(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】回路基板検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20230315BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230315BHJP
G01R 27/26 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G01R31/52
H05K3/00 T
G01R27/26 C
(21)【出願番号】P 2018236326
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕士
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-017221(JP,A)
【文献】特開2009-080121(JP,A)
【文献】特開2003-014808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/52
G01R 27/26
G01R 31/26
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に設けられた複数の導体パターンの良否を検査する回路基板検査装置であって、
前記導体パターンに接触する複数の検査用プローブと、
前記導体パターン毎に基準静電容量を記憶し、前記検査用プローブにより検出された検出値に基づいて前記導体パターンの良否を判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記導体パターン毎に、当該導体パターンの静電容量を検出する容量検出手段と、
検査対象となる対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されていない場合に、前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの静電容量と他の導体パターンの静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第1良否判定手段と、
前記対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されている場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量と前記基準静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第2良否判定手段と、
前記第1良否判定手段により前記対象導体パターンに異常がないと判定された場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量が前記対象導体パターンの前記基準静電容量として記憶されることを許可する記憶許可手段と、
前記第1良否判定手段及び前記第2良否判定手段の判定結果に基づいて前記回路基板の良否を判定する基板良否判定手段と、
前記基板良否判定手段による前記回路基板の良否判定結果に関わらず、前記第1良否判定手段及び前記第2良否判定手段によってすべての前記導体パターンの良否判定が終了すると、前記記憶許可手段により前記対象導体パターンの前記基準静電容量として記憶されることが許可された前記静電容量を前記第2良否判定手段において用いられる前記基準静電容量として確定させる基準確定手段と、を有する、回路基板検査装置。
【請求項2】
回路基板に設けられた複数の導体パターンの良否を検査する回路基板検査装置であって、
前記導体パターンに接触する複数の検査用プローブと、
前記導体パターン毎に基準静電容量を記憶し、前記検査用プローブにより検出された検出値に基づいて前記導体パターンの良否を判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記導体パターン毎に、当該導体パターンの静電容量を検出する容量検出手段と、
検査対象となる対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されていない場合に、前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの静電容量と他の導体パターンの静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第1良否判定手段と、
前記対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されている場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量と前記基準静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第2良否判定手段と、
前記第1良否判定手段により前記対象導体パターンに異常がないと判定された場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量が前記対象導体パターンの前記基準静電容量として記憶されることを許可する記憶許可手段と、を有し、
前記第1良否判定手段は、
前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの前記静電容量と互いに近似する静電容量を有する他の導体パターンがあるか否かを判定する第1近似判定手段と、
前記第1近似判定手段により前記他の導体パターンがあると判定された場合に、前記他の導体パターンと前記対象導体パターンとの絶縁を確認する第1絶縁確認手段と、を有し、
前記第1近似判定手段により前記他の導体パターンがないと判定された場合、及び、前記第1絶縁確認手段により絶縁状態にあることが確認された場合に、前記対象導体パターンに異常がないと判定する、回路基板検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回路基板検査装置であって、
前記第1良否判定手段は、
前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの前記静電容量と互いに近似する静電容量を有する他の導体パターンがあるか否かを判定する第1近似判定手段と、
前記第1近似判定手段により前記他の導体パターンがあると判定された場合に、前記他の導体パターンと前記対象導体パターンとの絶縁を確認する第1絶縁確認手段と、を有し、
前記第1近似判定手段により前記他の導体パターンがないと判定された場合、及び、前記第1絶縁確認手段により絶縁状態にあることが確認された場合に、前記対象導体パターンに異常がないと判定する、回路基板検査装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つに記載の回路基板検査装置であって、
前記第2良否判定手段は、
前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの前記静電容量が、記憶された前記基準静電容量の所定の範囲内にあるか否かを判定する異常判定手段を有し、
前記異常判定手段により前記静電容量が前記基準静電容量の所定の範囲内にないと判定された場合に、前記対象導体パターンに異常があると判定する、回路基板検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回路基板検査装置であって、
前記第2良否判定手段は、
前記異常判定手段によって前記基準静電容量の所定の範囲内にあると判定された前記対
象導体パターンの前記静電容量と互いに近似する静電容量を有する他の導体パターンがあるか否かを判定する第2近似判定手段と、
前記第2近似判定手段により前記他の導体パターンがあると判定された場合に、前記他の導体パターンと前記対象導体パターンとの絶縁を確認する第2絶縁確認手段と、をさらに有し、
前記第2近似判定手段により前記他の導体パターンがないと判定された場合、及び、前記第2絶縁確認手段により絶縁状態にあることが確認された場合に、前記対象導体パターンに異常がないと判定する、回路基板検査装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1つに記載の回路基板検査装置であって、
前記制御部は、
前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの前記静電容量が所定の下限以下であるか否かを判定する下限判定手段と、
前記下限判定手段により前記静電容量が所定の下限以下であると判定された場合に、前記回路基板において前記対象導体パターンから所定の範囲内に設けられる他の導体パターンと前記対象導体パターンとが絶縁状態にあるか否かを確認する第3絶縁確認手段と、をさらに有する、回路基板検査装置。
【請求項7】
回路基板に設けられた複数の導体パターンの良否を検査する回路基板検査装置であって、
前記導体パターンに接触する複数の検査用プローブと、
前記導体パターン毎に基準静電容量を記憶し、前記検査用プローブにより検出された検出値に基づいて前記導体パターンの良否を判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記導体パターン毎に、当該導体パターンの静電容量を検出する容量検出手段と、
検査対象となる対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されていない場合に、前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの静電容量と他の導体パターンの静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第1良否判定手段と、
