(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】チップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/86 20060101AFI20230315BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20230315BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B65D85/86 200
D21H27/00 Z
D21H27/00 E
D21H19/20 B
(21)【出願番号】P 2019210371
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
(72)【発明者】
【氏名】沓名 美和
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-143227(JP,A)
【文献】特開2009-203561(JP,A)
【文献】特開2015-067310(JP,A)
【文献】特開2016-169445(JP,A)
【文献】特開2011-213419(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104088199(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86
D21H 27/00
D21H 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主成分とする基紙を有し、該基紙の灰分が1%以下、かつ、前記基紙の坪量が350g/m
2未満のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、
前記基紙のカバーテープが接する面が水溶性高分子を含有し、かつ、β線地合計で測定した地合指数が
0.5以上1以下であることを特徴とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項2】
前記水溶性高分子が澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項3】
前記カバーテープが接する面における前記水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、0.25~3.0g/m
2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項4】
前記基紙は、3層以上の多層抄きであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項5】
前記チップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、含有水分率が6~11質量%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項6】
カバーテープ剥離強度の最大値と最小値との差として求められる剥離強度のバラツキRが0.3N以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項7】
基紙がパルプを主成分とし、該基紙の灰分が1%以下、かつ、前記基紙の坪量が350g/m
2未満のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、
各層の抄紙機入口原料濃度が0.1質量%以上0.9質量%以下であり、
前記基紙のカバーテープが接する面に水溶性高分子を塗布、乾燥する工程を含み、
前記基紙のカバーテープが接する面は、β線地合計で測定した地合指数が
0.5以上1以下であることを特徴とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法。
【請求項8】
前記基紙は、3層以上の多層抄きであることを特徴とする請求項
7に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法。
【請求項9】
カバーテープ剥離強度の最大値と最小値との差として求められる剥離強度のバラツキRが0.3N以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びその製造方法に関する。更に詳しくは、カバーテープを剥がす際の剥離強度のバラツキが小さく台紙からのケバを抑制したチップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びチップ状電子部品用キャリアテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電子機器の自動生産化を図るために、プリント基板に対してチップ状電子部品の自動装着がなされている。チップ状電子部品の自動装着工程では、チップ部品実装機などを用いて、プリント配線板にチップ状電子部品を1つずつ供給し、プリント配線板に自動装着している。この自動装着工程において、チップ状電子部品の取り扱いを容易に行うために、個々のチップ状電子部品をテープ状の搬送体で包装したテーピング包装体が使用されている。
【0003】
