(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】アルブミンを用いたコンビネーション、特に軟骨欠損治療用のコンビネーション
(51)【国際特許分類】
A61L 27/22 20060101AFI20230315BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20230315BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20230315BHJP
A61K 35/16 20150101ALI20230315BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20230315BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20230315BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20230315BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20230315BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20230315BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230315BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20230315BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61L27/22
A61L27/52
A61K47/61
A61K35/16
A61L27/38
A61L31/04 120
A61L31/14 300
A61L31/04 110
A61L31/12
A61L27/20
A61L27/16
A61L27/40
A61L31/06
(21)【出願番号】P 2019511747
(86)(22)【出願日】2017-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2017071560
(87)【国際公開番号】W WO2018041784
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】102016216182.2
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508148138
【氏名又は名称】テテック ティシュー エンジニアリング テクノロジーズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ヴルスト
(72)【発明者】
【氏名】ニルス クラウゼン
(72)【発明者】
【氏名】ニーナ バルダッシ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-078764(JP,A)
【文献】Soft Matter, (2014), 10, [27], p.4869-4874
【文献】Anal. Bioanal. Chem., (2014), 406, [24], p.5927-5937
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに空間的に離間している第1の要素及び第2要素を含む組成物であって、前記第1の要素は架橋性アルブミンを含み、前記第2の要素はポリマーを含んでおり、
前記ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的にアルブミン架橋基を含み、
一つ及び/又は複数の前記アルブミン架橋基は、一つ及び/又は複数のマイケルドナー基であり、
前記一つ及び/又は複数のマイケルドナー基は、一つ及び/又は複数のチオール基であり、
前記架橋性アルブミンは、マイケルアクセプタ基によって官能基化されたアルブミンであ
り、
前記架橋性アルブミンは、マレイミド官能基化されたアルブミンであり、
前記ポリマーは、前記チオール基によって官能基化されたヒアルロン酸又はカルボキシメチルセルロースであり、
前記ポリマーは、前記非末端モノマーが100個あたり5から1の範囲の前記チオール基の置換度を有する、
組成物。
【請求項2】
前記ポリマーは、前記アルブミン架橋基によって官能基化されたヒアルロン酸である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸のグルクロン酸単位は、前記アルブミン架橋基によって官能基化される、請求項
1又は
2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルブミン架橋基は、リンカー単位を介して、前記グルクロン酸単位のカルボキシ炭素原子に、それぞれ共有結合されている、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
前記リンカー単位は、以下の化学式I又は化学式IIを有しており、
-NH-NH-CO-(CH
2)
n- (化学式I)
-NH-(CH
2)
n- (化学式II)
nは1から12の整数、である、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の要素は、哺乳動物細胞をさらに含み、前記哺乳動物細胞は、筋骨系細胞と、代謝調節腺細胞と、膵島細胞と、メラトニン生産細胞と、前駆細胞と、幹細胞と、上記の細胞のうち少なくとも二つの組み合わせと、からなる群から選択される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の要素は、ヒアルロン酸を含んでいない、請求項1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