前記対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されている場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量と前記基準静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第2良否判定手段と、
前記第1良否判定手段により前記対象導体パターンに異常がないと判定された場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量が前記対象導体パターンの前記基準静電容量として記憶されることを許可する記憶許可手段と、
前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの前記静電容量が所定の下限以下であるか否かを判定する下限判定手段と、
前記下限判定手段により前記静電容量が所定の下限以下であると判定された場合に、前記回路基板において前記対象導体パターンから所定の範囲内に設けられる他の導体パターンと前記対象導体パターンとが絶縁状態にあるか否かを確認する第3絶縁確認手段と、を有する、回路基板検査装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1つに記載の回路基板検査装置であって、
前記制御部は、
前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの前記静電容量が所定の上限以上であるか否かを判定する上限判定手段と、
前記上限判定手段により前記静電容量が所定の上限以上であると判定された場合に、前記容量検出手段により検出されたすべての前記導体パターンの前記静電容量が前記基準静電容量として記憶されることを禁止する第1記憶禁止手段と、をさらに有する、回路基板検査装置。
【請求項9】
回路基板に設けられた複数の導体パターンの良否を検査する回路基板検査装置であって、
前記導体パターンに接触する複数の検査用プローブと、
前記導体パターン毎に基準静電容量を記憶し、前記検査用プローブにより検出された検出値に基づいて前記導体パターンの良否を判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記導体パターン毎に、当該導体パターンの静電容量を検出する容量検出手段と、
検査対象となる対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されていない場合に、前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの静電容量と他の導体パターンの静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第1良否判定手段と、
前記対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されている場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量と前記基準静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第2良否判定手段と、
前記第1良否判定手段により前記対象導体パターンに異常がないと判定された場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量が前記対象導体パターンの前記基準静電容量として記憶されることを許可する記憶許可手段と、
前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの前記静電容量が所定の上限以上であるか否かを判定する上限判定手段と、
前記上限判定手段により前記静電容量が所定の上限以上であると判定された場合に、前記容量検出手段により検出されたすべての前記導体パターンの前記静電容量が前記基準静電容量として記憶されることを禁止する第1記憶禁止手段と、を有する、回路基板検査装置。
【請求項10】
回路基板に設けられた複数の導体パターンの良否を検査する回路基板検査装置であって、
前記導体パターンに接触する複数の検査用プローブと、
前記導体パターン毎に基準静電容量を記憶し、前記検査用プローブにより検出された検出値に基づいて前記導体パターンの良否を判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記導体パターン毎に、当該導体パターンの静電容量を検出する容量検出手段と、
検査対象となる対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されていない場合に、前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの静電容量と他の導体パターンの静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第1良否判定手段と、
前記対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されている場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量と前記基準静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第2良否判定手段と、
前記第1良否判定手段により前記対象導体パターンに異常がないと判定された場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量が前記対象導体パターンの前記基準静電容量として記憶されることを許可する記憶許可手段と、
前記検査用プローブにより検出された検出値に基づき前記対象導体パターンの断線の有無を判定する断線判定手段と、
前記断線判定手段により前記対象導体パターンが断線していると判定された場合に、前記容量検出手段により検出されたすべての前記導体パターンの前記静電容量のうち少なくとも前記回路基板において前記対象導体パターンから所定の範囲内に設けられる他の導体パターンの前記静電容量が前記基準静電容量として記憶されることを禁止する第2記憶禁止手段と、を有する、回路基板検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に設けられた複数の導体パターンの良否を検査する回路基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接触型の検査用プローブと、検査用プローブにより検出された導体パターンの静電容量に基づいて導体パターンの良否を判定する制御部と、を備えた回路基板検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の回路基板検査装置では、回路基板の検査を開始する前に、校正用の回路基板を用いて、予め基準となる静電容量を測定する必要がある。このため、基準となる静電容量の測定が完了するまでは回路基板の検査を開始することができず、特に回路基板に設けられる導体パターンが多くなるほど、検査が可能となるまでに時間がかかってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、予め基準となる静電容量を測定しなくとも、回路基板の検査を速やかに開始可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、回路基板に設けられた複数の導体パターンの良否を検査する回路基板検査装置は、前記導体パターンに接触する複数の検査用プローブと、前記導体パターン毎に基準静電容量を記憶し、前記検査用プローブにより検出された検出値に基づいて前記導体パターンの良否を判定する制御部と、を備える。前記制御部は、前記導体パターン毎に、当該導体パターンの静電容量を検出する容量検出手段と、検査対象となる対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されていない場合に、前記容量検出手段により検出された前記対象導体パターンの静電容量と他の導体パターンの静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第1良否判定手段と、前記対象導体パターンの前記基準静電容量が記憶されている場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量と前記基準静電容量とに基づいて前記対象導体パターンの良否を判定する第2良否判定手段と、前記第1良否判定手段により前記対象導体パターンに異常がないと判定された場合に、前記容量検出手段により検出された前記静電容量が前記対象導体パターンの前記基準静電容量として記憶されることを許可する記憶許可手段と、前記第1良否判定手段及び前記第2良否判定手段の判定結果に基づいて前記回路基板の良否を判定する基板良否判定手段と、前記基板良否判定手段による前記回路基板の良否判定結果に関わらず、前記第1良否判定手段及び前記第2良否判定手段によってすべての前記導体パターンの良否判定が終了すると、前記記憶許可手段により前記対象導体パターンの前記基準静電容量として記憶されることが許可された前記静電容量を前記第2良否判定手段において用いられる前記基準静電容量として確定させる基準確定手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、検査対象となる対象導体パターンの良否を判定するために用いられる基準静電容量が記憶されていない場合、容量検出手段により検出された対象導体パターンの静電容量と他の導体パターンの静電容量とに基づいて対象導体パターンの良否が判定されるとともに、異常がないと判定された対象導体パターンの静電容量が基準静電容量として記憶される。