(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20230315BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F9/22 E
(21)【出願番号】P 2019178442
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中野 寿身
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博史
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049248(WO,A1)
【文献】特開2000-291076(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124520(WO,A1)
【文献】特開2018-155077(JP,A)
【文献】特開2004-068433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム、アーム、およびバケットを備え、施工目標である平面または傾斜面の仕上げおよび粗掘削を含む作業を行う作業装置と、前記作業装置が取り付けられた旋回体と、前記旋回体を旋回させる旋回装置と、前記旋回装置を介して前記旋回体を支持して走行させる走行装置と、前記作業装置、前記旋回装置および前記走行装置を駆動する駆動装置と、前記
バケットの位置および姿勢を検出する位置・姿勢検出装置と、前記作業装置、前記旋回装置および前記走行装置の操作を指示する操作装置と、前記操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、前記操作量と前記
バケットの位置および姿勢に基づいて前記駆動装置を制御する制御装置と、を備えた
油圧ショベルであって、
前記制御装置は、記憶装置と中央処理装置とを含み、
前記記憶装置は、前記作業装置による施工目標情報と、
前記操作量検出装置によって検出された前記操作装置による前記旋回装置の前記操作量に基づく前記作業装置の作業内容の判定基準情報とが記憶され、
前記中央処理装置は、前記位置・姿勢検出装置によって検出された前記
バケットの位置および姿勢と、前記操作量検出装置によって検出された前記旋回装置の前記操作量と、前記判定基準情報とに基づいて、前記作業装置の作業内容を判定し、判定した前記作業内容に基づいて
前記バケットの爪先と前記施工目標との間の鉛直方向の距離を含む前記施工目標情報の補正値を算出し、前記施工目標情報および前記補正値に基づいて前記駆動装置を制御してオペレータの
前記操作を補助する
半自動制御を行うことを特徴とする
油圧ショベル。
【請求項2】
前記中央処理装置は、
前記
バケットの位置および姿勢に基づいて前記作業装置の旋回半径を算出し、
前記旋回半径に基づいて前記作業装置の角速度を算出し、
前記旋回半径および前記角速度に基づいて前記作業装置の旋回速度を算出し、
前記旋回速度と、前記施工目標情報に含まれる
前記施工目標の傾斜角度とに基づいて、前記作業内容を判定することを特徴とする請求項1に記載の
油圧ショベル。
【請求項3】
前記記憶装置は、前記駆動装置による前記旋回装置の駆動力のしきい値が記憶され、
前記中央処理装置は、前記駆動装置から出力される前記旋回装置の駆動力情報と前記しきい値との比較に基づいて、前記旋回装置による前記旋回体の旋回動作の制限の有無を判定し、前記旋回動作の制限があると判定した場合に前記角速度を補正することを特徴とする請求項2に記載の
油圧ショベル。
【請求項4】
前記記憶装置は、前記
バケットの重量に基づく角速度補正値が記憶され、
前記中央処理装置は、前記角速度を前記角速度補正値に基づいて補正することを特徴とする請求項2に記載の
油圧ショベル。
【請求項5】
前記判定基準情報を選択するための情報を入力可能な入力装置を備え、
前記記憶装置は、異なる複数の前記判定基準情報が記憶され、
前記中央処理装置は、前記入力装置に入力された
前記情報に基づいて一の前記判定基準情報を選択し、選択した前記判定基準情報に基づいて前記作業内容を判定することを特徴とする請求項2に記載の
油圧ショベル。
【請求項6】
前記施工目標情報と、前記
バケットの位置および姿勢と、前記作業装置の前記作業内容と、前記補正値とに基づく画像を表示する表示装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の
油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、特に油圧ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から作業機械の制御装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。この従来の作業機械の制御装置は、施工対象を施工するために作業機械が有する作業機を制御する装置において、作業機が有する作業具が予め定められた目標の形状に侵入しないように作業機を制御する制御部と、施工対象の仕上がりの目標となる形状である目標施工地形に対する作業具の姿勢に基づいて、目標の形状を、目標施工地形から予め定められた距離だけ離れたオフセット地形または目標施工地形とする切替部と、を含む(同文献、要約等を参照)。
【0003】
上記作業機械の制御装置において、切替部は、目標施工地形と油圧ショベルのバケットの底面とのなす角度の大きさに基づいて、介入制御における目標の形状を、オフセット地形と目標施工地形とに切り替える(同文献、第0075段落等を参照)。前記角度の絶対値が予め定められた閾値の絶対値よりも大きい場合、切替部は、介入制御における目標の形状を、オフセット地形とする。角度の絶対値が予め定められた閾値の絶対値以下である場合、切替部は、介入制御における目標の形状を、目標施工地形とする(同文献、第0076段落等を参照)。
【0004】
