(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】低減した表面フコシル化を有するT細胞、及びそれを作製及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20230315BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230315BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/17
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2019567708
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 US2018036067
(87)【国際公開番号】W WO2018226701
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-02
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オークリー,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】フィールド,ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ガーダイ,シャイラ
(72)【発明者】
【氏名】ハイザー,ライアン
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541503(JP,A)
【文献】特表2019-501145(JP,A)
【文献】Field, J. J. et al.,Abstract 4005: Understanding the mechanism of 2FF-induced immune modulation,Cancer Res,2016年,76(14_Supplement),4005
【文献】Perica, K. et al.,Adoptive T cell immunotherapy for cancer,Rambam Maimondes Med J,2015年,6(1)
【文献】Alley, S. C. et al.,Abstract DDT02-02: SGN-2FF: A novel small molecule inhibitor of fucosylation with preclinical antitumor antivity through multiple immune mechanisms,Cancer Res,2017年04月01日,77(13_Supplement),DDT02-02
【文献】Field, J. J. et al.,The fucosylation inhibitor 2-fluorofucose exhibits anti-tumor activity and modulates immune cell activity both in vitro and in vivo,Journal for ImmunoTherapy of Cancer,2016年,4(Suppl 1),P298
【文献】Zhong, R. K. et al.,CTLA-4 blockade by a human Mab enhances the capacity of AML-derived DC to induce T-cell responses against AML cells in an autologous culture system,Cytotherapy,2006年,8(1),3-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養子細胞療法を必要とする対象に対する養子細胞療法に使用するための、低減した表面フコシル化を有するT細胞を含む混合物を含む医薬組成物であって、
前記低減した表面フコシル化を有するT細胞は細胞培養培地中でフコース類似体の存在下でT細胞を培養することにより生産され、前記フコース類似体は、式(I)又は(II):
【化1】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物形態からなる群から選択され、式(I)又は(II)のそれぞれは、アルファ若しくはベータアノマー又は対応するアルドース形態であってよく;
R
2
は、ハロゲンであり; R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
は、-CH
3
であり、又は
R
1
、R
2
、R
3
、及びR
4
のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
は、-C≡CHであり;
前記T細胞は、前記フコース類似体の非存在下で培養されたT細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記T細胞が、正常T細胞と比較して、表面フコシル化の少なくとも
5%の低減を含む、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記T細胞が、正常T細胞と比較して、表面フコシル化の少なくとも85%の低減を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
対象がヒトである、請求項
1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記T細胞が、ヒト末梢T細胞を含む、請求項
1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
低減した表面フコシル化を有する前記T細胞が、前記対象に由来したものである、請求項
1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
低減した表面フコシル化を有する前記T細胞が、前記対象とは異なる動物に由来したものである、請求項
1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記混合物が、赤血球
を含まない、請求項
1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記
養子細胞療法が、癌を治療するように構成される、請求項
1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
局所的
に投与されるように製剤化される、請求項
1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
全身的
に投与されるように製剤化される、請求項
1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項
9に記載の医薬組成物であって、癌が、乳房の癌腫、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌(stomach cancer)、消化管間質腫瘍(GIST)、肝細胞癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、結腸癌、小腸癌、大腸癌、胃癌(gastric cancer)、前立腺癌腫、精巣癌腫、甲状腺癌腫、悪性黒色腫、ブドウ膜黒色腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、膠芽腫、肉腫、神経膠腫、及び他の脳腫瘍、頭頸部腫瘍、他の胃腸腫瘍及び生殖細胞腫瘍、血液学的悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、難治性濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、緩徐進行性B細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、皮膚の癌(黒色腫を含む)、骨癌、上皮癌、腎細胞癌腫、膵臓腺癌、ホジキンリンパ腫、神経芽腫、ユーイング肉腫、髄芽腫、滑膜肉腫、並びに中皮腫からなる群から選択される、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下で、2017年6月7日に出願された米国仮出願第62/516,536号(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)の優先権の利益を主張する出願である。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の下でなされた発明に対する権利に関する記載
適用なし
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列表」、表、又はコンピュータープログラムリスト付属書への参照
適用なし
【背景技術】
【0004】
癌治療では一般に、手術、化学療法、及び放射線療法の3つのアプローチが採用されている。さらに、免疫療法が、単独で、又は癌治療における任意の既存のアプローチと組み合わせて潜在的に適用することができる、比較的新しく、まだ実験的なアプローチとして登場している。癌免疫療法における治療様式の1つは、腫瘍特異的T細胞を使用した養子細胞療法(adoptive cell therapy)である。養子細胞療法を行うために、例えば、非病原性組織へのオフターゲット効果を回避しながら、標的疾患、例えば患者で治療されるべき特定のタイプの癌に特異的なT細胞を与えるための改善された戦略が必要である。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産する方法が提供される。いくつかの態様では、本方法は、細胞培養培地中でフコース類似体の存在下でT細胞を培養することを含み; フコース類似体は、式(I)又は(II):
【化1】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物形態を有し、式(I)又は(II)のそれぞれは、アルファ若しくはベータアノマー又は対応するアルドース形態であってよく;
R
2は、ハロゲンであり; R
1、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、-CH
3であり、又は
R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、-C≡CHであり; 及び
T細胞は、フコース類似体の非存在下で培養されたT細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有する。
【0006】
別の態様では、低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産する方法が提供される。いくつかの態様では、本方法は、フコース類似体を動物に与えること、及び低減した表面フコシル化を有するT細胞を動物から得ることを含み; フコース類似体は、式(I)又は(II):
【化2】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物形態を有し、式(I)又は(II)のそれぞれは、アルファ若しくはベータアノマー又は対応するアルドース形態であってよく;
R
2は、ハロゲンであり; R
1、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、-CH
3であり、又は
R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、-C≡CHであり; 及び
動物から得られたT細胞は、前記フコース類似体を与えられていない対照動物に存在する又はこの動物から得られたT細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有する。
【0007】
さらに別の態様では、養子細胞療法を対象に施す方法が提供される。いくつかの態様では、本方法は、低減した表面フコシル化を有するT細胞を有する混合物を、細胞療法を必要とする対象に投与することを含む。
【0008】
さらに別の態様では、癌を治療する方法が提供される。いくつかの態様では、本方法は、低減した表面フコシル化を有するT細胞を有する混合物を、癌治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0009】
さらに別の態様では、癌を治療する方法が提供される。いくつかの態様では、本方法は、低減した表面フコシル化を有するT細胞を有する混合物を、癌治療を必要とする対象に投与することを含み、低減した表面フコシル化を有するT細胞は、そのようなT細胞を生産する任意の方法に従って生産される。
【0010】
本明細書で提供される開示のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明、具体的な実施形態の非限定的な実施例、及び添付の図面を参照することにより、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ナイーブBALB/cマウスにおけるIV移植されたA20マウスリンパ腫細胞の成長に対する、2FFで処理された又は処理されていないKLH-A20 Id Fabワクチン接種ドナーマウスからの脾細胞の養子移入のインビボ(in vivo)効果を実証するグラフを示す。
【
図2】
図2は、単離Cd3+ T細胞を生成するために使用されたナイーブBALB/cマウスにおけるSQ移植されたA20マウスリンパ腫細胞の成長に対する、2FFのインビボ効果を実証するグラフを示す。
【
図3】
図3は、表面LCA染色によって測定された、20mM 2FFで処理されたA20腫瘍担持マウスから単離されたCD3
+ T細胞の低減した表面フコシル化を実証するグラフを示す。
【
図4】
図4は、表面LCA染色によって測定された、100mM 2FFでのエクスビボ(ex-vivo)処理後の、ヒトドナーから単離されたCD3
+ T細胞の低減した表面フコシル化を実証するグラフを示す。
【
図5A】
図5A~5Bは、2FFの存在下又は非存在下で成熟した自己ヒトT細胞を、適合LCL EBV形質転換B細胞腫瘍を担持するNSGマウスに移入した後の腫瘍進行を実証するグラフを示す。
図5Aは、キャリパー測定により腫瘍進行を実証するグラフを示す。
【
図5B】
図5A~5Bは、2FFの存在下又は非存在下で成熟した自己ヒトT細胞を、適合LCL EBV形質転換B細胞腫瘍を担持するNSGマウスに移入した後の腫瘍進行を実証するグラフを示す。
図5Bは、生存により腫瘍進行を実証するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書の開示の様々な実施形態及び態様が本明細書に示され、記載されているが、そのような実施形態及び態様が、単に例として提供されていることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換が当業者に思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替物を、本発明を実施する際に使用できることが理解されるべきである。
【0013】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、単に構成上の目的のためのものであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。特許、特許出願、記事、本、マニュアル、及び論文を含むがこれらに限定されない、本出願で引用されたすべての文書又は文書の一部は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に明白に組み込まれる。
【0014】
本開示の実施は、別段示されない限り、組織培養、免疫学、分子生物学及び細胞生物学の従来技術を使用し、これらは当業者の技能の範囲内である。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition; シリーズAusubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology; シリーズMethods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press); MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach; Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual; Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition; Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis; 米国特許第4,683,195号; Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization; Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization; Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation; IRL Press (1986) Immobilized Cells and Enzymes; Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning; Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory); Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells; Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London); Herzenberg et al. eds (1996) Weir's Handbook of Experimental Immunology; Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, 3rd edition (2002) Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sohail (2004) Gene Silencing by RNA Interference: Technology and Application (CRC Press)を参照のこと。
【0015】
I. 定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「フコース類似体(a fucose analog)」への言及は、1つ以上のフコース類似体を含む。複数のフコース類似体を意味する場合、複数のフコース類似体のそれぞれは、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0016】
用語「単離する」、「単離すること」又は「単離された」は、成分(例えば、化合物又は細胞)が、自然界で又は実験室混合物中でそれに付随する成分のすべて又は一部から分離されることを意味することが意図される。
