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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230315BHJP
   G01S 19/54 20100101ALI20230315BHJP
   G01S 19/43 20100101ALI20230315BHJP
   G01S 19/47 20100101ALI20230315BHJP
【FI】
E02F9/20 N
G01S19/54
G01S19/43
G01S19/47
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019106447
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200597
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】石原 新士
(72)【発明者】
【氏名】泉 枝穂
(72)【発明者】
【氏名】小竹 伸一
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224038(JP,A)
【文献】特開2017-110998(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061790(WO,A1)
【文献】特開平06-341847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0122016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
G01S 19/54
G01S 19/43
G01S 19/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、
上部旋回体に対して垂直方向に回転可能に取り付けられた多関節型のフロント作業機と、
前記上部旋回体に取り付けられた2本のGNSSアンテナと、前記GNSSアンテナが受信した衛星信号に基づいて前記GNSSアンテナの3次元座標と前記上部旋回体の方位角を算出するGNSS受信機を有するGNSSシステムと、
前記上部旋回体に取り付けられ、前記上部旋回体の角速度を取得する角速度取得装置と、
前記上部旋回体に取り付けられ、前記上部旋回体の姿勢角を取得する車体姿勢角取得装置と、
前記フロント作業機の姿勢角を取得するフロント姿勢角取得装置と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記GNSS受信機で算出された前記GNSSアンテナの3次元座標及び前記上部旋回体の方位角と、前記車体姿勢角取得装置で取得した前記上部旋回体の姿勢角、前記角速度取得装置で取得した前記上部旋回体の角速度及び前記フロント姿勢角取得装置で取得した前記フロント作業機の姿勢角に基づいて、前記フロント作業機の位置及び姿勢を演算し、前記フロント作業機の位置及び姿勢に基づいて前記フロント作業機の動作を制御する建設機械において、
前記コントローラは、
前記車体姿勢角取得装置で取得した前記上部旋回体の姿勢角と前記フロント姿勢角取得装置で取得した前記フロント作業機の姿勢角の少なくとも一方に基づいて、前記フロント作業機が前記GNSSアンテナの衛星信号受信可能領域を遮断する可能性があるときかどうかにより前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角の品質を判断し、かつ
前記フロント作業機が前記GNSSアンテナの衛星信号受信可能領域を遮断する可能性があるときには前記上部旋回体の方位角の品質が低いと判断し、前記方位角の品質の判断結果と、前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角とに基づいて、前記角速度取得装置で取得した前記上部旋回体の角速度からジャイロバイアスを除去するバイアス除去演算を実行し、かつ前記ジャイロバイアスを除去した前記上部旋回体の角速度に基づいて前記上部旋回体の旋回動作の有無を判断し、
前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角と、前記ジャイロバイアスを除去した前記上部旋回体の角速度と、前記上部旋回体の旋回動作の判断結果に基づいて前記上部旋回体の修正方位角を算出し、前記修正方位角を用いて前記フロント作業機の位置及び姿勢を演算することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記車体姿勢角取得装置は、前記上部旋回体に取り付けられた少なくとも1つの車体傾斜センサであり、
前記フロント姿勢角取得装置は、前記フロント作業機に取り付けられた少なくとも1つのフロント傾斜センサであり、
前記コントローラは、前記車体傾斜センサで検出した前記上部旋回体の姿勢角と前記フロント傾斜センサで検出した前記フロント作業機の姿勢角の少なくとも一方に基づいて前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角の品質を判断し、前記上部旋回体の方位角の品質が低下していると判断したときに前記バイアス除去演算を実行することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械において、
前記車体姿勢角取得装置及び前記フロント姿勢角取得装置の少なくとも一方の姿勢角取得装置として画像認識装置を備え、
前記画像認識装置は、少なくとも1台のカメラから取得した画像情報に基づいて前記上部旋回体の姿勢角と前記フロント作業機の姿勢角の少なくとも一方を認識し、
前記コントローラは、前記画像認識装置で認識した前記上部旋回体の姿勢角と前記フロント作業機の姿勢角の少なくとも一方に基づいて前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角の品質を判断し、前記上部旋回体の方位角の品質が低下していると判断したときに前記バイアス除去演算を実行することを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械において、
前記コントローラは、
前記建設機械の周辺の地形情報を記憶している地形情報記憶装置を備え、
前記GNSS受信機によって算出した前記GNSSアンテナの3次元座標に基づいて、前記地形情報記憶装置に記憶した前記建設機械の周辺の地形情報を読み込み、
前記車体姿勢角取得装置で取得した前記上部旋回体の姿勢角と前記フロント姿勢角取得装置で取得した前記フロント作業機の姿勢角に基づく前記上部旋回体の方位角の品質の判断に加え、或いはその判断に代え、前記建設機械の周辺地形が前記GNSSアンテナの衛星信号受信可能領域を遮断する可能性があるとき、前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角の品質が低いと判断し、前記バイアス除去演算を実行することを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械において、
前記コントローラは、
前記上部旋回体の方位角の品質が高いと判断したときの方位角を記憶する方位角記憶装置を備え、
前記上部旋回体の方位角の品質が低いと判断し、前記上部旋回体の旋回動作無しを判断したときは、前記上部旋回体の方位角の品質が低いと判断する直前に前記方位角記憶装置に記憶した方位角を修正方位角として用い、前記フロント作業機の位置及び姿勢を演算することを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1記載の建設機械において、
前記コントローラは、
前記上部旋回体の方位角の品質が低いと判断し、かつ前記上部旋回体の旋回動作有りを判断した後、前記上部旋回体の方位角の品質が低いまま所定の時間を経過したときは、前記上部旋回体の方位角の精度が低い可能性があることをユーザに通知することを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1記載の建設機械において、
前記上部旋回体の動作を指示する第2操作レバー装置を更に備え、
前記コントローラは、
前記上部旋回体の旋回動作の有無の判断に際して、前記ジャイロバイアスを除去した前記上部旋回体の角速度のバックアップとして前記第2操作レバー装置の操作信号を入力し、この第2操作レバー装置の操作信号に基づいて、前記第2操作レバー装置の操作信号の大きさが所定値以上であるときに、前記上部旋回体の旋回動作が有りと判断することを特徴とする建設機械。
【請求項8】
下部走行体と、
下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、
上部旋回体に対して垂直方向に回転可能に取り付けられた多関節型のフロント作業機と、
前記上部旋回体に取り付けられた2本のGNSSアンテナと、前記GNSSアンテナが受信した衛星信号に基づいて前記GNSSアンテナの3次元座標と前記上部旋回体の方位角を算出するGNSS受信機を有するGNSSシステムと、
前記上部旋回体に取り付けられ、前記上部旋回体の角速度を取得する角速度取得装置と、
前記上部旋回体に取り付けられ、前記上部旋回体の姿勢角を取得する車体姿勢角取得装置と、
前記フロント作業機の姿勢角を取得するフロント姿勢角取得装置と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記GNSS受信機で算出された前記GNSSアンテナの3次元座標及び前記上部旋回体の方位角と、前記車体姿勢角取得装置で取得した前記上部旋回体の姿勢角、前記角速度取得装置で取得した前記上部旋回体の角速度及び前記フロント姿勢角取得装置で取得した前記フロント作業機の姿勢角に基づいて、前記フロント作業機の位置及び姿勢を演算し、前記フロント作業機の位置及び姿勢に基づいて前記フロント作業機の動作を制御する建設機械において、
前記コントローラは、