このように異常がないと判定された対象導体パターンの静電容量が基準静電容量として順次記憶されていくため、予め基準静電容量を計測しておく必要がない。したがって、回路基板の検査を速やかに開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における回路基板検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される回路基板の側面の一部を示した図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における回路基板検査装置による基板検査処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3のフローチャートの続きの部分を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図3に示すステップS14のサブルーチンフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図3に示すステップS16のサブルーチンフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図3に示すステップS19のサブルーチンフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7のサブルーチンフローチャートの続きの部分を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態における回路基板検査装置100の構成を示す図であり、
図2は、検査対象となる回路基板Pにおいて導体パターンCPが設けられた面の一部を模式的に示した図である。
【0011】
回路基板検査装置100は、回路基板Pに設けられた複数の導体パターンCPの良否を検査する検査装置であって、導体パターンCPに接触する複数の検査用プローブ21と、検査用プローブ21により検出された検出値に基づいて各導体パターンCPの良否を判定する制御部10と、を備える。以下では、検査対象となる回路基板Pが、両面に導体パターンCPが設けられ内部に内層グランドパターンGPが設けられる多層基板である場合について説明する。
【0012】
検査用プローブ21は、接触型プローブであって、垂直方向に沿って配置された回路基板Pの一方の面に対して一対設けられるとともに、他方の面に対しても一対設けられる。検査用プローブ21はホルダ22を介して移動機構23に保持される。移動機構23は、検査用プローブ21を回路基板Pに対して三軸方向に移動させることが可能な機構であり、制御部10からの指令に応じて検査用プローブ21を測定ポイントTPへと移動させる。
【0013】
制御部10は、回路基板検査装置100の動作を制御するコントローラであり、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラム等を記憶するROM11(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM12(random access memory)と、を含むマイクロコンピュータで構成される。制御部10は、単一のマイクロコンピュータで構成されていてもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0014】
制御部10は、後述のフローチャートで説明される各処理を実行するために、検査信号の生成や、検査用プローブ21を用いた電気抵抗値及び静電容量の測定、移動機構23の駆動制御、導体パターンCP毎の実質静電容量CRのデータ生成処理、といった処理を行う。また、制御部10は、静電容量測定を行う際に、一つの測定ポイントTPに対して複数の測定形態の中から一つの測定形態を適宜選択して設定する設定処理を実行する。
【0015】
RAM12は、導体パターンCP毎の測定ポイントTPについての位置データ、測定ポイントTP毎に設定された測定形態情報、測定形態毎に測定された固有静電容量CS、および測定された実測静電容量CTPを一時的に記憶する。さらにRAM12は、制御部10で算出された実質静電容量CR、導体パターンCP毎に確定された基準静電容量CST、検出された断線箇所や短絡箇所の情報、および制御部10の演算結果なども一時的に記憶する。
【0016】
ROM11は、後述のフローチャートで説明される各処理を実行するために必要となる制御部10の動作プログラムを記憶する。すなわち、ROM11は、回路基板検査装置100を制御するためのプログラムを記録した記憶媒体であり、コンピュータによる読み取りが可能なものである。
【0017】
検査対象となる回路基板Pは、
図1及び
図2に示すように、ガラスエポキシ系基材の表面に複数の導体パターンCP1,CP2,・・・(以下、特に区別しないときには「導体パターンCP」ともいう)が形成されたものである。なお、
図2に示される導体パターンCPは一例であり、回路基板Pの他方の面にも複数の導体パターンCPが設けられる。なお、回路基板Pの基材は、ガラスエポキシ系基材に限定されず、一般的な回路基板において用いられている基材であればどのような基材であってもよい。
【0018】
各導体パターンCPにおける各端点には、
図2に示すように、ランドが形成され、このランドは、測定ポイントTP1,TP2,・・・(以下、特に区別しないときには「測定ポイントTP」ともいう)として機能する。
【0019】
また、導体パターンCPが設けられる面には、内層グランドパターンGPと導通するグランド導体パターンGP1が設けられる。グランド導体パターンGP1上の測定ポイントTPGは、各導体パターンCPの静電容量を測定する際に、グランド電極として機能する。なお、内層グランドパターンGPと制御部10とを常時接続するプローブを別途設けてもよい。
【0020】
次に、回路基板検査装置100による回路基板Pの検査処理について、
図3~
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0021】
回路基板Pの検査処理は、回路基板検査装置100内に回路基板Pが垂直方向に沿って固定された状態で開始される。
【0022】
まず、ステップS10において、制御部10は、すべての導体パターンCPについて導通検査を行う。例えば、
図2に示される導体パターンCP1の導通を確認する場合には、移動機構23を制御して、一対の検査用プローブ21の一方を測定ポイントTP1に接触させるとともに、他方を他の測定ポイントTP2,TP3に順次接触させる。さらに制御部10は、一方の検査用プローブ21を測定ポイントTP2に接触させるとともに、他方の検査用プローブ21を測定ポイントTP3に接触させ、導体パターンCPの測定ポイントTPのすべての組み合わせについて、両検査用プローブ21間の抵抗値を測定する。
【0023】
導体パターンCP1のように、測定ポイントTP1と測定ポイントTP2との間、及び、測定ポイントTP2と測定ポイントTP3との間に断線箇所Bが存在する場合、測定ポイントTP1と測定ポイントTP2との間の抵抗値、および、測定ポイントTP2と測定ポイントTP3との間の抵抗値がともに無限大またはそれに近い値となり、断線の位置が特定される。断線の有無及び断線箇所については、断線情報として導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。ステップS10において制御部10により行われる導通検査は、断線判定手段に相当する。
【0024】
ステップS11において、回路基板Pの両面に設けられるすべての導体パターンCPについて導通検査が終了したと判定されると、ステップS12に進み、静電容量検査が行われる。ステップS12以降において制御部10により行われる静電容量検査は、容量検出手段に相当する。
【0025】
導通検査において断線していないと判断された導体パターンCPの静電容量を検査する場合はステップS13に進み、導通検査において検査対象となる導体パターンCPが断線していると判断された場合はステップS20に進む。
【0026】
ステップS13において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPの基準静電容量CSTがすでに確定されRAM12に記憶されているか否かを判定する。基準静電容量CSTは、後述のように、異常が認められない導体パターンCPについて順次確定され、一つ目の回路基板Pを検査する際にはまだ確定されておらず、また、導体パターンCPに異常が認められた場合にも確定されない。このように、基準静電容量CSTが確定されていない場合は、導体パターンCPの良否検査を行いつつ、その基準静電容量CSTを確定するためにステップS14以降に進む。
【0027】
次に、
図5を参照し、ステップS14で行われる導体パターンCPの実質静電容量CRの計測について説明する。
【0028】
まず、ステップS40において、制御部10は、固有静電容量CSの計測を行う。固有静電容量CSとは、移動機構23、検査信号の種類(例えば検査信号の周波数)等の測定系の構成要素によって決まる固有容量(浮遊容量ともいう)を意味する。
【0029】
