(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】タッチセンサユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 13/18 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
H01H13/18 Z
(21)【出願番号】P 2019235916
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2019131724
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 毅
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 陽平
(72)【発明者】
【氏名】折原 康浩
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203661(JP,A)
【文献】特開平11-191339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/18
H01H 11/00
B60J 5/00
E05F 15/44
G01L 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ本体と、前記センサ本体が埋設されるセンサホルダと、前記センサホルダの外に配置され、前記センサ本体と電気的に接続された電気部品と、を有するタッチセンサユニットであって、
前記センサ本体は、外力が付与されると弾性変形する管状絶縁体と、前記管状絶縁体の内部に設けられ、前記管状絶縁体の弾性変形に伴って互いに接触する複数の電極と、を備え、
前記センサホルダは、前記センサ本体に沿って延びる挿入穴を備え、
前記センサホルダの前記挿入穴に塑性変形可能な芯金が挿入され、
少なくとも前記センサホルダの端部,前記センサホルダの端面から突出している前記芯金の端部および前記電気部品が樹脂により一括してモールドされている、
タッチセンサユニット。
【請求項2】
前記芯金の前記端部は、前記センサホルダの前記端面に係止する係止部を含む、
請求項1に記載のタッチセンサユニット。
【請求項3】
前記係止部は、前記挿入穴の径方向と同方向における寸法が前記挿入穴の直径よりも大きくなるように変形した前記芯金の前記端部の一部である、
請求項2に記載のタッチセンサユニット。
【請求項4】
前記管状絶縁体の端部が前記センサホルダの前記端面から前記芯金の前記端部と同方向に突出しており、
前記センサホルダの前記端部,前記芯金の前記端部および前記電気部品に加え、前記管状絶縁体の前記端部も樹脂により一括してモールドされている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタッチセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物の接触を検知するのに用いられるタッチセンサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、当該車両が備える開口部を開閉する開閉体(例えば、スライドドアやテールゲート)と、開閉体を駆動する開閉装置と、が設けられることがある。開閉装置は、駆動源である電動モータと、電動モータをオン/オフさせる操作スイッチと、を備えている。開閉装置が備える電動モータは、操作スイッチの操作に基づいて作動し、開閉体を開駆動または閉駆動する。また、開閉装置の中には、操作スイッチの操作の有無にかかわらず、開閉体を開駆動または閉駆動する自動開閉装置がある。従来の自動開閉装置の1つは、開口部と開閉体との間に挟まれた障害物を検知するタッチセンサユニットを備えており、当該タッチセンサユニットの検知結果に基づいて開閉体を駆動する。例えば、自動開閉装置は、タッチセンサユニットによって障害物が検知されると、それまで閉駆動されていた開閉体を開駆動させたり、その場で停止させたりする。
【0003】
上記のようなタッチセンサユニットの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されているタッチセンサユニットは、センサ本体と、センサ本体が埋設されたセンサホルダと、を有している。センサ本体は、絶縁チューブ及び当該絶縁チューブ内に設けられた2本の線状電極を備えており、それら2本の線状電極は、絶縁チューブ内に螺旋状に設けられ、かつ、非接触の状態で互いに交差している。
