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特許7245155酸性αグルコシダーゼ変異体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】酸性αグルコシダーゼ変異体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/56 20060101AFI20230315BHJP
   C12N 9/26 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230315BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20230315BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20230315BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20230315BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230315BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C12N15/56 ZNA
C12N9/26 Z
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61P3/08
A61P21/00
A61K38/47
A61K31/7088
A61K35/34
A61K35/407
A61K35/76
A61K48/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019513378
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017072944
(87)【国際公開番号】W WO2018046774
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】16306150.0
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16306187.2
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】503119487
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デヴリ・ヴァル・デソンヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ミンゴッツィ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ロンジッティ,ジュゼッペ
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-521818(JP,A)
【文献】特表2006-517404(JP,A)
【文献】特表2013-539974(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0027352(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0316366(US,A1)
【文献】国際公開第2015/126729(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/024183(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0037165(US,A1)
【文献】国際公開第2015/192092(WO,A1)
【文献】特表2013-505735(JP,A)
【文献】Baodong Sun et al.,"Enhanced Efficacy of an AAV Vector Encoding Chimeric, Highly Secreted Acid α-Glucosidase in Glycogen Storage Disease TypeII",Molecular Therapy,2006年,Vol.14, No.6,pp.822-830
【文献】Jae-Wan Jung et al.,"Production and characterization of recombinant human acid α-glucosidase in transgenic rice cell suspension culture",Journal of Biotechnology,2016年04月02日,Vol.226,pp.44-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現カセットを含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、発現カセットは、切断短縮された酸性αグルコシダーゼ(GAA)ポリペプチドをコードする核酸分子を含み、該切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端から6~46個の連続したアミノ酸の欠失を含み、ここでの該親ポリペプチドは、そのシグナルペプチドを欠いたGAAポリペプチドの前駆体型に相当し、
ここでの該切断短縮されたGAAポリペプチドはさらに、そのN末端に融合したシグナルペプチドを含み、該シグナルペプチドは、配列番号3、6及び7からなる群より選択される、組換えAAVベクター。
【請求項2】
切断短縮されたGAAポリペプチドが、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において6、7、8、9、10、40、41、42、43、44、45又は46個の連続アミノ酸を欠失している、請求項1記載の組換えAAVベクター。
【請求項3】
切断短縮されたGAAポリペプチドが、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において8、42又は43個の連続アミノ酸の切断短縮を有する、請求項2記載の組換えAAVベクター。
【請求項4】
切断短縮されたGAAポリペプチドが、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において8又は42個の連続アミノ酸の切断短縮を有する、請求項3記載の組換えAAVベクター。
【請求項5】
親ポリペプチドが、ヒトGAA(hGAA)、特に配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するhGAA、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するhGAAの機能的変異体である、請求項1~4のいずれか一項記載の組換えAAVベクター。
【請求項6】
切断短縮されたGAAポリペプチドが、配列番号27、配列番号28、配列番号34、又は配列番号35に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1~5のいずれか一項記載の組換えAAVベクター。
【請求項7】
融合したシグナルペプチドが、配列番号3のシグナルペプチドである、請求項1~6のいずれか一項記載の組換えAAVベクター。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項記載の組換えAAVベクターであって、切断短縮されたGAAポリペプチドをコードしている核酸分子が、インビボにおいて切断短縮されたGAAポリペプチドの発現を改善するために及び/又は切断短縮されたGAAポリペプチドに対する免疫寛容を改善するために最適化され、核酸分子は、配列番号12、配列番号13、配列番号48、配列番号49、配列番号50、又は配列番号51に示される核酸配列を含む、組換えAAVベクター。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載の組換えAAVベクターであって、核酸分子が、プロモーターに作動可能に連結されている、組換えAAVベクター。
【請求項10】
プロモーターが、肝特異的プロモーターである、請求項9記載の組換えAAVベクター。
【請求項11】
肝特異的プロモーターが、α-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターからなる群より選択される、請求項10記載の組換えAAVベクター。
【請求項12】
発現カセットが、さらにイントロンを含む、請求項9~11のいずれか一項記載の組換えAAVベクター。
【請求項13】
イントロンが、ヒトβグロビンb2(HBB2)イントロン、FIXイントロン、ニワトリβグロビンイントロン、及びSV40イントロンからなる群より選択され、イントロンが、場合により配列番号17の改変されたHBB2イントロン、配列番号19の改変されたFIXイントロン、又は配列番号21の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンである、請求項12記載の組換えAAVベクター。
【請求項14】
発現カセットが、エンハンサー、イントロン、肝特異的プロモーター、切断短縮されたGAAポリペプチドをコードする核酸分子、及びポリアデニル化シグナルをこの順に含む、請求項9~13のいずれか一項記載の組換えAAVベクター。
【請求項15】
発現カセットが、ApoE制御領域、HBB2イントロン、hAATプロモーター、切断短縮されたGAAポリペプチドをコードする核酸分子、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルをこの順に含む、請求項14記載の組換えAAVベクター。
【請求項16】
発現カセットが、配列番号22~26のいずれか一項記載のヌクレオチド配列を含む、請求項15記載の組換えAAVベクター。
【請求項17】
組換えAAVベクターが、一本鎖又は二本鎖の自己相補性AAVベクター、好ましくはAAVに由来するキャプシド、例えばAAV1、AAV2、変異AAV2、AAV3、変異AAV3、AAV3B、変異AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、変異AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、例えばAAVcy10、及びAAVrh10、AAVrh74、AAVdj、AAV-Anc80、AAV-LK03、AAV2i8、及びブタAAV、例えばAAVpo4及びAAVpo6キャプシドを有するAAVベクター、又はキメラキャプシドを有するAAVベクターである、請求項1~16のいずれか一項記載の組換えAAVベクター。
【請求項18】
組換えAAVベクターが、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを有する、請求項1~17のいずれか一項記載の組換えAAVベクター。
【請求項19】
切断短縮されたGAAポリペプチドをコードする核酸分子が、配列番号8に示されるヌクレオチド82~2859に対して約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるか、又は配列番号1又は配列番号33をコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも80%又は少なくとも82%の配列同一性を有するか、又は配列番号10又は配列番号11に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一である、請求項1~18のいずれか一項記載の組換えAAVベクター。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項記載の組換えAAVベクターであって、発現カセット及び改変されたキャプシドを含み、発現カセットは、配列番号27のアミノ酸配列を含む切断短縮された酸性α-グルコシダーゼ(GAA)ポリペプチドをコードする核酸分子を含み、切断短縮されたGAAポリペプチドは、さらにそのN末端に融合したシグナルペプチドを含み、シグナルペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を有し、そして改変されたキャプシドは、AAVrh74に由来する、又はRHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4及びRHM15-6からなる群より選択される少なくとも1つの変異VPキャプシドタンパク質を含む、組換えAAVベクター。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項記載の組換えAAVベクターを用いて形質転換された細胞であって、該細胞が、特に肝細胞又は筋肉細胞である、細胞。
【請求項22】
薬学的に許容される担体に、請求項1~20のいずれか一項記載の組換えAAVベクター、又は請求項21記載の細胞を含む、医薬組成物。
【請求項23】
医薬品としての使用のための、請求項1~20のいずれか一項記載の組換えAAVベクター、請求項21記載の細胞、又は請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
GAA欠損症、糖原病、例えば糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型、又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型を処置するための方法に使用するための、請求項1~20のいずれか一項記載の組換えAAVベクター、請求項21記載の細胞、又は請求項22記載の医薬組成物
【請求項25】
切断短縮型のGAAポリペプチドによる免疫原性を低減させつつ、糖原病を処置するための、請求項1~20のいずれか一項記載の組換えAAVベクター、請求項21記載の細胞、又は請求項22記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性αグルコシダーゼ変異体及びその使用に関する。
【0002】
糖原病(GSD)II型及び酸性マルターゼ欠損症としても知られるポンペ病は、リソソーム酵素の酸性αグルコシダーゼ(GAA)の欠損症によって引き起こされる常染色体劣性代謝性筋疾患である。GAAは、リソソーム内でグリコーゲンをグルコースに加水分解するエキソ-1,4及び1,6-α-グルコシダーゼである。GAAの欠損によりリソソーム内にグリコーゲンが蓄積され、呼吸筋、心筋及び骨格筋への進行的な傷害が引き起こされる。該疾患は、通常は1~2歳までに致命的となる急速に進行する乳児型の経過から、小児及び成人におけるかなりの罹患率及び早期死亡率を引き起こすことにより緩徐に進行する異質な経過まで多岐にわたる。Hirschhorn RR, The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 3: 3389-3420 (2001, McGraw-Hill); Van der Ploeg and Reuser, Lancet 372: 1342-1351 (2008)。
【0003】
ポンペ病を処置するためのヒトにおける現在の治療法は、別名酵素補充療法(ERT)と呼ばれる組換えヒトGAAの投与を含む。ERTは、重度の乳児型糖原病II型に対して有効性を実証した。しかしながら、酵素療法の利点は、頻繁な注入の必要性及び組換えhGAAに対する阻害抗体の発生によって制限される(Amalfitano, A., et al. (2001) Genet. In Med. 3:132-138)。さらに、ERTは全身を効果的に修復しない。これはおそらく、末梢静脈から送達後のタンパク質の不十分な体内分布、いくつかの組織からの取り込みがなされないこと、及び高い免疫原性の組合せのためである。
【0004】
ERTの代わりの又は補助としての、糖原病II型を処置するための遺伝子療法アプローチの実現可能性が研究されている(Amalfitano, A., et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:8861-8866, Ding, E., et al. (2002) Mol. Ther. 5:436-446, Fraites, T. J., et al. (2002) Mol. Ther. 5:571-578, Tsujino, S., et al. (1998) Hum. Gene Ther. 9:1609-1616)。しかしながら、遺伝子異常を修復するための筋肉に指向された遺伝子導入は、疾患が全身性であることの限界、及び、導入遺伝子の筋肉における発現が他の組織と比べてより免疫原性が高くなる傾向があるという事実に直面しなければならない。
【0005】
Doerfler et al., 2016は、ヒトコドン最適化GAAをコードしている2つの構築物(一方は、肝特異的プロモーターの制御下にあり、他方は筋肉特異的プロモーターの制御下にある)の組合せ投与を記載している。肝臓特異的プロモーターにより駆動されるGAAの発現が、Gaa-/-マウスモデルにおいてGAAに対する免疫寛容を促進するために使用され、一方、筋肉特異的プロモーターにより駆動されるGAAの発現が、療法のために標的化された組織の部分における治療用タンパク質の発現を提供する。しかしながら、この戦略は、複数の構築物の使用を必要とし、これによりGAAが全身に発現されるわけではないという点で、完全に満足のいくものではない。
【0006】
リソソーム蓄積症の処置を改善するために、過去に、改変されたGAAタンパク質が提案されている。特に、国際公開公報第2004064750号の出願及びSun et al. 2006は、分泌経路へのタンパク質の標的化を増強するための方法として、GAAに作動可能に連結させたシグナルペプチドを含む、キメラGAAポリペプチドを開示している。
【0007】
しかしながら、患者に利用可能な治療法は完全には満足のいくものでなく、改善されたGAAポリペプチド及びGAAの生成は依然として当技術分野において必要である。特に、GAAによる長期の処置効力、高いレベルのGAA生成、生成されたGAAポリペプチドに対する改善された免疫寛容、並びにそれを必要とする細胞及び組織によるGAAの取り込みの改善の必要性が依然としてある。さらに、国際公開公報第2004064750号及びSun et al. 2006において、そこに開示されたキメラGAAポリペプチドの組織分布は完全には満足のいくものでない。それ故、関心対象の全ての組織ではなくても大半の組織におけるグリコーゲン蓄積の修復を可能とすることによって、完全に治療するであろうGAAポリペプチドが依然として必要である。
【0008】
発明の要約
本発明は、野生型GAAタンパク質と比較して高いレベルで発現及び分泌され、全身におけるグリコーゲンの病的蓄積の改善された修復を惹起し、これによりGAAに対する免疫寛容を誘導する、GAA変異体に関する。
【0009】
1つの態様によると、本発明は、親GAAポリペプチドのN末端からの少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む、切断短縮されたGAAポリペプチドに関し、ここでの親ポリペプチドは、そのシグナルペプチドの欠けた前駆体型のGAAポリペプチドに相当する。特定の実施態様では、該切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において少なくとも2、特に少なくとも2、特に少なくとも3、特に少なくとも4、特に少なくとも5、特に少なくとも6、特に少なくとも7、特に少なくとも8連続アミノ酸が欠失している。別の実施態様では、該切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において最大75、特に最大70、特に最大60、特に最大55、特に最大50、特に最大47、特に最大46、特に最大45、特に最大44、特に最大43連続アミノ酸を欠失している。さらなる特定の実施態様では、該切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において最大47、特に最大46、特に最大45、特に最大44、特に最大43連続アミノ酸を欠失している。別の特定の実施態様では、該切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において1~75、特に1~47、特に1~46、特に1~45、特に1~44、特に1~43連続アミノ酸を欠失している。別の実施態様では、該切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において2~43、特に3~43、特に4~43、特に5~43、特に6~43、特に7~43、特に8~43連続アミノ酸を欠失している。より特定した実施態様では、該切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において6、7、8、9、10、27、28、29、30、31、40、41、42、43、44、45、46、又は47連続アミノ酸を欠失し、特に親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において7、8、9、28、29、30、41、42、43、又は44、より特定すると8、29、42、又は43連続アミノ酸が切断短縮されている。さらなる特定の実施態様では、親ポリペプチドは、ヒトGAA(hGAA)、特に配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するhGAAである。
【0010】
特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、配列番号27、配列番号28、配列番号34、及び配列番号35に示される配列を有する。
【0011】
さらに、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドはさらに、そのN末端に融合したシグナルペプチド、特に配列番号3~7からなる群より選択されたシグナルペプチド、特に配列番号3のシグナルペプチドを含み得る。
【0012】
別の態様では、本発明は、そのN末端を介してシグナルペプチドに場合により融合した、上記のような切断短縮されたGAAポリペプチドをコードしている核酸分子に関する。いくつかの実施態様では、核酸分子は、インビボにおいて、特にヒト被験者において、切断短縮されたGAAポリペプチドの発現を改善するために及び/又は切断短縮されたGAAポリペプチドに対する免疫寛容を改善するために最適化されたヌクレオチド配列に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、プロモーター、イントロン、ポリアデニル化シグナル及び/又はエンハンサー(例えばシス調節モジュール、すなわちCRM)などの1つ以上の調節配列に作動可能に連結させた本発明の核酸分子を含む、核酸構築物に関する。特定の実施態様では、該プロモーターは、好ましくはα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターからなる群より選択された肝特異的プロモーターである。別の特定の実施態様では、該プロモーターは筋肉特異的プロモーター、例えばSpc5-12、MCK及びデスミンプロモーターである。別の実施態様では、該プロモーターは、偏在性プロモーター、例えばCMV、CAG及びPGKプロモーターである。該核酸構築物はさらに場合により、イントロン、特にヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、FIXイントロン、ニワトリβ-グロビンイントロン、及びSV40イントロンからなる群より選択されたイントロンを含み得、ここでの該イントロンは、場合により改変されたイントロン、例えば配列番号17の改変されたHBB2イントロン、配列番号19の改変されたFIXイントロン、又は配列番号21の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンである。本発明の核酸構築物の特定の実施態様では、該構築物は、エンハンサー;イントロン;プロモーター、特に肝特異的プロモーター;GAAタンパク質をコードしている核酸配列;及びポリアデニル化シグナルを好ましくはこの順序で含み、該構築物は、ApoE制御領域;HBB2イントロン、特に改変されたHBB2イントロン;hAATプロモーター;切断短縮されたGAAポリペプチドをコードしている核酸配列;及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを好ましくはこの順序で含む。具体的な実施態様では、該核酸構築物はより特定すると、配列番号22~26のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示されている核酸分子又は核酸構築物を含むベクターに関する。本発明のベクターは、特にウイルスベクター、好ましくはレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、又はAAVベクターであり得る。好ましくは、該ベクターは、一本鎖又は二本鎖の自己相補性AAVベクター、好ましくはAAVに由来するキャプシド、例えばAAV1、AAV2、変異AAV2、AAV3、変異AAV3、AAV3B、変異AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、変異AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、例えばAAVcy10、及びAAVrh10、AAVrh74、AAVdj、AAV-Anc80、AAV-LK03、AAV2i8、及びブタAAVキャプシド、例えばAAVpo4及びAAVpo6キャプシドを有するAAVベクター、又はキメラキャプシドを有するAAVベクターである。具体的な実施態様では、該ベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを有するAAVベクターである。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子、核酸構築物、又はベクターを用いて形質転換された細胞を提供する。より特定すると該細胞は肝細胞又は筋肉細胞である。
