(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】液体口腔用組成物および口腔洗浄方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20230315BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230315BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q11/00
A61K8/73
(21)【出願番号】P 2019086598
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018093934
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 玉
(72)【発明者】
【氏名】阪梨 健太
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-519199(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/180019(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘剤と研磨剤とを含み、
20℃における粘度が20~500mPa・sであり、
前記研磨剤の平均粒子径D90(μm)と前記研磨剤の濃度C(質量%)との積Pが0.5~10であ
り、
前記増粘剤は、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナンまたはジェランガムのうち、少なくともいずれかを含み、
前記研磨剤は、パール顔料を含み、
前記パール顔料は、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔または酸化チタン被覆着色雲母のうち、少なくともいずれかを含む、液体口腔用組成物。
【請求項2】
前記増粘剤は、キサンタンガムを含み、
前記キサンタンガムは、液体口腔用組成物中、0.05~0.35質量%含まれる、請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
前記パール顔料は、平均粒子径D90(μm)が10~100μmである、請求項1または2記載の液体口腔用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物を用いて口腔内を洗浄する、口腔洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体口腔用組成物および口腔洗浄方法に関する。より詳細には、本発明は、使用感が優れ、かつ、優れた洗浄効果を示す液体口腔用組成物および口腔洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステイン除去効果を高めるために、研磨剤を含む口腔用組成物が開発されている。特許文献1には、増粘剤や活性剤、酸化チタンを含む歯磨剤が開示されている。特許文献2には、溶融シリカや研磨剤を含む口腔組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-149540号公報
【文献】特開2015-178521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~2に記載の組成物は、製品の流通時等において、配合成分や研磨剤が沈殿することがある。これにより、これらの組成物は、組成が変化し、充分な洗浄効果が発揮できない場合や、使用感が劣化する場合がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、使用感が優れ、かつ、優れた洗浄効果を示す液体口腔用組成物および口腔洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、口腔用組成物の粘度と、口腔用組成物に含まれる研磨剤の濃度と平均粒子径との積とが所定の数値範囲内に含まれる場合に、上記課題が好適に解決されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題を解決する本発明の液体口腔用組成物および口腔洗浄方法には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)増粘剤と研磨剤とを含み、20℃における粘度が20~500mPa・sであり、前記研磨剤の平均粒子径D90(μm)と前記研磨剤の濃度C(質量%)との積Pが0.5~10である、液体口腔用組成物。
【0008】
(2)前記増粘剤は、キサンタンガムを含み、前記キサンタンガムは、液体口腔用組成物中、0.05~0.35質量%含まれる、(1)記載の液体口腔用組成物。
【0009】
(3)前記研磨剤は、パール顔料を含み、前記パール顔料は、平均粒子径D90(μm)が10~100μmである、(1)または(2)記載の液体口腔用組成物。
【0010】
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の液体口腔用組成物を用いて口腔内を洗浄する、口腔洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用感が優れ、かつ、優れた洗浄効果を示す液体口腔用組成物および口腔洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<液体口腔用組成物>
