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特許7245009演算処理装置の故障通知プログラム及びヒーターシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】演算処理装置の故障通知プログラム及びヒーターシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/30 20060101AFI20230315BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G06F11/30 155
G06F11/30 140D
B60N2/56
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018146595
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020019448
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】青野 孝治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭60-051141(JP,B2)
【文献】特表2016-527657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0167418(US,A1)
【文献】特表2013-531335(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0073774(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
G06F 11/28-11/36
B60N 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行する演算部と、前記演算部により利用されるタイマーと、出力インタフェースと、前記演算部で実行される前記プログラムに対して割込み要求が有ったことを通知する割込みコントローラと、を少なくとも備える演算処理装置において前記プログラムの1つとして実行される故障通知プログラムであって、
周期的に前記割込みコントローラに割込み要求を行うことを前記タイマーに指示する周期割込み処理と、
前記割込みコントローラが前記割込み要求を受信したことに応じて発する割込み通知に基づき前記出力インタフェースから出力する動作確認パルス信号の論理レベルを反転させる動作状態通知処理と、を行い、
前記演算処理装置が生成する電源制御PWM信号の供給先であるスイッチング電源回路への電源供給経路に設けられるリレースイッチの動作を制御するパルス検出回路に前記動作確認パルス信号を与え、
前記動作確認パルス信号の論理レベルの反転がなくなったことに応じて前記パルス検出回路に前記リレースイッチを遮断状態に制御させる故障通知プログラム。
【請求項2】
前記演算処理装置は、前記スイッチング電源回路に対して前記電源制御PWM信号を出力するPWM信号生成回路を更に有し、
前記演算部で実行する前記プログラムには、前記PWM信号生成回路を他の処理とは独立して動作させながら、前記スイッチング電源回路からのフィードバック信号の値に応じた前記電源制御PWM信号のデューティー比の指定を前記PWM信号生成回路に行う電源制御プログラムが含まれ、
前記故障通知プログラムは、前記電源制御プログラムと共に前記演算部で実行される請求項1に記載の故障通知プログラム。
【請求項3】
ヒーターと、
前記ヒーターに供給する電力を制御することで、前記ヒーターの温度を調節する温度制御回路と、を含むヒーターシステムであって、
前記温度制御回路が、
バッテリ電源電圧が出力されるバッテリの正極端子に一端が接続されるリレースイッチと、
前記リレースイッチの他端に第1の端子が接続され、第2の端子から前記ヒーターに供給する電力を出力するスイッチングトランジスタと、
前記第2の端子と接地端との間に接続される帰還抵抗と、
前記第2の端子の電圧をフィードバック信号として受け取り、前記フィードバック信号の値に応じてデューティー比が変化する電源制御PWM信号を生成して、前記スイッチングトランジスタのゲートに前記電源制御PWM信号を与える演算処理装置と、
前記演算処理装置が出力する動作確認パルス信号の有無を検出して、前記動作確認パルス信号がなくなったことに応じて前記リレースイッチを遮断状態とするパルス検出回路と、を有し、