【0016】
特定の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体に、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチド、核酸分子、核酸構築物、ベクター、又は細胞を含む、医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明はさらに、医薬品としての使用のための、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチド、核酸分子、核酸構築物、ベクター、又は細胞に関する。
【0018】
本発明はさらに、糖原病を処置するための方法に使用するための、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチド、核酸分子、核酸構築物、ベクター、又は細胞を提供する。特定の実施態様では、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型、糖原病III型、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、又は心臓の致死性先天性糖原病である。より特定の実施態様では、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型、及び糖原病III型からなる群より選択され、より特定すると糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択される。さらにより特定の実施態様では、糖原病は糖原病II型である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】hGAAの一部の欠失は、インビトロにおけるその分泌を増加させる。パネルA。ヒト肝癌細胞(Huh7)を、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現している対照プラスミド、又は野生型hGAA(hGAA)若しくは2つの明確に異なるアルゴリズムに従って最適化されたhGAA配列(それぞれhGAAco1及びco2)を発現しているプラスミドを用いてリポフェクタミン(商標)を使用してトランスフェクトした。異なるhGAA構築物は、野生型シグナルペプチド又はヒトα-1-アンチトリプシンシグナルペプチド(sp2)を含有していた。切断短縮されたhGAAは、シグナルペプチドの後の8アミノ酸の欠失(Δ8)によって得られた。トランスフェクションから48時間後、培養培地中のhGAA活性を、蛍光発生酵素アッセイによって測定し、材料及び方法に示されているような反応生成物の標準曲線に対してGAA活性を評価した。ヒストグラムプロットは、3回の異なる実験から導かれた分泌されたhGAAのレベルの平均値±標準誤差を示す。統計分析は対応のあるt検定によって実施され、ヒストグラムには得られたp値が報告されている(示されているように=p<0.05)。パネルB。ヒト肝癌細胞(Huh7)を、GFPを発現している対照プラスミド、又は野生型シグナルペプチド若しくはキモトリプシノーゲンB1シグナルペプチド(sp7)を有するhGAAco1を発現しているプラスミドを用いてリポフェクタミンを使用してトランスフェクトした。hGAAタンパク質は、シグナルペプチドの後の8又は42アミノ酸を除去することによって切断短縮されている(それぞれΔ8及びΔ42)。トランスフェクションから48時間後、培養培地中のhGAA活性を、上記に示されているように蛍光発生酵素アッセイによって測定した。ヒストグラムプロットは、3回の異なる実験から導かれた分泌されたhGAAのレベルの平均値±標準誤差を示す。統計分析は分散分析によって実施された(示されているように=p<0.05)。
図2】hGAAの一部の欠失は、ポンペ病マウスモデルの血流中へのその分泌を増加させる。3か月齢のGAA-/-マウス(1群あたりn=4~5匹のマウス)に、PBS、又は肝特異的プロモーターの転写制御下にある配列の最適化されたhGAA(hGAAco1)を発現している2×1012vg/kgのAAV8ベクターを静脈内注射した。hGAAの野生型シグナルペプチドは、キモトリプシノーゲンB1シグナルペプチド(sp7)を用いて置換され、hGAA配列は、完全長天然配列として、又はシグナルペプチドの後の8若しくは42アミノ酸を除去することによって切断短縮された配列(それぞれΔ8及びΔ42)として使用された。注射から1カ月後、マウスから採血し、血清中のhGAA活性を、蛍光発生アッセイを使用して測定した。統計分析は分散分析によって実施された(示されているように=p<0.05)。
図3】シグナルペプチドは、hGAAの分泌を増強させる。ヒト肝癌細胞(Huh7)を、対照プラスミド(GFP)、野生型hGAAを発現しているプラスミド(sp1として記載)、又はシグナルペプチド6~8(sp6~8)に融合させた配列の最適化されたΔ8hGAA(hGAAco)を発現しているプラスミドを用いてリポフェクタミン(商標)によってトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、培養培地中のhGAAの活性を、蛍光発生酵素アッセイによって測定し、4-メチルウンベリフェロンの標準曲線に対してGAA活性を評価した。ヒストグラムプロットは、3回の異なる実験から導かれた分泌されたhGAAのレベルの平均値±標準誤差を示す。統計分析は分散分析によって実施された(=偽トランスフェクト細胞に対してp<0.05)。
図4】切断短縮されたΔ8hGAAは、ポンペ病マウスモデルにおけるグリコーゲン蓄積を効果的に修復する。4か月齢の野生型マウス(WT)及びGAA-/-マウス(1群あたりn=4~5匹のマウス)に、PBS、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にありシグナルペプチド1、2、7及び8(sp1、2、7、8)と融合させた配列の最適化されたΔ8hGAA(hGAAco)を発現している6×1011vg/kgのAAV8ベクターを静脈内注射した。パネルA。ヒストグラムは、ベクターの注射から3カ月後に血中において蛍光発生アッセイによって測定されたhGAA活性を示す。統計分析は分散分析によって実施され、ヒストグラムには、PBSで処置されたGAA-/-動物に対して得られたp値が報告されている(=p<0.05)。パネルB~D。心臓、横隔膜、及び四頭筋におけるグリコーゲン含量の生化学的修復。4か月齢のGAA-/-マウスを上記のように処置した。注射から3カ月後、マウスを屠殺し、グリコーゲン含量を評価した。ヒストグラムは、心臓(パネルB)、横隔膜(パネルC)及び四頭筋(パネルD)において測定されたグリコーゲンの酵素消化後に放出されたグルコースとして表現されるグリコーゲン含量を示す。統計分析は分散分析によって実施された(=PBSの注射されたGAA-/-マウスに対してp<0.05)。
図5】高度に分泌されるhGAAは、ポンペ病マウスモデルにおける体液性応答を低減させる。4か月齢のGAA-/-マウスに、PBS、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にあり、Δ8hGAAをコードし、シグナルペプチド1(co)、シグナルペプチド2(sp2-Δ8-co)、シグナルペプチド7(sp7-Δ8-co)又はシグナルペプチド8(sp8-Δ8-co)に融合させた、最適化された配列を含む、2つの異なる用量(5×1011又は2×1012vg/kg)のAAV8ベクターを静脈内注射した。注射から1カ月後、血清を、ELISAによって抗hGAA抗体の存在について分析した。定量は、標準物質として精製されたマウスIgGを使用して実施された。統計分析はダネット事後検定と分散分析によって実施された(=p<0.01)。
図6】AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1の注射により、非ヒト霊長類において血中へのhGAAの効果的な分泌、及び筋肉への取り込みがなされる。2匹のカニクイザルに0日目に、2×1012vg/kgのAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1を注射した。パネルA。ベクターの投与の12日前及び30日後に得られた2匹のサルに由来する血清に対して実施されたhGAAのウェスタンブロット。左には試料と平行して泳動させた分子量マーカーのバンド位置が示されている。パネルB。ベクターの注射から3カ月後、サルを屠殺し、hGAA取り込みの生化学的評価のために組織を収集した。hGAAのウェスタンブロットを、二頭筋及び横隔膜から得られた組織抽出物に対して実施した。抗チューブリン抗体を、ローディング対照として使用した。左には、試料と平行して泳動させた分子量マーカーのバンド位置が示されている。
図7】hGAAを発現しているベクターを注射されたGDE-/-動物の肝臓におけるグリコーゲン含量の生化学的修復。3か月齢の野生型マウス(WT)又はGDE-/-マウスに、PBS、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にあり、シグナルペプチド7に融合させたコドンの最適化されたhGAAを発現しているAAV8ベクター(AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1)を1×1011又は1×1012vg/マウスの用量で静脈内注射した。ヒストグラムプロットは、肝臓において測定されたグリコーゲンの酵素消化後に放出されたグルコースとして表現されるグリコーゲン含量を示す。統計分析は分散分析によって実施された(=PBSの注射されたGDE-/-マウスに対してp<0.05、§=PBSの注射されたWT動物に対してp<0.05)。
図8】様々なGAA変異体をコードしているプラスミドを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中のGAA活性。天然GAAsp1シグナルペプチドと組み合わせた天然GAA(co)をコードしているか、又は異種sp7シグナルペプチドと組み合わせた天然GAAを含む工学操作されたGAA(sp7-co)をコードしている最適化された配列を含む、プラスミドのトランスフェクションから24時間後(パネルA)及び48時間後(パネルB)のHuH7細胞の培地中のGAA活性を測定した。sp7シグナルペプチドの後のGAAコード配列における様々な欠失の効果を評価した(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co、sp7-Δ47-co、sp7-Δ62-co)。eGFPをコードしているプラスミドを陰性対照として使用した。統計分析は、チューキー事後検定と一元配置分散分析によって実施された。棒グラフにおけるハッシュ印(#)は、coに対する統計学的有意差を示し;タウ記号(τ)はsp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-coに対する統計学的有意差を示す。データは、2回の独立した実験の平均値±標準偏差である。異なる記号が使用される場合を除いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図9】様々なGAA変異体の細胞内GAA活性。天然GAAsp1シグナルペプチドと組み合わせた天然GAA(co)をコードしているか、又は異種sp7シグナルペプチドと組み合わせた天然GAAを含む工学操作されたGAA(sp7-co)をコードしている最適化された配列を含む、プラスミドのトランスフェクションから48時間後のHuH7細胞の溶解液中のGAA活性を測定した。シグナルペプチドの後のGAAコード配列における様々な欠失の効果を評価した(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co、sp7-Δ47-co、sp7-Δ62-co)。eGFPをコードしているプラスミドを陰性対照として使用した。統計分析は、チューキー事後検定と一元配置分散分析によって実施された。タウ記号(τ)はsp7-co、sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-coに対する統計学的有意差を示す。データは、2回の独立した実験の平均値±標準偏差である。異なる記号が使用される場合を除いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図10】sp6又はsp8シグナルペプチドと組み合わせたΔ8欠失を使用して、細胞培地中において上昇したGAA活性。天然GAAsp1シグナルペプチドと組み合わせた天然GAA(co)をコードしているか、又は異種sp6若しくはsp8シグナルペプチドと組み合わせた天然GAAを含む工学操作されたGAA(sp6-co又はsp8-co)をコードしている最適化された配列を含むプラスミドのトランスフェクションから48時間後のHuH7細胞の培地(パネルA)及び溶解液(パネルB)中のGAA活性を測定した。シグナルペプチドの後のGAAコード配列における8アミノ酸の欠失の効果を評価する(sp6-Δ8-co、又はsp8-Δ8-co)。eGFPをコードしているプラスミドを陰性対照として使用した。統計分析は、チューキー事後検定と一元配置分散分析によって実施された。棒グラフにおけるアステリスクは、coに対する統計学的有意差を示す。データは、2回の独立した実験の平均値±標準偏差である。異なる記号が使用される場合を除いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、切断短縮されたGAAポリペプチド、このような切断短縮されたGAAポリペプチドをコードしている核酸分子、該核酸を含む核酸構築物、該核酸構築物を含むベクター、該核酸分子又は構築物又はベクターを含む細胞、及び本発明に記載のポリペプチド、核酸分子、核酸構築物、ベクター、又は細胞を含む医薬組成物に関する。本発明者らは驚くべきことに、本発明に記載のGAAの切断短縮型が、その免疫原性を低減させつつ、GAAの分泌を大きく改善することを示した。
【0021】
リソソームの酸性αグルコシダーゼすなわち「GAA」(E.C.3.2.1.20)(1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼ)は、オリゴ糖のα-1,4結合及びα-1,6結合の両方を加水分解することによりグルコースを遊離する、エキソ-1,4-α-D-グルコシダーゼである。GAAの欠損症により、ポンペ病とも呼ばれる糖原病II型(GSDII)が起こる(この用語は正式には乳児期発症型の疾患を指す)。それはグリコーゲンの完全分解を触媒し、分岐点では緩徐である。第17番染色体上の28kbのヒト酸性αグルコシダーゼ遺伝子は3.6kbのmRNAをコードし、これは951アミノ酸ポリペプチドを生成する(Hoefsloot et al., (1988) EMBO J. 7: 1697; Martiniuk et al., (1990) DNA and Cell Biology 9: 85)。該酵素は、小胞体において同時翻訳的なN結合グリコシル化を受ける。それは110kDaの前駆体型として合成され、十分なグリコシル化修飾、リン酸化によって、及びタンパク質分解プロセシングによって約90kDaのエンドソーム内の中間体を通して最終的なリソソーム内の76及び67kDa型へと成熟する(Hoefsloot, (1988) EMBO J. 7: 1697; Hoefsloot et al., (1990) Biochem. J. 272: 485; Wisselaar et al., (1993) J. Biol. Chem. 268: 2223; Hermans et al., (1993) Biochem. J. 289: 681)。
【0022】
糖原病II型患者における酸性αグルコシダーゼ欠損症は、リソソーム内のグリコーゲンの大量の蓄積を引き起こし、細胞機能を破壊する(Hirschhorn, R. and Reuser, A. J. (2001), in The Metabolic and Molecular Basis for Inherited Disease, (eds, Scriver, C. R. et al.) pages 3389-3419 (McGraw-Hill, New York)。最も頻度の高い乳児型では、患者は、進行的な筋肉の変性及び心筋症を示し、2歳になる前に死亡する。若年発症型及び成人発症型においては重度な衰弱が存在する。
【0023】
さらに、他の糖原病を有する患者は、最適化された形態のGAAの投与から恩恵を受け得る。例えば、GAAの投与が、糖原病III型(GSD III)患者由来の初代筋芽細胞におけるグリコーゲンを減少させることが示されている(Sun et al. (2013) Mol Genet Metab 108(2): 145;国際公開公報第2010/005565号)。
【0024】
特に、本発明の脈絡において、「GAAの前駆体型」は、その天然シグナルペプチドを含むGAAポリペプチド型である。例えば、配列番号2の配列は、ヒトGAA(hGAA)の前駆体型である。配列番号2の中のアミノ酸残基1~27は、hGAAポリペプチドのシグナルペプチドに相当する。hGAAのシグナルペプチドのこの配列は、配列番号4でも示される。
【0025】
本発明の脈絡において、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドに由来する。本発明によると、「親GAAポリペプチド」は、上記に定義されているような機能的な前駆体のGAA配列であるが、そのシグナルペプチドを欠いている。例えば、典型的な野生型ヒトGAAポリペプチドに言及すると、完全な野生型GAAポリペプチド(すなわち前駆体型のGAA)は配列番号2又は配列番号30に示され、シグナルペプチド(配列番号2又は配列番号30のアミノ酸1~27に相当する)を有し、一方、これらの野生型ヒトGAAポリペプチドの切断短縮GAA型の基盤としての役目を果たす親GAAポリペプチドは、それぞれ配列番号1及び配列番号33に示され、シグナルペプチドを全く有さない。この例では、配列番号2のアミノ酸28~952、及び配列番号30のアミノ酸28~952に相当する後部は、親GAAポリペプチドと称される。
【0026】
本発明によると、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、機能的GAAポリペプチドであり、すなわち、それは野生型GAAポリペプチドの機能を有する。上記に定義されているように、野生型GAAの機能は、オリゴ糖及び多糖、より特定するとグリコーゲンのα-1,4結合及びα-1,6結合の両方を加水分解することによりグルコースを遊離することである。本発明の核酸によってコードされる機能的GAAポリペプチドは、配列番号1又は配列番号33の野生型GAAポリペプチドと比較して、グリコーゲンに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は少なくとも100%の加水分解活性を有し得る。本発明の核酸によってコードされるGAAタンパク質の活性は、配列番号1又は配列番号33の野生型GAAタンパク質の活性に対して、100%を超えることさえあり得、例えば110%、120%、130%、140%を超え、又はさらには150%を超えることさえあり得る。
【0027】
親GAAポリペプチドのアミノ酸配列又はそのコード配列は、トリ及び哺乳動物種をはじめとする任意の入手源から得ることができる。本明細書において使用する「トリ」という用語は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、及びキジを含むがこれらに限定されない。本明細書において使用する「哺乳動物」という用語は、ヒト、サル、及び他の非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ類などを含むがこれらに限定されない。本発明の実施態様では、親GAAポリペプチドは、ヒト、マウス、又はウズラ、特にヒトのGAAポリペプチドである。
【0028】
さらに、親GAAポリペプチドは、GAAポリペプチドと比較してアミノ酸の挿入、欠失、及び/又は置換などの1つ以上のアミノ酸の改変を含む、GAAポリペプチドの機能的変異体であってもよい。例えば、親ポリペプチドは、ヒトGAAポリペプチドの機能的誘導体、例えば、このヒトGAAポリペプチドに対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、又は少なくとも99%の配列同一率を有する、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1のポリペプチドなどであり得る。例えば、上記に定義された切断短縮に加えて、GAAポリペプチドの機能的変異体は、親GAAポリペプチド、例えば配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親GAAポリペプチドに対して0~50個、0~30個、0~20個、0~15個、0~10個、又は0~5個のアミノ酸変化を有し得る。特に、親GAAポリペプチドは、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するヒトGAAポリペプチドからなり得る。
【0029】
「同一な」という用語及びその派生語は、ポリペプチドに言及する場合、2つの比較されるポリペプチド配列における位置が、同じアミノ酸によって占められている場合(例えば、2つのそれぞれのポリペプチドにおける位置がロイシンによって占められている場合)、該ポリペプチドはその位置において同一である。2つのポリペプチド間の同一率は、2つの配列によって共有される一致している位置の数を、比較される位置の数で割り、これに100を乗じた関数である。例えば、2つのポリペプチドにおける10中6個の位置が一致する場合、2つの配列は60%同一である。一般的に、最大同一率が得られるように2つの配列をアラインさせて比較される。BLAST又はFASTAなどの、当業者には公知である様々なバイオインフォマティクスツールを使用して、核酸配列をアラインさせることができる。
【0030】
親GAAポリペプチドはまた、Kunita et al., (1997) Biochemica et Biophysica Acta 1362: 269によって記載されているようなGAA IIなどのGAA変異体であり得;GAA多型及びSNPは、Hirschhorn, R. and Reuser, A. J. (2001) In The Metabolic and Molecular Basis for Inherited Disease(Scriver, C. R. , Beaudet, A. L., Sly, W. S. & Valle, D. Eds., pp. 3389- 3419. McGraw-Hill, New York,pages 3403-3405参照)によって記載されている。当技術分野において公知である任意の変異GAAポリペプチドを、親GAAポリペプチドを定義するための基盤として使用し得る。例示的な変異GAAポリペプチドとしては、配列番号2(NCBI参照配列NP_000143.2);配列番号29(GenBank AAA52506.1);配列番号30(GenBank CAA68763.1);配列番号31(GenBank:EAW89583.1)及び配列番号32(GenBank ABI53718.1)が挙げられる。他の有用な変異体としては、Hoefsloot et al., (1988) EMBO J. 7: 1697;及びVan Hove et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 65に記載されているもの(ヒト)、並びにGenBankアクセッション番号NM_008064(マウス)が挙げられる。他の変異GAAポリペプチドとしては、国際公開公報第2012/145644号、国際公開公報第00/34451号及び米国特許第6,858,425号に記載されているものが挙げられる。特定の実施態様では、親GAAポリペプチドは、配列番号2又は配列番号30に示されるアミノ酸配列から得られる。
【0031】
本発明に記載のGAAの切断短縮型は、親GAAポリペプチドのN末端切断短縮型であり、ここでは少なくとも1つのアミノ酸が、該親GAAポリペプチドのN末端から欠失している。
【0032】
「切断短縮型」によって、親GAAポリペプチドのN末端部分から1つ又はいくつかの連続アミノ酸が欠失しているGAAポリペプチドを意味する。例えば、GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端から1~75連続アミノ酸、又は75を超える連続アミノ酸が切断短縮されていてもよい。具体的には、切断短縮されたGAAポリペプチドは、親GAAタンパク質(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)と比較して、そのN末端から
【化1】

