(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】操舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
B62D 9/00 20060101AFI20230315BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20230315BHJP
B62D 17/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B62D9/00
B62D6/00
B62D17/00 C
(21)【出願番号】P 2019040574
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】石原 教雄
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 聡
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006226(JP,A)
【文献】特開2018-119596(JP,A)
【文献】特開2018-122821(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012206337(DE,A1)
【文献】特開2014-232034(JP,A)
【文献】特開2016-135642(JP,A)
【文献】特開2009-173192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00
B62D 5/00 - 5/32
B62D 7/00 - 7/22
B62D 6/00
B60G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を支持するハブベアリン
グと、このハブベアリングの外周から上下に突出するトラニオン軸状の転舵軸部とを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下
の前記転舵軸部の軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を出力ロッドの直進運動に変換する直動機構とを有し、前記出力ロッドが進退することで、前記ハブユニット本体が前記転舵軸心回りに回転駆動される、操舵機能付ハブユニットであって、
前記直動機構は、前記出力ロッドの回り止めを行う回り止め部品が、前記出力ロッドに取付けられて前記直動機構の固定部分に摺動自在に接触し、且つ前記回り止め部品に位置センサ用測定ターゲットが設けられ、前記出力ロッドの移動量である前記位置センサ用測定ターゲットの変位を検出する位置センサが前記固定部分に設けら
れ、前記回り止め部品は、すべり軸受を介して、前記固定部分の案内面に摺動自在に接触する操舵機能付ハブユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記位置センサが磁気センサであり、前記位置センサ用測定ターゲットが永久磁石である操舵機能付ハブユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記直動機構は、前記ユニット支持部材に回転自在に支持されたナット部と、このナット部の雌ねじ部に噛み合う雄ねじ部が外周に設けられた前記出力ロッドとを有する操舵機能付ハブユニット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットと、制御装置とを備え、前記制御装置は、上位制御部の指令信号および前記位置センサからの位置センサ出力を受け、前記回転駆動源となるモータに対する電流指令信号を出力する操舵制御部、および前記電流指令信号に応じた電流を出力して前記モータに印加し前記操舵用アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動制御部を有する操舵システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持された車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両に関し、走行状況に合わせ左右の車輪を適切な操舵角に制御することで、燃費の改善および走行性の安定と安全性の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車等の車両は、ハンドルとステアリング装置が機械的に接続され、また、ステアリング装置の両端はタイロッドによってそれぞれの左右輪につながっている。そのため、ハンドルの動きによる左右輪の切れ角度は初期の設定によって決まる。
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
【0003】
アッカーマンジオメトリは、車両に作用する遠心力を無視できるような低速域での旋回において、車両をスムーズに旋回させるために、各輪が共通の一点を中心として旋回するように左右輪の舵角差を設定している。しかし、遠心力を無視できない高速域の旋回においては、車輪は遠心力とつり合う方向にコーナリングフォースを発生させることが望ましいため、アッカーマンジオメトリよりもパラレルジオメトリとすることが好ましい。
【0004】