具体的には、制御部10は、移動機構25を制御して検査用プローブ21が測定ポイントTP及び測定ポイントTPGから所定の距離だけ離れるように移動させ、この状態で検査信号として交流電圧を印加する。このとき測定された静電容量は、固有静電容量CSとして、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0030】
次に、ステップS41において、制御部10は、導体パターンCPの静電容量の本計測を行う。本計測で測定された静電容量は、実測静電容量CTPとして、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0031】
続くステップS42において、制御部10は、記憶された実測静電容量CTPから固有静電容量CSを差し引き、この差分を固有静電容量CSの影響を排除した導体パターンCPの正規の静電容量である実質静電容量CRとして算出する。算出された実質静電容量CRは、導体パターンCP毎にRAM12に記憶させる。
【0032】
このように、ステップS14における導体パターンCPの実質静電容量CRの計測が完了すると、
図3に示す処理手順に戻り、ステップS15に進む。
【0033】
ステップS15において、制御部10は、すべての導体パターンCPの静電容量の検査が終了したか否かを判定する。まだ、静電容量の検査が終了していない導体パターンCPがある場合には、ステップS12に戻り、静電容量の検査を完了させる。なお、静電容量の検査は、導通検査において断線していると判断されたか否かに関わらず、すべての導体パターンCPについて行われる。
【0034】
ステップS15において、すべての導体パターンCPの静電容量の検査が終了したと判定されると、ステップS16に進み、ステップS14において算出された実質静電容量CRに基づいて、検査対象となっている導体パターンCPの良否が判定される。
【0035】
次に、
図6を参照し、ステップS16で行われる導体パターンCPの良否判定について説明する。
【0036】
まず、ステップS50において、制御部10は、ステップS14において算出された実質静電容量CRと許容範囲との比較を行う。ここで、許容範囲とは、回路基板Pにおいて静電容量として通常測定される範囲の値であることを意味し、最大測定レンジの上限値を許容範囲の上限とし、最小測定レンジの下限値を許容範囲の下限とする。例えば、導体パターンCPが内層グランドパターンGPに短絡しており静電容量が無限大となるような場合や、測定ポイントTPへの検査用プローブ21の接触が正常に行われず静電容量が非常に小さな値となるような場合でなければ、許容範囲内にあると判定される。
【0037】
ステップS50において、導体パターンCPの実質静電容量CRが許容範囲内にあると判定されると、ステップS51以降に進み、導体パターンCPの良否判定が行われる。
【0038】
ステップS51では、検査対象となる導体パターンCPの実質静電容量CRと互いに近似する実質静電容量CRを有する他の導体パターンCPがあるか否かの判定が行われる。実質静電容量CRが互いに近似する場合は、
図2に示す導体パターンCP1と導体パターンCP2のように、短絡箇所Aにおいて導通して一つの導体パターンとなることで、実質静電容量CRが同等となっているおそれがある。
【0039】
つまり、ステップS51では、検査対象となる導体パターンCPと短絡しているおそれがある他の導体パターンCPがあるか否かの判定が行われる。具体的には、検査対象となる導体パターンCPの実質静電容量CRとの差が、例えば検査対象となる導体パターンCPの実質静電容量CRの10%以内にある実質静電容量CRを有する他の導体パターンCPが、短絡しているおそれがある導体パターンCPとして抽出される。なお、どの程度の割合を近似とするかは任意に設定される。
【0040】
ステップS51において、検査対象となる導体パターンCPの実質静電容量CRと互いに近似する実質静電容量CRを有する他の導体パターンCPがあると判定されると、ステップS52に進み、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとの絶縁検査が行われる。
【0041】
ステップS52において、制御部10は、移動機構23を制御して、一対の検査用プローブ21の一方を検査対象となる導体パターンCPに接触させるとともに、他方を他の導体パターンCPに接触させ、両検査用プローブ21間の抵抗値を測定する。短絡していなければ、測定された抵抗値は無限大またはそれに近い値となるが、例えば、
図2に示す導体パターンCP1と導体パターンCP2のように、短絡箇所Aが存在する場合、測定された抵抗値は所定の小さな値以下となる。
【0042】
このような抵抗値の差異に基づいて制御部10は、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとの絶縁状態を判定する。判定された結果は、短絡情報として導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0043】
ステップS52において、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが絶縁状態にあると判定されると、ステップS53に進む。また、ステップS51において、検査対象となる導体パターンCPの実質静電容量CRと互いに近似する実質静電容量CRを有する他の導体パターンCPがないと判定された場合もステップS53に進む。
【0044】
ステップS53において、制御部10は、ステップS51及びステップS52における判定結果に基づき、検査対象となる導体パターンCPには断線及び短絡といった異常がないと判定する。判定された結果は、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。これらステップS51及びステップS52において制御部10により行われる処理は、第1良否判定手段に相当し、ステップS51において制御部10により行われる処理は第1近似判定手段に、ステップS52において制御部10により行われる処理は第1絶縁確認手段にそれぞれ相当する。
【0045】
続くステップS54において、制御部10は、異常がないと判定された検査対象となる導体パターンCPの実測静電容量CTPを、当該導体パターンCPの異常の有無を判定する一つの基準である基準静電容量CSTとして仮決定する。具体的には、導体パターンCPの実測静電容量CTPは基準静電容量CSTの仮値としてRAM12への記憶が許可された状態となる。なお、後述のように、仮決定された基準静電容量CSTは、すべての導体パターンCPの判定が終了したときに確定される。ステップS54において制御部10により行われる処理は、記憶許可手段に相当する。
【0046】
一方、ステップS52において、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが絶縁状態にないと判定されると、ステップS55に進む。
【0047】
ステップS55において、制御部10は、ステップS52における判定結果に基づき、検査対象となる導体パターンCP及び他の導体パターンCPには短絡異常があると判定する。判定された結果は、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0048】
このように短絡異常があると判定された検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとの双方の実測静電容量CTPは、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが短絡して一つの導体パターンとなった場合の静電容量に相当することから、各導体パターンCPの異常の有無を判定する基準静電容量CSTとしては不適格である。
【0049】
このため、続くステップS56において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPの基準静電容量CSTを未確定状態とするとともに、検査対象となる導体パターンCPと導通する他の導体パターンCPの基準静電容量CSTについても未確定状態とする。
【0050】
次に、ステップS50において、導体パターンCPの実質静電容量CRが許容範囲の下限以下であると判定された場合について説明する。この場合、ステップS50において制御部10により行われる判定は、下限判定手段に相当する。
【0051】
導体パターンCPの実質静電容量CRが許容範囲の下限以下である場合、制御部10は、ステップS57において、何らかの原因により、実質静電容量CRの計測が失敗したと判定する。例えば、検査用プローブ21の一方が導体パターンCPに正しく接触しなかった場合に、計測が失敗したと判定される。
【0052】
ここで、導体パターンCPの実際の実質静電容量CRが不明であることから、導体パターンCPに異常があるおそれがあるとして導体パターンCPの異常と処理することも考えられる。しかし、計測に不良があっただけで、導体パターンCPには何ら異常がない場合も考えられる。
【0053】
そこで、本実施形態では、実質静電容量CRの計測が失敗した場合であっても導体パターンCPの異常と処理せず、検査対象となる導体パターンCPと短絡するおそれがある他の導体パターンCPと、検査対象となる導体パターンCPと、の絶縁試験を行うことによって、導体パターンCPの異常の有無を確認している。
【0054】