前記演算処理装置が、プログラムを実行する演算部と、前記演算部により利用されるタイマーと、出力インタフェースと、前記演算部で実行される前記プログラムに対して割込み要求が有ったことを通知する割込みコントローラと、を少なくとも備え、
前記演算部において実行される故障通知プログラムにより、
周期的に前記割込みコントローラに割込み要求を行うことを前記タイマーに指示する周期割込み処理と、
前記割込みコントローラが前記割込み要求を受信したことに応じて発する割込み通知に基づき前記動作確認パルス信号の論理レベルを反転させる動作状態通知処理と、
を行うヒーターシステム。
【請求項4】
前記演算部では、前記電源制御PWM信号を生成する電源制御プログラムが、前記故障通知プログラムと共に実行される請求項3に記載のヒーターシステム。
【請求項5】
前記パルス検出回路は、
前記動作確認パルス信号の交流成分を平滑して検出電圧を生成する平滑回路と、
前記検出電圧の電圧レベルが予め設定した閾値電圧以下となったことに応じて前記リレースイッチを遮断状態とするスイッチ制御信号を出力するスイッチ制御トランジスタと、
を有する請求項3又は4に記載のヒーターシステム。
【請求項6】
前記演算処理装置は、前記バッテリから出力されるバッテリ電圧を降圧して生成される内部電源電圧に基づき動作する請求項3乃至5のいずれか1項に記載のヒーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は演算処理装置の故障通知プログラム及びヒーターシステムに関し、例えば、ヒーターに電力を供給する電源回路を制御する電源制御回路に適用される演算処理装置の故障通知プログラム及びこの演算処理回路を含むヒーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のシートにヒーターを設ける例が増加している。このようなヒーターは、自動車用のシートのシートクッション材と表皮との間に設けられる。このようなヒーターをシートヒーターと称す。シートヒーターでは、着座者に対する快適性を提供するために、指定された所定の温度となるように温度制御がなされる。しかしながら、温度制御を行う回路等に不具合が生じた場合にはヒーターが過熱することがあり、温度制御を行う回路の故障を検出してヒーターの過熱を防止することが求められる。そこで回路の故障検出方法に関する技術の例が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の遊技機では、平滑回路を用いて遊戯機内で利用するクロックの異常を検出する。特許文献2に記載の装置では、ウォッチドッグタイマを用い、マイコンの正常動作中にマイコンから一定周期で出力されるウォッチドッグパルスに基づき、マイコンの動作状態を監視する。そして、特許文献2に記載の装置は、マイコンの動作が異常と判断したときは、マイコンへリセット信号を出力すると共に、充電許可・停止回路へローレベルの停止信号を出力することで、マイコンから充電許可・停止回路へ出力されている信号の内容にかかわらず充電を強制停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-136624号公報
【文献】特開2009-261092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、クロックが正常に生成されていながら装置そのものの動作に異常が生じるような不具合は検出することができない。また、特許文献2に記載の技術では、ウォッチドックタイマが正常に動作しているかどうかを検証して、ウォッチドックタイマの動作を保証しなければシステム全体としての動作を保証したことにならず、検証・確認の工数が増大する問題がある。このようなことから、特許文献1、2に記載の技術では、システムの機能安全を補償することが難しい問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる演算処理装置の故障通知プログラムの一態様は、プログラムを実行する演算部と、前記演算部により利用されるタイマーと、出力インタフェースと、前記演算部で実行される前記プログラムに対して割込み要求が有ったことを通知する割込みコントローラと、を少なくとも備える演算処理装置において前記プログラムの1つとして実行される故障通知プログラムであって、周期的に前記割込みコントローラに割込み要求を行うことを前記タイマーに指示する周期割込み処理と、前記割込みコントローラが前記割込み要求を受信したことに応じて発する割込み通知に基づき前記出力インタフェースから出力する信号の論理レベルを反転させる動作状態通知処理と、を行う。