前述したように一般的な車両の操舵装置は機械的に車輪と接続されているため、一般的には固定された単一のステアリングジオメトリしか取ることができず、アッカーマンジオメトリとパラレルジオメトリとの中間的なジオメトリに設定されることが多い。しかし、この場合、低速域では左右輪の舵角差が不足して外輪の舵角が過大となり、高速域では内輪の舵角が過大となる。このように内外輪の車輪横力配分に不要な偏りがあると、走行抵抗の悪化による燃費悪化及びタイヤの早期摩耗の原因となり、また内外輪を効率的に利用できないので、コーナリングのスムーズさが損なわれるといった課題がある。
【0005】
そこで、本件出願人は、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、走行状況に応じた車輪個別の補助的な操舵が行える操舵機能付ハブユニット(特許文献3)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102012206337号明細書
【文献】特開2014-061744号公報
【文献】特開2019-006226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、モータを2個使っているため、モータ個数の増大によるコスト増が生じるだけでなく、制御が複雑になる。
特許文献2は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。モータ等のサイズが大きくなると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
【0008】
上記のように従来の補助的な操舵機能を備えた機構は、車両において車輪のトー角またはキャンバー角を任意に変更することを目的としているため、モータおよび減速機構が複数必要になり複雑な構成となっている。また、剛性を確保することが困難となり、剛性を確保するためには大型化する必要があり重くなる。
また、キングピン軸と補助的な操舵機能を備えた機構の転舵軸が一致する場合は、構成要素部品がハブユニットの後方(車体側)に配置されるために全体のサイズが大きくなり重くなる。
【0009】
操舵機能付ハブユニットは、モータと、このモータの回転出力を出力ロッドの直進運動に変換する直動機構とを有し、前記出力ロッドが進退することで、ハブユニット本体が転舵軸心回りに回転駆動される(特許文献3)。
前記直動機構は、その位置情報を制御部に入力してフィードバック制御を行うことで精度が確保される。前記モータの回転角度センサ出力を前記位置情報として利用することも可能であるが、直動機構の台形ねじのガタおよび弾性変形により、直動機構の実際の動きに対して誤差がある。直動機構の実際の動きを直接測定するセンサを別に設けるとスペースが必要となり、そのスペース分、ハブユニット全体が大型化してしまい、サスペンション等の他部品に干渉する可能性がある。
【0010】
この発明の目的は、ハブユニット全体の小型化を図ると共に、直動機構の出力ロッドの移動量を正確に監視することができる操舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の操舵機能付ハブユニットは、車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を出力ロッドの直進運動に変換する直動機構とを有し、前記出力ロッドが進退することで、前記ハブユニット本体が前記転舵軸心回りに回転駆動される、操舵機能付ハブユニットであって、
前記直動機構は、前記出力ロッドの回り止めを行う回り止め部品が、前記出力ロッドに取付けられて前記直動機構の固定部分に摺動自在に接触し、且つ前記回り止め部品に位置センサ用測定ターゲットが設けられ、前記出力ロッドの移動量である前記位置センサ用測定ターゲットの変位を検出する位置センサが前記固定部分に設けられている。
【0012】
この構成によると、直動機構の出力ロッドが進退することで、ハブユニット本体が転舵軸心回りに回転駆動されることにより操舵される。このとき、出力ロッドの移動量を位置センサによってセンシングすることで、回転駆動源から直動機構に駆動力を伝達する経路中、および直動機構自体の遊びに影響されずに車輪の角度を適切にかつ精度良く管理する、または直動機構が指令値通りに動作しているかを確認することができる。また出力ロッドの回り止めを行う回り止め部品に、位置センサ用測定ターゲットが設けられているため、位置センサ用測定ターゲットを専用部品に別途設置するよりも、スペースを低減することができ、ハブユニット全体を小型化することができる。
【0013】
前記位置センサが磁気センサであり、前記位置センサ用測定ターゲットが永久磁石であってもよい。前記磁気センサの場合、光源等が不要で構成が簡素となり、また走行に伴い振動を受ける環境下での耐久性に優れる。また位置センサ用測定ターゲットが永久磁石であるため、永久磁石の磁場の変化を磁気センサが読み取り、出力ロッドの移動量を精度良く検出し得る。
【0014】
前記直動機構は、前記ユニット支持部材に回転自在に支持されたナット部と、このナット部の雌ねじ部に噛み合う雄ねじ部が外周に設けられた前記出力ロッドとを有してもよい。この場合、ナット部を回転させることで、回り止めされた出力ロッドを自由に進退することができる。
【0015】
この発明の操舵システムは、この発明の上記いずれかの構成の操舵機能付ハブユニットと、制御装置とを備え、前記制御装置は、上位制御部の指令信号および前記位置センサからの位置センサ出力を受け、前記回転駆動源となるモータに対する電流指令信号を出力する操舵制御部、および前記電流指令信号に応じた電流を出力して前記モータに印加し前記操舵用アクチュエータを駆動する。
この構成によると、この発明の操舵機能付ハブユニットを簡単な構成で制御して、この操舵機能付ハブユニットの上記利点を効果的に得ることができる。
【0016】
