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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】透析液供給装置及び血液浄化システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
A61M1/16 163
A61M1/16 110
A61M1/16 175
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019073945
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020171403
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛越 弘
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 正倫
(72)【発明者】
【氏名】松本 良平
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169779(JP,A)
【文献】特開2003-260130(JP,A)
【文献】特開平08-238311(JP,A)
【文献】米国特許第04664891(US,A)
【文献】特開2010-000207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された透析用水で透析液原液を希釈し透析液を調製する透析液調製部と、
前記透析液調製部が調製した透析液を貯留する貯槽を有する透析液送液部と、
通常時に、前記貯槽内の液面高さが第1高さよりも低いときに前記透析液調製部による透析液の調製を開始させ、前記貯槽内の液面高さが前記第1高さよりも高い第2高さ以上となったとき透析液の調製を停止する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記透析液の調製の停止からの経過時間が所定の閾値以上となったとき、前記貯槽内の透析液の劣化を判定するための劣化判定条件を満たしたと判定して前記貯槽内の透析液を強制排液する強制排液処理を行うように構成され、
かつ、前記制御部は、前記強制排液処理の後、前記貯槽内の液面高さが、前記第1高さより高く前記第2高さより低い液面高さとなり、前記貯槽に貯留する透析液の量が前記通常時よりも少なくなるように、前記透析液調製部に透析液を調製させる追加希釈処理を行うように構成されている、
透析液供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記追加希釈処理を行った後に、前記強制排液処理が行われることなく前記貯槽内の液面高さが第1高さよりも低くなったとき、前記第2高さまで透析液を貯留するように前記透析液調製部を制御する、
請求項1に記載の透析液供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記追加希釈処理を行った後に、再び前記強制排液処理が行われた場合、当該強制排液処理後に再び前記追加希釈処理を行う、
請求項1又は2に記載の透析液供給装置。
【請求項4】
前記貯槽内の前記第1高さに液体が存在するかを検出可能な第1液面検知センサと、
前記貯槽内の前記第2高さに液体が存在するかを検出可能な第2液面検知センサと、を備え、
前記制御部は、前記第1液面検知センサが液体を検知しないときに前記透析液調製部による透析液の調製を開始させ、前記第2液面検知センサが液体を検知したときに前記透析液調製部による透析液の調製を停止させる、
請求項1乃至の何れか1項に記載の透析液供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記強制排液処理の際、前記第1液面検知センサで液体を検知しなくなるまで前記貯槽内の透析液を排出する、
請求項に記載の透析液供給装置。
【請求項6】
供給される透析用水の流量を検出する給水流量計を備え、
前記制御部は、前記追加希釈処理の際、前記給水流量計が検出する流量に基づき、前記追加希釈処理の際に前記貯槽に貯留する透析液の量を制御する、
請求項1乃至の何れか1項に記載の透析液供給装置。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか1項に記載の透析液供給装置と、
患者に透析治療を施すための血液浄化器に応じて複数設置され、前記透析液供給装置から供給された透析液を各血液浄化器に供給するための透析装置と、を備えた、