具体的には、ステップS57に続くステップS58において、制御部10は、回路基板Pにおいて検査対象となる導体パターンCPから所定の範囲、例えば1mm以内の範囲に設けられており、検査対象となる導体パターンCPと短絡するおそれがある他の導体パターンCPと、検査対象となる導体パターンCPと、の絶縁試験を行う。絶縁試験は、ステップS52における絶縁試験と同様に、移動機構23を制御して、一対の検査用プローブ21の一方を検査対象となる導体パターンCPに接触させるとともに、他方を他の導体パターンCPに接触させ、両検査用プローブ21間の抵抗値を測定することにより行われる。なお、所定の範囲は、任意の範囲であり、1mm未満の距離が設定されてもよいし、1mmよりも大きい距離が設定されてもよい。
【0055】
短絡していなければ、測定された抵抗値は無限大またはそれに近い値となるが、例えば、
図2に示す導体パターンCP1と導体パターンCP2のように、短絡箇所Aが存在する場合、測定された抵抗値は所定の小さな値以下となる。このような抵抗値の差異に基づいて制御部10は、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとの絶縁状態を判定する。判定された結果は、短絡情報として導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0056】
ステップS58において、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが絶縁状態にあると判定されると、ステップS59に進み、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPには断線及び短絡といった異常がないと判定する。判定された結果は、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0057】
このように実質静電容量CRの計測が失敗した場合であっても導体パターンCPの短絡の有無を検査することによって、不用意に回路基板Pが不良と判定されることを回避することができる。ステップS58において制御部10により行われる処理は、第3絶縁確認手段に相当する。
【0058】
なお、ステップS59において、検査対象となる導体パターンCPに異常がないと判定された場合であっても、検査対象となる導体パターンCPの正確な実質静電容量CRは測定されていない。
【0059】
このため、続く、ステップS60において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPの基準静電容量CSTを未確定状態とする。
【0060】
また、検査対象となる導体パターンCPと絶縁状態にあることが確認された他の導体パターンCPについても短絡異常がないと考えられる。このことから、続く、ステップS61において、制御部10は、異常がないと判定された他の導体パターンCPの実測静電容量CTPを、当該導体パターンCPの基準静電容量CSTとして仮決定し、RAM12へ記憶する。
【0061】
一方、ステップS58において、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが絶縁状態にないと判定されると、ステップS62に進む。
【0062】
ステップS62において、制御部10は、ステップS58における判定結果に基づき、検査対象となる導体パターンCP及び他の導体パターンCPには短絡異常があると判定する。判定された結果は、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0063】
このように短絡異常があると判定された検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとの実測静電容量CTPは、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが短絡して一つの導体パターンとなった場合の静電容量に相当することから、各導体パターンCPの異常の有無を判定する基準静電容量CSTとしては不適格である。このため、続くステップS63において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPの基準静電容量CSTを未確定状態とするとともに、検査対象となる導体パターンCPと導通する他の導体パターンCPの基準静電容量CSTについても未確定状態とする。
【0064】
次に、ステップS50において、導体パターンCPの実質静電容量CRが許容範囲の上限以上であると判定された場合について説明する。この場合、ステップS50において制御部10により行われる判定は、上限判定手段に相当する。
【0065】
導体パターンCPの実質静電容量CRが許容範囲の上限以上である場合、制御部10は、ステップS64において、検査対象となる導体パターンCPが内層グランドパターンGPと導通していると判定する。
【0066】
このため、続くステップS65において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPに短絡異常があると判定し、その結果をRAM12に記憶させる。
【0067】
また、当然ながら検査対象となる導体パターンCPの正確な実質静電容量CRはまだ測定されていない。このため、続く、ステップS66において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPの基準静電容量CSTを未確定状態とする。
【0068】
ここで、検査対象となる導体パターンCPが内層グランドパターンGPと導通している場合に測定された他の導体パターンCPの静電容量は、内層グランドパターンGPだけではなく、内層グランドパターンGPと導通している導体パターンCPを含むパターンをグランドとして測定されることになる。つまり、他のすべての導体パターンCPの静電容量は、正常な回路基板Pに対してグランド側のパターンが異なる状態で測定された値であって、正確な値ではない。
【0069】
このため、続く、ステップS67において、制御部10は、仮決定状態にある他の導体パターンCPの基準静電容量CSTをすべて未確定状態へと変更し、内層グランドパターンGPと何れかの導体パターンCPとが導通している状態において測定された実測静電容量CTPが基準静電容量CSTとしてRAM12に記憶されることを禁止する。ステップS67において制御部10により行われる処理は、第1記憶禁止手段に相当する。
【0070】
このように、ステップS16における実質静電容量CRに基づく導体パターンCPの良否判定が完了すると、
図3に示す処理手順に戻り、
図4に示すステップS23に進む。
【0071】
次に、
図3に示すステップS13において、基準静電容量CSTがすでに確定されRAM12に記憶されていると判定された場合について説明する。
【0072】
二つ目以降の回路基板Pを検査する際には、検査対象となる導体パターンCPの基準静電容量CSTがすでに確定されている場合がある。このような場合は、RAM12に記憶された基準静電容量CSTに基づいて導体パターンCPの良否を判定することによって、判定時間を短縮することが可能となる。
【0073】
ステップS13において基準静電容量CSTがすでに確定されていると判定された場合、ステップS17に進み、検査対象となる導体パターンCPの静電容量の計測が行われる。測定された静電容量は実測静電容量CTPとして導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0074】
続くステップS18では、すべての導体パターンCPの静電容量の検査が終了したか否かが判定される。まだ、静電容量の検査が終了していない導体パターンCPがある場合には、ステップS12に戻り、静電容量の検査を完了させる。
【0075】
ステップS18において、すべての導体パターンCPの静電容量の検査が終了したと判定されると、ステップS19に進み、RAM12に記憶された基準静電容量CSTとステップS17において測定された実測静電容量CTPとに基づいて、検査対象となっている導体パターンCPの良否が判定される。
【0076】
次に、
図7及び
図8を参照し、ステップS19で行われる導体パターンCPの良否判定について説明する。
【0077】
まず、ステップS70において、制御部10は、上述のステップS50と同様に、ステップS17において測定された実測静電容量CTPと許容範囲との比較を行う。
【0078】
ステップS70において、導体パターンCPの実測静電容量CTPが許容範囲内にあると判定されると、ステップS71以降に進み、導体パターンCPの良否判定が行われる。
【0079】
ステップS71では、導体パターンCPの測定静電容量が基準静電容量CSTの所定範囲内にあるか否かが判定される。具体的には、検査対象となる導体パターンCPの実測静電容量CTPと基準静電容量CSTとの差が、例えば基準静電容量CSTの10%以内である場合、検査対象となる導体パターンCPは、基準静電容量CSTが設定された際の導体パターンCPと同等の電気的特性を有し、異常がないものと判定される。
【0080】
ステップS71において、導体パターンCPの実測静電容量CTPが基準静電容量CSTの所定範囲内にあると判定されると、ステップS72に進む。
【0081】
ステップS72では、
図6に示すステップS51と同様に、検査対象となる導体パターンCPの実測静電容量CTPと互いに近似する実測静電容量CTPを有する他の導体パターンCPがあるか否かの判定が行われる。実測静電容量CTPが互いに近似する場合は、
図2に示す導体パターンCP1と導体パターンCP2のように、短絡箇所Aにおいて導通して一つの導体パターンとなることで、実測静電容量CTPが同等となっているおそれがある。
【0082】
