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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】筆穂用繊維
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/12 20060101AFI20230315BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20230315BHJP
   A46D 1/00 20060101ALI20230315BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20230315BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B43K1/12 A
A45D34/04 510B
A46D1/00 101
B43K8/02 130
D01F6/60 311A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017011210
(22)【出願日】2017-01-25
(65)【公開番号】P2018118435
(43)【公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-11-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小倉 和人
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】藤本 義仁
【審判官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-13396(JP,A)
【文献】実開昭56-83073(JP,U)
【文献】特公昭60-11152(JP,B2)
【文献】特開2015-8856(JP,A)
【文献】特開2012-5816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00 - 40/30
A46D 1/00 - 99/00
B43K 1/00 - 1/12,5/00 - 8/24
D01F 1/00 - 6/96,9/00 - 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に縮径部を有する筆穂用繊維において、基部繊維径が50μm以上75μm以下であると共に、繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径の75%以上100%以下であり、繊維の先端から2.0mm~5.0mmまでの範囲に繊維径が基部繊維径の70%以下の部分が形成されており、当該繊維が、ナイロン繊維であり、周期2500μm以上5500μm以下で、波高さ65μm以上200μm以下の波型繊維であり、平均表面粗さRaが0.40μm以上0.90μm以下である筆穂用繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チークブラシやフェイスブラシ、アイライナーやリップブラシ等の化粧具、書道に使用する筆やインキを内蔵する筆ペン先の筆記具、画筆、刷毛などに使用する筆穂用繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筆穂に使用される繊維としては、山羊、リスなどの獣毛による天然繊維の他に、合成繊維が知られている。合成繊維は、獣毛に比べて安価に製造でき、環境保護、動物保護の観点からも好ましいが、筆穂の塗布品質としては獣毛が上級品質とされている。合成繊維による筆穂は、獣毛と同様の塗布品質を得ようと種々の品質を様々な形で改良された発明が知られている。
【0003】
例えば、特開2008-154919号公報(特許文献1)に記載の発明では、獣毛調の肌さわりを得るために、繊維軸方向に不規則な波形状を付与したフィラメントを使用したブラシ用毛材が開示されている。
【0004】
また、特開昭49-047618号公報(特許文献2)に記載の発明には、繊維の先端にテーパー加工を施し獣毛様に形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-154919号公報
