(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/16 20190101AFI20230315BHJP
G07D 11/20 20190101ALI20230315BHJP
【FI】
G07D11/16
G07D11/20
(21)【出願番号】P 2019095509
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷 淳史
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005485(JP,A)
【文献】特開2017-091216(JP,A)
【文献】特開2018-190345(JP,A)
【文献】特開2019-049791(JP,A)
【文献】特開2014-081678(JP,A)
【文献】特開2017-156990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯封紙幣を収納する収納部と、
前記帯封紙幣を払い出す出金部と、
表裏及び天地の少なくとも一方が揃っている帯封紙幣を作成する帯封部と、
出金処理時に、前記収納部から前記帯封紙幣を繰り出して、前記出金部へ払い出す制御部と、を備え、
前記制御部は、前記帯封部が作成した、表裏及び天地の少なくとも一方が揃っている第一種の帯封紙幣を前記収納部へ収納する第一処理と、外部で作成された、表裏及び天地の少なくとも一方が揃っていることが確認できない第二種の帯封紙幣を前記収納部へ収納する第二処理と、を実行し、
前記収納部内の前記帯封紙幣の収納順と、各帯封紙幣が、前記第一種の帯封紙幣であるか、前記第二種の帯封紙幣であるかを、対応づけて記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記記憶部の情報に基づいて、前記収納部から繰り出した帯封紙幣
が前記第一種の帯封紙幣
であるか、
前記第二種の帯封紙幣
であるかを判別し、
前記制御部は、前記出金処理の実行が指示された場合に、
顧客に渡す帯封紙幣を出金する第一出金処理時には、前記第一種の帯封紙幣を前記出金部に払い出す一方、前記第二種の帯封紙幣を前記出金部へ払い出すことを制限し、
顧客に渡さない帯封紙幣を出金する第二出金処理時には、前記第一種の帯封紙幣及び前記第二種の帯封紙幣を前記出金部へ払い出すことを制限しない紙幣処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第一出金処理時に、前記収納部から繰り出した帯封紙幣が、前記
第二種の帯封紙幣である場合に、当該
第二種の帯封紙幣を退避させかつ、前記
第一種の帯封紙幣を前記出金部へ払い出す請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記
第一出金処理の終了後、前記退避させた
前記第二種の帯封紙幣を、前記収納部に戻す請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記
第一出金処理
時に
、前記第一種の帯封紙幣が足りない場合に、その旨を報知する請求項1~3のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記
第一出金処理
時に
、前記第一種の帯封紙幣が足りない場合に、
前記帯封部が帯封紙幣を作成すると共に、作成した帯封紙幣を前記出金部へ払い出す請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記帯封部が帯封紙幣を作成する場合に、その旨を報知する請求項5に記載の紙幣処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記
第一出金処理
時に
、前記第一種の帯封紙幣が足りない場合に、
前記帯封部が帯封紙幣を作成するか、
前記第二種の帯封紙幣の払い出しを許容するかを、操作者に選択させる請求項5又は6に記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バラ紙幣処理ユニットと束紙幣処理ユニットとを備えた紙幣処理装置が記載されている。バラ紙幣処理ユニットは、スイッチバック方式の第一反転部と、スパイラル方式の第二反転部とを備えている。紙幣を第一反転部と第二反転部との両方を通過させると、紙幣の表裏及び天地の両方を揃えることができる。束紙幣処理ユニットは、バラ紙幣処理ユニットから、表裏及び天地の両方が揃った紙幣を受け取って帯封紙幣を作成する。出金処理時に、束紙幣処理ユニットが出金する帯封紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されている束紙幣処理ユニットの収納部には、前述したように、表裏及び天地の両方が揃った紙幣から作成した帯封紙幣を収納する以外にも、当該束紙幣処理ユニットとは別の装置が作成した帯封紙幣を収納することができる。外部で作成した帯封紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っているとは限らない。外部で作成した帯封紙幣を収納部に収納すると、束紙幣処理ユニットが出金する帯封紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っているとは限らない。
【0005】
例えば、顧客に渡す帯封紙幣は、紙幣の表裏及び天地の両方が揃った帯封紙幣にしたいという要求があるが、特許文献1に記載されている束紙幣処理ユニットは、出金する帯封紙幣が表裏及び天地の両方が揃っている帯封紙幣であるとは限らないため、前記要求を満足させることができない。
【0006】
ここに開示する技術は、出金処理に適合した種類の帯封紙幣を払い出す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置に関する。紙幣処理装置は、
帯封紙幣を収納する収納部と、
前記帯封紙幣を払い出す出金部と、
表裏及び天地の少なくとも一方が揃っている帯封紙幣を作成する帯封部と、
出金処理時に、前記収納部から前記帯封紙幣を繰り出して、前記出金部へ払い出す制御部と、を備え、
前記制御部は、前記帯封部が作成した、表裏及び天地の少なくとも一方が揃っている第一種の帯封紙幣を前記収納部へ収納する第一処理と、外部で作成された、表裏及び天地の少なくとも一方が揃っていることが確認できない第二種の帯封紙幣を前記収納部へ収納する第二処理と、を実行し、