前記テーピング包装体は、キャリアテープ台紙に、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部(以下、単に「装填部」と記載することがある。)を一定間隔で形成し、前記装填部に所定のチップ状電子部品を装填した後、カバーテープで封入することによって形成されている。なお、装填部は、一般的に角形に設けられ、プレスポケットやポケット、キャビティーなどと称されることもある。
【0004】
チップ状電子部品を装填したテーピング包装体は、リール状に搬送され、チップ状電子部品を装着する自動機械によって連続的にカバーテープが引き剥がされ、チップ状電子部品がキャリアテープ台紙から順次取り出されてプリント配線板の所定の位置に自動装着される。
【0005】
キャリアテープ台紙は、プラスチック製と紙製とに大別される。製造コスト、非帯電性、使用後の廃棄容易性などの点で紙製が望ましいとされている。紙製のキャリアテープ台紙としては、単層又は多層抄きの板紙製のものが知られている(例えば特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平09-188385号公報
【文献】特開2005-313946号公報
【文献】特開2008-230651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3のような紙製のキャリアテープ台紙においては、カバーテープの剥離強度のバラツキが小さいことが要求される。しかし、表面に塗布する薬剤の変更だけでは解決せず、また接着温度、圧力や速度などを変更だけでは対応できず、また剥離強度を強くするとケバが発生するなど品質のバランス取りが困難であり、操業上の大きな問題となっている。
【0008】
また、紙製のキャリアテープ台紙は、地合の悪い紙である場合、抄紙時のパルプ量の分布に隔たりが生じ、局所的なパルプ量の違いによって凹凸が生じる。地合の悪い紙であっても一般的にキャレンダーなどによって、厚さが均一化されるため、キャリアテープ台紙を抄造直後では表面の凹凸も平坦化されるものの、局所的に密度が高い部分と局所的に密度が低い部分とが生じる。このような状況において、キャリアテープ台紙を抄造後、当該キャリアテープ台紙を用いて前記テーピング包装体を製造するまでの間、雰囲気湿度又は経時などの要因によって、表面の凹凸状態が変化する場合がある。例えば、雰囲気湿度などによって水分が付与されると、地合の悪い紙では局所的に密度の高い部分がより膨潤しやすいため、表面の凹凸が抄造直後の表面の凹凸よりも大きくなる場合がある。一方、雰囲気湿度などによって水分が放出されると、地合の悪い紙では局所的に密度の低い部分がより収縮しやすいため、表面の凹凸が抄造直後の表面の凹凸よりも大きくなる場合がある。また、経時による紙の復元力によって、キャレンダー処理によって平坦化された表面の凹凸が復元して、表面の凹凸が抄造直後の表面の凹凸よりも大きくなる場合がある。このため、地合の悪い紙では、キャリアテープ台紙を製造(抄造)した時点又は出荷する時点での表面の凹凸状態と、キャリアテープ台紙を用いて前記テーピング包装体を製造する時点での表面の凹凸状態とが異なる場合がある。そこで、雰囲気湿度又は経時などの要因による台紙の表面の凹凸状態の変化に影響を受けない地合評価を簡易に行うことが求められていた。
【0009】
また、紙の地合は、キャリアテープ台紙を用いて形成したテーピング包装体において、カバーテープを剥がす際の剥離強度のバラツキ及び台紙からのケバの発生などに影響する。例えば地合が良くなるほど、すなわち地合指数が小さくなるほど剥離強度のバラツキが小さくなる傾向にあるが、台紙の表面とカバーテープの接着剤との密着面積が大きくなるため、台紙からのケバが発生やすくなる傾向にある。一方、地合が悪くなるほど、すなわち地合指数が大きくなるほど剥離強度のバラツキが大きくなる傾向にあるが、台紙の表面とカバーテープの接着剤との密着面積が小さくなるため、ケバが発生しにくい傾向にある。そこで、剥離強度のバラツキを小さくしながら、ケバの発生の少ないキャリアテープ台紙を提供できることが求められていた。
【0010】
このような問題に鑑み、本開示は、雰囲気湿度又は経時などの要因による表面の凹凸状態の変化に影響を受けない地合評価を簡易に行うことができ、カバーテープを剥がす際の剥離強度のバラツキが小さく台紙からのケバを抑制したチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を提供することを目的とする。さらに、本開示においては加工適性に優れたキャリアテープ台紙を提供することも目的とする。
【0011】
本開示の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明者等は、β線地合計で測定した地合指数を1以下とすることでカバーテープを剥がす際の剥離強度のバラツキを小さくしながら、基紙のカバーテープが接する面に水溶性高分子を含有させることで台紙からのケバを抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、パルプを主成分とする基紙を有し、該基紙の灰分が1%以下、かつ、前記基紙の坪量が350g/m2未満のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、前記基紙のカバーテープが接する面が水溶性高分子を含有し、かつ、β線地合計で測定した地合指数が0.5以上1以下であることを特徴とする。このような構成とすることで、カバーテープを剥がす際の剥離強度のバラツキが小さく台紙からのケバを抑制することすることができる。