【0007】
本発明にかかるヒーターシステムの一態様は、ヒーターと、前記ヒーターに供給する電力を制御することで、前記ヒーターの温度を調節する温度制御回路と、を含むヒーターシステムであって、前記温度制御回路が、バッテリ電源電圧が出力されるバッテリの正極端子に一端が接続されるリレースイッチと、前記リレースイッチの他端に第1の端子が接続され、第2の端子から前記ヒーターに供給する電力を出力するスイッチングトランジスタと、記第2の端子と接地端との間に接続される帰還抵抗と、前記第2の端子の電圧をフィードバック信号として受け取り、前記フィードバック信号の値に応じてデューティー比が変化する電源制御PWM信号を生成する演算処理装置と、前記演算処理装置が出力する動作確認パルス信号の有無を検出して、前記動作確認パルス信号がなくなったことに応じて前記リレースイッチを遮断状態とするパルス検出回路と、を有し、前記演算処理装置が、プログラムを実行する演算部と、前記演算部により利用されるタイマーと、出力インタフェースと、前記演算部で実行される前記プログラムに対して割込み要求が有ったことを通知する割込みコントローラと、を少なくとも備え、前記演算部において実行される故障通知プログラムにより、周期的に前記割込みコントローラに割込み要求を行うことを前記タイマーに指示する周期割込み処理と、前記割込みコントローラが前記割込み要求を受信したことに応じて発する割込み通知に基づき前記動作確認パルス信号の論理レベルを反転させる動作状態通知処理と、を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる演算処理装置の故障通知プログラム及びヒーターシステムによれば、ヒーターの温度制御に用いる演算処理装置の故障を検出してシステムの機能安全を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかるヒーターシステムのブロック図である。
図2】実施の形態1にかかるパルス検出回路の回路図である。
図3】実施の形態1にかかる演算処理装置のブロック図である。
図4】実施の形態1にかかる演算処理装置で実行されるプログラムの実行順序を説明するスケジュール図である。
図5】実施の形態1にかかる動作確認パルス信号の変化を説明するタイミングチャートである。
図6】実施の形態1にかかるヒーターシステムの動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、それらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0012】
図1に実施の形態1にかかるヒーターシステム1のブロック図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかるヒーターシステム1は、バッテリ10から供給されるバッテリ電源に基づき動作する。図1に示す例では、バッテリ10が出力するバッテリ電源の電圧値としてバッテリ電源電圧Vbatを示した。また、ヒーターシステム1では、バッテリからの電源をスイッチSWとダイオードDを介して後述する直流電圧変換回路11及びリレースイッチ12に供給する。スイッチSWは、例えば、自動車のイグニッションがオンすることに基づきオン状態となるスイッチである。また、ダイオードDは、バッテリ10に対して電流が逆流することを防止する逆流防止ダイオードである。
【0013】
実施の形態1にかかるヒーターシステム1は、直流電圧変換回路11(図1のDC/DCコンバータ)、リレースイッチ12、スイッチングトランジスタ13、演算処理装置14(図1の制御MCU)、パルス検出回路15、帰還抵抗Rfbを用いて負荷16に与える電力を制御する。
【0014】
直流電圧変換回路11には、スイッチSW及びダイオードDを介してバッテリ電源電圧Vbatが供給される。なお、ダイオードDを通過後のバッテリ電源電圧Vbatは、バッテリ10から出力されるバッテリ電源電圧Vbatよりは電圧が低下するが、以下の説明では、この電圧降下した後の電圧に対してもバッテリ電源電圧Vbatと称す。直流電圧変換回路11は、バッテリ10が出力するバッテリ電源電圧Vbatを降圧して内部電源電圧PWRiを生成する。リレースイッチ12は、一端がバッテリ10の正極端子に接続され、他端がスイッチングトランジスタ13の第1の端子(例えば、ドレイン)に接続される。また、リレースイッチ12は、バッテリ電源電圧Vbatをスイッチングトランジスタ13側に伝達するか否かを切り替えるスイッチのオンオフをコイルの電磁力を用いて行うためにインダクタが組み込まれている。このインダクタの一端にはダイオードDを介してバッテリ電源電圧Vbatが供給され、他端にはパルス検出回路15が出力するスイッチ制御信号S_contが与えられる。