【文献】特開昭49-047618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の筆穂用の繊維は、筆穂としたときの獣毛の塗布品質を安価に得ようとする試みから派生しており、塗布品質の比較としては獣毛に劣ることが否めなかった。
【0007】
特許文献1に記載の発明は、獣毛のランダム性を再現しようと試みたものであると考えられるが、不規則な波形状は安定した品質を考えると不利であると共に、自然物のランダム性を再現することは実質的に難しく、その品質を安定管理できる量産品を得ることができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明は、繊維の先端にテーパー加工を施し獣毛様に形成した繊維を得たものであるが、外観上獣毛様に形成しても、そもそも材質が異なるため、筆穂とした際に必ずしも獣毛の品質が得られるとは言いがたいものであった。
【0009】
また、上級品質とされていた獣毛による筆穂は、天然物であるが故の上述の問題の他に、天然物であることに由来すると考えられるが、テーパー形状がなだらかであり、この形状を合成繊維で再現したとしても柔らかすぎたり尖鋭な先端によりタッチが刺激的であったりするという問題があった。
【0010】
本発明は、天然物である獣毛の形をまねるのではなく、合成繊維の特徴を生かし、獣毛様の品質に加えて、合成繊維独特の塗布品質が得られる筆穂用繊維及びこれを使用した筆穂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、先端部に縮径部を有する筆穂用繊維において、基部繊維径が50μm以上75μm以下であると共に、繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径の75%以上100%以下であり、繊維の先端から2.0mm~5.0mmまでの範囲に繊維径が基部繊維径の70%以下の部分が形成されており、当該繊維が、ナイロン繊維であり、周期2500μm以上5500μm以下で、波高さ65μm以上200μm以下の波型繊維であり、平均表面粗さRaが0.40μm以上0.90μm以下である筆穂用繊維を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の筆穂用繊維は、比較的細径の基部繊維径が50μm以上75μm以下のものを 使用し、全体としてはしなり易い繊維としているが、先端部分において繊維の先端から基 部繊維径の長さの50倍の距離の後方位置における繊維径が基部繊維径の75%以上100%以下とすることによって、先端部分に近い部分まで、基部の繊維径が維持されており 、局所的な剛性を発揮する。人の皮膚は硬度が約5~10(JIS K 6253 デュ ロメーターA)程度であり、適度にソフトなタッチと押し込みを両立することができるの で、塗布液や粉を肌の肌理に押し込むように塗布することができるものと推察され、定着 性が良く、少ない塗布量であっても肌残りが良く発色性のよい塗布跡が形成できる。
【0013】
更に、上記形状的特性に加えて、繊維を比較的柔らかいナイロン繊維とすることによって、定着性を担保しつつも使用感が良好なものとなる。
【0014】
また、この繊維を所謂クリンプと呼ばれる繰り返し波型形状として、周期2500μm以上5500μm以下で波高さ65μm以上200μm以下の波型繊維とすることによっ て、波型形状による繊維全体としての曲がりやすさが付与されると共に、筆穂としたとき の繊維同士の絡み合いや押しのけ、表面摩擦によって筆穂内にできる適度に細かな空間が 、合計として豊富な空間体積を作り、穂先が適度に開き繊維の先端同士の距離も適度とな り柔らかなタッチが得られると共に、液、粉を大量に含みつつも肌に押し付けたときの繊 維の変形により、粉、液の吐出が適量ずつ比較的ゆっくり行われるものと推察され、うす 塗りながらしっかりとした発色の塗布跡を形成できる。
【0015】
また、繊維の表面が、平均表面粗さRaが0.40μm以上0.90μm以下であることによって、粉や液の塗り伸ばしがスムーズで薄く斑のない塗布跡が形成されやすいものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の筆穂用繊維の拡大模式図。
