(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】鉄塔組立工事用のマストガイド装置の移設方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/28 20060101AFI20230315BHJP
B66C 23/60 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B66C23/28 B
B66C23/60 Z
(21)【出願番号】P 2019063129
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000212739
【氏名又は名称】株式会社シーテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 潤二
(72)【発明者】
【氏名】則竹 克哉
(72)【発明者】
【氏名】磯村 篤次
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慎也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 伯晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛之
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-196493(JP,A)
【文献】特開昭47-025941(JP,A)
【文献】特開2009-133139(JP,A)
【文献】特開昭59-043795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167342(US,A1)
【文献】特開2017-119571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの鉄塔主柱材を有する組
立途上の鉄塔の中心部に直立支持されるトラス柱状のマストと、当該マストの上部に起伏自在に支持されるブーム
と、一端側が地上のウィンチに巻かれ
、中間部が前記鉄塔主柱材上部のせり上げ用滑車に掛けられ
、他端側が前記マストの下端部に係止されるせり上げワイヤ
と、前記せり上げワイヤの巻き取り巻き戻しにより前記鉄塔に対す
る支持位置を上下に移
動可能な前記マストの中間部
を包囲して水平支線により前記鉄塔主柱材に支持され
、マスト
を鉄塔に対して垂直に相対昇降自在に保持するマストガイド装置と
を具備し、
前記マストガイド装置は、前記マストを相対昇降自在に包囲する環状フレームと、当該環状フレーム上に設けら
れマストの昇降をガイドするガイドローラと、
前記環状フレーム上に設けられ前記マストに係合離脱自在のストッパとを具備し、
前記ガイドローラは、前記環状フレームの内側に突出し前記マストを構成する四方のマスト主柱材の外側を上下方向に転動するように4つ設けられ、
前記ストッパは、前記マスト主柱材の外側に当接する拘束位置と当該マスト主柱材から離れる解放位置との間を移動自在で、ばねにより拘束位置に付勢され、拘束位置において前記環状フレームを前記マストに固定し、解放位置において前記環状フレーム
のマストに対する相対上下動を許容するように環状フレームに組み込まれ、
前記水平支線は、一端側が前記ストッパに接続され、他端側が所定の張力を持って前記鉄塔主柱材に係止されるとき、前記ばねの付勢力に抗し
てストッパを解放位置に配置するように設けられ
、
前記鉄塔の組立作業の進行に応じて前記マストを順次上方へせり上げていく際に前記マストガイド装置の鉄塔への支持位置をマストのせり上げに応じて
上方位置へ移設する方法であって、
前記鉄塔上の原位置において前記水平支線を介して支持されている前記マストガイド装置により支持されて原位置にある前記マストを原位置から所定の上方位置へせり上げるに先立って、当該マストを前記鉄塔に対して原位置から所定距離下方の下降位置まで下降させる第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記水平支線の前記鉄塔主柱材への支持を外し、前記マストガイド装置の前記ストッパを拘束位置に配置することにより、原位置にある当該マストガイド装置を下降位置にある前記マストに固定する第2の工程と、