【0013】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、前記水溶性高分子が澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。このような構成とすることで、台紙からのケバを抑制することができる。
【0014】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、前記カバーテープが接する面における前記水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、0.25~3.0g/m2であることが好ましい。ケバの発生をより抑制することができる。
【0015】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、前記基紙は、3層以上の多層抄きであることが好ましい。より確実にβ線地合計で測定した地合指数を1以下とすることができる。
【0016】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、前記チップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、含有水分率が6~11質量%であることが好ましい。台紙のクッション性が適正となりカバーテープの接着が容易となる。また、本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、カバーテープ剥離強度の最大値と最小値との差として求められる剥離強度のバラツキRが0.3N以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法は、基紙がパルプを主成分とし、該基紙の灰分が1%以下、かつ、前記基紙の坪量が350g/m2未満のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、各層の抄紙機入口原料濃度が0.1質量%以上0.9質量%以下であり、前記基紙のカバーテープが接する面に水溶性高分子を塗布、乾燥する工程を含み、前記基紙のカバーテープが接する面は、β線地合計で測定した地合指数が0.5以上1以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法では、前記基紙は、3層以上の多層抄きであることが好ましい。より確実にβ線地合計で測定した地合指数を1以下とすることができる。また、本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法では、カバーテープ剥離強度の最大値と最小値との差として求められる剥離強度のバラツキRが0.3N以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、雰囲気湿度又は経時などの要因による表面の凹凸状態の変化に影響を受けない地合評価を簡易に行うことができ、カバーテープを剥がす際の剥離強度のバラツキが小さく台紙からのケバを抑制することができるチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を提供することができる。さらに、本開示のキャリアテープ台紙であれば、加工適性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0021】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、パルプを主成分とする基紙を有し、基紙の灰分が1%以下、かつ、前記基紙の坪量が350g/m2未満のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、基紙のカバーテープが接する面が水溶性高分子を含有し、かつ、β線地合計で測定した地合指数が1以下である。
【0022】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、パルプを主成分とする基紙を有する。ここで、主成分とは、基紙を構成する成分のうち質量基準で最も含有量の多い成分をいう。本実施形態では、基紙を構成する成分のうちパルプが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。基紙に使用する原料パルプとしては、特に限定するものではないが、木材パルプを好適に使用することができる。木材パルプとしては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)や針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)などの化学パルプ、砕木パルプ(GP)やサーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ、脱墨パルプなどの古紙パルプが挙げられる。これらの原料パルプから選択した1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、特に、NBKPとLBKPを単独または併用することが好ましい。例えば、LBKPをパルプスラリー中70~100質量%含むことが好ましく、90~100質量%含むことがより好ましい。
【0023】
前記原料パルプは、離解機及び叩解機を使用して適切な叩解度を有するパルプスラリーとする。本発明においては、カナダ標準濾水度(JIS P 8121:1995 パルプのろ水度試験方法)でCSF300ml~800mlとすることが好ましい。より好ましくは、CSF350~600mlであり、更に好ましくはCSF410~580mlである。