このような処理によって、介入制御における目標の形状は、表土の掘削時と仕上げ時とで自動的に切り替わる。その結果、法面の形成において、オペレータは表土の掘削時と施工対象の仕上げ時とでオフセット量を設定し直す必要がなくなるので、法面を形成する場合においてオペレータの作業が煩雑になることが抑制される(同文献、第0077段落等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業機械による施工には、旋回動作をともなうものがある。しかしながら、前記従来の作業機械の制御装置では、旋回動作をともなう施工が考慮されていない。そのため、旋回動作をともなう施工において、オペレータの意図に反してオフセット地形と目標施工地形とが切り替わるおそれがある。
【0007】
本開示は、旋回動作を考慮してオペレータの意図に適合した操作補助を行うことが可能な作業機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、作業を行う作業装置と、前記作業装置が取り付けられた旋回体と、前記旋回体を旋回させる旋回装置と、前記旋回装置を介して前記旋回体を支持して走行させる走行装置と、前記作業装置、前記旋回装置および前記走行装置を駆動する駆動装置と、前記作業装置の位置および姿勢を検出する位置・姿勢検出装置と、前記作業装置、前記旋回装置および前記走行装置の操作を指示する操作装置と、前記操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、前記操作量と前記作業装置の位置および姿勢に基づいて前記駆動装置を制御する制御装置と、を備えた作業機械であって、前記制御装置は、記憶装置と中央処理装置とを含み、前記記憶装置は、前記作業装置による施工目標情報と、前記旋回装置の前記操作量に基づく前記作業装置の作業内容の判定基準情報とが記憶され、前記中央処理装置は、前記位置・姿勢検出装置によって検出された前記作業装置の位置および姿勢と、前記操作量検出装置によって検出された前記旋回装置の前記操作量と、前記判定基準情報とに基づいて、前記作業装置の作業内容を判定し、判定した前記作業内容に基づいて前記施工目標情報の補正値を算出し、前記施工目標情報および前記補正値に基づいて前記駆動装置を制御してオペレータの操作を補助することを特徴とする作業機械である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記一態様によれば、旋回動作を考慮してオペレータの意図に適合した操作補助を行うことが可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の作業機械の実施形態1を示す概略図。
【
図3】
図1に示す作業機械の制御装置の機能ブロック図。
【
図4】
図3の作業内容判定機能の詳細を示す機能ブロック図。
【
図5】
図3の施工目標補正機能の詳細を示す機能ブロック図。
【
図6A】
図2の表示装置に表示される画像の一例を示す画像図。
【
図6B】
図2の表示装置に表示される画像の一例を示す画像図。
【
図7】本開示の作業機械の実施形態2に係る作業内容判定機能の機能ブロック図。
【
図8】本開示の作業機械の実施形態3に係る作業内容判定機能の機能ブロック図。
【
図9】本開示の作業機械の実施形態4に係る作業内容判定機能の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の作業機械の実施形態を説明する。
【0012】
[実施形態1]
図1は、本開示の作業機械の実施形態1を示す概略図である。
図2は、
図1に示す作業機械1の機能ブロック図である。本実施形態の作業機械1は、たとえば、情報化施工を補助するシステムを備えた油圧ショベルである。情報化施工は、たとえば資源採掘や建設工事の現場などでの施工において、情報通信技術を活用し、各プロセスから得られる電子情報をやり取りして、高効率、高精度の施工を実現する。詳細については後述するが、本実施形態の作業機械1は、主に、次のような構成を特徴としている。
【0013】
作業機械1は、作業を行う作業装置10と、その作業装置10が取り付けられた旋回体20と、その旋回体20を旋回させる旋回装置30と、その旋回装置30を介して旋回体20を支持して走行させる走行装置40と、を備えている。また、作業機械1は、作業装置10、旋回装置30および走行装置40を駆動する駆動装置50と、作業装置10の位置および姿勢を検出する位置・姿勢検出装置としてのセンサ60と、作業装置10、旋回装置30および走行装置40の操作を指示する操作装置70と、その操作装置70の操作量を検出する操作量検出装置と、を備えている。さらに、作業機械1は、操作装置70の操作量と作業装置10の位置および姿勢に基づいて駆動装置50を制御する制御装置80を備えている。
【0014】
制御装置80は、記憶装置81と中央処理装置82とを含む。記憶装置81は、作業装置10による施工目標情報と、旋回装置30の操作量に基づく作業装置10の作業内容の判定基準情報とが記憶されている。中央処理装置82は、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作装置70の操作量を検出する操作量検出装置によって検出された旋回装置30の操作量と、記憶装置81に記憶された判定基準情報とに基づいて、作業装置10の作業内容を判定する。また、中央処理装置82は、判定した作業内容に基づいて施工目標情報の補正値を算出し、施工目標情報および補正値に基づいて駆動装置50を制御してオペレータの操作を補助する。
【0015】
以下、本実施形態の作業機械1の各部の構成を詳細に説明する。作業装置10は、たとえば、作業機械1が掘削作業やならし作業などの作業を行うための作業装置である。作業装置10は、たとえば、ブーム11と、アーム12と、バケット13とを備えている。
【0016】
ブーム11の基端部は、たとえば、作業機械1の幅方向に平行な、図示を省略する回転軸を介して旋回体20に連結されている。ブーム11は、たとえば、駆動装置50を構成するブームシリンダ51によって駆動され、旋回体20に取り付けられた図示を省略する回転軸を中心に所定の角度範囲で上下に回動する。
【0017】
アーム12の基端部は、たとえば、作業機械1の幅方向に平行な回転軸12aを介してブーム11の先端部に連結されている。アーム12は、たとえば、駆動装置50を構成するアームシリンダ52によって駆動され、ブーム11に取り付けられた回転軸12aを中心に所定の角度範囲で回動する。