【0017】
用語「富化する」、「富化すること」又は「富化された」は、成分(例えば、化合物又は細胞)を有する混合物を処理して、処理前と比較して成分の濃度を増加させることを意味することが意図される。例えば、T細胞及び他のタイプの細胞を含む細胞の混合物からT細胞を富化することは、富化前の単位体積当たりのT細胞の濃度又は数、例えば、105個T細胞/mlが、富化処理後に増加し、105個T細胞/mlを超えるように、細胞の混合物を処理(例えば、遠心分離)することを意味する。
【0018】
用語「培養」又は「細胞培養」は、人工的なインビトロ(in vitro)環境での細胞の維持及び/又は成長を意味する。「細胞培養システム」は、細胞の集団を成長させることができる培養条件を指すために本明細書で使用される。「培養培地」は、細胞の培養、成長、又は増殖のための栄養溶液を指すために本明細書で使用される。
【0019】
本明細書で使用される「組成物」は、任意の化合物(任意の化学化合物を包含する)及び細胞(生存又は死滅していてよい)を指す。例えば、低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産する文脈において、組成物は、培養細胞に与えられるフコース類似体を含有し得る。別の例では、養子細胞療法を施す又は癌を治療する文脈において、組成物は、細胞、例えば、低減した表面フコシル化を有するT細胞の群を含有し得る。任意の文脈で使用される組成物は、1つ以上の成分を有し得る。
【0020】
用語「Tリンパ球」又は「T細胞」は、細胞性免疫で役割を果たすリンパ球の一種を指す。T細胞のタイプとしては、以下に限定されないが、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性キラーT細胞、記憶T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連不変T細胞、アルファベータT細胞、及びガンマデルタT細胞が挙げられる。また、T細胞は、その細胞上の1つ以上の特定のマーカーの存在又はレベルに応じてさらに下位分類することができる。
【0021】
用語「個体」又は「対象」は、本明細書で使用される場合、本開示におけるヒト、哺乳動物及び他の動物を指す。いくつかの場合には、ヒトである対象は、患者であり得る。
【0022】
疾患又は状態の文脈における「治療」は、少なくとも、個人を苦しめている状態に関連する症状の改善が達成されることを意味し、改善は、少なくとも、治療される状態(例えば、癌)に関連するパラメーター、例えば、症状、の大きさの低減を指すために広義で使用される。それ自体、治療はまた、病的状態又は少なくともそれに関連する症状が完全に阻害され、例えば、発症が予防され、又は停止し、例えば終了し、その結果、宿主がもはやその状態又は少なくともその状態を特徴付ける症状に悩まされない状況を含む。したがって、治療は以下を含む: (i)予防、すなわち、臨床症状の発症リスクを減らすこと、例えば、臨床症状を発症させないようにすること、例えば、有害な状態への疾患進行を予防すること; (ii)阻害、すなわち、臨床症状の発症又はさらなる発症を阻止すること、例えば、活動性疾患を緩和又は完全に阻害し、例えば、腫瘍量を減少させること(この減少は、検出可能な癌性細胞の除去を含み得る); 及び/又は(iii)軽減、すなわち、臨床症状の退行を引き起こすこと。
【0023】
「投与」、「投与すること」などは、直接投与(インビトロでの細胞への投与、インビボでの細胞への投与、医療専門家による対象への投与であり得る)及び/又は間接投与(本発明の組成物を処方する行為であり得る)の両方を指す。本明細書で細胞に関して使用される場合、組成物を細胞に導入することを指す。典型的には、有効量が投与され、その量は当業者により決定することができる。例えば、1つ以上のフコース類似体が、培養培地中で培養された細胞に投与される場合、フコース類似体(複数可)の有効量は、所望の効果(例えば、低減した表面フコシル化を有するT細胞の生産)を生じるのに十分な量と定義される。任意の投与方法を使用することができる。化合物(例えば、1つ以上のフコース類似体)は、例えば、細胞培養培地への化合物の添加、又はインビボでの投与(例えば、摂食)によって、細胞に投与することができる。対象への投与は、例えば、摂食、血管内注射、直接腫瘍内送達などによって達成することができる。
【0024】
投与することは、経口投与、坐薬としての投与、局所接触、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病変内投与、髄腔内投与、鼻腔内投与若しくは皮下投与、又は対象への徐放デバイス、例えばミニ浸透圧ポンプの埋め込みを意味し得る。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、バッカル、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、又は経皮)を含む、任意の経路によるものである。非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、及び頭蓋内を含む。他の送達様式としては、以下に限定されないが、リポソーム製剤、静脈内注入、経皮パッチなどの使用が挙げられる。「共投与する」は、本明細書に記載される組成物が、1つ以上の追加の療法、例えば、化学療法、ホルモン療法、放射線療法、又は免疫療法などの癌療法の施行と同時に、その直前に、又はその直後に投与されることを意味する。本発明の化合物は、単独で投与することができ、又は患者に共投与することができる。共投与は、組成物を個別に又は組み合わせて(2つ以上の組成物)同時に又は連続して投与することを含むことを意味する。したがって、調製物はまた、所望の場合、他の活性物質と組み合わせることができる(例えば、代謝分解を低減するために)。
【0025】
用語「癌」は、本明細書で使用される場合、原発性癌及び転移性癌を包含する一般用語を指す。「原発性癌」は、癌細胞の少なくとも1つの特徴的特性を獲得しているが、まだ隣接組織に侵入しておらず、最初の起源の場所に限局した腫瘍中にまとまっている腫瘍細胞の群を意味する。「転移性癌」は、原発性癌の細胞に由来し、前記原発性癌の周囲組織に侵入しており、身体を通して広まり、新しい遠い場所に付着し、新しい腫瘍へ成長している腫瘍細胞の群を意味する。本発明の原発性癌及び転移性癌の例としては、以下に限定されないが、乳房の癌腫、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌(stomach cancer)、(消化管間質組織)GIST、肝細胞癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、結腸癌、小腸癌、大腸癌、胃癌(gastric cancer)、リンパ腫、前立腺癌腫、精巣癌腫、甲状腺癌腫、悪性黒色腫、ブドウ膜黒色腫、多発性骨髄腫、中皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、膠芽腫、肉腫、神経膠腫、又は他の脳腫瘍、頭頸部腫瘍、他の胃腸腫瘍及び生殖細胞腫瘍、血液学的悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、難治性濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、緩徐進行性B細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、皮膚の癌(黒色腫を含む)、骨癌、上皮癌、腎細胞癌腫、膵臓腺癌、ホジキンリンパ腫、膠芽腫、神経芽腫、ユーイング肉腫、髄芽腫、滑膜肉腫、及び/又は中皮腫が挙げられる。
【0026】
「癌細胞」は、本明細書で使用される場合、例えば、異常な細胞成長、異常な細胞増殖、密度依存性成長阻害の喪失、足場非依存性成長潜在活性、免疫不全の非ヒト動物モデルにおける腫瘍成長及び/又は発達を促進する能力、及び/又は細胞形質転換の任意の適切な指標のうちの1つ以上によって特徴付けることができる、新生物細胞表現型を示す細胞を指す。「癌細胞」は、本明細書において「腫瘍細胞」又は「癌性細胞」と互換的に使用することができ、固形腫瘍、半固形腫瘍、原発性腫瘍、転移性腫瘍などの癌細胞を包含する。
【0027】
「抗腫瘍効果」又は「抗癌効果」は、本明細書で使用される場合、腫瘍体積の減少、腫瘍成長の阻害、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移数の減少、全生存又は無増悪生存の増加、期待寿命の増加、又は腫瘍に関連する様々な生理学的症状の改善として生じ得る生物学的効果を指す。抗腫瘍効果はまた、腫瘍の発生の予防、例えば、ワクチンを指すことができる。
【0028】
PFSと略すことができる用語「無増悪生存」は、本明細書で使用される場合、治療日から疾患進行の日(悪性リンパ腫についての改訂された国際ワーキンググループ(IWG)応答基準による)又は任意の原因による死亡の日までの時間を指す。
【0029】
OSと略すことができる用語「全生存」は、治療日から死亡日までの時間と定義される。
【0030】
用語「養子細胞療法」又は「養子細胞移入」は、本明細書で使用される場合、その療法を必要とする対象に療法のための細胞を与えること、例えば、投与又は移植を指す。療法のための細胞は、ヒト及び非ヒト動物を含む同じ対象又は別の対象に由来し得る。養子細胞療法又は養子細胞移入のための細胞は、T細胞を含み得る。
【0031】
本明細書で提供される方法に従って、対象に養子細胞療法を施すことができる。養子細胞療法に関連する方法及び手順に関するいくつかの例は、例えば、WO2015120096、WO2015164675、WO2016011210、WO2016040441、WO2017070395、及びUS20160158359から見出すことができ、これらの開示はその全体が参照により明白に組み込まれる。養子細胞療法は、T細胞、とりわけ、低減した表面フコシル化を有するT細胞を含む細胞の混合物を対象に与えることができる。所望の生理学的応答(例えば、腫瘍成長の阻害又は低減)を生じさせることができる対象に投与されるT細胞の量は、有効量と定義される。有効量及び有効投与量という用語は、互換的に使用される。例えば、疾患(例えば、癌)を治療するために対象において好都合な応答を誘発するために、有効量は、例えば、癌転移の制御の提供、癌細胞の除去等するように、障害に関連する症状を低減、除去、又は減少させる量である。T細胞を投与するための有効量及びスケジュールは、当業者によって経験的に決定することができる。投与のための投与量範囲は、疾患又は障害の1つ以上の症状が影響を受ける(例えば、低減又は遅延する)ような所望の効果を生じるのに十分に大きいものである。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの実質的な有害な副作用を引き起こすほど多くすべきではない。一般に、投与量は、年齢、状態、性別、疾患のタイプ、疾患又は障害の程度、投与経路、又はレジメンに他の薬物が含まれるかどうかによって変わり、当業者によって決定することができる。任意の禁忌の場合に、個々の医師が投与量を調整することができる。投与量は様々であり、1日又は数日間、毎日1回以上の用量の投与で投与することができる。例えば、所与のパラメーターについて、有効量は、治療前と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は少なくとも100%の増加又は減少を示すであろう。効力は、「~倍」の増加又は減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、対照又は治療前に対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍の、又はそれを超える効果を有し得る。正確な用量及び製剤化は、療法の目的に依存し、公知技術を使用して当業者によって確認可能であろう(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Gennaro, Editor (2003)、及びPickar, Dosage Calculations (1999)を参照のこと)。
【0032】
用語「低減した表面フコシル化」は、本明細書で使用される場合、細胞、例えばT細胞上の表面糖タンパク質に結合したフコースの阻害を指す。そのような「フコースの阻害」は、フコース類似体が表面糖タンパク質上のフコースに置き換わる、フコース類似体による競合的組み込みとは異なる。
【0033】
「対照」又は「正常」サンプル、例えば、対照細胞又は正常細胞は、試験サンプルと比較するための参照、通常は公知の参照として役立つサンプルを指す。例えば、試験サンプルは、改変されたT細胞、特に、低減した表面フコシル化を有するT細胞であり得る。そのようなT細胞は、本明細書に開示される方法によって、例えば、フコース類似体の存在下でT細胞を培養すること、又はフコース類似体を投与された動物からT細胞を得ることによって生産することができる。これらの改変されたT細胞は、その低減を確認するために、フコース類似体の非存在下で培養された、又はフコース類似体を投与されなかった動物から得られた対照又は正常T細胞と比較することができる。対照値はまた、フコース類似体の曝露又は投与の前に、同じ個体から、例えば、以前に得られたサンプルから得ることもできる。
【0034】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、対象へ目的化合物(複数可)を投与するための薬学的に許容される化合物を提供する任意の適切な物質を指す。「薬学的に許容される賦形剤」は、薬学的に許容される希釈剤、薬学的に許容される添加剤、及び薬学的に許容される担体と呼ばれる物質を包含し得る。用語「担体」又は「薬学的に許容される担体」は、フコース類似体と共に投与される希釈剤、アジュバント又は賦形剤を指す。そのような医薬担体は、液体、例えば、水及び油、例えば、石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。担体は、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであり得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤を使用することができる。一実施形態では、動物に投与される場合、フコース類似体若しくは組成物並びに薬学的に許容される担体は、無菌である。フコース類似体が静脈内に投与される場合、水が好ましい担体である。生理食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、特に注射溶液のための、液体担体として使用することができる。適切な医薬担体はまた、賦形剤、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。本組成物は、所望の場合、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤も含有し得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「加水分解性エステル基」は、インビボで加水分解されてヒドロキシ基を生じることができる任意の従来のエステルを指す。例示的な加水分解性エステル基としては、-OC(O)H、-OC(O)C1~C10アルキル、-OC(O)C2~C10アルケニル、-OC(O)C2~C10アルキニル、-OC(O)アリール、-OC(O)複素環、-OC(O)C1~C10アルキレン(アリール)、-OC(O)C2~C10アルケニレン(アリール)、-OC(O)C2~C10アルキニレン(アリール)、-OC(O)C1~C10アルキレン(複素環)、-OC(O)C2~C10アルケニレン(複素環)、-OC(O)C2~C10アルキニレン(複素環)、-OC(O)CH2O(CH2CH2O)nCH3、及び-OC(O)CH2CH2O(CH2CH2O)nCH3が挙げられ、各nは、0~5から独立して選択される整数である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルキニルフコースペルアセテート」は、R1~4位(下記の式I及びIIを参照)にアセテート基を有するアルキニルフコース(5-エチニルアラビノース)の任意の又はすべての形態を指し、例えば、6-エチニル-テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトライルテトラアセテート、例えば、(2S,3S,4R,5R,6S)及び(2R,3S,4R,5R,6S)異性体、及び5-((S)-1-ヒドロキシプロパ-2-イニル)-テトラヒドロフラン-2,3,4-トリイルテトラアセテート、例えば、(2S,3S,4R,5R)及び(2R,3S,4R,5R)異性体、及びアルドース形態が挙げられる(文脈により別段示されない限り)。用語「アルキニルフコーストリアセテート」、「アルキニルフコースジアセテート」及び「アルキニルフコースモノアセテート」は、それぞれ、アルキニルフコースの示されたトリ-、ジ-及びモノ-アセテート形態を指す。
【0037】
文脈により別段示されない限り、用語「アルキル」は、1~20個の炭素原子(及びその中の範囲及び具体的な数の炭素原子のすべての組み合わせ及び部分組み合わせ(subcombination))を有する非置換飽和直鎖又は分岐炭化水素を指す(別段明記されない限り)。1~3個、1~8個又は1~10個の炭素原子のアルキル基が好ましい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、及び3,3-ジメチル-2-ブチルである。
【0038】
アルキル基は、単独であれ又は別の基の部分としてであれ、置換される場合、1つ以上の基、好ましくは1~3個の基(及びハロゲンから選択される任意の追加の置換基)で置換されてよく、この基としては、以下に限定されないが、ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-NH2、-NH(R')、-N(R')2及び-CNが挙げられ; 各R'は、独立して、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、又はアリールから選択される。
【0039】
文脈により別段示されない限り、用語「アルケニル」及び「アルキニル」は、2~20個の炭素原子(及びその中の範囲及び具体的な数の炭素原子のすべての組み合わせ及び部分組み合わせ)を有する置換されていないか又は場合により置換された(示される場合)直鎖及び分岐炭素鎖を指し、2~3個、2~4個、2~8個又は2~10個の炭素原子が好ましい。アルケニル鎖は、鎖に少なくとも1つの二重結合を有し、アルキニル鎖は、鎖に少なくとも1つの三重結合を有する。アルケニル基の例としては、以下に限定されないが、エチレン又はビニル、アリル、-1ブテニル、-2ブテニル、-イソブチレニル、-1ペンテニル、-2ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、-2メチル2ブテニル、及び-2,3ジメチル2ブテニルが挙げられる。アルキニル基の例としては、以下に限定されないが、アセチレン、プロパルギル、アセチレニル、プロピニル、-1ブチニル、-2ブチニル、-1ペンチニル、-2ペンチニル、及び-3メチル1ブチニルが挙げられる。