前記収納部内の前記帯封紙幣の収納順と、各帯封紙幣が、前記第一種の帯封紙幣であるか、前記第二種の帯封紙幣であるかを、対応づけて記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部の情報に基づいて、前記収納部から繰り出した帯封紙幣が前記第一種の帯封紙幣であるか、前記第二種の帯封紙幣であるかを判別し、
前記制御部は、前記出金処理の実行が指示された場合に、顧客に渡す帯封紙幣を出金する第一出金処理時には、前記第一種の帯封紙幣を前記出金部に払い出す一方、前記第二種の帯封紙幣を前記出金部へ払い出すことを制限し、顧客に渡さない帯封紙幣を出金する第二出金処理時には、前記第一種の帯封紙幣及び前記第二種の帯封紙幣を前記出金部へ払い出すことを制限しない。
【0008】
この構成によると、紙幣処理装置は、出金処理に適合する種類の帯封紙幣を、出金部へ払い出すことができる。
【0009】
つまり、顧客には、表裏及び天地の少なくとも一方が揃った帯封紙幣を渡すことができる。顧客に渡さない帯封紙幣(例えば金融機関の店舗内で使用する紙幣)は、速やかに出金することができる。
【0010】
制御部は、記憶部の情報に基づいて、第一種の帯封紙幣と第二種の帯封紙幣とを判別することができる。
【0011】
前記制御部は、前記第一出金処理時に、前記収納部から繰り出した帯封紙幣が、前記第二種の帯封紙幣である場合に、当該第二種の帯封紙幣を退避させかつ、前記第一種の帯封紙幣を前記出金部へ払い出す、としてもよい。
【0012】
こうすることで、出金処理に適合しない種類の帯封紙幣を、出金部へ払い出さないことができる。
【0013】
前記制御部は、前記第一出金処理の終了後、前記退避させた前記第二種の帯封紙幣を、前記収納部に戻す、としてもよい。
【0014】
収納部に戻した帯封紙幣を、次回以降の出金処理時に、出金部へ払い出すことが可能になる。
【0015】
前記制御部は、前記第一出金処理時に、前記第一種の帯封紙幣が足りない場合に、その旨を報知する、としてもよい。
【0016】
操作者は、第一出金処理に適合する種類の帯封紙幣が足りないことを認識することができる。
【0017】
前記制御部は、前記第一出金処理時に、前記第一種の帯封紙幣が足りない場合に、前記帯封部が帯封紙幣を作成すると共に、作成した帯封紙幣を前記出金部へ払い出す、としてもよい。
【0018】
これにより、第一出金処理に適合する種類の帯封紙幣を、不足無く出金部へ払い出すことができる。
【0019】
前記制御部は、前記帯封部が帯封紙幣を作成する場合に、その旨を報知する、としてもよい。
【0020】
帯封紙幣の作成には時間を要するが、操作者は、そのことを理解することができる。
【0021】
前記制御部は、前記第一出金処理時に、前記第一種の帯封紙幣が足りない場合に、前記帯封部が帯封紙幣を作成するか、前記第二種の帯封紙幣の払い出しを許容するかを、操作者に選択させる、としてもよい。
【0022】
これにより、操作者の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、前記の紙幣処理装置によると、出金処理に適合した帯封紙幣を出金することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、貨幣処理装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、貨幣処理装置の構成を例示するブロック図である。
【
図3】
図3は、バラ紙幣処理ユニットの内部構成を例示する図である。
【
図4】
図4は、紙幣の天地方向及び左右方向を説明する図である。
【
図5】
図5は、紙幣の表裏及び天地の両方を揃えるときの、スイッチバック反転部及びスパイラル反転部の動作を説明する図である。
【
図6】
図6は、帯封紙幣処理ユニットの内部構成を例示する図である。
【
図7】
図7の左図は、第一装填処理時における、バラ紙幣処理ユニット内の紙幣の搬送経路を説明する図であり、右図は、第二装填処理時における、バラ紙幣処理ユニット内の紙幣の搬送経路を説明する図である。
【
図8】
図8の左図は、第一装填処理及び第二装填処理時における、帯封紙幣処理ユニット内の紙幣の搬送経路を説明する図であり、右図は、第三装填処理時における、帯封紙幣処理ユニット内の紙幣の搬送経路を説明する図である。
【
図9】
図9は、記憶部が記憶している収納情報を概念的に示す図である。
【
図10】
図10は、出金処理に係る制御手順を例示するフローチャートである。
【
図11】
図11は、出金処理に係る画面の遷移を例示する図である。
【
図12】
図12は、出金処理時の、帯封紙幣の搬送経路を説明する図である。
【
図13】
図13の上図は、出金処理に時間を要する場合に表示される画面例、下図は、出金処理に適合する帯封紙幣が不足している場合に表示される画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、紙幣処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明は、紙幣処理装置の一例である。
図1及び
図2は、紙幣処理装置を含む貨幣処理装置1の構成例を示している。
【0028】
(貨幣処理装置の全体構成)
図1は、貨幣処理装置1の外観を示している。
図2は、貨幣処理装置1の構成を示すブロック図である。貨幣処理装置1は、例えば銀行等の金融機関の営業店舗に設置されかつ、入金処理及び出金処理を含む各種の処理を実行する出納機である。尚、貨幣処理装置1は、金融機関に設置することには限定されない。
【0029】
貨幣処理装置1は、バラ紙幣処理ユニット100、紙幣処理装置としての帯封紙幣処理ユニット200、バラ硬貨処理ユニット300、包装硬貨処理ユニット400、損貨・記念貨処理ユニット500、有価媒体処理ユニット600、及び、貨幣保管ユニット700、及び、これらの各処理ユニット100~700を統合制御する制御部8を含んで構成されている。
【0030】
バラ紙幣処理ユニット100は、入金口に投入されたバラ紙幣を、ユニット内の収納部に収納する入金処理、及び、収納部に収納しているバラ紙幣を、出金口へ払い出す出金処理を行う。バラ紙幣処理ユニット100の構成は、後述する。
【0031】