前記第2の工程の後、固定された前記マストガイド装置を伴って、下降位置にある前記マストを原位置までせり上げることにより、当該マストガイド装置を原位置から上方位置へ移動させる第3の工程と、
前記第3の工程の後、上方位置にある前記マストガイド装置の水平支線を緊線して前記鉄塔主柱材へ支持し、当該マストガイド装置の前記ストッパを解放位置に配置することにより、当該マストガイド装置を前記マストに対して自由にする第4の工程とを含むことを特徴とする鉄塔組立工事用のマストガイド装置の移設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔の組立、解体工事において、資材を吊り上げ、吊り降ろすために、組立、解体途上の鉄塔の中心部に設置され、鉄塔に対するその取り付け高さ位置を変更できるデリックにおいて、マストを直立維持しつつ、その上昇、下降を案内するマストガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔の組立、解体の工事に用いられるデリックとして、例えば特許文献1に開示されたものがある。このデリックは、組立又は解体途上の鉄塔の中心部において4つの鉄塔主柱材に支持されるマストと、マストの上端部に設けられるブームとを具備する。マストは、下端において台座を介して水平支線と斜支線で四方の鉄塔主柱材に支持され、また中間部でマストを包囲する複数のマストガイドを介して水平支線で四方の鉄塔主柱材に直立するように支持される。台座と鉄塔主柱材の上部の滑車にかけ回されたせり上げワイヤを地上のウィンチで巻き取り巻き戻しすることによって、鉄塔に対するのマストの支持位置を上下に移動することができる。マストは台座上に軸周り回転自在に支持され、モータで回転駆動される。マストガイドは、相対回転自在の内外二重の環状部材で構成され、外側環状部材が水平支線によって鉄塔の主柱材に支持される。内側環状部材は、マストの四本の主柱材を上下方向に転動自在に受ける4つの昇降ローラを具備し、マストと共に水平回転自在である。
デリックを鉄塔主柱材の内側への設置する際には、マストの下端の台座を水平支線と斜支線で鉄塔主柱材に固定すると共に、マストを包囲するマストガイドを水平支線で鉄塔主柱材に固定する。この状態で、デリックを動作させて鉄塔の組み上げ、解体作業を行う。
鉄塔の組立作業の進行にしたがって、マストをせり上げ又はせり下げる。この際には、マストの荷重をせり上げワイヤで支持した状態で、マストの下端部を支持する斜支線と水平支線を鉄塔主柱材から外した後、せり上げワイヤを巻き上げ又は巻き戻してマストを所定高さ位置まで上昇又は下降させる。その際、マストはマストガイドにより直立を維持するようにガイドされる。所定位置までマストが上昇又は下降したら、その位置でマストの台座を水平支線と斜支線で鉄塔主柱材に支持する。せり上げワイヤを掛ける鉄塔主柱材上の滑車の位置も適正位置に移動させる。マストをせり上げ又はせり下げた後、マストガイドの水平支線を鉄塔主柱材から外し、牽引装置等を用いてマストガイドをマストの所要位置まで吊り上げ又は吊り下ろし、その位置で再び水平支線で鉄塔主柱材に支持する。この際には、作業者が鉄塔側からマストガイド側へ移動して作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のデリックを用いた鉄塔の組立又は解体作業時には、高所において作業者が鉄塔とマストガイドとの間を頻繁に行き来する危険を伴う難作業がある。マストガイドの吊り上げ、吊り下ろし作業も手間のかかる難作業である。
