(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】モータ及びワイパモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/10 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
H02K7/10 A
(21)【出願番号】P 2019059197
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 敏
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-321971(JP,A)
【文献】特開平02-017245(JP,A)
【文献】特開平10-002391(JP,A)
【文献】特開平09-056146(JP,A)
【文献】特開昭51-017773(JP,A)
【文献】特開平02-250657(JP,A)
【文献】特開2015-229378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
7/10
F16H 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するロータと、
磁性体により形成され前記ロータにより回転駆動される第1噛合部を有する第1ギヤと、
磁性体により形成され前記第1ギヤの第1回転軸と直交方向の第2回転軸を有すると共に、前記第1噛合部と噛合する第2噛合部を有する第2ギヤと、を備えたモータであって、
前記第1ギヤは、前記第1噛合部に前記第1回転軸方向における一端面側から他端面側に向かって螺旋状に形成された第1経路と、前記第1ギヤの周方向に沿って前記第1経路と連続して形成され前記他端面側から前記一端面側に向かって前記第1経路と反対のピッチの螺旋状に形成された第2経路とを有し、
前記第2ギヤは、前記第2回転軸と前記第1噛合部との間の距離が、前記第2回転軸と前記第2噛合部との間の距離以上になるように配置さ
れ、前記第1噛合部との間に生じる磁気吸引力により前記第1ギヤの回転に連動して前記第2回転軸回りに揺動する、
モータ。
【請求項2】
前記第1経路と前記第2経路とは、等長である、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1ギヤは、前記第1回転軸方向に直交する平面による断面が略円形であり、前記第1回転軸方向における中央に向うほど断面の径が小さい鼓型の形状を有する、
請求項1
又は2に記載のモータ。
【請求項4】
請求項1から
3のうちいずれか1項に記載の前記モータを支持し、前記第1ギヤを前記第1回転軸で軸支すると共に、前記第2ギヤを前記第2回転軸で軸支する筐体と、
前記筐体において、前記第2ギヤが所定角度以上回転しないように規制するように突出して形成された突出部と、を備える、
ワイパモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸に連動して揺動運動をするカムギヤを備えるモータ及びワイパモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイパを駆動するためのワイパモータとして、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載されたワイパモータは、駆動源となるモータと、モータのシャフトに設けられたウォームギヤと、ウォームギヤに噛合するはす歯歯車と、はす歯歯車に連結されたクランク機構とを備えている。ワイパブレードは、クランク機構に連結され、モータのシャフトの回転に連動して動作するクランク機構の揺動運動により、ウィンドウガラス等を払拭することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたワイパモータは、使用を続けているうちにギヤやクランク機構が損耗し、損耗した状態でモータを稼働させるとギヤクランク機構からノイズが発生する虞がある。