反応生成物の製造方法であって、前記反応生成物は、ハイドロゲルの形態であって、請求項1から
7のいずれか一項に記載の前記組成物の前記要素を混合することによって得られる、反応生成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の組成物を含む、インプラント又は先進治療用の医薬品。
【請求項10】
吐出装置であって、
前記吐出装置は2個のチャンバを備え、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の組成物の互いに空間的に離間している第1の要素及び第2の要素を含む、吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビネーションと、好ましくはハイドロゲルの形態の反応生成物と、医療装置と、先進治療用の医薬品と、キットと、吐出装置と、コンビネーションの製造方法と、反応生成物の製造方法と、アルブミン架橋用ポリマーの使用と、アルブミン架橋基によって官能基化されたヒアルロン酸とに関する。
【背景技術】
【0002】
架橋性血清アルブミンと架橋剤ジチオポリエチレングリコール(ジチオPEG)との注入可能で、生体適合性のあるコンビネーションは、独国特許出願公開第102008008071号明細書から知られている。
【0003】
しかしながら、ジチオPEGは、その製造が複雑で、費用が高いという根本的な不利点を有する。もう一つの要因は、単官能基化されたPEGはアルブミンの架橋を妨げる働きをするため、PEGが鎖の両末端においてチオール基で官能基化されていることを確実にする必要があることである。
【0004】
従って、製造、特に架橋剤の精製に伴う費用と複雑さとが増してしまう。更なる不利点は、ジチオPEGが体内においてゆっくりとしか分解されず、腎臓から排泄されなければならない点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、先行技術から知られている欠点を回避できる代替のコンビネーションプロダクト、特に従来のコンビネーションプロダクトよりも、製造がより簡単であり、より生体適合性が高い代替のコンビネーションプロダクトを提供することである。
【0006】
本発明の基礎を形成するさらなる課題は、特に前段落で言及したコンビネーションプロダクトの構成要素であり得る官能基化されたヒアルロン酸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題は、独立請求項1によるコンビネーションと、請求項17による反応生成物と、請求項18による医療装置又は先進治療用の医薬品と、請求項19によるキット又は吐出装置と、請求項20による使用と、請求項21による官能基化されたヒアルロン酸とによって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項において明示される。全ての請求項の文言は、明示的な参照により本明細書に組み込まれる。本発明のさらなる態様は本明細書に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、空間的に互いに離間した第1の要素及び第2の要素を含むコンビネーションに関する。
【0009】
第1の要素は、架橋性アルブミンを含む。
【0010】
第2の要素は、ポリマーを含み、そのポリマーの非末端モノマー単位が、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみアルブミン架橋基を含む。
【0011】
本発明の文脈では、コンビネーションは、コンビネーションプロダクトとも呼ばれる。
【0012】
発明者らは、アルブミン架橋基を用いた非末端モノマー単位の官能基化(内部官能基化(interne Funktionalisierung)を通して、アルブミンのためのポリマー架橋剤を製造することが可能であり、その架橋剤にアルブミン架橋基を付加することが、例えば、先行技術から公知であるジチオPEGの場合よりも、効果的に制御可能であることを認識した。一般的に、様々な非末端モノマー単位が官能基化に利用可能であるため、アルブミンの架橋を阻害する可能性がある単官能基化されたポリマーを形成する危険性はない。
【0013】
また、先行技術から公知であるジチオPEGの場合のように、全ての末端モノマー単位を厳密に官能基化する必要がないので、ポリマー架橋剤の製造は、単純である。よって、製造時間と製造費用の低減につながる。
【0014】
コンビネーションは、軟骨欠損、より具体的には関節軟骨欠損又は椎間板欠損の治療用、好ましくは再建用に特に適している。
【0015】
本発明の意味において、「架橋性アルブミン」という表現は、その化学的性質に基いて、より具体的には官能基化及び/又は誘導体化に基づいて、架橋剤によって、より具体的には本発明により提供されるポリマーによって、架橋され得るアルブミンを指すことを意図している。架橋は、特に、アルブミンと架橋剤、より具体的には、アルブミンと本発明により提供されるポリマーとの間の水素結合、イオン結合及び/又は共有結合に基づいていてもよい。アルブミンの架橋は、好ましくは、アルブミンと架橋剤、より具体的には、アルブミンと本発明により提供されるポリマーとの間の共有結合の形成に基づいている。
【0016】
本発明の意味において、「非末端モノマー単位」という表現は、ポリマーの末端モノマー単位の間に位置するモノマー単位を指すことを意図している。
【0017】
本発明の意味において、「アルブミン架橋基」又は「複数のアルブミン架橋基」という表現は、アルブミンの官能基との反応、好ましくは共有結合又は結合の形成を伴う反応を通して、アルブミンの架橋をもたらす、一つ又は複数の官能基を指すことを意図している。