【0040】
アルケニル基及びアルキニル基は、単独であれ又は別の基の部分としてであれ、置換される場合、1つ以上の基、好ましくは1~3個の基(及びハロゲンから選択される任意の追加の置換基)で置換されてよく、この基としては、以下に限定されないが、ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-NH2、-NH(R')、-N(R')2及び-CNが挙げられ; 各R'は、独立して、H、-C1~C8アルキル、-C2~Cアルケニル、-C2~C8アルキニル、又はアリールから選択される。
【0041】
文脈により別段示されない限り、用語「アルキレン」は、1~20個の炭素原子(及びその中の範囲及び具体的な数の炭素原子のすべての組み合わせ及び部分組み合わせ)を有し(1~8個又は1~10個の炭素原子が好ましい)、且つ親アルカンの同じ又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することにより誘導される2つの一価ラジカル中心を有する、非置換飽和分岐又は直鎖炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキレンとしては、以下に限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デカレン、1,4-シクロヘキシレンなどが挙げられる。
【0042】
アルキレン基は、単独であれ又は別の基の部分としてであれ、置換される場合、1つ以上の基、好ましくは1~3個の基(及びハロゲンから選択される任意の追加の置換基)で置換されてよく、この基としては、以下に限定されないが、ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-NH2、-NH(R')、-N(R')2及び-CNが挙げられ; 各R'は、独立して、H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、又は-アリールから選択される。
【0043】
「アルケニレン」は、親アルケンの同じ又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することにより誘導される2つの一価ラジカル中心を有する、アルケニル基(上に記載される)の不飽和の、分岐又は直鎖又は環状炭化水素ラジカルを指す。「アルケニレン」基は、アルケニル基について上に記載されるように、置換されていなくても又は場合により置換されていてもよい(示される場合)。いくつかの実施形態では、「アルケニレン」基は、置換されていない。
【0044】
「アルキニレン」は、親アルキンの同じ又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することにより誘導される2つの一価ラジカル中心を有する、アルキニル基(上に記載される)の不飽和の、分岐又は直鎖又は環状炭化水素ラジカルを指す。「アルキニレン」基は、アルキニル基について上に記載されるように、置換されていなくても又は場合により置換されていてもよい(示される場合)。いくつかの実施形態では、「アルキニレン」基は、置換されていない。
【0045】
文脈により別段示されない限り、用語「アリール」は、親芳香族環系の単一炭素原子から1つの水素原子を除去することにより誘導される、6~20個の炭素原子(及びその中の範囲及び具体的な数の炭素原子のすべての組み合わせ及び部分組み合わせ)の置換又は非置換一価芳香族炭化水素ラジカルを指す。いくつかのアリール基は、例示的な構造では「Ar」と表される。典型的なアリール基としては、以下に限定されないが、ベンゼン、置換ベンゼン、フェニル、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されるラジカルが挙げられる。
【0046】
アリール基は、単独であれ又は別の基の部分としてであれ、1つ以上、好ましくは1~5個、又はさらには1~2個の基で場合により置換されてよく、この基としては、以下に限定されないが、ハロゲン、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、-NO2、-NH2、-NH(R')、-N(R')2及び-CNが挙げられ; 各R'は、独立して、H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、又はアリールから選択される。
【0047】
文脈により別段示されない限り、用語「複素環」は、少なくとも1つの環原子が、N、O、P、又はSから選択されるヘテロ原子である、3~7個又は3~10個の環原子(環員とも呼ばれる)(及びその中の範囲及び具体的な数の炭素原子及びヘテロ原子のすべての組み合わせ及び部分組み合わせ)を有する置換又は非置換単環式環系を指す。複素環は、N、O、P、又はSから独立して選択される1~4個の環ヘテロ原子を有し得る。複素環中の1つ以上のN、C、又はS原子は、酸化されてもよい。単環式複素環は、好ましくは、3~7個の環員(例えば、2~6個の炭素原子、並びにN、O、P、若しくはSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子)を有する。ヘテロ原子を含む環は、芳香族であっても又は非芳香族であってもよい。別段記載されない限り、複素環は、任意のヘテロ原子又は炭素原子において、安定した構造をもたらすそのペンダント基に結合している。
【0048】
複素環は、Paquette, "Principles of Modern Heterocyclic Chemistry" (W.A. Benjamin, New York, 1968)、特に第1、3、4、6、7、及び9章; "The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs" (John Wiley & Sons, New York, 1950年から現在)、特に第13、14、16、19、及び28巻; 及びJ. Am. Chem. Soc. 82:5566 (1960)に記載されている。「複素環」基の例としては、限定ではなく例として、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、フコシル、アジリジニル、アゼチジニル、オキシラニル、オキセタニル、及びテトラヒドロフラニルが挙げられる。
【0049】
複素環基は、単独であれ又は別の基の部分としてであれ、置換される場合、1つ以上の基、好ましくは1~2個の基で置換されてよく、この基としては、以下に限定されないが、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、-NH2、-NH(R')、-N(R')2及び-CNが挙げられ; 各R'は、独立して、H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、又は-アリールから選択される。
【0050】
限定ではなく例として、炭素結合複素環は、以下の位置で結合させることができる: ピリジンの2、3、4、5、又は6位; ピリダジンの3、4、5、又は6位; ピリミジンの2、4、5、又は6位; ピラジンの2、3、5、又は6位; フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール又はテトラヒドロピロールの2、3、4、又は5位; オキサゾール、イミダゾール又はチアゾールの2、4、又は5位; イソオキサゾール、ピラゾール、又はイソチアゾールの3、4、又は5位; アジリジンの2又は3位; 又はアゼチジンの2、3、又は4位。例示的な炭素結合複素環としては、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、又は5-チアゾリルが挙げられる。
【0051】
限定ではなく例として、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、又は1H-インダゾールの1位; イソインドール又はイソインドリンの2位; 及びモルホリンの4位で結合させることができる。さらにより典型的には、窒素結合複素環としては、1-アジリジル、1-アゼチジル、1-ピロリル、1-イミダゾリル、1-ピラゾリル、及び1-ピペリジニルが挙げられる。
【0052】
別段記載されない限り、用語「炭素環」は、環原子のすべてが炭素原子である、3~6個の環原子(及びその中の範囲及び具体的な数の炭素原子のすべての組み合わせ及び部分組み合わせ)を有する置換又は非置換、飽和又は不飽和の非芳香族単環式環系を指す。
【0053】
炭素環基は、単独であれ又は別の基の部分としてであれ、置換される場合、例えば1つ以上の基、好ましくは1又は2個の基(及びハロゲンから選択される任意の追加の置換基)で置換されてよく、この基としては、以下に限定されないが、ハロゲン、C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-NH2、-NH(R')、-N(R')2及び-CNが挙げられ; 各R'は、独立して、H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、又はアリールから選択される。
【0054】
単環式炭素環式置換基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペンタ-1-エニル、1-シクロペンタ-2-エニル、1-シクロペンタ-3-エニル、シクロヘキシル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、1-シクロヘキサ-3-エニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、-1,3-シクロヘキサジエニル、-1,4-シクロヘキサジエニル、-1,3-シクロヘプタジエニル、-1,3,5-シクロヘプタトリエニル、及び-シクロオクタジエニルが挙げられる。
【0055】
任意の構成要素又は任意の式中で任意の可変要素が2回以上出現する場合、各出現におけるその定義は、他のすべてのその定義から独立している。置換基及び/又は可変要素の組み合わせは、そのような組み合わせが安定した化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0056】
文脈により別段示されない限り、ハイフン(-)は、ペンダント分子への結合点を示す。したがって、用語「-(C1~C10アルキレン)アリール」又は「-C1~C10アルキレン(アリール)」は、本明細書に定義されるC1~C10アルキレンラジカルであって、該アルキレンラジカルが、アルキレンラジカルの炭素原子のいずれかにおいてペンダント分子に結合しており、アルキレンラジカルの炭素原子に結合している水素原子のうちの1つが、本明細書に定義されるアリールラジカルで置き換えられているものを指す。
【0057】
特定の基が「置換」されている場合、その基は、置換基のリストから独立して選択される、1つ以上の置換基、好ましくは1~5個の置換基、より好ましくは1~3個の置換基、最も好ましくは1~2個の置換基を有し得る。しかし、この基は一般に、ハロゲンから選択される任意の数の置換基を有し得る。
【0058】
分子中の特定の位置での任意の置換基又は可変要素の定義は、その分子中の他の場所のその定義から独立していることが意図される。本発明の化合物上の置換基及び置換パターンは、当業者により選択されて、活性であり、化学的に安定であり、当技術分野で公知の技術及び本明細書に記載される方法により容易に合成できる化合物を提供することができることが理解される。
【0059】
用語「薬学的に許容される」は、動物、より詳しくはヒトでの使用について、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されていること、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に列挙されていることを意味する。用語「薬学的に適合性のある成分」は、フコース類似体と共に投与される薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。
【0060】
フコース類似体は、典型的には、望ましくない汚染物質から離れて実質的に純粋である。これは、類似体が、典型的には、少なくとも約50%w/w(重量/重量)の純度であり、加えて、干渉タンパク質及び他の汚染物質を実質的に含まないことを意味する。時には、この作用物質は、少なくとも約80%w/w、より好ましくは少なくとも90%又は約95%w/wの純度である。従来の精製技術を使用して、少なくとも99%w/wの均質な生成物を得ることができる。
【0061】
II. フコース類似体
本明細書の様々な実施形態のいずれにおいても、フコース類似体は、以下の式(I)又は(II):
【化3】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物形態を有してよく、式(I)又は(II)のそれぞれは、アルファ若しくはベータアノマー又は対応するアルドース形態であってよく;
R
2は、ハロゲンであり; R
1、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、-CH
3であり、又は
R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、アルキニルである。
【0062】
いくつかの実施形態では、R2は、-Fである。
【0063】
いくつかの実施形態では、R5は、-C≡CHである。
【0064】
いくつかの実施形態では、フコース類似体は、式(I)又は(II)[式中、R2は、ハロゲンであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3であり、又はR1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-C≡CHである]を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、フコース類似体は、式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3であり、又はR1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-C≡CHである]を有する。
【0066】
式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R2は、ハロゲンであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3である。式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R2は、-Fであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3である。
【0067】
式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-C≡CHである。
【0068】
いくつかの実施形態では、加水分解性エステル基は、-OC(O)C1~C10アルキルである。いくつかの選択された実施形態では、加水分解性エステル基は、-OC(O)CH3である。
【0069】
式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)C1~C10アルキルからなる群から選択される。式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)CH3からなる群から選択される。式(I)又は(II)の具体的な一実施形態では、R2は、-Fであり、R1、R3及びR4のそれぞれは、-OHである。
【0070】
式(I)又は(II)[式中、R5は、-C≡CHである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)C1~C10アルキルからなる群から選択される。式(I)又は(II)[式中、R5は、-C≡CHである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)CH3からなる群から選択される。式(I)又は(II)の具体的な一実施形態では、R5は、-C≡CHであり、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、-OHである。式(I)又は(II)の別の具体的な実施形態では、R5は、-C≡CHであり、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、-OAcである。
【0071】
いくつかの選択された実施形態では、フコース類似体は、式:
【化4】
又はそのアルドース形態を有し、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、本明細書に定義及び記載されているとおりである。
【0072】
いくつかの選択された実施形態では、フコース類似体は、2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコースである。
【0073】
いくつかの選択された実施形態では、フコース類似体は、アルキニルフコースペルアセテートである。アルキニルフコースペルアセテートは、アルキニルフコーステトラアセテート、アルキニルフコーストリアセテート、アルキニルフコースジアセテート、アルキニルフコースモノアセテート、又はそれらの組み合わせであり得る。例示的な一実施形態では、フコース類似体は、(3S,4R,5R,6S)-6-エチニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトライルテトラアセテート又は5-((S)-1-ヒドロキシプロパ-2-イン-1-イル)テトラヒドロフラン-2,3,4-トリイルトリアセテートである。
【0074】
様々な実施形態のいずれにおいても、式(I)及び(II)のフコース類似体の環内の環酸素は、硫黄によって置き換えられてもよい。
【0075】
式I及びIIの化合物の薬学的に許容される塩及び溶媒和物形態も本明細書で提供される。したがって、本明細書で提供される様々な実施形態のいずれにおいても、開示された化合物の薬学的に許容される塩又は溶媒和物形態を使用することができる。溶媒和物は、典型的には、化合物の生理学的活性を著しく変化させず、それ自体、薬理学的同等物として機能することができる。溶媒和物の1つのタイプは、水和物である。
【0076】
いくつかの態様では、フコース類似体は、少なくとも10mMの濃度で製剤バッファー(例えば、水性製剤バッファー)に可溶性である。いくつかの実施形態では、フコース類似体は、少なくとも100mMの濃度で製剤バッファーに可溶性である。いくつかの態様では、フコース類似体は、少なくとも100μg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも約100mg/ml、少なくとも約200mg/ml、又は少なくとも約300mg/mlの濃度で製剤バッファー(例えば、水性製剤バッファー)に可溶性である。
【0077】
III. 低減した表面フコシル化を有するT細胞の生産方法