血液浄化システム。
【請求項8】
前記透析液供給装置は、前記各透析装置の稼働状況を検知できるように構成されており、
前記制御部は、前記透析装置の稼働台数が0台であるとき、透析液の調整を停止する、
請求項に記載の血液浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液供給装置及び血液浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化システム(透析治療用セントラルシステム)において、透析液を調製し各透析装置(透析用監視装置)に供給する透析液供給装置が用いられている。透析液供給装置では、調製した透析液を貯槽に貯留し、貯槽内の透析液を各透析装置に供給する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-23324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透析液供給装置において、貯槽に透析液を長時間貯留すると、透析液の組成が変化し劣化してしまう。そのため、劣化した透析液を貯槽から排液する必要がある。しかしながら、排液される透析液は無駄となるため、透析液の排液量をできるだけ少なくすることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、透析液の排液量を低減可能な透析液供給装置及び血液浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することを目的として、請求項1に係る発明は、供給された透析用水で透析液原液を希釈し透析液を調製する透析液調製部と、前記透析液調製部が調製した透析液を貯留する貯槽を有する透析液送液部と、通常時に、前記貯槽内の液面高さが第1高さよりも低いときに前記透析液調製部による透析液の調製を開始させ、前記貯槽内の液面高さが前記第1高さよりも高い第2高さ以上となったとき透析液の調製を停止する制御部と、を備え、前記制御部は、前記透析液の調製の停止からの経過時間が所定の閾値以上となったとき、前記貯槽内の透析液の劣化を判定するための劣化判定条件を満たしたと判定して前記貯槽内の透析液を強制排液する強制排液処理を行うように構成され、かつ、前記制御部は、前記強制排液処理の後、前記貯槽内の液面高さが、前記第1高さより高く前記第2高さより低い液面高さとなり、前記貯槽に貯留する透析液の量が前記通常時よりも少なくなるように、前記透析液調製部に透析液を調製させる追加希釈処理を行うように構成されている、透析液供給装置である。
【0008】
請求項に係る発明は、前記制御部は、前記追加希釈処理を行った後に、前記強制排液処理が行われることなく前記貯槽内の液面高さが第1高さよりも低くなったとき、前記第2 高さまで透析液を貯留するように前記透析液調製部を制御する、請求項1に記載の透析液供給装置である。
【0009】
請求項に係る発明は、前記制御部は、前記追加希釈処理を行った後に、再び前記強制排液処理が行われた場合、当該強制排液処理後に再び前記追加希釈処理を行う、請求項1又は2に記載の透析液供給装置である。
【0010】
請求項に係る発明は、前記貯槽内の前記第1高さに液体が存在するかを検出可能な第1液面検知センサと、前記貯槽内の前記第2高さに液体が存在するかを検出可能な第2液面検知センサと、を備え、前記制御部は、前記第1液面検知センサが液体を検知しないときに前記透析液調製部による透析液の調製を開始させ、前記第2液面検知センサが液体を検知したときに前記透析液調製部による透析液の調製を停止させる、請求項1乃至の何れか1項に記載の透析液供給装置である。
【0011】
請求項に係る発明は、前記制御部は、前記強制排液処理の際、前記第1液面検知センサで液体を検知しなくなるまで前記貯槽内の透析液を排出する、請求項に記載の透析液供給装置である。
【0012】
請求項に係る発明は、供給される透析用水の流量を検出する給水流量計を備え、前記制御部は、前記追加希釈処理の際、前記給水流量計が検出する流量に基づき、前記追加希釈処理の際に前記貯槽に貯留する透析液の量を制御する、請求項1乃至の何れか1項に記載の透析液供給装置である。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項1乃至の何れか1項に記載の透析液供給装置と、患者に透析治療を施すための血液浄化器に応じて複数設置され、前記透析液供給装置から供給された透析液を各血液浄化器に供給するための透析装置と、を備えた、血液浄化システムである。
【0014】