帯封紙幣処理ユニット200は、所定枚数(例えば100枚)の紙幣を、帯封紙によって一つに束ねた帯封紙幣を作成しかつ、帯封紙幣をユニット内に収納する処理を行うと共に、収納している帯封紙幣を、ユニット外に出金する処理を行う。帯封紙幣処理ユニット200とバラ紙幣処理ユニット100とは、隣り合っている。帯封紙幣処理ユニット200の構成は、後述する。
【0032】
バラ硬貨処理ユニット300は、入金口に投入されたバラ硬貨を、ユニット内の収納部に収納する入金処理、及び、収納部に収納しているバラ硬貨を、出金口へ払い出す出金処理を行う。
【0033】
包装硬貨処理ユニット400は、所定枚数(例えば50枚)の硬貨を円筒形状に包装した包装硬貨を作成しかつ、包装硬貨をユニット内に収納する処理を行うと共に、収納している包装硬貨を、ユニット外に出金する処理を行う。包装硬貨処理ユニット400とバラ硬貨処理ユニット300とは、隣り合っている。
【0034】
損貨・記念貨処理ユニット500は、傷みや汚れがひどいため、バラ硬貨処理ユニット300で処理することができないバラ硬貨(つまり、損貨)、及び、バラ硬貨処理ユニット300が処理対象としていない記念硬貨等をユニット内に収納する入金処理を行う。損貨・記念貨処理ユニット500は、有価媒体処理ユニット600の上面に配置されている。
【0035】
有価媒体処理ユニット600は、傷みや汚れがひどいため、バラ紙幣処理ユニット100で処理することができないバラ紙幣(つまり、損券)、及び、バラ紙幣処理ユニット100が処理対象としていない小切手等の有価媒体をユニット内に収納する入金処理を行う。
【0036】
貨幣保管ユニット700は、紙幣や硬貨、又は、有価証券類等を保管する収納ドロワを複数備えている。操作者は、収納ドロワを開閉することによって、収納ドロワに紙幣等を収納したり、収納ドロワから紙幣等を取り出したりすることができる。
【0037】
制御部8は、バラ紙幣処理ユニット100、帯封紙幣処理ユニット200、バラ硬貨処理ユニット300、包装硬貨処理ユニット400、損貨・記念貨処理ユニット500、有価媒体処理ユニット600、貨幣保管ユニット700を制御することによって、銀行の営業店舗における貨幣の出入の管理を行う。貨幣処理装置1は、当該貨幣処理装置1に収納されている紙幣及び硬貨だけでなく、営業店舗の金庫に保管している貨幣の在高、及び、手持ち管理の貨幣の在高の管理も行う。
【0038】
貨幣処理装置1はまた、第一ターミナル部41、第二ターミナル部42、プリンタ50、及び、記憶部51を備えている。
【0039】
第一ターミナル部41は、包装硬貨処理ユニット400の上面に配置されており、第二ターミナル部42は、帯封紙幣処理ユニット200の上面に配置されている。第一ターミナル部41及び第二ターミナル部42は同じ構成を有している。第一ターミナル部41及び第二ターミナル部42はそれぞれ、例えばタッチパネル式の表示操作部を有し、操作者に向けて情報を表示すると共に、操作者の操作を受け付ける。表示操作部は、表示を行う表示部と、操作者の操作を受け付ける操作部とに分けてもよい。第一ターミナル部41及び第二ターミナル部42はまた、操作者の認証を行うために、カード情報を読み取るカードリーダを有している。
【0040】
プリンタ50は、例えば感熱式プリンタや、インクジェットプリンタによって構成される。プリンタ50は、取引を行う毎に伝票の印刷をしたり、各種のジャーナルの印刷を行ったりする。プリンタ50は、バラ紙幣処理ユニット100の上面と、バラ硬貨処理ユニット300の上面とのそれぞれに配置されている。
【0041】
記憶部51は、例えばハードディスクドライブや、不揮発性メモリによって構成されている。記憶部51は、貨幣処理装置1において収納している紙幣及び硬貨の在高情報を記憶している。記憶部51はまた、貨幣処理装置1が行った取引の情報を記憶している。
【0042】
(バラ紙幣処理ユニットの構成)
図3は、バラ紙幣処理ユニット100の構成を例示している。バラ紙幣処理ユニット100には、バラ紙幣を出金するための出金口101とバラ紙幣を入金するための入金口102が設けられている。
【0043】
バラ紙幣処理ユニット100は、入金部103と、入金リジェクト部104と、出金部105と、出金リジェクト部106と、搬送部107と、入金識別部108と、出金識別部109と、スイッチバック反転部110と、スパイラル反転部111と、四つの収納部112と、四つの一時保留部113と、二つの集積部114と、運搬部115と、を備えている。
【0044】
入金部103は、入金口102につながっている。ユーザーは、入金口102を通じて入金部103にバラ紙幣を投入する。入金部103は、繰出機構103aを備えている。繰出機構103aは、入金部103に投入されたバラ紙幣を一枚ずつ繰り出す。
【0045】
入金リジェクト部104は、入金識別部108によってリジェクト紙幣と識別された紙幣を受け取る。入金リジェクト部104は、入金口102につながっている。ユーザーは、入金口102を通じて入金リジェクト部104からバラ紙幣を取り出すことができる。
【0046】
出金部105は、収納部112から繰り出された紙幣を受け取る。出金部105は、出金口101につながっている。ユーザーは、出金口101を通じて出金部105からバラ紙幣を取り出すことができる。出金リジェクト部106は、主に、出金識別部109によりリジェクト紙幣と識別された紙幣を受け取る。
【0047】
搬送部107は、ベルト機構、ローラー機構等により構成されている。搬送部107は、入金部103から収納部112(正確には、後述の一時保留部113)までをつなぐ入金搬送路116と、収納部112から出金部105までをつなぐ出金搬送路117と、入金搬送路116と出金搬送路117とをつなぐ循環搬送路118及びバイパス路119と、入金リジェクト搬送路120と、二つの集積搬送路121と、出金リジェクト搬送路122と、を含んでいる。
【0048】
循環搬送路118は、出金搬送路117におけるスパイラル反転部111と集積部114との間と、入金搬送路116における入金識別部108とスイッチバック反転部110との間とをつないでいる。バイパス路119は、入金搬送路116の先端から分岐して、出金搬送路117における集積部114の上流に接続されている。入金リジェクト搬送路120は、入金搬送路116から分岐して、入金リジェクト部104に接続されている。二つの集積搬送路121はそれぞれ、出金搬送路117から分岐して、集積部114に接続されている。出金リジェクト搬送路122は、出金搬送路117から分岐して、出金リジェクト部106に接続されている。
