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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】標的核酸を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6825 20180101AFI20230315BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20230315BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230315BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230315BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20230315BHJP
【FI】
C12Q1/6825 Z ZNA
C12Q1/6827 Z
G01N33/53 M
G01N33/536 D
C12N15/09 Z
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019119734
(22)【出願日】2019-06-27
(62)【分割の表示】P 2017566932の分割
【原出願日】2017-02-06
(65)【公開番号】P2019205437
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2019-12-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2016022659
(32)【優先日】2016-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 遼平
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】牧野 晃久
【審判官】福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-199965(JP,A)
【文献】特開2013-90622(JP,A)
【文献】特開2010-273660(JP,A)
【文献】特開2015-128400(JP,A)
【文献】特開2012-34688(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157377(WO,A1)
【文献】特開2002-275(JP,A)
【文献】Nucleic Acids Research,2001年,vol.29,No.6,e34,p.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N15/00-15/90
G01N21
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸を検出する方法であって、
(1)第一の核酸プローブと試料とを混合し、混合液を調製する工程と、
(2)前記混合液の蛍光強度を測定する工程と、
(3)前記蛍光強度に基づき、前記標的核酸を検出する工程と、
を備え、
ここで、
(i)前記標的核酸は、前記第一の核酸プローブがハイブリダイズするプローブ結合領域を備え、
前記プローブ結合領域の少なくとも一方の末端がグアニン塩基であり、前記グアニン塩基から1~7塩基以内の前記プローブ結合領域に一塩基多型が存在せず、かつ、前記グアニン塩基から1~7塩基以内の前記プローブ結合領域にシトシン塩基が1つ以上存在し;
(ii)前記第一の核酸プローブは、前記グアニン塩基に対向するシトシン塩基を末端に有するオリゴヌクレオチドと、該シトシン塩基に結合された蛍光色素と、を備え、
前記蛍光色素は、グアニン塩基との相互作用により消光する蛍光色素であり、
前記オリゴヌクレオチドは、前記末端グアニン塩基から1~7塩基以内に存在するシトシン塩基を除いて前記プローブ結合領域の核酸と相補的であり、該シトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチドの塩基はグアニン塩基又は前記蛍光色素の蛍光の消光作用を持たない塩基であり、ただし、該シトシン塩基のうち前記末端グアニン塩基に最も近接するシトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基は、前記蛍光色素の蛍光の消光作用を持たない塩基であり、ただし、前記第一の核酸プローブは前記標的核酸の末端グアニン塩基から1~7塩基以内に存在する一塩基多型を検出するためのプローブではない;
(iii)前記末端グアニン塩基に最も近接するシトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基が前記蛍光色素の蛍光の消光作用を持たない塩基であることによって、前記末端グアニン塩基に最も近接するシトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基がグアニン塩基である場合と比べて、前記標的核酸とハイブリダイズしないときの蛍光強度の低下が小さい、
方法。
【請求項2】
前記検出が、融解曲線分析によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、被検核酸を鋳型とした核酸増幅反応により得られる増幅産物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
標的核酸を検出する方法であって、
(1)第一の核酸プローブと被験核酸を含む試料とを混合し、混合液を調製する工程と、
(2)前記混合液に含まれる被検核酸を鋳型として核酸増幅反応を行い、増幅産物を得る工程であって、前記増幅反応が、変性段階、アニーリング段階及び伸長段階を反復するサイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応である、工程と、
(3)前記アニーリング段階において、前記混合液の蛍光強度を測定する工程と、
(4)前記蛍光強度に基づき、前記標的核酸を検出する工程と、
を備え、
ここで、
(i)前記標的核酸は、前記第一の核酸プローブがハイブリダイズするプローブ結合領域を備え、
前記プローブ結合領域の少なくとも一方の末端がグアニン塩基であり、前記グアニン塩基から1~7塩基以内の前記プローブ結合領域に一塩基多型が存在せず、かつ、シトシン塩基が1つ以上存在し;
(ii)前記第一の核酸プローブは、前記グアニン塩基に対向するシトシン塩基を末端に有するオリゴヌクレオチドと、該シトシン塩基に結合された蛍光色素と、を備え、
前記蛍光色素は、グアニン塩基との相互作用により消光する蛍光色素であり、
前記オリゴヌクレオチドは、前記末端グアニン塩基から1~7塩基以内に存在するシトシン塩基を除いて前記プローブ結合領域の核酸と相補的であり、該シトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチドの塩基はグアニン塩基又は前記蛍光色素の蛍光の消光作用を持たない塩基であり、ただし、該シトシン塩基のうち前記末端グアニン塩基に最も近接するシトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基は、前記蛍光色素の蛍光の消光作用を持たない塩基であり、ただし、前記第一の核酸プローブは前記標的核酸の末端グアニン塩基から1~7塩基以内に存在する一塩基多型を検出するためのプローブではない;