【0018】
バケット13の基端部は、たとえば作業機械1の幅方向に平行な回転軸13a、およびリンク機構13lを介して、アーム12の先端部に連結されている。バケット13は、たとえば、駆動装置50を構成するバケットシリンダ53によって駆動され、アーム12に取り付けられた回転軸13aを中心に所定の角度範囲で回動する。
【0019】
旋回体20は、前部に作業装置10が取り付けられ、後部にカウンターウェイト21が設けられている。また、旋回体20の前部には、旋回体20の幅方向において作業装置10に隣接して運転室22が設けられている。旋回体20は、旋回装置30を介して走行装置40に接続され、旋回装置30を介して走行装置40の上に支持されることで、作業機械1の上下方向に平行な回転軸を中心に走行装置40に対して旋回可能に設けられている。旋回体20は、たとえば、図示を省略する原動機、駆動装置50を構成する油圧装置および旋回モータ54、操作装置70、操作量検出装置、制御装置80、ならびに
図2に示す入力装置90および表示装置100などを収容している。
【0020】
旋回装置30は、走行装置40の上に取り付けられ、駆動装置50によって駆動されることで、旋回体20を走行装置40に対して旋回させる。より具体的には、旋回装置30は、駆動装置50を構成する旋回モータ54によって駆動され、作業機械1の上下方向に平行な回転軸を中心として、作業装置10および旋回体20を走行装置40に対して旋回させる。
【0021】
走行装置40は、たとえば、無限軌道履帯を有する左右のクローラ41と、図示を省略する左右の走行モータとを備えている。走行装置40は、左右の走行モータによって左右のクローラ41をそれぞれ駆動することで、作業機械1を走行させる。左右の走行モータは、たとえば、駆動装置50を構成する油圧モータである。
【0022】
駆動装置50は、たとえば、ブームシリンダ51、アームシリンダ52、バケットシリンダ53、旋回モータ54、および前述の走行モータを含み、作業装置10、旋回装置30、および走行装置40を駆動する。駆動装置50は、たとえば油圧装置であり、原動機によって駆動される複数の油圧ポンプや、油圧ポンプに接続されて作動油の方向を切り替える複数の方向制御弁を備えている。また、駆動装置50は、たとえば、図示を省略する圧力センサを備え、駆動装置50を構成する各部の作動油の圧力情報を制御装置80に出力する。
【0023】
センサ60は、作業装置10の位置および姿勢を検出する。
図1に示す例において、センサ60は、作業装置10の作業具であるバケット13に取り付けられて、バケット13の位置および姿勢を検出する。センサ60としては、たとえば、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位システムを例示することができる。
【0024】
なお、センサ60は、バケット13に取り付けられていなくてもよく、作業装置10の位置および姿勢を検出できるものであれば特に限定されない。センサ60は、たとえば、ブームシリンダ51、アームシリンダ52、およびバケットシリンダ53のストロークを検出することで作業装置10の位置および姿勢を算出可能な位置センサであってもよい。また、センサ60は、たとえば、ブーム11、アーム12、およびバケット13の回転角度を検出することで、作業装置10の位置および姿勢を算出可能な角度センサであってもよい。
【0025】
操作装置70は、たとえば、旋回体20の運転室22に収容された操作レバーや操作ペダルを含んでいる。操作量検出装置は、たとえば、操作レバーの操作量や操作ペダルの操作量を含む操作装置70の操作量を検出する。操作装置70は、オペレータによって操作され、操作量検出装置は、オペレータによる操作装置70の操作に基づいて、作業装置10、旋回装置30、および走行装置40の操作量を検出する。
【0026】
制御装置80は、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量と、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢に基づいて、駆動装置50を制御する。制御装置80は、記憶装置81と、中央処理装置82と、を含んでいる。また、制御装置80は、たとえば、入出力部を備え、駆動装置50、センサ60、操作装置70、操作量検出装置、入力装置90、および表示装置100などに、情報通信可能に接続されている。
【0027】
記憶装置81は、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスクドライブ(HDD)などによって構成され、種々の情報やコンピュータープログラムなどが記憶される。より具体的には、記憶装置81は、作業装置10による施工目標情報と、旋回装置30の操作量に基づく作業装置10の作業内容の判定基準情報が記憶されている。これら、施工目標情報および判定基準情報については、後述する。
【0028】
中央処理装置82は、たとえば、記憶装置81に記憶された種々の情報やコンピュータープログラムを読み込んで様々な処理を実行する。具体的には、中央処理装置82は、たとえば、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量に応じた操作信号と、記憶装置81に記憶された施工目標情報と、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢に基づいて、駆動装置50に動作指令を出力する。
【0029】
また、中央処理装置82は、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された旋回装置30の操作量と、記憶装置81に記憶された判定基準情報とに基づいて、作業装置10の作業内容を判定する。また、中央処理装置82は、判定した作業内容に基づいて施工目標情報の補正値を算出し、施工目標情報および補正値に基づいて駆動装置50を制御してオペレータの操作を補助する。
【0030】
入力装置90は、たとえば旋回体20の運転室22内に設けられ、オペレータが情報を入力可能な構成を備えている。具体的には、入力装置90は、たとえば、キーボード、ボタン、タッチパネルなどの入力装置を備え、オペレータが入力した情報を制御装置80へ出力する。