本発明の一実施形態の液体口腔用組成物は、増粘剤と研磨剤とを含む。液体口腔用組成物は、20℃における粘度(後述する粘度V1)が20~500mPa・sである。研磨剤の平均粒子径D90(μm)と研磨剤の濃度C(質量%)との積Pは、0.5~10である。以下、それぞれについて説明する。
【0013】
(増粘剤)
増粘剤は、液体口腔用組成物の粘度を調整するために配合される。増粘剤は特に限定されない。一例を挙げると、増粘剤は、プルラン、プルラン誘導体、デンプン等の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩類(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等)、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体等)、メタアクリル酸類の共重合体(メタアクリル酸とアクリル酸n-ブチルの重合体、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの重合体およびメタアクリル酸とアクリル酸エチルの重合体等)等のセルロース系高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子物質;レクチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸トリイソプロパノールアミン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ブチルアミン、アルギン酸ジアミルアミン等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、寒天、キトサン、カラギーナン等の天然系高分子物質;コラーゲン、ゼラチン等のアミノ酸系高分子物質;アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、ジェランガム等のゴム系高分子物質等である。増粘剤は併用されてもよい。これらの中でも、増粘剤は、後述する研磨剤を適切に分散させやすく、かつ、粘度を調整しやすい点から、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、ジェランガムであることが好ましく、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガムであることがより好ましい。
【0014】
増粘剤の濃度は特に限定されない。増粘剤の濃度は、液体口腔用組成物の粘度を後述する範囲に調整するために、配合する増粘剤の種類を考慮して適宜調整される。一例を挙げると、増粘剤の濃度は、液体口腔用組成物中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、増粘剤の濃度は、液体口腔用組成物中、0.5質量%以下であることが好ましく、0.45質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
増粘剤がキサンタンガムである場合、キサンタンガムの濃度は、液体口腔用組成物中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、キサンタンガムの濃度は、0.35質量%以下であることが好ましく、0.30質量%以下であることがより好ましい。キサンタンガムの濃度が上記範囲内であることにより、得られる液体口腔用組成物は、粘度を後述する範囲に調整しやすく、かつ、使用感が優れる。
【0016】
増粘剤がカラギーナンである場合、カラギーナンの濃度は、液体口腔用組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、カラギーナンの濃度は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましい。カラギーナンの濃度が上記範囲内であることにより、得られる液体口腔用組成物は、粘度を後述する範囲に調整しやすく、かつ、使用感が優れる。
【0017】
増粘剤がジェランガムである場合、ジェランガムの濃度は、液体口腔用組成物中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、ジェランガムの濃度は、0.11質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以下であることがより好ましい。ジェランガムの濃度が上記範囲内であることにより、得られる液体口腔用組成物は、粘度を後述する範囲に調整しやすく、かつ、使用感が優れる。
【0018】
増粘剤がヒドロキシエチルセルロースである場合、ヒドロキシエチルセルロースの濃度は、液体口腔用組成物中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、ヒドロキシエチルセルロースの濃度は、0.35質量%以下であることが好ましく、0.30質量%以下であることがより好ましい。ヒドロキシエチルセルロースの濃度が上記範囲内であることにより、得られる液体口腔用組成物は、粘度を後述する範囲に調整しやすく、かつ、使用感が優れる。
【0019】
(研磨剤)
研磨剤は、液体口腔用組成物中に分散される粒子であり、歯牙を研磨したり、歯牙に光沢を付与する等の目的で配合される。
