(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】ポリウレタン層及びPC/ABS層を含む多層複合材料物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20230315BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20230315BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20230315BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230315BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230315BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20230315BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20230315BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20230315BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B32B27/36 102
C08L69/00
C08L55/02
C08K3/34
C08K3/013
C08L25/08
C08K9/04
C08J7/04 B CFD
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2019513300
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2017072654
(87)【国際公開番号】W WO2018046697
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-03
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510288530
【氏名又は名称】トリンゼオ ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ノルビン ファン リール
(72)【発明者】
【氏名】パスカル エー.エル.エー.イェー.ラーケマン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラース エム.アー.ヘルマンス
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510524(JP,A)
【文献】特表2004-528434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0027575(US,A1)
【文献】特表2008-505220(JP,A)
【文献】特開2010-126706(JP,A)
【文献】特表2013-512805(JP,A)
【文献】特開平10-212402(JP,A)
【文献】特開2013-237216(JP,A)
【文献】特表2011-526224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00 - 27/42
C08L 69/00
C08L 55/02
C08L 25/08
C08K 3/013
C08K 3/34
C08K 9/04
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ポリマー組成物の総重量を基準として、
20重量%~60重量%のポリカーボネートポリマーと、
ポリブタジエン衝撃改質剤を含むゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む12重量%~70重量%の強化成分と、
3重量%~50重量%の針状のウォラストナイトと
を含むブレンドであるポリマー組成物を含みおよび10体積%以下の多孔性を有する基材層と、
ii)前記基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層と、
を含み、
前記ポリブタジエン衝撃改質剤の量は、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、3重量%~23重量%であり、
前記ポリマー組成物中のポリエステルの量は、約0重量%または5重量%未満であり、 無水マレイン酸、マレイン酸、またはコポリマーにカルボキシル基を提供する他のモノマーを含む任意のスチレンコポリマーの量は、前記ポリマー組成物中の前記スチレンコポリマーの総重量を基準として、1.2重量%以下であり、および
前記基材層は0.5mm~10mmの厚さを有し、前記カバー層は0.01mm~1.5mmの厚さを有する、多層物品。
【請求項2】
i)ポリマー組成物の総重量を基準として、
20重量%~60重量
%のポリカーボネートポリマーと、
ポリブタジエン衝撃改質剤とスチレン含有コポリマーと任意選択的にスチレン-アクリロニトリルコポリマーとを含むゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む12重量%~70重量%の強化成分と、
3重量%~50重量%の針状のウォラストナイトと、
を含むブレンドであるポリマー組成物を含む基材層と、
ii)前記基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層と、
を含み、
前記ポリブタジエン衝撃改質剤の量は、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、3重量%~23重量%であり、
前記ポリマー組成物中のポリエステルの量は、約0または1.9重量%以下であり、
無水マレイン酸、マレイン酸、または前記基材層中のコポリマーにカルボキシル基を提供する他のモノマーを含む任意のスチレンコポリマーの量は、前記ポリマー組成物の総重量を基準として0.25重量%以下であり、
前記基材層は0.5mm~10mmの厚さを有し、前記カバー層は0.01mm~1.5mmの厚さを有する、多層物品。
【請求項3】
前記ポリカーボネートポリマーが、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、35~55重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の多層物品。
【請求項4】
i)ポリマー組成物の総重量を基準として、
20重量%~55重量
%のポリカーボネートポリマーと、
ポリブタジエン衝撃改質剤を含むゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む12重量%~70重量%の強化成分と、
11重量%~35重量%の針状のウォラストナイトと、
を含むブレンドであるポリマー組成物を含む基材層と、
ii)前記基材
層の前記ポリマー組成物に直接結合したポリウレタンのカバー層と、
を含み
、
前記ポリブタジエン衝撃改質剤の量は、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、3重量%~23重量%であり、
前記ポリマー組成物中のポリエステルの量が約0または5重量%未満であり、
前記ポリカーボネートポリマーの濃度の前記強化成分の濃度に対する重量比が65/35以下であり、
前記基材層は0.5mm~10mmの厚さを有し、前記カバー層は0.01mm~1.5mmの厚さを有し、
前記強化成分は塊状ABSを含むかまたは塊状ABSからなる、多層物品。
【請求項5】
前記ウォラストナイトと前記強化成分と前記ポリカーボネートポリマーとの総量は、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、80重量%以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項6】
ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質は、アクリロニトリル及びスチレンを含むランダムコポリマーであるスチレン含有コポリマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層物品。
【請求項7】
前記ポリブタジエン衝撃改質剤が、ポリブタジエンゴムである、請求項6に記載の多層物品。
【請求項8】
前記強化成分が、ポリブタジエンゴム及びスチレン含有コポリマーを含む塊状ABSである、請求項7に記載の多層物品。
【請求項9】
前記ウォラストナイトが、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、11重量%~35重量%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項10】
前記ポリカーボネートポリマーの濃度対前記強化成分の濃度の重量比が、20:80~55:45の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項11】
前記ポリカーボネートポリマーの濃度対前記強化成分の濃度の重量比が、30:70~55:45の範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項12】
前記ポリウレタンが、前記基材層の表面上に直接適用されたポリウレタン塗料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の物品の多層物品。
【請求項13】
前記多層物品が、自動車の内装トリム部品または自動車の外装トリム部品である、請求項1~12のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項14】
前記基材層と支持層との間の接着が、自動車の内部加速寿命劣化試験を通じて維持されるか、前記基材層と前記支持層との間の接着が、自動車の外部加速寿命劣化試験を通じて維持される、請求項13に記載の多層物品。
【請求項15】
前記強化成分が、1μm以下の平均サイズを有するポリブタジエンゴム粒子を含む塊状ABSを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項16】
前記ポリカーボネートポリマーが、20000原子質量単位以上の重量平均分子量(Mw)を特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項17】
前記ウォラストナイトが、有機サイジングを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項18】
前記基材層が、顔料または他の着色剤で着色されており、かつ前記カバー層が実質的に透明であり、かつ前記基材層が、酸化防止剤、加工助剤、光安定剤、熱安定剤、モールド離型剤及び流動調整剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項19】
前記ポリマー組成物が、0.2~7重量%の1種以上のエチレンコポリマーを含み、前記エチレンコポリマーが官能化モノマーを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項20】
前記基材層中の前記ウォラストナイトと前記強化成分と前記ポリカーボネートポリマーとの総量が、前記基材層の総重量を基準として、95重量%以上である、請求項1~19のいずれか一項に記載の多層物品。
【請求項21】
前記強化成分がエラストマー系ポリマーを含むコアおよび100℃超の溶融温度またはガラス転移温度を有するポリマーを含むシェルを有するコアシェルポリマーを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の多層物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2016年9月9日に出願された欧州特許出願第1618106.5号及び2016年10月18日に出願された米国仮特許出願第62/409,636号に対する優先権を主張し、それぞれその全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
本明細書の教示は、基材層(例えばポリカーボネート含有層)と直接接触するカバー層(例えばポリウレタン層)を含む多層物品に関する。前記基材層は、好ましくは、ポリカーボネート、強化成分、及びウォラストナイト(好ましくは、約3以上のアスペクト比を有する針状ウォラストナイト)を含む充填剤を含むブレンドを含む。前記強化成分は、好ましくは、スチレンアクリロニトリルコポリマー及び衝撃改質剤(好ましくは、ポリブタジエンのようなエラストマー)を含む。前記強化剤は、好ましくは、塊状ABSを含むか、実質的にそれからなるか、または完全にそれからなる。前記多層物品は、内装及び/または自動車のトリム部品に使用してもよく、好ましくは、湿潤気候劣化の前及び/または後に、ポリウレタンカバー層(例えば、ポリウレタンフォーム層、ポリウレタン塗料層)の基材層への接着性が改善されている。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート(すなわちPC)及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性物質(すなわちABS)を含む様々なポリマー組成物が、自動車内装部品及び/または自動車外装部品に使用されてきた。これらのPC/ABS含有組成物は、これらの用途に必要な高い延性及び/または耐衝撃性、良好な耐熱性ならびに寸法安定性などの性能特性を有するように配合され得る。耐久性のある表面特性(例えば、引っ掻き傷及び擦傷への抵抗性)及び/または特定の美的特性を必要とする用途など、いくつかの用途では、前記PC/ABS含有組成物は、ポリウレタン層で被覆されている。しかしながら、前記基材(例えば、PC/ABS含有組成物)とポリウレタン層との間の接着性は、自動車外装部品の気候劣化要件後に容易に悪化し得る。
【0004】
ポリウレタン層、及び/またはポリカーボネート及びABSを含む基材層を含む様々な物品が、米国特許出願公開第2005/0218547A1号(Roche et al.,2005年10月6日公開)、第2013/0196130A1号(Hufen et al.,2013年8月1日公開)、第2011/0027575A1号(Drube et al.,2011年2月3日公開)、及び米国特許第6,461,732B1号(Wittmann et al.,2002年10月8日発行)及び欧州特許出願公開第1736293A1号(Heinl et al.,2006年12月27日公開)に記載されており、その内容はそれぞれその全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0005】
米国特許出願公開第2013/0196130A1号では、許容可能な接着性を得るためにポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートを必要とするポリカーボネート/ABSブレンド組成物へのポリウレタンの接着について記載されている。
【0006】
欧州特許出願公開第1736293A1号では、PC/ABS組成物をポリウレタンに接着することの難しさについて記載されており(例えば段落003参照)、接着性を向上するためにポリアミドブレンド(例えばABSとの)を使用する。
【0007】
米国特許第6,461,732B1号では、厚いポリウレタン発泡体に接着するために、AIO(OH)粒子(中央粒径が約40μmを有する球状粒子と一般に考えられている)を使用する組成物について記載されている。
【0008】
米国特許出願公開第2011/0027575A1号では、ポリウレタン層及び基材層(接着性を向上するために窒素発泡剤を使用して成形される)を含む複数の物品について記載されている。基材層は高濃度のポリカーボネートを含み、いずれも充填剤を含まず(例えば表1のPCS-2参照)、またはポリカーボネート、SANコポリマー、及びガラス繊維から実質的になる(例えば表1のPCS-1参照)。
【0009】
米国特許出願公開第2005/0218547A1号では、ポリウレタン層を含む様々な複合部品について記載されているが、劣化後(例えば、高温及び/または高湿度で)の接着性、及び低い線熱膨張係数を有することの必要性については記載がない。
【0010】