いくつかの態様では、低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産する方法が本明細書で提供される。
【0078】
II-1. インビトロ又はエクスビボの生産方法
いくつかの態様では、低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産するインビトロ又はエクスビボの方法が提供される。本方法は、細胞培養培地中で本明細書に開示されるフコース類似体の存在下でT細胞を培養すること、及び低減した表面フコシル化を有するT細胞を収集することを含み得る。本方法によって生産されたT細胞は、フコース類似体の非存在下で培養されたT細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有し得る。本明細書に開示される方法によって生産されたそのようなT細胞は、養子細胞療法又は癌治療などの治療目的に使用することができる。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、低減した表面フコシル化を有するT細胞は、「治療用T細胞」と呼ばれる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本方法で使用されるフコース類似体は、式(I)又は(II):
【化5】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物形態であってよく、式(I)又は(II)のそれぞれは、アルファ若しくはベータアノマー又は対応するアルドース形態であってよく;
R
2は、ハロゲンであり; R
1、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、-CH
3であり、又は
R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、アルキニルである。
【0080】
いくつかの実施形態では、R2は、-Fである。
【0081】
いくつかの実施形態では、R5は、-C≡CHである。
【0082】
いくつかの実施形態では、本方法で使用されるフコース類似体は、式(I)又は(II)[式中、R2は、ハロゲンであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3であり、又はR1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-C≡CHである]を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本方法で使用されるフコース類似体は、式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3であり、又はR1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-C≡CHである]を有する。
【0084】
式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R2は、ハロゲンであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3である。式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R2は、-Fであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3である。
【0085】
式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基から選択され; 及びR5は、-C≡CHである。
【0086】
いくつかの実施形態では、加水分解性エステル基は、-OC(O)C1~C10アルキルである。いくつかの選択された実施形態では、加水分解性エステル基は、-OC(O)CH3である。
【0087】
式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)C1~C10アルキルからなる群から選択される。式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)CH3からなる群から選択される。式(I)又は(II)の具体的な一実施形態では、R2は、-Fであり、R1、R3及びR4のそれぞれは、-OHである。
【0088】
式(I)又は(II)[式中、R5は、-C≡CHである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)C1~C10アルキルからなる群から選択される。式(I)又は(II)[式中、R5は、-C≡CHである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)CH3からなる群から選択される。式(I)又は(II)の具体的な一実施形態では、R5は、-C≡CHであり、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、-OHである。式(I)又は(II)の別の具体的な実施形態では、R5は、-C≡CHであり、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、-OAcである。
【0089】
いくつかの選択された実施形態では、本方法で使用されるフコース類似体は、式:
【化6】
又はそのアルドース形態を有し、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、本明細書に定義及び記載されているとおりである。
【0090】
いくつかの選択された実施形態では、フコース類似体は、2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコースである。
【0091】
いくつかの選択された実施形態では、フコース類似体は、アルキニルフコースペルアセテートである。アルキニルフコースペルアセテートは、アルキニルフコーステトラアセテート、アルキニルフコーストリアセテート、アルキニルフコースジアセテート、アルキニルフコースモノアセテート、又はそれらの組み合わせであり得る。例示的な一実施形態では、フコース類似体は、(3S,4R,5R,6S)-6-エチニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトライルテトラアセテート又は5-((S)-1-ヒドロキシプロパ-2-イン-1-イル)テトラヒドロフラン-2,3,4-トリイルトリアセテートである。
【0092】
様々な実施形態のいずれにおいても、式(I)及び(II)のフコース類似体の環内の環酸素は、硫黄によって置き換えられてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、細胞培養培地中でフコース類似体の存在下でT細胞を培養するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、培養培地中に存在する他のタイプの細胞、例えば、赤血球がある。培養されるべきT細胞は、対象(例えば、ヒト又は非ヒト動物)から得ることができる。あるいは、培養されるべきT細胞は、前もって培養及び/又は保存された細胞の集団からのものであり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、養子細胞療法を必要とする対象のための養子細胞療法において使用することができる、低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産する。T細胞及び細胞集団が、サンプル、例えば生物学的サンプル、例えば対象から得られる又は由来するサンプルから単離される実施形態では、対象は、細胞療法を必要とする患者、又は細胞療法が施される患者であり得る(すなわち、自己供給源)。あるいは、T細胞及び細胞集団は、養子細胞療法を必要とする患者ではないドナーから単離することができる(すなわち、同種異系供給源)。ドナーは、健康なヒト、又は細胞療法を必要とする患者又は細胞療法が施される患者が有しているのと同じ状態又は疾患に罹患している別の患者であり得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、対象から得られた細胞は、初代細胞、例えば初代ヒト細胞の混合物であり得る。サンプルとしては、対象から直接採取された組織、体液、及び他のサンプル、並びに分離、遠心分離、洗浄、インキュベーション及び/又は培養などの1つ以上の処理ステップから得られたサンプルが挙げられる。生物学的サンプルは、生物学的供給源から直接得られたサンプル、又は処理されるサンプルであり得る。生物学的サンプルとしては、以下に限定されないが、体液、例えば、血液、血漿、血清、組織及び臓器サンプル、例えば、脾臓(それらに由来する処理されたサンプルを含む)が挙げられる。例示的なサンプルとしては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃、若しくは他の臓器、及び/又はそれらに由来する細胞が挙げられる。サンプルは、細胞療法、例えば養子細胞療法の文脈では、自己供給源及び同種異系供給源からのサンプルを含む。いくつかの実施形態における細胞は、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、及びブタから得ることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従って培養されるべき細胞は、既存の細胞株、例えば、T細胞株に由来し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、培養のための細胞又は集団の単離は、1つ以上の調製及び分離ステップを含み得る。いくつかの実施形態では、例えば、不要な成分を除去し、所望の成分について富化し、特定の試薬に感受性の細胞を溶解又は除去するために、細胞を、洗浄し、遠心分離し、及び/又は1つ以上の試薬の存在下でインキュベートすることができる。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上の特性、例えば、密度、付着特性、サイズ、感度、表面マーカー発現プロファイル、及び/又は特定の成分に対する耐性に基づいて分離される。
【0098】
血球が対象から収集されるいくつかの実施形態では、例えば、血漿画分を除去するため、及び後続の処理ステップのために適切なバッファー又は培地中に細胞を置くために、収集された血球を、洗浄することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、洗浄後、当技術分野で公知の様々な生体適合性バッファー中に再懸濁することができる。特定の実施形態では、血球サンプルの成分を除去することができ、細胞を培養培地中に再懸濁することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、密度に基づく細胞分離方法、例えば、赤血球を溶解し、遠心分離することによる、末梢血からの白血球の調製を含み得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上の特定の分子、例えば表面マーカー、例えば表面タンパク質の細胞中での発現又は存在に基づいて、異なる細胞タイプを分離するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、分離は、親和性又は免疫親和性に基づく分離であり得る。例えば、いくつかの態様における単離は、1つ以上のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞の発現又は発現レベルに基づく細胞及び細胞集団の分離(例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体又は結合パートナーとのインキュベーションと、一般にその後に続く、洗浄ステップ、及び抗体又は結合パートナーに結合していない細胞からの、抗体又は結合パートナーに結合している細胞の分離による)を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、T細胞のサブタイプの1つ以上を、さらに富化することができる。いくつかの実施形態では、T細胞のサブタイプは、1つ以上の特定のマーカー、例えばT細胞上の表面マーカーの存在又はレベルによって決定することができる。いくつかの場合には、そのようなマーカーは、T細胞の特定の集団(例えば、非記憶細胞)上では存在しないか又は比較的低いレベルで発現されているが、T細胞の特定の他の集団(例えば、記憶細胞)上では存在するか又は比較的高いレベルで発現されているマーカーである。一実施形態では、細胞(例えば、CD8+細胞又はT細胞、例えば、CD3+細胞)は、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127、及び/若しくはCD62Lについて陽性であるか若しくはこの高表面レベルを発現している細胞について富化(すなわち、陽性選択)され、並びに/又はCD45RAについて陽性であるか若しくはこの高表面レベルを発現する細胞について枯渇(例えば、陰性選択)される。いくつかの実施形態では、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27、及び/若しくはIL7-Ra(CD127)について陽性であるか又はこの高表面レベルを発現している細胞について富化又は枯渇される。いくつかの例では、CD8+ T細胞は、CD45RO陽性(又はCD45RA陰性)且つCD62L陽性である細胞について富化される。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される所望の細胞集団は、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体流(fluidic stream)で運ばれる、フローサイトメトリーにより収集及び富化(又は枯渇)させてもよい。いくつかの実施形態では、初代T細胞集団又は生産されたT細胞は、調製規模の(FACS)選別により収集及び富化(又は枯渇)させてもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は結合パートナーは、陽性及び/又は陰性選択のための分離を促進するために、1つ以上の検出可能なマーカーで標識される。例えば、分離は、蛍光標識抗体への結合に基づいてもよい。いくつかの例では、1つ以上の細胞表面マーカーに特異的な抗体又は他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)(調製規模(FACS)を含む)及び/又は微小電気機械システム(MEMS)チップ(例えば、フローサイトメトリー検出システムと組み合わせて)によって、流体流で運ばれる。このような方法は、同時に複数のマーカーに基づく陽性及び陰性選択を可能にする。
【0102】
分離は、特定のマーカーを発現する特定の細胞集団又は細胞の100%富化又は除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現する細胞などの、特定のタイプの細胞の選択又は富化は、そのような細胞の数又は割合の増加を指すが、マーカーを発現しない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、CD3+ T細胞集団の選択は、前記集団について富化するが、いくらかの残存している又はわずかな割合の他の非選択細胞も含有してよく、これは、一部の場合には、富化された集団中に依然として存在している非CD3+ T細胞及び/又は非T細胞集団の他のものを含んでもよい。いくつかの実施形態では、表面フコシル化の低減を有するT細胞は、ヒト末梢T細胞を有してもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、特定のタイプの細胞の分離又は富化は、培養培地中で細胞の集団を培養するステップの前又は後に実施することができる。したがって、いくつかの例では、サンプルから単離された初代細胞の混合物を処理して、T細胞を分離又は富化し、他のタイプの細胞又は成分(例えば、血小板及び赤血球)を除去する(例えば、その数を減らす)ことができる。次いで、T細胞の富化された集団は、培養に進むことができる。あるいは、他の例では、サンプルから単離されたT細胞及び他のタイプの細胞又は成分を含有する細胞の混合物は、T細胞を実質的に分離又は富化することなく、培養培地中で培養することができる。細胞集団が所望の数に達するか、又は培養ステップが実質的に完了した後、培養された細胞を処理して、後の使用、例えば養子細胞療法又は癌治療のために、T細胞を分離又は富化することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、細胞及び細胞集団を培養するための様々なステップのうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、サンプルから単離された、又は既存の細胞株から得られた細胞の集団を培養する1つ以上のステップを含み得る。いくつかの代替実施形態では、本方法は、サンプルから得られ及び単離された、又は既存の細胞株から得られた細胞の混合物から分離された細胞の集団を培養する1つ以上のステップを含み得る。そのような実施形態のいくつかでは、培養されるべき細胞の集団の大部分(例えば、細胞の集団全体の少なくとも20%又はそれを超える)は、以前の細胞の集団から分離又は富化されたT細胞を含み得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、培養されるべき複数の細胞は、同じユニット、チャンバー、ウェル、カラム、チューブ、チューブセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、又は培養若しくは細胞育成用の他の容器などの容器中で一般に培養することができる。
【0106】
培養ステップは、以下のうちの少なくとも1つ又は複数を含み得る: 培養、育成、刺激、活性化、繁殖(刺激条件、例えば、集団中の細胞の増殖、拡大、活性化及び/又は生存を誘導するように設計された条件の存在下でのインキュベーションによるものを含む)。
【0107】