【0004】
また、特許文献1には、タッチセンサユニットを所望の湾曲状態に維持するための芯金が内蔵されたセンサホルダが記載されている。特許文献1によれば、センサホルダに内蔵されている芯金をドア枠などの設置場所の形状に倣う湾曲形状に塑性変形させることにより、センサホルダを含むタッチセンサユニットを設置場所の形状に沿った湾曲状態に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような芯金をセンサホルダに内蔵する方法には、センサホルダを成形する際に当該センサホルダ内に芯金を埋設する方法と、センサホルダが備える挿入穴に事後的に芯金を挿入する方法と、がある。
【0007】
センサホルダが備える挿入穴に事後的に挿入された芯金は、センサホルダに対して固定されない。このため、芯金が挿入穴の内部で長手方向に移動してしまう虞がある。
【0008】
本発明の目的は、センサホルダに内蔵されている芯金の位置が保持されるタッチセンサユニットを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタッチセンサユニットは、センサ本体と、前記センサ本体が埋設されるセンサホルダと、前記センサホルダの外に配置され、前記センサ本体と電気的に接続された電気部品と、を有する。前記センサ本体は、外力が付与されると弾性変形する管状絶縁体と、前記管状絶縁体の内部に設けられ、前記管状絶縁体の弾性変形に伴って互いに接触する複数の電極と、を備える。前記センサホルダは、前記センサ本体に沿って延びる挿入穴を備える。そして、前記センサホルダの前記挿入穴に塑性変形可能な芯金が挿入される。また、少なくとも前記センサホルダの端部,前記センサホルダの端面から突出している前記芯金の端部および前記電気部品が樹脂により一括してモールドされる。
【0010】
本発明の一態様では、前記芯金の前記端部は、前記センサホルダの前記端面に係止する係止部を含む。
【0011】
本発明の他の一態様では、前記係止部は、前記挿入穴の径方向と同方向における寸法が前記挿入穴の直径よりも大きくなるように変形した前記芯金の前記端部の一部である。
【0012】
本発明の他の一態様では、前記管状絶縁体の端部が前記センサホルダの前記端面から前記芯金の前記端部と同方向に突出している。そして、前記センサホルダの前記端部,前記芯金の前記端部および前記電気部品に加え、前記管状絶縁体の前記端部も樹脂により一括してモールドされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センサホルダに内蔵されている芯金の位置が保持されるタッチセンサユニットが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】タッチセンサユニットが搭載された車両のテールゲートを示す正面図である。
【
図2】タッチセンサユニットが搭載された車両のテールゲートを示す側面図である。
【
図3】タッチセンサユニットの構成を示す斜視図である。
【
図4】タッチセンサユニットの構造を示す拡大断面図である。
【
図5】タッチセンサユニットの構造を示す説明図である。
【
図6】タッチセンサユニットの構造を示す他の説明図である。
【
図7】タッチセンサユニットの構造を示すさらに他の説明図である。
【
図9】モールド部及びカバー部材を示す斜視図である。
【
図10】モールド部及びカバー部材を示す他の斜視図である。
【
図11】モールド部の成形工程を示す説明図である。
【
図12】モールド部の成形工程を示す他の説明図である。
【
図13】係止部を含む芯金の端部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用されたタッチセンサユニットの一例について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1,
図2に示されるように、本実施形態に係るタッチセンサユニット20は、車両10に搭載される。図示されている車両10は、所謂ハッチバックタイプの車両である。この車両10の後部には、大きな荷物を車室内に出し入れし得る開口部(後方開口部11)が設けられている。後方開口部11は、車両10の後方側に設けられたヒンジ(図示せず)によって回動可能に支持された開閉体12によって開閉される。開閉体12は、「テールゲート」,「リアゲート」,「バッグドア」等と呼ばれるが、本明細書では「テールゲート」と呼ぶ。
【0016】
車両10には、テールゲート12を