前記車体姿勢角取得装置で取得した前記上部旋回体の姿勢角と前記フロント姿勢角取得装置で取得した前記フロント作業機の姿勢角の少なくとも一方に基づいて前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角の品質を判断し、
前記方位角の品質の判断結果と、前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角とに基づいて、前記角速度取得装置で取得した前記上部旋回体の角速度からジャイロバイアスを除去するバイアス除去演算を実行し、かつ前記ジャイロバイアスを除去した前記上部旋回体の角速度に基づいて前記上部旋回体の旋回動作の有無を判断し、
前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角と、前記ジャイロバイアスを除去した前記上部旋回体の角速度と、前記上部旋回体の旋回動作の判断結果に基づいて前記上部旋回体の修正方位角を算出し、前記修正方位角を用いて前記フロント作業機の位置及び姿勢を演算するとともに、
前記フロント作業機の動作を指示する第1操作レバー装置を更に備え、
前記コントローラは、
前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角の品質の判断に際して、前記フロント姿勢角取得装置で取得した前記フロント作業機の姿勢角のバックアップとして前記第1操作レバー装置の操作信号を入力し、この第1操作レバー装置の操作信号に基づいて、前記第1操作レバー装置の前記フロント作業機の上げ方向操作が所定時間以上継続したときに、前記上部旋回体の方位角の品質が低いと判断することを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部旋回体が下部走行体に対して回転可能な油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化施工への対応に伴い、多関節型のフロント作業機の位置や姿勢をオペレータへ表示するマシンガイダンスや、フロント作業機の位置や姿勢を目標施工面に沿って動くように制御するマシンコントロールの機能を有する油圧ショベルが開発されている。
【0003】
このような油圧ショベルにおいて、3次元情報化施工(3D情報化施工)に対応させるためには、施工現場における油圧ショベル自身の位置(座標)と方位(フロント作業機の向き)を提供する必要がある。これらの情報を提供するために、従来は、上部旋回体に2本のGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナが取り付けられ、GNSS測位を行う油圧ショベルが開発されている。
【0004】
2本のGNSSアンテナを用いてGNSS測位を行う油圧ショベルにおいては、GNSSアンテナが必要な数の衛星信号を捕捉できない場合、GNSS測位が正常に実施されなくなる。このような状態では、位置や方位情報を提供できないため、マシンガイダンスやマシンコントロールの動作を停止せざるを得ず、作業効率が低下し得る。
【0005】
特許文献1では、2本のGNSSアンテナによるGNSS測位に加えて、施工現場に用意された基準局との無線通信により送信される補正データを受信し、位置情報についてRTK(Real Time Kinematic)測位を実施するとともに、ジャイロなどのヨウ角計測手段を備えることで油圧ショベルの車体(上部旋回体)の方位角を算出し、RTK測位が異常なときにその方位角を用いて位置情報を計測できるようにした技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-125580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2本のGNSSアンテナを利用して車体(上部旋回体)の方位角を算出する場合、2本のGNSSアンテナのうち1つをメインアンテナ、もう1つをサブアンテナとして用い、これらメイン、サブアンテナ間でRTK測位を行うことが一般的に行われている。これにより施工現場に設置された基準局との通信の可否によらず、車体の方位角についてはRTK測位が実施できる。
【0008】
ところで、油圧ショベルのフロント作業機は金属部材で構成されるため、GNSSの衛星信号がフロント作業機によって反射、もしくは、遮断されることが考えられる。
【0009】
また、油圧ショベルの掘削動作においては、フロント作業機が上下動作を繰り返すため、衛星信号の反射や途絶が繰り返し発生するようなGNSSの使用環境になる。このような使用環境においては、衛星配置が著しく偏るため、車体の方位角の演算精度が低下する。
【0010】
そして、油圧ショベルではフロント作業機の上げ下げ作業を頻繁に行うため、上部旋回体を旋回していないのにもかかわらず、GNSSによって算出された車体の方位角がばらついてしまう。この算出結果をマシンガイダンスに利用すると、上部旋回体がふらふらと動作しているように見えてしまう。
【0011】
なお、RTK測位を実施するには最低4つ以上の衛星が補足できていればよい。このため、上記のように作業機を上げ下げしただけで、基準局からの補正データによるRTK測位自体が実施できなくなることは稀であり、GNSS受信機は正常な測位(RTK-Fix状態)を継続する。
【0012】
このため、RTK測位が異常になったときに対策を実施する特許文献1の技術では、上述した課題を解決することはできない。つまり、方位角の算出に限れば、GNSS測位が異常となる場面が特許文献1とは異なり、特許文献1の技術では、フロント作業機の上げ下げなどの建設機械の姿勢変化による車体(上部旋回体)の方位角の演算精度の低下を防止することはできない。
【0013】
なお、2本のGNSSアンテナを前後方向に直線状に並べて配置すれば、遮蔽領域が左右対称にならないため(後述する図15B及び図15C参照)、上記の現象は多少緩和されるが、遮蔽領域が生じる現象自体は解消されない。よって、上記課題の根本的な解決にはならない。
【0014】
また、フロント作業機の最高地点よりもGNSSアンテナを高くすれば、フロント作業機による遮蔽の影響がなくなる。しかし、GNSSアンテナが長くなると構造的にGNSSアンテナが振動してしまい、かえって測位精度が低下するおそれがある。
【0015】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、フロント作業機の上げ下げなどフロント作業機の姿勢変化によらずに、GNSSを利用して正確な車体の方位角を算出することができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するため、下部走行体と、下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、上部旋回体に対して垂直方向に回転可能に取り付けられた多関節型のフロント作業機と、前記上部旋回体に取り付けられた2本のGNSSアンテナと、前記GNSSアンテナが受信した衛星信号に基づいて前記GNSSアンテナの3次元座標と前記上部旋回体の方位角を算出するGNSS受信機を有するGNSSシステムと、前記上部旋回体に取り付けられ、前記上部旋回体の角速度を取得する角速度取得装置と、前記上部旋回体に取り付けられ、前記上部旋回体の姿勢角を取得する車体姿勢角取得装置と、前記フロント作業機の姿勢角を取得するフロント姿勢角取得装置と、コントローラとを備え、前記コントローラは、前記GNSS受信機で算出された前記GNSSアンテナの3次元座標及び前記上部旋回体の方位角と、前記車体姿勢角取得装置で取得した前記上部旋回体の姿勢角、前記角速度取得装置で取得した前記上部旋回体の角速度及び前記フロント姿勢角取得装置で取得した前記フロント作業機の姿勢角に基づいて、前記フロント作業機の位置及び姿勢を演算し、前記フロント作業機の位置及び姿勢に基づいて前記フロント作業機の動作を制御する建設機械において、前記コントローラは、前記車体姿勢角取得装置で取得した前記上部旋回体の姿勢角と前記フロント姿勢角取得装置で取得した前記フロント作業機の姿勢角の少なくとも一方に基づいて、前記フロント作業機が前記GNSSアンテナの衛星信号受信可能領域を遮断する可能性があるときかどうかにより前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角の品質を判断し、かつ前記フロント作業機が前記GNSSアンテナの衛星信号受信可能領域を遮断する可能性があるときには前記上部旋回体の方位角の品質が低いと判断し、前記方位角の品質の判断結果と、前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角とに基づいて、前記角速度取得装置で取得した前記上部旋回体の角速度からジャイロバイアスを除去するバイアス除去演算を実行し、かつ前記ジャイロバイアスを除去した前記上部旋回体の角速度に基づいて前記上部旋回体の旋回動作の有無を判断し、前記GNSS受信機で算出された前記上部旋回体の方位角と、前記ジャイロバイアスを除去した前記上部旋回体の角速度と、前記上部旋回体の旋回動作の判断結果に基づいて前記上部旋回体の修正方位角を算出し、前記修正方位角を用いて前記フロント作業機の位置及び姿勢を演算するものとする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フロント作業機の上げ下げなどの建設機械の姿勢変化によらずに、GNSSを利用して正確な上部旋回体の方位角を算出し、上部旋回体の方位角を高精度、かつ、ロバストに取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観及び内部構造の一部を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態における油圧ショベルに搭載されるコントローラの処理機能の一部を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の特徴部分であるコントローラの位置姿勢演算部の処理機能を示すブロック図である。
図4】修正方位角演算部の処理機能を示すブロック図である。
図5A】方位角品質判断部の品質判断処理の一例を示す図である。
図5B】方位角品質判断部の品質判断処理の他の一例を示す図である。