この発明の車両は、この発明の上記いずれかの構成の操舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持される。
そのため、この発明の操舵機能付ハブユニットにつき前述した各効果が得られる。前輪は一般的に操舵輪とされるが、操舵輪にこの発明の操舵機能付ハブユニットを適用した場合は、走行中におけるトー角調整に効果的である。また、後輪は一般的に非操舵輪とされるが、非操舵輪に適用した場合は、非操舵輪の若干の操舵によって低速走行時における最小回転半径の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の操舵機能付ハブユニットは、車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を出力ロッドの直進運動に変換する直動機構とを有し、前記出力ロッドが進退することで、前記ハブユニット本体が前記転舵軸心回りに回転駆動される、操舵機能付ハブユニットであって、前記直動機構は、前記出力ロッドの回り止めを行う回り止め部品が、前記出力ロッドに取付けられて前記直動機構の固定部分に摺動自在に接触し、且つ前記回り止め部品に位置センサ用測定ターゲットが設けられ、前記出力ロッドの移動量である前記位置センサ用測定ターゲットの変位を検出する位置センサが前記固定部分に設けられている。このため、ハブユニット全体の小型化を図ると共に、直動機構の出力ロッドの移動量を正確に監視することができる。
【0018】
この発明の操舵システムは、この発明の上記いずれかの構成の操舵機能付ハブユニットと、制御装置とを備え、前記制御装置は、上位制御部の指令信号および前記位置センサからの位置センサ出力を受け、前記回転駆動源となるモータに対する電流指令信号を出力する操舵制御部、および前記電流指令信号に応じた電流を出力して前記モータに印加し前記操舵用アクチュエータを駆動するため、ハブユニット全体の小型化を図ると共に、直動機構の出力ロッドの移動量を正確に監視することができる。
【0019】
この発明の車両は、この発明の上記いずれかの構成の操舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持されるため、ハブユニット全体の小型化を図ると共に、直動機構の出力ロッドの移動量を正確に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットおよびその周辺の構成を示す縦断面図である。
【
図2】同操舵機能付ハブユニットおよびその周辺の構成を示す水平断面図である。 同操舵機能付ハブユニットの外観を示す斜視図である。
【
図3】同操舵機能付ハブユニットの外観を示す斜視図である。
【
図7】同操舵機能付ハブユニットの出力ロッドの回り止め部品等を部分的に示す側面図である。
【
図8】
図2の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図9】同操舵機能付ハブユニットに用いた位置センサの概念構成の説明図である。
【
図10】同操舵機能付ハブユニットを備えた車両の一例の模式平面図である。
【
図11】いずれかの操舵機能付ハブユニットを備えた車両の他の例の模式平面図である。
【
図12】いずれかの操舵機能付ハブユニットを備えた車両のその他の例の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
この発明の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットを
図1ないし
図10と共に説明する。
<操舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、操舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。操舵機能付ハブユニット1を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。なお、操舵機能付ハブユニット1を単に、ハブユニット1と言う場合がある。
【0022】
図2および
図3に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とはジョイント部8により連結されている。通常、このジョイント部8は、防水、防塵のために図示外のブーツが取り付けられている。
【0023】
図1に示すように、ハブユニット本体2は、上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在なように、上下二箇所で回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持されている。転舵軸心Aは、車輪9の回転軸心Oとは異なる軸心であり、主な操舵を行うキングピン軸とも異なっている。通常の車両は、車両走行の直進安定性の向上を目的としてキングピン角度が10~20度で設定されているが、この実施形態の操舵機能付ハブユニット1は、前記キングピン角度とは別の角度(軸)の転舵軸を有する。車輪9は、ホイール9aとタイヤ9bとを備える。
【0024】
<操舵機能付ハブユニット1の設置箇所>
この操舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では操舵輪、具体的には
図10に示すように、車両10の前輪9Fのステアリング装置11による操舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。但し、操舵輪の操舵機能付ハブユニット1において、車両制御の要求によっては、前記微小な角度に限らず例えば10°~20°等の比較的大きな角度を左右輪個別に採ることもある。後述する