また、特許文献1に記載されたワイパモータは、通常の使用状態において潤滑油が必要となり、潤滑油が減少するとギヤやクランク機構からノイズが発生する虞がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ノイズの発生を及び損耗低減すると共に、耐久性を向上させることができるモータ及びワイパモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一態様に係るモータは、回転するロータと、磁性体により形成され前記ロータにより回転駆動される第1噛合部を有する第1ギヤと、磁性体により形成され前記第1ギヤの第1回転軸と直交方向の第2回転軸を有すると共に、前記第1噛合部と噛合する第2噛合部を有する第2ギヤと、を備えたモータであって、前記第1ギヤは、前記第1噛合部に前記第1回転軸方向における一端面側から他端面側に向かって螺旋状に形成された第1経路と、前記第1ギヤの周方向に沿って前記第1経路と連続して形成され前記他端面側から前記一端面側に向かって前記第1経路と反対のピッチの螺旋状に形成された第2経路とを有し、前記第2ギヤは、前記第2回転軸と前記第1噛合部との間の距離が、前記第2回転軸と前記第2噛合部との間の距離以上になるように配置され、前記第1噛合部との間に生じる磁気吸引力により前記第1ギヤの回転に連動して前記第2回転軸回りに揺動する、モータである。
【0007】
上記構成により本発明は、簡素化された構成により第1ギヤの所定方向の回転運動を、第2ギヤの往復回転運動に変換することができる。また、本発明は、第1ギヤが一方向に回転すると、第1ギヤの第1噛合部に噛合する第2噛合部を有する第2ギヤが第1ギヤの一端面側と他端面側との間を揺動する。この時、本発明によれば、第1噛合部と第2噛合部とが干渉することなく動作するため、静粛性を向上させると共に、各ギヤの寿命を延ばすことができる。
【0008】
上記モータは、前記第1経路と前記第2経路とは、等長であるように構成されていてもよい。
【0009】
上記構成により本発明は、第1ギヤが回転した際に、前記第1経路と前記第2経路とに沿って往復する第2ギヤの往復の速度を等しくすることができる。
【0010】
上記モータは、前記第1噛合部および前記第2噛合部は磁性体であり、前記第2ギヤは、前記第1噛合部との間に生じる磁気吸引力により前記第1ギヤの回転に連動して前記第2回転軸回りに揺動するように構成されていてもよい。
【0011】
上記構成により本発明は、第1噛合部と第2噛合部とが磁気的に噛合しているため、動作時の静粛性が向上すると共に、ギヤの損耗を抑制することができる。
【0012】
上記モータは、前記第1ギヤが前記第1回転軸方向に直交する平面による断面が略円形であり、前記第1回転軸方向における中央に向うほど前記断面の径が小さい鼓型の形状を有するように構成されていてもよい。
【0013】
上記構成により本発明は、第1噛合部と第2噛合部とを溝等で形成する場合に比して容易に加工して形成することができる。また、本発明によれば、第1ギヤが上下左右方向に対称の形状に形成されているため、回転時に振れ回り振動の発生を抑制することができる。
【0014】
この発明の一態様に係るワイパモータは、前記モータを支持し、前記第1ギヤを前記第1回転軸で軸支すると共に、前記第2ギヤを前記第2回転軸で軸支する筐体と、前記筐体において、前記第2ギヤが所定角度以上回転しないように規制するように突出して形成された突出部とを備えるワイパモータである。
【0015】
上記構成により本発明は、第1ギヤの回転に連動して第2ギヤが往復する際に突出部が第2ギヤの回転角度範囲を規制するため、第2ギヤの反転時のずれを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ノイズの発生及び損耗を低減すると共に、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るワイパモータの構成を示す平面図である。
【
図2】ワイパモータのギヤ部の内部構成を示す平面図できる。
【
図4】ギヤ部の構成を示す他の方向から見た斜視図である。
【
図8】変形例1に係るギヤ部の動作を示す斜視図である。
【
図9】変形例1に係るギヤ部の動作を示す平面図である。
【
図10】変形例2に係る第1ギヤの第1噛合部の展開図である。
【
図11】変形例2に係る第1ギヤの他の第1噛合部の展開図である。
【
図12】変形例3に係るギヤ部の動作を示す斜視図である。
【
図13】変形例3に係るギヤ部の動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るファンモータの構成について説明する。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、ワイパモータ1は、例えば、自動車等の車両のウィンドウガラスを払拭するためのワイパ装置の駆動源として用いられる。ワイパモータ1は、駆動源となるモータ1Aと、モータ1Aに駆動されてワイパを駆動するためのギヤ部10とを備える。
【0020】
