(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】EMCシールドシール及びシールを含む電気装置又は電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20230315BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20230315BHJP
F16J 15/12 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H05K5/06 D
H05K9/00 E
F16J15/12 K
(21)【出願番号】P 2019539938
(86)(22)【出願日】2018-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2018050850
(87)【国際公開番号】W WO2018137953
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】102017101414.4
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ランペ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ベトケ,ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】ディットマー,イェンス
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-306048(JP,A)
【文献】特開2007-242653(JP,A)
【文献】特開2005-236162(JP,A)
【文献】特開2004-354731(JP,A)
【文献】特開2000-299586(JP,A)
【文献】実開平05-025798(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/06
H05K 9/00
F16J 15/10-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気装置又は電子装置(20)の第1のハウジング部品(21)と第2のハウジング部品(22)との間のIP封止及びEMCシールド接続のためのシール(1)であって、
- エラストマー含有封止体(3)と、
- 前記封止体(3)にある程度埋め込まれている金属製支持体(5)と、を含むシール(1)において、
前記封止体(3)及び前記支持体(5)は接着的な及び/又は形状嵌合的な態様で互いに接続され、従って材料結合を形成し、前記支持体(5)は複数の接触セグメント(7.I、7.A)を有し、前記複数の接触セグメント(7.I、7.A)は、前記封止体(3)から突出しており、且つ前記第1のハウジング部品(21)に配置された第1の境界面(21.1)及び前記第2のハウジング部品(22)に配置された第2の境界面(22.2)と弾性的な態様で電気的に接触するように構成され、前記シール(1)は取り付けられた状態では前記境界面の間で押され、
前記支持体(5)は埋め込まれた領域内に平面状の部分(6)を有し、前記接触セグメント(7.I、7.A)は、前記平面状の部分(6)に対して傾いているように設計
され、前記平面状の部分(6)が外縁および内縁を有し、
複数の前記接触セグメント(7.I、7.A)のそれぞれが、前記平面状の部分(6)から分岐して突出し、前記平面状の部分(6)の外縁および/または内縁で曲げられており、
複数の前記接触セグメント(7.I、7.A)が、前記第1の境界面(21.1)および第2の境界面(22.2)と弾性的な態様で接触することにより、前記第1の境界面(21.1)および第2の境界面(22.2)における局所的に変動する距離を相殺することを特徴とするシール(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のシール(1)において、前記シール(3)は連続的であり、特に、円形、楕円形、又は多角形であることを特徴とするシール(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシール(1)において、全ての前記接触セグメント(7.I、7.A)は、同一の周縁部分に沿って前記平面状の部分(6)に隣接することを特徴とするシール(1)。