【0049】
図4に示すように長方形状である紙幣BNは、長手の縁を前にして搬送路に沿って搬送される。搬送部107は、紙幣を一枚一枚、間隔を空けて、各搬送路に沿って搬送する。
【0050】
入金識別部108は、入金搬送路116に配設されている。より詳細に、入金識別部108は、入金搬送路116において、入金部103と、循環搬送路118の接続位置との間に配設されている。入金識別部108は、紙幣の金種、真偽、表裏、向き、正損、新旧、搬送状態等を識別する。
【0051】
出金識別部109は、出金搬送路117に配設されている。より詳細に、出金識別部109は、出金搬送路117において、収納部112と、スパイラル反転部111との間に配設されている。出金識別部109は、紙幣の金種、真偽、表裏、向き、正損、新旧、搬送状態等を識別する。
【0052】
ここで、入金識別部108及び出金識別部109が識別を行う紙幣の方向について説明をする。紙幣の方向は、紙幣の表裏と向きとの組み合わせによって、A方向、B方向、C方向及びD方向の四つの方向に定まる。紙幣の天地方向は、
図4に示すように、紙幣BNに描かれた肖像画を基準とした上下の方向である。紙幣の左右方向は、天地方向に直交する方向である。長手の縁を前にして搬送される紙幣において、天地方向は、搬送方向に一致する。左右方向は、搬送方向に直交する。尚、以下の説明において、搬送方向に直交する方向を、搬送幅方向と呼ぶ場合がある。
【0053】
図5に示すように、A方向は、紙幣が表向きでかつ、搬送方向に対して紙幣の天地方向が従う方向である。B方向は、紙幣が表向きでかつ、搬送方向に対して紙幣の天地方向が逆らう方向である。C方向は、紙幣が裏向きでかつ、搬送方向に対して紙幣の天地方向が逆らう方向である。D方向は、紙幣が裏向きでかつ、搬送方向に対して紙幣の天地方向が従う方向である。
【0054】
スイッチバック反転部110は、入金搬送路116における、循環搬送路118の接続箇所よりも下流に配置されている。スイッチバック反転部110は、入金識別部108の識別結果に応じて、紙幣の表裏及び天地方向の両方を、選択的に反転する。スイッチバック反転部110は、紙幣の表裏及び天地方向を反転させるスイッチバック方式の反転パス110aと、紙幣の表裏及び天地方向を反転することなく通過させるバイパス110bと、を有している。
【0055】
反転パス110aを通過した紙幣は、搬送幅方向の向きを変えずに、紙幣の表裏と搬送方向の向き(つまり、天地方向の向き)との両方が反転する。スイッチバック反転部110は、入金識別部108の識別結果に応じて、表裏及び天地方向の向きを反転する必要がある紙幣は、反転パス110aを通過させ、表裏及び天地方向の向きを反転する必要がない紙幣は、バイパス110bを通過させる。
【0056】
スパイラル反転部111は、出金搬送路117において、出金識別部109よりも下流かつ、循環搬送路118の接続箇所よりも上流に設けられている。スパイラル反転部111は、紙幣の搬送幅方向の向きを、選択的に反転する。スパイラル反転部111は、紙幣の搬送幅方向の向きを反転させる反転パス111aと、紙幣の搬送幅方向の向きを反転することなく通過させるバイパス111bと、を有している。反転パス111aには、紙幣を反転する反転機構111cが配設されている。バイパス111bには、バイパス路119が接続されている。反転機構111cは、この構成例では、紙幣の搬送方向に沿って伸びる軸回りに、紙幣を回転させる、いわゆるスパイラル方式に構成されている。反転機構111cは、紙幣の搬送方向に直交する搬送幅方向(つまり、紙幣の左右方向)の向きと、紙幣の表裏との両方を反転することができる。スパイラル反転部111は、スイッチバック反転部110とは機能が相違する。反転機構111cの構成の詳細は省略するが、スパイラル方式の反転機構111cは、公知の様々な構成を採用することができる。
【0057】
スパイラル反転部111は、出金識別部109の識別結果に応じて、左右方向の向きを反転する必要がある紙幣は、反転パス111aを通過させ、左右方向の向きを反転する必要がない紙幣は、バイパス111bを通過させる。反転機構111cの下流において、反転パス111aとバイパス111bとは合流する。このバラ紙幣処理ユニット100は、スイッチバック反転部110とスパイラル反転部111との二種類の反転部を備えることにより、紙幣の表裏及び天地方向の向きの両方を揃えることができる。
【0058】
ここで、
図5に示すフローを参照しながら、紙幣の表裏及び天地方向の向きを揃えるための、スイッチバック反転部110及びスパイラル反転部111の動作について説明する。ここでは、入金部103から取り込まれた紙幣がスイッチバック反転部110を通過した後、収納部112に収納される入金処理、及び、収納部112から繰り出された紙幣がスパイラル反転部111を通過した後、出金部105に投出される出金処理が行われる例において、スイッチバック反転部110及びスパイラル反転部111の動作を説明する。尚、以下の説明においては、スイッチバック反転部110及びスパイラル反転部111によって、紙幣をA方向に揃えるとする。但し、紙幣の揃えの向きは、A方向に限らず、B方向、C方向及びD方向のいずれであってもよい。
【0059】
入金部103が繰り出した紙幣は、入金識別部108によって識別される。入金識別部108の識別結果による紙幣の方向に応じて、
図5のプロセスは、ステップS41~S44に進む。つまり、紙幣がA方向であるときに、プロセスはステップS41に進み、紙幣がB方向であるときに、プロセスはステップS42に進み、紙幣がC方向であるときに、プロセスはステップS43に進み、紙幣がD方向であるときに、プロセスはステップS44に進む。
【0060】
ステップS51~S54は、スイッチバック反転部110における反転動作に係る。ステップS41に続くステップS51においては、紙幣を反転させる必要がないため、スイッチバック反転部110は、紙幣を通過させる。つまり、紙幣は、バイパス110bを通過する。紙幣の方向はA方向のままである(ステップS61参照)。ステップS42に続くステップS52において、スイッチバック反転部110は、紙幣を反転させる。つまり、紙幣は、反転パス110aを通過する。これにより、紙幣の表裏及び天地方向の向きの両方が反転し、紙幣の方向はB方向からD方向になる(ステップS62参照)。ステップS43に続くステップS53において、スイッチバック反転部110は、紙幣を反転させる。これにより、紙幣の方向はC方向からA方向になる(ステップS63参照)。ステップS44に続くステップS54において、スイッチバック反転部110は、紙幣を通過させる。紙幣の方向はD方向のままである(ステップS64参照)。スイッチバック反転部110は、紙幣の天地を揃えている。つまり、スイッチバック反転部110を通過した紙幣の方向は、特定の方向(A方向又はD方向)を向いている。スイッチバック反転部110を通過した紙幣は、収納部112に収納される。収納部112は、特定の方向を向いた紙幣を収納している。