(iii)前記末端グアニン塩基に最も近接するシトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基が前記蛍光色素の蛍光の消光作用を持たない塩基であることによって、前記末端グアニン塩基に最も近接するシトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基がグアニン塩基である場合と比べて、前記標的核酸とハイブリダイズしないときの蛍光強度の低下が小さい、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的核酸を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の検出方法の一つとして、蛍光標識プローブ法が挙げられる(下記、特許文献1を参照)。この方法に用いるプローブには、例えば、蛍光色素及び蛍光色素による蛍光を消光させる作用(「消光作用」ともいう)を有する消光分子が、隣接するように結合された1本鎖のオリゴヌクレオチドを備える核酸プローブがある。この核酸プローブは、標的である核酸(以下、「標的核酸」という)にハイブリダイズするように設計されている。ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」ともいう)において、標的核酸に上記核酸プローブがハイブリダイズし、さらに、核酸プローブがヌクレアーゼ活性を持つポリメラーゼにより分解されると、蛍光色素から消光分子が離れるため、蛍光色素の蛍光強度が増加する。上記1本鎖オリゴヌクレオチドを有する核酸プローブを用いる方法では、核酸プローブの分解前後における蛍光強度又は蛍光波長の変化により、標的核酸を検出する。
【0003】
蛍光標識プローブ法に用いられるプローブには、また、長さの異なる2本のオリゴヌクレオチドを有する核酸プローブがある(下記、特許文献2-3を参照)。この核酸プローブでは、2本のオリゴヌクレオチドが互いに相補的な塩基配列を有しており、一方のオリゴヌクレオチドには蛍光色素が結合され、もう一方のオリゴヌクレオチドには蛍光色素による蛍光を消光させる作用を有する消光分子が結合されている。PCRにおいて、高温にすると、上記2本のオリゴヌクレオチドは分離する。これに伴い、蛍光色素から消光分子が離れるため、蛍光強度が増加する。続いて、温度を下げると、長い方のオリゴヌクレオチドが標的核酸にハイブリダイズし、蛍光色素による蛍光が観測され続ける。一方、標的核酸が存在しない場合には、温度を下げると、上記2本のオリゴヌクレオチドが互いにハイブリダイズし、蛍光色素に消光分子が近接するため、蛍光色素による蛍光が消光する。上記2本のオリゴヌクレオチドを有する核酸プローブを用いる方法では、PCRのアニーリング段階における蛍光強度を測定することにより、標的核酸を検出する。
【0004】
蛍光標識プローブ法に用いられるプローブには、また、グアニン塩基に近接すると蛍光強度が減少する(「消光」ともいう)蛍光色素で標識されたQuenching Probe(以下、「QProbe」という)がある(下記、特許文献4を参照)。このQProbeは、上記蛍光色素が結合したシトシン塩基を末端に有しており、QProbeが標的核酸にハイブリダイズすると、シトシン塩基が標的核酸中のグアニン塩基と塩基対を形成し、蛍光色素の近傍にグアニン塩基が配置されるよう設計されている。そのため、QProbeが標的核酸にハイブリダイズすると、蛍光色素はグアニン塩基の近傍に配置されるため消光する。QProbeを用いる核酸の検出方法では、ハイブリダイズ前後における蛍光強度の減少量により標的核酸を定量する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表平6-500021号公報
【文献】特開平10-262700号公報
【文献】特表2004-511227号公報
【文献】特開2001-286300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1-3に記載の核酸プローブを用いて標的核酸を検出するためには、検出などに高価な精密機器を必要とし、費用がかかる。さらに、特許文献1-3に記載の核酸プローブを用いた標的核酸の検出は工程数が多く複雑であり、検出に熟練を要する。
【0007】
また、本発明者らの検討によれば、QProbeであっても、標的核酸を高感度に検出することが困難となる場合が生じるなど、感度の観点で更なる改善の余地があることが判明した。
【0008】
つまり、QProbeは、蛍光色素が結合したシトシン塩基から1~7塩基以内にグアニン塩基が存在すると、当該グアニン塩基との相互作用により蛍光色素の蛍光強度が低下する。すなわち、QProbeが標的核酸にハイブリダイズしなくても、蛍光色素の蛍光強度が低下する。これにより、ハイブリダイズ前後における蛍光色素の蛍光強度の減少率が小さくなり、感度の低下を招く。
したがって、QProbeの設計の際に、核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズする領域(以下、「プローブ結合領域」という)には、QProbeをハイブリダイズさせるのに適した領域、すなわち、高感度を保つために、蛍光色素が結合したシトシン塩基に対向するグアニン塩基から1~7塩基以内に、シトシン塩基が存在しない領域を選定せざるを得ない。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、プローブ結合領域を自由に選定し、かつ高感度な検出を達成できる手段を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、標的核酸のプローブ結合領域において、プローブ上の蛍光色素が結合したシトシン塩基に対向するグアニン塩基から1~7塩基以内にシトシン塩基が存在する場合であっても、感度に優れる核酸プローブを提供することを目的とする。本発明はまた、上記核酸プローブを用いた標的核酸を検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、標的核酸を検出する第一の核酸プローブであって、前記標的核酸は、前記第一の核酸プローブがハイブリダイズするプローブ結合領域を備え、前記プローブ結合領域の少なくとも一方の末端がグアニン塩基であり、かつ、前記グアニン塩基から1~7塩基以内の前記プローブ結合領域にシトシン塩基が1つ以上存在し、前記第一の核酸プローブは、前記グアニン塩基に対向するシトシン塩基を末端に有するオリゴヌクレオチドと、該シトシン塩基に結合された蛍光色素と、を備え、前記蛍光色素は、グアニン塩基との相互作用により消光する蛍光色素であり、前記オリゴヌクレオチドは、前記末端グアニン塩基から1~7塩基以内に存在するシトシン塩基を除いて前記プローブ結合領域の核酸と相補的であり、該シトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基はグアニン塩基又は蛍光の消光作用を持たない塩基であり、ただし、該シトシン塩基のうち前記末端グアニン塩基に最も近接するシトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基は蛍光の消光作用を持たない塩基である、第一の核酸プローブを提供する。
【0011】
第一の核酸プローブにおいて、蛍光の消光作用を持たない塩基は、ヒポキサンチン、アデニン、チミン、シトシン及びネブラリンから選ばれるいずれかの塩基であることが好ましく、ヒポキサンチン塩基であることがより好ましい。
【0012】
本発明はまた、標的核酸を検出する方法であって、第一の核酸プローブと試料とを混合し、混合液を調製する工程と、前記混合液の蛍光強度を測定する工程と、前記蛍光強度に基づき、前記標的核酸を検出する工程と、を備える方法を提供する。
【0013】
上記標的核酸を検出する方法において、検出は融解曲線分析によって行われてもよい。