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のシール(1)において、前記接触セグメント(7.I、7.A)は、第1のグループの接触セグメント(7.I)と、前記平面状の部分(6)の反対側の周縁部分に隣接する第2のグループの接触セグメント(7.A)とに分割されることを特徴とするシール(1)。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のシール(1)において、前記平面状の部分(6)に隣接する前記接触セグメント(7.I、7.A)は、前記平面状の部分(6)に対して異なる方向に互いに交互に傾けられていることを特徴とするシール(1)。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のシール(1)において、前記平面状の部分(6)は開口部(9)を有し、前記封止体(3)が前記開口部(9)を通過することを特徴とするシール(1)。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のシール(1)において、前記封止体(3)は、単一のピースの封止体を含むか、又は、前記封止体(3)は前記平面状の部分(6)の両側に配置された2つの下位体(3.1、3.2)を含むことを特徴とするシール(1)。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のシール(1)において、前記境界面(21.1、22.1)との前記接触セグメント(7.I、7.A)の接触領域(27)はそれぞれ、閉じているEMCシールドリングに沿って延び、前記EMCシールドリングに沿った、隣接する接触領域間の距離は5mmよりも小さいことを特徴とするシール(1)。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のシール(1)において、前記支持体(5)は、打ち抜かれ曲げられた部分の形状をしていることを特徴とするシール(1)。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のシール(1)において、前記封止体(3)は、前記支持体(5)上に前記エラストマーを射出成形することにより、又は前記エラストマーにより前記支持体(5)を封入することにより形成されることを特徴とするシール(1)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載のシール(1)において、前記支持体(5)は、ばね鋼、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮、青銅、銅-ベリリウム、及びそれらの組み合わせ、の群からの材料を有することを特徴とするシール(1)。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載のシール(1)において、前記エラストマーは、シリコーンゴム(VMQ)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、熱可塑性エラストマー(TPE)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム(PUR)、及びそれらの組み合わせ、の群から選択されることを特徴とするシール(1)。
【請求項13】
第1の境界面(21.1)を備える第1のハウジング部品(21)と、第2の境界面(22.1)を備える第2のハウジング部品(22)とを有する電気装置又は電子装置(20)において、請求項1~12の何れか1項に記載のシール(1)が、前記ハウジング部品(21、22)の前記境界面(21.1、22.1)の間にIP封止及びEMCシールド作用を伴って配置されることを特徴とする電気装置又は電子装置(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気装置又は電子装置のハウジング部品間のIP封止及びEMCシールド接続のためのシールに関する。
【0002】