条件は、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、薬剤、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、及び/又は刺激因子、例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、及び細胞を活性化するように設計された任意の他の薬剤のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞の特徴を改変するように設計された1つ以上の薬剤を培養培地に添加することができる。例えば、細胞、特にT細胞の表面上のフコシル化のレベルを改変するために、1つ以上のフコース類似体を培養培地に添加することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法は、フコース類似体の存在下でT細胞を培養することによってT細胞を改変することを含む。フコース類似体は、細胞培養培地に添加することができる。特定の実施形態では、細胞培養培地は、フコース類似体を約1ng/mL~数mg/mL培養培地の濃度で含有し得る。いくつかの実施形態では、培養培地は、フコース類似体を、約1ng/mL、約10ng/mL、約50ng/mL、約100ng/mL、約150ng/mL、約200ng/mL、約250ng/mL、約300ng/mL、約350ng/mL、約400ng/mL、約450ng/mL、約500ng/mL、約550ng/mL、約600ng/mL、約650ng/mL、約700ng/mL、約750ng/mL、約800ng/mL、約950ng/mL、約1μg/mL、約10μg/mL、約50μg/mL、約100μg/mL、約150μg/mL、約200μg/mL、約250μg/mL、約300μg/mL、約350μg/mL、約400μg/mL、約450μg/mL、約500μg/mL、約550μg/mL、約600μg/mL、約650μg/mL、約700μg/mL、約750μg/mL、約800μg/mL、約950μg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL培養培地又はそれを超える濃度、又は前述の任意の途中値の濃度で含有し得る。いくつかの他の実施形態では、細胞培養培地は、約1nM~数mMのフコース類似体を細胞培養培地中でその最終濃度で含有し得る。いくつかの実施形態では、培養培地は、フコース類似体を、細胞培養培地中でその最終濃度で、約1nM、約10nM、約50nM、約100nM、約150nM、約200nM、約250nM、約300nM、約350nM、約400nM、約450nM、約500nM、約550nM、約600nM、約650nM、約700nM、約750nM、約800nM、約950nM、約1μM、約10μM、約50μM、約100μM、約150μM、約200μM、約250μM、約300μM、約350μM、約400μM、約450μM、約500μM、約550μM、約600μM、約650μM、約700μM、約750μM、約800μM、約950μM、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM又はそれを超える濃度で、又は前述の任意の途中値の濃度で含有し得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、活性化されたT細胞の集団を生産するために、1つ以上のT細胞活性化剤によりT細胞を活性化することを含む。1つ以上の適切なT細胞活性化剤の任意の組み合わせを使用して、活性化されたT細胞の集団を生産することができ、T細胞活性化剤としては、以下に限定されないが、T細胞刺激分子又は共刺激分子を標的とする抗体又はその機能的断片(例えば、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度の抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD28抗体、又はその機能的断片)、T細胞サイトカイン(例えば、約1ng/mL~約100ng/mLの濃度の任意の単離された、野生型、又は組換えサイトカイン、例えば、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン15(IL-15)、腫瘍壊死因子α(TNFα))、又は任意の他の適切なマイトジェン(mitogen)(例えば、任意の所望の濃度のテトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリンA(conA)、リポ多糖(LPS)、ヤマゴボウマイトジェン(PWM))又は任意の所望の濃度のT細胞刺激分子又は共刺激分子に対する天然リガンドが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、抗CD3抗体(又はその機能的断片)、抗CD28抗体(又はその機能的断片)、又は抗CD3抗体と抗CD28抗体との組み合わせを、Tリンパ球の集団を刺激するステップに従って使用することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、細胞は、培養が完了する前に、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、又は約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、又はそれを超える日数の間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は1回以上継代培養することができ、すなわち、培養が完了する前に、培養細胞の少なくとも一部が、以前の培養培地から新しい培養培地に移される。いくつかの他の実施形態では、培養が完了する前に、細胞を1回培養することができる。培養培地に添加される任意の薬剤は、全培養期間中に1回又は複数回細胞に提供することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法に有用な培養されたT細胞の濃度は、約1.0~10.0×106個細胞/mLであり得る。特定の実施形態では、培養されたT細胞の濃度は、約1.0~2.0×106個細胞/mL、約1.0~3.0×106個細胞/mL、約1.0~4.0×106個細胞/mL、約1.0~5.0×106個細胞/mL、約1.0~6.0×106個細胞/mL、約1.0~7.0×106個細胞/mL、約1.0~8.0×106個細胞/mL、1.0~9.0×106個細胞/mL、又は約1.0~10.0×106個細胞/mLであり得る。特定の実施形態では、培養されたT細胞の濃度は、約1.0~2.0×106個細胞/mLであり得る。特定の実施形態では、培養されたT細胞の濃度は、約1.0~1.2×106個細胞/mL、約1.0~1.4×106個細胞/mL、約1.0~1.6×106個細胞/mL、約1.0~1.8×106個細胞/mL、又は約1.0~2.0×106個細胞/mLであり得る。特定の実施形態では、リンパ球の濃度は、少なくとも約1.0×106個細胞/mL、少なくとも約1.1×106個細胞/mL、少なくとも約1.2×106個細胞/mL、少なくとも約1.3×106個細胞/mL、少なくとも約1.4×106個細胞/mL、少なくとも約1.5×106個細胞/mL、少なくとも約1.6×106個細胞/mL、少なくとも約1.7×106個細胞/mL、少なくとも約1.8×106個細胞/mL、少なくとも約1.9×106個細胞/mL、少なくとも約2.0×106個細胞/mL、少なくとも約4.0×106個細胞/mL、少なくとも約6.0×106個細胞/mL、少なくとも約8.0×106個細胞/mL、又は少なくとも約10.0×106個細胞/mLであり得る。
【0112】
上に記載される方法によって培養されたT細胞は、低減した表面フコシル化を有し得る。いくつかの態様では、低減した表面フコシル化は、正常T細胞の表面上に天然に存在するフコシル化のレベルの低減又は阻害を指すことができる。いくつかの実施形態では、T細胞上の表面フコシル化の低減は、T細胞表面上の天然に存在するフコースの、T細胞に人工的に提供されるフコース類似体による置換を含まない。
【0113】
上に記載される方法によって培養されたT細胞は、低減した表面フコシル化を有し得る。いくつかの実施形態では、提供される方法によって培養及び生産されたT細胞上の平均表面フコシル化は、フコース類似体の非存在下で培養されたT細胞、すなわち、対照T細胞の平均表面フコシル化と比較して、少なくとも約5%の低減を有し得る。いくつかの実施形態では、提供される方法によって培養及び生産されたT細胞上の平均表面フコシル化は、フコース類似体の非存在下で培養された対照T細胞の平均表面フコシル化と比較して、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%、約100%の低減を有し得る。T細胞上の表面フコシル化のレベルは、当技術分野で利用可能な技術、例えば、フローサイトメトリーによって決定することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、培養ステップを完了することができ、培養された細胞は、培養された細胞の少なくとも一部の収集(又は採取)ステップに進むことができる。培養ステップは、培養された細胞の数が所望の数に達したとき、計画された培養期間が過ぎたら、及び/又は培養T細胞上の平均表面フコシル化が所望のレベル(例えば、対照T細胞の平均表面フコシル化と比較した少なくとも5%又はそれを超える低減)に達した場合に、完了することができる。
【0115】
培養ステップが完了した後、細胞は、当技術分野で利用可能な技術によって採取することができる。採取ステップは、この文書の他の箇所に記載されているように、遠心分離、洗浄、不要な細胞若しくは成分の除去、及び所望のタイプの細胞の単離などの1つ以上のステップを含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、例えば養子細胞療法若しくは癌治療での投与、又は療法若しくは治療のための医薬組成物の製剤化のために、細胞を後日使用できるように、低減した表面フコシル化を有するT細胞を含む、本明細書に記載される方法によって生産された細胞集団は、場合により凍結保存することができる。そのような方法は、所望のT細胞、すなわち、低減した表面フコシル化を有するT細胞の集団を希釈溶液で洗浄及び濃縮するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、希釈溶液は、通常生理食塩水(normal saline)、0.9%生理食塩水、PlasmaLyte A、5%デキストロース/0.45%NaCl生理食塩水、ヒト血清アルブミン(HSA)、又はそれらの組み合わせを含有し得る。いくつかの実施形態では、解凍後の改善された細胞生存性及び細胞回復のために、洗浄及び濃縮された細胞にHSAを添加することができる。別の実施形態では、洗浄溶液は通常生理食塩水(normal saline)であってよく、洗浄及び濃縮された細胞にHSA(5%)を補充してもよい。いくつかの実施形態では、凍結保存混合物を生成することができる。凍結保存混合物は、希釈溶液中の希釈された細胞集団及び適切な凍結保存溶液を含み得る。いくつかの態様では、凍結保存溶液は、生産されたT細胞の希釈溶液と混合された、当技術分野で利用可能な任意の適切な凍結保存溶液であり得る。いくつかの実施形態では、本方法はまた、凍結保存混合物を凍結するステップを含む。一態様では、凍結保存混合物は、任意の所望の細胞濃度、例えば、凍結保存混合物1ml当たり約106~108個で、定義された凍結サイクルを使用して、速度制御フリーザー(controlled rate freezer)中で凍結される。本方法はまた、凍結保存混合物を気相液体窒素中で保存するステップを含み得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって生産されたT細胞、例えば、表面フコシル化の低減を有するT細胞は、養子細胞療法又は癌治療において使用することができる。例えば、生産されたT細胞は、療法又は治療を必要とする対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって生産されたT細胞、例えば、表面フコシル化の低減を有するT細胞は、養子細胞療法又は癌治療において使用することができる医薬組成物を製剤化するために使用することができる。
【0118】
II-2. インビボの生産方法
いくつかの態様では、低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産するインビボの方法が本明細書で提供される。本方法は、フコース類似体を動物に与えること、及び低減した表面フコシル化を有するT細胞を動物から得ることを含み得る。これらの方法によって生産されたT細胞は、フコース類似体を与えられていない動物に存在する、又はこの動物から得られたT細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有し得る。本明細書に開示される方法によって生産されたそのようなT細胞は、養子細胞療法又は癌治療などの治療目的に使用することができる。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、低減した表面フコシル化を有するT細胞は、「治療用T細胞」と呼ばれる。
【0119】
いくつかの実施形態では、本方法で使用されるフコース類似体は、式(I)又は(II):
【化7】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物形態であってよく、式(I)又は(II)のそれぞれは、アルファ若しくはベータアノマー又は対応するアルドース形態であってよく;
R
2は、ハロゲンであり; R
1、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、-CH
3であり、又は
R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5は、アルキニルである。
【0120】
いくつかの実施形態では、R2は、-Fである。
【0121】
いくつかの実施形態では、R5は、-C≡CHである。
【0122】
いくつかの実施形態では、本方法で使用されるフコース類似体は、式(I)又は(II)[式中、R2は、ハロゲンであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3であり、又はR1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-C≡CHである]を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、本方法で使用されるフコース類似体は、式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3であり、又はR1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-C≡CHである]を有する。
【0124】
式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R2は、ハロゲンであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3である。式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R2は、-Fであり; R1、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR5は、-CH3である。
【0125】
式(I)又は(II)のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基から選択され; 及びR5は、-C≡CHである。
【0126】
いくつかの実施形態では、加水分解性エステル基は、-OC(O)C1~C10アルキルである。いくつかの選択された実施形態では、加水分解性エステル基は、-OC(O)CH3である。
【0127】
式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)C1~C10アルキルからなる群から選択される。式(I)又は(II)[式中、R2は、-Fである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)CH3からなる群から選択される。式(I)又は(II)の具体的な一実施形態では、R2は、-Fであり、R1、R3及びR4のそれぞれは、-OHである。
【0128】
式(I)又は(II)[式中、R5は、-C≡CHである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)C1~C10アルキルからなる群から選択される。式(I)又は(II)[式中、R5は、-C≡CHである]のいくつかの選択された実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、-OH及び-OC(O)CH3からなる群から選択される。式(I)又は(II)の具体的な一実施形態では、R5は、-C≡CHであり、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、-OHである。式(I)又は(II)の別の具体的な実施形態では、R5は、-C≡CHであり、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、-OAcである。
【0129】
いくつかの選択された実施形態では、本方法で使用されるフコース類似体は、式:
【化8】
又はそのアルドース形態を有し、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、本明細書で定義及び記載されているとおりである。
【0130】
いくつかの選択された実施形態では、フコース類似体は、2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコースである。
【0131】
いくつかの選択された実施形態では、フコース類似体は、アルキニルフコースペルアセテートである。アルキニルフコースペルアセテートは、アルキニルフコーステトラアセテート、アルキニルフコーストリアセテート、アルキニルフコースジアセテート、アルキニルフコースモノアセテート、又はそれらの組み合わせであり得る。例示的な一実施形態では、フコース類似体は、(3S,4R,5R,6S)-6-エチニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトライルテトラアセテート又は5-((S)-1-ヒドロキシプロパ-2-イン-1-イル)テトラヒドロフラン-2,3,4-トリイルトリアセテートである。
【0132】
様々な実施形態のいずれにおいても、式(I)及び(II)のフコース類似体の環内の環酸素は、硫黄によって置き換えられてもよい。
【0133】
本明細書で提供される方法は、フコース類似体を動物に与えるステップを含み得る。フコース類似体の動物への供与は、様々な投与方法を介して行うことができる。いくつかの実施形態におけるフコース類似体は、標準的投与技術、例えば、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与又は坐剤投与を使用して動物に投与することができる。いくつかの実施形態では、細胞集団は、非経口的に投与される。用語「非経口」は、本明細書で使用される場合、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、膣投与、及び腹腔内投与を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、静脈内注射、腹腔内注射、又は皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。いくつかの実施形態では、フコース類似体は、動物に経口的に投与することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法は、養子細胞療法又は癌治療を必要とする対象のための養子細胞療法又は癌治療において使用することができる、低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産する。
