(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】測量データ処理装置、測量データ処理方法、測量データ処理用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
G01C15/00 103Z
(21)【出願番号】P 2018235426
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ケリー コーン
(72)【発明者】
【氏名】金子 順紀
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054380(JP,A)
【文献】特開2017-166933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の機械点に水平に設置された第1のレーザースキャナから得た第1の点群データと第2の機械点に水平に設置された第2のレーザースキャナから得た第2の点群データを受け付ける点群データ受付部と、
前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを水平面で切断し、前記第1の点群データを前記水平面で切断した第1の点群データ水平切断面と、前記第2の点群データを前記水平面で切断した第2の点群データ水平切断面とを得る水平切断部と、
鉛直方向から見た前記第1の点群データ水平切断面と前記第2の点群データ水平切断面の位置を合わせる水平位置合わせ部と、
前記水平位置合わせ部により水平位置が合わされた前記第1の点群データと前記第2の点群データに基づき、鉛直上方から見た前記第1の点群データおよび前記第2の点群データにおける前記第1の機械点と前記第2の機械点の位置を取得する機械点の位置取得部と、
前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを前記第1の機械点および前記第2の機械点を含む鉛直面で切断し、前記第1の点群データを前記鉛直面で切断した第1の点群データ鉛直切断面と、前記第2の点群データを前記鉛直面で切断した第2の点群データ鉛直切断面とを得る鉛直切断部と、
前記鉛直面に垂直な方向から見た前記第1の点群データ鉛直切断面と前記第2の点群データ鉛直切断面の鉛直位置を合わせる鉛直位置合わせ部と
を備える測量データ処理装置。
【請求項2】
第1の機械点に水平に設置された第1のレーザースキャナから得た第1の点群データと第2の機械点に水平に設置された第2のレーザースキャナから得た第2の点群データを受け付ける点群データ受付ステップと、
前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを水平面で切断し、前記第1の点群データを前記水平面で切断した第1の点群データ水平切断面と、前記第2の点群データを前記水平面で切断した第2の点群データ水平切断面とを得る水平切断ステップと、
鉛直方向から見た前記第1の点群データ水平切断面と前記第2の点群データ水平切断面の位置を合わせる水平位置合わせステップと、
前記水平位置合わせステップにより水平位置が合わされた前記第1の点群データと前記第2の点群データに基づき、鉛直上方から見た前記第1の点群データおよび前記第2の点群データにおける前記第1の機械点と前記第2の機械点の位置を取得する機械点の位置取得ステップと、
前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを前記第1の機械点および前記第2の機械点を含む鉛直面で切断し、前記第1の点群データを前記鉛直面で切断した第1の点群データ鉛直切断面と、前記第2の点群データを前記鉛直面で切断した第2の点群データ鉛直切断面とを得る鉛直切断ステップと、
前記鉛直面に垂直な方向から見た前記第1の点群データ鉛直切断面と前記第2の点群データ鉛直切断面の鉛直位置を合わせる鉛直位置合わせステップと
を備える測量データ処理方法。
【請求項3】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
第1の機械点に水平に設置された第1のレーザースキャナから得た第1の点群データと第2の機械点に水平に設置された第2のレーザースキャナから得た第2の点群データを受け付ける点群データ受付ステップと、