電気装置又は電子装置は異なるハウジング部品で出来ているので、それらのハウジング部品の各々が異なる要件を個別に満たすことが可能である。そのような装置は、1つのみのハウジング部品を含む装置よりも費用便益上の利点を有することが多い、というのも、後者の場合には、その1つのハウジング部品は常に異なる要件間で折り合いをつけるように設計される必要があり、これは技術的に不利であり、或いは異なる要件の全てを満たそうとするやり方は、ハウジング部品の製造をあまりに高価にしてしまうからである。複数のハウジング部品を使用して装置を実現することにより、これらの不都合な点を解消することが可能になり、例えば、屋外での動作用に設計されたインバータなどの複雑な装置の場合には、特にそうである。しかしながら、逆に、IP保護の観点と、相互接続されたハウジング部品間の干渉放射を低減するという観点との両方から、厳しい要件が満たされる必要がある。従って、一方では、境界面距離が互いに対して変動する場合であっても、IP封止作用及びEMCシールドは、出来る限り影響を受けないようにすべきである。同時に、対応するシールは製造が容易である必要があり、装置に簡単明瞭に取り付けることができる必要がある。
【背景技術】
【0003】
複数のハウジング部品を有する電気装置又は電子装置の場合には、序論で述べたタイプのシールが、例えば、それぞれのハウジング部品に配置された2つの境界面の間に挿入される。取り付けられた状態では、シールはIP保護をもたらし、異物及び/又は水の侵入に対して装置の内部を保護する。異物とは、例えばほこりの粒子を意味するものと理解することができる。しかしながら、同様に、異物の侵入に対する保護は接触に対する保護も含む場合もあり、これにより、装置の動作中に装置の内部の通電している、即ち電流が流れている部品との接触が妨げられる。しかしながら、同時に、ハウジング部品間の低インピーダンスの電気的接続は、このシールが、関連するハウジング部品の境界面においてEMCシールド作用ももたらすことを意味する。従って、一方では、シールは装置の内部から周囲に漏れる電磁干渉の量を低減する。他方では、シールは、ハウジング部品間に、時間と共に変動する電位差が形成されるのを防ぎ、電位差が形成されると、その結果として、ハウジング部品はアンテナとして働き、望ましくない態様で周囲に電磁干渉を放射する。
【0004】
IP(International Protection又はIngress Protection)保護に対して割り当てられたIPコードは、通常、電気装置のIP保護の等級、及び更には、許された使用領域を表している。ここで、IPコードは2桁の数字で構成され、1桁目の数字は異物の侵入対する保護を分類しており、2桁目の数字は水の侵入に対する保護を分類している。両方の数字について、数字の値が増加するにつれて、どちらの場合においても、保護作用が高くなる。
【0005】
エラストマーのシールは、ハウジング部品間のIP保護をもたらすことが知られており、蒸気のシールは、隣接するハウジング部品の境界面の間に取り付けられ、その取り付け状態では圧縮されている。シールの弾性特性により、シールがある程度までハウジングのでこぼこを相殺することが可能になり、シールの圧縮により、ほこり及び/又は水が装置の内部に進入するのが防止される。しかしながら、そのようなシールは、IP封止作用のみを提供し、境界面におけるEMCシールド作用は提供しない。
【0006】
EMCシールドに関する限り、他方では、金属の接点バネを使用することが知られている。接点バネは、ハウジング部品の境界面に取り付けることができる。取り付けられた状態では、上記のハウジング部品が他のハウジング部品に接続されると、接点バネはこれら2つのハウジング部品間に1つ又は複数の電気接点をもたらし、従って、装置から周囲に漏れる電磁干渉の量を低減する。複数のそのような接点バネが、しばしば、ハウジング部品の関連する境界面に沿って取り付けられる。しかしながら、そのようなEMCシールドは、相互接続されたハウジング部品に対していかなるIP封止作用も提供しない。
【0007】
更に、いわゆる組合せシール(例えば、Micro Tech Components GmbH社からの製品概要のちらし、http://www.mtc.de/sites/default/files/linkables/flyer_ihv.pdfを参照)も知られており、これらはIP保護及びEMCシールド作用の両方を組み合わせて提供する。そのような組合せシールは、エラストマーで出来ているコア材料を有し、コア材料は、金属のメッシュ又は金属箔である程度覆われている。コア材料の弾性特性はIP保護をもたらし、一方、金属製のハウジング部品又はその境界面と接触している外側の金属メッシュは、境界面の間に電気的接続をもたらし、従ってEMCシールド作用をもたらす。しかしながら、コアの外側の周りに施された金属メッシュ又は金属箔の被覆はコア材料のIP封止作用を低減するので、このようなシールは高い等級のIP保護、とりわけIP-4X、IP-5X、又はIP-6XクラスでのIP保護を提供するように設計されてはいない。