【0135】
いくつかの実施形態では、T細胞を使用する細胞療法、例えば、養子細胞療法又は癌治療は、自己移入によって実施することができ、この自己移入では、細胞は、細胞療法又は治療を受ける予定の対象から又はそのような対象に由来するサンプルから単離及び/又は他の方法で調製される。したがって、いくつかの態様では、フコース類似体は、治療を必要とする対象、例えば患者に供与又は投与することができ、単離及び処理後に得られた低減した表面フコシル化を有するT細胞は、同じ対象に投与される。
【0136】
いくつかの実施形態では、T細胞を使用する細胞療法、例えば、養子細胞療法又は癌治療は、同種異系移入によって実施することができ、この同種異系移入では、細胞は、細胞療法又は治療を受ける予定である又は最終的に受ける対象以外の対象、例えば第1の対象から単離及び/又は他の方法で調製される。そのような実施形態では、次いで、細胞は、同じ種の異なる対象、例えば第2の対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1の対象及び第2の対象は、遺伝的に同一である。いくつかの実施形態では、第1の対象及び第2の対象は、遺伝的に類似している。いくつかの実施形態では、第1の対象及び第2の対象は、遺伝的に異なる。いくつかの実施形態では、第1の対象及び第2の対象は同じ種に属さず、例えば、第1の対象はヒトであり、第2の対象は非ヒト動物である。第2の対象から得られたT細胞は、第1の対象の療法又は治療のために単離及び処理することができる。
【0137】
有効量のフコース類似体を、動物に与えることができる。有効量は、所望の結果、すなわち、低減した表面フコシル化を有するT細胞の生産を提供するのに十分なフコース類似体の量を指すことができる。いくつかの実施形態では、有効量のフコース類似体は、約1~約500mg/kg体重の範囲のフコース類似体であり得る。フコース類似体が、例えば食物又は水を与えることにより、経口的に供与又は投与されるいくつかの実施形態では、動物に投与されるフコース類似体の経口投与量は、約1mg/kg~約1g/kg動物体重、より典型的には約5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、又は50mg/kg~約1g/kg動物体重であり得る。いくつかの態様では、動物に投与される投与量は、1日当たり約1g、約5g、若しくは約10g~約150g、又は1日当たり約1g、約5g、約10g、約15g若しくは約20g~約60gである。いくつかの実施形態では、フコース類似体は、フコース類似体を与えられた動物において表面フコシル化の低減を誘導するのに適した任意の所望の量で食物又は水と共に与えることができる。
【0138】
いくつかの実施形態において本明細書に記載される方法で使用されるフコース類似体は、1つ以上の追加の薬学的に許容される賦形剤又は担体と共に、同時に又は任意の順序で連続して、動物に共投与することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、フコース類似体又はその組成物は、特定の期間、例えば、1~数日、1~数週、1~数ヶ月又はそれより長い期間、中断あり又はなしで、投与することができる。いくつかの実施形態では、フコース類似体又はその組成物は、毎日、毎週、隔週又は毎月のスケジュールで投与することができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、動物へのフコース類似体の供与又は投与は、所望の結果が達成されるとき、例えば、動物から得られたT細胞の平均表面フコシル化が、対照T細胞と比較して、任意の数のパーセンテージ、例えば、約5%~約95%低減するときに完了することができる。
【0141】
本明細書で提供される方法は、フコース類似体を与えられた動物からの細胞、例えば、T細胞の混合物を得るステップを含み得る。得られた細胞は、低減した表面フコシル化を有するT細胞を含み得る。
【0142】
上に記載される方法によって培養されたT細胞は、低減した表面フコシル化を有し得る。いくつかの態様では、低減した表面フコシル化は、正常T細胞の表面上に天然に存在するフコシル化のレベルの低減又は阻害を指すことができる。いくつかの実施形態では、T細胞上の表面フコシル化の低減は、T細胞表面上の天然に存在するフコースの、T細胞に人工的に提供されるフコース類似体による置換を含まない。
【0143】
上に記載される方法によって生産されたT細胞は、低減した表面フコシル化を有し得る。いくつかの実施形態では、フコース類似体を与えられた動物から得られたT細胞上の平均表面フコシル化は、フコース類似体を与えられていない動物に存在する又はこの動物から得られたT細胞、すなわち、対照T細胞の平均表面フコシル化と比較して、少なくとも約5%の低減を有し得る。いくつかの他の実施形態では、フコース類似体を与えられた動物から得られたT細胞上の平均表面フコシル化は、対照T細胞が試験される又は得られる前に少なくとも数時間、数日、数週、数ヶ月又はそれを超える期間、フコース類似体を与えられていない動物に存在する又はこの動物から得られた対照T細胞の平均表面フコシル化と比較して、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%、約100%の低減を有し得る。T細胞上の表面フコシル化のレベルは、当技術分野で利用可能な技術、例えば、フローサイトメトリーによって決定することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、T細胞及び細胞集団は、フコース類似体を与えられた動物からの又はこの動物に由来する生物学的サンプルなどのサンプルから単離することができる。サンプルは、動物から直接採取された組織、体液、及び他のサンプルを含み得る。生物学的サンプルは、生物学的供給源から直接得られたサンプル、又は処理されるサンプルであり得る。生物学的サンプルとしては、以下に限定されないが、体液、例えば、血液、血漿、血清、組織及び臓器サンプル、例えば、脾臓(それらに由来する処理されたサンプルを含む)が挙げられる。例示的なサンプルとしては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃、若しくは他の臓器、及び/又はそれらに由来する細胞が挙げられる。
【0145】
いくつかの実施形態では、T細胞及び細胞集団が動物から得られた後、得られた細胞の分離、遠心分離、洗浄、インキュベーション及び/又は培養などの1つ以上の処理ステップがあり得る。いくつかの実施形態では、T細胞を含有する得られた細胞集団を処理して、T細胞を単離又は富化し、及びいくつかの他のタイプの細胞(例えば、赤血球)及び/又は成分(例えば、血小板)を除去する(又は低減する)ことができる。いくつかの実施形態では、得られた細胞集団又はさらに富化されたT細胞は、細胞を維持し、及び/又は後の使用、例えば養子細胞療法若しくは癌治療、又は医薬組成物の製剤化のために十分な細胞数を増加させるために、当技術分野で利用可能な技術を使用して細胞培養培地中で培養することができる。いくつかの実施形態では、動物から得られた、又は動物からの単離後にさらに培養された、低減した表面フコシル化を有するT細胞は、例えば、当技術分野で利用可能な又はこの文書の他の箇所に記載されている凍結保存技術により、後の使用のために保存することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるインビボの生産方法によって生産された表面フコシル化の低減を有するT細胞は、養子細胞療法又は癌治療において使用することができる。いくつかの実施形態では、動物から得られた、又は動物からの単離後にさらに培養された、生産されたT細胞は、そのような療法又は治療を必要とする対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、動物から得られた、又は動物からの単離後にさらに培養された、生産されたT細胞は、養子細胞療法又は癌治療に使用することができる医薬組成物を製剤化するために使用することができる。いくつかの実施形態では、動物はヒトである。
【0147】
本明細書に記載される生産方法は、T細胞の集団を改変するステップをさらに含み得る。例えば、T細胞集団に、細胞表面受容体をコードする核酸分子を含むウイルスベクターを形質導入して、形質導入されたT細胞の集団を生産することができる。いくつかの組換えウイルスは、細胞に遺伝物質を送達するためのウイルスベクターとして使用されている。形質導入ステップに従って使用することができるウイルスベクターは、任意のエコトロピック(ecotropic)又はアンホトロピック(amphotropic)ウイルスベクターであってよく、例えば、以下に限定されないが、組換えレトロウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクター、組換えアデノウイルスベクター、及び組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられる。ウイルスベクターを増殖させるための任意の適切な増殖培地及び/又はサプリメントを、当技術分野で公知の方法に従ってウイルスベクター接種材料中に使用することができる。一実施形態では、ウイルスベクターは、細胞表面受容体をコードする異種遺伝子を含む。特定の一実施形態では、細胞表面受容体は、標的細胞の表面上、例えば、腫瘍細胞の表面上の抗原に結合することができる。
【0148】
IV. 養子細胞療法又は癌治療のための医薬組成物
上に記載される生産方法により生産される低減した表面フコシル化を有する細胞集団又はT細胞は、養子細胞療法又は癌治療において使用するために製剤化することができる。所望のT細胞(又は治療用T細胞)、すなわち、低減した表面フコシル化を有するT細胞又はこのようなT細胞を有する細胞の混合物は、治療有効量又は予防有効量の所望のT細胞と、1つ以上の薬学的に適合性のある(許容される)成分とを含む医薬組成物として製剤化することができる。いくつかの態様では、有効量のT細胞が対象への投与に適した賦形剤と混合されている、治療用T細胞及び医薬賦形剤の医薬組成物を提供することができる。好ましい態様では、治療用T細胞及びその医薬組成物は、ヒトへの投与用に製剤化される。したがって、本開示は、ヒトへの投与用に製剤化された低減した表面フコシル化を有するT細胞を含む医薬組成物を提供する。製剤化された組成物は、一般に、1つ以上の薬学的に適合性のある(許容される)賦形剤又は担体を含み得る。
【0149】
医薬組成物を調製する際に使用される材料は、使用される量において非毒性であり得る。医薬組成物中の活性成分(複数可)の最適な投与量が、様々な因子に依存することは、当業者には明らかであろう。関連する因子としては、限定されないが、動物のタイプ(例えば、ヒト)、投与様式、使用される組成物、並びに治療される疾患若しくは状態の重症度が挙げられる。
【0150】
本明細書の開示による医薬組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルジョン又は懸濁液の形態であり得る。いくつかの実施形態では、液体は、注射による送達に有用であり得る。(上に記載される)注射による投与のための組成物には、界面活性剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定剤及び等張剤のうちの1つ以上も含めることができる。
【0151】
本明細書に記載される医薬組成物は、組成物が動物(例えば、ヒト)に投与されることを可能にする任意の形態であり得る。典型的な投与経路としては、限定されないが、経口、非経口、及び舌下が挙げられる。非経口投与としては、皮下注射、腹腔内注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射又は注入技術が挙げられる。これらの医薬組成物は、療法又は治療を必要とする対象への組成物の投与時に、低減した表面フコシル化を有するT細胞が有効であることを可能にするように製剤化することができる。
【0152】
V. 治療方法
いくつかの態様では、養子細胞療法を対象に施す方法が本明細書で提供される。本方法は、低減した表面フコシル化を有するT細胞を、細胞療法を必要とする対象に投与することを含み得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、養子細胞療法を対象に施す。対象に養子細胞療法を施すことは、低減した表面フコシル化を有するT細胞(すなわち、治療用T細胞)を含む細胞の混合物を対象に投与するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、対象は、そのような療法を必要とし得る。いくつかの実施形態では、対象に養子細胞療法を施すことはまた、この文書の他の箇所に記載されるインビトロ及びインビボの方法のいずれかに従って療法のための治療用T細胞を生産するステップも含み得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、養子細胞療法は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)免疫療法、自己細胞療法、改変自己細胞療法(engineered autologous cell therapy、eACT(商標))、同種異系T細胞移植、非T細胞移植、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、養子細胞療法は、腫瘍細胞を認識し、結合することができる自己又は同種異系T細胞を選択し、インビトロで富化し、患者に投与する任意の方法を広く含み得る。TIL免疫療法は、腫瘍組織に浸潤することができるリンパ球を単離し、インビトロで富化し、患者に投与する、養子T細胞療法の一種である。TIL細胞は、自己又は同種異系のいずれでもよい。自己細胞療法は、患者から腫瘍細胞を標的化することができるT細胞を単離し、インビトロでT細胞を富化し、元の同じ患者にT細胞を投与することを含む、養子T細胞療法である。同種異系T細胞移植は、エクスビボで拡大された天然に存在するT細胞又は遺伝子操作されたT細胞の移植を含み得る。改変自己細胞療法は、患者自身のリンパ球を単離し、腫瘍標的化分子を発現するように遺伝子改変し、インビトロで拡大し、元の患者に投与する、養子T細胞療法である。非T細胞移植は、限定されないが、ナチュラルキラー(NK)細胞などの非T細胞による自己療法又は同種異系療法を含み得る。
【0155】
いくつかの態様では、癌を治療する方法が、本明細書で提供される。本方法は、低減した表面フコシル化を有するT細胞を、そのような治療を必要とする対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法はまた、この文書の他の箇所に記載されるインビトロ及びインビボの方法のいずれかに従って治療のための治療用T細胞を生産するステップも含み得る。
【0156】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法による養子細胞療法又は癌治療において使用されるT細胞は、対照T細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有する治療用T細胞である。いくつかの態様では、低減した表面フコシル化は、正常T細胞の表面上に天然に存在するフコシル化のレベルの低減又は阻害を指すことができる。いくつかの実施形態では、T細胞上の表面フコシル化の低減は、T細胞表面上の天然に存在するフコースの、T細胞に人工的に提供されるフコース類似体による置換を含まない。
【0157】
前に記載したように、いくつかの実施形態では、養子細胞療法又は癌治療において使用される低減した表面フコシル化を有するT細胞は、療法若しくは治療、すなわち自己療法若しくは治療を受ける同じ対象に、又は療法若しくは治療、すなわち同種異系療法若しくは治療を受ける対象とは異なる対象に由来し得る。
【0158】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法による養子細胞療法又は癌治療において使用されるT細胞は、対照T細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有する治療用T細胞である。特に自己療法又は治療がヒト患者に施されるいくつかの実施形態では、同じ患者に由来するT細胞は、治療用T細胞を生産するために、本明細書に開示されるインビトロ又はインビボの方法に従って処理することができる。そのような実施形態では、対照T細胞は、(1)正常な健康なヒトに存在するか又はそれから得られたT細胞の集団、又は(2)治療用T細胞の生産前に同じ患者に存在したか又はそれから得られたT細胞の集団を指すことができる。特に同種異系療法又は治療がヒト患者に施されるいくつかの他の実施形態では、患者ではないドナーに由来するT細胞は、治療用T細胞を生産するために、本明細書に開示されるインビトロ又はインビボの方法に従って処理することができる。そのような実施形態では、対照T細胞は、治療用T細胞の生産前にドナーに存在したか又はそれから得られたT細胞の集団を指すことができる。同種異系療法又は治療がヒト患者に施され、療法又は治療において使用される治療用T細胞が非ヒト動物(すなわち、ドナー動物)に由来する、いくつかの他の実施形態では、対照T細胞は、(1)正常な健康な非ヒト動物に存在するか又はそれから得られたT細胞の集団、又は(2)治療用T細胞の生産前にドナー動物に存在したか又はそれから得られたT細胞の集団を指すことができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法による養子細胞療法又は癌治療において使用される治療用T細胞上の平均表面フコシル化は、対照T細胞の平均表面フコシル化と比較して、少なくとも約5%の低減を有し得る。いくつかの他の実施形態では、フコース類似体を与えられた動物から得られたT細胞上の平均表面フコシル化は、対照T細胞の平均表面フコシル化と比較して、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%、約100%の低減を有し得る。T細胞上の表面フコシル化のレベルは、当技術分野で利用可能な技術、例えば、フローサイトメトリーによって決定することができる。
【0160】
いくつかの態様では、養子細胞療法を施すか又は癌を治療するための本明細書に開示される方法は、任意の疾患、状態、及び障害を治療することを意図し、この疾患、状態、及び障害としては、以下に限定されないが、乳房の癌腫、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌(stomach cancer)、GIST、肝細胞癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、結腸癌、小腸癌、大腸癌、胃癌(gastric cancer)、リンパ腫、前立腺癌腫、精巣癌腫、甲状腺癌腫、悪性黒色腫、ブドウ膜黒色腫、多発性骨髄腫、中皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、膠芽腫、肉腫、神経膠腫、又は他の脳腫瘍、頭頸部腫瘍、他の胃腸腫瘍及び生殖細胞腫瘍、血液学的悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、ALL、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、難治性濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、緩徐進行性B細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、皮膚の癌(黒色腫を含む)、骨癌、上皮癌、腎細胞癌腫、膵臓腺癌、ホジキンリンパ腫、膠芽腫、神経芽腫、ユーイング肉腫、髄芽腫、滑膜肉腫、及び/又は中皮腫が挙げられる。