連続アミノ酸が切断短縮されていてもよい。代わりの命名法を使用すると、親GAAポリペプチドにおける1アミノ酸の切断短縮から生じたGAAポリペプチドは、Δ1 GAA切断短縮型と称され、N末端から2連続アミノ酸の切断短縮から生じたGAAポリペプチドは、Δ2 GAA切断短縮型と称され、親GAAポリペプチドにおける3連続アミノ酸の切断短縮から生じたGAAポリペプチドは、Δ3 GAA切断短縮型と称されるなどである。特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化2】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0033】
別の特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化3】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0034】
別の特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化4】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0035】
別の特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化5】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0036】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化6】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0037】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化7】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0038】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化8】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0039】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化9】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0040】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化10】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0041】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化11】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0042】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化12】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0043】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化13】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0044】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化14】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0045】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、
【化15】

GAA切断短縮型(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示される親hGAAタンパク質の切断短縮型)である。
【0046】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、又はΔ10切断短縮型、特にGAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ7、Δ8又はΔ9切断短縮型、より特定するとGAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ8切断短縮型である。
【0047】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ27、Δ28、Δ29、Δ30又はΔ31切断短縮型、特にGAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ28、Δ29又はΔ30切断短縮型、より特定するとGAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ29切断短縮型である。
【0048】
別の特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ40、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44切断短縮型、特にGAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ41、Δ42、又はΔ43切断短縮型、より特定するとGAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ42切断短縮型である。
【0049】
さらなる特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ41、Δ42、Δ43、Δ44、又はΔ45切断短縮型、特にGAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ42、Δ43、又はΔ44切断短縮型、より特定するとGAA(特に、配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ43切断短縮型である。
【0050】
別の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、Δ10、Δ27、Δ28、Δ29、Δ30、Δ31、Δ40、Δ41、Δ42、Δ43、Δ44、Δ45、Δ46、又はΔ47切断短縮型である。
【0051】
別の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ7、Δ8、Δ9、Δ28、Δ29、Δ30、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44切断短縮型である。
【0052】
別の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、Δ10、Δ40、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44切断短縮型である。
【0053】
別の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ8、Δ29、Δ42、Δ43、又はΔ47切断短縮型である。
【0054】
別の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43切断短縮型である。
【0055】
別の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、GAA(特に、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAタンパク質)のΔ8又はΔ42切断短縮型である。
【0056】
本発明の特定の実施態様では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、機能的なヒトGAAポリペプチドの切断短縮型である。さらなる特定の実施態様では、親hGAAポリペプチドは、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチドである。この実施態様の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化16】

GAA切断短縮型である。
【0057】
この実施態様の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化17】

GAA切断短縮型である。
【0058】
この実施態様の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化18】

GAA切断短縮型である。
【0059】
この実施態様の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化19】

GAA切断短縮型である。
【0060】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化20】

GAA切断短縮型である。
【0061】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化21】

GAA切断短縮型である。
【0062】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化22】

GAA切断短縮型である。
【0063】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化23】

GAA切断短縮型である。
【0064】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化24】

GAA切断短縮型である。
【0065】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化25】

GAA切断短縮型である。
【0066】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化26】

GAA切断短縮型である。
【0067】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化27】

GAA切断短縮型である。
【0068】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化28】

GAA切断短縮型である。
【0069】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化29】

GAA切断短縮型である。
【0070】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化30】

GAA切断短縮型である。
【0071】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化31】

GAA切断短縮型である。
【0072】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化32】

GAA切断短縮型である。
【0073】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化33】

GAA切断短縮型である。
【0074】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化34】

GAA切断短縮型である。
【0075】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化35】

GAA切断短縮型である。
【0076】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、さらにより特定すると配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化36】

GAA切断短縮型である。
【0077】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、又はΔ10、特にΔ7、Δ8、又はΔ9、より特定するとΔ8切断短縮型である。
【0078】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ27、Δ28、Δ29、Δ30、又はΔ31、特にΔ28、Δ29、又はΔ30、より特定するとΔ29切断短縮型である。
【0079】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ40、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44、特にΔ41、Δ42、又はΔ43、より特定するとΔ42切断短縮型である。
【0080】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ41、Δ42、Δ43、Δ44、又はΔ45、特にΔ42、Δ43、又はΔ44、より特定するとΔ43切断短縮型である。
【0081】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化37】

特に
【化38】

特にΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43切断短縮型である。
【0082】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化39】