向上した(例えば、低い)線熱膨張係数及び/または向上した(例えば、高い)剛性を有する基材用のポリマー組成物(例えば、PC及びABSを含むブレンド)への必要性が存在し続けている。かかるポリマー組成物は、より大きな自動車部品において特に有利であろう。良好な耐久性及び/または高い耐衝撃性も有するような組成物もまた必要とされている。ポリマー組成物(例えば、PC/ABS含有ブレンド)により形成され、ポリウレタンカバー層に耐久的に取り付けられた基材層を含む複合物品もまた必要とされている。例えば、劣化後(例えば、高温、光への曝露及び/または湿気への曝露)であっても層間接着性が強いような物品が必要とされている。前記基材層の好ましい組成物は、実質的にまたは完全にポリエステルを含まず(例えば、実質的にまたは完全にポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートを含まない)、及び/または実質的にまたは完全にポリアミドを含まない。
【発明の概要】
【0011】
本明細書の教示は、ポリウレタンに対して良好な接着性を有するポリマー組成物、及び/またはポリウレタンのカバー層に接着された、かかるポリマー組成物を含む基材を含む物品を対象とする。前記ポリマー組成物は、好ましくは低い線熱膨張係数を有し、高温、高湿度及び/または光への曝露で劣化した後であってもポリウレタンに接着し、最も好ましくは、気候劣化試験後にポリウレタンに接着する。好ましいポリマー組成物は、ポリカーボネート、強化成分及び針状充填剤(例えば、アスペクト比が約3以上を有するウォラストナイト、より好ましくはアスペクト比が約5以上を有する約8~18重量%のウォラストナイト)を含む。前記強化成分は、好ましくはスチレンアクリロニトリルコポリマー及び衝撃改質剤を含む。前記強化成分は、1種以上のスチレンアクリロニトリルコポリマー、1種以上のアクリロニトリル-スチレン-ブタジエン熱可塑性物質(例えば、塊状ABS、グラフト化ABS)もしくはその両方、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るか、実質的にこれらからなり得るか(例えば、約75重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上)、または完全にこれらからなり得る。低CLTEを有する既存のPC/ABS配合物は、ポリウレタン最上層の接着性の低下を受ける、及び/または様々な性能特性に影響を及ぼし得る追加のポリマーを必要とする、のいずれかである。今では、特定の最大量のポリカーボネートとウォラストナイト充填剤とが組み合わされたABS(特に塊状ABS)により形成された基材が、ポリウレタン層でオーバーモールドするか、または塗装する場合、接着性能(初期接着性及び気候劣化後の接着性)が向上することが見出された。
【0012】
本明細書の教示による一態様は、ポリカーボネートポリマー、強化成分、及びウォラストナイトを含む充填剤を有するブレンド組成物であるポリマー組成物を含む緻密基材層、及び前記緻密基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層と、を含む多層物品を対象とし、前記ポリマー組成物中のポリエステルの量は、約0または約5重量%未満である。前記強化成分は、衝撃改質剤を有するゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む。前記緻密基材層は、好ましくは、約10体積%以下の多孔性を有する。好ましくは、前記緻密基材層は、発泡剤を使用せずに形成される。
【0013】
本明細書の教示による別の態様は、ポリカーボネートポリマー、強化成分、及びウォラストナイトを含む充填剤を有するブレンド組成物であるポリマー組成物を含む基材層、ならびに前記基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層と、を含む多層物品を対象とし、前記ポリマー組成物中のポリエステルの量は、約0または約5重量%未満であり、無水マレイン酸、マレイン酸、または基材層中のコポリマーにカルボキシル基を提供する他のモノマーを含む任意のスチレンコポリマーの量は、前記ポリマー組成物の総重量を基準として約0.9重量%以下である。前記強化成分は、衝撃改質剤を有するゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む。
【0014】
本明細書の教示による別の態様は、55重量%以下のポリカーボネートポリマー、強化成分及びウォラストナイトを含む充填剤を有するブレンド組成物であるポリマー組成物を含む基材層、ならびに前記基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層と、を含む多層物品を対象とし、前記ポリマー組成物中のポリエステルの量が、約0または約5重量%未満である。前記強化成分は、衝撃改質剤を有するゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む。
【0015】
本明細書の教示による別の態様は、ポリカーボネートポリマー、強化成分、及びウォラストナイトを含む充填剤を含む基材層用のポリマー組成物(例えば、ポリウレタンカバー層に直接接着するための)を対象とする。前記強化成分は、衝撃改質剤を有するゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含み、前記ポリマー組成物は、ポリエステルを含まないか、または5重量%以下のポリエステルを含む。
【0016】
本教示の別の態様は、ポリマー組成物を含む基材層、及び前記基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層を含む多層物品を対象とする。前記ポリマー組成物は、好ましくはポリカーボネートポリマー、1種以上のスチレン含有コポリマー、及びウォラストナイトを含む充填剤を含むブレンドである。前記ポリマー組成物中のポリエステルの量は、好ましくは約5重量%未満、そしてより好ましくは約0である。好ましくは、ウォラストナイトは被覆されたウォラストナイトである。
【0017】
本発明の各態様は、以下の特徴のうちの1つ、または任意の組み合わせによってさらに特徴付けられ得る。ポリカーボネートが、ポリマー組成物の総重量を基準として、約20~約70重量%(好ましくは約20~約60重量%、より好ましくは約30~約59重量%、さらにより好ましくは約35~約55重量%、そして最も好ましくは約35~約53重量%)の量で存在する;ポリカーボネートが、ポリマー組成物の総重量を基準として、約70重量%以下(より好ましくは約59重量%以下、さらにより好ましくは約54重量%以下、そして最も好ましくは約53重量%以下)の量で存在する;衝撃改質剤が、強化成分の総重量を基準として、25~85重量%(好ましくは45~75重量%、より好ましくは55~65重量%)の量で存在する;ポリマー組成物が、ABS熱可塑性物質(すなわち、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性物質)を含み、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質が、スチレン含有コポリマーを含む;ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質が、スチレン含有コポリマー、及びスチレン含有コポリマー中に分散されたポリブタジエン含有相を含む;スチレン含有コポリマーが、アクリロニトリルとスチレンのコポリマーである;ABS熱可塑性物質が、塊状ABS熱可塑性物質を含むか、またはそれのみからなる;衝撃改質剤が、ポリブタジエンゴムである;強化成分またはゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質またはABS熱可塑性物質が、ポリマー組成物の総重量を基準として、約12重量%~約70重量%の量で存在する;スチレン含有コポリマーが、アクリロニトリル及びスチレンを含む(好ましくはこれらから本質的になる、または完全にこれらからなる)ランダムコポリマーである;ウォラストナイトが、ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量%~約35重量%(好ましくは約8重量%~約23重量%、そして最も好ましくは約11重量%~約19重量%)の量で存在する;ポリカーボネートとABS熱可塑性物質との重量比が、約70:30以下(好ましくは約68:32以下、より好ましくは約65:35以下)及び/または約20:80以上(好ましくは約30:70以上、より好ましくは約35:65以上)である;ポリカーボネートとABSの重量比が、約20:80~70:30、約30:70~68:32、または約35:65~65:35の範囲である;基材層が、約0.5mm~約10mmの厚さを有する;カバー層が、約0.01mm~約1.5mmの厚さを有する(1つの好ましい態様において、約0.01mm~約0.20mm;別の好ましい態様において、約0.5mm~約1.5mm);ポリウレタン層が、基材層の表面上に直接適用されたポリウレタン塗料を含む(例えば、ポリウレタン塗料が基材層と接触するように基材層の上に直接);多層物品が、自動車の内装トリム部品である;基材層と支持層との間の接着が、自動車の内部加速寿命劣化試験を通じて維持される;多層物品が、自動車の外装トリム部品である;基材層と支持層との間の接着が、自動車の外部加速寿命劣化試験を通じて維持される(例:BMW GS 94007などの気候劣化試験);ABS熱可塑性物質が、約1μm以下(例えば、約0.01μm~約1.00μm)の平均サイズを有するゴム粒子を含む;ポリカーボネートポリマーが、約20000原子質量単位以上(好ましくは約22,000原子質量単位以上)の重量平均分子量(すなわちMw)であることを特徴とする;基材層が、顔料または他の着色剤によって着色されている;カバー層が、実質的にクリアな及び/または実質的に透明である;基材層が、酸化防止剤、加工助剤、光安定剤、熱安定剤、モールド離型剤及び流動調整剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む;ポリマー組成物が、約0.2~約7重量%の1種以上のエチレンコポリマーを含む;エチレンコポリマーが、官能化モノマーを含む;緻密基材層中のウォラストナイト、強化成分(好ましくは、塊状ABS及び任意の追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマー)、ポリカーボネートの総量が、緻密基材層の総重量を基準として、約95重量%以上である;ポリマー組成物中の任意のタルクの量が、約2重量%以下(好ましくは約1重量%以下、より好ましくはポリマー組成物がタルクを含まない)である;ポリカーボネート成分と強化成分との重量比が、約55:45以下(好ましくは約50:50以下)である;基材層が、緻密な基材層である(例えば、約10体積%以下、好ましくは5体積%以下の多孔性を有する);基材が、発泡剤を用いずに形成される;無水マレイン酸、マレイン酸、または基材層中のコポリマーにカルボキシル基を提供する他のモノマーを含む任意のスチレンコポリマーの量が、約0.9重量%以下である(ポリマー組成物の総重量を基準として);塊状ABS以外の強化成分の量が、強化成分の総重量を基準として、60重量%未満(より好ましくは40重量%未満、さらにより好ましくは25重量%未満)である;または、ウォラストナイトが、サイジングを含む。
【0018】
本明細書の教示の別の態様は、本明細書の教示による多層物品などの多層物品を調製するための方法を対象とする。この方法は、好ましくは、基材層を形成する工程(例えば、基材層の成形)を含む。この方法は、好ましくは、前記基材層上にカバー層を形成する工程(例えば、カバー層を成形すること、カバー層を噴霧すること、カバー層で基材層をコーティングすること、基材層上にカバー層を適用すること、または基材層上にカバー層を重合及び/または架橋すること)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1Aは、基材層20及びカバー層30を含む複合物品10の例示的な断面図である。基材層及びカバー層との間の界面は、
図1Aに示されるように、概ね平坦であり得る。
【0020】
図1Bは、基材層20’及びカバー層30’を含む複合物品10’の例示的な断面図である。基材層及びカバー層との間の界面は、
図1Bに示されるように、曲線状であり得る。
【0021】
【
図2】本明細書の教示による針状充填剤の例示的な光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に提示されている説明及び例示は、本発明、その原理、及びその実際的応用を他の当業者に知らせることを意図している。当業者は、特定の用途の要件に最も適し得るように、本発明をその多数の形態で適合し、適用することができる。したがって、記載された本発明の特定の実施形態は、網羅的であること、または教示を限定することを意図するものではない。したがって、教示の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、代わりに添付の特許請求の範囲を参照して、かかる特許請求の範囲が権利を有するものと同等の全範囲とともに決定されるべきである。特許出願及び公報を含むすべての論文及び参考文献の開示は、あらゆる目的のために参考として組み込まれる。以下の特許請求の範囲から得られるように、他の組み合わせも可能であり、それらも参考として記載の本明細書に組み込まれる。
【0023】
カバー層に対して良好な接着性(耐久性のある接着性を含む)を有し、かつ基材層について本明細書に記載の1つ以上の特徴を有する基材層に対するニーズは、ポリカーボネート、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む強化成分、及び針状充填剤を含むポリマー組成物を用いて達成される。かかる組成物は、好ましくは、高い剛性、低い線熱膨張係数(すなわち、CLTE)を提供し得、そして気候劣化後にポリウレタンへの良好な接着性を保持し得る。前記ポリマー組成物は、ポリウレタンカバー層に直接接触して結合する基材層を含む複合材料中で使用してもよい。前記基材層のポリマー組成物は、好ましくは、特定量のポリカーボネート、ゴム変性SANマトリックス、及びウォラストナイト充填剤を含む。
【0024】
基材層
【0025】
基材層は、本明細書の教示によるポリマー組成物を含むか、本質的にそれからなるか、または完全にそれからなる。好ましくは、カバー層と接触する基材層の表面の一部または全部が、ポリマー組成物から形成される。
【0026】
ポリマー組成物
【0027】
基材層は、複数のポリマー及び1種以上の充填剤を含むポリマー組成物から形成される、及び/またはそれを含む。材料の組み合わせは、前記基材層が、繰り返された気候試験の後であってもカバー層への接着性を維持しながら、物品(好ましくは低い線熱膨張係数を必要とする大きな物品)に必要なバルク特性を提供するように選択される。
【0028】
ポリカーボネート
【0029】
ポリカーボネートは、好ましくは、芳香族ポリカーボネートである。かかる芳香族ポリカーボネートは、それぞれその全体が本明細書に参考として組み込まれる米国特許出願公開第2013/0196130A1(Hufen et alによる、2013年8月1日発行、例えば段落0025~0053参照)、及び第2011/0129631A1号(Van Nuffel、2011年6月2日発行、例えば段落0035~0058参照)及び国際特許出願公開第2011/107273号(Van Nuffel et al、例えば、5頁21行~9頁23行参照)に記載されている芳香族ポリカーボネートを含み得るか、または本質的にそれからなり得る。
【0030】
本明細書の教示による好適な芳香族ポリカーボネートは、文献から知られているか、または文献から知られている方法によって製造することができる(例えば、芳香族ポリカーボネートの製造については、その全体が参考として組み込まれる、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964、ならびに米国特許第3,028,365号;第4,529,791号及び第4,677,162号を参照のこと)。
【0031】
芳香族ポリカーボネートの製造は、例えば、ジフェノールと炭酸ハライド(好ましくはホスゲン)及び/または芳香族ジカルボン酸ジハライド(好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライド)を、場合により連鎖停止剤(例えばモノフェノール)を使用し、場合により三官能性の分岐剤または3より高い官能価を有する分岐剤(例えばトリフェノールまたはテトラフェノール)を使用する、相界面法によって反応することよってなされる。