図2】繊維の長手方向長さと(x軸)と直径(y軸)との関係を示すグラフ。
図3】リス毛についての図2相当図。
図4】山羊毛についての図2相当図。
図5】本発明の筆穂用繊維のクリンプ形状を示す拡大模式図。
図6】本発明の筆穂用繊維を使用した化粧筆の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の筆穂用繊維は、繊維束とすることで筆穂として、アイライナーやリップカラー、ネイルカラー、口紅、ファンデーションの化粧料等を肌上に塗布することに用いることができ、本発明の繊維による筆穂を、棒状の柄に取り付けたり、液や粉を内蔵する容器に取り付けて塗布部とするなどして使用することができる。塗布具としては、アイライナーやリップブラシなどの化粧用の筆や刷毛が挙げられる。
【0018】
繊維の材質としては、ナイロン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど)、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合物などが挙げられ、これらを混合して使用することもできる。特に、ナイロン繊維を使用すると、ナイロン繊維は、分子内にアミド基(-NHCO)を持ち親水性である為、吸湿性があり水分を保持しているので、この水分の表面張力によって近接する繊維同士が引き合い、筆穂のまとまりが良く、吸水時に適度に柔らかくなるなり、なめらかな塗布感を得ることができ、更に、合成繊維の中でも耐摩耗性・屈曲回復性に優れるので、度重なる使用においても毛が切れたり、形状変化することが少なく、長期にわたり品質を保つことができるので好ましい。ナイロン繊維としては、例えば、6,6-ナイロン、6-ナイロン、12-ナイロン、6,10-ナイロン、6,12-ナイロンなどが挙げられる。
【0019】
また、これらの合成繊維を得る材料樹脂中に、カルシウム、マンガン、亜鉛、銅、炭酸カルシウム、カオリナイト、クレー、水酸化アルミニウム等の無機充填剤を添加し、強度、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性、形状安定性などの機械的、物理的特性を付与したり、表面にこれら無機粉体の粒子径や配合量などを調整して所望の表面粗さに調整したりすることもできる。
【0020】
繊維を束ねて筆穂とする際に、他の材質である天然の獣毛や他の合成繊維を混毛して使用することもできる。尚、ナイロン繊維の混合比率は、体積比で20%以上であることが好ましい。ナイロン繊維の混合比率が20%を下回ると、本発明の効果が得られにくくなると共に、吸湿による水分の保持力が小さくなるので、繊維同士が離れやすくなり、筆穂のまとまりに影響する場合がある。
【0021】
ナイロン繊維として、基部繊維径が50μm以上75μm以下のものを使用する。ナイロン繊維という比較的軟質の繊維を使用すると共に、繊維径が50μm以上75μm以下であることによって、繊維全体として好ましい撓りや弾力を備えることができる。
【0022】
また、繊維の最大径Dは、1種類であっても2種類であっても何種類混ぜても構わない。例えば、太い繊維と細い繊維を混毛することで、筆穂として弾性が強く腰のあるタッチと、集束し易く、ソフトなタッチ感とを両立させることができる。
【0023】
図1とした繊維の一例の拡大模式図に示したように、繊維の先端は所謂テーパー加工を施し、先端に向かって次第に縮径した先尖形状とする。
【0024】
図2は、図1で示した繊維についての繊維の長手方向長さと(x軸)と直径(y軸)との関係を示すグラフである。テーパー加工を施した先端に向かう縮径部分についての傾斜の変位をわかりやすくするために横軸であるx軸の尺度を縦軸であるy軸に対50倍の尺度表示として示したものである。即ち、その形状としては、繊維の先端から基部繊維径(D)の長さの50倍の距離(50D)の後方位置における繊維径(D50)が基部繊維径の70%以上105%以下(0.7D≦D50≦1.05D)である80%程度となっている。更に好ましい範囲は、75%以上99%以下である。