【0061】
収納部112が繰り出した紙幣は、出金識別部109によって識別される。
図5のプロセスは、ステップS51、S52、S53、及びS54に対応して、ステップS61、S62、S63、及びS64に分かれる。紙幣は、前述したように、A方向又はD方向である。
【0062】
ステップS71~74は、スパイラル反転部111における反転動作に係る。ステップS61に続くステップS71においては、紙幣を反転させる必要がないため、スパイラル反転部111は、紙幣を通過させる。つまり、紙幣は、バイパス111bを通過する。紙幣の方向はA方向のままである。ステップS62に続くステップS72において、スパイラル反転部111は、紙幣を反転させる。つまり、紙幣は、反転パス111aを通過する。これにより、紙幣の表裏及び左右方向の向きの両方が反転し、紙幣の方向はD方向からA方向になる。ステップS63に続くステップS73において、スパイラル反転部111は、紙幣を通過させる。これにより、紙幣の方向はA方向のままになる。ステップS64に続くステップS74において、スパイラル反転部111は、紙幣を反転させる。紙幣の方向はD方向からA方向になる。こうして、紙幣の方向は全てA方向に揃う。
【0063】
収納部112は、入金された紙幣を金種別に収納するために利用される。たとえば、四つの収納部112のそれぞれに対し、一万円、千円、5千円、及び、混合の金種が割り当てられている。収納部112内には、紙幣が上下に積まれるように収納される。収納部112には、その天面に紙幣の入口が形成され、その底面に紙幣の出口が形成される。収納部112には、その底面側に繰出部112aが設けられている。繰出部112aは、収納部112内の紙幣を、一枚ずつ出金搬送路117に繰り出すことができる。収納部112は、先に入れた紙幣を先に出す、いわゆる先入れ先出しに構成されている。尚、混合金種の収納部112には、対応する金種別の収納部112に収納できないオーバーフロー紙幣や、金種を識別できるものの払出しには適さない損傷紙幣(損券)や、対応する収納部112が設けられていない2千円紙幣等が収納される。
【0064】
一時保留部113は、対応する収納部112の上方に配置される。一時保留部113は、収納部112に収納される紙幣を、その収納前に一時的に収納する。四つの一時保留部113には、入金搬送路116が分岐して接続されている。一時保留部113に収納された紙幣は、対応する収納部112へ送られる。一時保留部113はまた、手動で、バラ紙幣処理ユニット100の外に引き出すことができる。ユーザーは、一時保留部113に収納されている紙幣を手で取り出すことができる。
【0065】
各集積部114は、所定の帯封枚数(通常は、100枚)となるまで、紙幣を集積する。運搬部115は、一対のアームを備えている。運搬部115は、集積部114に集積されているバラ紙幣を、一対のアームで挟んで集積部114内から取り出し、後述する帯封紙幣処理ユニット200の帯封部201へ運搬する。
【0066】
(帯封紙幣処理ユニットの構成)
図6は、帯封紙幣処理ユニット200の構成を例示している。帯封紙幣処理ユニット200は、帯封部201と、第一搬送部202と、昇降部203と、第二搬送部204と、五つのスタッカ205と、を備える。
【0067】
帯封部201は、運搬部115の前方に設けられ、運搬部115によって搬送されてきたバラ紙幣の束を、帯封紙によって帯封することで帯封紙幣を作成する。帯封部201は、帯封紙に印刷を行う印刷部201aを有している。印刷部201aは、帯封紙に印字を行う印字部及び帯封紙にスタンプを押す押印部を含んでいる。
【0068】
第一搬送部202は、帯封部201の前方に設けられている。第一搬送部202は、前後方向に延びる上下一対のベルトユニット202aを有している。第一搬送部202は、上下一対のベルトユニット202aの間に帯封紙幣を挟んで、前方の昇降部203へ帯封紙幣を搬送する。
【0069】
昇降部203は、帯封紙幣処理ユニット200の前面に沿うように上下に延びる昇降スペース203aと、帯封紙幣を載置した状態で、昇降スペース203a内を昇降するリフト203bとを含んでいる。昇降スペース203aは、その上部において入出金口206につながり、その下部において投出口207につながる。リフト203bは、投出口207の位置を待機位置とし、この待機位置と第一搬送部202及び入出金口206がある上限位置との間を昇降する。
【0070】
リフト203bは、ベースと、ベース上に積層されかつ、ベースに対して傾斜可能な載置板とを備える。帯封紙幣を載せたリフト203bが待機位置にあるときに載置板が傾斜すると、帯封紙幣が載置板から滑り落ちて投出口207から投出される。また、リフト203bは、第一搬送部202から帯封紙幣を受け取り、受け取った帯封紙幣を第二搬送部204まで搬送する。さらに、リフト203bは、第二搬送部204から帯封紙幣を受け取り、受け取った帯封紙幣を入出金口206や投出口207の位置まで搬送する。
【0071】
第二搬送部204は、前後に離れて配置された一対のローラー204aの間に架け渡されたベルトによって構成されている。ベルトは、
図6における時計回りと反時計回りの双方に周回することができる。ベルトには、複数の突起が等間隔で形成されている。ベルトの周回に伴って突起が前後に移動することにより、ベルトの下方に設けられた束搬送路204bの上を、突起に押されて帯封紙幣が移動する。
【0072】
ベルトの前端部は、昇降スペース203a内に張り出している。第二搬送部204には、一対のローラー204aの間に、支点ローラー204cが設けられており、ベルトは、前側のローラー204aと支点ローラー204cとの間の部分が、支点ローラー204cを支点として、昇降スペース203a内に進出する進出位置と昇降スペース203a内から退避する退避位置との間で回動する(二点鎖線の矢印参照)。リフト203bが第一搬送部202側から降下するときには、ベルトが退避位置に退避するため、リフト203bの降下が邪魔されない。一方、リフト203bが束搬送路204bの高さ位置まで降下して停止すると、ベルトが進出位置に進出する。これにより、リフト203bに載せられた帯封紙幣を束搬送路204bへ移動させたり、束搬送路204bを搬送された帯封紙幣をリフト203bに載せたりすることが可能となる。