【0024】
適切な叩解度に調整したパルプスラリーを原料スラリーとし、抄紙機で抄紙してキャリアテープ台紙の基紙を形成する。抄紙機は公知の抄紙機を用いることができる。すなわち、長網式抄紙機、円網式抄紙機、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等で抄紙することができる。基紙の構成は単層でも2層以上の多層としてもよく、例えば、3層とすることができる。2層以上の多層とする場合には、各層間には、層間強度を向上させることを目的として、層間に澱粉を塗布して抄紙してもよい。ここで本実施形態においてβ線地合計で測定した地合指数が1以下とするには、層枚数が多いほど各層の地合が改善されるため、3層以上が好ましく、より好ましくは4層以上、5層以上がとすることがさらに良い。層数の上限値は、特に限定されないが、7層以下であることが好ましく、6層以下であることがより好ましい。また長網抄紙機の場合、シェーキング装置などの使用により地合が改善するため、結果として地合指数が1以下とすることに寄与するため好ましい。
【0025】
基紙には紙力増強剤を添加することが好ましい。紙力増強剤を添加することにより、十分な層間強度の確保ができ、また、ケバや折れじわの発生を抑制することができる。紙力増強剤としては、特に限定するものではないが、澱粉、変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂を用いることが好ましい。特にカチオン性澱粉、両性澱粉を使用することが好ましい。また、紙力増強剤は原料スラリーに内添して使用することが好ましい。紙力増強剤を内添させることで、表面のケバだけでなくチップ状電子部品の装填部の壁面や断裁面からの紙粉を抑制することが可能となる。紙力増強剤の添加量としては、パルプ100質量部に対して0.1~10質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.2~2質量部である。また、その他の製紙用添加剤として、内添サイズ剤、填料、歩留まり向上剤、染料、硫酸バンドなどを用いることも可能である。但し、ケバや紙粉抑制の観点より填料はパルプ100質量部に対して1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0026】
本実施形態においては、基紙を乾燥させて得られるキャリアテープ台紙の含有水分率を6~11質量%とすることが好ましい。より好ましくは7~10質量%である。含有水分率をこのような範囲とすることで、台紙のクッション性が適正となりカバーテープを接着する際に容易となる。含有水分率が6質量%未満で台紙自体が固くなりカバーテープが台紙の凹凸の影響を受け接着しにくくなる。また、含有水分率が11質量%を超えると、含有水分率が高すぎて紙の腰が弱くなり断裁時などの加工適性に劣るおそれがある。更には、装填部に装填した電子部品に腐食が生じやすくなるなどの悪影響を及ぼすおそれがある。
【0027】
含有水分率の調整方法は、特に限定するものではなく、製紙業界で用いられる公知の方法を用いることができるが、主に基紙の乾燥工程で調整することができる。基紙の乾燥方法としては特に限定するものではなく、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥などを用いることができる。抄紙機上ではシリンダードライヤーを単独又は複数組み合わせて乾燥させることができ、乾燥温度は80~200℃の範囲で適宜設定することが好ましく、80~160℃の範囲であることがより好ましい。
【0028】
また、本発明のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、装填部に装填したチップ状電子部品に金属腐食などの悪影響を及ぼさないように中性紙とすることが好ましい。
【0029】
基紙のカバーテープが接する面は、基紙の表面のうちいずれか一方の表面である。基紙の表面のうち少なくともカバーテープが接する面には、水溶性高分子を塗布する。本実施形態では、β線地合計で測定した地合指数が1以下である。地合指数を1以下とすると、カバーテープの剥離強度のバラツキが小さくなるが、台紙の表面とカバーテープの接着剤との密着面積が大きくなり、ケバが発生しやすくなる。そこで、本実施形態では、基紙のカバーテープが接する面に水溶性高分子を含有させることで、台紙の表面強度が強くなるとともに、カバーテープの接着剤が台紙に適度に入り込むため、台紙の表面とカバーテープの接着剤との密着力が適度となるため、カバーテープ剥離によるケバの発生を抑制することができる。また、水溶性高分子を塗布することにより、水溶性高分子を内添だけで含有させた場合と比較して、カバーテープが接する面に水溶性高分子の塗布層を形成することができるため、キャリアテープ台紙とした際の表面のケバを抑制することができる。水溶性高分子としては、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール系樹脂から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の中でもアニオン系ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。カチオン系ポリビニルアルコール系樹脂は台紙表面での被膜形成が強くカバーテープの接着剤が入り込まず、カバーテープとの接着性が低くなる場合がある。水溶性高分子の中でポリアクリルアミド系樹脂については台紙表面に塗布しても浸透し表面に残らないため、カバーテープの接着剤が入り込みすぎカバーテープとの接着性は高くなるが表面強度が落ち結果としてケバが発生する。よってポリアクリルアミド系樹脂を単独で使用することは好ましくない。本実施形態では、基紙の表面のうちカバーテープが接する面とは反対側の表面に水溶性高分子を塗布してもよい。