【0020】
研磨剤は特に限定されない。一例を挙げると、研磨剤は、パール顔料、含水ケイ酸、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース、ポリエチレン末、炭粒等である。研磨剤は、併用されてもよい。これらの中でも、研磨剤は、歯牙を研磨する効果や歯牙に光沢を付与する効果が優れ、かつ、沈降しても容易に再分散されやすい点から、パール顔料であることが好ましい。なお、本実施形態において、再分散性は、たとえば、液体口腔用組成物40gを50mL遠沈管に入れ、60℃3日放置後の吸光度と200rpmで20秒振とう後の吸光度(600nm)を比較し、20秒振とう後の吸光度が60℃3日間放置後の吸光度の30%を超えるものに関して、良好であると判断することができる。
【0021】
パール顔料は特に限定されない。一例を挙げると、パール顔料は、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等である。これらの中でも、パール顔料は、歯牙を研磨する効果や歯牙に光沢を付与する効果が優れる点から、酸化チタン被覆雲母であることが好ましい。
【0022】
本実施形態の研磨剤の平均粒子径D90は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、研磨剤の平均粒子径D90(μm)は、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。研磨剤の平均粒子径D90が上記範囲内であることにより、研磨剤は、液体口腔用組成物中で安定に分散されやすく、かつ、歯牙の研磨効果が優れる。なお、本実施形態において、平均粒子径D90とは、粒度分布のグラフにおいて相対粒子量90%における粒子径を意味する。また、平均粒子径D90は、たとえば、レーザー回析式粒子径分布測定装置(SALD-2300、(株)島津製作所製)を使用し、エタノールなどの溶媒に分散させて測定することができる。
【0023】
研磨剤の濃度(濃度C)は特に限定されない。研磨剤の濃度は、液体口腔用組成物の粘度を考慮して、適宜調整される。一例を挙げると、研磨剤の濃度は、液体口腔用組成物中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、研磨剤の濃度は、液体口腔用組成物中、0.4質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態の液体口腔用組成物は、上記した研磨剤の平均粒子径D90(μm)と研磨剤の濃度C(質量%)との積Pが0.5~10である。積Pは、0.5以上であればよく、0.75以上であることが好ましい。また、積Pは、10以下であればよく、8.0以下であることが好ましい。積Pが0.5未満である場合、液体口腔用組成物は、歯牙の洗浄効果が充分でない。一方、積Pが10を超える場合、製剤中の研磨剤が過剰量となり使用感が低下する場合がある。
【0025】
(任意成分)
本実施形態の液体口腔用組成物は、上記増粘剤および研磨剤のほか、液体口腔用組成物に含まれる公知の任意成分を含んでもよい。一例を挙げると、任意成分は、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、血行促進剤、湿潤剤、賦形剤、香料、甘味剤、色素、消臭剤、界面活性剤、溶剤、pH調整剤等である。
【0026】
防腐剤、殺菌剤、抗菌剤は、ヒノキチオール、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化デカリニウム、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化リゾチーム、塩酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、ヨウ化カリウム等が例示される。
【0027】
消炎剤は、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、アラントイン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、塩化ナトリウム、ビタミン類等が例示される。
【0028】
GTase阻害剤は、アカバナ科マツヨイグサ属植物の抽出物、ブドウ科ブドウ属植物の抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、タステイン、タンニン類、エラグ酸、ポリフェノール、ウーロン茶抽出物、緑茶抽出物、センブリ、タイソウ、ウイキョウ、芍薬、ゲンチアナ、センソ、龍胆、黄連等が例示される。
【0029】
プラーク抑制剤は、クエン酸亜鉛やグルコン酸等が例示される。
【0030】
知覚過敏抑制剤は、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム等が例示される。
【0031】
歯石予防剤は、リン酸塩類、ポリリン酸塩類、ゼオライト、エタンヒドロキシジホスフォネート等が例示される。
【0032】
歯質強化/再石灰化剤は、フッ素、フッ化ナトリウム、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ等が例示される。
【0033】
抗ヒスタミン剤は、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等が例示される。