図6】修正方位角演算部の演算手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態における修正方位角演算部の処理機能を示すブロック図である。
図8】本発明の第3の実施形態における油圧ショベルの外観とその周囲の状況を示す図である。
図9】第3の実施形態におけるコントローラの処理機能を示すブロック図である。
図10】第3の実施形態における修正方位角演算部の処理機能を示すブロック図である。
図11】本発明の第4の実施形態におけるコントローラの処理機能を示すブロック図である。
図12】第4の実施形態における修正方位角演算部の処理機能を示すブロック図である。
図13】油圧ショベルの上面図である。
図14A】油圧ショベルのフロント作業機が下がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
図14B】油圧ショベルのフロント作業機が下がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
図14C】油圧ショベルのフロント作業機が下がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
図15A】油圧ショベルのフロント作業機が上がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
図15B】油圧ショベルのフロント作業機が上がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
図15C】油圧ショベルのフロント作業機が上がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
図15D】油圧ショベルのフロント作業機が上がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
図16】油圧ショベルが傾斜面に配置されている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
図17】油圧ショベルの背面に急峻な傾斜面がある場合の衛星信号の受信状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観及び内部構造の一部を示す図である。
【0021】
図1において、油圧ショベル100は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材であるブーム4、アーム5、バケット(作業具)6を連結して構成された多関節型のフロント作業機1と、車体を構成する上部旋回体2及び下部走行体3とを備え、上部旋回体2は下部走行体3に対して旋回可能に搭載されている。また、フロント作業機1のブーム4の基端は上部旋回体2の前部に垂直方向に回動可能に支持され、アーム5の一端はブーム4の先端に垂直方向に回動可能に支持され、アーム5の他端にはバケット6が垂直方向に回動可能に支持されている。ブーム4、アーム5、バケット6、上部旋回体2、及び下部走行体3は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ4a、アームシリンダ5a、バケットシリンダ6a、旋回モータ2a、及び左右の走行モータ3a,3bによりそれぞれ駆動される。
【0022】
ブーム4、アーム5及びバケット6は、フロント作業機1を含む平面上で動作し、以下ではこの平面を動作平面と称することがある。つまり、動作平面とは、ブーム4、アーム5及びバケット6の回動軸に直交する平面であり、ブーム4、アーム5及びバケット6の幅方向の中心位置に設定することができる。
【0023】
オペレータが搭乗するキャビン9内(運転室)には、油圧アクチュエータ2a,4a~6aを操作するための操作信号を生成する操作レバー装置9a,9bやモニタ11などが設置されている。
【0024】
操作レバー装置9a,9bはいわゆる電気レバー方式であり、それぞれ、前後左右に傾倒可能な操作レバーと、これら操作レバーの傾倒量であるレバー操作量を電気的に検知する図示しない検出装置とを含み、検出装置は検出したレバー操作量を電気的な操作信号として制御装置であるコントローラ20に電気配線を介して出力する。また、操作レバー装置9a,9bの操作レバーの前後方向または左右方向に、油圧アクチュエータ2a,4a~6aの操作指令がそれぞれ割り当てられている。
【0025】
旋回モータ2a、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5a、バケットシリンダ6aの動作制御は、エンジンや電動モータなどの原動機40によって駆動される油圧ポンプ装置7から油圧アクチュエータ2a,4a~6aに供給される作動油の方向及び流量をコントロールバルブ8内のそれぞれのスプールを制御することにより行う。コントロールバルブ8内のスプールは、図示しないパイロットポンプから電磁比例弁10a,10b・・・(図2参照)を介して出力される駆動信号(パイロット圧)により操作され。コントローラ20は、操作レバー装置9a,9bから出力される操作信号に基づいて制御信号を生成し、その制御信号を電磁比例弁10a,10b・・・に出力することで、電磁比例弁10a,10b・・・から駆動信号(パイロット圧)をコントロールバルブ8内のそれぞれのスプールに出力し、各油圧アクチュエータ2a~6aの動作が制御される。
【0026】
なお、操作レバー装置9a,9bは油圧パイロット方式であってもよい。この場合、操作レバー装置9a,9bは、それぞれ操作レバーの操作方向及び操作量に応じたパイロット圧を生成し、このパイロット圧がコントロールバルブ8に、直接、駆動信号として供給され、各油圧アクチュエータ2a~6aの動作が制御される。
【0027】
上部旋回体2には、慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)13が配置されている。
【0028】
慣性計測装置13は、上部旋回体2の角速度及び加速度を計測するものであり、本発明において、慣性計測装置13は、上部旋回体の角速度を取得する角速度取得装置を構成する。
【0029】
慣性計測装置13により計測される上部旋回体2の角速度は、上部旋回体2の前後方向の角速度と、左右方向の角速度と、旋回方向の角速度を含む。
【0030】
また、計測した上部旋回体2の前後方向の角速度、左右方向の角速度、旋回方向の角速度をそれぞれ時間で積分することにより、上部旋回体2の前後方向の傾き(ピッチ角)と、左右方向の傾き(ロール角)と、旋回方向の傾き(ヨー角)をそれぞれ計測することができる。すなわち、本発明において、慣性計測装置13は、角速度取得装置に加え、上部旋回体2の姿勢角を取得する車体姿勢角取得装置を構成する。
【0031】
なお、姿勢角の取得に加速度を利用した方法を利用しても良い。具体的には、慣性計測装置13が配置された上部旋回体2が静止している場合を考えると、慣性計測装置13に設定された車体座標系における鉛直方向(つまり,重力加速度が作用する方向)と、慣性計測装置13が実際に検出した加速度を比較することで、上部旋回体2の前後方向への傾き(ピッチ角)、左右方向への傾き(ロール角)をそれぞれ検出することができる。
【0032】
図1において、Σmは車体座標系を示している。車体座標系Σmは上部旋回体2に設定された3次元の直交座標系である。その一例として、車体座標系Σmは、上部旋回体2の旋回中心の軸線S(図2参照)と上部旋回体2のベースフレーム(旋回フレーム)上面との交点を原点とし、旋回中心の軸線Sをz軸(図2参照)、z軸に直交する前後方向の軸線をx軸、z軸とx軸に直交する左右方向の軸線をy軸とした直交座標系である。
【0033】
上述した上部旋回体2の前後方向の角速度は車体座標系Σmのy軸回りの角速度であり、左右方向の角速度は同x軸回りの角速度であり、旋回方向の角速度は同z軸回りの角速度である。また、上部旋回体2の前後方向の傾きは車体座標系Σmのy軸回りの傾き(ピッチ角)であり、左右方向の傾きは同x軸回りの傾き(ロール角)であり、旋回方向の傾きは同z軸回りの傾き(ヨー角)である。
【0034】
なお、本実施形態では、これらの傾き(角度)の演算機能が慣性計測装置に実装されているセンサ利用を想定しているが、慣性計測装置13に角度の算出機能が内蔵されていない場合には、コントローラ20内に角度演算機能を用意すれば、本発明を実現できることは言うまでもない。
【0035】
上部旋回体2には2本のGNSSアンテナ17a,17bが取り付けられている。GNSSアンテナ17a,17bのそれぞれで受信した衛星信号はGNSS受信機17c(図2及び図3等参照)において、GNSSアンテナ17a,17bの3次元座標の算出や上部旋回体2の方位角の算出などの各種測位演算が実行される。GNSS受信機17cにおいて、GNSSアンテナ17a,17bの3次元座標はグローバル座標系の座標値として演算される。また、本実施形態では、2本のGNSSアンテナ17a,17bのうち1つをメインアンテナ、もう1つをサブアンテナとして用い、GNSS受信機17cはこれらメイン、サブアンテナ間でRTK(Real Time Kinematic)測位を実施する。このため、施工現場に設置された基準局と無線通信で接続しなくても、或いは基準局との無線通信の可否によらず、上部旋回体2の方位角についてはRTK測位が実施できる。一方、3次元座標の位置情報については、施工現場に設置された基準局と無線通信で接続することで基準局から送信される補正情報、或いはネットワーク経由で配信される補正情報を利用したRTK測位を実施し、位置情報を取得する。
【0036】
以下において、説明を簡略化するために、GNSSアンテナ17a,17bとGNSS受信機17cをまとめてGNSSシステム17と呼ぶことがある。
【0037】
フロント作業機1の各構成要素であるブーム4、アーム5、バケット6には、それぞれの姿勢(姿勢角)を計測するために慣性計測装置14,15,16が適切な位置に設置されている。慣性計測装置14~16は、本発明において、フロント作業機1の姿勢角を取得するフロント姿勢角取得装置を構成する。
【0038】