図12に示す操舵機能付ハブユニット1についても同様である。
【0025】
図2および
図10に示すように、ステアリング装置11は、車体に取り付けられ、運転者のハンドル11aの操作、または図示外の自動運転装置、運転支援装置の指令等によって動作し、その進退するタイロッド14が、ユニット支持部材3のステアリング結合部6d(後述する)に連結されている。ステアリング装置11は、ラック・ピニオン式等とされるが、どのタイプのステアリング装置でも構わない。懸架装置12は、例えば、ショックアブソーバをナックル6に直接固定するストラット式サスペンション機構を適用しているが、ダブルウィッシュボーン式サスペンション機構、マルチリンク式サスペンション機構、その他のサスペンション機構を適用してもよい。
【0026】
<ハブユニット本体2について>
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の操舵力受け部であるアーム部17(
図3)とを備える。
図6に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(
図1)とを繋ぐ役目をしている。
【0027】
このハブベアリング15は、図示の例では、外輪19が固定輪、内輪18が回転輪となり、転動体20が複列とされたアンギュラ玉軸受とされている。内輪18は、ハブフランジ18aaを有しアウトボード側の軌道面を構成するハブ輪部18aと、インボード側の軌道面を構成する内輪部18bとを有する。
図1に示すように、ハブフランジ18aaに、車輪9のホイール9aがブレーキロータ21aと重なり状態でボルト固定されている。内輪18は、回転軸心O回りに回転する。
【0028】
図6に示すように、アウターリング16は、外輪19の外周面に嵌合された円環部16aと、この円環部16aの外周から上下に突出して設けられたトラニオン軸状の転舵軸部16b,16bとを有する。上下の取付軸部である各転舵軸部16bは、転舵軸心Aに同軸に設けられる。
【0029】
図2に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(
図4)に取付けられる。
【0030】
<回転許容支持部品およびユニット支持部材について>
図6に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、円すいころ軸受が適用されている。転がり軸受は、転舵軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
【0031】
ユニット支持部材3は、ユニット支持部材本体3Aと、ユニット支持部材結合体3Bとを有する。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端に、略リング形状のユニット支持部材結合体3Bが着脱自在に固定されている。ユニット支持部材結合体3Bのインボード側側面のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Baがそれぞれ形成されている。
【0032】
図5および
図6に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Aaがそれぞれ形成されている。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端にユニット支持部材結合体3Bが固定され、各上下の部分につき、嵌合孔形成部3Aa,3Baが互いに組み合わされることにより、全周に連なる嵌合孔が形成される。この嵌合孔に外輪4bが嵌合されている。なお
図3において、ユニット支持部材3を一点鎖線で表す。
【0033】
図6に示すように、各転舵軸部16bは、中空軸とされて内周孔内に雌ねじ部が径方向に延びるように形成され、この雌ねじ部に螺合するボルト23が設けられている。内輪4aの端面に円板状の押圧部材24を介在させ、前記雌ねじ部に螺合するボルト23により、内輪4aの端面に押圧力を付与することで、各回転許容支持部品4にそれぞれ予圧を与えている。すなわち、車両の重量などの外力がハブユニットに作用した場合でも予圧が抜けないように初期予圧が設定されている。これにより各回転許容支持部品4の剛性を高め得る。なお、回転許容支持部品4の転がり軸受は、円すいころ軸受に代えてアンギュラ玉軸受または四点接触玉軸受を用いてもよい。その場合も、上記と同様に予圧を与えることができる。
【0034】
図1に示すように、上下の転舵軸部16b,16bは、それぞれ回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持され、各回転許容支持部品4が車輪9のホイール9a内に位置する。この例では、各回転許容支持部品4が、ホイール9a内でこのホイール9aの幅方向中間付近に配置される。
【0035】
図2に示すように、アーム部17は、ハブベアリング15の外輪19に補助的な操舵力を与える作用点となる部位であり、アウターリング16または外輪19の外周の一部に一体に突出する。アーム部17は、ジョイント部8を介して、操舵用アクチュエータ5の直動出力部となる出力ロッド25aに回転自在に連結されている。これにより、操舵用アクチュエータ5の出力ロッド25aが進退(直進運動)することで、ハブユニット本体2が転舵軸心A回りに回転、つまり補助操舵させられる。
【0036】
<操舵用アクチュエータ5>
図3に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(