特にΔ8又はΔ42切断短縮型である。
【0083】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8、Δ29、Δ42、Δ43、又はΔ47切断短縮型である。
【0084】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43切断短縮型である。
【0085】
この実施態様の別の変法では、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8又はΔ42切断短縮型である。
【0086】
具体的な実施態様では、本発明の切断短縮されたhGAAポリペプチドは、配列番号27、配列番号28、配列番号34、配列番号35若しくは配列番号36に示される配列からなるアミノ酸配列、又は配列番号27、配列番号28、配列番号34、配列番号35若しくは配列番号36に示される配列と比較して1~5個、特に1~4個、特に1~3個、より特定すると1~2個、特に1個のアミノ酸置換を含むその機能的変異体を有する。別の具体的な実施態様では、本発明の切断短縮されたhGAAポリペプチドは、配列番号27、配列番号28、配列番号34、若しくは配列番号35に示される配列からなるアミノ酸配列、又は配列番号27、配列番号28、配列番号34、若しくは配列番号35に示される配列と比較して1~5個のアミノ酸置換を含むその機能的変異体を有する。具体的な実施態様では、本発明の切断短縮されたhGAAポリペプチドは、配列番号27若しくは配列番号28に示される配列からなるアミノ酸配列、又は配列番号27若しくは配列番号28に示される配列と比較して1~5個、特に1~4個、特に1~3個、より特定すると1~2個、特に1個のアミノ酸置換を含むその機能的変異体を有する。
【0087】
本発明に記載の切断短縮されたGAAポリペプチドはさらに、シグナルペプチド、例えばGAAの天然シグナルペプチド、又は別の分泌タンパク質に由来する代替シグナルペプチドを含み得る。このようなシグナルペプチドの非制限的な例としては、配列番号3~7に示されるものが挙げられる。本発明者らは驚くべきことに、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドを代替シグナルペプチドに融合させることは、その分泌をさらに増強させることを示した。本発明はこれにより、シグナル部分と切断短縮されたGAAポリペプチド部分とを含むキメラGAAポリペプチドを提供し、切断短縮されたGAAポリペプチド部分は、上記に定義されているような切断短縮されたGAAポリペプチドである。特定の実施態様では、シグナルペプチドは、GAAの天然シグナルペプチド、例えば配列番号4に示されるhGAAのシグナルペプチドである。別の実施態様では、シグナルペプチドは、GAAとは異なるタンパク質に由来する外因性(すなわち代替)シグナルペプチドである。特定の実施態様では、代替シグナルペプチドは、配列番号3、5、6、及び7、又は以下に定義されているようなその機能的誘導体からなる群より選択される。
【0088】
本発明者らは、GAAタンパク質の残りに融合させた外因性シグナルペプチドは、その天然シグナルペプチドを含む対応するGAAポリペプチドと比較して、結果として得られたキメラGAAポリペプチドの分泌を増加させることを示した。さらに、切断短縮されたGAAポリペプチド部分はまた、親GAAポリペプチドに融合させた同シグナルペプチドを含むキメラGAAポリペプチドと比較して、キメラGAAポリペプチド(シグナルペプチド及び切断短縮されたGAAポリペプチドの両方を含む)の分泌を増加させる。
【0089】
本発明において作用可能な特定の外因性シグナルペプチドとしては、キモトリプシノーゲンB2由来のアミノ酸1~20(配列番号3)、ヒトα-1-アンチトリプシンのシグナルペプチド(配列番号5)、イズロネート-2-スルファターゼ由来のアミノ酸1~25(配列番号6)、及びプロテアーゼC1阻害剤由来のアミノ酸1~23(配列番号7)が挙げられる。配列番号3及び配列番号5から配列番号7のシグナルペプチドは、その天然シグナルペプチドを含むGAAと比較して、インビトロ及びインビボの両方においてキメラGAAタンパク質のより高い分泌を可能とする。特定の実施態様では、シグナルペプチドは、配列番号3~7に示される配列を有するか、又は、結果として得られる配列が、機能的シグナルペプチド、すなわち、GAAタンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチドに相当する限り、その機能的誘導体、すなわち、配列番号3~7に示される配列と比較して1~5個、特に1~4個、特に1~3個、より特定すると1~2個、特に1個のアミノ酸の欠失(群)、挿入(群)、又は置換(群)を含む配列である。
【0090】
特定の実施態様では、本発明のGAAポリペプチドは、
-GAAのΔ8切断短縮型、例えば配列番号27に示されるhGAAのΔ8切断短縮型と配列番号3の組合せ;
-GAAのΔ8切断短縮型、例えば配列番号27に示されるhGAAのΔ8切断短縮型と配列番号4の組合せ;
-GAAのΔ8切断短縮型、例えば配列番号27に示されるhGAAのΔ8切断短縮型と配列番号5の組合せ;
-GAAのΔ8切断短縮型、例えば配列番号27に示されるhGAAのΔ8切断短縮型と配列番号6の組合せ;
-GAAのΔ8切断短縮型、例えば配列番号27に示されるhGAAのΔ8切断短縮型と配列番号7の組合せ;
-GAAのΔ29切断短縮型、例えば配列番号34に示されるhGAAのΔ29切断短縮型と配列番号3の組合せ;
-GAAのΔ29切断短縮型、例えば配列番号34に示されるhGAAのΔ29切断短縮型と配列番号4の組合せ;
-GAAのΔ29切断短縮型、例えば配列番号34に示されるhGAAのΔ29切断短縮型と配列番号5の組合せ;
-GAAのΔ29切断短縮型、例えば配列番号34に示されるhGAAのΔ29切断短縮型と配列番号6の組合せ;
-GAAのΔ29切断短縮型、例えば配列番号34に示されるhGAAのΔ29切断短縮型と配列番号7の組合せ;
-GAAのΔ42切断短縮型、例えば配列番号28に示されるhGAAのΔ42切断短縮型と配列番号3の組合せ;
-GAAのΔ42切断短縮型、例えば配列番号28に示されるhGAAのΔ42切断短縮型と配列番号4の組合せ;
-GAAのΔ42切断短縮型、例えば配列番号28に示されるhGAAのΔ42切断短縮型と配列番号5の組合せ;
-GAAのΔ42切断短縮型、例えば配列番号28に示されるhGAAのΔ42切断短縮型と配列番号6の組合せ;
-GAAのΔ42切断短縮型、例えば配列番号28に示されるhGAAのΔ42切断短縮型と配列番号7の組合せ;
-GAAのΔ43切断短縮型、例えば配列番号35に示されるhGAAのΔ43切断短縮型と配列番号3の組合せ;
-GAAのΔ43切断短縮型、例えば配列番号35に示されるhGAAのΔ43切断短縮型と配列番号4の組合せ;
-GAAのΔ43切断短縮型、例えば配列番号35に示されるhGAAのΔ43切断短縮型と配列番号5の組合せ;
-GAAのΔ43切断短縮型、例えば配列番号35に示されるhGAAのΔ43切断短縮型と配列番号6の組合せ;
-GAAのΔ43切断短縮型、例えば配列番号35に示されるhGAAのΔ43切断短縮型と配列番号7の組合せ;
-GAAのΔ47切断短縮型、例えば配列番号36に示されるhGAAのΔ47切断短縮型と配列番号3の組合せ;
-GAAのΔ47切断短縮型、例えば配列番号36に示されるhGAAのΔ47切断短縮型と配列番号4の組合せ;
-GAAのΔ47切断短縮型、例えば配列番号36に示されるhGAAのΔ47切断短縮型と配列番号5の組合せ;
-GAAのΔ47切断短縮型、例えば配列番号36に示されるhGAAのΔ47切断短縮型と配列番号6の組合せ;
-GAAのΔ47切断短縮型、例えば配列番号36に示されるhGAAのΔ47切断短縮型と配列番号7の組合せ、から選択されるか、
又は、結果として得られた配列の組合せに対して少なくとも90%の同一率、特に少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一率を有するその機能的誘導体である。これらの実施態様では、上記のように、シグナルペプチド部分は、結果として得られる配列が、機能的シグナルペプチド、すなわち、結果として得られる切断短縮されたキメラGAAタンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチドに相当する限り、配列番号3~7に示される配列と比較して、1~5個、特に1~4個、特に1~3個、より特定すると1~2個、特に1個のアミノ酸の欠失(群)、挿入(群)、又は置換(群)を含む配列であり得る。
【0091】
細胞から分泌される新規に合成されたGAAの相対的比率は、当技術分野において公知であり実施例に記載されている方法によって慣用的に決定され得る。分泌されたタンパク質は、細胞培養培地、血清、ミルクなどの中の、タンパク質それ自体を直接測定することによって(例えばウェスタンブロットによって)又はタンパク質活性アッセイ(例えば酵素アッセイ)によって検出され得る。
【0092】
当業者はさらに、例えば、制限酵素部位の付加などの核酸構築物の操作の結果として、これらの追加のアミノ酸によりシグナルペプチド又はGAAポリペプチドが非機能的とならない限り、切断短縮されたGAAポリペプチド又はキメラGAAポリペプチドは追加のアミノ酸を含有することができることを理解するだろう。追加のアミノ酸は切断されても、又は、保持することで非機能的なポリペプチドとならない限り、成熟ポリペプチドによって保持されていてもよい。
【0093】
別の態様では、本発明は、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチド又は本発明のキメラGAAポリペプチドをコードしている核酸分子に関する。
【0094】
切断短縮されたGAAをコードしている本発明の核酸分子の配列は、インビボにおけるGAAポリペプチドの発現のために最適化されている。配列の最適化は、コドン最適化、GC含量の増加、CpGアイランドの数の低減、代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数の低減、並びにスプライスドナー部位及びスプライスアクセプター部位の数の低減をはじめとする、核酸配列における多くの変化を含み得る。遺伝子コードの縮重のために、異なる核酸分子が同じタンパク質をコードし得る。また、様々な生物の遺伝子コードは、他のアミノ酸よりも同じアミノ酸をコードするいくつかのコドンの1つを使用することに偏ることが多いことも周知である。コドンの最適化を通して、所与の細胞状況に存在するコドンバイアスを利用した変化をヌクレオチド配列に導入し、これにより、結果として得られたコドンの最適化されたヌクレオチド配列は、このような所与の細胞状況において、コドンの最適化されていない配列と比較して比較的高いレベルで発現される可能性がより高くなる。本発明の好ましい実施態様では、切断短縮されたGAAをコードしているこのような配列の最適化されたヌクレオチド配列は、例えばヒトに特異的なコドン使用頻度バイアスを利用することによってコドンが最適化されることにより、同じ切断短縮されたGAAタンパク質をコードしているコドンの最適化されていないヌクレオチド配列と比較して、ヒト細胞におけるその発現が改善されている。
【0095】
特定の実施態様では、最適化されたGAAコード配列は、配列番号8の野生型hGAAコード配列のヌクレオチド82~2859と比較して、コドンが最適化されている、並びに/あるいは、増加したGC含量を有する、並びに/あるいは代替オープンリーディングフレームの数が減少している、並びに/あるいはスプライスドナー部位及び/又はスプライスアクセプター部位の数が減少している。例えば、本発明の核酸配列では、野生型GAA配列の配列と比較して、GAA配列内のGC含量が少なくとも2、3、4、5、又は10%増加している。特定の実施態様では、本発明の核酸配列では、野生型GAAヌクレオチド配列の配列と比較して、GAA配列内のGC含量は2、3、4、又はより特定すると5%若しくは10%(特に5%)増加している。特定の実施態様では、機能的GAAポリペプチドをコードしている本発明の核酸配列は、配列番号8に示される配列のヌクレオチド82~2859に対して「実質的に同一」である、すなわち、約70%同一、より好ましくは約80%同一、さらにより好ましくは約90%同一、さらにより好ましくは約95%同一、さらにより好ましくは約97%、98%、又はさらには99%同一である。上記のように、GC含量及び/又はARFの数に加えて、配列の最適化はまた、配列内のCpGアイランドの数の低減並びに/あるいはスプライスドナー部位及びアクセプター部位の数の低減も含み得る。勿論、当業者には周知であるように、配列の最適化は、これら全てのパラメーター間のバランスであり、このことは、上記の少なくとも1つのパラメーターが改善されていれば、他のパラメーターの1つ以上が改善されていなくても、最適化された配列により、インビボにおける導入遺伝子の改善、例えば改善された発現及び/又は導入遺伝子に対する免疫応答の低減などがもたらされる限り、配列は最適化されたと考えられ得ることを意味する。
【0096】
さらに、ヒト細胞のコドン使用頻度に対する、機能的GAAをコードしているヌクレオチド配列の適応性は、コドン適応指標(codon adaptation index)(CAI)として表現され得る。コドン適応指標は本明細書において、高度に発現されているヒト遺伝子のコドン使用頻度に対する、遺伝子のコドン使用頻度の相対的適応性の尺度として定義される。各コドンの相対的適応性(w)は、同じアミノ酸に対する最も豊富なコドンの使用頻度に対する、各コドンの使用頻度の比である。CAIは、これらの相対的な適応値の幾何学的平均値として定義される。非同義コドン及び終止コドン(遺伝子コードに依存)は除外される。CAI値の範囲は0~1であり、より高い数値は、最も豊富なコドンの比率がより高いことを示す(Sharp and Li, 1987, Nucleic Acids Research 15: 1281-1295参照; Kim et al, Gene. 1997, 199:293-301; zur Megede et al, Journal of Virology, 2000, 74: 2628-2635も参照)。好ましくは、GAAをコードしている核酸分子は、少なくとも0.75(特に0.77)、0.8、0.85、0.90、0.92、又は0.94のCAIを有する。
【0097】
「核酸配列」(又は核酸分子)という用語は、本発明に記載のGAAタンパク質をコードしている、一本鎖又は二本鎖の形態のDNA分子又はRNA分子、特にDNAを指す。
【0098】
本発明者らは、上記の切断短縮されたGAAポリペプチドが、それをコードしている核酸分子から発現された場合、インビトロ及びインビボの両方において、野生型GAA cDNAと比較して驚くべき程に高いレベルの機能的GAAタンパク質の発現を引き起こすことを発見した。さらに、本発明者らによってこれもまた示されているように、本発明の核酸分子を発現している肝細胞及び筋肉細胞から生成された切断短縮されたGAAタンパク質は、免疫応答を全く誘発しない。このことは、この核酸分子を使用することにより高いレベルのGAAタンパク質を生成し得、免疫抑制剤による処置に頼ることを回避する、低用量の免疫抑制剤による処置を可能とする、及びそれを必要とする被験者への本発明の核酸分子の反復投与を可能とするなどの治療利点を提供することを意味する。それ故、本発明の切断短縮されたGAAポリペプチド及び本発明の核酸分子は、GAAの発現及び/又は活性が欠損している状況、あるいは高い発現レベルのGAAが糖原病などの疾患を寛解することができる状況において、特に関心が持たれる。特に、糖原病は、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、又は心臓の致死性先天性糖原病であり得る。より特定すると、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択され、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択される。さらにより特定した実施態様では、糖原病は糖原病II型である。特に、本発明の核酸分子は、GAA欠損容態、又はグリコーゲンの蓄積を伴う他の容態、例えば糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型を処置するための遺伝子療法において有用であり得る。さらにより特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、糖原病II型を処置するための遺伝子療法において有用であり得る。
【0099】
本発明の別の実施態様では、切断短縮されたGAAポリペプチド部分をコードしている本発明の核酸分子の一部は、シグナルペプチドを欠いた野生型hGAAポリペプチド配列である、配列番号1又は配列番号33、特に配列番号1をコードしているヌクレオチド配列の対応する部分に対して少なくとも75%(例えば77.7%)、又は少なくとも80%、又は少なくとも82%(例えば83.1%)の同一率を有する。
【0100】
本発明の核酸分子の切断短縮されたGAA部分は、配列の最適化された配列である、配列番号10又は11のヌクレオチド配列に対して好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも92%、特に少なくとも95%、例えば少なくとも98、99、又は100%の同一率を有する。
【0101】
「同一な」という用語及びその派生語は、2つの核酸分子間の配列同一性を指す。2つの比較される両方の配列における位置が、同じ塩基によって占められている場合、例えば、2つのそれぞれのDNA分子における位置がアデニンによって占められている場合、該分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一率は、2つの配列によって共有される一致している位置の数を、比較される位置の数で割り、これに100を乗じた関数である。例えば、2つの配列における10中6個の位置が一致する場合、2つの配列は60%同一である。一般的に、最大同一率が得られるように2つの配列をアラインさせて比較される。BLAST又はFASTAなどの、当業者には公知である様々なバイオインフォマティクスツールを使用して、核酸配列をアラインさせることができる。