【0030】
水溶性高分子の塗布方法としては特に限定するものではなく、2本ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、メタリングサイズプレスを用いることができる。これらの中でも、製造効率や加工適性、表面強度の向上、紙層強度の向上の観点から2本ロールサイズプレスを使用することが好ましい。水溶性高分子の塗布量は、基紙の両面当たり固形分換算で0.5~5g/m2であることが好ましく、好ましくは1.0~3.5g/m2の範囲である。カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、0.25~3.0g/m2であることが好ましく、固形分換算で、0.7~2.5g/m2であることがより好ましく、固形分換算で、1.0g/m2を超え1.75g/m2であることがより特に好ましい。特に、水溶性高分子として変性澱粉を単独で用いる場合、カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、0.7~3.0g/m2であることが好ましく、1.0~2.3g/m2であることがより好ましい。水溶性高分子としてポリビニルアルコール系樹脂を単独で用いる場合、カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、0.7~1.8g/m2であることが好ましく、0.9~1.4g/m2であることがより好ましい。また、水溶性高分子として澱粉、変性澱粉及びポリビニルアルコール系樹脂のうち2種以上を混合して用いる場合、カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、1.3~3.0g/m2であることが好ましく、1.7~2.4g/m2であることがより好ましい。
【0031】
また、本実施形態においては、乾燥後の基紙を、必要に応じて平滑化処理してもよい。平滑化処理の方法は特に限定するものではなく、マシンキャンダー、ソフトキャレンダ-、スーパーキャレンダ-などを用いることができる。平滑化処理の際に基紙を加熱する場合は、ここで基紙の含有水分率を調整することも可能である。
【0032】
キャリアテープ台紙の厚さは、装填されるチップ状電子部品の大きさによっても異なるが、50~400μmとすることが好ましく、より好ましくは200~380μmである。また、坪量は200g/m2以上350g/m2未満とすることが好ましく、より好ましくは250~345g/m2である。
【0033】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法は、基紙がパルプを主成分とし、該基紙の灰分が1%以下、かつ、前記基紙の坪量が350g/m2未満のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、各層の抄紙機入口原料濃度が0.1質量%以上0.9質量%以下であり、前記基紙のカバーテープが接する面に水溶性高分子を塗布、乾燥する工程を含み、前記基紙のカバーテープが接する面は、β線地合計で測定した地合指数が1以下である。
【0034】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、基紙の灰分が1%以下である。基紙の灰分が1%を超えると、キャリアテープ台紙の層内剥離が発生したり、毛羽立ちが発生したりする。また、チップを腐食・傷をつけないため無機物は少ない方がよく、基紙の灰分を1%以下とすることでポケット内への無機物の混入を防止することができる。基紙の灰分は、JIS P8251:2003「紙、板紙-灰分試験方法-525℃燃焼法」にしたがって測定される。基紙の灰分は、0.6%以下であることがより好ましい。また、基紙の灰分の下限値は特に限定されないが、原料パルプに由来して意図せずに灰分が混入する場合がある。そこで、この非意図的に混入する灰分を考慮して、基紙の灰分の下限値は、0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましく、0.3%以上であることが特に好ましい。
【0035】
本実施形態に係るキャリアテープ台紙では、キャリアテープ台紙のカバーテープが接する面がβ線地合計で測定した地合指数が1以下である。地合指数は0.8以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。地合指数の下限値は特に限定されないが、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。地合指数が1を超えると剥離強度のバラツキが大きくなり、カバーテープ接着時の制御が難しくなり実用上問題となる。ここで剥離強度のバラツキは最大値と最小値の差Rで示され、0.3N以下が好ましく、0.2N以下がより好ましく、0.15N以下が最も良い。剥離強度のバラツキRの下限値は特に限定されないが、0.01N以上であることが好ましく、0.05N以上であることがより好ましい。