つまり、ステップS72では、検査対象となる導体パターンCPと短絡しているおそれがある他の導体パターンCPがあるか否かの判定が行われる。具体的には、検査対象となる導体パターンCPの実測静電容量CTPとの差が、例えば検査対象となる導体パターンCPの実測静電容量CTPの10%以内にある実測静電容量CTPを有する他の導体パターンCPが、短絡しているおそれがある導体パターンCPとして抽出される。なお、どの程度の割合を近似とするかは任意に設定される。また、上記判定には、実測静電容量CTPに代えて、実質静電容量CRが用いられてもよい。
【0083】
ステップS72において、検査対象となる導体パターンCPの実測静電容量CTPと互いに近似する実測静電容量CTPを有する他の導体パターンCPがあると判定されると、ステップS73に進み、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとの絶縁検査が行われる。
【0084】
ステップS73において、制御部10は、上述のステップS52と同様に、移動機構23を制御して、一対の検査用プローブ21の一方を検査対象となる導体パターンCPに接触させるとともに、他方を他の導体パターンCPに接触させ、両検査用プローブ21間の抵抗値を測定する。短絡していなければ、測定された抵抗値は無限大またはそれに近い値となるが、例えば、
図2に示す導体パターンCP1と導体パターンCP2のように、短絡箇所Aが存在する場合、測定された抵抗値は所定の小さな値以下となる。
【0085】
このような抵抗値の差異に基づいて制御部10は、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとの絶縁状態を判定する。判定された結果は、短絡情報として導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0086】
ステップS73において、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが絶縁状態にあると判定されると、ステップS74に進む。また、ステップS72において、検査対象となる導体パターンCPの実測静電容量CTPと互いに近似する実測静電容量CTPを有する他の導体パターンCPがないと判定された場合もステップS74に進む。
【0087】
ステップS74において、制御部10は、ステップS71、ステップS72及びステップS73における判定結果に基づき、検査対象となる導体パターンCPには断線及び短絡といった異常がないと判定する。判定された結果は、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0088】
これらステップS71、ステップS72及びステップS73において制御部10により行われる処理は、第2良否判定手段に相当し、ステップS71において制御部10により行われる処理は異常判定手段に、ステップS72において制御部10により行われる処理は第2近似判定手段に、ステップS73において制御部10により行われる処理は第2絶縁確認手段にそれぞれ相当する。
【0089】
また、検査対象となる導体パターンCPと絶縁状態にあることが確認された他の導体パターンCPについても短絡異常がないと考えられる。このため、続く、ステップS75において、制御部10は、異常がないと判定された他の導体パターンCPの基準静電容量CSTが確定していない場合は、当該導体パターンCPの実測静電容量CTPを基準静電容量CSTとして仮決定し、RAM12へ記憶する。
【0090】
一方、ステップS73において、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが絶縁状態にないと判定されると、ステップS76に進む。
【0091】
ステップS76において、制御部10は、ステップS73における判定結果に基づき、検査対象となる導体パターンCP及び他の導体パターンCPには短絡異常があると判定する。判定された結果は、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0092】
このように短絡異常があると判定された他の導体パターンCPの実測静電容量CTPは、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが短絡して一つの導体パターンとなった場合の静電容量に相当することから、各導体パターンCPの異常の有無を判定する基準静電容量CSTとしては不適格である。このため、続くステップS77において、制御部10は、他の導体パターンCPの基準静電容量CSTが仮決定状態にある場合には、未確定状態へと変更する。
【0093】
また、上述のステップS71において、導体パターンCPの実測静電容量CTPが基準静電容量CSTの所定範囲内にないと判定されると、ステップS78に進み、導体パターンCPの実測静電容量CTPが基準静電容量CSTの所定範囲から小さい方に外れているのか、大きい方に外れているのかが判定される。
【0094】
ここで、導体パターンCPの実測静電容量CTPが比較的小さな値となっており、基準静電容量CSTの所定範囲から小さい方に外れている場合は、導体パターンCPの面積が小さくなっている、すなわち、導体パターンCPの一部が断線していたり欠損が生じていたりするおそれがある。一方、導体パターンCPの実測静電容量CTPが比較的大きな値となっており、基準静電容量CSTの所定範囲から大きい方に外れている場合は、導体パターンCPの面積が大きくなっている、すなわち、他の導体パターンCPと導通しているおそれがある。
【0095】
このため、ステップS78において、導体パターンCPの実測静電容量CTPが基準静電容量CSTの所定範囲から小さい方に外れていると判定されると、ステップS79に進み、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPが断線等の異常を有しているおそれがあると判定し、判定結果をRAM12に記憶させる。
【0096】
また、ステップS78において、導体パターンCPの実測静電容量CTPが基準静電容量CSTの所定範囲から大きい方に外れていると判定されると、ステップS80に進み、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPが短絡等の異常を有しているおそれがあると判定し、判定結果をRAM12に記憶させる。
【0097】
次に、ステップS70において、導体パターンCPの実測静電容量CTPが許容範囲の下限以下であると判定された場合について説明する。この場合、ステップS70において制御部10により行われる判定は、下限判定手段に相当する。
【0098】
導体パターンCPの実測静電容量CTPが許容範囲の下限以下である場合、制御部10は、ステップS81において、
図6に示すステップS57と同様に、何らかの原因により、実測静電容量CTPの計測が失敗したと判定する。
【0099】
ここで、導体パターンCPの実際の実測静電容量CTPが不明であることから、導体パターンCPに異常があるおそれがあるとして導体パターンCPの異常と処理することも考えられる。しかし、計測に不良があっただけで、導体パターンCPには何ら異常がない場合も考えられる。
【0100】
そこで、本実施形態では、実測静電容量CTPの計測が失敗した場合であっても導体パターンCPの異常と処理せず、検査対象となる導体パターンCPと短絡するおそれがある他の導体パターンCPと、検査対象となる導体パターンCPと、の絶縁試験を行うことによって、導体パターンCPの異常の有無を確認している。
【0101】
具体的には、ステップS81に続くステップS82において、制御部10は、
図6に示すステップS58と同様に、回路基板Pにおいて検査対象となる導体パターンCPから所定の範囲、例えば1mm以内の範囲に設けられており、検査対象となる導体パターンCPと短絡するおそれがある他の導体パターンCPと、検査対象となる導体パターンCPと、の絶縁試験を行う。制御部10は、両検査用プローブ21間の抵抗値の大きさに基づいて検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとの絶縁状態を判定し、判定された結果を短絡情報として導体パターンCP毎にRAM12へ記憶させる。
【0102】
ステップS82において、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが絶縁状態にあると判定されると、ステップS83に進み、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPには断線及び短絡といった異常がないと判定する。判定された結果は、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。このように実測静電容量CTPの計測が失敗した場合であっても導体パターンCPの短絡の有無を検査することによって、不用意に回路基板Pが不良と判定されることを回避することができる。ステップS82において制御部10により行われる処理は、第3絶縁確認手段に相当する。
【0103】
また、検査対象となる導体パターンCPと絶縁状態にあることが確認された他の導体パターンCPについても短絡異常がないと考えられる。このため、続く、ステップS84において、制御部10は、異常がないと判定された他の導体パターンCPの基準静電容量CSTが確定していない場合は、当該導体パターンCPの実測静電容量CTPを基準静電容量CSTとして仮決定し、RAM12へ記憶する。
【0104】
一方、ステップS82において、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが絶縁状態にないと判定されると、ステップS85に進む。
【0105】