【0015】
スイッチングトランジスタ13は、例えば、NMOSトランジスタである。スイッチングトランジスタ13は、第1の端子(例えば、ドレイン)がリレースイッチ12の他端に接続され、第2の端子(例えば、ソース)が帰還抵抗Rfbを介して接地端に接続され、制御端子(例えば、ゲート)に電源制御PWM信号CONT_PWMが与えられる。電源制御PWM信号CONT_PWMは、演算処理装置14から出力される信号である。また、スイッチングトランジスタ13のソースからは負荷16に供給するヒーター電力Sup_PWRが出力される。
【0016】
演算処理装置14は、例えば、プログラムを実行可能な演算部と、演算部が利用する周辺回路、外部と信号を送受信する各種インタフェースを備えるMCU(Micro Controller Unit)等の半導体装置である。実施の形態1にかかる演算処理装置14は、スイッチングトランジスタ13、帰還抵抗Rfbを用いて形成される電源制御回路の一部を構成する部品である。そして、演算処理装置14は、スイッチングトランジスタ13と帰還抵抗Rfbとを接続するノードに生成される電圧をフィードバック信号FBとして取り込み、このフィードバック信号FBの値に応じて電源制御PWM信号CONT_PWMのデューティー比を変化させる電源制御プログラムを実行する。そして、演算処理装置14は、この電源制御プログラムにより、ヒーター電力Sup_PWRの大きさを調節し、負荷16として設けられるヒーターの温度を、図示しない上位システムから与えられた温度指令値に応じた温度とする。
【0017】
また、演算処理装置14は、電源制御プログラムと共に故障通知プログラムを実行する。演算処理装置14は、故障通知プログラムにより、動作確認パルス信号DET_PLSを生成する。この動作確認パルス信号DET_PLSは、演算処理装置14におけるプログラムの実行状態が正常であれば生成され続け、演算処理装置14におけるプログラムの実行状態が停止したことに応じて論理レベルの切り替えが停止する信号である。
【0018】
演算処理装置14で実行される電源制御プログラム及び故障通知プログラムの詳細は後述する。
【0019】
パルス検出回路15は、演算処理装置14が出力する動作確認パルス信号DET_PLSの有無を検出して、動作確認パルス信号DET_PLSがなくなったこと(例えば、論理レベルの変化がなくなったこと)に応じてリレースイッチ12を遮断状態とする。より具体的には、パルス検出回路15は、動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルの変化がなくなったことに応じてスイッチ制御信号S_contの論理レベルをロウレベルからハイレベルに切り替える。これにより、リレースイッチ12は導通した状態から遮断状態となる。
【0020】
負荷16は、例えば、ヒーターである。このヒーターは、例えば、自動車のシートの座面と背面との少なくとも一方において、表皮カバーの下側に設けられるものである。
【0021】
続いて、パルス検出回路15について詳細に説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかるパルス検出回路の回路図を示す。図2に示す回路は、パルス検出回路15を実現するための回路の一例であり、その他の回路であっても構わない。
【0022】
図2に示す例では、パルス検出回路15は、平滑回路20、抵抗R2、R3、スイッチ制御トランジスタTr1を有する。パルス検出回路15は、動作確認パルス信号DET_PLSの交流成分を平滑して検出電圧Vdetを生成する。スイッチ制御トランジスタTr1は、エミッタが接地され、コレクタからスイッチ制御信号S_contを出力する。また、抵抗R2は、スイッチ制御トランジスタTr1のベースと平滑回路20の出力端子との間に設けられる。抵抗R3は、スイッチ制御トランジスタTr1のベースとエミッタとの間に設けられる。
【0023】