前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを水平面で切断し、前記第1の点群データを前記水平面で切断した第1の点群データ水平切断面と、前記第2の点群データを前記水平面で切断した第2の点群データ水平切断面とを得る水平切断ステップと、
鉛直方向から見た前記第1の点群データ水平切断面と前記第2の点群データ水平切断面の位置を合わせる水平位置合わせステップと、
前記水平位置合わせステップにより水平位置が合わされた前記第1の点群データと前記第2の点群データに基づき、鉛直上方から見た前記第1の点群データおよび前記第2の点群データにおける前記第1の機械点と前記第2の機械点の位置を取得する機械点の位置取得ステップと、
前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを前記第1の機械点および前記第2の機械点を含む鉛直面で切断し、前記第1の点群データを前記鉛直面で切断した第1の点群データ鉛直切断面と、前記第2の点群データを前記鉛直面で切断した第2の点群データ鉛直切断面とを得る鉛直切断ステップと、
前記鉛直面に垂直な方向から見た前記第1の点群データ鉛直切断面と前記第2の点群データ鉛直切断面の鉛直位置を合わせる鉛直位置合わせステップと
を実行させる
測量データ処理用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャナが得た情報を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光を用いてレーザースキャンを行い、点群データを得るレーザースキャナが知られている(例えば、特許第6184237号公報および米国特許9671217号を参照)。レーザースキャナから見て影となる部分は、測定用のレーザー光が届かず、点群データは得られない。この現象をオクル―ジョンという。この問題に対応するため、異なる2以上の機械点からレーザースキャンを行って、機械点が異なる2つの点群データを得、それを合成することでオクル―ジョンの無い(あるいは減らした)点群データを得る。
【0003】
機械点の異なる複数の点群データを合成するには、複数の点群データ同士の間における対応関係を求める必要がある。各機械点におけるレーザースキャナの外部標定要素(位置と姿勢)が取得できれば、複数の点群データを共通の座標系で扱うことができるので、点群データの合成は簡単に行うことができる。しかしながらこの方法は、各機械点におけるレーザースキャナの外部標定要素を求める作業が必要であり、簡便性に欠ける。
【0004】
また、テンプレートマッチング等で点群データ同士のマッチング(対応関係の特定)を行う方法もあるが、ソフトウェア処理では、ある程度の粗マッチングが行われた後でないと無駄な演算が多くなる問題や精度が得られない問題が生じる。よって通常は、オペレータの操作により対応点が指定され、その後にソフトウェア処理による詳細なマッチングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6184237号公報
【文献】米国特許9671217号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2つの点群データの間における対応点の指定をマニュアル操作で行う方法は、対応点を見つけ出す作業の作業性が良くなく、より簡便な方法が求められている。このような背景において、本発明は、レーザースキャナを用いて複数の機械点から得た複数の点群データの対応関係の特定を簡便に行える技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の機械点に水平に設置された第1のレーザースキャナから得た第1の点群データと第2の機械点に水平に設置された第2のレーザースキャナから得た第2の点群データを受け付ける点群データ受付部と、前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを水平面で切断し、前記第1の点群データを前記水平面で切断した第1の点群データ水平切断面と、前記第2の点群データを前記水平面で切断した第2の点群データ水平切断面とを得る水平切断部と、鉛直方向から見た前記第1の点群データ水平切断面と前記第2の点群データ水平切断面の位置を合わせる水平位置合わせ部と、前記水平位置合わせ部により水平位置が合わされた前記第1の点群データと前記第2の点群データに基づき、鉛直上方から見た前記第1の点群データおよび前記第2の点群データにおける前記第1の機械点と前記第2の機械点の位置を取得する機械点の位置取得部と、前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを前記第1の機械点および前記第2の機械点を含む鉛直面で切断し、前記第1の点群データを前記鉛直面で切断した第1の点群データ鉛直切断面と、前記第2の点群データを前記鉛直面で切断した第2の点群データ鉛直切断面とを得る鉛直切断部と、前記鉛直面に垂直な方向から見た前記第1の点群データ鉛直切断面と前記第2の点群データ鉛直切断面の鉛直位置を合わせる鉛直位置合わせ部とを備える測量データ処理装置である。