【0073】
スタッカ205は、帯封部201により生成された帯封紙幣を金種別に収納するために利用される。たとえば、5つのスタッカ205のそれぞれに対し、一括(混合)、一万円、一万円、5千円、及び、千円の金種が割り当てられている。スタッカ205内には、帯封紙幣が上下に積まれるように収納される。収納された帯封紙幣を昇降させるため、スタッカ205内に昇降ステージ205aが設けられている。尚、一括(混合)のスタッカ205には、対応する金種別のスタッカ205に収納できなかったオーバーフロー帯封紙幣等が収納される。
【0074】
束搬送路204bには、各スタッカ205の上方にシャッターにより開閉される出入口が設けられている。束搬送路204bからスタッカ205へ帯封紙幣を収納する際やスタッカ205から束搬送路204bへ帯封紙幣を送り出す際にシャッターが開放され、出入口が開く。出入口を通じてスタッカ205に帯封紙幣が出し入れされる。一方、シャッターが閉鎖された状態では、上面を帯封紙幣が通過する。また、束搬送路204bには、帯封紙幣の、少なくとも金種を識別するための識別部204dが、帯封紙幣の上面及び下面のそれぞれに対応して配設されている。
【0075】
(帯封紙幣処理ユニットの装填処理)
以下、帯封紙幣処理ユニット200のスタッカ205へ帯封紙幣を装填する装填処理について説明をする。この貨幣処理装置1は、装填処理として、第一装填処理、第二装填処理及び第三装填処理の三種類の装填処理を行うことが可能である。
【0076】
(第一装填処理)
第一装填処理は、バラ紙幣処理ユニット100の収納部112から繰り出した紙幣を帯封紙幣処理ユニット200へと送り、帯封紙幣処理ユニット200が作成した帯封紙幣を、スタッカ205に装填する処理である。
【0077】
図7の左図は、第一装填処理時のバラ紙幣処理ユニット100における紙幣の搬送経路を例示している。ここで、バラ紙幣処理ユニット100の収納部112に収納されている紙幣は、スイッチバック反転部110を通過した紙幣であり、その方向は、
図5に示したように、A方向又はD方向である。
【0078】
装填対象の紙幣を収納している収納部112の繰出部112aは、収納部112から紙幣を一枚ずつ繰り出す。
図7に黒矢印で示すように、搬送部107は、出金搬送路117に沿って、紙幣を一枚ずつ搬送する。出金識別部109は、紙幣の識別を行う。スパイラル反転部111は、反転が必要な紙幣を選択的に反転させる。これにより、スパイラル反転部111を通過した紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っている(全てA方向)。搬送部107はその後、紙幣を、出金搬送路117及び集積搬送路121を通じて、集積部114へ搬送する。こうして、表裏及び天地の両方が揃った紙幣が集積部114に集積される。尚、出金識別部109がリジェクト紙幣と識別した紙幣は、搬送部107によって、出金リジェクト部106へ搬送される。
【0079】
集積部114に帯封枚数分の紙幣が集積されると、運搬部115が紙幣の束を集積部114から取り出して、帯封紙幣処理ユニット200の帯封部201へ運搬する。
図8の左図は、第一装填処理時における、帯封紙幣処理ユニット200内の紙幣の搬送経路を例示している。運搬部115から紙幣の束を受け取った帯封部201は、帯封紙幣を作成する。作成された帯封紙幣は、第一搬送部202、昇降部203、及び第二搬送部204を通じて、金種に対応するスタッカ205に収納される。こうして、第一装填処理時には、紙幣の表裏及び天地の両方が揃った帯封紙幣が、スタッカ205に収納(つまり、装填)される。
【0080】
(第二装填処理)
図7の右図は、第二装填処理時における紙幣の搬送経路を示している。第二装填処理は、バラ紙幣処理ユニット100の入金部103に投入されたバラ紙幣を帯封紙幣処理ユニット200へと送り、帯封紙幣処理ユニット200が作成した帯封紙幣を、スタッカ205に収納する処理である。
【0081】
図7の右図に黒矢印で示すように、搬送部107は、入金部103から繰り出された紙幣を、入金搬送路116に沿って入金識別部108へ搬送する。入金識別部108は、紙幣の識別を行う。スイッチバック反転部110は、入金識別部108の識別結果に基づいて、反転が必要な紙幣を選択的に反転させる。入金処理時とは異なり、スイッチバック反転部110は、紙幣の表裏を揃えてもよい。そうすることで、少なくとも表裏が揃った帯封紙幣を、帯封紙幣処理ユニット200のスタッカに収納することができる。尚、入金識別部108がリジェクト紙幣と識別した紙幣は、搬送部107によって、入金リジェクト搬送路120を通じて、入金リジェクト部104へ搬送される。例えば装填対象の金種以外の金種の紙幣は、リジェクト紙幣として入金リジェクト部104へ搬送される。
【0082】
搬送部107は、スイッチバック反転部110を通過した紙幣を、バイパス路119から、出金搬送路117及び集積搬送路121を通って、集積部114へ搬送する。集積部114には、少なくとも表裏が揃った紙幣が集積される。
【0083】
集積部114に帯封枚数分の紙幣が集積されると、運搬部115が紙幣の束を集積部114から取り出して、帯封紙幣処理ユニット200の帯封部201へ運搬する。その後は、第一装填処理と同じである。つまり、
図8の左図に示すように、運搬部115から紙幣の束を受け取った帯封部201は、帯封紙幣を作成する。作成された帯封紙幣は、第一搬送部202、昇降部203、及び第二搬送部204を通じて、金種に対応するスタッカ205に収納される。こうして、第二装填処理時には、紙幣の、少なくとも表裏が揃った帯封紙幣が、スタッカ205に収納(つまり、装填)される。
【0084】
(第三装填処理)
第三装填処理は、帯封紙幣処理ユニット200が帯封紙幣を作成するのではなく、既に作成されている帯封紙幣を、帯封紙幣処理ユニット200のスタッカ205に装填する処理である。
【0085】
図8の右図は、第三装填処理時の、帯封紙幣処理ユニット200における紙幣の搬送経路を例示している。操作者は、装填対象の帯封紙幣を、入出金口206を通じて、昇降部203のリフト203bに置く。