図2中の実線矢印および破線矢印で示される方向に回動(開閉)させるパワーテールゲート装置13が搭載されている。パワーテールゲート装置13は、テールゲート12を開閉させる減速機付きのアクチュエータ13aと、スイッチ(図示せず)の操作に基づいてアクチュエータ13aを制御するコントローラ13bと、障害物BLを検知するための一対のタッチセンサユニット20と、を備えている。つまり、本実施形態に係るタッチセンサユニット20は、車両10に搭載されるパワーテールゲート装置13の構成要素の1つである。
【0017】
図1に示されるように、タッチセンサユニット20は、テールゲート12の外周面に設けられている。具体的には、タッチセンサユニット20は、テールゲート12の車幅方向両側面にそれぞれ設けられている。より具体的には、タッチセンサユニット20は、テールゲート12の湾曲した両側面(縁)に、それら側面の形状に沿って設けられている。よって、後方開口部11とテールゲート12との間に障害物BLが挟まれると、当該障害物BLがタッチセンサユニット20によって検知される。タッチセンサユニット20は、障害物BLを検知すると検知信号を出力する。タッチセンサユニット20から出力された検知信号は、コントローラ13bに入力される。検知信号が入力されたコントローラ13bは、操作スイッチの操作状況に関わらず、閉駆動されているテールゲート12を開駆動させるか、閉駆動されているテールゲート12をその場で停止させる。
【0018】
図3に示されるように、タッチセンサユニット20は、センサ本体30,センサホルダ31及びブラケット32を含み、これらセンサ本体30,センサホルダ31及びブラケット32は一体化されている。
【0019】
図3に示されているブラケット32は、プラスチック等の樹脂材料によって形成されており、テールゲート12(
図1,
図2)の側面(縁)と略同一の長さを有し、全体として板状の外観を呈している。
図3に示されるように、センサ本体30の長手方向一部はセンサホルダ31に固定されている一方、残部はセンサホルダ31に固定されていない。そして、センサ本体30の一部が固定されているセンサホルダ31がブラケット32に固定(接合)されている。以下の説明では、センサホルダ31に固定されていないセンサ本体30の長手方向一部を「引き出し部」と呼んで他の部分と区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0020】
上記のような基本構造を備えるタッチセンサユニット20は、ブラケット32がテールゲート12(
図1,
図2)の縁に固定(接合)されることによって車両10に取り付けられる。この際、センサ本体30の引き出し部は、テールゲート12に設けられている引き込み穴からテールゲート12の内側に引き入れられる。また、引き出し部が引き入れられた後の引き込み穴は、引き出し部に装着されているグロメットGMによって塞がれる。以下、タッチセンサユニット20についてより詳細に説明する。
【0021】
図3に示されるように、タッチセンサユニット20を構成するセンサ本体30は、管状絶縁体40と、管状絶縁体40の内部に設けられ、管状絶縁体40の弾性変形に伴って互いに接触する複数の電極41、42と、コネクタ43と、を有し、電極41,42を内蔵する管状絶縁体40の長手方向一部がセンサホルダ31に埋設されている。センサホルダ31は、絶縁性ゴムによって形成されており、弾性を有する。つまり、センサホルダ31は、外力が付与されると弾性変形し、外力が除かれると元の形状に復帰する。また、コネクタ43は、不図示の他のコネクタに接続される。コネクタ43が他のコネクタに接続されることにより、タッチセンサユニット20がコントローラ13b(
図1,
図2)と電気的に接続され、タッチセンサユニット20から出力される検知信号がコントローラ13bに入力可能となる。
【0022】
図4に示されるように、センサホルダ31は、一体成形された収容部33及び土台部34を有する。収容部33は中空であり、この収容部33内にセンサ本体30が収容されている。土台部34には収容部33に収容されているセンサ本体30に沿って延びる挿入穴35が設けられており、この挿入穴35に塑性変形可能な芯金37が挿入されている。言い換えれば、センサホルダ31の収容部33にセンサ本体30が埋設され、センサホルダ31の土台部34に芯金37が埋設されている。尚、土台部34の底面はブラケット32(
図3)に接合される。
【0023】
図4に示されている管状絶縁体40は、絶縁性ゴムからなるチューブであって、弾性を有する。つまり、管状絶縁体40は、外力が付与されると弾性変形し、外力が除かれると元の形状に復帰する。また、管状絶縁体40の内径は、電極41,42の外径の約3倍である。