金属メッシュの場合、これは、金属メッシュがシールの表面上に、少なくともシールの表面の一部に渡り、追加のでこぼこを生じさせるという事実に起因する。シールの表面の一部が金属箔で覆われている場合、金属箔は弾性が低いので、この部分は境界面のでこぼこを相殺することができないか、又は少なくともあまりできなく、その結果、組合せシールのIP封止作用は損なわれる。同様の理由により、そのような組合せシールはまた、境界面の間の距離の変動及び/又は境界面のでこぼこを相殺することが、ある限られた範囲でしかできない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、電気装置又は電子装置の2つのハウジング部品の間にIP封止接続及びEMCシールド作用の両方を、改善された形態でもたらすように設計された、独立特許請求項1の前提部に従ったシールを提示することである。特に、その意図は、ハウジング部品又はその境界面の間の距離が互いに対して変動しても、かつ/又は境界面にでこぼこがあっても、IP封止接続及びEMCシールド作用の両方を、かなりの程度まで保証することである。ここで、シールは、出来る限り費用対効果が高くなるように製造できるべきであり、また、電気装置又は電子装置に簡単明瞭に取り付けることができるべきである。本発明の更なる目的は、そのようなシールを含む電気装置又は電子装置を提示することである。
【0009】
本発明の目的は、独立特許請求項1の特徴を有するシールによって達成される。従属特許請求項2~13は、シールの好ましい実施形態に関する。代替的な独立特許請求項14は、そのようなシールを含む電気装置又は電子装置に関する。
【0010】
電気装置又は電子装置の第1のハウジング部品と第2のハウジング部品との間のIP封止及びEMCシールド接続のための、本発明によるシールは、以下を含む。
- エラストマー含有封止体、及び
- その封止体にある程度埋め込まれている金属製支持体。
【0011】
シールは、封止体及び支持体が接着的な及び/又は形状嵌合的な態様で互いに対して接続され、それにより材料結合が形成されることを特徴とする。ここで、支持体は、封止体から突出する複数の金属製接触セグメントを有する。取り付けられた状態では、シールは、第1のハウジング部品に配置された第1の境界面と、第2のハウジング部品に配置された第2の境界面との間で押される。取り付けられた状態では、金属製接触セグメントは、2つのハウジング部品の金属製の境界面と、弾性的な態様で電気的に接触する。
【0012】
ここで、エラストマー含有封止体は、1つのエラストマーのみから形成することができる。しかしながら、代替として、封止体が複数の異なる材料、例えば複数の異なるエラストマーを有することも可能である。適切であるなら、封止体は、1つのエラストマーに加えて、エラストマーではない更なるプラスチックを含むこともできる。本発明によれば、支持体がある程度封止体の中に埋め込まれているという事実は、封止体の中には埋め込まれていない、例えば封止体から外部に突出している支持体の領域もあることを意味する。これは、例えば、支持体の接触セグメントに当てはまる。しかしながら、封止体は、金属製の支持体の両側、特に正面側及び背面側に存在する。従って、取り付けられた状態では、封止体は、支持体と第1の境界面との間及び支持体と第2の境界面との間に配置される。これは、取り付けられた状態では、シールが2つのハウジング部品又はそれらの境界面の間の高い等級のIP封止接続を確実にすることを意味する。他方では、隣接する金属製境界面は、弾性の接触セグメントを介して互いに電気的に接続され、且つそれらの隣接する金属製境界面は、支持体と共に、金属製のシールド面を境界面の間に形成し、このシールド面は、電気装置又は電子装置から周囲に漏れる電磁干渉を効果的に低減するのに十分なほど小さい大きさの開口部のみを有する。ここで低減されるのは、装置の内部から漏れる電磁干渉だけではない。むしろ、十分に低いインピーダンスで互いに接続されていない複数のハウジング部品を有する装置において、ハウジング部品間の時間と共に変動する電圧差のせいで引き起こされる電磁干渉の放出も、低減される。この場合には、異なるハウジング部品は、電磁放射を放出するためのアンテナとして多かれ少なかれ機能する。本発明では、隣接する金属製境界面、ひいては対応するハウジング部品は、複数の導電経路を介して、特に低いインピーダンスで、電気的に接続される。これにより、時間と共に変化するハウジング部品間の電圧差の発生が防止されるか、又は少なくとも低減され、その結果として、上記の電磁干渉の放出も効果的に低減される。