【0014】
本発明はまた、標的核酸を検出する方法であって、上記第二の核酸プローブと被検核酸を含む試料とを混合し、混合液を調製する工程と、前記混合液に含まれる被検核酸を鋳型として核酸増幅反応を行い、増幅産物を得る工程とを備える方法を提供する。前記増幅反応は、変性段階、アニーリング段階及び伸長段階を反復するサイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応である。前記アニーリング段階において、前記混合液の蛍光強度を測定する工程と、前記蛍光強度に基づき、前記標的核酸を検出する工程と、を備える。
【0015】
本発明はまた、標的核酸を検出する第二の核酸プローブであって、前記標的核酸は、前記第二の核酸プローブがハイブリダイズするプローブ結合領域を備え、前記プローブ結合領域の少なくとも一方の末端がグアニン塩基であり、かつ、前記グアニン塩基から1~7塩基以内の前記プローブ結合領域に一塩基多型が1つ以上存在し、前記第二の核酸プローブは、前記グアニン塩基に対向するシトシン塩基を末端に有するオリゴヌクレオチドと、該シトシン塩基に結合された蛍光色素と、を備え、前記蛍光色素は、グアニン塩基との相互作用により消光する蛍光色素であり、前記オリゴヌクレオチドは、前記末端グアニン塩基から1~7塩基以内に存在する一塩基多型を除いて前記プローブ結合領域の核酸と相補的であり、該一塩基多型に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基はグアニン塩基又は蛍光の消光作用を持たない塩基であり、ただし、該一塩基多型のうち前記末端グアニン塩基に最も近接する一塩基多型に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基は蛍光の消光作用を持たない塩基である、第二の核酸プローブを提供する。
【0016】
第二の核酸プローブにおいて、蛍光の消光作用を持たない塩基は、ヒポキサンチン、アデニン、チミン、シトシン及びネブラリンから選ばれるいずれかの塩基であることが好ましく、ヒポキサンチン塩基であることがより好ましい。
【0017】
本発明はまた、標的核酸を検出する方法であって、第二の核酸プローブと試料とを混合し、混合液を調製する工程と、前記混合液の蛍光強度を測定する工程と、前記蛍光強度に基づき、前記標的核酸を検出する工程と、を備える方法を提供する。この検出は、融解曲線分析によって行われてもよく、融解曲線分析によって一塩基多型を検出可能である。
【0018】
上記試料は、被検核酸を鋳型とした核酸増幅反応により得られる増幅産物を含んでよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、標的核酸のプローブ結合領域の少なくとも一方の末端がグアニン塩基であれば、プローブ結合領域は特に制限なく選定されることができ、かつ高感度な検出を達成できるQProbeを設計することが可能となる。具体的には、標的核酸のプローブ結合領域に、プローブ上の蛍光色素が結合したシトシン塩基に対向するグアニン塩基から1~7塩基以内にシトシン塩基が存在する場合であっても、感度に優れる核酸プローブ(第一の核酸プローブ)を本発明は提供することができる。
【0020】
本発明によれば、また、上記核酸プローブ(第一の核酸プローブ)を用いた標的核酸の検出方法を提供することができる。
【0021】
本発明によれば、また、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)を検出可能な核酸プローブ(第二の核酸プローブ)を提供することができる。
【0022】
本発明によれば、また、上記核酸プローブ(第二の核酸プローブ)を用いた標的核酸の検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第一の核酸プローブによる核酸検出のメカニズムを表す模式図である。
図2図2は、オリゴヌクレオチドの末端に存在するシトシン塩基に隣接するグアニン塩基を、ヒポキサンチン塩基に置換した塩基配列を有する、核酸プローブを用いて行った融解曲線分析の結果を示す。
図3図3は、オリゴヌクレオチドの末端に存在するシトシン塩基に隣接するグアニン塩基を、チミン塩基等の他塩基に置換した塩基配列を有する、核酸プローブを用いて行った融解曲線分析の結果を示す。
図4図4は、ヒポキサンチン塩基に置換するグアニン塩基と、蛍光色素を結合させたシトシン塩基との距離を段階的に変えたプローブを用いて行った融解曲線分析の結果を示す。
図5図5は、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する、複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブを用いて行った融解曲線分析の結果を示す。
図6図6は、LAMP法によるMycoplasma pneumoniaeの検出の結果を示す。
図7図7は、PCR法及び融解曲線分析によるヒト型結核菌の検出の結果を示す。
図8図8は、一塩基多型(SNP)の検出の結果を示す。
図9図9は、SNPの位置を段階的に変えた標的核酸の検出の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、場合により図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0025】
本発明でいう「標的核酸」とは、本実施形態に記載のプローブを用いて検出する対象となる核酸のことをいう。
【0026】
本発明でいう「相補的」とは、アデニン塩基とチミン塩基、グアニン塩基とシトシン塩基のそれぞれが対となり、水素結合を形成できるという意味である。
【0027】
本発明でいう「一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)」とは、塩基配列上の一塩基の置換によって起きる多型のことである。
【0028】
本発明でいう「完全マッチ」とは、標的核酸が有するプローブ結合領域の塩基配列に対して、プローブが有するオリゴヌクレオチドの塩基配列が、すべて相補的であり、標的核酸が有するプローブ結合領域とプローブが有するオリゴヌクレオチドがハイブリダイズすることをいう。
一方、本発明でいう「ミスマッチ」とは、標的核酸が有するプローブ結合領域の塩基配列に対して、プローブが有するオリゴヌクレオチドの塩基配列が、1塩基でも相補的でないため、標的核酸が有するプローブ結合領域とプローブが有するオリゴヌクレオチドがハイブリダイズできないこと、又は、「完全マッチ」と比較して、より低い融解温度を有することをいう。
ここでいう「融解温度」とは、二本鎖核酸の50%が変性して一本鎖となる温度をいう。
【0029】
標的核酸の由来は特に制限されることなく、例えば、動物、植物、菌類、微生物又はウイルス由来の核酸を対象とし得る。
本実施形態における核酸は、DNA及びRNAの天然に存在する核酸であってもよく、Locked Nucleic Acid(LNA)及びPeptide Nucleic Acid(PNA)などの人工核酸であってもよい。
【0030】
本実施形態における標的核酸は、第一の核酸プローブがハイブリダイズするプローブ結合領域を備える。
【0031】
上記標的核酸のプローブ結合領域の少なくとも一方の末端(5’末端でも3’末端でもよい)は、グアニン塩基である。
【0032】
上記標的核酸のプローブ結合領域の末端に位置するグアニン塩基から1~7塩基以内の上記プローブ結合領域にシトシン塩基が1つ以上存在する。このシトシン塩基に対向するグアニン塩基を蛍光の消光作用を持たない塩基に置換したときに、本実施形態における第一の核酸プローブの感度がより優れる観点から、シトシン塩基は、プローブ結合領域の末端に位置するグアニン塩基から5塩基以内に存在してよく、3塩基以内に存在してよく、上記末端グアニン塩基に隣接する塩基がシトシン塩基であってよい。