【0031】
表示装置100は、たとえば、旋回体20の運転室22内に設けられ、オペレータが視認可能な位置に配置されている。表示装置100は、たとえば、液晶表示装置や有機EL表示装置によって構成され、制御装置80の制御の下、後述する施工目標情報と、作業装置10の位置および姿勢と、作業装置10の作業内容と、補正値とに基づく画像Ia,Ibを表示する(
図6Aおよび
図6Bを参照)。
【0032】
図3は、
図1に示す作業機械1の制御装置80の機能ブロック図である。制御装置80は、たとえば、操作量演算機能F1と、作業内容判定機能F2と、施工目標補正機能F3と、操作補助機能F4と、を備えている。これらの機能は、たとえば、制御装置80に入力される情報、ならびに、記憶装置81に記憶された情報、およびコンピュータープログラムを用い、中央処理装置82によって実現することができる。
【0033】
操作量演算機能F1において、中央処理装置82は、たとえば、操作量検出装置によって検出したオペレータによる操作装置70の操作量に基づいて、作業装置10、旋回装置30、および走行装置40の操作量を演算する。操作量検出装置によって検出したオペレータによる操作装置70の操作量は、たとえば、右レバー操作量と、左レバー操作量とを含む。操作量演算機能F1において算出される作業装置10、旋回装置30、および走行装置40の操作量は、たとえばオペレータが要求する速度など、駆動装置50の動作の目標値である。すなわち、操作量演算機能F1において、中央処理装置82は、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量に基づいて、駆動装置50の動作目標値を算出する。
【0034】
図4は、
図3の作業内容判定機能F2の詳細を示す機能ブロック図の一例である。作業内容判定機能F2において、中央処理装置82は、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された旋回装置30の操作量と、記憶装置81に記憶された判定基準情報D1とに基づいて、作業装置10の作業内容を判定する。より詳細には、作業内容判定機能F2は、たとえば、角速度演算機能F21と、旋回速度演算機能F22と、旋回作業判定機能F23とを含む。
【0035】
角速度演算機能F21において、中央処理装置82は、たとえば、記憶装置81に記憶されたグラフG1に基づいて、作業装置10の角速度を予測または算出する。より具体的には、中央処理装置82は、旋回装置30が走行装置40に対して旋回体20と作業装置10を旋回させたときの、作業装置10のバケット13の角速度を、グラフG1に基づいて予測または算出する。グラフG1は、たとえば、操作量検出装置によって検出された旋回装置30の操作量と、旋回装置30によって旋回させられるバケット13の角速度との関係を示している。
【0036】
図4に示す例において、グラフG1は、操作量検出装置で検出された旋回装置30の操作量が所定の値aを超えるまで作業装置10が旋回せず、作業装置10の角速度がゼロであることを示している。これは、たとえば、操作装置70の操作レバーや操作ペダルのあそび、すなわち、操作レバーや操作ペダルが操作されても、駆動装置50によって旋回装置30が駆動されない領域(不感帯)が存在する場合に、それに合わせるためである。
【0037】
また、
図4に示す例において、グラフG1は、旋回装置30の操作量が所定の値aを超えると、旋回装置30の操作量と、旋回装置30によって旋回させられる作業装置10の角速度との関係が、正比例の関係にあることを示している。さらに、
図4に示す例において、グラフG1は、作業装置10の旋回半径に応じて、旋回装置30の操作量と作業装置10の角速度との関係を表す直線の傾きが異なることを示している。
【0038】
すなわち、角速度演算機能F21において、中央処理装置82は、たとえば、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢に基づいて、作業装置10の旋回半径、たとえばバケット13の爪先の旋回半径を予測または算出する。ここで、中央処理装置82が算出した旋回半径が、たとえば、第1のしきい値よりも小さかったとする。この場合、中央処理装置82は、たとえば、グラフG1の最も傾きが大きい直線と、旋回装置30の操作量とに基づいて、作業装置10の角速度を予測または算出する。
【0039】
また、角速度演算機能F21において、中央処理装置82が算出した旋回半径が、たとえば、第1のしきい値よりも大きい第2のしきい値以上であったとする。この場合、中央処理装置82は、たとえば、グラフG1の最も傾きが小さい直線と、旋回装置30の操作量とに基づいて、作業装置10の角速度を予測または算出する。
【0040】
また、角速度演算機能F21において、中央処理装置82が算出した旋回半径が、たとえば、第1のしきい値以上であり、かつ、第2のしきい値よりも小さかったとする。この場合、中央処理装置82は、たとえば、グラフG1の最も傾きが小さい直線と最も傾きが大きい直線との間の中間の傾きの直線と、旋回装置30の操作量とに基づいて、作業装置10の角速度を予測または算出する。
【0041】
すなわち、
図4に示す角速度演算機能F21の一例において、中央処理装置82が予測または算出する作業装置10の角速度は、旋回装置30の操作量がより大きくなるほど、より大きくなり、作業装置10の旋回半径がより小さくなるほど、より大きくなる。
【0042】
旋回速度演算機能F22において、記憶装置81は、たとえば、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢に基づいて、作業装置10の旋回半径を算出する。また、旋回速度演算機能F22において、記憶装置81は、たとえば、算出した作業装置10の旋回半径と、角速度演算機能F21において予測または算出した作業装置10の角速度とを掛け合わせて、作業装置10の旋回速度を予測または算出する。
【0043】
旋回作業判定機能F23において、記憶装置81は、たとえば、旋回速度演算機能F22で予測または算出した作業装置10の旋回速度と、記憶装置81に記憶された施工目標情報とに基づいて、作業装置10の作業内容を判定する。