接触セグメントと境界面との電気的接触は、封止体と関連する境界面との接触を介してIP封止機能が局所的に提供される場所では、行われない。むしろ、電気的接触は、境界面と封止体との接点から十分に離れており、従って、境界面に対する封止体のIP封止作用を損なわない。言い換えると、封止体と連携してIP封止作用のみを提供する境界面領域が存在する。このようにして、本発明によるシールは、高い等級のIP保護、特にIP-4X、IP-5X、及びIP-6XクラスでのIP保護を提供することができる。IP封止作用を提供する領域から離れて、本発明によるシールの電気的接触セグメントと接触する領域があり、この領域を介して、2つの境界面が互いに電気的に接続される。このようにして、シールは2つの境界面の間にEMCシールド接続を提供し、このEMCシールド接続は、弾性的に設計された接触セグメントのおかげで、例えば寸法公差、温度変化、及び/又はでこぼこのせいで、接触が行われることになる境界面領域間で局所的に変動する距離を相殺する。材料結合の形態での、封止体と支持体との間の接着的な及び/又は形状嵌合的な接続は、シールが装置のハウジング部品に簡単明瞭に取り付けられることを意味する。更に、シールの構成要素としての支持体及び封止体の製造、並びにそれらの組み立ては容易に自動化でき、全体的な結果として費用対効果の高いシールとなる。
【0013】
シールが、開曲線によって形状が幾何学的に記述される開放シールによって形成されることも、一般的に可能である。しかしながら、有利な実施形態では、シールの形状、ひいてはシール自体をも記述する幾何学的な曲線は、連続的である。この場合、閉曲線はシール開口部の周縁を画定し、シール開口部は原則的には任意の所望の形状であり得る。例えば、シール開口部、ひいてはシールは、円形、楕円形、又は多角形であり得る。
【0014】
一実施形態では、封止体によって埋め込まれる領域では、支持体は平面状の部分を有する。ここで、金属製の境界面との電気的接触を確立する接触セグメントは、この平面状の部分に対して傾いて設計される。これにより、金属製の支持体の適切な材料と関連して、接触セグメントが弾性品質を持つことになり、この接触セグメントは、シールが取り付けられた状態では、境界面間の電気的接続の品質に影響を与えることなく、境界面間の互いに対して変動する距離を相殺することができる。
【0015】
シールの予定された取り付け状態に応じて、一実施形態では、全ての接触セグメントを、同一の周縁部分に沿って支持体の平面状の部分に隣接させることが可能である。例えば、円形の閉じたシールの場合、全ての接触セグメントが、支持体、ひいてはシールの内側の周縁部分又は外側の周縁部分の何れかに配置される。代替的な実施形態では、全ての接触セグメントは、第1のグループの接触セグメント及び第2のグループの接触セグメントに分割される。この場合には、これら2つのグループは、支持体に配置された平面状の部分の対向する周縁部分と隣接する。上記で述べた場合を参照すると、例えば、第1のグループの接触セグメントは外側の周縁部分上に配置され、一方、第2のグループの接触セグメントは、支持体に配置された平面状の部分の内側の周縁部分上に配置される。従って、閉じたシールに関連して分かるように、接触セグメントは、シールの内側領域及び外側領域の両方に配置される。
【0016】
用途に応じて、平面状の部分に隣接する接触セグメントは、平面状の部分に対して異なる方向に、互いに交互に傾けられることがある。従って、例えば、支持体のある周縁部分に沿って配置された接触セグメントは、異なる方向に互いに交互に傾けられることがある。これの代替として、平面状の部分の1つの周縁部分に隣接する接触セグメントを1つの方向に傾け、一方、平面状の部分の反対の周縁部分に隣接する接触セグメントを異なる方向に傾けることも、可能である。
【0017】
シールの一実施形態では、封止体は2つの下位体を含み、それらは支持体の平面状の部分の両側に配置される。例えば、第1の下位体は支持体の正面側に配置され、第2の下位体は支持体の背面側に配置される。2つの下位体を別々に形成し、互いに接続させないことが可能である。しかしながら、これの代替として、封止体を単一のピースで形成し、支持体の正面側及び支持体の背面側の両方の上で平面状の部分を覆う、又は更には封入することも可能である。両方の実施形態において、平面状の部分が開口部を有することが可能であり、この開口部を通して、封止体が通過するか、又は封止体の下位体が通過する。そのような形状嵌合は、封止体と支持体との間の機械的結合を高め、封止体と支持体との間のそれらの境界面における相対的な動きが効果的に防止されるか、又は少なくとも低減される。これの代替として、又はこれに加えて、封止体を、接着的な態様で、例えば接着剤を使用して支持体に接続することも可能である。