平滑回路20は、抵抗R1、コンデンサC1、C2、ダイオードD1、D2を有する。また、平滑回路20は、動作確認パルス信号DET_PLSが入力される端子を入力端子とする。抵抗R1は、この入力端子とコンデンサC1の一端との間に設けられる。コンデンサC1は、動作確認パルス信号DET_PLSの直流成分を除去して、動作確認パルス信号DET_PLSの交流成分を後段の回路に伝達する。ダイオードD1のアノードは接地端に接続され、カソードはコンデンサC1の他端に接続される。ダイオードD2のアノードは、コンデンサC1の他端に接続され、カソードが平滑回路20の出力端子となる。コンデンサC2は、ダイオードD2のカソードと接地端との間に設けられる。コンデンサC2は、動作確認パルス信号DET_PLSの交流成分を平滑する平滑容量として機能する。
【0024】
平滑回路20では、動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルの切り替えが周期的に行われている状態で、ロウレベルとなるロウレベル期間に検出電圧Vdetが一定の電圧以上の電圧となるように抵抗R1、R2、R3、コンデンサC1、C2のパラメータが設定される。各素子のパラメータを設定値は、演算処理装置14が動作を開始してからリレースイッチ12が導通した状態となるまでの時間と、演算処理装置14の異常が検出されてからリレースイッチ12が遮断状態となるまでの時間と、をどのような時間とするかにより様々の値が考えられる。
【0025】
続いて、演算処理装置14の詳細について説明する。まず、図3に実施の形態1にかかる演算処理装置14のブロック図を示す。なお、図3に示す例は、演算処理装置14の一例であり、演算処理装置14の構成として他の構成例を除外するものでは無い。
【0026】
図3に示す例では、演算処理装置14は、演算部30、割込みコントローラ31、タイマー40、PWM信号生成回路41、デジタルアナログ変換回路42、アナログデジタル変換回路43、CANインタフェース44、汎用出力インタフェース45、汎用入力インタフェース46、シリアル通信インタフェース47、内蔵RAM48、内蔵フラッシュROM49を有する。演算処理装置14では、内蔵される各種機能ブロック(例えば、演算部30、タイマー40等)が内部バス32により互いに通信可能なように接続される。
【0027】
演算部30は、プログラムを内蔵フラッシュROM49等から読み出して実行するプログラム実行部である。また、演算部30は、実行するプログラム内の処理において、割込みコントローラ31等の周辺回路のレジスタに動作に必要な設定値を書き込む周辺回路アクセスを行うことで、演算処理装置14内の他の回路と連携してプログラムで指示された処理を実行する。
【0028】
割込みコントローラ31は、他の回路から発せられる割込み要求に応じて演算部30に割込み通知を発する。演算部30は、受信した割込み通知に基づきそのとき実行していた処理を一旦停止して割込み通知により指示された処理を実行する。
【0029】
タイマー40は、演算部30から与えられる設定値に基づき所定の時間を計測する。PWM信号生成回路41は、タイマー40と同様に演算部30から与えられる設定値に基づき所定の時間を計時するが、この計時時間に基づき外部に出力する信号の論理レベルを切り替える事で電源制御PWM信号CONT_PWMを生成する。つまり、演算処理装置14では、タイマー機能を用いて電源制御PWM信号CONT_PWMを生成する。また、演算処理装置14では、PWM信号生成回路41に与える設定値をフィードバック信号FBの値に応じて変化させることで電源制御PWM信号CONT_PWMのデューティー比を変化させる。
【0030】
デジタルアナログ変換回路42は、演算処理装置14内で生成されたデジタル値をアナログ値に変換し、当該アナログ値に対応する電圧値を有するアナログ信号を出力する。アナログデジタル変換回路43は、外部から入力するアナログ信号の電圧値に対応するデジタイル値を演算処理装置14に伝達する。演算処理装置14では、フィードバック信号FBはアナログデジタル変換回路43に入力され、演算処理装置14は、フィードバック信号FBの電圧値に対応するデジタル値を用いて、例えば、電源制御プログラムを動作させる。
【0031】
CAN(Controller Area Network)インタフェース44は、例えば、自動車内等の限られた範囲に分散して配置される部品間で情報の送受信を行うためのCAN通信規格に対応したインタフェース回路である。演算処理装置14は、このCANインタフェースを介して、上位システムとの間の情報の送受信を行う。
【0032】