したがって、本発明は、鉄塔の組立又は解体作業時に、作業者が鉄塔とマストガイドとの間を頻繁に行き来する必要がなく、吊り上げ、吊り下ろし作業を省略できるマストガイド装置と、これを用いたマストガイドの移設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のマストガイド装置7,8は、マスト3の中間部を相対昇降自在に包囲して水平支線9,10により鉄塔主柱材Pに支持され、それによりマスト3を鉄塔Tに対して垂直に相対昇降自在に保持するものであり、マスト3を相対昇降自在に包囲する環状フレーム14と、この環状フレーム14上に設けられる4つのガイドローラ15と、4つのストッパ16とを具備する。ガイドローラ15は、環状フレーム14の内側に突出し、マスト3を構成する四方のマスト主柱材3a~3dの外側を上下方向に転動するように設けられる。ストッパ16は、マスト主柱材3a~3dの外側に当接する拘束位置と当該マスト主柱材3a~3dから離れる解放位置との間を移動自在で、ばね17により拘束位置に付勢され、拘束位置において環状フレーム14をマスト3に固定し、解放位置において環状フレーム14のマスト3に対する相対上下動を許容するように設けられる。水平支線9,10は、一端側がストッパ16に接続され、所定の張力を持って他端側が鉄塔主柱材Pに係止されるとき、ばね17の付勢力に抗してストッパ16を解放位置に配置するように設けられる。
上記課題を解決するための、本発明のマストガイド装置7,8の移設方法は、鉄塔T上の原位置において水平支線9,10を介して支持されているマストガイド装置7,8により支持されて原位置にあるマスト3を原位置から所定の上方位置へせり上げるに先立って、当該マスト3を鉄塔に対して原位置から所定距離下方の下降位置まで下降させる第1の工程と、その後、水平支線9,10の鉄塔主柱材Pへの支持を外し、マストガイド装置7,8のストッパ16を拘束位置に配置することにより、原位置にある当該マストガイド装置7,8を下降位置にあるマスト3に固定する第2の工程と、その後、固定されたマストガイド装置7,8を伴って、下降位置にあるマスト3を原位置までせり上げることにより、当該マストガイド装置7,8を原位置から上方位置へ移動させる第3の工程と、その後、上方位置にあるマストガイド装置7,8の水平支線9,10を緊線して鉄塔主柱材Pへ支持し、当該マストガイド装置7,8のストッパ16を解放位置に配置することにより、当該マストガイド装置7,8をマスト3に対して自由にする第4の工程とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマストガイド装置7,8は、本発明の方法により、鉄塔T側から水平支線9,10を操作してマスト3に対して係合離脱させることができ、これによりマスト3の昇降操作と合わせて、マスト3の所望位置にマストガイド装置7,8を配置することができる。したがって、マスト3の上方からマストガイド装置7,8を吊り上げたり吊り降ろしたりする操作を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るデリック装置の概略的説明図である。
【
図2】
図1のデリック装置の一部の概略的説明図である。
【
図3】
図1のデリック装置におけるデリック本体の正面図である。
【
図4】
図3のデリック本体のマストとブームとの関係を示す概略的平面図である。
【
図5】
図1のデリック装置におけるマスト下端部の正面図である。
【
図6】
図1のデリック装置におけるマスト下端部の平面図である。
【
図7】
図1のデリック装置におけるマストガイド装置の平面図である。
【
図8】
図7のマストガイド装置の一部の正面図である。
【
図9】
図7のマストガイド装置の一部の断面図である。
【
図10】デリック装置を用いた鉄塔組み立て工事の工程を示す説明図である。
【
図11】デリック装置を用いた鉄塔組み立て工事の工程を示す説明図である。
【
図12】デリック装置を用いた鉄塔組み立て工事の工程を示す説明図である。
【
図13】デリック装置を用いた鉄塔組み立て工事の工程を示す説明図である。
【
図14】デリック装置を用いた鉄塔組み立て工事の工程を示す説明図である。
【
図15】デリック装置を用いた鉄塔組み立て工事の工程を示す説明図である。
【
図16】デリック装置を用いた鉄塔組み立て工事の工程を示す説明図である。
【
図17】デリック装置を用いた鉄塔組み立て工事の工程を示す説明図である。
【
図18】本発明の他の実施形態に係るデリック装置の概略的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1,2において、デリック装置1は、トラス柱状のマスト3と、当該マスト3の上部に起伏自在に支持されるブーム4とからなるデリック本体2を具備する。