【0018】
有利な実施形態では、支持体は打ち抜かれ曲げられた部分の形状をしている。これは、支持体を、傾いている接触セグメントと共に、大量にかつ極めて費用体効果が高い態様で製造することができることを意味する。ここで、接触セグメントは、金属製の支持体の一体化している部分である。一実施形態では、封止体の2つの下位体は、エラストマーを支持体の両側、即ち正面側及び背面側上に射出成形することによって、形成される。封止体が単一のピースで形成される代替の実施形態では、封止体はエラストマー材料によって封入された金属製の支持体を有する。しかしながら、両方の場合において、封止体は支持体全体を覆ってはいない。むしろ、金属製の支持体の接触セグメントは、エラストマーによって覆われておらず、最終的には、ハウジング部品の境界面上の金属領域と電気的に接触するように作用する領域を有する。また、エラストマーを支持体上に射出成形することにより、又は支持体をエラストマーによって封入することにより封止体を形成する操作は、短時間で行うことができ、かつ容易に自動化することができ、その結果として、シールを総じて費用対効果が高い態様で製造することができることも事実である。
【0019】
本発明の一実施形態では、支持体は、境界面と接触セグメントとの接触領域がそれぞれ、閉じたEMCシールドリングに沿って延びるように設計され、EMCシールドリングに沿って、隣接する接触領域間の距離は一定であり、特に、距離閾値を超えることはない。ここで、距離閾値は、EMCシールドが効力を持つ限界周波数に依存しており、限界周波数が増加するにつれて減少する。例えば、PWM制御インバータの形態での電気装置に使用されるような、シールの特に有利な実施形態では、約50kHzという関連する半導体スイッチの慣例的な周波数を考慮に入れて、距離閾値は5mmよりも小さい。
【0020】
シールの一実施形態では、支持体の材料は、ばね鋼、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮、青銅、銅-ベリリウム、及びそれらの組み合わせ、の群から選択される。更なる実施形態では、封止体のエラストマーは、シリコーンゴム(VMQ)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、熱可塑性エラストマー(TPE)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム(PUR)、及びそれらの組み合わせ、の群から選択される。
【0021】
本発明による電気装置又は電子装置は、第1のハウジング部品と、この第1のハウジング部品に接続された第2のハウジング部品とを含む。これらのハウジング部品の各々は境界面を含み、第1のハウジング部品は第1の境界面を有し、第2のハウジング部品は第2の境界面を有する。ここで、ハウジング部品の組み立て状態では、本発明によるシールは、ハウジング部品の境界面間にIP封止及びEMCシールド作用を伴って配置される。取り付けられた状態では、シールは、一方では、複数のハウジング部品があるにも関わらず、装置が良好な電磁適合性を有することを確実にし、他方では、装置の関連のあるハウジング部品同士が、IP封止作用を伴って互いに接続されることを確実にする。これらの2つの機能は、1つの部品、即ち材料結合を形成する本発明によるシールを使用するだけで、2つの隣接する境界面上で実現される。これにより、シールに関連して既に述べた利点が生じる。装置は複数のハウジング部品を有しており、異なるハウジング部品を並行して製造することができるので、装置を製造するためのプロセスを、より効率的でかつ総じて費用対効果の高いものにすることも可能である。更に、ハウジング部品の組み立ては簡単明瞭である、というのも、複合部品の形態であるこのシールは、簡単明瞭な態様で取り付けられるからである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明については、図面で示される好ましい例示的な実施形態を参照して、以下で更に説明し記載する。
【0023】
【
図1a】
図1aは、本発明によるシールの第1の実施形態を示す図である。
【
図1b】
図1bは、