【0018】
本発明の意味において、「官能基化された」又は「官能基化する」という表現は、例えば、ポリマー又はアルブミンに官能基を付加することによって、ポリマー又はアルブミンが通常は有していない機能を付与するあらゆるプロセスを指すことを意味している。
【0019】
好ましい一実施形態では、非末端モノマー単位は、ポリマーの主鎖の構成要素である。
【0020】
他の一実施形態では、非末端モノマー単位は、ポリマーの側鎖の一部である。
【0021】
さらなる一実施形態では、また、ポリマーの末端モノマー単位は、アルブミン架橋基を含む。この場合において、末端モノマー単位のアルブミン架橋基は、非末端モノマー単位のものと同じアルブミン架橋基であってもよい。さらに、全ての末端モノマー単位又はそれらの一部のみが、アルブミン架橋基を含んでいてもよい。
【0022】
他の一実施形態では、ポリマーの末端モノマー単位は、アルブミン架橋基を含まない。
【0023】
他の一実施形態では、非末端モノマー単位の20%未満、より具体的には10%未満、好ましくは5%未満が、アルブミン架橋基を含む。
【0024】
好ましくは平均して、即ちポリマー分子当たり、2又は3個を超える、より具体的には4、5、6、7又は8個を超える非末端モノマー単位が、アルブミン架橋基を含む。
【0025】
他の一実施形態では、1000個目のモノマー単位まで3個ごと、より具体的には500個目のモノマー単位まで10個ごと、好ましくは100個目のモノマー単位まで20個ごとにアルブミン架橋基が含まれている。この段落で言及されるモノマー単位は、好ましくは、ポリマーの非末端物モノマー単位である。
【0026】
他の一実施形態では、ポリマーは、モノマー単位100個当たり、例えばグルクロン酸単位、無水グルコース単位又は非糖類モノマー単位100個当たり、33から0.1、より具体的には10から0.2、好ましくは5から1のチオール基置換度を有する。言い換えると、モノマー単位100個当たり、例えばグルクロン酸単位、無水グルコース単位又は非糖類モノマー単位100個当たり、33から0.1個、より具体的には10から0.2個、好ましくは5から1個の元から存在する官能基、例えばOH基(ヒドロキシ基)は、チオール基(SH基)又はチオール基を有する置換基によって置換されていてもよい。
【0027】
他の一実施形態では、ポリマーは、直鎖状ポリマー、即ち非分岐ポリマーである。
【0028】
一代替実施形態では、ポリマーは、分岐ポリマー又はマルチアームポリマー、より具体的には3又は4本のアームを有するポリマーである。
【0029】
他の一実施形態では、ポリマーは、親水性ポリマーである。適切な親水性ポリマーについては、以下の所見を参照することができる。
【0030】
一つの有用な実施形態では、ポリマーは、生体適合性ポリマー、即ち、医学上問題がないポリマーである。
【0031】
他の一実施形態では、ポリマーは、3kDaから10000kDa、より具体的には5kDaから1000kDa、好ましくは10kDaから100kDaの平均分子量を有する。
【0032】
一つの特に好ましい実施形態によると、ポリマーは、アルブミン架橋基によって官能基化されたポリマーである。
【0033】
ポリマーは、好ましくは、アルブミン架橋基によって官能基化された多糖類と、アルブミン架橋基によって官能基化されたムコ多糖類と、アルブミン架橋基によって官能基化されたタンパク質と、アルブミン架橋基によって官能基化された合成ポリマーと、上記の官能基化されたポリマーのうち少なくとも二つの組み合わせとから成る群から選択されるポリマーである。
【0034】
さらに好ましくは、ポリマーは、アルブミン架橋基によって官能基化されたヒアルロン酸と、アルブミン架橋基によって官能基化されたカルボキシメチルセルロースと、アルブミン架橋基によって官能基化されたデキシトランと、アルブミン架橋基によって官能基化されたポリビニルアルコールと、アルブミン架橋基によって官能基化されたポリビニルピロリドンと、上記の官能基化されたポリマーのうち少なくとも二つの組み合わせとから成る群から選択されるポリマーである。
【0035】
これ以前の段落で言及したポリマーは、特に、ジチオPEGと比較してより優れた生物学的適合性があり、また少なくとも部分的に、より急速な体内(in vivo)分解又は体内吸収が顕著であるという利点を有する。
【0036】
他の一実施形態では、コンビネーション、より具体的には第2の要素は、ポリエチレングリコール(PEG)及び/又はジチオポリエチレングリコール(ジチオPEG)のような官能基化されたポリエチレングリコールを含んでいない。
【0037】
一つの特に好ましい実施形態では、ポリマーは、アルブミン架橋基によって官能基化されたヒアルロン酸である。ポリマーの骨格(Grundgerust)としてヒアルロン酸を使用することは、特定の物体親和性(korperaffinen)を持つ物質であるという利点を有する。
【0038】
好ましくは、官能基化されたヒアルロン酸の繰り返し二糖単位が、1000個目の繰り返し二糖単位まで3個ごとに、より具体的には500個目の繰り返し二糖単位まで10個ごとに、好ましくは100個目の繰り返し二糖単位まで20個ごとに、アルブミン架橋基によって官能基化される。
【0039】
特に好ましくは、ヒアルロン酸のグルクロン酸単位及び/又は二糖単位のグルクロン酸単位が、アルブミン架橋基によって官能基化される。
【0040】
他の一実施形態では、アルブミン架橋基又はアルブミン反応基は、リンカー単位を介して、グルクロン酸単位のカルボキシ炭素原子に、それぞれ共有結合されている。
【0041】
リンカー単位は、好ましくは、下記の化学式Iを有する。
-NH-NH-CO-(CH2)n- (化学式I)