【0036】
β線地合計で測定した地合指数が1以下とする方法として、抄紙機入口原料の濃度(以降、原料濃度ということもある。)を低くすることで台紙の地合を良くし、結果として地合指数を減少させることが好ましい。円網抄紙機の場合、入口のバット内原料濃度、長網抄紙機の場合、ヘッドボックスのインレット濃度がこれに当たるが、0.9質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、0.3質量%以下が更に良い。0.9質量%を超えると地合指数が所望する範囲に入らず、カバーテープの剥離強度のバラツキが大きくなる。上記原料濃度は0.1質量%未満となるとワイヤーからシートが剥がれづらくなりまたワイヤー上の歩留りも低下するため、0.1質量%が実質の下限値となる。原料濃度の下限値は、0.15質量%であることがより好ましい。特に多層抄紙の場合、表層及び裏層の上記原料濃度がこの範囲となることが好ましい。
【0037】
本実施形態における地合指数の測定で使用する地合計はβ線地合計、すなわちβ線放射線源を使用した地合計であり坪量(米坪量と呼ばれることもある。)の分布を示すものである。広く使用される地合計は光透過によるものであるが、パルプ成分、填料の種類及び量、色相、白色度、パルプの叩解度合なども変動要素となり地合評価としては適していない。紙製のキャリアテープ台紙は、前述のとおり、雰囲気湿度又は経時などの要因によって表面の凹凸が、キャリアテープ台紙の製造時(抄造時)に生じた表面の凹凸よりも大きくなる場合がある。そこで、本発明者らは、β線地合計を用いることによって雰囲気湿度又は経時などの要因による表面の凹凸状態の変化に影響を受けずに地合を簡易に測定できることを見出した。β線地合計を用いて測定した地合指数は、キャリアテープ台紙の直径1mmで測定された坪量(単位坪量という。)の隔たりを指数化したものである。このため、表面の凹凸状態に影響されない。したがって、地合指数の大小にかかわらず、雰囲気湿度又は経時などの要因によって表面の凹凸状態が変化する前と後とで、β線地合計を用いて測定した地合指数は同じである。β線地合計を用いて測定した地合指数が1以下であれば、局所的な坪量の隔たりが小さいため、雰囲気湿度又は経時などの要因による表面の凹凸状態の変化量も小さい。一方、β線地合計を用いて測定した地合指数が1を超えると、局所的な坪量の隔たりが大きいため、雰囲気湿度又は経時などの要因による表面の凹凸状態の変化量が大きくなる。β線地合計は350g/m2以上の坪量については精度に欠くため、本実施形態では基紙の坪量が350g/m2未満のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を対象とすることとした。
【0038】
テーピング包装体は、例えば、原反製造工程と、スリット工程と、装填部形成工程と、チップの装填工程と、チップの封入工程とを経て製造される。原反製造工程は、一般的に製紙会社で行われることが多く、キャリアテープ台紙となる紙が抄造され、ロール状に巻き取られた500~3000mm幅の原反とされる工程である。スリット工程は、一般的にスリット加工会社で行われることが多く、原反からキャリアテープ台紙として適した幅(例えば8mm幅)にスリット加工される工程である。ここで、一般的に、原反からいきなりキャリアテープ台紙として適した幅にスリット加工されるのではなく、一旦所定の幅(例えば70~170mm幅)にスリット加工される工程(一次スリットという)を経てからキャリアテープ台紙として適した幅にスリット加工される(最終スリットという)。なお、一次スリットの回数は、1回だけでなく2回以上に分けて行なわれる場合もある。装填部形成工程は、スリット工程に引き続きスリット加工会社で行われることが多く、最終スリットを経たキャリアテープ台紙に一定間隔で装填部が形成される工程である。チップの装填工程及びチップの封入工程は、一般的に電子チップ製造会社で行なわれることが多く、装填部に所定のチップ状電子部品が装填され後、カバーテープで封入される工程である。一次スリット工程を経た所定幅(例えば70~170mm幅)のロール紙では、台紙の抄造直後よりも水分変化や表面の凹凸が安定している。本発明者らが一次スリット工程を経た所定幅(例えば70~170mm幅)のロール紙についてβ線地合計を用いて地合指数を測定したところ、当該地合指数は、台紙の製造直後のロール紙の地合指数とほぼ同じであることが確認できた。
【0039】
本実施形態において、地合指数は、例えば次のようにして求める。チップ状電子部品用キャリアテープ台紙の直径1mmで測定された坪量(単位坪量という。)を、70mm×70mmの測定面積について3.5mm×3.5mmのピッチで測定し、得られた400個の単位坪量の値について坪量の標準偏差、坪量の加重平均値を求める。そして、下記の計算式(数1)にしたがって算出した坪量規格化標準偏差(n.s.d=normalized standard deviation)を地合指数とする。
(数1)坪量規格化標準偏差(g/m)=坪量の標準偏差(g/m2)/坪量の加重平均値(g/m2)1/2
【0040】