モータ1Aは、例えば、一般的なブラシ付DCモータである。モータ1Aは、例えば、有底円筒形状のハウジング2内に回転自在に軸支されたロータ3(アーマチュア)を備える。ハウジング2の一側面には底部2Aが設けられており、底部2Aの中心にロータ3のシャフトSの一端面側を軸支する軸受B1が取り付けられている。ハウジング2の他側面には、ハウジング2の開口を覆うように隔壁プレート2Bが取り付けられている。隔壁プレート2Bの中心には、ロータ3のシャフトSの他端面側を軸支する軸受B2が取り付けられている。ハウジング2の内部には、電極となる複数のブラシ4,5が取り付けられるブラシホルダXが設けられている。
【0021】
ハウジング2の内周面には、複数の永久磁石8,9が周方向に並んで取り付けられている。ハウジング2と複数の永久磁石8,9により、固定子(ステータ)を構成している。複数の永久磁石8,9の内側には、接触しないようにわずかな隙間で離間してハウジング2と同芯にロータ3が配置されている。ロータ3には、シャフトSの軸線方向から見て断面がT字型の複数のティース(不図示)が放射状に設けられている。各ティースには、エナメル被覆されたモータ巻線が巻回されている。これによりロータ3には、シャフトSの軸線方向からみて放射状に複数のアーマチュアコイル(不図示)(以下コイルともいう)が形成される。
【0022】
シャフトSの他端面側にはシャフトSと同芯に円柱状の台座6が形成されている。台座6の外周面には、各コイルの電極となる複数のセグメント(不図示)からなる整流子(コンミテータ7)が台座6の外周面の曲面に沿って貼り付けられている。コンミテータ7は、複数のブラシ4,5により挟持されており、複数のブラシ4,5と少なくとも2個のセグメントが接触している。
【0023】
このような構成により、コンミテータ7に摺接する複数のブラシ4,5に通電するとコイルに流れる電流により磁界が発生し、永久磁石8,9により形成されている磁界内で生じるロータ3の磁気吸引または磁気反発によりロータ3に回転が生じる。ロータ3は、所定の回転方向に回転し、シャフトS他端面側から回転出力が出力される。シャフトSは、ギヤ部10に回転出力を伝達する。
【0024】
ギヤ部10は、モータ1Aを支持する筐体11を備える。筐体11は、開口部を有する有底箱状のギヤハウジング11Aと、ギヤハウジング11Aの開口を閉塞するカバー部材11Bとを有する。筐体11内には、シャフトSの回転を減速する減速ギヤ12が設けられる。減速ギヤ12は、互いに非接触な2つの減速ギヤ12A,12Bにより構成されている。2つの減速ギヤ12A,12Bは、リング状に形成されて外周面に極対数が異なる磁極を有するギヤであり、径方向に並んで配置されている。そして、2つの減速ギヤ12A,12Bのうちの一方のギヤが回転すると、磁気的吸引力が作用する他方のギヤが回転する。2つの減速ギヤ12A,12Bは、直径が等しく、かつ、極数が異なるように形成されている。異極に形成されることにより、2つの減速ギヤ12A,12Bの間に回転差(減速比)が生じる。
【0025】
このような2つの減速ギヤ12A,12Bのうちの第1減速ギヤ12Aが、軸受B2を介して突出したシャフトSの他端に外嵌固定されている。第1減速ギヤ12Aに径方向に並んで配置される第2減速ギヤ12Bには、筐体11に軸支されたシャフトS1が連結される。減速ギヤ12により減速されたシャフトSの回転が、シャフトS1に伝達される。シャフトS1は、筐体11内に設けられた磁気ギヤ機構13を駆動する。磁気ギヤ機構13は、シャフトS1により駆動される第1ギヤ20と、第1ギヤ20の回転に連動して揺動する第2ギヤ30とを備える。
【0026】
第1ギヤ20は、シャフトS1を回転軸L1(第1回転軸)として所定の回転方向に回転する。第1ギヤ20は、ロータ3の回転に連動して回転駆動される。第1ギヤ20は、側面部21が三次元的な曲面状に形成されているドラム体である。第1ギヤ20は、回転軸L1と直交する平面による断面が略円形であり、回転軸L1方向における中央に向うほど断面の径が小さくなるように鼓型の形状に形成されている。第1ギヤ20の側面部は、回転軸L1と直交する方向から見て、回転軸L1に向かって凹む円弧状の一対の凹部が形成されている。
【0027】
第1ギヤ20は、上下左右に対称の形状に形成されているため、回転時に振れ回り振動の発生が抑制される。第1ギヤ20の側面部21には、第1噛合部22が形成されている。第1噛合部22は、後述のように第2ギヤ30の第2噛合部34と噛合する。第1噛合部22、第2噛合部34の詳細については後述する。第1ギヤ20に隣接して、第2ギヤ30が所定角度範囲で回転自在に配置されている。第2ギヤ30は、第1ギヤ20の回転に連動して回転する従動ギヤである。なお、ここで言う「噛合」とは、2つのギヤの凹凸が当接している状態だけでなく、2つのギヤが磁気的な吸引力によって引き合っている状態も指す。