【0033】
本実施形態における第一の核酸プローブは、上記プローブ結合領域の末端に位置するグアニン塩基に対向するシトシン塩基を、末端に有するオリゴヌクレオチドと、該シトシン塩基に結合され、グアニン塩基により消光する蛍光色素と、を備える。
【0034】
上記第一の核酸プローブが有するオリゴヌクレオチドは、上記プローブ結合領域の末端に位置するグアニン塩基から1~7塩基以内に存在するシトシン塩基を除いて、上記プローブ結合領域の核酸と完全に相補的である。該シトシン塩基に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基は、グアニン塩基又は蛍光の消光作用を持たない塩基である。ただし、該シトシン塩基のうち上記プローブ結合領域の末端に位置するグアニン塩基の最も近くに位置するシトシン塩基に対向する、上記オリゴヌクレオチド上の塩基は、蛍光の消光作用を持たない塩基である。
末端のシトシン塩基から1~7塩基以内に、グアニン塩基が2つ以上存在する場合、末端のシトシン塩基の最も近くに位置するグアニン塩基以外は、蛍光の消光作用を持たない塩基に置換してもよく、置換しなくともよい。第一の核酸プローブの感度をより高める観点からは、末端のシトシン塩基から1~7塩基以内に存在するグアニン塩基のうち、2塩基以上を蛍光の消光作用を持たない塩基に置換することが好ましい。
【0035】
本発明でいう「蛍光の消光作用を持たない塩基」とは、グアニン塩基との相互作用により消光する蛍光色素の近くに位置したときに、この蛍光色素の蛍光が消光しない塩基又は、グアニン塩基と比べて、蛍光色素の蛍光強度の減少量が小さい塩基のことをいう。
【0036】
上記蛍光の消光作用を持たない塩基は、感度に優れる観点から、ヒポキサンチン、アデニン、チミン、シトシン及びネブラリンから選ばれるいずれかの塩基であることが好ましい。さらに、上記蛍光の消光作用を持たない塩基は、ヒポキサンチン塩基であることがより好ましい。ヒポキサンチン塩基は、シトシン塩基と水素結合を形成することができるため、上記蛍光の消光作用を持たない塩基がヒポキサンチン塩基であると、第一の核酸プローブが標的核酸のプローブ結合領域に強固に結合することが可能となる。
【0037】
上記第一の核酸プローブが有する蛍光色素は、グアニン塩基との相互作用により消光する。すなわち、蛍光色素の近傍にグアニン塩基が存在するときは、蛍光共鳴エネルギー移動が起こり、蛍光強度が減少する。このような蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン又はその誘導体(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)など)、テトラメチルローダミン(TMR)、6-JOE、Alexa Fluor(登録商標)488(モレキュラー・プローブ社)、Cy(登録商標)3(GEヘルスケア社)、Cy(登録商標)5(GEヘルスケア社)、BODIPY(登録商標)-FL(モレキュラープローブ社)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)などが挙げられる。
【0038】
本実施形態における第一の核酸プローブのオリゴヌクレオチドとしては、通常のオリゴヌクレオチドの製造方法により得られたものを用いることができる。例えば、化学合成法により得られたオリゴヌクレオチドが挙げられる。化学合成法では、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ヒポキサンチン、ネブラリン等の任意の塩基を、任意の位置に導入することができる。
【0039】
蛍光色素は、従来公知の方法に従って、オリゴヌクレオチドに結合させることができる(例えば、上記特許文献4を参照)。
【0040】
オリゴヌクレオチドの5’末端に蛍光色素を結合させる場合、例えば、オリゴヌクレオチドの5’末端のリン酸基にチオール基を導入し、このチオール基に蛍光色素を共有結合させる方法が挙げられる。
また、オリゴヌクレオチドの3’末端に蛍光色素を結合させる場合、例えば、リボース又はデオキシリボースの3’位の炭素原子に結合しているヒドロキシ基にアミノ基を導入し、このアミノ基に蛍光色素を共有結合させる方法が挙げられる。
【0041】
本実施形態における第一の核酸プローブは、標的核酸のプローブ結合領域において、蛍光色素が結合するシトシン塩基に対向するグアニン塩基から1~7塩基以内にシトシン塩基が存在する場合であっても、蛍光強度の変化に基づいて、標的核酸を検出することができる。
【0042】
標的核酸を検出する方法の実施形態の一つとして、本実施形態の第一の核酸プローブと試料とを混合し、混合液を調製する工程と、前記混合液の蛍光強度を測定する工程と、前記蛍光強度に基づき、前記標的核酸を検出する工程と、を備える方法が挙げられる。
【0043】
図1は、本実施形態の第一の核酸プローブ及び検出対象である核酸を模式的に表したものである。核酸がプローブ結合領域を有する場合、第一の核酸プローブは核酸のプローブ結合領域にハイブリダイズする。このとき、第一の核酸プローブの末端に存在するシトシン塩基に結合する蛍光色素が、核酸のプローブ結合領域に存在するグアニン塩基に接近することにより、蛍光色素の蛍光が消光する(図1(a))。
一方、核酸がプローブ結合領域を有しない場合、第一の核酸プローブは核酸にハイブリダイズすることができず、蛍光色素にグアニン塩基が接近することがないため、蛍光色素の蛍光は消光しない。すなわち、このとき、蛍光色素の蛍光が観測される(図1(b))。
したがって、例えば、本実施形態における第一の核酸プローブと試料とを混合した際に、混合前に比べて、蛍光強度が減少するときは、試料中に標的核酸が存在すると判断できる。
【0044】
標的核酸を検出する方法の別の実施形態として、融解曲線分析を行う方法が挙げられる。融解曲線分析は、従来公知の方法によって行うことができる(例えば、上記特許文献1を参照)。
融解曲線分析の一つとしては、例えば、次の方法が挙げられる。この方法では、まず、本実施形態における第一の核酸プローブと試料とを混合し、熱処理により試料中の二本鎖核酸を一本鎖核酸へと解離(変性)する。さらに、この方法では、第一の核酸プローブと標的核酸がハイブリダイズする温度(以下、場合により「ハイブリダイズ温度」という)まで、この混合液の温度を下降させながら、混合液の蛍光強度を測定する。
試料中の核酸がプローブ結合領域を有する場合、混合液の温度が所定の温度まで下降すると、第一の核酸プローブは試料中の核酸にハイブリダイズし、蛍光色素にグアニン塩基が接近するため、混合液の蛍光強度が減少する。以下、このときの温度を「消光開始温度」という。
一方、試料中の核酸がプローブ結合領域を有しない場合、消光開始温度まで下降したとしても、第一の核酸プローブは試料中の核酸にハイブリダイズできず、蛍光色素にグアニン塩基が接近しないため、混合液の蛍光強度は減少しない。
したがって、消光開始温度時に観測される蛍光強度に比べて、混合液の温度をハイブリダイズ温度まで下降させたときに観測される、混合液の蛍光強度が減少する場合には、試料中に標的核酸が存在すると判断できる。
【0045】
上記試料は、被検核酸を鋳型とした核酸増幅反応により得られる増幅産物を含んでよい。
【0046】
標的核酸を検出する方法の別の実施形態としては、また、本実施形態の第一の核酸プローブと被検核酸を含む試料とを混合し、混合液を調製する工程と、前記混合液に含まれる被検核酸を鋳型として核酸増幅反応を行い、増幅産物を得る工程とを備える方法が挙げられる。前記増幅反応は、変性段階、アニーリング段階及び伸長段階を反復するサイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応である。前記アニーリング段階において、前記混合液の蛍光強度を測定する工程と、前記蛍光強度に基づき、前記標的核酸を検出する工程と、を備える。