図4に示す例では、記憶装置81は、記憶装置81に記憶された判定基準情報D1に基づいて、作業装置10の作業内容を判定する。ここで、中央処理装置82は、たとえば、作業装置10の旋回速度と、施工目標情報に含まれる施工目標の傾斜角度とに基づいて、作業装置10の作業内容を判定する。
【0044】
図4に示す例において、判定基準情報D1は、作業装置10の旋回速度と施工目標情報とに応じて作業装置10の作業内容が規定されたテーブルである。より詳細には、記憶装置81には、たとえば、作業装置10の旋回速度を低速、中速、または高速のいずれかに分類するための速度のしきい値と、施工目標情報に含まれる施工対象が平面であるか傾斜面であるかを判定するための角度のしきい値が記憶されている。中央処理装置82は、これらのしきい値に基づいて、作業装置10の旋回速度を「低速」、「中速」、または「高速」のいずれかに分類するとともに、施工目標情報に含まれる施工対象が「平面」であるか「傾斜面」であるかを判定する。
【0045】
具体的には、判定基準情報D1に基づき、中央処理装置82は、たとえば、作業装置10の旋回速度が「低速」であれば、施工目標情報に含まれる施工対象が「平面」である場合も「傾斜面」である場合も、作業装置10の作業内容を「仕上げ」と判定する。また、中央処理装置82は、たとえば、作業装置10の旋回速度が「中速」であり、かつ施工目標情報に含まれる施工対象が「平面」である場合に、作業装置10の作業内容を「仕上げ」と判定する。また、中央処理装置82は、たとえば、作業装置10の旋回速度が「中速」であり、かつ施工目標情報に含まれる施工対象が「傾斜面」である場合に、作業装置10の作業内容を「粗掘削」と判定する。また、中央処理装置82は、たとえば、作業装置10の旋回速度が「高速」であれば、施工目標情報に含まれる施工対象が「平面」である場合も「傾斜面」である場合も、作業装置10の作業内容を「粗掘削」と判定する。
【0046】
図5は、
図3の施工目標補正機能F3の詳細を示す機能ブロック図の一例である。
図3に示すように、施工目標補正機能F3において、中央処理装置82は、作業内容判定機能F2で判定した作業装置10の作業内容に基づいて、施工目標情報の補正値を算出する。
図5に示すように、施工目標補正機能F3は、たとえば、補正値算出機能F31と、施工目標補正機能F32とを含む。
【0047】
補正値算出機能F31において、中央処理装置82は、たとえば、作業内容判定機能F2で判定した作業装置10の作業内容に基づいて、補正値を算出する。
図5に示す例において、記憶装置81には、たとえば、作業装置10の作業内容に応じた補正値が規定されたテーブルT1が記憶されている。中央処理装置82は、たとえば、作業内容判定機能F2で判定した作業装置10の作業内容と、テーブルT1に基づいて、補正値を算出する。
【0048】
具体的には、補正値算出機能F31において、中央処理装置82は、たとえば、作業内容判定機能F2で判定した作業装置10の作業内容が「仕上げ」である場合、テーブルT1に基づいて、補正値として「0」を算出または設定する。また、中央処理装置82は、たとえば、作業内容判定機能F2で判定した作業装置10の作業内容が「粗掘削」である場合、テーブルT1に基づいて、補正値として「Zad」を算出または設定する。なお、補正値Zadは、あらかじめ設定される任意の値であり、たとえば、施工目標である平面や傾斜面とバケット13の爪先との間の距離である。
【0049】
施工目標補正機能F32において、中央処理装置82は、たとえば、補正値算出機能F31で算出または設定された補正値と、記憶装置81に記憶された施工目標情報とを加算する。より具体的には、中央処理装置82は、たとえば、記憶装置81に記憶された施工目標情報に含まれる施工目標の高さに補正値を加算して、補正後の施工目標情報を出力する。ここで、補正値は、たとえば、施工目標である平面や傾斜面と、作業装置10の一部であるバケット13の爪先との間の鉛直方向の距離、すなわち高さである。
【0050】
図3に示すように、操作補助機能F4において、中央処理装置82は、施工目標情報および補正値に基づいて駆動装置50を制御して、オペレータの操作を補助する。より具体的には、中央処理装置82は、たとえば、操作量演算機能F1で算出した動作目標値と、施工目標補正機能F3で算出した補正後の施工目標情報と、センサ60によって検出した作業装置10の位置および姿勢とに基づいて、駆動装置50に対する動作指令を出力する。これにより、制御装置80は、オペレータの操作を補助する半自動制御を行う。
【0051】
なお、センサ60によって検出した作業装置10の位置および姿勢は、たとえば、バケット13の爪先の位置情報を含み、中央処理装置82は、バケット13の爪先の位置情報に基づいて、駆動装置50に対する動作指令を出力する。また、操作量演算機能F1で算出した動作目標値は、たとえば、オペレータが意図するバケット13の爪先の目標速度を含み、中央処理装置82は、バケット13の爪先の目標速度に基づいて、駆動装置50に対する動作指令を出力する。
【0052】
図6Aおよび
図6Bは、表示装置100に表示される画像Ia,Ibの一例を示す画像図である。画像Ia,Ibには、それぞれ、バケット13の爪先位置13tを含む作業装置10の位置および姿勢と、施工目標TPと、作業内容WDとが表示されている。また、
図6Aに示す画像Iaには、補正後施工目標OTPが表示されている。
【0053】
表示装置100は、たとえば、中央処理装置82から出力された作業装置10の位置および姿勢を画像Ia,Ibに表示する。また、表示装置100は、中央処理装置82から出力された施工目標情報に基づいて、施工目標TPの位置および形状を画像Ia,Ibに表示する。また、表示装置100は、中央処理装置82から出力された作業装置10の作業内容に基づいて、画像Ia,Ibに作業内容WDを表示する。
【0054】
また、表示装置100は、中央処理装置82から出力された補正後の施工目標情報に基づいて、補正後施工目標OTPの位置および形状を、
図6Aに示す画像Iaに表示する。なお、表示装置100は、施工目標TPと補正後施工目標OTPとを、異なる表示方法で表示させるようにしてもよい。具体的には、たとえば、施工目標TPを実線で表示し、補正後施工目標OTPを破線で表示することができる。