【0102】
さらに、本発明の核酸分子は、機能的GAAタンパク質をコードし、すなわち、それは発現されると野生型GAAタンパク質の機能を有する、ヒトGAAタンパク質をコードしている。上記に定義されているように、野生型GAAの機能は、オリゴ糖及び多糖、より特定するとグリコーゲンのα-1,4結合及びα-1,6結合の両方を加水分解することによりグルコースを遊離することである。本発明の核酸によってコードされる機能的GAAタンパク質は、配列番号1、2、30、又は33の野生型GAAタンパク質と比較して、グリコーゲンに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は少なくとも100%の加水分解活性を有し得る。本発明の核酸によってコードされるGAAタンパク質の活性は、配列番号1、2、30、又は33の野生型GAAタンパク質の活性に対して、100%を超えることさえあり得、例えば110%、120%、130%、140%を超え、又はさらには150%を超えることさえあり得る。
【0103】
当業者は、本発明に記載の核酸が機能的GAAタンパク質を発現するかどうかを容易に決定することができる。適切な方法は、当業者には明らかであろう。例えば、1つの適切なインビトロでの方法は、プラスミド又はウイルスベクターなどのベクターに核酸を挿入する工程、293T細胞又はHeLa細胞などの宿主細胞又はHuh7などの他の細胞をベクターを用いてトランスフェクト又は形質導入する工程、及びGAA活性についてアッセイする工程を含む。あるいは、適切なインビボでの方法は、核酸を含有しているベクターをポンペ病又は別の糖原病のマウスモデルに形質導入する工程、並びにマウスの血漿中の機能的GAA及び組織中のGAAの存在についてアッセイする工程を含む。適切な方法は、以下の実験部においてより詳細に記載されている。
【0104】
特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列番号12若しくは配列番号13に示される配列;配列番号28に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列番号48若しくは配列番号49に示される配列;配列番号35に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列番号50若しくは配列番号51に示される配列;又は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列番号52若しくは配列番号53に示される配列を含む。さらなる実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列番号12若しくは配列番号13に示される配列;配列番号28に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列番号48若しくは配列番号49に示される配列;又は、配列番号35に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列番号50若しくは配列番号51に示される配列を含む。特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列番号12又は配列番号13に示される配列を含む。
【0105】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含む核酸構築物にも関する。核酸構築物は、1つ以上の発現制御配列、及び/又は導入遺伝子の発現を改善する他の配列、及び/又はコードされているタンパク質の分泌を増強する配列、及び/又はコードされているタンパク質の取り込みを増強する配列に作動可能に連結させた、本発明の核酸配列を含む、発現カセットに対応し得る。本明細書において使用する「作動可能に連結された」という用語は、機能的な関係でのポリヌクレオチド配列の連結を指す。核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に配置されている場合に「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーター、又は別の転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合にコード配列に作動可能に連結されている。このような発現制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー(例えばシス調節モジュール(CRM))、イントロン、ポリAシグナルなどは当技術分野において公知である。
【0106】
特に、発現カセットは、プロモーターを含み得る。該プロモーターは、遍在的又は組織特異的プロモーター、特にGAAの発現が望ましい細胞又は組織、例えばGAA欠損患者においてGAAの発現が望ましい細胞又は組織において発現を促進することのできるプロモーターであり得る。特定の実施態様では、該プロモーターは、肝特異的プロモーター、例えばα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)(配列番号14)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、チロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーター、LSPプロモーター(甲状腺ホルモン結合性グロブリンプロモーター配列、2コピーのα1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー配列、及びリーダー配列を含む、34.Ill, C. R., et al. (1997). Optimization of the human factor VIII complementary DNA expression plasmid for gene therapy of hemophilia A. Blood Coag. Fibrinol. 8: S23-S30)などである。他の有用な肝特異的プロモーターも当技術分野において公知であり、例えば、コールドスプリングハーバーラボラトリーの編纂した肝特異的遺伝子プロモーターデータベース(http://rulai.cshl.edu/LSPD/)に列挙されているものなどである。本発明の脈絡における好ましいプロモーターは、hAATプロモーターである。別の実施態様では、該プロモーターは、関心対象のある組織又は細胞(例えば筋肉細胞)及び肝細胞における発現を指令するプロモーターである。例えば、ある程度までは、デスミン、Spc5-12、及びMCKプロモーターなどの筋肉細胞に特異的なプロモーターは、肝細胞への幾分の発現の漏出を呈し得、これは、本発明の核酸から発現されるGAAポリペプチドに対する被験者の免疫寛容を誘導するのに有益であり得る。
【0107】
他の組織特異的なプロモーター又は組織特異的ではないプロモーターも本発明の実施に有用であり得る。例えば、発現カセットは、肝特異的プロモーターとは異なるプロモーターである組織特異的プロモーターを含み得る。例えば、該プロモーターは、筋肉特異的プロモーター、例えばデスミンプロモーター(及びデスミンプロモーター変異体、例えば天然又は人工のエンハンサーを含むデスミンプロモーター)、SPc5-12又はMCKプロモーターであり得る。別の実施態様では、該プロモーターは、他の細胞系統に特異的なプロモーター、例えば赤血球系統の細胞に由来するGAAポリペプチドの発現のためのエリスロポエチンプロモーターである。
【0108】
別の実施態様では、該プロモーターは偏在性プロモーターである。代表的な偏在性プロモーターとしては、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、SV40初期プロモーターなどが挙げられる。
【0109】
さらに、該プロモーターはまた、内因性プロモーター、例えばアルブミンプロモーター又はGAAプロモーターであり得る。
【0110】
特定の実施態様では、該プロモーターは、エンハンサー配列、例えばシス調節モジュール(CRM)又は人工エンハンサー配列に結合している。例えば、該プロモーターは、エンハンサー配列、例えばヒトApoE制御領域(又はヒトアポリポタンパク質E/C-I遺伝子座、肝制御領域HCR-1-Genbankアクセッション番号U32510、配列番号15に示される)に結合していてもよい。特定の実施態様では、ApoE配列などのエンハンサー配列は、肝特異的プロモーター、例えば上記に列挙されているプロモーター、特に例えばhAATプロモーターに結合している。本発明の実施に有用な他のCRMとしては、Rincon et al., Mol Ther. 2015 Jan;23(1):43-52, Chuah et al., Mol Ther. 2014 Sep;22(9):1605-13又はNair et al., Blood. 2014 May 15;123(20):3195-9に記載のものが挙げられる。
【0111】
別の特定の実施態様では、核酸構築物は、イントロン、特にプロモーターとGAAコード配列の間に配置されたイントロンを含む。イントロンは、mRNAの安定性及びタンパク質の生成を増加させるために導入され得る。さらなる実施態様では、核酸構築物は、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、凝固因子IX(FIX)イントロン、SV40イントロン、又はニワトリβ-グロビンイントロンを含む。別のさらなる実施態様では、本発明の核酸構築物は、該イントロンに見られる代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させるために又はさらには完全に除去するために設計された改変されたイントロン(特に改変されたHBB2又はFIXイントロン)を含有している。好ましくは、その長さが50bpにわたり、読み枠内に開始コドンと終止コドンを有するARFが除去される。ARFは、イントロンの配列を改変することによって除去されてもよい。例えば、ヌクレオチドの置換、挿入、又は欠失を用いて、好ましくはヌクレオチドの置換によって改変が行なわれ得る。一例として、関心対象のイントロン配列に存在するATG又はGTG開始コドンにおける1つ以上のヌクレオチド、特に1つのヌクレオチドを置換することにより、非開始コドンがもたらされ得る。例えば、ATG又はGTGを、関心対象のイントロンの配列内の、開始コドンではない、CTGによって置換し得る。
【0112】
核酸構築物に使用される古典的なHBB2イントロンを配列番号16に示す。例えば、このHBB2イントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、構築物に含まれる改変されたHBB2イントロンは、配列番号17に示される配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なFIXイントロンは、ヒトFIXの第一イントロンから得られ、配列番号18に示されている。FIXイントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、本発明の構築物に含まれる改変されたFIXイントロンは、配列番号19に示される配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なニワトリ-βグロビンイントロンは、配列番号20に示される。ニワトリ-βグロビンイントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、本発明の構築物に含まれる改変されたニワトリ-βグロビンイントロンは、配列番号21に示される配列を有する。
【0113】
本発明者らは以前に、国際公開公報第2015/162302号において、このような改変されたイントロン、特に改変されたHBB2イントロン又はFIXイントロンが有益な特性を有し、導入遺伝子の発現を有意に改善させることができることを示した。
【0114】
特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、場合によりエンハンサーが前に存在するプロモーター、本発明のコード配列(すなわち、最適化された本発明の切断短縮されたGAAコード配列、本発明のキメラGAAコード配列、又は本発明のキメラかつ配列の最適化されたGAAコード配列)、及びポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、又は別の天然に存在するか若しくは人工のポリアデニル化シグナル)を含む、発現カセットである。特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、場合によりエンハンサー(例えばApoE制御領域)が前に存在するプロモーター、イントロン(特に上記に定義されているようなイントロン)、本発明のコード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。さらなる特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、ApoE制御領域などのエンハンサー、プロモーター、イントロン(特に上記に定義されているようなイントロン)、本発明のコード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。本発明のさらなる特定の実施態様では、発現カセットは、5’から3’の方向に、ApoE制御領域、hAAT肝特異的プロモーター、HBB2イントロン(特に上記に定義されているような改変されたHBB2イントロン)、本発明のコード配列、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含み、例えば、
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードしかつ配列番号5のシグナルペプチドをコードしている最適化されていないヌクレオチド配列を含む、配列番号22;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号5のシグナルペプチドをコードしている最適化された配列を含む、配列番号23;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号5のシグナルペプチドをコードしている別の最適化された配列を含む、配列番号24;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化された配列を含む、配列番号25;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化された配列を含む、配列番号26;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型(配列番号9の最適化されていない配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化されていない配列を含む、配列番号37;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化された配列を含む、配列番号38;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている別の最適化された配列を含む、配列番号39;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型(配列番号9の最適化されていない配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化されていない配列を含む、配列番号40;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている別の最適化された配列を含む、配列番号41;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型(配列番号9の最適化されていない配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化されていない配列を含む、配列番号42;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化された配列を含む、配列番号43;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている別の最適化された配列を含む、配列番号44;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型(配列番号9の最適化されていない配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化されていない配列を含む、配列番号45;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている最適化された配列を含む、配列番号46;並びに
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)及び配列番号3のシグナルペプチドをコードしている別の最適化された配列を含む、配列番号47
に示される構築物である。
【0115】
本発明の他の発現カセットは、以下の核酸配列を含み得る:
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列。
【0116】
これらの特定の構築物の代替的な実施態様では、配列番号1をコードしている配列は、配列番号33をコードしている配列によって置換されている。