このことは、基部繊維径(D)の50倍の範囲内である比較的先端に近い側に、最も細くなる先端に向かい径の変化率が大きく変わる変曲点が位置することを意味しており、このような位置に変曲点が存在し、また、基部繊維径の50倍程度の先端近傍に変曲点があるような繊維は、天然素材である獣毛には見られない、加工によって種々の形状に設計できる合成繊維ならではの形状であるといえる。このように特別な形状に縮径したものとすることによって、先端近傍まで基部繊維径を維持した形状となり、前述の繊維全体として好ましい撓りや弾力を備えつつ、先端部分の短い単位では局所的な剛性を発揮し、人肌(硬度約5~10(JIS K 6253 デュロメーターA)程度)に対して塗布剤である液や粉を押し込むように塗布するので定着性が得られるものである。
【0025】
また、基部の繊維径の70%以下の繊維径部分が、繊維の先端から繊維の基部径の50倍までの長さ範囲および/又は繊維の先端から2.0mm~5.0mmまでの範囲に形成されていることが、腰のある繊維として、化粧料などを押し込みやすく、定着性に優れた仕上がりが得られる点で好ましい。
【0026】
尚、先端のテーパー加工された部分の形状として複数種のものを混合して使用することは差し支えない。多様な繊維を混合して使用することは、天然の獣毛のような不確定な多様性からくるランダム性の利益が得られやすい。
【0027】
先端を先細に縮径加工する方法としては、処理液により加工する方法が挙げられる。具体的には、メタクレゾールと塩化カルシウム-メタノール溶液との混和液が挙げられる。但し、必ずしもこの方法に限定されるものではなく、例えば、合成樹脂製繊維に熱延伸を与えてテーパー状に引き伸ばす方法やグラインダー研磨など機械的にテーパー化するなどの他の方法を採用しても良い。
【0028】
尚、筆穂としてポリエステル製の繊維を混毛する場合には、水酸化ナトリウム水溶液などを組み合わせて使用することもできる。
【0029】
比較のために、天然の獣毛であるリス毛とヤギ毛について図2と同様のグラフを、それぞれ図3図4に示す。
【0030】
図3に一般的なリス毛の外形線の模式図を示す。繊維の先端から基部繊維径(D)の長さの50倍の距離(50D)の後方位置における繊維径(D50)が基部繊維径の64%程度となっているので肌当たりは良いものの、先端部分の剛性が無く、人肌に対して、塗布剤である液や粉を塗布した際に押し込むように塗布することができない。結果、定着力が弱く化粧崩れしやすくなり、発色が無く、満足のいく仕上がりにすることは困難であった。
【0031】
図4に一般的なヤギ毛の外形線の模式図を示す。繊維の先端から基部繊維径(D)の長さの50倍の距離(50D)の後方位置における繊維径(D50)が基部繊維径の70%程度となっているので、先端部分に剛性があり、人肌に対して、塗布剤である液や粉を塗布した際に押し込むように塗布できるが、基部繊維径(D)が太いが故に、繊維自体の剛性が強く、肌当たりが悪い上に、筆穂にした際に接触点が少なく、ムラのある仕上がりになってしまうものであった。
【0032】
図5に模式図として示したように、繊維を所謂クリンプと呼ばれる繰り返し波型形状として、周期(最大山間距離T)1500μm以上5500μm以下で波高さ(振幅長さH)20μm以上200μm以下の波型繊維とすると、波型形状による繊維全体としての曲がりやすさが付与されると共に、筆穂としたときの繊維同士の絡み合いや押しのけ、表面摩擦によって筆穂内に適度に細かく合計として豊富な空間体積を作り、穂先が適度に開き繊維の先端同士の距離も適度となり柔らかなタッチが得られると共に、液、粉を大量に含みつつも肌に押し付けたときの繊維の変形により、粉、液の吐出が適量ずつ比較的ゆっくり行われるものと推察され、うす塗りながらしっかりとした発色の塗布跡を形成できるので好ましい。より好ましくは、周期2500μm、波高さ65μmである。このようなクリンプの形成方法としては、繊維の径方向に対し、上下にギヤを当て加圧してクリンプを形成する方法や繊維を拠り合わせ加熱処理によりクリンプを形成する方法などが挙げられる。
【0033】
繊維の表面が、平均表面粗さRaが0.15μm以上0.90μm以下であることによって、粉や液の塗り伸ばしがスムーズで薄く斑のない塗布跡が得られるので好ましい。更に好ましくはRa0.40μm以上0.70μm未満である。このような表面状態を得る手段としては、樹脂の中に鉱物や無機粉体などを練り込み、繊維の表面及び繊維の内部共に凹凸を形成する手段や繊維表面にプラズマ処理やレーザーなどで表面に凹凸を形成する手段、アルカリや酸などの繊維の材質に適した化学処理液に浸漬することで表面に凹凸を形成する手段などが挙げられる。