ステップS85において、制御部10は、ステップS82における判定結果に基づき、検査対象となる導体パターンCP及び他の導体パターンCPには短絡異常があると判定する。判定された結果は、導体パターンCP毎にRAM12に記憶される。
【0106】
このように短絡異常があると判定された他の導体パターンCPの実測静電容量CTPは、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが短絡して一つの導体パターンとなった場合の静電容量に相当することから、各導体パターンCPの異常の有無を判定する基準静電容量CSTとしては不適格である。このため、続くステップS86において、制御部10は、他の導体パターンCPの基準静電容量CSTが仮決定状態にある場合には、未確定状態へと変更する。
【0107】
次に、ステップS70において、導体パターンCPの実測静電容量CTPが許容範囲の上限以上であると判定された場合について説明する。この場合、ステップS70において制御部10により行われる判定は、上限判定手段に相当する。
【0108】
導体パターンCPの実測静電容量CTPが許容範囲の上限以上である場合、ステップS87において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPが内層グランドパターンGPと導通している判定する。
【0109】
このため、続くステップS88において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPに短絡異常があると判定し、その結果をRAM12に記憶させる。
【0110】
ここで、検査対象となる導体パターンCPが内層グランドパターンGPと導通している場合に測定された他の導体パターンCPの静電容量は、内層グランドパターンGPだけではなく、内層グランドパターンGPと導通している導体パターンCPを含むパターンをグランドとして測定されることになる。つまり、他のすべての導体パターンCPの静電容量は、正常な回路基板Pに対してグランド側のパターンが異なる状態で測定された値であって、正確な値ではない。
【0111】
このため、続くステップS89において、制御部10は、仮決定状態にある他の導体パターンCPの基準静電容量CSTをすべて未確定状態へと変更する。そして制御部10は、内層グランドパターンGPと何れかの導体パターンCPとが導通している状態において測定された実測静電容量CTPが基準静電容量CSTとしてRAM12に記憶されることを禁止する。ステップS89において制御部10により行われる処理は、第1記憶禁止手段に相当する。
【0112】
このように、ステップS19における基準静電容量CSTに基づく導体パターンCPの良否判定が完了すると、
図3に示す処理手順に戻り、
図4に示すステップS23に進む。
【0113】
続いて、ステップS10の導通検査において、検査対象となる導体パターンCPが断線していると判断された場合について説明する。
【0114】
上述のように、検査対象となる導体パターンCPが内層グランドパターンGPと導通している場合に測定された他の導体パターンCPの静電容量は、内層グランドパターンGPだけではなく、内層グランドパターンGPと導通している導体パターンCPを含むパターンをグランドとして測定されることになる。これは、検査対象となる導体パターンCPが断線していると判定された場合についても同様である。
【0115】
このため、検査対象となる導体パターンCPが断線していると判断された場合、ステップS20に進み、導体パターンCPが内層グランドパターンGPと導通しているか否かを確認するための検査が行われる。具体的には、検査対象となる導体パターンCPの静電容量を測定し、測定された静電容量が許容範囲の上限以上であれば、導体パターンCPが内層グランドパターンGPと導通していると判定される。なお、導体パターンCPの静電容量の測定に代えて、導体パターンCPと内層グランドパターンGPとの間の抵抗値に基づいて導体パターンCPが内層グランドパターンGPと導通しているか否かを判定してもよい。ステップS20において制御部10により行われる処理は、上限判定手段に相当する。
【0116】
ステップS20において、検査対象となる導体パターンCPと内層グランドパターンGPとの導通が確認されると、ステップS21に進む。
【0117】
ステップS21において、制御部10は、ステップS67及びステップS89と同様に、仮決定状態にある他の導体パターンCPの基準静電容量CSTをすべて未確定状態へと変更する。そして制御部10は、内層グランドパターンGPと何れかの導体パターンCPとが導通している状態において測定された実測静電容量CTPが基準静電容量CSTとしてRAM12に記憶されることを禁止する。ステップS21において制御部10により行われる処理は、第1記憶禁止手段に相当する。
【0118】
一方、ステップS20において、検査対象となる導体パターンCPと内層グランドパターンGPとが導通していないことが確認されると、ステップS22に進む。
【0119】
ここで、ステップS20において、内層グランドパターンGPと導通していないと判定された導体パターンCPであっても、周辺の他の導体パターンCPと短絡している可能性がある。このような短絡異常があると導体パターンCPの面積が変わるため、その周囲に設けられた導体パターンCPの静電容量の計測に影響が及ぶおそれがある。
【0120】
このため、ステップS22において、制御部10は、回路基板Pにおいて断線異常と判定された導体パターンCPから所定の範囲、例えば1mm以内の範囲に設けられた他の導体パターンCPにおいて、基準静電容量CSTが仮決定の状態にある他の導体パターンCPについては、基準静電容量CSTが未確定の状態に変更し、実測静電容量CTPが基準静電容量CSTとしてRAM12に記憶されることを禁止する。ステップS22において制御部10により行われる処理は、第2記憶禁止手段に相当する。
【0121】
ステップS21及びステップS22における処理が完了すると、
図3に示す処理手順に戻り、
図4に示すステップS23に進む。
【0122】
上述の各ステップにおける処理がすべて完了すると、続くステップS23において、制御部10は、基準静電容量CSTが仮決定状態にある各導体パターンCPの実測静電容量CTPを基準静電容量CSTとしてRAM12に記憶させ、これらの導体パターンCPの基準静電容量CSTを確定する。ステップS23において制御部10により行われる処理は、基準確定手段に相当する。
【0123】
このように基準静電容量CSTが確定した導体パターンCPについては、以降の回路基板Pの検査において、上述のステップS14で行われる実質静電容量CRの計測を省略することが可能となるため、回路基板Pの検査に要する時間を短縮することができる。また、上述のステップS71で行われるように、基準静電容量CSTと実測静電容量CTPとを比較することで導体パターンCPの良否を容易に判定することが可能となる。
【0124】
続くステップS24では、回路基板Pに設けられたすべての導体パターンPCがすべて異常なしであったか否かが判定される。ステップS24において制御部10により行われる処理は、基板良否判定手段に相当する。
【0125】
ステップS24において、すべての導体パターンPCに異常がないと判定されると、ステップS25に進み、制御部10は、図示しないモニタに回路基板Pが良品であることと、各導体パターンPCの測定データ等を表示し、回路基板Pの検査処理を終了する。一方、ステップS24において、何れかの導体パターンPCに異常があったと判定されると、ステップS26に進み、制御部10は、モニタに回路基板Pが不良品であることと、異常があった導体パターンPCの位置等を表示し、回路基板Pの検査処理を終了する。
【0126】
以上のように回路基板Pの検査処理は、導体パターンPCの異常を判定するとともに、正常な導体パターンPCの基準静電容量CSTを確定しつつ進められる。
【0127】
次に、本実施形態の作用効果について詳細に説明する。
【0128】
本実施形態によれば、回路基板検査装置100は、回路基板Pに設けられた複数の導体パターンCPの良否を検査する。この回路基板検査装置100は、導体パターンCPに接触する複数の検査用プローブ21と、導体パターンCP毎に基準静電容量CSTを記憶し、検査用プローブ21により検出された検出値に基づいて導体パターンCPの良否を判定する制御部10と、を備え、制御部10は、導体パターンCP毎に、当該導体パターンCPの静電容量を検出する容量検出手段(ステップS12)と、検査対象となる対象導体パターンCPの基準静電容量CSTが記憶されていない場合に、容量検出手段により検出された対象導体パターンCPの静電容量と他の導体パターンCPの静電容量とに基づいて対象導体パターンCPの良否を判定する第1良否判定手段(ステップS51、ステップS52)と、対象導体パターンCPの基準静電容量CSTが記憶されている場合に、容量検出手段により検出された静電容量と基準静電容量CSTとに基づいて対象導体パターンCPの良否を判定する第2良否判定手段(ステップS71,ステップS72,ステップS73)と、第1良否判定手段により対象導体パターンCPに異常がないと判定された場合に、容量検出手段により検出された静電容量が対象導体パターンCPの基準静電容量CSTとして記憶されることを許可する記憶許可手段(ステップS54)と、を有する。
【0129】
この構成によれば、検査対象となる対象導体パターンCPの良否を判定するために用いられる基準静電容量CSTが記憶されていない場合、容量検出手段により検出された対象導体パターンCPの静電容量と他の導体パターンCPの静電容量とに基づいて対象導体パターンCPの良否が判定されるとともに、異常がないと判定された対象導体パターンCPの静電容量が基準静電容量CSTとして記憶される。このように異常がないと判定された対象導体パターンCPの静電容量が基準静電容量CSTとして順次記憶されていくため、予め導体パターンCP毎に基準静電容量CSTを計測しておく必要がない。したがって、回路基板Pの検査を速やかに開始することができる。