ここで、nは1から12の任意の整数、より具体的には2から4の任意の整数、好ましくは2である。
【0042】
あるいは、リンカー単位は、好ましくは、下記の化学式IIを有する。
-NH-(CH2)n- (化学式II)
ここで、nは1から12の任意の整数、より具体的には2から4の任意の整数、好ましくは2である。
【0043】
一つの好ましい実施形態では、一つ及び/又は複数のアルブミン架橋基は、一つ及び/又は複数の求核基であり、より具体的には一つ/又は複数のマイケルドナー基であり、好ましくは一つ及び/又は複数のチオール基(1つ及び/又は複数のSH基)、並びに/又は、一つ及び/又は複数のチオレート基である。一つ及び/又は複数のアルブミン架橋基は、好ましくは一つ及び/又は複数のチオール基である。
【0044】
一つの特に好ましい実施形態では、ポリマーは、チオール基及び/又はチオレート基によって官能基化されたヒアルロン酸、即ちチオール官能基化されたヒアルロン酸及び/又はチオレート官能基化されたヒアルロン酸である。より特に好ましくは、ポリマーは、複数のチオール基によって官能基化されたヒアルロン酸である。
【0045】
他の一実施形態では、ポリマーは、乾燥重量で、第1の要素の、より具体的には架橋性アルブミン及びそこに任意に存在する官能基化されていないヒアルロン酸の5wt%から3000wt%、より具体的には10wt%から1000wt%、好ましくは50wt%から200wt%を有する。
【0046】
他の一実施形態では、第2の要素は、塩、より具体的にはリン酸二水素-リン酸水素(Dihydrogenphosphat-Hydrogenphosphat)緩衝剤及び/又は炭酸-炭酸水素(Kohlensaure-Hydrogencarbonat)緩衝剤などの緩衝剤をさらに含む。
【0047】
他の一実施形態では、第2の要素は、水性液体の形態、より具体的には水性懸濁液又は水溶液の形態、好ましくは水溶液の形態である。
【0048】
他の一実施形態では、架橋性アルブミンは、架橋性血清アルブミン、即ち血清から得られる架橋性アルブミンである。
【0049】
あるいは、架橋性アルブミンは、合成アルブミン、即ち化学研究所又はそれと同等の施設で製造されたアルブミンであってよく、あるいは組換え製造したアルブミンであってもよい。
【0050】
また、アルブミンは、ヒト又は異種由来のものであってよく、より具体的にはブタ、ウシ、ウマ由来のものであってもよい。
【0051】
本発明によれば、架橋性アルブミンは、人間由来のアルブミンであることが好ましい。
【0052】
他の一実施形態では、架橋性アルブミンは、官能基化されたアルブミンであり、より具体的には電子求核基、より具体的にはマイケルアクセプタ基、好ましくはチオール反応基によって官能基化されたアルブミンである。本発明の意味において、「チオール反応基」という表現は、チオール基と反応可能な官能基、好ましくは共有結合又は結合の形成を伴う反応が可能な官能基を指すことを意図している。
【0053】
これ以前の段落で述べた官能基は、好ましくは、マレイミド基と、ビニルスルホン基と、アクリレート基と、アルキルハロゲン基と、アジリン基と、ピリジン基と、チオニトロ安息香酸基と、アリール化(arylierende)基と、上記した官能基のうち少なくとも二つの組み合わせと、からなる群から選択される。
【0054】
言い換えると、アルブミンは、好ましくは、マレイミド基と、ビニルスルホン基と、アクリレート基と、アルキルハロゲン基と、アジリン基と、ピリジン基と、チオニトロ安息香酸基と、アリール化基と、上記した官能基のうち少なくとも二つの組み合わせと、からなる群から選択された官能基によって官能基化される。
【0055】
一つの特に好ましい実施形態によると、架橋性アルブミンは、マレイミド基によって官能基化されたアルブミン、即ちマレイミド官能基化されたアルブミンであり、好ましくはマレイミド基によって官能基化された血清アルブミン、即ちマレイミド官能基化された血清アルブミンである。
【0056】
他の一実施形態では、コンビネーションは、生体適合性があり、より具体的には医学的に有効であり、好ましくは治療上有効である。
【0057】
他の一実施形態では、コンビネーション、より具体的には第1の要素及び/又は第2の要素、好ましくは第1の要素が、細胞、より具体的には哺乳動物細胞、好ましくは筋骨系細胞と、代謝調節腺細胞(stoffwechselregulierende Drusenzellen)と、膵島細胞と、メラトニン生産細胞と、前駆細胞と、幹細胞、より具体的には間葉系幹細胞と、上記した細胞種のうち少なくとも二つの組み合わせと、からなる群から選択される細胞をさらに含む。
【0058】
筋骨系細胞は、好ましくは幹細胞、軟骨細胞、骨細胞、線維軟骨細胞、又は上記した細胞種の少なくとも二つの組み合わせである。
【0059】
自家細胞は、好ましくは、自家軟骨細胞、自家椎間板軟骨細胞、自家幹細胞、自家間葉系幹細胞、又は上記した細胞種の少なくとも二つの組み合わせである。
【0060】
他の一実施形態では、コンビネーション、より具体的には第1の要素及び/又は第2の要素、好ましくは第1の要素は、少なくとも一つの有効要素、より具体的には医薬品有効要素又は生物学的有効要素を含む。
【0061】
有効要素は、好ましくは、抗生物質と、抗炎症薬と、代謝ホルモンと、ヒアルロン酸などの軟骨保護剤と、BMP-2などの骨形成タンパク質と、遺伝子治療剤と、成長ホルモンと、分化因子又は変調因子と、免疫抑制剤と、免疫賦活物質と、DNAと、RNAと、核酸と、活性アポトーシス促進剤と、活性癒着促進剤(adhasionsvermittelnder Wirkstoff)と、受容体拮抗薬と、上記した有効要素の少なくとも二つの組み合わせと、からなる群から選択される。
【0062】
他の一実施形態では、コンビネーション、より具体的には第1の要素及び/又は第2の要素、好ましくは第1の要素は、ヒアルロン酸、即ち官能基化されていないヒアルロン酸を含む。