図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、回転駆動源としてのモータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を出力ロッド25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
【0037】
<減速機27>
減速機27は、ベルト伝達機構等の巻き掛け式伝達機構またはギヤ列等を用いることができ、
図2の例ではベルト伝達機構が用いられている。減速機27は、ドライブプーリ27a,ドリブンプーリ27bと、ベルト27cとを有する。モータ26のモータ軸にドライブプーリ27aが結合され、直動機構25の回転自在なナット部35に、ドリブンプーリ27bが設けられている。このドリブンプーリ27bは、前記モータ軸に平行に配置されている。モータ26の駆動力は、ドライブプーリ27aからベルト27cを介してドリブンプーリ27bに伝達される。前記各ドライブプーリ27a,ドリブンプーリ27bとベルト27cとで、巻き掛け式の減速機27が構成される。
【0038】
<直動機構25について>
図2および
図8に示すように、直動機構25は、台形ねじまたは三角ねじ等の滑りねじ式の送りねじ機構を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構33が用いられている。滑りねじの内部には、グリースが封入されている。この直動機構25は、送りねじ機構33、回転支持軸受28、回り止め部品43、およびこれらの構成部品を覆うカバーであるアクチュエータケース34を備える。
【0039】
送りねじ機構33は、ナット部35と、ねじ軸である前記出力ロッド25aと、すべり軸受37とを有する。出力ロッド25aは、後述する回り止め部品43によってユニット支持部材3に対して回り止めされている。ナット部35は、この外周部の軸方向中間部にドリブンプーリ27bが設けられて軸方向両側の回転支持軸受28,28によりユニット支持部材3に回転自在に支持されている。このナット部35の内周に雌ねじ部35aが設けられている。出力ロッド25aの外周には、ナット部35の前記雌ねじ部35aに噛み合う雄ねじ部25aaが設けられている。
【0040】
ナット部35の軸方向両端には、出力ロッド25aが摺動可能に貫通するすべり軸受37,37が設けられている。各すべり軸受37は、出力ロッド25aの軸方向の移動をガイドすると共に、タイヤ側からの外力が出力ロッド25aに入力された場合、出力ロッド25aにラジアル方向の力が負荷されることを防止する。
【0041】
回転支持軸受28として、この例では、二個の円すいころ軸受が、ドリブンプーリ27bを介して、正面合わせで組み合わされている。これらの回転支持軸受28,28の配置は、背面合わせ、正面合わせのどちらでもよいが、組付け性やシム等による予圧調整の容易さより、正面合わせの配置が好ましい。
【0042】
各回転支持軸受28は、固定輪である外輪28aと、回転輪である内輪28bと、内外輪28b,28a間に介在する複数の転動体28cと、これら転動体28cを保持する保持器28dとを有する。各内輪28bは、ナット部35の外周面に嵌合固定され、止め輪39,39により軸方向に規制されている。アウトボード側の回転支持軸受28の外輪28aは、ケース6bの嵌合孔に嵌合固定され、インボード側の回転支持軸受28の外輪28aは、アクチュエータケース34のアウトボード側の内周面に嵌合固定されている。なお、回転支持軸受28をアンギュラ玉軸受としてもよい。この場合にも、回転支持軸受28,28の配置は、背面合わせ、正面合わせのどちらでもよい。
【0043】
図7および
図8に示すように、回り止め部品43は、出力ロッド25aの後端部であるインボード側端部に設けられた軸状部材である。この回り止め部品43は、出力ロッド25aのインボード側端部において、上下方向および出力ロッド25aの軸方向にそれぞれ直交する方向に延びるように、出力ロッド25aに貫通状に嵌合固定されている。回り止め部品43の外周における軸方向両端部には、環状のすべり軸受49a,49bが嵌合されている。
【0044】
出力ロッド25aのインボード側端部のうち、下側のすべり軸受49bに対向する部分には、前記すべり軸受49bの一端面に平行な平坦面(いわゆるDカット面)50が形成されている。この出力ロッド25aの平坦面50に前記すべり軸受49bの一端面が当接されると共に、下側の前記すべり軸受49bの他端面を押えるボルト51が回り止め部品43に螺合されている。これにより、アクチュエータケース34に対して、回り止め部品43、ボルト51およびすべり軸受49a,49bの上下方向の位置が所望の位置に規制される。なお前記ボルト51には、後述する位置センサ用測定ターゲットTgが埋め込まれている。
【0045】
アクチュエータケース34内には、各すべり軸受49a,49bの外周面をそれぞれ案内する案内面52a,52bを含む略直方体状の案内溝52が形成されている。換言すれば、回り止め部品43は、すべり軸受49a,49bを介して、直動機構25の固定部分であるアクチュエータケース34の案内面52a,52bに摺動自在に接触する。よって回り止め部品43を、すべり軸受49a,49bを介してアクチュエータケース34の案内溝52に沿って摺動させることで、出力ロッド25aを軸方向に往復運動させ得る。また回り止め部品43をすべり軸受49a,49bを介して摺動させるため、少なくとも前記案内面52a,52bに例えば摩耗防止処理が施されている。各すべり軸受49a,49bは、銅合金または多孔質の焼結合金等の金属製の他、フッ素樹脂等の樹脂製のものも適用できる。
【0046】