【0161】
いくつかの態様では、養子細胞療法を施すか又は癌を治療するための本明細書に開示される方法は、低減した表面フコシル化を有するT細胞、すなわち、治療用T細胞を対象に投与するステップを有する。いくつかの実施形態では、治療用T細胞は、動物(例えば、ヒト)に投与されるべき、本明細書に記載される医薬組成物の形態で、場合により1つ以上の薬学的に許容される成分と共に製剤化することができる。いくつかの態様では、治療用T細胞又はその医薬組成物は、限定されないが、経口、非経口、及び舌下で投与することができる。非経口投与としては、皮下注射、腹腔内注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射又は注入技術が挙げられる。これらの医薬組成物は、動物への組成物の投与時に、低減した表面フコシル化を有するT細胞が有効であることを可能にするように製剤化することができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、治療用T細胞、又は治療用T細胞を含有する医薬組成物は、癌細胞の部位又は近傍に投与(例えば、注射)することができる(すなわち、局所投与)。例えば、癌が臓器(例えば、肝臓)で見つかった場合、医薬組成物は、癌細胞が肝臓で見つかった場所又は癌細胞のすぐそば(例えば、癌細胞の境界から数ミリメートルから数センチメートル)に注射することができる。別の実施形態では、治療用T細胞又は医薬組成物は、患者の循環系(例えば、血管)に投与(例えば、注射)することができ(すなわち、全身投与)、その結果、治療用T細胞は、患者の循環系を介して、病的細胞が存在する標的部位(複数可)に到達することができる。いくつかの実施形態では、治療用T細胞は、腫瘍細胞又は癌細胞などの、標的化されるべき細胞又は疾患の細胞表面抗原に特異的に結合する成分をさらに有し得る。したがって、治療用T細胞は、循環系を介して送達された後、特異的に標的細胞に到達し、それに治療効果を示すことができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、低減した表面フコシル化を有するT細胞、すなわち、治療用T細胞又はその医薬組成物は、所望の結果又は効果を得る、例えば疾患又は状態を治療するのに有効な量、例えば、薬学的有効量で投与することができる。したがって、いくつかの実施形態では、投与方法は、養子細胞療法又は癌治療を必要とする対象への有効量での治療用T細胞又はその医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態における治療効力は、治療される対象の定期的な評価によりモニターすることができる。数日以上の繰り返し投与の場合、状態に応じて、疾患症状の望ましい抑制が起こるまで治療が繰り返される。いくつかの実施形態では、他の投与レジメンが有用であり、決定され得る。所望の投与量は、治療用T細胞又はその医薬組成物の単回投与によって、複数回投与によって、又は連続投与によって送達することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、低減した表面フコシル化を有するT細胞、すなわち、治療用T細胞又はその医薬組成物は、所望の結果又は効果を得る、例えば疾患又は状態を治療するのに有効な量で、そのような療法又は治療を必要とする対象に投与することができる。本明細書に記載される方法による治療用T細胞又はその医薬組成物の投与により達成されることを目的とする所望の結果又は効果は、投与前と比較した、以下の結果のうちの1つ以上を含み得る:
【0165】
(i)CTスキャン又は明らかな病変についての身体検査によって測定される、少なくとも約99%、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、又は少なくとも約5%、例えば、約30%~約99%、約80%~約90%、約70%~約90%、約60%~約90%、約50%~約90%、約40%~約90%、約35%~約90%、約30%~約90%、約25%~約90%、約5%~約85%、又は約10%~約80%(治療用T細胞又はその医薬組成物の投与前と比較した実際の%変化又は中央値%変化)の、病変(標的病変及び/又は非標的病変)の低減;
【0166】
(ii)生検、磁気共鳴画像法、又は他の適切な方法によって測定される、少なくとも約99%、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、又は少なくとも約5%、例えば、約30%~約99%、約80%~約90%、約70%~約90%、約60%~約90%、約50%~約90%、約40%~約90%、約35%~約90%、約30%~約90%、約25%~約90%、約5%~約85%、又は約10%~約80%(治療用T細胞又はその医薬組成物の投与前と比較した実際の%変化又は中央値%変化)の、癌転移の消失(すなわち、低減);
【0167】
(iii)少なくとも約99%、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、又は少なくとも約5%、例えば、約30%~約99%、約80%~約90%、約70%~約90%、約60%~約90%、約50%~約90%、約40%~約90%、約35%~約90%、約30%~約90%、約25%~約90%、約5%~約85%、又は約10%~約80%(治療用T細胞又はその医薬組成物の投与前と比較した実際の%変化又は中央値%変化)の、腫瘍量(例えば、癌細胞数、腫瘍サイズ、又は体内の癌の量)の低減;
【0168】
(iv)少なくとも約99%、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、又は少なくとも約5%、例えば、約30%~約99%、約80%~約90%、約70%~約90%、約60%~約90%、約50%~約90%、約40%~約90%、約35%~約90%、約30%~約90%、約25%~約90%、約5%~約85%、又は約10%~約80%(治療用T細胞又はその医薬組成物の投与前と比較した実際の%変化又は中央値%変化)の、無増悪生存(PFS)の増加; 及び/又は
【0169】
(v)少なくとも約99%、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、又は少なくとも約5%、例えば、約30%~約99%、約80%~約90%、約70%~約90%、約60%~約90%、約50%~約90%、約40%~約90%、約35%~約90%、約30%~約90%、約25%~約90%、約5%~約85%、又は約10%~約80%(予想される全生存と比較した実際の%変化又は中央値%変化)の、全生存(OS)の増加。
【0170】
いくつかの実施形態では、低減した表面フコシル化を有するT細胞(すなわち、治療用T細胞)又はその医薬組成物は、薬学的有効量、すなわち、所望の結果又は効果を得る、例えば疾患又は状態を治療するのに有効な量で投与することができる。いくつかの態様では、薬学的有効量は、所望の用量若しくは数の治療用T細胞、並びに/又は所望の比率のそのようなT細胞と他のタイプの細胞を含み得る。したがって、いくつかの実施形態における細胞の投与量は、細胞の総数(又は体重1kg当たりの数)、並びに個々の集団若しくはサブタイプの所望の比率(例えば、CD3+対非CD3+の比率)に基づく。いくつかの実施形態では、細胞の投与量は、医薬組成物に含まれる個々の集団における細胞の又は個々の細胞タイプの所望の総数(又は体重1kg当たりの数)に基づく。いくつかの実施形態では、投与量は、個々の集団における所望の総細胞数、所望の比率、及び治療用T細胞の所望の総数などの、このような特徴の組み合わせに基づく。
【0171】
いくつかの実施形態では、所望の用量又は量は、所望の数の治療用T細胞、又は細胞が投与される対象の体重の単位当たりの所望の数の治療用T細胞、例えば、細胞/kgである。いくつかの態様では、所望の用量又は量は、最小数以上の治療用T細胞、又は体重の単位当たりの最小数以上の治療用T細胞である。
【0172】
特定の実施形態では、治療用T細胞は、対象に、約100~約1000億個の細胞の範囲で、例えば、約数百~約数千個の細胞、約数千~約100万個の細胞、約100万~約500億個の細胞(例えば、約100個の細胞、約500個の細胞、約1000個の細胞、約5000個の細胞、約100万個の細胞、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば、約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、いくつかの場合には、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)、又はこれらの範囲の間にある任意の値で投与することができる。治療用T細胞の前述の有効な用量又は量は、個々の投与当たり、又は療法若しくは治療の期間全体当たりであり得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、治療用T細胞の用量又は量は、104(又は約104)~109(又は約109)個細胞/キログラム(kg)体重の範囲内であってよく、例えば、105~106個細胞/kg体重、例えば、1×105個細胞/kg、1.5×105個細胞/kg、2×105個細胞/kg、若しくは1×106個細胞/kg体重、又は約1×105個細胞/kg、約1.5×105個細胞/kg、約2×105個細胞/kg、若しくは約1×106個細胞/kg体重であってよい。例えば、いくつかの実施形態では、治療用T細胞は、104(又は約104)~109(又は約109)個T細胞/キログラム(kg)体重で、例えば、105~106個T細胞/kg体重で、例えば、1×105個T細胞/kg、1.5×105個T細胞/kg、2×105個T細胞/kg、若しくは1×106個T細胞/kg体重で、又は約1×105個T細胞/kg、約1.5×105個T細胞/kg、約2×105個T細胞/kg、若しくは約1×106個T細胞/kg体重で、あるいはこれらの誤差の特定の範囲内で投与される。治療用T細胞の前述の有効な用量又は量は、個々の投与当たり、又は療法若しくは治療の期間全体当たりであり得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、低減した表面フコシル化を有するT細胞、すなわち、治療用T細胞又はその医薬組成物は、所望の効果に従って、毎日、毎週、隔週又は毎月のスケジュールで投与することができる。いくつかの態様では、治療用T細胞又はその医薬組成物は、約1~5サイクル、約1~約10サイクル、約1~約15サイクル、又はそれを超えるサイクルで投与することができ、各サイクルは持続期間1ヶ月である。各サイクル内の用量は、毎日(1日1回、1日2回、又は1日2回超を含む)、1日おき、週2回、毎週、隔週、3週間に1回、又は毎月ベースで与えることができる。サイクルは、場合により休止期間を含み得る。あるいは、休止期間をサイクル間に含めてもよい。いくつかの態様では、投与は、疾患の持続期間中のものである。
【0175】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、表面フコシル化を有するT細胞、すなわち、治療用T細胞又はその医薬組成物と、追加の治療剤又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物との投与をさらに含み得る。治療用T細胞又はその医薬組成物と治療剤とは、相加的に、又はより好ましくは相乗的に作用し得る。好ましい実施形態では、治療用T細胞又はその医薬組成物は、治療用T細胞を含む組成物と同じ組成物の部分又は異なる組成物中であり得る、1つ以上の治療剤の投与と同時に投与することができる。別の実施形態では、治療用T細胞又はその医薬組成物は、治療剤(複数可)の投与の前又は後に投与することができる。
【0176】
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法で有効な、低減した表面フコシル化を有するT細胞、すなわち、治療用T細胞又はその医薬組成物の量は、障害又は状態の性質に依存し、標準的な臨床技術により決定することができる。さらに、インビトロ又はインビボアッセイを場合により使用して、最適な投与量範囲の特定を助けることができる。組成物中に使用されるべき正確な用量は、投与経路、並びに疾患若しくは障害の重篤度にも依存し、開業医の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。
【0177】
VI. 治療用途のためのキット
いくつかの態様では、養子細胞療法又は癌治療において使用するためのキットが提供される。そのようなキットは、低減した表面フコシル化を有するT細胞、すなわち、治療用T細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を含み得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される治療方法のいずれかにおいて使用するための説明書を含み得る。含まれる説明書は、対象において意図される活性、例えば、癌などの疾患又は状態の治療を達成するための、対象への医薬組成物の投与の説明を提供し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物の使用に関する説明書は、意図される治療のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含み得る。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)又は単位用量未満の用量(sub-unit dose)であってよい。本開示のキットで供給される説明書は、典型的には、ラベル又は添付文書に記載された説明書である。ラベル又は添付文書は、医薬組成物が、対象における疾患又は障害の治療、発症遅延、及び/又は緩和に使用されることを示す。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるキットは、適切なパッケージに入っている。適切なパッケージとしては、以下に限定されないが、バイアル、ボトル、ジャー(jar)、フレキシブルパッケージなどが挙げられる。また、吸入器、経鼻投与デバイス、又は注入デバイスなどの特定のデバイスと組み合わせて使用するためのパッケージも考えられる。いくつかの実施形態では、キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ、又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有するバイアルであってよい)。
本発明は以下の態様も包含する。
[1] 低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産する方法であって、該方法は、細胞培養培地中でフコース類似体の存在下でT細胞を培養することを含み; 前記フコース類似体は、式(I)又は(II):
【化9】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物形態からなる群から選択され、式(I)又は(II)のそれぞれは、アルファ若しくはベータアノマー又は対応するアルドース形態であってよく;
R
2
は、ハロゲンであり; R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
は、-CH
3
であり、又は
R
1
、R
2
、R
3
、及びR
4
のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
は、-C≡CHであり; 及び
前記T細胞は、前記フコース類似体の非存在下で培養されたT細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有する、方法。
[2] 低減した表面フコシル化を有するT細胞を単離するステップをさらに含む、上記[1]に記載の方法。
[3] R
2
が、ハロゲンであり; R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
が、-CH
3
である、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] R
2
が、-Fであり; R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
が、-CH
3
である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH及び-OC(O)C
1
~C
10
アルキルからなる群から選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH及び-OC(O)CH
3
からなる群から選択される、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] R
1
、R
2
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
が、-C≡CHである、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[8] フコース類似体が、2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコースである、上記[1]に記載の方法。
[9] フコース類似体が、アルキニルフコースペルアセテートである、上記[1]に記載の方法。
[10] 低減した表面フコシル化を有する前記T細胞が、前記フコース類似体の非存在下で培養されたT細胞と比較して、表面フコシル化の少なくとも5%の低減を含むT細胞である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 培養培地が、CD3抗体及びCD28抗体を含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 培養培地が、インターロイキン2(IL2)をさらに含む、上記[11]に記載の方法。
[13] 前記T細胞が、ヒト末梢T細胞を含む、上記[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14] 低減した表面フコシル化を有する前記の生産されたT細胞が、養子細胞療法において使用されるように構成される、上記[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15] 低減した表面フコシル化を有するT細胞を生産する方法であって、該方法は、