【0047】
上記核酸増幅反応では、標的核酸がプローブ結合領域を有する場合、アニーリング段階において、第一の核酸プローブは核酸のプローブ結合領域にハイブリダイズする。このとき、第一の核酸プローブの蛍光色素が、プローブ結合領域の末端グアニン塩基に接近することにより、蛍光色素の蛍光が消光する。
核酸増幅反応の反復サイクル数が増えると、試料中の標的核酸(増幅産物)が増えるため、アニーリング段階において、標的核酸にハイブリダイズする第一の核酸プローブが増える。したがって、核酸増幅反応のアニーリング段階において、混合液の蛍光強度を測定すると、核酸増幅反応の反復サイクル数の増加に伴い、蛍光強度の減少量が増大する。
【0048】
上記核酸増幅反応は、Loop-mediatedIsothermal Amplification(LAMP)法であってもよい。具体的には、標的核酸を検出する方法の別の実施形態としては、本実施形態の第一の核酸プローブと被検核酸を含む試料とを混合し、混合液を調製する工程と、前記混合液に含まれる被検核酸を鋳型として核酸増幅反応(LAMP法)を行い、増幅産物を得る工程とを備える方法が挙げられる。
【0049】
第二の核酸プローブについて説明する。第二の核酸プローブでは、プローブ結合領域の末端グアニン塩基から1~7塩基以内に一塩基多型が1つ以上存在すること、並びに、第二の核酸プローブが有するオリゴヌクレオチドが、前記末端グアニン塩基から1~7塩基以内に存在する一塩基多型を除いて前記プローブ結合領域の核酸と相補的であること、該一塩基多型に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基はグアニン塩基又は蛍光の消光作用を持たない塩基であること、及び該一塩基多型のうち前記末端グアニン塩基に最も近接する一塩基多型に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基が蛍光の消光作用を持たない塩基であること以外は、第一の核酸プローブと同様の構成を有する。すなわち、第二の核酸プローブは、第一の核酸プローブにおいて、末端グアニン塩基から1~7塩基以内のプローブ結合領域に存在する「一塩基多型」に対向する前記オリゴヌクレオチド上の塩基を蛍光の消光作用を持たない塩基に置き換えたものである。
【0050】
第二の核酸プローブを用いて上記融解曲線分析により、SNPの検出が可能である。
プローブが標的核酸にハイブリダイズしたときに、プローブが有する蛍光の消光作用を持たない塩基に対向する、プローブ結合領域の塩基の種類によって、消光開始温度は異なる。
したがって、例えば、以下のようにしてSNPの有無及びSNPを構成する塩基の種類を判断することができる。まず、プローブが有する蛍光の消光作用を持たない塩基に対向する、プローブ結合領域の塩基の種類を他の塩基に変更した場合の消光開始温度をあらかじめ測定しておく。次に、あらかじめ測定した消光開始温度と、別途、測定した試料中の標的核酸における消光開始温度とを照らし合わせることにより、SNPの有無及びSNPを構成する塩基の種類を判断することができる。
【実施例
【0051】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]ヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用いた融解曲線分析
核酸プローブが有するオリゴヌクレオチドにおいて、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1塩基離れて存在するグアニン塩基を、ヒポキサンチン塩基に置換したQProbe(以下、「IQP1」という)を用いて融解曲線分析を行った。また、比較例として置換を行っていないQProbe(以下、「QP1」という)を用いて融解曲線分析を行った。
【0053】
(材料)
標的核酸:配列番号1の塩基配列を有する合成DNA(以下、「モデル1」ともいう) 10μM。
QProbe:配列番号2、3の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(QP1及びIQP1) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris-HCl(pH8.0)及びTween-20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0054】
モデル1、QP1及びIQP1の特徴を表1に示す。なお、塩基配列において、ヒポキサンチン塩基をIで表す。
【0055】
【表1】
【0056】
(方法)
モデル1 3.2μL、QP1又はIQP1 0.5μL及びハイブリダイズ用バッファー21.3μLを混合して、終濃度がそれぞれモデル1 1.28μM、QP1又はIQP1 0.04μM、KCl 50mM、Tris-HCl(pH8.0)10mM及びTween-20 0.1%である混合液を調製した。また、モデル1を混合せず、QP1又はIQP1 0.5μL及びハイブリダイズ用バッファー 24.5μLを混合して混合液を調製した。混合液の調製は8連チューブで行なった。混合液の温度を95℃から20℃まで下降させながら、蛍光強度を測定し、融解曲線分析を行った。降温速度は、-0.06℃/秒で行い、測定は、1℃あたり5回行った。なお、測定には、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(ロシュ社)を用い、533nmの波長で励起し、580nmにおける蛍光強度を測定した。
なお、同様の測定を二回行った。
【0057】
(結果)
IQP1は、QP1と同様、混合液中にモデル1が存在する場合には、一定温度以下になると消光し始めるのに対し、混合液中にモデル1が存在しない場合には、消光は観測されなかった(図2)。
また、IQP1は、QP1と比べて、消光開始時(以下、「ピーク時」ともいう)の蛍光強度が大きかった。すなわち、IQP1を用いた場合には、QP1を用いた場合と比べて、ピーク時の蛍光強度と、混合液の温度低下に伴う蛍光強度の減少が観測されなくなり蛍光強度が一定に達したときの蛍光強度との差(減少量)が大きくなった。
【0058】
実施例1の結果から、混合液中に標的核酸が存在する場合に、IQP1は消光し、標的核酸を検出可能であることが示された。また、IQP1は、QP1に比べて、感度に優れることが示された。
【0059】
[実施例2]種々の塩基に置換したQProbeを用いた融解曲線分析
蛍光色素を結合されたシトシン塩基に隣接するグアニン塩基を、ヒポキサンチン、チミン、シトシン、アデニン、ネブラリン、2-ジメチルアミノメチレンアミノ-6-メトキシアミノプリン及び3-ニトロピロールから選ばれるいずれかの塩基に置換したQProbe(以下、それぞれ「IQP1」、「TQP」、「CQP」、「AQP」、「NQP」、「dKQP」及び「NitQP」という)を用いて融解曲線分析を行った。
【0060】
(材料)
標的核酸:モデル1 10μM。
QProbe:配列番号2~9の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(QP1、IQP1、TQP、CQP、AQP、NQP、dKQP及びNitQP) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris-HCl(pH8.0)及びTween-20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0061】