図1aのシールの金属製支持体の詳細具体図を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明によるシールの第2の実施形態を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明によるシールの第3の実施形態を示す図である。
【
図4a】
図4aは、本発明によるシールを介在させて互いに接続された2つのハウジング部品を有する、電気装置又は電子装置を示す図である。
【
図4b】
図4bは、
図4aの装置の詳細を断面図で示しており、本発明によるシールを介在させて2つのハウジング部品を互いに接続させた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明によるシール1の第1の実施形態を示す。図示した場合では、これは、連続的であるか又は完全に閉じており、かつ円形のシール開口部2を有する、シール1である。シール1は封止体3を含み、封止体3の中には金属製の支持体5が埋め込まれている。図示した場合では、封止体3はエラストマーから1つのピースで形成され、円形の断面を有する。しかしながら、本発明の文脈の中では、封止体3が異なる断面、例えば矩形又は多角形の断面を有すること、及び/又は封止体3を2つ以上のピースで形成すること、即ち、封止体3が支持体5の正面側5.V及び支持体5の背面側5.R上に複数の相互接続されていない下位体を含むことも、可能である。
図1aは部分的に透明な状態での封止体3を示しており、そのため、埋め込まれた領域内の支持体の詳細も見ることができる。しかしながら、明確にするために、金属製の支持体5は別に、
図1bにより詳細な形式でも示されている。金属製の支持体5は同様に連続的であり、平面状の部分6と、その周縁部分に接続されている多数の傾いている接触セグメント7.A、7.Iとを有する。平面状の部分6の外側の周縁部分は第1のグループの接触セグメント7.Aに隣接しており、第2のグループの接触セグメント7.Iは、支持体5の平面状の部分6の内側の周縁部分に隣接する。ここで、全ての接触セグメント7.A、7.Iは、同じ方向、この場合には支持体5の正面側5.Vの方向に、円周方向を向いている屈曲線8に沿って曲げられることにより、傾いている。しかしながら、これの代替として、接触セグメント7.A、7.Iを異なる方向に傾けること、例えば、外側の接触セグメント7.Aを正面側5.Vの方向に傾け、内側の接触セグメント7.Iを金属製の支持体5の背面側5.Rの方向に傾けることも可能である。支持体5の平面状の部分6は多数の開口部9を有し、開口部9を通じてエラストマーの封止体3が通過する。ここで、支持体5は打ち抜かれ曲げられた部分の形状をしており、一方、図示した例では、封止体3は、支持体5をエラストマーによって封入することにより形成される。
【0025】
図2は、本発明によるシール1の第2の実施形態を示しており、
図1a及び
図1bに示した第1の実施形態のシール1と同様の態様で設計されている。従って、ここで考察するのは第2の実施形態の相違点のみであり、この態様の残りの部分については、
図1a及び
図1bの説明を参照する。
【0026】
図1a及び
図1bとは対照的に、第2の実施形態ではシール1の金属製の支持体5は、平面状の部分6の外側の周縁部分上の多数の接触セグメント7.Aのみを有し、内側の周縁部分に隣接する接触セグメントはない。ここで、外側の接触セグメント7.Aは、異なる方向に互いに交互に傾いている。この多数の接触セグメント7.Aが平面状の部分6に対して傾いている態様は、シール1が電気装置又は電子装置に各場合に取り付けられている状態(ここでは図示せず)に依存し、個別に選択することができる。円周方向を向いている屈曲線8に沿って曲げる代わりに、個々の接触セグメント7.Aを、シール1の中心を通る回転軸の周りに回転させることも可能である。これにより、接触セグメント7.Aの扇風機状の傾斜が生じる。同じことが、
図1a及び
図1bの内側の接触セグメント7.Iにも当てはまる。
【0027】
図3は、本発明によるシール1の第3の実施形態の断面図を示す。ここでも、シール1は既に説明した実施形態と同様の態様で構成され、そのため、同じ種類の特徴に関しては、上記の説明を参照する。前述の実施形態とは対照的に、ここで図示するシール1の封止体3は、2つのピースで形成される。四辺形の断面を有する第1の下位体3.1が支持体5の背面側5.Rに配置され、一方、同様に四辺形の断面を有する第2の下位体3.2が支持体5の正面側5.Vに配置される。しかしながら、ここで代替として、下位体3.1、3.2が任意の他の所望の断面、例えば三角形又は半円形であることも可能である。この実施形態では、支持体5の平面状の部分6は開口部9を有さないことが好ましい。封止体3の2つの下位体3.1、3.2は、ここでは別々に形成され、相互接続されない。ここで、下位体3.1、3.2の各々は、支持体5のそれぞれの側5.R、5.V上にエラストマーを射出成形することにより、又はエラストマーを塗布することにより形成されるか、或いは、何らかの他の態様で支持体5に接着結合される。