【0032】
芳香族ポリカーボネート及び/または芳香族ポリエステルカーボネートを製造するためのジフェノールは、好ましくは式Iのものである。
【化1】
式中、Aは単結合、C
1-C
5アルキレン、C
2-C
5アルキリデン、C
5-C
6シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO
2-またはC
6-C
12アリーレン(これにヘテロ原子を含んでいてもよい他の芳香環が縮合していてもよい)または式IIもしくはIIIのラジカルを表し、
【化2】
【化3】
各場合において、Bは独立して水素、C
1-C
12アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素及び/または臭素であり、
各場合においてxは互いに独立して0、1または2であり;
pは、0または1であり;
R
c及びR
dは相互に互いに独立しており、各X
1について個別に選択可能であり、水素またはC
1-C
6アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり;
X
1は炭素を表し;
mは、4~7、好ましくは4または5の整数を表す(R
c及びR
dが同時に少なくとも1個のX
1原子上のアルキルを表すのであれば)。
【0033】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)-C1-C5アルカン類、ビス(ヒドロキシフェニル)-C5-C6シクロアルカン類、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類及びα,α′-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン類、ならびに臭素化及び/または塩素化核を有するそれらの誘導体である。
【0034】
特に好ましいジフェノールは、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルフィド及び4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ならびにそれらの二臭素化及び四臭素化または塩素化誘導体であり、例えば2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンまたは2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。ジフェノールは、個々にまたは任意の混合物として使用することができる。ジフェノールは、文献から知られているか、または文献から知られている方法によって得ることができる。
【0035】
芳香族ポリカーボネートの製造に適した連鎖停止剤の例は、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノールまたは2,4,6-トリブロモフェノール、ならびにそれらのアルキル置換基中に合計8~20個のC原子を含有する4-(1,3-ジメチル-ブチル)-フェノールまたはモノアルキルフェノール類またはジアルキルフェノール類などの長鎖アルキルフェノール類、例えば、3,5-ジ-tert-ブチル-フェノール、p-イソ-オクチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール、2-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノール及び4-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノールなどである。使用される連鎖停止剤の量は、それぞれの場合に使用されるジフェノールのモル合計に対して一般に0.1モル%から10モル%の間である。
【0036】
芳香族ポリカーボネートは、好ましくは約10,000以上、より好ましくは約15,000以上、さらにより好ましくは約20,000以上、そして最も好ましくは約22,000以上の重量平均分子量を有する。芳香族ポリカーボネートは、好ましくは約200,000以下、より好ましくは約100,000以下、そして最も好ましくは約50,000以下の重量平均分子量を有する。例えば、重量平均分子量は、約10,000~約200,000、または約20,000~約80,000であり得る。特に指示されない限り、本明細書における芳香族ポリカーボネート及び/または芳香族ポリエステルカーボネート「分子量」への言及は、ビスフェノールAポリカーボネート標準を用いてレーザー散乱技術を使用してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される重量平均分子量(Mw)を意味し、グラム/モル(g/モル)の単位で得られる。
【0037】
芳香族ポリカーボネートは、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。分岐状ポリカーボネートは、公知の方法で、例えば、三官能性の化合物または3より高い官能価を有する化合物(例えば3個以上のフェノール基を含有するもの)の、使用するジフェノールの合計に対して、0.05~2.0モル%を導入することにより分岐させることができる。本発明に好適な分岐状ポリカーボネートは、既知の技術で調製することができ、例えばいくつかの好適な方法が米国特許第3,028,365号、第4,529,791号及び第4,677,162号に開示されており、それらの全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0038】
使用され得る好適な分岐剤は、例えば、0.01~1.0モル%の量(使用されるジカルボン酸ジクロリドに対して)でのトリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3′-、4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸テトラクロリドもしくはピロメリット酸テトラクロリドなどの三官能性もしくは多官能性カルボン酸クロリド、または、使用されるジフェノールに対して0.01~1.0モル%の量でのフロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ヘプテン、4,4-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-フェニル-メタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]-プロパン、2,4-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェノール、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチル-ベンジル)-4-メチル-フェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン、もしくはテトラキス(4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-フェノキシ)-メタンなどの三官能性もしくは多官能性フェノールである。フェノール系分岐剤は、ジフェノールと共に反応容器に入れることができる。酸塩化物分岐剤は、酸塩化物と一緒に導入することができる。
【0039】
ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの両方が適している。本発明による成分(i)によるコポリカーボネートの製造のために、ヒドロキシ-アリールオキシ末端基を含むポリジオルガノシロキサン1~25重量部、好ましくは2.5~25重量部(使用されるジフェノールの総量に対して)もまた使用することができる。これらは知られている(例えば、米国特許第3,419,634号参照)か、または文献から知られている方法によって製造することができる。
【0040】
ビスフェノールAホモポリカーボネートとは別に、好ましいポリカーボネートは、ジフェノールのモル合計に対して最大15モル%を有するビスフェノールAのコポリカーボネート、好ましいまたは特に好ましいものとして挙げられている他のジフェノールのコポリカーボネートであり、特に2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンである。
【0041】
芳香族ポリカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、好ましくは1.18~1.4、好ましくは1.22~1.3の範囲内にある(25℃で100mLの塩化メチレン中に、それぞれ0.5gのポリカーボネート及びポリエステルカーボネートを溶解した溶液で測定した場合)。
【0042】
強化成分
【0043】
強化成分は、モノビニリデン芳香族コポリマー(例えば、スチレン含有コポリマー)及び衝撃改質剤を含む。例えば、強化成分はゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含んでもよい。ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質は、ポリブタジエン衝撃改質剤を含むABS熱可塑性物質であり得る。
【0044】
基材用のポリマー組成物は、一般に、1種以上のモノビニリデン芳香族コポリマーを含む。モノビニリデン芳香族コポリマーは、本明細書に記載される任意のかかるコポリマーであり得、好ましくはスチレンの第1モノマー及びアクリロニトリルの第2モノマーを含む。好ましくは、モノビニリデン芳香族コポリマーの一部または全部が、1種以上のゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質に含まれる。基材組成物は、1種以上のゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む。
【0045】
ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質の例には、米国特許出願公開第2011/0040035A1号(Shields et al.、2011年2月17日公開、例えば段落0048~0087参照)、米国特許第2007/106028A1号(Maes et al.、2007年5月10日公開、例えば段落0010~0064参照)、及び国際特許出願公開第2011/107273号(例えば、10頁5行~14頁30行、Van Nuffel et al.、2011年9月9日公開、米国特許第61/309,634号に対する優先権を主張する)に記載されるものが含まれ、それぞれその全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0046】
ポリマー組成物に使用される好適なゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質は、マトリックスまたは連続相中のモノビニリデン芳香族及びエチレン系不飽和ニトリルコポリマー及びマトリックス中に分散されたゴム粒子を含む。本発明のマトリックスまたは連続相は、その中で重合したモノビニリデン芳香族モノマー及びエチレン系不飽和ニトリルモノマーとを含むコポリマーまたは、その中で重合したモノビニリデン芳香族モノマー及びエチレン系不飽和ニトリルモノマー、及びそれらと共重合可能な1種以上のビニルモノマーとを含むコポリマーである。本明細書で使用する場合、コポリマーは、インター重合した2つ以上のモノマーを有するポリマーとして定義される。ポリ(スチレン-アクリロニトリル)が最も一般的な例であるため、これらの組成物は一般にSAN型またはSANとして知られている。
【0047】
ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を製造するのに好適な各種技術は当該技術分野において周知である。これらの公知の重合方法の例には、一般に塊状重合方法として知られているバルク、塊状溶液または塊状懸濁重合が含まれる。ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を製造する方法の良好な考察については、”Modern Styrenic Polymers” of Series In Polymer Science (Wiley), Ed.John Scheirs and Duane Priddy, ISBN 0 471 497525を参照のこと。また、例えば、参考として本明細書に組み込まれている、米国特許第3,660,535号、第3,243,481号及び第4,239,863号。
【0048】
一般的に、本発明のゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質の調製には連続塊状重合技術が有利に使用される。そのため、本明細書の教示によるポリマー組成物は、好ましくは塊状ABSを含む。塊状ABSであるABS熱可塑性物質の量は、好ましくは約40%以上、より好ましくは約60%以上、さらにより好ましくは約80%以上、そして最も好ましくは約100%である。好ましくは、米国特許第2,727,884号に記載されているような、マルチゾーン栓流バルクプロセス(部分的に重合した生成物の一部の再循環を含んでも含まなくてもよい)と呼ばれることもある、1つ以上の実質的に直線状の層状流もしくはいわゆる「栓流」型反応器中、あるいは、反応器の内容物が全体を通して本質的に均一である撹拌槽型反応器(一般に1つ以上の栓流型反応器と組み合わせて使用される)中で重合が実施される。あるいは、欧州特許第412801号に教示される並列反応器構成もまた、本発明のゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質の調製に好適であり得る。
【0049】
マルチゾーン栓流バルクプロセスは、互いに連続的に接続され、複数の反応ゾーンを提供する一連の重合容器(または塔)を含む。ゴム、例えばブタジエンゴム(立体特異的)は、モノビニリデン芳香族コモノマーの混合物(例えばスチレン(ST)及びアクリロニトリル(AN))に溶解され、次いでゴム溶液が前記反応系に供給される。重合は、熱的または化学的に開始することができ、反応混合物の粘度は、徐々に増加することとなる。反応過程中に、ゴムはST/ANポリマー(グラフト化SAN)でグラフト化され、ゴム溶液中では、バルクSAN(遊離SANまたはマトリックスSANまたは非グラフト化SANとも呼ばれる)もまた形成されている。遊離SAN(すなわち、非グラフト化SAN)がゴム溶液の1つの単一の連続的な「相」に「保持」されることができない時点で、SAN相の領域が形成され始める。ここで重合混合物は二相系である。重合の進行に伴い、さらに多くの遊離SANが形成され、ゴム相は、成長し続ける遊離SANのマトリックス中に粒子(ゴム領域)としてそれ自体を分散し始める。ついには、遊離SANが連続相になる。これは実際には油中油型エマルジョン系の形成である。マトリックスSANの一部には、ゴム粒子内に封入されたものもある。この段階は通常、相反転という名前が付けられる。相反転前とは、ゴムが連続相であり、ゴム粒子が形成されていないことを意味し、相反転後とは、ほぼ全てのゴム相がゴム粒子に転換され、連続SAN相があることを意味する。相反転後、より多くのマトリックスSAN(遊離SAN)が形成され、場合により、ゴム粒子は、より多くのグラフトSANを得る。
【0050】
モノビニリデン芳香族モノマーとしては、参考として本明細書に組み込まれる、米国特許第4,666,987号、第4,572,819号及び第4,585,825号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記モノマーは次式のものである。
【化4】
式中、R′は水素またはメチルであり、Arは、アルキル、ハロ、またはハロアルキル置換された、またはされていない、1~3個の芳香環を有する芳香環構造である(いずれのアルキル基も1~6個の炭素原子を含み、かつハロアルキルは、ハロ置換アルキル基を意味する)。好ましくは、Arはフェニルまたはアルキルフェニルであり、アルキルフェニルはアルキル置換フェニル基を意味し、フェニルが最も好ましい。好ましいモノビニリデン芳香族モノマーには以下が含まれる:スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンの全異性体、特にパラビニルトルエン、エチルスチレンの全異性体、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど、及びそれらの混合物。