【0034】
また、このような合成繊維1本の形状としては、横断面形状が丸形の他に、特開2008-055742号に開示されているような断面形状が異形なものを組み合わせて用いても良い。
【0035】
例えば、横断面が円形のものと異形のものとを組み合わせて使用した場合、仮に最密充填のような状態に束ねられたとしても、筆穂の内部の繊維の間に積極的に空間が生まれ、粒子の大きい顔料を使用した塗布液や高粘度の塗布液を使用する場合に好ましい。更に、繊維同士の接触面積も少なくなるので干渉して絡まるようなことや、摩擦による静電気が発生してまとまりが悪くなるようなことが抑制される。
【0036】
本発明の繊維を束ねて筆穂とし、棒状の柄に、金属や弾性を有する合成樹脂材料などの留具にて接着し、筆や絵筆、化粧ブラシなどとしたり、内部に化粧料やインキを収容する塗布具の先端に取り付けて塗布具を形成することなどができる。内蔵する塗布液は、中綿などと称される繊維収束体に含浸させても良いし、インキタンクとなる容器に自由状態で収容する、所謂生インキと呼ばれるタイプとしても良い。また、インキタンクや中綿を、交換式として、外装としての軸と筆穂をそのままに、塗布液を補充して使用するものとすることもできる。また、穂先を容器に入れた塗布液に浸して使用するタイプのものとすることもできる。また、筆穂を保護したり、液の乾燥を抑制するなどの目的で、キャップを被冠させたり、軸操作によって筆穂を軸内に収容、繰り出し突出可能なものとすることもできる。
【0037】
図6に、化粧筆とした場合の一例を示す。
【0038】
筆穂1の形状は繊維を束ねて形成するが、筆穂の後端部分から筆穂先端部にかけて、扇状に広がり、筆穂の先端は並列部1aを有し、側面部に向かい両端に左右対称の曲面状部分1b、1b’を形成している。筆穂の後端部分は円形、楕円形、扁平状などにそろえて溶着させるなどして形成できる。
【0039】
このように束ねた筆穂1を、アルミ製の留具2にてAS樹脂製の柄3にエポキシ樹脂を主成分とする接着剤にて固定している。
【0040】
また、使用されるインキや化粧料は、特に限定されないが、着色剤として染料及び/または顔料が使用できる。粉状の着色粒子やそれを押し固めた、ケーキカラーやファンデーションパウダーを筆穂ですくい取り塗布するようなものとすることもできる。
【実施例
【0041】
原料合成樹脂に、適宜鉱物などの無機粉体を混入(ミネラル配合などと称する)した繊維原料組成物を押し出し成型した原料繊維として、種々の市販の繊維を使用し、適宜ギヤ寸法のギヤを押し当てて各種周期及び波高さの筆穂用繊維を得た。得られた繊維について、繊維の先端を、原料合成樹脂がナイロンの場合にはメタクレゾールと塩化カルシウム-メタノール溶液との混和液に、ポリエステルの場合には、水酸化ナトリウム水溶液に浸すことによって所望のテーパー角度となる先端テーパー部を形成した。
【0042】
原料繊維としては、次のものを使用した。
(繊維1)6.12Nylon Filaments TYNEX(R)0900(ナイロン繊維、デュポン(株)製)
(繊維2)6.12Nylon Filaments TYNEX(R)0901(ミネラル混入ナイロン繊維、デュポン(株)製)
(繊維3)6.12Nylon Filaments TYNEX(R)0993(異型ナイロン繊維(横断面ひし形・内部4つ穴中空形状)、デュポン(株)製)
(繊維4)6.10Nylon Filaments(ナイロン繊維、デュポン(株)製)
(繊維5)6.12Nylon Filaments MedexS (ナイロン繊維、PERLON(株)製)
(繊維6)6.10Nylon Filaments(ナイロン繊維、PERLON(株)製)
(繊維7)6.12Nylon Filaments(ナイロン繊維、PERLON(株)製)
(繊維8)6 Nylon Filaments(ナイロン繊維、東レ・モノフィラメント(株)製)
(繊維9)6.6 Nylon Filaments(ナイロン繊維、東レ・モノフィラメント(株)製)
(繊維10)6.10 Nylon Filaments(ナイロン繊維、東レ・モノフィラメント(株)製)
(繊維11)6.12 Nylon Filaments(ナイロン繊維、東レ・モノフィラメント(株)製)
(繊維12)PolyesterPBT(PBT繊維、デュポン(株)製)