【0034】
局所麻酔剤は、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等が例示される。
【0035】
血行促進剤は、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等が例示される。
【0036】
湿潤剤は、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、トリメチルグリシン、エリスリトール等が例示される。
【0037】
賦形剤は、乳糖、白糖、マンニトール、デンプン、デキストリン、結晶セルロース等が例示される。
【0038】
香料は、天然香料(ウイキョウ油等)、合成香料、これらの調合香料等が例示される。
【0039】
甘味剤は、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、アスパルテーム、スクラロース、キシリトール、水飴、蜂蜜、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、糖類(乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖等)等が例示される。
【0040】
色素は、天然色素、合成色素、これらの混合物等が例示される。
【0041】
消臭剤は、塩化亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム、コーヒー生豆抽出物、ゴボウパウダー、緑茶、焙煎米糠エキス等が例示される。
【0042】
界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の両性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤等が例示される。
【0043】
溶剤は、水、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソプロパノール等の1価アルコール等が例示される。
【0044】
pH調整剤は、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が例示される。
【0045】
これら任意成分の含有量は、液体口腔用組成物の技術分野において通常使用される範囲内において適宜設定される。
【0046】
液体口腔用組成物全体の説明に戻り、液体口腔用組成物の20℃における粘度V1は、20~500mPa・sである。粘度V1は、20mPa・s以上であればよく、50mPa・s以上であることが好ましく、100mPa・s以上であることがより好ましい。また、粘度V1は、500mPa・s以下であればよく、450mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以下であることがより好ましい。粘度V1が20mPa・s未満である場合である場合、研磨剤の歯牙への付着性が低下し、ステイン除去効果が低下する可能性がある。一方、粘度V1が500mPa・sを超える場合、使用時の感触が悪化する可能性がある。なお、本実施形態において、粘度V1(および後述する粘度V2)は、B型回転粘度計(RB80H型 東機産業(株)製、回転数50rpm)を用いて測定し得る。
【0047】
また、液体口腔用組成物の60℃における粘度V2は、12mPa・s以上であることが好ましく、30mPa・s以上であることがより好ましい。また、粘度V2は、400mPa・s以下であることが好ましく、350mPa・s以下であることがより好ましい。粘度V2が上記範囲内であることにより、液体口腔用組成物は、口腔内での歯面に対する洗浄力が高く口腔内の残りもなく、使用感が優れやすい。
【0048】
粘度V2に対する粘度V1の割合(V1/V2)は、1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。また、割合(V1/V2)は、15以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。割合(V1/V2)が上記範囲内であることにより、液体口腔用組成物は、環境温度変化による製剤の粘度変化が小さいため、洗浄力および使用感が優れる。
【0049】
本実施形態の液体口腔用組成物の25℃におけるpHは特に限定されない。一例を挙げると、pHは、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましい。また、pHは、8以下であることが好ましく、7.5以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。
【0050】
以上、本実施形態の液体口腔用組成物は、増粘剤と研磨剤とを含み、20℃における粘度V1が20~500mPa・sであり、研磨剤の平均粒子径D90(μm)と研磨剤の濃度C(質量%)との積Pが0.5~10である。このような液体口腔用組成物は、使用感が優れ、かつ、優れた洗浄効果を示す。
【0051】
<口腔洗浄方法>
本発明の一実施形態の口腔洗浄方法は、上記した液体口腔用組成物を用いて口腔内を洗浄する方法である。上記のとおり、液体口腔用組成物は、使用感が優れ、かつ、優れた洗浄効果を示す。そのため、このような液体口腔用組成物を用いて口腔内を洗浄することにより、使用者は、口腔内を清潔に保つことができ、かつ、使用時にべたつき等の不快感を感じにくい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0053】