【0051】
通常は、かかるモノビニリデン芳香族モノマーは、マトリックスコポリマーの総重量を基準として、約50重量%以上の量、好ましくは約60重量%以上の量、より好ましくは約65重量%以上の量、そして最も好ましくは、約70重量%以上の量から構成され得る。典型的には、かかるモノビニリデン芳香族モノマーは、マトリックスコポリマーの総重量を基準として、約95重量%以下、好ましくは約85重量%以下、より好ましくは約80重量%以下、そして最も好ましくは約75重量%以下を構成し得る。
【0052】
不飽和ニトリル(すなわち、エチレン性不飽和ニトリルモノマー)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和ニトリルは一般に、マトリックスコポリマーの総重量を基準として、約5重量%以上の量、好ましくは約10重量%以上の量、より好ましくは約15重量%以上の量、そして最も好ましくは約20重量%以上の量でのマトリックスコポリマーに用いられる。不飽和ニトリルは一般に、マトリックスコポリマーの総重量を基準として、約50重量%以下、好ましくは約45重量%以下、より好ましくは約35重量%以下、そして最も好ましくは約30重量%以下の量でのマトリックスコポリマーに用いられる。
【0053】
他のビニルモノマーもまた、共役1,3ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど);α-またはβ-不飽和単塩基酸及びその誘導体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸など、及び対応するそれらのエステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、メチルメタクリレートなど);塩化ビニル、臭化ビニルなどのビニルハライド;塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなど;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキルもしくはフマル酸ジアルキル(例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、それらに対応するフマル酸)、N-フェニルマレイミド(NPMI)などのエチレン系不飽和ジカルボン酸及び無水物及びその誘導体などを含む、マトリックスコポリマー中に重合形態で含まれていてもよい。これらの追加のコモノマーは、モノビニリデン芳香族及びエチレン系不飽和ニトリルマトリックスコポリマーとのインター重合及び/または、例えば、マトリックスへブレンドされるなど、混ぜ合わされ得るポリマー成分への重合を含むいくつかの方法で組成物へと組み込むことができる。存在する場合は、かかるコモノマーの量は一般に、マトリックスコポリマーの総重量を基準として、約20重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、そして最も好ましくは約5重量%以下となる。マトリックスコポリマーは、好ましくは、無水マレイン酸及びカルボン酸基を実質的に含まない、またはさらには全く含まない(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、またはカルボン酸基をもたらす他のモノマーの量は、スチレン系コポリマーの総重量を基準として、またはポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約4重量%以下、より好ましくは約0.9重量%以下、さらにより好ましくは約0.25重量%以下、そして最も好ましくは、約0重量%である)。
【0054】
マトリックスコポリマーは、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質の重量を基準として、約60重量%以上、好ましくは約70重量%以上、より好ましくは約75重量%以上、さらにより好ましくは約80重量%以上、そして最も好ましくは82重量%以上の量で存在する。マトリックスコポリマーは、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質の重量を基準として、約90.5重量%以上、好ましくは約90重量%以上、より好ましくは約89重量%以上、そして最も好ましくは88重量%以上の量で存在する。
【0055】
種々のゴムが本発明での使用に好適である。ゴムとしては、ジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム、エチレンコポリマーゴム、アクリレートゴム、ポリイソプレンゴム、ハロゲン含有ゴム、及びそれらの混合物が挙げられる。ゴム形成モノマーと他の共重合性モノマーとのインターポリマーもまた好適である。
【0056】
好ましいゴムは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、ポリクロロプレンなどのジエン系ゴムまたはジエン系ゴムの混合物、すなわち1種以上の共役1,3-ジエンの任意のゴム状ポリマーであり、1,3-ブタジエンが特に好ましい。かかるゴムとしては、1,3-ブタジエンと1種以上の共重合性モノマー(例えば先に説明したモノビニリデン芳香族モノマーであるスチレンが好ましい)とのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。1,3-ブタジエンの好ましいコポリマーは、少なくとも約30重量%の1,3-ブタジエンゴム、より好ましくは約50重量%、さらにより好ましくは約70重量%、そして最も好ましくは約90重量%の1,3-ブタジエンゴム、及び最大約70重量%のモノビニリデン芳香族モノマー、より好ましくは最大約50重量%、さらにより好ましくは最大約30重量%、そして最も好ましくは最大約10重量%のモノビニリデン芳香族モノマー(重量は1,3-ブタジエンコポリマーの重量を基準としている)のブロックまたはテーパーブロックゴムである。
【0057】
充填剤
【0058】
ポリマー組成物は、好ましくは1種以上の針状充填剤を含む。好ましい充填剤は、約2以上、より好ましくは約3以上、さらにより好ましくは約4以上、そして最も好ましくは約6以上のアスペクト比(例えば、長さ対直径の比)を有する細長い粒子である。充填剤のアスペクト比は、約1000以下、約40以下、約30以下、または約20以下、または約15以下であり得る。特に好ましい針状充填剤は、針状ウォラストナイトである。ウォラストナイトは、メタケイ酸カルシウム(すなわち、CaSiO3)である。好ましいウォラストナイトは、実質的にCaSiO3からなる。任意の不純物の量(例えば、カルシウム及びケイ素のもの以外の酸化物の総量)は、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約7重量%以下、さらにより好ましくは約5重量%以下、そして最も好ましくは約3重量%以下である。
【0059】
充填剤中の任意のMgの量は、充填剤の総重量を基準として、好ましくは約1重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以下、そして最も好ましくは約0.2重量%以下である。
【0060】
充填剤は、処理済みであっても未処理でもよい。例えば、充填剤は、熱可塑性組成物の1種以上のポリマーへの充填剤の接着を向上するためのサイジングを含み得る。好ましいウォラストナイトは、サイジングを含む。
【0061】
針状充填剤は、好ましくは約3モース以上、より好ましくは約3.5モース以上、そして最も好ましくは約4モース以上の硬度を有する。充填剤は、好ましくは約8モース以下、より好ましくは約6モース以下、そして最も好ましくは約5モース以下の硬度を有する。針状充填剤(例えば、ウォラストナイト)は、以下の特徴のうちの1つまたは任意の組み合わせを有し得る:約2.5~約3.5の比重(好ましくは約2.7~約3.1、より好ましくは約2.90g/cm3);約25μm~約150μmの長さの中央値(例えば、約40μm~約75μm、好ましくは約50μmまたは約63μm);約1~約20μmの直径の中央値、(好ましくは、約2~約10μm、そしてより好ましくは約4μm~約8μm);約50%以上(例えば、約70%以上、または約80%~約100%)の、約2.0μm~約20μmの直径を有する粒子の割合;約0.5m2/g~約10m2/gの比表面積(例えば、BETにより測定した場合に約2.9m2/g);10%スラリー中で約7~約13(例えば、約9.9)のpH;またはこれらの任意の組み合わせ。好ましいウォラストナイトは、メタケイ酸カルシウム(すなわち、CaSiO3)が挙げられる(例えば、約80%以上、または約90%以上、または約95%以上)。
【0062】
使用され得る充填剤の例には、NYCO MINERALSから市販されているNYGLOS(登録商標)4W及びNYGLOS(登録商標)4W 10992ウォラストナイトが挙げられる。NYGLOS(登録商標)4Wは、約2.90g/cm3の比重、約63μmの長さの中央値;約4μm~約8μmの直径の中央値;約80%~約100%の約2.0μm~約20μmの直径を有する粒子の割合;BETにより測定した場合に約2.9m2/gの比表面積;10%スラリー中で約9.9のpH、及び約4.5の硬度(モース)を有する。これらのウォラストナイトは、約95%以上のメタケイ酸カルシウム(すなわち、CaSiO3)を含む。NYGLOS(登録商標)4Wのアスペクト比は約11:1である。Mgの量は、ウォラストナイトの総重量を基準として、約0.2重量%以下である。
【0063】
ポリマー組成物は、複数のポリマーを含む。上述のように、複数のポリマーは、ポリカーボネート及び強化成分(好ましくはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性物質(好ましくは、塊状ABS)、及び場合によりアクリロニトリル-スチレンコポリマーを含むか、またはこれらである)を含む。ポリマー組成物は追加のポリマーを含み得るが、これらは典型的にはポリマー組成物中に微量成分として存在する。好ましくは、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性物質(例えば、塊状ABS)及び任意のアクリロニトリル-スチレンコポリマーの総量は、ポリマー組成物中の複数のポリマーの総重量を基準として、約70重量%以上、より好ましくは約80重量%以上、さらにより好ましくは約90重量%以上、そして最も好ましくは約95重量%以上であり、そして約100重量%以下である。
【0064】
ポリカーボネート(例えば、芳香族ポリカーボネート)は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約20重量%以上、より好ましくは約25重量%以上、さらにより好ましくは約30重量%以上、そして最も好ましくは約35重量%以上の量で存在するのが好ましい。ポリカーボネートは、ポリマー組成物の総重量を基準として、約70重量%以下、より好ましくは約60重量%以下、さらにより好ましくは約59重量%以下、さらにより好ましくは約55重量%以下、さらにより好ましくは約54重量%以下、さらにより好ましくは約53重量%以下、さらにより好ましくは約50重量%以下、そして最も好ましくは約48重量%以下の量で存在するのが好ましい。例えば、ポリカーボネートの量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約20重量%~約70重量%、約20~約60重量%、約30重量%~約59重量%、約20~約50重量%、または約35~約55重量%であり得る。
【0065】
ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質(例えば、ABS熱可塑性物質または好ましくは塊状ABS熱可塑性物質の量)ならびに任意の追加の衝撃改質剤及び/またはスチレン-アクリロニトリルコポリマーを含むポリマー組成物中の強化成分の量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約12重量%以上、好ましくは約15重量%以上、そして最も好ましくは約20重量%であり得る。ある態様では、ポリマー組成物の総重量を基準として、約30重量%以上または約45重量%以上の強化成分を使用することが有利であり得る。強化成分の量は、熱可塑性組成物の総重量を基準として、約70重量%以下、好ましくは約65重量%以下、そして最も好ましくは約60重量%以下であり得る。
【0066】
用いる場合、任意の追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマー(すなわち、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質中のコポリマー以外)は、熱可塑性組成物の総重量を基準として、好ましくは約25重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらにより好ましくは約15重量%以下、そして最も好ましくは約10重量%以下である。かかる追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマーは、約0重量%以上の量で存在し得る。かかる追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマーの重量対ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質の重量の比は、好ましくは約1.0以下、より好ましくは約0.8以下、さらにより好ましくは約0.6以下、そして最も好ましくは約0.45以下である。
【0067】
本発明の一態様において、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質の一部または全部は、i)スチレン-アクリロニトリルコポリマー(本明細書に記載のものなど)及び、ii)ゴム改質剤との組み合わせにより置き換えられ得る。好ましくは、ゴム改質剤の量は、スチレン-アクリロニトリルコポリマー及びゴム改質剤の総重量を基準として、約2重量%~約30重量%、より好ましくは約3重量%~約20重量%、そして最も好ましくは約3重量%~約15重量%である。ゴム改質剤は、約0℃以下のガラス転移温度を有する任意のポリマーを含んでもよい。ゴム改質剤は、好ましくはスチレン-アクリロニトリルコポリマーに延性を付与する。特に好ましいゴム改質剤は、ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、またはその両方を含む。ゴム改質剤は、ゴム改質剤とスチレン-アクリロニトリルコポリマーの適合性を向上させるのに十分な量のスチレンを含んでもよい。ゴム改質剤は、好ましくはブタジエン及びスチレンを含むコポリマーである。ゴム改質剤は、コアシェルポリマーであり得る。コアは、好ましくはエラストマー系ポリマーを含み、シェルは、好ましくは約100℃超の融解温度及び/またはガラス転移温度を有するポリマーを含む。例えば、ゴム改質剤は、ブタジエン及びスチレンを含むポリマーを含むか、または本質的にそれからなるコアを含み得る。別の例としては、コアは、ブチルアクリレートまたはエチルヘキシルアクリレートを含むゴムのような1種以上のアクリルゴムを含み得る。ゴム改質剤は、アクリレートモノマーを含むシェルを有し得る。ゴム改質剤は、ポリメチルメタクリレートを含むシェルを有し得る。ゴム改質剤は、ポリ(ブタジエン/スチレン)コア及びポリメチルメタクリレートシェルを含むコアシェルMBS改質剤であり得る。ゴム改質剤として使用され得るコアシェル衝撃改質剤の例には、THE DOW CHEMICAL COMPANYから市販されているPARALOID(商標)衝撃改質剤が挙げられる。ゴム改質剤は、エマルジョンABS及び/またはグラフト化ゴム濃縮物として提供され得る。グラフト化ゴム濃縮物中のエラストマーの量は、グラフト化ゴム濃縮物の総重量を基準として、好ましくは約20重量%以上、より好ましくは約30重量%以上、さらにより好ましくは約45重量%以上、そして最も好ましくは約55重量%以上である。グラフト化ゴム濃縮物は、SANコポリマー(例えば、エマルジョン工程により製造される)上にグラフト化されてもよい。グラフト化ゴム濃縮物は、1つ以上のエラストマー(例えばブタジエン)及び1つ以上のスチレン含有ポリマー(例えばSAN)から本質的に(すなわち、約95重量%以上)または完全になり得る。グラフト化ゴム濃縮物は、例えば追加のSANとともに、ポリマー組成物に別々に添加してもよい。ポリマー組成物に添加する前に、グラフト化ゴム濃縮物を追加のスチレン含有ポリマー(例えば、SAN)と混合してもよい。塊状ABS以外の強化成分(例えば、GRCまたはコアシェルコポリマー)の量は、強化成分の総重量を基準として、好ましくは60重量%未満、より好ましくは40重量%未満、さらにより好ましくは25重量%未満である。