先端にテーパー部を形成した各繊維を、先端部を下向きにし、筆穂形成用の壺体に投入し、振動を与えながら山振り形状(R)R15に形成し、筆穂出長さ(L)45mm、口金長辺幅(W1)24mm、口金幅(W2)14mmで構成したパウダー化粧料用の化粧筆を得た。
【0043】
尚、前記筆穂用繊維の平均表面粗さ(Ra)は、筆穂用繊維の表面をレーザー顕微鏡(VK-X250、(株)キーエンス製)で計測し表面の凹凸状態を確認した。
【0044】
前記筆穂用繊維の縮径した先尖形状は、工具顕微鏡(MM6C-PSZ オリンパス社製)にて繊維長手方向の0.5mm毎の外径を計測し、各繊維n=30の平均値から形状を確認した。
【0045】
実施例1~、比較例1~21の筆穂用繊維の基部繊維径(D)、基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径(D50)、クリンプ周期(最大山間距離T)、クリンプ波高さ(振幅長さH)、平均表面粗さ(Ra)の各種条件を表1に示す。
【0046】
【表1】
塗布用化粧料
ファンデーション用のピュアミネラルパウダーオークル3〈ファンデーション、メイベリンニューヨーク製、米国)を使用して塗布試験を実施した。
試験
上記のパウダー化粧料を用い、上記塗布用化粧料を使用してモニター試験を実施した。結果を表2に示す。
【0047】
確認項目は以下の通りである。
粉含み:筆穂への粉のつき方を目視にて、筆穂全体に満遍なく綺麗についているものを「良い」とし、筆穂に斑についたり、粉がつかないものを「悪い」とする判断基準において、を官能評価にて下記の通り4段階評価にて判定をした。
◎:筆穂への粉付きが非常に綺麗
○:筆穂への粉付きが綺麗
△:筆穂への粉付きが少し斑で悪い
×:筆穂への粉付きが局所的につく、または粉が付かない
肌へのタッチ感:筆穂で肌に化粧料を塗り込んだ際の肌への当たりが滑らかで触り心地が良いものを「良い」とし、チクチクしたり、触り心地の悪いものを「悪い」とする判断基準において、官能にて下記の通り官能評価にて4段階評価にて判定をした。
◎:非常に良い触り心地(滑らかで気持ちよい)
○:良い触り心地
△:悪い触り心地
×:非常に悪い触り心地(チクチクする)
定着性:筆穂で肌に化粧料を塗り込んだ際の粉の定着性を目視にて、肌に化粧料がしっかり定着しているものを「良い」とし、定着力が弱く化粧崩れしやすいものを「悪い」とする判断基準において、下記の通り官能評価にて4段階評価にて判定した。
◎:定着性が非常に良く化粧崩れしない
○:定着性が良く化粧崩れし難い
△:定着性が悪く化粧崩れしやすい
×:定着性が非常に悪く化粧崩れしてしまう
発色:筆穂で肌に化粧料を塗り込んだ際のツヤ(発色)の有無を目視にて、肌にツヤ(発色)がしっかりでるものを「良い」とし、肌にツヤ(発色)が出にくく、マット調になったり、粉が乗らないものを「悪い」とする判断基準において、下記の通り官能評価にて4段階評価にて判定した。
◎:肌にツヤがはっきりと出る
○:肌にツヤが出やすい
△:肌にツヤが出にくく、ややマット調
×:肌にツヤが出ず、マット調
均一性:筆穂で肌に化粧料を塗り込んだ際のムラの有無を目視にて、ムラ無く綺麗に仕上がっているものを「良い」とし、ムラになるものを「悪い」判断基準において、下記の通り官能評価にて4段階評価にて判定した。
◎:ムラ無く、非常に綺麗な仕上がり
○:ムラ無く、綺麗な仕上がり
△:ややムラが出て、仕上がりが悪い
×:ムラが出て仕上がりが非常に悪い
粉の伸び:筆穂で肌に化粧料を一回塗布した際の粉の伸びを目視にて、化粧料が綺麗に伸びるものを「良い」とし、ムラになるものを「悪い」判断基準において、下記の通り官能評価にて4段階評価にて判定した。
◎:粉が良く伸びて、粉持ちが非常に良い
○:粉が良く伸びる
△:粉の伸びにくい
×:粉が伸びず、粉持ちが非常に悪い
【0048】
【表2】
上記、表2の結果から明らかなように、本発明範囲の実施例1~実施例の筆穂用繊 維を使用した化粧筆は、比較例1~比較例21の筆穂用繊維に比べて、定着性が良く、且つ 、少ない塗布量であっても肌残りが良く発色性のよい塗布跡が形成できている。
【符号の説明】
【0049】
D 基部繊維径
D50 基部繊維径の長さの50倍の距離の後方位置における繊維径
T クリンプ周期(最大山間距離)
H クリンプ波高さ(振幅長さ)
1 筆穂
2 留具
3 柄
図1
図2
図3
図4
図5
図6