図1a、
図1b、
図2、及び
図3に示したシール1の実施形態は円形で連続的な形状をしているが、原則的には、シール1が楕円形、多角形、及び/又は開いていることも可能である。
【0028】
図4aは、電気装置又は電子装置20の複数のハウジング部品21、22の分解図を示す。装置20の組み立ての間、第1のハウジング部品21が、本発明による1つ又は複数のシール1を介在させて、第2のハウジング部品22に接続される。ここで、第1のハウジング部品21は管状の拡張部24を有し、ハウジング部品21、22が組み立てられる前に、この管状の拡張部24の上にシール1が押し込まれ、従って横方向に固定される。2つのハウジング部品21、22が共に結合されると、第1のハウジング部品21の管状の拡張部24が、第2のハウジング部品22の対応する貫通穴25を通過する。これは、装置20が最終的に組み立てられた状態では、第1のハウジング部品21から第2のハウジング部品22への貫通路が形成されることを意味する。この貫通路は、例えば、2つのハウジング部品21、22間のケーブルブッシングとして使用することができる。ここで、2つのハウジング部品21、22は、本発明によるシール1によって、装置20の周囲に対して封止される。同時に、装置20の動作中、本発明によるシール1の接触セグメント7.A、7.Iを介して、装置の内部から周囲への電磁干渉の放射が効果的に低減される。
図4bは、2つのハウジング部品21、22の境界面におけるEMCシールド作用に関して、本発明によるシール1の機能の更なる詳細を与えるものである。
【0029】
図4bは、シール1の位置における組み立てられた状態での隣接するハウジング部品21、22の詳細具体図を示す。シール1は、第1のハウジング部品21に配置された第1の金属製境界面21.1と、第2のハウジング部品22に配置された第2の金属製境界面22.1との間の管状の拡張部24に配置される。管状の拡張部24は、第2のハウジング部品22内の穴25を通って係合する。取り付けられた状態では、シール1は、2つの境界面21.1、22.2を介して圧縮される。このようにして、装置20の内部は、装置20の周囲に対して封止される。図示した場合では、シール1は、支持体5に配置された平面状の部分6の外側の周縁部分に沿って接触セグメント7.Aのみを有し、従って、このシールは
図2による第2の実施形態に相当する。ここで、互いに異なる方向に交互に傾いている接触セグメント7.Aは、異なる接触領域27において金属製境界面21.1、22.1と接触し、その結果、隣接するハウジング部品21、22の金属製境界面21.1、22.1は、多数の異なる導電経路を介して互いに電気的に接続される。従って、金属製境界面21.1、22.1とシール1の接触セグメント7.Aとの接触領域27を介して、支持体5の残りの部分と共に、閉じているEMCシールドリングが形成される。隣接する接触セグメント7.A間の距離、従って対応する接触領域27間の距離を適切に選択することにより、シール1のEMCシールド作用を、シールドされることになる電磁周波数と個別に整合させることが可能になる。シールドされることになる周波数が高いほど、連続する接触セグメント7.A間で選択されるべき距離は小さくなる。更に、境界面21.1、22.2間の接触セグメント7.A、従って導電経路、の数が多くなるほど、2つのハウジング部品21、22間の電気的接続のインピーダンスが低くなることも同様である。同時に、弾性的に設計された接触セグメント7.Aは、EMCシールドを著しく損なうことなく、境界面間の距離の局所的な変動、及びそれぞれの境界面21.1、22.2の局所的なでこぼこを相殺する。
【符号の説明】
【0030】
1 シール
2 封止開口部
3 封止体
3.1 下位体
3.2 下位体
5 支持体
5.V 正面側
5.R 背面側
6 部分
7.A 接触セグメント
7.I 接触セグメント
8 屈曲線
9 開口部
20 装置
21 ハウジング部品
22 ハウジング部品
21.1 境界面
22.1 境界面
24 拡張部
25 貫通穴
27 接触領域