請求項に係る発明は、前記透析液供給装置は、前記各透析装置の稼働状況を検知できるように構成されており、前記制御部は、前記透析装置の稼働台数が0台であるとき、透析液の調整を停止する、請求項に記載の血液浄化システムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1,に係る発明によれば、透析液の劣化を容易に判定でき、透析液の排液量を低減可能な透析液供給装置及び血液浄化システムを提供できる。
【0017】
請求項に係る発明によれば、追加希釈処理を行った後に透析液の使用量が増えた際に、透析液を第2高さまで貯留する通常時の制御に戻ることができる。
【0018】
請求項に係る発明によれば、強制排液処理が繰り返し行われる場合であっても、透析液の排液量を低減できる。
【0019】
請求項に係る発明によれば、貯槽内の液面高さを簡単な構成で検知でき、貯槽内に貯留する透析液の量を容易に制御できる。
【0020】
請求項に係る発明によれば、強制排液処理を容易に実現できる。
【0021】
請求項に係る発明によれば、前記追加希釈処理の際に貯槽に貯留する透析液の量を、液面検知センサを追加することなく制御可能になる。
【0022】
請求項に係る発明によれば、透析装置が稼働していない場合に、透析液を作り続けてしまうことが抑制され、透析液の無駄を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)は本発明の一実施の形態に係る血液浄化システムの概略構成図であり、(b)は本発明の一実施の形態に係る透析液供給装置の概略構成図である。
図2】(a),(b)は、透析液供給装置の動作を説明する説明図である。
図3】制御部の制御フローを示すフロー図である。
図4】制御部の制御フローの一変形例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
(血液浄化システム)
図1(a)は本実施の形態に係る血液浄化システムの概略構成図である。図1(a)に示すように、血液浄化システム10は、本実施の形態に係る透析液供給装置1と、複数の透析装置(透析用監視装置)11と、を備えている。
【0026】
透析液供給装置1は、供給された透析用水を用いて所定濃度の透析液を調製し、調製した透析液を各透析装置11に供給するものである。透析液供給装置1で調製された透析液は、透析液供給ライン12を介して各透析装置11に供給される。透析液供給装置1の詳細については後述する。
【0027】
透析装置11は、患者に透析治療を施すための血液浄化器(ダイアライザ、不図示)に応じて複数設置され、透析液供給装置1から供給された透析液を各血液浄化器に供給するためものである。血液浄化器から排出された老廃物等を含んだ透析液は、図示しない排液流路へと排出される。
【0028】
本実施の形態に係る血液浄化システム10では、信号線13を介して、透析液供給装置1と各透析装置11とが通信可能に構成されており、透析液供給装置1において、各透析装置11の稼働状況を検知できるようになっている。なお、透析液供給装置1、各透析装置11間の通信形態はこれに限定されず、例えば有線通信ではなく無線通信であってもよい。
【0029】
(透析液供給装置1)
図1(b)は本実施の形態に係る透析液供給装置1の概略構成図である。図1(b)に示すように、透析液供給装置1は、透析液調製部2と、透析液送液部3と、制御部4と、を主に備えている。
【0030】
透析液調製部2は、供給された透析用水で透析液原液を希釈し透析液を調製するものである。ここでは、透析液原液として、A原液とB原液の2種類を用いる場合を説明する。透析液調製部2は、一端から透析用水が供給される送液ライン21と、送液ライン21に設けられ供給される透析用水の流量を検出する給水流量計22と、送液ライン21を開閉することで透析用水の供給の有無を切替可能な給水弁23と、A原液を貯留するA原液タンク24からA原液を送液ライン21に注入するA原液注入ポンプ25と、B原液を貯留するB原液タンク26からB原液を送液ライン21に注入するB原液注入ポンプ27と、を備えている。
【0031】
給水弁23は電磁弁からなり、制御部4により開閉制御される。なお、給水弁23は、電動弁に置換可能である。A原液注入ポンプ25及びB原液注入ポンプ27としては、例えば、チューブをしごいて液を流動させる蠕動型のポンプを用いることができる。A原液注入ポンプ25及びB原液注入ポンプ27は、制御部4により制御される。制御部4は、給水流量計22で検出した透析用水の供給量に応じて、A原液及びB原液の注入量(A原液注入ポンプ25及びB原液注入ポンプ27の吐出量)を制御することで、所定の濃度の透析液を調製する。給水弁23を閉じると、給水流量計22で検出される透析用水の供給量がゼロとなり、これに応じてA原液及びB原液の注入量もゼロとなり、透析液の調製(あるいは透析液の希釈)が停止される。つまり、制御部4は、給水弁23の開閉により、透析液の調製の有無を制御する。