モデル1、QP1、IQP1、TQP、CQP、AQP、NQP、dKQP及びNitQPの特徴を表2に示す。以下、場合により、蛍光色素を結合させたシトシン塩基に隣接するグアニン塩基を、チミン、シトシン、アデニン、ネブラリン、2-ジメチルアミノメチレンアミノ-6-メトキシアミノプリン及び3-ニトロピロールに置換した塩基をそれぞれ、T、C、A、N、dK及びNitで表す。
【0062】
【表2】
【0063】
(方法)
TQP、CQP、AQP、NQP、dKQP及びNitQPを用いたこと、並びに各QProbeとハイブリダイズ用バッファーとからなる混合液の調製を行わなかったことを除いて、実施例1と同様の方法により、融解曲線分析を行った。
【0064】
(結果)
IQP1、TQP、CQP、AQP及びNQPから選ばれるいずれかのQProbeを用いた場合、ピーク時の蛍光強度が、QP1を用いた場合と比べて、上昇した(図3(a)~(d))。すなわち、IQP1、TQP、CQP、AQP及びNQPから選ばれるいずれかのQProbeを用いた場合に、QP1を用いた場合に対して、ピーク時の蛍光強度と、混合液の温度低下に伴う蛍光強度の減少が観測されなくなり蛍光強度が一定に達したときの蛍光強度との差(減少量)が大きくなった。
【0065】
実施例2の結果から、IQP1、TQP、CQP、AQP及びNQPは、QP1に対して、感度に優れることが示された。
【0066】
[実施例3]置換位置の選定
ヒポキサンチン塩基に置換するグアニン塩基と、蛍光色素を結合させたシトシン塩基との距離を段階的に変えたQProbeを用いて、融解曲線分析を行った。具体的には、配列番号1、10~12の塩基配列を有する合成DNA(以下、それぞれ「モデル1」、「モデル2」、「モデル3」及び「モデル4」という)を標的核酸とし、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1、3、5又は7塩基離れて存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbe(以下、それぞれ「IQP1」、「IQP3」、「IQP5」及び「IQP7」という)を用いて、融解曲線分析を行った。また、比較例として置換を行なっていないQProbe(以下、それぞれ「QP1」、「QP3」、「QP5」及び「QP7」という)を用いて融解曲線分析を行なった。
【0067】
(材料)
標的核酸:配列番号1、10~12の塩基配列を有するDNA(モデル1~4) 10μM。
QProbe:配列番号2、3、13~18の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(QP1、QP3、QP5、QP7、IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris-HCl(pH8.0)及びTween-20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0068】
モデル1~4、QP1、QP3、QP5、QP7、IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7の特徴を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
(方法)
モデル2~4、QP3、QP5、QP7、IQP3、IQP5及びIQP7を用いたことを除いて、実施例2と同様の方法により、融解曲線分析を行った。
【0071】
(結果)
IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7から選ばれるいずれかの置換を行ったQProbeを用いた場合に、置換を行っていないQProbeを用いた場合と比べて、消光開始時の蛍光強度が上昇した(図4)。すなわち、IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7から選ばれるいずれかの置換を行ったQProbeを用いた場合に、置換を行っていないQProbeを用いた場合に対して、ピーク時の蛍光強度と、混合液の温度低下に伴う蛍光強度の減少が観測されなくなり蛍光強度が一定に達したときの蛍光強度との差(減少量)が大きくなった。
【0072】
実施例3の結果から、IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7は、置換を行っていないQProbeに対して、感度が改善された。
【0073】
[実施例4]複数塩基を置換したQProbeを用いた融解曲線分析
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する、複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用いて融解曲線分析を行った。具体的には、配列番号19の塩基配列を有する合成DNA(以下、「モデル5」という)を標的核酸とし、ヒポキサンチン塩基に置換されたグアニン塩基の個数が1又は2塩基であるQProbe(以下、それぞれ「I1QP」及び「I2QP」という)を用いて、融解曲線分析を行った。なお、配列番号20の塩基配列を有するQProbeを、以下「2QP」という。
【0074】
(材料)
標的核酸:配列番号19の塩基配列を有する合成DNA(モデル5) 10μM。
QProbe:配列番号20~22を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(2QP、I1QP及びI2QP) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris-HCl(pH8.0)及びTween-20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0075】
モデル5並びに2QP、I1QP及びI2QPの特徴を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
(方法)
2QP、I1QP及びI2QPを用いたことを除いて、実施例2と同様の方法により、融解曲線分析を行った。
【0078】
(結果)
I2QPを用いた場合に、I1QPを用いた場合と比べて、ピーク時の蛍光強度が上昇した(図5)。すなわち、I2QPを用いた場合に、I1QPを用いた場合に対して、ピーク時の蛍光強度と、混合液の温度低下に伴う蛍光強度の減少が観測されなくなり蛍光強度が一定に達したときの蛍光強度との差(減少量)が大きくなった。
【0079】
実施例4の結果から、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換することにより、プローブの感度が改善することが示された。
【0080】
[実施例5]LAMP法によるMycoplasmapneumoniaeの検出
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用い、LAMP法によってMycoplasma pneumoniaeを検出した。具体的には、配列番号23の塩基配列を有するMycoplasma pneumoniae FH株の精製ゲノムDNA(以下、「MycPゲノム」という)を標的核酸とし、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から2塩基離れて存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbe(以下、「MycP-IQP」という)を用い、LAMP法によってリアルタイムにMycPゲノムを検出した。なお、比較例として置換を行なっていないQProbe(以下、「MycP-QP」という)を用いてMycPゲノムを検出した。