以下において、慣性計測装置13,14,15,16をそれぞれ区別するため、設置場所に応じて、適宜、車体IMU13、ブームIMU14、アームIMU15、バケットIMU16と呼ぶ。本発明において、車体IMU13は、上部旋回体2に取り付けられた少なくとも1つの車体傾斜センサを構成し、ブームIMU14はフロント作業機1に取り付けられた少なくとも1つのフロント傾斜センサを構成する。
【0039】
図2は、本発明の第1の実施形態における油圧ショベル100に搭載されるコントローラ20の処理機能の一部を示すブロック図である。
【0040】
図2において、コントローラ20は、油圧ショベル100の動作を制御するための種々の機能を有しており、その一部として、位置姿勢演算部20a、施工目標面演算部20b、モニタ表示制御部20c、及び油圧システム制御部20dの各機能を有している。位置姿勢演算部20a、施工目標面演算部20b、モニタ表示制御部20c、及び油圧システム制御部20dはCPUによって構成されている。
【0041】
また、コントローラ20はデータベースとしての記憶装置20eと、演算途中の値を記憶する記憶装置(例えばRAM)20fと、プログラムや設定値等を記憶する図示しない記憶装置(例えばROM)を有している。
【0042】
位置姿勢演算部20aは、慣性計測装置13~16からの検出結果(上部旋回体2の角速度及び姿勢角(ピッチ角)とフロント作業機1の姿勢角)と、GNSS受信機17cからの演算結果(GNSSアンテナ17a,17bの3次元座標及び上部旋回体2の方位角)を入力し、それらの入力値に基づいて、例えば上部旋回体2に設定された車体座標系Σmにおけるフロント作業機1の3次元の位置と姿勢を演算する位置姿勢演算処理を行う。
【0043】
施工目標面演算部20bは、施工管理者によって記憶装置20eに予め記憶されている3次元施工図面などの施工情報21と、位置姿勢演算部20aで演算されたフロント作業機1の3次元の位置と姿勢とに基づいて、施工対象の目標形状を定義する施工目標面を演算する。
【0044】
モニタ表示制御部20cは、キャビン9内に設けられたモニタ11の表示を制御するものであり、施工目標面演算部20bで演算された施工目標面と、位置姿勢演算部20aで演算されたフロント作業機1の位置と姿勢とに基づいて、オペレータに対する操作支援の指示内容を演算し、キャビン9内のモニタ11に表示する。すなわち、モニタ表示制御部20cは、例えば、ブーム4、アーム5、バケット6などの被駆動部材を有するフロント作業機1の姿勢や、バケット6の先端位置と角度をモニタ11に表示してオペレータの操作を支援するマシンガイダンスシステムとしての機能の一部を担っている。
【0045】
油圧システム制御部20dは、油圧ポンプ装置7やコントロールバルブ8、電磁比例弁10a,10b・・・、油圧アクチュエータ2a~6a等からなる油圧ショベル100の油圧システムを制御するものであり、操作レバー装置9a,9bから出力される操作信号(電気信号)に基づいてフロント作業機1の被駆動部材の目標動作速度を演算し、その目標動作速度を実現するように油圧ショベル100の油圧システムを制御する。また、油圧システム制御部20dは、施工目標面演算部20bで演算された施工目標面と、位置姿勢演算部20aで演算されたフロント作業機1の位置と姿勢とに基づいて、フロント作業機1の被駆動部材の目標動作速度を演算し、その目標動作速度を実現するように操作レバー装置9a,9bから出力された対応する操作信号を補正し、油圧ショベル100の油圧システムを制御する。これにより油圧システム制御部20dは、例えば、バケット6などの作業具の先端が目標施工面に一定以上近づかないように動作に制限をかけたり、作業具(例えば、バケット6の爪先)が目標施工面に沿って動くよう制御したりするマシンコントロールシステムとしての機能の一部を担っている。
【0046】
このようにコントローラ20は、GNSS受信機17cで算出されたGNSSアンテナ17a,17bの3次元座標及び上部旋回体2の方位角と、車体IMU13(車体姿勢角取得装置)で取得した上部旋回体2の姿勢角、車体IMU13(角速度取得装置)で取得した上部旋回体2の角速度、及びブームIMU14、アームIMU15及びバケットIMU16(フロント姿勢角取得装置)で取得したフロント作業機1の姿勢角に基づいてフロント作業機1の位置及び姿勢を演算し、フロント作業機1の位置及び姿勢に基づいてフロント作業機1の動作を制御する。
【0047】
また、コントローラ20は、本発明の特徴として、位置姿勢演算部20aにおいて以下の演算処理を行う。
【0048】
まずコントローラ20は、位置姿勢演算部20aにおいて、車体IMU13(車体姿勢角取得装置)で取得した上部旋回体2の姿勢角とブームIMU14(フロント姿勢角取得装置)で取得したフロント作業機1の姿勢角の少なくとも一方に基づいてGNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角の品質を判断し、方位角の品質の判断結果と、GNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角とに基づいて、車体IMU13(角速度取得装置)で取得した上部旋回体2の角速度からジャイロバイアスを除去するバイアス除去演算を実行し、かつジャイロバイアスを除去した上部旋回体2の角速度に基づいて上部旋回体2の旋回動作の有無を判断し、GNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角と、ジャイロバイアスを除去した上部旋回体2の角速度と、上部旋回体2の旋回動作の判断結果に基づいて上部旋回体2の修正方位角を算出し、この修正方位角を用いてフロント作業機1の位置及び姿勢を演算する。
【0049】
また、コントローラ20は、車体IMU13(車体傾斜センサ)で検出した上部旋回体2の姿勢角とブームIMU14(フロント傾斜センサ)で検出したフロント作業機1の姿勢角の少なくとも一方に基づいてGNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角の品質を判断し、上部旋回体2の方位角の品質が低下していると判断したときにバイアス除去演算を実行する。なお、本明細書において「上部旋回体2の方位角の品質が低下している」とは、位置姿勢演算部20a(後述する3次元位置姿勢演算部20a-2)がGNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角を用いてフロント作業機1の3次元の位置及び姿勢を演算するとき、その演算精度が油圧システム制御部20dにおいてフロント作業機1の適切な動作制御を確保できなくなる程度に上部旋回体2の方位角の品質が劣化することを意味する。また、以下の説明では、「上部旋回体2の方位角の品質が低下している」を「上部旋回体2の方位角の品質が低い」、「上部旋回体2の方位角の品質が不良である」などとも言い、そうでない場合を「上部旋回体2の方位角の品質が高い」、「上部旋回体2の方位角の品質が良好である」などとも言う。
【0050】
また、コントローラ20は、位置姿勢演算部20aにおいて、上部旋回体2の方位角の品質が高いと判断したときの方位角を記憶する記憶装置20f(方位角記憶装置)を備え、上部旋回体2の方位角の品質が低いと判断し、上部旋回体2の旋回動作無しを判断したときは、上部旋回体2の方位角の品質が低いと判断する直前に記憶装置20f(方位角記憶装置)に記憶した方位角を修正方位角として用い、フロント作業機1の位置及び姿勢を演算する。
【0051】
更に、コントローラ20は、位置姿勢演算部20aにおいて、上部旋回体2の方位角の品質が低いと判断し、かつ上部旋回体2の旋回動作有りを判断した後、上部旋回体2の方位角の品質が低いまま所定の時間を経過したときは、上部旋回体2の方位角の精度が低い可能性があることをユーザに通知する。
【0052】
以下に、上述した位置姿勢演算部20aの処理内容の詳細を図3に従って具体的に説明する。図3は、本実施形態の特徴部分であるコントローラ20の位置姿勢演算部20aの処理機能を示すブロック図である。
【0053】
図3において、位置姿勢演算部20aは、修正方位角演算部20a-1と3次元位置姿勢演算部20a-2を有している。
【0054】
修正方位角演算部20a-1には、車体IMU13、ブームIMU14、GNSSシステム17で計測、もしくは、演算した値(信号)が入力される。より具体的には、GNSS受信機17cで算出した上部旋回体2の方位角、車体IMU13で計測した上部旋回体2の角速度と姿勢角、ブームIMU14で算出したブーム4の姿勢角が入力される。
【0055】
修正方位角演算部20a-1はGNSS受信機17cが算出した上部旋回体2の方位角に後述する補正演算を実施して、修正方位角を算出する。また、修正方位角が十分な精度で演算できない場合には、その状態をオペレータに通知するための低精度警告のフラグを算出する。そして、低精度警告フラグが有効になった場合は、モニタ表示制御部20cを介して、モニタ11上にメッセージを出すなどをしてオペレータに通知を行う。
【0056】
3次元位置姿勢演算部20a-2には、IMU13~16で検出した姿勢角、GNSS受信機17cで算出したGNSSアンテナ17a,17bの3次元座標、修正方位角演算部20a-1で算出した修正方位角が入力される。
【0057】
3次元位置姿勢演算部20a-2は、GNSSシステム17で取得したGNSSアンテナ17a,17bの3次元座標に基づいて、例えば車体座標系Σmにおける油圧ショベル100の位置と姿勢を演算する。
【0058】
3次元位置姿勢演算部20a-2は、車体座標系Σmにおける油圧ショベル100の位置と姿勢と、IMU13~16で検出した姿勢角と、修正方位角演算部20a-1で算出した修正方位角に基づいて、例えば車体座標系Σmにおけるフロント作業機1の3次元の位置及び姿勢を演算し、前述したように、この演算値が施工目標面演算部20b、モニタ表示制御部20c及び油圧システム制御部20dに送られる。
【0059】
3次元位置姿勢演算部20a-2は、車体座標系Σmに代えて油圧ショベル100の周囲に設定された現場座標系におけるフロント作業機1の3次元の位置及び姿勢を算出してもよいし、車体座標系Σmで算出したフロント作業機1の3次元の位置及び姿勢を現場座標系に変換して制御で用いてもよい。