原料濃度をコントロールする方法のほかにプレス圧のコントロール、キャレンダー等の平滑化のコントロールすることが好ましい。抄紙機とドライヤーパートの間に窄水を目的としプレスパートを設けるが、プレスニップ数は3以上が好ましい。2以下の場合急激な窄水となりフェルトマークと呼ばれる毛布跡が深く刻み込まれ、結果として微小非接触部が増加することとなる。プレスパートのニップ数の上限値は特に限定されないが、6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。また、プレスパートニップの合計押圧力は、100~500kN/mであることが好ましく、200~420kN/mmであることがより好ましい。キャレンダーは2ニップ以上か好ましい。1ニップではキャレンダーでの抱きの効果が無いため摩擦による平滑向上効果が無いためである。よって1ニップ式を複数回処理するよりも多段キャレンダーで複数ニップすることが好ましい。キャレンダーニップ数の上限値は特に限定されないが、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。また、キャレンダーニップの押圧力は、20~150g/cmであることが好ましく、40~130kg/cmであることがより好ましい。キャレンダー装置が2基ある場合は各々25~100kg/cmとすることが好ましい。プレス圧のコントロール及びキャレンダー加圧のコントロールは加圧するほど地合指数は減少する方向となるが、台紙が固くなりカバーテープ接着時に制御が難しくなる。台紙密度が0.8~1.1g/cm3の範囲でコントロールすることが好ましい。より好ましくは、0.9~1.1g/cm3である。但し、上述の通りプレス圧のコントロール、キャレンダー等の平滑化のコントロールは坪量分布を是正することは出来ないが、キャリアテープ台紙を生産後比較的早くテーピング包装体の製造に使用する場合は有効な手段である。
【0041】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、チップ状電子部品を装填するための装填部を一定間隔で形成し、前記装填部にチップ状電子部品を装填した後、カバーテープで封入し、チップ状電子部品用キャリアテープ(テーピング包装体とも呼ばれる。)として使用される。装填部は、エンボス加工によって形成される有底の凹部又は打ち抜き加工によって形成される貫通孔のいずれでもよい。貫通孔とする場合は、キャリアテープ台紙の一方の面にボトムテープを装着して貫通孔の一方の孔を塞ぎ、装填部を形成する。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0043】
<実施例1>
カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)430mlのLBKP100部からなるパルプスラリーに、硫酸バンドを0.3部、カチオン性デンプン(商品名:ネオタック#30T/日本食品加工社製)1部、ロジンエマルジョンサイズ剤(商品名:CC-1404/星光PMC社製)0.4部を添加し原料スラリーを得た。得られた原料スラリーを用い、円網抄紙機によって表層1層、中層3層、裏層1層からなる5層の湿紙を抄き合わせて抄紙し基紙を得た。その後、プレスパートで合計押圧力300kN/mで3ニップ窄水し、乾燥後、2本ロールサイズプレスにて水溶性高分子としてカルボキシル基変性ポリビニルアルコール(ゴーセナールT-350/日本合成化学工業社製)6%のサイズ液を基紙の両面あたり固形分換算で3g/m2となるように塗布し、含有水分率が9%となるようにシリンダードライヤーで乾燥、多段キャレンダーにより押圧力100kg/cmで2ニップの平滑化処理をさせて目的とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、1.4g/m2であった。なお、各層の坪量は、表層を60g/m2、中層を60g/m2を3層で合計180g/m2、裏層を60g/m2とした。円網抄紙機のバット内濃度(各層の抄紙機入口原料濃度に相当する)は全層0.2%であった。灰分は、0.3%であり、パルプ由来と考えられる。
【0044】
<実施例2>
表層1層、中層1層、裏層1層からなる3層の湿紙を抄き合わせて抄紙し、各層の坪量は、表層を60g/m2、中層を180g/m2を1層、裏層を60g/m2とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。円網抄紙機のバット内濃度は表層及び裏層が0.2%、中層が0.6%であった。
【0045】
<実施例3>
表層1層、中層2層、裏層1層からなる4層の湿紙を抄き合わせて抄紙し各層の坪量は、表層を60g/m2、中層を90g/m2を2層で合計180g/m2、裏層を60g/m2とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。円網抄紙機のバット内濃度は表層及び裏層が0.2%、中層が0.4%であった。
【0046】
<実施例4>
サイズ液の塗布量を基紙の両面あたり3g/m2から2g/m2とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、1.0g/m2であった。
【0047】
<実施例5>
サイズ液の塗布量を基紙の両面あたり3g/m2から4g/m2とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、2.0g/m2であった。
【0048】
<実施例6>
サイズ液をカルボキシル基変性ポリビニルアルコール(ゴーセナールT-350/日本合成化学工業社製)6%から酸化澱粉(MS3800/日本食品加工社製)7%のサイズ液とした以外は、実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、1.6g/m2であった。
【0049】
<実施例7>