【0032】
透析液送液部3は、透析液調製部2で調製した透析液を貯留する貯槽31と、貯槽31内の透析液を送液する送液ポンプ32と、を有している。貯槽31には、送液ライン21の給水側と反対側の端部が接続されており、送液ライン21から透析液が供給されるようになっている。また、貯槽31には、各透析装置11に透析液を供給するための透析液供給ライン12が接続されている。送液ポンプ32は、透析液供給ライン12に設けられている。送液ポンプ32の下流側の透析液供給ライン12には、透析液供給ライン12を開閉可能な送液弁33が設けられている。また、一端が送液ポンプ32と送液弁33間の透析液供給ライン12に接続され、他端が貯槽31に接続された環流路34が設けられている。
【0033】
送液弁33は電動弁からなり、制御部4により開閉制御される。送液ポンプ32としては、例えば、チューブをしごいて液を流動させる蠕動型のポンプを用いることができる。送液ポンプ32は、制御部4により制御される。本実施の形態では、送液ポンプ32を常時駆動させ、送液弁33を閉じた際、あるいは透析液の供給量が少ない場合には、送液ポンプ32により送液された透析液の全部または一部を環流路34を介して貯槽31に戻すようにした。なお、送液弁33は、電磁弁に置換可能である。
【0034】
制御部4は、CPU等の演算素子、メモリ、記憶装置、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現される。制御部4は、貯槽31内の液面高さが第1高さL1よりも低いときに透析液調製部2による透析液の調製を開始させ、貯槽31内の液面高さが第1高さL1よりも高い第2高さL2以上となったとき透析液の調製を停止するように構成される。
【0035】
本実施の形態では、貯槽31の第1高さL1に設けられ貯槽内の第1高さL1に液体が存在するかを検出可能な第1液面検知センサ5と、貯槽31における第2高さL2に設けられ、貯槽31内の第2高さL2に液体が存在するかを検出可能な第2液面検知センサ6と、を備えている。第1及び第2液面検知センサ5,6としては、例えばフロートスイッチを用いることができる。
【0036】
制御部4は、図2(a)に示すように、貯槽31内の透析液が消費され、貯槽31内の液面高さが低下し、第1液面検知センサ5が液体を検知しなくなったとき(液面高さが第1高さL1よりも低くなったとき)に、給水弁23を開放して透析液の調製を開始させる。また、制御部4は、図2(b)に示すように、貯槽31内に透析液が供給され貯槽31内の液面高さが上昇し、第2液面検知センサ6が液体を検知したとき(液面高さが第2高さL2以上となったとき)に、給水弁23を閉塞して透析液の調製を停止させる。
【0037】
(強制排液処理)
本実施の形態に係る透析液供給装置1では、制御部4は、貯槽31内の透析液の劣化を判定するための所定の劣化判定条件を満たしたとき、貯槽31内の透析液を強制排液する強制排液処理を行うように構成されている。制御部4は、強制排液処理の際、第1液面検知センサ5で液面を検知しなくなるまで(貯槽31内の液面高さが第1高さL1よりも低くなるまで)貯槽31内の透析液を排出する。図1(b)では図示を省略しているが、貯槽31には貯槽31内の透析液を排出するための排出流路が接続されており、この排出流路に設けられた開閉弁を開放することで、貯槽31内の透析液が排出される。開閉弁は電動弁であってもよいし、電磁弁であってもよい。
【0038】
本実施の形態では、透析液の調製の停止から(透析液が第2高さL2まで溜められてから)の経過時間が所定の閾値以上となったときに、劣化判定条件を満たしたと判定するようにした。ただし、これに限らず、何らかの方法で透析液の組成の変化を検出し、透析液の組成の変化度合いにより透析液の劣化を判定するようにしてもよい。
【0039】
(追加希釈処理)
強制排液処理後は、液面高さが第1高さL1よりも低くなるため、制御部4により給水弁23が開放され、透析液の調製が開始されることになる。しかし、このとき、通常通り貯槽31内の液面高さが第2高さL2となるまで(貯槽31内が満水となるまで)透析液を調製すると、再び強制排液処理が行われた際に、透析液の無駄が多くなってしまう。
【0040】
そこで、本実施の形態では、制御部4は、強制排液処理の後、貯槽31内の液面高さが、第1高さL1より高く第2高さL2より低い液面高さとなるように、透析液調製部2に透析液を調製させる追加希釈処理を行うように構成されている。