【0068】
充填剤の量(例えば、ウォラストナイトの量)は、ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約3重量%以上、より好ましくは約5重量%以上、さらにより好ましくは約8重量%以上、そして最も好ましくは約11重量%以上である。充填剤の量(例えば、ウォラストナイトの量)は、ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約50重量%以下、より好ましくは約35重量%以下、さらにより好ましくは約23重量%以下、さらにより好ましくは約19重量%以下、そして最も好ましくは約18重量%以下である。例えば、ウォラストナイトは、ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量%~約35重量%、約8重量%~約23重量%、約11重量%~約19重量%、または約10重量%~約30重量%の量で存在し得る。
【0069】
ポリマー組成物中のポリカーボネート対強化成分(例えば、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質またはABS熱可塑性物質、または塊状ABS)の重量比は、好ましくは、約70:30以下、より好ましくは約68:32以下、さらにより好ましくは約65:35以下、さらにより好ましくは約60:30以下、さらにより好ましくは約55:45以下であり、そして最も好ましくは約50:50以下である。ポリカーボネート対ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質(例えばABS熱可塑性物質)の重量比は、好ましくは約20:80以上、より好ましくは約30:70以上、そして最も好ましくは約35:65以上である。例えば、重量比は、約20:80~約70:30、約30:70~約68:32、約35:65~約60:40、約35:65~約55:45、または約20:80~約50:50の範囲であり得る。
【0070】
衝撃改質剤(例えば、ポリブタジエン)の濃度は、ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約3重量%以上、より好ましくは約5重量%以上、そして最も好ましくは約7重量%以上である。衝撃改質剤(例えば、ポリブタジエン)の濃度は、ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約23重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらにより好ましくは約18重量%以下、さらにより好ましくは約15重量%以下、そして最も好ましくは約14重量%以下である。
【0071】
ポリマー組成物中のゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質、ポリカーボネート及び任意の追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマーの総量は、好ましくは、ポリマー組成物のポリマーの総重量を基準として、約70重量%以上、より好ましくは約80重量%以上、さらにより好ましくは約90重量%以上、そして最も好ましくは約95重量%以上である。ポリマー組成物中のゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質、ポリカーボネート及び任意の追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマーの総量は、ポリマー組成物のポリマーの総重量を基準として、約100重量%以下であり得る。好ましくは、ポリマー組成物中のゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質、ポリカーボネート及び任意の追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマーの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約50重量%以上、より好ましくは約65重量%以上、より好ましくは約77重量%以上、そして最も好ましくは約82重量%以上である。好ましくは、ポリマー組成物中のゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質、ポリカーボネート及び任意の追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマーの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約97重量%以下、より好ましくは約95重量%以下、さらにより好ましくは約92重量%以下、そして最も好ましくは約89重量%以下である。
【0072】
ポリマー組成物中のウォラストナイト、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質、ポリカーボネート及び任意の追加のスチレンアクリロニトリルコポリマーの総量(例えば、ウォラストナイト、ABS熱可塑性物質及びポリカーボネートの総量、またはウォラストナイト、塊状ABS及びポリカーボネートの総量)は、ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約80重量%以上、より好ましくは約90重量%以上、さらにより好ましくは約95重量%以上、そして最も好ましくは約97重量%以上である。ポリマー組成物中のウォラストナイト、ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質、ポリカーボネート及び任意の追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマーの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約100重量%以下であり得る。
【0073】
ポリマー組成物は、本明細書に記載されているものなどの1種以上の追加のポリマーを任意に含んでもよい。追加のポリマーの例には、オレフィン系コポリマー(例えば、50重量%以上のエチレン及び/またはプロピレンを含む)、ポリエステル及びポリアミドが挙げられる。
【0074】
オレフィン系コポリマー
【0075】
使用され得るオレフィン系コポリマーは、酸素原子及び/または窒素原子を含む1個以上の官能基を有するポリオレフィンコポリマーを含む。好ましいオレフィン系コポリマーは、約50重量%以上、より好ましくは約60重量%以上、そして最も好ましくは約65重量%以上の量での1種以上のα-オレフィンを含む。α-オレフィンは、好ましくは、1つ以上のC2~C20アルケン(最も好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、またはそれらの任意の組み合わせ)を含むか、本質的にそれからなるか、または完全にそれからなる。オレフィン系コポリマーは、好ましくは、少なくとも1個の酸素原子を有する1つ以上のコモノマーを含む。本明細書で使用される場合、オレフィン系コポリマーは、無水マレイン酸及びカルボン酸基を実質的に含まない(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、またはカルボン酸基をもたらす他のモノマーの量が、オレフィン系コポリマーの総重量を基準として、好ましくは約4重量%以下、より好ましくは約0.9重量%以下、そして最も好ましくは約0.25重量%以下である)。好ましいコモノマーには、アクリレート、アセテートが含まれる。例えば、オレフィン系コポリマーは、エチレン-アクリレートコポリマーであり得る。特に好ましいオレフィン系コポリマーは、Amplify AEエチレンアクリレートコポリマーである。用いる場合、オレフィン系コポリマーの量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約25重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらにより好ましくは約12重量%以下、そして最も好ましくは約8重量%以下である。オレフィン系コポリマーの量は、約0重量%以上であり得る。
【0076】
ポリエステル
【0077】
ポリマー組成物(例えば、基材層の)は、1種以上のポリエステルを含み得る。使用され得るポリエステルの例には、ポリアルキレンテレフタレートのような芳香族ポリエステルが含まれる。使用され得るポリエステルの例は、参考として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0196130A1号(Hufen et al.、2013年8月1日公開、例えば段落0123~0132参照)に記載されているポリエステルを含む。ポリマー組成物は、好ましくは実質的にまたは完全にポリエステルを含まない。存在する場合は、ポリエステルの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、さらにより好ましくは約2重量%以下、さらにより好ましくは約1.9重量%以下、さらにより好ましくは約1.0重量%以下、そして最も好ましくは約0.4重量%以下である。例えば、ポリエステルの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約0重量%~約10重量%、約0重量%~約1.9重量%、または約0重量%~約0.4重量%であり得る。
【0078】
ポリアミド
【0079】
ポリマー組成物(例えば、基材層の)は、1つ以上のポリアミドを任意に含んでもよい。ポリアミドは、任意の種類であってよい。好適なポリアミドとしては、ジアミンと二酸との反応生成物、ならびに単一体(monadic)のポリアミドが含まれる。ジアミン及び二酸から形成されるポリアミドは、アジピン酸またはテレフタル酸のいずれかとジアミンとの反応生成物を含有するポリアミド(例えばナイロン)を含み得る。単一体のポリアミドの例には、ナイロン6及びポリ(p-ベンズアミド)が含まれる。本発明で使用してもよいナイロンには、ナイロン3、ナイロン4、ナイロン5、ナイロン6、ナイロン6T、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/66/610、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン69、ナイロン7、ナイロン77、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12及びナイロン91が含まれる。上記のポリアミドのいずれかを含有するコポリマーを使用してもよい。ポリアミドコポリマーには、ポリエーテルを含んでもよい。ポリアミドコポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、これらの組み合わせであり得る。ポリマー組成物は、好ましくは実質的にまたは完全にポリアミドを含まない。存在する場合は、ポリアミドの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約3重量%以下、より好ましくは約2重量%以下、さらにより好ましくは約1.9重量%以下、さらにより好ましくは約1.0重量%以下、そして最も好ましくは約0.4重量%以下である。例えば、ポリアミドの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約0重量%~約3重量%、約0重量%~約1.9重量%、または約0重量%~約0.4重量%であり得る。
【0080】
添加剤
【0081】
ポリマー組成物は、1種以上の添加剤を含んでもよい。例えば、ポリマー組成物は、1種以上の安定剤(例えば、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、または紫外線安定剤)、1種以上の着色剤、1種以上の加工助剤、1種以上の難燃剤、1種以上のモールド離型剤、1種以上の帯電防止剤、1種以上の導電性添加剤、耐擦傷性を向上するための1種以上の添加剤、または1種以上のドリップ防止剤を含んでもよい。使用され得る添加剤の例には、参考として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0196130A1号(Hufen et al.、2013年8月1日公開、例えば段落0144~0147参照)に記載されている添加剤が含まれる。
【0082】
好ましい添加剤としては、ポリカーボネート組成物に一般的に使用される添加剤、及び/またはポリスチレン及び/またはABS組成物に一般的に使用される添加剤が含まれる。
【0083】
好ましい酸化防止剤としては、立体障害性フェノール系酸化防止剤が含まれる。特に好ましい酸化防止剤は、BASFから市販されているIRGANOX(登録商標)1076(CAS#2082-79-3)のようなオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネートである。
【0084】
好ましいモールド離型剤は、ポリオールエステル型モールド離型剤を含む。特に好ましいモールド離型剤は、SAFICALCAN NECARBO BVから市販されているLOXIOL(登録商標)P 861/3.5である。別の特に好ましいモールド離型剤は、EMERY OLEOCHEMICALS LLC(CINCINNATI、OH)から市販されているLOXIOL(登録商標)VPG 861である。
【0085】
存在する場合、1種以上の添加剤の総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、そして最も好ましくは約2.5重量%以下である。1種以上の添加剤の総量は、約0重量%以上、約0.1重量%以上、または約0.3重量%以上であり得る。
【0086】
ポリマー組成物は、好ましくは、無水マレイン酸及びカルボン酸基(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、またはカルボン酸基をもたらす他のモノマー)を含むポリマーを実質的に含まないか、またはさらには完全に含まない。特定の理論に束縛されるものではないが、かかるモノマーが存在する際の耐久性不良(例えば、湿度及び/または気候劣化後)は、材料の酸化及び/または劣化に関連すると考えられている。好ましくは、かかるモノマーを含む任意のポリマーの量は、スチレン系コポリマーの総重量を基準として、またはポリマー組成物の総重量を基準として、約1.2重量%以下、より好ましくは約0.9重量%以下、さらにより好ましくは約0.25重量%以下、そして最も好ましくは約0重量%である。
【0087】
ポリマー組成物は任意の手段によって基材層へと形成してよい。例えば、基材層は、成形(例えば、射出成形、圧縮成形、オーバーモールディング、または共射出成形)、押出し(例えば、異形押出し、またはシート押出し、またはインフレートフィルム押出し(blown film extrusion))、カレンダー加工、3-D印刷法、またはポリマー材料の加工において公知の任意の他の方法によって形成され得る。基材層は任意の厚さを有し得る。基材の厚さは、典型的には特定用途の要件に依存する。好ましくは、基材層は、約0.2mm以上、より好ましくは約0.5mm以上、さらにより好ましくは約1.0mm以上、そして最も好ましくは約2.0mm以上の厚さを有する。基材層の厚さは、好ましくは約30mm以下、より好ましくは約20mm以下、さらにより好ましくは約20mm以下、さらにより好ましくは約10mm以下、そして最も好ましくは約8mm以下である。基材の厚さは均一であってよく、または異なってもよいことが理解されよう。基材の厚さが変わると、上記厚さの値は、カバー層に接着される領域における基材の平均厚さを指す。
【0088】