フコース類似体を動物に与えること; 及び
低減した表面フコシル化を有するT細胞を動物から得ること
を含み、
前記フコース類似体は、式(I)又は(II):
【化10】
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物形態からなる群から選択され、式(I)又は(II)のそれぞれは、アルファ若しくはベータアノマー又は対応するアルドース形態であってよく;
R
2
は、ハロゲンであり; R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
は、-CH
3
であり、又は
R
1
、R
2
、R
3
、及びR
4
のそれぞれは、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
は、-C≡CHであり; 及び
動物から得られた前記T細胞は、前記フコース類似体を与えられていない対照動物に存在する又はこの動物から得られたT細胞と比較して、低減した表面フコシル化を有する、方法。
[16] R
2
が、ハロゲンであり; R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
が、-CH
3
である、上記[15]に記載の方法。
[17] R
2
が、-Fであり; R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
が、-CH
3
である、上記[15]又は[16]に記載の方法。
[18] R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH及び-OC(O)C
1
~C
10
アルキルからなる群から選択される、上記[15]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19] R
1
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH及び-OC(O)CH
3
からなる群から選択される、上記[15]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20] R
1
、R
2
、R
3
、及びR
4
のそれぞれが、独立して、-OH又は加水分解性エステル基であり; 及びR
5
が、-C≡CHである、上記[15]に記載の方法。
[21] フコース類似体が、2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコースである、上記[15]に記載の方法。
[22] フコース類似体が、アルキニルフコースペルアセテートである、上記[15]に記載の方法。
[23] 低減した表面フコシル化を有する前記T細胞が、前記フコース類似体の非存在下で培養されたT細胞と比較して、表面フコシル化の少なくとも5%の低減を含むT細胞である、上記[15]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24] T細胞が、動物の脾臓から得られる、上記[15]~[23]のいずれかに記載の方法。
[25] 前記フコース類似体が、摂食により動物に与えられる、上記[15]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26] 動物から得られたT細胞からT細胞を富化することをさらに含む、上記[15]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27] 低減した表面フコシル化を有する前記の生産されたT細胞が、養子細胞療法において使用されるように構成される、上記[15]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28] 動物がヒトである、上記[15]~[27]のいずれかに記載の方法。
[29] 養子細胞療法を対象に施す方法であって、低減した表面フコシル化を有するT細胞を含む混合物を、細胞療法を必要とする対象に投与することを含む、方法。
[30] 低減した表面フコシル化を有する前記T細胞が、上記[1]~[28]のいずれかに記載の方法に従って生産される、上記[29]に記載の方法。
[31] 前記T細胞が、正常T細胞と比較して、表面フコシル化の少なくとも5%の低減を含む、上記[29]に記載の方法。
[32] 対象がヒトである、上記[29]~[31]のいずれかに記載の方法。
[33] 前記T細胞が、ヒト末梢T細胞を含む、上記[29]~[32]のいずれかに記載の方法。
[34] 低減した表面フコシル化を有する前記T細胞が、前記対象に由来したものである、上記[29]~[33]のいずれかに記載の方法。
[35] 低減した表面フコシル化を有する前記T細胞が、前記対象とは異なる動物に由来したものである、上記[29]~[33]のいずれかに記載の方法。
[36] 前記混合物が、赤血球を実質的に含まない、上記[29]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37] 細胞療法が、癌を治療するように構成される、上記[29]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38] 混合物が、局所的に(癌細胞に又はその近傍に)投与される、上記[29]~[37]のいずれかに記載の方法。
[39] 混合物が、全身的に投与される(投与経路)、上記[29]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40] 癌を治療する方法であって、低減した表面フコシル化を有するT細胞を含む混合物を、前記癌治療を必要とする対象に投与することを含む、方法。
[41] 低減した表面フコシル化を有する前記T細胞が、上記[1]~[28]のいずれかに記載の方法に従って生産される、上記[40]に記載の方法。
[42] 前記T細胞が、正常T細胞と比較して、表面フコシル化の少なくとも5%の低減を含む、上記[40]に記載の方法。
[43] 対象がヒトである、上記[40]~[42]のいずれかに記載の方法。
[44] 前記T細胞が、ヒト末梢T細胞を含む、上記[40]~[43]のいずれかに記載の方法。
[45] 改変された表面フコシル化を有する前記T細胞が、前記対象に由来したものである、上記[40]~[44]のいずれかに記載の方法。
[46] 改変された表面フコシル化を有する前記T細胞が、前記対象とは異なる動物に由来したものである、上記[40]~[44]のいずれかに記載の方法。
[47] 前記混合物が、赤血球を実質的に含まない、上記[40]~[46]のいずれかに記載の方法。
[48] 細胞療法が、癌を治療するように構成される、上記[40]~[47]のいずれかに記載の方法。
[49] 混合物が、局所的に投与される、上記[40]~[48]のいずれかに記載の方法。
[50] 混合物が、全身的に投与される、上記[40]~[49]のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0180】
VII. 実施例
以下の実施例は、本発明の特定の具体的な実施形態を説明するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0181】
本明細書の実施形態は、以下の実施例及び詳細なプロトコールによってさらに説明される。しかし、実施例は単に実施形態を説明することが意図され、本明細書の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本出願を通して引用されたすべての参考文献及び公開された特許及び特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0182】
実施例1 - 脾細胞の養子移入によるA20マウスリンパ腫研究
免疫原であるKLH-A20 Id Fabを、以下のように生成した。A20腫瘍Ig重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をPCR増幅によってクローニングし、HEK293F17細胞でのA20 Id産生のためにマウスIgG発現ベクターに連結した。A20 Idマウス抗体をプロテインAによって精製した。濃縮された抗体(20mM KPO4、10mM EDTA、pH7.0)を4容量の固定化パパイン樹脂(20mMシステインを含む)で37℃で一晩処理した。樹脂を除去し、上清をプロテインA樹脂と一晩(4℃)インキュベートし、その後、ろ過して樹脂結合抗体Fcを除去した。Fab含有流出液を収集し、透析し、PBS溶液、pH7.4中で濃縮した。海洋養殖(mariculture)KLH(mcKLH)及びNHS-PEG12-マレイミドを使用することによって、Fabコンジュゲーションを達成した。PBS溶液、pH8.0中のmcKLH(10mg/mL)をNHS-PEG12-マレイミドと混合し、インキュベートした(最終125mM、37℃、20分)。生成物mcKLHPEG12-マレイミドをPD10カラム(PBS溶液、pH7.4)でバッファー交換し、5mg/mLに濃縮した。A20 Id Fab(4mg/mL)を、2mM EDTA含有バッファー中の(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(5mM)で還元した(30分、37℃)。還元剤をPD10カラム(PBS溶液、pH7.4、5mM EDTA)により除去し、還元されたFabを5mg/mLに濃縮し、KLH-PEG12-マレイミドと混合し(3:1モル比、Fab:KLH)、室温でインキュベートした(1時間)。過剰のマレイミド架橋剤をN-アセチルシステインでクエンチし、PD10カラム(PBS溶液、pH7.4)によって除去した。
【0183】
脾細胞の養子移入のためのドナーマウスを、以下に記載されるように作製した。A20細胞(ATCC)を、10%FBS、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、50μM 2-メルカプトエタノール及びペニシリン(100U/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)(PS)を含むRPMI 1640中で培養した。マウス(BALB/c、Harlan)に、-21日目にTiterMaxアジュバント(1:1)と共にKLH-A20 Id Fabコンジュゲート(50μg)を皮下注射し、-7日目にブーストした。2FF処理群は、-14日目に開始して20mM 2FFを含有する飲料水を与えられ、一方、未処理群は普通の水を与えられた。2回目のワクチン接種(0日目)の1週間後、すべてのマウスは、放射線照射A20腫瘍細胞(RS2000照射器レベル4、17分、マウス1匹当たり2.5×106個細胞、静脈内(i.v.))の投与を受けた。2FF処理は14日目まで続いた。ドナーマウスの各群から採取した脾細胞(14日目)を、ナイーブマウスに養子移入した(一度)(50×106個の細胞/マウス)。1つの群は2FFの投与を受けたドナーマウスからの細胞の投与を受け、1つの群のマウスは2FFで処理されなかったドナーマウスからの細胞の投与を受けた(n=7匹/群)。次いで、両方のマウスを、移入の翌日にA20生細胞でチャレンジした(2.5×106個の細胞)。対照群は処理を受けなかった。2FFの投与を受けなかったドナーマウスから移入された脾細胞は、ナイーブ動物と比較して増加した生存をもたらし(27日から35日へ増加した生存中央値)、一方、2FFの投与を受けたドナーマウスから移入された脾細胞は、43日への生存中央値のさらなる増加をもたらした。このことは、2FFで処理された動物からの細胞の養子移入が、2FFを受けなかった動物からの細胞の養子移入よりも増強された抗腫瘍活性をもたらすことができることを示唆する。
【0184】
実施例2 - CD3+ T細胞の養子移入によるA20マウスリンパ腫研究
20匹のBalb/cマウスにA20細胞(0.2mLの5×10
6個細胞皮下投与(s.c.)/マウス)を移植し、10匹の動物からなるマウスの1つの群は、0日目から研究終了まで2FF(飲料水中20mM)の投与を受けた。A20リンパ腫腫瘍を成長させ、20日後にマウスを犠牲にした。前に示したように、20mMの2FFの投与を受けたマウスは、対照群の動物と比較して、腫瘍進行の著しい遅延を有した(
図2)。
【0185】
2FF処理時のCD3+ T細胞上の表面フコシル化の低減
未処理群及び2FF処理群からのマウスを犠牲にし、CD3 T細胞富化のために脾臓を採取した。簡単に述べると、2%FBSを含有するRPMI中で脾臓を収集し、細胞懸濁液を2%RPMIで洗浄した70μmメッシュナイロンストレーナーに通過させた。細胞を10mlのACK溶解バッファー中に懸濁し、このバッファー中で5分間インキュベートして、RBCを除去した。細胞を300×gで5分間遠心分離し、2%FBS及び1mM EDTAを含有するPBS中に再懸濁した。EasySepマウスT細胞単離キットを使用して、製造業者の推奨に従って、T細胞を単離した。簡単に述べると、細胞を10
8個細胞/mLで再懸濁し、これに、50μL/mLのラット血清を添加した。次いで、細胞を5mLポリスチレンチューブに移し、50μLの単離カクテルをサンプルに添加し、その後、室温で10分間インキュベートした。ラピッドスフェアズ(rapid spheres)をボルテックスし、75μL/ml添加し、その後、室温で2.5分間インキュベートした。サンプル体積を2.5mLに増量し、細胞単離磁石と共に2.5分間インキュベートした。磁石を反転させ、CD3
+ T細胞を収集し、RPMIで2回洗浄し、21.2×10
6細胞/mlで再懸濁した。細胞を、フローサイトメトリーによってそのフコシル化状態について確認し、2FF処理動物から単離されたものは、表面フコシル化の著しい低減を示した(
図3)。
【0186】
低減した表面フコシル化を有するT細胞の抗腫瘍活性
精製されたT細胞の抗腫瘍活性を評価するために、Balb/cマウスの4つの群にA20細胞(0.2mLの5×106個細胞皮下投与(s.c.)/マウス)を移植した。1つの群は処理を受けず、他の3つの群は、A20細胞が100mm3に達したときに処理され、飲料水中の20mM 2FFで毎日、腹腔内(IP)注射される対照腫瘍担持マウスから単離された2×106個のT細胞、又は腹腔内(IP)注射される2FF腫瘍担持マウスから単離された2×106個のT細胞のいずれかで処理された。その後の腫瘍進行について動物をモニターした。水中2FFを毎日、又は腫瘍担持2FF処理マウスから単離されたCD3+ T細胞の投与を受けた動物は、未処理動物又は未処理腫瘍担持マウスからのT細胞を受けた動物と比較した場合、著しく遅延した腫瘍成長及びいくつかの場合には腫瘍退縮を示した。
【0187】
これらのデータは、A20リンパ腫モデルにおける2FF抗腫瘍活性が、T細胞応答によって媒介されるだけでなく、2FFで処理された腫瘍担持マウスからのT細胞が抗腫瘍応答を駆動するのに驚くほど十分であり、この応答が全身2FF処理と同等であることを示す。これらの知見は、癌患者からの自己T細胞を、エクスビボで増殖させて、患者に再度組み込むか、又は特定の腫瘍抗原に対するTCR又はCARコンストラクトで形質転換させる治療状況において、2FFを使用してT細胞活性を増幅する可能性を開く。
【0188】
実施例3 - インビボ抗腫瘍効力のための2FFを用いたヒト末梢T細胞のエクスビボ拡大
T細胞を、最初に1200rpm(300×g)で10分間(ブレーキなし)遠心分離した10mLの全血から単離した。白血球層を破壊することなく、血小板を含有する最上層を慎重に除去した。次いで、RosetteSep(商標)ヒトT細胞富化カクテル(Human T-Cell Enrichment Cocktail)(全(pan)T細胞、StemCell technologiesから)を、残りの血液に添加した(500μL/10mL血液)。これを20分間インキュベートし、次いで、1mL FBSを10mL PBSと共に添加した。ヒストパック(Histopaque)(20~25mL)を50mLファルコン(Falcon)に入れ、調製した血液/PBS溶液を非常にゆっくりと載せた。これをブレーキなしで遠心分離した(25℃、1500rpm、25分)。最上層を除去し、次いで、バフィーコート層中のT細胞を新しい50mLチューブに取り出した。T細胞をPBSで洗浄し、1mL AKT溶解バッファー中に再懸濁し、25mLまで増量させ、5分間インキュベートし、PBSで50mLにし、次いでペレット化した。この赤血球溶解ステップを2回繰り返した。
【0189】
初代ヒトT細胞培養物のインビトロ培養のため、単離されたT細胞を、T細胞培地(10%ウシ胎児血清(FCS)、1%ペニシリンを補充したRPMI培地)中に再懸濁し、2つのT25フラスコ(1つは100μM 2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコースあり、1つはなし)に移した。T細胞を活性化するために、CD3/CD28抗体被覆ビーズ(20μL/フラスコ)を添加した。24時間後、インターロイキン2(IL2)を添加した(100ng/μL)。細胞を継代するたびに、新しいIL2及び2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコースを添加した。培養10日後、2FF中で培養された増殖させたT細胞を、表面フコシル化の変化についてフローサイトメトリーによって評価した(
図4)。初代ヒトT細胞を2FFで処理すると、レンズマメ(lens culinaris)アグルチニン(LCA)の表面染色によってモニターされるように、表面フコシル化が約85%減少し、細胞がインビボ移入できる状態であることが示される。
【0190】
実施例4 - エクスビボで2FFを用いて成熟及び分化した自己T細胞は、抗腫瘍活性を付与することができる
末梢血単核細胞を、自発的な健康なボランティア(Astarte Biologics)からの静脈血のバフィーコートからヒストパック(histopaque)(Sigma)密度勾配を使用して単離した。その後、EasySepヒトT細胞富化カクテル(Human T cell Enrichment Cocktail)(STEMCELL)を使用して、製造業者の説明書に従って、T細胞を単離した。1:8のビーズ:細胞比で使用されるαCD3/αCD28抗体被覆ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して、0日目にT細胞を活性化した。T細胞を、RPMI 10%FCS+IL-2(100ng/μL、R&D Systems)+/-100μM 2FF中で活性化した。細胞を継代するたびに、新しいIL-2及び2FFを添加した。
【0191】
エプスタインバーウイルス(EBV)形質転換リンパ芽球細胞株(LCL)を、NSGマウスに皮下移植した。LCL腫瘍体積が300mm3に達したとき、マウスは、尾静脈注射により、2FFの存在下又は非存在下で増殖及び成熟させた2.0×106個の自己末梢T細胞の投与を受けた。LCL進行に対する自己T細胞の抗腫瘍活性を、隔週のキャリパー測定によってモニターした。1週間を超えて腫瘍がサイズアウト(size out)するか、又は完全に縮小したら、マウスを犠牲にした。
【0192】
自己T細胞の移入は抗腫瘍活性をもたらし、移入前に2FFを用いてT細胞を成熟させた場合、この活性は、生存(
図5B参照)と同様に、著しく増強された(
図5A参照)。