【0060】
本実施形態におけるGNSSシステム17は、前述したとおり、2本のGNSSアンテナ17a,17b間でRTK測位を実施することで、上部旋回体2の方位角を取得する。このため、油圧ショベル100の姿勢変化が方位角の品質に影響する(後述)。
【0061】
一方、3次元座標の位置情報については、施工現場に設置された基準局と無線通信で接続することで基準局から送信される補正情報、或いはネットワーク経由で配信される補正情報を利用したRTK測位を実施する。このため、油圧ショベル100の姿勢変化が3次元位置情報に及ぼす影響は方位角に比して非常に小さい。また、3次元姿勢演算部20a-2で利用される3次元座標は、2本のGNSSアンテナ17a,17bのうち、後述する図15B及び図15Cにおいて、DOP((Dilution Of Precision)の悪化率が低いGNSSアンテナ17a又は17bを起点とすればよい。つまり、図15B及び図15Cのように、天頂方向の一部が隠された状態で、衛星の配置が特定の場所に偏らない側のGNSSアンテナを位置演算に利用すればよい。したがって、油圧ショベル100の姿勢変化でGNSSシステム17が取得する方位角の品質が低下した場合でも、GNSSシステム17のRTK測位で取得した3次元座標の位置情報の精度の低下は少なく、3次元位置姿勢演算部20a-2においてその3次元の位置情報を利用可能である。
【0062】
このような考えに基づき本発明は、3次元姿勢演算部20a-2において、油圧ショベル100の上部旋回体2の方位角に、修正方位角演算部20a-1で算出した修正方位角を用い、かつ、測位精度の低下が少ないGNSSアンテナ17a,17bの3次元座標を用いてフロント作業機1の3次元の位置及び姿勢を演算するものである。3次元姿勢演算部20a-2におけるそれ以外の演算は、従来と特段に変わる点はないため、詳細な説明は省略する。
【0063】
以下に、本発明の特徴となる修正方位角演算部20a-1について、図4を用いて詳細に説明する。図4は、修正方位角演算部20a-1の処理機能を示すブロック図である。
【0064】
図4において、修正方位角演算部20a-1は、方位角品質判断部MH01、バイアス除去実行部MH02、旋回動作判断部MH03、方位角統合演算部MH04の4つの演算機能を有している。
【0065】
<方位角品質判断部MH01>
方位角品質判断部MH01は、油圧ショベル100の姿勢情報を利用して、GNSSシステム17が算出した上部旋回体2の方位角の品質を判断する。本実施形態では、油圧ショベル100の姿勢情報として、車体IMU13とブームIMU14で取得した姿勢角情報を用いる。
【0066】
ここで、まず、GNSSシステム17が算出した上部旋回体2の方位角の品質を判断する必要性を説明する。
【0067】
油圧ショベル100のフロント作業機1は金属部材で構成されるため、GNSSの衛星信号がフロント作業機1によって反射、もしくは、遮断されることが考えられる。
【0068】
また、油圧ショベル100の掘削動作においては、フロント作業機1が上下動作を繰り返すため、衛星信号の反射や途絶が繰り返し発生するような環境になる。
【0069】
このような使用環境において、GNSSアンテナ17a,17bを用いてGNSS測位を行う場合の課題を図13図16を用いて説明する。
【0070】
図13は、油圧ショベル100の上面図である。図14A図14Cは、フロント作業機1が下がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。図15A図15Dは、フロント作業機1が上がっている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。図16は、油圧ショベル100が傾斜面に配置されている状態での衛星信号の受信状況を示す図である。
【0071】
図13に示すように、GNSSアンテナ17a,17bがフロント作業機1の中心線1aの左右に配置されている。
【0072】
図14Aに示すように、ブーム4が下げ姿勢にあり、フロント作業機1が下がっている状態では、GNSSアンテナ17a,17bよりもフロント作業機1は低い位置にあるため、GNSSアンテナ17a,17bの天頂方向の衛星信号受信可能領域200に対する遮蔽物のイメージは図14B及び図14Cのようになる。図14B図13において左側に配置されたGNSSアンテナ17a,図14C図13において右側に配置されたGNSSアンテナ17bの上面図に対応する。図14B及び図14Cに示すように、それぞれのGNSSアンテナ17a,17bの上空に遮蔽物が一切ないため、衛星信号の遮断や反射は起きにくい状況である。
【0073】
一方、図15Aに示すように、ブーム4が上げ姿勢にあり、フロント作業機1が上がっている状態では、GNSSアンテナ17a,17bよりもフロント作業機1が高い位置にある。このような状況では、GNSSアンテナ17a,17bの天頂方向の衛星信号受信可能領域200がフロント作業機1により部分的に遮られ、フロント作業機1が存在する方向の衛星信号をGNSSアンテナ17a,17bが受信できなくなる。さらに、GNSSアンテナ17a,17bはフロント作業機1に対して左右に配置されるため、遮断される領域は図15B及び図15Cに示すように対称的な関係になることに注意されたい。図15B図13において左側に配置されたGNSSアンテナ17a、図15C図13において右側に配置されたGNSSアンテナ17bの上面図に対応する。
【0074】
また、図15B及び15Cにおいて黒で塗りつぶしている箇所はある1時刻においてフロント作業機1が衛星信号を遮断する領域を示しており、灰色で塗りつぶしている箇所はフロント作業機1の連続的な姿勢変化によって衛星信号が遮蔽される領域を模式的に示したものである。
【0075】
さて、上述の通り、2本のGNSSアンテナ17a,17bを用いて上部旋回体2の方位角を算出する場合は、GNSSアンテナ17a,17bの一方をメインアンテナ、他方をサブアンテナとしたRTK測位を実施する。このとき、2本のGNSSアンテナ17a,17bが共通して利用できる衛星のみが測位に利用されるため、図15Dに示すように、それぞれのGNSSアンテナ17a,17bでの遮断領域を組み合わせた領域において、衛星信号が遮断される状況になる。つまり、フロント作業機1を上げるだけで、天頂方向の半分の衛星信号が測位に利用できなくなってしまうおそれがある。このような状況では衛星信号を利用できる衛星配置が著しく偏るため、方位角の演算精度が低下する。
【0076】
また、油圧ショベル100ではフロント作業機1の上げ下げを頻繁に行うため、上部旋回体2を旋回していないのにも係わらず、GNSS測位によって算出された方位角がばらついてしまう。この算出結果をマシンガイダンスに利用すると、上部旋回体2がふらふらと動作しているように見えてしまう。
【0077】
更に、図16に示すように、傾斜地に油圧ショベル100が配置されている場合など、油圧ショベル100の車体(上部旋回体2)が前後方向に傾きを持っている場合にも、ブーム下げ姿勢であっても、天頂方向が遮蔽される状況を生じ得る。このような状況でも衛星信号を利用できる衛星配置が偏るため、方位角の演算精度が低下する。
【0078】
図4に戻り、方位角品質判断部MH01における方位角品質の判断条件を説明する。
【0079】
図14Aに示したように、ブーム4が下げ姿勢にあるときは、GNSSアンテナ17a,17bの上空部に障害物が存在しないため、GNSSシステム17が演算した上部旋回体2の方位角の品質は良いと判断する。一方、図15Aに示したように、ブーム4が上げ姿勢にあるときは、特定方向の衛星信号が遮断されるため、GNSSシステム17が演算した上部旋回体2の方位角の品質は劣っていると判断する。方位角品質判断部MH01は、このような考え方に基づいて方位角品質を判断する。すなわち、ブームIMU14で取得したブーム角をフロント作業機1の姿勢角として入力し、ブーム角(姿勢角)が所定値より小さければ、上部旋回体2の方位角の品質は良好であり、所定値以上であるときは方位角の品質は劣っていると判断する。ここで、所定値は、例えば、水平面を基準にして30degである。
【0080】
また、図16に示したように、傾斜地に油圧ショベル100が配置されている場合にも、図14Aの状況に比べて、GNSSシステム17が演算した方位角の品質は劣ると判断する。したがって、この場合も、方位角品質判断部MH01は、車体IMU13で取得した車体傾斜角(上部旋回体2の前後方向(y軸回り)の傾きであるピッチ角)を車体姿勢角として入力し、車体姿勢角(ピッチ角)が所定値より小さければ、上部旋回体2の方位角の品質は良好であり、所定値以上であるときは方位角の品質は劣っていると判断する。ここで、所定値は、例えば、水平面を基準にして15degである。
【0081】
上記ブーム角と車体傾斜角の所定値は、上部旋回体2の方位角の品質を判断するための判定値として、コントローラ20の記憶装置(例えばROM)に記憶されている。
【0082】
図5Aは、方位角品質判断部MH01における品質判断処理の一例を示す図である。
【0083】
方位角品質判断部MH01は図5Aに示すような方位角品質演算部MH01-Aを有していてもよい。方位角品質演算部MH01-Aは、上述した判断条件に基づいて、ブーム角度と車体傾斜角度(車体姿勢角、すなわち上部旋回体2の前後方向(y軸回り)の傾きであるピッチ角)を入力とし、方位角品質を出力とする3次元テーブルとして構成されている。この3次元テーブルにおいて、方位角品質は0から1までの数値で表されており、方位角品質が低くなるほど方位角品質の数値は大きくなるように設定されている。すなわち、数値が0のときが最も方位角品質が良く、1のときが最も方位角品質が悪いことを意味する。
【0084】
方位角品質演算部MH01-Aの3次元テーブルは以下のように構成されている。
【0085】