【0008】
本発明は、方法の発明およびプログラムの発明として把握することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーザースキャナを用いて複数の機械点から得た複数の点群データの対応関係の特定を簡便に行える技術が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】端末の表示画面の一例を示すイメージ図である。
【
図6】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(概要)
図1には、室内を対象に、レーザースキャンを2ヵ所の機械点で行う場合が示されている。この例では、1台のレーザースキャナを用い、第1の機械点で第1のレーザースキャンを行い、次に第1の機械点とは異なる第2の機械点で2回目の第2のレーザースキャンを行う。
図1では、第1の機械点に設置されたレーザースキャナに符号100を付与し、第2の機械点に設置されたレーザースキャナに符号100’を付与している。ここで、レーザースキャナ100とレーザースキャナ100’は同じものである。勿論、2台のレーザースキャナを用いる形態も可能である。また、3点以上の機械点を選択することもできる。機械点とは、レーザースキャナの光学原点の位置であり、レーザースキャンの視点となる点のことである。この機械点を原点として点群データが得られる。
【0012】
点群データは、対象物にレーザー光を点々と照射し、各反射点の三次元座標をレーザー測位の原理で求めることで得られる。点群データでは、機械点を原点とした三次元座標系において座標位置が取得された点の集合が取り扱われる。
【0013】
ここで、レーザースキャナ100とレーザースキャナ100’は、水平が確保された状態で配置され、レーザースキャン時における外部標定要素(レーザースキャナの位置と姿勢)の関係は未知である。
【0014】
(レーザースキャナ)
図2にレーザースキャナ100が示されている。レーザースキャナ100は、点群データを得る。レーザースキャナについては、例えば特開2010-151682号公報、特開2008―268004号公報等に記載されている。
【0015】
レーザースキャナ100は、本体となる水平回転部101、水平回転部101を水平回転が可能な状態で支える基台部102、基台部102が載せられた架台部103を有している。水平回転部101は、電動により基台部102に対して水平回転が可能である。架台部103は、水平回転部101の水平状態を調整できる調整機構を有している。なお、水平回転部101には水平状態を確認するための図示省略した水準器が配置されている。架台部103は、三脚等の上部に固定される。
【0016】
水平回転部101は、略U字形状の双頭形状の本体を有し、略U字形状を構成する上方に延在する一対の延在部を備える。この一対の延在部の間には、鉛直回転部104が配置されている。鉛直回転部104は、水平軸を中心に電動により鉛直回転(縦回転)する。鉛直回転部104は、対物レンズ105を備えている。水平回転部101の内部には、狭角カメラ111(
図3参照)が配置されている。対物レンズ105は、点群データを得るための測距光(測距用レーザー光)と上記の狭角カメラ111とで共用されている。また、鉛直回転部104には、測距光と狭角カメラ111の光学系110(
図3参照)の一部が内蔵されている。また、水平回転部101には、広角カメラ106が配置されている。
【0017】
ここで、狭角カメラ111の画角は、水平角および鉛直角(上下角)で9~12°程度であり、広角カメラ106の画角は、水平角および鉛直角(上下角)で170°程度である。また、狭角カメラ111、広角カメラ106、レーザースキャナ100の位置と姿勢の関係(外部標定要素の関係)は、予め求められており、既知である。
【0018】