【0086】
昇降部203及び第二搬送部204は、リフト203bに置かれた帯封紙幣を、スタッカ205へ搬送する。スタッカ205は、識別部204dの識別結果に基づいて、金種別に、帯封紙幣を収納する。
【0087】
第三装填処理時にスタッカ205に装填される帯封紙幣は、帯封紙幣処理ユニット200で作成されたものではない。そのため、貨幣処理装置1は、当該帯封紙幣の表裏及び天地に両方が揃っているか、又は、少なくとも表裏が揃っているかを確認(又は保証)することができない。以下の説明では、第一装填処理時にスタッカ205に装填された帯封紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っていることが確認できるため、「揃い束」と呼ぶ場合がある。揃い束は第一種の帯封紙幣に相当する。また、第二装填処理時にスタッカ205に装填された帯封紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っていない可能性があり、第三装填処理時にスタッカ205に装填された帯封紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っていることが確認できない。これらの帯封紙幣は、「非揃い束」と呼ぶ場合がある。非揃い束は第二種の帯封紙幣に相当する。帯封紙幣処理ユニット200のスタッカ205には、揃い束と非揃い束とが混在する。
【0088】
貨幣処理装置1は、帯封紙幣処理ユニット200のスタッカ205に収納している帯封紙幣に関する情報を、記憶部51に記憶している。
図9は、記憶部51が記憶している情報を概念的に示している。記憶部51は、装填処理を実行した際に帯封紙幣を収納したスタッカ205の情報に基づき、各スタッカ205に収納している帯封紙幣の順番と、各帯封紙幣が揃い束であるか、非揃い束であるかを対応づけて記憶している。制御部8は、記憶部51が記憶している情報に基づいて、スタッカ205から繰り出した帯封紙幣が、揃い束であるか、非揃い束であるかを判断することができる。
【0089】
(帯封紙幣の出金処理)
図10は、帯封紙幣の出金処理の制御手順を例示するフローチャートである。
図11は、出金処理の際に、第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42に表示される画面の遷移を例示する図である。
図12は、出金処理時の、帯封紙幣の搬送経路を示す図である。
【0090】
図11のD1は、貨幣処理装置1のメニュー画面を例示している。メニュー画面D1で操作者が「出金」を選択すると、第一出金処理が開始する。第一出金処理は、顧客へ渡す貨幣を出金する処理である。第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42は、第一出金処理で出金する金額等を入力するための画面D2を表示する。メニュー画面D1で操作者が「入出金」を選択すると、第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42は、入出金のメニュー画面D3を表示する。このメニュー画面D3で、操作者が「回金出金」を選択すると、第二出金処理が開始する。第二出金処理は、営業店舗内で使用する貨幣、言い替えると、顧客へ渡さない貨幣を出金する処理である。第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42は、第二出金処理で出金する金額等を入力するための画面D4を表示する。
【0091】
図10のフローチャートのスタート後のステップS1において、制御部8は、帯封紙幣の出金が指示されたか否かを判断する。ステップS1の判断がNOの場合、プロセスはステップS1を繰り返す。ステップS1の判断がYESの場合、プロセスはステップS2に進む。ステップS2で制御部8は、第一出金処理が指示されたか否かを判断する。ステップS2の判断がYESの場合、プロセスはステップS4に進む。ステップS2の判断がNOの場合、プロセスはステップS3に進む。
【0092】
ステップS3で制御部8は、第二出金処理が指示されたか否かを判断する。ステップS3の判断がYESの場合、プロセスはステップS12に進む。ステップS3の判断がNOの場合、プロセスはステップS1に戻る。
【0093】
ステップS4において、制御部8は、指定された金種の帯封紙幣を、帯封紙幣処理ユニット200のスタッカ205から繰り出す。
図12の例は、左から三番目の第3スタッカ205が帯封紙幣を繰り出している。続くステップS5で、制御部8は、
図9に例示した記憶部51の情報に基づいて、繰り出した帯封紙幣が揃い束であるか否かを判断する。揃い束である場合、プロセスはステップS6に進み、非揃い束である場合、プロセスはステップS7に進む。
【0094】
ステップS6において制御部8は、揃い束である帯封紙幣を出金するために、第二搬送部204を通じて当該帯封紙幣を昇降部203のリフト203bの上に置く。一方、ステップS7において制御部8は、非揃い束である帯封紙幣を出金しないために、当該帯封紙幣を退避させる。具体的に、
図12の例では、白矢印で示すように、帯封紙幣を、繰り出した第3スタッカ205とは異なる、左から二番目の第2スタッカ205に収納している。尚、帯封紙幣の退避先は、第2スタッカ205に限らず、その他のスタッカ205であってもよい。また、スタッカ205以外に退避可能な場所(例えば帯封紙幣の回収部等)があれば、当該場所に帯封紙幣を退避させてもよい。ステップS7の後、プロセスはステップS4に戻り、新たな帯封紙幣をスタッカ205から繰り出す。
【0095】
ステップS8で制御部8は、出金処理で指示された帯封紙幣が全て繰り出されて、リフト203bに置かれたか否かを判断する。ステップS8の判断がNOの場合、プロセスはステップS4に戻る。ステップS8の判断がYESの場合、プロセスはステップS9に進む。ステップS9で、制御部8は、入出金口206を通じて、リフト203b上の帯封紙幣を払い出す(
図12の黒矢印参照)。
【0096】
ステップS9の後のステップS10で、制御部8は、退避した帯封紙幣が有るか否かを判断する。退避した帯封紙幣が無ければプロセスは終了する。退避した帯封紙幣が有れば、プロセスはステップS11に進む。ステップS11で制御部8は、