【0117】
特定の実施態様では、発現カセットは、ApoE制御領域、hAAT肝特異的プロモーター、コドン最適化HBB2イントロン、本発明のコード配列、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。
【0118】
本発明の核酸構築物の設計の際に、当業者は、該構築物を細胞又は器官に送達するために使用されるベクターのサイズ限界を配慮することに気を付けるだろう。特に、当業者は、AAVベクターの主な限界はその積載能であり、これはAAV血清型によって異なり得るが、ほぼ親ウイルスゲノムのサイズが限界であると考えられている。例えば、5kbが、AAV8キャプシドにパッケージングされると通常考えられている最大のサイズである。(Wu Z. et al., Mol Ther., 2010, 18(1): 80-86; Lai Y. et al., Mol Ther., 2010, 18(1): 75-79; Wang Y. et al., Hum Gene Ther Methods, 2012, 23(4): 225-33)。したがって、当業者は、本発明の実施の際に、AAV5’-及び3’-ITRをコードしている配列を含む、結果として得られる核酸配列が、装備されるAAVベクターの積載能の好ましくは110%を超えないように、特に好ましくは5.5kbを超えないように、本発明の核酸構築物の成分を選択するように気を付けるだろう。
【0119】
本発明はまた、本明細書に開示されているような核酸分子又は構築物を含むベクターにも関する。特に、本発明のベクターは、タンパク質の発現に、好ましくは遺伝子療法に使用するのに適したベクターである。1つの実施態様では、該ベクターはプラスミドベクターである。別の実施態様では、該ベクターは、本発明の核酸分子、特に本発明のGAAポリペプチドをコードしているメッセンジャーRNAを含有している、ナノ粒子である。別の実施態様では、該ベクターは、活動亢進スリーピングビューティ(SB100X)トランスポゾン系(Mates et al. 2009)などの、標的細胞のゲノム内への本発明の核酸分子又は構築物の組み込みを可能とする、トランスポゾンに基づいた系である。別の実施態様では、該ベクターは、肝組織又は肝細胞、筋肉細胞、CNS細胞(例えば脳細胞)、又は造血幹細胞、例えば赤血球系統の細胞(例えば赤血球)などの関心対象の任意の細胞を標的化する、遺伝子療法に適したウイルスベクターである。この場合、本発明の核酸構築物は、当技術分野において周知であるような、効果的なウイルスベクターを生成するのに適した配列も含有している。特定の実施態様では、該ウイルスベクターは、組込み用ウイルスから得られる。特に、該ウイルスベクターは、レトロウイルス又はレンチウイルスから誘導され得る。さらなる特定の実施態様では、該ウイルスベクターはAAVベクター、例えば肝組織又は肝細胞を形質導入するのに適したAAVベクター、より特定するとAAV-1、-2及びAAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する工学操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する工学操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V型を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV血清型、例えばAAVpo4及びAAVpo6などのベクター又はレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター及びα-レトロウイルスである。当技術分野において公知であるように、使用するのに考えられる具体的なウイルスベクターに応じて、追加の適切な配列が、機能的なウイルスベクターを得るために本発明の核酸構築物に挿入されるだろう。適切な配列としては、AAVベクター用のAAV ITR、又はレンチウイルスベクター用のLTRが挙げられる。したがって、本発明はまた、それぞれの側においてITR又はLTRによってフランキングされた、上記のような発現カセットにも関する。
【0120】
ウイルスベクターの利点は、この開示の以下の部分において考察されている。ウイルスベクターが、本発明の核酸分子又は構築物を送達するのに好ましく、例えば、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、又は非病原性パルボウイルス、より好ましくはAAVベクターがある。ヒトパルボウイルスアデノ随伴ウイルス(AAV)は、感染した細胞のゲノムに組み込むことにより潜伏感染を確立することのできる、天然では複製欠損であるディペンドウイルスである。最後の特性は、哺乳動物ウイルスの中では独特なようである。なぜなら、組込みが、第19番染色体(19q13.3-qter)上に位置するAAVS1と呼ばれるヒトゲノム内の特定の部位で起こるからである。
【0121】
それ故、AAVベクターは、ヒト遺伝子療法のためのベクター候補としてかなりの関心を集めた。ウイルスの好ましい特性には、あらゆるヒト疾患を伴わないこと、分裂中の細胞及び分裂していない細胞の両方に感染することができること、及び様々な組織に由来する多種多様な細胞株に感染することができることがある。
【0122】
ヒト又は非ヒト霊長類(NHP)から単離され十分に特徴付けられたAAVの血清型の中で、ヒト血清型2は、遺伝子導入用ベクターとして開発された最初のAAVである。他の現在使用されているAAV血清型としては、AAV-1、AAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する工学操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する工学操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V型を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV血清型、例えばAAVpo4及びAAVpo6、並びにチロシン、リジン、及びセリンキャプシド突然変異体のAAV血清型などが挙げられる。さらに、他の非天然の工学操作された変異体及びキメラAAVも有用であり得る。
【0123】
AAVウイルスを慣用的な分子生物学技術を使用して工学操作し得、これにより、核酸配列を細胞特異的に送達するために、免疫原性を最小限とするために、安定性及び粒子の寿命を調整するために、効果的な分解のために、核への正確な送達のために、これらの粒子を最適化することが可能となる。
【0124】
ベクターへの構築のための望ましいAAV断片は、キャップタンパク質(vp1、vp2、vp3を含む)及び超可変領域、repタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40を含む)及びこれらのタンパク質をコードしている配列を含む。これらの断片は、様々なベクター系及び宿主細胞において容易に利用され得る。
【0125】
Repタンパク質を欠失しているAAV系組換えベクターは、低い効率で宿主のゲノムに組み込み、標的細胞内で数年間におよび持続し得る安定な環状エピソームとして主に存在する。AAV天然血清型を使用する代わりに、天然に存在しないキャプシドタンパク質を有するAAVを含むがこれに限定されない、人工的なAAV血清型を本発明の脈絡において使用し得る。このような人工的なキャプシドは、選択された異なるAAV血清型から、同じAAV血清型の非連続的部分から、AAVではないウイルス入手源から、又はウイルスではない入手源から得ることのできる異種配列と組み合わせた、選択されたAAV配列(例えばvp1キャプシドタンパク質の断片)を使用して、任意の適切な技術によって作製され得る。人工的なAAV血清型は、キメラAAVキャプシド、組換えAAVキャプシド、又は「ヒト化」AAVキャプシドであり得るがこれらに限定されない。
【0126】
したがって、本発明は、本発明の核酸分子又は構築物を含むAAVベクターに関する。本発明の脈絡において、AAVベクターは、関心対象の標的細胞、特に肝癌細胞に形質導入することのできるAAVキャプシドを含む。特定の実施態様によると、AAVベクターは、AAV-1、-2、AAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する工学操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する工学操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V型を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV、例えばAAVpo4及びAAVpo6、並びにチロシン、リジン、及びセリンキャプシド突然変異体のAAV血清型などのものである。特定の実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型のものである(すなわち、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型のキャプシドを有する)。さらなる特定の実施態様では、AAVベクターは偽型ベクターであり、すなわち、そのゲノム及びキャプシドは、異なる血清型のAAVに由来する。例えば、偽型AAVベクターは、そのゲノムが上記の1つのAAV血清型に由来し、そのキャプシドが別の血清型に由来する、ベクターであり得る。例えば、偽型ベクターのゲノムは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型に由来するキャプシドを有し得、そのゲノムは異なる血清型に由来し得る。特定の実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、又はAAVrh74血清型、特にAAV8又はAAV9血清型、より特定するとAAV8血清型のキャプシドを有する。
【0127】
ベクターは、導入遺伝子を筋肉細胞に送達するのに使用するためのものである具体的な実施態様では、AAVベクターは、とりわけ、AAV8、AAV9、及びAAVrh74からなる群より選択され得る。ベクターは、導入遺伝子を肝細胞に送達するのに使用するためのものである別の具体的な実施態様では、AAVベクターは、とりわけ、AAV5、AAV8、AAV9、AAV-LK03、AAV-Anc80及びAAV3Bからなる群より選択され得る。
【0128】
別の実施態様では、キャプシドは改変されたキャプシドである。本発明の脈絡において、「改変されたキャプシド」は、キメラキャプシド、又は1つ以上の野生型AAV VPキャプシドタンパク質に由来する1つ以上の変異VPキャプシドタンパク質を含むキャプシドであり得る。
【0129】
特定の実施態様では、AAVベクターはキメラベクターであり、すなわち、そのキャプシドは、少なくとも2つの異なるAAV血清型に由来するVPキャプシドタンパク質を含むか、又は、少なくとも2つのAAV血清型に由来するVPタンパク質領域若しくはドメインと組み合わせた少なくとも1つのキメラVPタンパク質を含む。肝細胞を形質導入するのに有用なこのようなキメラAAVベクターの例は、Shen et al., Molecular Therapy, 2007及びTenney et al., Virology, 2014に記載されている。例えば、キメラAAVベクターは、AAV8キャプシド配列と、AAV8血清型とは異なるAAV血清型の配列、例えば上記に具体的に記載されているもののいずれかとの組合せから得ることができる。別の実施態様では、AAVベクターのキャプシドは、国際公開公報第2015013313号に記載のものなどの1つ以上の変異VPキャプシドタンパク質、特に、高い肝指向性を示す、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4及びRHM15-6キャプシド変異体を含む。
【0130】
別の実施態様では、改変されたキャプシドはまた、エラープローンPCR及び/又はペプチド挿入(例えばBartel et al., 2011に記載のような)によって挿入されたキャプシド改変に由来し得る。さらに、キャプシド変異体は、チロシン突然変異体などの単一アミノ酸変化を含み得る(例えば、Zhong et al., 2008に記載のような)。
【0131】
さらに、AAVベクターのゲノムは、一本鎖又は自己相補的二本鎖ゲノムのいずれかであり得る(McCarty et al., Gene Therapy, 2003)。自己相補性二本鎖AAVベクターは、AAV末端反復配列の1つから末端解離部位(trs)を欠失させることによって作製される。これらの改変されたベクター(その複製ゲノムは、野生型AAVゲノムの半分の長さである)は、DNA二量体をパッケージングする傾向を有する。好ましい実施態様では、本発明の実施に装備されるAAVベクターは一本鎖ゲノムを有し、さらに好ましくはAAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含む。
【0132】
特に好ましい実施態様では、本発明は、一本鎖又は二本鎖の自己相補性ゲノム(例えば一本鎖ゲノム)に、本発明の核酸構築物を含む、AAVベクターに関する。1つの実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含む。さらなる特定の実施態様では、該核酸は、プロモーター、特に偏在性プロモーター又は肝特異的プロモーターに作動可能に連結されている。特定の変異体の実施態様によると、該プロモーターは、遍在性プロモーター、例えばサイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、及びSV40初期プロモーターである。特定の変異体では、該偏在性プロモーターはCAGプロモーターである。別の変異体によると、該プロモーターは肝特異的プロモーター、例えばα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターである。特定の変異体では、肝特異的プロモーターは、配列番号14のhAAT肝特異的プロモーターである。さらなる特定の実施態様では、本発明のAAVベクターのゲノムに含まれる核酸構築物はさらに、上記のようなイントロン、例えばプロモーターと、GAAコード配列をコードしている核酸配列(すなわち、本発明の最適化されたGAAコード配列、本発明のキメラGAAコード配列、または本発明のキメラかつ最適化されたGAAコード配列)との間に配置されたイントロンを含む。AAVベクターゲノム内に導入された核酸構築物内に含まれ得る代表的なイントロンとしては、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、FIXイントロン、及びニワトリβ-グロビンイントロンが挙げられるがこれらに限定されない。AAVベクターのゲノム内の該イントロンは、古典的な(すなわち改変されていない)イントロンであっても、又は、該イントロン内の代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させるために若しくはさらには完全に除去するために設計された改変されたイントロンであってもよい。本発明の核酸がAAVベクター内に導入されている、この実施態様の実施に使用され得る、改変されたイントロン及び改変されていないイントロンは、上記に徹底的に記載されている。特定の実施態様では、本発明のAAVベクター、特にAAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含むAAVベクターは、そのゲノム内に、改変された(すなわち最適化された)イントロン、例えば配列番号17の改変されたHBB2イントロン、配列番号19の改変されたFIXイントロン、及び配列番号21の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンを含む。さらなる特定の実施態様では、本発明のベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含み、5’から3’の方向に、AAV 5’-ITR(例えばAAV2 5’-ITR);ApoE制御領域;hAAT肝特異的プロモーター;HBB2イントロン(特に上記に定義されているような改変されたHBB2イントロン);本発明のGAAコード配列;ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル;及びAAV 3’-ITR(例えばAAV2 3’-ITR)を含有しているゲノム、例えばAAV 5’-ITR(例えばAAV2 5’-ITR)とAAV 3’-ITR(例えばAAV2 3’-ITR)によってフランキングされている配列番号22~26及び配列番号37~47に示される核酸構築物を含むゲノムを含む、AAVベクターである。本発明の実施に有用である他の核酸構築物は、上記のもの、例えば以下を含む:
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型をコードしかつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されていないヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ29切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4又は6のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ42切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ43切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型をコードし(配列番号12の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列;