水平回転部101を水平回転させつつ、鉛直回転部104を鉛直回転させ、スキャンレーザー光(測距用レーザー光)を数十kHz~数百kHzの間隔でパルス照射することで、レーザースキャンが行なわれ、点群データが得られる。
【0019】
その他、水平回転部101には、各種の情報の表示および操作を行うための操作インターフェース部(タッチパネルディスプレイ)114(
図3参照)が配置されている。
【0020】
図3にレーザースキャナ100の機能ブロック図を示す。レーザースキャナ100は光学系110を備える。対物レンズ105は、光学系110の一部である。光学系110は、対物レンズ105の他に、レンズ等の光学部品、光路の分離や合成を行うミラー等により構成されている。光学系110により、狭角カメラ111と測距光の光路が分離され、また測距光の発光系と受光系とが分離される。
【0021】
測距光は、測距光発光部112から発光され、光学系110と対物レンズ105を介して、外部に照射される。点群データ取得対象の対象物から反射された測距光は対物レンズ105に入射し、光学系110を介して、測距光受光部113で受光される。
【0022】
水平回転部101の内部には、図示しない基準光路が設けられており、測距光発光部112からのパルス光は、分岐され、一方が測距光として対象物に照射され、他方が基準光として上記基準光路に導かれる。対物レンズ105から取り込まれた測距光と基準光路を伝搬した基準光は、光学系110で合成され、測距光受光部113で検出させる。この際、測距光と基準光には光路差があるので、測距光受光部113からの出力波形に位相差が生じる。この位相差に基づき、測距光の反射点までの距離が算出される。この計算が測距部120で行われる。
【0023】
測距部120で計算された反射点までの測距値と、その時の水平回転部101の水平角および鉛直回転部104の鉛直角(上下角)からレーザースキャナ100の光学原点(機械点)を原点とする測距光の反射点の三次元位置が算出される。この反射点の座標が点群データを構成する点の座標となる。この処理が三次元位置算出部121で行われる。この反射点がスキャン点であり、その座標値の集まりが点群データとなる。そして、この点群データが点群データ取得部122で取得される。
【0024】
回転制御部119は、水平回転部101の水平回転と鉛直回転部104の鉛直回転の回転制御を行う。水平回転部101の回転は、モータ、その駆動回路、ギア等の機構を備えた水平回転駆動部115によって行われる。鉛直回転部104の回転は、モータ、その駆動回路、ギア等の機構を備えた鉛直回転駆動部116によって行われる。
【0025】
水平回転部101の水平角は、ロータリーエンコーダ等の角度検出センサとその周辺回路を備えた水平回転角計測部117によって計測される。鉛直回転部104の鉛直角は、ロータリーエンコーダ等の角度検出センサとその周辺回路を備えた鉛直回転角計測部118によって計測される。
【0026】
操作インターフェース部(タッチパネルディスプレイ)114は、レーザースキャナ100の操作内容を受け付け、また各種情報に画面表示する。通信装置123は、後述する測量データ処理装置300やその他の機器との間で通信を行う。この例では、通信装置123を介して、レーザースキャナ100から点群データが
図4の測量データ処理装置300に送信される。
【0027】
(測量データ処理装置)
図4には、第1の機械点に水平に設置された第1のレーザースキャナから得た第1の点群データと第2の機械点に水平に設置された第2のレーザースキャナから得た第2の点群データを受け付ける点群データ受付部301と、前記第1の点群データおよび前記第2の点群データを前記第1の機械点および前記第2の機械点を含む鉛直面で切断し、前記第1の点群データを前記鉛直面で切断した第1の点群データ鉛直切断面と、前記第2の点群データを前記鉛直面で切断した第2の点群データ鉛直切断面とを得る鉛直切断面作成部305と、前記鉛直面に垂直な方向から見た前記第1の点群データ鉛直切断面と前記第2の点群データ鉛直切断面の鉛直位置を合わせる鉛直位置調整部306とを備える測量データ処理装置300が示されている。
【0028】
測量データ処理装置300は、図示する各機能部の機能を発揮するコンピュータである。測量データ処理装置300は、図示する各機能部の機能を実現するためのCPU、メモリ、インターフェース、その他集積回路を有している。測量データ処理装置300は、汎用のコンピュータを利用して構成してもよいし、専用のハードウェアとして構成してもよい。例えば、タブレット、スマートフォン、ノート型PC等のコンピュータに、