【0028】
第2ギヤ30は、回転軸L1と直交方向の回転軸L2(第2回転軸)となるシャフトS2により回転自在に軸支されている。回転軸L2は、回転軸L1に直交し、かつ、第1ギヤ20の回転軸L1方向における中央を通る中央線C(
図7参照)上に配置されている。シャフトS2は、筐体11の底面から法線方向(図の紙面に対して直交方向)に突出するように設けられている。第2ギヤ30は、シャフトS2が挿通された筒状の胴部31を備える。胴部31の基端には、胴部31の径方向の外方に向かって突出した腕部32が形成されている。腕部32の先端部には、第2噛合部34が形成されている。
【0029】
シャフトS1とシャフトS2とは、例えば、非磁性体、より好適にはセラミックや樹脂材料で形成されていることが望ましい。後述の第1噛合部22や第2噛合部34が磁石で形成されていることにより、磁化されることを防止すると共に、第1ギヤ20や第2ギヤ30が回転した際に渦電流が発生して回転抵抗となることを防止するためである。
【0030】
第2噛合部34は、第1噛合部22と噛合するように第1ギヤ20の側面部21の方向に向いている。第2噛合部34と第1噛合部22との間は離間している。第2ギヤ30の回転軸L2と第1噛合部22との間の距離が、回転軸L2と第2噛合部34との間の距離以上になるように配置されている。
【0031】
筐体11には、回転軸L2方向から見て胴部31の回転軸L1方向に沿った両側に、筐体11の底面から法線方向に突出するように一対の突出部40,41が形成されている。突出部40,41は、例えば、円柱状に形成されている。突出部40,41は、第2ギヤ30が所定角度以上回転しないように規制するように突出して形成されている。突出部40,41の断面形状は、第2ギヤ30の回転を制限できるのであれば円形に限らず四角でもよいし、他の形状であってもよい。
【0032】
図3に示されるように、第1噛合部22は、第2ギヤの第2噛合部34と噛合する。第1噛合部22と第2噛合部34とは、例えば、それぞれ磁石で形成されている。第1噛合部22は、N極又はS極の磁力線が表面に現れるように形成されている。第2噛合部34は、第1噛合部22と反対の磁力線が腕部32の先端部に現れるように形成されている。即ち、第1噛合部22と第2噛合部34とのそれぞれの磁極は、第1噛合部22と第2噛合部34との間に磁気吸引力が生じるように互いに反対の極性となるように形成されている。
【0033】
側面部21の表面には、回転軸L1の方向における一端面23側から他端面24側に向かって螺旋状に往路部22A(第1経路)が形成されている。往路部22Aは、例えば、第1ギヤ20の側面部21において、第1ギヤ20の周方向における半分の領域(180°の領域)に形成されている。従って、往路部22Aは、第1ギヤ20の半回転で一端面23側から他端面24側に到達する螺旋状のピッチで形成されている。
【0034】
往路部22Aに連続して、側面部21の表面には、回転軸L1の方向における他端面24側から一端面23側に向かって螺旋状に復路部22B(第2経路)が形成されている。復路部22Bは、例えば、第1ギヤ20の側面部21において、第1ギヤ20の周方向における往路部22Aが形成された領域と異なる他の半分の領域(180°の領域)に形成されている。従って、復路部22Bは、第1ギヤ20の半回転で他端面24側から一端面23側に到達する往路部22Aのピッチと反対の螺旋状のピッチで等長に形成されている。
【0035】
第1ギヤ20の他端面24側の側面部21において往路部22Aと復路部22Bとを接続する反転部22Cが形成されている。第1ギヤ20の一端面23側の側面部21において復路部22Bと往路部22Aとを接続する反転部22Dが形成されている。
図5に示されるように、第1ギヤ20を回転軸L1回りに反転部22Dから平面に展開すると、第1噛合部22はV字状に形成されている。この様な構成により、第1ギヤ20が1回転すると、往路部22Aから復路部22Bを通って再び往路部22Aに戻る経路が形成されている。
【0036】
第1噛合部22は、例えば、側面部21に形成された往路部22Aと復路部22Bに沿った溝に磁粉を詰めて焼結させ、その後に磁化させることにより形成される。また、第1噛合部22は、可撓性を有する磁石を往路部22Aと復路部22Bに沿った溝に埋め込むことで形成されてもよい。また、磁石は、複数の磁石片を往路部22Aと復路部22Bに沿った溝に羅列してもよい。第1噛合部22は、N極又はS極のいずれかの磁極が表面に現れるように形成される。