-配列番号1の親hGAAに由来するGAAのΔ47切断短縮型をコードし(配列番号13の最適化された配列に由来するヌクレオチド配列)かつ配列番号4、6、又は7のシグナルペプチドをコードしている、最適化されたヌクレオチド配列。
【0133】
これらの特定の構築物の代替的な実施態様では、配列番号1をコードしている配列は、配列番号33をコードしている配列によって置換されている。
【0134】
本発明の特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、上記のような肝特異的プロモーターを含み、該ベクターは、上記のような肝組織又は肝細胞を形質導入することのできるウイルスベクターである。本発明者らは、この実施態様のお蔭で、肝癌細胞において分泌可能な形態のGAAを発現させ、かつタンパク質に対する免疫寛容を誘発するための高度に効果的かつ最適化されたベクターを開発する際に、肝臓の免疫寛容誘発特性及び代謝特性が有利には装備されることを示すデータを以下に提示する。
【0135】
さらに、さらなる特定の実施態様では、本発明は、関心対象の細胞における遺伝子送達及び処置効力を改善するための、2つのベクター、例えば2つのウイルスベクター、特に2つのAAVベクターの組合せを提供する。例えば、2つのベクターは、これらの2つのそれぞれのベクター内に、1つの異なるプロモーターの制御下にある、本発明のGAAタンパク質をコードしている本発明の核酸分子を有し得る。特定の実施態様では、一方のベクターは、肝特異的プロモーターであるプロモーター(例えば上記のようなものの1つ)を含み、他方のベクターは、糖原病の処置のための関心対象の別の組織に特異的であるプロモーター、例えば筋肉特異的プロモーター、例えばデスミンプロモーターを含む。この実施態様の特定の変異体では、このベクターの組合せは、国際公開公報第2015196179号に記載のように作製された、複数の共パッケージングされたAAVベクターに相当する。
【0136】
本発明はまた、エクスビボにおける遺伝子療法の場合と同様に、本発明の核酸分子又は構築物を用いて形質転換された細胞、例えば肝細胞に関する。本発明の細胞は、それを必要とする被験者、例えばGAA欠損患者に、任意の適切な投与経路によって、例えば該被験者の肝臓又は血流への注射を介して送達され得る。特定の実施態様では、本発明は、本発明の核酸分子、核酸構築物、又はベクター、特にレンチウイルスベクターを、肝細胞、特に処置される予定の被験者の肝細胞に導入する工程、及び該核酸が導入されている形質転換された該肝細胞を被験者に投与する工程を含む。有利には、この実施態様は、該細胞からGAAを分泌するのに有用である。特定の実施態様では、肝細胞は、処置される予定の患者に由来する肝細胞であるか、又は、患者へのその後の投与のために、さらにインビトロにおいて形質転換されそして肝細胞へと分化させた肝幹細胞である。
【0137】
本発明はさらに、そのゲノム内に、本発明に記載のGAAタンパク質をコードしている核酸分子又は構築物を含む、トランスジェニック非ヒト動物に関する。特定の実施態様では、動物はマウスである。
【0138】
以下の実施例において具現化された具体的な送達システムとは別に、様々な送達システムが知られており、これを使用して本発明の核酸分子又は構築物を投与することができ、例えば、本発明のコード配列を発現することのできる組換え細胞をリポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル内に封入、受容体媒介エンドサイトーシス、レトロウイルス若しくは他のベクターの一部としての治療用核酸の構築などがある。
【0139】
1つの実施態様によると、本発明のGAAポリペプチド、核酸分子、核酸構築物、又は細胞を被験者の肝臓に任意の適切な経路によって導入することが望ましくあり得る。さらに、ミニサークル及びトランスポゾンなどの裸DNAを、送達又はレンチウイルスベクターのために使用することができる。さらに、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEN、及びCRISPRなどの遺伝子編集技術を使用して、本発明のコード配列を送達することもできる。
【0140】
本発明はまた、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド、又は細胞を含む、医薬組成物を提供する。このような組成物は、治療有効量の治療薬(本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド又は細胞)及び薬学的に許容される担体を含む。具体的な実施態様では、「薬学的に許容される」という用語は、動物及びヒトへの使用について、米国政府若しくは州政府の規制当局によって認可されているか、又は米国薬局方若しくは欧州薬局方若しくは他の一般的に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指し、これと共に治療薬が投与される。このような薬学的担体は、無菌液体、例えば水及び油、例えば石油、動物油、植物油、又は合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。医薬組成物が静脈内投与される場合には水が好ましい担体である。食塩水溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も、液体担体として、特に注射液用に使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0141】
所望であれば、該組成物はまた、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝化剤も含有し得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの剤形をとり得る。経口用製剤は、標準的な担体、例えば製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。適切な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、治療有効量の治療薬、好ましくは精製形の治療薬を、適切な量の担体と一緒に含有することにより、被験者への適切な投与のための剤形を提供するだろう。特定の実施態様では、本発明の核酸、ベクター又は細胞は、リン酸緩衝食塩水を含みかつ0.25%のヒト血清アルブミンの補充された組成物に製剤化される。別の特定の実施態様では、本発明の核酸、ベクター、又は細胞は、乳酸リンゲル液及び非イオン性界面活性剤、例えばプルロニックF68を、全組成物の重量に対して、0.01~0.0001%の最終濃度で、例えば0.001%の濃度で含む組成物に製剤化される。該製剤はさらに、血清アルブミン、特にヒト血清アルブミン、例えば0.25%のヒト血清アルブミンを含み得る。保存又は投与のいずれかのための他の適切な製剤は当技術分野において、特に国際公開公報第2005/118792号又はAllay et al., 2011から公知である。
【0142】
好ましい実施態様では、前記組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として慣用的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌等張緩衝水溶液中の溶液である。必要であれば、該組成物はまた、可溶化剤、及び注射部位における疼痛を和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。
【0143】
1つの実施態様では、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド又は細胞は、小胞で、特にリポソームで送達され得る。さらに別の実施態様では、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド又は細胞は、放出制御システムで送達され得る。
【0144】
本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド又は細胞の投与法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施態様では、投与は、静脈内又は筋肉内経路を介する。本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド又は細胞(ベクター化されていようがいまいが)は、任意の簡便な経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜裏打ち(例えば口腔粘膜、直腸粘膜、及び腸管粘膜など)を通した吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与されてもよい。投与は全身性であっても、局所的であってもよい。
【0145】
具体的な実施態様では、本発明の医薬組成物を処置の必要な領域、例えば肝臓に局所的に投与することが望ましくあり得る。これは、例えば、埋込剤を用いることによって成し遂げられ得、該埋込剤は、多孔性、無孔性、又はゲル状材料、例えば膜、例えばシリコンゴム膜、又は繊維である。
【0146】
糖原病の処置に有効であろう本発明の治療薬(すなわち、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド又は細胞)の量は、標準的な臨床的技術によって決定され得る。さらに、インビボ及び/又はインビトロアッセイを場合により使用することにより、至適用量範囲を予測するのを補助し得る。製剤中に使用される予定の正確な用量はまた、投与経路及び疾患の深刻度にも依存し、医師の判断及び各患者の環境に従って決断されるべきである。それを必要とする被験者に投与される、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド又は細胞の用量は、投与経路、処置される具体的な疾患、被験者の年齢、又は治療効果を達成するために必要とされる発現レベルを含むがこれらに限定されない、いくつかの因子に基づいて変更されるだろう。当業者は、この分野におけるその知識に基づいて、これらの因子及びその他の因子に基づいて必要とされる用量範囲を容易に決定することができる。被験者にAAVベクターなどのウイルスベクターを投与する工程を含む処置の場合、ベクターの典型的な用量は、体重1kgあたり少なくとも1×10個のベクターゲノム(vg/kg)、例えば少なくとも1×10vg/kg、少なくとも1×1010vg/kg、少なくとも1×1011vg/kg、少なくとも1×1012vg/kg、少なくとも1×1013vg/kg、又は少なくとも1×1014vg/kgである。
【0147】
本発明はまた、治療有効量の本発明の核酸、ベクター、GAAポリペプチド、医薬組成物、又は細胞を、それを必要とする被験者に送達する工程を含む、糖原病を処置するための方法にも関する。
【0148】
本発明はまた、糖原病を処置するための方法にも関し、該方法は、導入遺伝子に対して(すなわち本発明のGAAポリペプチドに対して)全く免疫応答を誘発しないか、又は、導入遺伝子に対して低減された免疫応答を誘発し、治療有効量の本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、医薬組成物、又は細胞を、それを必要とする被験者に送達する工程を含む。本発明はまた、糖原病を処置するための方法にも関し、該方法は、治療有効量の本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、医薬組成物、又は細胞の、それを必要とする被験者への反復投与を含む。この態様では、本発明の核酸分子又は核酸構築物は、肝細胞において機能的であるプロモーターを含み、これにより、それから生成された発現されたGAAポリペプチドに対する免疫寛容が可能となる。同様に、この態様では、この態様において使用される医薬組成物は、肝細胞において機能的であるプロモーターを含む核酸分子又は核酸構築物を含む。肝細胞の送達の場合、該細胞は、処置を必要とする被験者から事前に回収され、その中に本発明の核酸分子又は核酸構築物を導入することによって、それらが本発明のGAAポリペプチドを生成することを可能とするように工学操作された細胞であり得る。反復投与を含む態様における1つの実施態様によると、該投与は、少なくとも1回以上繰り返され得、さらには週1回、月1回、又は年1回などの周期的計画に従って実施されることが考えられ得る。周期的計画はまた、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10年間毎に1回、又は10年間以上毎に1回の投与も含み得る。別の特定の実施態様では、本発明のウイルスベクターの各投与の投与は、それぞれの連続した投与について異なるウイルスを使用して実施され、これにより、以前に投与されたウイルスベクターに対する起こり得る免疫応答による効力の減少は回避される。例えば、AAV8キャプシドを含むウイルスベクターの1回目の投与に続いて、AAV9キャプシドを含むベクターの投与が行なわれ得、又はさらにはレトロウイルスベクター若しくはレンチウイルスベクターなどのAAVに関連性のないウイルスの投与が行なわれ得る。
【0149】
本発明によると、処置は、治癒効果、寛解効果、又は予防効果を含み得る。したがって、治療処置及び予防処置は、特定の糖原病の症状の寛解、又は特定の糖原病を発症するリスクの予防若しくはさもなくば低減を含む。「予防」という用語は、特定の容態の重症度又は発症を低減させることと考えられ得る。「予防」はまた、容態を有すると事前に診断された患者における特定の容態の再発を予防することも含む。「治療」はまた、既存の容態の重症度を低減させ得る。「処置」という用語は本明細書において、動物、特に哺乳動物、より特定するとヒト被験者に恩恵をもたらし得る任意の処方計画を指すために使用される。
【0150】
本発明はまた、本発明の核酸分子又は核酸構築物を、それを必要とする患者の単離された細胞、例えば単離された造血幹細胞に導入する工程、及び該細胞をそれを必要とする該患者に導入する工程を含む、糖原病の処置のためのエクスビボにおける遺伝子療法に関する。この態様の特定の実施態様では、核酸分子又は構築物は、上記に定義されているようなベクターを用いて細胞に導入される。特定の実施態様では、ベクターは組込み用ウイルスベクターである。さらなる特定の実施態様では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターである。例えば、van Til et al., 2010, Blood, 115(26), p. 5329に開示されているようなレンチウイルスベクターを、本発明の方法における実施に使用し得る。
【0151】
本発明はまた、医薬品としての使用のための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド、又は細胞にも関する。
【0152】
本発明はまた、GAA遺伝子の突然変異によって引き起こされる疾患を処置するための方法において、特にポンペ病を処置するための方法において使用するための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド、又は細胞にも関する。本発明はさらに、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型などの糖原病を処置するための方法に使用するための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド、又は細胞に関する。本発明の切断短縮されたGAAポリペプチドは、それを必要とする患者に、酵素補充療法(ERT)に使用するために、例えば、糖原病、例えば糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型の酵素補充療法にも使用するために投与され得る。
【0153】
本発明はさらに、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型などの糖原病の処置に有用な医薬品の製造における、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、GAAポリペプチド、又は細胞の使用にも関する。
【0154】
実施例
本発明は、以下の実験実施例及び添付の図面を参照することによりさらに詳述されている。これらの実施例は、説明のためだけに提供され、制限する意図はない。
【0155】
材料及び方法
GAA活性
凍結した組織試料を蒸留水中でホモジナイズした後にGAA活性を測定した。50~100mgの組織を秤量し、ホモジナイズし、次いで、10000×gで20分間遠心分離にかけた。反応を、96ウェルプレートにおいて10μlの上清及び20μlの基質(4MUα-D-グルコシド)を用いて組み立てた。反応混合物を37℃で1時間インキュベートし、次いで、150μlの炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.5)の添加によって停止した。標準曲線(0~2500pmol/μlの4MU)を使用して、個々の反応混合物から放出された蛍光4MUを、449nm(発光)及び360nm(励起)でEnSpireアルファプレートリーダー(パーキンエルマー社)を使用して測定した。清澄化した上清のタンパク質濃度をBCA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)によって定量した。GAA活性を計算するために、放出された4MU濃度を試料のタンパク質濃度で割り、活性をnmol/時間/mg(タンパク質)として報告した。
【0156】
マウス試験
Gaa-/-マウスを、エキソン6の標的化破壊によって作製し、C57BL/6J/129X1/SvJバックグランドに維持した(Raben N. et al 1998)。0.2mlの容量のベクターを、尾静脈を介して送達した。血清試料を月1回収集して、分泌されたhGAAのレベルをモニタリングした。PBSの注射された罹患動物及び野生型同腹仔を対照として使用した。