【0081】
(材料)
標的核酸:配列番号23の塩基配列を有するMycoplasma pneumoniae FH株の精製ゲノムDNA(MycPゲノム)。
QProbe:配列番号24~25を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(MycP-QP及びMycP-IQP) 2μM。
Loopamp(登録商標)マイコプラズマP検出試薬キット(リアクションミックスMycP(RM MycP)、鎖置換型DNA合成酵素(Bst Pol))
なお、MycPゲノムとして、95℃で5分間熱処理し、急冷したものを測定に用いた。QProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0082】
MycPゲノム並びにMycP-QP及びMycP-IQPの特徴を表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
(方法)
RM MycP 20.00μLとBst Pol 1.00μLとを混合して混合溶液を得た。この混合溶液 20.00μL、MycP-QP又はMycP-IQP 0.50μL、及びMycPゲノム 4.50μLを混合して、MycP-QP又はMycP-IQPの終濃度が0.04μMである混合液25.00μLを得た。前記混合液を65℃、60分間インキュベートし、混合液中の蛍光強度をリアルタイムに測定した。また、MycPゲノムの代わりに精製水を混合して得た混合液についても、MycPゲノムを用いた場合と同様にして混合液中の蛍光強度をリアルタイムに測定した。なお、測定には、Mx3005P(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、556nmの波長で励起し、580nmにおける蛍光強度を測定した。解析には、MxProソフトフェアを用いた。同様の測定を二回行った。
【0085】
(結果)
MycP-IQPを用いた場合とMycP-QPを用いた場合とを対比すると、混合液中にMycPゲノムが存在する場合の蛍光強度と混合液中にMycゲノムが存在しない場合の蛍光強度との差は、前者の方が後者より大きかった(図6)。
【0086】
実施例5の結果から、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用いた場合、当該置換を行っていないQProbeを用いた場合に比べて、LAMP法によるMycoplasma pneumoniaeの検出をより高感度に行えることがわかった。
【0087】
[実施例6]PCR法及び融解曲線分析によるヒト型結核菌の検出
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用い、PCR法及び融解曲線分析によってヒト型結核菌Mycobacterium tuberculosisを検出した。具体的には、配列番号26の塩基配列を有するMycobacterium tuberculosis H37Rv株の精製ゲノムDNA(以下、「TBゲノム」という)を標的核酸とし、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1塩基又は2塩基離れて存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbe(以下、それぞれ「TB-IQP1」及び「TB-IQP2」という)を用い、PCR法によって増幅したTBゲノムを融解曲線分析で検出した。なお、比較例として置換を行なっていないQProbe(以下、「TB-QP」という)を用いてTBゲノムを検出した。
【0088】
(材料)
標的核酸:配列番号26の塩基配列を有するMycobacterium tuberculosis H37Rv株の精製ゲノムDNA(TBゲノム)。
PCR用プライマー:配列番号27~28の塩基配列を有するプライマー(TB-dnaJ1-PCR26及びTB-dnaJ1-PCR11) 10μM。
10×PCR用バッファー
dNTPs 2mM
MgSO 25mM
KOD plus DNA polymerase 1U
QProbe:配列番号27~29を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にBODIPY(登録商標)-FLを結合させたプローブ(TB-QP、TB-IQP1及びTB-IQP2) 2μM。
【0089】
TB-dnaJ1-PCR26及びTB-dnaJ1-PCR11、並びにTB-QP、TB-IQP1及びTB-IQP2の特徴を以下の表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
(方法)
以下の試薬を含むPCR反応液を調製した。
[PCR反応液(10.00μL)]
蒸留水 2.20μL
TB-dnaJ1-PCR26V2 0.250μM 0.25μL
TB-dnaJ1-PCR11 1.500μM 1.50μL
QProbe(TB-QP、TB-IQP1又はTB-IQP2) 0.250μM 1.25μL
緩衝液 1× 1.00μL
dNTPs 0.2mM 1.00μL
MgSO 4.0mM 1.60μL
KOD plus DNA polymerase 0.2U 0.20μL
TBゲノム 20.0ng 1.00μL
【0092】
以下の条件で、PCR反応及び融解曲線分析を行った。融解曲線分析(以下の6))では、反応液の温度を40℃から75℃まで上昇させながら、蛍光強度を測定した。上温速度は、0.5℃/秒であり、測定は、1℃あたり5回行った。測定した蛍光強度に基づいて、蛍光強度の変化量(-(d/dt)蛍光強度)を求めた。なお、測定には、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(ロシュ社)を用い、465nmの波長で励起し、510nmにおける蛍光強度を測定した。同様の測定を二回行った。
[PCR反応及び融解曲線分析の条件]
1)94℃ 2分間
2)98℃ 1秒間
3)65℃ 5秒間
4)94℃ 1分間
5)40℃ 1分間
6)40℃~75℃
PCR反応では、2)~4)の工程を50サイクル繰り返した。
【0093】
(結果)
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブ(TB-IQP1又はTB-IQP2)を用いた場合、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換していないプローブ(TB-QP)を用いた場合に比べて、蛍光強度の変化量が増加した(図7)。すなわち、TB-IQP1又はTB-IQP2を用いた場合に、TB-QPを用いた場合に対して、標的核酸へのハイブリダイズによる蛍光強度の変化量が大きくなった。また、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブ(TB-IQP2)を用いた場合、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する1つのグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブ(TB-IQP1)を用いた場合に比べて、蛍光強度の変化量が増加した(図7)。すなわち、TB-IQP2を用いた場合に、TB-IQP1を用いた場合に対して、標的核酸へのハイブリダイズによる蛍光強度の変化量がさらに大きくなった。
【0094】
実施例6の結果から、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換することにより、PCR反応及び融解曲線分析によるMycobacterium tuberculosisの検出をより高感度に行えることがわかった。また、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換することにより、上記検出をより高感度に行えることがわかった。