【0055】
以下、本実施形態の作業機械1の作用を説明する。
【0056】
作業機械1の運転室22に搭乗したオペレータは、たとえば、運転室22内に配置された入力装置90に必要な情報を入力して、記憶装置81に施工目標情報を記憶させる。なお、記憶装置81にあらかじめ複数の施工目標情報を記憶させておき、入力装置90に必要な情報を入力して記憶装置81に記憶された任意の施工目標情報を選択するようにしてもよい。また、無線通信や有線通信などの情報通信によって、記憶装置81に施工目標情報を記憶させてもよい。施工目標情報は、たとえば地表などの施工対象の三次元形状や位置情報などを含む。
【0057】
オペレータは、たとえば、運転室22内の操作装置70の操作レバーや操作ペダルを操作し、その操作方向や操作量によって、作業機械1の作業装置10、旋回装置30、および走行装置40の動作方向および動作速度を決定する。操作量検出装置は、オペレータによる操作装置70の操作に基づく操作量を検出して制御装置80へ出力する。制御装置80は、入力された操作量に基づき、中央処理装置82により動作指令を算出して駆動装置50へ出力する。
【0058】
駆動装置50は、入力された動作指令に応じて、ブームシリンダ51、アームシリンダ52、バケットシリンダ53を伸縮させて、作業装置10を駆動する。また、駆動装置50は、入力された動作指令に応じて旋回モータ54を回転させ、旋回装置30を駆動して作業装置10および旋回体20を旋回させる。また、駆動装置50は、入力された動作指令に応じて走行モータを回転させ、走行装置40を駆動させて作業機械1を走行させる。
【0059】
たとえば、作業装置10の作業内容が、施工対象を施工目標の形状に近づける「粗掘削」である場合、オペレータは、旋回体20および作業装置10を比較的に高速で旋回させる傾向がある。一方、作業装置10の作業内容が、施工対象を施工目標の形状に仕上げる「仕上げ」である場合、オペレータは、旋回体20および作業装置10を比較的に低速で旋回させる傾向がある。
【0060】
また、施工目標の形状が平面または所定の傾斜角度よりも小さい傾斜面である場合、オペレータは、旋回体20および作業装置10を比較的に高速で旋回させる傾向がある。一方、施工目標の形状が所定の傾斜角度以上の傾斜面である場合、オペレータは、旋回体20および作業装置10を比較的に低速で旋回させる傾向がある。これは、施工目標の表面の傾斜角度が所定の傾斜角度以上である場合、施工目標の表面の傾斜角度が所定の傾斜角度よりも小さい場合と比較して、高度な操作技術が要求されるためである。
【0061】
しかし、前記従来の作業機械の制御装置では、前述のように、旋回動作をともなう施工が考慮されていない。そのため、旋回動作をともなう施工において、オペレータの意図に反してオフセット地形と目標施工地形とが切り替わるおそれがある。これに対し、本実施形態の作業機械1は、前述のように、以下の構成を備えている。
【0062】
作業機械1は、作業を行う作業装置10と、その作業装置10が取り付けられた旋回体20と、その旋回体20を旋回させる旋回装置30と、その旋回装置30を介して旋回体20を支持して走行させる走行装置40と、作業装置10、旋回装置30および走行装置40を駆動する駆動装置50と、作業装置10の位置および姿勢を検出する位置・姿勢検出装置としてのセンサ60と、作業装置10、旋回装置30および走行装置40の操作を指示する操作装置70と、その操作装置70の操作量を検出する操作量検出装置と、操作装置70の操作量と作業装置10の位置および姿勢に基づいて駆動装置50を制御する制御装置80と、を備えている。制御装置80は、記憶装置81と中央処理装置82とを含む。記憶装置81は、作業装置10による施工目標情報と、旋回装置30の操作量に基づく作業装置10の作業内容の判定基準情報とが記憶されている。中央処理装置82は、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された旋回装置30の操作量と、記憶装置81に記憶された判定基準情報とに基づいて、作業装置10の作業内容を判定する。また、中央処理装置82は、判定した作業内容に基づいて施工目標情報の補正値を算出し、施工目標情報および補正値に基づいて駆動装置50を制御してオペレータの操作を補助する。
【0063】
このような構成により、本実施形態の作業機械1は、制御装置80により、オペレータによる操作装置70の操作に応じた旋回装置30の操作量に基づいて、作業装置10の作業内容を判定することができる。具体的には、たとえば前述のように、中央処理装置82により、旋回装置30の操作量に応じた作業装置10の旋回速度と、記憶装置81に記憶された判定基準情報D1とに基づいて、作業装置10の作業内容が「仕上げ」であるか「粗掘削」であるかを判定することができる。
【0064】
さらに、中央処理装置82によって、判定した作業内容に基づいて、施工目標情報の補正値を算出し、施工目標情報および補正値に基づいて駆動装置50を制御して、オペレータの操作を補助することができる。具体的には、作業装置10の作業内容が「仕上げ」である場合、中央処理装置82は、たとえば前述のように、施工目標情報に対して補正値として「0」を加算し、施工対象の形状が施工目標の形状となるように、動作指令を出力して駆動装置50を駆動させることができる。このように、本実施形態の作業機械1は、作業装置10の旋回動作を考慮して、オペレータの意図に適合した作業内容である「仕上げ」の操作補助を行うことができる。
【0065】
また、作業装置10の作業内容が「粗掘削」である場合、中央処理装置82は、たとえば前述のように、施工目標情報に対して所定の補正値Zadを加算し、施工対象の形状が補正後の施工目標の形状となるように、動作指令を出力して駆動装置50を駆動させることができる。これにより、制御装置80は、作業装置10の旋回を含むオペレータの操作と施工目標情報と作業装置10の位置および姿勢との関係に基づいて、施工目標を所定の高さだけ上方にオフセットさせ、施工対象の過剰な掘削を防止するように、作業機械1の半自動制御を行うことができる。このように、本実施形態の作業機械1は、作業装置10の旋回動作を考慮して、オペレータの意図に適合した作業内容である「粗掘削」の操作補助を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態の作業機械1において、中央処理装置82は、作業装置10の位置および姿勢に基づいて作業装置10の旋回半径を算出し、その旋回半径に基づいて作業装置10の角速度を算出する。さらに、中央処理装置82は、算出した旋回半径および角速度に基づいて作業装置10の旋回速度を算出し、その旋回速度と、中央処理装置82に記憶された施工目標情報に含まれる施工目標の傾斜角度とに基づいて、作業装置10の作業内容を判定する。