【0063】
コンビネーション、より具体的には第1の要素及び/又は第2の要素、好ましくは第1の要素は、水に溶けた二つの要素の総重量に基づいて、好ましくは0.1wt%から5wt%、より具体的には0.2wt%から3wt%、好ましくは0.5wt%から2wt%のヒアルロン酸を含む。
【0064】
他の一実施形態では、コンビネーション、より具体的には第1の要素及び/又は第2の要素、好ましくは第1の要素は、ヒアルロン酸を含んでいない。
【0065】
他の一実施形態では、第1の要素は、水性液体の形態、より具体的には水溶液又は水性懸濁液の形態、好ましくは水性懸濁液の形態である。特に好ましくは、第1の要素は、細胞の水性懸濁液の形態、即ち細胞を含む水性懸濁液の形態である。利用可能な細胞については、これまでの明細書内容を参照されたい。
【0066】
他の一実施形態では、コンビネーションは、医療装置又は医療工学製品の形態、好ましくはインプラントの形態である。
【0067】
コンビネーションは、より具体的には無細胞インプラントの形態であってもよい。
【0068】
一つの代替実施形態では、コンビネーションは、先進治療用の医薬品の形態、より具体的には組織工学製品(バイオテクノロジーによって操作された組織標本)又は細胞を接種された又は細胞を有するインプラントの形態である。
【0069】
他の一実施形態では、コンビネーションは、病的組織の癒着の予防、より具体的には腹腔内又は他の領域内の組織癒着の予防に利用するコンビネーションである。
【0070】
他の一実施形態では、軟骨欠損、より具体的には関節軟骨欠損、好ましくは膝関節軟骨欠損、あるいは椎間板欠損、好ましくは腰椎椎間板欠損、より好ましくは腰仙椎間板欠損の治療、より具体的には再建に利用するコンビネーションである。
【0071】
他の一実施形態では、コンビネーションは、線維輪及び/又は髄核、好ましくは髄核の治療、より具体的には再建に利用するコンビネーションである。
【0072】
他の一実施形態では、コンビネーションは、外科的投与、より具体的には低侵襲的投与に適応される。つまり、更なる一実施形態によると、コンビネーションは、外科的投与、より具体的には低侵襲な投与に利用される。
【0073】
他の一実施形態では、コンビネーションは、椎間関節浸潤、より具体的には関節周囲及び/又は関節内の椎間関節浸潤、好ましくは関節内椎間関節浸潤に適応される。つまり、更なる一実施形態によると、コンビネーションは、椎間関節浸潤、より具体的には関節周囲及び/又は関節内の椎間関節浸潤、好ましくは関節内椎間関節浸潤に利用される。
【0074】
他の一実施形態では、コンビネーションは、キットの形態、より具体的には医療キットの形態、好ましくは手術キットの形態である。
【0075】
第2の態様によれば、本発明は反応生成物に関する。
【0076】
反応生成物は、架橋性アルブミンを含む第1の要素と、ポリマーを含む第2の要素とを混合することによって取得可能又は製造可能である。ここで、ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン架橋基を含む。反応生成物は、具体的には、本発明の第1の態様によるコンビネーションの第1の要素と第2の要素を混合することによって、取得可能又は製造可能である。
【0077】
反応生成物の形成は、架橋性アルブミンとポリマーとの間で進行する架橋反応に基づいている。架橋反応の結果、ポリマーの高分子を介してアルブミン分子が互いに架橋し、好ましくはハイドロゲルの形成をもたらす。
【0078】
従って、本発明によると、反応生成物がハイドロゲルであることが特に好ましい。
【0079】
反応生成物のさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。特に架橋性アルブミンとポリマーに関してなされた所見は、反応生成物についても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0080】
第3の態様によれば、本発明は医療装置に関する。
【0081】
医療装置は、架橋性アルブミンを含む第1の要素と、ポリマーを含む第2の要素を含んでおり、第1の要素と第2の要素は互いに空間的に離間している。ここで、ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン架橋基、より具体的には本発明の第1の態様によるコンビネーションを含む。
【0082】
医療装置は、好ましくはインプラントであり、より具体的には無細胞インプラントである。
【0083】
医療装置のさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。特に架橋性アルブミンとポリマーに関してなされた所見は、医療装置についても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0084】
第4の態様によれば、本発明は先進治療用の医薬品に関する。
【0085】
先進治療用の医薬品は、架橋性アルブミンを含む第1の要素と、ポリマーを含む第2の要素を含んでおり、第1の要素と第2の要素は互いに空間的に離間している。ここで、ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン架橋基、より具体的には本発明の第1の態様によるコンビネーションを含む。
【0086】
先進治療用の医薬品は、好ましくは組織工学製品(バイオテクノロジーにより操作された組織標本)、あるいは細胞を接種された又は細胞を有するインプラントである。
【0087】
先進治療用の医薬品のさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。特に架橋性アルブミンとポリマーに関してなされた所見は、先進治療用の医薬品についても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0088】