図4に示す各機能部の機能を実現するプログラムをインストールし、当該コンピュータを測量データ処理装置300として利用することもできる。また、レーザースキャナ100の内部に測量データ処理装置300を組み込む形態も可能である。
【0029】
測量データ処理装置300は、点群データ受付部301、水平切断面作成部302、水平位置調整部303、機械点取得部304、鉛直切断面作成部305、鉛直位置調整部306、点群データ統合部307、通信装置308、表示装置309、操作インターフェース部310を備える。
【0030】
点群データ受付部301は、第1の機械点においてレーザースキャナ100が取得した第1の点群データと、第2の機械点においてレーザースキャナ100’が取得した第2の点群データを受け付ける。
【0031】
水平切断面作成部302は、第1の点群データと第2の点群データを、水平面で切断し、第1の点群データの水平切断面(第1の水平切断面)と、第2の点群データの水平切断面(第2の水平切断面)を作成する。水平面の高さ位置は任意の位置を選択できる。
【0032】
水平切断面は、点群の点の分布のバラツキを考慮し、水平切断面に垂直な方向にある程度の厚みを持たせる。この厚みの設定は調整可能である。この厚みは、点群データの点の間隔より大きな寸法に設定する。切断面に厚みを持たせる点は、後述する鉛直切断面についても同じである。
【0033】
第1の水平切断面および第2の水平切断面は、以下の方法で得る。この場合、第1の点群データから、鉛直角(上下角)0°、すなわち水平方向のレーザースキャンデータを抽出する。ここで抽出された点群が第1の水平切断面を構成する点群となる。ここで、鉛直角0°の線上に点がない場合、鉛直角0°に最も近い角度の点を抽出する。そして同様な方法で、第2の水平切断面を得る。鉛直角0°でなく、例えば仰角15°といった特定の鉛直角における点群データを抽出することで水平切断面を得ることもできる。
【0034】
また、以下の方法で点群データの水平切断を行ってもよい。まず、切断面の面の方程式(水平面の方程式)を得る。そして、この面の方程式で示される面に含まれる点群データ、およびこの面に近接する点群データを求める。具体的には、当該面と点群の点との最短距離を計算し、この最短距離が閾値以下である点を抽出する。これは、点群データを鉛直面で切断する場合も同じである。
【0035】
水平位置調整部303は、鉛直方向から見て、第1の水平切断面と第2の水平切断面とが一致するように、第1の水平切断面と第2の水平切断面との水平位置を調整する。この調整は、少なくとも一方の水平切断面の回転と平行移動により行われる。この調整は、自動、手動、半自動で行われる。
【0036】
自動の場合、テンプレートマッチング等の公知の自動マッチング方法を用いて、第1の水平切断面上に分布する点群と、第2の水平切断面上に分布する点群とが鉛直方向から見て一致(あるいは極力一致)するように、第1の水平切断面上に分布する点群の点および第2の水平切断面上に分布する点群の点の一方または両方の水平面内における回転と平行移動を行う。
【0037】
手動の場合は、表示装置309に鉛直方向から見た2つの水平切断面を表示し、それを見ながら手動で水平切断面の水平位置の調整を行う。半自動の場合は、自動→手動による微調整、あるいは手動による粗調整→自動による微調整が行われる。
【0038】
鉛直上方から見た第1の水平切断面と第2の水平切断面のマッチングが行われることで、鉛直上方から見た第1の点群データと第2の点群データのマッチング(位置合わせ)が行われる。
【0039】
機械点取得部304は、第1の水平切断面と第2の水平切断面のマッチングの結果を利用して、鉛直上方から見た第1の機械点と第2の機械点の位置を取得する。より詳細にいうと、第1の水平切断面と第2の水平切断面のマッチングの結果を利用して、鉛直上方から見た第1の点群データ、第2の点群データ、第1の機械点、第2の機械点の位置関係を取得する。機械点の位置の情報を取得する方法としては、計測機器を用いて実測する方法や予め床に表示された位置決め点を利用する方法も可能である。
【0040】
鉛直切断面作成部305は、第1の点群データおよび第2の点群データを第1の機械点と第2の機械点を通る(含む)鉛直面で切断する。第1の点群データを上記鉛直面で切断することで、第1の鉛直切断面が得られる。また、第2の点群データを上記鉛直面で切断することで、第2の鉛直切断面が得られる。
【0041】