使用した原料を以下に示す。
(増粘剤)
キサンタンガム:GRINDSTED Xanthan Clear 80、ダニスコジャパン(株)
ヒドロキシエチルセルロース:HEC ダイセル SE900、ダイセル化学工業(株)
ジェランガム:ケルコゲルLT-100、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
カラギーナン:ソアギーナ MV101、三菱ケミカルフーズ(株)
(研磨剤)
パール顔料1:Flamenco Sparkle Gold 220J、BASF社製、平均粒子径D90=77μm、酸化チタンおよびマイカを含む酸化チタン被覆雲母。
パール顔料2:Flamenco Gold 220C、BASF社製、平均粒子径D90=44μm、酸化チタンおよびマイカを含む酸化チタン被覆雲母。
パール顔料3:Cosmetica Fine Gold N-5001D、CQV社製、平均粒子径D90=25μm、酸化チタン、マイカおよび酸化スズを含む。
【0054】
(実施例1~11、比較例1~6)
表1に示される処方にしたがって、増粘剤、研磨剤、グリセリンおよび精製水を混合し、それぞれの液体口腔用組成物を調製した。20℃および60℃における液体口腔用組成物の粘度を測定した。また、以下の方法により、ステイン除去試験および官能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例12~14、比較例7~9)
表2に示される処方にしたがって、増粘剤、研磨剤、グリセリンおよび精製水を混合し、それぞれの液体口腔用組成物を調製した。20℃および60℃における液体口腔用組成物の粘度を測定した。また、以下の方法により、ステイン除去試験および官能評価を実施した。結果を表2に示す。
【0056】
<粘度測定条件>
B型回転粘度計(RB80H型、東機産業(株)製)を使用し、20℃および60℃における粘度をH2ロータを用いて測定した。測定時のロータ回転数は、50rpmとした。
【0057】
<ステイン除去試験)>
以下の方法により、変色HAP(ハイドロキシアパタイト板)を作製し、ステイン除去試験を行った。まず、サンドペーパーでハイドロキシアパタイト板(HAP)に傷をつけた。次いで、紅茶ティーバック2袋を150mLの熱湯に5分間入れて紅茶を作製した。次いで、紅茶をエバポレーターで容量が約5分の1になるまで濃縮した。その後、HAPをそれぞれ人工唾液(5分)、1%ウシ血清アルブミン溶液(30秒)、濃縮紅茶に20分間浸漬した。その後、精製水ですすぎ、乾燥させた。このサイクルを5回繰り返しし、変色したHAPを作製した。
【0058】
得られたHAPを、37℃の供試液10mLに浸し、30秒間振盪した(Shaking Bath BW101(ヤマト科学(株))を使用し、37℃、120rpmで振とう)。その後、HAPを歯ブラシで30回ブラッシングし、水ですすぎ、乾燥させた。その後、HAPの色差を、色彩色差計(CR-231、ミノルタ(株)製)で測定し、そのb値の変化(Δb)から、以下の評価基準にしたがってステイン除去効果を評価した。
(評価基準)
Δbは、洗浄前のb値-洗浄後のb値とした。
○:Δb(検体)-Δb(コントロール)が1を超えた。
×:Δb(検体)-Δb(コントロール)が1以下であった。
【0059】
<官能評価)>
以下の方法により、各検体を被験者(男性3名、女性3名)に使用させ、使用時の感触を以下の3段階で評価させた。
(判断基準)
2:使用感(増粘剤によるとろみ、研磨剤によるなめらかさ)が適切であった。
1:上記の何れかの使用感が気になったが、使用可能であると思われた。
0:上記の少なくとも何れかの使用感に問題があったため、使用不可であると思われた。
得られた評価点の平均値より、以下の判断基準に基づいて官能評価の結果を判定した。 ○:平均値が1.5未満であった。
△:平均値が1.0~1.5であった。
×:平均値が1.0未満であった。
【0060】
【0061】
【0062】
表1に示されるように、実施例1~11の液体口腔用組成物は、いずれも優れた洗浄効果を示し、かつ、ステイン除去効果を示した。一方、積Pが0.5未満であった比較例1~2の液体口腔用組成物は、洗浄効果が劣った。また、粘度V1が500mPa・sを超えた比較例3の液体口腔用組成物は、官能評価において、とろみが強く使用時の違和感があり、使用不可であると判断された。増粘剤を含まない比較例4の液体口腔用組成物は、洗浄効果が不十分な結果であった。積Pが10を超えた比較例5の液体口腔用組成物は、研磨剤のざらつきが不快と感じられる結果であった。20℃における粘度が500mPa・sを超えた比較例6の液体口腔用組成物は、比較例3と同様とろみが過剰と感じられる結果であった。
【0063】
表2に示されるように、実施例12~14の液体口腔用組成物は、いずれも優れた洗浄効果を示し、かつ、ステイン除去効果を示した。また、これら液体口腔用組成物は、使用上の感触面でも問題のないものであった。一方、積Pが10を超えた比較例7の液体口腔用組成物は、パール顔料のざらつき感が不快感につながり、使用感が不適と判断された。20℃における粘度が500mPa・sを超えた比較例8の液体口腔用組成物は、製剤の粘性が不快に感じられて、使用感が不適と判断された。積Pが0.5未満であった比較例9の液体口腔用組成物は、充分な洗浄効果が得られなかった。