【0130】
また、本実施形態によれば、制御部10は、第1良否判定手段及び第2良否判定手段の判定結果に基づいて回路基板Pの良否を判定する基板良否判定手段(ステップS24)と、基板良否判定手段による回路基板Pの良否判定結果に関わらず、第1良否判定手段及び第2良否判定手段によってすべての導体パターンCPの良否判定が終了すると、記憶許可手段により所定の導体パターンCPの基準静電容量CSTとして記憶されることが許可された静電容量を第2良否判定手段において用いられる基準静電容量CSTとして確定させる基準確定手段(ステップS23)と、をさらに有する。
【0131】
この構成では、回路基板Pの良否に関わらず、記憶許可手段により所定の導体パターンCPの基準静電容量CSTとして記憶されることが許可された静電容量は、第2良否判定手段において用いられる基準静電容量CSTとして確定される。つまり、例えば、何れかの導体パターンCPに異常があり、回路基板Pとしては不良品であったとしても、正常と判断された導体パターンCPにおいて測定された静電容量は、以降の導体パターンCPの良否判定で用いられる基準静電容量CSTとして利用される。したがって、回路基板Pの良否に関わらず、回路基板Pの検査を進めるにつれて、各導体パターンCPの基準静電容量CSTが順次確定されていくため、回路基板Pの検査に要する時間を徐々に短縮していくことができる。
【0132】
また、本実施形態によれば、第1良否判定手段は、容量検出手段により検出された対象導体パターンCPの静電容量と互いに近似する静電容量を有する他の導体パターンCPがあるか否かを判定する第1近似判定手段(ステップS51)と、第1近似判定手段により他の導体パターンCPがあると判定された場合に、他の導体パターンCPと対象導体パターンCPとの絶縁を確認する第1絶縁確認手段(ステップS52)と、を有し、第1近似判定手段により他の導体パターンCPがないと判定された場合、及び、第1絶縁確認手段により絶縁状態にあることが確認された場合に、対象導体パターンCPに異常がないと判定する。
【0133】
この構成では、静電容量が互いに近似し短絡しているおそれがある他の導体パターンCPがないと判定された場合、及び、静電容量が互いに近似している対象導体パターンCPと他の導体パターンCPとの絶縁が確認された場合に、対象導体パターンCPに異常がないと判定される。このように対象導体パターンCPの基準静電容量CSTが記憶されていない場合であっても、対象導体パターンCPに短絡異常がないことを確実に確認し、回路基板Pの検査を進めることができる。
【0134】
また、本実施形態によれば、第2良否判定手段は、容量検出手段により検出された対象導体パターンCPの静電容量が、記憶された基準静電容量CSTの所定の範囲内にあるか否かを判定する異常判定手段(ステップS71)を有し、異常判定手段により静電容量が基準静電容量CSTの所定の範囲内にないと判定された場合に、対象導体パターンCPに異常があると判定する。
【0135】
この構成では、対象導体パターンCPの静電容量が基準静電容量CSTの所定の範囲内にないと判定された場合に、対象導体パターンCPに異常があると判定される。このように基準静電容量CSTが記憶されている対象導体パターンCPについては、対象導体パターンCPの異常を容易に判定することが可能となる。
【0136】
また、本実施形態によれば、第2良否判定手段は、異常判定手段によって基準静電容量CSTの所定の範囲内にあると判定された対象導体パターンCPの静電容量と互いに近似する静電容量を有する他の導体パターンCPがあるか否かを判定する第2近似判定手段(ステップS72)と、第2近似判定手段により他の導体パターンCPがあると判定された場合に、他の導体パターンCPと対象導体パターンCPとの絶縁を確認する第2絶縁確認手段(ステップS73)と、をさらに有し、第2近似判定手段により他の導体パターンCPがないと判定された場合、及び、第2絶縁確認手段により絶縁状態にあることが確認された場合に、対象導体パターンCPに異常がないと判定する。
【0137】
この構成では、対象導体パターンCPの基準静電容量CSTが記憶されている場合であっても、静電容量が互いに近似し短絡しているおそれがある他の導体パターンCPがないと判定された場合、及び、静電容量が互いに近似している対象導体パターンCPと他の導体パターンCPとの絶縁が確認された場合に、対象導体パターンCPに異常がないと判定される。このように、基準静電容量CSTが記憶されている場合であっても、短絡しているおそれがある他の導体パターンCPの有無や短絡しているおそれがある他の導体パターンCPとの絶縁状態を確認することで、対象導体パターンCPの異常判定精度を向上させることができる。
【0138】
また、本実施形態によれば、制御部10は、容量検出手段により検出された対象導体パターンCPの静電容量が所定の下限以下であるか否かを判定する下限判定手段(ステップS50、ステップS70)と、下限判定手段により静電容量が所定の下限以下であると判定された場合に、回路基板Pにおいて対象導体パターンCPから所定の範囲内に設けられる他の導体パターンCPと対象導体パターンCPとが絶縁状態にあるか否かを確認する第3絶縁確認手段(ステップS58、ステップS82)と、をさらに有する。
【0139】
この構成では、対象導体パターンCPの静電容量が所定の下限以下であると判定された場合に、回路基板Pにおいて対象導体パターンCPから所定の範囲内に設けられる他の導体パターンCPと対象導体パターンCPとの絶縁状態が確認される。このように、対象導体パターンCPの静電容量の測定が失敗した場合であっても周囲に設けられた他の導体パターンCPとの絶縁を確認し、対象導体パターンCPに異常がないことを確認することで、正常な対象導体パターンCPが誤って異常と判定されてしまうことを防止することができる。
【0140】
また、本実施形態によれば、制御部10は、容量検出手段により検出された対象導体パターンCPの静電容量が所定の上限以上であるか否かを判定する上限判定手段(ステップS20、ステップS50、ステップS70)と、上限判定手段により静電容量が所定の上限以上であると判定された場合に、容量検出手段により検出されたすべての導体パターンCPの静電容量が基準静電容量CSTとして記憶されることを禁止する第1記憶禁止手段(ステップS21、ステップS67、ステップS89)と、をさらに有する。
【0141】
この構成では、対象導体パターンCPの静電容量が所定の上限以上であると判定された場合に、容量検出手段により検出されたすべての導体パターンCPの静電容量が基準静電容量CSTとして記憶されることが禁止される。このように、正常な回路基板Pに対してグランド側のパターンが異なる状態で測定された静電容量が基準静電容量CSTとして記憶されることを禁止することで基準静電容量CSTとして不正確な値が記憶されることを防止し、基準静電容量CSTに基づく導体パターンCPの良否判定の精度を向上させることができる。
【0142】
また、本実施形態によれば、制御部10は、検査用プローブ21により検出された検出値に基づき対象導体パターンCPの断線の有無を判定する断線判定手段(ステップS10)と、断線判定手段により対象導体パターンCPが断線していると判定された場合に、容量検出手段により検出されたすべての導体パターンCPの静電容量のうち少なくとも回路基板Pにおいて対象導体パターンCPから所定の範囲内に設けられる他の導体パターンCPの静電容量が基準静電容量CSTとして記憶されることを禁止する第2記憶禁止手段(ステップS22)と、をさらに有する。
【0143】
この構成では、断線異常があると判定された対象導体パターンCPの周囲に設けられる他の導体パターンCPについては、測定された静電容量が基準静電容量CSTとして記憶されることが禁止される。このように、対象導体パターンCPが短絡している可能性が排除できない場合に、周囲に設けられる他の導体パターンCPにおいて測定された静電容量が基準静電容量CSTとして記憶されることを禁止することで基準静電容量CSTとして不正確な値が記憶されることを防止し、基準静電容量CSTに基づく導体パターンCPの良否判定の精度を向上させることができる。
【0144】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0145】
例えば、上記実施形態において回路基板検査装置100により検査される回路基板Pは両面基板である。回路基板Pはこれらに限定されず、一方の面のみに導体パターンが設けられる片面基板や両面に導体パターンが設けられる両面基板であってもよい。
【0146】
また、上記実施形態では、ステップS56において、制御部10は、検査対象となる導体パターンCPと、検査対象となる導体パターンCPと導通する他の導体パターンCPと、の2つの基準静電容量CSTのみを未確定状態としている。しかしながら、検査対象となる導体パターンCPと他の導体パターンCPとが導通すると導体パターンCPの面積が変わるため、その周囲に設けられた導体パターンCPの静電容量の計測に影響が及ぶ可能性がある。このため、ステップS56では、導体パターンCPから所定の範囲、例えば1mm以内の範囲に設けられた他の導体パターンCPの基準静電容量CSTについても未確定状態としてもよい。
【符号の説明】
【0147】
100 回路基板検査装置
10 制御部
11 ROM
12 RAM
21 検査用プローブ
23 移動機構
P 回路基板