まず、3次元テーブルは、例えば、ブーム角度が最小値(ブームが下がっている)であっても、車体傾斜角(ピッチ角)が大きければ方位角品質は1になるように設定されている。また、3次元テーブルは、車体傾斜角度(ピッチ角)が最小値(車体が水平を保っているとき)であっても、ブーム角度が大きければ(ブームが上がっていれば)、方位角品質は1になるように設定されている。更に、3次元テーブルは、例えば、車体傾斜角度(ピッチ角)が0度でブーム角度が10度のときに算出される方位角品質の値(A)よりも、車体傾斜角度(ピッチ角)が10度でブーム角度が10度のときに算出される方位角品質の値(B)の方が大きくなる(A<B)ように設定されている。
【0086】
図5Bは、方位角品質判断部MH01における品質判断処理の他の一例を示す図である。
【0087】
方位角品質判断部MH01は図5Bに示すような方位角品質演算部MH01-Bを有していてもよい。方位角品質演算部MH01-Bは、図5Bに示すように、ブーム角度が所定値以上であるときに方位角品質を1となる2次元テーブルT1と、車体傾斜角度(ピッチ角)が所定値以上であるときに方位角品質が1となる2次元テーブルT2を有し、これらの2つの2次元テーブルT1,T2で算出された方位角品質の値を加算して、加算後の値を1で飽和させることで、方位角品質を算出する。
【0088】
方位角品質判断部MH01は、方位角品質演算部MH01-A又はBMH01-Bにおいて算出された方位角品質を用い、その方位角品質が所定値、例えば0.8以上であれば方位角品質は良好であり、所定値より小さければ方位角品質は劣っていると判断する。
【0089】
<バイアス除去実行部MH02>
バイアス除去実行部MH02は、車体IMU13が検出した角速度(旋回方向(z軸回り)の角速度)のバイアス、いわゆる、ジャイロバイアスの除去を実施する。
【0090】
ジャイロバイアスの除去は、カルマンフィルタ(KF:Kalman Filter)やオブザーバを適用する手法が一般的である。本発明の実施形態では、カルマンフィルタを利用したジャイロバイアスの除去方法についてのみを説明する。カルマンフィルタの詳細については、例えば、「足立、丸田:カルマンフィルタの基礎、東京電機大学出版局、2012」を参照されたい。
【0091】
ここで、上部旋回体2の方位角をθ、実際の上部旋回体の角速度をω、車体IMU13が検出した角速度をωmes、ジャイロバイアスをωb、コントローラ20の演算周期をΔtとすると、次の式(1)、(2)が成立する。
【0092】
【数1】
【0093】
【数2】
【0094】
なお、下付きk,k-1は各演算における時刻を示す記号である。式(1),(2)について、状態ベクトルxkを式(3)のように定義する。
【0095】
【数3】
【0096】
さらに、GNSS受信機17cが算出した方位角θを観測値ykとすると、次の式(4),(5)が導出できる。
【0097】
【数4】
【0098】
【数5】
【0099】
式(4),(5)にKFを適用するため、式(4),(5)の各行列を簡略化した表現にする。
【0100】
【数6】
【0101】
【数7】
【0102】
ここで、新たに追加されたwk-1,vkはそれぞれプロセス雑音、観測雑音である。プロセス雑音、観測雑音ともに平均値が0の正規分布に従う雑音であり、wkの分散はQk,vkの分散はRkである。これらQk,Rkともに設計値として扱われる。
【0103】
状態ベクトルxの推定値をxはxの上に付く)、状態ベクトルxの共分散行列をPとすると、カルマンフィルタの予測式(a3)~(a6)、および、更新式(a7)~(a9)を次式で与えることができる。
【0104】
【数8】
【0105】
【数9】
【0106】
【数10】
【0107】
【数11】
【0108】
【数12】
【0109】
【数13】
【0110】
【数14】
【0111】
以上の演算により、方位角θkとジャイロバイアスωbから構成される状態ベクトルxはxの上に付く)を逐次推定することができる。
【0112】
ただし、方位角品質判断部MH01で算出される方位角品質が低い場合には、観測値ykである方位角が真の方位角に対してバラつきをもっているため、ジャイロバイアスωbの推定値に誤差を生じる可能性が高い。この現象を解決するためには、方位角品質が高い場合にのみ、ジャイロバイアスの推定が有効になるようにロジックを構築することが望ましい。
【0113】
例えば、カルマンフィルタを用いる場合、方位角品質が低い場合には観測雑音の分散Rを非常に大きな値で設定する。観測雑音の分散Rを大きな値にすると、式(a5)のPxyが大きな値を取るようになる。よって、式(a7)の逆行列が0に近づくことで、カルマンゲインも0に近づく。
【0114】
カルマンゲインKが0になったとき、カルマンフィルタによる更新式(a8),(a9)は次のように簡略化することができる。
【0115】
【数15】
【0116】
【数16】
【0117】
式(a10)、(a11)は予測式(a3),(a4)がそのまま出力される式に他ならない。さらに、式(a3)は式(3),(4)より
【0118】
【数17】
になるため、ジャイロバイアスの推定値の更新が停止することになる。
【0119】
バイアス除去実行部MH02は、車体IMU13が算出した角速度ωmesから、上述の演算で算出されたジャイロバイアスωbの推定値(上記式(a12)の値)を引いた値を、ジャイロバイアスを除去した角速度ωとして出力する。
【0120】
<旋回動作判断部MH03>
旋回動作実行判断部MH03は、バイアス除去実行部MH02で算出したジャイロバイアスを除去した角速度ωを用いて、上部旋回体2の旋回動作の有無を判断する。具体的には角速度ωの絶対値が所定値(例えば、0.5deg/s)以上のときに上部旋回体2が旋回していると判断する。この所定値は、車体IMU13の性能に応じて設計する必要があることは言うまでもない。
【0121】
なお、角速度ωの絶対値を取る理由は、上部旋回体2は左回り(+の角速度)、右回り(-の角速度)の回転を自在に行えるためである。
【0122】
<方位角統合演算部MH04>
方位角演算統合演算部MH04は、方位角品質判断部MH01、バイアス除去演算実行部MH02、旋回動作実行判断部MH03のそれぞれの演算結果と、GNSSシステム17から出力された上部旋回体2の方位角を用いて、修正方位角の算出を行う。具体的な処理内容を以下に示す。
【0123】
まず、方位角品質判断部MH01で演算された方位角品質が良好である場合、旋回動作実行判断部MH03における旋回動作の有無によらず、GNSS受信機17cからの算出値である上部旋回体2の方位角θをそのまま修正方位角θmとして出力する。つまり、θm=θとなる。
【0124】
ただし、GNSS受信機17cのサンプリング周期が車体IMU13のサンプリング周期よりも遅い場合には、各サンプリング周期間の方位角を、バイアス除去演算実行部MH02で算出した角速度ωによって補間してもよい。例えば、コントローラ20の演算周期Δtに従って、GNSSシステム17が出力した方位角θに「Δt×ω」を逐次加算すればよい。
【0125】
以下に、方位角品質判断部MH01で演算された方位角品質が不良である場合の方位角統合演算部MH04の演算内容を説明する。
【0126】
まず、旋回動作実行判断部MH03で旋回動作が無いと判断された場合、方位角統合演算部MH04は、方位角品質が不良と判断される直前の方位角θ0を修正方位角θmとして出力する。
【0127】
これは、旋回動作が実施されない限り、方位角に変化が起きないという事実を利用するものである。なお、コントローラ20は、GNSS受信機17cからの算出値である上部旋回体2の方位角θを、逐次、記憶装置20f(図2参照)に記憶し、方位角品質が不良と判断されたとき、その直前に記憶装置20fに記憶された方位角θを方位角θ0として読み込むことで、方位角品質が不良と判断される直前の方位角θ0を修正方位角θmとして出力することができる。
【0128】
次に、旋回動作実行判断部MH03で旋回動作があると判断された場合であって、かつ、方位角品質が不良と判断されてからの時間tが所定値Tmax未満のとき、方位角統合演算部MH04は、方位角品質が不良と判断される直前の方位角θ0を基準値とし、この方位角θ0にジャイロバイアス除去実行部MH02の出力ωの積算値を加算した値を、修正方位角θmとして出力する。つまり修正方位角θmは次式で与えられる。
【0129】
【数18】
【0130】
さらに、旋回動作実行判断部MH03で旋回動作があると判断された場合であって、かつ、方位角品質が不良と判断されてからの時間tが所定値Tmax以上のとき、方位角統合演算部MH04は低精度警告フラグを有効にする。この状態は、バイアス除去実行部MH02で算出した角速度の積分値では、十分な精度の方位角を算出できないことを意味する。このため、修正方位角θmは式(7)の値で停止することが望ましい。なお、整数Nは所定時間までのサンプル数であり、「Tmax÷Δt」である。
【0131】
【数19】
【0132】
これまでに説明した修正方位角演算部20a-1の演算手順を図6のフローチャートに従って説明する。
【0133】
ステップFC01にて、コントローラ20の演算周期ごとに各種センサ(IMU13~16、GNSSシステム17)から情報取得を行う。
【0134】
ステップFC02では、IMU13~16から取得した各姿勢角が方位角品質を低下させ得る値になっていないかの確認を行う。例えば、ブーム角が所定値(例えば、水平面を基準にして30degなど)以上である場合は、Yes判定がなされステップFC03に遷移する。ステップFC03に遷移すると、方位角品質が良好であることが記憶装置20f(図2参照)に記憶される。一方で、No判定がなされた場合には、ステップFC04に遷移し、方位角品質が不良であると記憶装置20fに記憶される。
【0135】
なお、ステップFC02~FC04は方位角品質判断部MH01の演算内容であるため、判断部を介さずに、図5A及び図5Bのようにテーブル参照としてもよい。
【0136】
ステップFC05では、ステップFC03、FC04で記憶装置20fに記憶した方位角品質を参照し、この値が良好(Yes)である場合はステップFC06、不良(No)である場合にはステップFC07に遷移を行う判断をする。
【0137】