基材層は、好ましくは緻密材料(例えば、10体積%以下、好ましくは約3体積%以下、そして最も好ましくは約0.8体積%以下の多孔性を有する)である。緻密基材層中の多孔度は、0体積%以上、または約0.3体積%以上であり得る。緻密基材を使用することによって、基材層の厚さ及び/または基材層の総重量が減少し得ることが見出された。緻密基材の使用によって、接着性及び耐久性に関してさらなる課題がもたらされる。特定の理論に束縛されるものではないが、発泡基材層の多孔性は、層の機械的付着のための手段を提供し得る、及び/または耐久性試験中にエネルギーを吸収するための手段を提供し得ると考えられる。好ましくは、基材層は、発泡剤(例えば、物理発泡剤または化学発泡剤)を使用せずに製造される。そのため、得られる基材層は、好ましくは残留発泡剤またはその副生成物を含まない。基材には緻密材料が好ましいが、本明細書の教示は、基材層が発泡材料(例えば、10体積%を超える、好ましくは約20体積%以上、そして最も好ましくは約40体積%以上の多孔性を有する)である場合にも使用され得ることが理解されよう。発泡基材層は、約75体積%以下、約60体積%以下、または約50体積%以下の多孔性を有し得る。
【0089】
基材層は、着色、クリア、または透明であり得る。例えば、基材層は、基材に所定の色を付与するために1種以上の着色剤を含んでもよい。着色基材層の使用は、透明またはクリアなカバー層を有する物品において特に有利であり得る。
【0090】
特性
【0091】
本明細書の教示によるポリマー組成物は、-30℃~30℃で測定した場合、好ましくは約75×10-6cm/cm/℃以下、より好ましくは65×10-6cm/cm/℃以下、さらにより好ましくは約60×10-6cm/cm/℃以下、さらにより好ましくは約50×10-6cm/cm/℃以下、そして最も好ましくは約40×10-6cm/cm/℃以下の線熱膨張係数を有する。ポリマー組成物は、約5×10-6cm/cm/℃以上、または約20×10-6cm/cm/℃以上の線熱膨張係数を有し得る。
【0092】
ポリマー組成物は好ましくは、以下の特徴のうちの1つ以上、またはすべてを有する:ISO179-1eAにしたがって測定した場合、約8~約40kJ/m2のノッチ付きシャルピー衝撃強度;ISO527にしたがって測定した場合、約3000~約6000MPaの引っ張り係数;ISO527にしたがって測定した場合、約5~約40%の破断点伸び。
【0093】
カバー層
【0094】
本明細書の教示による物品は、基材層を覆うカバー層を含む。カバー層は、基材層の表面の一部または全部を覆う。好ましくは、カバー層は基材層と直接接触し、そして接触領域において基材層と結合する。
【0095】
カバー層は、任意の厚さを有することができるが、好ましくは基材層の厚さより薄い厚さを有する。その場合に、基材層は物品の「バルク」に1つ以上の有利な特性をもたらし得、一方、カバー層は物品の表面に1つ以上の特性をもたらし得る。好ましくは、カバー層は、約0.01mm以上、より好ましくは約0.10mm以上、さらにより好ましくは約0.3mm以上、そして最も好ましくは約0.5mm以上の厚さを有する。カバー層は、好ましくは約3mm以下、より好ましくは約1.5mm以下、そして最も好ましくは約1.0mm以下の厚さを有する。1つの好ましい態様では、カバー層は、約0.01mm~約0.20mmの厚さを有し、そして別の好ましい態様では、カバー層は、約0.5mm~約1.5mmの厚さを有する。
【0096】
カバー層は、任意の既知の方法にしたがって基材層へと適用され得る。カバー層は、ポリマー、プレポリマー、モノマー、またはそれらの任意の組み合わせを含む材料から形成され得る。好ましくは、カバー層は、基材層の表面に適用された後に重合及び/または架橋される組成物から形成される。カバー層を適用するための好ましい方法は、成形工程(例えば、オーバーモールド)、塗装工程、2K成形工程、圧延工程、噴霧工程、浸漬工程、各種コーティング工程、またはそれらの任意の組み合わせを含む。カバー層は、室温の液体として(例えば、室温または高温で適用される)、溶融状態で(例えば、溶融温度を超える高温で)、または固体として適用され得る。1つの好ましい態様では、カバー層は、塗料として基材層上に直接適用される。別の好ましい態様では、カバー層は、基材層上に直接オーバーモールドされる。カバー層は、密度が高い材料でもよく、または発泡材料でもよい。好ましいカバー層は、密度が高い(すなわち、約20体積%以下、好ましくは約10体積%以下、そしてより好ましくは約5積%以下の多孔性を有する緻密材料)。
【0097】
カバー層は、好ましくは基材層と接触して結合するポリウレタンを含むか、または本質的にそれからなる。
【0098】
カバー層は、参考として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0196130A1号(Hufen et al.による、2013年8月1日公開、例えば段落0173~0240参照)に記載されている特徴の1つまたは任意の組み合わせを含むポリウレタンを含み得る。
【0099】
本発明にしたがって使用されるポリウレタンは、ポリイソシアネートとH-活性多官能性化合物、好ましくはポリオールとの反応によって得られる。この文脈においては、用語「ポリウレタン」は、本発明の文脈においては、N-H官能価を有する化合物が、場合によりポリオールと混合して、H-活性多官能性化合物として用いられる、ポリウレタン-尿素も意味するものとして理解される。
【0100】
好適なポリイソシアネートは、当業者にそれ自体知られている芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートであり、好ましくは≧2のNCO官能価を有し、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレット、尿素、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシル尿素及び/またはカルボジイミド構造も含み得る。これらは個々に、または任意の所望の互いの混合物中で使用することができる。
【0101】
本文脈中、上述のポリイソシアネートは、それ自体当業者に知られているジ-及びトリイソシアネートに基づいており、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/または芳香族結合イソシアネート基を有するが、これらがホスゲンを使用して調製されたか、またはホスゲンを含まないプロセスによって調製されたかどうかは無関係である。かかるジ-及びトリイソシアネートの例は、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-及び1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-及び1,4-ビス-(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン-ジイソシアナト、IPDI)、4,4′-ジ-イソシアナトジシクロヘキシルメタン(Desmodur(登録商標) W, Bayer AG, Leverkusen, DE)、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタン-ジイソシアナト(トリイソシアナトノナン、TIN)、ω,ω′-ジイソシアナト-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)、1-イソシアナト-1-メチル-3-イソシアナトメチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-1-メチル-4-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス-(イソシアナトメチル)-ノルボルナン、1,5-ナフタレン-ジイソシアナト、1,3-及び1,4-ビス-(2-イソシアナトプロプ-2-イル)-ベンゼン(TMXDI)、2,4-及び2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、特に2,4及び2,6異性体ならびに2つの異性体2,4′-及び4,4′-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)の工業用グレードの混合物、ポリマーMDI(pMDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)ならびに言及した化合物の任意の所望の混合物である。
【0102】
本文脈中、ポリイソシアネートは、2.0~5.0、好ましくは2.2~4.5、特に好ましくは2.2~2.7の平均NCO官能価、及び5.0~37.0重量%、好ましくは14.0~34.0重量%のイソシアネート基含量を好ましくは有する。
【0103】
好ましい態様では、もっぱら脂肪族及び/または脂環式で結合するイソシアネート基を有する上記の種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物が使用される。
【0104】
より好ましくは、上記の種類のポリイソシアネートは、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネート、異性体ビス-(4,4′-イソシアナトシクロヘキシル)-メタン及びそれらの混合物に基づく。
【0105】
高分子量の変性ポリイソシアネートの中では、400~15,000、好ましくは600~12,000の分子量範囲の末端イソシアネート基を有するポリウレタン化学から知られているプレポリマーが特に対象となる。これらの化合物は、それ自体既知の方法で、例として挙げた種類の過剰量の単純ポリイソシアネートと、イソシアネート基に対して反応性がある少なくとも2つの基を有する有機化合物(特に、有機ポリヒドロキシ化合物)との反応によって調製される。好適なかかるポリヒドロキシ化合物は、両方とも、62~599、好ましくは62~200の分子量範囲の単純な多官能性アルコールである。例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロパン-1,2-ジオールまたはブタン-1,4-ジオールまたはブタン-2,3-ジオールなど、しかし特には、分子量600~12,000、好ましくは800~4,000を有するポリウレタン化学からそれ自体公知の種類の、高分子量ポリエーテルポリオール及び/またはポリエステルポリオールであり、これらは少なくとも2個、通常2~8個、しかし好ましくは2~6個の一級及び/または二級ヒドロキシル基を有する。例えば、例として挙げた種類の低分子量ポリイソシアネートと、イソシアネート基に対して反応性がある基を有する、より好ましくない化合物(例えば、ポリチオエーテルポリオール、ヒドロキシル基含有ポリアセタール、ポリヒドロキシ-ポリカーボネート、ヒドロキシル基含有ポリエステル-アミド)またはヒドロキシル基を含有し、オレフィン系不飽和化合物のコポリマーから得られたNCOプレポリマーもまた当然用いることができる。
【0106】
イソシアネート基に対して反応性がある基、特にヒドロキシルを有し、NCOプレポリマーの調製に適している化合物は、例えば米国特許第4,218,543号に開示されている化合物である。NCOプレポリマーの調製において、イソシアネート基に対して反応性がある基を有するこれらの化合物は、NCO過剰を維持したまま、例として上述した種類の単純なポリイソシアネートと反応する。NCOプレポリマーは、一般に10~26、好ましくは15~26重量%のNCO含量を有する。すでに本発明の文脈中のことから明らかであるが、「NCOプレポリマー」または「末端イソシアネート基を有するプレポリマー」は、反応生成物そのもの及び過剰量の未反応出発ポリイソシアネートとの混合物の両方を意味すると理解されるべきであり、これらは多くの場合「セミプレポリマー」とも呼ばれる。
【0107】
>500mgのKOH/gのOH価を有する可能性のある脂肪族ジオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、プロパン-1,3-ジオールなど、ポリウレタン化学において従来使用されている鎖延長剤(chain lengthener)である。2-ブタン-1,4-ジオール、ブテン-1,3-ジオール、ブタン-2,3-ジオール及び/または2-メチルプロパン-1,3-ジオールなどのジオールが好ましい。脂肪族ジオールを互いに混合して使用することも当然可能である。
【0108】
好適なH-活性成分は、5~600mgのKOH/gの平均OH価及び2~6の平均官能価を有するポリオールである。10~50mgのKOH/gの平均OH価を有するポリオール類が好ましい。本発明に適するポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ジヒドロキシブタン、1,6-ジヒドロキシヘキサン、ジメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたはスクロースのような好適なスターター分子のアルコキシル化によって得ることができるポリヒドロキシポリエーテルである。アンモニアもしくはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、アニリンもしくはアミノアルコールのようなアミン、またはビスフェノールAのようなフェノールも同様にスターターとして機能することができる。アルコキシル化は、プロピレンオキシド及び/またはエチレンオキシドを任意の所望の順序でまたは混合物として使用して実施される。
【0109】
ポリオールに加えて、アミン及びアミノアルコール、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、イソホロンジアミン、N,N′-ジメチル(ジエチル)-エチレンジアミン、2-アミノ-2-メチル(またはエチル)-1-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル(エチル)-1,3-プロパンジオール、ならびにアルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ジヒドロキシブタン、1,6-ジヒドロキシヘキサン、ジメチロールプロパン、グリセロール及びペンタエリスリトール、及びソルビトール及びスクロース、またはこれらの化合物の混合物を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる架橋剤及び/または鎖延長剤が、さらに存在することができる。
【0110】
低分子量アルコールと、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの多官能性カルボン酸またはこれらの酸の無水物との反応によって、それ自体既知の方法で得ることができるようなポリエステルポリオールは、H-活性成分の粘度が高くなり過ぎない限りさらに好適である。エステル基を含有する好ましいポリオールは、ヒマシ油である。加えて、例えば、アルデヒド-ケトン樹脂などの樹脂を溶解することによって得ることができるようなヒマシ油と、ヒマシ油及び他の天然油をベースとするポリオールの変性物との配合物もまた適している。
【0111】
高分子量の重付加物または重縮合物またはポリマーが、微細分散形態、溶解形態またはグラフト化形態で存在する、より高い分子量のポリヒドロキシポリエーテルが同様に好適である。かかる変性ポリヒドロキシ化合物は、例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物においてin situで、重付加反応(例えばポリイソシアネート及びアミノ官能性化合物との反応)または重縮合反応(例えばホルムアルデヒドならびにフェノール及び/またはアミンとの間)を進行させる場合、それ自体既知の方法で得られる。しかしながら、既製の水性ポリマー分散体をポリヒドロキシ化合物と混合した後、混合物から水を除去することも可能である。
【0112】
例えば、ポリエーテルまたはポリカーボネートポリオールの存在下でスチレンとアクリロニトリルを重合することによって得られるような、ビニルポリマーによって変性されるポリヒドロキシル化合物はまた、ポリウレタンの調製に適している。独国特許第2442101号、独国特許第2844922号及び独国特許第2646141号にしたがって、ビニルホスホン酸エステル、及び場合により(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドまたはOH-官能性(メタ)アクリル酸エステルによるグラフト重合によって変性されたポリエーテルポリオールを用いる場合、特有の難燃性を有するプラスチックが得られる。
【0113】
