それは、送出弁ばね98によって送出開口28に対して押され、送出開口28を封止態様で閉じているからである。しかしながら、送出弁26での液体圧力を上昇すると、送出弁体96は、送出弁ばね98の力によって変形され、従って液体通路を開き、液体は、比較的低い圧力下で送出開口28を通って逃げることができ、液滴形成面120の形で送出開口28を越えて与えられた液滴形成手段で液滴を形成する。液滴が液滴形成の手段の幾何学形状によって画定される容積を持つようになったときにのみ、液滴は、脱離することができ、従って液滴は、例えば使用者の目、鼻孔又は耳に付与されることができる。
【0059】
使用者が作動後に作動ボタン70を離すとき、それは、螺旋金属ばねの態様で構成されるばね装置72によってその開始位置に戻される。膜部分60は、作動ボタン70と共に引っ張られ、ポンプ室20の容積は、液体が液体リザーバー14からポンプ室20中に吸引されるように再び増加される。これが液体リザーバー14中の減圧を起こすことを防止するため、ディスペンサー10は、滅菌フィルター112を与えられかつ環境から液体リザーバー14中へのさらなる空気の流れを可能とする通気通路110を有する。
【0060】
前述の弁構成要素90及び膜部分60はそれぞれ、二成分射出成形によって製造された構成要素として構成される。各構成要素は、硬質構成要素区域、即ち固定リング91,62を持ち、それらの各々の上に軟質プラスチックから作られた構成要素が成形される。図9の拡大した弁構成要素の場合には、軟質プラスチックは、入口弁リップ92、及び透視図のために図9で見ることができない出口弁リップ94のために既に述べた構成要素を特に形成する。膜部分60の場合では、軟質プラスチックから製造された構成は、ポンプ室20の方向に向くポンプ室壁64、及びポンプ室から遠い側で補償区域66及び接続区域68に併合する厚い中央部分を形成する。
【0061】
再び外部ボタン構成要素76が存在しない図4の断面図を参照すると、前述の接続区域68が接続領域70Aでボタン構成要素80中に突出することは明らかである。それは、ここではクランプ接続によって固定される。このクランプ接続は、図8によって詳細に描かれる。図8は、ボタン構成要素76が除去されたディスペンサーの詳細を示す。ここで明らかであるように、三つの開口82,86がボタン構成要素80に与えられている。開口82は、実際の結合開口である。それは、細長開口の形で構成され、その対向する二つの長手方向側は、接続区域の画定のためにクランプ面84を形成する。これらは、鋭い縁の輪郭を与えられ、それは、両側から接続区域68中に押して希望の堅固なクランプ接続を作る。それに平行に配置された二つの開口86は、組み立て開口を形成する。これらの組み立て開口は、組み立て時の組み立て開口と結合開口の間のランドの偏向を、これらのランド又はボタン構成要素80の他の部分を損傷することなしで可能にする役割をする。
【0062】
同様に図8を参照すると、ボタン構成要素80の固定が説明される。ボタン構成要素80は、ロッカー軸6を画定する二つの成形軸区域74を有する。これらの軸区域74は、第一ハウジング構成要素30の一部である軸受ループ40中に横方向に装着される。作動ボタン70の反対側の端では、それは、二つの同様に構成されたガイドループ88を有し、その中に第一ハウジング構成要素30のピン42が突出する。これは、ばね装置72がボタン構成要素80及びロッカーボタン70の全体をハウジングの外に押すことを防止する。
【0063】
図3及び4から容易に明らかであるように、ボタン構成要素80が膜部分60の接続区域68に接続される接続領域70A、及びばね装置72がボタン構成要素76に作用する力入力領域70Bは、ロッカー軸6から異なる距離によって分離される。これは、第一に制限された構成空間における個々の部品の組み立てを容易にする。第二に、これは、ディスペンサーの設計と作動ボタン70に作用する戻り力の整合を可能にする。
【0064】
図8からわかるように、そこに示された内部ボタン構成要素80は、特にその成形に関する技術的機能に関係して構成される。それでもなお作動ボタン70の美観的に好ましい構成を達成するためには、第二の外部ボタン構成要素76が与えられ、スナップ接続によって内部ボタン構成要素80に接続される。この外部ボタン構成要素76の上には、作動の目的のために使用者が親指を置く圧力面78が与えられる。
【0065】
既に説明したように、示されたディスペンサーは、液滴ディスペンサーとして設計される。それは、ここでは、非作動開始位置からその作動最終位置への作動ボタンの作動が正確に一つの液滴の放出をもたらすように設計される。従って、ポンプ室20は、極めて小さく、40μlの利用可能なポンプ室容積、即ちポンプ室20の最小容積と最大容積の間の差を持つ。
【0066】