ステップFC06に遷移した場合、GNSSシステム17から取得した方位角の信頼性が高いため、観測雑音の分散Rを小さな値にする。一方、ステップFC07に遷移した場合、GNSSシステム17から取得した方位角の信頼性が低いため、観測雑音の分散Rを大きな値にする。
【0138】
ステップFC08では、ステップFC06、FC07で決定した分散Rを利用したカルマンフィルタ(KF)の演算を行い、ジャイロバイアスを推定する。
【0139】
ステップFC08の処理が完了すると、ステップFC21に遷移する。ステップFC21では、車体IMU13が取得した角速度ωmesからステップFC08で推定したジャイロバイアスωbを減算することでジャイロバイアス除去操作を実施する。
【0140】
以上のステップFC05~FC08の一連の演算は、ジャイロバイアス除去実行部MH02に相当する。
【0141】
ステップFC09では、ジャイロバイアス除去実行部MH02で算出した角速度ωと所定値を比較する。角速度ωの絶対値が所定値未満(Yes)であれば、ステップFC10に遷移し、旋回動作が無いと判断する。一方、角速度ωの絶対値が所定値以上(No)であれば、ステップFC11に遷移し、旋回動作があると判断する。
【0142】
以上のステップFC09~FC11の一連の演算は、旋回動作実行判断部MH03に相当する。
【0143】
ステップFC12では、再び、記憶装置20fに記憶した方位角品質を参照し、方位角品質が良好(Yes)である場合はステップFC13へ、不良(No)である場合はステップFC15へそれぞれ遷移する。
【0144】
ステップFC13に遷移した場合、方位角品質が良好であるので、修正方位角θmはGNSSシステム17が出力した方位角θを修正方位角θmとして出力する。その後、ステップFC14に遷移し、低精度警告に関するフラグを無効にして、演算を終了する。
【0145】
ステップFC15に遷移した場合、ステップFC10、FC11で決定した旋回動作の有無を参照し、旋回動作がない場合(Yesの場合)はステップFC16に遷移し、一方、旋回動作がある場合(Noの場合)にはステップFC17に遷移する。
【0146】
ステップFC16に遷移した場合、方位角品質が不良であっても、旋回動作が実施されていないため、方位角品質が不良になる直前の方位角θ0を修正方位角θmとして出力する。その後、ステップFC14に遷移し、低精度警告に関するフラグを無効にして、演算を終了する。
【0147】
ステップFC17に遷移した場合、方位角品質が不良になってからの経過時間tが所定時間Tmax未満であるかを確認する。経過時間tが所定時間未満(Yes)である場合はステップFC18に遷移する。一方、経過時間が所定値以上(No)である場合はステップFC19へと遷移する。
【0148】
ステップFC18に遷移した場合、修正方位角θmは式(6)によって算出される。その後、ステップFC14に遷移し、低精度警告に関するフラグを無効にして、演算を終了する。
【0149】
ステップFC19に遷移した場合、修正方位角θmは式(7)によって算出される。その後、ステップFC20に遷移し、低精度警告に関するフラグを有効にして、演算を終了する。
【0150】
以上のように本実施の形態においては、コントローラ20は、位置姿勢演算部20aにおいて、車体IMU13(車体姿勢角取得装置)で取得した上部旋回体2の姿勢角とブームIMU14(フロント姿勢角取得装置)で取得したフロント作業機1の姿勢角の少なくとも一方が所定値以上であるときにGNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角の品質が低いと判断し、方位角の品質と、GNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角とに基づいて、車体IMU13(角速度取得装置)で取得した上部旋回体2の角速度からジャイロバイアスを除去するバイアス除去演算を実行し、かつジャイロバイアスを除去した上部旋回体2の角速度に基づいて上部旋回体2の旋回動作の有無を判断し、GNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角と、ジャイロバイアスを除去した上部旋回体2の角速度と、上部旋回体2の旋回動作の判断結果に基づいて上部旋回体2の修正方位角を算出するため、フロント作業機1の上げ下げなどの油圧ショベル100の姿勢変化によらずに、GNSSを利用して正確な上部旋回体2の方位角を算出し、上部旋回体2の方位角を高精度、かつ、ロバストに取得することができる。このためマシンガイダンスやマシンコントロールの動作を停止させる頻度を低減し、作業効率を向上することができる。
【0151】
<第2の実施の形態>
第1の実施形態は、油圧ショベル100に追加して取り付けられたセンサのみを用いる構成であった。
【0152】
本発明の第2の実施形態は、油圧ショベル100にもともと取り付けられているセンサを利用することで、演算内容の容易化、もしくは、ロバスト化を達成するものである。
【0153】
まず、本実施形態の特徴を概略的に説明すれば以下のようである。
【0154】
本実施の形態において、コントローラ20は、GNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角の品質の判断に際して、ブームIMU14(フロント姿勢角取得装置)で取得したフロント作業機1の姿勢角のバックアップとしてブーム4の上げ動作(フロント作業機1の動作)を指示する操作レバー装置9a(第1操作レバー装置)の操作信号を入力し、この操作レバー装置9aの操作信号に基づいて、操作レバー装置9aのフロント作業機1の上げ方向操作が所定時間以上継続したときに、上部旋回体2の方位角の品質が低いと判断する。所定時間は、例えばフロント作業機1がブーム上げ開始時の標準的な姿勢にあるときに操作レバー装置9aをブーム上げ方向にフル操作し、ブーム4の角度が前述した所定値に達するまでの経過時間であり、上部旋回体2の方位角の品質を判断するための判定値として、コントローラ20の記憶装置(例えばROM)に記憶されている。
【0155】
また、コントローラ20は、上部旋回体2の旋回動作の有無の判断に際して、ジャイロバイアスを除去した上部旋回体2の角速度のバックアップとして操作レバー装置9b(第2操作レバー装置)の操作信号を入力し、この操作レバー装置9bの操作信号に基づいて、操作レバー装置9bの操作信号の大きさが所定値以上であるときに、上部旋回体2の旋回動作が有りと判断する。所定値は、操作信号を発生させたとき、旋回モータ2aが回転し始める操作信号の値であり、上部旋回体2の旋回動作の有無の判定値として、コントローラ20の記憶装置(例えばROM)に記憶されている。
【0156】
以下に、上述したコントローラ20の処理内容の詳細を図7に基づいて説明する。図7は、本実施形態における修正方位角演算部20a-1の処理機能を示すブロック図である。
【0157】
本実施形態における修正方位角演算部20a-1は、図4に示す方位角品質判断部MH01及び旋回動作実行判断部MH03に、操作レバー装置9a,9bの操作信号(電気信号)が追加信号として更に入力される。
【0158】
方位角品質判断部MH01は、上述の車体IMU13及びブームIMU14から出力される姿勢角情報を用いた判断に加えて、操作レバー装置9aから出力されるブーム上げの操作信号を利用することでも、方位角品質を判断する。例えば、操作レバー装置9aから出力されるブーム上げの操作信号に基づくブーム上げの操作が所定時間続くと、ブームシリンダ4aが徐々に伸びて、最終的に図15Aの姿勢に達する。つまり、ブームIMU14の姿勢角を取得しなくとも、ブーム上げの操作信号とその経過時間を利用することでも、方位角品質の判断に必要なフロント作業機1の姿勢を推測することができる。
【0159】
このように、操作レバー装置9aの操作信号を利用すれば、万が一、故障などでブームIMU14の信号が利用できない状況が発生した場合でも、方位角品質の判断を継続することができ、システムとしてのロバスト性の向上が実現できる。
【0160】
また、本実施形態における旋回動作実行判断部MH03は、バイアス除去実行部MH02から出力される角速度ωを用いた判断に加えて、操作レバー装置9bから出力される旋回の操作信号を利用することで、旋回動作の有無を判断する。
【0161】
旋回操作に関する操作信号の値が所定値未満(例えば、パイロット圧換算値で0.5MPa未満)である場合は、旋回モータ2aに圧油が流入しないため、上部旋回体2は回転しないが、操作信号の値が旋回モータ2aが回転する操作信号の下限値である所定値以上(例えば、パイロット圧換算値で1.0MPa以上)になると、旋回モータ2aに圧油が流入して上部旋回体2が回転する。
【0162】
このため、旋回動作に係る操作信号を確認すれば、車体IMU13が角速度の変化を検出する前から旋回動作の有無を判断可能になる。このように旋回の操作信号を使った旋回動作の判定は、ジャイロバイアス除去実行部MH02でのジャイロバイアスの除去性能が不十分であり、図6のフローチャートにおけるステップFC09の旋回動作を判断するための角速度の閾値値を十分に下げられない場合に、特に有効である。
【0163】
なお、第1及び第2の実施形態では、方位角品質判断演算部MH01に、ブームIMU14の姿勢角のみを入力しているが、本発明はこれに限定されるものではない。フロント作業機1の姿勢をより正確に判断したい場合には、ブームIMU14、アームIMU15、バケットIMU16の全ての姿勢角を入力するように変更すればよい。
【0164】
また、第2の実施形態では、操作レバー装置9a,9bが電気レバー方式である場合について説明したが、操作レバー装置9a,9bが油圧パイロット方式である場合は、それぞれの操作レバーの操作方向及び操作量に応じたパイロット圧を検出する圧力センサを設け、その圧力センサの信号を入力するようにすればよい。
【0165】
このように本実施の形態によれば、操作レバー装置9a,9bの操作信号をフロント作業機1の姿勢角或いは上部旋回体2の角速度のバックアップとして用いるため、システムとしてのロバスト性を更に向上させることができ、作業効率を向上することができる。
【0166】
<第3の実施の形態>