鉛直位置調整部306は、上述した第1の鉛直切断面と第2の鉛直切断面の鉛直位置(鉛直方向における位置)を調整する。具体的には、切断に用いた鉛直面に垂直な方向から見て、第1の鉛直切断面と第2の鉛直切断面が一致するように、第1の鉛直切断面と第2の鉛直切断面の一方または両方の鉛直位置を動かす。鉛直切断面の鉛直位置の調整は、自動、手動、半自動で行われる。これは、水平切断面の位置合わせの場合と同じである。
【0042】
点群データ統合部307は、第1の機械点で取得した第1の点群データと、第2の機械点で取得した第2の点群データを統合する。2つの点群データを統合することで、一つの座標系上で2つの点群データが記述される。
【0043】
通信装置308は、他の機器との通信を行う。通信は、無線回線、有線回線、光回線(赤外線通信等)の既存のフォーマットを用いて行われる。レーザースキャナ100,100’との間の通信は、通信装置308を介して行われる。表示装置309は、測量データ処理装置300を構成するPC等が備えるディスプレイ(液晶表示装置等)である。
【0044】
操作インターフェース部310は、オペレータにより入力された各種の操作を受け付ける。例えば、GUIを用いて各種の操作を行う機能が表示装置309と操作インターフェース部310により構成される。また、表示装置309と操作インターフェース部310を兼ねた構成として、タッチパネルディスプレイを採用することもできる。なお、タブレット、スマートフォン、タブレットとPCを組合せたもの等を表示装置309および操作インターフェース部310を備えた端末として機能させ、当該端末を操作することで、測量データ処理装置300に係る各種の操作を行う形態も可能である。
【0045】
(処理の一例)
以下、測量データ処理装置300に係る処理の一例を説明する。ここでは、測量データ処理装置300をノート型PCで構成する。また、タブレット、スマートフォン、PCとタブレットを組み合わせたもの等を表示装置309および操作インターフェース部310として機能する端末として用いる。オペレータは、当該端末を操作端末として用いて各種の操作を行う。
【0046】
図6に処理の手順の一例を示す。この処理を実行するプログラムは、適当な記憶領域や記憶媒体に記憶され、測量データ処理装置300で実行される。
【0047】
まず、測量データ処理装置300は第1の点群データと第2の点群データを取得する(ステップS101)。第1の点群データは、計測対象の室内の第1の機械点にレーザースキャナ100を設置し、そこからレーザースキャンを行うことで得られる(
図1参照)。第2の点群データは、計測対象の室内の第2の機械点にレーザースキャナ100’を設置し、そこからレーザースキャンを行うことで得られる(
図1参照)。
【0048】
各機械点において、レーザースキャナ100(100’)は水平に設置され、その外部標定要素は未知である。
【0049】
第1の点群データと第2の点群データを得たら、第1の水平切断面と第2の水平切断面を得る(ステップS102)。この処理では、床面から1mの高さの水平面で第1の点群データを切断し、第1の水平切断面を得、更に当該水平面で第2の点群データを切断し、第2の水平切断面を得る。この処理は、水平切断面作成部302で行われる。
【0050】
次に、第1の水平切断面を構成する点群データと第2の水平切断面を構成する点群データとの位置合わせを行う(ステップS103)。この処理では、第1の水平切断面を構成する点群データおよび第2の水平切断面を構成する点群データの一方または両方を回転および平行移動させることで、鉛直上方から見た第1の水平切断面を構成する点群データの分布した点で形作られる図形と、鉛直上方から見た第2の水平切断面を構成する点群データの分布した点で形作られる図形との位置合わせを行う。この処理は、水平位置調整部303で行われる。
【0051】
図5(A)および(B)には、操作用の端末のGUIの表示画面の一例が示されている。
図5(A)は、鉛直上方から見た第1の水平切断面401と第2の水平切断面402の様子が示されている。ここで、第1の水平切断面401は、水平面で切り取られた第1の点群データの一部で構成されている。同様に、第2の水平切断面402は、水平面で切り取られた第2の点群データの一部で構成されている。
【0052】
また、
図5(A)の下部には、第1の機械点と第2の機械点の位置と向きの概略の関係を示すMAPが示されている。この段階において、第1の機械点におけるレーザースキャナ100の外部標定要素と第2の機械点におけるレーザースキャナ100’の外部標定要素は、未知である。よって、