【0157】
非ヒト霊長類の試験
雄のカニクイザルを、ステンレス鋼のケージで飼い、12時間の明暗サイクルに維持した。全てのマカクが、試験開始前に1:5未満の中和抗体力価を示した。2×1012vg/kgの用量のAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1を、伏在静脈を介して注入した。血液試料を、大腿静脈を介した注射の12日前及び30日後に採取した。全血を、EDTA含有チューブに収集し、遠心分離にかけて血清を分離した。ベクター投与から3カ月後に全てのマカクを安楽死させた。動物をまず、ケタミン/デクスメデトミジンの混合物を用いて麻酔し、次いで、静注ペントバルビタールナトリウムを使用して安楽死させた。組織を直ちに収集し、液体窒素で凍結させた。
【0158】
ウェスタンブロット分析
凍結させた筋肉から完全ホモジネートを得た。抽出物中のタンパク質の濃度を、製造業者の説明書に従って、ピアス社のBCAタンパク質アッセイ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)によって決定した。ウェスタンブロットを、抗hGAA抗体(アブカム社)を用いて実施した。抗チューブリン抗体(シグマアルドリッチ社)をローディング対照として使用した。
【0159】
結果
改善された分泌及び低減した免疫原性を有する新規な形態のGAAを設計する目的で、本発明者らは、場合により切断短縮型のGAAを代替シグナルペプチドと組み合わせた、切断短縮型のGAAを作製することを決断した。
【0160】
配列番号2に示されるヒトGAAは、これらの新規な形態を設計するための基盤の役目を果たした。配列番号1は、GAAの相当する天然シグナルペプチド(配列番号2のアミノ酸1~27)の欠けた、配列番号2の配列に相当する。核酸構築物は、そのN末端において切断短縮された配列番号1に由来するGAAポリペプチドをコードするように設計された。本発明者らは、配列番号1の最初の8アミノ酸に相当するコドンを欠失させた(Δ8)野生型hGAAコード配列(シグナルペプチドコード配列を含む野生型hGAAコード配列である配列番号8のヌクレオチド82~2859に相当する、配列番号9)に基づいて核酸配列を設計することから始めた。野生型hGAAコード配列に加えて、本発明者らは、起こり得る配列特異的効果を排除するために、Δ8切断短縮hGAAポリペプチドをコードしている最適化された核酸配列(配列番号10及び配列番号11は、それぞれhGAAco1及びhGAAco2の最適化コード配列に相当する)を設計した。
【0161】
【表1】
【0162】
hGAA配列のアミノ酸1~27(ここではsp1として定義されている、hGAAの天然シグナルペプチドに相当する;その配列は配列番号4に示される)は、ここではsp2(配列番号5に示される配列)として定義されるヒトα-1-アンチトリプシン配列(NP_000286.3)のアミノ酸1~24によって置換されている。本発明者らは、ヒト肝癌細胞(Huh-7)に切断短縮されたhGAAをコードしている構築物をその完全サイズのバージョンと平行してトランスフェクトし、本発明者らは48時間後に培地中に放出されたhGAAの量を測定した(図1A)。hGAA配列のΔ8欠失により、野生型配列(hGAA)及びコドンの最適化された(hGAAco2)配列の両方において分泌レベルの有意な50%の増加がもたらされた。異なるコドンの最適化された配列(hGAAco1)に対して実施された同じ切断短縮によっても、同程度までhGAAの分泌が改善された。
【0163】
シグナルペプチドの後の配列の変化が、hGAAの分泌を改善させ得ることを確認するために、本発明者らはhGAAポリペプチドをさらに切断短縮した。本発明者らは、hGAAco1構築物からhGAAの最初の42アミノ酸に相当するコドンを排除し(Δ42)、本発明者らはそれらをキモトリプシノーゲンB1に由来するシグナルペプチド(sp7;配列番号3に示される配列)で置換した。次いで、本発明者らは、sp7シグナルペプチドと融合させたそのΔ8バージョンを有するこの新規な欠失構築物を用いて得られた分泌効力と、sp1又はsp7を有する完全サイズのhGAAco1を用いて得られた分泌効力を比較した。本発明者らは、Huh-7細胞にそうした構築物をトランスフェクトし、本発明者らは48時間後に培地中のhGAA活性を測定した。予想された通り、本発明者らは、完全サイズのhGAAco1のトランスフェクション後のhGAA活性を測定することができ(GFPに対してp=0.055)、その分泌は、野生型シグナルペプチドをsp7で置換することによって2倍増加する(hGAAco1に対してp=0.006)。驚くべきことに、sp7シグナルペプチドと融合させたΔ8hGAA配列及びΔ42hGAA配列の両方が、完全サイズの配列と比較して、hGAAの2倍の分泌増加を示した(sp7-hGAAco1に対してそれぞれp=0.0002及びp=0.0003、図1B)。
【0164】
要するに、これらのデータは、効果的なシグナルペプチドと結合させたhGAA配列の切断短縮は、インビトロにおいてタンパク質の分泌を増加させることができることを実証する。さらに、切断短縮により主な新生抗原が発生しないので(これは治療用製品の工学操作における利点である)、切断短縮は、天然配列の突然変異誘発と比較して1つの重要な利点を有する。
【0165】
次いで、本発明者らは、インビボで、ポンペ病マウスモデルにおいてそうした所見を確認した。本発明者らは、アポリポタンパク質Bエンハンサーとヒトα-1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)の融合から得られた非常に強力な肝特異的プロモーターの転写制御下にある、sp7シグナルペプチドと融合させたhGAAco1の完全サイズ、Δ8、又はΔ42を発現しているAAV8ベクターをGAA-/-マウス(Raben et al J. Bio. Chem. 1998)に注射した。上記の2×1012vg/kgのベクターの注射から1カ月後、マウスから採血し、血清中のhGAA活性を測定した。sp7と融合させた完全長のhGAAco1を発現しているベクターを用いたマウスの処置は、血流中に上昇したレベルのhGAAを示した(PBSに対してp=0.115)。驚くべきことに、切断短縮されたhGAAであるΔ8及びΔ42の両方により、血清中のhGAAレベルは有意に上昇した(それぞれp=0.014及びp=0.013)。
【0166】
これらのデータは、hGAAの最初のアミノ酸の欠失により、血流中に分泌されるhGAAのレベルは有意に改善されることを示す。
【0167】
さらに、イズロネート-2-スルファターゼに由来するアミノ酸1~25(sp6;配列番号6)に相当する別のシグナルペプチドを、hGAAのΔ8切断短縮型に融合させた。本発明者らは、sp1、sp2、sp6、sp7、又はsp8と融合させた最適化されたhGAA(hGAAco1)を発現しているプラスミドと平行して、GFP又は野生型hGAA(hGAA;配列番号30のアミノ酸残基28~952に相当する親ポリペプチド)を発現しているプラスミドを用いて肝癌細胞(Huh-7)をトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、増殖培地をhGAAの存在について分析した。注目すべきことには、これらの構築物により、GFPのトランスフェクトされた細胞によって示される陰性細胞において観察されたものよりも有意に高いレベルのhGAAの分泌がもたらされた(図3)。
【0168】
次いで、本発明者らは、Δ8-hGAAを用いて上記のように処置されたGAA-/-マウスの心臓、横隔膜、及び四頭筋におけるグリコーゲン含量を評価した。注目すべきは、本発明者らは、Δ8-hGAAco発現ベクターを用いての処置後に組織中に高いレベルのhGAAを観察し(データは示されていない)、これは、考察された全ての組織におけるグリコーゲン含量の有意な減少と相関していた(図4B~D)。特に、心臓(図4B)における、非常に効果的なシグナルペプチドsp7及び8を有するベクターを用いての処置後に測定されたグリコーゲンレベルは、罹患していない動物において観察されたものと区別できなかった(それぞれ、野生型に対してp=0.983及び0.996)。重要なことには、sp7ベクター及びsp8ベクターの両方を用いての処置後に観察されたレベルは、PBSの注射された又はsp1シグナルペプチドと融合させたhGAAco発現ベクターを用いて処置されたGAA-/-動物と比較して有意に減少していた。
【0169】
本発明者らはまた、本発明者らのベクターを用いての肝臓への形質導入が、導入遺伝子に対する体液性応答を誘発するかどうかを試験した。マウスに、肝特異的プロモーターの転写制御下にある、天然sp1シグナルペプチドを有するhGAAco1(co)、又はsp2、sp7、若しくはsp8と融合させたΔ8-hGAAco1を発現しているAAV8ベクターを静脈内注射した。結果を図5に提示する。構成性プロモーターの転写制御下にあるΔ8-hGAAco1を発現しているAAVを筋肉内注射されたGaa-/-は、非常に高いレベルの全IgG(約150μg/mL)を示し、一方、一般的に肝臓において同じタンパク質を発現しているベクターは、より低いレベルの体液性応答を示した。興味深いことに、sp1 hGAAco1(co)発現ベクターを注射されたマウスは、両方の用量において検出可能なレベルの抗体を示し、一方、工学操作された高度に分泌されるベクターを注射されたマウスは、検出不可能なIgGレベルを示した。これらのデータは、肝臓における導入遺伝子の発現が、末梢性寛容の誘発に必要であることを示し、また、それらは、効果的なシグナルペプチドとの融合によって達成されるhGAAの高い循環レベルが、タンパク質それ自体に対する体液性応答の低減を誘発するという見通しも提供する。
【0170】
マウス試験において選択された最善の挙動を示すベクターを、2匹の非ヒト霊長類(NHP、カニクイザル属)に注射することにより、本発明者らのベクターの分泌の有効性及び筋肉への取り込みを確認した。本発明者らは、2匹のサルに2×1012vg/kgのAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1を注射した。注射の1カ月後、本発明者らは、特異的な抗hGAA抗体を使用してウェスタンブロットによって2匹の動物の血清中のhGAAレベルを測定した。本発明者らは、2匹のサルにおいてhGAAのサイズと適合したサイズを有する明瞭なバンドを観察した。このバンドは、ベクターの注射から12日前に得られた血清試料中には存在せず、したがって、本発明者らの検出法の特異性が確認された(図6A)。注射の3カ月後、本発明者らは動物を屠殺し、本発明者らは組織を入手し、肝臓から血流中に分泌されたhGAAが筋肉によって効果的に取り込まれたかどうかを確認した。本発明者らは、2匹のサルの二頭筋及び横隔膜から得られた完全溶解液に対して、hGAAに特異的な抗体を使用してウェスタンブロットを実施した。興味深いことに、本発明者らは、2番の動物に明瞭なバンドを観察することができ、これはまた、血流中においても最も高いhGAAレベルを示した(図6B)。また、1番の動物において本発明者らは、分析された両方の筋肉においてhGAAのものと一致する分子量を有するかすかなバンドを観察することができた。これらのデータは、AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1ベクターが、非ヒト霊長類の肝臓を効果的に形質導入することを示す。それらはまた、血流中に分泌されたタンパク質が、筋肉に効果的に取り込まれ、この取り込みは、血中において測定されたhGAAのレベルと相関することを実証する。
【0171】
本発明者らはまた、GSD IIIマウスモデルにおけるマウス試験において選択された最善な挙動を示すベクター(AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1)の効果を決定した。本発明者らはグリコーゲン枝切り酵素(GDE)のノックアウトマウスモデルを開発した。このモデルは、糖原病III型(GSDIII)に罹患したヒトにおいて観察される疾患の表現型を再現する。特に、GDE活性を完全に欠失したGDE-/-マウスは筋肉強度の障害を有し、様々な組織にグリコーゲンを蓄積している。興味深いことには、それらはまた、肝臓にもグリコーゲンを蓄積し、これはヒトにも見られる。ここで本発明者らは、肝臓におけるsp7-Δ8-hGAAの過剰発現がGDE-/-マウスにおいて観察されたグリコーゲン蓄積を救出するかどうかを試験した。本発明者らは、GDE-/-マウスに1×1011又は1×1012vg/マウスのAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1を注射した。対照として、本発明者らは平行して、野生型(WT)及びGDE-/-マウスにPBSを注射した。ベクターの投与から3カ月後、マウスを屠殺し、肝臓におけるグリコーゲンレベルを定量した。結果を図7に報告する。すでに報告されているように(Pagliarani et al及び本発明者らのモデル)、GDE-/-マウスは肝臓において有意なグリコーゲン蓄積の増加を示し(p=1.3×10-7)、野生型動物と比較して5倍のグリコーゲンを有する。驚くべきことには、1×1011及び1×1×1012vg/マウスのAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1ベクターによる処置は、グリコーゲン含量の統計学的に有意な減少を誘発した(それぞれ、p=4.5×10-5及び1.4×10-6)。重要なことには、特に最も高い用量で、AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1ベクターを注射されたマウスの肝臓において測定されたグリコーゲンレベルは、野生型動物において測定されたものと区別できなかった(1×1011の用量コホートではp=0.053、1×1012の用量コホートでは0.244)。
【0172】
本発明者らは、様々なGAAバージョン(全てのコドンが最適化されている)(1:天然sp1 GAAシグナルペプチドを含む天然GAA(co)、2.異種sp7シグナルペプチドを含有している工学操作されたGAA(sp7-co)、及び3.異種sp7シグナルペプチドを含有し、その後、様々な数のアミノ酸を欠失させた工学操作されたGAA(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co、sp7-Δ47-co、及びsp7-Δ62-co、ここで配列番号1の8個、29個、42個、47個、及び62個の最初のN末端アミノ酸がそれぞれ欠失している))を用いてトランスフェクトされたHuH7細胞の培地及び溶解液中のGAA活性の分析を実施した。分析は、工学操作された欠失していないGAA(sp7-co)及び天然GAA(co)の両方と比較して、Δ8、Δ29、Δ42及びΔ43 GAAバージョンを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中に有意により高いGAA活性を示した(図8)。その代わりに有意により低いGAA活性が、他の工学操作されたGAAバージョン[欠失あり(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co及び欠失なし(sp7-co))と比較して、Δ47及びΔ62GAAバージョンを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中において観察された。興味深いことには、(図9)細胞内GAA活性は、生産的な欠失(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co)と欠失なしのバージョン(sp7-co)との間で差がなく、このことは、それらは全て細胞内で効果的に生成されプロセシングされることを示す。その代わりに細胞内GAA活性は、sp7-Δ47-co及びsp7-Δ62-coバージョンにおいて非常に低く、他の全ての工学操作されたバージョン[欠失あり(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co)及び欠失なし(sp7-co)]と比較して有意により低いことを示す。
【0173】
本発明者らはまた、様々なGAAバージョン(全てのコドンが最適化されている)(1:天然sp1 GAAシグナルペプチドを含む天然GAA(co)、2.異種sp6又はsp8シグナルペプチドを含有している工学操作されたGAA(sp6-co、sp8-co)、及び3.異種sp6又はsp8シグナルペプチドを含有し、その後、8アミノ酸を欠失させた、工学操作されたGAA(sp6-Δ8-co、sp8-Δ8-co))を用いてトランスフェクトされたHuH7細胞の培地及び溶解液中のGAA活性の分析を実施した。分析は、i.それらのそれぞれの工学操作された欠失していないGAAバージョン(sp6-co又はsp8-co);及びii.天然GAA(co)と比較して、Δ8バージョンを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中において有意により高いGAA活性を示した(図10)。興味深いことに、細胞内GAA活性は、全ての工学操作されたGAAバージョン(欠失あり及び欠失なしの両方)間で差はなく、このことは、それらは細胞内で効果的に生成されプロセシングされることを示す(細胞溶解液のパネル)。その代わりに細胞内GAA活性は、工学操作されたバージョンと比較して天然GAA(co)を使用した場合に有意により高く、このことは、天然GAAが主に細胞内に保持されていることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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