【0037】
これに対して、第2ギヤ30の第2噛合部34は、第1噛合部22の磁極と反対の極性が表面に現れるように磁石で形成される。これにより、第1噛合部22と第2噛合部34との間には、磁気吸引力が働き、第1噛合部22と第2噛合部34とがあたかも噛合した状態となる。第2噛合部34は、第1ギヤ20の回転に伴い、第1ギヤ20の側面部21における第1噛合部22に最も近い位置に引き寄せられ、回転軸L2(シャフトS2)回りに回転する。
【0038】
図6及び
図7に示されるように、第2噛合部34が第1ギヤ20の他端面24側の反転部22Cに噛合している状態から、例えば、第1ギヤ20が矢印Aの方向に回転する。一般的に、N極及びS極間で磁気吸引力が働いている磁石同士は、引っ張り方向の抵抗に対して、滑り方向(例えば、引っ張り方向に直交方向)の抵抗は小さい。
【0039】
第2噛合部34は、第1ギヤ20の他端面24側から往路部22Aに沿うように第1噛合部22に引き寄せられながら第1ギヤ20の一端面23側に移動する。第2噛合部34の移動に伴って、第2ギヤ30は、回転軸L2回りに回転する。第1ギヤ20の回転が進み、第2噛合部34が反転部22Dに到達すると、第2ギヤ30の回転が一瞬停止する。
【0040】
第1ギヤ20の回転が更に進むと、第2噛合部34は、第1ギヤ20の一端面23側から復路部22Bに沿うように第1噛合部22に引き寄せられながら第1ギヤ20の他端面24側に移動する。第2噛合部34の移動に伴って、第2ギヤ30は、回転軸L2回りに回転する。この時、第2ギヤ30は、第2噛合部34が往路部22Aに沿って移動した時と反対方向に回転する。即ち、第2ギヤ30は、反転部22Dで反転する。
【0041】
第1ギヤ20の回転が進み、第2噛合部34が反転部22Cに到達すると、第2ギヤ30の回転が一瞬停止する。第1ギヤ20の回転が更に進むと、第2ギヤ30は、反転部22Cで反転し、第2噛合部34が往路部22Aに沿って移動開始し、それに伴って第2ギヤ30が回転軸L2回りに回転開始する。上記のように、第1ギヤ20が回転し続けると、第2ギヤ30は、連動して回転、反転を繰り返す動作を行う。
【0042】
上記構成により、例えば、第2ギヤ30の胴部31にワイパアーム(不図示)の基端を接続すると、第1ギヤ20の回転に伴ってワイパアームが揺動して、車両のウィンドウガラスを払拭することができる。ワイパアームの反転時の慣性力やワイパアームに何らかの力が加わって第2ギヤ30の回転角度範囲R(
図7参照)を超えた場合、第2ギヤ30の腕部32が一対の突出部40,41のいずれか一方に当接し、ワイパアームの動きを所定角度以上回転しないように規制する。
【0043】
突出部40,41に規制されたワイパアームは、第1ギヤ20の回転により磁気吸引力により第2噛合部34が反転部22C,22Dのいずれか一方に再び噛合する。その後、第2噛合部34は、第1噛合部22に連動して噛合し、第2ギヤ30が第1ギヤ20に連動して動作し、ワイパアームの揺動運動が再開される。
【0044】
上述したように、ワイパモータ1は、第1ギヤ20と第2ギヤ30とが第1噛合部22と第2噛合部34において磁気的に噛合することで、簡便な装置構成で第2ギヤ30を揺動運動させることができる。ワイパモータ1は、第1噛合部22と第2噛合部34とが磁気吸引力により噛合するため、歯車のような損耗が防止されて高寿命化されると共に、ギヤノイズの発生も防止される。また、ワイパモータ1は、第1噛合部22と第2噛合部34とが磁気吸引力により噛合するため、歯車のように注油をする必要が無く、潤滑油に埃等が溜まることが低減されると共に、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0045】
また、ワイパモータ1は、第1噛合部22と第2噛合部34とが磁気吸引力により噛合するため、噛み合い面が非常に簡便な構成を備える、第1噛合部22と第2噛合部34との公差を緩和することができる。また、ワイパモータ1は、簡便な構造を備えるため、歯車等を用いる装置に比して部品点数を削減する共に、小型化を実現することができる。また、ワイパモータ1は、簡便な構造で第2ギヤ30(出力軸)の可動範囲を180度以内とすることができ、製造コストを低減することができる。
【0046】
[変形例1]