図5(A)に示すように、第1の水平切断面401と第2の水平切断面402の向きと位置は一致しない。またMAPは概略の位置関係を示すもので、精度は正確でない。
【0053】
ここで、第1の水平切断面401と第2の水平切断面402の少なくとも一方を回転させ、更に平行移動させることで、鉛直上方から見て両者を一致させる。
図5(A)には、上記の水平切断面の回転と平行移動を半自動で行う場合が示されている。この場合、表示画面上の「Shift」のアイコンを利用して第1の水平切断面401(または第2の水平切断面402)を画面上でマニュアル操作により平行移動させる。また、画面上の「Rotate」のアイコンを利用して第1の水平切断面401(または第2の水平切断面402)を画面上でマニュアル操作により回転させる。これにより、鉛直方向から見て第1の水平切断面401と第2の水平切断面402を極力一致させる。操作は、公知のGUIの機能を利用して行われる。
【0054】
水平位置の合わせ方の他の例として、水平切断面からそれぞれ2点ずつ共通点を指定する方法がある。また、特願2018-178656号に記載された2つの点群データの位置合わせ手法を利用することもできる。
【0055】
鉛直方向から見て、第1の水平切断面401と第2の水平切断面402がある程度一致した段階で自動引き込み機能により、自動で第1の水平切断面401と第2の水平切断面402の一方または両方の回転と平行移動が行われ、両者が一致するように調整される。例えば、第1の水平切断面401を構成する点群と第2の水平切断面402を構成する点群とのズレが最小となるように、第1の水平切断面401の回転と平行移動が行われる。鉛直方向から見た第1の水平切断面と第2の水平切断面を一致させることで、鉛直方向から見た第1の点群データと第2の点群データとが一致する(勿論、誤差はある)。
【0056】
水平切断面の位置合わせを行なったら、鉛直上方から見た第1の水平切断面の点群データ、第1の機械点、第2の水平切断面の点群データ、第2の機械点の位置関係の取得を行う(ステップS104)。この処理は、機械点取得部304で行われる。この処理により、鉛直上方から見た2つの機械点の位置関係が求まる。
【0057】
この段階で、第1の水平切断面の点群データと第1の機械点の位置関係は既知である。また、第2の水平切断面の点群データと第2の機械点の位置関係も既知である。更に、第1の水平切断面の点群データと第2の水平切断面の点群データとは、ステップS103の処理により、鉛直上方から見て一致している。したがって、鉛直上方から見た第1の水平切断面の点群データ、第1の機械点、第2の水平切断面の点群データ、第2の機械点の位置の関係が判る。換言すると、鉛直上方から見た第1の点群データ、第1の機械点、第2の点群データ、第2の機械点の位置の関係が判る。
【0058】
次に、第1の機械点と第2の機械点を通る鉛直面を用いて、第1の点群データを切断し、第1の鉛直切断面を得る。また、当該鉛直面を用いて第2の点群データを切断し、第2の鉛直切断面を得る(ステップS105)。
図5(B)は、水平方向(切断に用いた鉛直面に垂直な方向)から見た第1の鉛直切断面403と第2の鉛直切断面404の様子が示されている。この段階で、ステップS103において鉛直方向から見た位置合わせを行っているので、鉛直方向から見た第1の点群データと第2の点群データの位置は概略一致しており、第1の鉛直切断面403と第2の鉛直切断面404の水平方向における位置は概略合っている。他方で、鉛直方向の位置合わせを行っていないので、第1の鉛直切断面403と第2の鉛直切断面404は鉛直方向におけるずれがある。
【0059】
次に、第1の鉛直切断面403と第2の鉛直切断面404の少なくとも一方の鉛直方向の位置を調整し、鉛直方向における両鉛直切断面の位置を合わせる(ステップS106)。この処理は、鉛直位置調整部306で行われる。
【0060】
図5(B)には、上記の鉛直切断面の上下移動を半自動で行う場合が示されている。この場合、表示画面上の「Shift」のアイコンを利用して第1の鉛直切断面403(または第2の鉛直切断面404)を画面上で上下に移動させ、第1の鉛直切断面403と第2の鉛直切断面404を極力一致させる。
【0061】