マスト3は、組立又は解体途上の鉄塔Tの中心部に垂直に支持される。鉄塔Tは、第1ないし第4の4つの鉄塔主柱材P(P1,P2,P3,P4)(
図2)を有し、第2節S2まで既に組み立てられており、第3節S3がデリック装置1を使用してこれから組み立てられる。
【0009】
図3によく示すように、マスト3は、トラス柱で構成され、4つのマスト主柱材3a,3b,3c,3dを具備し、上部において旋回台座18を介してブーム4の基端を起伏自在に支持する。マスト3の旋回台座18より上部は、
図4に示すように、平面視コ字状に側方へ解放しており、この開放空間S内へ起立状態のブーム4が納まり、マスト3の横断面積が全長において統一される。したがって、ブーム4を起立させた状態で、マスト3はその全長にわたってマストガイド装置7,8を支障なく通過できる。
【0010】
図1,2において、マスト3は、その下端部において水平支線5及び斜支線6により鉄塔主柱材Pに支持され、また中間部において、上部マストガイド装置7と下部マストガイド装置8を介して水平支線9,10により鉄塔主柱材Pに支持される。マストガイド装置7,8は、マスト3を相対昇降自在に包囲する
【0011】
デリック装置1を用いて作業を行うときには、上部マストガイド装置7が組立済みの鉄塔主柱材Pの上端部(
図1において第2節の上端部)に支持され、マスト3の下端部は水平支線5と斜支線6で鉄塔Tに支持される。マスト3の上部は、上部マストガイド装置7から上方へ安全上規制された所定距離以内の高さ延出する配置がとられる。
【0012】
斜支線6は、マスト3のせり上げワイヤ6a,6bを兼ねる2本のワイヤロープからなる。せり上げワイヤ6a,6bは、一端側が地上のウィンチWに巻かれ、中間部が鉄塔主柱材Pの上部のせり上げ用滑車11に掛けられ、他端側が主柱材Pに係止され、マスト3を支持する。せり上げワイヤ6a,6bの巻き取り巻き戻しにより鉄塔Tに対するマスト3の支持位置を上下に移動することができる。
【0013】
図5,6に示すように、マスト3の下端部には台座12が設けられる。台座12上には、四隅にマスト滑車13(13a,13b,13c,13d)と水平支線5を係止する引き手19が設けられる。マスト滑車13には、せり上げワイヤ6a,6bが掛けられる。
【0014】
図2において、せり上げワイヤ6aは、ウィンチWから、鉄塔主柱材P1上のせり上げ用滑車11a、マスト滑車13a,13cを介して鉄塔主柱材P3に係止される。せり上げワイヤ6bは、ウィンチWから、鉄塔主柱材P2上のせり上げ用滑車11b、マスト滑車13b,13dを介して鉄塔主柱材P4に係止される。負荷を軽減するために、
図1に示すように鉄塔主柱材P3,P4上にもせり上げ用滑車11c,11dを設け、それぞれせり上げワイヤ6a,6bを掛けて折り返し、マスト滑車13を介してせり上げ用滑車11a,11bの係止位置付近に係止するローピングを採用することもできる。
【0015】
マストガイド装置7,8は、マスト3の中間部を相対昇降自在に包囲し、水平支線9,10により鉄塔主柱材Pに支持され、それによりマスト3を鉄塔Tに対して垂直に、相対昇降自在に保持する。
【0016】
マストガイド装置7,8は、同一構造で、
図7,8,9に示すように、マスト3を相対昇降自在に包囲する環状フレーム14と、当該環状フレーム14上に設けられるガイドローラ15及びストッパ16を具備する。
【0017】
ガイドローラ15は、マスト3を構成する四方のマスト主柱材3a,3b,3c,3dの外側を上下方向に転動するように環状フレーム14の内側に突出して4つ設けられる。
【0018】
図9によく示すように、ストッパ16は、環状フレーム14の内側へ突出してマスト主柱材3a,3b,3c,3dの外側に当接する拘束位置と、それからから離れる解放位置との間を移動自在に環状フレーム14に組み込まれ、内装ばね17により、拘束位置に付勢される。ストッパ16は、拘束位置においてマストガイド装置7,8をマスト3に固定し、解放位置においてマストガイド装置7,8を解放し、それにより、マストガイド装置7,8のマスト3に対する相対上下動を許容する。ストッパ16は、外側に水平支線9,10の一端を係止する引き手16aを具備する。
【0019】