【0024】
図5,
図6に示されるように、管状絶縁体40に収容されている電極41,42は線状電極である。2本の線状電極41,42は、管状絶縁体40の内部に螺旋状に設けられており、かつ、通常は非接触の状態で繰り返し交差している。
図4に示されるように、それぞれの線状電極41,42の外周面は管状絶縁体40の内周面に固定(溶着)されており、2本の線状電極41,42の間には、同様の線状電極がもう1本入る程度の隙間がある。
【0025】
図4に示されるように、それぞれの線状電極41,42は、撚り合わされた複数本の素線50aからなる心線50と、心線50を覆う被覆層(シース51)と、を備えている。本実施形態における素線50aは銅線である。つまり、本実施形態における心線50は、複数本の銅線からなる撚線である。また、本実施形態におけるシース51は、心線50の周囲に押し出された導電性樹脂によって形成されている。
【0026】
上記のように、線状電極41,42を収容している管状絶縁体40は弾性を有し、管状絶縁体40を含むセンサ本体30を収容しているセンサホルダ31の収容部33も弾性を有する。したがって、センサホルダ31の収容部33がある程度以上の外力を受けて弾性変形すると(潰れると)、これに伴って管状絶縁体40に外力が付与される。すると、管状絶縁体40が弾性変形し(潰れ)、2本の線状電極41,42が管状絶縁体40内で互いに近接し、接触する。具体的には、一方の線状電極41のシース51と他方の線状電極42のシース51とが接触する。この結果、2本の線状電極41,42が電気的に導通する(短絡する)。
【0027】
図5,
図6に示されるように、管状絶縁体40の一方の開口部40aから線状電極41,42の心線50が引き出されている。管状絶縁体40の開口部40aから引き出されている2本の心線50は、それぞれの線状電極41、42のシース51(
図4)を部分的に除去することによって外部に露出させた心線50の一部である。以下の説明では、線状電極41における心線50の露出部分を「接続線41a」と呼び、線状電極42における心線50の露出部分を「接続線42a」と呼ぶ。
【0028】
図5,
図6に示されるように、タッチセンサユニット20は、センサホルダ31の外に配置された電気部品としての抵抗Rをさらに有する。抵抗Rの一端には短尺接続部C1が設けられ、抵抗Rの他端には長尺接続部C2が設けられている。長尺接続部C2は180度折り返されて短尺接続部C1と平行に並んでいる。
図5に示されるように、線状電極41の接続線41aと短尺接続部C1とは接続部材SW1によって互いに接続されている。
図6に示されるように、線状電極42の接続線42aと長尺接続部C2とは他の接続部材SW2によって互いに接続されている。
【0029】
図5~
図7に示されるように、センサホルダ31の収容部33に埋設されているセンサ本体30の一部がセンサホルダ31の端部31aから突出している。また、センサホルダ31の土台部34に埋設されている芯金37の一部がセンサホルダ31の端部31aから突出している。具体的には、管状絶縁体40の端部40b及び芯金37の端部37bがセンサホルダ31の端面31bから突出している。言い換えれば、センサホルダ31の端面31bから突出している管状絶縁体40の一部が、当該管状絶縁体40の端部40bである。また、センサホルダ31の端面31bから突出している芯金37の一部が、当該芯金37の端部37bである。
【0030】
図5~
図7に示されるように、タッチセンサユニット20は、絶縁部材としてのセパレータ60をさらに有している。
図8に示されるように、セパレータ60は、概ね平板状のセパレータ本体61と、セパレータ本体61の長手方向一端から突出する概ね円柱状の差し込み突起62と、を有する。もっとも、セパレータ本体61と差し込み突起62は、プラスチック等の絶縁材料によって一体成形されている。
【0031】
図5,
図6に示されるように、セパレータ60の差し込み突起62は、管状絶縁体40の開口部40aから当該管状絶縁体40に収容されている2本の線状電極41,42の間に挿入されている。また、セパレータ60のセパレータ本体61は、2本の接続線41a,42aの間に介在し、これら接続線41a,42a同士の接触(短絡)を防止している。具体的には、抵抗R,短尺接続部C1,接続線41a及び接続部材SW1は、セパレータ本体61の一側(上側)に配置され、長尺接続部C2,接続線42a及び接続部材SW2は、セパレータ本体61の他側(下側)に配置されている。