H-活性化合物として使用される前述の化合物の代表例が、例えば、High Polymers, vol.XVI, “Polyurethanes Chemistry and Technology”, Saunders-Frisch (ed.) Interscience Publishers, New York, London, vol.1,32頁~42頁,44頁,54頁及びvol.II,1984,5頁~6頁及び198頁~199頁に記載されている。
【0114】
列挙されている化合物の混合物もまた使用可能である。
【0115】
H-活性成分の平均OH価及び平均官能価の限度は、特に、得られるポリウレタンの脆化の増大によりもたらされる。しかしながら、ポリウレタンのポリマー物性に影響を与える可能性が原則として当業者に知られているので、NCO成分、脂肪族ジオール及びポリオールを好ましい形で互いに調整することができる。
【0116】
ポリウレタン層(b)は、例えば塗料またはコーティングとして、発泡していても、固体であってもよい。
【0117】
例えば、離型剤、発泡剤、充填剤、触媒及び難燃剤などのそれ自体既知のすべての補助物質及び添加剤をそれらの製造に用いることができる。
【0118】
本文脈中、任意に使用される補助物質及び添加剤は、以下の通りである:
a)発泡剤としての水及び/または易揮発性無機または有機物質
b)触媒
c)乳化剤及び泡安定剤などの界面活性添加剤
d)反応遅延剤
e)添加剤。
【0119】
本発明にしたがって用いられる塗料には、1-C及び2-C塗料系、好ましくは水性塗料が含まれる。本発明の文脈における二成分塗料(2-C)は、本発明にかかる水性塗料に加えて、硬化剤も含有する。
【0120】
一実施形態によると、本発明にかかる水性塗料は、一成分塗料である。
【0121】
もう1つの実施形態では、少なくとも片面のコーティングは、水性二成分ポリウレタン塗料である。
【0122】
本発明にしたがって用いられる二成分ポリウレタン塗料は、一実施形態において好ましくは本質的に
(a)場合により有機溶媒または溶媒混合物の存在下で場合により親水化されるポリイソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性がある基を有し、水及び場合により有機溶媒または溶媒混合物の存在下で場合により親水化される化合物、
(c)場合により、さらなる添加剤及び補助物質、を含有し、
(a)+(b)の量が20~100重量部であり、(c)の量が0~80重量部である(但し、各成分(a)~(c)の重量部の合計が100である)ことを特徴とする。
【0123】
本発明の文脈における二成分系は、その反応性のために、成分(a)及び(b)を別々の容器に保存しなければならない、または保存すべきである塗料を意味すると理解される。2つの成分は、適用直前にのみ混合し、次いで一般的には、さらに活性化することなく反応する。
【0124】
(ポリ)イソシアネート成分(a)は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatically)及び/または芳香族的に結合した、遊離イソシアネート基を有し、室温で液状であるか、またはこの目的のために溶媒で希釈される任意の所望の有機ポリイソシアネートである。ポリイソシアネート成分(a)は、有利には23℃で10~15,000、好ましくは10~5,000mPasの粘度を有する。ポリイソシアネート成分(a)は、特に好ましくは、2.0~5.0の間の(平均)NCO官能価及び23℃で10~2,000mPasの粘度を有する、もっぱら脂肪族及び/または脂環式で結合するイソシアネート基を有するポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0125】
好ましくは、水性二成分ポリウレタン塗料から特に高レベルの塗装技術を得るために、遊離NCO基を有するポリイソシアネートを架橋剤として使用する。好適なかかる架橋剤樹脂としては、例えば、イソホロン-ジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレン-ジイソシアネート(HDI)、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メタン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、2,4-及び/または2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)ならびにω,ω′-ジイソシアナト-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)をベースとしたポリイソシアネートである。イソホロン-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メタン及びω,ω′-ジイソシアナト-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)をベースとしたポリイソシアネートが好ましい。
【0126】
前述のジイソシアネートは、場合によりそのまま使用することができるが、通常、ジイソシアネートの誘導体が使用される。好適な誘導体は、ビウレット、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、イミノオキサジアジンジオン、オキサジアジントリオン、カルボジイミド、アシル尿素及びアロファネート基を含有するポリイソシアネートである。
【0127】
好ましい誘導体は、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン及びウレトジオン構造を有するものである。イソホロン-ジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレン-ジイソシアネート(HDI)、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メタンからのこれらの構成要素を有する低モノマー塗料ポリイソシアネートが特に好ましい。
【0128】
例えば、TIN(トリイソシアナトノナン)などのトリイソシアネートもまた好適である。
【0129】
(ポリ)イソシアネート成分(a)は、場合により、親水的に変性してもよい。水溶性または水分散性ポリイソシアネートは、例えば、カルボキシレート基、スルホネート基及び/またはポリエチレンオキシド基及び/またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基による変性によって得ることができる。
【0130】
ポリイソシアネートの親水化は、例えば、不十分な量の一価の親水性ポリエーテルアルコールとの反応により行うことができる。かかる親水化ポリイソシアネートの調製は、例えば、欧州特許第0540985号、3頁、55行~4頁、5行に記載されている。アロファネート基を含有し、アロファネート化条件下で低モノマーポリイソシアネートとポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールとの反応によって調製される、欧州特許第0959087号3頁、39行~51行に記載されているポリイソシアネートもまた特に好適である。例えば独国特許第10024624号3頁、13行~33行または国際公開第01/88006号に記載されているような、イオン性基(スルホネート基、ホスホネート基)で親水性化したポリイソシアネートと同様に、独国特許第10007821号2頁、66行~3頁、5行に記載されている、トリイソシアナトノナンをベースとした水分散性ポリイソシアネート混合物もまた好適である。乳化剤の添加による外部親水性化も同様に可能である。
【0131】
使用されるポリイソシアネート成分(a)のNCO含量は、例えば、いわゆるポリエーテルアロファネート(ポリエーテルによる親水性化)の場合に、5~25重量%の範囲であってよい。スルホン酸基を用いる親水性化の場合、4~26重量%のNCO含量を得ることができる(このような数値は単なる例であると理解されるべきである)。
【0132】
使用されるイソシアネート成分は、例えば、存在するイソシアネート基の最大1/3まで、イソシアネートに対して反応性がある成分によって、部分的にブロックされてもよい。この場合、さらなる架橋をもたらすため、ブロックイソシアネート成分とさらなるポリオールとの反応が、後の工程で起こってもよい。
【0133】
これらのポリイソシアネートのための好適なブロッキング剤としては、例えば、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類などの一官能性アルコール、ε-カプロラクタム等のラクタム類、フェノール類、ジイソプロピルアミンまたはジブチルアミン、ジメチルピラゾールまたはトリアゾールなどのアミン類、及びマロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステルまたはマロン酸ジブチルエステルである。
【0134】
脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/または芳香族イソシアネート、特に好ましくは、脂肪族または脂環式イソシアネートをベースとする遊離イソシアネート基を有する低粘度、疎水性または親水性ポリイソシアネートを使用することが好ましく、このようにして、特に高レベルの特性の塗料膜を得ることができる。本発明のバインダー分散体の利点は、これらの架橋剤と組み合わせた場合に、最も明白に現れる。これらのポリイソシアネートは、通常、23℃において10~3,500mPasの粘度を有する。必要であれば、前述の範囲内の値まで粘度を下げるために、ポリイソシアネートを、少量の不活性溶媒と混合して使用することができる。架橋剤成分として、トリイソシアナトノナンも、単独または混合して使用することができる。
【0135】
原則として、当然、種々のポリイソシアネートの混合物を使用することも可能である。
【0136】
イソシアネートに対して反応性がある基を有する好適な化合物(b)は、例えば、ヒドロキシル基、スルホネート基及び/またはカルボキシレート基、好ましくはカルボキシレート基、及び場合によりスルホン酸基及び/またはカルボキシル基、好ましくは、カルボキシル基を含有するポリマー、オレフィン系不飽和モノマー(いわゆるポリアクリレートポリオール)のポリマー、ジオール及びジカルボン酸(いわゆるポリエステルポリオール)の組合せのポリマー、ジオール、ジカルボン酸及びジイソシアネート(いわゆるポリウレタンポリオール)の組合せのポリマー、及び/または前述のポリオール類のハイブリッド系のポリマー、例えばポリアクリレート-ポリエステルポリオール、ポリアクリレート-ポリウレタンポリオール、ポリエステル-ポリウレタンポリオールまたはポリエステル-ポリウレタンポリオールであり、好ましくは、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定することができる分子量Mn(数平均)500~50,000、特に1,000~10,000を有し、16.5~264、好ましくは33~165mgKOH/gの固形樹脂のヒドロキシル価、0~150、好ましくは0~100mgKOH/gの固形樹脂の酸価(非中和スルホン酸基及び/またはカルボキシル基をベースとした)、ならびに固体100g当たり、5~147、好ましくは24~278ミリ当量のスルホネート基及び/またはカルボキシル基の含量を有する。
【0137】
このようなアニオン性基は、特に好ましくは、カルボキシレート基である。種々のバインダーの概要が、例えば欧州特許第0959115号3頁、26行~54行で得られる。しかしながら、単純なジオール成分も用いることができる。水中に溶解または分散され、イソシアネートに対して反応性がある基を有するすべてのバインダーが、原則的には、バインダー成分(b)として好適である。これらには、例えば、水中に分散され、ウレタン基または尿素基中に存在する活性水素原子によってポリイソシアネートと架橋することができるポリウレタンまたはポリ尿素が含まれる。しかしながら、ポリオール、すなわち、遊離OH基を有する化合物が好ましい。バインダー成分(b)は、通常、10~60、好ましくは20~50重量%濃度の水溶液及び/または分散体の形で、コーティング組成物の調製に使用され、一般に10~105、好ましくは100~10,000mPa・s/23℃の粘度、及び5~10、好ましくは6~9のpH値を有する。場合により、補助溶媒を使用することができる。バインダー成分(b)の分子量及びアニオン性基または遊離酸基、特にカルボキシル基の含量に依存して、前記ポリマーを含有する水溶液系は、真の分散体、コロイド状分散体または分子状に分散した分散体であるが、一般的にはいわゆる「部分分散体」、すなわち、部分的な分子状分散体及び部分的なコロイド状分散体である水溶液系である。
【0138】
成分(a)からのイソシアネート基の、成分(b)からのイソシアネート反応性基、例えばヒドロキシル基に対する比(NCO-OH比)は、広い範囲にわたることができる。したがって、0.2:1.0~4.0:1.0の比率を塗装技術用途で使用することができる。0.35:1~2.0:1.0の範囲が好ましく、1.0:1.0~1.5:1.0が特に好ましい。
【0139】
1~10,000ppmの市販の触媒を、場合により、前記組成物に添加することができる。
【0140】
本発明の水性バインダー分散体の調製前、調製中または調製後に、さらに、少なくとも1つの架橋剤の添加によってコーティング組成物を調製する場合に、塗装技術の従来の補助物質及び添加剤(d)、例えば、消泡剤、増粘剤、顔料、分散助剤、(c)と異なるさらなる触媒、皮張り防止剤、沈降防止剤または乳化剤を添加してもよい。
【0141】
二成分ポリウレタン系は、水及び/または有機溶媒または溶媒としてのそれらの混合物を含有してもよい。
【0142】
試験方法
線熱膨張係数
【0143】
線熱膨張係数(CLTE)は、ISO引張試験片(ISO527-1に使用されるような)上で-30℃~30℃の温度範囲で、ISO1359-2にしたがって測定される。
【0144】
剛性/弾性率
【0145】
引張弾性率は、ISO527-1、-2にしたがって約23℃で測定される。
【0146】
曲げ弾性率
【0147】
曲げ弾性率は、ISO178にしたがって測定される。
【0148】
分子量
【0149】
重量平均分子量、数平均分子量及び多分散指数は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0150】
メルトフローレート
【0151】
特に指示しない限り、メルトフローレートはISO1133にしたがって測定され、g/10分の単位で表される。ポリカーボネートポリマーの場合、メルトフローレートは、約300℃の温度かつ約1.2kgの荷重で測定される。アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性物質(例えばABS熱可塑性物質)の場合、メルトフローレートは、約220℃の温度かつ約10.0kgの荷重で測定される。スチレン-アクリロニトリルコポリマーの場合、メルトフローレートは、約230℃の温度かつ約3.8kgの荷重で測定される。
【0152】
本明細書に列挙される任意の数値は、任意のより低い値と任意のより高い値との間に少なくとも2単位の間隔があるという条件で、1単位きざみで、より低い値からより高い値までの全ての値を含む。一例として、成分の量、または例えば温度、圧力、時間などのプロセス変数の値が、例えば1~90、好ましくは20~80、より好ましくは30~70と記載されている場合、15~85、22~68、43~51、30~32などの値が、本明細書において明示的に列挙されることが意図される。1未満の値の場合、1単位は、状況に応じて、0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。これらは、具体的に意図されているものの例にすぎず、列挙された下限と上限との間の数値のすべての可能性のある組合せが、類似の方法で、本出願に明示的に記載されているとみなされる。以上のように、本明細書において「重量部」として表される量の教示はまた、重量%と言う言葉で表される同じ範囲を企図する。したがって、発明を実施するための形態における、「得られるポリマーブレンド組成物の「x」重量部」と言う言葉の範囲の表現はまた、得られるポリマーブレンド組成物の重量%での「x」と同じ列挙された量の範囲を教示することも企図されている。
【0153】
特に指定のない限り、すべての範囲には、両方の端点、及び端点間のすべての番号が含まれる。範囲と関係して、「約」または「ほぼ」の使用は、その範囲の両端に当てはまる。したがって、「約20~30」は、少なくとも明記した端点を含み、「約20~約30」を網羅するよう意図される。
【0154】