図2に示すように、直動機構25は、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構を備えるため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、サブアセンブリとして組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接に直動機構25へ伝達する機構も可能である。
【0047】
<位置センサ等について>
図7および
図8に示すように、操舵用アクチュエータ5は位置センサ44を備え、位置センサ44は出力ロッド25aの軸方向の移動量を監視する。この位置センサ44は、直動機構25の固定部分であるアクチュエータケース34に設けられている。アクチュエータケース34内に固定された基板53に、位置センサ44が固定され、位置センサ44は、後述する位置センサ用測定ターゲットTgが進退する経路に対向する。また出力ロッド25aが定められた軸方向位置(進退位置)のとき、前記位置センサ44と位置センサ用測定ターゲットTgとが定められたギャップGpを隔てて互いに対向する。前記定められた軸方向位置、前記定められたギャップGpは、それぞれ設計等によって任意に定める軸方向位置、ギャップであって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な軸方向位置、ギャップを求めて定められる。
【0048】
この位置センサ44は、
図9に概念的に示すように、位置の変化を検出する半導体素子45を、一つのパッケージ46に二個有し、各半導体素子45の出力をパッケージ46の外部に出力する出力端子47,47を個別に有している。位置センサ44は、磁気式、光学式、静電容量式等の各種のセンサを用いることができるが、この実施形態では、磁気センサが用いられ、前記各半導体素子45にはホール素子が用いられている。
【0049】
図8に示すように、回り止め部品43には、位置センサ用測定ターゲットTgとなる永久磁石48が設けられている。具体的には、回り止め部品43に軸方向端部に螺合されたボルト51の頭部に永久磁石48が埋め込まれている。またボルト51は、例えば、樹脂、ステンレス鋼等の非磁性材料から成る。樹脂製のボルト51の場合、永久磁石48は例えば前記樹脂製のボルト51内に一体成形される。ボルト51がステンレス鋼等の非磁性金属材料から成る場合、例えば、ボルト51の頭部表面に図示外の凹み部が形成され、この凹み部に永久磁石48が設けられ、且つ接着剤等で前記凹み部を覆うことにより、前記頭部に永久磁石48が埋め込まれる。したがって、位置センサ44は、出力ロッド25aの進退に伴う永久磁石48の磁場の変化を前記各半導体素子45が読み取り、出力ロッド25aの進退位置を検出する。なお前記ボルトを省略して回り止め部品43に直接永久磁石48を埋め込んでもよい。
【0050】
<その他の機構的構成>
図2に示すように、ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および出力ロッド25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
【0051】
図3に示すように、ユニット支持部材本体3Aは、前記ケース6b、ショックアブソーバの取り付け部となるショックアブソーバ取り付け部6c、およびステアリング装置11(
図2)の結合部となるステアリング装置結合部6dを有する。これらショックアブソーバ取り付け部6cおよびステアリング装置結合部6dも、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における上部に、ショックアブソーバ取り付け部6cが突出するように形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における側面部には、ステアリング装置結合部6dが突出するように形成されている。
【0052】
<作用効果>
以上説明した操舵機能付ハブユニット1によれば、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、アクチュエータ本体7の駆動により、転舵軸心A回りに自由に回転させることができる。この回転は、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、すなわちステアリング装置11によるキングピン軸回りのナックル6の回転に付加して、補助的な操舵として行われ、また1輪の独立操舵が行える。左右の車輪9,9の補助操舵の角度を異ならせることで、左右の車輪9,9間のトー角を任意に変更することができる。
【0053】
そのため、操舵機能付ハブユニット1を前輪等の操舵輪および後輪等の非操舵輪のいずれに用いてもよい。操舵輪に用いる場合は、ステアリング装置11により方向が変化させられる部材に設置されることにより、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、左右の車輪個別の、または左右輪に連動した車輪9の微小な角度変化を行わせる機構となる。補助操舵の角度については、車両の運動性能の向上、走行の安定・安全性向上を図るにつき、僅かな角度で足り、補助操舵可能角度が±5度以下であっても十分に足りる。補助操舵の角度は操舵用アクチュエータ5の制御により行う。
【0054】
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとするなど、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を任意に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。旋回走行時における左右の操舵輪の操舵角度を適切に変えることで、車両の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