2つの鉛直切断面がある程度一致した段階で自動引き込み機能により、自動で第1の鉛直切断面403と第2の鉛直切断面404の一方または両方の位置が、両者が一致するように調整される。例えば、第1の鉛直切断面403を構成する点群と第2の鉛直切断面404を構成する点群とのズレが最小となるように、第1の鉛直切断面403の上下位置の探索が行われる。第1の鉛直切断面403を構成する点群と第2の鉛直切断面404を構成する点群とのズレが最小となることで、両鉛直切断面の位置合わせが行われる。こうして、第1の点群データと第2の点群データの鉛直方向における位置合わせが行われる。
【0062】
以上の処理では、第1の点群データと第2の点群データに対して、水平方向における位置合わせ(ステップS103)と鉛直方向における位置合わせ(ステップS106)が行われ、結果として3次元的な位置合わせが行なわれる。すなわち、XYZ座標系(Z軸が鉛直軸)で考えると、第1の点群データと第2の点群データに対して、ステップS103においてX-Y方向における位置合わせが行われ、ステップS106においてZ方向における位置合わが行わる。つまり、X-Y方向における位置合わせとZ方向における位置合わせを行うことで、XYZ座標系における位置合わせが行なわれる。
【0063】
次に、第1の点群データと第2の点群データの統合を行う(ステップS107)。この処理は、点群データ統合部307で行われる。この処理により、第1の点群データと第2の点群データを同じ座標系で記述した状態が得られる。
【0064】
(まとめ)
異なる機械点から得られた第1の点群データと第2の点群データの一方または両方に対して、回転と平行移動を行ない第1の点群データと第2の点群データの水平方向におけるマッチングを行う(ステップS103)。また、水平面における2つの機械点の位置を求める(ステップS104)。そして、2つの機械点を通る鉛直面で第1の点群データと第2の点群データを切断し、その切断面(第1の鉛直切断面と第2の鉛直切断面)を得る(ステップS105)。そして、第1の鉛直切断面と第2の鉛直切断面を比較し、鉛直方向における第1の点群データと第2の点群データのマッチングを行う(ステップS106)。
【0065】
水平方向と鉛直方向のマッチング(位置合わせ)を行うことで、第1の点群データと第2の点群データの3次元的なマッチングが行われる。
【0066】
本明細書で開示するマッチング手法は、大凡のマッチングとなるが、取得した点群データのマッチングの状態を確認する用途であれば、十分な精度が得られる。また、本明細書で開示するマッチング手法は、テンプレートマッチング等の詳細なマッチングを行う前の初期条件の設定に利用することができる。ある程度のマッチングを行った段階で詳細なマッチングを行うことで、マッチングミスを減らし、処理時間を軽減できる。
【0067】
(補足説明)
水平切断面、鉛直切断面の点群データ取得方法について、モバイルデバイス側(端末側)で行う場合と、スキャナー側で行う場合が考えられる。スキャンした点群データを全てモバイルデバイス側に転送する場合は、モバイルデバイス側で切断面を計算し、断面の点群データをスキャンした全点群データから取得することになる。但し、この場合、データ転送に時間がかかる。
【0068】
スキャナー側で水平切断面、鉛直切断面の点群データの取得を行う場合、断面の計算はスキャナー側で行い、その結果である位置調整に必要な断面の点群データのみが、スキャナーからモバイルデバイス側に送られる。この場合、転送データの量を少なくでき、データ転送の時間を短縮できる。
【0069】
また、水平切断面の点群データを得る場合、点群データは縦方向に1回転する度に、インデックスが付与されているため、例えば、鉛直角0度に対応するインデックスを持つ点群を取り出すことで、機械高に対応した水平切断面を抽出できる。
【0070】
また鉛直切断面については、最初の調整ステップで水平の位置関係が決まった時点で、各スキャナーポジションにおいて、鉛直切断面を切る水平角を求めることができる。このデータをモバイルデバイス側で持っておき、モバイルデバイスからスキャナーに側に、コマンドなどで水平角を指示することで、必要な鉛直切断面を取得できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、異なる機械点から取得した点群データ同士のマッチングを行う技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
100…レーザースキャナ、101…水平回転部、102…基台部、103…架台部、104…鉛直回転部、105…対物レンズ、106…広角カメラ。