第5の態様によれば、本発明はキットに関する。
【0089】
キットは、架橋性アルブミンを含む第1の要素と、ポリマーを含む第2の要素を含んでおり、第1の要素と第2の要素は互いに空間的に離間している。ここで、ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン架橋基、より具体的には本発明の第1の態様によるコンビネーションを含む。
【0090】
キットのさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。特に架橋性アルブミンとポリマーに関してなされた所見は、キットについても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0091】
第6の態様によれば、本発明は吐出装置に関する。
【0092】
吐出装置は、架橋性アルブミンを含む第1の要素と、ポリマーを含む第2の要素を含んでおり、第1の要素と第2の要素は互いに空間的に離間している。ここで、ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン架橋基、より具体的には本発明の第1の態様によるコンビネーションを含む。
【0093】
吐出装置は、好ましくはマルチチャンバ吐出装置であり、より具体的には2個のチャンバを備える吐出装置である。吐出装置は、より具体的にはダブルバレルシリンジの形態をとっていてもよい。
【0094】
吐出装置のさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。特に架橋性アルブミンとポリマーに関してなされた所見は、吐出装置についても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0095】
第7の態様によれば、本発明はコンビネーションの製造方法、より具体的には本発明の第1の態様によるコンビネーションの製造方法に関する。
【0096】
方法は、架橋性アルブミンを含み、空間的に離間している第1の要素を提供することと、ポリマーを含む第2の要素を提供することと、を備えている。ここで、ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン架橋基を含む。
【0097】
方法のさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。特に架橋性アルブミンとポリマーに関してなされた所見は、方法についても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0098】
第8の態様によれば、本発明は反応生成物、好ましくはハイドロゲルの製造方法、より具体的には本発明の第2の態様による反応生成物の製造方法に関する。
【0099】
方法は、a) 架橋性アルブミンを含む第1の要素を提供することと、b) 任意に、細胞、より具体的には自家細胞、及び/又は有効要素を添加することと、c) 架橋ポリマーを添加することと、を備えている。ここで、ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン架橋基を含む。
【0100】
方法のさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。特に架橋性アルブミンとポリマーに関してなされた所見は、方法についても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0101】
第9の態様によれば、本発明は架橋性ポリマーを架橋するためのポリマーの使用に関する。ここで、ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみアルブミン架橋基を含む。
【0102】
ポリマーのさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。特にポリマーと架橋性アルブミンに関してなされた所見は、ポリマーの使用についても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0103】
第10の態様によれば、本発明は官能基化されたヒアルロン酸に関する。
【0104】
官能基化されたヒアルロン酸の具体的な特徴は、官能基化されたヒアルロン酸の繰り返し二糖単位が、1000個目の繰り返し二糖単位まで3個ごと、より具体的には500個目の繰り返し二糖単位まで10個ごと、好ましくは100個目の繰り返し二糖単位まで20個ごとにアルブミン架橋基によって官能基化されていることである。
【0105】
特に好ましくは、ヒアルロン酸のグルクロン酸単位及び/又は二糖単位のグルクロン酸単位は、アルブミン架橋基によって官能基化される。
【0106】
他の一実施形態では、アルブミン反応基は、リンカー単位を介して、グルクロン酸単位
のカルボキシ炭素原子とそれぞれ共有結合する。
【0107】
リンカー単位は、好ましくは以下の化学式Iを有する。
-NH-NH-CO-(CH2)n- (化学式I)
ここで、nは1から12の任意の整数、より具体的には2から4の任意の整数、好ましくは2である。
【0108】
あるいは、リンカー単位は、好ましくは、以下の化学式IIを有する。
-NH-(CH2)n- (化学式II)
ここで、nは1から12の任意の整数、より具体的には2から4の任意の整数、好ましくは2である。
【0109】
一つの好ましい実施形態では、一つ及び/又は複数のアルブミン架橋基は、一つ及び/又は複数の求核基、より具体的には一つ及び/又は複数のマイケルドナー基、好ましくは一つ及び/又は複数のチオール基(1つ及び/又は複数のSH基)、並びに/又は、一つ及び/又は複数チオレート基である。一つ及び/又は複数のアルブミン架橋基は、好ましくは一つ及び/又は複数のチオール基である。