【0032】
図8に示されるように、セパレータ本体61の先端には、差し込み突起62の根元を取り囲むように2つの閉塞部63が形成されている。そして、セパレータ本体61の上側に形成されている閉塞部63の中央には、接続線41a(
図5)を避けるための凹部63aが設けられており、セパレータ本体61の下側に形成されている閉塞部63の中央には、接続線42a(
図6)を避けるための凹部63bが形成されている。これら2つの凹部63a,63bは、差し込み突起62の周方向において180度異なる位置に設けられている。
【0033】
図5に示されるように、接続線41aは、凹部63aの内側を通してセパレータ本体61上に引き出され、短尺接続部C1に接続されている。一方、
図6に示されるように、接続線42aは、凹部63bの内側を通してセパレータ本体61上に引き出され、長尺接続部C2に接続されている。また、
図5,
図6に示されるように、2つの閉塞部63の前面は管状絶縁体40の端面に突き当てられている。言い換えれば、2つの閉塞部63の前面が管状絶縁体40の端面に突き当たるまで、差し込み突起62が管状絶縁体40に挿入されている。この結果、管状絶縁体40の開口部40aが閉塞部63によって塞がれている。より具体的には、管状絶縁体40の開口部40aにおける当該管状絶縁体40の内周面と線状電極41,42(シース51)の外周面との間の隙間の大部分が閉塞部63によって塞がれている。
【0034】
以下の説明では、接続線41a,42a、抵抗R、接続部材SW1,SW2及びセパレータ本体61を「電気接続部」と総称する場合がある。
【0035】
再び
図3を参照する。タッチセンサユニット20の長手方向一端側にはモールド部44が設けられている。このモールド部44は、
図9,
図10に示されるように、センサホルダ31の端部31a,センサホルダ31の端面31bから突出している管状絶縁体40の端部40b及び芯金37の端部37b,センサホルダ31の外に設けられている電気接続部を内包する樹脂成形体である。つまり、センサホルダ31の端部31a,管状絶縁体40の端部40b,芯金37の端部37b及び電気接続部は、樹脂により一括してモールドされている。
【0036】
上記のように、モールド部44は、センサホルダ31の端部31a,管状絶縁体40の端部40b及び芯金37の端部37bの三者に跨っている。この結果、センサホルダ31の端面31bから同方向に突出している管状絶縁体40の端部40b及び芯金37の端部37bがセンサホルダ31に対して固定される。つまり、モールド部44は、電気接続部を含むタッチセンサユニット20の端部を防水したり、保護したりするだけでなく、管状絶縁体40を含むセンサ本体30及び芯金37が移動することを規制し、これらの位置を保持する固定手段としても機能する。
【0037】
モールド部44を上記固定手段として機能させる観点からは、センサホルダ31の端面31bに対する管状絶縁体40の端部40bの突出長L1(
図7)は、0.1mm~2.0mmが好ましく、0.5mm~1.0mmがより好ましく、0.75mm前後がさらに好ましい。また、センサホルダ31の端面31bに対する芯金37の端部37bの突出長L2(
図7)は、0.5mm~3.0mmが好ましく、1.5mm~2.5mmがより好ましく、2.0mm前後がさらに好ましい。
【0038】
図9,
図10に示されるように、モールド部44には、当該モールド部44を介して電気接続部の構成要素の少なくとも一部を覆うカバー部材70が被せられている。言い換えれば、カバー部材70は、電気接続部を内包しているモールド部44の周囲に設けられ、当該モールド部44の表面の一部を覆っている。
【0039】
図9,
図10に示されているモールド部44は、金型を用いた射出成形によって作られた樹脂成形体である。モールド部44の成形工程には、少なくとも「セパレータ組付け工程」と「モールド樹脂射出工程」とが含まれる。セパレータ組付け工程では、