図12に破線の矢印で示すように、退避していた帯封紙幣を、元のスタッカ205へ戻す。元のスタッカ205へ戻した帯封紙幣は、後述する第二出金処理時に払い出される可能性がある。
【0097】
第二出金処理に係るステップS12で、制御部8は、指定された金種の帯封紙幣を、帯封紙幣処理ユニット200のスタッカ205から繰り出す。続くステップS13で、制御部8は、非揃い束であっても出金するために、繰り出した帯封紙幣を全て、リフト203bの上に置く。
【0098】
ステップS14で制御部8は、出金処理で指示された帯封紙幣が全てスタッカ205から繰り出されて、リフト203bに置かれたか否かを判断する。ステップS14の判断がNOの場合、プロセスはステップS12に戻る。ステップS14の判断がYESの場合、プロセスはステップS15に進む。ステップS15で、制御部8は、入出金口206を通じて、リフト203b上の帯封紙幣を払い出し、プロセスは終了する。
【0099】
こうして、第一出金処理では、揃い束のみが出金される。顧客に、表裏及び天地の両方が揃った帯封紙幣を渡すことができる。第二出金処理では、揃い束及び非揃い束の両方が出金される可能性がある。第二出金処理は、第一出金処理よりも、処理時間が短縮する可能性がある。
【0100】
貨幣処理装置1は、第一出金処理及び第二出金処理のそれぞれに適合した帯封紙幣を出金することができる。
【0101】
尚、第一出金処理時及び第二出金処理時に、帯封紙幣を、投出口207を通じて、出金してもよい。
【0102】
尚、帯封紙幣処理ユニット200内に収納している帯封紙幣を回収する回収処理時には、揃い束及び非揃い束の両方が、入出金口206又は投出口207を通じて、出金される。
【0103】
尚、第一出金処理時に、スタッカ205に収納されている非揃い束が多く、非揃い束を退避させるために時間を要する場合には、例えば
図13の上図に示すように、出金処理に要する時間が長くなることを、報知画面D5によって、操作者に報知するようにしてもよい。操作者は、処理時間が長くなることを認識することができる。報知画面D5はまた、処理をそのまま続行するか、非揃い束の出金を許容するか、を選択するボタンを表示している。操作者が、「そのまま続行する」を選択した場合、帯封紙幣処理ユニット200は、揃い束のみを出金する。操作者が「非揃い束を許容する」を選択した場合、帯封紙幣処理ユニット200は、非揃い束を退避させずに出金する。この場合は、処理時間を短縮させることができる。
【0104】
また、第一出金処理時に、スタッカ205に収納されている揃い束が少なく、指定された数の揃い束を出金することができない場合には、例えば
図13の下図に示すように、揃い束が足りないことを、報知画面D6によって、操作者に報知するようにしてもよい。操作者は、揃い束が足りないことを認識することができる。報知画面D6はまた、揃い束を作成して、スタッカ205に収納せずに出金するか、非揃い束の出金を許容するか、を選択するボタンを表示している。操作者が、「補充する」を選択した場合は、前述した第一装填処理に準じて、バラ紙幣処理ユニット100から帯封紙幣処理ユニット200へ、表裏及び天地の両方が揃った紙幣を送ると共に、帯封紙幣処理ユニット200が表裏及び天地の両方が揃った帯封紙幣を作成して出金する。この場合は、処理時間が長くなる。制御部8は、揃い束を作成すると処理時間が長くなる旨を、第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42を通じて操作者に報知してもよい。操作者が「非揃い束を許容する」を選択した場合、帯封紙幣処理ユニット200は、非揃い束を退避させずに出金する。この場合は、処理時間を短縮させることができる。
【0105】
尚、前述した第二装填処理は、表裏及び天地の両方が揃った帯封紙幣を作成することができない。しかしながら、例えば官封券のような、予め表裏及び天地の両方が揃ったバラ紙幣がバラ紙幣処理ユニット100の入金部103に投入された場合は、バラ紙幣処理ユニット100から帯封紙幣処理ユニット200へ、表裏及び天地の両方が揃った紙幣を送ることができる。バラ紙幣処理ユニット100の入金識別部108が、帯封枚数分の紙幣の、表裏及び天地の両方が揃っていることを識別した場合、当該紙幣によって作成しかつ、スタッカ205に収納した帯封紙幣は、揃い束として取り扱うようにしてもよい。
【0106】
また、前述した第三装填処理とは異なり、操作者が、帯封紙幣処理ユニット200のスタッカ205に直接、帯封紙幣を手で装填した場合には、記憶部51が記憶していた、当該スタッカ205に収納している帯封紙幣の揃い情報(
図9参照)を保証することができない。そのため、当該スタッカ205に収納している帯封紙幣を、全て非揃い束として取り扱うようにしてもよい。こうすることで、顧客に、非揃い束を渡してしまうことを防止することができる。
【0107】
また、前記の構成では、記憶部51は、スタッカ205の収納順と、揃い束か非揃い束かの情報とを対応づけて記憶しているが、例えば帯封紙幣処理ユニット200の識別部204dが、帯封紙幣の上面及び/又は下面の紙幣の記番号を読み取ると共に、読み取った記番号と、揃い束か非揃い束かの情報とを対応づけて記憶するようにしてもよい。
【0108】
さらに、前記の構成では、第一出金処理時には、揃い束のみを出金するようにしているが、操作者の操作によって、第一出金処理時に非揃い束の出金も許容するよう、設定を変更可能にしてもよい。また、第二出金処理時に、揃い束及び非揃い束の両方を出金するようにしているが、操作者の操作によって、第二出金処理時に非揃い束を優先的に出金するよう、設定を変更可能にしてもよい。こうすることで、揃い束をスタッカ205に、できるだけ残すことが可能になり、第一出金処理時に、揃い束をスムースに出金することが可能になる。
【0109】
尚、ここに開示する技術が適用可能な紙幣処理装置は、前述した構成の貨幣処理装置に限らない。
【0110】
例えばバラ紙幣処理ユニット100における二種類の反転部は、スイッチバック方式の反転部及びスパイラル方式の反転部の組み合わせに限定されない。紙幣の表裏及び天地の両方を揃えることができる組み合わせであれば、二種類の反転部は、様々な方式の反転部を組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0111】
200 帯封紙幣処理ユニット(紙幣処理装置)
201 帯封部
205 スタッカ(収納部)
206 入出金口(出金部)
207 投出口(出金部)
51 記憶部
8 制御部