【0067】
この構成により、作業機械1は、前述のように、オペレータの操作に基づく旋回装置30の操作量だけではなく、施工目標の傾斜および作業装置10の姿勢をも考慮して、作業装置10の作業内容を判定することができる。したがって、本実施形態の作業機械1によれば、よりオペレータの意図により適合した作業内容を判定することができ、よりオペレータの意図に適合した操作補助を行うことができる。
【0068】
また、本実施形態の作業機械1は、前述のように、施工目標情報と、作業装置10の位置および姿勢と、作業装置10の作業内容と、施工目標情報の補正値とに基づく画像Ia,Ibを表示する表示装置100を備えている。
【0069】
この構成により、作業機械1のオペレータに作業機械1の状況を視認させることができる。すなわち、オペレータは、表示装置100を目視することで、作業機械1が判定した作業装置10の作業内容を確認することができる。これにより、オペレータは、作業機械1の制御装置80による操作補助が、自らの意図に適合しているか否かを確認することが可能になる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、旋回動作を考慮してオペレータの意図に適合した操作補助を行うことが可能な作業機械1を提供することができる。
【0071】
[実施形態2]
次に、
図1から
図3、
図5および
図6を援用し、
図7を参照して、本開示に係る作業機械の実施形態2を説明する。
【0072】
図7は、実施形態2の作業機械1における作業内容判定機能F2の詳細を示す機能ブロック図である。本実施形態の作業機械1は、
図3に示す制御装置80の作業内容判定機能F2が、
図7に示す旋回制限判定機能F24および角速度補正機能F25を含む点で、前述の実施形態1の作業機械1と異なっている。本実施形態の作業機械1のその他の点は、前述の実施形態1の作業機械1と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
旋回制限判定機能F24において、中央処理装置82は、たとえば、油圧装置である駆動装置50の作動油の圧力を検出する圧力センサから出力された圧力情報に基づいて、旋回装置30の駆動力を算出する。記憶装置81は、たとえば、旋回装置30の駆動力のしきい値「b」が記憶されている。
図7に示す例では、記憶装置81は、たとえば、旋回装置30の駆動力と角速度補正値との関係を示すグラフG2が記憶されている。グラフG2は、たとえば、旋回装置30の駆動力がしきい値「b」を超えるまでは、角速度補正値が「1」であり、しきい値「b」を超えると角速度補正値が急激に減少して「0」になることを示している。
【0074】
すなわち、旋回制限判定機能F24において、中央処理装置82は、たとえば記憶装置81に記憶されたグラフG2を参照し、駆動装置50の圧力センサから出力される圧力情報に基づく旋回装置30の駆動力と、旋回装置30の駆動力のしきい値「b」とを比較する。また、中央処理装置82は、この比較に基づいて、圧力情報に基づく旋回装置30の駆動力がしきい値「b」以下であれば、旋回装置30による旋回体20の旋回動作の制限がないことを判定し、角速度補正値として「1」を出力する。一方、旋回装置30の駆動力がしきい値「b」より大であれば、中央処理装置82は、グラフG2に基づいて、旋回装置30による旋回体20の旋回動作の制限があることを判定し、角速度補正値として「1」よりも小さい値、または「0」を出力する。
【0075】
次いで、角速度補正機能F25において、中央処理装置82は、角速度演算機能F21で算出した作業装置10の角速度に対して、旋回制限判定機能F24で判定した旋回動作の制限の有無に基づく角速度補正値を乗算して、角速度を補正する。これにより、旋回装置30の駆動力がしきい値「b」以下であれば、角速度演算機能F21で算出した作業装置10の角速度がそのまま旋回速度演算機能F22の入力となる。一方、旋回装置30の駆動力がしきい値「b」より大であれば、角速度演算機能F21で算出した作業装置10の角速度が減少するか、または、0になるように補正される。
【0076】
以上のように、本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、駆動装置50による旋回装置30の駆動力のしきい値「b」が記憶されている。また、中央処理装置82は、駆動装置50から出力される旋回装置30の駆動力情報と旋回装置30の駆動力のしきい値「b」との比較に基づいて、旋回装置30による旋回体20の旋回動作の制限の有無を判定する。そして、中央処理装置82は、旋回体20の旋回動作の制限があると判定した場合に、角速度演算機能F21で算出した角速度を補正する。
【0077】
この構成により、たとえば、作業機械1の作業装置10が障害物に接触して旋回が妨げられている場合などに、油圧装置である駆動装置50の作動油の圧力が上限を超えることを防止して、作業機械1の信頼性を向上させることができる。したがって、本実施形態の作業機械1によれば、前述の実施形態1の作業機械1と同様に、旋回動作を考慮してオペレータの意図に適合した操作補助を行うことができるだけでなく、作業機械1の信頼性を向上させることができる。
【0078】
[実施形態3]
次に、
図1から
図3、
図5および
図6を援用し、
図8を参照して、本開示に係る作業機械の実施形態3を説明する。
【0079】
図8は、実施形態3の作業機械1における作業内容判定機能F2の詳細を示す機能ブロック図である。本実施形態の作業機械1は、
図3に示す制御装置80の作業内容判定機能F2が、