上記実施形態では、ワイパモータ1のギヤ部10において、第1噛合部22は、N極又はS極の磁力線が表面に現れるように磁石で形成され、第2噛合部34は、第1噛合部22と反対の極性の磁力線が先端に現れるように磁石で形成されていた。変形例におけるギヤ部10において、第1噛合部22は、N極及びS極の磁力線が並列して表面に現れるように磁石で形成され、第2噛合部34は、第1噛合部22と反対の極性の磁力線が先端に現れるように磁石で形成されている。以下の説明では、上記実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。
【0047】
図8及び
図9に示されるように、第1ギヤ20において、第1噛合部22は、例えば、N極及びS極が並列した往路部22A及び復路部22Bが磁石で形成されている。第2噛合部34は、第1噛合部22と反対の磁極が並列した磁石で形成されている。このような構成により、第1噛合部22と第2噛合部34との間には、磁気吸引力が働き、第1噛合部22と第2噛合部34とは磁力で噛合する磁気ギヤとなる。
【0048】
上述した変形例1に係るワイパモータ1は、第1噛合部22にN極及びS極が並列した往路部22A及び復路部22Bが磁石で形成され、第2噛合部34は、第1噛合部22と反対の磁極が並列した磁石で形成されているため、1つの磁極で第1噛合部22と第2噛合部34とを形成する場合に比して、磁気吸引力が強くなり、第1ギヤ20と第2ギヤ30との間の伝達トルクを向上させることができる。
【0049】
[変形例2]
上記実施形態では、ワイパモータ1のギヤ部10において、第1ギヤ20が1回転した場合、第2ギヤ30は、連動して1往復の揺動をするように構成されていた。第2ギヤ30の往復の回数は、1回ではなく複数の回数であってもよい。
【0050】
図10及び
図11に示されるように、第1噛合部22は、第1ギヤ20の側面部21において、往路部22A及び復路部22Bが2つ連続して形成されていてもよい。このように第1噛合部22が形成されていることにより、第1ギヤ20が1回転すると、第2ギヤ30は、連動して2回往復の揺動をする。この場合、第1ギヤ20に形成された第1噛合部22の往路部22A及び復路部22Bの数は、2個以上であってもよい。
【0051】
上述した変形例2に係るワイパモータ1は、第1ギヤ20に形成された第1噛合部22の往路部22A及び復路部22Bの数によって第2ギヤ30の増速比(往復数)を変更することができる。
【0052】
[変形例3]
上記実施形態では、ワイパモータ1のギヤ部10において、第1ギヤ20は、一端面23側と他端面24側は、対称に形成されていた。第1ギヤ20において、一端面23側と他端面24側は、非対称に形成されていてもよい。
【0053】
例えば、
図12及び
図13に示されるように、第1ギヤ20は、他端面24側が一端面23側に比して径が大きくなるように形成されている。第2ギヤ30の回転軸L2は、第1ギヤ20の中央線C上に設けられていなくてもよく、偏心して設けられていてもよい。そのため、第2ギヤ30において、腕部32は、第1噛合部22に噛合するように先端に向う途中で回転平面において屈曲して形成されていてもよい。上述した変形例3に係るワイパモータ1は、第1ギヤ20の形状や第2ギヤ30の回転軸L2の位置を変えることで、ワイパモータ1のレイアウトや形状の自由度を高めることができる。
【0054】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上記実施形態では、第1噛合部22と第2噛合部34とは磁石で形成され、磁気的に噛合させるものとして形成されていたが、これに限らず、第1噛合部22と第2噛合部34とは、凹状(例えば、溝状)と凸状(例えば、ボール状)とにそれぞれ形成されていてもよい。また、例えば、上記実施形態では、第1ギヤ20は鼓型の形状に形成されていたが、これに限らず、第1ギヤ20の側面部21が回転軸L1に平行に延在される円柱形状に形成されていてもよい。この場合、側面部21が第2ギヤ30の第2噛合部と干渉しないように、側面部21に回転軸L1に垂直な方向に凹む溝を設け、この溝の中に第1噛合部22を形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…ワイパモータ、1A…モータ、2…ハウジング、2A…底部、2B…隔壁プレート、3…ロータ、4、5…ブラシ、6…台座、7…コンミテータ、8、9…永久磁石、10…ギヤ部、11…筐体、12…減速ギヤ、13…磁気ギヤ機構、20…第1ギヤ、21…側面部、22…第1噛合部、22A…往路部、22B…復路部、22C、22D…反転部、23…一端面、24…他端面、30…第2ギヤ、31…胴部、32…腕部、34…第2噛合部、40、41…突出部、L1、L2…回転軸、R…回転角度範囲、S、S1、S2…シャフト、X…ブラシホルダ