【0110】
官能基化されたヒアルロン酸のさらなる特徴と利点については、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様に関連してなされた所見を全体的に参照されたい。当該所見は、このヒアルロン酸についても(必要により修正を加えて)同様に有効である。
【0111】
本発明のさらなる特徴及び利点は、従属請求項と併せて、以下に例として記載される好ましい実施形態の説明から明らかになるであろう。ここで、個々の特徴はそれぞれ単独で実現されても、複数の他の特徴と組み合わせて実現されてもよい。以下に説明する実施形態は、単に本発明をさらに説明するためのものであり、本発明をこれらの実施形態に限定するものではない。
【実施例】
【0112】
1.チオール官能基化されたヒアルロン酸の調製
少量付加のチオール官能基化されたヒアルロン酸を合成した。
【0113】
この目的のために、ヒアルロン酸(平均分子量57kDa)をpH4.75で、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を用いて活性化した後、過剰の3,3´-ジチオビス(プロパン酸ヒドラジド)で修飾した。過剰の3,3´-ジチオビス(プロパン酸ヒドラジド)を透析によって除去した後、ヒアルロン酸に結合したヒドラジドのジスルフィドをトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンで還元した。その後、透析によって低分子量要素は除去され、得られた官能基化されたヒアルロン酸を限外ろ過によって濃縮した。最終的に得られたヒアルロン酸では、繰り返し二糖単位がほぼ35個ごとにチオール基を有していた。
【0114】
2.ウシ由来のマレイミド官能基化された血清アルブミンの調製
ヒト、野ウサギ、ウシ又はヒツジの血清アルブミン250mgを、5mlの1Mホウ酸ナトリウム(pH8.2)に溶解した。
【0115】
さらに、106mgの3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジルエステル(SMP、Obiter Research, Urbana, IL, USA)を、950μlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。不溶性材料は、遠心分離によって分離させた。その後、上澄み500μlをアルブミン溶液に添加した。これに続いて、さらに60分間、室温でインキュベートした。その後、500μlの3M酢酸ナトリウム(pH4.7)を添加し、氷上で1lのPBSに対して3回の透析を実施した。透析物は、その後、体積3.5mlまで限外ろ過(YM-3膜、ミリポア)で濃縮し、滅菌ろ過をした。
【0116】
3.ハイドロゲルの調製
実施例1に従って調製されたチオール官能基化されたヒアルロン酸を、実施例2に従って調製されたマレイミド官能基化されたアルブミンに添加した。数分以内に、ハイドロゲルが得られ、分離傾向は全く見られなかった。
【0117】
4.チオール官能基化されたカルボキシメチルセルロースの調製
少量付加のチオール官能基化されたカルボキシメチルセルロースを合成した。
【0118】
この目的のために、カルボキシメチルセルロース(平均分子量90kDa、官能基化度(Funktionalisierungs- grad)0.75、即ち無水グルコース単位あたり0.75個のカルボキシル基)を水に溶解し、様々なバッチにおいて、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム塩化物(DMTMM, CAS3945-69-5)の0.30、0.15、又は0.075のモル等量(カルボキシ基に基づく)それぞれで活性化させた後、pH6.5から7で過剰のシスタミン二塩酸塩と反応させた。透析による過剰のシスタミン二塩酸塩の除去に続き、カルボキシメチルセルロースに結合したシスタミンのジスルフィドをTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を用いてチオールに還元した。その後、低分子量要素を透析で除去し、精製したチオール官能基化されたカルボキシセルロースを限外ろ過で濃縮した。最終的に得られたチオール官能基化されたカルボキシセルロースは、100個の無水グルコース単位当たり3.6、2.8及び2.1のチオール基の置換度を有していた。
【0119】
5.チオール官能基化されたカルボキシメチルセルロースからのハイドロゲルの調製
実施例4に従って調製した、3.6の置換度を有するチオール官能基化されたカルボキシメチルセルロースを、実施例2に従って調製したマレイミド官能基化されたアルブミンとPBSに添加した。反応基(チオール基とマレイミド基のそれぞれ)は、混合物において2mmol/Lの濃度をそれぞれ計算した。数分以内に、ハイドロゲルが得られ、分離傾向は全く見られなかった。
【0120】
同様の方法において、実施例4に従って調製した、2.1の置換度を有するチオール官能基化されたカルボキシセルロースを使用した場合においても、分離傾向が全く見られない、ハイドロゲルを作製することが同様に可能であった。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
互いに空間的に離間している第1の要素及び第2要素を含むコンビネーションであって、前記第1の要素は架橋性アルブミンを含み、前記第2の要素はポリマーを含んでおり、
前記ポリマーの非末端モノマー単位は、少なくとも部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン架橋基を含む、コンビネーション。
(項目2)