図11に示されるように、セパレータ60を所定の位置に所定の向きで配置する。具体的には、抵抗R,短尺接続部C1,接続線41a及び接続部材SW1がセパレータ本体61の一側(上側)に配置され、長尺接続部C2,接続線42a及び接続部材SW2がセパレータ本体61の他側(下側)に配置されるように、セパレータ60を抵抗Rの本体と長尺接続部C2との間に差し入れる。その後、セパレータ60の差し込み突起62を管状絶縁体40の開口部40aから当該管状絶縁体40内の2本の線状電極41,42の間に挿入する。このとき、セパレータ60の閉塞部63の前面が管状絶縁体40の端面に突き当たるまで、差し込み突起62を管状絶縁体40内に挿入する。この結果、短尺接続部C1,接続線41a及び接続部材SW1と、長尺接続部C2,接続線42a及び接続部材SW2との間にセパレータ本体61が介在し、これらの接触(短絡)が防止される。また、管状絶縁体40の開口部40aが閉塞部63によって略隙間なく閉塞される。尚、差し込み突起62の先端は、線状電極41,42の間への挿入を容易にすべく先細りに形成されている。また、差し込み突起62の直径は、線状電極41,42の直径よりも若干大きく、線状電極41,42を僅かに押し退けながらこれら線状電極41,42の間に進入している。よって、2本の線状電極41,42の間に挿入された差し込み突起62が不用意に抜けることはない。
【0040】
モールド樹脂射出工程では、
図11,
図12に示されるように、センサホルダ31の端部31a,管状絶縁体40の端部40b,芯金37の端部37b及び電気接続部を不図示の金型内にセットされているカバー部材70の内側に配置する。
【0041】
然る後、金型内に溶融させた樹脂を射出してモールド部44を成形する。このとき、管状絶縁体40の開口部40aはセパレータ60の閉塞部63によって閉塞されている。よって、管状絶縁体40内に溶融樹脂が流入することはなく、仮に流入したとしてもその量は僅かである。
【0042】
また、金型内に溶融樹脂が射出されると、金型内に配置されているセンサホルダ31,センサ本体30及び芯金37の各部に溶融樹脂の圧力(射出圧)が作用する。例えば、センサホルダ31の端部31a,管状絶縁体40の端部40b及び芯金37の端部37bに射出圧が作用する。センサホルダ31の端部31aの外周面に作用する射出圧(以下、「径方向圧力」と呼ぶ。)は、当該端部31aを介して管状絶縁体40や芯金37に作用し、これらを押さえる。一方、管状絶縁体40や芯金37の端面に作用する射出圧(以下、「軸方向圧力」と呼ぶ。)は、これらをセンサホルダ31内に押し込む。
【0043】
ここで、管状絶縁体40の端部40bや芯金37の端部37bは予めセンサホルダ31の端面31bから突出している。よって、径方向圧力と軸方向圧力とが同時に作用したとしても、管状絶縁体40の端部40bや芯金37の端部37bの全てがセンサホルダ31内に押し込まれることはない。さらに、軸方向圧力が作用する前に径方向圧力が作用するように、金型内における溶融樹脂の流れをコントロールすれば、管状絶縁体40の端部40bや芯金37の端部37bがセンサホルダ31内に押し込まれることを完全または略完全に回避することもできる。
【0044】
芯金の端部が軸方向圧力によってセンサホルダ内に押し込まれることをより確実に防止するために、芯金の端部に係止部を設けてもよい。例えば、
図13に示されている芯金37の端部37bは、センサホルダ31の端面31bに係止する係止部38を含んでいる。図示されている係止部38は、挿入穴35の径方向と同方向における寸法が挿入穴35の直径よりも大きくなるように変形させた端部37bの一部である。図示されている係止部38は、例えば、芯金37の端部37bを当該芯金37の径方向内側に向かって押し潰して板状に変形させることによって形成することができる。また、芯金37の端部37bの一部を軸方向に押し潰したり、屈曲させたりして係止部38を形成してもよい。尚、端部37bを軸方向に押し潰して係止部38を形成する場合には、端部37が挿入穴35に埋没しないように、芯金37を一時的に固定する等の対策を施すことが好ましい。
【0045】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 車両
11 後方開口部
12 開閉体(テールゲート)
13 パワーテールゲート装置
13a アクチュエータ
13b コントローラ
20 タッチセンサユニット
30 センサ本体
31 センサホルダ
31a (センサホルダの)端部
31b (センサホルダの)端面
32 ブラケット
33 収容部
34 土台部
35 挿入穴
37 芯金
37b (芯金の)端部
38 係止部
40 管状絶縁体
40a (管状絶縁体の)開口部
40b (管状絶縁体の)端部
41 電極(線状電極)
42 電極(線状電極)
41a,42a 接続線
43 コネクタ
44 モールド部
50 心線
50a 素線
51 シース
60 セパレータ
61 セパレータ本体
62 差し込み突起
63 閉塞部
63a,63b 凹部
70 カバー部材
BL 障害物
C1 短尺接続部
C2 長尺接続部
CP キャップ
GM グロメット
R 抵抗
SW1,SW2 接続部材