【0041】
つまり、本実施の形態では、強制排液処理が行われた後は、貯槽31に貯留する透析液の量(透析液の調製量)を通常時よりも少なくしている。強制排液処理が行われた後は、透析液の使用量が少ない状態が継続し、再び強制排液処理が行われる可能性が高い。そのため、本実施の形態のように、強制排液処理後の透析液の調製量を少なくすることで、透析液が無駄に排液されてしまうことを抑制可能になる。
【0042】
追加希釈処理の際に貯留する透析液の量は、給水流量計22の検出値を基に制御されるとよい。つまり、制御部4は、追加希釈処理の際、給水弁23を開放し、給水弁23を開放してからの給水流量計22で検出される流量の積算値が所定閾値以上となったとき、給水弁23を閉塞することで、貯槽31内への透析液の貯留を行うとよい。なお、例えば、第1及び第2液面検知センサ5,6の間に第3液面検知センサを設け、追加希釈処理の際に第3液面検知センサで液体が検知されるまで透析液を貯留するように構成することも可能であるが、この場合、第3液面検知センサを新たに設ける必要が生じる。本実施の形態のように、給水流量計22の検出値を基に追加希釈処理の際に貯留する透析液の量を決定するよう構成することで、既存のハードウェア構成に変更を加えることなく、追加希釈処理を実現することができる。
【0043】
追加希釈処理を行った後に、再び強制排液処理が行われた場合には、その後に再び強制排液処理が行われる可能性が高いため、再び追加希釈処理を行うように制御部4を構成することが望ましい。また、追加希釈処理を行った後に、強制排液処理が行われることなく貯槽31内の液面高さが第1高さL1よりも低くなった場合には、第2高さL2まで透析液を貯留するように透析液調製部2を制御する(つまり通常時の制御に戻る)ように制御部4を構成するとよい。
【0044】
本実施の形態では、追加希釈処理の際に貯留する透析液の量を一定の量としたが、例えば、強制排液処理が繰り返し行われた場合に、追加希釈処理の際に貯留する透析液の量を段階的に少なくするように制御部4を構成することも可能である。
【0045】
(制御部4の制御フロー)
図3は、制御部4の制御フローを示すフロー図である。図3に示すように、透析液供給装置1を起動すると、制御部4は、まず、ステップS1にて、給水弁23を開放して透析液の希釈(調製)を開始し、透析液の貯槽31への貯留を開始する。その後、ステップS2にて、第2液面検知センサ6が液体を検知したかを判定する。ステップS2にてNOと判定された場合、ステップS2に戻り、貯槽31内の液面高さが第2高さL2以上となるまで透析液の貯留を継続する。
【0046】
ステップS2でYESと判定された場合、ステップS3にて、制御部4は、給水弁23を閉塞して透析液の希釈(調製)を停止し、ステップS4にて、タイマをリセットしスタートする。その後、ステップS5にて、第1液面検知センサ5が液体を検知したかを判定する。ステップS5でNOと判定された場合、ステップS1に戻り、透析液の希釈(調製)を開始する。
【0047】
ステップS5でYESと判定された場合、ステップS6にて、制御部4は、タイマが閾値T以上であるか(つまり劣化判定条件を満たすか)を判定する。ステップS6にてNOと判定された場合、ステップS5に戻る。
【0048】
ステップS6にてYESと判定された場合、ステップS7にて、制御部4は、強制排液処理を行う。つまり、制御部4は、第1液面検知センサ5で液体が検知されなくなるまで、貯槽31内の透析液を排液する。その後、ステップS8にて、制御部4は、追加希釈処理を行う。つまり、制御部4は、第1高さL1より高く第2高さL2より低い液面高さとなるように、透析液調製部2に透析液を調製させる。その後、ステップS4に戻る。
【0049】
(変形例)
上述のように、透析液供給装置1は、各透析装置11の稼働状況を検知できるように構成されているため、制御部4は、透析装置11の稼働台数が0台であるときには、透析液の調整を停止するように構成されてもよい。この場合の制御フローを図4に示す。
【0050】
図4の制御フローは、図3の制御フローにおけるステップS7とステップS8間に、透析装置11の稼働台数が0台であるかを判定するステップS9を追加したものである。ステップS9にてNOと判定された場合、ステップS8に進む。ステップS9にてYESと判定された場合、ステップS9に戻り、透析装置11の稼働台数が1台以上となるまで待つ。これにより、透析装置11が稼働していない場合には、使用しない透析液を作り続けてしまうことが抑制され、透析液の無駄をより抑制することが可能になる。