図8に示す角速度補正機能F25と、角速度補正値算出機能F26とを含む点で、前述の実施形態1の作業機械1と異なっている。本実施形態の作業機械1のその他の点は、前述の実施形態1の作業機械1と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば、作業装置10の重量と、作業装置10の重量に基づく角速度補正値が記憶されている。
図8に示す例において、記憶装置81には、作業装置10の先端の作業具であるバケット13の重量と、角速度補正値との関係を示すグラフG3が記憶されている。グラフG3は、作業具の重量がしきい値「c1」以下のときに角速度補正値は「1」であることを示している。また、グラフG3は、作業具の重量がしきい値「c1」より大きくしきい値「c2」よりも小さいときに、作業具の重量と角速度補正値が反比例の関係にあり、角速度補正値が「1」よりも小さく所定の値「d」よりも大きいことを示している。また、グラフG3は、作業具の重量がしきい値「c2」以上のときに、角速度補正値が所定の値「d」であることを示している。
【0081】
角速度補正値算出機能F26において、中央処理装置82は、記憶装置81に記憶された作業装置10の重量、たとえば作業装置10の作業具であるバケット13の重量と、記憶装置81に記憶されたグラフG3とに基づいて、角速度補正値を算出する。さらに、角速度補正機能F25において、中央処理装置82は、角速度演算機能F21で算出した作業装置10の角速度に対して、角速度補正値算出機能F26で算出した角速度補正値を乗算して、角速度を補正する。
【0082】
これにより、作業装置10の重量、たとえば作業具であるバケット13の重量がしきい値「c1」以下であれば、角速度演算機能F21で算出した作業装置10の角速度がそのまま旋回速度演算機能F22の入力となる。また、作業装置10の重量、たとえば作業具であるバケット13の重量がしきい値「c1」より大でかつしきい値「c2」より小であれば、作業装置10の重量に反比例して、角速度演算機能F21で算出した作業装置10の角速度が減少する。また、作業装置10の重量、たとえば作業具であるバケット13の重量がしきいしきい値「c2」以上であれば、「1」よりも小さく「0」よりも大きい角速度補正値の最小値「d」が角速度演算機能F21で算出した作業装置10の角速度に乗算される。
【0083】
以上のように、本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、作業装置10の重量に基づく角速度補正値が記憶され、中央処理装置82は、角速度演算機能F21で算出または推定した角速度を、角速度補正値に基づいて補正する。
【0084】
これにより、作業装置10の重量の増加にともなって旋回速度が制限される作業機械1の特性を、旋回作業判定機能F23における作業内容の判定に反映させることができる。したがって、本実施形態の作業機械1によれば、前述の実施形態1の作業機械1と同様に、旋回動作を考慮してオペレータの意図に適合した操作補助を行うことができるだけでなく、作業機械1の特性を反映した操作補助を行うことができる。
【0085】
[実施形態4]
次に、
図1から
図3、
図5および
図6を援用し、
図9を参照して、本開示に係る作業機械の実施形態4を説明する。
【0086】
図9は、実施形態4の作業機械1における作業内容判定機能F2の詳細を示す機能ブロック図である。本実施形態の作業機械1は、
図3に示す制御装置80の作業内容判定機能F2が、
図9に示す判定基準変更機能F27を含む点で、前述の実施形態1の作業機械1と異なっている。本実施形態の作業機械1のその他の点は、前述の実施形態1の作業機械1と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
本実施形態の作業機械1の記憶装置81には、たとえば、判定基準変更機能F27で選択される異なる複数の判定基準情報D1,D2,D3が記憶されている。判定基準情報D1は、前述の実施形態1と同様である。判定基準情報D2は、作業装置10の旋回速度が「中速」で施工目標情報に含まれる施工対象の形状が「平面」である場合の作業装置10の作業内容が「粗掘削」と規定されている点で、判定基準情報D1と異なっている。判定基準情報D3は、作業装置10の旋回速度が「中速」で施工目標情報に含まれる施工対象の形状が「傾斜面」である場合の作業装置10の作業内容が「仕上げ」と規定されている点で、判定基準情報D1と異なっている。
【0088】
入力装置90は、たとえば、複数の判定基準情報D1,D2,D3から一の判定基準情報を選択するための情報、たとえば、各判定基準情報に対応する番号や記号などの情報を入力可能に構成される。中央処理装置82は、たとえば、入力装置90に入力された入力情報に基づいて、複数の判定基準情報D1,D2,D3から一の判定基準情報を選択し、その選択した判定基準情報を旋回作業判定機能F23において使用する。
【0089】
以上のように、本実施形態の作業機械1は、情報を入力可能な入力装置90を備えている。また、記憶装置81は、異なる複数の判定基準情報D1,D2,D3が記憶されている。そして、中央処理装置82は、入力装置90に入力された入力情報に基づいて、複数の判定基準情報D1,D2,D3から一の判定基準情報を選択し、選択した判定基準情報に基づいて作業装置10の作業内容を判定する。
【0090】
このような構成により、オペレータは、たとえば自らの技量や嗜好に応じて、複数の判定基準情報D1,D2,D3の中から一の判定基準情報を選択することができる。したがって、本実施形態の作業機械1によれば、前述の実施形態1の作業機械1と同様に、旋回動作を考慮してオペレータの意図に適合した操作補助を行うことができるだけでなく、オペレータの技量や嗜好を反映した操作補助を行うことができる。
【0091】
以上、図面を用いて本開示に係る作業機械の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 作業機械
10 作業装置
20 旋回体
30 旋回装置
40 走行装置
50 駆動装置
60 センサ(位置・姿勢検出装置)
70 操作装置
80 制御装置
81 記憶装置
82 中央処理装置
90 入力装置
100 表示装置
D1 判定基準情報
D2 判定基準情報
D3 判定基準情報