この極めて小さいポンプ室容積のため、ディスペンサーを操作させるために特に注意しなければならない。供給されたとき、ディスペンサーは、空気を充填されたポンプ室20を有する。ポンプ室20から送出開口28への液体通路は、同様に空気を充填されている。
【0067】
この開始状態から進めて、ポンプ室20から空気を排出することを可能にするために、ポンプ装置16は、作動状態のポンプ室20の最小容積と非作動状態のポンプ室20の最大容積の間の極めて小さい比率を有する。これは、図5及び6によって示される。図5は、非作動状態を示す。図6は、作動状態を示す。
【0068】
作動状態では、膜部分60は、環状対向壁38の上に置かれた弁構成要素90の方向に十分に遠くに変位され、膜部分60が弁構成要素90と接触することは明らかである。膜部分60と弁構成要素90が接触する場合、それらの間に残る残留容積はない。さらに、作動状態への変形において膜部分60によって形成されるポンプ室壁64は、作動の終わりに向かってそれが環状ハウジング区域36に隣接するか又はそれらの間に極めて狭い間隙のみが残るように部分的にひっくり返されるか又はロールオフされることは明らかである。図6に示される、それによって達成可能なポンプ室の最小容積は、2μl未満である。従って、ポンプ室20の最小容積と最大容積の比率は、1:20未満である。
【0069】
また、図5及び6から、作動ボタンのロッキング運動は、膜部分60の接続区域68もまた対応してロックされる効果を持つことは明らかである。それでもなお前述のポンプ室20の極めて小さい最小容積を可能にするために、補償区域66が図6に示されたように変形される。
【0070】
ポンプ室20での問題と同様の問題が送出開口28への液体通路に関しても明らかである。ここでも、もし容積がディスペンサーの供給時に少しだけの空気(この空気は、放出前に追い出さなければならない)がここに存在するために最小であるなら有利である。
【0071】
ここで、特に、既に記載したインサート50は、容積を大きく減少させ、ポンプ室20から通路区域24の方向に追い出された空気が作動ボタン70の二回又は三回の操作後に送出弁26を開放するのに十分な圧力に達するようにする。
【0072】
組み立て順序が図7を参照して以下に説明される。
【0073】
図5及び6に与えられ、点線によって示されているのは、作動時に最小の力を要求する任意の戻り止め37である。これは、もしディスペンサーが液滴の純粋に重力による脱離のために要求されるより低いポンプ容積のために設計されるなら、特に適切である。かかる小さい容積が与えられるとき、不意のポンプ室圧縮によって発生される圧力パルスは、それでもなお液滴形成面120からの液滴の脱離をもたらすことができる。
【0074】
第一ハウジング構成要素30から進んで、弁構成要素90は、その固定リング91によって第一ハウジング構成要素30の環状対向壁38に挿入されかつ固定される。続いて、戻りばね72及び膜部分60が挿入され、膜部分60は、液密接続を作る固定リング62によって環状ハウジング区域36の外側に堅固にクランプされる。
【0075】
続いて、内部ボタン構成要素80が挿入され、それは、軸区域74の領域で軸受ループ40中にここで圧縮され、ガイドループ88の領域で第一ハウジング構成要素30に与えられるピン42の上に押される。ボタン構成要素80の挿入中、結合開口82は、膜部分の接続区域68が変形なしで結合開口に嵌合することができるようにスプレッダーによって広げられる。続いて、スプレッダーが除去され、かくして前述のクランプ接続が作られる。
【0076】
その後、変形可能な送出弁体96及び第二ハウジング構成要素44の予め組み立てられた複合物は、第一ハウジング構成要素30の端面に送出弁ばね98を配置した後にこの端面の上に押され、第一ハウジング構成要素30の通路区域24中へのインサート50の追加挿入がなされる。
【0077】
最後の製造工程として、外部ハウジング構成要素52が、まず予め組み立てられた部品の複合物の上に押され、それはまた、第一ハウジング構成要素30及び第二ハウジング構成要素44の互いの固定を達成する。続いて、第二ボタン構成要素76は、第一ボタン構成要素80の上に押され、スナップ嵌合される。
【0078】
二つの構成要素52,76は、液体と全く接触せず、それゆえディスペンサーの放出特性に影響しない。これらの二つの構成要素52,76は、ディスペンサー10を医薬液体の製造者の個々の希望に合わせることができるために、形状及び色に関して意図されるように適応されることができる構成要素である。
【0079】
図11は、本発明のディスペンサーの第二作用例を示す。これは、前述のディスペンサーとは一つだけの違いを有する。即ち、第一ハウジング構成要素30及び外部ハウジング構成要素52が別個のボルト体130に結合することを可能にするように構成されている点で相違する。
図1A-1B】
図2A-2B】
図3-4】
図5-6】
図7
図8
図9-10】
図11