さらに直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角の量を調整することで、低速時には走行抵抗を下げ燃費を悪化させることなく、高速時には走行安定性を確保するなど調整が可能である。
【0055】
操舵機能付ハブユニット1を後輪9Rである非操舵輪に適用した場合は、旋回走行時に、舵角を前輪9Fと同じ位相にすると、操舵時に発生するヨーを抑え、車両の安定性を高めることができる。直線走行時にも左右独立でトー角を調整することで、走行安定性を確保することができる。
【0056】
直動機構25の出力ロッド25aが進退することで、ハブユニット本体2が転舵軸心A回りに回転駆動されることにより操舵される。このとき、出力ロッド25aの移動量を位置センサ44によってセンシングすることで、モータ26から直動機構25に駆動力を伝達する経路中、および直動機構25自体の遊びに影響されずに車輪9の角度を適切にかつ精度良く管理する、または直動機構25が指令値通りに動作しているかを確認することができる。また出力ロッド25aの回り止めを行う回り止め部品43に、位置センサ用測定ターゲットTgが設けられているため、位置センサ用測定ターゲットTgを専用部品に別途設置するよりも、スペースを低減することができ、ハブユニット全体を小型化することができる。
【0057】
位置センサ44が磁気センサである場合、光源等が不要で構成が簡素となり、また走行に伴い振動を受ける環境下での耐久性に優れる。この場合に位置センサ用測定ターゲットTgが永久磁石48であるため、永久磁石48の磁場の変化を磁気センサが読み取り、出力ロッド25aの移動量を精度良く検出し得る。
【0058】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0059】
<非操舵輪への適用について>
操舵機能付ハブユニット1は、非操舵輪に対して用いてもよい。例えば、
図11に示すように、前輪操舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪操舵に用いてもよい。非操舵輪の操舵機能付ハブユニット1において、車両制御の要求によっては、前述の微小な操舵角度に限らず例えば10°~20°等の比較的大きな角度を左右輪個別に採ることもある。
その他
図12に示すように、操舵機能付ハブユニット1を、操舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非操舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
【0060】
<操舵システムについて>
図2に示すように、この操舵システムは、いずれかの実施形態に係る操舵機能付ハブユニット1と、この操舵機能付ハブユニット1の操舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、操舵制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31とを有する。操舵制御部30は、上位制御部32から与えられた補助操舵角指令信号(指令信号)に応じた電流指令信号を出力する。このとき操舵制御部30は、位置センサ44から出力ロッド25aの進退位置情報である位置センサ出力を用いてフィードバック制御を行うことで、車輪9の角度を適切にかつ精度良く管理し得る。
【0061】
上位制御部32は操舵制御部30の上位の制御手段であり、この上位制御部32として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニット(Vehicle Control Unit,略称VCU)が適用される。アクチュエータ駆動制御部31は、操舵制御部30から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して操舵用アクチュエータ5を駆動制御する。アクチュエータ駆動制御部31は、モータ26のコイルに供給する電力を制御する。このアクチュエータ駆動制御部31は、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON-OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。これにより、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、車輪を微小に角度変化することができる。直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角の量を調整し得る。
【0062】
操舵システムは、運転者のハンドル操作に代えて、図示外の自動運転装置、運転支援装置の指令等によって操舵用アクチュエータ5,5を動作させてもよい。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1…操舵機能付ハブユニット、3…ユニット支持部材、5…操舵用アクチュエータ、6…ナックル(足回りフレーム部品)、9…車輪、9F…前輪、9R…後輪、15…ハブベアリング、25…直動機構、25a…出力ロッド、25aa…雄ねじ部、26…モータ(回転駆動源)、29…制御装置、30…操舵制御部、31…アクチュエータ駆動制御部、32…上位制御部、34…アクチュエータケース(固定部分)、35…ナット部、35a…雌ねじ部、43…回り止め部品、44…位置センサ、48…永久磁石