【0095】
[実施例7]SNPの検出
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1塩基離れて存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をヒポキサンチン、チミン、シトシン及びアデニンから選ばれるいずれかの塩基に置換したQProbeを用い、SNPを有する標的核酸を融解曲線分析により検出した。
【0096】
(材料)
標的核酸:配列番号32~35の塩基配列を有する合成DNA(以下、それぞれ「モデルA」、「モデルG」、「モデルT」及び「モデルC」ともいう)。
QProbe:配列番号36~40を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(以下、それぞれ「SNP-GQP」、「SNP-IQP」、「SNP-AQP」、「SNP-TQP」及び「ANP-CQP」ともいう) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris-HCl(pH8.0)及びTween-20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0097】
標的核酸及びQProbeの特徴を表7に示す。
【0098】
【表7】
【0099】
(方法)
標的核酸(モデルA、モデルG、モデルT又はモデルC) 3.2μL、SNP-GQP 0.5μL及びハイブリダイズ用バッファー21.3μLを混合して、終濃度がそれぞれ標的核酸(モデルA、モデルG、モデルT又はモデルC) 1.28μM、SNP-GQP 0.04μM、KCl 50mM、Tris-HCl(pH8.0)10mM及びTween-20 0.1%である混合液を調製した。混合液の温度を95℃から20℃まで下降させながら、蛍光強度を測定し、融解曲線分析を行った。降温速度は、-0.06℃/秒であり、測定は、1℃あたり5回行った。測定した蛍光強度に基づいて、蛍光強度の変化量(-(d/dt)蛍光強度)を求めた。なお、測定には、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(ロシュ社)を用い、533nmの波長で励起し、580nmにおける蛍光強度を測定した。同様の測定を二回行った。SNP-GQPの代わりに、SNP-IQP、SNP-AQP、SNP-TQP及びSNP-CQPのいずれかを用いた以外は、SNP-GQPを用いた場合と同様にして、融解曲線分析を行った。
【0100】
(結果)
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブ(SNP-IQP)を用いた場合、モデルC、モデルA、モデルG及びモデルTの順に消光開始温度が低くなった(図8(a))。したがって、モデルC、モデルA、モデルG及びモデルTにおける消光開始温度はそれぞれ異なっていることから、SNP-IQPを用いることにより、変異塩基の種類ごとにSNPを検出可能であることがわかった。蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をチミン塩基に置換したプローブ(SNP-TQP)を用いた場合も、モデルC、モデルA、モデルG及びモデルTにおける消光開始温度はそれぞれ異なっていることから、SNP-TQPを用いることにより、変異塩基の種類ごとにSNPを検出可能であることがわかった(図8(b))。
【0101】
[実施例8]SNPの位置を段階的に変えた標的核酸の検出
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用い、SNPの位置を段階的に変えた標的核酸を融解曲線分析により検出した。
【0102】
(材料)
標的核酸:配列番号32~35、41~44及び46~49の塩基配列を有する合成DNA(41~44、46~49の塩基配列を有する合成DNAのことを、以下それぞれ「モデルA3」、「モデルG3」、「モデルT3」及び「モデルC3」、並びに「モデルA5」、「モデルG5」、「モデルT5」及び「モデルC5」ともいう)。
QProbe:配列番号37、45及び50を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(配列番号45及び50を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブのことを、以下それぞれ「SNP-IQP3」及び「SNP-IQP5」ともいう) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris-HCl(pH8.0)及びTween-20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0103】
標的核酸及びQProbeの特徴を表8に示す。
【0104】
【表8】
【0105】
(方法)
実施例7においてSNP-IQPを用いた場合と同様にして、モデルA、モデルG、モデルT及びモデルCを標的核酸として融解曲線分析を行った。また、標的核酸としてモデルA、モデルG、モデルT及びモデルCの代わりに、モデルA3、モデルG3、モデルT3及びモデルC3を用いたこと、並びにQprobeとしてSNP-GQP、SNP-IQP、SNP-AQP、SNP-TQP及びANP-CQPの代わりに、SNP-IQP3を用いたこと以外は、実施例7と同様にして融解曲線分析を行った。また、標的核酸としてモデルA、モデルG、モデルT及びモデルCの代わりに、モデルA5、モデルG5、モデルT5及びモデルC5を用いたこと、並びにQprobeとしてSNP-GQP、SNP-IQP、SNP-AQP、SNP-TQP及びANP-CQPの代わりにSNP-IQP5を用いたこと以外は、実施例7と同様にして融解曲線分析を行った。
【0106】
(結果)
SNPの位置を段階的に変えた標的核酸についてSNP-IQP3を用いて検出した場合、モデルA3、モデルC3、及びモデルT3(又はモデルG3)における消光開始温度はそれぞれ異なっていることから、変異塩基の種類(A、C及びT(又はG))の判別は可能であることがわかった(図9(b))。具体的には、モデルA3、モデルG3、モデルT3及びモデルC3をSNP-IQP3を用いて検出した場合、モデルC3、モデルA3、及びモデルT3(又はモデルG3)の順に消光開始温度が低くなった(図9(b))。また、モデルA5、モデルG5、モデルT5及びモデルC5をSNP-IQP5を用いて検出した場合、モデルA5、モデルC5、及びモデルT5(又はモデルG5)における消光開始温度はそれぞれ異なっていることから、変異塩基の種類(A、C及びT(又はG))の判別は可能であることがわかった(図9(c))。具体的には、モデルC5、モデルA5、及びモデルG5(又はモデルT5)の順に消光開始温度が低くなった(図9(c))。
【0107】
実施例8の結果から、SNPの位置を段階的に変えた標的核酸についても、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1~7塩基以内に存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブを用いて、SNPを検出可能であることがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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