汎用出力インタフェース45は、規格化されていないデータ列を含む信号を出力するための出力インタフェース回路である。汎用入力インタフェース46は、規格化されていないデータ列を含む信号を入力するための入力インタフェース回路である。実施の形態1にかかる演算処理装置14では、汎用出力インタフェース45を用いて動作確認パルス信号DET_PLSを出力する。
【0033】
シリアル通信インタフェース47は、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)規格、USB(Universal Serial Bus)規格に沿ったシリアルデータ通信を行うためのインタフェース回路である。
【0034】
内蔵RAM48は、演算処理装置14に内蔵されたRAM(Random Access Memory)である。内蔵RAM48は、例えば、演算部30がプログラムに基づき実行する処理において生成される中間データ、或いは、最終データを格納する。内蔵フラッシュROM49は、演算処理装置14に内蔵されたフラッシュメモリである。この内蔵フラッシュROM49には、例えば、演算部30で実行されるプログラムが格納される。演算部30は起動時に内蔵フラッシュROM49からプログラムをロードして処理を開始する。
【0035】
実施の形態1にかかる演算処理装置14では、動作確認パルス信号DET_PLSを汎用出力インタフェース45を用いて出力する。この動作確認パルス信号DET_PLSは、演算部30で行われている処理が正常に実行されていることを確認するためのものであり、演算部30で行われている処理とは独立して動作する機能ブロックの出力を用いることは適切ではない。
【0036】
例えば、PWM信号生成回路41等のタイマーは周期的に論理レベルを切り替える事が出来るが、PWM信号生成回路41にこのような周期的に論理レベルが切り替わる信号を出力させる場合、演算部30の処理が停止してもPWM信号生成回路41が出力する信号の論理レベルを切り替え続けることが出来てしまう。そのため、動作確認パルス信号DET_PLSの出力ブロックとしてPWM信号生成回路41を用いることは、適切ではない。
【0037】
また、シリアル通信インタフェース47、CANインタフェース44等は決められた規格に基づく信号の送受信を行うための機能ブロックで有り、動作確認パルス信号DET_PLSのような規格から外れた信号を出力する機能ブロックとしては効率が悪く適切ではない。また、デジタルアナログ変換回路42を動作確認パルス信号DET_PLSを出力する機能ブロックとして利用することも可能であるが、2値の信号を出力するためにこのような多値出力が可能な機能ブロックを利用することが非効率であり、適切ではない。
【0038】
続いて、演算部30で実行される電源制御プログラムと故障通知プログラムとを実行した場合のプロセスの実行スケジュールについて説明する。そこで、図4に実施の形態1にかかる演算処理装置14で実行されるプログラムの実行順序を説明するスケジュール図を示す。図4に示す例では、プログラムに含まれるプロセス毎に符号を付した。また、図4に示す例では、電源制御プログラムに属するプロセスを細い実線の四角で示し、故障通知プログラムに属するプロセスを太い実線の四角で示した。
【0039】
図4に示すように、演算処理装置14の演算部30では、10msec周期で電源制御プログラムのプロセス(例えば、P1~P8)が実行される。また、電源制御プログラムでは、アナログデジタル変換回路43に対して500μsecの周期で割込み要求を要求させて、アナログデジタル変換回路43で取得されるフィードバック信号FBの値を取り込む(ADCプロセスP10)。
【0040】
10msec周期で実行される電源制御プログラムでは、まずCANインタフェース44を介して上位システムからCAN規格に基づく動作指令値を受信する(CANプロセスP1)。そして、CANプロセスP1で受信した動作指令値を含む複数の入力値に対する処理順序を調整する調停処理を行う(ゲートウェイプロセスP2)。
【0041】
続いて、電源制御プログラムでは、ADCプロセスP10で取得したフィードバック信号FBの値の正当性を検証する診断処理を行う(診断プロセスP3)。そして、正当性が確認されたフィードバック信号FBの値と、CANプロセスで取得された動作指令値と、を比較して電源制御PWM信号CONT_PWMのデューティー比を決定する(ヒーター制御プロセスP4)。その後、電源制御プログラムは、ヒーター制御プロセスP4で算出された電源制御PWM信号CONT_PWMのデューティー比をPWM信号生成回路41に設定する(PWMプロセスP5)。
【0042】