水平支線9,10は、一端側がストッパ16に接続され、他端側が鉄塔主柱材Pに係止される。水平支線9,10が、所定の張力を持って緊線されとき、ばね17の付勢力に抗してストッパ16を解放位置に配置するように設けられる。
【0020】
図10ないし
図17について、デリック装置1を鉄塔T上で所定高さにせり上げる工程を説明する。
【0021】
図10において、デリック装置1は、第2節S2まで組み立てられた鉄塔T上に設置され、仮想線で示す第3節の組み立て工事に使用されている。マスト3は、下端部において、水平支線5で鉄塔Tの第1節S1の上端部に支持されると共に、斜支線としての2本のせり上げワイヤ6で第2節S2の上端部に支持され、さらに中間部において上部マストガイド装置7を介して、第2節S2の上端部に水平支線9で支持される。
【0022】
図11において、鉄塔Tの第3節の組み立てが完了して、デリック装置1をせり上げる準備のために、第1のせり上げワイヤ6aの鉄塔Tへの係止を解いて、第2のせり上げワイヤ6bのみでデリック装置1の荷重を支持する。
【0023】
次いで、
図12において、第2のせり上げワイヤ6bでデリック装置1の荷重を支持した状態で、せり上げ用滑車11b,11dを鉄塔Tの第3節S3の上端部へ係止すると共に、せり上げワイヤ6aをこれらの滑車11a,11cに掛け回し、端部を第3節S3の上端部に係止することにより、第1のせり上げワイヤ6aでデリック装置1の荷重を支持する。
【0024】
次いで、
図13において、第1のせり上げワイヤ6aのみでデリック装置1の荷重を支持した状態で、せり上げ用滑車11b,11dを鉄塔Tの第3節S3の上端部へ係止すると共に、せり上げワイヤ6bをこれらの滑車11b,11dに掛け回し、端部を第3節S3の上端部に係止する。また、下部マストガイド装置8の水平支線10を緊線して、それのストッパ16をマスト3から外す。
【0025】
次いで、
図14において、水平支線5及びせり上げワイヤ6a,6bの係止を解いて、ウィンチWを巻き戻し、デリック装置1を第3節の高さ相当距離せり下げた後、下部マストガイド装置8の水平支線10の係止を解いて弛緩させる(
図15)ことにより、ストッパ16をマスト3に圧接させ、下部マストガイド装置8をマスト3に固定した状態で、
図15に示す位置までマスト3をせり上げる。下部マストガイド装置8は、マスト3と共にせり上がる。
【0026】
次いで、
図16において、下部マストガイド装置8の水平支線10を緊線して鉄塔Tに係止する一方、上部マストガイド装置7の水平支線9の係止を解いて弛緩させることにより、上部マストガイド装置7をマスト3に固定した状態で、
図17に示す位置までマスト3をせり上げる。上部マストガイド装置7は、マスト3と共にせり上がり、上部マストガイド装置7及び下部マストガイド装置8の両者が適正な上方位置に配置されるので、それらの水平支線9,10及びトラス下端部の水平支線5を所要の高さ位置で鉄塔Tに緊線して支持すると共に、せり上げワイヤ6を鉄塔Tに係止して、第4節の組立を行う。
【0027】
マスト3のせり上げに応じてマストガイド装置7,8をせり上げる作業は、鉄塔T側において水平支線9,10を操作することで行うことができるから、作業者が鉄塔T側からマスト3側へ移動して作業する必要がない。
【0028】
斜支線とせり上げワイヤ6とを兼ねさせ、かつせり上げワイヤ6を2条とすることで、これを交互に1条ずつ用いてデリック本体2の荷重を支持した状態で他方のせり上げワイヤ6の支持位置を上方へ移動することができる。
【0029】
図18に示す本発明の他の実施形態においては、上部マストガイド装置7、下部マストガイド装置8が、それぞれ上下2台を一組として設けられる。これにより、マスト3の垂直精度を高め、マストの安定したせり上げ・せり下げを実施できる。
【符号の説明】
【0030】
1 デリック装置
2 デリック本体
3 マスト
3a~3d マスト主柱材
4 ブーム
5 水平支線
6(6a,6b)斜支線兼用せり上げワイヤ
7 上部マストガイド装置
8 下部マストガイド装置
9 水平支線
10 水平支線
11 せり上げ用滑車
12 台座
13 マスト滑車
14 環状フレーム
15 ガイドローラ
16 ストッパ
16a 引き手
17 ばね
18 旋回台座
19 引き手
P 鉄塔主柱材
T 鉄塔
S1 鉄塔の第1節
S2 鉄塔の第2節
S3 鉄塔の第3節