平滑化処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0050】
<実施例8>
プレスニップ数を3から1とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0051】
<実施例9>
円網抄紙機のバット内濃度を全層0.2%から0.4%とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0052】
<実施例10>
円網抄紙機からシェーキング装置を用いた長網多層抄紙機へ変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0053】
<実施例11>
含有水分率を9%から6%に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0054】
<実施例12>
含有水分率を9%から11%に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0055】
<比較例1>
長網単層抄紙し、単層の坪量を300g/m2とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。長網抄紙機のインレット内濃度は1.0%であった。
【0056】
<比較例2>
サイズ液の塗布量を基紙の両面あたり3g/m2から塗布無しとした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。カバーテープが接する面における水溶性高分子の塗布量は、固形分換算で、0g/m2であった。
【0057】
<比較例3>
実施例1のパルプスラリーに軽質炭酸カルシウム(TP121:奥多摩工業社製)を2部添加し、灰分を2%とした以外は、実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0058】
<比較例4>
円網抄紙機のバット内濃度を全層0.2%から1.0%とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0059】
<地合指数>
AMBERTEC社製ベータフォーメーションテスターを用いて単位坪量を下記の測定ピッチで測定し、下記の計算式(数1)に従い坪量規格化標準偏差(n.s.d=normalized standard deviation)を指標とし地合指数とした。
(数1)坪量規格化標準偏差(g/m)=坪量の標準偏差(g/m2)/{坪量(g/m2)}1/2
測定条件:測定面積70mm×70mm、測定ピッチ3.5mm×3.5mm
【0060】
<カバーテープ剥離強度測定>
実施例及び比較例で得られたキャリアテープ台紙に、テーピング装置(PST-150Air、PALMEC社製)を用いてカバーテープ((No381H-14A:日東電工製)を接着し、剥離強度テスター(PFT-50、PALMEC社製)を用いて剥離強度を測定した。テーピング条件:接着温度140℃、4mm×50回スタンプ/シール長200mm、剥離強度測定条件:剥離速度300mm/30秒、剥離角度170度とした。得られた剥離強度の最大値と最小値よりバラツキRを算出した。評価基準は次のとおりである。バラツキRが0.2以下の場合は実用レベル、バラツキRが0.2を超え0.3以下の場合は実用下限レベル、バラツキRが0.3を超える場合は実用不可レベルとした。
【0061】
<ケバ評価>
カバーテープ剥離強度測定をしたサンプルの表面を目視観察した。評価基準は次のとおりである。
○:ケバは全く観察されず良好。(実用レベル)
△:ケバが僅かに観察される。(実用下限レベル)
×:ケバが明らかに観察される。(実用不可レベル)
【0062】
<灰分>
灰分はJIS P8251:2003「紙、板紙-灰分試験方法-525℃燃焼法」にしたがって測定した。
【0063】
【0064】
表1に示すとおり、実施例1~12で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、何れもカバーテープの剥離強度とケバ評価は良好であり、実用上問題のないレベルのものであった。実施例11で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、剥離強度のバラツキが実施例1よりも多く、実用下限レベルであった。また、実施例12で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、実施例1と比較して紙の腰が弱く、裁断しにくく、ケバ評価が実用下限レベルであった。これに対して比較例1で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は単層のため入口原料濃度が高くなり地合いが大きく崩れた。その結果地合指数が1を超え、カバーテープの剥離強度のバラツキは実用上問題のあるものであった。また、比較例2で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は水溶性高分子の塗布を行っていないためケバが発生し、実用上問題のあるものであった。比較例3で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、灰分が1%を超えたため、ケバが発生し実用上問題のあるものであった。比較例4は、入口原料濃度が高かったため、地合指数が1を超え、カバーテープの剥離強度のバラツキは実用上問題のあるものであった。