また、電源制御プログラムでは、ヒーター制御プロセスP4で算出されたデューティー比と、診断プロセスP3における診断結果と、の出力順序を調整する調停処理を行う(ゲートウェイプロセスP6)。そして、ゲートウェイプロセスP6で決定された順にCANインタフェース44が送信対象データを上位システムに通知する(CANプロセスP7)。また、電源制御プログラムでは、診断プロセスP3で生成された診断結果をフラッシュメモリに書き込む(データフラッシュプロセスP8)。
【0043】
上記電源制御プログラムに対して、故障通知プログラムは、1msec周期で割込みコントローラ31に割込み要求を行うことをタイマーに指示する周期割込み処理を行う(リレープロセスP11)。また、演算部30は、リレープロセスP11に基づき汎用出力インタフェース45から出力する動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルをハイレベルとする。また、演算部30は、リレープロセスP11に基づきタイマー40に500μsecの時間を設定する。そして、タイマー40から500μsecが経過したことに基づき割込み要求が発せられたことに応じて割込みコントローラ31が演算部30に割込み通知を行う。そして演算部30がこの割込み通知に基づき汎用出力インタフェース45から出力する動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルをハイレベルからロウレベルに切り替える(タイマプロセスP12)。
【0044】
このように、実施の形態1にかかる演算処理装置14では、電源制御プログラムを実行している期間中に故障通知プログラムに基づく割込み処理を発生させることで、動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルの周期的な切り替えを実施する。そのため、演算処理装置14で故障が発生して演算部30が停止することで割込み処理が正しく処理出来ない状態となると、演算処理装置14は動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルの切り替えを停止することになる。
【0045】
そこで、動作確認パルス信号DET_PLSの変化について説明する。図5に実施の形態1にかかる動作確認パルス信号DET_PLSの変化を説明するタイミングチャートを示す。図5に示すように、動作確認パルス信号DET_PLSは、演算処理装置14が正しく動作している期間においては、演算部30が汎用出力インタフェース45を構成するポートに対してON、又は、OFFを指示する命令を周期的に出力するため、動作確認パルス信号DET_PLSは、パルスが連続するクロック信号となる。一方、図5に示すように演算処理装置14で故障が発生すると演算部30が動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルを切り替える事が出来なくなり、動作確認パルス信号DET_PLSは、一定の電圧が維持される状態となる。
【0046】
続いて、実施の形態1にかかるヒーターシステム1の動作について説明する。図6に実施の形態1にかかるヒーターシステムの動作を説明するタイミングチャートを示す。図6に示す例では、タイミングT1でヒーターシステム1が動作を開始し、タイミングT2で演算処理装置14に故障が発生した例を示すものである。
【0047】
図6に示すように、タイミングT1でヒーターシステム1が動作を開始する前は、動作確認パルス信号DET_PLSがロウレベルを維持しているため、スイッチ制御信号S_contはハイレベルとなり、リレースイッチ12は遮断状態となる。
【0048】
そして、タイミングT1で演算処理装置14が動作を開始すると、演算処理装置14は、動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルの周期的な切り替えを開始する。これにより、検出電圧Vdetの電圧が上昇し、スイッチ制御信号S_contがロウレベルに切り替えられる。これにより、リレースイッチ12は導通した状態とり、スイッチングトランジスタ13を含む電源回路が負荷16にヒーター電力Sup_PWRの供給を開始する。
【0049】