【0051】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る透析液供給装置1では、強制排液処理の後、貯槽31内の液面高さが、第1高さL1より高く第2高さL2より低い液面高さとなるように、透析液調製部2に透析液を調製させる追加希釈処理を行っている。これにより、透析液の使用量が少ない時に透析液を作りすぎないようにして、透析液の排液量を低減することができ、透析液原液と透析用水の消費量を抑えられる。その結果、透析液原液を追加する作業が減り、操作者の負担を軽減できる。
【0052】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0053】
[1]供給された透析用水で透析液原液を希釈し透析液を調製する透析液調製部(2)と、前記透析液調製部(2)が調製した透析液を貯留する貯槽(31)を有する透析液送液部(3)と、前記貯槽(31)内の液面高さが第1高さ(L1)よりも低いときに前記透析液調製部(2)による透析液の調製を開始させ、前記貯槽(31)内の液面高さが前記第1高さ(L1)よりも高い第2高さ(L2)以上となったとき透析液の調製を停止する制御部(4)と、を備え、前記制御部(4)は、前記貯槽(31)内の透析液の劣化を判定するための所定の劣化判定条件を満たしたとき、前記貯槽(31)内の透析液を強制排液する強制排液処理を行うように構成され、かつ、前記制御部(4)は、前記強制排液処理の後、前記貯槽(31)内の液面高さが、前記第1高さ(L1)より高く前記第2高さ(L2)より低い液面高さとなるように、前記透析液調製部(2)に透析液を調製させる追加希釈処理を行うように構成されている、透析液供給装置(1)。
【0054】
[2]前記制御部(4)は、前記透析液の調製の停止からの経過時間が所定の閾値以上となったとき、前記劣化判定条件を満たしたと判定する、[1]に記載の透析液供給装置(1)。
【0055】
[3]前記制御部(4)は、前記追加希釈処理を行った後に、前記強制排液処理が行われることなく前記貯槽(31)内の液面高さが第1高さ(L1)よりも低くなったとき、前記第2高さ(L2)まで透析液を貯留するように前記透析液調製部(2)を制御する、[1]または[2]に記載の透析液供給装置(1)。
【0056】
[4]前記制御部(4)は、前記追加希釈処理を行った後に、再び前記強制排液処理が行われた場合、当該強制排液処理後に再び前記追加希釈処理を行う、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の透析液供給装置(1)。
【0057】
[5]前記貯槽(31)内の前記第1高さ(L1)に液体が存在するかを検出可能な第1液面検知センサ(5)と、前記貯槽(31)内の前記第2高さ(L2)に液体が存在するかを検出可能な第2液面検知センサ(6)と、を備え、前記制御部(4)は、前記第1液面検知センサ(5)が液体を検知しないときに前記透析液調製部(2)による透析液の調製を開始させ、前記第2液面検知センサ(6)が液体を検知したときに前記透析液調製部(2)による透析液の調製を停止させる、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の透析液供給装置(1)。
【0058】
[6]前記制御部(4)は、前記強制排液処理の際、前記第1液面検知センサ(5)で液体を検知しなくなるまで前記貯槽(31)内の透析液を排出する、[5]に記載の透析液供給装置(1)。
【0059】
[7]供給される透析用水の流量を検出する給水流量計(22)を備え、前記制御部(4)は、前記追加希釈処理の際、前記給水流量計(22)が検出する流量に基づき、前記追加希釈処理の際に前記貯槽(31)に貯留する透析液の量を制御する、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の透析液供給装置(1)。
【0060】
[8][1]乃至[7]の何れか1項に記載の透析液供給装置(1)と、患者に透析治療を施すための血液浄化器に応じて複数設置され、前記透析液供給装置(1)から供給された透析液を各血液浄化器に供給するための透析装置(11)と、を備えた、血液浄化システム(10)。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…透析液供給装置
2…透析液調製部
22…給水流量計
3…透析液送液部
31…貯槽
32…送液ポンプ
4…制御部
5…第1液面検知センサ
6…第2液面検知センサ
10…血液浄化システム
11…透析装置
図1
図2
図3
図4