特許出願及び公報を含むすべての論文及び参考文献の開示は、あらゆる目的のために参考として組み込まれる。組合せを説明するための、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、識別された要素、成分、構成要素またはステップ、ならびにその組合せの基本的特性及び新規の特性に実質的に影響を与えない、その他の要素、成分、構成要素またはステップを含むものとする。本明細書の要素、成分、構成要素、またはステップの組合せを説明するため、「含む(comprising)」または「含む(including)」と言う用語の使用は、その要素、成分、構成要素またはステップから本質的になる実施形態もまた企図する。
【0155】
複数の要素、成分、構成要素またはステップは、単独の一体化された要素、成分、構成要素またはステップによって提供することができる。あるいは、単独の一体化された要素、成分、構成要素またはステップを、別個の複数の要素、成分、構成要素またはステップに分割してもよい。要素、成分、構成要素またはステップを説明する、「1つの(a)」または「1つの(one)」の開示は、追加の要素、成分、構成要素またはステップを除外することを意図するものではない。
【0156】
上記の説明は例示であり、限定的ではないことを意図していることが理解される。上記の説明を読めば、提供された例以外にも多くの実施形態及び多くの用途が当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、代わりに添付の特許請求の範囲を参照して、かかる特許請求の範囲が権利を有するものと同等の全範囲とともに決定されるべきである。特許出願及び公報を含むすべての論文及び参考文献の開示は、あらゆる目的のために参考として組み込まれる。本明細書に開示されている主題の任意の態様の以下の特許請求の範囲における省略は、かかる主題の放棄ではなく、また本発明者らが、かかる主題を開示された発明の主題の一部であると考えていないとみなすべきでもない。
【0157】
材料
【0158】
ABS-Aは、約1.05g/cm3の密度(ISO1183にしたがって測定した場合)及び約13g/10分のメルトフローレート(220℃/10kgで、ISO1133にしたがって測定した場合)を有する、MAGNUM(登録商標)8434アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性物質(TRINSEOから市販されている)である。Magnum(登録商標)8434は、塊状ABSである。
【0159】
ABS-Bは、約1.05g/cm3の密度(ISO1183にしたがって測定した場合)及び約28g/10分のメルトフローレート(220℃/10kgで、ISO1133にしたがって測定した場合)を有する、MAGNUM(登録商標)8391アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性物質(TRINSEOから市販されている)である。Magnum(登録商標)8391は、塊状ABSである。曲げ弾性率は、約2480Mpaである(ASTM D790にしたがって測定した場合)。引張破断伸度は、約8.7%である(ASTM D638にしたがって測定した場合)。
【0160】
充填剤Aは、NYCO MINERALSから市販されているNYGLOS(登録商標)4W 10992ウォラストナイトである。充填剤Aは、約46.15重量%のCaO、約51.60重量%のSiO
2、約0.77重量%のFe
2O
3、約0.34重量%のAl
2O
3、約0.16重量%のMnO、約0.38重量%のMgO、約0.05重量%のTiO
2及び約0.05重量%のK
2Oを含むCaSiO
3の化学組成を有する。充填剤Aは、
図2に示すように、アスペクト比が約11:1の針状構造を有する。充填剤Aは、約4.5のモース硬度、約4.5μmの中央粒径(Cilas Granulometer)、約99.9%の-325米国メッシュスクリーン(A
lpine Jet Sieve)、ASTM E07にしたがって測定した場合、約92のG.E.輝度、ASTM C87にしたがって測定した場合、約0.2g/cm
3
のかさ密度(ルーズ)、ASTM C87にしたがって測定した場合、約0.35のかさ密度(タップ)、ASTM D281にしたがって測定した場合、約75ポンド/100ポンドの吸油量、そして約2.9の比重を有する。ウォラストナイトは、有機サイジングで被覆されている。
【0161】
PC-Aは、300℃/1.2kgで、ISO1133にしたがって測定した場合、約10g/10分のメルトフローレート(すなわちメルトマスフローレート)を有するビスフェノールAの直鎖状ポリカーボネートである。PC-Aは、約2300Mpaの引っ張り係数、降伏点で約60.0MPaの引っ張り強度、破断点で約71.0MPaの引っ張り強度、約6%の降伏点での引っ張り伸び、及び約150%の破断点での引っ張り破断伸びを有する(すべてISO527-2/50にしたがって測定された)。PC-Aは、ISO489にしたがって測定した場合、約1.586の屈折率を有し、約89.0%の光透過率及び約1.0%の曇り度を有する(両方ともASTM D1003にしたがって測定された)。PC-Aは、ISO178にしたがって測定した場合、約2400MPaの曲げ弾性率、23℃でISO179/e1Aにしたがって測定した場合、35kJ/m2のシャルピーノッチ付き衝撃強度、23℃でISO180/Aにしたがって測定した場合、90kJ/m2のノッチ付きアイゾット衝撃、及び23℃でISO180にしたがって測定した場合、「破壊無し」のノッチなしアイゾット衝撃を有する。PC-Aは、ASTM D696にしたがって測定した場合、-40℃~82℃で約6.8×10-5cm/cm/℃の線熱膨張係数を有する。PC-Aは、TRINSEOからCALIBRE(商標)300-10ポリカーボネート樹脂として市販されている。
【0162】
SAN-Aは、TRINSEOから市販されており、約24g/10分のメルトフローレート(230℃/3.8kgでISO1133にしたがって測定した場合)を有するSAN124スチレンアクリロニトリルコポリマーである。
【0163】
【実施例】
【0164】
比較例1は、表1に示されるように組成物を溶融ブレンドすることによって調製される。
【0165】
実施例2は、表1に示されるように組成物を溶融ブレンドすることによって調製される。
【0166】
次いで、各ポリマー組成物は、約3mmの厚さを有するプレートへと成形される。
【表1】
【0167】
比較例1A、1B及び1Cは、比較例1の3mm厚のプレートを150mm×150mm×3mmの試験片へと切断することによって作製された多層複合材料試料である。試験片を121477水性プライマーのプライマー層で被覆する。121477水性プライマーはポリウレタンの分散体であり、Karl Worwag Lack- und Farbenfabrik GmbH & Co.KGから市販されている。プライマー層は、約15分間、約80℃で乾燥する。プライマー層の目標厚さは8~15μmである。実際の厚さは、約9~15μmである。次いで、前記プライマー層を水性ベースコート層で被覆し、約10分間、約80℃で乾燥する。比較例1Aでは、ベースコートは、約8~11μmの目標厚さ及び約9μmの実際の厚さを有する、BASFから市販されているU668ポリウレタンベースコート(黒色)である。比較例1Bでは、ベースコートは、約10~12μmの目標厚さ及び約8~13μmの実際の厚さを有する、B&K WA83ポリウレタンベースコート(グレイシャーシルバー色)である。比較例1Cでは、ベースコートは、約22~27μmの目標厚さ及び約18~24μmの実際の厚さを有する、BASFから市販されているU300ベースコート(アルピンホワイト色)である。次いで、前記ベースコートを、Karl Worwag Lack- und Farbenfabrik GmbH & Co.KGから市販されている2成分ポリウレタン118173クリアコートの層で被覆する。前記クリアコート層は、約80℃で約30分間乾燥し、約25~35μmの目標厚さ及び約28~40μmの実際の厚さを有する。前記層の厚さは、DIN EN ISO 2808にしたがって測定した。
【0168】
前記多層複合材料は、以下の方法にしたがって試験する:(1)クロスハッチ試験(DIN EN ISO 2409);(2)マルチインパクト耐ストーンチップ試験(DIN EN ISO 20567-1);(3)凝縮水一定雰囲気試験(DIN EN ISO 6270-2CH);及び(4)トリム部品の気候試験(BMW法TP303.5、2010年1月付け)。これらの試験の結果を表2に示す。
【0169】
実施例2A、2B及び2Cは、比較例1の基材を実施例2の基材で置き換えたことを除いて、それぞれ比較例1A、1B及び1Cについて上述したように作製される。実施例2A、2B及び2Cの試験結果を表3に示す。実施例2A、2B及び2Cは、トリム部品の気候試験にしたがって試験した場合に性能が向上している(TP 303.5)。
【表2】
【表3】
(態様)
(態様1)
i)ポリカーボネートポリマーと、
衝撃改質剤を含むゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む強化成分と、
ウォラストナイトを含む充填剤と
を含むブレンドであるポリマー組成物を含む緻密基材層と、
ii)前記ポリマー組成物中のポリエステルの量が、約0または約5重量%未満である、
前記緻密基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層と、
を含む多層物品。
(態様2)
i)ポリカーボネートポリマーと、
衝撃改質剤を含むゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む強化成分と、
ウォラストナイトを含む充填剤と、
を含むブレンドであるポリマー組成物を含む基材層と、
ii)前記ポリマー組成物中のポリエステルの量が、約0または約5重量%未満であり、
無水マレイン酸、マレイン酸、または前記基材層中のコポリマーにカルボキシル基を提供する他のモノマーを含む任意のスチレンコポリマーの量が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として約0.9重量%以下である、
前記基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層と、
を含む多層物品。
(態様3)
前記ポリカーボネートが、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、約20重量%~約70重量%(好ましくは約20~約60重量%、より好ましくは約30~約59重量%、そして最も好ましくは約35~約55重量%)の量で存在する、態様1または2に記載の多層物品。
(態様4)
i)55重量%以下のポリカーボネートポリマーと、
衝撃改質剤を含むゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質を含む強化成分と、
ウォラストナイトを含む充填剤と、
を含むブレンドであるポリマー組成物を含む基材層と、
ii)前記ポリマー組成物中のポリエステルの量が約0または約5重量%未満である、
前記基材層に直接結合したポリウレタンのカバー層と、
を含む多層物品。
(態様5)
前記ゴム変性モノビニリデン芳香族熱可塑性物質が、スチレン含有コポリマーを含む、態様1から4のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様6)
前記スチレン含有コポリマーが、アクリロニトリル及びスチレン(好ましくはこれらから本質的になる、または完全にこれらからなる)を含むランダムコポリマーである、態様5に記載の多層物品。
(態様7)
前記衝撃改質剤が、ポリブタジエンゴムである、態様6に記載の多層物品。
(態様8)
前記強化成分が、ポリブタジエンゴム及びスチレン含有コポリマーを含む塊状ABSであり、前記塊状ABSが、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、約12重量%~約70重量%の量で存在する、態様7に記載の多層物品。
(態様9)
前記ウォラストナイトが、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量%~約35重量%(好ましくは約8~約23重量%、そして最も好ましくは約11重量%~約19重量%)の量で存在する、態様1~8のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様10)
前記ポリカーボネートの濃度対前記強化成分の濃度の比が、約70:30以下(好ましくは約68:32以下、より好ましくは約65:35以下、さらにより好ましくは約60:40以下、さらにより好ましくは約55:45以下、そして最も好ましくは約50:50以下)及び/または約20:80以上(好ましくは約30:70以上、そしてより好ましくは約35:65以上)である(例えば、約20:80~70:30、約30:70~68:32、または約35:65~65:35の範囲)、態様9までのいずれか一項に記載の多層物品。
(態様11)
前記基材層が、約0.5mm~約10mmの厚さを有する、及び/または前記カバー層が、約0.01mm~約1.5mmの厚さを有する(1つの好ましい態様において、約0.01mm~約0.20mm;別の好ましい態様において、約0.5mm~約1.5mm)、態様1~10のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様12)
前記ポリウレタンが、前記基材層の表面上に直接適用されたポリウレタン塗料を含む(例えば、前記ポリウレタン塗料が前記基材層と接触するように前記基材層の上に直接)、態様1~11のいずれか一項に記載の物品の多層物品。
(態様13)
前記多層物品が、自動車の内装トリム部品または自動車の外装トリム部品である、態様1~12のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様14)
前記基材層と前記支持層との間の接着が、自動車の内部加速寿命劣化試験を通じて維持されるか、前記基材層と前記支持層との間の接着が、自動車の外部加速寿命劣化試験を通じて維持される(例:BMW GS 94007などの気候劣化試験)、態様13に記載の多層物品。
(態様15)
前記強化成分が、約1μm以下(例えば、約0.01μm~約1.00μm)の平均サイズを有するポリブタジエンゴム粒子を含む塊状ABSを含む、態様1~14のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様16)
前記ポリカーボネートポリマーが、約20000原子質量単位以上(好ましくは約22,000原子質量単位以上)の重量平均分子量(すなわちMw)を特徴とする、態様1~15のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様17)
前記ウォラストナイトが、有機サイジングを含む、態様1~16のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様18)
前記基材層が、顔料または他の着色剤で着色されており、かつ前記カバー層が実質的にクリア及び/または実質的に透明であり、かつ前記基材層が、酸化防止剤、加工助剤、光安定剤、熱安定剤、モールド離型剤及び流動調整剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む、
態様1~16のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様19)
前記ポリマー組成物が、約0.2~約7重量%の1種以上のエチレンコポリマーを含み、前記エチレンコポリマーが官能化モノマーを含む、態様1~18のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様20)
前記緻密基材層中のウォラストナイト、強化成分(好ましくは、塊状ABS及び任意の
追加のスチレン-アクリロニトリルコポリマー)及びポリカーボネートの総量が、前記緻密基材層の総重量を基準として、約95重量%以上である、態様1~19のいずれか一項に記載の多層物品。
(態様21)
前記強化成分がアクリロニトリル-スチレンコポリマーを含み、前記組成物が約3~約15重量%の衝撃改質剤を含み、前記衝撃改質剤がコアシェル型ポリマーであって、前記コアシェル型ポリマー及び前記アクリロニトリル-スチレンコポリマーの総重量に基づいている、態様1~20のいずれか一項に記載の多層物品。