第1及び第2の実施形態は、フロント作業機1にIMUに代表される傾斜角検出器を用いるものであったが、本発明は、フロント作業機1に傾斜角検出器を用いなくても実施可能である。
【0167】
まず、本実施形態の特徴を概略的に説明すれば以下のようである。
【0168】
本実施の形態において、油圧ショベル100は、車体IMU13(車体姿勢角取得装置)及びブームIMU14(フロント姿勢角取得装置)の少なくとも一方の姿勢角取得装置として画像認識装置35(図8参照)を備え、画像認識装置35は、少なくとも1台のカメラ30又は32又は33(図8参照)から取得した画像情報に基づいて上部旋回体2の姿勢角とフロント作業機1の姿勢角の少なくとも一方を認識し、コントローラ20は、画像認識装置35で認識した上部旋回体2の姿勢角とフロント作業機1の姿勢角の少なくとも一方に基づいてGNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角の品質を判断し、上部旋回体2の方位角の品質が低いと判断したときにバイアス除去演算を実行する。
【0169】
以下、第3の実施形態の詳細を図8図10を用いて説明する。
【0170】
図8は、本実施形態における油圧ショベル100の外観とその周囲の状況を示す図である。なお、説明を簡略化するため、図1と同一の構成要素を示す符号は図示を省略している。
【0171】
本実施形態に関する油圧ショベル100は、キャビン9の頂部前側に設置されたステレオカメラ30と、キャビン9の頂部後側に設置された無線通信機31aとを備えている。無線通信機31aは作業現場内に備えられた別の無線通信機31bと無線通信を行う。無線通信機31bは作業現場内に備えられた管理用カメラ32が撮影した画像情報を作業現場内に配信する。なお、管理用カメラ32は作業現場内に固定されたカメラに限定されない。例えば、作業現場内を自由に飛行可能な無人航空機(ドローン)34にカメラ33と無線通信機31cを搭載してもよい。
【0172】
図9は、本実施形態におけるコントローラ20の処理機能を示すブロック図である。なお、説明を簡単にするため、図3に示された施工目標面演算部20b及び油圧システム制御部20dは図示を省略している。
【0173】
本実施形態におけるコントローラ20の処理機能は、図8に示す油圧ショベルに設置されたステレオカメラ30及び無線通信機31bの情報が入力されるように変更されている点を除いて、図3に示した第1の実施形態におけるコントローラ20の処理機能と同じである。コントローラ20は、その機能の変更部分として、取得した画像情報に基づいてフロント作業機の姿勢情報を算出する画像認識部20gが追加されている。ステレオカメラ30、管理用カメラ32、画像認識部20gをまとめたものが、前述した画像認識装置35に相当する。
【0174】
画像認識装置35の画像認識部20gによって算出される姿勢情報は、ステレオカメラ30と管理用カメラ32の性能(解像度など)に大きく依存する。本発明では、フロント作業機1が上げ姿勢(図15A)であるか、下げ姿勢(図14A)であるかを判断できる性能を有していれば十分である。
【0175】
本実施形態では、上述の画像認識部20gで演算した姿勢情報を修正方位角演算部20a-1で利用する。
【0176】
図10は、本実施形態における修正方位角演算部20a-1の処理機能を示すブロック図である。
【0177】
図10において、修正方位角演算部20a-1には、図4に示す方位角品質判断部MH01及び旋回動作実行判断部MH03に、画像認識部20gからの信号が追加信号として更に入力される。
【0178】
方位角品質判定部MH01は、車体IMU13で取得した車体傾斜角の情報に加えて、画像認識部20gで演算したフロント作業機1の上げ姿勢、下げ姿勢情報を用いて方位角品質を判断する。つまり、画像認識部20gで演算した姿勢情報において、フロント作業機1が上げ姿勢であれば、方位角品質が劣っていると判断する。
【0179】
なお、ドローン34に設定した管理用カメラ33を利用する場合、油圧ショベル100自身だけでなく油圧ショベル100の周辺の画像情報の取得が可能になる。このような場合には、方位角品質演算部MH01は油圧ショベル100自身の姿勢情報だけでなく、周辺障害物の情報も加味して方位角品質を算出してもよい。
【0180】
また、画像認識部20gにおいて、フロント作業機1の姿勢角だけでなく、上部旋回体2の姿勢角も演算し、方位角品質演算部MH0でその上部旋回体2の姿勢角を利用してもよい。ただし、その場合の姿勢角は画像処理による姿勢情報であるので、方位角品質の判断精度は車体IMU13よりも劣るため、バックアップとしての利用にとどめることが望ましい。
【0181】
旋回動作実行判断部MH03にも、画像認識部20gで取得した上部旋回体2の姿勢情報を利用してもよい。ただし、この場合も、画像処理による姿勢情報に基づく旋回動作の有無の判断精度は車体IMU13よりも劣るため、バックアップとしての利用にとどめることが望ましい。
【0182】
なお、図8の油圧ショベル100ではステレオカメラ30と管理用カメラ32の両方を用いた構成としているが、どちらか一方でも本発明を実行できることは言うまでもない。
【0183】
このように本実施の形態によれば、ブームIMU14或いは車体IMU13を用いなくても、フロント作業機1の上げ下げなどの油圧ショベル100の姿勢変化によらずに、GNSSを利用して正確な上部旋回体2の方位角を算出し、上部旋回体2の方位角を高精度、かつ、ロバストに取得することができる。
【0184】
また、画像認識装置35で取得した姿勢情報をブームIMU14或いは車体IMU13のバックアップとして用いる場合は、システムとしてのロバスト性を更に向上させ、作業効率を向上することができる。
【0185】
<第4の実施の形態>
例えば、山間部の作業現場では、図17に示すように油圧ショベル100の背後に急峻な傾斜面がある場合がある。このような状況では、油圧ショベル100の背面の衛星信号を受信することができないため、方位角の品質も当然低下する。
【0186】
本発明の第4の実施形態は、そのような状況に鑑みてなされたものである。
【0187】
まず、本実施形態の特徴を概略的に説明すれば以下のようである。
【0188】
本実施の形態において、コントローラ20は、油圧ショベル100(建設機械)の周辺の地形情報を記憶している周辺地形参照部20h(地形情報記憶装置)図11参照)を備え、GNSS受信機17cによって算出したGNSSアンテナ17a,17bの3次元座標に基づいて、周辺地形参照部20hに記憶した油圧ショベル100(建設機械)の周辺の地形情報を読み込み、車体IMU13(車体姿勢角取得装置)で取得した上部旋回体2の姿勢角とブームIMU14(フロント姿勢角取得装置)で取得したフロント作業機1の姿勢角に基づく上部旋回体2の方位角の品質の判断に加え、或いはその判断に代え、油圧ショベル100(建設機械)の周辺地形がGNSSアンテナ17a,17bの衛星信号受信可能領域200を遮断する可能性があるとき、GNSS受信機17cで算出された上部旋回体2の方位角の品質が低いと判断し、バイアス除去演算を実行する。
【0189】
以下に、コントローラ20の処理内容の詳細を図11に基づいて説明する。図11は、本実施形態におけるコントローラ20の処理機能を示すブロック図である。
【0190】
本実施形態において、コントローラ20は、周辺地形参照部20hを更に備えている。
【0191】
周辺地形参照部20hは、GNSSシステム17で取得したGNSSアンテナ17a,17bの3次元座標情報を入力して、油圧ショベル周辺の地形情報を参照し、この参照した地形情報を修正方位角演算部20a-1に出力する。
【0192】
図12は、本実施形態における修正方位角演算部20a-1の処理機能を示すブロック図である。
【0193】
本実施形態における修正方位角演算部20a-1は、図12に示す通り、油圧ショベル100の姿勢情報(フロント作業機1の上げ下げなどの油圧ショベル100の姿勢変化)のみでなく、周辺の地形情報からも方位角品質を決定できることに特徴がある。つまり、自車位置の周辺に衛星信号を遮断するような地形(図17の急斜面など)がある場合、油圧ショベル100の姿勢によらずに、方位角品質が低下していると判断する。
【0194】
本実施の形態によれば、フロント作業機1の上げ下げなどの油圧ショベル100の姿勢変化によらずに、かつ/又は油圧ショベル100の周辺地形によらずに、上部旋回体2の方位角を高精度、かつ、ロバストに取得し、作業効率を向上することができる。
【0195】
なお、以上において第1~第4の実施形態を説明したが、これらの実施形態のいずれか2つ以上を組み合わせた構成にしてもよく、その構成も本発明の範囲に該当することは言及するまでもない。
【符号の説明】
【0196】
1 フロント作業機
2 上部旋回体
3 下部走行体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
9 キャビン
9a,9b 操作レバー装置
11 モニタ
13 慣性計測装置(車体IMU)(角速度取得装置)(車体姿勢角取得装置)(車体傾斜センサ)
14 慣性計測装置(ブームIMU)(フロント姿勢角取得装置)(フロント傾斜センサ)
15 慣性計測装置(アームIMU)(フロント姿勢角取得装置)
16 慣性計測装置(バケットIMU)(フロント姿勢角取得装置)
17 GNSSシステム
17a,17b GNSSアンテナ
17c GNSS受信機
20 コントローラ
20a 位置姿勢演算部
20a-1 修正方位角演算部
20a-2 3次元位置姿勢演算部
20b 施工目標面演算部
20c モニタ表示制御部
20d 油圧システム制御部
20e 記憶装置
20f 記憶装置
20g 画像認識部
20h 周辺地形参照部
30 ステレオカメラ
31a 無線通信機
31b 無線通信機
31c 無線通信機
32 管理用カメラ
33 カメラ
34 無人航空機(ドローン)
35 画像認識装置
100 油圧ショベル
200 衛星信号受信可能領域
Σm 車体座標系
MH01 方位角品質判断部
MH02 バイアス除去実行部
MH03 旋回動作判断部
MH04 方位角統合演算部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17