その後、タイミングT2で演算処理装置14に故障が発生すると演算処理装置14は、動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルの切り替えを停止する。これにより、パルス検出回路15内の検出電圧Vdetの電圧が低下する。そして、検出電圧Vdetの電圧がスイッチ制御トランジスタTr1の閾値電圧を下回る(タイミングT3)と、スイッチ制御信号S_contの電圧が上昇する。そして。スイッチ制御信号S_contの電圧が上昇したことに伴いリレースイッチ12が遮断状態に切り替えられる。これにより、スイッチングトランジスタ13及び負荷16に対するバッテリ10からの電力供給が停止される。
【0050】
上記説明より、実施の形態1にかかるヒーターシステム1では、演算部30で実行されている電源制御プログラムに対して周期的に割り込み処理を発生させる故障通知プログラムを用いる。そして、当該故障通知プログラムにより汎用出力インタフェース45から出力される動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルの切り替えを行わせることで、演算部30で行われている処理の停止に基づき動作確認パルス信号DET_PLSの論理レベルの切り替えが停止される。これにより、実施の形態1にかかるヒーターシステム1では、演算処理装置14の故障を外部から観測できる。
【0051】
また、実施の形態1にかかるヒーターシステム1では、動作確認パルス信号DET_PLSのパルスの有無に基づきスイッチ制御信号S_contの論理レベルを切り替えるパルス検出回路15を用いることで、ウォッチドッグタイマ等を用いることなくリレースイッチ12を遮断状態に切り替えることができる。また、このパルス検出回路15は、アナログ回路で構成されるものであるため、パルス検出回路15に対して動作中に信頼性診断を行うことなく、ヒーターシステム1の機能安全を補償することができる。
【0052】
また、実施の形態1にかかるヒーターシステム1によると、演算処理装置14で故障が発生して、PWM信号生成回路41は動作していながら演算部30で実行されている電源制御プログラムの動作が停止するような故障モードが発生した場合においても安全性を高めることができる。例えば、PWM信号生成回路41が動作を継続していながら、演算部30の電源制御プログラムに起因する処理が停止してしまった場合、負荷16に電力が無制御状態で供給され続ける。このような場合、負荷16として設けられるヒーターが過熱する場合がある。このような場合、負荷16に付随して設けられるサーモスタットにより検出した温度に基づく機能安全処理により電力を停止する処理が行われる。しかしながら、サーモスタットにより検出された温度による制御が行われる時点では負荷16となるヒーターが過熱状態であることが考えられる。
【0053】
しかしながら、実施の形態1にかかるヒーターシステム1を用いた場合、サーモスタットにより検出される温度が上昇する前に、無制御状態で負荷16となるヒーターへの電力供給が行われている状態を検出して、当該検出結果に基づき負荷16への電力供給を停止することができる。つまり、実施の形態1にかかるヒーターシステム1を用いることで、ヒーターが過熱するより前に不具合に起因した電力供給の停止処理を実行することができる。言い換えると、実施の形態1にかかるヒーターシステム1を用いることで、サーモスタットを用いた機能安全よりもより早い段階での機能安全処理を実行して、ヒーターシステム1の安全性を高めることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 ヒーターシステム
10 バッテリ
11 直流電圧変換回路
12 リレースイッチ
13 スイッチングトランジスタ
14 演算処理装置
15 パルス検出回路
16 負荷
20 平滑回路
30 演算部
31 割込みコントローラ
32 内部バス
40 タイマー
41 PWM信号生成回路
42 デジタルアナログ変換回路
43 アナログデジタル変換回路
44 CANインタフェース
45 汎用出力インタフェース
46 汎用入力インタフェース
47 シリアル通信インタフェース
48 内蔵RAM
49 内蔵フラッシュROM
Vbat バッテリ電源電圧
PWRi 降圧電源電圧
CONT_PWM 電源制御PWM信号
FB フィードバック信号
DET_PLS 動作確認パルス信号
S_cont スイッチ制御信号
Sup_PWR ヒーター電力
Vdet 検出電圧
Rfb 帰還抵抗
R1 抵抗
R2 抵抗
R3 抵抗
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
D1 ダイオード
D2 ダイオード
Tr1 スイッチ制御トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6