前記非末端モノマーの20%未満、より具体的には10%未満、好ましくは5%未満が、アルブミン架橋基を含む、項目1に記載のコンビネーション。
(項目3)
1000個目の非末端モノマー単位まで3個ごと、より具体的には500個目の非末端モノマー単位まで10個ごと、好ましくは100個目の非末端モノマー単位のまで20個ごとに、アルブミン架橋基を含む、項目1又は2に記載のコンビネーション。
(項目4)
前記ポリマーは、前記アルブミン架橋基によって官能基化されたポリマーである、項目1から3のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目5)
前記ポリマーは、
アルブミン架橋基によって官能基化された多糖類と、
アルブミン架橋基によって官能基化されたムコ多糖類と、
アルブミン架橋基によって官能基化されたタンパク質と、
アルブミン架橋基によって官能基化された合成ポリマーと、
上記の官能基化されたポリマーのうち少なくとも二つの組み合わせと、
から成る群から選択されるポリマーである、項目1から4のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目6)
前記ポリマーは、
アルブミン架橋基によって官能基化されたヒアルロン酸と、
アルブミン架橋基によって官能基化されたカルボキシメチルセルロースと、
アルブミン架橋基によって官能基化されたデキシトランと、
アルブミン架橋基によって官能基化されたポリビニルアルコールと、
アルブミン架橋基によって官能基化されたポリビニルピロリドンと、
上記の官能基化されたポリマーのうち少なくとも二つの組み合わせと、
から成る群から選択されるポリマーである、項目1から5のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目7)
前記ポリマーは、アルブミン架橋基によって官能基化されたヒアルロン酸である、項目1から6のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目8)
前記ヒアルロン酸のグルクルン酸単位は、アルブミン架橋基によって官能基化される、項目6又は7に記載のコンビネーション。
(項目9)
前記アルブミン架橋基は、リンカー単位を介して、前記グルクルン酸単位のカルボキシ炭素原子に、それぞれ共有結合されている、項目8に記載のコンビネーション。
(項目10)
前記リンカー単位は、以下の化学式I又は化学式IIを有しており、
-NH-NH-CO-(CH
2
)
n
- (化学式I)
-NH-(CH
2
)
n
- (化学式II)
nは1から12の整数、より具体的には2から4の整数、好ましくは2である、項目9に記載のコンビネーション。
(項目11)
一つ及び/又は複数の前記アルブミン架橋基は、一つ及び/又は複数の求核基であり、より具体的には一つ及び/又は複数のマイケルドナー基であり、好ましくは一つ及び/又は複数のチオール基である、項目1から10のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目12)
前記架橋性アルブミンは、官能基化されたアルブミンであり、より具体的には、電子求核基、より具体的にはマイケルアクセプタ基、好ましくはチオール反応基によって官能基化されたアルブミンである、項目1から11のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目13)
前記架橋性アルブミンは、官能基によって官能基化されており、
前記官能基は、マレイミド基と、ビニルスルホン基と、アクリレート基と、アルキルハロゲン基と、アジリン基と、ピリジン基と、チオニトロ安息香酸基と、アリール化基と、上記の官能基のうち少なくとも二つの組み合わせと、からなる群から選択される、項目1から12のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目14)
前記架橋性アルブミンは、マレイミド官能基化されたアルブミンである、項目1から13のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目15)
前記第1の要素は、細胞、より具体的には哺乳動物細胞をさらに含み、前記哺乳動物細胞は、好ましくは、筋骨系細胞と、代謝調節腺細胞と、膵島細胞と、メラトニン生産細胞と、前駆細胞と、幹細胞、より具体的には間葉系幹細胞と、上記の細胞のうち少なくとも二つの組み合わせと、からなる群から選択される、項目1から14のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目16)
前記第1の要素は、ヒアルロン酸を含んでいない、項目1から15のいずれか一項に記載のコンビネーション。
(項目17)
反応生成物であって、より具体的には、ハイドロゲルの形態であって、項目1から16のいずれか一項に記載の前記コンビネーションの前記要素を混合することによって得られる、反応生成物。
(項目18)
項目1から16のいずれか一項に記載のコンビネーションを含む、医療装置又は先進治療用の医薬品。
(項目19)
項目1から16のいずれか一項に記載のコンビネーションの互いに空間的に離間している第1の要素及び第2の要素を含む、キット又は吐出装置。
(項目20)
架橋アルブミン用の架橋剤としてのポリマーの使用であって、架橋ポリマーの非末端モノマー単位は、部分的に、より具体的には部分的にのみ、アルブミン反応基を用いて官能基化される、ポリマーの使用。
(項目21)
官能基化されたヒアルロン酸であって、ヒアルロン酸の非末端モノマー単位のうち、1000個目の非末端モノマー単位まで3個ごと、より具体的には500個目の非末端モノマー単位まで10個ごと、好ましくは100個目の非末端モノマー単位まで20個ごとに、アルブミン架橋基を含む、官能基化されたヒアルロン酸。